民主が製造業派遣禁止法案提出へvs経済界首脳発言集~1月7日朝刊各紙から
昨日、小沢一郎氏の決断が待たれる、と書いたが、どうもすでに小沢一郎・民主党代表は労働者派遣法の製造業への派遣禁止を内容とする見直しを党幹部に指示していたらしい。詳しく読まなかったので分からなかったが、すでに朝日新聞が6日朝刊1面<製造業派遣 見直し焦点/規制案、民主検討へ/首相は慎重姿勢>で書いていた。見落とした。
朝日6日朝刊によると、
<民主党も製造業派遣規制に踏み込む。同党は労働組合を支持基盤とするだけに、これまでは「さらなる失業を招きかねない」と消極的だったが、予想を超える雇用情勢の悪化で方針転換を迫られた。共産、社民、国民新各党はかねて製造業派遣原則禁止を掲げており、小沢代表は4日、「4野党でしっかりまとめないといけない」と党幹部に指示。野党共闘を優先し、法改正の検討に入ることになった。>
<民主党政調幹部は「製造業で派遣切りが相次いでいることは事実。年度末の決算期に向けてさらに派遣が厳しい状況になるのは間違いない。そのままというわけにはいかない」と明言。派遣労働者への雇用保険適用などセーフティーネット強化策とあわせて検討する。菅直人代表代行は5日、「派遣村」の参加者らと国会内で開いた緊急集会で「まさに人災。大きな責任が野党を含む政治にある」と強調した。>
とあった。あまりに大きな記事なので、読み飛ばした。なぜ気づいたかと言えば、読売新聞1月7日朝刊政治面2段記事<製造業派遣禁止法案 民主提出へ>に目が行ったからだ。最初は勘違いして読売新聞の特ダネかと思ったが、それにしては扱いが小さいので疑問に思って昨日の新聞を読み返して、気づいた。
読売新聞の記事内容は朝日新聞と同じだった。小沢代表が指示した相手が菅直人代表代行だ、と特定していたのが新しいくいらいだ。
1月7日朝刊で目立ったのが経済3団体の新年パーティーとその後の3団体トップの共同記者会見を報じた各紙の記事だった。経済人も苦しんでいるらしい。各紙が報じた発言をピックアップしておこう。まずは朝日新聞1月7日朝刊経済面<経営者に聞く/製造業派遣見直し「性急」/給付金の効果疑問視>から。
桜井正光・経済同友会代表幹事は「製造業を派遣対象から排除するのは行き過ぎだ。(失業者らに対する)セーフティーネット(安全網)の充実など手直しを考えるのが重要だ」。
岡村正・日本商工会議所会頭は「うまく機能している時は、従業員は仕事の選択ができ、企業は繁閑期の労働調整ができた」と製造業派遣の意義を強調した。
御手洗冨士夫・日本経団連会長は「(製造業派遣は)働き方の多様化というニーズに対応してきた。将来の環境変化に対応するため政労使で法制の見直しをしていけばよい。ワークシェアリングも一つの選択肢で、そういう選択をする企業があってもおかしくない。時間外労働や所定労働時間を短くすることを検討することもありうる」と雇用の実情に応じた検討の必要性に言及した。
池田弘一・アサヒビール会長は「(見直し論は)性急すぎる。もし製造業派遣を規制すれば(企業はかえって人を雇わなくなり)失業率が高まる」。
槍田松瑩・三井物産社長は「バランスのとれた柔軟な雇用の仕組みがなければ、製造業は海外に逃避する」。
経営悪化を受けて大幅な人員削減に取り組んでいる中鉢良治・ソニー社長は「議論が内向きになりすぎている。日本の国際競争力の低下は避けなければならない」。
一方、これをきっかけに労働法制のあり方を見直すべきだ、という指摘もあるという。
鈴木敏文・セブン&アイ・ホールディングス会長は「正社員、非正社員という分け方が正しいのか、考える時期にきている」。
元産業再生機構専務で現在、経営共創基盤の冨山和彦代表取締役は「非正規社員に対する保護を強化する一方で正社員の保護をもっと緩めるべきではないか」と提案した、という。
読売新聞7日朝刊2面<ワークシェアで雇用維持/経団連「選択肢の一つ」>で、
<ワークシェアリングは、2002年の不況期に、政府と日本経団連、連合が進めることで合意した。その後、景気が持ち直したため、企業で導入する動きは広がらなかった経緯がある。>
として、別稿の[クリップ]で、
<ワークシェアリングとは幅広い年代層の社会参加を促すため、1980年代からオランダなど欧州を中心に普及した。日本の大手企業では日立製作所やシャープなども一時、導入したが、現在ではほとんどの大企業が制度を打ち切っている。>
とあった。読売新聞はまた、経済面<経団連ワークシェア言及/雇用改善 財界も模索/背景にリストラ批判>でこの財界新年会の発言をまとめていた。
面白いのは経済3団体トップの発言内容の重点の置き方が朝日新聞と違っていることだ。読売は以下のように取り上げた。
御手洗氏は記者会見で経団連、経済同友会、日商が協力して雇用問題に取り組む考えを示し「新たな雇用を生み出すため、イノベーション(事業革新)により高付加価値の製品を生み出したり、新しいサービスを作りたい」と述べ、岡村氏は「環境関連の分野がポイント」と指摘した、とあった。
産経新聞7日朝刊は政治面<製造業への派遣規制/政府・与党内に溝/野党は格好の攻撃材料に>とまとめていたが、内容は今まで出た発言の羅列だった。
東京新聞は7日の社説<製造業派遣/禁止に踏み切る時だ>で昨年、毎日新聞が社説で打ち出していた労働者派遣法の見直し論に同調していた。ここに統計の数字があったのでまたメモしておく。何度かメモした数字と同じ統計だ。
<派遣労働者は労働力調査によると07年で約133万人。厚労省調査では07年度に派遣労働者として働いた人は約384万人。そして製造業派遣は約50万人とされる。禁止する場合には受け皿づくりが必要だろう。>
という数字だ。133万人と384万人の関係は実数と延べ人数の違いか? 東京新聞社説の主張を写しておく。
<今国会では継続審議となっていた労働者派遣法改正案が審議される予定だ。日雇い派遣の原則禁止などを盛り込んだものだが、この際、与野党間で協議して法案の修正を検討すべきである。>
というものだ。そして、経済界の慎重姿勢について次のように述べている。
<経済同友会などは製造業派遣の禁止に対して国際競争力の維持が困難になると強く反対する構えだ。禁止すれば海外移転が進み失業者は増えるとも指摘する。大事なことは経営者の姿勢だ。ある大手電機首脳は「日本企業の強さは人材にある。経営者はぎりぎりまで雇用を守るべきだ」と安易な解雇を戒めている。>
経済界の言い分に対して、説得力のある反論になっていない。
毎日新聞7日朝刊3面[クローズアップ]<財界「我慢の年」/トップ年初の声>もパーティーの一言集。
下妻博・関西経済同友会会長は「減産で人が余ったからといってすぐ解雇というのは短兵急だ」と。
数土文夫・JFEホールディングス社長は「日本の法人税は世界に比べて高い。それに加え雇用も維持しろ、非正規社員制度を廃止しろと言われたら、(他国の企業と)同じ土俵で相撲はとれない」と語った、という。随分と本音をしゃべっているなぁ、という感じだ。
流通業界の意見はどうも違う。さきほどのセブンイレブンではなく、今度は新浪剛史・ローソン社長。「われわれは人が集まらなくて大変な状況にある。産業間のアンバランスが課題だ。自社の採用は積極的にしていく」と言っている。
そういうことなのだろう。輸出産業、つまり製造業は今後も減産を繰り返し、縮小する傾向にある。しかし、内需は振興すべきだということで、特に流通業と農業は政府が力を入れて新興するだろう。その雇用の調整が今後、政治、経済界、労働界が力を合わせてやらねばならない仕事なのではなかろうか。
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