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2009年1月 7日 (水)

90歳のヘルムート・シュミット元西独首相の予言「日本の対中経済優位はあと20年だけ」~読売新聞1月7日朝刊から

 読売新聞1月7日朝刊1面~2面続き物[大波乱に立ち向かう⑤]でヘルムート・シュミット元西ドイツ首相が登場していたので驚いた。「まだ生きていたのか」の驚きである。人物紹介を読むと、独ハンブルク出身。大恐慌時に少年時代を過ごし、第2次世界大戦で軍務に就く。戦後、社会民主党入党、ハンブルク大卒。国防相、財務相を経て1974~82年首相。90歳とあった。やっぱり昔々の人だった。しかし、言っていることはボケていない。

 写真を見ると、ハンブルクの自分の事務所の執務机の前でインタビューを受けているようで、左手の指にはタバコを持っている。ヘビースモーカーのようだ。タバコを吸っても90歳までしっかり元気に生きられる見本のような人だ。

 世界金融危機への対処を主に聞いているので、そういう話題が多いのだが、面白かったのは彼の「日本論」だった。主な発言を書いておこう。聞き手は欧州総局長の森千春記者だ。

▽世界経済・政治の重心は明らかに北米から東アジアあるいは太平洋地域に移りつつある。特に中国、インドの重要性が増し、米国の重みが減少してきた。

▽中国は、若い層の教育に多大な努力を注いでいる。欧米で大学教育を受けた中国人が帰国するのは、自国の経済の未来を信じているからだ。内政上で不測の事態がなければ、中国は今後40~50年で、テクノロジー面では、最先端に到達すると思う。

▽私はこれまで21世紀に世界的影響力を持つ大国の顔触れを「米国、中国、ロシア」と予測してきた。ロシアを挙げるのは、バルト海からベーリング海峡まで延びる世界最大の国土と地下資源を有し、強大な軍事力を保有しているからだ。

▽欧州連合(EU)は少なくとも21世紀前半にはこうした世界的大国の一角を占めることはない。

民主主義、人権といったいわゆる西側の価値観は、もっぱら西側諸国のもので、アジアでは通用してこなかった。日本は例外だ。今後も、西側の価値観は、アジアでは大きな役割を果たさないだろう。中国には、4000年の文化があり、儒教や道教が受け継がれてきた。21世紀の世界で異なる価値観が存在することは、事実として受け入れなくてはならない。

▽西側の人々は、アジアやイスラム圏の人と対話するためには、自分たちの価値観の源泉を知っていなければならない。西側の価値観の由来をキリスト教に求めがちだが、キリスト教の教えには民主主義も法治国家も人権も出てこない。こうした価値観は「啓蒙主義」に源泉があり、200~300年の間に人々の意識に定着した。その結果、欧州諸国は19世紀末から20世紀にかけて「すべての人の福祉」を目指す経済のあり方を志向した。

▽日本の未来を考えるうえで、ドイツと比較したい。両国はともに第2次世界大戦後の半世紀で、当初想像もできなかった経済的成功をおさめた。大きな相違点はドイツがEUの中に根付いているのに対して、日本は近隣諸国から孤立していることだ。政治家をはじめとする日本の指導者たちには隣人と友好的な関係を打ち立てようとする努力が不足していたと思う。ドイツは戦後、近隣諸国との間である程度友好的な関係を構築できた点で、日本より幸福だ。

中国と比較した場合の日本の経済的先進性は、20年もすれば意味がなくなるだろう。日本は自国の経済的優位にあまりにも長く依存してきたのではないか。その優位は、消滅しつつある。

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