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2008年10月29日 (水)

韓国不動産バブル崩壊寸前?~NEWSWEEK11月5日号+日経新聞10月29日朝刊+ダイヤモンド10月11日号

 韓国の通貨危機。どうにも分からないことが多く、この何日か雑誌などを見ているのだが、まだ理解できない。ただ、日経新聞10月29日朝刊国際面[グローバル金融危機 苦悩の新興・中小国]<「財テク」行き詰まり深刻/実体経済に波及懸念>で韓国を取り上げており、少し勉強になった。ソウル支局の山口真典記者の記事である。

 記事は、1年前に今住んでいるアパート(日本で言うマンション)を担保に投資目的で別のマンションを買ったが、不動産市況の悪化で売れず、金利が上がったので住宅ローンの利子負担増に悩む韓国の中堅財閥系企業の課長(39)が登場する。超人気のソウル南部「バブル7」地区のひとつ瑞草区(ソチョ区)の不動産業者は「あるマンションは契約者の40%が権利を放棄した」と話している、という。

 最近までは瑞草区の新築マンションでは買おうとしても競争率が100倍を超しており、値段も高いが、抽選もなかなか当たらない、庶民の夢の住まいだった。

 しかし、実際に住む目的だけでなく、投機目的でマンションを手に入れ、すぐに売り抜けていた購入希望者が金融危機の影響で資金が集まらず、契約放棄する例が増えている、という。

 また、日本のバブル時代のようにマンションの値上がりを見越して、どんどんと大きなマンションに買い換える「住み替え」希望者も、新たなマンションの購入資金を手にできず、買えない状態らしい。だから、不動産市場では売り一色で、買い手がいないため、売買が成立しないのだ、という。

 韓国の不動産バブルが崩壊したら、株式市場、外為市場の比ではない、というのはジャーナリストの九鬼太郎氏だ。

 週刊ダイヤモンド10月11日号「外資の凄絶なる”韓国売り”不動産崩壊なら本格的危機へ」で九鬼氏は盧武鉉政権の5年間でソウルのマンション価格など不動産価格が急騰したが、韓国では今でも”不動産神話”は健在で、経済が悪化しても何とか中流層以上の生活が回っているのはそのおかげだ、という。不動産を担保にした財テクなどが、雇用や老後の不安の唯一の解消策だ、という。しかし、その不動産価格にも昨年から黄信号がともっている、と書いている。

 九鬼氏のリポートはきっと10月初旬段階の取材に基づいているのだろう、と思うのだが、

 <すでに地方では新築マンションの売れ残りが増え、中堅建設会社の倒産が続いている。高額物件が集中するソウル江南地区のマンション価格も、昨年から20%程度下がった。>

 と書いていた。日経朝刊によれば、その値下がりが進んだのかどうか分からないが、売買が成立しない状態だ、というのだ。

 九鬼氏のリポートで面白かったのは韓国の国内総生産(GDP)に対する家計債務の比率である。IMF危機直前には40%前後だったが、現在は70%にまで上昇しているのだ、という。

 <特に2006年以降は経済成長率をはるかに上回るペースで家計債務が増加している。この大半が住宅ローンとみられる。まさに米国で起きた”不動産バブル”と同じ現象なのだ。>

 というのだ。

 九鬼氏によると、韓国では不動産譲渡税が高いので、価格が下がっても不動産を売り切る動きはまだ本格化していないが、ソウルを代表する高級マンションが金融機関の差し押さえを受けて競売にかけられる例が続出し始めた、という。

 だから、日経が紹介したソウル南部の不動産業者の言葉も、こうした背景を持って理解しなければならないのだろう。売りにくい仕組みもあるのだ、と。

 そして、金融機関がこのような高級マンションを差し押さえしても価格が下がっていれば、担保価値を割った資産価値しか手にできないから、時価会計ならば、金融機関の不良債権が日に日に積み重なる事態になる。九鬼氏もこの点を含みにおいてか、次のように書いている。

 <不動産価格が一気に崩れた場合、その影響はウォン安や株安とは比較にならない。金融機関への打撃も大きく、韓国は本格的な危機に直面する恐れがある。>

 九鬼氏によると、韓国が10年前のIMF危機を超スピードで克服したのは規制緩和などを進めた結果、巨額の海外マネーが入り、株価や不動産価格が急騰したためだ、という。それと並行して”経済の二極化”(富裕層と貧乏な人たちの二極化)が進み、すでに雇用問題や物価高が庶民(二極化した貧乏な人の層)を直撃しているが、富裕層は財テクを駆使して、金を回し、何とか裕福な生活を続けている。今度の危機は不動産価格の下落によって、富裕層に打撃を与える可能性がある、というのだ。

 どちからといえば、富裕層の支持を得て大統領になった李明博政権にとっては看過できない事態である。

 李明博政権の苦境に焦点を当てていたのがNEWSWEEK日本版2008年11月5日号の<崖っぷち李明博は韓国を救えるか>だった。ソウル支局の李炳宗記者のリポートである。

 <CEO大統領を自任する李の指導力が今ほど求められるときはない。世界第13位の規模を誇る韓国経済は、崩壊の瀬戸際にある。金融危機と景気低迷が世界を覆うなかでも、韓国はとりわけ深刻だ。>

 として、外国人投資家が一斉に投資を引き揚げたこと、ソウル株式市場の株価はこの1年で50%以上値を下げたこと、通貨ウォンが今年年初来、ドルに対して30%以上急落し、IMF緊急融資で韓国経済が何とか破綻を免れた1998年以来のウォン安になったこと、一部企業や一般市民がパニックに陥っていることなど、悪い面をいやというほど書いていた。

 ただ、今の韓国の外貨準備は2400億㌦あり、通貨危機が始まった1997年7月時点の約8倍で、今回は危機を乗り切れる、と李明博政権は主張しているという。27日の国会演説でも強調していた点である。

 面白かったのは、ソウルの地元紙が最近実施した世論調査で李明博大統領の支持率が上がっている、という点だった。

 「李は金融危機を乗り越えられる」が53%、「乗り越えられない」が33%だ、という。

 米国産牛肉輸入再開をきめたため、BSE(牛海綿状脳症)を恐れる国民の猛反発を受け、6月には支持率が10%台に落ち込んでいたが、最近は30%程度に回復した、というのだ。

 三星経済研究所の首席研究員はウォン安、株価暴落にもかかわらず、韓国のGDP成長率は今年3%以上(昨年は5%)を維持できる、と見ているという。

 問題は李明博政権の経済政策の責任者である姜萬洙企画財政相が2月の政権発足直後から輸出活性化のため事実上のウォン安容認政策を続けたため、ウォン売りを加速させ、輸入品の価格を引き上げ、インフレの火に油を注いだ、という批判がくすぶっていることだ。そこで野党が罷免要求したわけだ。

 李記者のリポートでも不動産バブル崩壊の可能性を最大の懸案にあげていた。

 <ここ数年で一気に膨れ上がった不動産バブルはいつはじけてもおかしくない。そうなればアメリカの住宅バブルの崩壊を再現しかねない。>

 <ソウル市内の高級住宅地の不動産価格はいまだに5年前の2倍の高水準にある。政府はバブル崩壊を避けようと必死だが、すでに住宅ローンが担保割れしているケースもあり、融資している銀行をむしばみはじめている。>

 ダイヤモンド、NEWSWEEK両誌のリポートは共通して、この不動産バブル崩壊のおそれを重視していた。また、韓国が日本以上に輸出依存体質なので、消費地である米欧の消費不況が日本以上に韓国を直撃し、GDPに直接はね返るだろう、と予測している。

 日経新聞によると、韓国の銀行が抱える対外債務で来年6月までに返済期限を迎えるのは、外貨準備の3割強に相当する800億㌦だ、という。借り換えが難航する恐れがあるとして、米格付け会社は韓国大手銀行の格付けを格下げする方向で見直すと発表しているそうだ。

 1人当たり国民所得は10年前の2倍に膨らむ一方、株式のネット取引も普及し、韓国は「財テク」の時代に入っている、という。

 昔から銀行を信用しない国民性で、主婦の頼母子講が一般的だった。そんなお国柄だけに、自分でパソコンに向かって取引できるネット株取引は韓国人の国民性にマッチしたのだろう、と想像する。

 今回の危機はそうした庶民の「中の中」階層である「小金持ち」を直撃しているのだ。

 李明博政権はこの金融危機が実体経済に波及するのを食い止められるのか? 年末までには、本当の正念場を迎える、というのだが。

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