ロシアの行動が最近、不可解である。「最近だけじゃない」と突っ込みを入れられそうだが、最近、「おかしいな」「これは何だろう」と思ったことだけでも列挙してみよう。
▽メドベージェフ政権は何を考えているのか?
▽ロシアは日本をどう見ているのか?
▽ロシアは原油で儲けたというが、金持なのか貧乏なのか?
▽共産主義ではなくなった、とは言うが、国民は自由なのか?
▽国民に日本のような多様な情報は届いているのか、マスメディアに報道の自由はあるのか?
▽グルジア紛争の真の原因は何だったのか?
▽ウクライナとの対立の真相は何か?
▽米ロ戦略核兵器削減交渉はどうなるの?、
▽冷戦時にあれだけこだわった米ロ核バランス、今は諦めているのか、いまだに気にして追求しているのか?
▽共産主義が消えて人々は何を精神的支えに生きているのか?ロシア正教なのか、土着の宗教的なものが他にあるのか?
▽ロシア正教のトップ交代は何を意味しているのか?
そして、この辺からが生臭くなるのだが、
▽日本海での日本漁船拿捕の狙いは何か?
そして、
▽北方領土の人道支援問題の真相は何か?
思いつくまま書いただけなのに、もうこれだけの疑問点が出てくる。
あのロシアである。ロシア……不思議な国、愛憎半ばするというよりか、憎しみの対象となることの多い国。司馬遼太郎も注目した国。
戦前、大正ロマンティシズムの空気に育った真面目で律義な日本の青年が理想に燃えて、コミンテルンに忠誠を誓ってソ連共産党の世界共産主義革命に身を投じた。
彼らはソ連が日本を負かすことが正義だ、と思い込んでしまった。そして、日本の軍事秘密、国策をスターリンの子分たちに漏らした。スパイになっていたのだ。ソ連軍は日本の中枢の情報を知り、随分前から満州の軍が張り子の虎になっていたことを知っていたらしい。
ソ連共産党が勝てば理想の世界が来る、と思い込んでいた裏切り者たちのために、満州開拓民たちは虐殺され、男はシベリアに抑留され、女は強姦された。
コミンテルンに内通した人々は赤い学者、マスコミ人、政治家だけでなく、軍部の中枢部にもいたという。治安維持法で左翼が弾圧されると、コミンテルンの日本支部に属する彼らは極左なのに極右になり済まし、軍に入り込んだという。そして、出世して手に入る軍事秘密が多くなると、彼らがをソ連に流し続けた情報は高度になった。
そういうスパイは米国にもいたから、原爆の秘密はスターリンに届けられていたそうだ。
嘘は大きく付いたほうがばれにくい。コミンテルン、世界共産革命などというとんでもない嘘(できっこない理想論)をスターリンは全世界相手についた。ロシア革命に心酔していた世界の知識人はこの嘘に飛びついた。マルクスが予言したことが現実になった、レーニンに続こう、と。不満分子たちだけではなく、各国のエリート層の中にも「伝染病患者」が発生した。
ロシアへの愛憎の感情について書こうとしたら、こんな話になった。
最初の話題に戻ろう。
最近、JBpressでロシアの謎について幾分か解答を与えてくれるような論文を三つ見つけた。その論文を読みながら、ロシアの「なぜ?」を検討してみようと思う。
まずは、コンスタンチン・サルキソフ氏の連載コラム[ 日ロ新時代の作り方 ]に2月6日アップされた「国後島をめぐる『小さな混乱』~さらに大きな問題としないために」である。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/538
コンスタンチン・サルキソフ氏は1942年、旧ソ連邦アルメニア共和国生まれ。66年にサンクトペテルブルグ国立大学東洋学部日本学科を卒業。主な共著書に『日・米・ロ新時代へのシナリオ』『日本の領土問題』などがある。現在、山梨学院大学大学院教授。法政大学講師。ロシア科学アカデミー東洋学研究所(ロシア)特別顧問・所長を務めているそうだ。
このコラム連載の狙いは「日本人から見て、極めて分かりにくい国、ロシア。日ロの新しい関係の構築は、ロシアの価値観を理解することから始まる。日ロ外交、北方領土問題などに精通した筆者が、来るべき日ロ新時代に向けて、ロシアの思惑や意思決定プロセスを解説する」と書いてあった。
以下、コラムの内容を紹介する。
1月24日にメドベージェフ・ロシア大統領が麻生太郎首相に電話し、サハリン2(サハリン州沖の石油・ガス開発プロジェクト)の天然ガス輸出開始記念式典に首相を招待した。橋本・エリツィンの『ネクタイなし』会談を除けば、今までには例のないロシアからの働きかけだった。
<また、1月30日と31日には、モスクワで日露原子力協定締結交渉が行われた。原子力の平和的利用を共同で進める協定の締結に向けて、内容を討議する会談である。 2007年2月にスタートして、今回は8回目。協定に至るのは決して簡単なことではないが、お互いの関心が高いので着実に前進していると言える。>
<さらにほとんど同じ時期、東京では1月28日と29日に「水産物の密漁・密輸出対策に関する第3回日露関係省庁会議」が行われた。日本の外務省、財務省、経産省、水産庁、海上保安庁、そしてロシアの連邦漁業庁、連邦保安庁、外務省、税関などの関係者が参加していた。1回目は2007年9月に東京で、2回目は昨年6月にモスクワで開催された。水産物の密漁・密輸出対策を検討する会議だ。ロシアの関係筋によれば、両国の暴力団絡みの闇漁業による水揚げは金額にして20億㌦にも達するという。>
事務レベルで着々進んでいる話だ。まあ、普通の話だ。特に「友好度が深まった証拠」とは言えない話ではあるが、仲が悪いとも言えない。普通の二国間関係だ。ところが、1月末に国後島に人道支援物資を陸揚げしようとしたところ、「カードの提示が必要」と言われて引き揚げる事件が起きた。
<1月27日、北方領土に人道支援物資を届けようとした船が国後島に到着した。乗っていたのは日本の民間団体メンバーと外務省関係者だ。しかし、到着したところ、ロシア当局から出入国カードの記入を求められた。日本側は記入を拒否し、結局、荷物を降ろさずに29日の朝早く、国後島沖から根室に引き返した。>
日本政府は「理解できない」と反発し、「ロシアの対応は今までの両国の合意に反し、筋が通らない」とロシアを非難した。
<日本外務省によれば、日ロ双方の立場を損なわないように、身分証明書および挿入紙(訪問する団員の情報を記載したもの)があれば四島に入れるという口上書が1998年に交わされている。ロシアの要求はその文書を反故にするものだというのが日本側の主張である。>
ロシア外務省は28日、次のような談話を出した。
<「出入国カードの記入を要求したことに政治的な背景は一切ない。ロシア全土で外国人登録するごくささやかな必要性に起因するものであり、たとえカードに記入したとしても、日本の方針・立場が変化したものとは受け止めない。人道支援はありがたく受け止めているが、その支援を政治問題化すべきではない」。>
サルキソフ氏は経緯を次のようの整理する。
①日本側がカードに記入すれば四島はロシアの領土だと認めることになってしまう(=Webサイトで出入国カードを見ると、明らかに上と下の部分に「ロシア連邦へ入国と出国」と書かれている)。
②ロシアは 「この手続きは、ロシアの主権を認めない日本の立場を害するものではない」と言うが、日本側は納得しない。
③日本人の「ビザなし訪問」はフルシチョフの雪解けの時代、1964年に開始した。「北方墓参」(旧島民、その家族による墓参)と呼ばれ、「身分証明書による入域」という特別方式が認められた。
④1976年、ベレンコ中尉亡命事件(ミグ25事件)発生。ソ連政府は日本の「非友好的な」立場を批判、北方領土訪問に旅券とビザの取得を要求した。このため日本は訪問を1985年まで完全に中断した。
⑤ゴルバチョフ時代の1986年7月、ビザなしで身分証明書だけで北方四島に入域する枠組みができ、再開した。
(コンスタンチン・サルキソフ氏は「ロシアに悪意があるとは信じたくない。むしろ、両国間の問題解決のメカニズムに原因があると思う」といい、次のように分析する。)
⑥1991年に日ソ外相間で四島交流をめぐる往復書簡が交わされた。その書簡によって、問題が起きたら両国で協議し、お互いの立場を害さないように解決することが規定された。この新枠組みは日ロ関係の大事なパイプとなった。
⑦今回、ロシア側は1月23日に「手続きが変わり出入国カードへの記入が必要になった」と日本側に通告していた。日本側は出入国カードの内容を分かっていたのに、26日に支援物資と代表団を乗せた船を出港させた。その結果、船が立ち往生した。
サルキソフ氏は「事前に話し合いがされていたらトラブルは起きなかったかもしれない」と言う。
そして、「領土問題が未解決の状態であることが、いかに不健全であるかをよく表している。コミュニケーションが不足している場合は特にトラブルにつながりやすい」と分析し、「個別の問題を解決する努力はもちろん必要だが、今回のような出来事を起こさないために、両国の外務省に特別な組織を設置したほうがいい」と提案している。
そんなことだったのか? でも、ロシアの法律はなぜ突然改定されたのだろうか? その辺も知りたかった。
◆ 【反西側主義で結束するロシア】2009年2月4日付 英フィナンシャル・タイムズ紙(Financial Times)
これもJBpessに2月6日アップされた記事だ。
グルジアやウクライナとの紛争で西側諸国は強いロシアの復活と新冷戦を心配してるけれども、世界金融危機とコモディティー(商品)価格急落がロシアの経済を揺るがし、政治制度を緊張させたことで、西側諸国は近い将来再び、ロシアの強さではなく弱さを心配するようになるかもしれない、という趣旨の前文である。
今回の危機は①公正な国家機関創設の失敗②合法的なチェック・アンド・バランスの排除③経済的な財の供給をクレムリンに依存する④潜在的に不安定な社会契約――などプーチン首相のプロジェクトの設計上の欠陥を一気に露呈した、という。
<西側はロシアを「失った」ことを認め、なぜそうなったのかを理解するよう努めなければならない。ロシアが本能的に親欧米派のパートナーに変わるという1990年代初めの期待はすっかり消滅した。>
とは何だろうか、と思ったら、次のようなことが書いてあった。
<いくつかの世論調査は、年齢、地域、所得に関係なく、今や反西側的な感情がロシア社会に深く根差していることを示している。多くのイスラム世界のように、ロシアは西側に屈辱を与えられたと感じているのだ。ロシアは西側とは違う別の運命を追求する決意を固めている。>
西欧近代文明と他の文明との衝突。冷戦というベールが覆いつくしていた時は、そんなことを考えなくともよかった。しかし、今は文明の衝突と意識されてしまった。イスラムもロシアも「西側」を許さないだろう。
<西側諸国自らが、ロシアの反欧米主義に寄与してきたのは間違いない。1990年代に、欧米は、ロシア経済を変貌させるための十分な資金援助をしなかった。その一方で西側とロシアの関係をうまく取り持つという仕事を不当に任された国際通貨基金(IMF)は、1990年代のロシア経済の苦境の一端を担ったとされた。ソ連経済の崩壊や安いコモディティー価格を考えると、避けられなかった苦境だったとしても。>
<「我々は2度にわたり西側の理論を取り入れ、それをロシアに適用しようとした。マルクス主義と自由主義だ。我々は今、我々自身の考えと価値観を頼りにしなければならない」とロシア議会のアンドレイ・クリモフ議員は言う。>
<北大西洋条約機構(NATO)が(以前ミハイル・ゴルバチョフ元大統領に与えた確約に反して)旧ワルシャワ条約国を取り込んだこと、西側の連合軍による1999年のセルビア爆撃、その後のコソボ独立の承認も、ロシアの反感を買った。さらに悪いことに、西側諸国はそんなこと一切気にしていない、という印象を与えた。>
なるほど、西欧のロシア無視の時代が続いたのか。大国ロシアの知識人たちにとっては腹が立ったことだろう。
<さらにプーチン氏は8年間の大統領時代に、自らに有利になるように意図的に反西側感情をかき立てた。>
江沢民の反日教育と同じじゃないか。江沢民だけじゃあなかったんだ。
<欧米の民主主義の価値観を拒絶することは、ロシア指導部が透明性や説明責任を一切無視できるということを意味した。クレムリンは、もっぱら欧米とは正反対のロシア特有のアイデンティティーを規定しようとした。思想家らは独裁型の「主権民主主義」を作り出した。クレムリンの批判派が言うように、電気椅子が椅子と違うように、独裁型の主権民主主義が民主主義と同じでないとしても――。>
この辺が知りたかったのだ。日本から見ていると見えない部分だ。国民の屈辱感+プーチンの生き残り戦略が相乗作用を起こしたのか。というか、多文化共生主義とひとくくりにされても、内容をよく確かめないと、このような指導者が『ためにする』方策で人々に押し付けた風習と民族古来の風習はきちんと分けて考えなければならない。
<だが、ロシアが反西側主義に傾いている3番目の理由は恐らくもっと偶発的なもので、原油価格の高騰と急激な経済成長によって間接的にもたらされた政治的帰結だった。>
<ニュー・エコノミック・スクール校長で、欧米に対するロシアの態度に関する論文の共著者であるセルゲイ・グリエフ氏は「ゴルバチョフやエリツィンは西側と一体化して失敗したという見方がある。プーチンは反西側で、うまくいった。反西側でいる方が、いい生活ができるように思えるのだ。だが、反西側だからうまくいったと考えるのは間違いだ」として、原因と相関関係が混同されてきたと指摘する。>
「ロシア人は、現在の危機からどのような教訓を学ぶのか」と問う。、
<彼らは、欧米がロシアに「病気をうつした」と結論づけ、孤立主義に逃げ込むのだろうか。それともロシアの運命は世界経済と密接不可分に結びついていることを理解し、もっと全面的に関与していくのだろうか。意外かもしれないが、ロシア指導部の考えは後者であることを示す兆候がある。>
として、ロシアは孤立主義に陥らず、世界に関与するとの見通しを明らかにする。
<グルジアに対するロシアの高圧的な対応は、外国人投資家を警戒させ、ルーブルの下落と外貨準備の激減を招く資本流出を加速させた。欧州へのガス供給を一時的に停止したことで(ロシア政府は今なおウクライナ政府のせいにしているが)、ロシアはドイツやブルガリアといった伝統的な同盟国さえをも遠ざけた。>
この辺の見方だ。日本のメディアに欠けているのは。何か、日本のメディアは誰かに遠慮しながら恐る恐る国際記事を書いている感じもするのだ。
<恐らくこれがロシアの中に、自国の脆さに対する新たな現実主義を引き起こしたのではないだろうか。そしてこれが西側諸国とのより前向きな対話につながる可能性がある。イゴール・ガイダル元首相代行によると、「外貨準備が少なければ少ないほど、意思決定プロセスの質が上がる」のだ。>
面白い見方、というか比喩である。面白い。
<米国の新政権はどこかの時点で、ミサイル防衛やNATO拡大といった安全保障問題についてロシア政府を対話に引き込むだろう。だがそれまでの間、欧州連合(EU)が経済的、政治的つながりの再構築を先導しているのは正しい。>
これはフィナンシャル・タイムズがEUの新聞として地元の人々に呼びかけている内容だろう。
<EUはロシアとグルジアの関係改善を仲介した。またロシア政府とウクライナ政府との間では、天然ガス問題の調停を手助けした。ロシアのガスの最大の顧客であり、最大の貿易相手国として、EUは関与する以外に選択肢はないのである。>
それにしても、EUの活躍は目覚ましい。極東に比べてみれば、日本の経団連にしても、同友会にしてもシンクタンクにしても、朝鮮半島、インドシナ、ASEANなどの政治・経済関係のブレイクスルーに寄与したということを聞いたことがない。
<欧州委員会のジョゼ・マヌエル・バローゾ委員長は今週、使節団を引き連れてモスクワに向かい、エネルギー、貿易、投資について話し合う。>
ほらね、どんどんとやっている。
<多くのロシア人は、EUを理解できない得体の知れない動物だと軽蔑している(そう思っているのはロシア人だけではない)。彼らからすると、EUはあまりにも政治的で、動きが鈍く、プロセスに取りつかれているように見えるのだ。しかし、そのプロセスにも利点はある。それはEU加盟27カ国の間で活発で透明な議論をもたらしており、それが最終的に共通のアプローチにつながっている。英国とポーランドとバルト諸国は、EUはエネルギー供給源を多様化しなければならないと主張している。ドイツとフランスとイタリアは、ロシアを孤立させることは愚かなことだと提言している。>
そういうことか。だからEUが面白いのか。国の外交がEUの中で行われている。
<ロシアの指導者たちは、多極的な世界を望んでいると言う。EUは、頭にくるほどの――だがしばしば有益な――複雑さの中で、それを具体化しているのである。(By John Thornhill© The Financial Times Limited 2009. All Rights Reserved.)>
そういうことになるだろうなあ。なるほど、ロシアとEUかぁ。面白かった。
JBpressにはロンドン・エコノミストの論文も掲載されていた。こちらも「ロシアとEU]だが、エネルギーの話である。
◆「EUとロシア:エネルギー紛争の行方」英エコノミスト誌 2009年1月17日号[ The Economist ]1月20日(Tue) The Economist
◎ウクライナを経由する天然ガスパイプライン〔AFPBB News〕
1月1日から続いているウクライナとロシアの間のガスを巡る紛争。ロシアのウラジーミル・プーチン首相は、ウクライナの首脳陣を「犯罪者」と呼び、欧州向けのガスを盗んでいると非難。ウクライナのビクトル・ユーシェンコ大統領は、同国を経由して欧州諸国に向かうガスの供給を止めたロシアが悪いと主張し、ロシアの天然ガスがウクライナに運ばれる際の拠り所となっている不透明な協定を「胡散臭い」と表現した、というのが論文の入り口だ。
<しかし今、欧州連合(EU)加盟国の中で最も影響を受けているブルガリアでさえ、国営ガス独占企業のトップ、ディミタール・ゴゴフ氏が、ガスが供給されない理由が分からないと語っている。ゴゴフ氏は1月13日に「もはや誰を信じていいのか分からない」と心境を吐露し、「ロシアがこう言ったかと思うと、ウクライナが別のことを言う」と述べた。>
ロシア政府系ガス企業ガスプロムとウクライナの分裂した政治指導部が対立する紛争には「オリガルヒ」と呼ばれるロシアの新興財閥まで複数絡んでいるので、実際に何が起きているのか、誰にも分からないという。「EUはどちらの肩を持つことも避けようと必死だ」とも書いてあった。
◎天然ガスの供給が止まり、ブルガリアでは多くの人がまきを燃やして暖をとることに〔AFPBB News〕
<ロシアには、EU圏内の一般消費者に影響が及ばないような方法で自らの主張を通す機会が何度もあったのに、ロシアはそれを無視し、欧州住民の暮らしよりも2国間の紛争を優先させた。紛争が口火を切った当初、ロシアはガスの供給を減らすだけにとどめていたが、その後、欧州向けのガスを抜き取っているとしてウクライナを非難し、ガスの供給を完全に停止した。これは、厳しい寒波の真っ只中にある供給先の国々を、確実に悲惨な状態に陥れる行為だ。その後EU首脳が、ウクライナに出入りするガスの流れを検証するための監視団派遣の条件をすり合わせようとすると、ロシアは政治的な駆け引きを際限なく弄した。一例を挙げると、ロシアは協定を書面にして写しを渡すよう要求し、さらには監視団の派遣を認める前に、その作業内容を指示するマニュアルを提出するよう主張した。EUの高官らは、早ければ1月9日にもガス供給を再開し、後に協定に関する書類が届くのを待つことが、ロシアが本来取るべき道義的な行動だったと主張する。人道的被害が大きく、供給再開から供給網の末端で寒さに震える人々にガスが届くまでに36時間もかかるからだ。が、ロシア・ウクライナ間のより大きな対立の是非はともかくとして、ロシアは道義的な行動を取らない道を選んだ。ある外交官は、ガス供給を完全停止したことはロシアにとって大きく「裏目に出た」と指摘する。「だからと言って、ウクライナ側の行動に稚拙でまずい点がなかったというわけではない。しかし、ロシアはやり過ぎた」>
<ロシアの出方にショックを受けたEU各国政府は、このガス紛争が昨年夏にロシアとやはり旧ソ連国のグルジアとの間で起きた戦争の繰り返しになることを防いできた。>
なるほどね、日本ではあまりにも抽象的なことばの羅列でニュースが伝えられるから、真剣に読まないけど、そういうことが行われていたのか。
<グルジア紛争の時、EUは例によって例のごとく、ロシアを侵略者と非難する側と、ロシアは無責任なグルジアのあからさまな挑発に「過剰反応」しただけだと主張する側とに分裂した。さらには、一部のEU諸国では、グルジア紛争に米国が密かに関与しているというロシアの主張に同調する閣僚まで現れた。>
そういうことなのだろう。ドイツ、フランスが親ロシア勢力だった、とは。独仏露連合軍か。
<しかし今回、ガスプロム重役のアレクサンドル・メドベージェフ氏が、ウクライナの政策は外国(つまりは米国)の影響を受けているとほのめかしたことに対しては、ブリュッセルのEU本部では、訳知り顔でそれに同調するささやきはなく、逆に信じ難いといった不信の目が向けられた。ウクライナの行動が怒りを招いたのは確かだが、ロシアは自らの信用を深く傷つけてしまったのである。>
メドベージェフの意思ではないだろう。プーチンの考えをパペットがしゃべっている、ということか。
◎新パイプラインと欧州内の論議の行方
<全員が全員、立場を変えたわけではない。イタリアのシルビオ・ベルルスコーニ首相は欧州はこの危機を気に病むべきではないと主張し、「ガスプロムの言い分は理解できる」と述べた。イタリアは豊富なガス備蓄を持つうえ、ベルルスコーニ首相はプーチン首相と親密な関係を築いており、EUのガス供給に対するガスプロムの支配力を強める天然ガスパイプライン「サウスストリーム」の建設にイタリアが協力する計画もある。>
ベルルスコーニーというのも個性が強い男だな。
<しかし、一部の政府関係者によれば、ドイツの立場は変わり始めた可能性がある。欧州最大の経済大国であるドイツは、ガスプロムとの緊密な関係で有名だ。ドイツの政治家や実業家たちは、ガスプロムが信頼の置けるエネルギー供給企業であり、対EU投資を歓迎すべき存在だと主張している。>
<ドイツは(さらにはドイツほどではないがフランスも)天然ガスについて、透明性の高い自由化された単一欧州市場を構築する動きに抵抗してきた。こうした市場は何にも増して、ロシアが天然ガスを武器に欧州を分裂させ、支配する力を弱めるものだ。ドイツはいまだに、大手ガス会社がガス輸送システムを所有する権利を擁護している(これが新規参入業者には障壁になっている)。>
ドイツとフランスはこういう形でロシアに味方してきたのか。毎年のサミットだけで席の序列を競っているだけじゃあなかったんだ。
<だが、1月12日に開催された緊急エネルギー担当相会議で、ドイツは欧州におけるより完全な市場統合と、ロシアを経由せずにカスピ海から欧州へガスを供給することを目的としたナブコ・パイプラインを含めた新しいパイプラインの必要性に言及した。>
ドイツの変化だ。これは結構大きいのではないか。ドイツは利に敏いから、裏には何かがあるのだろう。
<EU首脳は長い間、透明性の高いガス市場の構築と、不測の事態の時に深刻な被害が及ぶ地域にガスを容易に供給できるようにする各国間の相互接続について議論してきた。今回の天然ガス危機で政治家たちは、言葉ではなく行動が必要なことを痛感させられたと述べている。3月に開かれるEUサミットでは、その言葉が試されることになる。各国政府は、現実のプロジェクトに実際に資金をつぎ込むことを承認するよう要請されるのだ。各国がこのテストに失敗すれば、欧州内部の対立は悲劇的な結末を招く恐れがある。© 2009 The Economist Newspaper Limited. All rights reserved.英エコノミスト誌の記事は、JBpressがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。>
三つの論文とも、日本の新聞では読めない視点を示していて興味深い。
ロシアの対日姿勢の変化をあまり大きく受け取らないほうがいい、というサジェスチョンはその通りだろう。
グルジア、ウクライナとの紛争の裏はこれを読んでもまだ分からない。じっくりと、外国の論文を読み続けるしかないだろう。EUの内幕は面白かった。
特にドイツ、イタリアは食えない奴らだ。なぜあんな奴らと同盟を組んで米英と戦ったのだろう。逆だったらよかったのに。松岡洋右の責任は重いし、そんな松岡に騙されていた日本のメディアの後進性が問われるだろう。ドイツは三国同盟を結ぶ直前まで、裏で蒋介石の中国に軍事顧問団を送り続け、武器を供給し、日中戦争では作戦計画だけでなく、実際の戦闘で指揮官まで勤めさしていたことが分かっている。そんな裏切りを平気でやる国と同盟を結んだアホさ加減。日本の政治家はきちんと総括しているのだろうか。
日本ももう少し外交に習熟しないといけない。それには外交にもっと金と人をかけないとダメだろう。絶海の孤島が世界に伍していくにはそれなりの中規模の軍備と鮮やかで鋭い外交が是非とも必要だ。麻生太郎首相の戦略論、論としては正しいと思うのだが、どうなのだろう。
以上、生意気で自分勝手な文章を作成して、夕食を終えて、パソコンでいろいろなブログを見ていたら、極東ブログさんの「ロシア関連の報道がどうも変だ」を見つけた。よく調べて書いてあった。産経新聞社説の深さ、毎日新聞が遅れていることなど、勉強になった。
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2009/02/post-195f.html
トラックバックとかリンクとか、まだやったことがなかったが、初めて両方にチャレンジしてみた。でも、うまくいかなかったようだ。もう少し習熟したらまたやってみよう。
最近のコメント