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2009年1月 9日 (金)

製造業派遣、朝日新聞は見直し論vs読売は苦しんでいる~1月9日の社説から

◆朝日新聞社説は「製造業派遣、規制の方向で再検討を」

 朝日新聞は1月9日の1本社説<派遣切り拡大の衝撃――雇用を立て直す契機に>で製造業派遣について「規制する方向で再検討」すべきだ、とのスタンスを打ち出した。毎日新聞が昨年いち早く打ち出し、東京新聞が次いで主張していたが、これで毎日、東京、朝日3紙の主張が基本線でそろった形になった。

 社説は「にわかに焦点となってきたのが、製造業への派遣労働を巡る問題」として「厚生労働省は3月末までに、少なくとも8万5千人の非正社員が職を失うとみているが、その3分の2が製造業で働く派遣労働者だ。工場の稼働は景気変動の影響を受けやすい。最も弱い立場の人々を世界不況が直撃した」との現状を説明。

 「当初は通訳のような専門的な仕事に限られていた派遣という働き方が一気に広がったのは90年代後半。国際競争の荒波とバブル崩壊後の不況が重なった時期に、企業は必要な時だけ雇える働き手をほしがった。『多様な働き方』の名のもとに規制は緩められた。その流れを加速したのが小泉政権である。そして5年前に製造業への派遣が解禁された」と派遣労働法の歴史を振り返った。

 朝日新聞が書くように「解禁が審議された当時は、失業率が戦後最悪の水準」だった。社説の「厚生労働相だった坂口力氏は『とにかくどんな形でもいいから働く場をという考えだった。景気が回復すれば正社員に戻ると期待していた』と後に語っている」という指摘は「へぇー」である。自公連立政権の大臣としてこの措置を決定した責任者の発言である。よく調べているなぁ。

 しかし、「失業率はその後、景気回復にも伴いかなり改善した。ただ、坂口氏の言葉とは逆に派遣で働く人々はその後も急速に増え続け、正社員からの置き換えが進んでしまった。社員を大事にする日本企業の価値観も、利益追求や株主重視という米国型経営に引っ張られて姿を変えた。一方で、肝心な働き手を守るしくみの整備は置き去りにされ、その結果生じた社会のひずみが一気に広がっている」と景気回復にもかかわらず、セーフティーネット問題が置き去りにされたことを重視する。

 そこで<■製造業派遣の再検討を>の見出しが出てくる。

 与野党、経済界の主張をさらりと紹介しながら「目の前の現実を見れば、立場の弱い派遣という働き方をここまで広げたのは、やはり行き過ぎだったと言わざるをえない」、「製造業の現場で派遣として働く50万人近い人々に失職の危機が拡大しないよう配慮しつつ、製造業派遣について規制する方向で、最良の策について与野党で検討を始めるべきだろう」と結論を出している。

 そして「解雇や派遣切りが、今ほど深刻な事態につながった原因は、非正社員を増やして雇用の流動化を進めながら、失業しても安心して次の職探しが出来るようなセーフティーネット(安全網)の整備を怠ってきたことだ。……期間工なども含め非正社員として働く人々は、一般的に失業した時の安全網が正社員よりもろい。失業手当や職業訓練を受けられる雇用保険は、これまで1年以上雇われる見込みがなければ加入できない仕組みだった。政府は、この要件を半年に短縮する方針を打ち出したが、それでも2~3カ月の契約を繰り返す細切れ派遣の人には適用されない」として「安全網からこぼれる人をなくすには、まず非正社員を原則としてすべて雇用保険に入れることだ」と要望している。
 「働き方を考え直し、雇用の仕組みをよりよいものに作り直すことは、日本経済を強くすることにもつながる。そんな視点を忘れたくない」という結びの言葉は経済界へのメッセージなのだろう。

 ここまで踏み込んだ主張をまとめるには時間がかかったのだろうが、こういう結論は正しいと思う。

 経済成長は戦後日本の国家目標だったが、いまや輸出産業をエンジンとした成長は期待できない時代になったのだ。成長を期待できる新規産業を育成しなければならないし、それには国家資源の集中が必要だ。

 戦後の傾斜生産方式は限りある国家資源を鉄鋼産業と石炭産業に集中させ、国家として成長の基盤を作った。通産省を創設し、国家ぐるみで日本製品を世界に売った。軽工業製品主体から重工業製品に、そして、自動車や精密電機のような高付加価値製品にと輸出産業の主流が移り変わった。

 いまや、傾斜生産方式を新規成長産業で行わなければならない時代になった。朝日社説も書いているように環境関連の産業などが対象である。太陽電池やエコカーなどもそうだし、自給率アップを考えた時には日本農業を抜本的に転換する新農業政策が求められているはずだ。

◆読売新聞は製造業派遣の取り扱いで苦しんでいるようだ

 一方の雄、読売新聞は論説委員会の議論が空転しているのかどうか、まだはっきりした主張を打ち出すには至っていない。1月9日社説も<衆院予算委 民主党は積極的に対案を示せ>という直接関係ないテーマの中で少しだけ触れている。

 「製造業への派遣規制は、やり方によっては、国際競争力や雇用確保にも影響する。経済界には、1人当たりの労働時間を縮めて仕事を分け合うワークシェアリングを検討する動きも出ている。日本の雇用体系をどうしていくのか。新たな産業、新たな雇用をどう創出するのか。中長期的観点からも論じ合うべきだ」という部分である。

 製造業派遣規制に否定的とも取れるが「やり方によっては」など逃げており、今後、派遣規制に舵を切る含みもありそうだ。どっちにも行けるスタンスを保っており、その苦渋が透けて見えるようだ。

◆ワークシェアリングを怖がる連合

 両紙ともワークシェアリングに触れているのだが、このワークシェアリングが「言うは易く行うは難し」なことを読売新聞などの経済面が書いていた。

 読売新聞1月9日朝刊経済面<「ワークシェア」どうする?/ゆらぐ雇用 割れる財界/経団連・日商トップに溝>である。

 御手洗冨士夫・日本経団連会長のワークシェアリング論について日本商工会議所の岡村正会頭は慎重姿勢を示した、というのだ。8日の記者会見で「検討には値するが議論が未熟で、(導入は)早計に過ぎる。デフレ不況下の日本でワークシェアリングが定着しなかった理由は多くの企業が採用している年功序列型な賃金体系が賃下げを伴うワークシェアリングにはなじまなかったためだ」と語ったという。

 <発言の背景には日商を組織する中小企業の多くで大企業以上に仕事量の減少が加速しており、ワークシェアリングの導入は現実的ではないという事情もあるとみられる。>

 と分析していた。面白かったのが連合のアタフタ、オタオタぶりである。高木会長は「日本経団連と協議の場を持てないか、と議論をしている」と語ったものの、8日の労使フォーラムで団野久茂副事務局長が記者団に対して「議論を否定するわけではないが、本当にできるか慎重に考えないといけない」と語ったというのだ。記事の次の解説が正しいと思う。

 <連合は今春闘でベア要求を掲げるが、ワークシェアリングは賃下げにつながるため、経済界からは「同時に要求するのは矛盾する」(財界関係者)という指摘もある。連合としては、経団連と踏み込んだ協議を行うのは難しいのが実情だ。>

◆内部留保を人件費にあてられないワケ

 参考になったのが日経新聞1月9日朝刊1面ワッペン[雇用]で西條都夫編集委員が<雇用と競争力両立探れ>だった。

 <日本の雇用の転機は01年度だ。松下電器産業(現パナソニック)は創業以来の「人減らしはしない」という慣行に決別し、希望退職に踏み切った。トヨタもベアゼロを決断。政治の世界では小泉政権が誕生、派遣労働の拡大など規制緩和を推進した。グローバル競争が激化する中、日本企業の構造問題といわれた「高コスト体質」「人件費の固定化」を是正する動きが本格化したのだ。>

 という<01年転換期説>はそれなりに説得力を持つ。今回の雇用ショックはその時以来の激震だ、というのだ。

 <前回は人件費の高い中高年が中心だったのに対し、今回は主に若年層という違いはあるが、過去の調整局面と比べても情勢は甘くない。>

 <長らく雇用の受け皿だった建設業は公共投資減少で疲弊した。好調だった製造業のつまずきで、雇用の四番打者が不在の状況だ。かといって業績の悪化している企業が雇用を抱え続けることもできない。円高で収益が圧迫され、減産を迫られる中での過剰雇用は企業の体力を奪い取る。それでなくても米国発の金融危機で金融市場は凍り付いている。>

 と情勢分析は進む。そして、「企業はもうけて、労働分配率が低すぎる」という批判に答えるつもりだろうか、次のように書いている。

 <内部留保を人件費に回せ」という議論もあるが、企業が雇用調整をためらえば社債の格下げのリスクなどに直面、資金繰りが逼迫する恐れすらある。ソニーのような巨大企業ですら例外ではない。>

 と書いている。そして、製造業派遣規制への反対論とその根拠を述べて、ワークシェアリングと当面の失職者対策を急げと書いている。ここでは2兆円バラマキを原資に仕事のない人の生活補助や職業訓練の費用に充ててはどうか、と提言している。

◆産経新聞はワークシェアリング論で勝負か

 面白かったのは製造業派遣の規制論に反対した産経新聞が1月9日朝刊1面トップのワッペン[雇用激震]で<「賃上げ」「非正規社員」置き去り/春闘 焦点はワークシェア>で今後、ワークシェア論を強力に打ち出しそうな雰囲気を出していたこと。昨日も書いたが、政治的にはワークシェア論は連合が困り、連合の支援を受けている民主党が困る、という構図になっている。

 産経新聞は製造業派遣問題についてはこの日の経済面トップ<派遣規制緩和見直し浮上/雇用不安定化も機会増/経営に柔軟性/欠かせぬ「功罪」論議>で社説の主張を側面援護していた。

 各紙の主張がこれだけ割れるのは久しぶりで、展開が面白くなってきた。

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コメント

厚生労働省による史上最大の“派遣切り”

◆厚生労働省の横暴か暴挙か・・

 厚生労働省が派遣会社の許可制度見直しを決めました(3/26)。労働者派遣法改正案が未成立の現段階で、何の議論も無しに人材派遣会社を廃業へ追い込む暴挙というほかありません。この制度見直しが今秋から実施されたなら、派遣労働者は雇用を奪取され、今後2年以内に約200万人以上の「派遣切り」が現実のものとなります。そして、人材派遣会社のほぼ90%は廃業に追いやられるという非常事態を招くことになるのです。

◆人材派遣会社を潰すつもりか

◆廃業に追い込まれる人材派遣会社

◆人事総務部ブログ&リンク集
 http://www.xn--3kq4dp1l5y0dq7t.jp/

投稿: 人事総務部-ブログ&リンク集- | 2009年5月23日 (土) 14時20分

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