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2008年9月 5日 (金)

書評 与謝野薫著「堂々たる政治」(新潮新書)

 2008年4月20日発行。定価714円。与謝野氏初の著書だそうだ。

堂々たる政治 (新潮新書 257) 堂々たる政治 (新潮新書 257)

著者:与謝野 馨
販売元:新潮社
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 後藤田正晴、梶山静六、中曽根康弘の3人に政治を学んだ、といい3氏のエピソードを紹介している。
 面白かったのが小泉純一郎氏の言葉だ。「私の先輩たちは、肝心なときに人に相談して判断を間違ってきた。私は肝心なとき、絶対に人に相談しない。自分で決める」という言葉である。人に相談すると平均的な答しか返ってこない、ということが良く分かっていたのだ、という。
 <小泉氏ほど「自分で決める」という信念を強く持っている人はいないのは確かである>
 という与謝野氏の言葉はその通りだ、と思う。
 また、「小選挙区制度の恐ろしさ」としてカナダの与党が169議席から2議席になった、という極端な事例まで紹介していた。
 与謝野氏は昔から筋金入りの中選挙区論者だから。中選挙区の時代の東京1区。中曽根派の与謝野氏と福田派の古手議員が争い、たしか定数2だった。小選挙区になって、海江田万里氏と争うようになり、当選したり落ちたり。落ちても比例区で当選するシステムだからまあ、いいのだが、そのトラウマがあるのだろうか。
 昔、民社党委員長を務めた佐々木良作氏の話として、「新聞の社説の通りに政治をすると間違える」という言葉を載せていた。これは、その通りだと思う。
 <リーダーたるもの、世論と自分の判断が異なった場合、自らの判断のほうを取る覚悟がなければその座にあってはいけない>
 <考えの中心を他人の目にしてしまっては、取り返しのつかない失敗をしてしまう可能性がある>
 <政治家にとって一番大切なのは何か。それは、肝心なときにものを言い、肝心なときに行動することである。清潔であることでもないし、演説がうまいことでもない。そういう些末なことではなく、良い世の中を後の世に残そうという理想の下で、肝心なときにものを言い、行動すること>
 与謝野氏のいい点は、しっかりしていて、中心軸がぶれないところだろう。
 昔は頭はいいが、しっかりした信念はない人かと思っていた。梶山氏や中曽根元首相の政策ブレーンが一番似合う、と思っていたのだ。年月が人を成長させただけでなく、がんを克服して、思い切りが良くなったようだ。性格も明るくなったようだ。この本の中でも書いているが、太平洋戦争への反省など、自民党政治家の良心的部分を代表している、と言ってもいいのかもしれない。
 <日本人が熱狂の中で決めたことは大抵間違っている>
 <どうして日本人はあんなばかな戦争をやったのか。昭和10年代の政治家はほとんどイメージが残っていない。ほんのわずかな例外を除けば、政治家が肝心なときに何の発言も行動もしていない。その当時の政治家がお粗末だった証拠だ。政治家は細かいことをちまちまやっているような職業ではなくて、普段は遊んでいてもいいし、昼寝していてもいいが、肝心なときは自分の責任で物事を判断するという気概を持っていなければいけない>
 という言葉の重さ。ずしんとくる。
 「格差」「公平」「平等」への考え方。市場原理主義批判。規制緩和への疑念。「2大政党制は理想か」の部分は中選挙区制度を理想とする与謝野氏ならではの考え方が示されている。「政治主導とは」もそうだ。
 勉強になったのは「国は巨大な割り勘組織」の項目だ。財政危機の問題であり、「上げ潮路線派」がいかにインチキか、与謝野理論で”完膚なきまで”論破されているのだ。「先進国中で一番役人の少ない国」、「財政における二つの無駄の形」、「霞が関埋蔵金などない」ときて、最後は政権構想といってもいいような「まっとうな日本」「温かさと改革は両立する」で終わる。
 政治家がチョコチョコっとまとめた本ではない。心のこもった本だ、という印象だった。
 さすが与謝野鉄幹と晶子の孫だなあ、と思う。だが、政治評論家としては「さすが」の人でも、政治家は実行して、結果を出してなんぼの世界だ。政治家の仲間づくりをしておらず、どちらかといえば、一匹狼で生きてきた人が、この本にあるような政治ができるのかどうか? 政治は立派な政治家がすべきものだが、また、決して一人ではできないものだから。そこが最後にはネックになるのではないか、と思うのだ。好きな政治家だけど。

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