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2008年11月26日 (水)

盧武鉉政権はテレビ局と組んで金賢姫を謀略にかけようとしていた~産経新聞11月26日

 産経新聞11月26日朝刊1面トップは黒田勝弘ソウル特派員の記事である。

 見出しは<金賢姫元死刑囚「謀略説」に苦悩の書簡/「親北」盧政権を批判/テレビ局も結託/田口さんに思い>である。

 北朝鮮の女性元工作員、金賢姫元死刑囚については、以前、盧武鉉政権の北朝鮮融和勢力によって苛められている、という噂は聞いたことがあった。金元死刑囚が発表した25日の書簡をもとに1面トップで記事化したのは黒田氏ならでは、だと思う。

 というのは、金賢姫元死刑囚の書簡に全面的に依拠するだけでは記事はできないからだ。発言が真実である、という裏付けを何らかの形で取らなければならないが、黒田氏は長い特派員生活の中で、噂の真偽を含めて相当に取材を進めていたので、25日発表の書簡をもとに分厚い記事にできたのだ、と思う。

 記事は1987年11月29日に乗客上院115人を乗せた大韓航空機がミャンマー沖で爆破された大韓航空(KAL)機爆破テロ事件の実行犯である金賢姫(キム・ヒョンヒ)元死刑囚が親北朝鮮で左翼的だった盧武鉉前政権時代に情報機関の協力の下でテレビ各局などが繰り広げた”KAL機事件謀略説”に対して抗議と怒りの書簡を25日に発表した、という内容だ。

 記事の内容を書き留めておこう。

 <書簡は人権団体のイ・ドンボク北韓民主化フォーラム代表に送られてきたもの。金賢姫の対外的な訴えは初めてだ。書簡は彼女が北朝鮮で受けた工作員教育の際、日本語を教えてもらった田口八重子さん(北朝鮮では李恩恵=リ・ウネ)について「彼女の存在と彼女が拉致日本人だったことは北朝鮮も認めているではないか」とし、謀略説とそれに便乗した政府機関、親北・左派勢力のでたらめさを改めて非難している。>

 北韓(プッカン)というのは韓国人が北朝鮮を呼ぶ呼称だ。

 <謀略説というのは「事件は韓国当局がデッチ上げた自作自演で北朝鮮は関係ない。金賢姫はニセ者」というもので、事件当時、北朝鮮当局や朝鮮総連、日本の親北・左翼系などによって流布された。>

 大韓航空機撃墜に関する謀略説に基づいた分厚い本を読んだことがある。陰謀史観にありがちな「先に結論ありき」の断定調で、都合のいい話だけをつなぎ合わせた代物。「9.11はなかった」同様、ひどいうものだった。その程度といえば、田母神氏の論文が立派に見えるほどだ。

 <国際的には「北朝鮮のいつものでたらめ宣伝」としてほとんど相手にされなかったが、社会的に親北・左派勢力が幅を利かした前政権時代になって「過去史真相究明委員会」など政府機関やマスコミなどで大まじめに取り上げられ、執拗に”金賢姫追及”が行われた。>

 日本の新聞ではこうした盧武鉉政権の悪事はほとんど報じられなかったので、日本人でこういう経緯を詳しく知っている人はいないだろう。今回だって、黒田氏がこのように注目して取り上げなかったら、盧武鉉大統領の「偏向」が日本人の目に写らなかったかもしれないのだ。

 <金元死刑囚がとくに問題にしているのは、確実な捜査結果や彼女の自供内容は紹介せず「金賢姫とは何者か」「16年間の疑惑と真実」「金賢姫の疑問の足跡」などと題して一方的に謀略論をあおったテレビ各社。しかも彼女を管理していた情報機関の国家情報院は、偏向報道に利用されることを知りながら彼女に対しテレビ出演やインタビューをしきりに勧めたという。>

 韓国という大統領制の国の怖さである。

 主体思想を身につけた北朝鮮シンパの大統領が何かの弾みで大統領に選ばれたら最後、国家情報機関も握って、情報操作もし放題だったわけだ。

 大統領選挙は韓国において人気投票の様相を示しており、よく知られているように盧武鉉大統領は保守分裂と公職選挙法の管理が行き届かなかったインターネットをフルに利用して、勢いで大統領に就任した左翼分子である。

 米国のように民主制度が定着し、多様な文化が並存する国でも大統領制の衆愚政治化の危険性が指摘されているが、韓国人は日本人に似て一枚岩になりやすい国民性だ。人気投票的な大統領選びで選ばれたのが盧武鉉大統領だった。

 <これまで彼女の住所は北朝鮮による報復テロなどの危険性から秘密になっていたが、テレビは情報機関の協力で自宅に押しかけ撮影までしたため移転を余儀なくされた。また国家情報院は彼女に”海外移民”まで勧めたという。>

 盧武鉉政権とテレビ各局との蜜月は有名だった。

 その逆が新聞社と盧武鉉政権との対立である。韓国はもともと新聞社のステータスが異常に高く、新聞記者のプライドも高く、給与もいい。だが、朴正煕政権で認められていた新聞社の販売、広告の特権が金大中政権で徐々に剥奪され、新聞社と親北朝鮮の金大中・盧武鉉政権との対立は深まっていた。

 この間隙を突くように、今まで新聞社の下の地位に甘んじていたテレビ局が青瓦台(大統領府)に接近し、政権のスピーカーの役割を果たすようになっていた

 記事によると、盧武鉉政権は超えてはならない一線を越えて、邪魔になった金賢姫元死刑囚にニセ証言をさせようとし、それができないと、テレビの歪曲報道に加担させるなど、国家公務員としてしてはならない行為をしていた、という。

 韓国人が多数犠牲になった大韓航空機事件の生き残った実行犯の片言節句をつなぎ合わせて、その信憑性を疑わせ、大韓航空機事件が韓国軍事政権の陰謀だった、と主張するテレビ局に協力する――日本人から見れば考えられないことを一国のトップかトップに近い官僚たちがしていた、というのである。

 盧武鉉前大統領には愛国心もなければ、民主主義を守ろうという気概もなければ、自由、人権感覚もなかったことが明らかになったわけだ。これでよく「日帝36年」などを非難していたものだ、と驚く。従軍慰安婦問題なども、日本に対して強く出るための手段として大事にしただけではないか、という疑念もわいてくる。

 <書簡は、謀略説の最大の狙いは「テロ作戦は金正日総書記の指示」とした彼女の供述をひっくり返すことだったとし、テレビ制作陣は彼女を出演させ彼女が「良心宣言」をすることを画策したという。>

 やはり、金正日総書記への気がねなのだろう。

 <国家情報院に対する不満、批判としては、盧武鉉政権時代の政治的な過去否定作業の中で、1987年のKAL機事件捜査を担当した前身の国家安全企画部に対する否定的見方が強く、親北風潮に便乗し謀略説に毅然と対応していないとしている。>

 過去史とか過去検証とかの言葉がバンバン飛び出すのが韓国の親北朝鮮勢力の特徴である。

 狙いは歴史の書き換えである。日韓併合条約が無効だ、というのは韓国の1965年条約当時からの主張で、条約では日韓双方が自分に都合がいいように読める文言に落ち着いているのだが、そういう経緯を知らない日本人は声の大きい韓国の親北朝鮮勢力とその仲間である日本のW氏らの言い分をもっともだ、と受容する風潮も出てきている。

 韓国政府の当時の総理大臣らが半ば強制的に併合条約に調印させられたことと、条約そのものの有効無効を結びつけ、「韓国は日本の植民地ではなかった」「日本と一緒になったことなどなかった」というのが北朝鮮シンパの主張らしい。

 盧武鉉政権はそういう種類の人たちの政権だった。

 <彼女は田口八重子さんに関連し「彼女が残してきた幼い2人の子供に会いたいと涙ながらに語っていた姿を思いだします。成人になった息子の様子を日本のテレビで見ましたが大きな目がお母さんに似ています。会ってお母さんの話をしてあげられない私の現実が残念です」と記している。>

 記事は以上である。

 不況で李明博政権が苦しんでいるのを見て、この盧武鉉勢力が蠢き出したらしい。朝日新聞記事にあったのだが、朝日の記事はこの「民主勢力」に期待する論調だった。

 彼らは本当に「民主勢力」なのか? そう決めつけるには、もう少し検証が必要なのではないか。その意味で、黒田氏の記事は盧武鉉政権下で何が行われていたか、を実証的に伝える貴重な記録だと思う。

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