北朝鮮のサンプル採取拒否…オバマ政権スタートまで北朝鮮問題は動かない~各紙11月13日朝刊などから
北朝鮮は12日、プルトニウム抽出量の検証に不可欠なサンプル採取を拒否する、という外務省報道官談話を発表した。10月上旬のヒル米国務次官補訪朝の際に北朝鮮が提出した核申告書の検証方法について「現地訪問、資料確認、技術者からの聴取に限定する」ことで合意しており、サンプル採取は合意文書に入っていない、また、対象も寧辺核施設に限り、時期は支援が完全に終了した後というのが合意書骨子だ、と主張。「(米朝の)書面合意の他に一文字でも多く要求するなら、それは主権侵害行為だ」としている(11月13日毎日新聞朝刊2面)。
この談話について東京新聞11月13日朝刊国際面<「核カード」温存図る/米政権交代にらみ>ではソウルの築山英司特派員が「(北朝鮮は)来年1月の米次期政権発足をにらみ、現時点での譲歩の必要はないとの判断から『核カード』を温存しようとする姿勢の表れだ」と分析している。
記事で北朝鮮外務省報道官談話は10月1~3日の米朝合意の後、「6カ国協議を10月18日に開催しようという中国側の提案に同意したことがある」と暴露し「6カ国協議が遅れている責任はわが国にあるという間違った世論を触れ回っている勢力がある」として、試料採取の明記がないことに憂慮を示した日韓両国をけん制した、という。また、北朝鮮が試料採取を嫌うのは生成済みプルトニウムの量の確定を嫌うためだ、と解釈している。
東京新聞は北朝鮮問題に詳しい文正仁・延世大学教授の「北朝鮮は李根米州局長が訪米し、オバマ次期大統領に『敵対的行動に出ないなら対話できる』とメッセージを送っている。オバマ政権を待ったほうがいいと考えている」という話を紹介していた。この談話が見出しどころになったわけだ。
◆オバマ次期政権と北朝鮮政府が早くも接触開始か
ここに出てきた李根氏の訪米だが、朝鮮総連のネットニュースである朝鮮新報が報じていたので、コピペする。見出しは<李根・朝鮮外務省局長が訪米、「いかなる政権にも対応準備」>だった。
<ニューヨークで6者会談の朝米代表が接触した。朝鮮外務省の李根局長一行は4~10日、ニューヨークに滞在した。大統領選挙と同時期に行われた朝鮮の外交関係者の訪米と現地での言動は内外の注目を集めた。
李局長は6日(現地時間)、全米外交政策協議会(NCAFP)の事務所でソン・キム米国務省特使と6者合意履行問題など朝米間の懸案問題について協議した。
李局長は協議後、記者らに対し「10.3合意に沿って各側が義務をどのように履行したか深く話し合い、幅広い論議を行った」と協議結果に満足を示し「今後もこのような論議を続ける」と明らかにした。そして、朝米間では検証問題などについてすでに合意されており、この日の協議では今後、何をすべきかについて意見を交換したと付け加えた。
また、オバマ氏が次期大統領に選出されたことに対する記者の質問に「(これまで)われわれと対話しようとする政権や、われわれを孤立させ抑制しようとする政権も相手にしてきた」と指摘しながら、「われわれはいかなる政権が登場しても、その政権の対朝鮮政策に合わせて対応する準備ができている」と応じた。
この日夕方、李局長は6者会談米国側首席代表のクリストファー・ヒル国務次官補と夕食を兼ねた協議を行った。協議後、米国の新政権と対話を行う用意があるかに関する記者の質問に対し「(オバマ政権が)対話を追求すれば対話し、(朝鮮の)孤立を追求すればそれに対応する」と答えた。
李局長一行は7日、NCAFP主催の米国の朝鮮問題専門家会議に参加した。同会議にはヘンリー・キッシンジャー元国務長官、ウィンストン・ロード元国務次官補、ドナルド・グレッグ元南朝鮮駐在大使、ソン・キム特使などが参加した。米大統領選挙期間、オバマ陣営で朝鮮問題を担当したフランク・ジャヌージ氏も姿を見せた。
約4時間におよぶ会議は非公開で行われた。会議終了後、主催者側を代表して記者会見したドナルド・ザゴリア理事は会合が「米国の次期政権で重要な役割を果たす人物と朝鮮政府の高官を紹介する場を兼ねたものだった」と説明した。[朝鮮新報 2008.11.12]>
随分と正直に書いている。つまり、北朝鮮とオバマ次期政権とのすりあわせがすでに始まっている、というのだ。キッシンジャー、ロード、グレッグ各氏は東京で開いた朝鮮半島をめぐるシンポジウムを聞きに行った時に、肉声を聞いたことがあるが、フランク・ジャヌージ、ドナルド・ザゴリア両氏には会ったこともなく、名前も初めて聞いた。もしかすると、ジャヌージ氏がオバマ政権で北朝鮮担当の一翼を担うかもしれない。
産経新聞11月13日国際面の有元隆志ワシントン特派員のトップ記事によると、北朝鮮が10.3合意と呼んでいる米朝合意は北朝鮮側が「サンプル採取」に難色を示したことから、合意文書では「科学的手法の使用」という表現にとどまり、サンプル採取は口頭了解となった、とある。
この点を危惧した斎木昭隆外務省アジア大洋州局長が10月末にヒル氏と会談した際、検証方法は「信頼に足るものでなければならない」と述べ、サンプル採取も6カ国協議の合意文書に盛り込むべきだとの考えを伝えた。ヒル氏は今月初めの米朝協議後、検証方法について北朝鮮と「完全な理解に達している」と楽観的見通しを示していたが、6カ国協議筋は「北朝鮮との交渉で、口頭了解はあとで否定される可能性があるので危うい。功を焦ったヒル氏が肝心な点をあやふやにしたツケがきた」と批判している、と書いていた。
◆オバマ氏は北朝鮮を核クラブの一員と認めている
読売新聞11月13日朝刊政治面続き物[オバマのアメリカ~日米関係④]<「核政策」変化に注視>でオバマ氏の北朝鮮認識を示す文章が出ていた。
<2007年10月、米大統領選の民主党候補の指名争いに挑んでいたバラク・オバマ上院議員は、地元シカゴで「核廃絶」を公約に掲げると訴えた。「いまだにソ連に対する抑止力を想定した核政策は変える必要がある」「インド、パキスタン、北朝鮮は『核クラブ』に加わり、イランもドアをノックしている。核武装国が増えれば、脅威は増す。アメリカは核のない世界を目指す」>
という部分である。記事自体は、オバマ氏の「核廃絶」はアメリカが核を保有したままでの核廃絶であること、アメリカで近年、「日本核武装論」が真剣に論じられていること、などにも触れているが、今注目したいのはこの北朝鮮を「核クラブ」の一員と認めたオバマ氏の認識である。インド、パキスタン、イスラエルと同列の国と認めた場合、北朝鮮にとっては非常に得るところが多い交渉となる。日本は完全な蚊帳の外になるだろう。
読売記事が書くように、昨年12月の国連総会で日本が提出した核軍縮決議案を過去最多の賛成で採択したが、反対したのは米国、インドと北朝鮮だった。すでに米国と北朝鮮は共通利害で動き始めているようにも見えるのである。
◆韓国に対しては陸路通行遮断を通告
北朝鮮は12日、韓国に来月から陸路通行制限をする、と通告してきたという。朝日新聞11月13日朝刊国際面によると、すべての南北赤十字電話チャンネルも断絶するという。韓国が今月、日本などと北朝鮮人権決議案の共同提案国になったことへの反発だ、と書いてある。また、最近の韓国民間団体による北朝鮮領内に対するビラまきへの対抗措置ともいうが、韓国の民間団体は近く追加のビラを10万枚まくという。
◆日経新聞のまとめと分析~「日米韓離反狙い」は正しいが…
この南北問題を総括的に解説していたのが日経新聞11月13日朝刊国際面<北朝鮮、陸路往来遮断を通告/日米間の結束揺さぶる/赤十字会「板門店代表部を閉鎖」>である。北朝鮮を巡る最近の主な動きを年表にして付けてあり、切り抜きに便利な記事。
開城(ケソン)工業団地の韓国側人員の往来や貨物列車の輸送、開城観光事業に支障をきたすことも予想される、とあった。南北関係が冷え込んだ際も経済協力は維持してきた北朝鮮が遮断通告に踏み切った背景には軍部の意向が強く働いている、という。
かねて軍事的要衝である開城の工業団地開発など南北経済協力に批判的だった軍部は10月2日の南北将官級会談では、韓国市民団体の北朝鮮体制非難ビラまきに猛反発し「中止しない場合は重大な措置を取る」と表明。軍高官が11月6日には異例の開城工業団地視察を実施するなど、最近では軍が前面に出て韓国に圧力をかける構図が目立った、という。
日本に対する揺さぶりも続いており、一方で米オバマ次期政権への摺り寄り姿勢。ここから見えてくるのは日米韓3者の離反作戦だ、とソウル・山口真典特派員は書いている。
◆日本は現金自動支払機になり下がることを避けねば
たしかにそうだろうが、別にいまさら離反させなくとも、オバマ氏が北朝鮮を核保有国と認めれば、今後は核保有国同士の話し合いとなり、日本と韓国は除外され、韓国は統一問題という別次元の問題で各種のパイプを持つものの、日本は本当の意味で自動現金引き出し機になり下がってしまう危険が出てくる。
小さな動きに敏感に反応することも大切だが、今後、オバマ政権が東アジアをどう扱おうとしているのか、その時に中国との連携をどう進めるのか、日本の国益はどう保証されるのか、など大きな視野で見ておかないと失敗する感じがする。
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