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2009年1月 6日 (火)

「覇権」生んだ「派遣」の法的弱さ+年越し派遣村引越し+舛添発言~日経1月5日朝刊、毎日6日[経済観測]、朝日6日まとめ記事

◆日経新聞のQ&Aでお勉強

 日経新聞1月5日朝刊[MONDAY NIKKEI 法務]の[リーガル3分間ゼミ]に<Q派遣契約を中途解除された…/A「登録型」の法的立場弱く>という記事が掲載されていた。派遣契約の仕組み図付きである。

 日経のお得意な[ポイント]がついており、①派遣契約は派遣会社と派遣先の企業との企業間の契約②残った期間の賃金について派遣元への請求権はある――とあった。これだけでは分からないだろうが、記事は案外丁寧で、分かりやすかったので、理解した部分だけまとめておこう。

 まず、非正規労働者には派遣労働者と期間労働者がある。

 期間労働者(期間工)は企業と直接「有期雇用契約」を結んでいるため、労働契約法に基づき、契約期間中の解雇は、やむを得ない理由がある場合でなければ解雇できない。解雇する場合も正規雇用と同様、労働基準法に基づき、少なくとも30日前までの予告が必要とされている。

 一方、派遣労働者は派遣元である派遣会社と「有期労働契約」を結んでいる。派遣会社は派遣先企業と結ぶ「労働者派遣契約」に基づき派遣する。だから、派遣労働者と派遣先企業とは実際には直接の雇用関係はない。

 契約打ち切りについて厚生労働省は「法律上は派遣会社と派遣先企業との民事契約の問題」という。厚労省は派遣先企業に対して①派遣会社への事前通知②派遣労働者の就業斡旋――を求めているが、小川英郎弁護士は「派遣会社にとって派遣先は顧客なので、派遣切りをされても抗議しにくい」と指摘している、という。

 派遣労働者は「常用型」と「登録型」に分かれる。

 「常用型」は派遣会社と継続的な雇用関係があり、派遣先企業から契約解除されても派遣会社との雇用関係は継続する。解雇についても期間工同様に保護されている。

 しかし、派遣労働者の大部分は「登録型」だ。この「登録型」は労働者が希望と合う業務があった場合に派遣先企業で働くため、派遣先が契約解除すると、雇用関係を打ち切る派遣会社もある、と書いている。小川弁護士は「法的な立場は極めて弱いが、残りの期間の賃金について派遣元への請求権はある」と指摘しているという。

 「登録型」であっても派遣元に実態がなく、派遣先が労働条件を決めている場合などについては小川弁護士は「派遣先と労働協約が成立していたとみなすべきケースもある」とするが、裁判で争って派遣先との雇用関係を認められるようなケースはまれだそうだ。

 「登録型」でも①同じ派遣会社で1年以上反復継続して雇用②所定労働時間が週20時間以上――の場合は雇用保険の対象となるので、失業給付の受給資格があるかどうか確認したほうがいい、というアドバイスで記事が終わっている。

◆毎日新聞[経済観測](三連星さん)の視点はしっかりしている

 毎日新聞1月6日朝刊[経済観測]は三連星さんが<派遣が生んだ覇権>でワープロで「ハケン」を変換したら「覇権」が出てきたが、今後は「派遣」が出てくるようになるだろう、という話から始めている。僕の場合、最初から「ハケン」は「派遣」だった気がするが、それはいつも「派遣」の言葉を打ち込んでいるからなのだろう。初期化されたATOKやMSの辞書では、「覇権」の使用頻度が「派遣」より多い、と想定していたのは当然だと思う。今が異常なのだから。コラムであり、少し斜めからものを見ているが、それだけに真実に迫れる部分もあるだろう。面白いフレーズを写しておく。

 <派遣とは何ぞや。正社員ではない。アルバイト、パートタイマー、ちょっと違う。集団で派遣されるのだ。>

 と大雑把に摑む。そして、

 <まず人材派遣会社なるものがある。常時、数百人、数千年の待機労働者を抱えている。企業から「500人ほしい」「700人は」と要望があれば必要人員を派遣する。現代版「口入れ稼業」と思えばよい。>

 そうだ。現代版の口入れ稼業である。

 <そんな頭数だけで工場が動くのかの疑問には、機械化、オートメ化の普及で全員が精鋭の熟練工である必要はない。数週間の研修でリッパに補助工員はつとまる。急膨張する業種ではほとんどと言っていいほど派遣の助けを借りている。>

 そういうことなのだろう。やはり産業技術の高度化が影響していた。大きく言えば「フォーディズム」の流れだろう。

 <企業にすればコスト、人件費引き下げの効果は大きい。仕事は一人前とは行かず八掛け、七掛けかもしれぬが、社宅、家族手当、健康保険、企業年金は節約できる。フリンジ・ベネフィットの厚さは日本企業の特徴だから半減近い。

 そういうことだ。会社人間という微温的な環境に安住しているのは給与の高さだけではない。この「フリンジ・ベネフィット」が大きい。社宅に住めば月3万円で10万円相当の立派な家に住める。差額の7万円を貯蓄しておけば、定年退職までにはマイホームを手に入れるのも夢ではない。家族手当も大きい。子どもの教育には是非とも必要な手当てだ。健康保険は本人が支払う保険料と同額を会社が支払い続けている。企業年金は退職金とは別費目での退職後給付。厚生年金満額支給までのつなぎとして安心材料であるが、企業にとっては大きな出費だ。こういう目に見えない利益を従業員は得ている。しかし、派遣社員はこれを受けられない。社員食堂から締め出されたケースもあるという。社員食堂は一般の店よりも安く提供しているが、その差額を会社が補助しているからだ。

 <そして社員のみの労働組合とは縁が無く、連合幹部の景気のよい掛け声も素通りだ。なにより、首切り宣告は誰だって苦手だが、派遣会社の電話一本ですむ。客観的に見て、こんなに経営者に都合よく労働者に不利な雇用システムはめずらしい

 「連合は問題だ」とナショナル・センター批判をしたいのだが、もう一度立ち止まって考えてみれば、そもそもの連合の成り立ちから言って、「持てる者」の集合体だったわけだから、彼らに期待してもだめだ、ということだと分かる。

 同盟も総評も政治と密着しながら自分たちの賃上げをはじめとする権利獲得闘争を繰り広げてきた歴史を持つ。

 そのナショナル・センター同士が一緒になったのが連合である。

 アルバイトやパートは相手にしてなかった。また、あの時代はそれで十分だった(かどうかは議論が分かれるとしても、社会的な弱者集団スポイルという印象は与えなかった)のに、労働者派遣法改正で製造業派遣が認められてから、非正規労働者が全労働者の3分の1を占めるようになって、その連合というナショナルセンターの「持てる者」の集合体という性格が露わになってしまった。09年度運動方針を見ても分かるように、社会的弱者である非正規雇用問題よりも自分たちの生活レベルアップのための賃上げが重要なのだ。

 電話一本で雇用調整ができるシステム。それは経営者に楽をさせているだけでなく、連合所属の組合員にも「何年連続労働分配率が下がっているのはけしからん。経済成長の果実をおれたちにもよこせ」という都合のいい要求に使われて、差別されている。

 労働分配率が落ちているのは非正規雇用を大幅に増やしたためで、基本的には正社員の給与は下がっていないのだ。非正規社員という透明人間が一生懸命働いた分け前を経営者と連合所属組合員が貪り食っているマンガが頭に浮かぶ。人間性のかけらも見えない。

 <便利なものは普及する。日本経済のバックボーンともいえる自動車もいち早く派遣の利用に乗り出した。天下のビッグスリーを窮地に追い込んだわが日本車の覇権は不況の寒風にさらされている派遣社員の汗と涙の産物である。ワープロの変換エラーもそこまで読み込んではいないか。>

 と、これが締めの言葉である。この斜めから見る視点、ジャーナリストには大切な視点なのだと改めて思う。

◆「年越し派遣村」の引越しと舛添「派遣法見直し」発言

 実は労働者派遣法の問題が1月5日、6日と新聞で取り上げられているのは年末年始を日比谷公園で過ごした失職派遣労働者の数のあまりの多さに多くの日本人が驚き、舛添厚労相が1月5日の閣議後の記者会見ですでに国会に提出している労働者派遣法改正案の修正に前向きな考えを明らかにしたことが大きい。

 この発言を朝日新聞は1月5日夕刊1面トップ<派遣法改正案/厚労相、修正前向き/製造業の規制視野>で大きく扱った。この日は年を越した派遣村が撤収され、最終的に残った約500人が4施設に分散される日だった。日比谷公園に設置された「年越し派遣村」だったが、「派遣切り」などで仕事と家を失った人が続々日比谷公園に集まり、パンク状態となり、2日には隣にある厚生労働省ビルの講堂に約250人が移動した。労働組合や市民団体などでつくる実行委員会の想定の倍近い約300人が集まり、用意したテントが足りなくなったものだ。村長の湯浅誠・NPO法人自立生活サポートセンターもやい事務局長は2日夜の緊急記者会見で行政の対応の遅さを批判した。

 そして、5日の引越しである。舛添厚労相がものを言ったのには伏線がある。5日は各省庁の仕事始めで、講堂を使用する日だったのだ。厚労省が晴れ着の職員らが大講堂に集い、華やかなムードで年の初めを祝う日に、その行事のために大講堂を追い出される非正規労働失業者たち、というコントラスト。これが、頭がいいだけでなく感受性の鋭い舛添氏の心に相当の負荷を与えたことは想像に難くない。講堂は2日夜、厚労省が実行委員会に開放し、約250人が3日間宿泊し、雇用危機を象徴する場所となっていたのだ。

 そこで、舛添厚労相は閣議後の記者会見で「個人的には製造業にまで派遣労働を適用するのはいかがかと思う。多くの人が賛同するなら、その方向で(労働者派遣法の見直しを)検討しないといけない。国際競争で勝ち抜くために、派遣労働にしわ寄せがいくのは、豊かな社会とは言えない」と語った(毎日新聞夕刊より)のだ。同じ頃になるのだろうか、失業者たちはチャーターされたバスに乗り、中央区の閉校になった小学校2カ所や練馬区にある都の体育館、大田区にある都の労働者向け一時宿泊施設の4カ所の仮の宿に移ったという。

◆朝日新聞1月6日朝刊のまとめ記事も分かりやすかった

 しかし、舛添氏の発言はやはり、と言うべきか思い付きに過ぎず、内閣の総意にはならなかった。官房長官も記者会見で即座に舛添案を否定した。

 この経緯と底流は朝日新聞1月6日朝刊政策面<派遣法改正に是非論/製造業の規制急浮上/経済界は否定的 弾力性を重視>と関連記事<04年解禁後急速に増加/数カ月契約の「登録型」多数>に詳しかった。

 記事には経済界の本音がどんどん出てくる。匿名のコメントも多かったが、発言した企業幹部は人非人のようなことを言ってテロに襲われるとでも思って名前を出さなかったのだろうか。

 ある大手電機メーカー役員が製造業派遣が禁止された場合の影響について「雇用調整を弾力的にできなくなれば、日本メーカーは中国や台湾のメーカーにますます生産を委託するようになる。景気が回復しても国内に雇用は戻らないだろう」と話している。

 別の大手電機メーカーは「正社員を増やす方向で議論が進めば人件費の増加につながる」と心配しているそうだ。

 桜井正光・経済同友会代表幹事は派遣会社や請負会社などの製造現場での活用について「経営に柔軟性を与え、長い目で見て成長につながる。(規制強化を含む雇用形態の抜本的な見直しは)やるべきではない」。

 岡村正・日本商工会議所会頭は「企業は(労働)需給調整が可能となり、働く側には働き方の多様化というメリットがある」。

 御手洗冨士夫・日本経団連会長は朝日新聞のインタビューで「ここまで急激に(景気が)深い淵に落とし込まれるとは予測しておらず、一歩遅れた」として請負会社の支援を検討する意向を示した、とある。

 経団連で今春闘での経営側指針をまとめた大橋洋治・日本経団連副会長は5日の連合の新年交歓会で「雇用の維持拡大に労使間で真摯な協議を行うのが重要だ」と歩み寄りの姿勢を示した、とあった。

 以上が経済界の本音と建前である。本音も建前も「単純労働の派遣業除外などとんでもない」という点では一致している。

 本音はそうしないと中国、韓国、台湾に負けるから、安く使える人員が必要だ、ということ。本音を国民の前でベラベラしゃべるのはオリックスの宮内義彦氏とザアールの女社長に任せているようでもある。

 「悪者になってほしい。その代わり、商売のほうはきちんと面倒を見るから」とでも言われているのかどうか知らないが、経団連のお偉方はもう少し冷静な言葉で、だけど、厳しいことを言っているのだ。

 データ集のような別稿も勉強になった。

 <1985年に成立した労働者派遣法では当初、秘書や通訳などの専門業務に限って派遣を認めた。工場での作業が危険なため、派遣が認められなかった製造業も04年には解禁され、大手製造業の工場で派遣が急速に増加した。>

 <小泉政権の規制緩和の流れの中、政府は失業率の改善策として柔軟な雇用形態を求める経済界の要望を受け入れるかたちで解禁した。>

 <2007年度の製造業への派遣労働者は46万人で、前年度の約2倍に増えている。製造現場で働く人の多くは、派遣会社に登録し、数カ月程度の細切れ契約で働く「登録型派遣」が多い。いつ仕事を失うか分からない不安定雇用だとして、労働組合などが規制を求め続けてきた。共産、社民、国民新の野党各党も登録型の原則禁止を主張している。しかし、政府が昨秋の臨時国会に提出した派遣法改正案では、登録型は「労使双方にニーズがある」と規制を見送り、日雇い派遣の禁止にとどめた。民主党も根本的な規制には踏み込まず、「2カ月以内の派遣禁止」にとどめた法改正案を準備していた。>

 というのが今までの流れだ。

 <だが、景気の後退に伴って自動車など製造業で「派遣切り」が急速に進行。厚労省のまとめでは、昨年10月から今年3月までに職を失う非正規社員8万5000人のうち製造業が96%を占めた。>

 そして、

 <「派遣切り」などで仕事と住まいを失った人たちに、年末年始の寝場所と食事を提供する東京・日比谷公園の「年越し派遣村」に約500人が集まり、世論の批判が急速に強まったことも、政治家の発言を後押しした。>

 <だが、製造業派遣を禁止すれば、メーカーは直接雇用や請負で対応せざるをえない。管理面で派遣より負担が大きくなるため、与党だけではなく、民主党内にも「規制を強めると雇用が減る可能性がある」と根強い慎重論がある。>

 <請負は派遣以上に法規制が不十分だとして、「働く側にもプラスにならない」と懸念する声もある。一方、もやいの湯浅誠事務局長は「職を失って苦しんでいる人は派遣だけではない」と請負や有期雇用を含む働き方全体を見直すべきだと指摘している。>

 と、以上なのだが、<労働者派遣法の規制緩和の動き>年表も勉強になる。

1985年 労働者派遣法制定

1986年 13業務を対象に派遣法施行

1996年 派遣対象を26業務に広げる

1999年 対象業務を原則自由化

2000年 正社員への道がある紹介予定派遣開始

2004年 上限1年で製造業派遣を解禁、制限期間を過ぎたとき派遣先企業に直接雇用の申し込み義務。

2007年 製造業派遣の制限期間を1年から3年に拡大

 である。

 「紹介予定派遣」などという分からない言葉も出てきた。

 この記事は相当に詳しくて参考になったのだが、視点が経済人と同じ目線になってしまっているのが気になる。若い記者は取材すれば取材対象に感情移入するからある程度はやむを得ないのだが、もう少し客観的に書いてほしかった。

 また、民主党の立場が微妙のようだが、こういう問題こそ小沢代表が乗り出してきて「製造業はダメだ」と一言言えばいいのではないか。先ほどから書いているように、日本経団連と連合は同じ鏡の裏表の関係にあるに過ぎない。その連合の代表者たちは自分たちの利益のパイを減らさないように、と経団連と同じことを言うのだろう。ここは剛腕、小沢代表の決断に待つしかない。決断してください、小沢さん。

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