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2009年3月

2009年3月31日 (火)

麻生首相会見は良かったが、小泉改革否定がないVS小沢氏会見、記者の嫌らしさが目立った~3月31日産経新聞ネット版から

 麻生太郎首相が3月31日夕、2009年度予算と関連法案成立を受け、そしてG20出席のためのロンドン訪問を前に、首相官邸で記者会見を開いた。産経新聞がネットに会見詳報をアップしていた。それを読んでみよう。

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090331/plc0903311812016-n1.htm

 以下は産経新聞ネット版にアップされていた麻生太郎首相の記者会見詳報である。

 ▽去る3月の27日に、平成21年度(2009年度)予算と関連法案が成立をいたしました。私は予算の早期成立が最大の経済対策であると申し上げてまいりました。これで景気対策の『3段ロケット』が完成したことになります。

 ▽すでに実施をいたしております平成20年度(2008年度)の第1次、第2次補正予算は、大きな成果をあげていると存じます。

 ▽例えば、中小企業の金融支援につきましては、緊急補償と特別融資とで、これまで約50万件、10兆円が実行に移されております。現実問題、これは300万人を超える従業員の雇用の安心につながったということになろうと存じます。雇用調整助成金は、従業員を解雇しない企業を支援するお金のことです。本年2月だけで、187万人の雇用の下支えをしたことになります。

 ▽地方の高速道路につきましては28日から、休日は『どこまで行っても1000円』が始まりました。多くの方に利用していただいております。その上に、新年度予算が加わることになります。国民生活を守るために、雇用対策や、医師確保や、緊急医療対策、そして出産支援などに力を入れていけると存じます。

 ▽また、地方交付税を1兆円増額したほか、地方や企業を支援する施策を盛り込んでおります。

 ▽これらの効果を早期に発揮させるためには、その執行の前倒しが必要だと存じます。地方公共団体に対しても、その協力を求めて参ります。

 ▽しかしなお、日本は経済危機とも言える状況にあろうと存じます。そのため、新しい経済対策を策定いたしたいと存じます。

 ▽今やらなければならないことは基本的に三つです。一つ、景気の底割れを防ぐこと。二つ、雇用を確保し国民の痛みを和らげること。三つ、未来の成長力の強化につなげることです。

 ▽景気対策のために需要を拡大するとともに、安心に力を入れることが必要です。生活者の安心を確固たるものにする。すなわち雇用や、社会保障、子育て支援などの充実が求められていると存じます。また、未来への成長につながるような、新しい分野への投資が重要であります。まさに、政府の役割、財政の出動が求められていると思います。これまでの経緯にとらわれることなく、大胆な発想で、最大限の努力を行いたいと存じます。政府与党で早急に取りまとめ、国民のみなさまにお示しをいたしたいものだと考えております。

▽次に成長戦略についてお話し致します。短期的な経済対策の先には、中長期の経済成長が必要です。どのような経済社会を目指すのか。将来像や目標を具体的に明示し、その実現に向けたシナリオを描いております。そして、官と民とがともに行動することで、新たな市場や雇用を創出致します。早急にまとめたいと存じます。

 ▽第1の分野は、低炭素革命です。環境、エネルギー分野は日本が世界で最も強い分野です。例えば太陽光発電や、環境に優しい自動車。日本の技術で、低炭素革命を先導いたしたいと存じます。

 ▽第2の成長戦略は健康長寿社会の実現です。日本は世界最速で高齢化が進んでいますのはご存じの通りです。だからこそ日本で活力ある明るい高齢化社会というものを実現したいもんだと考えます。例えば、介護の職場で希望が持てるようにしなければならないと考えます。

 ▽第3の分野は日本の底力の発揮です。日本には安全、また文化といった国際競争力のある観光資源があると存じます。また、アニメーション、ファッション、Jポップ、いろいろありますが、日本のソフトパワーは世界に冠たるものがあります。残念ながら今、それは国際的なビジネスにはつながっていないと存じます。日本の魅力や底力を産業につなげることで地域に活力を与え、若者の雇用を増やしたいもんだと考えております。

 ▽さらに中長期の成長戦略は、国内だけを見ていても描けないと存じます。国境を越えてアジア全体で成長するという視点が大事だろうと存じます。このため、日本はアジアでの広域インフラの整備などを通じた域内の需要拡大をODA(政府開発援助)や民間資金を活用して支援をしたいと存じます。4月にタイで開かれる予定の東アジア首脳会談の場で、私はこうした取り組みの推進役の先頭に立ちたいもんだと考えております。

 ▽さて、私は今夜、ロンドンに向けて出発します。緊急経済・金融サミットが開かれ、世界の20カ国以上の首脳が集まる予定であります。昨年11月、第1回のサミットがワシントンで開かれたのはご存じの通りです。その際、私が主張した不良債権の迅速な処理や、また、金融市場に関する規制と監督に関する国際協調などは、すでに共同声明に盛り込まれ、各国において進められております

 ▽例えば不良債権の処理です。日本は1990年代の経験から、その際には金融機関に資本注入をする場合、厳格で公正な資産評価と経営健全化のインセンティブの付与が必要不可欠だと申し上げてきました。最近アメリカで発表された金融安定化策はこうした方針に沿ったものです。これを歓迎をするとともに、一刻も早い実行を望みます

 ▽また、世界の金融市場が逼迫していることについては、私はIMF(国際通貨基金)に対して1000億㌦の融資を行う意図を表明し、先般、取り決めを締結をしております。その後、EU(欧州連合)も日本にならってほぼ同額の融資に同意をしております。日本としてはこの際、さらなる提案を行うことにより、世界経済にとって必要な資金が円滑に供給されるよう主導的な役割を果たしていきたいと考えます。

 ▽さらに、世界的には輸出入のために資金手当てというものが難しくなってきております。信用が収縮しているからです。これを放置すると、輸出入取引自体が縮小していくことになります。このため、日本は貿易に対する保険や融資を活用して支援を行っていきたいと考えております。今回のロンドン・サミットにおいてはこうした基本的な方針に従って議論を深め、さらなる具体的な成果を得るべくリーダーシップを発揮していきたいもんだと考えております。

 ▽最後になりましたが、平成21年度(2009年度)予算が成立をしました。しかし、なお重要な法案がたくさん残っております。ソマリアなど海賊対処法案、消費者庁(設置)の法案、年金の財源を安定的にする法案などなどです。それぞれ国民生活や国際貢献にとって不可欠なものだと存じます。私はこれらの早期成立に全力を挙げたいと存じます。

 ▽明日4月1日は新学期や新年度が始まります。新しく学校に入られる学生さんや新しい職場につかれるフレッシュマンも多いと思います。大きな希望とともに少しの不安もお持ちだと存じます。

 ▽みなさんの未来というものは明るいものにしなければならないと考えます。私が総理大臣の重責を担うことになりましたのは、ひとえにこの日本を元気にするため、そして安心できる社会を作ることであると、そう心得ております。そのために全身全霊をささげる覚悟です。国民のみなさん、希望をもってともに進んでいこうではありませんか。ありがとうございました。

 以下は質疑応答。

 ――本日、新経済対策を指示されたが、その新経済対策の裏付けとなる21年度(2009年度)補正予算案について、与党内では早期に国会に提出してほしいという要望が高まっている。首相としては今国会に提出するご意向かどうか。提出された場合、今国会の成立まではかっていくのか。あわせて提出の時期、補正の規模については?

 麻生首相 本日、政府・与党に対して公明党の太田(昭宏)代表とともに、現下の経済状況を考えて、4月中旬までのできるだけ早い時期に、経済対策をまとめてほしいと指示したところです。その中には、補正予算というものも、その提出が含まれるということであります。提出の時期、規模、補正予算ですけれども、規模につきましては、対策の内容次第によって決まってくると思いますので、この段階で総額いくらと決まっているわけではありません。そして、出した以上は、できるだけ速やかに成立させるよう、われわれとしては最大限努力してまいりたいと考えております。

 ――北朝鮮が人工衛星として弾道ミサイルの発射を強行した場合の日本政府の対応について。国連安全保障理事会の常任理事国の中でも、北朝鮮のミサイル発射に対する考え方に温度差がみられるが、日本政府として国連の場でどのように主張していくつもりか。また、国連安保理の場で何らかの決議を求めていく考えはあるか?

 麻生首相 北朝鮮のロケット、あるいはミサイルの発射は、当然のこととして北東アジアの平和と安定を損なうものであります。また、当然のこととして、国連の安保理の決議にも反する。北朝鮮はまず発射を自制すべき。当然です。この点については、アメリカ、韓国、中国、ロシアを含め一致しています。北朝鮮に対しても、日本の立場をすでに伝達しています。

 ロンドンのサミットの場においても、当然のこととして各国の首脳と緊密な連携を確認しないとならないところです。それでも北朝鮮が発射を強行した場合には、まず国連の安保理において、しっかりと議論する必要があるだろうと思っています。

 日本としては具体的な発射がどのような形で行われるかを踏まえない段階で、安易なことを申し上げるわけにはいきませんが、安保理においての決議の可能性も念頭に置きつつ、議論をしていく。当然のことだと存じます。国際社会が一致して行動するということ、最も肝要、最も大事だと思っています。

 ――財政再建について。首相は財政出動については過去の経緯にとらわれることなく、と言われたが、平成23年度(2011年度)までの基礎的財政収支の黒字化は断念するということか。もしそういうことであれば、今後は財政再建をどういう道筋で行っていくのか?

 麻生首相 2011年(平成23年)のいわゆる財政均衡を目指すということにつきましては、これは基本的にはわれわれとしては、こういったものは最も大事な旗の一つですから、これは掲げ続けなければいけないと思います。

 ただ、現実問題として、今置かれています状況を見たときには、その状況は極めて厳しい状況になってきておるというのは否めない事実だと存じます。

 われわれとしては、この財政再建というものに関しては、最初から申し上げましたように、目先3年間は景気対策と。そして、中期的には財政再建と申し上げてきたところでもありますので、私としてはまず、景気対策が最優先するというようにご理解いただければと存じます。

 ――首相は生前贈与を促して消費を刺激するという狙いで、贈与税軽減について検討に値するということを発言している。税制改正を年度途中で行うのは、なかなか難しいといわれるが、追加経済対策、あるいは補正予算を考える上で年度途中の税制改正も排除せずに検討したいというつもりで税調(税制調査会)側と調整していくということでいいのか。また、消費税について首相は昨年10月、経済が好転すれば早ければ3年後の消費税引き上げということを言っていた。来年、税率は明言しないものの、具体的な引き上げ時を仕組む法案を出そうという議論もあるが、状況的には難しいと思う。その点について首相は今、どのように考えているか?

 麻生首相 贈与税の方から。ご存じかと思いますが、ご存じのように、今、個人金融資産は正式に分かっているだけで1430兆円ぐらいあるといわれております。その多くの額が高齢者によって保有されているというのも、よく言われているところです。

 この金融資産をどのように活用し、いわゆる需要の創出につなげていくかということを検討することは、極めて重要なことだと思っています。このため、どのようなことが可能なのかということを党税調含め、関係者で検討してほしいと考えております

 消費税につきましては、これは税制抜本改革については、これは昨年末、社会保障と税財政に関する中期プログラムというのを閣議決定をし、今後の道筋を盛り込んだ法律が成立したところであります。

 その中では、今年度を含む3年以内の景気回復に向けた、集中的な取り組みにより、経済状況を好転させるということを前提として、遅滞なく、かつ段階的に消費税を含む税制の抜本改革を行うために平成23年度(2011年度)まで必要な法制上の措置を講じるということにしています。

 実際の税制改革につきましては、これは具体の内容、たとえば税率の話など、これは別に法律で定める必要がある。当然のことです。そのために国会で税制の具体的な姿を審議していただくことになるんだと思います。ただ、道筋に変わりがあるわけではありません。財政出動というものを行うというためには、財政に対する中期的な責任というものをきちんと示すことが、責任ある政府・与党としての原点であり矜持であろうと思っております。

 ――補正予算について成立に最大限努力するというが、成立までは衆院の解散・総選挙は行わないという意味にとらえていいか。それとも補正予算案の審議中であっても、来るべき時期が来たら決断することがあるということなのか?

 麻生首相 これは前から申し上げている通り、今回、こういったことになったから別な答えが出るだろうと期待されているのかもしれませんけれども、政局よりは政策。同じことを申し上げましたし、まずは景気対策として、その方向でこの半年間やらせていただいたと思っております。解散につきましては、しかるべき時期に判断をすると。私が判断をすると申し上げてきておりますので、どういうことになるか、今の段階で申し上げるところではありません

 ――解散・総選挙の時期の確認だが、首相は3月初めにもテレビなどのインタビューに答えて、追加的景気対策と解散の時期に関連して、口先に言っているだけではダメだ、と。実行しなければダメなんだと言っていたが、先ほど平成21年度(2009年度)補正予算を提出して成立させたいということは、成立させるまでは衆院を解散する状況にはないという認識でいいか?

 麻生首相 今言われた質問とほぼ同じ質問を、別の言い方をされたんだろうと。言い方の違いで。答えがまったく同じになると具合悪い。別の言い方をするんだと思いますけれども、いろんな言い方をされましたんで、こちらの言い方もいろんな答え方で答えた方がいいのかもしれませんけど、判断は私がします

 そして、その時期につきましては、補正予算というものの成立に(野党が)どういう対応でなされてくるのか。補正予算がいいということで、補正予算に同調されるのか、反対されるのか、減税含めて賛成か、反対か

 それらの状況というものをいろいろ判断させていただかなければならないことだと思っています。どうしても反対というのであれば、その状況で60日間を要してでもやるのか。それを打ち切ってでも、この際、これがわれわれの案だということで選挙をするべきなのか。それは、その時の状況によって判断させていただきます。

 以上が産経新聞のネット版にアップされていた麻生首相の記者会見の内容だ。

 麻生首相の話というは国会答弁でも、このような記者会見でもサービス精神旺盛で、その人の良さがよく出ている。逆に言えば脇が甘いと思うのだが、指導者はこれでいいのではないか。あとは参謀役が麻生首相のここで話した大方針をこなして、具体的に政策化すればいい。

 このような話をロンドンで話してくるのならば、期待できるではないか。特に世界金融・財政政策に関して相当に勉強したようだから、米英仏独と十分張り合ってやれるだろうし、外相時代に不安定の孤を繁栄の孤に変える政策案を発表しており、アフガニスタン情勢についても日本の考え方を米英に教えてあげればいい。つまりキリスト教国では限界があるので、イスラム教の国々が「敵」と思っていない日本がリーダーシップを取る形で平和的な共存の模索ができるのだ、そのためにはイランを敵視すべきではない、というくらいの物言いをしてくればいい。

 ようやく09年度予算と関連法が成立し、09年度予算の補正の話まできた。後はそれこそ麻生首相の言うようにいつでも衆院解散・総選挙ができる。首相が外交日程をどう見るか、で総選挙日程が決まってくるだろうと思うが、いつでもいい。

 麻生首相はよくやっている。ただ、今までの自民党だったら路線論争をもう少し熱心にしていただろう、と思うのだが、今それが消えてしまったから、明示的な形で小泉構造改革路線に決別する、という儀式がなかなかできないのが残念なところだ。

 象徴的な「小泉構造改革」政策を転換するしかない。できれば郵政民営化をやめればいいのだろうが、そうはいかないだろうから、せめて高額所得者への税の累進税率をきつくするとか、法人税を高くするとか、医療の自己負担3割を1割に戻すとか、誰にでも「小泉改革は終わった、麻生首相は庶民目線で政治をしてる」ということが実感できるような政策に転換してほしい、と思う。

 その転換がなければ、いくら小沢一郎氏の秘書が逮捕されようが、民主党の支持率が落ちるのは一時的現象だ、と覚悟しておかなければならないだろう。国民はバカではない。目線が大企業と「持てる者」に向いているのか、一般庶民に向いているのか、は敏感に分かるものだ。

 小泉マジックで新自由主義的な金持ち優遇を郵政選挙でごまかしても、後に残るのは労働者の3分の1が非正規という悲惨な現実と猛烈な格差社会であり、もうごまかしがきかない段階まできてしまった。

 あとは庶民のための政治をするのか、金持のための政治をするのか、選択肢は二つに一つだ。少なくとも民主党は新自由主義的な規制緩和、新自由主義政治には反対している。

 いくら小沢氏にダメージを与えても総選挙が公示されれば、非正規労働者たちがものを言い始めて、その流れが奔流になれば、小沢氏秘書の政治資金規正法違反など泡と消えるだろう。

 麻生首相にもチャンスはある。小泉政治との決別を宣言し、竹中平蔵氏らを「改革利権」隠匿の罪で告発することだ。それの前哨戦はすでに鳩山邦夫氏がすでに戦線を開き、道をつけている。

 麻生首相の敵はもしかすると小沢一郎氏ではなく、小泉純一郎、竹中平蔵氏なのかもしれない。その意識を持ちながら、国民のための政治を一所懸命実行してほしい。そうすれば突破口は開けるだろう。

 そして、小沢氏も堂々と受けて立ってほしい。再分配の政治を前面に掲げてほしい、そして、外需依存から内需主導への産業構造転換をやる、と明言してほしい。日本の政治には言葉も実行力も両方ともが必要なのだから。

◆小沢氏の記者会見

 この日、小沢一郎氏も記者会見をしていた。産経新聞のネット版にはこっちの詳報もアップされていたので、コピペした。31日午後、党本部での記者会見だ、という。

 ――千葉県知事選で民主党推薦候補が敗れたが、どう受け止めているか。自身の公設秘書が起訴された事件が影響していると考えているか?

 小沢氏 私の秘書をめぐる問題につきましては、もう皆さんが一生懸命、3週間以上にわたって報道していただきましたので、多分、その影響もあったことは事実だろうと思います。ただ、あの、皆さんは知事選のことだけ取り上げておりますけれども、同時に行われました(千葉県の)木更津の県議補選では、浜田防衛相の下で相手の候補、弔い合戦。自民党との一騎打ちで民主党の推薦候補が勝利をいたしました。また、同日、(千葉県の)東金の市議会選挙が行われましたけれども、22人の定員のうちで、次は選挙は金子(健一)くんを、わが党を、候補者を支持するという議員が13人当選いたしました。そういう意味において、みんなで一生懸命訴えていけば、有権者の皆さんも理解していただけると、そういうことではないかなと、そう思っております。

 ――鳩山由紀夫幹事長が記者団に対し、代表とのやりとりを紹介した。「国民がこの執行部では政権交代が難しいと判断したときにはお互いに責任をとろう」と、鳩山氏が言ったのに対し、代表も「分かったと」と応じたそうだが、どのような意味合いでそう述べたのか。また再び進退を判断するタイミングはあるのか。あるとすればそれはいつなのか?

 小沢氏 私は、最初から何度も申しあげておりますように、次なる総選挙は自分自身、個人にとりましても本当に政治生活の集大成、政権交代へ向けての議会制民主主義を定着させる、そのためには政権交代しかない。そしてまた国民サイドに立った政治を実現する、そのためにも政権交代しかない。そういう固い、強い信念で臨んでおりますので、そのことを私のすべての判断の基準として考えるということであります。総選挙がまだいつだか分かりませんうちに、どうこういわれても返答のしようがありませんけれども、いずれにしても、国民の皆さんの理解を得て、政権の交代を実現したい。そういう思いは変わりません。

 ――自民党内で早期の解散という声も出始めているが、現時点で解散の時期をどう考えているか。今後の地方行脚をスケジュールも含めどう考えているのか?

 小沢氏 これは内閣の権限でありますので、総選挙がいつかは分かりません。皆さんの報道を漏れ伺う範囲内においては、政府与党内で5月解散総選挙という意見もあるし、またやっぱりサミット出席してからだという意見もあるやに聞いています。私どもとしては、どちらでも即、対応できるような態勢をとっているつもりでありますし、候補者と目されている人たちも、そういうことで準備していると思います。私自身の地方行脚を含めたキャンペーンについては、ちょうどほぼひと回りして、ひと休み、リフレッシュしようかと思っていた時期にこのような問題が発生いたしましたので、そういう意味で、もう少しちょっと皆さんから解放されたら、少し、休みの時間をとって、また元気を回復して、それ次第やりたいと思っております。

 ――党独自の300小選挙区の世論調査・情勢調査は今後実施するのか。実施するとすればいつごろか?

 小沢氏 世論調査は、客観的に、量的にも質的にも客観的に正確に私ども自身でやっております。1月の下旬にやりましたので、それから、2カ月以上経過することになりますから、4月中にはやりたいなあと。少し落ち着いてからやりたいなあ、そう思っております。

 ――小沢代表は今回の事件をめぐる捜査の不当性について言及してきた。与党側にも西松建設から献金を受けている議員の団体があるが、これらに対する表立った捜査の動きが見られない現状についてどう思うか?

 小沢氏 それは政府、捜査機関の考え方だから、私どもとしては分かりません。ただ事実問題として、いわゆる今問題となっている政治団体からも、自民党の皆さんも献金を受けていると聞いておりますし、自民党の国民協会は、かなり多額の献金を受けていると、そういう事実を皆さんの報道で知っているというだけで、あとは政府、捜査当局の判断ちゅうことだと思います。

 ――民主党の鳩山由紀夫幹事長は有識者による外部チームの設置について、代表自身の問題、東京地検の問題、マスコミの問題を取り上げることを検討しているようだが、この構想の是非と、実現する場合、いつごろやり、どのような効果があると思うか。先ほど、4月に党の世論調査をやるという話があったが、その結果は自身に進退の判断材料になるのか?

 小沢氏 最初の問題は、鳩山幹事長がお考えになっておられることだろうと思いますので、私自身が今、答える立場ではありません。それから、4月の世論調査、行いたいと思っておりますけれども、私の行動基準はあくまで総選挙で勝利して政権を交代するということでありますので、4月中にでも解散総選挙っちゅうことであれば別ですけれども、政権交代ということをあくまでも基準にしてやるということは変わりありません。それと、こっちでやる調査、僕個人うんぬんの調査するわけじゃありませんので、それぞれ候補者の状況調査ということであります。

 ――麻生太郎首相が今日、追加の景気対策を4月中旬までに策定するように指示した。赤字国債の発行も辞さないということだが、見解は。また、先週末の各社世論調査で6割を超える人が小沢代表は辞任すべきだという厳しい声があがっているが、受け止めは?

 小沢氏 補正予算で赤字公債の発行もやむを得ずというか、なんておっしゃったのか知りませんが、それを含んでも補正をつくるということの趣旨だと思いますが、私どもの考え方、もう前から言っています通り、既存の予算の仕組み、それから既存の各省庁別のこの予算の中身、これを徹底的に検証して、無駄なものは省くと、やめるということで十分、われわれの新しい政策も実現できるという考え方に立っておりますので、既存の予算編成の仕組みや内容をまったく検証しないで、ただ単に赤字公債、出す、という考え方については賛成いたしかねます。

 それから、私自身のことについての世論調査。そのこと自体は強く真摯に受け止めて対応しなければならないと、もちろん考えておりますけれども、いずれにしても、総選挙でもって勝利できるかどうかということを最終的な判断基準にいたしたいと思っております。

 ――巨額な献金を何に使っていたのかという疑問が残っている。中国の頂上計画や、海外の学生の交流事業などさまざまな事業を行っているが、入ってきた金をどのようなものに使ってきたのか?

 小沢氏 それはすべて、まさに政治資金の収支報告書に届け出てありますし、それはいつでも閲覧できるんですので、どうぞ閲覧していただきたいと思います。

 それから私自身は全然、マスコミのみなさん取り上げてくれないけれども、事務所費も全部公開したのは私一人でございます。そういう意味で、特段、隠さなければならないことはありませんし、現実問題として、これ幹事長もちょっとテレビでおっしゃっていたようですけれども、いろんな活動をする上においてスタッフも必要ですし、若い人たちよりもはるかにその数は多いですし、取り組んでいる、今、話しましたが取り組んでいるいろんな事業も、政治活動もありますので、それはそれぞれみなさんお考えになっていただければ、少なくてもみなさん、ここにおられるみなさんは見当のつく話だと思っておりまして、そういう意味で、国民みなさんにも私は理解していただけるものと思っております。

 ――代表は先週の記者会見で秘書の起訴は納得いかないと述べた。納得いかないというのは、企業献金が突然、法解釈が突然ダメになったことについてか、修正報告すれば済むものなのにこの時期に逮捕、起訴になったことについてか。メディアで検察のあり方について疑問視する声が出ている。検察に問題があるとすれば、考えは。問題があれば政権とったら場合にどのような措置をとるのか?

 小沢氏 最初の件ですけれども、私どもの主張、事務方としては、政治資金規正法の趣旨、すなわち寄付を受けた、献金を受けた相手方を正確に記載して金額と同時にそれを届け出るということが政治資金規正法の定めであるというふうに考えて、その通りにしたわけでありまして、いわゆる政治資金規正法に違反している、何かをやったという意識は全くないだろうと思っております。それが政治資金規正法に関する考え方。それから、この記載の、収支報告書の、私ども間違っているとは思ってないんですが、今回については、仮に間違ったことがあった場合には、修正報告することによって従来は通ってきたわけでございます。

 従って今回、初めて、この種のことで逮捕、強制捜査、立件というのは従来にないことでありますので、それもやはり、もっと慎重に、僕の場合だけじゃなくして、これはいろんなすべての政治家に当てはまることでもありますので、慎重にしてもらいたいということは、そう願っております。

 まあ、あの、検察だけじゃなくして、検察でも、警察でも、あるいは国税当局でもですね、国民に対して強制力を持っている機関は、やはりその権力の行使に慎重でなければならないと。そうでないと、国民の基本的人権を侵すことになりかねないというふうに思っております。

 ――今後の地方選挙の対応について、秋田県知事選、名古屋市長選、さいたま市長選と大きな地方選挙が続くが、小沢代表の対応は。世論調査では民主党の支持は大きく減ったわけではなく、ゆるやかに減っている。今後、捜査終結などの一定の節目を超えれば、民主党の支持は元に戻り、政権交代できると考えるか?

 小沢氏 えー、前からも言ってますように、基本的には、地方選挙ですから、知事選挙とはいえ。地方のいろいろな事情が絡み合ってくるわけですから、あくまでも、これ県連が主体となりながらやっていくことだと思います。

 ただ、欧米の民主主義が進んでいる国においては、知事選、やっぱり、民主主義っちゅうのは、政党政治ですから、そういう意味において、知事選挙でも、アメリカでは民主、共和、イギリスでは保守、労働という形で行われておりますし、それが、民主主義の定着のためにも役立つことでもありますので、できる限り、少なくとも、県知事、政令都市は、わが方の独自候補を擁立していくようにしたいということを地方にもお願いいたしております。

 んー、で今、あった、指摘があった、秋田知事選挙は地方いろんなさまざまな事情の典型的な例でございまして、それはそれで、この間、社民党と連合の代表が来られましたが、地元の若干、民主党の県連と異なることになっちまったけれどもということでしたが、それはそれぞれ地域事情で、いろいろなさることで、私がどうしろこうしろという話ではないということで。

 まあ、国政選挙はしかし、この3グループを中心とした野党共闘態勢を目指して貫いていこうということになったことはご承知の通りでございます。名古屋については、民主党の推薦ということになりましたので、これはできる限り、みんなで応援しなくちゃいけないだろうと思ってます。さいたま、大宮、さいたまか、さいたまについては、まだ具体的には聞いておりません。それから、なんだっけ。わが党の支持率については、緩やかに増えていくことを期待しております。

 私としては、今さっきも申し上げた通り、政治資金規正法にのっとって、その通り届け出しておりますと。何もうそも隠し立てもしてませんと。言う立場でおりますので、それが、もし、国民の皆さんに誤解受けているとすれば、そういう点について、私も機会あるたびにお話をしていきたいと思います。

 ――今日、政府が政治主導の人事を目指して、内閣人事局の設置を盛り込んだ国家公務員法の改革関連法案を閣議決定したが、この政府の法案をどのように評価するか。民主党内には中央省庁の政治任用を求める意見があるが、どのような仕組みがいいと考えるか?

 小沢氏 あの、人事局を作る作らないというのは、どのよう紙だか、僕も正確に検討しておりませんので、分かりませんが、役所でもって作ってきたやつでは、大した効果は上がらないと私は思っております。

 基本的に統治の仕組みを変えるのが私の考え方です。んー、霞が関の中央集権的なカネも権限も全部、霞が関で最終的に握っていると、こういう仕組みがいろんな矛盾を引き起こし、そして、機動的な対応ができなくなっている。あるいは、地方がどんどん過疎化して疲弊してって、中央だけが肥大化すると。こういうことの根本の原因だと思いますし、官僚支配の一番の根源はこのお金と権力を一手に集中させていると、こういう仕組みだと思っておりますので、これを根本的に変えたいというのが、われわれの考え方ですので、既存の統治の仕組みを前提にして、人事をただいじくり回すだけでは意味がないというふうに私は思っておりまして、それでは、官僚優位の、支配の、この国の体制を変えることはできない、そういうふうに思っております。

 ――この前の代議士会で、近藤洋介議員からの質問で、素性の分からないお金を長期間に渡って、数千万円受け取っていたのか、何の見返りも求めない巨額のカネに違和感はなかったのかという質問があったと思うが、改めて伺いたい?

 小沢氏 具体的にどこの企業から、いくらいくらっつうのは、私はその都度把握しているわけではありません。それから、西松建設、あるいはその関連のところからだけ献金をいただいているわけではありません。この間の会見でも申し上げましたように、多くの企業から、もちろん、献金を受けております。そしてそれの何倍にも渡る個人の皆さんから、献金を受けております。私は、政治献金のことについても、いつも申し上げております。

 どこからもらっても、何に使っても、それは、オープンにすること、ディスクロージャーが日本の社会ではより、何でもかんでもアメリカみたいにしろという意味では決してありません。もう少し、よりオープンな仕組みをつくっていくべき。選挙する人が、ああ、こういう所からもらったんだな、こういうとこに使ったんだなということが、一目瞭然分かるようにしていく、後は選挙民が判断するというのが、民主主義のあり方だと思っておりまして、それが、額が小さい大きいという問題ではないだろうと思っております。収支については、ずーっと収支報告書で正確に報告していたしておりまして。それを見ていただけたらと思います。

 以上で全文だ。面白い。社説だけ読むと、産経新聞は朝日新聞と同じように小沢氏の辞任だけを願っているように見えるのだが、紙面と言うか、このネットの作り方を見ると、朝日新聞と同じには扱えない、と思う。哲学に基づいて全文を入れているように見える。だから、読者は記者会見場に行かなくとも、その場のやり取りが分かる。

 こういう記者会見は全文をさらっと読めば大体の雰囲気も分かるし、翌日の各紙の扱いも想像できるものなのだ。

 びっくりしたのは、質問がえげつないことと、小沢氏がそんな無礼な質問にも丁寧に答えていることだった。いまだに東京地検特捜部から「聞いてくれ」と頼まれたかのような質問を何度も繰り返す記者がいる。

 きっと朝日新聞の記者なのだろう。「政治的に小沢を殺せ」という上からの指示が出ているような聞き方だ。しかし、昔の小沢氏ならばこういう怒らせる質問にキレることが多かったが、さすがに老練というか、じっくりと答えている。立派だと思う。

 内容に新味があるはずはない、と思っていたのだが、選挙結果には驚いた。千葉知事選だけ注目していたが、その下のレベルの選挙では民主党は負けていないじゃないか。

 それに、千葉知事選の投票率は悪すぎた。民主党に行くはずの票が森喜朗元首相の言い方を真似ると「寝てしまった」からだ。今回は地方選挙だから「寝てしまった」のだが、国政選挙ではそうはいかない。民主党が死ぬ気になって、小沢代表のもと一糸乱れず進めば、今回「寝てしまった」有権者はきっと起きだしてきて、政権交代をさせる一票を投じるだろう。そうしなければ政治は変わらない、と分かってしまったからだ。

 麻生会見のところで書いたが、結局、自民党政権では小泉構造改革の抜本転換ができない、というのが最大のネックになると思う。

 安心・安全社会を構築してくれるのがどっちなのか? いい勝負を望みたい。もう地検や朝日新聞にその邪魔はしてほしくない。有権者は東京地検の特捜検事の思惑を通り越した鋭い選択をすると思う。小利口な朝日新聞記者が「あっ」と驚くような。

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ジャック・アタリ氏の日本への注文~毎日新聞3月31日朝刊インタビューから

 毎日新聞3月31日朝刊4面に[G20協調の行方 識者に聞く]㊤としてジャック・アタリ欧州復興開発銀行初代総裁のインタビューが載っていた。聞き手はロンドン支局の藤好陽太郎特派員だった。

 金融危機の原因とか、米国に関する話に新味はない。日本関連の部分だけ、引き抜いて書いておこう。ただ、このインタビュー、せっかくアタリ氏に話を聞いたのに、分量が少なすぎて、欲求不満になりそうだった。こういう読みたい人のインタビューはもっともっと紙面の半分くらいを取って載せるとか、考えてほしかった。

 アタリ氏は米国が金融システムを抜本改革すべきだ、として、

 <欧州や中国、日本は米国の代わりになれないという現実もある。強い米国は当面不可欠でオバマ大統領の役割が重要だ。>

 としたうえで、「次第に世界規模の政府のようなものが必要になるだろう」と持論を語る。そのうえで、日本について、

 <日本は、アジアの成長と市場の安定化に貢献すべきだ。日本には優秀さや、優雅さなど世界が学ぶべきものがある。少子高齢化が進む中、世界のエリートを積極的に受け入れるなど国際化を図れば、日本が苦手な「普遍的な価値」も創造できるようになるだろう。また日本には、太陽光発電やナノテクなどの技術がある。技術進歩により、食料やエネルギー不足、気候変動問題は解消可能だ。技術は、社会的な正義ももたらしうる。>

 と発言していた。

 あまり突っ込んだ発言をしていない、というか、疑問点を聞いていないのでがっかりなのだが、まあ、フランスの知性が日本をそう見ているのか、という点は分かった。できれば、日本にとっての中国論と北朝鮮論、ロシア論も聞きたかった。

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<日本経済 三つの逆転>の切り口は面白い~3月31日日経新聞朝刊コラム

 日経新聞3月31日朝刊コラム[一目均衡]で西條都夫編集委員が<日本経済 三つの逆転>のタイトルで「経済危機が深まる中で、従来の常識とはかけ離れた『逆転劇』が日本経済のあちこちで起こっている」と書いていた。三つの逆転とは何だろう? 面白いタイトルなので、読んでみた。

①内需企業と外需企業の逆転

 これまで経済をリードしてきたのは輸出で稼ぐ自動車や電機などの外需産業だが、このセクターが米欧の景気低迷で大きな打撃を受けた。反対に内需型産業の傷は浅く、元気の良さが目立つ、という。「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングやキリンホールディングスは海外でのM&Aに意欲満々だという。

②事業会社と金融機関の逆転

 過去数年の好況期には日本企業はバランスシートの内容を改善し、手元流動性が有利子負債を上回るという実質無借金企業が上場企業の4割を占め、「企業はカネを借りて投資する」という常識がひっくり返り、資金の貸し手である銀行の存在感は薄まっていたが、急激な金融収縮で事態は変化。優良メーカーでも手元流動性に不安が付き纏い、いざという時には銀行に頼らざるを得なくなった。産業界がメーンバンクの顔色を覗う時代がまたやってきた、という。

③官と民の逆転

 21世紀以降、特に小泉政権の時代に顕著だったのが「官から民へ」の流れだった。日本郵政や主要空港会社などのトップに企業出身者が就任し、天下りならぬ「天上がり」人事が定着したが、この流れも未曾有の経済危機を前に逆流の兆しがある、という。その象徴が3月後半に首相官邸で開かれた「経済危機克服のための有識者会合」だろう、という。各界から84人が参集し、中には新鮮な発言があった。小宮山宏・東大総長は太陽光発電などの普及に向けた環境国債の発行を提言。東京電力の勝俣恒久会長は有力な公共事業候補と目される電線の地中化について「電力会社としてはやりたいが、地中化すると(国などに支払う)道路占用料が10倍以上に跳ね上がる」と述べ、行政のちぐはぐぶりを指摘した、という。

 そして、西條編集委員は、

 <会合全体から浮かび上がるのは、政府への依存を強める日本経済の姿だ。自動車業界はエコカーへの補助を求め、電機業界はエコ家電へのインセンティブ(需要刺激策)を求めた。>

 と書き、

 <確かにすそ野の広い自動車産業などへのテコ入れは大きな乗数効果が期待できるだろう。ムダな公共投資にカネを投じるくらいなら、環境対応製品の普及を促したほうが未来への投資としても得策だ。だが、政府頼みはあくまで例外的措置で、常態化はまずい。政府の支援をあてにしなくてもやっていける体制をつくる。これが経済危機に立ち向かう経営者の使命である。>

 と結んでいた。産業面というか、企業面の常設コラムらしい。企業経営者向けへの記事なのだろうが、この「三つの逆転」という時代の切り方は面白いと思った。あくまで現象面の話ではあるが。

 首相官邸の有識者会合については「税金の無駄遣い」など厳しい見方が相次いでいたが、このように内容にまで踏み込んでコメントすると、いいことも随分ある、と分かる。

 首相官邸で何かやると、政治記者が書くことが多く、ものごとを政局的に見るので、全体を通しての時代の中での位置づけを間違えることがあるのではないか。

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居丈高な朝日新聞社説に一言~3月31日朝日新聞社説

 思った通りの論調で攻めてくる朝日新聞のワンパターン社説に思わず苦笑してしまったが、こんな社説を読まされ続けると、読者は刷り込み現象で、朝日の主張が正しい、と思うのではないか、と少し心配になる。少しは自分の足元を見詰めて、謙虚な姿勢を示したらどうなのだろうか?

 朝日新聞3月31日朝刊第1社説<民主党/このまま沈むつもりか>である。

 言っていることは繰り返しに過ぎない。ただ、新しい要素として昨日書いたように千葉県知事選挙の民主党敗北と朝日新聞の世論調査結果の数字をあげて、「どうだ、この数字が出たのに民主党はまだ声をあげないのか」と迫っているだけなのだ。

 主張そのものはワンパターンだ。①政官業の癒着構造の上に立った自民党政治を批判して政権交代を目指す民主党が政官行腐敗そのものの党首の下で総選挙を戦うことはできない②小沢氏は早くけじめをつけて辞めるベきだ③それにしても、参院議員総会と代議士会を開いてたった2人しか反対意見が出ない民主党という組織は一体何なのか④今回の事件は総選挙に向けて政権担当能力が試される試金石なのに、今のままでは国民は裏切られた気持ちで政権交代も出来ない――という趣旨である。

 よくもまあ、ここまで勝手な論を書き続けられるものだ、とあきれてしまうのだが、あきれていても仕方ないので、何度も繰り返しになるが、朝日新聞の主張の誤りを指摘しておこう。

 まず、民主党の決定は民主党に任せるべきである、という至極当然の政治理論である。

 朝日新聞は民主党の機関紙だったのか? それは知らなかったが、民主党の面々もそれぞれ何万人という支持者を後ろに持って国会に出てきている。無責任で勝手なことを書ける朝日新聞の論説委員とは立場が違うのだ。各議員は自分の当選のために必死で頑張らなければならないことは当然だろうが、それ以上に、この停滞し切った日本を大きく変える、という大義を実現するという大きな目的を持って日々の政治活動を続けている。その議員たちの様々な要素を考えたうえでの決断をなぜシングルイシューで批判するのか? 小泉純一郎元首相の「郵政改革に賛成ですか、反対ですか、国民に聞いてみる」発言と、この朝日新聞の論説委員の論理は基本的に同じだ、ということに早く気付いてほしい。小沢一郎氏が収賄で逮捕された、といわんばかりの紙面展開を繰り広げる朝日新聞は小沢氏に相当の恨みを持っているのではないか、という思いは伝わってくるが、そんな私怨でこの政局を論じるべきではない、と思う。

 小泉構造改革の負の部分がこれだけ明らかになり、麻生太郎首相も必死で路線転換を図ろうとしているが、麻生氏にとってかわいそうなことは、よって立つ基盤である自民党の議席が小泉氏の郵政選挙で獲得した議席であること、というのは皆言うことだ。つまり、いくら路線転換をしようとしても、すればするほど政権の正統性が疑われる、という構図の中で苦しんでいる。

 別に思い切って転換してしまえばいい、と思うのだが、そんなことをすれば原理主義新聞である朝日新聞の格好の餌食になってしまうことが目に見えているので、思い切った転換が出来ない。

 思い切った転換ができなければ、いくら大金をつぎ込んでもこの不況からの脱出はできないだろう。

 結局は政権交代をすることで、小泉構造改革を否定するしかない、というのが大方の見るところだろう。そして、政権交代後に官僚主導型政治から政治家が決断する政治に転換を図る。この転換のために小沢一郎氏が必要だ、と民主党の議員たちが考えているのではないか。

 朝日新聞がプリンス視する岡田克也氏に果たしてこの転換ができるのだろうか? 小沢氏に転換をやらせて、その後、安定政権ができたら、岡田氏でも前原氏でも禅譲を受ければいい。幕末維新を考えてみればいい。西郷隆盛の強力が必要な時期もあったのだ。西郷はいつもいつも成功したわけではないし、いつも正しかったわけではない。

 今出ている説では坂本竜馬暗殺の裏で仕掛け人として動いたのが西郷だったのではないか、という話もある。明るい部分も暗い部分も併せ持つのが人間だ。そして、西郷は維新転換を終えると大久保利通に主役を譲り、明治国家建設は大久保と弟子たちの手で行われた。西郷は反大久保の結集軸となり、西南戦争で死んだ。

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 小沢氏もいずれ非業の死を遂げるかもしれない。しかし、それは本当の意味での政権交代を終えてからだ、と思う。

 細川政権ができて、日本が変わるか、という幻想をふりまいた若き日の小沢氏には政治不信を深刻化した責任があり、政権交代という本来はダイナミックな動きを矮小化してしまった責任があると思う。その中途半端さを本人は相当に反省しているとも思う。

 だから、今回、本格的な政権交代を実現させるまでは小沢氏にやらせるべきではないか、と思っていた。小沢氏も同じ気持ちだっただろうと思う。

 ところが東京地検特捜部が総選挙前に今までの摘発基準を二重の意味で変えてまで小沢氏の秘書を形式犯で逮捕、起訴した。形式犯というのは政治資金規正法違反であっても「裏金」ではなく、「表金」の部分を摘発した、という意味である。

 この捜査には相当の疑義が呈されている。

 面白いのは朝日新聞は東京地検特捜部と一体になって、東京地検の闇の部分に目をつぶり続けていることだ。

 刑事訴訟法で違法捜査によって収拾した証拠は証拠能力がない、という規定がある。金丸事件の時、弁護士と検事が友人で捜索令状もなしに、事務所を訪ねてきて、預かっていった書類の中に大切な証拠があった。本来は証拠に出来なかったはずなのに、東京地検特捜部は知らん顔をして証拠申請し、裁判所も認めたことがある。「悪い奴は悪いのだから」というのが一般的に分かりやすい論理だから、弁護士も大きな声をあげずに、闇から闇に葬られた事件だった。

 今回、摘発基準を二重に緩め、秘書を逮捕したが、一般の人たちは政治資金規正法違反は別件逮捕で、本当の事件は斡旋利得罪かもしかすると贈収賄があるのではないか、と想像した。そうでなければ、総選挙後の新政権で首相になる可能性が一番大きい政治家の秘書を衆院解散が囁かれている時期に逮捕するわけがない、と思ったからだ。

 しかし、東京地検特捜部は再逮捕もせず、国民に十分な説明もせずに政治資金規正法違反罪で起訴して、小沢氏関連の捜査を終えたそうだ。

 こんなことが許されるのならば、政権交代をさせないために、今後微妙な局面になれば、最大野党の党首周辺を捜査、逮捕するという「検察政治」がまかり通ることになる。それは検察ファッショである。今までの「国策捜査」どころではない。検察そのものが政治権力を創る、という国家はファシズム国家と言わずして何というのだろうか。民主主義の否定を東京地検特捜部が行ったことには目をつぶり、本来は被害者のはずの民主党を責め続ける朝日新聞は東京地検特捜部と共犯関係になりながら、日本をファシズムの嵐の中に叩き込もうとしているのだろうか。

 そもそもの論理がおかしい。

 こんな朝日新聞の論理が有権者に影響を与えることを憂える。

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2009年3月30日 (月)

田中秀臣氏のブログ論文「ポスト麻生の経済政策」を読んでの感想

 経済学者の田中秀臣氏がブログに<ポスト麻生の経済政策を吟味する>のタイトルで、他のブログに発表していた論文を再掲していた。

http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/

 以下がその論文の大要である。

 <これからの経済政策論議で重要な点はなんだろうか?>と問いかけ、<それはGDPの減少を食い止めること、ほぼそれと同義であるが失業率の悪化を止めることである。>、<思考実験として実質GDPがだいたい570兆円規模をもって完全雇用水準にあると想定する。また麻生首相が昨年から常々口にしている「3年で景気回復」を信じるとしよう。つまり2011年度には完全雇用水準に戻っているという想定である。>

 そういう想定をした場合に、<潜在能力と現実の能力の差であるGDPギャップは、ここ1、2年は70~80兆円の間ぐらいと推測できる。この格差をいかに縮小するかが、いいかえると人々が失業せずにすむ水準まで、日本経済の体力を回復することが経済政策の取り組む大きな課題。>と「政策目標」を明示する。

 そして、「いま政治の場で主に話題にあがっている政策」として8点を列挙する。

 ①雇用の流動化案(正社員の保護をやめて採用コストを引き下げて企業が社員の採用をしやすくする)

 ②日本版ワークシェリング

 ③贈与税減税、無利子相続税免除国債の発行

 ④政府紙幣の発行

 ⑤3年後の消費税増税と対の定額給付金のさらなる増額

 ⑥日本版グリーンニューディール

 ⑦給付付き税額控除

 ⑧雇用保険拡充

 ――である。

 以下がその「政策」に関する田中氏の評価だ。約めて書く。

 ①は1人当たり賃金を引き下げることと等しい。上記GDPギャップから計算できる失業率は6~7%で、完全雇用水準の失業率を3.5%と過大にとってみると、2.5%~3.5%ほど需要ショックで失業が拡大していることになる。この社会的コストを採用コストの引き下げ、つまり賃金の引き下げだけでカバーしようというのが論者の主張。雇用者報酬は280兆円ほどなので、雇用者報酬をここ1~2年、70兆から80兆引き下げることを意味する。イメージ的には、給料がほぼ半減することで、この種の採用コスト切り下げ論者は、経済が完全雇用水準で安定すると考えていることになる。わずか2年後に給料が半減して、はたして私たちの社会はより望ましい状態になったといえるのだろうか?

 むしろ社会的不安が加速化し消費や投資が冷却することで、そもそもの問題であった総需要不足さえもさらに悪化して、ついには負のスパイラルに落ち込むだろう。厳しい不況における給与の劇的な引き下げはまた働く人たちの労働意欲も削ぐだろう。解雇規制緩和などの雇用流動化を「特効薬」であると信じている人たちのシナリオは非現実的で、論ずるに耐えない代物に思える。

 ②の「日本型ワークシェアリング」も給料半減政策と基本的な発想は同じ。給料引き下げによる従業員の労働意欲低下のおそれが高い。

 ③はいずれも資産保有の大きい主体優遇策で、世代にまたがって資産格差を拡大するおそれが大きい。この政策が総需要を喚起するのか、を見ると、無利子免税国債のバラマキ(ヘリコプター国債)は、もし満期が存在するとすれば、その時点で借り換えが行われる。

 そのとき、利子のつく国債への借り換えがあるとすれば、それは将来の課税と組み合わさっているので、総需要を喚起するかどうかはわからない。

 ④は政府が独自に貨幣を発行し、その貨幣の製造コストを上回る利益を得て、減税、社会保障減免や政府購入などにあてる政策で、「ヘリコプターマネー(貨幣)」とよばれる政策。

 国民が直接に購買力を手にし、財源問題も無視できるので「ヘリコプター国債」よりすぐれている。最大のコストは、インフレになること。日本経済のように長期のデフレ(停滞)状態が継続する社会ではそのコストはウェルカム。

 いきなりハイパーインフレになると心配する人がいるが、インフレ目標導入がその種の妄想的暴発を鎮める。日本銀行は積極的ではないのでは、やはり政府が発行するしかないであろう。もちろん日本銀行が長期国債の買いオペを積極的に拡大するならば大賛成だ。

 ⑤=定額給付金は執拗に3年後の消費税増税と組み合わせて政府で議論された。体力格差をうめるには物足りなさ過ぎる。額を増やすにしても10倍は少なくとも必要。④の政府紙幣と組み合わせた所得移転の手法として使えば財源問題もクリアでき、有効。④も⑤も日本銀行が積極的に行えば国会の政治的紛糾を経ずに実現できるが、日本は日銀が責任をとらないので、そうなっていない。

 ⑥=望ましい公共支出の例として竹森俊平氏は「代替エネルギーの研究開発をはじめ、電気自動車実用化への開発研究、充電施設などのインフラ整備、温暖化対策、省エネ対策を実施する企業への支援、ITネットワークの整備拡充を早める、成田~羽田を結ぶ高速鉄道、東京~大阪を結ぶリニアモーターカーへの先行投資など、日本が将来的に世界のテクノロジーを牽引していける技術開発などに投資する方法がいい」と述べている。傾聴すべきだが、財政政策は金融政策と組み合わさって初めて効果が出る。金融政策の支援なしでは効果は著しく減退する。

 ⑦の給付付き税額控除は、民主党が積極的にすすめる案で、自民党主導の③より経済格差是正効果もあり、消費増の効果があると期待される。

 ⑧は非正規労働者の失業の増加などをうけての緊急避難的なもので、体力格差を本格的に解消するものではない。

 金融政策を無視して議論すれば体力格差是正に最も効果が期待されるのは政府紙幣発行といえる。20~30兆円規模の政府紙幣発行は真剣に検討されるべき政策といえる。給付付き税額控除も補助的な政策として有効。

 いまの日本経済に必要なのは、長期国債の積極的な買いオペ、企業や家計の金融まで介入する日本銀行の買いオペ手段の拡大、そしてインフレ目標の導入といった超金融緩和政策導入が基本となる必要がある、と書いていた。

 以上が田中氏の論文のエッセンスだ。

 政府紙幣というのが出てくるのだが、どうもこれが胡散臭い感じがして仕方ないのだが。

 日銀が量的緩和を行うだけでなく、インフレ率との比較をこめた実質金利をマイナスにするくらいの金融緩和を行うことが財政出動の大前提だ、と岩田規久男氏の「世界同時不況」にあったが、そういうことなのだろう。

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 ニューディールでも昭和恐慌の高橋財政でもそうしたのに、日銀は福井総裁時代に量的緩和をしたものの、この実質金利が低くならなかった、とあった。だから、貨幣供給量が増えずに、デフレがおさまらなかった、というのが岩田氏の論だったと思う。

 その金融面の話を抜きにして、財政つまり、政府として何ができるか、を書いているようなのだが、なんか、こんなところなのかな。

 実際に思い切ったことをするとなれば、内橋克人氏の「共生経済が始まる」(朝日新聞出版)にあったように、地域主導の動きにカネをつけるのが一番効果的なのではないか、とも思うのだが。

共生経済が始まる 世界恐慌を生き抜く道 共生経済が始まる 世界恐慌を生き抜く道

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 中国産の野菜を食べずに国内の健康にいい野菜を少し高くても買うような雰囲気をつくり、地域の農業を育て、海産物も養殖漁業の発展につながる政策を立てる。住宅建設でも日本の木をうまく利用する。

 海外の「水」を使わずに瑞穂の国の「水」を使って自律型の経済を興隆させる、という夢はすばらしいと思う。そういう夢を持たないと、ただの数字いじりになる。そういう「数字いじり」では、この国は糸の切れた凧になって、どこにも行くのか誰にも分からなくなって、最終的には「出口なし」の状態に陥るのではないか、と危惧するのだ。

 その意味で、経済学者たちにも、もっと大きな夢を語ってほしいと思う。ヘーゲルが今見直されているように、「大きな物語」がなければ、人間的な生活もできなくなるではないか。

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佐伯啓思氏の「民意」論は傾聴に値する~3月30日産経新聞[正論]

 産経新聞3月30日朝刊[正論]に佐伯啓思・京都大学教授の<「民意を問え」という政治暴論>が掲載されていた。<国民の前に平身低頭だが>、<小沢氏の「改革」のより所>、<「民意」を動かすのが仕事>と、小見出しが三つついていた。

 <3月14日づけの「昭和正論座」に関嘉彦氏の論説が掲載(再録)されていた。初出は昭和50年2月8日とある。30年以上前のものだが、今書かれたといわれても全くわからないだろう。優れた先達の卓見というほかないのだが、また、日本の政治状況は、この30年、基本的に全く変化していないともいえる。>

 1975年と今と最も変わったのは冷戦が崩壊したことと、その影響もあって米国一極支配構造が出来て、それが破綻したことだろう。

 <たとえば、この論説の冒頭で、関氏は次のように書いておられる。「いまの国会に足りないものは率直な議論とユーモアであり、多過ぎるものは野卑な言動である」と。その原因は何か。それは、指導者や政治家が、市民や消費者、労働者、国民といった目に見えない集団の力におもねり、その力の前に平身低頭しているからだ、というのである。>

 関嘉彦氏という方も気骨のある人で、典型的な保守文化人だった。

 <まさしくその通りであり、その程度は今日さらに著しい。その結果、われわれは、今日の日本で、そもそも、「政治なるもの」が成立しうるのか、という疑問さえも発せずにはおれなくなっている。>

 その指摘は正しいのかもしれない。

 <プラトンは、『国家』の中で、民主政は、それが広く行き渡った時、まさに民主政のもっている長所が短所となって衰退する、と述べた。民主政の長所とは人々の自由を大幅に容認することである。だから、民主政の頂点では人々は最大の自由を謳歌する。このとき、強力な指導者がでてきて国民に注文をつけると、人々は彼を罵りもっと自由を求める。ところが、力のない指導者がでてくると、彼を、つまらぬやつだとののしる。>

 群集、大衆が力を持つと衆愚政治になる。民主政治と衆愚政治は紙一重だ。

 <結局、民主政の中で登場するのは、「支配される人々に似た支配者」となる。もう少し今日的にいえば、もっとも平均的な国民に似た政治家である。文字通り「国民の代表」としての政治家だ。>

 うん、それで?

 <ただし、この場合の「代表」とは、たとえばJ・S・ミルが「代議制論」で述べたように、「国民」にかわって、公的事項について大きな判断をなしうる優れた人物という意味ではない。あくまで、「民意に従って動く人物」という程度の意味である。>

 東国原宮崎県知事や橋下大阪府知事をイメージすればいいのだろうか?

 <ところが「民意」なるものが明確ではない。せいぜい、世論調査の結果である。しかも、今日の大きな政治的論点について、「国民」が確かな「民意」を形成すると期待することは難しい。だからこそ、ひとにぎりの政治家に政治の主導を任せるという代議制が成り立っているわけだ。>

 「民意は我にあり」と叫んで衆院を解散して、テレポリティクスで自民党を大勝させたファシズムの親玉のような人もいましたね。

 <したがって、政治家は、大きく民意からそれることは不適切だとしても、短期的な局面でいちいち民意によって動く必要はないのである。>

 それが筋論である。

 <ところが、「民意」こそがすべてとなってしまった。「民意」を政治に反映することだけが政治のテーマとなった。かくも「民意」を持ち上げたのは1990年代以来の政治改革である。小沢一郎氏が主導した政治改革にはいくつかの面があるが、その中心は、「民意を反映した政治の形成」である。小沢氏の真意は、彼自身がそこに属していた、自民党中心派閥である旧田中派への反感と、自民党の派閥政治の解体であったと思われるが、その際に、改革論がよりどころにしたのが「民意」であった。>

 なるほど、ここでこの論と小沢政治が結びつくのか。

 <こうして、「民意を無視する自民党」と「民意を反映する改革派」という構造ができる。したがって、今日の改革派である(はずの)民主党の主張はともかく「民意につく」ことなのである。これは困ったことだ。二重に困ったことだ。>

 そういう見方ができるのか。小沢氏の二面性の中の一方の面を言い表しているのは確かである。

 <第一に、政党の基本的政策が「民意の反映」では意味をなさない。そもそもの小沢氏の提唱した政権選択可能な二大政党などとはほど遠い。第二に、もし「民意」を本当に反映したなら、政治は「民意」とともにきわめて不安定に漂流するであろう。>

 政治が民意に沿ったことしかしなかったら、フラフラして、何も達成できなくなることは間違いない。

 <今日のような大衆化した社会では「民意」は情緒とスキャンダルと映像的な効果によって大きく動く。そのことをわれわれは小泉劇場でいやというほど体験したのではなかったろうか。>

 そういうことだ。

 <これは民主党だけのことでもない。政治改革の波と小泉政治によって、自民党も、「民意」の前に平身低頭せざるをえなくなった。「民意を問え」という声は民主党だけではなく自民党からもあがってくるのである。もし「民意」を絶対化してしまえば、政策対立する二大政党は不可能である。どちらも、「民意」につこうとするからだ。>

 なるほど、今まで語ってきたのも「民意」であり、衆院解散の際の決まり文句である「民意を問う」も確かに同じ「民意」という言葉だった。

 <ところが、この「民意」をめぐる綱引きは、政策論争よりもイメージと人気の争奪戦になるだけであろう。>

 そういうことだ。

 <麻生政権に対して、「民意を問え」という声が強い。しかし、どの政策を「民意に問う」というのであろうか。今日の政治課題は、民意が反映されていないことではなく、政治を「民意」に預けることで政治家が政治から逃げている点にある。政治とは政治理念を打ち出して、それこそ「民意」を動かす指導行為だからなのである。>

 いいことを言うなあ。佐伯さんは。

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朝日新聞の狙った通り小沢辞任は秒読みに入ったが、検察不信・メディア不信も広がった~3月30日各紙朝刊と「あらたにす」から

■千葉知事選+朝日新聞、日経新聞世論調査結果

 予想通りというか、3月30日の各紙朝刊は千葉知事選の民主候補惨敗、朝日新聞と日経新聞の世論調査結果が一斉に出ただけでなく、鳩山由紀夫・民主党幹事長の総選挙前に小沢一郎代表が進退を改めて判断する、と語ったことを報じており、「小沢包囲網」はいよいよ狭まった。こうなると辞めるしかなくなるのだろう、とは思う。

 しかし、である。このまま小沢氏が辞任していいのだろうか? 何度も書いているように、東京地検特捜部が総選挙前の微妙な時期に小沢氏の秘書を政治資金規正法違反で逮捕したことがそもそものきっかけだ。起訴を待って判断しよう、という雰囲気になったことは当然だったと思う。そんなにひどいことをしていたのかどうか、の判断を起訴という時点で見極めようという世間の見方は妥当だった、と思う。

 いろいろな予想報道もあった。秘書が政治資金規正法だけでなく、斡旋利得罪に当たるのではないか、だから東京地検は総選挙前のこの時期でも迷うことなく次期首相候補ナンバーワン政治家の秘書を逮捕したのだろう、いう思いを抱いていた人が多かった、と思う。今までのロッキード事件、リクルート事件などの捜査を知っている人たちは特に東京地検特捜部が政治に関与することを嫌がっていたことを知っているので、そう思っていたはずだ。

 ところが起訴事実は政治資金規正法違反罪だけだった。再逮捕もなかった。そして、東京地検の次席検事と特捜部長が記者会見に応じたが、カメラ取材は頑強に拒否し、質問にも実質的内容は答えない、という不誠実な対応に終始した。

 新聞によってはこの地検の不誠実さを批判したが、朝日新聞などはこの地検の説明を了として、その後、小沢一郎氏辞任に向けたキャンペーン報道を強めた。

 以前書いたように世論調査直前、1面トップで民主党内の「代表辞任を」の声を扱ったのをはじめ、社説でも産経新聞と歩調を合わせて「小沢氏は代表辞任を」と踏み込んだ。
 その結果の千葉知事選である。千葉知事選の有権者たちの出口調査を見なくとも、朝日新聞と日経新聞の世論調査でその傾向はつかめる。

 民主党は風が吹けば勝てるが、風が吹かなければなかなか過半数は難しい政党である。まして逆風の中での選挙では力の二分の一も出せない。そういう虚弱体質の政党であるうえに野党だから、予算などの「アメ」を持たず、白兵戦になれば弱い。

 千葉県知事選挙では森田健作氏が101万票を集めた。白石真澄氏もどちらかといえば自民党よりの候補者だが34万票。民主党推薦の吉田平氏は63万票。森田+白石=134万票の2分の1にも届かなかった。

 この「千葉ショック」に追い打ちをかけるのが朝日新聞の世論調査だろう。

 麻生内閣の支持率が14%→22% 不支持は70%→64%
 自民党支持は22%→27%
 民主党支持は22%→20% と逆転してしまった。
 首相にふさわしい人では麻生首相が22%→30% 小沢氏が32%→26%
 そして、「小沢さんは代表を」続けるほうがいい26%→24% 辞めるほうがいい57%→63%

 という結果だった。

 日経新聞も基本的に同じ傾向だ。

 麻生内閣支持率は15%→25% 不支持は80%→67%
 自民党支持率は34%→33% 民主党支持率は35%→30%
 次期衆院選の比例代表の投票先は民主党31% 自民党28%
 小沢氏の続投が妥当は22% 辞任すべきは64%

 という結果だった。

 これが今の世の中の大勢なのだろう。

 いくら「偏向捜査」「国策捜査」を批判しても、朝日新聞などがその批判を全く報じず、無視していれば、世の中の人たちにしてみれば、「黒い政治家がなぜ居座る」となる。朝日新聞は小沢降ろしという目的をもうすぐ達成できる。さぞかし気持ちいいだろう、と思う。もしかすると、今年の新聞協会賞を狙っているのかもしてない。

 しかし、そういうトレンドはもうとどめがたいとしても、疑問は残ったままだ。

■歌田明弘氏の検察批判

 と思っていたら、3月30日の「あらたにす」でコラムニストの歌田明弘氏が「『語らない捜査当局』でいいのか」のタイトルで書いている長い文章を見つけた。コピペする。(◆の小見出しは原文につけられた小見出し)

 <朝日新聞3月12日朝刊に掲載された、ジェラルド・カーティス米コロンビア大教授の寄稿は波紋を呼んだ。東京地検特捜部による小沢一郎・民主党代表の公設第一秘書の逮捕について、「検察の責任者が公の場に出てきて国民に説明責任を果たすよう求めるべきだ」と、次のように書いている。>

 ジェラルド・カーティス氏の検察批判である。その文章の再掲だ。

 ≪私は、小沢氏の肩を持ったり、特定の政党の側に立ったりするものではない。検察が政治的に動いているとか、検察のやっていることが怪しいとか言うつもりもない。
 しかし、総選挙を前にして、動き出した検察が沈黙し、公の場で説明しないということは、国民の間の政治不信ばかりか、国家権力に対する不信感を深めることになりかねない。この危険の重大性こそを、検察は認識すべきである。
 なぜ、検察の説明責任を求める声がもっと強く出てこないのだろうか。朝日新聞は3月10日、「民主党、この不信にどう答える」と題した社説を掲げたが、どうして「検察、この不信にどう答える」と問いかけないのか。検察のやることは絶対に正しく、疑う余地がないとでも思っているからなのか。マスコミは検察側が不機嫌になるような報道を自己規制して控えているからか。
 検察当局は、現時点ではまだ捜査中なので、すべてを明らかにすることはできないという立場なのだろう。だがそうであれ、記者会見をして説明できることは説明し、話せないことは話せないと言えばいい。肝心なのは、国家権力を行使する機関の姿が国民に見えることだ。≫

◆「メディアは“説明”求め続けよ」とカーティス氏

  <テレビでも、この主張は取り上げられた。>

 これは見ていなかった。

 <「タハラ・インタラクティブ」というサイトに掲載した原稿からもわかるとおり、田原総一朗氏はこの逮捕にいぶかしいものを感じているようで、キャスターを務めるテレビ朝日系列の『サンデープロジェクト』では毎週のようにこの事件を取りあげている。3月22日には、コメンテーターがカーティス氏の寄稿を紹介していた。>

 田原総一郎氏なのか。問題はあるが……。

 <また同じ日、TBS系列の『時事放談』にカーティス氏が出演し、なぜこうしたことを書いたのか語った。それを聞いて、カーティス氏の主張がいよいよ納得できるものに思われた。>

 これも見ていなかった。

 <カーティス氏は、アメリカでもFBIなどは説明したがらないが、メディアは「説明すべきだ」と言い続けることが大事だという。そうすることで、取り調べ当局もときにはやはり説明する必要があると思うようになる。実際、アメリカでイリノイ州知事が逮捕されたときには、なぜいま逮捕する必要があったかをシカゴの当局は一生懸命説明した。歴史的な転換点にある微妙なときには、こうしたことは必要だと語っていた。>

 なるほど、である。少なくとも私は「説明せよ」といい続けているが、こんなブロガーではなく、大手のマスメディアが言い続けないと意味がないのだろう。

 <3月20日には、堀田力さわやか福祉財団理事長が「検察に説明責任はない」と、カーティス氏への反論を同紙に寄せた。東京地検特捜部の元検事であり、テレビなどで接する氏の人柄には(おそらく多くの人が感じているように)私も好感を持っていたこともあり、どう反論するのか興味を持って読んだ。>

 私が以前、批判した文章である。

 <「政治資金規正法は、政治がカネの力でゆがめられることなく国民一般のために行われるようにしたいという、国民の長い間の悲願に応える法律」で、その違反は「形式犯」の一言で片付けられず、容疑が発生した時は、ためらうことなく万全の捜査をするのが検察の任務だと書いている。>

 そう書いてあったので、何点か指摘したのだ。

 <この主張にはまったく異存はない。しかしだからといって、検察が説明する必要がないということにはならないだろう。>

 歌田氏のように堀田市の文章に納得した人からも「説明せよ」の主張は出てきているのかぁ。

 <実際、「説明しない検察」に対する批判の声があがったからだと思うが、異例なことに検察は、3月24日の起訴のさいに、東京地検の次席検事と特捜部長が起訴理由も含めて1時間20分にわたって説明したという。>

 この説明が説明になっていなかったことは先ほど書いた。

 <日本政治の研究者であるカーティス氏は、日本人以上に日本をよく知っている面もあるだろうが、カーティス氏のこの寄稿を読んだとき、氏に言われるよりも前に、「検察や警察は、必要あるときは顔を見せて説明すべきである」と、われわれ日本人がもっとはっきり言うべきだったと思った。メディアも含めてわれわれは、「説明しない捜査当局」にあまりに慣れっこになっているのではないか。>

 その通りだ、と思う。桜の代紋をしょった国家権力の暴力装置に私たちは許される暴力をすべて預けている。説明がなければファシズムだ。

◆国民の前で説明することで不信感は薄らぐ

 <検察や警察といった組織が、何を考えているのかわからず強権を行使するというのはいかにも不気味だ。3月26日朝刊に掲載された読売新聞社の世論調査(27日朝刊に詳報)では、官僚を「信頼していない」と答えた人が74パーセントにのぼるとのことだが、官僚不信に政治家不信、そのうえ警察や検察に対してまで不信感が高まれば、日本は文字どおり終わりだろう。>

 こういう世論調査自体、問題なのだ、とは思うが。

 <誰かが出てきて国民の見えるところで説明するだけで、不信感は少なくとも幾分かは抑えられる。この逮捕に理があっても、説明することで、少しでも不信が高まることが避けられるならそうすべきだ。おそらく検察もそうしたことを思って異例の対応をしたのだろう。
 「裁判員制度」の開始まで2か月を切り、国民の司法への関心は高まっている。一方で、検察が国民から不信感を持たれる理由は、こんどの事件以前にもある。>

 捜査に理があっても、である。今、わたしなどは「理がない」と思っているのだから。

 <佐藤優氏の『国策捜査』などの著作は広く読まれている。>

 その通りだ。

 <検察の裏金を告発しようとした三井環・大阪高検公安部長がメディアでの告発直前に逮捕された事件などは、常識的に見ていかにもおかしい。>

 おかしな事件が相次いだ時期があった。

 <少なくとも特捜検察が、政治的考慮まったくなしに強権を発動するわけではないということは、これまでの歴史的な事件にからんでいろいろな証言が出ている。「世直し」といったことを含めて、特捜検察が何らかの意図を持って強権発動に踏み切っているというのは、着実に浸透している理解だろう。>

 それが「国策捜査」だから。

 <私は、政権交代があたりまえに行なわれたほうがいいとは思っているが、民主党支持者というわけではない。しかし、こんどの事件に「あらぬ疑い」を抱こうと思えば抱ける。官僚支配打破を訴えている民主党が政権をとれば、霞ヶ関の官僚たちは困ったことになるはずだ。霞ヶ関のこうした思いを汲んで検察が動いた、などという「邪推」だってできなくはないだろう。>

 官僚の代表として国家の暴力装置が他の官庁の官僚の右代表として動き、小沢氏を潰す。それに乗っかった朝日新聞が今までの「トップ利権」を貪る、という構図なのか。

 <組織で動いている検察は恣意的な捜査などできないというが、では大阪高検公安部長の例はどうなのかと思うし、組織が「民主党政権を阻止することが正義」と思った場合はどうなのか、とも思う。>

 検察が正義感だけで動く、なんて今時の人たちは思っていません。

◆規正法強化の“当事者”という事情もあるのか

 <小沢氏は、企業からの献金だとは知らなかった、政治団体からということなのでそう思っていたと言う。しかし、それでは献金の意味がない。そうした疑問は常識的に誰しも抱く。27日朝刊に掲載された読売新聞社の世論調査では、小沢氏続投に68%の人が「納得できない」と答えたそうだが、それは当然だろう。>

 ここで歌田氏は喧嘩両成敗の論に入る。これを書いていかないと、このコラムを掲載してもらえなかったんどあろう。

 <検察は特別な思いのもとに動いたととられたくないからか、そういう説明はしていないようだが、小沢氏が細川政権下で政治資金規正法を強化したときの主要メンバーで、強化のいわば当事者でありながらその精神をないがしろにしたということも、こんどの立件の背景にはあるのかもしれない。>

 この新説は初めて聞いた。

 <しかし言うまでもなく、捜査当局は、倫理的な罪を問うのが仕事ではない。自分たちのそのときどきの価値基準に基づいて強権を発動し、裁判以前に、悪い情報を流して社会的に葬り去るなどということがまかり通るようになったら恐ろしい。そんなことがあってはならないのは言うまでもないが、そうした疑いを抱かせないようにすることも、強権を握っている当局の責務だろう。>

 恐ろしい、という気持ちを持たない人は朝日新聞だけを読み続けて、日本の検察を信じ切っている幸福な人たちだろう。

 <カーティス氏は、「国家権力があくまでも公平・公正に使われていると国民が信じられることが、民主主義の絶対条件である。いま日本では政治家もマスコミも、さらに国民一般も、この問題にあまりにも鈍感になっていないか」と書いているが、まったくそのとおりだ。>

 国民を鈍感にしたのは朝日新聞ではないか。

 <検察や警察への不信感を高めないためには、「(表だっては)語らない捜査当局」を当たり前のことにすべきではない。>

 その通りだと思う。

◆メディアにするものと同質・同量の説明をネットで

 <捜査当局は、疑いをできるかぎり払拭するために、マスメディアを通すだけではなく、このネットの時代、ホームページで、記者発表の模様を伝える動画なども検討しつつ、マスメディアに対してと同じ質・量の説明をすべきだと思う。>

 私も大賛成だ。経済財政諮問会議などはホームページでこの主張に近い内容を公開し続けている。検察にできないはずはない。

 <東京地検は、24日の会見にテレビカメラが入ることも拒否したという。説明が直接、国民に届かなければ効果は乏しいし、これではカーティス氏の言う「説明責任」が果たされたのかどうかすらわからない。マスメディアの人間に納得してもらえばすむような時代ではとっくになくなっている。>

 テレビカメラを入れるな、で思い出すのは金丸信氏の自民党副総裁辞任記者会見だった。平河クラブで緊急記者会見を行い、テレビカメラの入るのを拒否した。今の検察と当時の改革前の自民党は体質が非常に似ている感じがする。

 <メディアの側も、はしょって伝えるのではなく、テレビカメラが無理だったとしても、会見の内容を活字でそっくりそのまま伝えるべきだ。記者からの厳しい質問をまじえて1時間20分におよんだというが、その内容がわれわれにはほとんどわからない。>

 はしゃっていたねぁ、あの日の報道は。

 <詳報を載せる場所がないということもあるまい。紙面やニュース番組以外にもウェブ・サイトという媒体があるのだから、記者クラブは情報を独占しているなどという不信感を募らせないためにも、できるかぎりそうすべきではないか。>

 まさしくその通りだ。いかに裁判所記者クラブの記者たちが感覚麻痺に陥っているか、である。

 歌田氏の主張は傾聴すべき点が多かった。

 朝日新聞の偏向キャンペーンが勝って、小沢氏が代表の座を岡田克也氏に譲る日も近いのだろう。その時、東京地検特捜部の面々はビールで乾杯をするのだろうか。

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2009年3月29日 (日)

やっぱり宮内義彦氏はかんぽの宿の転売を企んでいた~東京新聞3月29日朝刊より

 東京新聞3月29日朝刊1面4段記事<オリックス/当初は7施設閉鎖提案/かんぽの宿/郵政も意向配慮か>はまたまた「かんぽの宿」問題の不透明さを白日のもとに晒す新事実を暴露した記事だった。

 東京地検特捜部は政治的配慮をして小沢一郎氏の秘書を逮捕したが、本来、国民が望んでいた捜査は「かんぽの宿」をめぐる不透明な「改革利権」に検察がメスを入れることだった。

 小泉純一郎首相(当時)がさもしい気持ちで郵政改革を始めたことは理解しているつもりだが、トップの政治家の高潔な信条とは関わりなく、周辺の人間たちが権力中枢ならではの利権を食い漁る構図は昔から繰り返させれており、特に隣国・韓国では親類縁者との結び付きが異常に強いことから、全斗煥大統領時代、盧泰愚大統領時代や金泳三大統領時代の不正経理事件はすべて大統領の親族絡みだった。

 しかし、日本では流石に親族は登場しないかわりに、政商が登場する。

 今回は宮内義彦氏である。政府の規制改革会議を仕切っていた金貸しの親玉がオリックスというリース会社の権力者として知りえた枢機の情報を活用してあってはならない儲けを繰り返し、それが鳩山邦夫総務相の暴露でようやく白日の下に晒された。もしも、鳩山氏が黙っていたら、この疑惑は闇から闇へ葬り去られていたであろう。

 東京新聞の記事はオリックスや日本郵政の社長らが「なぜ安く売ろうとしたのか」の理由としてあげていた「施設の存続による雇用の継続」が非常にあいまいなものだったことを明らかにした。

 国会答弁で日本郵政社長は「ただし書き」は重要ではない、と逃げていたが、その作成経緯が明らかになったことで、その言い訳は通じなくなったのではないか。

 まず、記事を読もう。

 <オリックス不動産(東京)への売却が白紙となった、日本郵政の70の宿泊保養施設「かんぽの宿」売却問題で、オリックス側が昨年夏の第1次提案で7施設の閉鎖を日本郵政に提案していたことが28日分かった。関係者が明らかにした。同10月末の最終提案では一転して「現時点で処分等は考えていない」と閉鎖には触れなかったが、契約書の「譲渡禁止」条項に、個別転売や閉鎖が可能となるただし書きが加えられ、結果的にいつでも処分を容認する形になった。>

 という前文だ。

 <最終的に転売容認の文言を契約書に加えたことに対し、具体的な閉鎖施設案を持っていたオリックス側に配慮した格好の不透明な手続きとして批判が出そうだ。鳩山邦夫総務相は一連の選定過程を問題視しており、総務省で調査を進めている。>

 衆院解散などでこの疑惑をうやむやにしてはいけない。鳩山総務相にはこの疑惑が解明されるまで是非とも留任してほしい。

 <日本郵政は「ただし書きにある転売や閉鎖の判断は、宿泊事業全体を継続するために(一部を切り離す判断が)避けられない状況を想定したものだが、実際には当社が合理的でないと判断すれば条項を適用することはできないと考える」(資産ソリューション部)としている。>

 官僚答弁である。

 <オリックス側が1次提案で閉鎖を日本郵政に示したのは、既に休館中の柏崎(新潟県)、舞鶴(京都府)、島原(長崎県)の三施設に、小樽(北海道)、十勝川(同)、熊野(三重県)、美作湯郷(岡山県)の四施設を加えた計7施設。>

 <昨年10月末の最終提案書では、現行の同一料金を改めることなどで「(保養施設の運営は)中核となりうる事業であると認識しており、現時点で売却等は考えていない」とした。その上で、購入予定のかんぽの宿を三つの等級に分類し査定。1次提案時の、休館中の3施設を除く4施設は最低ランクとした。>

 段々と記事も微細に入ってくるので、全体の構造が忘れられてくるおそれがあるが、日本郵政がいわゆる「国民の財産」である郵政施設を二束三文でオリックスに譲渡し、その譲渡を受けてオリックスがいずれ転売利益を得ようとしていた、という疑惑が最大の中心疑惑である。

 何度も書いたことだが、中曽根康弘政権で国鉄分割民営化や電電公社の分割民営化をした際には、カネの問題で後ろ指を指されないように、手続きの透明性と公開性に最大限配慮した。だから、カネ絡みの汚い話は出てこなかった、と思う。ところが、今回の郵政民営化では施設売却にあたってカネ絡みの汚い話のオンパレードなのだ。

 なぜ1万円で落札した施設が6000万円で転売されて、国は黙っているのか? この「改革」に名を借りた構造疑惑にメスを入れない限り、国民は納得しないと思う。

 こう書くと、すぐに「郵政官僚の味方をするのか」とか「改革に逆行する」などと横槍を入れる人々がいるのだが、そうではないだろう。改革はあくまでも国民の支持をえて進めるものである。疑惑を持たれたままで進むはずがない。

 疑惑があれば捜査するのが当然なのだ。

 なぜ東京地検特捜部は過去に摘発が終わって、すでに新しいシステムで走り始めている建設談合などに関わって、この「かんぽの宿」疑惑に頬被りするのだろうか?

 検察も官僚であり、改革勢力が霞が関を席巻しており、裁判員制度導入などを主導した旧検察首脳らが財務省や他の省庁と貸し借り関係にある、という推測は成り立つ。そして、その改革官僚にぶら下がった竹中平蔵氏らの「改革勢力」が宮内氏らと組んで国民の財産を掠め取ろうとしているのだろうか?

 検察の中にも常識人はいるに違いない。決起を求めたい。

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伊藤元重氏の2年限定贈与税免除の内需拡大策は資産格差永続化策、大反対だ ~3月29日読売新聞朝刊[地球を読む]、4月3日朝日新聞朝刊

 この文章を書いているのは、実は4月3日である。この1週間の新聞の読んでいなかった記事を木曜、金曜、土曜に読み返して新聞を切り抜くという作業を最近は習慣化しているので、3月29日(日)の新聞を4月3日に読むなどという事態が起きている。だから、実は3月30日にエントリーした田中秀臣氏のブログ論文へのコメントはすでに書いており、3月28日の産経新聞「正論」の伊藤元重氏寄稿もすでに書いている。最後に、その間の日の論文を取り上げる、という時系列的にはおかしなことになっているのだが、お許しいただきたい。

 さて、読売新聞3月29日朝刊1、2面の[地球を読む]の伊藤元重・東大教授の寄稿<内需拡大策/資産・購買力、若い世代へ/「貯蓄から消費」へ転換を>を読んだのだ。3月29日の産経新聞[正論]の伊藤論文は内需拡大策が日本内に限定せず、アジアまで視野に入れたものでないと効果が薄い、と書いていて、共感を覚えたのだ。そういうコメントを書いたつもりだった。

 ところが、今回の読売新聞への寄稿は相当に問題が多い、というか、見解が分かれそうな議論だと思う。

 伊藤氏は自分がトップを務める研究機関・総合研究開発機構(NIRA)のデータを駆使しながら、老人が死蔵している資産を若い世代に渡せ、そのためには2年限定で贈与税を免除せよ、と言っているのである。

 この議論は今年正月の紙面に中曽根康弘元首相と渡辺恒雄読売新聞主筆が相次いで意見を開陳して、議論を呼ぶかと思ったものだったが、年末からの派遣切り、派遣村の衝撃が抜けていなかったから、各紙はそう大きな扱いではなかったし、議論を深めようという動きにもならなかった。

 そこで、読売新聞の王様が自分の新聞を使って、政府系学者の売れっ子である伊藤元重氏に共通の関心事を書いてもらったのであろう、と想像している。

 時系列では逆になるが、経済学者の田中秀臣氏はブログの記事でこの構想を批判し、資産格差を遺伝させるものだ、と切り捨てている。そうした批判を承知で御用学者が提案しているところを見ると、麻生内閣はこの案を実現する気なのかもしれない。

 前置きはそのくらいにして、伊藤氏の寄稿を読んでみよう。

 伊藤氏は、

 <日本経済のあるべき姿を考える時、世代間の分配の公正を実現することが重要である。今の日本は目先の問題に対応するのに懸命で、大きな負担を将来世代に押し付けている。>

 と書き出す。景気対策をどーんとやれば、財源がないから国債を発行せざるを得ず、将来世代の税負担となる、という。

 <防衛費の倍の規模にまで膨れ上がっているといわれる75歳以上の国民の医療費も、後期高齢者制度の成立が頓挫する中で、若い世代への負担となって押し付けられる可能性が少なくない。>

 まで読むと、伊藤氏のスタンスがはっきりと見えるだろう。75歳以上の後期高齢者の医療費など、本来は自己負担なしで国が面倒を見るべきなのだ。特に後期高齢者医療制度は様々な問題が出てきて、その制度のあまりの非人間的な側面が暴露される中で頓挫した。後期高齢者制度とは直接関係はないが、多田道男さんの診療報酬改定による「リハビリ切り」批判も国の高齢者・弱者切り捨て政策への根源的な問いかけだった。

 そんな重要な問題を防衛費と簡単に比較する経済学者の論理は非人間的だ、と言われないだろうか。

 <将来世代に負担を押し付けていくような社会では、明るい将来展望を描くことはできない。明るい将来展望が描けなければ、現在でも活力が生まれるものでもない>

 これは一見ご説ご尤もなのだが、伊藤氏の言わんとしていることと、私たちが思い描く「将来世代」、「活力」の意味がどうも違うようなのだ。そこは後で論じるとして、NIRAのデータを写しておこう。

▽個人金融資産は約1500兆円。その約75%を60歳以上の高齢者が保有している。

▽NIRAによると日本の高齢者や富裕層は合理的に考えうるよりも100兆円~150兆円余分にためこんでいる。これは老後の生活を賄うのに必要な資金をはるかに超えている。

▽こんなに貯めている原因は国民が過大に不安を抱えて消費を抑えているためだ。

▽日本の国民は平均的には年間可処分所得の約4倍の金融資産を保有。これは大きすぎる。ドイツやフランス国民は2倍程度の金融資産しか保有していない。それで十分と考えている。

▽ドイツ、フランスでは年金、医療制度などに関する信頼度が日本より高いかもしれない。

▽日本では将来への不安→消費抑制→景気低迷→さらなる不安という悪循環が起きている。この悪循環を断ち切らない限り日本の景気を根本から良くすることは出来ない。

▽医療・年金・介護・教育・育児支援制度の改革は極めて重要。日本国民に生まれた以上、こうした分野で不安があってはいけない。消費税引き上げは避けられない。

▽消費税引き上げで景気が悪化すると考える人が少なくないが、それは徴税サイドだけを見た話で、その税収を社会保障、教育に積極的に使うことで需要を喚起できる。

▽増税をしてもそれを全部使えば景気にはプラス効果があるという「近郊財政乗数」の議論がここでも成り立つはずだ。そのうえ、それによって国民が不安を軽減させ、消費が増えればさらなる景気刺激効果となる。

▽社会保障制度の改革は日本の中長期の活力を生み出す上で最も重要だ。

▽高齢者の資産のかなりの部分は高齢者の方々がお亡くなりになる前に使われることはない、と「100兆円以上の過剰な蓄えがある」と指摘したNIRAリポートのメッセージだ。

▽現行制度では贈与をすれば多少の控除はあるが、税金がかかる。贈与の額が多ければそれだけ税負担は大きくなるから、あまり大きな額の贈与は行われていない。

▽金融資産を多く持っている親が子供や孫に無税でまとまった金額を贈与できる機会が与えられれば、しかも、その制度が景気対策という意味合いで2年限定となればそれなりの駆け込み贈与が出てくる可能性がある。

▽消費意欲が高くない高齢者から若い世代への所得移転は新たな需要を生み出す。

▽一時的であれ贈与税を免除するのは税金を逃れるチャンスを作るのでよくないという人がいるかもしれない。しかし、若い世代に資産や購買力を移すことは基本的に日本経済の長期的な活力を維持するためにも必要だ。

▽ケインズ政策にも限界があり、景気対策の本丸は国民が自主的に消費や投資を拡大するように仕向ける政策だ。

▽過剰な貯蓄を消費に向ける政策、つまり「貯蓄から投資」ではなく、「貯蓄から消費」への転換が求められているのだ。

 以上が贈与税減免に関する伊藤氏の主張である。

 一連の文章で読むと「そうかなぁ」と思って読むかもしれないが、このように一つひとつ分節化すると、問題点が見えてくると思う。

 まず、2年の間に大資産家は子供や孫に財産を譲り渡す相続税逃れをするだろう、ということだ。相続税の趣旨はその人が稼いだ金はその人が努力して社会に貢献して対価として得た金なのでその人一代のものなのだ、という思想があると思う。みな共通の基盤で赤ん坊から出発する際に、あまり大きな不平等を許さない、資産面での平準化、資産再分配の思想・政策がビルトインされているのが相続税である。

 だから、田中角栄氏が亡くなれば、目白の御殿は維持できなくなる。当然の話だところが今急にこういう話が出てきたのはなぜか? 言い出している人たちを見ればその理由はすぐに分かるだろう。中曽根康弘、渡辺恒雄氏らは80歳以上の資産をたっぷり持っているお年よりである。その資産をむざむざ税金でもっていかれてはなるものか、と必死なのではないか。

 日本の税による再分配効果は非常に劣化している。OECD諸国の中で最低に近い水準まで落ち込んでいるはずだ。だから、社会が格差社会になっている。この政策は格差社会を将来に向けて固定化する思惑で考えられた非常に危険な政策だ、と思う。

 では世代間の配分の不公正はどうすればいいのか? 別に資産を移さなくとも、税金の使い方をかえればいいのではないか。出産育児支援を制度化し、後期高齢者医療を出来る限り無料に近づけ、失業保険制度の運用を実態に合わせ、再就職支援のレッスンも制度化する。そして、消費税を15%にする。肝心なのは所得税の税率の刻みの傾斜を厳しくすることだろう。レーガン時代のような金持ち優遇税制を改め、再分配機能を強化する。

 伊藤氏の論は金持ちが喜ぶ論だ。私が今書いたのは金持ちが嫌がる論だ。

 どっちが国民のためになるか、誰でもすぐ分かると思うのだが。

 4月3日朝日新聞朝刊政治面<補正予算「減税除外も」町村氏>に自民党の日本経済再生戦略会議会長で税調顧問の町村信孝前官房長官が贈与税の時限的減免などの減税策について「多面的に考えないといけない。案だけ示して年度末の税制改正で全部示す選択肢もある」と述べて、2009年度補正予算案に減税を盛り込まない可能性を示唆した、と載っていた。

 町村氏は贈与税減税について「『贈与を受けられる人はいいよね』という声だってある。選挙を前にして、税制改正にそれ(贈与税減税)をやるのかという意見がある」と指摘し、野党から「金持ち優遇」と批判されかねないことに懸念を示した、という。

 町村氏は税制改正を盛り込んだ場合は関連法案の成立に7月中旬までかかり、首相の解散権をしばってしまうので、首相にフリーハンドを与えたい、との理由も語った、というが、この町村氏の見識こそ当然だと思う。

 自民党の中にもこのような常識人はいるのだ。

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麻生首相の揚げ足を取ってそんなに面白いのですか?~朝日新聞3月29日朝刊から

 朝日新聞3月29日朝刊2面を見て、左端の小さなハコ記事が目に付いた。<G20、英なのに米/西に四国、東に九州/個人資産3ケタ違い/首相、間違い連発>の五十嵐誠記者の署名記事である。

 麻生首相が28日、高知市を訪れ、講演や記者団との質疑を行ったのだが、その中でいい間違いを連発した、という内容だ。

 <麻生首相は28日、訪れた高知市での講演や記者団との質疑などで、単純ミスとみられる言い間違いを連発した。 自民党高知県連の講演で、首相は金融危機をめぐる話のなかで「来週からワシントンで会議をする」。自身も出席して4月2日にロンドンで開かれる金融サミット(G20)の場所を間違えた。また学生らとの意見交換では、豊後水道の位置の説明で「西側に四国、東側に九州。この間に通っている海が豊後水道」と東西の位置を取り違えた。その後の記者団との質疑では「1兆4千億円台の個人金融資産をそのままじっと置いておいたら景気には関係しない」と発言。個人金融資産は1500兆円とされており、ほぼ3ケタ少なく言及した。>

 以上が全文である。

 面白かったでしょうか? 記者は何を言おうとしているのでしょうか? 自国の総理大臣がバカで、理解力も記憶力もなく、偉いオバマ米大統領に及びもつかないアホだとでも思っているのでしょうか?

 ご丁寧に、この記事の隣には<「政策に民意反映なし」8割>という内閣府の社会意識に関する世論調査結果が2段見出しで載っていました。バカ首相が間違えた政策ばっかりやっているから、有権者は「民意が反映されていない」と怒っている、というメッセージが伝わってきます。

 面白かったのは、首相のアホ記事と同じくらいのスペースで国際面に<同志は心配するが、険しい道は楽しみ」/金総書記「健康」報道 北朝鮮>という提灯記事が出ていました。こちらはアホだ、という趣旨の見出しはなく、金総書記はやっぱり偉いんだなぁ、と思わせるような見出しです。

 朝日新聞編集局にとっては金正日総書記は仰ぎ見る存在で、麻生太郎首相はアホなのかも知れませんが、一般の国民はそうは思っていません。

 麻生首相は日本の議会制民主主義の制度の中で総理大臣に正統な手続きで選ばれた首相だ、と思っている人が多いと思います。朝日新聞は「民意からかけ離れた自民党内の首の挿げ替えに過ぎない」と見ているのかもしれませんが、そのように自国の首相を貶めていると、日本の政治は本当に劣化してしまうのではないか、と心配です。

 「小沢辞めろ」の主張、「麻生はアホ」の主張を見て、日本の国民はどう思うでしょうか? 政党政治は「よりまし」な選択肢の中で政治指導者を選択する制度だと思います。それを、「政治家は全員、聖人君主たれ」とでも言わんばかりの主張を連日展開する朝日新聞の記者って、どんな人たちなのでしょうか? 痴漢でつかまった人などいそうもないし、記事の盗用などはしっこないだろうし、潔癖で人格高潔なのでしょうが、人は長所も短所もあるものです。

 たまには長所も見るようにして、その人のいい部分を伸ばして、日本のために全力で働いてもらう、という気遣いも必要ではないでしょうか。

 原監督の偉大さは選手の人格を尊重しながら「サムライ」の心を言外に教えていったことだと思います。星野氏の失敗は怒鳴りつけてやらせようとして、選手を萎縮させてしまったことでしょう。

 あまり悪口ばかり書いていては、政治家だって萎縮します。

 この日の毎日新聞朝刊2面の記事を少しは見習ってください。<首相はドス黒いまでの孤独に耐えられないと/麻生氏、学生に胸中を吐露?>というハコ記事です。塙和也記者の署名記事です。高知に同行取材した記者が一方はいい間違いの回数を数え、一方は麻生首相の胸中から絞り出した言葉に反応する。どちらが読者の知りたいことを書いているか、明白だと思うのですが。

 毎日新聞3月29日朝刊のその記事をコピペしておきましょう。

 <「首相は、ドス黒いまでの孤独に耐えられないとだめだ」。28日、高知市内で開かれた高校生・大学生主催のシンポジウムに出席した麻生太郎首相は、大学生から「批判されて心が折れそうになったことはあるか」と質問され、そう答えた。さらに「首相の条件は先見性や統率力などいろいろあるが、行政の頭や会社の社長を含めて絶対に孤独。孤独に耐えられるだけの体力、精神力が必要」と力説した。首相の権力の源泉、衆院解散時期ひとつをとっても、与党内には思惑が渦巻く。いつ踏み切るかに頭を悩ませ、孤独に耐える姿を理解してほしかったようだ。>

 が全文です。記者のセンスの違い、といっては五十嵐記者にかわいそうだ、と思います。朝日新聞の編集局の雰囲気が今、おかしくなっているのではないでしょうか。

 「小沢辞めろ」で辞めれば「首を取った」と裁判所担当記者が胸を張り、麻生首相の悪口を書けば、政治部記者が「書いてやったぞ」と胸を張る。そんな社内の雰囲気が透けて見えてくるのが嫌らしいのだ。

 日本国民は何も麻生首相が天才だ、とは思っていないが、企業人経験もあるし、この世界大不況に適切に対処してくれることを期待しているだけなのだ。朝日新聞が大好きなオバマ大統領も苦労しているように見える。ガイトナー財務長官の迷走が始まったらしいので、大統領は「辞表を持ってきても受け取らない」と言ったり、後ろ向きの発言をせざるを得なくなっている。

 問題は日本の景気をどう良くするか、なのだ。朝日新聞もオバマ大統領や金正日総書記に右顧左眄するよりも、少しは本気で日本の景気回復のための方策を考えてほしい。もしも、その能力があるのならば、だが。

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浜矩子氏の<君の内需は私の外需>は内需転換に消極的なのか?~3月29日毎日新聞朝刊[時代の風]+朝日新聞朝刊2月下旬の浜氏聞き書き

 同志社大学教授の浜矩子さんが3月29日毎日新聞朝刊[時代の風]に<君の内需は私の外需>のタイトルで寄稿していた。4月2日から始まるロンドンのG20首脳会議と1933年6月12日ロンドンで開催された世界経済会議を対比させて論じた文章である。

 浜氏はこの中で1933年のロンドン会議では世界中を震撼させた大不況の最中の会議だったのに、会議は二つの点で失敗した、という。①各国の手前勝手なナショナリズム②各国はこの会議を交渉の場ととらえた③交渉の場という捉え方から、各国は相互主義の原則で対応した。このため、準備委員会の段階から保護主義回避の重要性を強調したメモを作成していたのに、会議は経済的国家主義を排除することに完全に失敗した、と書いていた。浜氏は、

 <ロンドン会議は交渉の場であってはいけなかった。大不況の底なしの冷たいクレバスから、世界経済を引き上げるための知恵と力の出し合いの場であるはずだった。そこの認識が共有されていれば姑息な得点稼ぎに終始することなく窮地脱却の協調シナリオを描けたかもしれない。>

 と書き、

 <だが、国際会議となれば、どうしても誰もが食うか食われるかの交渉モードに入ってしまう。そして、相互主義の発想に陥る。相互主義とは、要するに相手より決して自分が損をしないことを旨とする行動原理だ。相手が譲歩した以上には、こちらも決して譲歩はしない。相手がこちらに危害を加えれば、同じ危害を加え返すのは当たり前。合理的ではある。だが、この調子でお互いに相手の出方をみていたのでは、世界的な危急存亡の時に当たって、全く埒が明かない。>

 と相互主義の陥穽を詳しく書いている。会議は失敗した。しかし、翌1934年互恵通商協定法に基づいてアメリカが画期的な新通商政策を打ち出した、と。「相互」にかわる「互恵」概念が初めて登場したことが画期的だった、というのだ。「互恵」とは進んでお互いに恩恵を施しあうという考え方だそうだ。

 <相手に譲歩を求めるなら、こちらも進んで少なくともそれと同程度は譲歩する。それが互恵原則だ。絶対に相手より損はしないぞ、という相互主義のケチくささとは対照的だ。発想が逆転している。互恵の精神に則って、当時のアメリカ大統領に関税一律50%引き下げ権限を付与した。ここにアメリカ大統領は相互主義に制約させることなく、世界に向かってアメリカ市場を開放する権利を手にした。>

 注目すべきはアメリカが急に博愛の精神に目覚めたからではなく、当時のアメリカは生産力を持て余していたからだ、という。ニューディール政策でいくら内需拡大を図っても、それだけでは、それ以前のバブル期にふくらんだ供給力を吸収できない。どうしても、外需が必要だった。だが、アメリカが世界に市場の門戸を閉ざしている限り、世界もアメリカに市場を提供しようとはしない。相互主義でお互いに遣り合っている限り、この袋小路から抜け出すことは不可能だった。そこに気付いて互恵主義に転換した、という。

 浜氏はだから、何も人々の精神性が高まらなくとも保護主義合戦の泥沼から脱却が出来ることを示しており、お互い情けは人のためならずなのだ、ということに気付けばいい、ということだ、と言う。

 ここまではすんなりと納得しながら読み進んだ。なるほど、76年前の6月にそんなことがあったのか、と。だが、その後の文章には疑問を持った。

 <さらにいえば、あの時のアメリカのいわば捨て身の変身は、外需がだめなら内需で行こう、という発想の限界をよく示している。30年代においてさえ、そうだったのである。いわんや、グローバル時代の今日において、各国が外需の落ち込みを内需転換で補えると思うのは愚かだ。しかも、その内需をお互いに開放しあわず抱え込むというようなことで、なんとかなるはずはない。みんなの内需がみんなの外需なのである。2009年のロンドン会議において、発想の転換をリードする賢者は果たして出現するか。>

 である。内需転換は解決策にならない、と読めるのだが、そういう趣旨で書いているのだろうか? もしもそうだとしたら、それは今の日本の論議とは全く逆だし、私も今は中長期的に外需(輸出)中心の成長路線から内需中心の成長に転換すべきだ、と思っているので、浜氏の論には反対だ。それが一点。

 もう一点は保護主義がすべていけないのか、という点である。

 デンマークが食糧自給率、エネルギー需給率で日本と似たような状態からすっかり「変身」した経緯はよく知られているが、言ってみれば世界貿易機関の勧告に背いてまでも国家政策を貫いて、省エネ、エネルギー政策の転換を成し遂げた。国家という権力意思が実行力を発揮して国民政策の転換を成し遂げた例である。

 日本も農業を活性化する過程では相当に保護主義的な国民啓蒙をせざるを得ないのではないか、と思う。韓国政府がやっていたように「身土不二」のキャンペーンは食料品はなるべく国産品を食べよう、というキャンペーンである。私は日本も政府が旗を振るかどうかは別にして、この国産品愛好運動を進めるベきだと思っている。そのためには製品偽造を許さないように法律を改正し、加工国まで含めて原産国、加工国がどこなのか、を食品に表示することを義務付けるベきだと思う。

 そうすれば、安心・安全な食品を食べようと思っている国民は選択の自由を謳歌できるし、中国製でいい、安いのがいい、という人はそっちを食べればいいのではないか、と思うのだ。最初は安い品が売れていても、国民は馬鹿ではないから、悪貨は良貨を駆逐しない、と思うのだ。

 これも米国の年次報告書的に言えば「保護主義」に入れられそうなのだが、こうしう政策をどんどん進めながら、農業を生業とする人々にインセンティブを与えることが大切だ、と思う。

 浜さん、私が誤解していたらごめんなさい。

◆朝日新聞朝刊の浜矩子氏聞き書き

 朝日新聞の2月末の朝刊で浜さんの聞き書き連載を見つけたので、関連部分だけ書き抜いておく。ようやく浜さんの基本的な考え方が分かった気がした。

 浜さんの聞き書きが朝日新聞2月17日朝刊から28日まで連載されていた。初回に浜さんの紹介として、

 <同志社大の浜矩子さんは国際経済・金融が専門の教授だが、30年以上前から膨張する米国経済に警鐘を鳴らし、今回の混乱を早くから見抜いていた一人だ。>

 とあった。この連載の中で、今回の問題に関する発言を見ておこう。

 まず日本の高度経済成長時代の構造について、

 <かつての日本的経営は驚くほど、経営的ではなかった。むしろ公的部門よりも官業的でした。落ちこぼれをつくらず、終身雇用制という福祉、年功序列型賃金という平等の仕組みを築いた。だから官は何もしなくてよかった。本来、官は市場の外部装置として、市場で生じる痛みを解消するために存在する。我々はそのために納税してきました。でも、彼らはさばり続けました。今、この矛盾が噴き出しています。>

 つまり、今までの「護送船団方式」とは言っても、護送する役割の「官」はさぼっていてもやっていけた、それがグローバル化の大波で企業がアップアップしてきた途端、対策を講じるべき「官」の無能さが明らかになってしまった、ということのようだ。

 ここからが、大きく言って保護主義に関する話になる。

 <グローバル競争を強いられている企業が雇用を守りつつ、破綻に陥らぬようにカジを取る。その「黄金の均衡点」を見いだすのはものすごく難しい。「では、全世界で生産割り当てでもやるか。日本は今年、何万台でお願いします」となると地球的全体主義になってしまう。これはまずい。>

 地球的全体主義は許されない、という。そして、ニューヨークで開かれた第1回G20サミットの批判をしてから、

 <暴走した金融の世界にどうやって「人」を戻せばいいのでしょうか。高齢化や少子化に伴って、健康、介護、看護など資金需要の高い分野は少なくありません。どうやってカネを回すか。政治が本格的に考えなければならないテーマです。>

 と言っている。まさに私の考えと同じである。

 <「人」を考えたつつましいシステムが動けば、地球も元気を取り戻せる。ここまで環境を追い込んでしまうと保護する必要があります。それでも環境、グリーンだけが世界同時不況を克服する魔法のつえのように言われるのはいかがわしさを感じます。言葉が独り歩きすると、人間は思考停止に陥ります。戒めながらやらないといけません。バイオ燃料にトウモロコシを使ったら食べる分がなくなったなんて、漫画のような話です。投機も起きます。1人がバイオ燃料が良いと判断しても、世界中でやれば不都合が生じる。合成の誤謬です。ここでも黄金の均衡が求められています。>

 <日本経済の回復に内需拡大の必要性が強調されています。でも、経済がグローバル化していて、どこからが外で、どこからが内なのか、すっきりしないんです。外国にカネを貸して、外国に日本製品を買ってもらうのが外需だとすれば、カネを国内で使ってもらえばいいわけです。金利を上げて日本にカネが集まるようにすれば、バランスがとれてきます。でもおかしいのは、カネ余りなのに、そのカネはどっかへ行ってしまっていて、財政出動どころか、政府紙幣の話まで出て、内需拡大と言っている。すごく効率の悪い話です。海外で跳びはねているジャパンマネーを呼び戻して使えば、収益もあがり、税収も上がる。それが、最も本質的な解決方法と患うのです。確かに農業、介護、環境、医療などにカネを回すことは必要です。弱者救済も必要。でも、内雫拡大いう表現は、すごく古い、予算の前倒しとかも。昔の名前で出ていますって感じですよ。本質から解きほぐす言葉になっていない。>

 なるほど、ここまで読むと浜さんの考えが少し分かってくる。海外に出ているジャパンマネーを日本に還流させればいい、と言っている。そのための政策として金利を上げろ、と。金利を上げると国債の金利も上がって、国の予算の中の国債償還費が膨らまないか? 金利が上がると円高にならないか? といろいろな疑問は出てくると思うのだが。

 そして、浜さんは次のような例をあげている。

 <欧州連合(EU)が1年ほど前、グローバル経済の犠牲者の救済プログラムを議論していました。リストラされに人やワーキングプアの人が対象でした。立ち消えになってしまいましたが、今振り返れば、本質を突いていたのかもしれません。あしき平等は非効率ですが、ふるい落とされた人を経済活動の中に戻して、経済基盤を広げる、そして有機的な役剖を果たしてもらえるような政策体系をつくればいい。オバマ米大統領が就任演説で「一部の人間に富を集中させることによって問題は解決しない」と述べたのも同じです。日本も内需拡大という言葉ではなくて、経済基盤の再生、拡大という言葉を使うべきではないでしょうか。>

 いわゆる「第3の道」の変形なのか。新失業対策として注目された議論だった。私もこの、失業者に職業訓練をして、社会に戻すという方式は貧困の固定をなくすためにも必要だと思っている。

 ただ、結論として浜さんが言っている次の言葉には納得いきかねるのだ。

 <グローバル化で地球はつながった。地球の裏側にいる人々にも手を差し伸べられるようになったのに、国家の枠に引きこもり、自分のことしか考えられなくなった。過去には社会主義が克服しようとしたが、仕組みだけで魂が入らず、全体主義になってしまいました。保護主義への懸念が広がっています。世界不況の中で誰かが抜け駆けしようとすると、奈落の底に落ちていきます。企業だってこんな時には、トップが一致団結を呼びかけ、歯を食いしばって経営再建けあたる。地球経済だって同じはずです。グローバル・ビレッジ(地球村)のような発想がほしい。グローバル化の時代、仕組みだけを整えても運営はできない。精神論ですが、心意気、魂、人間らしさが出てこないと、輝きは増しません。デュマの「三銃士」に「一人はみなのために、みなは一人のために」という言葉があります。人間の一段の浄化が求められているのです。>

 精神論になってしまっているが、地球の裏側の人たちのことを真剣に考えることも大切だが、その前に日本人の「貧困」「格差」を何とかしてほしいし、中国やインドに追い抜かれていくのを指をくわえて見ているような真似はしたくない、とも思っている。

 そのためには日本独自の成長産業を育てねばならない。育成のためにはデンマークがそうだったように、一時的に保護主義的になることもありうる。だから、私が言いたいのは「保護主義は全面的な悪」という原理主義的な規定をしないで、緩く捉えてほしい、ということなのだ。

 どうも浜さんは博愛主義者のようなのだが、私は日本の国がちゃんとしなければ博愛もできないのではないか、と思っている。

 この考え方の違いが結論の違いに結びついているようだ。

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2009年3月28日 (土)

朝日新聞が小沢辞任に向け世論調査前に偏向報道を繰り返している~3月27日夕刊、28日朝刊から

 異常な紙面づくりだった。3月28日朝刊各紙を見て、朝日新聞だけが1面トップに<小沢氏の面前 辞任論/民主代議士会/続投方針は了承>を掲載していた。小沢氏の続投に異議を唱えて席に戻る小宮山洋子衆院議員が左端に、右の方には神妙な顔の小沢氏が写っている。何としてでも小沢氏を引き摺り下ろして、岡田克也党代表を実現したい、という朝日新聞の並々ならぬ思いが伝わる紙面づくりである。

 異様と思ったのは、朝日新聞の社説だけは突出して「小沢辞めろ」論を展開して、東京地検特捜部の捜査の正統性を何度も強調していたのだが、他の新聞は基本的に「代表留任か辞任かは政党である民主党が決めること」のスタンスだった。

 そして、28日朝刊は27日に開いた民主党参院議員総会と代議士会での決定を27日夕刊に続いて報じたものだ。ついでに27日夕刊の記事を比較してみよう。

 朝日新聞は2面横見出し<続投に理解求め/小沢代表が説明/民主の参院議員総会>で「説明後、意見を述べようとした議員がいたが、周囲の議員に止められ、総会は異議なしで終わった」、「3日の秘書逮捕以降、全議員を対象に小沢氏が説明する場がなく、党内から不満が出ていた」と、いかに党内の不満が大きいのかを強調して、民主党内の争いを煽っていた。

 さらに「報道各社の世論調査では、小沢氏の続投表明に否定的な声が多く、党内では、24日以降、公然と小沢氏の辞任論に言及する議員も出始めている。今後の世論の情勢や捜査の進展によっては辞任論がさらに強まる可能性もある」と書いて、いかにも世論=朝日新聞が小沢辞任論を煽ってやる、と言わんばかりの傾斜報道をしていた。

 27日夕刊他紙はどうだっただろうか。

 毎日新聞は総合面横見出し<「続投」に理解求める/小沢氏、民主・議員総会で説明>で小沢氏の説明を詳しく報道し、最後の9行で長妻昭・党政調会長代理の「政権交代に影響が出てきた場合はご自身に何らかの判断があると思う」との発言を紹介し「辞任の可能性に言及した」と書いた程度だった。

 読売新聞は1面3段見出し<小沢氏、続投へ理解求める/民主の参院議員総会 異論出ず>で「鳩山幹事長が結束を固め、出席者から意見は出なかった」と書いた。そのうえで、最後に党内での辞任論に触れて、毎日新聞同様、長妻氏の発言を掲載していた。

 日経新聞は2面2段見出し<小沢代表、続投を表明/民主参院議員総会/意見全く出ず>で「出席議員からの意見は全くでなかった」と非常に客観的に書いていた。

 東京新聞は1面4段<小沢氏、党に続投表明/参院総会では異論出ず>で「出席者からは異論や質問は出なかった」と書いた上で、「党代議士会でも同様の説明を行う考えだが、こちらでは小沢氏に批判的な議員が、辞任を求める発言をする可能性もある」など、小沢氏の早期辞任論が出ていることにも触れていた。

 3月27日夕刊段階から朝日新聞が異様に肩に力を入れて小沢氏の首を狙っていたことをお分かりいただけた、と思う。

 その延長上の3月28日朝刊1面トップなのだ。1面トップを補完するためか、政治面(4面)トップも<「国民の声聞き判断を」/民主議員ら/小沢氏に直言>、<主流派、引き締めに躍起>とまあ、面白がること面白がること。

 少なくともこの記事を読んだ朝日新聞読者は「小沢氏は代表を降りるべきだ」という雰囲気を刷り込まれただろう。28、29両日、朝日新聞、毎日新聞などは全国世論調査を行い、その設問の中には必ず「小沢氏は民主党の代表を続けるべきか、辞めるべきか」の問いが入る。その時に、朝日新聞の読者だけは「民主党内でも辞任論が噴出したのに、執行部が強権的に押さえ込んだ。小沢らしいやり方だ。辞めさせるべきだ」と思うのではないか。そうなると、月曜日の新聞に掲載される世論調査結果は先の読売新聞、共同通信の調査結果よりもきつめに出る可能性もある。

 28日朝刊他紙の見出しを見てみよう。

 毎日新聞は2面4段見出し<小沢氏続投を了承/民主衆参議員/世論受け異論再燃も>。読売新聞は2面3段<民主 小沢氏続投を了承 衆院2人異論>。日経は2面ハコ<民主、代表続投を了承/小沢氏が経緯説明/異論は2人 様子見ムード大勢>で解説していた。産経新聞は3面2段見出し<小沢氏、続投に理解求める/民主代議士会/一部異論も了承>で政治面に発言要旨を掲載した。データ新聞・産経の面目躍如である。東京新聞は1面3段見出し<小沢氏続投を了承/民主衆参総会/異論2人だけ>だった。ただ、東京は2面の実質トップ記事<結束優先 支持勢力の作戦奏功/封じられた小沢辞任論/民主総会/ごたごたの印象恐れ>と特報面[ニュースの追跡]<小沢代表続投の損得は/揺らぐ政権交代「霞が関は大歓迎」/辞任こそ民主の決勝打!?/「検察批判とどちら勝るか」>で、党内の雰囲気を書いていた。

 つまり、1面に出したのは朝日新聞と東京新聞だけで、その東京新聞は<異論2議員だけ>の見出しで分かるように、小沢支持派が党内をまとめた、と見て、その客観的事実の上で今後の展開を予測している。朝日新聞の1面トップはやはり異様なのだ。それも<小沢氏の面前 辞任論>の活字の大きさ。嫌でも目に飛び込んでいる大きさだ。

 朝日新聞が小沢氏を引き摺り下ろし、岡田克也氏を新代表に据えようとしているのは、これまでの報道ぶりでよく分かったのだが、ここまでやってくるのか? 辞任論は2人だけのはずが、朝日新聞は注意深く読まないと、4人が辞任論をぶったかのように読めるつくりでもある。

 メディアの怖さを感じる。組織としての意思を決めたらば、どんな手段を取ってでもそれを完遂する、ということなのか? 何度も書いているが、小沢氏周辺に今の時期に疑惑が出され、検察が捜査すること自体、「国策捜査」なのではないか。今、小沢氏が辞任することはそういう東京地検特捜部の政治介入を正当化することではないか。それは絶対に避けねばならない、と思うのだ。

 民主党議員は苦しくとも、今まで通りに淡々と政権交代を目指すのが望ましいとは思うが、それを決めるのは民主党である。民主党の決定を重視して、今後もウオッチしていきたいが、そういうスタンスを取らずに小沢氏の引きずり下ろしのためには紙面を使ってキャンペーン報道を繰り返すような朝日新聞の報道姿勢はジャーナリズムとは言えない、ということだけを強調しておこう。

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2009年3月27日 (金)

福井日銀前総裁が座長の委員会が出したトンデモ試算は笑えるが…~3月27日読売新聞夕刊から

 読売新聞3月27日夕刊1面のハコ記事<温室ガス減らすと失業者増える/日銀前総裁座長の政府委試算/環境派からは批判も>の記事に驚いた。

 <温室効果ガスの大幅削減を目指すと日本は失業者であふれかえる――。政府は27日午後の中期目標検討委員会(座長・福井俊彦前日銀総裁)でそんな試算結果を示した。>

 という書き出しで、

 <京都議定書(2008~12年)に続く13年以降、どの程度の温室効果ガスの削減を目指すかを政府が決めるにあたり、国民の意見を募るためにまとめたものだが、経済へのマイナス効果が強調された内容。環境分野の投資で景気回復を目指す「グリーンニューディール」が世界的な潮流となる中、環境重視派からは「あまりに一方的」との批判も出そうだ。>

 という位置づけの提言らしい。

 <この試算は2020年までの温室効果ガスの目標を1990年に比べ4%増~25%減とする四つのケース別に、経済産業、環境両省所管の研究機関などが分析。省エネ規制を強化すると、エネルギーを大量に生産・消費する業種に悪影響を与えるとの見方から、雇用や国民の所得にも深刻な影響を及ぼすと結論づけている。最も厳しい「25%減」を目指す場合、「4%増」に比べて失業者数(2010~2020年の平均)が最大で120万人増え、家計の可処分所得(2020年時点)は年間で最大77万円押し下げられるとした。>

 <中期目標を巡っては、日本経団連などが今月17日、ガスの大幅削減は国民の多大な負担を招くとする意見広告を全国紙に掲載。これを斉藤環境相が「一方的な意見」と批判するなど、経済界を中心とした「経済派」と環境省・環境NGOなどの「環境派」との対立が表面化しつつある。>

 最後の段落を読んでようやく納得した。経済産業省や日本経団連事務局などが知恵を絞って、予測の前提条件を決めたのだろう。そうなれば、結論は見えている。

 だから、太陽光発電の普及による二酸化炭素排出量の激減、雇用創出効果とか、農業を農薬漬け農業から有機農業にかえて、石油起源の肥料を少なくする、などの抜本策は何も入れずに、ただただGDPを縮小しただけの予測なのだと思う。

 こんな予測は噴飯ものなのだが、そこの座長に福井氏が座っている、というのが異常だ。ゼロ金利、量的緩和政策で国民のなけなしの預金金利を取り上げて銀行をはじめとする企業に振り替えた張本人なのに、その政策は御用経済学者からも評価されず、量的緩和をしながら、実質金利を高いままにしていた「罪」を指摘されているトンマな総裁である。

 こういう人をなぜ座長に据えるのか? 経済界の言うことを何でも聞いて安心だからだろうが、そうした官僚の浅知恵が日本をどれだけ悪くしているか。ひどいものだと思う。

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ミサイル破壊措置命令の概要~3月27日官房長官コメント

 首相官邸のホームページにアップしてあった3月27日の官房長官の記者会見での発言と官房長官コメントをコピペしておく。会見では閣議前に開かれた安全保障会議の内容を説明していた。また、コメントは自衛隊などのとる措置の説明である。これが政府の公式声明のようなものなので、アップしておく。

 まずは、<安全保障会議の開催結果について>である。

 官房長官の3月27日午前11時からの定例記者会見での発言だ。

 <本日、閣議の前に、安全保障会議が開催されました。「北朝鮮による飛翔体事案への対応について」審議し、このたびの発射事案に関しまして、落下への対処は自衛隊法第82条の2、第3項の「緊急対処要領」により行なうことや、発射に関する情報提供など、政府の対応案についてお手元の配布資料のとおりといたしました。

 飛翔体が不具合により落下するのはどういう場合かということを具体的に想定しますと、通常は、我が国領域内に落下することはないと考えております。

 国民の皆様におかれましては、平常通りの生活・業務を続けていただきたいと思います。

 なお、政府としては万万が一に備え、関係機関が警戒態勢をとることとしております。

 北朝鮮から飛翔体が発射された場合、政府より速やかに必要な情報をお伝えします。

 テレビ・ラジオ等の情報にも注意をいただきたいと思います。

 以上申し上げましたことにつきましては、お手元の内閣官房長官コメントに記載しました。

 国会対応の関係もございまして、いちいち読み上げません。お許しをいただきたいと存じますが、ここに詳細書いてあります。この会見の後には、引き続き事務方による記者の皆さんへのブリーフィングを行なうことになっておりますので、技術的な問題等ございましたら、そちらでお尋ねいただきたいと思います。

 なお、安保会議終了後、12日に設置した情報連絡室を官邸連絡室に格上げしました。>

 この「国会対応の関係もございまして、いちいち読み上げません」というのはどういう意味なのだろうか? 社民党に遠慮している、ということなのか?

 そして、以下が「官房長官コメント」である。題名は<北朝鮮による飛翔体発射に係る自衛隊の対応について>だ。内容は以下の通り。

 <政府としては、今回の北朝鮮の飛翔体発射事案に関して、北朝鮮に対し打上げの中止を強く求めているところであるが、そのような努力にもかかわらず、北朝鮮が発射を強行した場合には、国民生活の安全・安心を期するとの観点から、以下のとおり対応するものとする。

 なお、政府としては、想定される飛翔体の飛翔態様等を考慮すると、我が国領域内に落下するケースは、通常は起こらないと考えており、国民各位におかれては、平常通りの生活を送って頂きたい。

1 飛翔体落下への対処について

防衛大臣は自衛隊法第82条の2第3項の規定に基づき、あらかじめ、自衛隊の部隊に対し、飛翔体が我が国に飛来することが確認される場合にそれを破壊する措置を命ずるものとする。(※)

防衛大臣は、破壊の措置が実施された場合には、その結果について直ちに公表する。(※)防衛大臣が命ずる措置の具体的内容については、本日(3/27)中に公表する予定。

2 飛翔体に関する情報提供について

① 政府は、北朝鮮が飛翔体を発射した場合には、国民各位への周知を図ることを目的として、直ちに地方公共団体及び報道機関に対し、発射したとの事実の情報提供を行うものとする

政府は、①の国民各位への周知を迅速かつ円滑に行うことを目的として、地方公共団体及び報道機関に対する情報提供の要領を確認する

3 飛翔体が我が国の領域に落下した場合の対応について

政府は、北朝鮮が発射した飛翔体が我が国の領域に落下したと推測される場合には、直ちに地方公共団体及び報道機関に対して必要な情報提供を行うものとする

② ①の情報提供の後、速やかに現地の確認を行うとともに、立入り禁止区域の設定など所要の活動等を行うものとする。>

 以上である。

<北朝鮮による飛翔体発射に係る自衛隊の対応について>というPDF文書はミサイルの飛行ルートなどの地図だった。

 この安全保障会議決定を受けて、浜田防衛相が自衛隊に破壊命令を発令した。

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政府の株式市場介入はダメ介入、という榊原英資氏の指摘+[大機小機]~3月27日産経新聞[正論]と3月28日日経新聞朝刊

 産経新聞3月27日朝刊[正論]は榊原英資・早稲田大学教授の<株式市場に政府介入は有効か>だった。小見出しは≪下落警戒の神経質な動き≫、≪「防衛的」では成功せず≫、≪相手を怖がらせるような≫だった。

 ニューヨーク市場と東京市場が「鏡相場」だったのに、このところ、ニューヨークが下げても、東京は8000円台を何とか保っているのは、

 <年金・貯金・簡保などの「公的」(あるいはその影響下にある)資金による買いがその主要な理由であるという。>

 という市場の観測から始まっている。そして、

 <「公的」介入が必ずしも悪いというわけではないが、現在見られるような、ある時期にあるレベル(つまり、3月末に7~8000円台を維持する)を保つために行う介入は、結局は売り場を提供し、中長期的にはさらなる株価の下落を招く可能性が高い。株価の下落については、メディアも政治家もかなり神経質である。しかし、理由があって下がっているものを人為的に止めようとしても、所詮、短期的にはともかく、中長期的には効果はない。>

 と政府の介入を批判している。そして、自分の経験を持ち出して、1998年夏のアジア経済危機の際のヘッジファンドに対抗した株価操作は、

 <当局の介入は腰がすわったものだったので、最終的には成功裏に投機を沈静化させることができたのだった。……しかし、こうした投機への対抗措置としての介入と、今の日本でのレベル維持のための継続的介入とは全く性格の違ったものである。>

 と自画自賛しながら、今との違いを強調する。まあ、時と場合によってはいいけど、今はその時ではない、ということだろう。

 <市場に介入することがすべて悪であるといった市場原理主義的立場を筆者がとっているわけではない。>

 <為替市場への介入ですら、レベルを保つための介入は成功しない。>

 という論にはやたら説得力がある。

 <なぜ介入は成功しなかったのか。それは、介入があるレベルを守る、極端な乱高下を防ぐといった目的で行われた防衛的なものだったからだ。防衛的介入、あるいは、アゲンスト・ザ・ウインド(逆風下)の介入は決して成功しない。介入は攻撃的でなくてはならないし、また、市場の流れを変えることを目的に行わなければ成功しない。>

 攻撃的介入。榊原氏の好みそうな用語である。

 <流れを変えるような介入が、今、本当にできるのだろうか。おそらく、答えはノーである。それならば、介入はしない方がいい。株価が一度大きく落ち込んで、売り方が逡巡するのを待って介入するならば、やり方によっては効果があるかもしれない。しかし、防衛的で、どこかでやめなくてはならないような介入なら、やってもしようがないし、やるべきではない。>

 というのが結論である。

 政府が株式市場に介入している、というと昔のPKOをすぐに思い浮かべてしまう。

 だから、そんなことは今はしていないだろう、と一瞬思った。

 だが、昔と違う手法での株価対策が着々と進んでいるのだ。

 日銀が銀行保有株式の買い取りを決定し、銀行の自己資本の目減りを補う資本注入に踏み切ったのも株価対策。政府が銀行等保有株式取得機構を復活させて買い取りの拡大を検討しているのも株価対策なのだ。株式ETF(上場投資信託)転換権付き官民ファンド構想なるものまである、という。

 昔のせせこましいPKOではなく、今やこのレベルでの株価対策に変質している。

 日経新聞3月28日朝刊[大機小機]で(渾沌)さんは、

 <歴史を振り返れば、株価テコ入れの需給対策は日本のお家芸だった。>

 として、太平洋戦争中の株式投信の新規導入が株価浮揚による戦意高揚が狙いだったこと、戦後の投信再開も財閥解体による株放出で緩んだ需給の引き締めを意識していた、と振り返っている。

 1965年の証券不況では政府の肝いりで銀行業界と証券業界が日本共同証券、日本証券保有組合を設立して株価を買い支えようとした、と書く。買い上げられた株は銀行と企業にはめ込まれて持ち合いの岩盤になった、と。

 そして、2002年の政府・日銀の株価対策は逆に銀行中心の持ち合い解消の受け皿という位置づけだった、という。

 そして、今回の株価対策について(渾沌)さんは、

 <過去10年で銀行中心の持ち合い解消は劇的に進んだが、その穴埋めをしたのは外国人と一部投資ファンドで、その結果、株式市場の乱用で混乱を招いた苦い経験がある。持ち合い解消の大義名分が、資本と統治を空洞化させた不健全な市場構造の正常化なら、外国人売りの肩代わりの大義名分は、保有の3割、売買の6割を外国人が占めるいびつな市場構造の正常化である。>

 と意義付ける。そして、

 <外国人売りの吸収を担うのは元本保証・株式ETF転換権付き官民ファンドだろう。>

 と言う。そして、最終的に個人所有となるものの、その中間形態が必要なので、いろいろな形態が生み出されたが、

 <戦中、戦後から今日に至る株価対策の歴史は、国民経済の中核である上場会社の保有構造を巡って揺れ動く日本資本主義の変遷そのものである。>

 として、

 <射程を日本資本主義の再設計に定めれば、株価対策は市場をゆがめるだけとの紋切り型の批判をかわせよう。そのためには、最終的に誰に株を保有させたいかを明確にし、そこに導くための法やルールの整備など骨太な出口戦略が欠かせない。>

 と結論付けていた。

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九段の朝鮮総連本部は総連の所有、という判決:早く確定判決を~3月27日読売新聞朝刊から

 忘れていたころに記事が出た。朝鮮総連の金融機関が破綻し、破綻処理をした整理回収機構が残った財産をカネにかえて処分しようとしたら、「この財産はうちのじゃない」と主張して、差し押さえを逃れようとして、「それは許さない」という機構との間で裁判になっていた案件である。ようやく第一審の判決が出たわけだ。随分と時間がかかるものだなぁ、と驚いた。

 読売新聞3月27日朝刊第3社会面3段記事<総連本部 名義移転を命令/整理回収機構、競売へ道/東京地裁>である。記事を読売新聞のネットからコピペする。

 <破綻した全国の在日朝鮮人系信用組合から不良債権を買い取り、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)に対する債権を持つ整理回収機構が、朝鮮総連と、朝鮮総連中央本部(東京都千代田区)の土地建物の登記上の名義人である合資会社を相手取り、中央本部の所有権が朝鮮総連にあることの確認などを求めた訴訟の判決が26日、東京地裁であった。>

 <浜秀樹裁判長は「実質的な所有権は朝鮮総連にある」と述べ、朝鮮総連の代表者への移転登記をするよう命じた。朝鮮総連は控訴する方針。>

 朝鮮総連は控訴する、というが、控訴審も上告審もスピードアップして、早く結論を出してほしい。

 <同機構が最終的に勝訴すれば、強制競売の手続きに入る予定で、朝鮮総連は立ち退きを求められる可能性がある。同機構が中央本部の差し押さえを求めた別の訴訟では昨年11月、同地裁で請求を棄却されていた(控訴中)。>

 別の訴訟も並行して進んでいるのか。法律的に相当に錯綜しているのだろう。なかなか分かりにくいが、結局、所有者が朝鮮総連だ、となれば、衆院九段議員宿舎近くの朝鮮総連本部の土地、建物が没収され、競売にかけられる。破綻処理を淡々と進めればいいのではないか。早くしてほしい。

 <同機構は旧朝銀東京信組などから買い取った債権のうち、約627億円分は実質的には朝鮮総連への融資だったとして返還を求める訴訟を提起。2007年6月、東京地裁が朝鮮総連に全額支払いを命じる判決を言い渡し、確定した。>

 627億円かぁ。バブルの時だったらあの土地も高く売れただろうけれども、いまや「かんぽの宿」のいい土地が1万円で買える時代だから、土地を売っても借金を払い切れるのかどうか。朝鮮総連もこの世界大不況までは予想できなかったのだろう。前に売っておけば、どこか代替地も買えたのに。

 <この判決に基づき、同機構は中央本部の土地建物を差し押さえようとしたが、登記上の所有者は合資会社「朝鮮中央会館管理会」となっていたため、同機構は、今回の訴訟で名義の書き換えを求めていた。>

 北朝鮮はこういう案件は頭がまわる。こすっこいくらいにやってくる。整理回収機構がここまで突き崩したのには相当の苦労があったと思う。ご苦労様、である。

 <朝鮮総連側は「管理会に所有権があることは歴史的経緯からも明らか」と主張したが、判決は、「朝鮮総連には法人格がないため、管理会が形式上、名義人になっていたに過ぎない」と指摘した。>

 「歴史的経緯」ですか。南も北も同じですね。竹島問題を思い出す。法律論で分が悪いとすぐに「歴史的経緯」「歴史問題」を持ち出し、日本側が国際司法裁判所に判断を仰ごうとしても反対する。同じじゃないですか。

 こういう手法がいつまでも有効だと思ったら大間違いだ、ということを思い知ってほしいものですね。

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朝日新聞の北朝鮮擁護姿勢は分かるが、社説の言葉は何を意味するのか?:ミサイル発射問題~3月27日朝日新聞朝刊

 朝日新聞はありもしない「議論」をことさら取り上げて、国民の不安を煽るのはやめてほしい。3月27日社説<北朝鮮ミサイル/備えつつ、冷静に対応を>を読んで、そう思った。
 北朝鮮をかばいたい、という論説委員の心情は分かったが、朝日新聞も一応は日本の新聞なのだから、北朝鮮の言い分をそのまま受け入れるような物言いや、逆にことさら北朝鮮のミサイルを「日本を狙った脅威」とするような書き方を考え直してほしい、と切に願うのだ。

 発行部数2位の全国紙の影響力は、もしかすると論説委員らが考えている以上に大きいのだ、と謙虚に考えてほしい。

 問題だ、と思ったのは次の文章である。

 <北朝鮮の真の意図がはっきりしないのは事実だが、いまにも北朝鮮のミサイルが日本を狙って発射されるかのような議論は行き過ぎだろう。いたずらに人々の不安や地域の緊張をあおるべきではない。>

 この文章を読めば、「いまにも北朝鮮のミサイルが日本を狙って発射されるかのような議論」が戦わされているように受け取れるのだが、そのような議論は寡聞にして聞いたことがない。どこで、どういう表現で議論がなされているのだろうか? 具体的に教えてほしい。

 少なくともテレビのワイドショーでも、朝のニュース番組でも夜のニュースショーでも、見た限りでは「北朝鮮がテポドン2の改良型を撃つ。そのブースターが日本の領土、領海に落ちてくる可能性がある」、「打ち上げ失敗の時に、破片が日本列島に落ちる可能性がある」という議論だったように思う。日本を狙ったミサイルではなくとも、仙台や秋田市にその破片なりが落下したら、思わぬ被害が出るかもしれないから、それを未然に防ごう、という、非常に抑制的な議論をしている、と思う。

 以前のように「ミサイル基地を事前に叩くべきだ」などの議論にはなっていないし、北朝鮮が日本の米軍基地を狙ってミサイル攻撃を仕掛けてくる、などとは誰も言っていないと思うのだ。

 もしも、私が知らない場所でそういう議論が盛り上がっているのであれば、不明を恥じなければならないが、そうでないのであれば、朝日新聞社説のこの言説に対して、自らが書いている「いたずらに人々の不安や地域の緊張をあおるべきではない」という言葉をそのままお返ししたいのだ。

 朝日新聞はなぜこのように極端な言説を弄するのだろう。

 国民が冷静にものごとに対処しようとしている時に、煽ることはなかろう、と怒りさえわいてくる。

 朝日新聞の社説は毎日新聞社説に続いて「人工衛星でも許されない」と堂々の論陣を張り、さすが朝日新聞、今回は相当に日本国民の側に立った論説を書いているなぁ、と感心したばかりだったのに、その姿勢は「偽装」だったのだろうか?

 <発射すれば、北朝鮮の「弾道ミサイル計画に関連するすべての活動の停止」を盛り込んだ国連安全保障理事会の決議に反するのは明らかだ。>

 <破壊措置命令を受けて自衛隊は、海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を搭載するイージス艦を日本海に、地上配備型の迎撃ミサイル(PAC3)を両県に配備する。万一の事態に備えておくことは当然だろう。>

 という主張はその通りだ、と思って読み進めた。

 その後の、

 <同時に政府は、国民が必要以上に不安を抱かないよう努力すべきだ。>

 を読んで、「国民の必要以上の不安」の意味合いが分からなかったのだが、次の

 <自衛隊の配備などの対応策を公表するのはもちろん、発射された場合には自治体などに迅速に情報を伝える必要がある。住民や消防、警察の対応策を事前に詰めて、周知しておくことも大事だ。そうすることで安全で冷静な対応が可能になる。>

 を読んで、それはそうだ、と思った。この朝日新聞社説に触発されたわけではなかろうが、官房長官は27日午前、北朝鮮のミサイルが発射された場合、すぐさま国民に情報を伝達するので、テレビ、ラジオに注意してほしい、と呼びかけている。これは大切な危機管理である。

 ところが、次の文章で、

 <北朝鮮の真の意図がはっきりしないのは事実だが、いまにも北朝鮮のミサイルが日本を狙って発射されるかのような議論は行き過ぎだろう。いたずらに人々の不安や地域の緊張をあおるべきではない。>

 が突然、出てくるのだ。

 <政府は冷静に備えを講じつつ、北朝鮮に発射をやめさせ、核やミサイル開発を通じた脅しの外交を断念させるための努力を強めねばならない。日本とほぼ同じ立場をとる米国、韓国と連携し、国際的な圧力の輪を広げていくことが重要になってくる。>

 <4月2日には金融サミット(G20)で各国首脳がロンドンに集まる。麻生首相はオバマ米大統領、李明博韓国大統領らとともに、中国やロシアなどの首脳を巻き込み、国際社会の強いメッセージを北朝鮮に送り続けるべきだ。>

 の結論にも異存はない。今の時点では日本の受けている脅威を国際社会に理解してもらうことが大切であり、国連安保理非常任理事国である日本が安保理常任理事国の理解を得て、制裁決議案を採択できるよう全力をあげるのは当然だからだ。

 このように、全体の流れは、しごくまともな主張をしていると思われるのに、なぜあの問題部分が紛れ込むのか? 疑問に思った。

 もしかすると、朝日新聞はサブリミナル効果を狙って、まともな論説にこのような北朝鮮擁護の主張をこっそりとまぶし込み、国民をその方向に善導しようとしているのだろうか? もしも、そういう思いが少しでもあるのだったらば、それは間違いだ、マスメディアとしての分を越えている、と言わざるを得ない。

 社説の言い方を真似て、次のように言っておこう。

 <朝日新聞の真の意図がはっきりしないのは事実だが、いまにも右翼の言説が日本を覆うかのような議論は行き過ぎだろう。いたずらに人々の不安や読者の緊張をあおるべきではない。>

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2009年3月26日 (木)

佐藤優氏のテロリズム論と現代日本論~毎日新聞3月26日夕刊[中島岳志的アジア対談]より

 毎日新聞3月26日夕刊文化面[中島岳志的アジア対談]はゲストが作家の佐藤優氏とあって、期待して読んだ。期待に違わず面白かった。見出しは<高天原、『資本論』にインテリジェンス/保守が反貧困の論理を 中島さん/雨宮、勝間両氏に注目 佐藤さん>だった。鈴木英生記者は、

 <今回のゲストは作家で起訴休職中外務事務官の佐藤優さん。右の『正論』『諸君!』から左の『週刊金曜日』『情況』まで、膨大な数の雑誌に登場し、専門分野のロシアやインテリジェンス(特殊情報)、キリスト教に保守思想、マルクス主義まで縦横に論じている。中島岳志さんとも貧困問題や国際問題などで濃密な議論が交わされた。>

 と書いているが、見出しだけ見ても相当に幅広い話が出たようにみえる。

 面白そうな部分をピックアップして書き写しておく。

▽中島氏=最近、貧困問題を解決すべしとの政治的共通認識が一定程度はできたが、一部「保守」から労働運動などへの冷ややかな視線が出て来た。

▽佐藤氏=昨年来『中央公論』に雨宮処凛さん、『文芸春秋』に湯浅誠さんが登場した。日本の社会体制を強化し、資本主義を安定的に発展させる観点で貧困を考える流れが保守に出来てきたのはいい現象だ。むしろ、問題は保守、右翼の中の分断だ。近代保守主義の父、バークの根っこには中世の実念論があり、この論は日本の高天原と極めて近い。我々の背後には必ず形而上的、超越的なものがあるという感覚が一部保守や右翼層から失われたので、この層からものすごい罵倒やせん滅戦が生まれる。あれは、最悪のレーニン主義とでも言うべきものだ。

▽中島氏=保守は今こそ貧困問題を乗り越える論理を積極的に展開すべきだ。

▽佐藤氏=私は違う意見だ。貧困は保守ではなく、左翼・労働運動の課題で、保守はそれを邪魔しない形で関与すべきだ。今、思想的に新自由主義を乗り越えつつあるのは2人の女性。雨宮処凛さんは「生きさせろ」、最低限の人としての尊厳を維持させろと言う。映画「遭難フリーター」の監督で、派遣労働者でもある岩淵弘樹さんの昼食は80~100円。私のいた東京拘置所の方がずっといい。だから、企業は最低限、東京拘置所と同じ飯を保障せよと。東京拘置所でもウナギやビフテキは出るから。もう一人は勝間和代さん。彼女の著書を新自由主義的に勝つ自己啓発本とする理解は全く違う。彼女は、マルクスの『資本論』の論理だと熟練労働者にあたる。新自由主義者から「断る力」の発想は出てこない。彼女は余暇や生活領域を分けて残りで働き、その単価をどう上げるか考える。しかも印税の2割を難民支援などに寄付する。経済合理性を排している。それに対し資本家のマニュアルは『資本論』だ。資本主義システムが回るために必要な賃金の要素は三つある。まず、家を借り、服を買い、食事をして、ちょっとしたレジャーをするお金。第2は、家族を持ち、子供をつくり、教育を与えて立派な労働者にするまでの経費。独身者の結婚資金やデート資金もそこに入る。3番目、技術革新に対応する教育費。これが資本主義システムに不可欠だと、マルクスは資本家向けに言っている。今の日本は2、3番目が忘れられ、一つ目もぎりぎりに切りつめている。これでは資本主義そのものが崩壊する。その賃金は、端的に言えば暴力が水準を規定する。つまり、資本家の方が強いから、労働者が団結しない限り、資本主義システムは持たなくなる。組織された戦闘的な労働組合は資本主義の維持に必要だ。保守的で金のある人はその金を労働運動に出すか、労働運動が救い切れない、たとえば湯浅誠さんの活動に1万円、2万円を出す。こういうできるところからの再分配が、保守の仕事だと思う。ワンクッション、勝間さんみたいな位置の人を挟む必要もある。熟練工で年収1000万円を超す。でも、自分は労働者という意識を持ち、200万円は再分配に回す。そういうお金がプールされればいい。おさい銭箱方式だ。いくら入れても関係ない。神主たちが勝手に使うということで。

▽中島氏=その動機付けはどうやって作るのか?

▽佐藤氏=難しい。キリスト教の土壌があれば簡単だが。

▽中島氏=ナショナリズムはどうか?

▽佐藤氏=敵なしで築くナショナリズムがあり得るのか。敵のイメージで日本をまとめるなら中国や北朝鮮、ロシアでは無理。もっと強い敵を相手にしないと。反米ナショナリズムだ。それをやり切れるのか。

▽中島氏=しっかりした政府への信頼感という形でのナショナリズムは?

▽佐藤氏=無理だから、湯浅誠さんみたいな人が重要だ。東大法学部で大学院まで入ったわけだから競争社会に強い。でも、今の社会があまり良いとは思えなかったのだろう。こうした何人かの指導的キャラクターが、物語を作ってゆくのではないか。

▽中島氏=現状を戦前の世界恐慌ごろにたとえる人もいるが?

▽佐藤氏=もう少し前かな。

▽中島氏=1919年ごろか。戦後不況で労働運動や普選運動が高まった。渦中にいたのが21年に安田財閥の安田善次郎を殺した朝日平吾だ。うっ屈と社会状況が相まって安田を殺す。彼の影響で1カ月後、原敬が暗殺され、昭和維新テロの土台になる。この流れの前夜と似ている気がする。

▽佐藤氏=田母神俊雄さんみたいな明るいキャラだから、あの程度で済む。あの感覚は社会常識から突出していない。朝日平吾級の人や、もっとアジテーター的な力のある人が出てきたらどうなるか。

▽中島氏=昨年の元厚生事務次官殺傷事件でも……。

▽佐藤氏=官邸筋にも新聞社のデスクにも読者にも、「テロが起きてもおかしくない」「テロでもないと世の中は変わらない」という深層心理があったと思う。それを整理しないと。テロをする側から見れば、テロをされるヤツは悪いヤツとなるでしょう。でも、テロをするとその悪いヤツが被害者になって不必要な同情が集まる。また、国家はテロが起きると過剰な暴力でテロリストを抑える。一度堰を切って暴力を使うようになった国家はものすごく怖い。

▽中島氏=佐藤さんは国家機能強化とファシズムを結びつけないための思想的作業を重視している。その土台が崩れつつある。言論の文脈を抜いた一部に熱狂的な批判が起きる。似た現象が世界である。インドも昨年のムンバイのテロ以降、パキスタンへの中傷競争が激しい。

▽佐藤氏=心配なのは、小さな核がカシミールで爆発すること。死傷者の数にもよるが、各国がエゴイスティックになっている状況で大きな国際的反発が起きない危険性がある。そこで、核兵器のハードルが下がる。すると、各国がテロに過剰反応を起こす。9.11以降のテロに対する意識は、戦前の「コミンテルンの脅威」と同じだ。コミンテルンはネットワーク型組織で各国は脅威にならないでくれと交渉する相手国がなかったから、国内で「非国民」排除に向かった。9.11以降も交渉相手がいない。この状況はファシズムに結びつきやすい。イギリスあたりは多分、アフガニスタンにタリバンを含めた連立政府ができることを考えている。それでタリバン穏健派という認識の枠組みを作る。イギリスはかつてアイルランド紛争でテロ組織IRAの政治部門であるシンフェイン党に議席を与えた。取引できるゲームのルールを作ったらIRAはテロをやめた。こういう連立方程式を解くために地域と国際情勢、インテリジェンスの専門家が学際的に考えないといけない。

 以上である。

 ほぼ全文を書き写してしまった。

 やはり佐藤優氏の論理はすごい。

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ジェラルド・カーティス教授も東京地検特捜部の独走を批判していた~毎日新聞3月26日夕刊・金子秀敏氏コラムから

 毎日新聞3月26日夕刊2面コラム[早い話が]で金子秀敏専門編集委員が<外国人にも不思議>というタイトルで、「東京地検特捜部VS.小沢一郎の戦い」について書いていた。私も以前取り上げた堀田力氏の検察擁護論と米国の日本政治研究家であるジェラルド・カーティス・米コロンビア大学教授の検察批判と、いずれも朝日新聞への寄稿を題材に、政治論と法律論の違いをクリアカットに説明し、今は政治論こそが必要だ、と説いている。

 「小沢氏は辞めろ」と書いた朝日新聞の論説委員にも、じっくり読んでいただきたい論だった。

 <小沢一郎民主党代表の公設秘書が政治資金規正法違反で起訴された。総選挙が近いというこの時期だけに、国策捜査ではないかと疑う人がいる。反対に「政治資金規正法違反事件などで終わるはずがない、本筋は贈収賄事件だ」という検察への期待もあったが、結局、規正法違反だけだった。こちらは空振りだ。>

 という導入部があって、

 <捜査が不自然だと思うのは日本人だけではない。米国の政治学者、ジェラルド・カーティス氏が朝日新聞紙上で「検察には説明責任がある」と意見を展開している(3月12日朝刊)。「数カ月以内には総選挙が行われ、政権交代が取りざたされている。その微妙な時期に『政治資金規正法違反』という形式犯で、次期首相になる可能性がある人物の公設秘書をいきなり逮捕するとは、極めて異例である」と問題提起した。国民が納得する大義を示さないと国民は国家権力に不信を深める。そのほうが問題だという。>

 そういう論が朝日新聞に出ていたことを失念していた。

 <しばらくして元特捜検事の堀田力氏が「検察に説明責任はない」と反論を投書した(3月20日朝日新聞朝刊)。2人の議論はかみ合っていない。カーティス氏は「総選挙を前に」した特殊な政治状況を前提にして、検察の動きを批判した。この点に100行の文章のうち約46行を費やした。「形式犯である」という点は2行だけだ。>

 なるほど、分量比較ときましたか。これも一つの客観性を担保できる比較法ではある、と思う。

 <一方の堀田氏は80行余りの文章のうち、捜査時期についての説明は11行。「選挙期間中などよほど特別な事情がない限り、端緒が得られれば進めるべきだ」と割り切る。一方、政治資金規正法違反事件が「悪質というほかない」という詳細な論証に約45行を割いた。分量で一目瞭然だろう。カーティス氏の議論は政治論であり、堀田氏の反論は法律論。法律論だから「なぜ捜査がいまなのか、なぜ総選挙の直後まで延ばせないのか」という素朴な疑問に対する答えにはなっていない。時と場所と場合というTPOの説明が欠けている。>

 そういうことなのだ。なるほど、と思った。法律論だけで通れば大岡裁きはいらなくなる。

 <日本国の主権者は国民である。その国民が直接主権を行使する重大な行為が総選挙である。国の土台を作る大事な手続きであり、選挙の公正な実施に悪影響の出るあらゆる雑音は避けなければならない。それが民主主義の憲法の精神というものだ。カーティス氏が「形式犯にすぎない」と言ったのは、総選挙の公正な実施という憲法の要請と比べれば政治資金規正法違反事件を摘発する緊急性は低いということだろう。>

 どうですか? 堀田さん。私もこういうことだ、と思う。東京地検特捜部は、あんないい加減なブリーフィングで済ますことなく、きちんとテレビカメラを入れて、国民に向かって今回の捜査について説明する義務があると思う。

 「このままでは民主党が負けるかもしれない」、「選挙は守りでは負ける。小沢さんがトップでは攻められない」など、民主党の小宮山洋子議員らが言い始めた。地検の動きがなかったら、出てこない発言である。このような動きになった責任は東京地検特捜部にある、と思う。ただ、なかなか国会議員はそういう発言ができない。それまで見越して捜査を強行したとしたら、それこそ「国策捜査」ではないか。

 衆院解散・総選挙の前の微妙な時期を狙った検察の「独走」捜査がなぜ行われたのか、なぜ小沢氏の秘書の起訴罪が政治資金規正法だけだったのか、なぜ今までの摘発基準を低くしてまで小沢氏を狙ったのか――地検には「説明責任」以上の「説明義務」がある、と思うのだ。

 堀田さん、不満だったら、もう一度、朝日新聞にでも寄稿してみてください。というより、小沢氏が民主党の代表から去ればそれで目的が達成された、ということであとは知らぬ顔の半兵衛を決めつけるのでしょうね。そういう対応が見通せるから、国民の検察不信が募るのだ、ということにもっと考えをめぐらせていただきたい。

 この一件を小沢辞任で決着させ、検察の歴史に「野党党首の首を取った」という金字塔を書き込んで、あとは担当検事たちが出世の階段を上っていくだけですか。自分たちが国家の暴力装置だ、という自覚のない歪なエリートほど怖いものはありません。いつか、刃は国民に向かってくるでしょう。その時に朝日新聞論説委員がギャーギャー騒いでも遅いとは思うのですが。

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テポドン2発射寸前というのに日本の情報収集態勢は…~読売新聞3月26日朝刊、産経新聞3月25、26日朝刊と[正論]、防衛研究所ブリーフィング・メモなど

 ◆北朝鮮がミサイルを発射台に搭載

 産経新聞3月26日朝刊は1面トップ<北ミサイル発射台搭載/きょうにも完了/燃料注入へ>でいよいよ北朝鮮がミサイル発射準備を本格化させた、と書いていた。記事は以下の通りだ。

 <北朝鮮が咸鏡北道舞水端里の基地で長距離弾道ミサイル「テポドン2号」改良型の発射準備を進めている問題で、格納庫からミサイルを運び出し、発射台に取り付ける作業に着手したことが25日、分かった。26日中にも発射台への設置をほぼ完了するとみられている。残る作業は燃料注入だけで、発射に向けた準備は最終段階に入った。>

 が前文。

 <北朝鮮は今年1月末ごろから改良型の発射準備を開始。基地にミサイルを運び込み、格納庫で組み立て作業などを行っていた。発射台に設置後は燃料注入に移る。注入には5~7日かかるとの見方がある一方、注入作業自体は数時間で終了するとの指摘もある。>

 どうも情報が取れていないようなのだが、米国筋は2~3日と言っているようだ。

 <舞水端里の基地では、発射台付近の地下に液体燃料の注入施設を新設したとの情報がある。これが事実であれば、偵察衛星で燃料注入の状況を把握することは困難とみられる。>

 そういうことで、隠蔽工作が着々進んでいるようではある。米国の軍事衛星の情報だけでは正確な情報は得られないだろう。

 <この時期に発射台に設置することで、北朝鮮が「人工衛星」の打ち上げとして通告した4月4日から8日までの間の発射は、一層濃厚となった。平成18年(2006年)7月にテポドン2号の発射に失敗しており、今回は発射成功に向け、事前演習を入念に繰り返すのではないかとの分析もある。>

 やはり4月4日~8日なのか? それにしては、米国の情報は何なのか?

 <韓国の聯合ニュースは23日、情報当局の分析として、今週末ごろ発射台に設置され、燃料注入が始まる可能性があると報じていた。>

 産経新聞1面トップの記事は以上だ。

◆米国務長官が北に警告

 米国は北朝鮮に警告はしているが、実効性のあるものとはとても思えない。

 産経新聞ウェブ版は3月26日午前11時12分、共同通信の外信記事配信を<北ミサイル発射なら「高い代償」/米ヒラリー長官>の見出しでアップした。メキシコ市内で記者会見する長官の写真がついている。記事は以下の通りだ。

 <クリントン米国務長官は25日、メキシコ市内で、北朝鮮が「人工衛星」と主張する長距離弾道ミサイルの発射について「高い代償を払い、6カ国協議に影響する。国連で安全保障理事会決議への違反を提起する」と警告した。クリントン長官は「いかなる目的であれ、ミサイルを発射しようとすることは挑発的行為だ。国連安保理の決議に違反する」とした上で、発射された場合は「この挑発的行為と決議違反は見過ごされない」と指摘した。メキシコのカルデロン大統領らとの会談後の記者会見で述べた。>

 <また、米国防総省のモレル報道官は25日の記者会見で、人工衛星をロケットに載せて打ち上げる技術は「軍事転用可能」と強調。発射した場合は国連安保理が2006年に採択した北朝鮮制裁決議に「違反する」と重ねて明言した。実際の発射には液体燃料の注入が必要。注入後のミサイルは燃料の重みで不安定になるため「2~3日中に発射される可能性が高い」(米情報筋)とされる。>

 そういうことなのだ。注入してから発射までが2~3日。発射が早くても4月4日とすると、注入終了は4月2、3日ごろ。注入にどのくらいの時間がかかるか、だが、26、27日ごろには注入を開始するのかもしれない。

◆[北ミサイル迎撃]の技術・法制面の検討

 産経新聞3月25日朝刊[イチから分かる]<北ミサイル迎撃/技術・法制面からは撃墜可能>で一応、ミサイル迎撃システムのお勉強をしておこう。赤地真志帆記者の署名記事だ。

 MDシステムは米国の早期警戒衛星などの情報でミサイル発射を探知し、着弾前に迎撃する仕組み。ロケット・エンジンの燃焼が終わり、安定軌道に入った大気圏外でイージス艦の海上配備型迎撃ミサイル(SM3)が撃墜を行い、失敗すれば地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が大気圏再突入時に迎撃する。ミサイルを打ってくれば、今回、初実運用だそうだ。

 SM3で迎撃可能な高度は約100㌔。北朝鮮がハワイ近くまで届く最大射程でテポドン2号を発射すれば、高度は1000㌔にも達し、撃墜はできない。ただ、政府はミサイルが不具合で日本領内に落下する事態も想定。高度100㌔以下の上空を通過する場合も日本の領空に引っかかるため、撃墜の可能性を検討中。北朝鮮は4月4~8日の間に「人工衛星」を打ち上げるとして、国際海事機関(IMO)などに危険区域を通告。秋田県沖約130㌔の海域は約9割が日本の排他的経済水域(EEZ)と重なり、同海域には1段目のロケットが落下する可能性が高いが、「発射時の微妙なずれで日本本土や領海に落下し、大きな被害が出る可能性もある」(防衛省幹部)。自然落下するロケットや部品などは降下速度も遅く、自衛隊では「撃墜は十分可能」とみているそうだ。

 SM3で撃ち漏らしたミサイルを着弾前に撃墜するPAC3についても関東の4カ所と浜松、岐阜に配備されている。射程が数十㌔と短いため、落下の可能性が高い地点にあらかじめ移動させておく必要はあるが「北朝鮮の通告で飛行ルートは判明しており、現在の配備数で十分カバー可能」(航空自衛隊幹部)と運用に支障はない、という。

 平成17(2005)年の自衛隊法改正で「弾道ミサイル等に対する破壊措置」(82条の2)が新設され、法制上の根拠も整備されている。日本に飛来するおそれがあると認められる場合は、防衛相が首相の承認を得て破壊措置を命令。明確な発射兆候がない場合でも防衛相があらかじめ「緊急対処要領」を作成し首相の承認を得ておけば、空自航空総隊司令官の判断で撃墜が可能だ、というのが記事の本記だった。

 そして、用語解説的にSM3とPAC3について改めて説明していた。

 海上配備型迎撃ミサイル(SM3)=イージス艦搭載の迎撃ミサイル。イージス艦のレーダーで標的を探知、追尾し、撃墜する。平成19(2007)年度に「こんごう」、20年度に「ちょうかい」に配備された。日本全土をカバーするには、日本海にイージス艦2隻を展開させることが必要だ。2度行われた発射試験では1回は成功し、2度目は迎撃に失敗している。迎撃可能高度は約100㌔だが、より高高度での迎撃を可能とする「21インチミサイル」を平成26(2014)年度までの期間で日米共同開発中。

 地対空誘導弾パトリオット(PAC3)=地上にある移動式発射機(ランチャー)に搭載する。車載の移動式レーダーで弾道ミサイルをとらえ、ミサイルの大気圏再突入後、高度十数キロの領空で迎撃する。平成19(2007)年の入間基地(埼玉県)への配備を皮切りに、習志野(千葉県)、武山(神奈川県)、霞ケ浦(茨城県)、浜松(静岡県)、岐阜(岐阜県)に配備された。平成22(2010)年春までに九州を含む4高射群相当への配備を完了する予定。昨年9月に米ニューメキシコ州で行った初の発射試験では模擬ミサイルの迎撃に成功している、とあった。

◆佐々淳行氏の<日米正念場の北ミサイル対応>も勉強になった

 産経新聞3月25日朝刊[正論]は初代内閣安全保障室長・佐々淳行氏の<日米正念場の北ミサイル対応>だった。<無法“砲艦外交”許すな>、<総理は事前に迎撃命令を>、<米国民の感情悪化避けよ>の小見出しがついている。主張の概要は次の通り。

 北朝鮮の「平和目的の人工衛星打ち上げ」声明を、

 <無法にも「(日米が)迎撃すれば戦争。報復的軍事攻撃を行う」と軍事的恫喝を加えてきた。国際社会に対する許し難い挑戦であり、こんな北朝鮮の“砲艦外交”に屈したら、それは日本の恥である。>

 と一蹴して、堂々の対処を主張。麻生太郎総理の「日本上空飛来の場合は、これを迎撃する」との表明を全面支持する、と言いながら、

 <だが官邸やマスコミでは、「もし本当に人工衛星だったら」とか「撃破すると危険物が日本に落下する」、あるいは「日本を飛び越してアメリカに向かうようであれば、撃墜することは集団的自衛権の行使につながる」といった、昔からの事なかれ主義の議論もきかれる。ミサイルの性能もよくわからないのに、「撃っても当たらない」という、初めからギブアップの敗北主義も横行している。>

 と、進歩的文化人たちに影響された臆病な議論を「敗北主義」と切り捨てる。

 <なるほど、要地防空の、射程20~30㌔の航空自衛隊のパトリオットⅢ型は届かないかもしれない。海上自衛隊のイージス艦のスタンダード・ミサイルも、まだ2隻しか搭載されていない。ハワイ沖での実弾発射訓練でも、「こんごう」は標的にヒットしたが、「ちょうかい」は失敗した。命中率は50%である。射程も百数十㌔だから、迎撃に失敗する恐れもたしかにある。>

 なるほど、先ほどの解説記事より分かりやすい。

 <しかし、日本のイージス艦の弾道ミサイル発射探知、軌道追尾の能力は世界一である。1998年8月31日、北朝鮮が無警告でテポドン1号を発射し、三沢上空で日本列島を飛び越し、アラスカ沖まで飛んだとき、米海軍はこれを捕捉できなかった。同月14日から夏休みを返上で緊急出動し、日本海上で忍耐強く約2週間、警戒配備に当たったイージス艦「みょうこう」のみが、ただ1隻、ミサイル発射の火の玉を捕捉した。それを追跡し、推力、射角をコンピューターで解析し、それが北の言うような人工衛星でなく、大陸間弾道弾であることを証明した。>

 98年のテポドン発射時には自衛隊のそんな努力があったのか。

 <今度は「撃墜」することだ。地球の引力に抗して垂直上昇する人工衛星ロケットの推力は、引力で放物線を描く大陸間弾道弾のそれとは比較にならないほど大きいといわれる。だが、その識別は難しい。「みょうこう」は、その至難の業を成し遂げたのだ。米海軍は海自のこの貢献を高く評価し、賛辞とともに「ミヨコによろしく」といってきた。いうまでもなくそれは「みょうこう」のことだった。麻生総理の決意表明は高く評価するが、自衛隊法第82条の2による「ミサイル迎撃」は総理の権限である。だが、撃墜許可の総理=防衛大臣命令が現場のイージス艦長に届くまでに、海幕長→護衛艦隊司令官→群司令と、指揮命令系統を経たのでは絶対に迎撃に間に合わない。テポドンは、発射後7分で日本上空に達するとみられる。>

 10分かと思っていたら、7分だった。

 <垂直上昇を続ける人工衛星ロケットなのか、太平洋、アメリカに向かうミサイルなのかの判断は、時間どころか分秒を争う問題だ。従って、麻生総理は「ミサイルの場合は躊躇なく迎撃し、撃墜せよ。集団的自衛権云々は論ずべからず、全責任は総理である私がとる」と、自衛隊法第82条の2第3項の「事前の権限委譲」に則り、あらかじめ撃墜許可命令を下令しておかないといけない。さもないと超音速のテポドンの迎撃は不可能である。>

 <また、日本上空における迎撃は、まさに日米安保条約の試金石であり、日本の正念場である。1998年の場合には日本に迎撃能力が全くなかったから許されたが今回は違う。もしも集団的自衛権の行使を躊躇するなど、テポドンが日本上空を通過してアメリカに向かうのを見送ったならば、オバマ新政権下のアメリカ国民の対日感情は一挙に悪化するだろう。危機管理では「大空振りの三振」は許されるが、「見逃しの三振」は許されないのだ。また、日本国民の間にたまりにたまった政府の弱腰外交に対するフラストレーションの爆発も懸念される。永田町・霞が関ではいま田母神俊雄元空幕長の人気が急上昇している事実を直視せねばならない。田母神氏も、それこそ制服の本分である「ミサイル迎撃」にこそ職を賭すべきであったと惜しまれる。>

 いいことを言う。その通りなのだろうけれども、麻生首相にそれだけの胆力があるかどうか、だろう。その一線を踏み越えなければ、日米安保の新展開は本当にこないのだろうか、と私も少し「敗北主義者」的なことを言わせてもらうのだが。

 <今やまさに、日米安保条約の相互信頼性が問われている。ヒラリー米国務長官はオバマ政権発足後、真っ先に訪日し、14分14秒だったといわれる演説の中で「日本」を6回、「日米関係の重要性」を23回繰り返した。これがリップサービスだったのか否か、北朝鮮のテポドン発射で日本を本気で守ってくれるのかどうか。日本海に展開している「レイクエリー」以下3隻の米イージス艦の対応も注目される。米国側の心底を確かめる好機でもある。>

 米国オバマ政権の日本との距離もここで測れるわけだろう。あまり測りたくないケースではあるが、北朝鮮の「瀬戸際外交」ではないが、こういう事態にならないと、国の本音は見えないのかもしれない。日米安保条約の「核の傘」は今や消滅している、と私は危ぶんでいる。米国議会でいくら従軍慰安婦問題だったとはいえ、日本政府への非難決議を採択するような時代である。1960年に岸信介首相が約束を取り付けてきたような「核の傘」は幻想としてだけ存在するのだろう、と思うのだ。ただ、あるかもしれない、と思わせることで敵対国を牽制することはできるのだが、その敵対国と米国が友好条約でも締結したらどうなるのか? 日本の安全保障環境は非常に危ういのだ。

◆海上自衛隊の情報収集戦力を岩国から外すな、という読売新聞の主張

 そういう観点から重要だ、と思ったのが3月26日読売新聞朝刊解説面の<情報収集態勢の危機/中・露・北の脅威拡大/海自機 岩国残留を>だった。勝股秀通編集委員の署名記事だ。

  ロシアは今冬、ウラジオストクの艦隊が何度も津軽海峡を往復し、昨年10月には北海道周辺海域で海自機が監視する目の前で原子力潜水艦が弾道ミサイルの発射実験を行った。ミサイル防衛に懸念を示すなど対米関係悪化を背景に軍事行動を活発化させている、といのだ。

 中国は上海方面の東シナ海で毎月のように海空軍の演習を行い、黄海奥部の潜水艦基地からは「漢型」や新しい「商型」などの原潜が東シナ海や西太平洋の哨戒活動に出動している。将来、中国海軍が遠洋での作戦能力を高め、太平洋全域で米海軍に対抗する狙いがある、と勝股記者は書く。

 そして、北朝鮮のテポドン2改良型の発射目前、という軍事情勢を把握するのに欠かせないのが情報収集機部隊で、今は海上自衛隊の山口県岩国基地にEP3とOP3合わせて6~7機を配備しているそうだ。緊急出動は現在、2日に1度の頻度だが予算の制約で機数を増やすのが難しいので、部隊では出動命令から従来の2時間から1時間15分に短縮して対応している、という。

 しかし、2002年に始まった日米協議で在日米軍の再編が話し合われ、2006年5月、米空母艦載機を2014年までに厚木基地から岩国基地に移駐させる代わりに海自の情報収集機部隊を岩国から厚木に移すことが決まったという。そこで、部隊が厚木に移るとプロペラ機のEP3とOP3が九州方面まで進出するには、岩国から離陸するより2時間近く余計にかかることは分かっていたことだそうだ。だが、問題は協議中の予測をはるかに超える速さで、日本の周辺脅威が顕在化しているので、これは出動時間の短縮では対処できないレベルなのだ、という。

 <移駐決定後の2006年7月、北朝鮮は7発の弾道ミサイルを連射し、その後、核実験を強行した。中国は昨年10月、4隻の艦隊で日本を周回し、12月には海洋調査船を使って尖閣諸島の領海を侵犯し続けた。そして、今まさに北朝鮮がミサイル発射を準備している。>

 勝股記者は「情報収集の即応性を維持強化する必要性は明らかだ」とし、それに逆行する決定をひっくり返す必要がある、という。

 なぜ岩国か? という疑問にはこう書く。

 <地政学的に見て岩国基地は中露北を結ぶ扇の要に位置している。現在、新滑走路の沖合移転が進み、完成すれば基地面積は相当に広がる。航空機の運用だけを考えれば、海自部隊が岩国にとどまることに問題は少ないだろう。しかも、米軍からの情報や要請で情報収集機が出動するケースも多く、再編計画を一部変更することに米国が難色を示す可能性も低い。>

 そして、政治は周辺住民を説得して、「日本にとって死活的に重要な情報収集活動だからこそ、弱体化につながる計画は見直さなければならない」と主張している。

 これは地味なというか、あまり知られていなかった事実だろう。私は知らなかった。こういう話がいっぱいあるのかもしれない。自社55年体制では安全保障論議が深まらなかったが、こういう問題こそ、国会で侃侃諤諤議論すべきではないか。もう北朝鮮の代弁人のような社会党は消え去ったし、その路線を継承していると見られる社民党も小さな政党になり、影響力はなくなったのだから。

◆社民党の拙劣な国会質問を朝日新聞はまた利用するのか?

 産経新聞ウェブ版は3月26日午後零時29分、<「被害の恐れで迎撃当然」/中曽根外相、北朝鮮ミサイルに>の記事をアップしていた。社民党が噛み付いて、外相が筋を通した、という内容だ。

 <中曽根弘文外相は26日午前の参院予算委員会で、北朝鮮が「人工衛星」と主張し弾道ミサイルを発射した場合の迎撃について「ミサイルの一部や破片がわが国の領土などに飛行し、生命、財産に被害が及ぶ恐れがあれば迎撃するのは当然だ」と強調した。中曽根氏は24日の記者会見で「(迎撃は)難しいのは事実」と述べていた。>

 <浜田靖一防衛相は迎撃した場合に破片が飛び散る危険性を問われ「飛んできたものを迎撃、破壊することによって(被害)規模を小さくすることが重要だ」と指摘した。>

 <鴻池祥肇官房副長官は、迎撃に関し「ピストルの弾をピストルで撃ち落とせるはずがない」と述べた政府筋の当人かどうか問われ「私から答える立場にない」と明言を避けた。その上で「ピストルの弾同士が当たるのはなかなか難しいと思っている」と述べた。>

 <社民党の福島瑞穂党首への答弁。>

 これだけの記事だが、朝日新聞が漆間官房副長官の実名記載を民主党の国会質問を契機に始めたのを見て、社民党もあやかろうとしたのだろうか? 朝日新聞の夕刊が見ものだ。また、「政府高官は鴻池副長官」と書いてくるかもしれない。オフレコ破りで書くのならば、少なくとも朝日新聞の責任で書くべきだ。野党に責任を押し付けながら、書きたいことを書く、という卑怯な手法は検察に責任を押し付けながら小沢一郎氏の引き摺り降ろしを画策する手法と同じだ。

◆韓国が発射直前、慌てふためき始めた

 おかしかったのが韓国の慌てふためきぶりである。産経新聞3月26日朝刊国際面トップ<北ミサイル発射時 足並みに乱れ?/韓国政府 急に弱腰/首席代表「制裁決議」には消極的>でソウル支局の水沼啓子特派員が紹介していた。

 北朝鮮の核をめぐる6カ国協議の韓国首席代表、魏聖洛・外交通商省平和交渉本部長が25日に北朝鮮がミサイルを発射した場合「一定の対応が不可避」としながらも、対北制裁については留保する姿勢を示した、という内容である。

 <これまで日米韓が一致して国連安全保障理事会での制裁を示唆しながら北に圧力をかけてきたが、ミサイル発射が近づいたことから、韓国政府は現実的な対応策を検討し始めたとみられる。この日、中国から帰国した魏本部長は「必ずしも制裁になるとは断定できない」と述べた。これまで韓国は、北朝鮮のミサイル発射について、日米両国とともに安保理決議違反として、制裁の可能性を示唆してきた。しかし、安保理で拒否権を持つ中国やロシアが制裁に慎重なことから、今回発言に含みをもたせたとみられる。>

 韓国がふらつき始めたか。ここに至る原因には政界を巻き込んだ汚職事件捜査がある。李明博大統領に近い人物までターゲットにされ、逮捕されており、政権がしびれている可能性があるのだ。

 どの政権でも検察には苦労しているようだ。

 <ミサイル発射問題への対応策をめぐり中国との間で意見の相違があることについて、魏本部長は「少しずつ共感する部分を広げている過程」と述べ、まだ意見が一致していないことも明らかにした。また、「(ミサイルが発射されたら)多少冷却期があるかもしれないが、6カ国協議が再開して非核化を論じる機会があると期待している」と、6カ国協議はいずれ再開されるとの見通しを示した。>

 <一方、北朝鮮の外務省報道官は24日の談話で、「日米が、唯一わが国(北朝鮮)に対して宇宙の平和的利用の権利を否定し自主権を侵害しようとしている」とし、これは「(2005年9月19日の6カ国協議の)共同声明の『相互尊重と平等の精神』に全面的に反する」と強調。その上で「共同声明が破棄されれば、6カ国協議はこれ以上存在する意義もなくなる」と不参加を示唆しており、強硬姿勢を崩していない。>

 <北朝鮮は第12期最高人民会議(国会)第1回会議が開催される4月9日直前の4日から8日の間に、人工衛星ロケットを打ち上げると国際機関に通告した。実際は長距離弾道ミサイル「テポドン2号」改良型ミサイルの発射とみられている。>

 <打ち上げ中断を求める国際的な圧力が強まる中、それでも北朝鮮はミサイル発射を強行するというのが専門家らの見方だ。韓国統一研究院の朴英鎬研究委員は「長距離弾道ミサイル発射は、国内の結束強化を図る目的がある。同時に、対外的には米国との交渉カードとして利用する。さらに、北がミサイルを輸出して外貨を稼いでいる中東諸国に対しては、ミサイル技術が向上したことを示す狙いがある」と述べ、「実際に打ち上げるだろう」と予想する。>

 と記事は続いていた。北朝鮮は26日、また声明を出し、「人工衛星だ」と強調している。本当に瀬戸際外交に長けた国である。

◆防衛研究所の「米オバマ政権の対北朝鮮政策を読む」ブリーフメモ

 防衛省の付属機関防衛研究所のブリーフィング・メモがインターネットにアップされていた。阿久津博康・研究部第6研究室主任研究官が3月2日に脱稿した政策研究資料で、A4サイズ4枚のペーパー。タイトルは<米オバマ政権の対北朝鮮政策を読む>だ。

 まだよく分からないが、すべてのオプションを手にしながら、当面は話し合いを重点に北朝鮮と目見えるだろう、というような趣旨だった。

 主な内容をメモしておく。

[米政権の陣容と主な発言]

オバマ大統領は大統領選運動中から「北朝鮮と無条件で対話する」と明言し、側近級の専門家を北朝鮮に派遣するなどした。

クリントン国務長官は訪日直前の2月13日のアジア協会の講演の中で「北朝鮮政府は核兵器全廃とNPTへの早期復帰を確約した。我々は引き続き北朝鮮をこれらの確約に縛り付けておく所存である。もし北朝鮮が真に核兵器計画を完全かつ検証可能な除去を行う準備があるならば、オバマ政権は国交正常化し、今までの停戦協定をやめて恒久平和条約を締結し、そして北朝鮮人民のエネルギー及び経済的要求に見合う支援を行う用意がある」と述べた。

クリントン長官2月17日の日米外相会談後の共同記者会見で「拉致問題は6カ国協議の一部であり、我々はそうあるべきだと信じている。なぜなら、我々は北朝鮮への包括的関与政策(comprehensive engagement)の一環として進展させる公算が大きいからである」と述べ、6カ国協議で拉致問題に取り組む姿勢を見せるとともに、6カ国協議を通じた米国の北朝鮮政策を「包括的関与政策」と位置づけた。

クリントン長官は同日の新聞記者とのインタビューで「ミサイル問題は6カ国協議の議題の一部になりうる」との認識を示した。

クリントン長官は2月26日、スティーブン・ボズワース(Stephen Bosworth)元朝鮮半島エネルギー開発機構初代事務局長で元駐韓米大使を北朝鮮政策特別代表に起用した。その際、ボズワース氏は我々は明らかに北朝鮮に対し関与政策を適用する予定だ。今月(2月)初旬に北朝鮮を個人的に訪問したが、私は北朝鮮側が世界との関与に利益を見いだしており、前進する用意があると判断した」と述べ、6カ国協議の目標が「平和的に朝鮮半島の完全かつ検証可能な非核化である」ことを再確認した。

クリントン長官2月20日の米韓外相共同記者会見「(北朝鮮が1月30日に韓国との既存の合意をすべて破棄するむね表明したことに関連して)北朝鮮は2006年の共同宣言や他の合意を遵守しなければならない。北朝鮮は韓国を中傷し韓国との対話を拒否し続けながら米国と現在とは異なる関係を築くことはできない」と述べ、北朝鮮が南北対話を拒否している間は米朝正常化は望めないことを明言し、韓国側の意向を尊重する姿勢を示した。

ゲーツ米国防長官は先の上院軍事委員会指名公聴会で「6カ国協議は特に北朝鮮のプルトニウム生産に関しては肯定的なモーメンタムを生み出した点で重要である」と6カ国協議に一定の評価を下すとともに「しかし、誰も今までの成果で完全に満足といえる状況ではない。6カ国協議は北朝鮮のプルトニウム増産やウラン濃縮の能力を縮小させ、望むべくは除去し、そして拡散の可能性を削減するための方法を提供するものである。非核化という我々の目標に変わりはないが、北朝鮮が核の野望を完全に放棄するか否かは依然不明だ」と述べた。

ゲーツ長官は最近の北朝鮮の長距離ミサイル発射準備に関する報道に関する質問に対する回答として「もし必要だと判断されれば(ミサイル防衛は)一つの選択肢である」と述べている。

▽ゲーツ長官はビル・クリントン政権時代に当時のウイリアム・ペリー国防長官の下で国防次官補を務め、2006年6月には北朝鮮のミサイル発射実験を前にペリー氏との連名で「必要なら、攻撃して破壊せよ」という論文を書いて注目を集めたアシュトン・カーター氏を国防次官に指名した。

▽昨年就任したウォルター・シャープ在韓米軍司令官の下、米韓合同演習は継続している。米国は既に韓国に対して「核の傘」(拡大抑止)の提供継続と朝鮮半島の様々な有事へ対応が出来るよう準備を怠らないむね明らかにしている。

 以上の事実を踏まえて、総合的に判断すると、オバマ政権の対北朝鮮政策は「包括的関与政策」だが、北朝鮮の軍事的強硬化に対しては軍事的にらみを緩めない、という「関与とヘッジ(hedging)」という現実的な対応が取られることが予想される。この「包括関与政策」には拉致問題とミサイル問題も6カ国協議の枠組みで扱われる余地も含意されている。ブッシュ政権最後の2年間には北朝鮮の寧辺核施設の無能力化に焦点が絞られ、当初ブッシュ政権が注視したウラン濃縮や核拡散疑惑の問題が事実上棚上げされた形となったが、オバマ政権は今後4年間、場合によっては8年の有効期間があるので、まずは包括的に対応できる態勢を構築しようとしているらしい、という分析だった。

[北朝鮮のオバマ政権に対する姿勢]

▽オバマ大統領の就任前の1月13日北朝鮮外務省報道官声明「対朝鮮敵視政策と核脅威の清算がなければ核兵器を先に放棄することはない」は「米国の核脅威が除去され、南朝鮮に対する米国の核の傘がなくなれば、我々も核兵器を必要としなくなるであろう」と述べている。

▽1月17日の北朝鮮外務省報道官は「米国が朝米関係正常化をわれわれの核放棄の代価と考えるなら、それは誤算である。我々が核兵器を造るようになったのは、米国との関係正常化や経済支援のようなものを望んだからではなく、米国の核の脅威から自身を守るためであった。米国との関係正常化が実現しなくとも生きていけるが、核抑止なしには生きていけないのが朝鮮半島の現実である。…朝鮮半島の核問題は本質上、米国の核兵器対われわれの核兵器の問題である。仮に朝米関係が外交的に正常化されるとしても、米国の核の脅威が少しでも残っている限り、我々の核保有の地位はいささかも変わらないであろう」と述べた。北朝鮮は安易に核を手放さない。

[6カ国協議の「行動対行動」の原則]

 6カ国協議が継続すると、「行動対行動」という原則の下、理論的には①包括的関与政策宥和(appeasement)③強圧(coercion)④軍事的体制変革(regime change by military force)の選択肢が想定できる。

宥和は「行動対行動」原則を無視したうえで、核保有国認定、国交正常化、恒久的平和条約締結、大規模エネルギー・経済支援の推進などの措置を含む政策。ブッシュ政権はテロ支援国指定解除・敵国通商法規制緩和を決定した。

強圧軍事オプショの明示や非軍事的制裁(経済制裁など)の明示やこれら制裁の発動により北朝鮮の非核化を促進する政策。最終的政策目標が体制転換である場合、これは非軍事的体制変革政策と呼ぶことが可能だ。

軍事的体制変革とは「非核化」という目標を超越し、独裁体制から民主主義体制へと変革するという目標のために軍事力を行使する政策。ブッシュ政権下のアフガン戦争やイラク戦争がこれに当たる。

 以上を総合すると、オバマ政権は「包括的関与政策」「を基調としつつ、最悪の事態に備え軍事的選択肢は温存するという現実的な姿勢で北朝鮮に臨むと考えられる、と書いていた。

 なお書きで重要なことを書いていた。

 「包括的関与政策」では「行動行動」の原則の下で米朝二国間対話・6カ国協議を通じた北朝鮮の非核化と、その過程で米高官あるいは大統領の訪朝、国交正常化、恒久的平和条約締結、大規模エネルギー・経済支援の実施などを含む措置が取られる可能性は排除できない、というのだ。

 ビル・クリントン政権ではオルブライト国務長官が訪朝し、クリントン大統領自身の訪朝も準備されたが、同大統領の任期切れで訪朝は実現しなかった、とも書いていた。

 嫌なことを思い出させるものだ。あれは最悪だった。日本が指をくわえて見ている前で、韓国・北朝鮮・米国の蜜月が始まろうとしていたのが、元寇の際の神風ではないが、クリントンの任期切れで尻切れトンボになったのだった。あれで助かった。もしも、訪朝が実現していれば、日米安保体制にも大きなひびが入っただろうし、北朝鮮が核を持ちながら米国と国交正常化する、という最悪のパターンが実現していたかもしれないのだ。

 最終的に阿久津氏はボズワース氏中心の米朝2国間対話ソン・キム(Sung Kim)6カ国会議首席代表による6カ国協議を通じた「包括的関与政策」が取られ、日米韓3カ国の政策協調の枠組みは補完的になるだろう、と予測する。だが、米国が強圧的措置を取らざるを得ない場合には米韓同盟や日米同盟が中心となって機能するだろう、と書いている。

 そこで、阿久津氏はミサイル防衛の準備だけでなく、①北朝鮮が再度核実験をした場合の対抗策②米国が対北朝鮮国交正常化に踏み切った場合の対応――を検討しておく必要がある、とし、6カ国協議でミサイル問題や拉致問題が話し合われるような雰囲気醸成も必要だ、という。米国は日本を「アジア太平洋の平和と安定の要」を超えてよりグローバルな「米国の外交政策の礎」という表現を使うこともあるので、日本も米国と果たすグローバルな役割についても努力しつつ、北朝鮮問題で米国とより緊密に協力することが大切だ、と結んでいた。

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2009年3月25日 (水)

朝日新聞の「小沢やめろ」社説の論理矛盾~3月25日各紙社説

 朝日新聞は3月25日社説で小沢一郎氏に代表辞任を求めていた。<西松献金事件/小沢代表は身を引くべきだ>のタイトルである。<説明責任を果たさず>、<変革の党にそぐわぬ>、<検察は捜査を尽くせ>の小見出しがついている。

 <政治家に不祥事が持ち上がった時、問われるのは法的責任だけではない。重い政治責任を負わねばならない。政権をうかがう大政党の党首となれば、なおさらである。>

 という書き出しからして、論調をうかがい知ることが出来るだろう。社説はまず小沢氏の秘書に関して斡旋利得や収賄など別の容疑の再逮捕がなかったこと、小沢氏が代表留任を表明したことに触れ、

 <法的には裁判で争い、司法の場で決着をつければいい。秘書が逮捕され、さらに起訴されたからといって「黒」と決めつけるわけには、むろんいかない。>

 と書きながら、

 <だが、それとは別に、小沢氏には政治家としての重い責任があることを忘れてもらっては困る。>

 として、①なぜ素性も知らない団体からそんなに巨額の献金をもらい続けてきたのか②ゼネコンなどと深い、長い付き合いがあるのに、今回のカネの出どころは知らなかったというのは、どうにも不自然③大規模な公共事業の受注をめぐってしのぎを削る業者との付き合いは、どのようなものだったのか、なぜ影響力を期待されるようになったのか――について、

 <そうした事情をきちんと説明すべきなのに、小沢氏がその責任を果たしたとはとても思えない。>

 と言うのだ。

 <仮に小沢氏の主張が正しく、法的な問題がなかったとしても、だからそのカネを受け取ることが政治的にも妥当であったとは言い切れまい。たとえ法には触れなくても、政治家として受け取るべきでないカネはあるのだ。>

 というのが朝日新聞の主張のようである。

 <政治資金収支報告書の誤記載であり、形式的な問題といわんばかりの主張にも違和感がある。政治資金規正法は政治とカネの不祥事が発覚するたびに、渋る政党や政治家の尻を世論がたたくようにして強化されてきた。その違反はけっして軽い犯罪ではない。>

 「表のカネ」であっても、ダメだ、という主張である。

 <政権交代によって、日本の政治を変える。官製談合や天下りを根絶し、税金の無駄遣いを徹底的に改革する。それが民主党の政権公約の柱のはずだ。だが、肝心の党首が「古い自民党」そのままの土建政治にどっぷり漬かる姿が浮き彫りにされてしまった。果たして政権をとれば、本当に政治を変えられるのか。根本的な疑念を呼び起こさずにはおかない。>

 民主党よ、言っていることとやっていることが違っているじゃないか、という論だ。そして、結論である。

 <変革を訴える党の党首として、小沢氏がふさわしいとは思えない。国民の大方が納得できる説明を尽くせないのなら、代表から身を引くべきだ。>

 これが、一連の西松献金事件の節目で打ち出した朝日新聞社説の結論らしい。

 <情けないのは、この間、小沢氏の政治責任にほとんど触れようとしなかった民主党議員たちの姿だ。民主党はきょうからでも、党の態勢立て直しを真剣に議論すべきだ。民主党が目指す政治はどのようなものなのか。そのためには小沢氏が代表にとどまることが正しいのか。もう一度原点に戻って自らの姿を描き直さなければ、有権者の信頼を取り戻すことはできないだろう。>

 返す刀で民主党批判だ。そして、

 <民主党だけの問題ではない。>

 として、朝日新聞が2月~3月中旬実施した政治・社会意識基本調査の結果に触れる。

 <調査の結果は衝撃的だった。9割の人が「政治に不満を持つ」「政治が国民の意思を反映していない」「今の政治は社会の将来像や道すじを示していない」と思っている。7割が自民党と民主党の政策に大きな違いはないと考えている……。2大政党がそろって国民の不信を浴びているのだ。日本の政党政治の危機と受け止めるしかない。>

 そして、

 <麻生首相に改めて言いたい。この危機を克服する第一歩は、一日も早い衆院解散・総選挙で政治に民意のパワーを注ぎ込むことだ。政治のリセットなしに、政治不信は収まるまい。>

 と書いている。早期解散・総選挙論である。

 あとは朝日新聞にとっては「付け足し」であろう。

 <今回の事件では、検察の捜査にも国民は釈然としないものを感じている。総選挙が近いこの時期に、なぜ最大野党の党首の秘書を逮捕したのか。金額の多寡はあっても、同様にカネをもらった自民党の議員たちはどうなのか。公共事業に絡む権限を握っているのは、与党の方ではないのか。事件については法廷で明らかにするというのが、検察の立場だ。だが、もうひとつ腑に落ちないという国民の疑念を放っておいていいものか。捜査は日本の政治の行方に重大な影響を及ぼす可能性がある。国民の厳しい視線にさらされるのは当然だ。徹底捜査はもちろんだが、国民も相応の説明を聞きたいに違いない。>

 朝日新聞は対政治家、対検察と論を分け、その中で自己完結させる文脈を作って、この論を整合させたつもりだろう。

 しかし、幾つもの疑問が浮かぶ。

 まず第一は総選挙前のこの時期に検察が小沢氏の献金だけを狙って摘発、リークを繰り返して、その悪質性を国民に刷り込むことで、小沢氏は相当にダメージを受けたはずだ。解散・総選挙前の微妙な政治情勢の中で、このような検察の行為が政治的に利用されることは目に見えていた。

 こういう行為を許していたら、検察に気に食わない政治家や政治集団が日本の権力を握ろうとした時に、法律の解釈のハードルを下げて、その政治家や政治集団を摘発し、その政治家や政治集団を政治的に抹殺することを許すことにつながらないか。

 小沢氏が田中角栄、金丸信両氏の愛弟子で、旧来の自民党の再分配主流時代の一方の王者だったことは誰も疑いのない事実だと思うし、今でもその集金手法を続けているだろうことは容易に想像できる。

 ただ、そういう政治家を総理大臣に選ぶかどうかは検察に指図される問題ではないのだ。あくまで総選挙で国民、有権者が一票を行使して決断することなのである。

 国民の選択には様々な考え方が反映されるだろう。ある人は金権政治は断固反対といって小沢氏の民主党に「ベトー」を出すだろうし、ある人は小沢氏の再分配重視の政治姿勢は小泉純一郎氏や竹中平蔵氏らの新自由主義より人間的だ、民主的だ、と思って民主党に投票する人もいるだろう。

 その人たちは自分で考えながら投票する。主権者は国民だ。国民の選択の総和が各政党の議席数になり、多数党か、連立多数勢力から総理大臣が出る。これが「憲政の常道」である。そこに行政の中で「暴力装置」を担当している検察権力が介入することは絶対に許されない。

 朝日新聞は政治倫理を前面に押し出し、検察への疑念と小沢論を切り離すことで、この「憲政の常道」を見失う愚を冒してしまった、と言わざるを得ない。

 以前も書いたが、何も小沢一郎氏を尊敬している、とか、小沢氏が好きだ、というのではない。小沢氏でない人物が民主党の中で首相候補になっても一向に構わない。ただ、それは平常時において、の話である。

 今、民主党が揺れて小沢氏を引き摺り下ろし、岡田克也氏を党首に据えたら、日本の政治が検察権力に左右されたことになる、とそれを恐れているのだ。

 検察権力は自制が何よりも大切である。検察権力が暴走した場合、国民は総選挙で検察官を落とすことも出来ないし、リコール制度もないし、最高裁判事のように国民審査もない。あくまで検察一体の原則で検事総長の下、統一権力として振る舞える特権を持っているのが検察官である。

 起訴という暴力行為を一手に握る暴力装置に暴走は許されないし、国政に影響を与えることが十分分かっている時期の摘発基準を故意に低くした捜査を許せば、検察政治がまかり通ることになる。

 朝日新聞にはそういう危惧を覚える論説委員はいなかったのだろうか?

◆産経新聞は論外の社説だった

 産経新聞も同趣旨の社説(主張)を掲載していた。<公設秘書起訴/小沢氏続投は通らない>である。こちらも<「悪質な違反」と指弾された>、<「形式犯」ではない>、<政党の生命線を左右>の小見出しがついていた。

 産経新聞の論旨は①大久保隆規被告は会計責任者で小沢氏と一心同体といえる側近②検察側は「看過できない重大かつ悪質な事案」と位置付けた。秘書に責任を押しつけて一件落着する事案でない③小沢氏は会見で「責任は大きい」と認めた。民主党代表を辞任するなど政治責任を明確にすべきだ④政治資金規正法違反は形式犯ではない⑤現体制の継続は政党としての生命線にかかわるという危機意識が民主党にないのか、小沢続投の是非を見極めることが民主党に問われる自浄能力だ――というものだった。

 朝日新聞以上に論理が破綻しているのは、検察の論理に乗っかって社説を展開している点である。検察という権力についての疑問がなく、検察絶対正義主義に陥っている。

 民主党についても、

 <有権者の視線をとりわけ意識する必要のある政治とカネというテーマに目をつぶり“小沢頼み”を続けようとしている。>

 と、論理にならない論理を振り回しているのだが、本当に有権者が小沢氏にそっぽを向いていれば民主党は小沢氏を降ろすだろう。「有権者の視線をとりわけ意識する必要のある」かどうかは知らないが、有権者の風向きには産経新聞の論説委員よりは政治家の方が敏感だと思う。

 「小沢憎し」はいいが、この社説は、それが高じて、大きな視点を忘れている。怖い話だと思う。

◆日経新聞の社説

 日経新聞の第1社説は<小沢氏続投は有権者の理解得られるか>だった。

 <次期衆院選で政権交代をめざす民主党のトップの決断は有権者の理解を得られるのだろうか。民主党にとって手負いの小沢氏の下で衆院選を戦うのは大きな賭けになる。>

 という指摘である。朝日新聞、産経新聞に比べると冷静で客観的な書き方だった。

◆毎日新聞の社説

 毎日新聞の社説は<小沢氏秘書起訴/代表続投は説得力に欠ける>だった。

 <これから自民党に代わって政権をねらう民主党の対応として、これで有権者は納得するだろうか。やはり疑問が残る。>

 というのが社説のトーンだった。

 <次の衆院選で首相をねらう民主党の代表が「古い自民党の体質そのままだ」と多くの有権者を失望させた責任は免れまい。小沢氏は突然、企業・団体献金の全面禁止にも言及しているがそもそも、これまでなぜゼネコンから巨額な献金を受け続けてきたのか。小沢氏は会見で「隠しているわけでない」などと語るだけで疑問に直接答えなかった。>

 <民主党内では…「政治とカネ」の問題で従来、有権者がどれだけ不信感を抱いてきたか認識が不足している。>

 <小沢氏は会見で、政権交代の実現が最大の目標だとも再度語った。しかし、世論調査を見ても政権交代への有権者の期待はうせてはいないものの民主党の支持率は下がっている。何より深刻なのは与野党問わず政治への不信が再び拡大していることだ。>

 <進退問題はなおくすぶりそうだが、自民党と違う姿を示すのが民主党の原点だ。政権交代実現のために小沢氏が辞任して早くけじめをつけた方がいいとは考えられないのだろうか。>

 おずおずではあるが、論理構成は朝日新聞に似ている、と言えなくもない。

 朝日新聞と毎日新聞に共通する問題点として「政治不信」という言葉の使い方がある、と思う。「政治への不信が再び拡大している」など、世論調査の結果を引いて言うのだが、これは両社の論説委員が大きな勘違いをしている部分ではないか、と思うのだ。

 いかにも政治は理想的な人物が理想的な善政を敷くべきだ、というイメージを持って、それとの落差で今の現実政治を批判することは容易い。

 しかし、現実の政治は「悪い政治家」と「より悪い政治家」のどっちを選ぶか、という選択肢の中で国民、有権者が選択するしかない。

 つまり、「よりまし」な政治家を選び、その政治家をもっとましになるように教育しなければならないのではないか、と思うのだ。理想の政治家を求めていると、いつの日かヒトラーが現れている、という逆説は笑い話ではない。

 もっともっと政治に対して謙虚になり、政治家も同じ人間であることを理解すべきだろう。朝日新聞の論説委員は「小沢氏だけを貶しているのではない。麻生首相も貶している」と言うだろうが、それがいけない。麻生首相のいいところはいいところとしてきちんと書き、そのいい部分を伸ばさなければ、日本で優秀な政治家は育たない。

 日本が暗いのもマスメディアが暗くしている面が相当にあるのだ。

 「よりまし」な選択をしながら、政治家を育てる、という基本さえしっかり守っていれば、あとはバカではない政治家が成長していくと思う。

 小沢氏の「金権」よりも今論じるべき大きな問題はたくさんあるし、その小沢氏に手掛けてもらわねばならない案件が目白押しなのだ。

 世界不況、北朝鮮のミサイル・核問題、ロシアとの国境画定と平和条約、資源問題、それに最大の課題は農業問題だ。自民党の票田である農協をぶち壊し、抜本的な農家対策をしなければ日本の農業は死んでしまう。

 そんな問題をほうっておいて、小沢金権にばかり注目していると、冷戦崩壊時に日本だけ対応が遅れてしまった教訓を生かせず、またまた同じ愚を犯すことになるだろう。

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「産油国と強権」フリードマンの仮説は崩れたのか?~3月25日朝日新聞夕刊[窓]より

 3月25日朝日新聞夕刊2面コラム[窓 論説委員室から]に大野正美論説委員の<産油国と強権>が掲載されていた。アゼルバイジャンの強権政治についての話である。

 先週、アゼルバイジャンで大統領の連続3選を禁じた憲法の規定を削除する提案が国民投票で約92%の賛成で了承され、イルハム・アリエフ大統領(47)の統治が続きそうだ、という趣旨なのだが、このイルハム氏は2003年に大統領になった。昨年秋に再選されたばかりで、この人の父がヘイダル・アリエフといってソ連時代にアゼルバイジャン共和国の共産党第一書記をつとめ、アゼルバイジャン独立後も大統領だったので、合計23年間アリエフ支配が続いたうえに、子供のイルハム・アリエフが支配を続けている、という北朝鮮のような国なのだそうだ。父親は死んだ。

 権力の世襲ができた大きな要因がカスピ海の石油・天然ガス資源だ、という。息子が引き継いで以来、資源高騰のおかげで国内総生産は年平均21%の成長を記録したが、資源価格の急落と世界経済危機で成長は急激に鈍化したのだ、という。昨年9月のリーマン・ショック以来の話だろう。

 そして、大野氏は南米の産油国ベネズエラのチャベス大統領が今年2月の国民投票で制限なしの多選を可能にしたこと、エネルギー大国のロシアも昨年12月、憲法改正で大統領任期を4年から6年に延ばしたことをあげ、

 <いずれも反対派やメディアを締め付ける強権統治や、深刻な腐敗、貧富の格差で知られる国だ。経済の悪化で国民の不満が高まる前に制度を変え、次の選挙までに世界経済の回復、油価の再上昇を期する。そうなれば長期政権も安泰――。そんな思惑かもしれない。だが、価格変動の激しい資源頼みの強権政権は危うい。油価次第で政権が、そしてその国が揺らぐ。>

 と結んでいた。

 一読、「なるほど」と思える話ではある。しかし、アゼルバイジャン、ベネズエラ、そしてロシアの権力者の心の中は果たして大野氏の想像するようなものだったのだろうか?

 最近読んだトーマス・フリードマン「グリーン革命」の<独裁者を満タンにしつづけるのか?――石油政治>の項目(上巻第2部第4章)を思い出した。ここでフリードマン氏は米国市民が石油を無尽蔵に消費する生活様式を改めていないので、石油価格が上がり、それが石油独裁者の勢いを強め、民主主義国の勢いを弱め、過激なテロリストを富ませている、ということを豊富な例を引きながら訴えている。

グリーン革命(上) グリーン革命(上)

著者:トーマス・フリードマン
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 この本を読んで驚いたのは、朝日新聞に書いてあるアゼルバイジャンなど「強権政治」の権化のような国だけでなく、サウジアラビアでも石油価格高騰で王室が国家転覆を恐れて、危険なサラフィー主義者(初期イスラムの原則や精神の回復を目指し、イスラムは純粋なルーツに戻るベきだ、として禁欲的な”裁くのイスラム”を主張する原理主義者)に資金援助。全イスラムの人口の1%に過ぎないサウジアラビアがいずれ全イスラム教の軽費の90%を賄うようになり、他の伝統的な宗派を圧倒。イスラム原理主義を標榜するイスラム過激派と親密な関係がアフガニスタン、イラク、イラン情勢にも大きく影響するだろう、という部分だった。イスラムの重心がカイローイスタンブール―カサブランカ―ダマスカスという地中海中心からサウジアラビアの砂漠中心のイスラムに移ったことで、世俗との共存を目指す勢力が徐々に駆逐され、一神教の悪い部分をエキスにしたような宗教勢力が力を持ってきた、というのである。石油を資金源とするサウジアラビアのワッハーブ派のイスラムは傍流の砂漠のイスラムだったのが、今や進歩的な都会のイスラムを攻撃、力を誇示している、という。地中海のイスラムが滅び、紅海のイスラムが伸してきているのだ。

 フリードマン氏の仮説はこういう現実から入る。そして、1979年から2006年までの世界の芸金原油価格と経済と政治の両面で自由化が拡大・縮小する度合いの相関関係をグラフにしたのだ。自由度を表わす指標はどうしても主観的になるし、恣意的にもなりやすいので、国際的NGOフリーダムハウスの「世界の自由度」とフレーザー研究所の「世界の経済自由度」をもとに、ロシア、ベネズエラ、イラン、ナイジェリアのデータを数値化したものを用いている。

 そして、結果、分かったのが「石油政治の第一法則」とフリードマン氏が呼ぶもので、「石油資源が豊富な産油国では、原油価格と自由化の度合いが逆の動きを示している」という内容だ。

 原油価格が上昇すると石油主義者の指導者が国際社会の評判を意に介さなくなることによってマイナス傾向が強まる。国際的な規範に抵抗するのに使える余分な金が増えるので、国内治安部隊を増強し、政敵を買収し、票や国民の支援を金で買うのだ、という。逆に石油価格が下落すると自由化の度合いが強まる。石油主義国家はより透明な政治と社会を志向せざるを得なくなり、政敵の意見に敏感になり、幅広い外国との交流にも開放的になるからだ、という。

 フリードマン仮説は面白いのだが、本当なのかどうか、検証もしないで、読み飛ばしたが、少なくとも大野氏のアゼルバイジャン、ベネズエラ、ロシアに関する記事を読むと、そうとばかりは言えないのかな、という気もしてきた。

 ただ、大野氏の取り上げた強権国家はいずれも極端な国が多く、フリードマン氏の分析の対象はいわば、普通の石油国家だ、という違いもある。もう少し考えてみよう。

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2009年3月24日 (火)

イタリア・ベルルスコーニ政権の検察改革と日本政治との類似性~毎日新聞3月24日朝刊+山口二郎氏の本から

 今、イタリア政治が面白いらしい。毎日新聞3月24日朝刊国際面<イタリア司法「政治的改革」の行方は/検察弱体化狙う首相/「検事と弁護士対等に」/「ファシズムに逆戻り」>が紹介しているイタリアのベルルスコーニ政権による検察改革が大きな波紋を呼んでいる、という話である。ローマ支局の藤原章生特派員の記事だ。

 <長年汚職などで何度も訴追されてきたベルルスコーニ首相が検察の立場を弱めようと司法改革に乗り出し、検事が激しく反発している。論争は法の精神や原則論から大きく離れ、左右が対立する、かなり政治的なものだ。検察は政治権力の影響を受けずにすむのか。論議の底には、この問いが隠れている。日本では「国策捜査」という言葉が最近よく使われる。検察が政権の意向や世論をかんがみ捜査することを指す。日本はいざ知らずイタリアでは、ファシズム時代(1922~43年)の反省から戦後「政権と検察は癒着するもの」という前提で、検察を政府から完全に独立させてきた。>

 イタリアは特殊な司法制度を持っている国らしいのだ。

 <このため素人目にはイタリアの司法制度はややいびつに見える。日本では判事は裁判所、検事は法務省管轄の検察庁に属し、弁護士と合わせ3者は一応離れている。だが、イタリアでは判事も検事も最高司法会議(27構成員)という政権から独立した自治機関の管理下にいる。この会議直轄の司法部にいるのが判事と検事だ。両者は司法官という同じ職位にあり、人事異動で入れ替わる。検察庁と裁判所が同じ職場のようになっている。>

 検察官も裁判官も同じ「司法官」だ、と。何か変なのだ。

 <1994年から3度政権についたベルルスコーニ首相はこれまで贈賄、横領、脱税、資金洗浄などで検察により捜査、起訴されてきた。首相は昨年5月の新政権誕生後、若手のアルファノ法相に司法改革を急がせた。首相自身がスキャンダルの暴露に遭ってきた電話などの盗聴制限と、民事、刑事訴訟の見直しに取り組んでいる。中でも首相が最もこだわる改革案が「検事の弱体化」だ。今の形では、判事と検事が癒着すると疑っている。>

 そりゃあ疑うだろう。

 <ある検事(50歳)は匿名でこう語る。「首相が訴追された1996年の汚職公判で、判事と検事が公判の進め方を打ち合わせる声が録音されたことがあった。何度も被告席に立ってきた首相はそれで『判検癒着』を確信した。今年の司法改革の最大の狙いは、積年の恨みを晴らすための両者の切り離し、孤立化にある」>

 ベルルスコーニ氏にすれば、必死の改革なのかもしれない。

 <政界に限らずイタリア社会は左右に分かれやすい。右派のベルルスコーニ氏は過去の公判で「あの判事は左翼だ。代えてほしい」と何度か要求した。国内メディアをほぼ掌握する大富豪の首相を左派の判事、検察が脅かしている、と考えている節がある。「司法の切り崩しが首相の狙い」と先の検事は言う。首相は前回の政権時(2001~2006年)の2005年にも、検事の弱体化を盛り込んだ法案を一度成立させたが、当時の大統領が署名せず、頓挫した経緯がある。>

 マスコミを押さえている、というのが大きいのだろう。ベルルスコーニ氏健在の秘密なのかもしれない。

 <アルファノ法相は2月の会見で「判事と検事が同じ職位というのはおかしい。被告から見ると、検事が判事に近すぎる上、捜査権限が強過ぎてバランスが悪い。今後、警察情報へのアクセスなど弁護側の権利を高め、検事の権限を見直す。訴追する側と被告側を対等にするため、検事を『訴追側の弁護士』という立場にしたい」。「訴追側の弁護士」とは何なのか、まだ具体的に示されていない。前回の改革の失敗から首相は今年6月までをめどに、慎重に検事の地位改革案を練っている。>

 <最高司法会議の構成員で弁護士出身のチェレスティーナ・ティネッリ委員は「司法会議を二分し、判検の管轄を完全に分ける案が有力のようだ」とみる。仮にそうなれば「違いは大きい」と言う。「判事から切り離されることで集団としての検察の立場は弱まる。検事の中には倫理の低い者もおり、逮捕権などを持ったまま孤立すれば、政権側に利用される者も出てくる。現在でも検事たちはいくつもの派閥に分かれ、党派の影響を受けた捜査をする傾向があるからだ」>

 これと、次の要因が大きいのだろう。

 <ルカ・パラマルカ検事(48)は言う。「イタリアは汚職が多く、どの世界にもマフィアの影がある。政権に近い警察も常に検事の味方というわけではない。判事と共にあるのは、この国ならではの検事の姿なのです」>

 マフィアである。孤立していてはマフィアにやられてしまうから、団結する、というすごいことになっているようなのだ。しかし、誰がマフィアなのか、見ただけで分かるのだろうか? 日本の企業ヤクザであるフロント企業の役員たちはパリッとした背広を着て、いかにも偉い、地位のある会社員に見えるから、地上げにしても、一般企業の人たちが騙されてしまうのだが、マフィアもそうなのではないか。

 <検事と判事の切り離しは1989年から何度か持ち上がっては消えた。憲法改正が必要で、その場合、上下院で3分の2の議席の可決が必要だが、与党の現議席では難しい。アルファノ法相は憲法に触れない形の改革を探っている。>

 憲法改正ですか。面白いなぁ。

 <イタリアには検事や判事の労組があり、ストやデモを行っている。最大労組、全国司法官協会のラツィオ州代表、パオロ・アウリエンマ検事(48)は、ベルルスコーニ改革を「非常に恐ろしい」と言う。>

 というのだが、何かイタリアって米国や英国、ドイツとは決定的に違うんだなぁ、と驚くことばかりだ。以下はアウリエンマ検事の話だ。

 <判事から切り離された検事は政治の道具にされ、ファシズムに逆戻りだ。私は判事を経て検事になった。確かに判事、検事、被告・弁護側が3分される制度から見れば奇妙かもしれない。だがイタリアでは戦前、ムソリーニ政権に検事が使われ無実の市民を訴追した。民主主義の歴史が60年しかないイタリアの場合、司法の独立を守るには今の制度しかない。検事といっても、イタリアでは英米的な意味での「告発人」とは違い、被疑者を起訴するのが最終的な目的ではない。検事は独自の審理を行い判事に近い役割も担う。イタリアの検事は過去に被疑者の8割を予審で無罪放免にしてきた。残り2割が公判に進むが、その半数は判事の判決で無罪となる。首相が言うように、判事と癒着していれば、そんな結果にはならない。判事と検事はよく食事などを一緒に取るし、家族ぐるみのつき合いもある。でも私たちは仕事の話はしたことがない。>

 なるほど。ムソリーニの亡霊が未だに徘徊しているところなど、戦後処理問題がいまだにくすぶる日本に似ているような気もする。

 <イタリア検察はこれまで、政府側に情報を漏らさない形で、首相ら有力政治家に対し独自の捜査を行ってきた。検察は、ベルルスコーニ氏が実業家時代の1985年と1991年、自分の企業グループの会社に便宜を図らせるためローマの判事にわいろを贈った、として贈賄罪で訴追したが2004年に一部無罪、一部控訴棄却の判決が下った。さらに、ベルルスコーニ首相から偽証の見返りに60万㌦(約5800万円)を受け取ったとして、英国人弁護士を偽証罪などの罪で起訴。ミラノ地裁は今年2月、英国人弁護士に有罪判決を下した。だが首相は昨年7月に成立した「現職の大統領、両院議長、首相を刑事訴追の対象としない」免責特権法で公判を免れている。>

 とんでもハップンのイタリア政界なのだが、政治学者によると、イタリアと日本の現代政治史はよく似ている、という。

 山口二郎氏の「政権交代論」(岩波新書)である。

Book 政権交代論 (岩波新書 新赤版 1178)

著者:山口 二郎
販売元:岩波書店
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 日本もイタリアも長期政権を続けていた。日本は55年体制下の自民党、イタリアはキリスト教民主党を中心とした連立政権である。山口氏はその理由として、冷戦の間、日本は対ソ防波堤として米国がそれを望んだことが大きい、という。その歯止めとして体制選択論が使われた、という。自民党の議員の腐敗は大目に見られてきた。同じようにイタリアもヨーロッパ最強のイタリア共産党に政権が渡らないように、と国民が腐敗政党ではあるが、キリスト教民主党を支持し続けてきた。

 ところが、冷戦が崩壊し、イタリアではイタリア共産党の力が弱まり、日本では社会党がなくなった。だから、腐敗政党である自民党やキリスト教民主党だけに政権を任せるという選択肢以外に、「きれいな保守」を選ぶという選択肢が出てきた。だから、ベルルスコーニ氏が摘発されるし、金丸信元自民党副総裁が摘発されたりするのだ、と言うのだ。

 そして、日本では「国策捜査」が問題になり、イタリアでは検察改革が議題に上がる。

 やっぱり両国は似ているのかなぁ、とも思ったりして。

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東京地検特捜部の説明は支離滅裂だ:小沢一郎氏秘書起訴~3月24日夜の毎日新聞、産経新聞ウェブ版から

 東京地検は3月24日、小沢一郎・民主党代表の秘書、大久保隆規容疑者を政治資金規正法違反の罪で起訴した。

 小沢代表は同夜、記者会見して当面は代表を続けると表明した。これで刑事責任面では一段落した、とテレビの24日夜のニュースショーでキャスターが言っていた。

 そういうことだろう、と大体の人が思っていただろう、と思う。

 東京地検特捜部は最後の最後まで小沢氏の秘書が悪質だった、という類のリークを続けていた。非常に珍しいケースだ。普通は起訴が近づけばリークは収まるのだが、今回は起訴が近くなるほどリークの数が増えていた。

 東京地検の検事たちが「小沢は悪い奴なんだ。国民はなぜ、もっともっと正義の味方である東京地検特捜部を応援しないのか」と焦りながら、訴えているようでもあった。

 今日、注目されたのは小沢一郎、イチローの両「一郎」だったのではない。野球で世界一になった日本チームを先頭打者として率いてきたイチローにも注目が集まり、小沢一郎氏にも注目は集まったが、実は最大の注目を集めたのは東京地検次席検事だった。

 東京地検でも青森地検でも盛岡地検でも最高責任者は検事正である。次席検事というのは各地検のナンバー2でもあるのだが、対外的スポークスマンでもある。

 この異例の捜査を行ってきた東京地検特捜部がどのような考えをもって捜査を進めたのか、衆院解散・総選挙前の今の時期を選んだのはなぜだったのか、なぜ次期首相候補ナンバーワンの小沢氏が狙われたのか。

 東京地検が本当のことを言うとは誰も思っていないのだが、世間に向けてどのような「物語」を語るのか、が注目されたのだ。

 ネットで調べると、最近、東京地検の捜査に厳しい視点で物申していた毎日新聞が長い記事を書いていた。3月24午後10時49分にアップされた<小沢氏秘書起訴/地検特捜部長「背景公判で明らかに」>という記事である。

◆東京地検の佐久間達哉特捜部長の説明は説明になっていない

 遣り取りを淡々と書いているだけで、味もそっけもない記事に見えるかもしれないが、今まで東京地検特捜部はこのようなケースでこのような形で顔を出さなかった、と思う。

 裁判所クラブ担当記者だけに「ブリーフィング」という形で主語が分からない形で「背景説明」するだけで、顔のわかる記事にはならなかった、と思うのだ。今回が初めてかどうかは調べないと分からないが、非常に珍しいことは間違いない。

 以下が毎日新聞の記事である。

 <24日夕、小沢氏の公設秘書起訴を発表した東京地検の佐久間達哉特捜部長は捜査の正当性を強調した。だが、逮捕後2日間で地検には約100件のメールが寄せられ8割近くが批判的な内容だったという。特捜部長との主な質疑応答は次の通り。

 ――秘書の起訴に至ったのはなぜか。

 特捜部長=収支報告書で実態を偽って記入することは国民を欺くこと。罰則は禁固5年以下と重い。さらに重要な個別の背景事情があるが、公判で明らかにする。

 ――一般論ばかりで、なぜ起訴したか分からない。

 特捜部長=お話できることは非常に限られている。国民の皆さんを納得させられる説明はこの時点ではできない。

 ――献金を受けた他の政治家の捜査は。

 特捜部長=本件の重大悪質性を考えると、衆院選が秋までに行われることを考えても放置できない。一部献金が3月末に時効を迎える事情も考慮し(起訴が)今になった。他(の政治家)がどうこうという話ではない。捜査すべきものがあれば捜査する。

 ――政権交代もありうる政局の中で政治介入との見方もある。

 特捜部長=我々が政治的意図をもって捜査をすることはありえない

   ◇

 谷川恒太・東京地検次席検事のコメントの要旨は次の通り。

 政治資金規正法は議会制民主主義の根幹をなすべき法律であり、政治資金収支報告書に虚偽の記入をすることは、国民を欺いてその政治的判断をゆがめるものに他ならない。本件は、ダミーの政治団体の名義を利用する巧妙な方法により、特定の建設業者から長年にわたり多額の金銭の提供を受けてきた事実を国民の目から覆い隠したもので、看過し得ない重大悪質な事案と判断した。>

 以上である。

 記者会見はしたものの、内容は何もない。強がりを言っているが、結局は大久保秘書の再逮捕もできず、斡旋利得罪の適用もできなかった。

 検察の敗北ではないか。

◆起訴状の内容

 産経新聞の3月24日午後3時46分アップの<小沢代表の秘書を起訴/企業献金を虚偽記載した罪>によると、この起訴の本記が出ていた。

 産経新聞記事は以下の通り。

 <準大手ゼネコン「西松建設」から小沢代表の資金管理団体「陸山会」への違法献金事件で、東京地検特捜部は24日、小沢代表の公設第1秘書と会計責任者を兼ねる大久保隆規容疑者(47)を政治資金規正法違反罪(虚偽記載など)で起訴した。大久保秘書は容疑を否認しているという。また、小沢代表側へ違法な献金をしたとして、特捜部は西松建設前社長の国沢幹雄容疑者(70)=外国為替及び外国貿易法(外為法)違反の罪で起訴=も、政治資金規正法違反罪で追起訴した。>

 <起訴状によると、政治資金規正法では他人名義での献金や政党側以外への企業献金を禁じているにもかかわらず、大久保秘書は実際には西松建設からの政治献金であることを知りながら、03~06年分の陸山会の政治資金収支報告書に、同社OBが代表をしていた二つの政治団体から計2100万円の寄付を受けていたように装う虚偽の記載をしたとされる。西松建設は東北地方での大規模公共工事の受注で小沢代表側に便宜を図ってもらうために献金を続け、ダム工事受注を献金の成果と受け止めていたと判明。特捜部は、特定の工事受注で便宜を図ってもらう意図があったことも悪質だと判断したとみられる。>

 以上が地検特捜部の発表に一番近いのだろう。

 というのも、産経新聞は何とか小沢氏を永田町から亡き者にしようという紙面展開を続けてきた。今回の再逮捕なしの起訴が残念でたまらない、という気持ちが記事の行間から透けて見える。その産経新聞だから東京地検のブリーフィングはしっかりとフォローしたのだろう、と思ったのだ。

 逮捕の際、国民すべてが「こんなことで逮捕するのか」と驚いた。今日の起訴はその容疑にプラスアルファの付加価値を付けることのできない内容の起訴だった。

 「東京地検は説明責任を果たせ」と元検事の面々もマスメディアで発言していたのだが、東京地検特捜部長の説明も東京地検次席検事の説明も説得力のないことこのうえなかった。本当にこんなことだけで次期首相候補者の公設第一秘書を逮捕、起訴したのか。信じられない話だ。

 麻生首相も細田自民党幹事長も否定しても、やはりこれは政府与党として総選挙前に民主党の勢いを削いでおくための国策捜査だったのではないか、という疑いまで再浮上するだろう。

 ついでに以下の記事もコピペしておこう。産経新聞である。

 <国沢幹雄、大久保隆規両被告の起訴事実の要旨>である。

 <1 国沢被告は、他と共謀の上、西松建設において、国会議員の資金管理団体である陸山会、民主党岩手県第4区総支部(以下「4区支部」)および民主党岩手県総支部連合会(以下「県連」)に対し、新政治問題研究会(以下「新政研」)および未来産業研究会(以下「未来研」)の名義で政治活動に関する寄付を行うことを企て、平成18年10月ごろ、(1)陸山会に新政研名義で100万円、(2)4区支部に新政研名義で100万円、未来研名義で100万円、(3)県連に新政研名義で100万円、未来研名義で100万円を各振込送金した((1)第三者名義の寄付・禁止企業献金、(2)、(3)第三者名義の寄付)。
 2 大久保被告は、陸山会の会計責任者であるとともに、4区支部の政治活動に関する寄付の受け入れ等に関する事務に従事していたものであるが
 (1)18年10月ごろ、西松建設から、(1)陸山会に新政研名義で100万円、(2)4区支部に新政研名義で100万円、未来研名義で100万円の各振込送金を受けた((1)第三者名義の寄付・禁止企業献金の受領、(2)第三者名義の寄付の受領)。
 (2)(1)真実は、陸山会が15年から18年にわたって西松建設から政治活動に関する寄付合計2100万円を受けたのに、15年分から18年分の陸山会の収支報告書に新政研および未来研から同額の寄付を受けた旨虚偽記入した。
 (2)真実は、4区支部が15年から18年にわたって西松建設から政治活動に関する寄付合計1400万円を受けたのに、15年分から18年分の4区支部の収支報告書に新政研および未来研から同額の寄付を受けた旨虚偽記入した。>

 以上である。

◆小沢一郎氏の3月24日夜の記者会見詳報(産経新聞ウェブ版から)

 この疑惑が消えない中、小沢氏が24日夜、記者会見した。米国の意向だったのか?

 検察の独走だったのかわからないが、何しろ抹殺されかかった大物政治家の記者会見である。

 何を話したのか。産経新聞がネットに3月24日午後10時42分に全文をアップしてくれていた。

 見出しは<西松献金/秘書起訴の小沢氏が続投会見「政権交代が生涯の夢」?>である。産経新聞にすれば、ここで小沢氏の言質を取るためのアップだろうが、そういう意味ではなく参照する読者もいるのだ。

 産経新聞のネットの記事は以下の通りだった。写真説明「小沢一郎民主党代表、涙ぐむシーンもみられた=24日午後9時43分東京・永田町の民主党本部」とあるように、午後9時半くらいに記者会見を開いたようだ。

 <公設第一秘書が政治資金規正法違反の罪で起訴されたことを受け、民主党の小沢一郎代表は24日夜、東京・永田町の党本部で記者会見し、代表職にとどまることを表明した。記者会見の主な内容は次の通り。>

 という前文である。

 <それではこのたびの私の政治団体をめぐる問題につきまして、私の思いと、現在の心境を申し上げさせていただきたいと思います。>

 <まずもって、私自身の政治資金団体をめぐる問題につきまして、仲間のみなさんをはじめとして、国民の本当の大勢のみなさまにご心配とご迷惑をおかけしましたことを心からおわび申し上げるものでございます。>

 <今月の3日に秘書の大久保が逮捕されて以来、私自身が犯罪を犯したような印象を与える状況の中で、本当に自分自身、悔しい思いと、無念の思いを抱きながら、必死に耐えてがんばってまいりました。>

 <そのような状況にもかかわらず、仲間の皆さん、大勢の国民のみなさんから励ましの言葉をいただいた。こうしたご激励がなかったら、今日まで耐えてくることはできなかったように思いまして、本当に国民みなさまの大勢の方々の「負けるながんばれ」という声に励まされて今日までまいりました。本当に国民のみなさまにそして同士のみなさまに心から感謝を申し上げるものであります。>

 <私は今月3日の逮捕以来、みなさんの前で機会あるたびに申し上げてきましたが、私自身が収賄罪等犯罪に手を染めていたのであるのであれば、どんな捜査でもどんな処分でも甘んじて受ける。自分にはそうした事実はないとみなさまに繰り返し申し上げてきました。そうした意味で私の主張したことが事実であったことが明らかになったのではないかと思っている。>

 <しかし、結果として、秘書が起訴されたことへの自分の責任は大きい。特に民主党に期待してくださったみなさま、直接激励してくださったみなさまに申し訳ない。>

 <起訴の理由を聞きますと、収支報告書の政治資金規正法、記載についての問題が起訴の根拠とされております。私としては献金を受けた事実はそのまま報告しておりますし、献金をいただいた相手方をそのまま記載するのが規正法の趣旨であると理解しておりました。その認識の差が今日の起訴という事実になったことと思います。>

 <今まで過去の例をみてましても、この主の問題について逮捕、強制捜査、起訴という事例は記憶にありません。そういう意味で政治資金規正法の趣旨からいっても、私からしましては合点がいかない。納得がいかないというのが今日の心境でございます。>

 <特に総選挙、まさに秒よみの段階の今日でして、私の責任の重大さを感じると同時に、そうした形の結果について自分としては納得できないという思いであります。>

 <従いまして、先程来、役員会、常任幹事会に私の心境をのべさせていただきました。>

 <私は40年になんなんとする政治生活でありますが、代表の地位や総理うんぬんということに何の未練も執着もありません。思いは日本に議会制民主主義を定着させる。これが私の自民党を離党して以来の大目標であります。これが思いであり、最後の機会である。この機会になんとしてでも、国民のみなさんの理解を得て、政権交代を実現することで、官僚機構の上にたった自公政権ではなく、国民のみなさんの上にたった政権を実現する。それが政治家としての最後の仕事だと思っている。みなさんのご理解をいただいて、本当にこの目的をみんなと一緒に力を合わせて、今後もがんばっていきたいという趣旨の話を役員会、常任幹事会においても行った。>

 <その役員会でも、とにかくそういう大目標を大いなる使命を達成するために一緒にがんばろうという本当にご支援の声をいたたきました。私としましては本当に微力な才能しかないが、みんなのこういった暖かいご支援をいただいて、民主党の国民のみなさんの期待に応えるよう今後もがんばってまいりたいと決意を新たにいたしました。>

 <今回のことにつきましては、本当に仲間のみなさんに、民主党に期待するみなさんにご心配をおかけしましたことを重ねてお詫び申し上げながら、今日の自分の心境としたいと思います。>

 <――今回の起訴をふまえて進退を判断ということだったが、続投ということか。衆院選についてはどう判断するか。>

 <小沢氏「進退にしましては今申し上げましたように私一人で決するというにはあまりにも大事な問題でございますので、役員会のみなさんのご判断を仰ぎ、常任幹事のみなさんのご判断を仰いだということ。衆議院の選挙で政権交代を実現することは生涯の夢であり、最後の自分の仕事だと心得ております。>

 <――秘書が刑事被告人ということになる中で、代表にとどまることがどういう形でプラスになるという判断があったか。>

 <小沢氏「私の目標、そして私の夢は日本に本当の議会制民主主義を定着させること、本格的な政権交代で議会制民主主義の理解を深めること。政権交代でしか日本に議会制民主主義が定着することはないだろうと思っている。代表を続けることをご承認いただいたが、あくまでも総選挙で勝利ということを前提に何事もわたくし自身考えていきたいと思います。今日において私が代表を続けることがプラスかマイナスかそれは私に判断することはできない。国民のみなさんの受け取り方次第であります。いずれにしても総選挙で政権交代を実現し、議会制民主主義を定着させるその点で対処していきたい」>

 <――総選挙に勝利した場合は内閣総理大臣に就任する考えはあるのか。政権交代を実現し検察批判をしていくのか。>

 <小沢氏「私が民主党の代表として過半数を国民みなさんにいただいたときに責任を果たすのは当然。戦いといってはなんだが、選挙戦の相手は別に検察ではなく、自公政権。検察は検察の職責を果たしたということであろうと思うが、いずれにせよ私の対決するのは自公政権」。>

 <――今回の事件は違法行為とは別に、非常に多額の政治献金がきていた。そのことについて普通の国民の感覚では理解できない。このことについてどう思うか。>

 <小沢氏「事務所の不動産のときにも、みなさんから同じようなことを言われました。私は今、西松建設、西松建設と言われますが、数でいえば遙かに個人の方からの献金が献金の中身であります。従って献金を、浄財をありがたく頂戴して、それを政治活動に使うという点でなんら国民のみなさんや献金をしていただいたみなさんに恥ずべきことはない。たしかに今回のことは大きなお金であることは間違いないが、隠していたわけではない。すべてマスコミなどに公開しました。あとは主権者のみなさんが判断します」>

 産経新聞の会見詳報は以上で全部だ。

 面白い、と言っては何だが、興味深いのは東京地検がどんなに否定しても、捜査が政治情勢に大きな影響を与えていること、起訴という法律行為が総選挙前の与野党の政争に使われている、という事実である。

 以下の記事を見ればよく分かる。

 <西松献金/自民・細田氏「(小沢氏続投は)とうてい理解できない」>である。

 <自民党の細田博之幹事長は24日夜、民主党の小沢一郎代表が続投の意向を明らかにしたことについて「とうてい理解できない。責任を感じておられないということでしょう」と述べ、西松建設の違法献金事件で公設秘書が起訴されたことの監督責任をとるべきだとの認識を示した。都内で記者団に語った。>

 短い記事だが、いかに秘書の起訴を利用して小沢氏にダメージを与えようか、と四苦八苦している自民党のいやらしさがでている。

 産経新聞は解説記事で「金額の少なさではない、悪質性だ」と東京地検の検事のような見方で今回の捜査を総括していた。産経新聞は朝鮮半島報道は優れているのだが、内政問題では、竹中平蔵、小泉純一郎両氏をほめたたえるなど、財界寄りのスタンスをいよいよ強めているように見える。どうして産経新聞が新自由主義なのか? この辺で虚心坦懐、考え直してみればどうか? 産経新聞の読者は清貧な国粋主義者が多いと思うのだが。

 [視点]というワッペンの入った解説記事だ。<西松献金/「法の意義」無視を断罪>の見出しで、河合龍一記者の署名があった。かわいそうに、デスクに記事を書かされたうえに、名前まで曝されて、と正直、思った。

 <東京地検特捜部が過去、政界捜査で立件した政治資金規正法の虚偽記載罪は坂井隆憲元衆院議員や元参院議長でもあった故土屋義彦埼玉県知事の長女など、1億円を超える事件だった。

 立件額の少なさに、小沢一郎氏は会見で「今までは(政治資金収支報告書の)修正申告で済んだ」と反論した。だが検察は、ゼネコン側から長年にわたり巨額の献金を受け、見返りに工事の受注調整に関与してきた小沢氏側の行為は、「政治とカネ」の透明性を確保するという規正法の意義を無視したものとして、断罪した。ある検察幹部は「この事件は金額ではなく、背景が問題」と指摘する。

 事件の本質は、単なる形式犯ではなく、「わいろに似た企業献金」であり、その中でもダミーの政治団体をわざわざ用意した西松建設からの献金が十数年間で約3億円にも上った悪質さを問題にしたのだ。例えば駐車違反は形式犯だが、駐車禁止場所と知らずにとめても、確信犯でも、罪は同じ。しかし、さらに通行妨害を意図した上での確信犯だったとすれば、悪質性は無意識の駐車違反とは格段に違うということである。

 容疑は及ばずとも、献金は小沢氏に向けられたものであり、「秘書の犯罪」ではかたづけられない。小沢氏の責任も重大だ。

 一方、起訴するかを独占的に決められる検察は、この背景の立証を尽くし、国民が少なからず感じている立件額の少なさに対する違和感を完全に解消させる義務もあろう。>

 何なんだ。容疑は及ばなくても、小沢氏は責任がある、という論理は? 日本は罪刑法定主義ではなかったのか? 中国の「人治主義」を笑えないぞ。

 小沢氏を不当に貶める東京地検特捜部の担当者は罰せられるべきだと思う。法律によってではなく、日本の政治のいい方向への転換を阻害した罪によってである。政治的な報復はジワジワと始まるかもしれない。担当検事や副部長、特捜部長、次席検事、検事正だけでなく、きちんと指導できなかった東京高検検事長も最高検も対象になるだろう。

 これで、千葉知事選で民主党候補が負けただけでなく、各地の選挙で自民党系が勝った場合、小沢氏は代表を辞めるかもしれない。その時、岡田氏が次期首相になるのか? 本来はそれでもいいし、その方がいい、という政治論も十分成り立つのだが、このような東京地検の暴走を原因としてそういう事象が起きることだけは食い止めたい。

 結果として検事たちが政局を動かすようなことは1990年代でおしまいにしたい。

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2009年3月23日 (月)

内閣人事局長が官房副長官兼務となった経緯がよく分かる~3月23日毎日新聞朝刊[読む政治]

 毎日新聞3月23日朝刊1面と3面の[読む政治]<内閣人事局長は官か政か>は分かりにくく、複雑な公務員改革の問題を平易に解説していたので、読みやすかった。

 いつも思うのだが、毎日新聞の政治部はこうした「検証もの」に強い。というか、独自の力を発揮している。今回も内容で言えば、麻生首相が官房長官、3人の官房副長官を招集した会議で「トップに政治家はダメだ」と指示した事実をはっきりと書き込み、それが漆間副長官と財務相出身で元国税庁長官の福田進官房副長官補の根回しによるものだった、という事実を書き込んでいた。恐るべし官僚、である。

 毎日新聞の記事のエッセンスを書き留めておこう。

 <18日午後4時半過ぎ、首相官邸5階の首相執務室に河村建夫官房長官と3人の官房副長官が集められた。議題は「内閣人事局長の位置づけ」だった。内閣人事局は、中央省庁の幹部人事を一元的に管理するため来年4月に新設が予定されている組織だ。そのトップに政治家を充てるのか、官僚の代表者を充てるのかで改革の色彩は決定的に異なる。麻生首相はあっさりと「官」を指定した。「局長は政治家でない方がいい。だって恣意的な人事になる恐れがあるじゃないか」。>

 麻生首相の鶴の一声で決まった、ということは「首相主導」でいいことだとは思うのだが、その内容でいいかどうかは別問題だ。

 <もう一つの論点である、内閣人事局長のランクについては、河村氏が引き取って「官房副長官級にして、官房長官の下に置きたい」と語った。当初の「政務官級」構想に対して自民党から「格が低い」との異論が出ているためだった。>

 河村氏は政治家とは言っても、長いこと文部官僚だった人だ。今でも中身は官僚だと思う。そんな人に官房長官をやらせておけば、こういう結論になるわなぁ。

 <首相を交えたこの協議を受けて、国家公務員制度改革推進本部の事務局が作成した内部文書には、上からの「要請」として3項目が明記されている。>

 しめしめ、だっただろうなぁ。

 <第一に「内閣人事局長には国会議員が就くことはできない」。首相の指示を反映したものだ。第二に「充て職である(ポストは新設しない)」、第三に「内閣官房副長官級のポストとする」。>

 何と意訳した文書であること。

 <3条件から必然的に導き出される結論は3人いる官房副長官のうち、霞が関の代表である事務の副長官に内閣人事局長を兼務させる構想にほかならない。現在なら「自民党に捜査は及ばない」発言で物議を醸した漆間巌氏(警察庁出身)の兼務になる。>

 ここまでが、この記事のエッセンスだろう。

 <国家公務員制度改革の目的は、省庁の縦割り意識を打破し、政治主導に切り替えることだ。局長級以上の幹部人事は現在、各役所が起案し、首相官邸の人事検討会議が追認するだけになっている。このため、推進本部の顧問会議(座長・御手洗冨士夫日本経団連会長)は昨年11月に出した報告書で、新設の内閣人事局長が官僚の影響力を最小限に抑えられるよう、民間など幅広い層からの登用を提言していた。>

 つまり、民間人をトップにせよ、と御手洗氏らは提言したのに、いつの間にか官僚がトップに座ることになってしまった、という。

 <なぜ、同局長の位置づけは変質したのか。巻き返しに動いたのは、漆間氏のほか財務省出身で元国税庁長官の福田進官房副長官補(内政担当)ら官僚出身者だ。強力な人事権を持つ政治家ポストの誕生阻止は、霞が関官僚の総意でもある。>

 福田進氏は力があるのか?

 <「官僚攻撃」に熱心な民主党が政権を取る前に、仕掛けを完成させておく必要があった。内閣官房の一組織である国家公務員制度改革推進本部の事務局は、各省庁からの出向者32人と民間から登用した15人の計47人で構成されている。>

 <昨年11月に出された顧問会議の報告書を具体化するため、事務局内部では当初、内閣人事局長について独立した官房副長官級のポストを想定した作業が進められていた。ところが、事務局幹部は今月12日に同局長のランクを「政務官級」とする案を作成し、内閣官房内の根回しを始めた。各省の事務次官よりは上だが、官房副長官よりは下に置き、指示を受ける立場とするのがミソだった。>

 官僚は考えているものだなぁ、と感心する。民主党政権をにらんだ巻き返しだった、というのだ。それにボンボンの麻生首相を巻き込んだ。

 <顧問会議が示した方向性を変えた理由について、事務局の関係者は「上司からの要請だ」と語る。漆間巌官房副長官と福田進官房副長官補を指していた。>

 官僚のすごいところは諮問機関の提言でも何でも自分たちの気に入らない部分があれば、何のためらいもなく切り捨てることだ。

 <福田氏は事務局が作った政務官級構想に対し「これでは下がりすぎだ。もう少し格を上げなさい」と指示している。政務官だと官房副長官補と同格になるため、与党に突っ込まれるのを警戒したとみられる。>

 <これを受け事務局は12日午後、内閣人事局に絡む組織図を作成した。実態は政務官のままだったが、見かけ上は副長官補より上にランクされるように描かれていた。河村建夫官房長官には図の存在が伏せられた。13日に自民党から了承を取り付けようともくろんでいた漆間氏らは、事前に自民党に漏れるのを懸念した。>

 なるほど、政治家には伏せて進めたわけか。

 <翌朝、自民党本部で開かれた同党行政改革推進本部。漆間氏らの意図に反し、内閣人事局長の格下げ案に批判が噴出した。>

 <中川秀直元幹事長は「これでは骨抜きだ」と一喝し、塩崎恭久元官房長官菅原一秀元厚生労働政務官らも「副長官の下に置くのではなく、同格にすべきだ」と同調した。結局、格下げ案は了承されなかった。>

 <この直後、中川氏は東京都内での会合で「幹部職員は、首相と一定程度、政治の結果責任を共有する。人事と政策を同時に変えられるようにしないといけない」と述べ、中央省庁の幹部を「政治任用」にするための法改正に前向きな考えを打ち出した。中川発言を受け、改革推進本部の事務局には動揺が走った。政府は国家公務員制度改革関連法案を3月10日までに閣議決定する方針だったが、内閣人事局長の取り扱いが決まらないために遅れている。>

 この名前を見ると、いわゆる「上げ潮」派が文句をつけている。「上げ潮」派と民主党の主流は国家公務員改革問題では同じ考えのようだ。

 <安倍内閣以来続いてきた国家公務員改革論議の「核心」部分がいまだに定まらないのは、麻生太郎首相が公務員改革にさほど熱心ではないことの反映でもある。「官僚は敵ではなく、使いこなすのが政治家の仕事」が首相の言い分だ。>

 麻生首相のスタンスは見えにくいのだが、官僚を敵とは思っていないだろう。

 <「官僚主導から国民主導の政治」をうたう民主党政権の誕生が現実味を増していることも、霞が関官僚の動きを複雑にしている。>

 <小沢一郎代表は「霞が関改革が民主党政権の要」と強調する。今月17日夜、東京・赤坂の居酒屋に若手議員を誘った小沢氏は「政権交代したら、官僚との関係を変える」と上機嫌で語った。>
 小沢一郎氏の秘書が逮捕されたのは、直接手を下したのは検察官僚だが、霞が関の総意だったのではないか、という疑いもこの話の延長線上に出てくる。怖い話だが。

 <民主党の鳩山由紀夫幹事長は2月23日、都内での講演で「政権を取った直後に、局長以上の官僚にはいったん辞表を提出してもらう」と宣言した。>

 <現行法制上、大臣が辞表の提出を強要することは不可能だが、官僚たちには細川政権時代の「事件」が記憶に残っている。小沢氏の側近だった熊谷弘通産相(当時)が、事務次官就任が確実とみられていた内藤正久産業政策局長に「省内を暗くした」との理由で辞任するよう求めた一件だ。野党に転落した自民党の影響力をそぐための「見せしめ」と受け止められた。>

 内藤氏がどんな人か知らないので何とも言えないが、そんなことがあったかなぁ。もう昔のことで忘れてしまった。

 <現在の民主党にとって、昨年6月に成立した国家公務員制度改革基本法は、与党に丸のみに近い修正をさせた成果だ。このため、内閣人事局の新設は賛成しているが、官僚OBを局長にするような政府案に対しては「政治主導が骨抜きにされかねない」(党政調幹部)と反対する方針だ。>

 そうかぁ、この法律は民主党案の丸のみだったか。すっかり忘れていた。

 <自民党内の厳しい反応を受けて16日午後、河村氏と漆間氏は対応策の協議を始めた。この席で漆間氏は「政治家がなるべきではない。一番いいのは、事務次官よりも上のポストの政務官級でしょう。これだと、政治家がなることはないですから」と語った。推進本部の事務局案そのままだった。>

 漆間氏はいろいろ画策しているんだなぁ。

 <河村氏は同日以降、自民党の中馬弘毅行政改革推進本部長(麻生派座長)と調整に入った。政務官級に理解を示した河村氏と、官房副長官級を求める中馬氏の議論は平行線をたどった。しかし、18日の首相裁定を聞いた中馬氏は19日の麻生派総会で「首相の意向を受けた官房長官直属の人ということで調整している」と半ば容認する報告をした。>

 自民党が官僚に負けたわけだ。

 <首相周辺は「新たなポストを作り1人2000万円以上も払うことが、麻生内閣でやるべきことか」と語り事務の官房副長官による兼務で押し切る方針だ。自民党行政改革推進本部は24日に改めて会合を開く。了承が得られるかどうかは不透明だ。>

 みみっちいが、今の世界不況の世の中では年間2000万円の人件費を出すか出さないか、という矮小化された議論が何となく説得力を持つのだろう。本当はそんなこと関係ないのに。

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今年は中国の記念日満載の年:アーミテージ氏+韓国紙の日本軍事大国化論~3月22日読売新聞朝刊、3月23日産経新聞朝刊、3月14日中央日報

 読売新聞3月22日(日)朝刊1,2面の[地球を読む]はリチャード・アーミテージ元米国務副長官の寄稿である。見出しは1面が<ヒラリー歴訪/アジア重視再確認の旅>で2面が<対北朝鮮 冷静に対処か>だった。

 2001年の小泉政権発足直後、田中真紀子という外相がいた。その田中外相が自分の趣味の手作業を続けるのに忙しいという理由(!=本当カネ?)で会わなかった、というエピソードでまたまた有名になった親日家の米元高官である。元高官とは言っても、オバマ政権への影響力は大きいらしい。ナイ氏と一緒に超党派で「アーミテージ=ナイ・リポート」を出すなど、米新外交政策立案に今でも絡み、中国に目が向きがちな米政権の中で日本の重要性を常に訴えてくれている人である。

 読売新聞2面の略歴を見ると、1945年生まれ。米海軍士官学校卒。ブッシュ政権で国務副長官。現在は「アーミテージ・インターナショナル」代表、とあった。いわゆるロビイストである。今の方が収入はいいのだろう。

 とまあ、どうでもいいことを書いたが、この寄稿自体はクリントン国務長官のアジア歴訪やオバマ大統領の麻生首相とのホワイトハウスでの会談などで日本重視を示したことは良かった、というような内容だったから、目新しいところはないのだが、2面に書いてある中国関係話面白かった。

 2009年は中国にとって「記念日の年」である、というのだ。

◆2009年は中国にとっての「記念日」が多い

▽中華人民共和国の建国60周年

▽米中国交正常化30周年

▽チベット動乱から50年=3月10日

▽米国の台湾関係法成立30周年=4月15日

▽北大西洋条約機構(NATO)軍によるベオグラード中国大使館誤爆事件10年=5月7日

▽天安門事件から20年=6月4日

 そして、2010年が日米同盟50年であることをもう一度、日本人に思い起こさせようとしている。再活性化のための具体策を日本は持って来い、と。その通りだろう、とは思うのだが、国際情勢があまりに流動化していて、なかなか立ち竦む体勢から動き出せそうにない日本政府の頭の中は空っぽだろう。どうすればいいのだろう?

 また、アーミテージ氏は北朝鮮についてオバマ政権は6カ国協議続行を最優先する、つま核不拡散を最優先するだろう、とい予測を立てている。この部分だけ写しておこう。

 <オバマ政権が北朝鮮政策を検討する間、北朝鮮は悪口を吐き続けるだろう。ミサイル発射も行うだろう。6カ国協議参加諸国が、こうした挑発を冷静に受け止めることを私は希望する。クリントン国務長官発言の基調から見る限り、オバマ政権は、きっとそうするはずだ。>

 どうも、北朝鮮問題まで手が回らないので、適当にあしらっておく、という構えらしい。日本にとっては由々しい事態だ、と思う。

◆韓国紙は「北ミサイルは日本に軍事大国化の口実を与える」と論評

 この問題については産経新聞3月23日朝刊オピニオン面コラム[環球異見]で[北ミサイル発射通告]のテーマで韓国・中央日報と米国・ロサンゼルス・タイムズとロシアのブレーミア・ノボスチェイの報道ぶりを報じていた。ロサンゼルス・タイムズは日本のミサイル迎撃の動きを詳しく伝え、甘い姿勢の米外交に警鐘を鳴らしている。ジョン・ボルトン元国連大使の寄稿などが載っているらしい。ロシアでは冷たい感じで、距離を置いている。「ロシアに飛んでこなければ関係ない」の姿勢がありありだ、と書いている。

 面白かったのが、ここで紹介されていた韓国の中央日報の3月14日付社説だった。コピペしておく。タイトルは<北ミサイルは日本軍事大国化のきっかけ与えるのみ>である。

 < 北朝鮮のミサイル実験は北東アジア全体の安保の均衡を揺るがす。まず日本の安保の不安感を大きく刺激することは明らかだ。1998年、北朝鮮が日本列島の上空を通り過ぎるロケットを発射した後、日本は全国が沸き立った。これをきっかけに日本の右派勢力は軍事力強化の必要性を主張し、それに歩調をあわせて実際に軍費増強作業が進行されていった。今回も同じことが起こるとみられる。>

 これがすべてを言い表している。そういうことなのだ。韓国の反日知識人たちは、まだ「日本軍国主義」などと叫んでいるのだ。

  <日本の極右派が北朝鮮のミサイル試験発射をむしろ歓迎するという話がまんざらうそでもないのだ。日本は1998年の事態を契機に米国主導のミサイル防衛(MD)体制に積極的に参加を始めた。日本は現在まで防御能力強化に焦点を合わせて軍費を強化しているが、今後、その性格そのものが変わることもあり得る。>

 随分と疑っているのだが、確かに日本のミサイル防衛や安全保障関連法体系が整ったのはテポドンの影響だったことは確かだ、と思っている。

  <日本にはすでに「平和憲法」を修正して世界2位の経済力にふさわしい軍事力をもつべきだという「普通国家論」が広まっている状態だ。「普通国家論」には攻撃能力を揃えた軍事強国になりたいという本音が込められている。北朝鮮のミサイル発射は日本右派の「軍事大国化」の主張を決定的に後押しするだろう。日本の軍事大国化は不可欠で、中国とロシアを刺激することになる。>

 もしかしたら、そういう動き、流れになるかもしれないが、今は不景気で日本国中シラケているから、分からない。

 <我々も例外ではない。北朝鮮にもブーメランになるのは明らかだ。強大国の軍備競争は互いにも大きな負担だが、韓国や北朝鮮には災いだ。強大国の間に入って軍備競争に加わることは「小さな鳥が大きな鳥を追うこと」だからだ。>

<北朝鮮のミサイルは北東アジア諸国が平和に相互繁栄する機会を妨げている。北朝鮮はマイナスになるだけのミサイル発射などというものを今すぐ中断しなければならない。>

 そう考えてくれる人たちが多いことを祈ろう。

 韓国の中にはそう考えずに、北朝鮮のミサイルは自衛権の発動で何ら問題ない、という盧武鉉前大統領支持勢力がまだ力を持っている。韓国の用語では「運動圏」というのだそうだが、そういう赤色人種がまだかなりの数残っており、彼らは反日であることで共通している。

 そして、何と、日本人でありながら、この赤色反日連合に連帯のエールを送っている浅井基文、和田春樹、若宮啓文氏らが日本国内でも一部のメディアを我が物顔に使って、親金正日キャンペーンを続けている現状がある。

 日本が安全保障上の脅威にあったら、国民や国土を守るのは当たり前だ、という「基本の基」を忘れた方々は、本当に北朝鮮がミサイルを打ち、失敗して日本列島に墜落した時にどういう言い訳をするのだろうか?

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2009年3月21日 (土)

卑弥呼がお祈りに使った建物かもしれない:纒向遺跡の建物跡発掘~3月21日読売新聞朝刊から

 3月21日各紙朝刊は扱いの大小はあったものの、奈良県の纒向遺跡の重要施設の発掘を報じていた。

 東京新聞は対社面ハコ扱い<卑弥呼時代の重要施設か/3棟の建物跡 柵内外に整然と>の見出しで「纒向遺跡」の注釈をつけ、遺跡の写真と今回見つかった建物群を特記した[纒向遺跡の遺構配置図]や現地の地図などとともに掲載していた。

 読売新聞も対社面2段<邪馬台国畿内説の有力地 纒向遺跡/3世紀前半~中頃の建物跡>で写真付きの記事だった。

 古代のロマンを想起させる発見だと思う。

 読売新聞の記事をコピペしておく。

 <邪馬台国の最有力地とされる奈良県桜井市の纒向(まきむく)遺跡で、女王・卑弥呼の時代にあたる3世紀前半~中頃の建物跡が、大規模な整地をしたうえで、柵で囲み、建物の方向をそろえるなど、計画的に整備されていたことがわかり、市教委が20日、発表した。この時期、こうした施設は他に見られないといい、専門家は「この地が邪馬台国とすれば、宮殿など中枢施設の一角だった可能性がある」と指摘している。>

 <1978年に出土し、神殿状とされた建物跡(約5㍍四方)や柵跡の周囲を発掘。この建物跡の東側で、三つ並んだ柱穴が新たに見つかり、南北6㍍以上の別の建物跡があったとみられる。柵は凸状に建物を囲み、南北23㍍以上、東西9㍍以上に延びることがわかった。付近は整地のため、広い範囲で盛り土をされていた。大規模な施設の西端にあたり、施設はさらに東に広がっているとみられる。>

 <また、1978年に今回の調査地より約5㍍西側で見つかった柱穴も柵の外にあった建物跡と判明。少なくとも3棟が柵を挟み、建物の北側の面をそろえて東西一列に並んでいたらしい。>
 <邪馬台国は3世紀後半の中国の史書「魏志倭人伝」に記された倭の中心地。卑弥呼が239年、中国・魏に使者を送った。所在地について畿内説と九州説に分かれて論争が続いており、九州説の研究者らは同書の記述から纒向遺跡は邪馬台国と無関係とみている。>

 <畿内説を唱える辰巳和弘・同志社大教授(古代学)の話「方位を意識して造られた建物や柵は中国的で、強力な支配者がいた証しの一つだ。卑弥呼が祭祀や政治を行った、最も重要な施設の一部だったのではないか」>

 畿内説は京都大学派が、九州説は東京大学派が主張していた。

 この発見で決め手が出たわけではないが、何となく畿内説の分が良くなった感じがするのだが、どうだろうか。

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2009年3月20日 (金)

堀田力氏の「検察に説明責任なし」論は理想論だが、理論が破綻している~3月20日朝日新聞朝刊

 朝日新聞3月20日朝刊[声・主張]面の[私の視点]に堀田力・さわやか福祉財団理事長、元東京地検特捜部検事の<違法献金事件/検察に説明責任はない>の主張が掲載されていた。郷原信郎元検事らの主張と真っ向対立する論で、このような論もありうる、ということを提示してくれたことには敬意を表したいのだが、一読、論拠が弱いと感じた。

 堀田氏の言わんとするところは①政治資金規正法は政治がカネの力で歪められることなく国民一般のために行われるようにしたいという国民の長年の悲願に応える法律だから、政治浄化のために検察が汚職事件摘発などを行うのは当然②しかし、その摘発は偶発的にならざるを得ない③検察の持つ手段は限られており、摘発だけでは浄化は出来ない④本来はカネの動きをすべて透明にし、企業・団体献金を禁止すべきだ⑤しかし、それは政治家の抵抗でできないが、その中で政治資金規正法はなんとかここまできた⑥その規定を潜り抜ける迂回献金は許されない⑦今回、摘発された政治資金規正法はこのように国民の悲願を凝縮した法律だから「形式犯」と切り捨てるのはおかしい⑧容疑があれば真相究明のために逮捕は当然で法廷で容疑の全容を明らかにするのが検察の任務だ⑨捜査時期は選挙期間中などよほどの特別の事情がない限り端緒があれば進めるべきだ⑩この事件でまずすべきは政治家個人に対する献金禁止の抜け道封じ(法改正)だ――というものだ。

 どうも論点が噛み合っていない感じがする。

 堀田氏の理想論はその通りなのだが、衆院総選挙が遅くとも9月までにあることが確実な時期に、2100万円の政治資金規正法違反だけで次期首相候補の秘書を逮捕するだろうか? いままでになかった摘発だ、つまり検察も官僚だから前例をよく研究していると思うのだが、前例にない摘発であることが第一。

 そして、小沢一郎氏の言う通りならば違法性はないし、もしも秘書が違法性を認識(本当は企業からのカネである、と思っていた)していたとしても、郷原氏によると、それだけでは政治資金規正法違反の立件は難しいという。つまり、カネが裏に隠されていない。すべて表に出したカネであり、政治資金収支報告書に記載されている。

 ここまでダメだという摘発例はなかった。つまり、ここでも検察は新しい基準で政治資金規正法を解釈し、摘発したのだが、ルールの変更を強制捜査によって行う、という手法は日本の政治を混乱させないか。

 カネを使わない政治がいいに決まっているだろうが、米国でも欧州でもカネは政治につきもので、それぞれの先進民主主義国でも政治とカネ問題は固有の形態で問題化している。

 日本の「政治とカネ」だけが民主主義後進性の証拠だ、というのは傲慢な欧米主義だと思う。日本の事情を勘案しながら、世論と折り合いをつけながら、政治という至高の行為を大切にする姿勢こそが行政の一環である検察には求められているのではなかろうか。

 以上の理由で私は検察には説明責任がある、と思っている。

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2009年3月19日 (木)

連合は「小沢切り」をしたのか?:笹森清氏の「済州島買っちゃえ」発言リーク~3月19日毎日新聞夕刊

 私は疑っている。長崎県対馬が選挙区の民主党議員の資金集めパーティーで笹森清・前連合会長がスピーチで「小沢代表が『済州島を買え』と言った、と発言した問題である。連合による小沢離れの一環としての発言ではなかったのか、と。あまりに陰謀史観的なものの見方だ、と批判されるのを承知で書いておくのは、どうも、この問題にしても、政治資金規正法違反で秘書が逮捕された問題も「小沢は汚いから、民主党をここまで大きくしてくれた功労者ということでみんなでお礼を言って引き下がってもらおう」という暗黙の共同行為があったのではないか、という疑いが消えないのだ。

 毎日新聞3月19日夕刊2面[特集ワイド]のコラム[早い話が]で金子秀敏専門編集委員は相当に善意の解釈を展開して、笹森氏の発言自体、何の問題もない、と言い切るのだが、逆に言えば連合会長までやった人物が、このような話をしたら、世間がどう反応するか知らずにしゃべったとは思えないのである。もしかしたら、笹森氏という人物はそういう空気も読めないアホ人間なのかもしれないが、普通、ナショナルセンターを率いる人物はアホでは務まらないからだ。

 金子氏の<妄言批判という佞言>という面白いコラムを読んでみよう。

 <「済州島を買っちまえ」という小沢一郎・民主党代表の発言をみんなでたたいている。麻生太郎首相は「こういう発想はとてもじゃないけど私には出てこない」と仰天してみせた。産経新聞は1面で「内外から『妄言』批判」と書いた。韓国の反日主義におもねった見出しだ。妄言批判の裏に韓国への佞言を感じる。あれ? 同僚の山田孝男専門編集委員も「冗談と聞き流せない」(16日付コラム「風知草」)と神経をとがらせている。>

 産経新聞だけでなく、毎日新聞の同僚記者も書いていた、というのが毎日新聞らしくて面白い。統一性がなく、バラバラの個人が勝手に記事を書く雰囲気だ。

 <おかしいではないか。「済州島買い」でこんなに騒ぐのに、株価が上下するたびに出る「日本買い」「日本売り」で騒ぐだろうか。韓国観光公社のホームページを見るがいい。いまはウォン安・円高だから、日本人が韓国で買い物すれば半額で2倍楽しめますと「韓国買い」のキャンペーン中だ。だれも妄言とは言わない。>

 その通りだ。冷静に考えれば分かりそうなものなのに。

 <「買っちまえ」は話し言葉だ。書き言葉なら「投資せよ」だ。済州島のゴルフ場やホテルの株、不動産をいま買えば円高メリットがある。これは単純な経済的事実である。買うといっても、領有権はどの国でも売っていない。小学生レベルの常識だが、もしかして麻生首相は、済州島の領有権を買うと勘違いしているのではないか。だとすると、発言した方より勘違いした方のレベルが気になる。>

 麻生首相だけでなく、産経新聞も発言を故意に勘違いしようとしているように見えるのだが。

 <話には前後の脈絡がある。そもそも済州島買いの発端は、日本の対馬にある。対馬は、ウォン高・円安の時代に韓国人観光客が殺到した。韓国企業も不動産やホテルなど「対馬買い」に走った。地元経済が潤った半面で、アワビを密漁するなど韓国人客のマナーの悪さが目立っていた。「対馬は韓国領だ」と妄言を吐く韓国人もいて反感を呼んだ。これに一部のマスコミや国会議員が乗って、排外主義のにおいのする“対馬が危ない”キャンペーンをしていた。そういう背景のなかで対馬を選挙区とする民主党議員のパーティーがあり、あいさつをした笹森清・前連合会長が小沢代表の意見を紹介した。「済州島を買え」とは、裏返しに「対馬買い」の本質が領土問題ではないことを説明したのだ。>

 一部のマスコミというのは言うまでもなく産経新聞のキャンペーンを指している。

 <東京新聞の「こちら特報部」(3月13日付)によると、韓国人が買った土地は対馬の0.26%にすぎない。いまや円高で「韓国マネー引き潮」だ、韓国人観光客が半減して地元は困っている。済州島では日本の投資は大歓迎らしい。>

 おかしくなるけれども、日本の新聞で火をつけると韓国の新聞がそれを十倍して騒ぐというパターンがこの20年、繰り返されてきた。教科書問題しかり、竹島問題しかり、である。その火付け役を何度も演じてくれたのが朝日新聞であったことも記しておこう。

 対馬が問題になっているが、大分県などの観光地は韓国人観光客が来なくなって閑古鳥が鳴いているらしい。

 持ちつ持たれつなのだ。産経新聞の対馬キャンペーンに一部の国会議員が乗って発言しているが、何か浮いているように見える。

 もう少し現実的にものを見たいものだ。

 それはそうと、最初の話に戻ると、連合は「小沢切り」をしたのかどうか? 興味深い論点である。

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御厨貴氏と飯尾潤氏の政治診断~3月18、19日東京新聞朝刊インタビューから

 東京新聞が3月18、19両日、[政治不信を問う]のタイトルで続き物を始めた。20日付に[下]があるのだろうが、20日分は明日書き足すとして、上中の2回について感想を書いておこう。

 というのは、上、中に登場した政治学者たちこそ旬の学者つまり、現在の永田町政治に影響力を持っているリアルポリティーク分析の権威で、防衛大学校校長の五百旗頭真氏と並んで、現実政治分析で今、相当に有効性のあるメスで切ることができる学者たちだと思うからだ。

 御厨東大教授は日本政治史専攻で伊藤氏を中心とした政治家の聞き書き、いわゆるオーラルヒストリー手法のベテラン。文部科学省の予算で、後世に残るいい仕事をしている。私も宮沢喜一、後藤田正晴氏や外務省を辞めた岡本行夫氏の聞き書き本を読んだが、予備調査がしっかりしているので、要点をズバリ聞いたり、じっくりと要点に迫ったり、と緩急自在なのはインタビュー慣れしているからか。

 飯尾政策研究大学院大教授は政治学専攻で、愛想のいい性格のいい、人間性がそのまま本になったような正統派の政治の本を書く人だ。「日本の統治構造」(中公新書)で様々な賞を受け、その本を書くに当たっての資料を生かした「政局から政策へ―日本政治の成熟と転換」(NTT出版)では「歴史の流れと政治の変化を20年のスパンで振り返る」と本の帯にあるように、1986年の衆参同日選挙の中曽根政権から説き起こし、安倍晋三内閣までの現代日本政治の構造面の分析を社会、国際情勢との関連の中に位置づけた。1962年神戸生まれの油が乗り切った学者である。

日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ (中公新書) 日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ (中公新書)

著者:飯尾 潤
販売元:中央公論新社
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政局から政策へ―日本政治の成熟と転換 (日本の〈現代〉 3) 政局から政策へ―日本政治の成熟と転換 (日本の〈現代〉 3)

著者:飯尾 潤
販売元:エヌティティ出版
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 前書きが長くなったが、つまり、そういう一流の学者たちが今の政局をどう見ているか、何をどう変えればいいと見ているのか、を聞きだしているはずのインタビューだ、ということである。何らかのブレイクスルーを見いだせるのかどうか、期待して読み始めよう。

◆御厨貴・東大教授の提言

 まずは3月18日朝刊2面の御厨貴東大教授だ。見出しは<党首代え、政権構想を>だ。言葉の幾つかを書き出しておく。

▽国民は、政権交代可能な二大政党という状況を想定してきたが、その二大政党が両方とも駄目になってしまった。麻生自民党は統治能力のなさを露呈した。一方、民主党に対して国民は、小沢一郎代表の自民党田中派的体質を怪しいと感じつつ、とりあえず政権交代させようと、目をつぶっていた。しかし西松事件で目をつぶっていられなくなった。だから次の選挙の意味が分からなくなった。このままでは次の衆院選は棄権率が高くなるのではないか。

 (「両方とも駄目になった」は言い過ぎだろう。本当に両方とも駄目になったのならば、国民は御厨氏の言うように棄権するという選択肢を取る可能性もあるが、私は案外国民の方が気長に見ているのではないか、と思うのだ。橋本龍太郎政権で始めた6大改革で金融ビッグバンは進み、省庁再編成で大蔵省は解体され、財務省と金融庁に分離され、官邸主導を進めるために経済財政諮問会議が出来た。この改革は森政権で施行され、小泉政権で官邸主導が実現した。だから、日本的な政官業癒着構造に頼った護送船団方式、強い官僚政治は1990年代終盤に壊され、2001年からは本当に昔日の面影がなくなってきた。だから、政治主導で進めなければならないのだが、政治がまだそこまでついていっていない。だから、様々な矛盾が出ているのだが、これを「駄目になった」と見るのか、「再建のための過程」と見るかで全く違ってくる。「駄目になった」と見ると、方向性を喪失するが、「改革の過程」と見れば、政治主導を強める方向の改革を進めればいい、という方向性が見えているので、改革は進めやすい。私は、今は改革の過度期だと思っているので、政治主導をもっと強めればいい、と思っている。小沢一郎氏が言うように政治家をポリティカルアカウントとして各省庁の上層部に配置し、官僚の知恵を吸い上げるシステムが機能し始めれば、日本は新しい統治機構を得ることが出来るのではないか、と思うのだが、甘いのだろうか。)

▽(今のような状態は過去にもあったのか、と聞かれて)1930年代、第一次近衛文麿内閣の後、弱体内閣が三代続いた時と似ている。ただ、当時でも首相候補のストックはあった。今はストックがない。その原因は派閥の弱体化とも関係がある。かつて派閥の長は首相挑戦者だったが、いつからかお茶のみ会の会長になってしまった。

 (派閥に関する郷愁は古手の政治家、政治記者、政治学者のいずれもが口にする。しかし、竹下政権の末期、後藤田正晴氏らが自民党政治改革大綱を作成した時点では派閥は「悪」という認定だった。なくなって皆、初めて派閥が果たしていた重要な人材育成という機能に気付いたようだ。しかし、人為的に派閥を復活させることはできないし、その必要もない。田崎史郎氏が「政治家失格―なぜ日本の政治家はダメなのか―」(文春新書)で書いているように、派閥ではない、党が主導する政治家養成システムを創らねばならないのだろう。田崎氏の本で面白かったのは松下政経塾出身の政治家が皆小粒で、松下幸之助氏の理想に反して、日本の針路を決定するような政治家を育てることができていない、という指摘だった。人を育てるのは難しいが、結局は国民、選挙民が長い目で政治家を育てようとするか、欠点だけを虫眼鏡で拡大して貶し、政治家をスポイルするか、国民の政治家との接し方がすべてではないか、と思う。その場合、「国民」とは言っても最も鼎の軽重を問われるのはマスメディアである。メディアが政治家を潰して「日本には首相を務められる政治家はいない」と言うのか、田崎氏が若手政治家何人かを紹介しているように、若手政治家を育てようとするか、で政治の風景は全く変わってくるだろう。)

Book 政治家失格―なぜ日本の政治はダメなのか (文春新書 687)

著者:田崎 史郎
販売元:文藝春秋
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▽(自民、民主の両党は信頼を取り戻すために何をしたらいいか、の質問に)負け比べ状態にある二人の党首は取り替える必要がある。政権を担う力のある党首を選び、政権構想を示すべきだ。衆院選では、政治構造の活性化を考える選挙にしなければならない。もはや、どちらが勝つというレベルを超えている。

 (これは随分と思い切った提言である。麻生首相がそんなにひどいのか、ともう一度考えてもいいのではないか、と最近、私は思っている。外相時代の「不安定の弧」を民主主義の弧にするという大きな発想は素晴らしいと思うし、対ロシア交渉は外務省の振り付け間違いで失敗したが、基本的に橋本首相とエリツィン大統領の川名会談の線で突っ張るしかないわけで、そう大きな進展は望めないにしても、今は日ロ交渉の時期だ、という麻生氏の感覚は鋭いと思う。また、首相秘書官に財務省の主計、主税局ではなく国際金融局から持ってきたことも、財務省が麻生政権を見放した、と見るのではなく、麻生首相が世界同時不況を見越して、国際経済へのシフトを考えていた、と考えれば「素晴らしい」という結論になるのではないか。注目されなかったが、ニューヨークで開いた初のG20の麻生提案は国際金融局出身の秘書官が書き上げたペーパーだった。このペーパーは米国の過消費体質を厳しく糾弾して、転換を迫った日本の総理演説としたら画期的な内容だった。メディアが報じないだけで、いいところはある。漢字の読み違いなど、分かりやすい部分だけクローズアップするが、誰だって読み違いくらいはする、と大きな心で対処するかどうかだろう。それが直接、首相の資質に結びつくかどうか。首相の最大の決断は日本が戦争をするかどうかの決断だと思う。そういう大きな日本の繁栄か消滅か、の決断さえ間違えなければ、あまりに細かい部分の指摘は週刊誌に任せればいいのではないか、とも思うのだ。こせこせしないで、大局を見る、という心構えが今こそ求められている、と思う。)

▽(小泉純一郎氏の後、首相が毎年代わったことも政治への信頼を失っている、と聞かれて)そう。(1970年代から80年代の)三角大福中のころ、2年は首相をやっていた。今は1年。いくらなんでもひどい。与野党は政権をもう少し長く持たせる仕組みをつくるべきだ。時間を与えれば政治家は化けることがある。小泉氏のように。

 (基本的に賛成だが、別に新しい仕組みを作らなくとも、メディアが気持ちを入れ替えればできることだろう。)

▽(麻生首相と祖父吉田茂氏の似た点、違う点を聞かれて)吉田氏は麻生氏と同じように国民から不人気だったが、やるべきことはGHQの力を借りてでも押し通した。朝令暮改でもなかった。だから経済も立て直せたし講和も実現した。麻生氏にはその腕力、実力がないし、思想も伝わってこない。

 (これも厳しい。吉田茂がマッカーサーを隠れ蓑に自分の考えを実行した、というのはその通りだが、今の時代にそれと似たことをやったのが小泉氏ではないか。小泉氏は竹中平蔵氏を使って、米国の改革年次報告に載ったリストを着実に実行した。米国の他国正企業が望む経済体制に徐々に日本が変わっていった5年半だった。だから、新自由主義の弊害が米国以上に日本に出て、東証の日経平均株価がニューヨーク株価よりも下落した。基本的に外国の言うがままの政治をしてはいけないのだ。麻生氏はそれを知っているから、「かんぽの宿」などで反小泉路線を鮮明にしているのだが、新聞各紙は未だに竹中氏などの論文を掲載して米国の代理人的な人々の論理を垂れ流しで国民に伝える御用機関と堕している。麻生氏だけでなく、実行力という点でいえば、福田氏も安倍氏もなかった。小沢氏だって今の政党の枠組みでは同じだろう。そこで大連立が出てきたのだから。)

▽(吉田氏は第一次内閣が倒れ下野した後、再び政権についたが、という質問に)衆院選で敗れて下野した吉田自由党は、その後「再建」という機関誌をつくりイデオロギー闘争も含めた議論をして、党を点検しつくした。それで党が引き締まり、1年半後の政権奪取につながった。自民党はもし次の衆院選で負けたら、当時の自由党を参考に下野して「自民党は何か」を振り返ればいい。

 (いまだにイデオロギーの時代なのだろうか? 吉田、鳩山の時代と今は違うのではないか。本来は「新自由主義ではなく、新しい社会民主主義のあり方はこうだ」という理論構成も必要だと思うのだが、そうした議論は上滑りになりやすい。堤未果、湯浅誠が「正社員が没落する―『貧困スパイラル』をとめろ!」(角川oneテーマ21)で書いているように、労働規制をむやみに緩和し、その前提となるセーフティーネットを敷いていなかったから、こんなにひどい国になったことは確かなのだから、自民党も民主党も雇用、生命に関する重要法案では党議拘束を外して、超党派で日本人の健全な再生産ができる環境整備のための法整備を進めるべきだろう。変にイデオロギーの仮面をつけるとまたまた自社55年体制の悪夢が甦るのではないか。)

正社員が没落する  ――「貧困スパイラル」を止めろ! (角川oneテーマ21) 正社員が没落する ――「貧困スパイラル」を止めろ! (角川oneテーマ21)

著者:湯浅 誠,堤 未果
販売元:角川グループパブリッシング
Amazon.co.jpで詳細を確認する

▽(民主党はどうすべきか、の質問に)検察の捜査など司法の問題はあるが、公党の党首が疑惑を引き摺ったままでいいのかという政治問題もある。司法と政治を切り離して考えるべきだ。政治的には小沢氏は代表を辞めるべきだ。小沢氏を引退に追い込めば民主党は、初めて自立し、政権担当能力、危機管理能力を発揮したことになる。逆に田中角栄氏が行った二重権力を民主党が抱えると、有権者から見捨てられることになる。

 (御厨氏は相当に大胆だ。この部分が大見出しになっている。確信的に言っているのだろう。しかし、郷原元検事の「ガダルカナル化する特捜捜査『大本営発表』に惑わされてはならない」を読むと、小沢氏は辞める必要はない、とも思える。検察に疑惑を指摘されたら、その可否はともかく政治的には辞任せよ、というのは、検察ファッショを認める理論ではないか、と疑問を持ってしまう。この問題は今までなかったケースなので、慎重に検討して結論を出さないと日本の将来を誤るのではないか、と思っている。)

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090315/189047/?P=1←郷原氏の論文

◆飯尾潤・政策研究大学院大教授の提言

 次は同じ東京新聞3月19日朝刊2面[政治不信を問う]<中>の飯尾潤教授である。見出しは<政策 時代認識とずれ>だ。こっちは分かりやすいし、なるほど、と思う点が多かった。

 最も重要な点は最初の言葉だろう。

▽(今の政治不信の根底には何があるのか?)最も大きな問題は、政策だと思う。まじめに考えなくてもいいという政治の雰囲気に、有権者が違和感を持っている。出てくる政策と時代認識の間にずれがある。「百年に一度の危機」だから金額が多ければいいという旧来型の考えに有権者は怒っている。有権者が参加し、政党を軸に民意を集約して政策を打ち立てるようにしなければならない。

▽(民意の集約による政策とは具体的に、どうつくられるのか?)有権者と双方向性がなければ民主主義の崩壊だが、有権者に聞くだけでは政策は出てこない。道路に穴が開いていて修理するように陳情を受けたとする。政治は、それを治す御用聞きをするだけでなく、どうして穴が開いているかを考え、一般化する必要がある。そうすれば道路管理システム、予算の付け方といった政策を見直すことになる。それが民意の集約だ。

▽(自民党はその点ではどのような問題があるのか?)現在の政党は有権者の動向把握に自信がなくなっているので、世論調査に頼ろうとする。世論調査は「皆が首相にふさわしいと思うのは誰か」という中身になり、「首相になりそうな人」が支持を集めて首相になってしまう。

▽(その結果、首相に適したといえない人が首相になった?)麻生太郎首相は、信念に従って行動するのが首相主導だと勘違いしている。信念を示せば仕事が終わりという自己陶酔に陥って、落としどころなしに提案しているから政権が不安定化している

▽(一方、民主党も今、西松巨額献金事件で大揺れに揺れているが、という質問に)民主党はこれまで、与党の失敗で伸びてきたが、自分たちの能力を試される機会がなかった。事態を調査して有権者を説得できるか代表交代の可否を含めて理屈を示して組織がまとまった形を示せるか、注目だ。

▽(政治家の劣化が叫ばれて久しい。本当に政治家の能力は落ちているのか?)かつて政治家の役割が小さかった時は、振る舞いさえ身につければよかった。今は役割が大きくなっているから破綻している。その意味では劣化しているのかもしれないが、昔の政治家を据えてもうまくいかない。今の政治はチームワークが必要だ。

▽(政治家の劣化を小選挙区制のせいにする意見もあるが?)二世、世襲議員の増加は確かに問題だが、これは中選挙区制の遺産。制度は小選挙区なのに、選挙運動は中選挙区時代の個人後援会でやっているから世襲がなくならない。中選挙区の選挙手法がなくならないのは、政権交代がないからだ。政権交代が繰り返されれば政治家の運動形態も変わるだろう

▽(衆院選は遅くとも半年後には行われる。政治はそれまでにどのような仕事をする必要があるのか?)自民、民主の大政党が日常生活と政策を結びつけ、有権者と政策がつながっている実感を持たせることだ。そして有権者も注文をつける。政権選択がかかっている今は、政党は弱い立場で、有権者の意見が通りやすいから、参加のしがいがある。そうすれば政治不信は、参加と政治への理解が絡み合う、いいサイクルになる

 以上、一気に書き写した。「なるほど」と感心させられる見方が散りばめられている。世論調査政治への警鐘を鳴らしているが、これは共同通信政治記者の柿崎明二氏が「『次の首相』はこうして決まる」(講談社現代新書)で「派閥連合政治の終焉」、「小選挙区世代の台頭」、「支持率至上主義の陥穽」、「世論調査病を超えて」で実証的に書いているテーマだ。

「次の首相」はこうして決まる (講談社現代新書) 「次の首相」はこうして決まる (講談社現代新書)

著者:柿崎 明二
販売元:講談社
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 お二人の当代一流の政治学者にしても、即効薬は持っていない、ということだ。

 当たり前のことなのだが、どうしてもみのもんたの「朝ズバ」を見ている忙しいサラリーマンは今日飲んで今日効くアンプル剤をほしがる。「それはないのだよ、一人一人が少し長い目で政治家を育てるしかないのだよ」と根気強く教えていくしかないのだろう。そして、メディアや学者は一般人が判断できるよう基礎データを分かりやすく伝える努力をもっともっとすべきだろう、と思う。

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ドイツ人に麻生首相を貶されて嫌な感じなのだが、仕方ない面もある~毎日新聞3月19日朝刊[世界の目]

 毎日新聞3月19日朝刊オピニオン面のコラム[世界の目]はドイツ国際政治・安全保障政策研究所のマークス・ティーテン氏の<日本外交に大局的戦略を>と題した寄稿だった。日本語による寄稿だと書いてある。相当に使いこなせる人とみえる。

 内容が「何を言っているんだ」と思いながらも、なるほど、外国人にはこう受け止められても仕方ないか、と思う点も多かったので、書き写しておく。

 <ドイツの「ジャパンウオッチャー」の間では近年ため息まじりの声が聞こえる。日本の外交には「グランドストラテジー(大局的な戦略)」がなく、内政にもビジョンがない、と。>

 最初からこれである。つまり、ドイツの日本研究者が溜息をついている、と。

 <確かに評価すべき個々の事象はある。日米両首脳による日米安保の重要性の確認、経済相互依存による日中関係の改善、天然ガス・石油開発事業「サハリン2」に象徴される日露関係、さらには日中韓の3者協力などである。アジア回帰と、世界的な責任を果たそうとする日本の政治的意欲と可能性がうかがわれる。>

 いやあ、よく見ている。個々の事実をきちんと押さえている。

 <だが、個々の事象を並べただけでは、ストラテジー(戦略)とは言い難い。国民が納得できる一貫したコンセプトを明示し、懸案を調整し系統立てるのが政治の役割だ。だが、日本の現政権を見る限りでは、ばらばらの糸からいつ、国益重視の政策としてのまとまった縄がなわれるのか見通せない。国際協議の場で指導的役割を果たし得る日本は、二流の為政者に国政を任せてはならない。>

 麻生首相を二流の政治家扱いしているのはどうかと思うのだが、それもこれも、日本の「論壇」がそういう書き方をしているから、日本の「論壇」の「鏡」であるジャパノロジストたちがそう思うのも無理はないかもしれない。

 <日本では次の総選挙はいつか、という状況が何カ月も続いている。そして選挙後、日本の外交政策は一体どうなっていくのか。対テロ戦争への協力、ミサイル防衛、対北朝鮮政策と日米同盟、北方領土問題の「独創的アプローチ」、日中経済相互依存など、外交分野での懸案は山積だ。>

 その通りなのだが、そういう言い方は一面的でもある。民主主義は時間がかかるシステムなのだから。

 <選挙民とこれらの問題を討議する用意が政治家側にあるのか、このようなテーマが選挙の争点になるのかは注目すべき点だ。外交では票を稼げない、選挙に勝てない、といわれた時代は日本でもすでに過ぎ去った。首相の政治力が問われなければならない。>

 外交政策を争点に総選挙を行え、というのか? あまり賛成はできないのだが。

 <アジアで同じ価値観を持つパートナー・日本の動きに欧米諸国が期待していることを日本の政治家は認識すべきだ。民主主義の長所は民意を取り込むことにあり、政治家や立候補者は選挙民を巻き込んで政策を討議する。この重要さを認識する政治家は、地位役職をめぐる権力闘争に惑わされない。このような政治家が日本に存在するのか。次回選挙が、この問いへの答えとなるかを、世界のジャパンウオッチャーが注目している。>

 思い込みが激しい人のようだ。もう少しじっくりと見てもらえれば、日本の良い方向への変化も見えるのではないか、と思うのだが。外国の日本研究者は日本研究の人気がなくなり、中国研究の人気が高まっているので、自分のステータスが脅かされている、という被害者意識を持っているのではなかろうか。日本はそう簡単には沈没しない。ドイツなどのインテリに同情してもらわなくともちゃんとやっていけるから、ご心配なく、と言いたいものだ。

 しかし、こういう目で外国が見ている、という客観的な事実を軽視してはいけないと思う。麻生政権ももう少し、日本を世界に発信してほしいし、マスメディアも意識的に日本の良い部分をPRすることが大切ではないか。日本語の情報でも、この人のようなジャパノロジストが受け止めて、外国の言葉で再発信する、というサイクルになっていることをもう少し厳しく認識すべきだろう。

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田原総一郎氏の「かんぽの宿」をめぐる悪あがきは何のため? 何か改革利権をもらったのか?~日経BPnet3月19日アップの田原論文を読んで

 日経BPnetの時評コラムというコーナーに定期的に出ているらしい続きもの[田原総一朗の政財界「ここだけの話」]の3月19日の欄に<「かんぽの宿」はなぜ標的になったのか>という論文が掲載されていた。

http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090319/140283/?P=1

 このBPnetのホームページは最近ご無沙汰していて、田原氏が定期コラムを書いていることすら知らなかったのだが、私のこのブログにトラックバックしていただいた<Tokyonotes 東京義塾~構造改革、規制緩和、民営化、グローバリズムの虚妄>さんの文章を見て、田原氏のブログの存在を知り、あまり読みたい人のものではなかったので、面倒くさかったが一応は読んでみて、その論理の粗雑さと手前勝手さに驚いてしまった。

 その意味では読んでよかった。インチキが分かったから。

 私は田原氏を今までもあまり信用していなかったが、普通の読者にしても、こんないい加減なブログを読んだらば、こんなインチキっぽい人物をいつまでも「キャスター」として抱えているテレビ局を信用できなくなるのではないか、と思った。アメリカの消費者だったら不買運動の一環として田原氏が降板するまでその番組を見ないことと、その番組のスポンサーの商品を買わないという運動を展開するだろう、と思った。

 それくらいひどい文章だった。

http://tokyonotes.cocolog-nifty.com/blog/←(ここが東京義塾さんのHPです)

 田原氏のような論文はブログで書かれている分には、読者も少ないだろうし、誰も好き好んで田原氏のブログまで読もうとしないだろうから、公共の被害は少ないと思うので許せるのだが、もしも同じような内容を「自分の番組」でしゃべっているとしたら、これはもっと許せない、と思う。

 どんなことを言っている部分が許せないのか、説明しながら読んでみよう。

 その前にこのブログについていた田原氏のプロフィルをコピペしておく。

 <田原総一朗(たはら・そういちろう)1934年滋賀県生まれ。早大文学部卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経て、フリーランスのジャーナリストとして独立。1987年から「朝まで生テレビ!」、1989年からスタートした「サンデープロジェクト」のキャスターを務める。新しいスタイルのテレビ・ジャーナリズムを作りあげたとして、1998年、ギャラクシー35周年記念賞(城戸賞)を受賞。また、オピニオン誌「オフレコ!」を責任編集。2002年4月に母校・早稲田大学で「大隈塾」を開講。塾頭として未来のリーダーを育てるべく、学生たちの指導にあたっている。最新刊に「ズバリ!先読み 日本経済」(アスコム)がある。>

 昭和9年生まれか。昭和一桁の最後の年回り。75歳なのか。なぜ新自由主義というか市場原理主義者の応援をしなければならない羽目に陥ったのだろう? 何か貸し借りがあったのか? 小泉純一郎元首相に恩があるのかもしれない。

 以下がブログの本文である。

 <ここのところ、日本郵政の「かんぽの宿」の売買問題が非常に大きな話題になっている。新聞やテレビ、雑誌の報道をみていると、もっぱら、竹中平蔵さん、西川善文さん、宮内義彦さんの3人が“三悪人”のようになっていて、まさに「癒着の構造」と決めつけられている。僕は、どう考えてもこれは一方的な見方だと思う。>

 「どう考えても」というのが単なる修辞的な表現であることが後からすぐに分かってしまう。可笑しい。

◆これは総務省 VS 日本郵政の「内ゲバ」だ

 <この問題は、鳩山邦夫さんが、かんぽの宿の売買について「けしからん」と言い、東京中央郵便局の改築にも「けしからん」と言い出して大きくなった。これは、言ってみれば、総務省 VS 日本郵政の“内ゲバ”だ。もっと言えば、郵政民営化に反対してきた総務省の官僚とその族議員たち、それと、郵政民営化を進めた小泉・竹中の抗争だ。今、鳩山さんをはじめ、かんぽの宿の売買を巡って、これをけしからんと言っている人たちは、以下の3点を問題点として挙げる。>

 こうした見方を最初、各社の社説は匂わせた。一般記事はもっともっとこの視点で描いていた。そのうちに、あまりにずさんな実態を知って、この「怨念戦」という書き方をやめたのが実態だ。田原氏くらいになれば、そのような各社の内幕はすべて聞いているはずなのに、カマトトぶって、そこは知らんふりして、今だに「内ゲバ」ですか。もう、その論理は通用しませんよ。竹中、宮内両氏はどうしてもその論理で覆いたいだろうけれども。

 <一つは、規制改革会議の議長であった宮内義彦さんのグループ会社であるオリックス不動産が、かんぽの宿の最終的な譲り受け先になるのはおかしいというものだ。>

 <宮内義彦さんは郵政民営化を進めた規制改革会議の議長だった。その宮内義彦さんは、オリックスの取締役兼代表執行役会長・グループCEOだ。「李下に冠をたださず」というが、まさに「李下に冠をただした」。もっと言うならば、規制緩和の一番代表的なものが郵政の民営化だった。その規制緩和の座長が、かんぽの宿の譲り渡しを受けるということは、完全に癒着の構造ではないか。これが、鳩山さんらが指摘する問題点の一つだ。>

 これは間違いだ。どうしてこういう基本的なミスを書くのだろう。知っていてわざと書いているのだろうから、わざわざ指摘するのも馬鹿馬鹿しいが、宮内氏は規制改革会議は郵政民営化には関係ないと言っているし、鳩山氏も規制改革会議そのものと郵政民営化の関係ということよりも、それまでの宮内氏の政府との関係そのものと郵政民営化との関係を問題視しているのだ。

 肝心のコアなディテールを間違えているのでは説得力がないですよ、田原さん。

 <指摘されている問題点の二つ目は、かんぽの宿のオリックス不動産への譲り渡しが安すぎる、ということだ。>

 これもピントがずれている。馬鹿馬鹿しくてもう読むのをやめたくなった。オリックスへの売却だけでなく、日本郵政とその前の組織が施設を売り払った時にすべておかしなことをしている、という疑惑なのだ。しっかりしろ!田原!

 <日本郵政は昨年末、オリックス不動産に79物件(社宅含む)を108億円で一括売却する契約を結んだ。一方で、物件の取得費には計2400億円かかっていた。2400億円かかったものを、108億円で売り渡すというのは、なんぼなんでも安すぎる。安くないという言い方があるが、なぜ不動産が最も安い時期にこういう譲り渡しをするのか。>

 これも一部分しか書いていない。

 <三つ目は、その79物件を一括販売するのはおかしい、もっと一つひとつ丁寧に売っていけばもっと高くなるはず、というものだ。かんぽの宿の稼働率は約70パーセントで、決して低くない。それを、赤字だ赤字だ、ということもおかしい。普通、ホテルや旅館の稼働率が70パーセントならばやっていけるはずだ。やっていけないというのは、それぞれに経営の問題があるからではないか。>

 何か、馬鹿のひりをして、わざと論点ずらしをやってません? 田原さんは。

 <以上の3点クレームがついている。>

 だかfら、違うって。

◆「政府は経営に介入しない」が前提だったはず

 <しかし、僕はこの3つクレームのつけ方こそ、何よりも問題だと思っている。>

 ほらね、こうくると思っていた。内容のコメントの前に形式でいちゃもんをつける。田原氏が得意とするやり方ですが、皆知っているのですよ、そのこけ脅しはもう通じません。

 <そもそも、郵政民営化のときに、「郵政を民営化して、株は政府が100パーセント持っていても、経営には政府は一切口を出さない」ということが前提になっていた。竹中さんは国会で何度もそのことを言っている。ところが、鳩山邦夫さんという総務大臣が今「けしからん」と言っているのは、明らかに政府が経営に介入しているということだ。これはそもそもの郵政民営化の前提に反する。鳩山さんらは、「なぜ郵政民営化を推進した宮内義彦さんが率いるオリックス関連会社に売るのか」、「李下に冠をただして」おり、「癒着だ」と言う。しかし、実は「かんぽの宿」売却の入札には当初27社の競合があった。そこから、ホテルなどの経営経験のある企業という条件と、入札価格で、7社、3社とふるい分け、最終的に一番高い価格をつけたオリックス不動産に決まった。当初の入札競合27会社には住友不動産も入っていた。「癒着だ」というならば、日本郵政の西川善文社長は三井住友銀行の元頭取だから、宮内さんのオリックスよりもはるかに強い。しかしこちらは振り落とされ、108億円という値段を提示したオリックス不動産が最終的に売却先として決まった。そういう意味では選定に不明瞭なところはない。>

 そう、一気にこれだけ書いて息が切れませんでしたか? 民営化して国の手を離れて勝手にやれと言ったのに、いまさら文句をつける筋合いではない、と言うのですね。

 その論理も一理あるのです。今のアメリカではその論理の正統性が国をあげて論議されています。田原さんもご存じだと思うのですが、AIGという保険会社のことです。いくら国から公的資金を受け取ったって、幹部社員に支払ったボーナスが高すぎるなんて国が口を挟む権利はないはずだ、企業の自由行動を拘束するのか、アメリカは自由主義経済の国ではなかったのか? と最初、AIGのCIOらが言おうとしていて、「まずい」というので、少し柔らかい表現に変えましたね。

 AIGだって日本郵政だって立派な会社です。国が株式を100%持っていようが、10数%持っていようが、国は口を差し挟むべきではない、というのは一つの論理でしょう。

 でも、もしも、田原さんが日本郵政についてそう考えているのでしたら、AIGについても公平に「オバマは口を挟むな」と言ってやってください。AIGに任せろ、と。

 そうは言えないでしょう、田原さんは。なぜならば、納税者の怒りを知っているからです。日本郵政やその前身の会社が二束三文で一部の内通会社に売り払った施設は言ってみれば国民の税金や郵貯のもうけで作った施設。だから、この一部の人々への安売りは「改革利権」そのものなのですから。その部分に触れないのはなぜでしょうか。

 <さらに、もし「宮内さんが規制緩和改革の委員会の座長をやったから、オリックス不動産を売却先にするのはおかしい」などと言っていたら、民間の人物を規制緩和などの座長には選べなくなる。民間企業というのは何かしら関わりがあるものだ。逆にいうと、今回の鳩山さんらの追及は「民間の人間をそういう委員会の座長にするな」という姿勢でもある。不動産が非常に安い時期になぜ売るのかという疑問について言えば、実は、こういう計画をしたのは2007年だった。2007年の郵政民営化の際、5年以内に廃止か売却することが決められた。2012年までの5年以内に売却しなければならない。しかも、かんぽの宿は、年間に40~50億円の損失が出ている。かんぽの宿というのは建築費も高く、官僚がやったものだから、普通のホテルや旅館と違い、7割の稼働率では損失が出るのだ。100パーセント稼動してももうけが出ないようになっている。40億から50億円の損失が毎年出ている「かんぽの宿」を早く売りたいというのが郵政側にあった。この売却計画を立てたのが2007年で、2008年の4月に公募している。この時期は、まだ不動産の値段が安くはなっていない。公募以後、だんだん安くなってきた。だから安い時期に売ろうとしたのではなく、売ることを決め、そのためのお膳立てをしているプロセスで安くなった。27社から売却先の選別をするプロセスで、結果として安くなってしまったのだ。>

 この論理のすり替えは苦し紛れとは言ってもひど過ぎて苦笑を通り越して、青ざめてしまいます。

 民間人を諮問機関のトップになっていただくのは政権が求心力をつけるためにも、民間の方々の知恵や活力や影響力を使うためにも今後も続けるべき手法だとは思いますが、問題は人物です。

 中曽根康弘元首相は政権に就いた際に何を手掛け、どう進めるか、常に考えながら政治家生活を送っていましたが、それでも鈴木善幸元首相の突然の辞任表明で政権が転がり込んできた時には、お手本を求めました。正確に言うとその前から準備作業をしていたのですが、それが第二臨調です。土光敏夫という「目刺」おじいさんを選んだのは伊達や酔狂ではありませんでした。増税こそしないものの、役人の数を減らすなどで国民に負担を強いる内容の答申にならざるを得ない臨調・行革審答申は閣議決定によってそのまま法律になり、実行されたのですが、そうなれば、国民が「これも仕方ないか」と思うよな方がトップにいないと納得させられない、という事情があって、土光敏夫さんに白羽の矢が立ったのでしたね。国鉄分割民営化も電電公社も臨調答申から始まりました。

 人物が違う、というのが第一点。あまり他人の悪口は言いたくないのですが、清貧の土光さんと小口の金貸しの宮内さんとでは違うと思いますが。

 第二点は手続きの透明性です。「かんぽの宿」などの売却は非常に不透明で、社長の国会答弁が結果的に間違いだった、ということが何度あったでしょうか。それに比べ、国鉄も電電も手続きの透明性、公開性は他国にも誇れるレベルのものでした。

 田原さんは政局はお得意でも、このような些細な政策にはあまり興味がなかったのかもしれませんが、これは大事な違いです。

◆総務省は一括売却を一度承認した

 <一括売却というのはけしからん、個々に売ったらどうか、という意見もある。確かに、個別に売れば、一括売却よりも高く売れるところもあるだろう。ただ、その一方で個々に売れば買い手がないところも必ず出てくる。稼働率が低く、買い手がつかないところは、従業員を解雇するしかない。かんぽの宿で雇用している人たちを、解雇ではなく、なるべく雇用し続けようとすれば一括売却しかなかったのだ。この理由を聞くと、一括売却ももっともだと思う。>

 これはアメリカ政府はAIGがボーナスを出すことを認めていた、いまさら何を言うのか、というレベルの議論です。さきほどの議論とダブるんどえ、省略します。

 <さらにもう一つ、メリルリンチ日本証券がこの売買のエージェンシーをやっていた。国が100パーセント株を持っている、純国営機関の売買を外資系に頼むとはなんだ、という声がある。しかし、これも実は、何社かにかけあった結果、メリルリンチが一番安く、こういう経験が豊富だったことから決まったのだ。さらに、日本郵政が、かんぽの宿売却の財務アドバイザーに起用したメリルリンチ日本証券に、最低6億円払うことになっていた。これに対して高すぎるという批判も出た。これはいろいろな雑誌にも書いてある。しかし、メリルリンチの算定ではかんぽの宿は200億円で売れるということだった。200億で売れると想定して、その成功報酬としての6億なので、もし売却金額が108億円であれば、当然それは3億円に半減していたはずだ。「6億」という言葉だけが一人歩きしているのがおかしい。結局売却は成立しなかったので、この契約自体もないわけだが、もし成立していても、108億円の売却だったならば、メリルリンチへの成功報酬も半分の3億円になっていたはずだ。こういう数字の一人歩きが非常に多い。>

 なぜメリルリンチなのか、という問題はもう少し時間がたつと面白い事実が表面化するのではないか、と思っています。メリルリンチにしても倒産の危機を乗り越えたばかりで、今はまだ無理でしょうが、そのうち、リストラが進み、幹部社員も切られ、秘密順守契約など何だ、という人が出てくるはずです。

 <12月26日に、「かんぽの宿」をこういう形で売るということは総務省も一度オーケーしている。ところが、1月6日になって、鳩山邦夫さんが反対と言い出した。突然反対と言い出したその直前に、実は鳩山さんは選挙区に帰っている。彼の選挙区は久留米で、そこに隣接する大分県日田市にも、かんぽの宿がある。地元では「日田のかんぽの宿を買いたい」という声があって、それで「一括でオリックス不動産に売却するのはよくない」と言い出したのではないかと言われている。オリックスに一括売却になったら、買いたいと言った地元の人が買えなくなってしまうからだ。>

 地元優先は、こういう売却の場合、当たり前でしょう。政治はまずは、地元のためにあるのですから。

◆東京中央郵便局の改築問題も総務省と郵政との戦い

 <鳩山さんは東京中央郵便局の改築にもクレームをつけた。この東京中央郵便局の改築は、始めから総務省との約束で、一部外壁は残すということになっていた。外壁というのは全体の約20パーセントだ。この前提で進められていた。ところが鳩山さんは最近になってこれに「文化財を壊すのはけしからん」といちゃもんをつけ始めた。しかし、鳩山さんがいちゃもんをつけるずっと前から、総務省は20パーセント残すことでオーケーをしていたのだ。>

 <しかし、鳩山総務大臣がいちゃもんをつけたことで、総務省の許可がなければ改築はできないので、計画は変更され、さらにたくさん残すことにした。このように、ここにきて大きくなっている日本郵政関連の問題は、すでに契約で進んでいるものに、いちゃもんをつけたことから始まっている。>

 <例えば、最初に述べたように、「政府は経営には介入しない」というのが郵政民営化の前提だったのに、鳩山さんらは堂々と経営に介入している。これは明らかにおかしいが、マスコミなどからこういう指摘はない。東京中央郵便局の改築も、20パーセントは残すという契約ですでに進んでいたのに、今さら「これはけしからん、改築のために壁に穴があいているのをみたら涙がこぼれた」なんてことを言っている。>

 <僕は単純に、これは郵政民営化に反対の総務省と、郵政民営化をした竹中・小泉の戦いであり、竹中さんが郵政民営化のトップに立ってくれと頼んだ西川善文さんに対する総務省の攻撃だと見ている。つまり、郵政民営化に反対した総務省と、郵政民営化を推進した側との“内ゲバ”である。>

 東京中央郵便局の改築問題は基本的には鳩山総務相のやり過ぎではないか、と思っているのだが、田原氏にそう言われるおぼえはないとは思っている。

 <ところで、小泉純一郎さんは、2月に、郵政の民営化見直しに言及した麻生太郎首相が、定額給付金について「3分の2」を使って衆院再可決をすることに対して、「若干異論がある」、「よく考えていただきたい」という微妙な発言をした。竹中さんはこの時、「かんぽの宿」の問題について小泉さんがいちゃもんをつけるのかと思っていたそうだ。>

 私も鳩山氏と同じことを思った。

 <小泉さんは、郵政民営化反対の鳩山さんらが、突然郵政民営化推進派を攻撃し始めたことに対して非常に憤慨していた。当然、竹中さんはこのことに対して、小泉さんがはっきりとクレームを述べるのかと思っていた。しかし、小泉さんは政治的な思惑も色々あったのだろうが、直接的な言い方はしなかった。竹中さんは「なんだ」と意外に思ったそうだ。>

 小泉純一郎氏が鳩山氏を怒れるわけがないことは竹中氏は知っている。すべての書類を手にした鳩山氏は強い。小泉氏の生殺与奪を握ったのかどうか。

 <今、大きな話題になっている「かんぽの宿」の問題は、郵政民営化反対と郵政民営化推進派の内ゲバなのだ。ところが、マスコミがそこのことを書かず、このところどんどん「竹中、西川、宮内がけしからん」となっている。非常に一方的な報道ではなないかと思う。日を追うごとにマスコミの報道が、鳩山さん側、つまり総務省寄りの報道になっている。 かんぽの宿が大きな問題になりながら、どんどん報道が一方的になっているのはおかしい。>

 一番最初に書いたことだ。

◆鳩山総務大臣などはなぜ反対するのか

 <「かんぽの宿」の場合は、総務省の官僚が反対している。非常に難しいのは、民営化して誕生した「日本郵政株式会社」の中にも、もともとの郵政官僚で、民営化に反対の人たちがいるということだ。そういう人たちの内部通報も色々出てくる。麻生さんも「郵政の民営化には反対だった」と言っていたので、鳩山さんももともと反対だったのだろう。だから、反対する官僚の動きに乗っかっている。鳩山総務大臣たちには、郵政を総務省に取り戻したい、そこで自民党が抱えてきた組織票も立て直して盛り返したい、という面があるのだろう。>

 陰謀論でしかものを見ることができない不幸な人なのに、どうして「改革利権」という最近の流行言葉を知らないのだろうか? 知っていて知らんふりをしているのだろう、と思うが、ボケて本当に知らない可能性もある。

 いずれにしても、こんなボケ老人をテレビで露出させるスポンサーの気がしれない。日本をダメにする最悪人間の一人であることは間違いない。早くテレビから消えてもらおう。

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2009年3月18日 (水)

郷原信郎氏の「ガダルカナル化する特捜捜査『大本営発表』に惑わされてはならない」を読んで納得した~日経ONLINE3月17日

 3月15日のフォーラム神保町主催の東京地検特捜部批判のシンポジウムで予告されていた郷原信郎氏の「ガダルカナル化する特捜捜査『大本営発表』に惑わされてはならない」という論文が[日経ビジネスONLINE]の[ニュースを斬る]にアップされた。

 3月17日(火)にアップされたから、郷原氏の約束通り、昨日アップされた論文というわけだ。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090315/189047/?P=1

 解散・総選挙を控えた極めて重大な政治的影響が生じるこの時期に、比較的軽微な政治資金規正法違反の事件で強制捜査に着手した検察側の意図、捜査の実情、今後予想される展開が、「おぼろげながら見えてきた」――と書き出し、

①捜査は当初から想定された展開ではない

②「大本営発表」を垂れ流す新聞、テレビ

③捜査の現状と見通しを検証することが必要

④二階氏側への捜査には政治資金規正法の「大穴」

⑤ゼネコン捜査は無謀な「白兵突撃」

⑥単純ではない談合受注の構造

⑦捜査の早期終結と政治資金の透明化に向けて取り組みを

 ――の7項目に分けて詳述する。

 地検の捜査は深く考えていない「うっかり」捜査で、こんなに注目されるとは思っていなかったのに、民主党や識者から強く反発されてあわてて、自民党側も捜査して均衡を取ろうとしたが、それも失敗し、あとはせめて大久保秘書の起訴→有罪の証拠固めだけはしなければならないから、というので、くそ忙しい時にもかかわらず、全国から60人もの応援を地検特捜部に持ってきたのだが、これじゃあ、検事総長が不退転の決意で実行しようとした裁判員制度への準備もできないじゃないか、という大批判の論文である。

 だから、早く捜査を終結して、国民にこの捜査について説明せよ、と。東京地検特捜部「不敗神話」などは投げ捨てろ、と言っている。よほど自信がなければ言えない話だ。

 そこまで今回の事件ってダメな事件だったのか? にわかには信じられないことばかりなのだが、他ならぬ郷原氏が言っているのだから、信じるしかない。

 後輩の検事たちの反論が聞きたいものだ。郷原氏の論文の一部だけを引用しておく。

 <検事の異動の大半は、定期異動で行われる。全検事のうちの3分の1近くが一斉に異動する年度末を控えたこの時期、事件の引き継ぎの準備を行いながら、捜査・公判の日常業務を処理しなければならない全国の地検はただでさえ多忙だ。そのような時期の応援検事派遣には検察部内でも相当な抵抗があるはずである。ましてや、今年5月には裁判員制度の施行を控えており、検察は、この制度を円滑に立ち上げることに組織を挙げて取り組んできたはずだ。この時期、定期異動に伴う繁忙を克服して、裁判員制度開始に向けての総仕上げを行うことが、裁判員制度導入の中心となってきた樋渡利秋検事総長の下の検察にとって、何はさておいても優先させなければならない事柄だったはずだ。>

 そんな時期にこんな事件で、くそ忙しい全国の地検から貴重な人員を集めるとは、という。

 <特捜部が担当する脱税事件、証券関係の事件の捜査処理の遅延だけではなく、裁判員制度の対象となる一般刑事事件を扱う検察の現場も相当な影響を受けているであろう。>

 そんなことをするには余程のことがあるはずだが、

 <強制捜査に着手したところ、民主党サイドの猛反発、強烈な検察批判などによって、予想外に大きな政治的・社会的影響が生じてしまったことに驚愕し、批判をかわすため、泥縄式に捜査の戦線を拡大しているということではないか。>

 何か情けなくなるが、これが真実なのか? そして、郷原氏は

 <政治資金規正法違反事件には、「寄附者」をどう認定するかという点に関して重大な問題がある。献金の名義とされた西松建設のOBが代表を務める政治団体の実体が全くないということでなければ、大久保容疑者が西松建設の資金による献金だと認識していても収支報告書の虚偽記載罪は成立しない。>

 この政治団体には事務所も存在し、代表者のOBが常駐し、一応活動の実態もあったという情報もあり、そうなれば団体としての実体が全くなかったことの立証は容易ではない、と書く。遠慮して書いているが、このまま読めば、立件できないという話じゃないか。

 面白かったのは新聞各紙の書き方の分析。

 <従来は、特捜事件に関する報道が「検察リーク」によるものと批判されてきたこともあって、記事は「関係者によると」としたうえで、被疑者側の犯罪性や悪性に関する事実が述べられ、そこには「東京地検特捜部もこの事実を把握しているもよう」とつけ加えられるというのが、一つのお決まりのパターンだった。>

 <捜査機関側ではなく、被疑者側などの関係者への独自取材によって事実を把握し、その事実を捜査当局が把握していることも関係者側から聞いた、という前提の記事だ。被疑者側が自らに不利なことをベラベラしゃべり、また、それを特捜部側が把握していることまで教えてくれるということは考えにくいことだが、こうすれば一応外形的には「検察リーク」が否定できる。

 なるほど、知らなかった。それが司法担当記者の「お約束」だったのか。読者はそこまでは読まないから。

 <ところが、今回の事件の報道はやや雰囲気が異なる。新聞、テレビの特捜捜査報道では、「特捜部は…の調べを進めるとみられる」「特捜部は…と見ているもようだ」というような表現が目立つ。…記事にするだけの根拠があるとすれば特捜部側に何らかの確認を取っていると考えるべきであろう。まさに「なりふり構わず」という感じで、検察当局側からの情報が垂れ流されているようだ。>

 なるほど、新聞社のほうでも、もう自己責任で書くのではなく、地検が言っているから書く、と身も蓋もない書き方をしているわけだ。

 郷原氏は今回の捜査のデメリットとして、

 ①経済対策を主導すべき政治の世界を大混乱に陥れているだけでなく、バブル経済崩壊後の最安値を更新した証券市場の下落などの経済問題から国民の目をそらす結果にもなっている。

 ②捜査機関の側にも可能な限り透明化、説明責任を果たすことが求められるのが当然だが、検察はその責任を全く果たしていない

 ――を挙げていた。そして、「二階ルートも立件は難しい」と書く。すべて「出口なし」じゃないか。何てひどい捜査をしていたのか?

 東京地検特捜部は東北地方の大手ゼネコンなどの一斉聴取に乗り出したうが、「迂回献金」や公共工事を巡る談合などに関する小沢氏側の新たな犯罪事実を立件できる可能性はほとんどない、として、

 <談合構造を前提にした「口利き」などでのあっせん利得罪の時効期間も同じであり、立件は考えられない。…今回の建設業者への捜査は、新たな犯罪の立件のためではなく小沢氏の秘書の逮捕事実の悪性を根拠づける証拠の収集のための捜査としか考えられない。>

 と書き、

 <重要なことは、ゼネコン間の談合構造は2006年以降解消され、その後は、むしろ、猛烈なダンピング競争になっている いうことだ。「過去の遺物」となった談合構造を、3年以上も経った今になってあたかも現在も続いているかのように問題にされるのは、経済危機による深刻な経営悪化に直面する大手ゼネコンにとって迷惑極まりない話だ。>

 ゼネコンを倒産させる陰謀なのか? とすれば、政府・自民党の支持基盤を掘り崩すのだから、野党のための捜査なのか、などとお茶らけたくなるくらい馬鹿馬鹿しい話だ。

 <今回の事件の捜査の経過と現状が、これまで述べてきた推測の通りなのであれば、展望のないまま捜査をこれ以上長期化・泥沼化させることは絶対に避けなければならない。>

 <ただでさえ政治、経済の両面で危機的な状況にある日本を一層深刻な状況に陥れることになりかねない。検察は、「特捜不敗神話」へのこだわりを捨てて事件を早期に決着させ、今回の捜査の目的と経過について国民に説明責任を果たすべきだ。>

 と書いている。これが本当ならば東京地検というより、検察庁の大失態ではないか。早く真相を明らかにしてほしい。でも、郷原さんの論文って説得力があるなぁ。おみそれしました。

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政治不信を煽ってそんなに楽しいのだろうか? 朝日新聞はおかしい~3月18日朝刊世論調査記事から

 最近、朝日新聞がおかしい。今年に入って、その気持ちが強まっていたのだが、3月18日朝刊1面トップを見て、「これはどうしようもないなぁ」と思った。と同時に、なぜ「おかしい」と感じていたのか、の原因の一つも判明した。国民を煽っているのである。

 と言ってもチンプンカンプンだろうから、具体的に説明する。

 「おかしい」と思ったのは朝日新聞3月18日朝刊1面トップ<「政治大いに不満」60%/9割「民意反映ない」/本社世論調査>の記事だった。

 この見出しを見れば一目瞭然、「政治を信頼している人はいなくなったよ」というメッセージである。本文を読んでみよう。

 <いまの政治に大きな不満を抱く人が6割――。朝日新聞社が郵送で実施した全国世論調査(政治・社会意識基本調査)で、政治への不満は広がりとともに強さも顕著であることがわかった。「将来像を示していない」「国民の意思を反映していない」との意見がそれぞれ9割前後に達する。>

 という前文である。森山浩之さんという記者の名前が入っている。

 <調査は全国3千人を対象に、2月~3月中旬に実施した。有効回収率は79%。>

 は調査の方法だ。

 <政治満足度を4段階で聞くと、「満足」との意見は「ある程度」でも6%しかなく、「大いに」は1%だった。「大いに不満」は60%で「やや不満」が31%。調査方法は異なるが、似た質問をした安倍政権当時の2006年12月調査(面接)では、政治に「大いに不満」が27%、「ある程度不満」が45%だった。>

 つまり、国民が政治にフラストレーションを募らせているぞ、何とかせい、というのだろう。91%が何らかの不満を持っている、という。小泉政権では72%だったから、約20ポイント増えただろう、と。

 <一方で、政治への注目度は高く、「大いに関心がある」が31%、「ある程度関心がある」が48%と関心派が約8割を占める。関心が高い層ほど、政治への不満が強いという傾向もみられる。>

 クロス分析をしたのだろう。この後ろの文章はクロス分析をしないと出てこない。

 <不満の要因がうかがえるのは、将来像や民意の反映についての見方だ。いまの政治が「社会の将来像や道筋を示していない」と思う人が91%に達し、国民の意思を「反映していない」とみる人が「まったく」35%、「あまり」52%を合わせて87%に及ぶ。>

 今、政治家だけでなく、経済人や学者にしても5年先の見通しをしゃべれる人がどれだけいるのだろう? そんな時に「社会の将来像」を示せる、というのだったらば、ナチスのヒトラー並みの人物意外にいないのではないか。

 <政治家を「信頼していない」との意見は「まったく」21%、「あまり」57%を合わせ約8割。いまの政党に「期待しない」も61%だった。>

 期待しなくてもいいが、「期待していない」61%の人だって今度の総選挙では投票に行く人もいるだろう。本当に政党を信頼せず、期待しなかったら、ヒトラーが踊りあがって喜ぶ社会になる。朝日新聞はこの設問で「政党政治を否定する」という含意を込めたつもりだったのか?

 <政党への期待の低さは、今後望む政権の形にも表れている。「政界再編」などの選択肢も入れた四択で、どの形がいいかを聞くと、「自民党中心の政権」は11%しかなく、「民主党中心の政権」も15%にとどまった。「政界再編で新しい形」が46%で最も多く、「自民党と民主党の大連立政権」が19%だった。>

 これは各紙の世論調査の傾向と同じだと思う。それを「政党への期待の低さのあらわれ」と受け止める朝日新聞の受け止め方が間違っているのではないか。自民党の中に加藤紘一氏のようなリベラルもおり、森元首相のようなタカ派もいる。一方、民主党も菅氏のようなリベラルがいるかと思えば、前原元代表のようなタカ派もいる。その組み合わせをガラガラポンして、リベラル政党とタカ派政党に再編したらすっきりするだろう、とは誰でも思うことだ。それと「政党への期待」は直接つながらない。

 <通常の電話調査では、望む政権の形を「自民中心」「民主中心」の二択で尋ねており、今月7、8日の電話調査の結果は「自民中心」24%、「民主中心」45%と民主がかなり優位だった。回答の選択肢を広げた今回の調査結果からは、民主党政権が必ずしも強い支持を得ているのではないことが読み取れる。>

 そりゃあそうでしょう。小沢一郎代表の秘書の疑惑を東京地検特捜部のリーク通りに書き続けた新聞社がそういう民意を形成した、という反省は見えないようですが。

 <自民党と民主党の政策については、67%が「大きな違いはない」と考えており、民主党中心の政権に代わったら政治がどうなるかを聞くと、「よくなる」は19%で、「変わらない」が59%を占めた。>

 だから、今までの政権交代という国民の素朴な期待感を打ち壊したのが東京地検特捜部だったことは間違いないのですから。どうして朝日新聞は東京地検特捜部の「国策捜査」を正しいと思いますか、という設問を入れなかったのだろうか。

 強いものに擦り寄る朝日新聞は以前、権力を持った政治家に擦り寄りながら、国有地払い下げなどの利便を図ってもらっていたが、いまや政治家は使い捨て、国家権力の象徴のようになった検察権力にだけ阿るようになった、と見える。

 朝日新聞は1面トップの本記に加えて、6面1ページを全部使って、この調査の詳報と[質問と回答]を入れていた。見出しは<置き去られた民意/政治・社会意識調査/政治家の資質「専門性より国民感覚」/政党像「自・民 大差なし」67%/郵政選挙「よくなかった」62%/不満の中身「将来像示していない」91%/将来投資「医療・福祉へ」85%/格差社会「行き過ぎ」62%>である。ご丁寧に政策研究大学院大学の竹中治堅准教授の<自民と民主 真摯に政策競え>のインタビューがつけられていた。いつもの朝日新聞らしいこけおどしである。

 それはともかく、この記事で暗い気持ちになったのは、マスメディアの役割を吐き違えている記者が朝日新聞の論説委員会だけでなく、編集局の幹部まで思い違いをしていることがはっきりしたためだ。

 はっきり言って、この調査は意味がない。

 政治に不満があるのは当然なのだ。経済成長の時代は政治は不要だった。優秀な官僚が護送船団方式で輸出主導の国家を作り、維持した。それは冷戦崩壊までの話だった。ところが、冷戦崩壊でその日本が輸出立国で今まで通り生きていける条件が失われた。だから、日本は変わらざるを得なかった。

 そこで、中曽根政権から種々の改革に挑み、橋本政権の省庁再編で統治機構を改革。小泉政権がその果実を生かして、経済財政諮問会議をフル稼働させながら、改革を進めた。

 しかし、改革というものは今までの既得権を奪うものでもあり、弱者には厳しいものである。そこで、抜本改革の際には弱者保護のためのセーフティーネットがどうしても必要なのだが、そのセーフティーネットを用意せずに社会保障費削減、医療費削減、労働規制緩和を実施してしまったので、今、日本が閉塞状態になってしまった、と概観できると思う。

 そこで、小泉構造改革ではない本当の構造改革が必要になったのだが、それは農業改革などが中心にならざるを得ない。ところが農業の世界は農協という中間組織がすべてを牛耳っており、また、その組織は自民党の集票マシンでもあるから、改革は本当に難しい、ということだろう。

 論理的に考えれば分かることだ。そんな時代なのに、衆参両院の「ねじれ」で国会が機能しないから。法律が通らない。そこで「政治不信だ」となるのは短慮である。

 そういう時代だからこそ、どういう政治が望ましいのか、今の政治をどうすればいいのか、を聞くべきだろう。

 「政治不信」「政治に不満」が60%でも90%でも、国民は政治と付き合わなければならない。いいにせよ悪いにせよ、これが日本の政治であり、私たちが選んだ選良の行動なのだ。

 暗い見通し、「ダメだ」「ダメだ」の連発が最近の朝日新聞の紙面基調のように見える。

 そんなに国民の思想をファシズムの方向に流れさせたいのだろうか? この議院内閣制の政治をより良くしていくしか選択肢はないのではないか? そういう気持ちを持てば、自ずと設問の仕方は変わってくるものと思う。

 朝日新聞にまた失望した。

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坂村健東大教授の国民カード構想は検討に値する+技術進歩と法の壁の問題も~3月18日産経新聞[正論]と3月22日毎日新聞朝刊[時代の風]

 産経新聞3月18日朝刊[正論]で坂村健・東京大学教授が<「住基」超える「国民」カードで>と題した寄稿を寄せていた。

 例の国民総背番号制問題の新提案である。

 私は住民基本台帳のネット化に最初、相当に疑問を持っていた。

 だが、国民情報のデジタル化ができないと、例えば貧困率調査すら正確な統計が出ないのではないか、税金の捕捉率にしても不公平がそのまま存続するのではないか、という「下から目線」問題でも限界が出てくること、そして、やはり使いたくない言葉ではあるが、国際競争力の面でも必要であるのではないか、と思い始めた。

 そこで様々な方々の提言を注意深く読んでいるのだが、この坂村氏の提言は国家公務員は悪いことをする、という「性悪説」に立ちながらも、カードを導入するにはどうしたらいいのか、という大きな意味での折衷案を提示しているので、貴重な提言だと思った。

 坂村論文は≪生き残りへのコスト削減≫、≪国・地方を超えたシステム≫、≪「上からの目線」を排除し≫の三つの小見出しをつけていた。これで大体、内容の想像がつくだろう。
 坂村論文を読んでみよう。

 <「業務の効率化」という言葉には、非人間的で抵抗があるという向きもあるかもしれない。しかし、極端な少子高齢化の進む日本では早晩、非効率な社会プロセスに人手を割いていられる余裕はなくなる。すべての社会プロセスにおいて、今まで以上の効率化を達成すること-それはいまや単なる努力目標でなく、日本が生き残るために避けて通れない段階にきている。>

 この問題意識に賛同する。

 <メーカーにとって利益を生む研究開発や製造業務が「プロフィット(収益)センター」であり、総務や管理など絶対必要ではあっても直接利益を生まない間接業務は「コストセンター」と呼ばれる。実は企業での情報化に欠かせないのがこの視点である。情報化の目的も結局のところ端的にいってコストセンターからの人員削減なのだ。その目標を見極めないと、大金をはたいて情報化しても何もメリットがない、ということになる。望ましいのは情報化によってコストセンターで余った人員をプロフィットセンターに回し、人切りはしないことだろうが、とにかく情報化した分の人的な合理化ができないのでは、単に情報化しただけで終わってしまう。>

 派遣切りは雇用のミスマッチを覆い隠してきた時代の矛盾が不況になって一挙に噴出したものだろう。雇用のミスマッチは①高度経済成長時代が終焉したのに、経済政策を輸出産業中心主義から変えなかった政府の怠慢②安易に労働者の派遣労働を解禁した経済界と政府の罪③教育などに起因した日本人の心情の変化――などが原因だと思うのだが、これを大きく転換するためには強い政府が必要で、その強い政府は思い切った転換をしなければならず、そのためにはデジタル情報が必要になる、と思うのだ。

 <日本にとっての最大のコストセンターは国、地方自治体を合わせた巨大な行政機構である。借金財政が高進する中で、その効率化は待ったなしだが、そこで思い浮かぶのは「住民基本台帳番号(住基カード)」の制度である。>

 <社会保険庁の杜撰な情報管理は「非効率」というより、まず「非常識」のレベルで弁護の余地はない。しかし、いまだに、年金や保険台帳の再構成作業が困難を極めているという話を聞く。米国の社会保障番号のような国民を特定できる番号制度なしに年金を管理するというのが、いかに大変かということは想像にかたくない。日本の住基カードの制度に反対した人たちの意図はいろいろだっただろう。だが、結局、住基カードについても法律でがんじがらめに利用目的を制限したがために結局、メリットが少なく、利用者は増えていない。その揚げ句、電子政府を目指すシステム構築にかけた予算も、毎年数百億といわれるメンテナンスコストも「壮大な無駄」といわれるようになってしまった。>

 そういうことだ。

 <しかし、スタート時の住基カード構想では、マルチアプリケーション(総合)ICカードとして、運転免許証から保険証まで多様な機能を一枚のカードに持たせるという夢が語られていたはずだ。たとえば、タバコ自販機用の成年証明カードなど、本来の構想通りの住基カードがあればそれを利用できた。定額給付金だって、皆が住基カードを持っていれば事務は恐ろしく簡単、低コストになる。一番合理的なのは、住基カードに関する規制を見直し、米国の社会保障番号のような多様な利用を可能にすることだ。そして住基カードを利用して効率的なワンストップサービスができるようにする。それによって国も自治体も超えた行政システムを再構築する。それが理想だと思う。>

 効率を考えればそういう発想になることは専門家が皆言っていることだ。

 <とはいっても、一度ケチがついて現行法律で縛られてしまった住基カードの多機能化を、いまさら復活するのは至難の業だろう。プライバシー的な問題だけを言うなら、住基カードを計画したころより情報技術も進歩しインターネットも普及した。この機会に、それに対応した最新のネットワーク対応ICカードの採用を提案したい。「住民基本台帳カード」というのも、いかにも行政側の管理のにおいがする「上から目線」を思わせるので、名称もこの機会に「国民サービスカード」と変える。プライバシーに最も気を使わないといけない「住民基本台帳番号」の露出は最小限とし、通常はサービスごとの利用者番号を発行する。その記録は各サービスのデータベースに分散し、すべてのサービスの利用者番号と住民基本台帳番号を一括記録しているのは各自のカードだけという構成にするのである。>

 名寄せを難しくすることで抵抗を排除しようという提案である。

 <住民基本台帳のときに言われた問題では、住基ネットの脆弱性のほかに「名寄せ」の問題があった。しかし、このような構成なら名寄せは非常に難しくなる。冒頭で述べたように、何より大事なことは「(国民サービスカードの導入で)何人の公務員、どの程度の行政予算を減らせるか」というコスト削減の目標を国民に提示することだ。技術ができる限りのことをしても、プライバシーにもセキュリティーにも完全はない。そのリスクを前提にしてもなお、日本が生き残るために、やらなければならない。そういう覚悟を示す時期に今や来ているのではないだろうか。>

 どこまで真剣に検討されるか、であろう。森信中央大学教授らの見解を聞いてみたい。私はこの辺が一つの折り合いを付ける落とし所ではないか、とも思うのだが。

 坂村氏は3月22日毎日新聞朝刊[時代の風]にも<技術の進歩に法の壁/制度革新で景気刺激>のタイトルで寄稿していた。同じ問題意識からの文章である。書き写しておこう。

 「検索エンジン」世界最大手のグーグルは1998年創業の米国のベンチャー企業で、成長に次ぐ成長であっという間に巨大になった。従業員は2万人で2008年売り上げは218億㌦。全世界で2億人が使っていると言われ、検索キーワードに関連した広告を表示するなど、新しいビジネスモデルで急成長を遂げた。インターネットによって生まれた最大の企業であり、この世界ではマイクロソフトでさえ太刀打ちできない、という書き出しである。

 <そういう話を聞くと「技術があるはずの日本で、なぜこのような新しい企業が生まれないのだ」と、いつも議論になる。しかし、答えは簡単。技術そのものより、技術が生む新しい可能性にチャレンジするのを支える社会の仕組みがない――という問題の方が日本では大きいからだ。具体的に言うと、法律や制度などが技術の進歩に全く追いついていないし、追いつけるようにもなっていない。>

 さあ、ここからズバリ本論に入る。

 <検索エンジンが典型だ。日本での検索エンジンの発展を阻んだ最も大きな障壁は著作権法だった。検索エンジンはネット上の情報を収集して、その後の検索を早くするために内部に索引を作る。そのときに相手の情報を複製する。ところが、現行の日本の著作権法では、無断で著作物をコピーすることは法律違反。いつ訴えられるかわからないとなると、ビジネス化にも躊躇する。そのため日本企業が開発した検索エンジンでも、エンジン自体はわざわざ海外に設置していた。その及び腰の結果、今や表面的には日本のもののように見えても中身のエンジンはグーグルのもの。日本の検索エンジン技術の系譜は途絶えてしまった。>

 ひどい話じゃないか。

 <この成り行きに、さすがにまずいと日本でも動きが出始めた。文部科学省が今国会に提出したデジタル時代の新しい著作権法改正である。これにより「インターネットで情報検索サービスを実施するための複製」は権利者の許諾なく行えるようになる。遅きに失したとはいえ、これは一歩前進だ。また、視覚障碍者に対して書籍を音声化したり、聴覚障碍者に対して映画に字幕をつけるようなことも、著作者の許諾無しに自由にできるようになる。今回の著作権法改正について、報道では「違法コンテンツのダウンロード禁止」ばかりに焦点をあてて取り上げているが、規制強化の裏に隠れたこれらの自由化の方が、将来的には大きな意味を持っているはずだ。>

 そういうことなのだ。マスメディアの意識が遅れていることが日本の技術革新の遅れに繋がっている。

 <ところで米国の著作権法はどうなっているかというと、報道や教育、調査研究等の公正な利用に関しては許諾無しで複製などを行えるフェアユース規定やインターネット業者の責任を限定するセーフハーバー(責任制限)条項などを、早いうちに用意していた。判例重視の英米法体系ともあいまって、新たな問題が生じても時間のかかる法改正によらずに裁判所の判断により物事が先に進められるようになっている。グーグルもユーチューブも当初広告などを取らず非ビジネスベースで開始した。そして、大きなユーザー層を確保し十分な投資を集め、法律スタッフなどの足腰を固めてからビジネス化にかかった。利益を出さないうちは、フェアユース規定などにより得られるフリーハンドを生かして果敢な技術トライアルができる方を重視したからだろう。>

 米国は国際ビジネスで勝利することを考えた戦略的法体系を持っている。

 <日本では法令重視の大陸法体系ということもあり、著作権法の除外にしようと思ったら、今回の改正のように「インターネット情報検索サービスのための複製は許す」と許される項目表――ポジティブリストを具体的に示さないといけない。ポジティブリストにない利用はすべて違反というわけだ。イノベーションが「予想外の革新」という側面を持つ以上、新たなサービスは常にリストにはないわけで違反となる。ポジティブリスト方式は本質的にイノベーションに向いていないのだ。そして、法改正には時間がかかるので、ポジティブリストは時代の進歩に常に追いつけない。そのため、非ポジティブリスト方式の日本版フェアユース規定を決めよう、という動きもある。>

 大陸法と慣習法の違いなのか。

 <制度革新によるイノベーションの例としては、ドイツで自然エネルギー発電の電力を電力会社に対し一般の電力の数倍の料金で買い取る義務を課したために、太陽電池設置数がたちまち日本を抜いてしまった例(差額は一般の電力料金に加算され国民全体で負担)や、やはりドイツでの古い自動車の買い替え補助など、多少バブリーな制度で副作用もあるらしいが、世界に広まっている。>

 ドイツも大陸法だ。日本はドイツの法体系を明治時代に取り入れた。そのドイツではブレイクスルーができているのに、日本ではできない、ということは大陸法であることだけが問題ではなさそうだ。

 <時代の風を生むのは技術だとしても、その風の向きを決めるのは社会制度。そして、日本が弱いのも技術ではなくその部分だ。景気刺激が最優先の今、世界がまねしたくなるような、新しい制度革新をいち早く日本から発信したいものである。>

 そのためには法制度の充実である。政局で足を引っ張るよりも、与野党の若手議員が集まって、このための法改正を真剣に考え、議員立法で突き抜けてほしいものだ。

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2009年3月17日 (火)

英FT紙の北朝鮮エネルギー危機の記事、ちょっと浅い感じがしたのだが~3月16日付フィナンシャル・タイムズ

 3月16日付英フィナンシャル・タイムズ紙を日本語訳した記事がJBpressのホームページに3月17日に「北朝鮮を脅かすエネルギー危機~深刻な電力不足で体制崩壊も~」のタイトルでアップされていた。By Christian Oliver in Seoulとあるから、ソウル支局のクリスチャン・オリバー記者が書いた記事らしい。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/731←これがホームページ

 <北朝鮮の電力供給網が死につつある。専門家と外交筋によると度重なる停電が遠からず金正日総書記の健康状態を巡る不安や飢饉と同じくらい深刻な北朝鮮の安定を脅かす問題になるという。>

 という前文。

 <北朝鮮を燦然と光り輝く韓国と日本に囲まれた真っ暗な地域として映し出す衛星写真は既によく知られている。だが、洪水で浸水した炭鉱や、沈泥で動かなくなった水力発電所、急減する石油輸入量は、北朝鮮が宇宙から見えるほんのわずかの明かりを灯し続けることがますます困難になってきたことを意味している。>

 <「我々が目にしているのは、死につつある体のレントゲン写真だ」。米シンクタンク、ノーチラス研究所のピーター・ヘイズ所長はこう話す。「残された時間はあまりない」。ノーチラス研究所は1992年以来、北朝鮮のエネルギープロジェクトに参画しており、外交筋が「北朝鮮のエネルギー供給に関する最も信頼できる描写」と呼ぶ調査結果をまとめ上げた。>

 米国にはこういう形で北朝鮮とコンタクトを取っている民間人が多くいる。しかし、日本の新聞に掲載されることはほぼありえないので、日本人には知られていないが。

◆エネルギー事情が物語る厳しい暮らし

 <同研究所のデータによれば、消費者のエネルギー需要は1990年の約1300ペタジュール(ペタは10の15乗)から2005年には500ペタジュールをかろうじて上回る程度まで落ち込んだ。北朝鮮産業の衰退をまざまざと映し出す数字だ。>

 <「2005年以降、発電量は多少上向いたが、惨事を防ぐほどには改善していない」。ノーチラス研究所は韓国ソウルで開催された北朝鮮に関する会議でこう述べた。昔は北朝鮮のエネルギー供給量の優に70%以上が石炭による発電だった。しかし、炭鉱は危機に陥っている。北朝鮮には、炭鉱全体の60%とも言われる浸水した炭鉱から水を汲み上げる技術がないからだ。石炭危機はもろに暖房や料理用の燃料に波及した。1989年時点では、暖房・料理用燃料の77%が石炭によるものだったが、今ではたった32%に低下している。>

 <「この事実は、農村部の住民の多くが(生き残れるかどうかの)サバイバルモードにあることを意味している」とヘイズ所長は語った。その副作用として、人々が樹木をあさって燃やすようになり、深刻な森林破壊が起きているという。>

 以前、北朝鮮のエネルギー問題を講演会で聞いたことがあった。小型の水車を作るよう金正日総書記が思いつきで話したため、労働党が全国に指示して、川から水を引いて、小型の自家発電装置を作ったのはいいのだが、洪水の際に堤防が役立たなくなって、民家や畑が水浸しになって……という悲惨な話だった。

 <昨年まで駐朝英国大使を務めたジョン・エバラード氏は、西側諸国の在韓大使館が共催した今回の会議で、北朝鮮の新しい水力発電所を訪問した時の話をし、「新しい発電所なのに、タービンは1938年にスウェーデンで作られたものだった」と語った。>

 このタービンと私の聞いた話とは直接は関係なさそうだ。

◆「体制の終わりは突然やって来る」

 <エバラード氏はさらに、洪水が北朝鮮の農業問題の原因として取り沙汰されてきたが、洪水が水力発電所を泥だらけにし、数週間にわたる稼働停止を招いていることは、まだ十分に理解されていないと述べた。>

 この辺は同じ問題意識でしゃべっているようだ。

 <「私自身は、(政治および経済の)制度が極めて衰退しているため、終わりは突然、それも混乱を来す格好で訪れると考えている」(エバラード氏)>

 コラプスの話か。話が突然そっちにいってしまうのか?

 <燃料が北朝鮮の軍部の手に落ちないようにするために、諸外国からの支援は、精製された石油製品ではなく、重質油の形で提供されてきた。北朝鮮の原油輸入量は、1990年の実績の20%以下まで減少したと推定されている。>

 この事情は知らなかった。わざと純度の低い石油製品にしていた、というのだ。なるほど、これならば朝鮮人民軍がガソリンや軽油代わりに使うことはできない。

 <北朝鮮に駐在した経験のある外交官は次のように語る。>

 <「北朝鮮人は非常にたくましいが、彼らは1990年の飢饉の際、飢饉は韓国の方がひどいと教えられていた。同じ嘘を再び受け入れることはない。もし、厳冬に電力を供給できなければ、現政権は責任を逃れられない」>

 厳冬というが、もう3月末になる。寒さもだが、食物の蓄えのなくなる端境期の過ごし方こそが問題なのではないか。

 英米系の記者の恵まれているところは米国大使館や英国大使館から取材できるだけでなく、キリスト教の教会関係者とか、大学教授とか、英語がしゃべれて、できれば欧米人もいる、というところが多いという点だろう。日本人の特派員で英語で取材する記者は極めて少ない。外務省のロシアンスクールなどの「スクール」ではないが、日本の新聞社では大体、特派員候補者を延世大学か高麗大学、梨花女子大などの語学堂に留学させ、ある程度、韓国語がしゃべれるようになった記者を特派員にする。だから、英語で取材するなどというマインドもないし、日本大使館でも取材も今ではあまりないのではないか。

 それにワシントン支局なども皆そうなのだが、通信社の速報をチェックするだけで半日が終わるから、外で自由に取材する時間がきわめて少ない。

 だから、同じような能力を持った記者がいても、日本人の特派員が各記事は玄関取材的な記事が多く、欧米系は一報ニュースを通信社に任せることもあって、深い取材に基づいた記事を書くケースが多いことは確かだろう。

 そういう意味では、この記事はあまり深くないのではないか、と思ったのだが。

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小沢氏代表辞任は「織り込み済み」なのか?+企業献金禁止の話は本気だろう:3月17日の会見~産経新聞3月17日ウェブ版から

 3月17日のNHKの午後6時のニュースを見て、小沢一郎・民主党代表が記者会見をしたことを知った。慌てて産経新聞のウェブ版をみたら、記事があった。<小沢氏秘書逮捕/小沢氏、秘書の勾留期限目安に進退判断>の見出しで、

 <民主党の小沢代表一郎代表は17日午後、党本部で記者会見し、自らの進退について「検察当局が公正な結論を出すことを期待する。結論が出る前にとやかく言う問題ではない」と述べるにとどめ、政治資金規正法違反で逮捕された自身の公設秘書の勾留期限が切れる24日を目安として判断する考えを重ねて示した。>

 <そのうえで、小沢氏「私も、大久保(隆規・第1秘書)自身も、法の趣旨にのっとり、正直に報告していただけという認識だ。何も悪いことはしていないという認識でいる」と述べた。>

 とあった。これだけの短い記事だ。そして、時間的にはその前になるが、民主党の常任幹事会で小沢氏がまたまた陳謝したうえで、記者会見と同じ内容を話した、という記事も載っていた。この部分は各紙夕刊に小さく載っていた。

 1面に出したのは東京新聞だけで、3段見出し<小沢氏、進退は来週決断>だった。記事の内容は基本的に各紙同じだから、ここでは、<小沢氏進退 「来週にはある種の結論が出るので、そのとき話す」>という長いタイトルの産経新聞ウェブ版をコピペしておく。

 <民主党の小沢一郎代表は17日午前、党本部で行われた役員会で自らの進退について「来週にはある種の結論的なことが出るので、そのときに私の考えを申し上げたい」と述べ、政治資金規正法違反で逮捕された自身の公設秘書の勾留期限が切れる24日を目安として判断する考えを示した。>

 <小沢氏は、冒頭のあいさつで「ご心配をおかけしています」と、出席者に改めて陳謝したという。この日の役員会では16日の参院予算委員会で小沢氏の公設秘書らの逮捕について麻生太郎首相が「明らかに違法であったが故に逮捕ということになった」と述べたことに批判が噴出した。簗瀬進参院国対委員長が「非常に問題発言だ。完全に悪いと決めつけた。首相として行政、司法を分けて発言しているにしては、基本的に間違っている」と指摘。鳩山由紀夫幹事長や山岡賢次国対委員長らも同調し、同党は参院予算委員会などで追及する構えだ。>

 何か、方向性は決まったな、と皆思い始めたのだろう、ということがこの記事の扱いで分かる。つまり、もう小沢氏代表辞任が織り込み済みになっている、という扱いである。

 これは、3月15日夜のフォーラム神保町主催の検察批判会合を朝日新聞しか報じず、各紙が無視したように、日本のメディアが小沢VS.検察の血みどろの死闘で検察についたことを意味した、と小沢氏が判断したということかもしれない。

 あの有名人たちが民放やNHKのテレビカメラを入れて白熱の議論をしたのに、世論形勢に力を持つ有力紙が朝日新聞しか食いつかなかったことを意味しており、それは大きく「世論が大事」(石井一氏の集会での発言)と見ている民主党にとって大きな出来事だったのではないか、と思うのだ。

 私的な会合ではあるが、議論は相当に突っ込んでいた。斡旋利得罪の可能性、そして、それも難しいだろうという郷原氏の見通しなどが表明されたのだが、マスコミ各社は無視したのである。

 すでに小沢氏離れが着々と進んでいるのだろう。

◆毎日新聞によると会見で企業献金全面禁止を打ち出したそうだ

 小沢一郎氏が3月17日午後5時半過ぎに民主党本部で記者会見した、という。

 毎日新聞のウェブ版<小沢代表「企業団体献金を禁止」衆院選争点化も視野に>というタイトルで17日午後10時24分にアップしたのが下の記事である。政治部の渡辺創、田中成之両記者の署名記事だ。

 先ほどアップしておいた産経新聞のウェブ版と同じ記者会見なのだろうか? それにしては、先ほどの産経新聞はどうして政治献金禁止のくだりを書かないのだろうか?

 毎日新聞の記事をコピペしておく。

 <民主党の小沢一郎代表は17日夕、党本部で記者会見し、西松建設による違法献金事件を受け、同党内で公共事業受注企業からの献金禁止を求める声が出ていることについて、「禁止するなら企業献金と今回問題になった団体献金を全面的に禁止することだ」と述べ、企業団体献金の全面禁止を検討すべきだとの姿勢を示した。>

 どうも一般記事だと、質疑応答のやり取りが分からず、ニュアンスが取れない。どういう状況で言ったものなのか、もう少し細かいディテールを知りたいが、この文章だけから判断すると、これは決して苦し紛れの口から出まかせではない、と思う。

 <次期衆院選での争点化も視野に、企業団体献金の規制強化に慎重な声が出ている自民党との違いを示す狙いがあるとみられる。ただ、小沢氏は具体的な法改正案などには言及しておらず、民主党内からも実現を疑問視する指摘が出ている。>

 そういうことなのだ。小沢氏は本気でも、その実現可能性は限りなくゼロに近づきつつある、と見ていいのだろう。

 <また、自らの進退については「そう遠くないうちに(検察)当局の判断が示されると思う。結論が出た時に今後のことを判断したい」と語り、逮捕された公設秘書の拘置期限の24日までに検察が起訴するか否かを見極めたうえで判断する考えを改めて示した。>

 ここは産経新聞と同じだ。産経新聞はここの部分だけをピックアップしたものだったのだろうか?

 <小沢氏は会見で、西松建設OBが設立した二つの政治団体からの献金の違法性を問われ、秘書が逮捕されたことを念頭に「いろいろな会社や業界が持つ政治団体を通じた寄付が行われており、その出資者はかなりのケースで企業だ」と指摘。>

 つまり、西松建設がつくった政治団体から小沢氏の政治団体にきた金について、事実上、西松建設の金だ、と認めた内容なのだ。これは会見詳細を東京地検特捜部が知りたがり、テープというか、ICリコーダーのデジタルコピーを入手しようとするだろう。一般論という形で言っているが、この記事の「念頭に」が曲者だ。

 自分の秘書が政治資金規正法違反で逮捕された。それはあくまで違法逮捕で、あの献金は政治団体からの献金だった、だが、一般論ではそういう団体のカネは実際は後ろにいる企業から出た金であることが多い、という趣旨の発言だったら、東京地検は色めき立っていないだろうか? 「小沢が企業のトンネル献金を認めたぞ」と叫ぶ検事が出てきてもおかしくない発言だと思う。小沢氏は下の企業献金禁止について話そうとして、うっかり上の部分を言ってしまったのだろうか?

 小沢氏は苦しい。前にも書いたが、しゃべらなければ「意気消沈している」と書かれるし、支持者や党内の小沢シンパの若手、小沢チュルドレンが心配する。だから、出てくると、もう各社の記者は遠慮していない。小沢会見にはどうも社会部の遊軍記者か司法担当記者が出るようになったのではないか、と思うのだが、違うのだろうか? 政治記者の質問にしては余りに厳しい。その厳しい質問に耐えて、自分の健在ぶりをアピールし、なおかつプラスアルファの攻めの部分を出せたら、という思いが企業献金禁止発言だろうと思う。

 先に書いたように、小沢氏は本気だと思うが、これに考えを集中するあまり、地検の罠に嵌ってしまったのではないか。

 地検特捜部は小沢氏を聴取する場合、参考人聴取ではなく、被疑者聴取を行うはずだ。その実現を目指して今、東北地方のゼネコン関係者から次々話を聞いてる。今日までのニュースの最新の情報によると、東北の談合構造の親玉は鹿島で、鹿島と小沢事務所はツーカーの関係。そこで、西松建設は鹿島に顔のある小沢事務所に取り入って、談合の仲間に入れてもらい、東北の工事をわけてもらおうとして小沢事務所にトンネル献金をした、という筋が今、地検が描いているシナリオらしい。これが野党政治家でも斡旋利得罪に当たるのかどうか、郷原元検事などは「難しい」と言うのだが、少なくとも、東京高等検察庁がその線でやるように東京地検特捜部に指示した、ということらしいので、小沢氏も当然、その狙いは知っているはずだ。

 知っていて、脇甘く口から出てしまったのか、そうではなく、記事はこのように省略しているが、犯罪構成要件に該当しないように周到に言い回しに気を付けているのか。

 小沢氏が危ないのは司法試験の勉強をしたことがある法律マインドの豊かな政治家だという点なのだ。結局、地検特捜部と同じ地平で考えてしまうので、負ける。

 金丸信自民党副総裁の政治資金規正法違反の事件の時もそうだった。裁判闘争で争うという仰天の手法を提案したが、梶山静六氏が根来法務事務次官と相談して提案した「罰金で済ます」案に比べれば、金丸氏の心理的、体力的持久力を考えた時、竹下派の仲間は梶山案のほうが合理的だ、と考えた。そこで金丸氏も梶山案を採用して罰金を支払ったのだが、あまりの安さ、新潟県知事の逮捕とのコントラストなどを見た国民の怒りが爆発して、検察合同庁舎にペンキがかけられた。

 小沢案は結果的に正しかったの政治家仲間が取るところとはならなかった。

 <「今度の問題を教訓とすれば、全企業、団体献金を禁止するのがいい」と踏み込み、「政権を取ったら政治資金のあり方を根本的に変えようと思っている」と述べた。>

 私は今回も小沢氏の提案は正しいと思う。何度も書いてるが、もう法人擬制説の誤りに気付くべき時なのだ。法人は人ではない。人は母の胎内から生まれた心臓をもった生命体のことだ。法人などと言うのは近代資本主義が生んだ一つの集まりに過ぎない。そんな集まりに人間と同じ権利を認めているから、こんな変なことになる。個人の意思でしか政治家に寄付できないようにするのは当然の改革なのだ。

 今までは自民党だけが悪い、と言われてきたが、そうではない。社会党が組合からの献金を受けつけたい、という要求を裏で自民党が聞いていたこともある。その社会党の半分が民主党に来ている。

 だから、社会党系の議員は小沢提案に反対するだろう。力がある時ならばともかく、今の小沢氏には突破する力はない。

 だから、本気だけど実現はしない、と思っている。

 <一方、千葉県知事選(29日投開票)など、今後の地方選の結果を進退の判断材料とするかについては、「私自身の今後のこととイコールではまったくない。質の違う話だと思っている」として、地方選の結果と進退問題は切り離す考えを示した。>

 <ただ、「(政権交代という)大いなる目標、責任、使命を果たしていく一点にしぼって、政治家人生の集大成として全力をあげて頑張る」とも述べ、次期衆院選への影響を念頭に置いて判断する姿勢を改めて示した。>

 この言葉をどう受け止めるか、だ。傷ついた小沢氏が確実に政権交代させる方法というのは何なのだろう?

 <事件に関し、東京地検特捜部からの事情聴取については「いまだ地検から何の連絡も受けてない」と否定した。>

 毎日新聞は[企業・団体献金]のミニ解説を入れていた。

 <政治資金規正法改正により2000年以降、企業や労働組合などによる政治家個人の資金管理団体への献金が禁止された。しかし政党側(政党支部など)への企業・団体献金や、政治団体による資金管理団体への献金は認められている。政党側への企業献金の年間上限額は、資本金により上限額が750万~1億円となっている。今回の事件では上限を超える額を献金するため、西松建設OBが設立した政治団体が小沢氏の資金管理団体に献金したよう装った疑いが持たれている。>
 という内容だ。

 [企業・団体献金]の言葉ミニ解説を入れているところから見れば、この記事は3月18日朝刊の1面で扱う大きな記事なのだろうか? ただ、書き方を見ると、実現性には疑問符を付けた感じだ。当然だろうが、もしも記者の解説を入れるとしたら「小沢氏は本気ではあるが」と書いておいたほうがいいだろう。

◆産経新聞ネットで会見全文がアップされていた

 知らない間に産経新聞ネット版に会見全文がアップされていた。17日午後の民主党本部での小沢一郎氏記者会見の内容である。

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090310/stt0903101635014-n1.htm

 ――西松建設の事件だが、検察の強制調査着手以来、報道でいろんな疑い指摘されているが、そういったことに対してどう説明するのか。あるいは現状を今どのようにとらえていて、進退を含めた今後の政治活動についてどう考えているのか。

 小沢氏 「あの、事実関係は、もう皆さんもお分かりの通り、ごくごく単純な事実であります。献金を受けておったことは事実でありますし、そして政治資金規正法の、法の趣旨にのっとってその通り報告をしていたしてきたところでございます。うーん、いろいろと今、捜査をいたしているところと推測しておりますけれども、検察当局の公正な結論が出ますことを期待しております。また私の今後のことにつきましては、いずれそう遠くないうちに当局の判断が示されるものと思いますので、私としては、最初から申しあげております通り、政治資金規正法の趣旨にのっとって、政治団体からの寄付だから政治団体で受けたと、その通りに報告をしたということでありますので、それが理解してもらえることを期待しておりますし、いずれにいたしましても、その結論が出ましたときに判断を、今後のことについては判断を致したいと思っております」

 ――検察当局の結論ということだが、代表は、ご自身も大久保秘書も潔白だという主張をしているととらえているが、仮に起訴になった場合でも、その内容が逮捕容疑と同じあるいは範囲に留まってそれ以上、事件が進展することがない場合は、逮捕以後の対応と同様、代表職にとどまる考えか

 小沢氏「今お話し申しあげました通り、私もそして、きっと大久保自身も、法の趣旨にのっとって正直に報告をしてきただけだという認識だと思いますので、しかし、現実に逮捕されておるわけでございますので、いずれ、検察当局が結論を下すだろうと思いますので、私自身の今後のことについてもその結論を見た上で、私どもとしては逮捕、起訴されるというのは、今言ったように政治資金規正法上のその通り、法律の趣旨の通り報告をしているわけですので、なんも悪いことをしていないという認識でおりますので、その意味で繰り返しますが、検察当局も公正な結論を出していただくことを期待しております。いずれにしろ、その結論が出る前に、とやかく言う問題ではないと思いますので、結論が出てから、また皆さんとお目にかかる機会になりましたら、そのときにお話ししたいと思います

 ――進退について判断する際の基準は。また、検察の判断が示されて以降、どのぐらいで判断を示すのか。もう一つは、今後、4月の千葉県知事選はじめ、地方選が続々とある。こうした地方選の結果が、総選挙に影響があるかないかが代表の判断に含まれるのか。もし、代表職にとどまると判断すれば、その段階から地方行脚を再開するのか。

 小沢氏「結論が出ましたならば、これはあの、法律解釈の問題が、かなりの、その認識の違いですから、政治資金規正法の。おー、判断を、私自身も、よく見聞きして、きちんと認識した上でどういうことの結論なのかということをよく認識した上で、そんな、それ以降、遠くなく私自身の考えを申しあげたいと思っております

 それから地方選挙、これは私自身がいろんな意味で、仲間の皆さんやら支援者の皆さんに、ご迷惑をかけているということは、先日来も申し上げております。今、地元からは、ぜひ応援に入ってくれ、応援に来てくれ、という要請がありますけれども、私としては、このように大きな問題になっておることですので、その結論を見た上でというふうに、考えてはおりますが、いずれにしても、この選挙戦、これはもう、いつも言っていることですけれども、地方選挙と国政選挙とは必ずしもリンクしているとは、あのー、限りません。えー、千葉の選挙も、わが党は最終的に推薦候補を擁立しましたけども、自民党はどっちだかわかんない分裂状態にありますし、秋田もかなり自民も我が方も、ねじれたまんまのお話になっていますし。まあ、名古屋の方だけはどうにか民主党一本で戦える態勢をつくりたいというふうに思ってますし、地元の皆さんもまた候補者と目されている人も、今懸命のコンセンサスを得るための努力をしているようでございます。

 まあ、従いまして、この地方選挙、非常に大事な選挙戦でございますけれども、そのことが、さっきから言われている、私自身の今後のこととイコールのことではまったくない。地方選挙負けるたんびにどうたこうだっつう話ではない。じゃ、勝ったときはそれでいいのかっちゅうことにもなりますし、それとこれとは質の違う話だと思っております。

 それから、選挙がいつか分かりませんので、えー、早くということは主張は変わりませんけれども、まあ、いずれにしろ、この問題の決着をつけて、その上でどうするかということは考えていきたいと思います」

 ――昨日の参議院の予算委員会で、この事件に関連して麻生太郎首相が、「明らかに違法であったゆえに逮捕ということになったんだ」と述べた。個別の事案に対して首相がこのような答弁をするのは通常は考えられないが、この点についてどうお考えか。また、ここへ来て検察の捜査や報道に対する問題について、検察への批判も出てきている。これについて現時点ではどう考えるか。

 小沢氏「あのー、検察は法律を学ぶときは準司法的性格を持っているという表現の仕方で、よくものの本には書いておりますけれども、行政の一部であるっちゅうことは間違いのないことであります。したがって、その行政の長がそのような発言するちゅうことは、多分いまだかつてなかったことだろうと思いますし、それは総理として最高の責任者として、いかがかと思っております。それから検察の捜査につきましては、今、さっきから申しあげてます通り、私どもは、政治資金規正法の趣旨にのっとって、献金を受け取った相手方を記載するという趣旨にのっとってやっておりますので、公平な公正な結論を出してくれるものと期待しております。

 前から言ってます通り、私自身がその、収支報告書以外のいわゆる犯罪に手を染めていたと、関与していたということであるならば、私はどのような処置をされようが、処罰されようが、そりゃあもう、甘んじて受けなきゃなりません。しかし、私はそういうことを、まったく事実としてありませんし、秘書の大久保もそのようなことはないものと信じております」

 ――代表の地元の選挙区支部は地元の建設会社から広く献金を受けているが、こうした建設会社の一部は、ゼネコンからの依頼や指示で献金をしたということが報道の取材などで出てきているが、そういった献金をしている企業のバックにゼネコンがついているということは把握しているのか。またそのような事実についてはどのように考えるか。

 小沢氏「あのー、地元の皆さんの応援は、投票だけでなくして、金銭的にも本当に有り難い支援をいただいております。それは別に建設関係だけの方ではありません。そしてまた、その方々は、いわゆるゼネコン、ゼネコンちゅうと大手をイメージしますが、そういう関係とはまったく違った、もうずーっと、何十年来の支援者の方々がほとんどでございます。ですから、その意味におきましては、私も皆、よく存じ上げてる方々ですけれども、それといわゆる大手ゼネコンとのつながりうんぬんということは、まったく認識しておりません

 ――先週の記者会見では、進退について、政権交代をもの差しに判断するという趣旨の話をしていたが、今日は検察の結論という発言が多い。世論調査や千葉県知事選の結果など、世論の動向で自分の進退を判断するということあるのか。また民主党はかつて問題が起こるとすぐ代表の交代が起きてきたが、今は非常に冷静だ。民主党の同僚議員に対して思うことがあればうかがいたい。

 小沢氏「私どもの大目標と大きな責任、使命というのは、政権を担ってそして本当に一つは国民の側に立った、国民主導の政治を実現すること。それから、先進国の中でたった一つ日本だけが本格的な政権交代ちゅうのがないというこの現実。その意味において、議会制民主主義、政権交代、国民の手によって政権が選ばれる。そういう中で緊張した国民サイドの政治を実施していくと。本来の民主主義の機能を十分発揮できるようにと。こういう大きな眼目でもって次の総選挙に臨もうと、そう思っているところでありますので、私自身の個人的なうんぬんという話とはまったく異質なものでありまして、これはもうずっと前から何度も諸君には申し上げている通り、私個人の欲や何かでやっているわけではありません。

 今言った大いなる目標と大いなる責任を、使命を果たしていくと。その一点に絞って、私のこの政治家人生の集大成として全力を挙げて頑張っていきたいと、そのように思っております。現実の選挙、さっきも言った通り、地方の選挙はいろいろな複雑な地域の事情が絡みます。

 本来ならば欧米のように、議会制民主主義あるいは大統領制もまあ、アメリカあたりはあります、大統領制ですが、実質的に民主主義というのはほぼイコール現実の姿は政党政治であります。ですから欧米各国では大きな、まあ日本で言えば県知事とか政令指定都市とかいう選挙は政党間で争われます。ご存じの通りです。だけれども、わが国の場合は、まだそこまで民主主義というか政党政治というか、それが定着しているわけではありませんので、どうしても国政と地方選挙とは、選ぶ方の主権者の側、そのときそのときの地方選挙の場合は、事情があっての選挙戦になるということもありますので、地方選挙イコール国政選挙、民主党の政権への道うんぬんというふうにとらえてはおりませんこれもまた何回も諸君にお話ししてきたとおりであります。

 ですから、もちろん勝利することに越したことはないんで、これは全力で頑張んなきゃいけませんが、今さっき言ったように、千葉でも秋田でもその地域のいろんな事情で、いろんな紆余曲折があるということは知っての通りでございますので、そういういろんな事情の中でも、ぜひとも何とか私どもに近い考えの人に当選してもらって、そしてそういった諸々の力を合わせて総選挙に臨みたいということが私の気持ちであります」

 ――冷静な民主党に一言

 小沢氏「あ、党内?党内のことは僕も、皆さんの四六時中監視の中にありますんで、党内の皆さんとはなかなか接触する機会がありませんけれども、いずれにしてもこの問題の決着がついて、そして党内の皆さんのご意見も、ご判断を伺いながら、その後のことについては考えていきたいと思います」

 ――事実関係の確認になるが、代表自身が現在までに東京地検特捜部の事情聴取を受けていることはないか。また大久保容疑者を除いて、事務所の他の秘書らが聴取を受けていることはないか。またテーマは変わるが、今日、代表は党本部で台湾民進党の蔡英文党首と会っていたようだが、事実関係とどのような話をしたかを説明いただきたい。

 小沢氏「あのー、私はときどきそういう質問に出くわしますが、いまだ地検から何の連絡も受けておりません。また、うちの秘書といいますか、うちではもう皆さんもご存じの通り、俗に政界では金庫番、金庫番という言い方がありますけれども、うちの事務所では金庫番といわれるような存在はまったくありません。みんなそれぞれが、そのときどきの先輩から後輩へ、あるいは、向き不向きもありますけれども、それぞれが順番に代わって経理を行っているということでございます。ですからその経理のことについてのお尋ねについてはあるかと思いますけれども、それ以上のものではないと思います」

 ――台湾の件は?

 小沢氏「あ、台湾。はい、台湾の民進党の党首とお会いたしました。本当に、久しぶりの、台湾の方とは、政界の関係の人と会うのは久しぶりでございましたので、そういう意味で、特に皆さんが知りたいような政治話をしたわけではありません。お互いに、その境遇ちゅうかな、立場ちゅうかな、それが非常に似てますねと、民進党と民主党と。ただ私が言ったのは、台湾の方が日本より一歩先んじて民主主義が進んでいる。あの国民党の半世紀にわたる独裁から、選挙による総統選出ということになっていると。これは台湾の皆さんが、本当に政権交代という民主主義の姿を体験したわけだから、私はそういう意味において、わが国においても、日本国民も、一度この政権交代を体験しさえすれば、みんな私はあの、優秀な国民だと思ってますので、実体験さえすれば、ああこういうことが民主主義なのかということをすぐ理解することができますので、とにかく一度、本格的な政権交代

 私も15,6年前のときに、これでできたと一瞬思ったんですけれども、短期間で終わってしまいました。今度こそはいわゆる二大政党的な選挙の中で、政権を代える、それによって本当の、民主主義と国民側に立った政治を実現すると。そういうようなことで話をしました」

 ――代表の事件を受けて、政治資金規正法改正の議論が活発になってきている。民主党内の一部では、いわゆる公共事業の受注企業からの献金を全面的に禁止すべきだという意見や個人献金の条件を緩和して企業献金から個人献金に移行すべきだという意見が出ている。代表の考えとは少々違うと思うが、今後の政治資金規正法の改正のあり方についての考えは。

 小沢氏「あのー、私の考えと違うちゅうわけじゃありません。私は日本の社会はもう少しオープンにすべきだと。政治資金も同じ。あるいは行政も同じ。民間の会社経営も同じ。もう少しディスクロージャー。これを徹底することによって、国民がその資料を基に判断するというのがもっとも民主的な私は社会だと言っているわけであります。

 ただ、私自身の不徳の致すところもあって、こういうことになっておりまして、その中から企業献金。公共事業ということではなくて、公共事業といいますとね、あなた方はそのゼネコンのことばっかり思い浮かぶでしょうけれども、ほとんどの企業が、例えばこの間、防衛庁のああいう汚職事件ありましたが、三菱重工をはじめ、それこそ何千億の事業を引き受けているわけでしょう。大小あっても、全部、ほとんどの企業が国や市町村と県と都道府県市町村と何らかの形で関係ありますから、禁止するということであれば、私は企業献金、そして今回それこそ問題になっている団体献金。これを全面的に禁止するということだと思います。公共事業でもって仕分けはできない、事実上

 ですから、いろんな業界が政治団体、個人、会社や業界、政治団体いっぱい持っているでしょう。その政治団体通じて寄付っちゅうこともいっぱい行われていることでしょう。そうすっとその出資者はかなりのケースで企業でしょう。だから、そういう意味では今度のことの問題を教訓とすれば、全企業、企業、団体献金を禁止するということならば、私はいいんじゃないか

 それで、なるべく個人献金しやすいような制度的なものにするとか、あるいはみなさん方がもう少し強力に啓蒙活動をやっていただくとか。

 なにしろ、オバマさん600億(円)ものお金集めてやってきたわけですから、だからそれが個人献金の金額にするとどの程度の割合なのかは私は知りませんけれども、いずれにしても本当に大勢の人が、トータルの量は別として、数では献金したことは間違いわけですから、その意味で私は日本においても、そういうような、もしやるとするならば企業献金、団体献金の禁止、徹底しなきゃ意味がないと、そう思います

 ――先週、大久保秘書逮捕翌日の会見では、国民へのおわびの言葉がなかったが、今回、冒頭でおわびされたが、どのような心境の変化があったのか。

 小沢氏「あのー、先週の大久保が逮捕されたときは、さっき言ったように、本当に、『ちょっと話を聞きたい』と、『ああ、行っておいで』って、つって言った中で、突然、逮捕されちゃったと。そして、翌日だったかな、記者会見したの。そして、逮捕理由聞いたら、単に収支報告書の問題だけだったということだったもんで、これは、もうそんなにお騒がせをずっとするような問題ではないだろうというふうに思っておりましたし、非常に単純な事柄なので、すぐ済むだろうと思っておったというような心境の中でございました。

 それが、こうして1週間以上も世間みなさまに、ご迷惑、ご心配をおかけする結果になってきましたので、今日の会見の機会に申し上げようとそう思って話をしたところです

 ――先週の会見では、善意の献金者はノーチェックと言っていたが、今日の会見では、社会通念上、献金をお願いするということがあると言っているが、お願いするには、事務所として献金者は把握していたということか。

 小沢氏「うん、ちょっとよく分かんないんだけども、献金してくださっている方に、また、今年もよろしくというお願いすることは社会通念上、許されるじゃないかということで、例えば、新たに献金の申し出があった場合、個人であれ、企業であれ、その方に対して、このお金はどういうお金ですか、違法の金、脱法行為の金じゃないでしょうね、というような詮索をすることは、普通あり得ないんじゃないかと。例えば、慈善事業、公益的事業に普通の方が寄付される場合でも、寄付される方が、この金は大丈夫でしょうねとか、いうことはまず普通はないんじゃないでしょうか。ですから、そういう意味で善意を信じていただくと。そして、今までいただいた方に対しては、なお今後も継続してよろしくお願いいたしますというのが、普通の自然な形でじゃないかなということで申し上げたわけです。ですから、それだけのことですが」

 ――西松関連の二つの政治団体からの献金は突出しているが、その金額を把握しているか。政治資金規正法上、小沢代表には監督責任があるが、どう考えるか。

 小沢氏「最初、何だっけ、先ほどの質問にも答えました通り、そういう名前の団体から寄付を受けていたということも私は分かりませんでした。ですから、私はどの団体からいくら受けているというようなことも当然分かりません。それから2番目は、結果として。代表者は私ですから、私が監督責任はあるということは、その通りだと思っております」

 ――今回のように実際には企業献金だが政治団体を使って献金すると、外からは分からない状態になる。政治資金規正法の抜け穴になっているが

 (これはひどい質問だ。ひっかけ質問の典型だ。どこの社の記者だろう?)

 小沢氏「その問題については、例えばアメリカのパックの制度がありますね。いろんな企業が政治団体みたいなものを作り、そこの判断で献金するという。そういうようなしくみも一つの考え方じゃないかなと思っております。ですから、いろんな知恵を出して、結果として隠れみのみたいな行為ではなくて、正々堂々の、まさにディスクロージャーされたオープンな仕組みを作りあげるちゅうことも大事だと思います」

 ――小沢代表サイドから西松建設に対し、献金をしてほしいという請求書が出されていることは知っているか?年間2500万円の献金の約束を以前され、それに基づいて献金されている。献金がされているのは2団体を通じてであり、脱法的行為を知らないにせよ、西松にお願いしたのは小沢代表側だ。ダミーであることを知っていたのでは

 (これも同じ記者だろう。質問をはぐらかされた、と内心怒り心頭で再質問をした、という構図か)

 小沢氏「私?」

 ――はい。

 小沢氏「私は全く知りませんし、たぶん西松建設の経営トップの方々も面識ないと思います。ですから、先ほどから、わたしがその他の犯罪的な行為に関連した行動を取ったことはない、ということは、その一事を持ってしても、会ったこともなければ頼むことも頼まれることもないわけでございますので、ご理解頂けると思っています。

 献金をいただいている方に、『今年もお願いします』というのは、要求とか請求とかいう言葉を使えば、無理やり出せという、感じに言葉の意味合いとしてとられるが、そういうことではなく、事務的には事務的処理では請求書を送るということになるが、さっきから申し上げているとおり、献金してくださっている方に、これは献金してもらう方が辞を低くして頼むわけですから。

 その意味でお願い申し上げますと、どうか今回も、来年もよろしくというのは、社会通念上、むしろ、何にも献金だけ受け取って何もあいつ、挨拶に来ないということに普通の社会だったら、日本だったらなっちゃうんじゃないでしょうか。

 だからむしろそういう意味で、お願いにいっているということは、できるだけ皆さんにごあいさつに行けということは言っています。しかし個別のどこにいくらとか請求にいったとかお願いしたとかは私は知っておりません」

 ――西松建設に(献金を)お願いして、別の団体から献金がきている。二つの団体と西松の関連の認識があったのではないか。

 (これも東京地検特捜部から聞いてくれ、と頼まれた質問のように見えるのだが)

 小沢氏「わたしは分からない! ちゅうことだから。それは。具体的にどういう形で献金を受けていたか、事務的な関係は、個々については他にもいっぱい献金してくれる方はいっぱいいますので。その点については私は知ってはいないと申し上げている」

 (小沢氏が怒った。が、すぐに冷静になっている。東京地検と結託している記者は何とか小沢氏を怒らせようとしていることがみえみえなだけに、記者の汚い根性が丸見えで嫌な感じを受ける)

 ――政治資金の総括的報告はどのように受けていたか。

 小沢氏「3月には収支報告書を出さなければいけません。そういう意味でトータル、このくらいの献金をいただきましたという、そういう、概括的な報告を聞いているだけでございまして。それ以外の個々の具体的なことについては聞いておりません。それはもう、実際上、何度も言いますが、個別のことを全部自分が精査するというのは物理的、能力的に不可能でございますので。秘書を信頼して任せるという以外、実際的にはすべがないということでございます」

 ――報告は大久保秘書だけから受けていたのか。

 小沢氏「トータルの報告は、あの、政治資金報告書を書いているのは代行者ですから、事務代行ですから。それが、収支報告書を書いて、届け出るということですから。届け出る前に概括的報告を受けたということでございます」

 小沢氏は随分と冷静に受け答えしているし、自分の話がリアルタイムで東京地検特捜部に伝わる、というか、東京地検の代理人と話しているつもりだろう。腹が据わっている。

 だが、本当に24日に大久保秘書が起訴され、なおかつ再逮捕された時に、小沢氏の精神が持つのか、という問題と、民主党内が持つのか、という二つの問題があり、特にこの日のいやらしい質問を繰り返す東京地検特捜部の代理人のような記者が新聞製作の主導権を握っていれば、「小沢は悪」という世論形成、キャンペーンをどんどんやってくるだろう。民主党の反小沢勢力が黙っていないだろう。

 東京地検特捜部のボタンの掛け違いで始まった無謀な捜査のせいで、日本の政局はまたグラグラと揺れてしまう。検察上層部に大局的判断ができる人間がいなかったのだろうか?

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金賢姫氏は元死刑囚より「氏」でいいのではないか~産経新聞3月17日朝刊黒田勝弘氏コラムから

 産経新聞3月17日朝刊1面[から(韓)くに便り]で黒田勝弘・ソウル支局長が<金賢姫は死ねない>の見出しで北朝鮮の怖さを書いていた。

 <「金賢姫」が日本人拉致被害者家族との面会で話題になっている。周知のように彼女は大韓航空(KAL)機爆破事件の犯人の一人である。逮捕後、韓国で死刑判決を受けたが赦免され、今は韓国に住んでいる。その彼女について日本のほとんどのメディアは「金賢姫・元死刑囚」という奇妙な呼び方をしている。不思議な“肩書”だ。背景には、赦免されているとはいえ、事件の重大性から「さん」には違和感があり、かといって呼び捨てにするのもまずい…といったことがあるようだ。しかし彼女はすでに罪を悔い、金日成・金正日崇拝から完全に転向している。北朝鮮の驚くべき実態を世界に明らかにし、さらに日本人拉致問題解決への協力など北の「体制変化」に向け余生を捧げようとしている。もう「金賢姫さん」でいいのかもしれない。それでも違和感があるとすれば「金賢姫・元工作員」が正確だろう。彼女は「死刑囚」ではなく北朝鮮の「工作員」だったことに、より大きな意味があるのだから。>

 そういうことだろう。「元死刑囚」派は朝日新聞、毎日新聞、読売新聞。「元工作員」派は産経新聞、日経新聞、東京新聞だったと思うが。

 <1987年11月、KAL機事件については、中東の中継基地だったバーレーンで、容疑者として日本旅券を持った「蜂谷真由美・蜂谷真一」が捕まったとき、ぼくは「北朝鮮だ!」と直感した。2人は日本人父子を装った北朝鮮のテロ工作員だった。現地での事情聴取の際、「蜂谷真一」の方は工作員教育そのままに、秘密保持のため隠し持った毒薬を口に含みその場で果てた。「蜂谷真由美」こと「金賢姫」は服毒に失敗し生き残った。日本旅券を持ち、日本人名で、日本語をしゃべる北朝鮮工作員による航空機空中爆破テロ…。乗員乗客115人は全員、ミャンマー沖のアンダマン海に散った。「日本」を巻き込んだ、恐るべきかつ凄絶な事件だった。北の狙いは翌1988年に予定されていたソウル五輪開催阻止のため、韓国を「危険な国」と世界に印象付けるためだった。>

 この事件については何度も何度も説明する必要がある。まさか日本人まで北朝鮮に洗脳はされないだろうが、この事件を風化させようという勢力が和田春樹氏や若宮啓文氏らを先頭にいろいろと「変化球」を投げては国民の反応を見ているわけだから。

 <「まさか北がそこまでするとは…」と多くの人が思った。しかし北朝鮮は4年前の1983年10月にも、ミャンマー(当時はビルマ)を訪問中の全斗煥大統領一行に爆弾テロを加え、随行の閣僚など17人が爆死している。同行記者も1人爆死し、ぼくの友人のカメラマンは重傷を負い、その後、再起できなかった。現場はミャンマー建国の父をまつる聖地、アウンサン廟。外国のそんなところに潜入武装工作員が遠隔操作の時限爆弾を仕掛け、公式参拝の韓国大統領暗殺を狙った。わずかに遅れて到着した全斗煥大統領は九死に一生を得た。世界を驚かせる大事件だった。>

 これも忘れてはいけない事件だ。韓国の人々はみんな忘れているようだけど。

 <テロ作戦をはじめ北朝鮮に「まさか…」はあたらない。古くからの北朝鮮ウオッチャーたちはそれをよく知っている。日本人大量拉致事件も「まさか…」にあたるが、同じ脈絡上の出来事だ。金賢姫・元工作員はKAL機事件の“生き証人”として死刑を免除され、また生き残った。北朝鮮の“真実”を国際社会に語り続けるため「生かされ」ているのだ。それが罪を償うことであり、自分に与えられた役割であることを彼女はよく知っている。彼女は北朝鮮の体制が変化ないし崩壊するまで死ねない。北なまりの残る韓国語が印象的だった。田口八重子さんが教えた日本語は今もしっかり覚えていた。彼女は日本や韓国のみならず、国際社会にとって実に貴重な存在なのだ。>

 その通りだ。韓国の国民の洗脳を早く解いて、北朝鮮の真実を教えないと、またまた変なデマゴーグに影響されそうで怖いのだが。

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2009年10月が中朝国交樹立60年の節目だという事実~毎日新聞3月17日朝刊から

 毎日新聞3月17日朝刊国際面コラム[潮流]に北京支局の堀信一郎特派員が<対北朝鮮 役割重い中国>の見出しで中国への怒りを込めた要望を書いていた。

 <北朝鮮が発射予告した「人工衛星」に対して、中国の歯切れが悪いのは、どうしたことだろう。北朝鮮は最近では2006年7月にも長距離弾道ミサイル「テポドン2号」を打ち上げ、失敗したという。日米韓など関係国は北朝鮮に自制を求めているが、北朝鮮に物が言える立場にある中国の影があまりにも薄い。>

 という書き出しである。

 <中国外務省は北朝鮮のミサイル発射の動きについて「朝鮮半島の平和と安定のため、各国が努力することを希望する」と当たり障りないコメントを出している。実は中国には北朝鮮のミサイル発射で煮え湯を飲まされた経験がある。2006年の発射の際、北朝鮮は「兄貴分」である中国への事前通告なしに発射した。続く10月の地下核実験では、事前通告は実験直前だった。中国は友好関係を踏みにじられた思いだったに違いない。>

 中朝関係って、僕らが思うほど緊密ではない、というのだ。へぇー、そうなのか。

 <核実験に対して中国は「横暴」という強い表現を使って非難した。「良好な中朝関係を考慮すると歴史的な表現だった」と専門家は指摘している。今思えば中朝関係は北朝鮮の核実験の時から、空々しさを伴うようになった。北朝鮮には中国離れがあり、中国には恩義を忘れた「友好国」北朝鮮という腹立たしさがあるようだ。中国は北朝鮮に自制を促すための「援助外交」を続けているが、旧来の手法は見直すべき時かもしれない。>

 「見直すべき時期」というのは堀記者の主観、願望のようである。

 <そんな微妙な空気の中で中国と北朝鮮は10月、国交樹立60周年を迎える。中国の北朝鮮への歯切れの悪さの背景に、友好ムードに水を差したくないという思いがあるとすれば、禍根を残すことになる。核実験の時にとった北朝鮮の態度は忘れてほしくない。60周年をきっかけに、中朝の要人往来は活発になり、北朝鮮の金英逸首相が17日訪中する。北朝鮮との対話ルートを確保しているのは中国以外にはない。国際社会が、中国の役割を期待するのは、中国に責任ある大国らしさを求めているからだ。>

 2009年10月が中朝国交樹立60年の節目だ、と。そうだったのか。

 <北朝鮮の核とミサイルに限って言えば、核については6カ国協議が機能している。だが、ミサイルは多国間で話し合う枠組みがない。北朝鮮はすでに、北朝鮮のミサイル関連活動を禁じた国連安保理決議について「紙切れにすぎない」と主張している。>

 「紙切れに過ぎない」かぁ。北朝鮮が言いそうな言葉だ。

 <北朝鮮は2006年に核実験をした際も、国連安保理が採択した制裁決議を拒否した。この制裁決議も「紙切れ」と言いだし、再び核実験をする可能性も排除できない。中国の役割はますます大きくなる。だが北朝鮮を正しく導く決意と余力があるのかどうか、まだ見えてこない。>

 今まで何度も書いてきたから、ここでは繰り返さないが、中国には中国の事情があり、韓国には韓国の事情があり、日本には日本の安全保障、人権回復、主権回復の願いがある。国際関係を延べ単で考えてはいけない。一種のパワーゲームであることはメッテルニヒの時代と同じなのだから。

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「山川草木が育んだ宗教観を死なせてはいけない」と久保田展弘氏~東京新聞3月17日夕刊

 東京新聞3月17日夕刊[生きる 心のページ]にアジア宗教・文化研究所代表の久保田展弘氏が<故郷に見えないカミ・仏/山川草木が育んできた宗教観こそ、出番のとき>の見出しで寄稿していた。全面的に賛成、というわけではないが、こういう故郷の森の持つ心の癒しという役割にまで踏み込まないと、あまりにもカサついてしまった日本人の心を癒すことはできないのか、と思った。

 その意味ではみのもんた氏が木曜日夜のテレビ番組で都道府県代表芸能人によるお国自慢番組を始めたことは評価できる、と思う。各地にある特産品を紹介しながら、その来歴にも触れる手法で、南北に長く、1億2000万人の人が住む日本列島のもつ表情をクローズアップして、現代の若者にも理解させるといういい手法だ、と思うのだ。

 久保田展弘氏は1941年東京都生まれ。早稲田大学卒。専門は比較宗教思想・文化論。主な著書は「インド聖地巡礼」(新潮社)、「さまよう死生観―宗教の力」(文春新書)、「役行者と修験道」(ウェッジ選書)、「原日本の精神風土」(NTT出版)など、とあった。

 久保田氏は「派遣切り」にあった40歳代の男性が「故郷へ帰りたいが、もっと厳しいしなあ」と呟いた言葉を噛み締めて思考を深めていく。

 <地方の現実は大都会やその近郊よりも厳しい。日本中に出現した大小の銀座通りとインフラ整備の拡大は、東京から全国各地へと、その道中に都会近郊のミニチュア的たたずまいを生み、この30年、急速に地方色を打ち消してきた。>

 この30年といえば、1979年からの30年だ。もう少しファジーに見ると、第2次石油ショックあたりからの時代だろうか。

 <それは、地方の都市化という外観の変化にとどまらない。文化の根っ子ともいうべき祭事・儀礼と一体のカミ・仏を祀る宗教施設の変貌、消失を強いてきたのである。都市を結ぶ幹線道路が山を削り、宅地造成が森をはらい、日本人の自然崇拝に根差したカミの認識を歴史遺産の向こうに追いやってきた。「故郷に帰りたいが、もっと厳しいしなあ」と呟いた男性の言う厳しさは、職の当てのない厳しさと、こころを癒してくれるはずのカミ・仏の見えない、故郷独特の山川草木の変貌を思い浮かべてのことでもあるだろう。日本人の霊魂観に根差したカミ・仏の気配を喪失した故郷へ帰る厳しさが、”派遣切り”という言いようを一層生々しく思い起こさせるとしたら、日本各地の都市化、インフラ整備、過剰で画一的な情報化とは何であったのかが、改めて問われなくてはならない。>

 ここが重要な指摘だ、と思う。宮崎駿監督の映画「となりのトトロ」は失われていく所沢の自然への追憶、オマージュだったらしいが、宮崎監督の一連の映画が日本人をひきつけてやまないのは、この自然と人間の近さだと思う。

 大木が語り、精霊が呟き、お化けが語る。現代に生きる我々は1億2000万人で生きているのではなく、過去の日本人たちに生かされており、子孫たちがまた我々の死後、日本人として、この素晴らしい自然と共生しながら生きていく。

 この「歴史的連続性」と「人間も自然の一部」という感覚が日本人をつくってきたし、久保田氏が言うように、その精神がアミニズムとでもいえそうな自然の中や人間をすぐに「カミ」にする心情、インドの仏ではない自分たちの先祖の分身としての「仏」を一体として敬う日本人の心情をつくってきた、と思う。

 <地方も東京・大阪のように都会になればいい。そのためには道路も商店街も変え、衣食住も都会にならうのだ。地方の活性化という名の下に多くが右へ倣えしたここには、おそらく地方独自の文化が何に根差し、それがどんな伝統を作り上げ、地に足の着いた意識・思想を育んできたのかという問いがなかった。日本人に特有の、共同意識の盛り上がりを乱すまいとする思いが、足元を問うことを拒ませたのだ。いやどこかに、地方色をとどめることが、都市化にも、企業誘致にもマイナスであるように思ってきたところがあった。>

  久保田氏は田中角栄元首相の日本列島改造論をシンボリックに取り上げる。

 <…あらためて私に、列島改造の進軍ラッパに始まる地方の大変貌が何をもたらし、何を失わせたかを問うことになった。>

 そして、日本における「故郷」の意味合いを次のように書く。

 <故郷の深い森がいのちの源泉であり、日本人のカミ・仏のありようを示す情報源であったこと、森とその気配が伝統文化の情報発信源であったことを忘れたとき、こころの荒廃がはじまったのではないか。そして同時に地方の衰退、意気消沈が日本という国の体力を急速に弱め、アジアの中の日本を見失わせている。>

 そして、山岳宗教の伝統の独自性とアジアとの共通性に触れ、それを認識することが大事だ、という。次の結びの文章も重要だ。

 <なぜ人は帰るべき故郷を求めるのか。それは故郷ということばがカミ・仏の気配を持つ山川草木、海が育んできた日本人の宗教観こそが、あらゆるものが対峙してやまない現代に、もっとも深い生命観に根差したメッセージを発し得ることを見逃してはならない。>

 秋葉原連続殺傷事件を「派遣切り」や携帯電話に頼って人間的ふれあいがない社会という切り口で語る人が多かったが、この「森の消失」こそが、現代人のこころの問題と深いところで繋がっているのかもしれない。

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2009年3月16日 (月)

内橋克人さん(76)の小泉構造改革批判はデータ抱負で説得力十分~毎日新聞3月16日夕刊

 毎日新聞3月16日夕刊2面[特集ワイド この国はどこへ行こうとしているのか]は経済評論家の内橋克人さん(76)だった。懐かしいので読んだ。紙面の略歴によると1932年、神戸市生まれ。神戸新聞記者を経て1967年から経済評論家。「匠の時代」全12巻(講談社文庫)、「内橋克人 同時代への発言」全8巻(岩波書店)、「共生の大地」(岩波新書)、「悪夢のサイクル」(文春文庫)など著書多数。今月「第60回NHK放送文化賞」受賞、とあった。見出しは<日本は防波堤が弱い>だった。

 <なぜ今、普通に働く勤労者が、かくも多数、いっせいに切り捨ての悲惨にさらされなければならないのか。昨秋のリーマン・ショック以降、さらに深刻さを増す世界同時不況。そのなかで、非正規雇用労働者が職・食・住を同時に奪われ、寒空の下に放擲された。人間の尊厳を足げにする「派遣切り」「雇い止め」の横行。内橋克人さん(76)はすでに1990年代半ばから、労働の分断と階層化が格差を広げ、このままでは社会統合が崩壊する、と警鐘を鳴らし続けた。>

 が前文である。鈴木梢記者の文章だ。

 <「“多様な働き方の時代”などとうたいながら、実際に企てられたのは、企業の思いのままに超低コスト労働力を調達し、“多様な働かせ方”ができる労働市場を新たにつくることだった。戦後、営々と築き上げた労働基本権をご破算にする。プログラムを完成させたのが、製造業への派遣労働を解禁した小泉構造改革だった。私たちのウオーニング(警鐘)がいまになってようやく“可視化”される時代がきたということです」>

 小泉構造改革がそれまで静かに進んでいた労働者切りを可視化した、との説だ。説得力がある。

 <製造業への派遣労働解禁を待ちあぐねたように、中国はじめアジアに出ていた工場の「日本回帰」が始まった。日本のメディアは「やっぱりモノづくりは日本で」と口をそろえて歓迎し、甘い拍手を送ったものだ。>

 工場の海外移転から国内回帰へのインセンティブとして、やはり、労働規制緩和は大きかったのだろうか?

 <「調べてみれば、日本回帰と解禁(製造業への派遣労働の解禁)の時期は見事に符合している。解禁を見越して大企業の“工場の出戻り”が目立つようになった政界、財界、そしてこれを理屈づけた労働経済学者ら3者の呼吸は見事なまでの一致ぶりです。中国に工場を移さなくても、この日本でアジア並みの解雇自由・低賃金労働の調達が可能になり、併せて技術の流出も防げる。日本での“労働解体効果”に引かれて回帰してきたそれらの工場から、今回、真っ先に派遣切りが始まった」>

 内橋さんはちゃんと調べていた。

 <規制緩和一辺倒論者、その先頭を走った学者らのうたい文句、働き方の自由化」とは、その実、「働かせ方の自由化」であったことを人びとはいま、目の当たりにしているトリックとレトリック(修辞)にはめられやすい日本人の弱点が、時の政権、そのもとに蝟集した学者らによってあまりに巧みに突かれた、と内橋さんは残念がる。>

 先頭を走った「学者たち」とは、竹中平蔵氏らである。

 <アメリカ社会を覆った「ワーキングプア」をいち早く「働く貧困層」と日本語で呼び、警鐘を鳴らしたのも内橋さんだった。いま、言葉は「普通名詞」になっている。労働にとどまらない。小泉構造改革なるものは構造改革をうたいながら、もっと深刻な「新たな構造問題」を生み続けた労働の解体地方の疲弊、さらに「家計から企業への所得移転の構造」の三つだ。内橋さんの鋭い警鐘は続く。>

 そのように構造的に捉えないと、この日本の疲弊は分からないだろう。

 <「この壮大な“負の遺産”の清算に向けて、私たちの社会はこれから多大なエネルギーと時間、そして社会的コストの消耗を迫られることになるでしょう。私たちはすでに深刻な矛盾のなかに連れ込まれています」>

 「負の遺産」である。

 <口をひらけば「国際競争力」「グローバル・スタンダード」などと、何かのひとつ覚えのように政・官・財・学が叫ぶ。唱和すればするほど、「日本人は豊かになれない」という。政府も日銀も「いざなぎ超え」を自賛していたその渦中で、内橋さんは景気の構造を解明して「カラ景気」と呼んでいた。絶好調とされた景気のさなか、輸出は年率平均で11.4%も伸び続けたが、国内の個人消費はわずか1.5%の伸びにとどまり、雇用者報酬(賃金と企業内福祉の合計)に至っては逆にマイナス0.3%に終わった。>

 これって素晴らしい記述だと思う。

 違った要素をこのように並べると、本当に説得力を持つものだ。その通りだ。分断された言説にだけ接していると、個人の中で、このように数字を統合する努力ができなくなってしまうのではないか。反省を込めて、そう思った。

 <「天から降る雨水が大地にしたたり落ちるように、好景気の恩恵は一般の家計にも波及し、個人消費も盛り上がる。内需と外需のバランスのとれた成長、やがて需要超過の時がやってくる」と、当時「日銀展望リポート」さえ数度にわたってご託宣を下した。「そうはならない」と多くのメディアで反論を展開したのも内橋さんだった。>

 日銀までグルになっていたのだ。

 <「雨水を大地に流す樋を途中で切断し、そこに栓を詰めてふさいだ。だから、軒沿いの樋にあふれ出すほど雨水がたまったのです。雨になれば、人びとの日常にも慈しみの水が滴り落ちて大地を潤す、そういう自然の仕組みを遮断したからこそ、日本型多国籍企業(グローバルズ)の胸もとに壮大な利益がたまった」>

 <日本型多国籍企業という巨大資本を「グローバルズ」と呼び、国内市場、地方、地域社会に固着する中小・零細企業や商店街、地場産業、さらに農業などを指して「ローカルズ」と内橋さんは呼ぶ。両者間の格差が天文学的に拡大した。同時に、地方と中央都市、そして同じ労働を担うもののなかに仕組まれた格差も、空恐ろしいまでに拡大した。「肥る企業・やせる家計」という、ゆがんだ、危険な国民経済の現実が姿を現した。>

 <政策支援はもっぱら「グローバルズ」に集中された。円安誘導のためわずか1年半の間に35兆円ものドル買い・円売りが繰り広げられた時もある。「いざなぎ超え」景気の燃え盛るさなか、円安の恩恵を受けてグローバルズの獲得利益は常に「史上最高」を更新し続けた。>

 <だが、こうして生まれたのが「不均衡国家」であり「不均衡経済」であったと内橋さんはいう。「今回の恐慌寸前の世界同時不況、いちばん防波堤が弱いのが日本です。もともと他の国に発した、つまりアメリカが震源地であったはずの世界危機なのに、受けたショックの大きさは、世界の先進国の中で飛び抜けて深刻なのが日本。なぜ、日本はこの危機の外に立つことができなかったのか」>

 <たとえばGDP(国内総生産)成長率ひとつとっても、マイナス12.1%(2008年10~12月、年率換算=修正値)の日本、これに対してアメリカもEU(欧州連合)もマイナス幅は半分程度の1ケタ台。外需一本ヤリ、内需切り捨て、グローバルズのやりたい放題に政策支援を与えてきた日本。「その海外が揺らげば、ひとたまりもない。津波が何倍もの高さとなって襲ってくるのは当然の成り行きです。防波堤そのものも内部から掘り崩してきた」>

 <不均衡経済のもろさ、不均衡国家のゆがみ、それらがもたらす悲劇は「自律的景気回復力」の衰退へ。つまり過剰な海外依存の結果、自分自身の力で景気を回復していく力がもはやほとんどない状態だ。そのさなかのアメリカ発世界経済危機の襲来だった。>

 <「日本人がこつこつとまじめに働けば働くほど、豊かになれない仕組みがグローバル化のなかでできあがった」という。その内橋さんはすでに「ポスト新自由主義の構想」として「共生経済が始まる―世界恐慌を生き抜く道」(朝日新聞出版)をまとめた。>

共生経済が始まる 世界恐慌を生き抜く道 共生経済が始まる 世界恐慌を生き抜く道

著者:内橋 克人
販売元:朝日新聞出版
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 <1957年、神戸新聞記者として歩き始めて52年。まなざしは静けさをたたえ、そして鋭かった。>

 いい文章だと思う。

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趙甲済氏の<金正日政権の脆弱性と不安感>はリアリティにあふれている~3月16日産経新聞朝刊[正論]

 産経新聞3月16日朝刊[正論]に月刊朝鮮編集委員・趙甲済氏の<金正日政権の脆弱性と不安感>と題した論文が掲載されていた。金賢姫氏の独占インタビューをやり遂げ、金元死刑囚と飯塚さんらの面会につなげた韓国屈指のジャーナリストである。 ≪韓国の支援中断の打撃≫、≪改革開放に傾く中堅層≫、≪体制蘇生の機会を失う≫の小見出しもついていた。

 <「吠える犬ほど臆病だ」という。北朝鮮は昨年来、韓国への軍事的挑発や脅しを繰り返してきたが、極端な言葉の一言一言からはむしろ、金正日政権の脆弱性と不安感がうかがえる。政権内部の弱点を隠すために、ミサイル発射などで緊張状態をつくりだそうとしている。>

 という書き出しだ。そこを押さえながら、北朝鮮の文言を読め、というのだ。

 <昨年7月、北朝鮮軍は金剛山を観光旅行中の韓国人女性を射殺した。「軍事地域に入った」との理由だ。韓国の李明博政権は即日、金剛山観光を中断させた。そして8月に入ると、金正日総書記の重病説が流れた。秋に北朝鮮は開城工業団地の韓国人従業員を追放、開城観光も中断した。いずれも、数千万㌦の収入減を覚悟しても内部を引き締める意図があった。>

 内部引き締めの必要性なのだ。

 <北朝鮮は、韓国の金大中、盧武鉉の両元大統領がそれぞれ金総書記と結んだ6.15宣言、10.4宣言を実行せよと圧力をかけた。しかし、李大統領は北に「ねだって生きるという考えを捨て、自立して生きる工夫をせねばならない」と忠告した。韓国は左派政権下で毎年10億㌦の金品を北に支援したが昨年はそれがほぼ途絶えた。貿易額が30億㌦ほどの北朝鮮には大打撃だった。>

 金大中、盧武鉉両政権がいかに金正日総書記を甘やかしてきたか、だ。

 <李明博政権の発足後、韓国は米国との同盟と対日関係を正常化した。オバマ米政権の対北政策もブッシュ政権末期よりも強硬になった。クリントン米国務長官は2月のアジア歴訪中、金正日政権がけむたがる言葉だけを選んだ。「南北対話がなければ米朝対話も困難」「北が核兵器を完全に廃棄してこそ、国交正常化は可能」「北の権力構造が不安定化している」「日本人拉致と北の人権問題を注視する」。>

 なるほど、そういう見方も成り立つのか。

 <李明博政権は、大韓航空機爆破事件の金賢姫元工作員と拉致被害者、田口八重子さんの息子との面会を許可した。韓国に保守政権が登場して可能となったのだ。>

 その通りだ。日本国民はそこを忘れてはいけない、と思う。和田春樹氏らの巧言に乗せられないように。

 <韓国の保守政権誕生と金総書記の健康悪化を背景に、北上層部内にもただならぬ変化がみえる。朝鮮労働党高級幹部出身の脱北者は、黄海上での軍事挑発の可能性を指摘する。上層部に芽生えた「改革開放への共感層形成」の動き既得権益層を不安にし、対南挑発で緊張を醸成、内部結束が避けられないようにした――との分析だ。この変化は「体制危機」をもたらすほどの性格を帯びる。>

 <・40~50代の中堅幹部層が「21世紀型の社会主義は市場を手段にせねばならない」と主張、改革開放を不可避な選択と感じ始めた。彼らは反金正日勢力ではない。>

 <・彼らは中国式の改革開放で経済がよくなり北の政権がより強化されると言う。だが金総書記は改革開放をすれば金日成―金正日偶像化の虚構が暴かれ、統制力を維持できないことを知っている。>

 <・地方の中央党への不満が増幅した。地方党は人民を食べさせるが、中央党は先軍(軍優先)政治を掲げ、体制維持と革命事業に資源を集中させる。韓国の支援中断で苦痛を味わった金英逸首相は「開城を閉鎖せよ」との金総書記の指示にも耐えているという。>

 <・金日成主席死後の金総書記の失政に不満と不信がつのる支配層が改革派と守旧派に分裂、権力闘争となる可能性もある。>

 <・金正日政権が対南挑発する場所は黄海上かその島々だ。韓国軍の反撃を受けても、北内部では「われわれが勝った」と宣伝し内部結束を強化できる。>

 <今年初めの北宣伝媒体の論説には、「千里馬精神で進もう」との言葉が多かった。経済問題も革命精神で解決をという守旧的方式であり、指導部が公式に改革路線を拒んだという意味だ。共産体制の崩壊は必ず内部葛藤を経る。北の場合、この葛藤期に冒険主義路線が強化されよう。>

 <金正日政権は改革開放の機会を、韓国左派政権の「太陽政策期」に逃した。金大中、盧武鉉両政権が対北支援をしたのに、金正日政権はなお「おねだり」をやめなかった。金総書記が毎年韓国から入る10億㌦のうち、3億㌦でも食糧購入に充てていれば飢餓を解決できたはずだ。>

 <皮肉なことに、李明博政権の対北支援の中断で北指導部内で改革開放を志向する変化が起きた。北の司令塔は「改革開放では政権が崩壊する」とし、中堅層は「改革開放をせねば崩壊する」と考えるようになった。この対立が葛藤に、葛藤が衝突に発展するかが体制変化のカギである。>

 <旧ソ連や東欧の共産圏では改革を始めて後戻りできない解体期に入った。金総書記は核開発に執着し太陽政策を楽しんでいる間に、体制蘇生の最後の機会を逃した後継者を育てる努力もしなかった。体制存続に悲観的になり、「私で北朝鮮は終わる」と思っているかもしれない。>

 金正日氏の心を読んでいるような書き方は、筆者の取材の深さを表わしているのだろう。

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若宮啓文氏の五百旗頭氏擁護は五百旗頭氏を利用する卑怯なやり方だ~朝日新聞3月16日朝刊[風考計]

 朝日新聞3月16日朝刊オピニオン面に「本社コラムニスト」の肩書きで若宮啓文氏が自分のコラム[風考計]に<防衛大学校/校長を悩ます「田母神」応援団>のタイトルで論文を掲載していた。

 朝日新聞のネット版で捜したが、若宮氏の最近の論文はアップされていないようだった。仕方なく、グーグルで検索し、他の方のブログに全文が転載されていたのをコピペしてきた。論文を読みながら、コメントしていきたい。

 <日本は蒋介石の手で日中戦争に引きずり込まれた被害者だし、日米戦争はルーズベルトの罠にはまったもの。だから日本は悪くないという論文で空幕長を解任された田母神俊雄氏は、あれから4カ月半、意気軒高のようだ。一部の月刊誌ではしきりに応援歌が歌われ、本人も講演などに引っ張りだこ。その近著を読んでみれば、相変わらず都合のよい史料の解釈が並び、ますます勇ましさが加わった。いまや右派論壇の救世主といった趣である。>

 この書き出しからして高慢さと偏見に満ち満ちていることが分かるだろう。アプリオリに「田母神=悪」と規定するそのやり方は戦時中の軍部の「お前は非国民だ」という規定に通じるものがある。新聞記者という職業が事実の積み重ねの中から真実を追求することに喜びを見いだす職業だとしたら、若宮氏はすでに新聞記者として失格だと思う。思い込みだけでこのような文章を書けるのは新聞記者の仕事ではないからだ。だからこそ、「コラムニスト」と名乗っているのだろうが、そうすると、このような思い込みと偏見だけで公の紙面を専有する人物に定期的に機会を与えている朝日新聞編集局の責任ということになる。

 <日本の侵略を謝罪して政府の外交基盤となった「村山首相談話」に真っ向挑戦しただけに、文民統制に反すると処分されたのだが、その開き直りには「文民にも村山談話を批判してきた政治指導者がいるのに」との思いがのぞく。さもありなん。その代表格といえる元首相の安倍晋三氏は月刊誌に登場して「田母神論文に対するマスコミの反応は常軌を逸する」と批判。できるなら村山談話を塗り替えて「安倍談話」を出したかったと無念を語った。もし安倍政権が続いていたら、今度の問題にどう対処したのだろう。>

 田母神憎しが安倍晋三憎しに転化する。これだっておかしな話だ。

 <2月19日に田母神氏を自民党本部に招いて話を聞いたのは「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」だ。この会の前身は安倍氏や中川昭一氏らが作ったもので、今の会長は中山成彬氏。彼もまた成田空港建設をめぐる「ゴネ得」発言や激しい日教組批判で麻生内閣の国交相を辞めた人だが、「空幕長の発言は村山談話を見直すいい機会だったのに、急に更迭されたのは大変残念」とホームページで熱いエールを送っている。>

 どこまで他人の思想を貶めれば気が済むのか。中山氏は大臣を辞めてケジメをつけたのに、その後まで貶める必要があるのか? 大臣を辞めたのだから発言はするな、ということなのか? 自分と違う主張を発信する人たちへのこのような攻撃的な書き方は朝日新聞の品格を疑わせるものだろう。

 <さて、その裏返しのように、いま田母神シンパの一部から激しい攻撃を受けているのが、防衛大学校の五百旗頭真校長だ。事件のすぐ後、毎日新聞のコラム「時代の風」(2008年11月9日)で田母神氏の処分を強く支持したことから標的となった。>

 これはベテランのジャーナリストがよく使う手である。自分の極端な物言いを正当化するために、世間で尊敬されている人物の言説を持ってきて、<自分=尊敬される人物>という構図を作る。そして、その人の言説を歪曲して紹介して、自分の支持を広げる、という手法である。ヒトラーなどが得意としたファシズムの手法だ。

 <コラムでは「軍人が自らの信念や思い込みに基づいて独白に行動することは、軍人が社会における実力の最終的所有者であるだけに、きわめて危険である」と書いて文民統制の重要さを説き、戦前の苦い教訓を挙げて自衛官に自重を求めた。長い歴史を考えると日本人は卓抜した能力がある立派な国民だが「その中での遺憾な局面が、あの戦争の時代」だったとして、今もその誤りを認められない人々を厳しく批判もした。>

 それだけじゃないのだ、五百旗頭氏の論文は。このブログの最後に参考に五百旗頭論文を付けておこう。虚心坦懐に読んでいただければ、これだけじゃないことを分かっていただけると思う。

 <神戸大教授だった五百旗頭氏は2006年夏に防大校長に登用された国際政治学者。故・高坂正垂京大教授の直系らしく柔らかな現実主義が持ち味だ。政府のアドバイザーとしても重用されてきたが、イラク戦争や首相の靖国参拝には反対だっただけに、選任した小泉首相の度量が話題になった。しかも、退任する小泉氏のメールマガジンに「小泉政治5年」寄稿を求められ、その外交を全体としてたたえつつも、米国のイラク戦争失敗や靖国参拝の深い傷を率直に盛り込んだ。それで構わないと言って平気で掲載した小泉氏には、思うところがあったのだろう。そういえば、小泉氏は村山談話の熱心な継承者でもあった。>

 小泉礼賛ですか。小泉=竹中路線に乗って、規制緩和を進めた朝日新聞の論説のトップが若宮氏だったことを今、思い出しました。

 <このメルマガに募っていた右派の不満に今度の件で火がついた。田母神氏が文民統制違反なら、首相の参拝などを非難し、新聞に勝手な持論を書く校長も同罪ではないか。そんな批判が表れ、田母神氏も「あの人はひどい」「おとがめなしは差別じゃないですか」と雑誌の対談で問題にした。>

 <確かに防大教授らも自衛官の身分をもつが、学者としての言論には自由があり制服組とは違うというのが政府見解で、中曽根内閣のころ非核三原則を批判した防大教授が不問に付されている。ましてメルマガは首相の注文だったし、コラム執筆も防衛省の許可を得ているから批判は筋違いだ。>

 若宮氏は五百旗頭氏を擁護しているように見せかけて、この問題をあぶりだして、公の場での論争にすることを企んでいるようだ。何しろ何の機会でもいいから、ちょっとでも「村山談話」を批判する勢力はこらしめてやろう、という魂胆なのだろう。

 <だが「校長罷免」の声はやまない。「反日」「媚中」「左翼」などの言葉が投げつけられ、周りの防大教授らにはメール攻勢もかけられる。そんな中、3月1日に大阪市で予定された関西防大0B会での五百旗頭氏の講演が中止に追い込まれた。防大OBを含む一部の活動家が抗議の電話をネットで呼びかけ、OB会長への直談判にも及んだ末である。混乱回避へのためとはいえ、中止を決めた会長は「敗北感」を口にする。>

 五百旗頭氏が批判されるという世情もおかしなものだが、「村山談話にあらずんば日本人に非ず」的な論調で、ナショナリズムの発露を封じ込めた朝日新聞には大きな責任があると思う。最近の毎日新聞は北朝鮮問題を見ても、日本人の安心・安全を最優先するという当たり前の路線に戻っているが、朝日新聞だけは北朝鮮批判を「悪」と思い込んでいるかのような紙面をいまだに作っている。この偏向路線の張本人が若宮氏だった。

 <もっとも2月22日に都内で行われた防大同窓会の総会では五百旗頭氏が防大教育の信念を語り、降りかかる火の粉を払って理解を得た。空自で田母神氏の先輩だった竹河内捷次会長(元統幕議長)は「先生の言動の一部分をとらえて攻撃する人もいるが、全体を見れば理解でき、尊敬もできる」ときっぱり語る。こんな空気こそ校長の大きな支えに違いない。>

 五百旗頭氏が問題ではなく、五百旗頭氏をこのような形で利用し、いかにも左翼の代表のように「使う」メディアに問題があるのです。

 <ところで「ルーズベルトの罠」に似た解説は靖国神社の遊就館にも展示されていたが、2007年に削られた。外交評論家の岡崎久彦氏が「知のモラルを欠く」として未熟な反米史観を廃せ」と産経新聞で唱えた(2006年8月)のがきっかけだ。米国からの批判もあってのことだが、それをむし返した田母神氏の感覚は、日米安保体制の要職にいた人とも思えない。>

 だから、前にも書いたが、田母神氏の論文の細かい部分をあげつらっても生産的でないと思う。田母神氏が全体として何を問題としていたのか、がここでは語られていない。田母神氏は北朝鮮が日本に核ミサイルを発射した時、日本はどう対処するか、を語り、今の日本は日米安保体制自体も整備不足で、自衛隊も独自で何もできないし、結局、地方都市が原爆を被爆する可能性がある、という危機感から論文を書いている。様々な論点を網羅しているものの、日本国民の安全保障問題への提起なのである。

 その部分を全く書かずに、日教組を苛めている勢力と同じだ、とか、田母神氏の論を矮小化するのに忙しい。そんなことばかりしているから、田母神氏支持勢力が増えているのだ、ということが分からないのだろうか?

 五百旗頭真・防衛大学校長が2008年11月9日付毎日新聞朝刊2面[時代の風]に寄稿した<文民統制の重要性/国、国民への「服従」は誇り>の論文をコピペする。

 よく読んでいただければ、若宮氏の引用した部分だけではない広い論点から論じていることが分かると思う。

 若宮氏らは五百旗頭氏の論点を絞り込むことで、いかにも「反田母神」の最右翼という雰囲気を作りたいのだろう。その背中に隠れて何かを言うのが一番気楽だから。しかし、そういうやり方を世間では「卑怯」という。

 以下が五百旗頭氏の論文の全文である。

 <田母神俊雄航空幕僚長が、戦争の過去について政府見解と異なる主張を公募懸賞論文に展開し、政府によって更迭された。>

 <制服自衛官は政治的問題につき政府の決定に服する責めを負う。もちろん制服を含め、誰しも自らの意見を持つことができる。しかし、個人の思想信条の自由と、職責に伴う義務とは別問題である。軍人が自らの信念や思い込みに基づいて独自に行動することは、軍人が社会における実力の最終的保有者であるだけに、きわめて危険である。それ故にすべての民主主義国にあって、軍人は国民によって選ばれた政府の判断に従って行動することが求められている。これがシビリアンコントロール(文民統制)である。>

 思想信条の自由にきちんとふれている。

 <航空幕僚長が官房長に口頭で論文を書き応募することを伝えたのみで、原稿を示すことなく、政府見解に反する主張を発表したことが明らかになったとき、防衛大臣は即日幕僚長の解任を決定した。>

 <これに関連して想起するのは、1928年の張作霖爆殺事件である。関東軍の河本大作参謀は、上司と政府の指示なく、独自の政治判断に基づき、現地政府のトップを爆殺した。それ自体驚くべき独断専行であるが、それ以上に重大であったのが軍部と政府がこの犯行を処罰しなかったことである。そのことが、軍人が国のためを思って行う下克上と独断専行はおとがめなしとの先例をなした。軍部に対するブレーキが利かないという疾患によって、日本は滅亡への軌道に乗った。シビリアンコントロールがいかに重要かを示す事例である。>

 張作霖事件を持ってきたことが田母神氏シンパを怒らせたのだろうか?

 <それを思えば、このたびの即日の更迭はシビリアンコントロールを貫徹する上で、意義深い決断であると思う。制服自衛官は、この措置を重く受け止めるべきである。>

 しかし、防衛大学校の校長とすれば、ここまで言うのは仕方ないだろう。防衛大学校の学生たちへの訓示でもあるのだから。

 <一部には解任措置だけでは不十分との主張もある。そうした新聞の一つは、筆を伸ばして「防衛大学校での教育」への疑念にまで言い及んだ。幕僚長が防大の卒業である以上、そうした疑念にも無理からぬ面もあろう。防大教育の実情について報告する義務を負っているものと解したい。>

 忘れてしまったが、これは朝日新聞批判ではなかったか? こういう部分を若宮氏は絶対書かない。

 <防大の創設は、このたびの論点となった戦争の過去と密接に関係している。ダレス特使の再軍備要求に抵抗した吉田茂首相であったが、防大の設立にはなみなみならぬ意欲を示し、「下克上のない幹部」をつくることを求めた。これを受けて槙智雄初代校長が民主主義時代にふさわしい幹部自衛官育成の精神とかたちを築いた。その教育方針は「広い視野、科学的思考、豊かな人間性」を培わんとするものであった。>

 <旧軍が、自国愛に満ちて独善に陥り、国際的視野を見失った過去、「大和魂さえあれば」とか、「竹やり三千本」の言葉に示される観念論・精神主義の過剰の中で成り立たない戦争にのめり込んだ過去、戦争への没頭の中で政府・大本営が他国民への惨禍と自国民への犠牲に鈍感となり、人間性豊かな自省を弱めてしまった過去、こうした過去の克服を期する指針であることは容易に解されよう。>

 極めてリーズナブルな論だ、と思う。

 <私が感心するのは、過去への反省に立つ指針が、同時に戦後の新しい時代への洞察とも結びついていた点である。「広い視野」は国際化が急速に進む戦後世界に、「科学的思考」は科学技術革命の爆発する時代に、「豊かな人間性」は民主主義社会において国民との共感が不可欠な時代に、それぞれ予言的なまでに適合しており、それゆえに今なお妥当性を失わないのである。>

 <槙校長の事跡と思想を展示する記念室をたまたま先日防大資料館内に開設したが、その中に「服従の誇り」という不思議な言葉がある。通常、服従は奴隷的であり、屈辱的である。個性の確立と自主自立こそが誇りであろう。槙校長は、国民と政府への自衛官の「服従」が、自発性に基づく積極的なものであり、それが国と国民に献身せんとする大義に発するものであるならば、立派に「誇り」たり得ることを、創立期の防大生に対して説いたのである。言い換えれば、槙校長はシビリアンコントロールを外力への服従としてではなく、自らの信条として内面化することを語りかけたのである。>

 この「服従の誇り」がテーマでもあり、シビリアンコントロールの説明でもある。

 <このたびのことがあって、私は防大における歴史教育の内容がどのようなものであるか、改めて調べてみた。あの戦争を賛美するような講義内容は、一般教授の「政治外交史」や「日本近現代史」にも、また制服の先輩教授が教える「日本戦史」などにもまったく見あたらなかった。すべてが資料根拠に忠実な実証研究のスタイルであった。むしろ実証を踏まえつつも、もう少し意味づけや斬新な解釈を打ち出していいのではないかと感じるような着実な傾向であった。>

 そうだろうと思う。

 <私自身も歴史家であるが、世界の中の日本を全体的に見れば、千年前に源氏物語を生み、非西洋世界の中で真っ先に近代化を成功させて西洋諸国と並び立つ国となり、戦後もまた、格差の最も少ない豊かな民主主義社会を築くなど、卓抜した能力を示してきた立派な国民だと考えている。その中での遺憾な局面が、あの戦争の時代であり、今なお誤りを誤りと認めることができずに精神の変調を引きずる人のいることであると考えている。>

 最後の「遺憾な局面が、あの戦争の時代であり、今なお誤りを誤りと認めることができずに精神の変調を引きずる人のいることであると考えている」は挑戦的な言葉だ。なぜ五百旗頭氏ともあろう方がこのような挑戦的な言葉を使ったのか、当時、首をひねった思い出があった。

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宇野重規・東大准教授の「三つの方向性」論:検察政局の正統性を暗に疑問視~毎日新聞3月16日朝刊寄稿

 毎日新聞3月16日朝刊文化面[<現在>を読む]は宇野重規・東大准教授の<小沢氏秘書逮捕/「もやもや」感、払しょくのために>だった。政治思想史を専攻している気鋭の学者で、1967年生まれ。東大大学院博士課程修了。『トクヴィル』でサントリー学芸賞を受賞している。日本政治の方向性を①小泉改革の続行②小泉改革の否定③小泉改革の否定もしくは修正を政権交代で実現する――の三つと規定して、この数カ月の民意の乱れの原因を究明しながら、政治思想的に何が言えるのか、を書いている。

 処方箋が書かれているわけではないが、このような大局的な見方で学者が発言を始めたことはいいことだと思う。

 <小沢一郎民主党代表の秘書逮捕は、私たちにとって何ともいえない「もやもや」感を与えている。はたして小沢氏やその秘書に迂回献金の認識があったのか、また、この時期に逮捕がなされたことの背景に何らかの政治的思惑があったのか、気になることは多い。しかしながら、私たちにとっての「もやもや」感はそれに尽きるわけではない。>

 そういうことである。「もやもや」感という言葉は東大の学者たちが普段の世間話で使っている言葉なのだろう。

 <何よりも引っかかるのは、この事件がはたして日本政治の未来にとって、いかなる意味を持つのかということである。現在の日本政治にはいくつかの方向性がある。この場合の方向性とは、抽象的な可能性ではなく、今後の日本政治がどのような政治勢力によって、どのような方向に進められていくかという、現実的な選択肢のことである。いまだ具体像の見えない政界再編論を別にすれば、方向性は三つある。>

 「方向性」は抽象的な言葉ではない、という。「どの政治勢力に任せるか」という大きな選択のことだ、という。

 <第一は小泉改革の続行である。郵政民営化に象徴される新自由主義の方向性であり、この立場からは、現在の状況は、さらなる改革の進展によって乗り越えられるべきであると主張される。しかしながら、この方向性は、小泉元首相の「造反」に賛同者が集まらず、世論の支持も高まらなかったことにも示されているように、現在厳しい状況に置かれている。何よりも、不況克服や格差是正について、新たな展望を開けないのが苦しい。>

 小泉改革の続行はありえないだろう、ということだ。竹中平蔵慶大教授がいくら朝日新聞、産経新聞などを使って正当性を強調しても、国民は小泉構造改革の虚妄を知ってしまったのだから、もう逆戻りはありえないだろう、という宇野氏の論は説得力がある。

 <第二は小泉改革の否定、もしくはそこからの軌道修正である。この場合、否定もしくは修正を自民党自ら行うというのが、一つの選択肢となりうる。小泉改革の負の遺産について批判が高まるなか、自民党内からは「自民党は本来、新自由主義的な政党ではなかった」として、新自由主義的な路線との決別を目指す動きがある。しかしながら、この方向性についても、麻生首相の「実は(郵政民営化に)反対だった」発言への激しい反発が示しているように、批判が大きい。何よりも、まさに郵政民営化の担当大臣であり、郵政選挙で獲得した衆院議席を背景に政権についた首相が、選挙を経ることなく、総括なしの政策変更を行うことには違和感がある。>

 麻生政権がもう少し小泉離れを進める、というようなケースだろう。鳩山邦夫氏らが声を上げているが、今のところ各紙がふざけた扱いしかしていない。つまり、正面から小泉改革の「負の部分」の検証をしていない。マスメディアが変わらないと、この第2のケースは難しいのだろう。

 <第三の選択肢は、小泉改革の否定もしくは修正を、政権交代によって実現するというものである。大きな政策変更を政権交代によって実現することは、民主政治にとってもっとも正統的であるが、この場合、いかなる政策的方向性が新たに示されるかが問題になる。新たな政権の受け皿として想定される民主党は、旧社会党系から新自由主義に親和的なグループまで、幅広い政策的志向を持つ議員たちを、自民党竹下派直系の小沢氏が束ねる構成になっている。小沢氏はこれらのグループを反小泉改革と生活防衛の立場で団結させようとしてきたが、その整合性についてはいまだ不安も残る。>

 小沢路線、つまり非自民勢力による政権樹立のケースである。難しいのは参院の構成だ。社民党を加えないと過半数にならないので、社民党との連立を選ぶしかなくなる、という見通しが強いのだが、そうなると、自衛隊問題や日米安保問題で非現実的な選択を強いられるケースが出てくる恐れがある。ここをどうするか?

 <この数ケ月、民意はこれらの方向性をめぐり、千々に乱れてきたと言えるだろう。とはいえ、次第に第一の方向性(小泉元首相の復活)への思いを断ち、第二の方向性(自民党による政策転換)には反発し、そして第三の方向性(政権交代)を真剣に検討してみるかという流れができかけているときに、今回の事件は起きた。>

 そうなのだ。民主党政権の可能性が強まったことで、さあ、小沢一郎首相が何をやるのか、真剣に見てみよう、と検討を始めたところを検察に狙われたのだ。

 抽象的な書き方をしているが、ぶっちゃけて言えば「みんな次は民主党政権、小沢首相だと思っていたのに、解散・総選挙の前なのに検察はどうして小沢氏の秘書を形式犯の政治資金規正法違反で逮捕したのか」ということである。

 <今後の捜査の展開にもよるが、おそらく、第一の方向性や、第二の方向性への大きな揺り戻しはありえないだろう。日本の民意は、この点について、すでに一定の判断を下している。だとすれば、問題は第三の方向性が空中分解してしまうかどうかである。第三の方向性への期待が縮小すれば、残るは「どのひどさが一番ましか」という判断となる。日本の民主政治にとって不毛な選択のあり方であり、このことが今の「もやもや」感の最大の原因となっている。その意味で、小沢代表が続投するにせよ辞任するにせよ、民主党には少なくとも、一つの方向性を示し続けるという責任がある。民主政治とは、国民による、よりよい政治的方向性の選択であって欲しい。>

 小沢一郎氏の辞任と決め付けていないのは正しいと思う。続投させるべきだ、と思うのだが、検察との折り合いの問題もある。この辺、ものすごく日本的なのだが、検察が24日の起訴の際に東京地検次席検事がきっちりと記者会見をして、この捜査について説明責任を果たすべきだ。少なくともそれをしないと、国民の検察不信が強まり、金丸20万円罰金の時とは違った意味での検察バッシングとなり、検察は今後、政治家絡みの事件を摘発できなくなってしまう恐れがある。

 3月24日はその意味でものすごく重要な日である。

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2009年3月15日 (日)

フォーラム神保町主催「青年将校化する東京地検特捜部~小沢一郎秘書逮捕にみる検察の暴走~」シンポジウムを聞いて

 3月15日午後7時半から東京都千代田区一橋1‐1の毎日新聞社ビルディング地下1階のホールで開かれた神保町フォーラム主催「青年将校化する東京地検特捜部―小沢第一秘書逮捕にみる検察の暴走―」を聞きに行った。入場無料なのに、豪華な顔ぶれが見られるとあって、椅子席は開演30分前から一杯になり、立ち見も人の頭が邪魔で前が見にくいほどの盛況だった。

http://www.forum-j.com/ ←これが「フォーラム神保町」ホームページです。

 神保町フォーラムは佐藤優氏が著書の中で何度か触れているので、知っている人も多いかもしれない。今回もフォーラムのホームページでシンポジウムを告知し、そこで申し込んだ人が多かったようだ。私は偶然、知人から聞いたので出かけたのだが、面白かった。

 というより、この種の集会は初めてではないか、と思う。東京地検特捜部の捜査に正面から文句を言う人々の集会だからだ。

 シンポジウムのメンバーがいい。

 司会者は神保町フォーラム事務局長の二木啓孝(ふたつき・ひろたか)氏。(各氏の人物紹介はウィキペディアから)

 1949年、鹿児島県生まれのジャーナリスト。明治大学農学部で食品化学(味噌・醤油等)専攻。明大除籍後、長距離トラック運転手など経て出版社勤務。28歳で「週刊ポスト」(小学館)専属フリーライター。1983年に日刊現代入社、1995年にニュース編集部部長。2007年6月30日付で日刊現代退職、独立。現在はフリーランスのジャーナリストである傍ら、日本BS放送取締役(編成・報道制作担当)を務める。かつて、オウム真理教が起こした一連の事件に関する報道を行った。現在もその取材活動の手は休まる事が無い。記者時代は昼出勤、深夜締め切り、翌朝TVやラジオの出演といったハードスケジュールをこなしていた。作家で前長野県知事の田中康夫、「コリア・レポート」編集長の辺真一、タレントの愛川欽也などと交友関係がある。また、2004年5月27日にイラクで武装勢力に暗殺されたジャーナリスト橋田信介は、死の直前、二木にメールを送っている。無類の温泉好きで「オートバイで関東地区の温泉を鬼のようにまわった」時期がある。 ゲンダイでは主に左派系の記事を担当し、保守系のレギュラーコラムを書く俵孝太郎とは距離をおく。「ああいえば上祐」という言葉の発案者とされている。保守系政党に対しては罵詈雑言の限りを尽くすが、ロス疑惑報道の際にはワイドショーの過熱報道に釘を刺したこともある。他紙のように三浦和義の事実無根のスキャンダルを書かなかった事から三浦から一目置かれ著書で名指しで特筆すべきこととまで書かれたという逸話もある。著書に『手に取るように政治が分かる本』(かんき出版)。共著に『殺人心理』(アスキー)、『永田町の通信簿』(作品社)、『宗男の言い分』(飛鳥新社)など。

 パネラーは、▽鈴木宗男氏▽佐藤優氏▽田原総一郎氏▽宮崎学氏▽魚住昭氏▽平野貞夫氏と、飛び入りで参加した▽郷原信郎(ごうはら・のぶお)氏

 永野義一氏という神奈川大学法科大学院講師で元最高検検事がパネラーとして出席予定だったが、体調を崩し、わざわざ「シンポジウムの2時間は体がもたないから」とここにきて断って帰った、という。その代わりに、永野氏の話を聞きに来ていた郷原氏が二木氏に呼び出されて、客席から前列のひな壇に上ったというわけだった。

 郷原信郎氏は1955年島根県松江市生まれ、弁護士(郷原総合法律事務所)。小学校~中学校は広島県。1973年島根県立松江南高校卒業。77年東大理学部地質学科卒。三井鉱山に入社。1年半で退社。1980年司法試験合格。83年検事任官。公正取引委員会事務局審査部付検事、東京地方検察庁検事、広島地方検察庁特別刑事部長、法務省法務総合研究所研究官、長崎地方検察庁次席検事、東京地方検察庁八王子支部副部長などを歴任。企業法務やコンプライアンスに詳しく「コンプライアンスとは、単なる法令遵守ではなく、社会的要請に適応することである」という「フルセット・コンプライアンス論」を提唱。2003年、桐蔭横浜大学大学院特任教授。2005年、同大学法科大学院教授(派遣検事)、コンプライアンス研究センター長就任。2006年検事退官。9月弁護士登録。郷原・米津法律事務所開設。11月株式会社コンプライアンス・コミュニケーションズ設立、代表取締役就任。2008年、六本木ヒルズノースタワーに郷原総合法律事務所開設。主な著書に『独占禁止法の日本的構造制裁・措置の座標軸的分析』(清文社、2004年)、『コンプライアンス革命コンプライアンス=法令遵守が招いた企業の危機』 (文芸社、2005年)、『企業法とコンプライアンス』(編著)(東洋経済新報社、2006年)、『入札関連犯罪の理論と実務』(東京法令出版、2006年)、『「法令遵守」が日本を滅ぼす』(新潮新書、2007年)、『社会が医療に求めるもの』(ロングフィールドジャパン、2008年) 、『食の不祥事を考える』(唯学書房、2008年) 、『思考停止社会 ~「遵守」に蝕まれる日本』(講談社現代新書、2009年)。

◆宮崎学氏によるシンポジウムの説明

 神保町フォーラムがこのような大掛かりな集会を主催するのは初めて。神保町フォーラムは「自由な空間」として多方面にわたって勉強をしてきたが、一つのテーマでの大シンポは初めてだ。

 小沢一郎氏の公設秘書逮捕の報道に接して、2年強にわたっていろいろな議論をフォーラムでしてきたが、その議論から見ても多分、秘書は起訴になるだろう、と見ていて、起訴になる前に一度、声をあげる必要があるのではないか、ということになって、わずか5日間の準備で急きょシンポジウム開催となった。

 一体、東京地検特捜部で何が起きているのか、官僚論をフォーラムでやっていて、佐藤優さんを中心にクーデターや戦前のことなども勉強したが、今回は昨年9月のリーマン・ブラザーズ破綻に端を発した世界同時不況で今後日本がどう進むのか、官僚による日本再編成が行われるのではないか、それも統制派官僚による再編成が行われるのではないかという問題意識が出てきた。そこで、このシンポジウムを開くことにした。

 この事件の中身に迫れる人たちに参加してもらうことができた、と思っているので、突っ込んだ議論をしたい。今日は時間が9時半までと2時間しかなく、会場からの質問に全部答えられないが、フォーラムのホームページの一番下にメールアドレスがあり、そこに質問をしてくれれば、メールで返事をします。

 以上の挨拶で始まったのだが、このシンポジウムの要点を書きとめておく。

 あくまで自分のメモを頼りに書くので正確ではないので、どこかに引用される方は、神保町フォーラムがアップするオンデマンドビデオを見て、ご自分でチェックしてからになさってください。私は責任を負いかねます。

 以下がシンポジウムの概略である。

◆司会の二木氏

 今日はしゃべらせたら1人で2時間は楽にしゃべる人ばかりだが、大きく四つに分ける。

 まず第一は1人3分で各パネラーから西松事件についてどう思うかのコメントをもらう。最大5分にしてください。これをもとに、

 第2部は事件の政治的意味について平野氏と宮崎氏中心に30分間。

 第3部は東京地検特捜部論を鈴木宗男氏と魚住昭氏で30分間。

 第4部は最後の30分間でメディアと捜査報道について田原総一郎氏と魚住昭氏。これで9時半という計算。この塊ごとに会場から質問を受ける予定です。

 このシンポジウムはインターネットで同時中継をしている。また、あとでオンデマンドで流す。また、NHKと民放のカメラが回っているので、会場に来ている人で指名手配中などの人は後ろを振り向かないでください。

■第1部 パネラーの冒頭発言

◆魚住昭氏

 一報を聞いて特捜部は無茶なことをするなぁ、と思った。政治家の事件は影響が大きいので、脱税、贈収賄しか手をつけないのが従来の東京地検特捜部のやり方だった。今回は政治資金規正法だった。額も2000万円ちょっとで少ない。それも闇献金ではなく今回は表の献金。形式犯に近い犯罪だ。常識では考えられない事件なのに、検察の上層部はなぜ着手を止めなかったのか、と思った。

 現場の検事は事件をやりたがる。それを足場にうまくすれば出世する、というインセンティブもある。それを抑える上層部のブレーキ、コントロールが全然効いていない。

 この事件の政治的な意味合いは検察が承認した政党しか政権につけない、ということだ。検察主導の政治の始まりだ自民党や政府が捜査を指示した、ということは有り得ない。検察官は政治家を見下している。自分たちのほうが上だ、として、麻生政権をも見下しているから、「そんな指示でどうこうではない。

◆鈴木宗男氏

 小沢さんの第一秘書が捕まったと聞いて「なぜこの時期に」と思った。また、その後の漆間発言を聞いて、「自民党には及ばない」と聞いて、おかしな方向に向かっているなと感じた。石川議員の参考人聴取も何日も前からリークしている。石川氏は失態をしでかした中川昭一氏と同じ選挙区です。国策捜査だな、7年前の宗男事件の似ているな、と思った。あの時もリークがさんざんなされて、ムネオハウスとか、そういうリークされた内容は一つも事件にならなかった。裁判でも出てこない。参考人聴取などは本来は粛々と行うものだ。中川昭一氏を助けるために石川さんをターゲットにしてもやむを得ない、とリークを繰り返した

 5月から裁判員制度が始まる。裁判が始まるまでは国民に予断を与えてはならない、としきりと言っている。2月18日に開かれた検察幹部会議には樋渡検事総長も出席して「検察もどういう事態だ、と説明する義務がある」と言っていた。しかし、国会で今回の事件について検事総長に説明してもらおう、と参考人招致をお願いしようとしたら、官房長官らに止められた。

◆田原総一郎氏

 小沢氏の翌日の記者会見は前半はその通りだ。このような事件での前例はない。選挙の前で、国民の大部分は民主党が政権を取るだろうと見ている。これを意図的と言わずして何と言うのか

 しかし、これは国策捜査ではない。国策捜査の場合には鈴木宗男を逮捕する前から「鈴木は悪いやつだ」「悪者だ」とリークを繰り返して、世論を形成してから逮捕する。これは佐藤優の言うとおり、検察の一致した考えでやったのではないのではないか。検察が一体化しているのではないと思う。郷原元検事も私の番組サンデープロジェクトで「おかしい」と言っていた。ロッキード、リクルート事件をやった宗像元検事に電話で聞いたら「これは検察の失敗。乱暴極まりない捜査だ」と言っていた。秘書逮捕の1週間後に自民党の名前も出てきた。国策捜査ならば、同じタイミングで自民党の名前が出てくるはずだ。

 漆間発言だが、漆間氏は検察の上のほうから情報を聞いていたと思う。謎だらけの事件だ。マスコミは検察情報に乗っかって記事を書いたり、番組を作ると視聴率がいいからそうなってしまう。

◆佐藤優氏

 3月3日の午後から私のところにジャンジャン電話が入って「国策捜査か」と聞いてきて、私は仕事のスケジュールが狂ってしまった。国策捜査ではない。国策捜査の場合はあいつら(検察)には手口がある。2002年3月にある新聞、というか、具体名は避けるが築地新聞が2000年4月のテルアビブの国際会議のカネの問題で不正がある、と書いた。

 宇山智彦 (うやま・ともひこ)というキャリア官僚がしゃべったことらしいが(※宇山氏は1967年11月1日生まれで93年3月東大大学院総合文化研究科修士課程修了。外務省職員を経て北海道大学スラブ研究センター教授=中央ユーラシア部門。専門分野は中央アジア史,比較政治=)、地検特捜部はすぐには動かない。熟成させて5月14日に逮捕するんだが、その前日の5月13日、いつものように私が記者たちにもまれてイモ洗いのようになりながら歩いていると築地新聞社(わざわざ朝日新聞という具体名を避ける言い方をしている)の記者が星飛雄馬のような燃える眼で思い込んだような顔付きで私に「地検で黙秘は通じませんからね」などとしゃべりかけてきた。そういう雰囲気を作ってからの逮捕です。会場の中に警視庁と公安調査庁の人もいると思いますが、このシンポジウムはビデオを撮っていて、あとでオンデマンドで見ることができるから正確に起こしたものを上司にあげてくださいね。(もしも佐藤氏が言うような仕事をしている方がいるのでしたら、このブログを利用しても結構ですが、正確ではないということだけは言っておきます。私は責任を負いません。)

◆平野貞夫氏

 大久保秘書の逮捕の報に接して、リクルート事件の中間報告の時に高辻法相が1989年4月の衆院予算委で行った答弁を思い出しました。検察ファッショとは何か、という定義で、高辻さんは「特定の政治目的のために検察権が乱用されること」と定義していた。一法相の定義ですが、1934年の帝人事件の無罪判決をも思い出し、こういう歴史を繰り返すのか、と思いました。

 <※帝人事件 ウィキペディアによると、帝人事件は昭和初期の疑獄事件で、斎藤実内閣総辞職の原因となったが起訴された全員が無罪となり倒閣を目的にしたでっち上げと言われた。

 帝国人造絹絲株式会社(帝人)は鈴木商店の系列だったが、1927年の恐慌で鈴木商店が倒産すると、帝人の株式22万株は台湾銀行の担保になった。業績が良好で株価が上がったため、この株をめぐる暗躍が起こった。

 元鈴木商店の金子直吉が株を買戻すため、鳩山一郎や「番町会」という財界人グループに働きかけ、11万株を買い戻した。その後帝人が増資を決定したため、株価は大きく値上がりした。1934年1月、時事新報(武藤山治社長)が「番町会」を批判する記事を掲載、その中で帝人株をめぐる贈収賄疑惑を取り上げた

 当時文部大臣の鳩山一郎は議会で関連を追及され「明鏡止水の心境」と述べたところ、辞任の意思表示だと報道されたため、嫌気がさして辞任3月に武藤山治射殺事件が起きたが、本事件との関係は不明)。その後、帝人社長や台湾銀行頭取、番町会の永野護、大蔵省の次官・銀行局長ら全16人が起訴された。これにより政府批判が高まり、同年7月に斎藤内閣は総辞職した。逮捕者の拘留期間は200日に及び、拷問による自白の強要もあったという

 起訴された主な人は▽島田茂台湾銀行頭取永野護(番町会)▽河合良成(番町会)▽黒田英雄大蔵次官大久保偵次大蔵省銀行局長▽大野龍太大蔵省特別銀行課長▽相田岩夫大蔵省銀行検査官▽中島久万吉商工大臣三土忠造鉄道大臣高木復亨帝人社長

 1937年に起訴された全員が無罪となった。検察による強引な取調べと起訴が批判され「検察ファシズム」といわれた。でっち上げの背後にいたのは、司法官僚出身で当時枢密院副議長の平沼騏一郎とされる。

 平沼は5.15事件で暗殺された犬養毅の後継内閣総理大臣の地位を願ったが、後継の推薦権がある元老・西園寺公望からそのファシズム志向を嫌われて推薦候補すら上らず、また枢密院議長昇格の要望も西園寺の反対で副議長のまま置かれていたこのため、西園寺とこれを支持する立憲政友会主流派を深く恨んで、同党内部の不満分子を抱き込みながら捜査を進めていったという。

 のちに河井信太郎が帝人事件を評して「塩野季彦司法大臣の大英断により控訴を断念したが、検事が証拠品の検討を怠っていたことが無罪の致命傷になった。掛物によく描かれている、水の中の日影を猿が藤蔓につかまってしゃくろうとしている画になぞらえて、影も形もないものを一生懸命にすくい上げようとしているのが検察の基礎であって、検察には争うことができなかった。」と語っている(「検察読本」)。>

  政治資金規正法は第2条で寄付の判断は国民に任せる、と書いている。運用方針を定めた条項です。従来はこの法の趣旨に沿って、行政指導でやってきた。それをいきなりガバッと逮捕するのはどうなのか。献金、寄付は議会制民主主義の国民の権利でもある。今回の検察ファッショは日本の議会制民主主義の崩壊という視点で考えてほしい

◆宮崎学氏

 麻生内閣のヨタヨタ状態は世論調査に反映されたように自公連立政権は末期状態だったと思う。そこでピンポイントで小沢氏を叩いた、という印象を持った。この時期、選挙は予算成立後か補正予算成立後で数カ月以内には選挙になる。選挙前に検察が対立する一方を叩きにくるのは異常だと思った。

 これまでは検察には政治家逮捕のときには一定の不文律があった。中尾栄一逮捕は選挙5日後。特別の権力を与えられている検察官僚が国民の選択に影響を与えてはならない、という不文律が吹っ飛んだ。この人たち(東京地検特捜部の検察官)はどこまで政治に関与していこうとしているのか、と危機感を持った。今後の政治に関与したい、という彼らの意思表示だったと思う。

◆二木啓孝氏

 警察、検察の司法官僚はサッカーのゴールキーパーのようなもので、得点を許さない。国家の最後の底を支える役目があるから、そのエリア内では手が使える。検察、警察は人を拘束、逮捕できる。特殊な権限を持っている。フォワードが混戦状態の時、キーパーがフォワードに現れて、「俺はキーパーだ。手を使っていいのだ」と始めたのが今回の事態だと思う。

■第2部 政治的意味

◆平野貞夫氏(ロッキード事件の詳細な本も書いている、と紹介されて)

 検察権は恐ろしい。だからこそ公正、法の下の平等、社会的正義を考えねばならないのだが、今回は小沢一郎をどうやって葬るか、そのために大久保秘書と石川議員を妨害して、しつこいリークを繰り返して、石川議員に問題があるかのように記事を書かせている。石川議員がきちんと対応した。

 どうして検察がこのようなことをやったか、だが、小沢が政権を取れば日本の官僚制をはじめ自民党がやってきた「政権交代しないシステム」を本当に変えてしまうのではないか、という恐怖感があり、検事総長も警察庁長官も指示した、というのではなくとも、阿吽の呼吸でこの捜査を進めたのではないか。総理大臣も法相も知ったとしても何もいえない状態だったのではないか。旧体制の仕組みを維持するための捜査なのではないか、と思う。日本が変わることを阻止しようとしているように見える。

◆宮崎学氏

 漆間官房副長官と樋渡検事総長は1968年東大法学部卒業の同期だ。これが「自民議員に捜査は及ばない」発言につながったのではないか。名前を明らかにされた後の「記憶にない」発言は明らかに嘘。国政調査権で漆間氏を嘘発見器にかけることはできないのか?

◆田原総一郎氏

 平野さんの意見に異論がある。私は政府・自民党が検察に圧力をかけてやらせた、というのは穿ちすぎの見方だと思う。(※突然、こう言いだしたが、ボケたかと思った。平野氏はそんなことは全然言っていないのに)。検察がだらしないから、こんな捜査になった。防衛汚職を見て御覧なさい。政治家に行く、と言われながら、捜査が波及しなかった。長崎の事件も郷原さんの指揮でもうすぐ政治家を、という時期に郷原さんを転勤させた。検察庁の下のほう(平検事)がそういう上の方を見て「俺たちで民主主義を守る」となったのではないか

◆平野氏

 大久保秘書の逮捕2日前に法相と一緒に千葉知事選の応援に行き、その時、法相が堂本知事に紹介するから、と連れて行かれ「この人が小沢一郎と一緒に日本の政治を悪くした張本人です」と紹介していた。私は前から堂本さんを知っているのにわざわざ紹介するのも変だし、何かその時から魂胆があったのかもしれない。

◆佐藤氏

 ハーバーマスも言っているように立場によって事実は違う。田原総一郎氏は「権力党員」だ。いつも権力のあるところに田原さんはいる。権力党員だから、権力の文法で見ている。鈴木宗男さんは思っていることを正直に言う。

 私は今回の地検の動きは限りなく2.26に近いと思う。皆、目を輝かせ、星飛雄馬に某ヨットスクールの好調をあわせたようなもの。それが正義だと思って相方の伴を失い、姉の恋愛に不当介入、最後には自分の腕の腱が切れて投手生命をなくした。今の検察はそういうことだと思う。ゴールキーパーがいないところで漆間という白髪のおじいさんが出てきて、オウンゴールを入れてしまった。日本の国家は世界からどう見られているか、とかいう気配りは全くない。検察が世直しをするのではない。

◆鈴木氏

 本来、政治家がやることを自分たちがやらねばならない、と間違った正義感に燃えている。もっと冷静にやるべきではないか。

◆平野氏

 (二木氏や田原氏に「小沢は辞めるのか、辞めないのか、と何度もしつこく聞かれて)この間の記者会見の通りだろう。まずは起訴の内容だ。小沢が命を賭けているのは政権交代だ。そこに命を賭けている、と会見で言っている。(総理大臣になるということよりも)政権交代が第一だ。

◆佐藤氏

 小沢氏にとってガダルカナルは撤退することはないが、転身する必要はある。早くガダルカナルから転身しないと勝てない。彼ら(地検特捜部)は組織だから、勝てない。一回にらまれたらもう勝てない。

◆田原氏

 大久保秘書が政治資金規正法だけの起訴で終わったら検察の敗北ではないか。やっぱり検察は負けたか、となる。だから検察は起訴時点で再逮捕を狙っている。

◆二木氏

 今、検察は東北4県について小沢氏がやっていることを調べている。出口は斡旋利得処罰法だ。入口の逮捕容疑は政治資金規正法だが、野党なので収賄に問えないということで、斡旋利得処罰法が浮上した。これは斡旋を働いて利得があった、という内容なので内容的にいかにも贈収賄に近く、国民を納得させることができる、と見ている。東京高検がそういう指示を出していると思う。

 小沢氏の辞任だが、1993年に小沢氏が自民党を飛び出して以来、日本の政治は良かれ悪しかれ小沢氏を中心に回ってきた。小沢氏は10日の記者会見で「捜査の結果が出るまで考える」「総選挙で勝利できるかどうかが重要」と言っていた。

◆平野氏

 何度も言うが、これは重大な推測です。私は明確な話をすべきではないが、最優先は政権交代をするのにどれがいいのか、ということだと思う。小沢氏が他人の意見を聞かないと言われるが、ここにきて2,3年で変わった。普通の政治家のようにいろいろ考えるようになっている。大連立の時には「辞めるのやめた」となっている。

◆佐藤氏

 自民党はうんこ味のカレー。民主党はカレー味のうんこ。どっちがどっちか分からなくなっている。「おれが正義」のおにいちゃん、うんこそのものが出てきた。最悪だ。

◆鈴木氏

 西松事件で大久保秘書が逮捕されたが、彼がどの程度のものか永田町は皆知っている。

 力がないし、ゼネコンの人たちも相手にする人じゃない。

 高橋嘉信という大久保の前の人(秘書)がいる。国会議員を1期やって、あまりに増長して(小沢氏から)切られた人だ。今、自民党の岩手第4選挙支部の支部長。ここは小沢氏の選挙区だ。ドロドロしたものを感じないだろうか。大久保秘書がゼネコンに影響力を持っていた、というのだが、秘書仲間でも永田町でもそんな話はない。大久保秘書が正直に話をしていれば世間は政治資金規正法違反の話は納得するだろう。大久保氏や石川議員は高橋氏の下にいた人だ。

 私は中川一郎さんの下にいた。ロッキード事件の時に「オレは捕まらないよ。俺が大変なときには鈴木が捕まってくれるから」と言っていた。信頼される秘書というものはそういうものだ。私はいつも本当のことを言っているから、私と付き合った人たちは離れない。1983年以来、私についてくれた人は離れていません。

 小沢事務所には中条さんといういい秘書さんがいたが、その中条さんを追い出そうとしたのが高橋氏だった。それで(高橋氏が同じ選挙区から出るので)小沢さんは自分の選挙区を決めなかった。高橋氏の関与した事実はすでに時効が成立している。

◆田原氏

 高橋氏が水面下でやったということか?

◆鈴木氏

 東京地検の谷川次席検事盛岡地検の検事正をやってから東京地検に来た人だ。盛岡で情報を仕入れたのかもしれないが、何とも分からない。

 検察は手足がないからブラックジャーナリズムでも何でも資料を集めて、被疑者に聞くのです。私の取り調べ担当検事が谷川検事だった。東京地検の吉田氏も私の担当検事だった。

◆佐藤氏

 私のところもテーミスと選択の記事を見せて「どう思う?」と聞いてきた。歳川氏と二木氏の共著「宗男の言い分」の本の中で外務省のことが詳しく書いてあり、あなたがこれを漏らしたらば国家公務員法違反だからパクってやる、と言われた。まあ、特捜にどう取り調べられたか、という内容を漏らすのは秘密漏えい罪には当たらないだろう。週刊現代に私が捕まる、と書いてあったので、なぜ断定的に記事になるのか、地検でリークしたのか、と検事に聞いたら、「いや、あれは内部でも問題になって、ちゃんと処分してあるから」と言っていた。やはり、検察の中でも問題になった、というんです。

■その後のこと

 その後、司会者の二木氏が会場に来ている、安倍晋三元首相の選挙区である衆院山口県4区に民主党公認で出馬予定の新人、戸倉多香子氏を指名して、戸倉氏が「小沢さん辞めないで、民主党は小沢さんを守って、小沢さん一人も守れない民主党では国民を守れません」などと民主党の選挙キャンペーン的になった

 悪乗りした二木司会者は会場に来ていた兵庫県のおっさん、民主党の石井一参院議員にも発言の機会を与え、まるで民主党の総決起集会のような雰囲気も出てきた。

 そこは、情報のプロで、雰囲気を読むことでは陣後に落ちない佐藤氏が大声で「党利党略の話はやめだ」と言っていた。

 でも、何か一度政党色のついてしまった集会は、ちょうど洗濯機に赤インクのしみのあるワイシャツを入れたら、下着にも上着にもその赤がついてしまうように、パネラーが何を言っても、何か、背後を見てしまう、というか、その人の立ち位置を頭の中で想像してしまうようになった。

 私から見れば、二木氏のセンスのない司会進行、あまりに無神経なサービス精神のせいで、せっかくの百年に一度の事態を理解しようと識者が集まり、聴衆もそれを期待していたはずの集会が汚らしくなってしまった感じもした。

 佐藤氏に言わせれば、それを「汚い」と感じること自体、日本人のおかしな性格だ、と言うかもしれないが。

 田原総一郎氏にがっかりしたのは、戸倉氏が佐藤氏に「検察はなぜ小泉、竹中という改革利権を吸う人たちをそのままにしているのですか」と聞いたのを横取りして、「あのかんぽの宿の一連の話は総務省と日本郵政の喧嘩で、鳩山総務相は総務省の言う通りにやっているだけだから」と冷や水をかけていたのを見た時だ。この人はそういう人なのか、と改めて認識した。

 なぜ、「総務省と日本郵政の喧嘩に過ぎない」と断言できるか? 分かるのか? 田原氏は相当に深い事実を知っているのか? それにしても、最初は「一般競争入札」と言っていて、それが、どんどん崩れ、最後にはオリックスが日本郵政の人間を副社長ポストで厚遇する話まであった、というところまで暴露されているのに、なぜ「喧嘩」ですませてしまうのか? 竹中平蔵氏と裏で何かつながっているのだろうか? 何かおかしい

 どうも、田原総一郎氏の「正義」は偏っているように見える。その偏った正義感でサンデープロジェクトを仕切られたら、国民は迷惑だ。

 話が行ったり来たり、グチャグチャになってきたのは、司会者が捌けないこともあるが、パネラーがそれぞれ個性的な人だからだろう。ダブらない話だけ書いておく。

◆魚住昭氏

 政治と検察の関係は金丸自民党副総裁の上申書、脱税事件で逆転した。それまでは田中元首相が元気な頃は検察と田中派はいい勝負をしていた。金丸逮捕とその後の自民党分裂から逆転した。それまでは検察は政治家をやりにくかったが、それからはドンドンやっている。検察にとっては基本的に誰でもいい。大物ならば出世の足がかりにもなる。

 今回の小沢秘書逮捕は解散風が吹き始めたら着手できなかっただろう。また、小沢首相が誕生していたら政治資金規正法だけでこんな捜査はできない。時期的には今しかなかった、と僕は思っている。

◆郷原氏

 最初にこの報道を聞いたときには「これだけではないはずだ」と思っていた。しかし、どうもあり得ないことが起きている雰囲気だ。それをどう受け止めるか、だが、政府・自民党と結託した捜査ではないし、国策捜査でもない。東京地検特捜部がこの程度しかできなくなってしまった、という検察の能力の問題がある。「この程度だけど、やっていいかどうか」ということだろう。

 私はガダルカナルは検察だ、と思う。日経BPオンラインで明後日の朝アップされる私のコラムに書いておいたので、詳しくはそれを読んでほしい。「ガダルカナル化する特捜検察」のタイトルです。ガダルカナルに米軍が来た、大変だ、というので大本営は兵力の逐次投入をするが、泥沼に陥る。

 検察は今、東北地方の建設会社を調べている。しかし、全国の談合構造があったのは3年以上前のことです。(その後、摘発でなくなった)。議員の権限行使に関するものが出てこないと斡旋利得はなかなか難しい。この事件は悪質性が足りないというので、一生懸命、(東北のゼネコンの)説明を受けようとしている。談合の見返りで献金、となれば理屈上は贈収賄の雰囲気が出るので、60人を投入してやっているが、成功するかどうか。雰囲気は暗い。利得の権限で談合に及ぼしたというところが出てこない。ゼネコンというものはどこでも挨拶するし、金も出す。

 現場は大変厳しく、ガダルカナルの山中で水もなく彷徨っている状態だ。

 二階氏のルートもだめだと思う。

 政治資金規正法そのものにも問題がある。ザルの中に穴が開いている。金魚すくいの紙の真ん中に穴が開いたようなもので、一番悪いのは捕まえようとすると逃げる。

◆二木氏

 村井仁長野県知事の秘書が自殺して、地検はお手上げになった。自殺がきいたのか?

◆郷原氏

 私が手掛けた事件で自殺者を出したことはないが、一般的に言えば、特捜の事件で多くの自殺者が出ているが、自殺したからといって方針が変わることはない。長野県知事の関係者の自殺は裏金を直接受けた人と言われている。そのルートの捜査が駄目になった。証拠上、進めなくなったのではないか。他のルートにかかれ、ということはあるかもしれない。

 私は今の捜査を指揮している佐久間氏と同期で、電車の中だったかで「一罰百戒」について2人で話したことがある。私は自分が見える範囲で一番悪い奴を捕まえるのが一罰百戒だと思っているのだが、佐久間氏は何しろ一つを罰すればいい、という。(一番の悪でなくてもいい)。彼とは相当に考え方が違った。

◆田原氏

 私はロッキード事件もリクルート事件も冤罪だと思っている。

 以上で内容のメモはおしまい。

 もっともっとドラマティックな発言もあったのだが、私の能力不足もあって、書ききれない。この文章には正確でない部分もあると思うので、くれぐれも、これを公式記録並みには扱わないでください。

 それで、私の感想だが、思った以上に聴衆が多かったこと、インターネットで同時中継していたのに、あまりのアクセスの多さにダウンしてしまったこと、などから、この事件に関する世間の関心がロッキード事件、リクルート事件とは一味違って、検察権力とい国家権力の怖さをも見ている感じがした。東京地検特捜部への期待感、「頑張れ!」という雰囲気が、いくら新聞で検察担当の司法記者が検察リークで1面トップ、社会面トップを作っても、世論が沸き起こらない。

 これがすべてではないか、と思っている。つまり、検察の敗北が徐々に見えてきたのではないか。ただ、3月16日朝刊各紙を見ると、朝日新聞が2面メモでこのシンポジウムを掲載しただけで、他紙はことさら無視していた。こんな記事を書いて地検に嫌われるのが怖いのだろう。その気持ちも分からないではないだけに、一般読者とすれば、新聞のあおるような報道に接した場合、そののり代をよく見極め、行間を読む努力をしないといけないのだ、と思い知った。

 今の日本は自由な国のはずだが、記者が書くのをためらう重要な事実というものもゴロゴロ転がっているのだ、ということも意識しながら新聞を読み、テレビを見ないといけない、と改めて感じた。

 シンポジウムのパネラーは、今回のシンポが無料だったことから、きっとボランティア出場したのだろう。

 すがすがしい人が多かった。

 しかし、やはり、田原総一郎氏だけは許せない、という気がする。ロッキード事件、リクルート事件を冤罪というのならば、自分が仕切っているテレビの番組できちんと言えばいいいそれに反対されたら、番組を降りればいい。そういうリスクを取らずに、佐藤氏ではないが「権力党員」として、いつも偉い人に尻尾を振りながら、番組の中だけで怒っているふりをしている。その不誠実な人ジャーナリストとは呼びたくない、と思う。

 以上、これは、あくまで私個人のための備忘録です。念のため3度書いておきます。

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中島哲夫氏の社説ウオッチング[金賢姫]が秀逸だった:やはり朝日新聞は北朝鮮びいきだった~毎日新聞3月15日朝刊

 毎日新聞3月15日朝刊[社説ウオッチング]は秀逸だった。<金賢姫元死刑囚面会/国内6紙「李政権で可能に」/韓国3紙、でっち上げ説に焦点>である。中島哲夫論説委員が書いた論だ。

http://mainichi.jp/select/opinion/watching/news/20090315ddm004070012000c.html

 ソウル特派員経験者で、韓国の新聞などのウオッチングが正確で鋭い。中島氏が言う通り、盧武鉉前大統領だけでなく、金大中元大統領時代からの韓国政権の対北朝鮮姿勢をもう一度検証しなおす必要があるのだろう。その北朝鮮融和策が必然的に拉致問題無視、大韓航空機爆破事件への無関心につながり、金賢姫元死刑囚を邪魔者にする態度、ひいては事件そのものを「でっち上げ」と主張する誘引を作ったわけだから。教えられる点が多かった。

 社説ウオッチングを書き写そう。

 <日本にも深刻なダメージを与えようという陰険な狙いが、大韓航空機爆破事件(1987年)には秘められていた。もしも「蜂谷真一」と「蜂谷真由美」の日本人父娘を偽装していた工作員2人が、大韓機に時限爆弾を残して降りた後、そのまま逃げおおせるか、あるいは2人とも毒薬での自殺に成功していたら、どうだったか。この男女が日本人でないと断定するのは容易でなく、日韓関係は極めて深刻なピンチに陥っただろう。>

 その通りなのだ。もはや、日本人は忘れているかもしれないが、あの事件は中東へ出稼ぎに行く貧困層の韓国人を100人以上乗せた韓国の民間旅客機だった。その中に偽造した日本のパスポートを所持した北朝鮮の工作員が親子を装って乗り、爆弾を仕掛け、爆発させ、115人を犠牲にした。その後、犯行発覚後に男は青酸カリを飲んで自殺。女も自殺しようとしたが、危うく直前に取り押さえた。それが22年前の金賢姫容疑者だったのだ。もしもあの時、取り押さえるのが少しでも遅れ、金賢姫容疑者が青酸カリを飲んでいたら、韓国のメディアは日本人2人が韓国民115人を殺害した、と騒ぎ立てただろう

 それを今でも言いたくて仕方ないのが北朝鮮のあの爆破事件を仕組んだ連中と、その仲間の韓国「民主化勢力」なのだ。

 <その意味で、「真由美」名義の偽造旅券を持った女、つまり金賢姫(キムヒョンヒ)元死刑囚が自殺し損ね、韓国に移送されてすべてを自供したことは、日本にとっても不幸中の幸いだった。その後、死刑判決を受けたのに特赦されたことについて、大韓機事件の犠牲者遺族の一部には不満もあるとされる。しかし北朝鮮のテロ工作だったと証言できる唯一の「生き証人」を処刑する選択肢は、そもそもなかった。

 そういうことだ。北朝鮮の犯行を証明できる唯一の生き証人を早く殺してしまいたいと願っているのは北朝鮮の金正日一派と韓国のいわゆる「民主化勢力」を標榜している一部の危険分子たちだけなのだから。

◇3紙「情」に踏み込む

 <そして11日、別の意味での「唯一の生き証人」の価値が新たに証明された。北朝鮮に拉致され、金元死刑囚に日本語と日本人の生活習慣を教えた「李恩恵(リウネ)」つまり田口八重子さんの家族に、田口さんとの思い出を語る役割である。>

 そういうことだ。

 <「抱いてもいいですか」「お母さんは生きていますよ。希望を持ってね」

 この言葉を毎日新聞は当日の見出しにしなかっただけでなく、1面に入れなかった。社会面には入っていたが、随分と感覚の鈍い新聞なのだなぁ、と思っていたのだが、中島氏がきちんとこの言葉の重要性を押さえていたようだ。

 <涙ながらの日本語で語る金元死刑囚と田口さんの長男、飯塚耕一郎さんの出会いの場面を、毎日など3紙の社説が描写した。その上で毎日は「北朝鮮での母親の生活ぶりを直接知っている金元死刑囚に会いたいという5年間の悲願がかない感無量だったろう」と、耕一郎さんの内心を思いやった。朝日は「会えてよかった」と心を寄せる表現をし、産経も「これを機に、母の姿をより身近に感じ、再会を目指してがんばってほしい」と書いた。こうした「情」の世界に社説が踏み込むのは、さほど頻繁にあることではない。会って心を通わすこと自体が最大のテーマだった現実の反映であろう。>

 たしかに社説に「情の世界」が入ることはあまりない。この表現の重さを表わしている。

◇新たな情報少なく

 <逆に言えば、拉致事件究明に直結する新情報はなかったようだ。しかし金元死刑囚は記者会見で、田口さんが1986年に結婚したのではないかという認識を示した。これは「84年に日本人と結婚し、86年に夫婦が相次いで死亡した」という北朝鮮側説明と食い違う。拉致された韓国人男性と結婚したとの情報も別途出ており、毎日、産経、東京の3紙は、こうした点を今後の究明の手掛かりにしようといった趣旨の主張を展開した。拉致解明への日韓連携(毎日、朝日、産経、東京)や、核、ミサイルを含めて解決を目指す日米韓連携(読売、日経)の提言は、まず常識的と言える。>

 韓国の盧武鉉勢力や北朝鮮にとっては「新事実がなかった」と書かれることは喜びだろう。金賢姫氏の利用価値が褪せてきた、と思わせることができるからだ。

 次の文章は中島氏の真骨頂だろう。

 <ただ、朝日の社説には少し異色な側面が含まれている。金元死刑囚の「北朝鮮のプライドを守ってやりながら、心を動かせる方法を考える必要があるのではないか」という発言を引用しつつ、北朝鮮の悪行を許すわけにはいかないが「圧力一辺倒で打開できないこともまた現実」と指摘する。だから「対話と圧力を組み合わせて北朝鮮を動かす環境をつくっていく」しか道はない、という結論になっており、これは対話重視の柔軟路線と読める。国民感情に配慮し、北朝鮮に厳しい見出しでバランスを取っているようにも見える。>

 そういうことなのだ。そこに気付くとは鋭い。見出しだけは他紙並みの見出しを付けながら、朝日新聞は北朝鮮好き、金正日好きの本性を隠せない。どこかで尻尾を出してしまうのだ。こういうのを「頭(見出し)隠して尻(本文)隠せず」と言うのだろう。

 そういえば、朝日新聞3月12日朝刊1面2番手の見出し<拉致 新事実見つからず/金元死刑囚 一気に思い出40分>は違和感があったのだが、思い出してみれば、朝日新聞のそういう編集方針に則って、「新事実がなかった、良かった」という思いを素直に見出しにしたのだ、と分かった。汚い新聞だ。同じ日の読売新聞は1面で<「田口さん結婚説」否定/金元死刑囚/「84年末まで工作員と同居」>の新事実を見出しに取っている。東京新聞の1面トップは<「めぐみさん死亡、信じられぬ」/「北動かす方法 日本は考えて」/会見で金元工作員>だった。朝日新聞の突出振りが目立った。

 <さて、日本の6紙すべてが一様に指摘したのは、今回の面会が実現したのは「韓国側が李明博(イミョンバク)政権であればこそ」という点だ。ただ毎日以外の5紙が、対北朝鮮融和路線として直前の盧武鉉(ノムヒョン)政権だけを名指ししているが、実際には毎日の指摘通り「過去2代の政権」つまり金大中(キムデジュン)政権も含めて親北朝鮮の姿勢が続いたのだ。

 そういうことです。

 <例えば金大中政権は、韓国で逮捕され原敕晁(ただあき)さん拉致を自供した辛光洙(シングアンス)・元服役囚を、他の非転向長期囚とともに北朝鮮に送還してしまった。日本側が要求した事情聴取は実現しなかった。金大統領と金正日(キムジョンイル)総書記の南北首脳会談の後の、2000年9月のことである。>

 この辛光洙という悪人の助命嘆願の署名運動に協力していたのが土井たか子元社会党委員長で、この人はその過去に口をつぐみながら、何と衆院議長までやってしまった。日本国民がいかに社会党やその姿を実像以上に褒め称えた進歩的文化人に騙されていたか、よく分かる。辛光洙元服役囚は北朝鮮に帰って、英雄として金正日総書記から勲章を受けた。「拉致ご苦労さん、よくやった」ということだろう。これに土井たか子氏が協力した汚名は死んでも消えない

 毎日新聞の[新聞時評]で北朝鮮の「人工衛星」は国際法で許されているのだから、どんどん打ち上げるべきだ、と書いていた浅井基文氏など、この「進歩的文化人」の最悪の典型だろう。今でもその主張を変えていないのかどうか、拉致問題をどう考えているのか、金賢姫氏の記者会見があっても、まだ大韓航空機事件を韓国の陰謀だ、と考えているのか、見解を聞いてみたい。

 <もちろん、盧武鉉政権も露骨だった。対北朝鮮政策担当者は「日本が拉致問題に執着して6カ国協議の進展を阻害している」などと公言した。金元死刑囚は同政権時代の国家情報院(国情院)から、大韓機事件はでっち上げだったとテレビで証言するよう圧力を受けたと訴えている。

 そりゃあ、盧武鉉大統領の犯罪は数え上げたら両手に余る。

◇朝鮮・東亜、現状嘆く

 <今回の面会に関する韓国大手3紙の社説は、金元死刑囚のこの訴えと、大韓機事件は本当に北朝鮮のテロだったのだという記者会見での発言に焦点を合わせた点で共通している。>

 そこに焦点を当てざるを得ない韓国内の雰囲気。つまり、「でっち上げ」説がまだ信憑性を持って語られる雰囲気を作ってしまった盧武鉉政権と、そのインチキ政権(とは言っても韓国民が選んだ政権ではあるのだが)と手を組んでいた大手テレビ局の腹黒い幹部は大いに糾弾されるべきだろう

 <また朝鮮、東亜の両紙は、韓国からの拉致被害者が500人近くもいるのに、解決に向けた前進が全くない現状を嘆いている。今回の面会は救われるニュースだったが、日韓の拉致問題解決に展望が開けたわけではない。あまりに痛ましい現実である。【論説委員・中島哲夫】>

 以上である。

 ズバリと書いている。内容もいい。こういう論を各社も勉強すべきだと思う。

 特に朝日新聞は今のままでは北朝鮮の独裁政権のための新聞なのか日本国民のための新聞なのか、読んでいて分からなくなる。大いに反省して、しっかりと日本国民のための論を展開してほしい

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金正日総書記の手に権力はない?~朝日新聞3月15日朝刊から

 朝日新聞3月15日朝刊1面は3段見出し<北朝鮮「後継は世襲で」/幹部に通達、名前は触れず>で金正日総書記の主な家族関係の図をつけながら報じた。各紙が軍の動きとして似たようなニュースを流していたが、これは朝鮮労働党指導部の通達だ、というので、またレベルが違った話なのかもしれない。北京支局の峯村健司特派員の記事である。

 <北朝鮮の朝鮮労働党組織指導部が昨年12月、一部の党幹部に対して金正日総書記(67)の後継を世襲とすることを強く示唆する内部通達を出し、思想教育を命じていたことがわかった。在北京の複数の北朝鮮筋が明らかにした。その後、軍も同様の通達を幹部に出した。3月20日前後には党と政府の幹部職員にも通達され、徹底が図られるという。具体的な後継者名には触れていない。金総書記はこれまで後継体制についての考えを明らかにしてこなかったが、世襲継続の方向性が示されたことで、今後、金総書記の長男・正男氏、次男・正哲氏、三男・正雲氏のうち、だれが後継者となるのかが注目される。中朝関係筋によると、この情報は米国務省高官にも伝えられている。>

 米国務省高官にも伝えた、というのはどういう意味なのか? 米朝交渉の際の参考にしてくれ、ということではなく、金正日総書記にもしものことがあった時には、今後、米国はこの決められた後継者と交渉してほしい、という金正日総書記の必死の願いなのか? それだけ北朝鮮の動乱の可能性が大きいということか?

 <通達は各組織の人事や検閲権を握る党組織指導部が12月1日付で出した。「(金総書記の)後任に金家の人間がなるという思想教育について、部内でしっかりとまっとうせよ」との趣旨が記され、上層幹部だけに配られたという。同20日付で朝鮮人民軍の中枢機関、軍総政治局も軍幹部に同様の通達を出した。関係筋は「一度ではなく段階的に通達を出すことで、発言力が強い軍や党幹部の反応を探りながら、徐々に思想を浸透させていく意図があった」と説明する。>

 なるほど、各紙が書いていた軍の指示というのは、労働党の指示を受けてのものだったのか。そうなると、どうも本物、ということかもしれない。

 <金総書記が昨年夏に一時体調を崩したため、後継体制に対する考えを明確に打ち出すことで事態を安定させ、内部の結束を固める狙いがあるという。同筋は「どの息子を後継とするかが問題ではなく、世襲を続けるか否かをめぐって党や軍の内部で対立が出始めており、通達を出して総書記の意向を強調する必要があった」と指摘する。別の北朝鮮筋によると、後継者問題は「3人とも後継者になる可能性が残されており、まだ白紙に近い状態」とされる。今回、後継者に言及していないのは「次男と三男は20代で若く、決定には時期尚早。10年後改めて検討する」との判断からだという。>

 そういうことなのか。つまり、3人にくっついている権力闘争の主役たちの誰を選ぶか、という決定を金正日総書記ができない状態に追い込まれている、決定をした段階で内乱が起きかねないほど緊迫している可能性がある、と見ていたほうがいいのではないか。

 <金総書記は1973年9月に党中央委員書記に選出され、後継者の地位を固めていった。3人のいずれかが党や軍の要職に登用されれば、後継者に選ばれる可能性が大きくなる。ただ、「世襲を指示しながら後継指名できないのは、既に総書記の一声ではなく、合議制に移っていることの表れではないか」(北朝鮮に詳しい中国筋)との見方もある。>

 そういうことだろう。権力はすでに金正日総書記の手から離れている可能性が大きいのかもしれない。

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2009年3月14日 (土)

「ヒル氏は北朝鮮に譲歩し過ぎ」とマケイン氏~毎日新聞3月14日夕刊

 ヒル氏の北朝鮮融和はやっぱり米国でも問題視されているようだ。

 毎日新聞3月14日夕刊総合面<米イラク大使指名のヒル氏/「北朝鮮に譲歩」を問題視/マケイン上院議員ら再考もとめる>がその動きを報じていた。ワシントン支局の草野和彦特派員のリポートだ。

 <オバマ米大統領がヒル国務次官補を次期駐イラク大使に指名した人事について、共和党のマケイン上院議員らが再考を求めている。ヒル氏が北朝鮮の核問題を巡る交渉で「論議を呼んだ」ことが理由の一つだ。ギブス大統領報道官は13日の記者会見で「ヒル氏は経験豊かな外交官だ」と反論した。>

 <マケイン議員は同僚のグラム議員とともに12日、ヒル氏の指名を「懸念」する声明を発表した。この中で、駐イラク大使は「中東(勤務)や、テロ対策に関する米軍との協力」の経験が重要だと指摘。ブッシュ前政権末期、北朝鮮核問題の6カ国協議米首席代表として、米朝協議で譲歩を重ねたヒル氏の外交姿勢も問題視した。>

 なるほど、文書で反対した。本格的だ。

 <ロイター通信によると、ヒル氏は、上院での指名承認審議前にマケイン議員との会談を求めたという。>

 ヒル氏も悪あがきをしている。ただ、これはヒル氏だけではなく、ブッシュ政権の最後の「成果」を焦ったブッシュ大統領自身とライス国務長官とヒル氏の共謀共同正犯だと思う。ブッシュ氏も最後には日本を裏切った。

 <オバマ大統領は先月発表した新イラク戦略で、イラク国内の政治的融和の必要性を強調。ボスニア和平やコソボ危機で交渉団の一員だったヒル氏の手腕に期待している。>

 オバマ大統領が、というよりはクリントン国務長官が、ということだろう。クリントン長官の後ろにはオルブライト氏がおり、そのコネクションの中にヒル氏がいる。

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中谷巌氏の「ざんげ録」への意見表明、朝日新聞に載っていた~日経新聞3月11日夕刊の佐和隆光氏コラム、3月14日[大機小機]、朝日新聞文化面

 日経新聞3月14日朝刊[大機小機]は(盤側)さんの<「百年に一度」は天災用語>だった。今回の米国発金融危機を「百年に一度の危機」というが、これだと天災は百年に一度やってくる、というのと同じで諦めの気持ちを抱かせ、経済学無用論に結びつきかねない、と書き出す。なるほど、と思うが、(盤側)さんはこの言葉がもともとは前FRB議長の「百年に一度か五十年に一度の危機」という言葉から出ていることはご存意だとは思うが、あえて省略したのだろう。

 面白かったのが、次のくだりだ。

 <経済学者の中には「ざんげ録」のような”転向”の書物を刊行した人もいる。これを読むと、経済学はこんなに底の浅い信仰に似た感覚で世の中を動かしてきたのかと驚いてしまう。だが反省している以上、昔の主張か今の反省かのどちらかが正しいはずだ。反省しない経済学者は、一貫して正しいのか、一貫して間違っていたのか分からないので、全員がこの書物について意見を表明すべきである。>

 というくだりだ。

 実は、同じ3月14日の朝日新聞朝刊文化面<構造改革の旗手、行き過ぎた市場経済を批判/中谷巌氏「転向」の波紋/「正直」「責任は」賛否両論/「空気に過敏な論壇」>、<「人間、成長して意見変える」中谷氏に聞く>でこの(盤側)さんの疑問に答えようとしているのだ。こういうのを「阿吽の呼吸」とでも言うのだろうか。最近、朝日新聞・読売新聞・日経新聞の連携がつとに進んでいるやに聞くが、まさか連動していることはないとは思うのだが。

 朝日新聞の記事は思想、論壇を担当している藤生京子記者によるものだ。

 私もたしかこのブログで書評を書いたと思ったのだが、昨年12月に集英社インターナショナルから発売された「資本主義はなぜ自壊したのか」である。経済書としては異例の13万部のベストセラー記録を更新中だ、と書いてある。皆、怖い物見たさで買っているのか?

 本の内容は書評を見ていただくことにして、藤生記者がコメントを取った経済学者たちの反応を書き出しておこう。

◆中谷氏賛成派

▽土居丈朗・慶大准教授=日本人の気質に合った日本にふさわしい経済構造の構築を訴えかけている。(1月11日の読売新聞で好意的に論評)

▽伊東光晴・京大名誉教授=(自らの非を認めた)著者は正直である。(2月8日毎日新聞で皮肉を込めて)

◆中谷氏批判派(藤生記者は「経済は水物だけに主張の変更自体を否定する意見は少数派」と書いている)

▽松原隆一郎・東大教授=経済情勢が変わるくらいで、立場を簡単に変えるべきではない。(中谷氏はこれまでも日本的経営をめぐり自説を修正してきたが)時流を意識したとしか思えない。彼らの政策で首を吊った人もいるかもしれない。倫理的・道義的責任を自覚しているのか。

▽金子勝・慶大教授=根本的な一貫性がみえること、変える以上は大きな世界観で、独自の理論を示してほしい。

▽若田部昌澄・早大教授=経済学者なら、経済学的知見をもって語るべきだ。格差の原因も、経済学的に精査すべきだろう。(専門家から得た知識を援用して欧米の一神教思想との比較などを持ち出す中谷氏の手法への批判)

▽斎藤誠・一橋大教授=命がけのはずの「転向」や宗教的意味のある「懺悔」という言葉を大げさに使ってほしくない。(沈黙を促す)

▽橘木俊詔・同志社大教授=メディアでの発言をやめるくらいなら気骨を感じるのに、これではオピニオンリーダーが自由をエンジョイしただけ。

▽松井彰彦・東大教授=気になるのは、日本の論壇に、KYならぬ「空気を読みすぎる」傾向があること。例えば今こそ自由の価値とは何かの議論をすべきなのに、構造改革批判のムードに覆われてやりにくい気配を感じる」(藤生記者のコメントとして、「論壇の停滞が久しい中、経済論壇は、不景気で逆に活況を呈したといわれる。だが、経済紙で経済論壇の時評を担当している松井氏は、疑問も感じている。一つが論壇と学界が「水と油」の関係になってきていること。学界の最前線では、中谷氏が単純化するような野放図な市場主義が礼賛されてきたわけではないのに、学者が大学に閉じこもっていることもあって、研究知識の蓄積が論壇に反映されない。その構造こそが問題だという」と書いている。つまり、中谷氏の本は大げさでいい加減だ、と言わんばかりの書き方だった。)

▽浜矩子・同志社大教授=変えないこと、真理の前に謙虚であることとの間でバランスが不可欠で、そのうえで人々の側に立って臆せず発言すべきだ。(主張の変更が問題にされると、学者がますます発言しなくなる恐れもある、というコメントを藤生記者が書いた後に)

 藤生記者がまとめた中谷氏の主張の変遷もちょっと意地悪だが、この変化は随分とはっきりしている。1987年の「転換する日本企業」、1990年の「ジャパン・プロブレムの原点」などはまだ曖昧なのだが、1996年の「日本経済の歴史的転換」では「やさしい気持ちが全体の活力を奪い、日本経済を失速させている」と書いていたそうだ。

 つまり、温情あふれる日本的経営の否定論だ。ところが、2008年の「資本主義はなぜ自壊したのか」では、「グローバル資本主義や市場原理が本質的に個人と個人のつながりや絆を破壊し、社会的価値の破壊をもたらす『悪魔のシステム』である」と180度違う論を展開している。

 この文章を比較して読むと、中谷氏の言葉遣いが相当にセンセーショナルな言葉を多用していることが分かる。つまり、言葉がきついのだ。学問的留保などは全く考えていない、あっけらかんとした書き方だ。この人の性格なのだろう。

 中谷氏のインタビューは読まなくても見出しだけで内容が分かるし、書き写していたら、笑っちゃうので、書かない。

 以上が朝日新聞の区分けなのだが、どうも読み終えてみると、(盤側)さんが望んでいた意見表明とは違うようだ。(盤側)さんはそれぞれの経済学者やエコノミストが新自由主義的市場経済論をどう評価するか、を読みたかったのだろうし、私もそういう内容を読みたかったのだが、この意見表明は「転向」を批判するのか、「やむを得ない」とするか、の意見表明だったからだ。

 内容の比較はいずれ、東洋経済かエコノミストでやってほしい、と思う。期待しよう。

 そして、日経新聞[大機小機]に戻る。(盤側)さんは、中谷氏の「転向」を論じた後、

 <米国人は反省しない人たちだと思っていたら、さすがにオバマ新大統領は議会演説で、規制が問題に適切に対応できなかったと述べ、これが米国的な規制のあり方に関する問題であるとの認識を示した。加えて米国人は百年に一度の危機がなぜ米国発なのか自問する必要もあるだろう。>

 と書いていた。

 <米国は貯蓄金融機関(S&L)破綻危機に際して証券化という手法を開発したが、その住宅ローン危機を今回はさらに深刻な形で再現させた。LBO(借り入れで資金量を増やした買収)で散々使ったジャンク債の次は、今回の「ジャンク証券化商品」である。同じようなことを何度でも繰り返して、懲りることのない体質なのではないか。>

 として、

 <経済学者は相も変わらず「ゼロ金利にしたので、お金の流れがおかしくなった」などと論評している。だがお金が余ろうとどうだろうと「してはいけないことは、できない」となっていれば、お金の流れも違ったはずだろう。やはりルールを検証すべきだ。>

 野放図ではいけない、ということだ。そして、EUは米国式の野放図を許さない新しい規制のルールを4月2日のロンドンG20で発表するが、日本もこの会議にどういう姿勢で臨むのか、はっきりさせろ、と言う。

 <本当は今、日本で最も話題になっていなければならない問題なのだが。>

 という結びである。言外の政治批判なのだろう。検察批判なのかな? でも、論理展開が少し散漫だったが、(盤側)さんが何かに相当に怒っていることはよく分かった。誰だって怒りたくなるよね。

◆佐和隆光氏のコラムも面白かった

 これに関連してメモしておかねばならないのが佐和隆光氏の日経新聞3月11日夕刊1面コラム[あすへの話題]である。タイトルは<実務家と経済学者>だが、まさに、この学説と思想の問題を掘り下げている。

 書き出しはケインズの「いかなる知的影響からも無縁であると自ら信じている実務家たちも、過去のある経済学者の奴隷である」という少しショッキングな言葉の紹介だった。そして、佐和氏は

▽規制緩和・所得税減税・民営化→ミルトン・フリードマンの奴隷

▽世界不況下で金融緩和と財政出動を政府に求める→ケインズの奴隷

 という面白い組み合わせを披露する。そして、

 <多くの実務者を奴隷に従える「偉大」な経済学者といえば、アダム・スミス、ケインズ、マルクス、フリードマン、ガルブレイス、スティグリッツぐらいのものだろう。普通の経済学者は「偉大」な経済学者が創始した学派に属する。政財界の主流派の見解と合致する学派が、時の主流経済学の地位を占める。その意味では、普通の経済学者と実務家の関係は、ケインズの言う意味での主客の立場が転倒している。>

 と面白い説を展開するのだ。なるほど、言われてみればその通りだ。「主流経済学者」とか言うが、結局は経済財政諮問会議をはじめとする政府の政策形成に役立つ理論を提供する学者が「主流」で、そうでない学者はいまや経済論壇にも入れない悲哀を託っているわけだから。

 しかし、この「偉大」な経済学者の中にはもっと多くの人々が入るべきだ、とは思うのだが。特にジョーン・ロビンソンをなぜみんな忘れているのだろうか? 彼女の理論こそ、今のフリードマン理論が破綻した世の中で見直されてしかるべき理論ではないか、と思うのだが。

 続きを読もう。

 <米国の経済学者は、自由で競争的な市場を万能視する新古典派か、市場の不完全性を前提とするケインズ派か、そのいずれかに与するのかを、思想構造をも含めて選択している。>

 そういうことだ。その亜流こそが必要なのに。思想的な部分でも。

 <ところが、日本の経済学者の多くは、理論を支える思想構造には全く無頓着である。>

 ここが問題なのだ。

 <それにしても不思議なのは次の点だ。つい数ヶ月前までフリードマンを奉っていた日本の経済学者、経営者、政治家の多くが、世界同時不況の襲来後、今度はケインズの前にひれ伏すようになった。他方、昨年9月に金融安定法案を否決、12月に自動車産業救済法案を廃案に追い込んだ米上下両院議員の多くは、自由で競争的な市場の敗者を国が救済することを「否」とするフリードマンを奉り続ける。その首尾一貫性に対し、私は心より敬意を表したい。>

 以上である。つまり、日本では時流に阿るのが仕事のエコノミストだけでなく、本来は経済思想のバックボーンを持って論を立てなければならないはずの経済学者までもがバックボーンなしに口先で論をしゃべっていた、ということだろう。いい加減だ、といいたいわけだ。その通りだとは思うが、転換したこと自体は否定的に捉えなくてもいいとは思う。どのように転換したのか、できれば自分を含めた「大きな物語」を語れるような経済学者が宇沢弘文氏以外にも育ってほしい、と切に思っているのだが。

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2009年3月13日 (金)

造船疑獄も政治資金規正法違反だった:規正法の解説など~3月4日東京新聞朝刊、3月13日読売新聞朝刊[基礎からわかる]から

 小沢一郎氏をここまで追い詰めた東京地検特捜部が金科玉条のお守りにしているのが政治資金規正法である。この打ち出の小槌のような法律は戦後、様々な政治ドラマを生んできた。3月4日東京新聞特報面<小沢氏秘書逮捕/金丸事件で規正法強化/かつてザル法…罰金20万円/ドン凋落会見…自民分裂へ/庁舎にペンキ…検察の意識変化>で簡潔にその歴史をまとめていたが、読売新聞3月13日朝刊[基礎からわかる政治資金規正法]は1ページを使って、歴史や内容などをまとめた優れものだった。

◆造船疑獄は政治資金規正法違反事件だった

 金丸事件などは覚えていたが、ビックリしたのは造船疑獄も政治資金規正法違反事件だったということだった。うろ覚えで、指揮権発動で佐藤栄作氏の政治生命が助かったことしか覚えていなかったため、「疑獄」という事件名からすっかり贈収賄事件だとばかり勘違いしていたが、この東京新聞の記事で教えられた。関連部分を書き写しておこう。

 <政治資金規正法は長らく「ザル法」と指摘された。1954年には日本船主協会などからの自由党への寄付5500万円が適切に処理されていないとして、佐藤栄作自由党幹事長(故人、元首相)が規正法違反で起訴されたが、法相の指揮権で逮捕を免れている。「造船疑獄」である。佐藤氏は56年の国連加盟恩赦で免訴された。

 なるほど、である。うろ覚えほど怖いものはない、と改めて思い知った。

 読売新聞の特集面ではなぜ「政治資金規正法」という名前が付けられたのか、を書いていた。

 <政治資金規正法が施行されたのは、終戦直後の混乱期の1948年。当時、小政党の乱立と離合集散によって政治腐敗が続出した反省から、議員立法で制定された。最初は「政治腐敗防止法」などの名称も検討された。「規制」ではなく「規正」となった背景には、金の流れをガラス張りにして、その適否を国民の判断に委ねるという趣旨が込められた。規正法第1条は「政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため」と定めている。>

 というくだりだ。つまり、政府が国会議員の金を規制するのは三権分立の精神に反するから議員が自らを律するために議員立法にした、権力が規制するのではなく、あくまで国民監視の下で国会議員が自主的に規律正しく金を扱うことを求める自己規制法である、ということが、この立法趣旨から分かる。

 大平正芳氏が首相時代だったかに、田中角栄元首相の金権問題に関して相当にフニャフニャしたことを言っていたが、この法の趣旨を踏まえれば、大平氏の言い分が正しかったことになる。政府が関与することではなく、あとは司直に任せる、とかの内容だったと思ったが、正確には覚えていない。

 東京新聞に戻ろう。

 <1989年にはリクルート事件で、次期首相と噂された安倍晋太郎自民党幹事長の秘書が、年間献金制限額を超える5000万円の政治献金を受け取った事件も、略式起訴で罰金20万円という結末だ。>

 <竹下登首相(故人)の生みの親で「政界のドン」と呼ばれた自民党の金丸信副総裁(故人)は副総裁になった1992年の8月、東京佐川急便からの5億円ヤミ献金受領が発覚。政治上は規正法違反から凋落の一途をたどったが、刑事事件としては略式起訴で罰金20万円だった。>

 <金丸氏は田中派から独立した竹下派(経世会)で、竹下首相誕生に尽力。最大派閥会長として宮沢政権樹立などキングメーカーとして権勢をふるった。当時47歳の小沢一郎氏を異例の若さで幹事長にしたのも金丸氏だ。>

 <因縁を感じさせるのが、金丸氏の一件での、小沢氏のかかわり。ヤミ献金発覚後の副総裁辞任会見を仕切ったのが、竹下派会長代行だった小沢氏。自民党幹部の中には「寝耳に水」と驚いた者も多かったらしいが、この会見の”失敗”は、なによりも、5億円授受の日時を特定してしまったことだ。>

 そうだったか! 忘れていた。私はてっきり、この会見を仕切ったというよりか司会をしたのは佐藤守良議員だった、と思っていた。小沢氏は表面には出てこなかった記憶があるのだが、違ったのか?

 <「野中広務―差別と権力」などの著書があるジャーナリストの魚住昭氏は話す。「特捜部は当初、金銭授受の時期を1カ月ほど見誤っていて時効が成立しているものと勘違いしていた。ところが会見の中で語られた日時であれば、まだ訴追できる。一気に事件へと進む結果となった」。党内で「あの記者会見が悪かった」との批判も生まれ、小沢氏が羽田孜元首相らとともに改革フォーラム21を結成して、自民党を割って出る伏線となった。>

 そうだったっけ? もう当事者だって忘れてしまうような昔の話だ。

 <「政治資金規正法なんてみっともない。血のにじむような内偵で贈収賄の証拠をつかみ、一気に本丸に迫るのが王道だ」。かつて、こう語る検事が多かった。「規正法は次善の策」という意識だ。規正法違反の立件後、追加捜査で贈収賄を立件しても、「贈収賄から入らない事件は二流事件」と検察内部で陰口をたたかれたものだ。その規正法が、まるで「伝家の宝刀」に生まれ変わったのは皮肉にも金丸氏の事件で「規正法の弱さ」が露見したからだ。>

 そうだった。

 <キングメーカーへの5億円ヤミ献金の罰則がたった20万円の罰金。さらに、法律家には常識の「罰金刑事件だから、本人が認めれば略式起訴」という流れも、国民の怒りを買い、東京・霞が関の検察合同庁舎にペンキがかけられる騒ぎまで起きた。これを契機に規正法が強化された。検察内部でも「くせ球」と揶揄された規正法は、こうして「直球」に”昇格”した。>

 政治資金規正法物語である。うまいもんだ、と思う。まとめ方が。

 読売新聞特集は1ページを使っているから、詳しいのだが、エッセンスはこの東京新聞の記事に尽きるのだろう。

 読売新聞で最も参考になったのは、

<政治資金規正法の主な改正と政治家が絡んだ事件>年表

 だった。肩書きは当時の肩書きだ、という注釈がある。だが、ここには造船疑獄が入っていない。読売の記者も勘違いしていて、造船疑獄は贈収賄事件と思っていたのかどうか。だから、読売年表にそれを付け加えておく。書き写す。

1948年7月 政治資金規正法を施行

1954年4月21日 佐藤栄作・自由党幹事長の政治資金規正法事件(造船疑獄)で犬養健法相が指揮権発動。

1962年5月 収支報告書に領収書などの添付を義務付け。

1976年1月 政治活動に関わる寄付を量的、質的に制限

1981年4月 政治家個人への寄付についても収支報告書を義務付け。

1989年5月 リクルート事件で宮沢喜一元蔵相ら3議員の元秘書ら4人を量的制限違反罪や収支報告書の虚偽記入罪で略式起訴。

1992年9月 東京佐川急便事件で金丸信・前自民党副総裁を5億円のヤミ献金を受け取った量的制限違反罪で略式起訴。規正法違反で国会議員の訴追は1954年の造船疑獄に関連し、当時の佐藤栄作氏の公判請求(その後、大赦で免訴)されて以来、38年ぶり。ところが、特捜部は金丸氏の聴取も行わず、罪を認める上申書提出による罰金20万円で幕を引こうとしたため国民から非難を浴びた。

1993年1月 政治資金パーティー券の購入金額に1人(1社)当たり150万円の上限を設定。寄付の量的制限違反に対する罰則を強化し、禁固刑を追加。

1993年 ゼネコン汚職が発覚

1995年1月 政党助成法が施行され、政治資金に税金が使われるようになる。企業、団体からの寄付を政党、政治資金団体、新設した資金管理団体に限定。規制法違反による公民権停止を罰金刑にも拡大。この「税金使用」が大きかった。この後、検察はそれまで「形式犯」とされた規正法違反を積極的に適用するようになる。

1998年11月 中島洋次郎衆院議員らを政党交付金の流用に絡む虚偽記入罪で起訴

2000年1月 資金管理団体に対する企業、団体からの寄付を禁止。

2000年9月 山本譲司衆院議員を秘書給与詐取に絡む虚偽記入罪で起訴。

2002年9月 鈴木宗男衆院議員を政治資金流用に絡む虚偽記入罪で起訴

2003年3月 坂井隆憲衆院議員らをヤミ献金を受け取った虚偽記入罪で起訴。国会議員では初めての規正法単独での正式起訴だった。

2003年7月 土屋義彦前埼玉県知事の長女を虚偽記入罪で起訴。

2004年9月 日本歯科医師連盟による旧橋本派への1億円ヤミ献金事件で派閥の会長代理だった村岡兼造元官房長官を収支報告書への不記載罪で在宅起訴。派閥事務総長の野中広務元自民党幹事長は起訴猶予とされた。この事件では捜査に対する不満も出た。実際に1億円を受け取った橋本龍太郎元首相(派閥会長)の責任が問われなかったからだ。規正法適用の難しさを象徴している。

2006年1月 政党と政治資金団体以外の政治団体への寄付金について年間5000万円の上限を設定。政治資金団体への寄付は原則、銀行振り込みなどで行うことを義務付け

2007年1月 5年以上継続して上場している外資の日本法人からの寄付の規制撤廃。松岡利勝農相ら複数閣僚の政治団体による事務所費問題が発覚

2008年1月 国会議員または立候補予定者の政治団体について、1円以上の領収書をすべて公開し、弁護士らの第三者による監査を義務付け(2009年から適用)

2008年4月 総務省に政治資金適正化委員会を設置

2009年3月 小沢一郎・民主党代表の公設秘書を政治資金規正法違反で逮捕

 以上が年表だ。細かい事件は忘れているし、法改正のほうはなかなかイメージがわかない。結局、難しい法律だ、ということになって、一般人の関心から離れていき、地検特捜部だけは「伝家の宝刀」視する、というおかしな捩れが生じている変な法律ではあるのだ。

 読売は[Q:政治資金とは]で技術的な解説をしており、これを読めば細かく分かるのだろうが、面倒だから、スルーする。[Q:法に不備は? 政界絡む事件起きる度に改正]では改正の歴史を詳述している。

◆1976年改正←田中内閣時代の「金権選挙」や「金脈問題」批判を受け=企業や労組からの寄付総額について上限枠(量的制限)が設けられた

◆1981年改正←首相の犯罪が問われたロッキード事件が起きて政治家への金の流れを公開する機運が出たため=国会議員など政治家個人に対し政治資金の収支報告が義務付けされた

◆1988年のリクルート事件を契機に改正

◆1992年の東京佐川急便事件を契機に改正

◆1993~94年のゼネコン汚職事件を契機に改正

 主な内容を書き写しておく。 

<今回の事件で、西松建設のダミーの政治団体が政治資金パーティーの購入限度額(150万円)を超えて購入していたことが判明したが、これは93年改正で取り入れられたものだ。

 <95年改正では政治家個人に対する寄付の受け皿は資金管理団体一つに一本化され、企業・団体献金の年間限度額も50万円に制限。その資金管理団体も2000年からは企業・団体献金を受け取ることはできなくなったが、政治家が代表を務める政党支部が新たな「受け皿」となった。資金管理団体への企業・団体献金が禁止されても、政党などを経由すれば限度なく政治資金として受け取ることが出来る。2006年の改正で、それまで無制限だった政治団体間の資金の移動を年5000万円以内に制限されたが、政党を経由して特定政治家にひも付きのカネが渡る「迂回献金」は規制対象外のままだ。>

 <2007年、「ナントカ還元水」発言で話題を呼び、5年間に約2800万円を光熱水費として資金管理団体の報告書に計上していた松岡利勝農相(当時)ら、閣僚らの相次ぐ事務所費問題も改正を促した。資金管理団体については、人件費を除く事務所費、光熱水費など経常経費の領収書添付が必要になった。>

 <さらに今年からは、国会議員や国政選挙立候補予定者に対し、1円以上のすべての支出に領収書の取得・保管を義務付け、人件費を除いて公開対象となった。対象となる政治団体には、収支報告書の提出前に、公認会計士らによる監査を義務付けた。>

 さらに、読売新聞は、

 <規正法で最も重い罰則は虚偽記入罪の禁固5年以下で、単純収賄罪の懲役5年以下と比べても、実は、微罪とはいえない。「国民の意識も変わり、政治家が1円以上領収書を公開するというのだから、証拠さえ得られれば、積極的に事件にすべきだ」(検察幹部)という認識を示している。>

 とも書いている。

 その通りだ。

 もはや、政治資金規正法は形式犯でもなく、微罪でもなくなっている。

 ただ、国民の意識がそこまでついていっていないだけだろう。これは大きい。マスメディアが報じなかったのがいけないのか、検察のPR不足なのか。何しろ、実態として、日本の政治資金規正法は相当に厳しい法律なのだ、ということが初めて分かった。

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どんなことをしてでもミサイルを撃墜しよう:麻生首相は至急準備指令を!~産経新聞3月13日朝刊[正論]森本敏氏

 産経新聞3月13日朝刊[正論]は森本敏(もりもと・さとし)拓殖大学大学院教授の<北朝鮮ミサイルの迎撃決断を>だった。この論は米国の対北朝鮮政策が揺れており、もしかすると日本を置き去りにしながら、北朝鮮の「人工衛星」は許容するかもしれない、という不信感の中、「それでも日本は撃墜せよ」と訴える憂国の論だった。

 コピペさせて頂く。

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090313/plc0903130257002-n1.htm

 <北朝鮮が1998年8月、日本に向けて発射したテポドン1ミサイルは日本海と三陸沖に分かれて着弾した。北は後に人工衛星の実験と発表したが、人工衛星とは判別されなかった。2006年7月にはテポドン2を発射したが、これは推進体の切り離しに失敗したらしく上昇途中で落下飛散した。今回また、ミサイルの発射準備中だが、北朝鮮の技術開発が進んでいるとすれば、今までより射程は大きいと予測される。>

 やはり、専門家が見てもそういうことなのか。

 <ミサイルが発射台に据えられると、型式、発射時期、発射方向などが推測できる。アラスカに向かうとなれば中国・ロシアの上空、グアムに向かうとすれば韓国の上空を飛翔する。地球の自転を考慮すれば日本を飛び越え、はるか太平洋上に着弾すると考えるのが自然である。今回も北朝鮮は人工衛星の発射実験だと言っている。それは太平洋の公海上に落ちれば国際法上の問題はなく、ミサイル防衛で撃墜される恐れも国連安保理の制裁を受ける恐れもないと考えているためかもしれない。>

 発射台にすえただけで分かるものなのか。

 <今回の発射実験はオバマ政権を牽制し北朝鮮の立場を有利にすることを狙いつつも、ミサイル開発計画を確実に進めようとする意図の現れであろう。とすれば米国の出方にかかわらず発射実験はすると考えるべきだ。空域確保のため韓国に民間機航行の安全を保証しない、と脅かしているのはその証左である。>

 北朝鮮にとってミサイル輸出はドル箱だから。

 <日米両国は今までと異なりミサイル防衛の態勢を整備しつつある。ただ日本を飛び越えて、はるか太平洋上に着弾する射程も射高も大きいミサイルには、日本海に配備するミサイル防衛搭載イージス艦では技術的に対応不可能である。日本やその周辺に飛翔するものは対応できるし、当然、撃墜するべきである。そうでないとミサイル防衛システムを配備した理由が説明つかない。>

 <現在、日米両国は情報収集を強化し、警戒監視に努めている。実際に発射された場合には、米国の早期警戒衛星から送られた情報を基に米本土の防空システムが弾道経路、着弾点などを計算し、複数のルートを経て日本に情報が伝達される。指揮系統に基づいてイージス艦やパトリオットが対応することになる。米国のミサイル防衛システムも決められた手順に従って同様の対応をするであろう。>

 <これだけのことを前提に、今後、取るべき対応と問題点を指摘したい。第1にわが国の政治決断を急ぐべきである。ミサイル防衛は自衛隊法第82条2項に基づき、防衛大臣が内閣総理大臣の承認を得て、指揮官に対処権限を委任する仕組みになっている。総理の承認がなければミサイル防衛は機能しない。この対処要領は、航空総隊司令官がイージス艦艦長やパトリオット部隊指揮官に下令し、飛翔するミサイルをわずか数分のうちに撃墜するものである。その手順は防衛省内で決められているが、これを有効にするためには空域をクリアにする必要もあるし、パトリオットミサイルの運用に必要な電波管制も必要となる。まだ総理の政治決断は下っていないが、時機を逸したのでは取り返しがつかない。>

 麻生首相は至急、命令を下すべきだ。

 <第2に日米間の運用上の調整を急ぐことである。米国はイージス艦を日本周辺に5、6隻配備し、海自も2隻の配備が可能だ。緊迫すれば、このうち最低2隻を日本海に展開させる必要がある。しかし、日米では指揮権が異なるため、司令部・部隊間の調整が不可欠になる。ミサイル防衛は日米が共通の対応をしなければ効果はない。日本だけが対応しなければ、その必要性が問題になり、米国だけが対応しなかったら日米同盟の信頼性という問題になる。>

 そういうことだ。日米で連携して撃ち落とさなければ、何の意味もない。

 <撃墜率は高いと予想されるが失敗しても、技術開発途上なので改善すればよいだけの話だ。撃墜できればミサイル防衛の有効性を証明でき、北朝鮮のみならず周辺国への抑止効果も大きい。北にミサイル発射中止を求めるより、ミサイル防衛システムで撃墜する方がよほど、抑止効果が高い。>

 そういうことか。日米共同訓練の一つのケースと考えればいいわけだ。

 <第3は、速やかな危機管理対応である。ミサイルの経路予測にかかわらず、日本周辺での落下を想定して危機管理体制をとることは国の安全保障上、当然である。だが実際にミサイルを撃墜したり、発射後に制裁措置をとると、北朝鮮指導部にとって政治的打撃になる可能性があり、北がどのような対応に出るか予想がつかない。韓国や在韓米軍に軍事対応する可能性も排除できない。速やかに、日米韓の緊密な連絡調整と危機管理体制をとる必要がある。>

 <時間的余裕はない。国内は経済、政治の混乱期にあるが、国家と国民の安全を守ることは最優先でなければならない。政治指導者の自覚を強く求める。>

 いつ、どんな事態になろうとも国家は国民の安全を守る義務がある。不測の事態に備え、準備をおさおさ怠りなくするのは当然の義務だ。

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ホワイトハウスのスピーチライターは地位が高い+オバマ人気に陰り~3月1日東京新聞朝刊、3月13日毎日新聞朝刊と中岡望氏のブログから

 マイケル・ガーソン氏が毎日新聞3月13日朝刊[世界の目]に<本性を見せ始めたオバマ政権>のタイトルで寄稿していた。英文で寄稿したものを花岡洋二記者が翻訳した、とある。肩書きは「米ワシントン・ポスト・コラムニスト」とあったのだが、誰だったかすぐには思い出せず、グーグルで検索してみたら、中岡望氏という方のブログにプロフィルが詳しく載っていた。

 まずは、中岡氏のコラムの関連部分を引用させていただく。

http://www.redcruise.com/nakaoka/?p=58

 中岡氏は日米首脳の演説内容の大きな違いとして、米国大統領の演説に名スピーチが多いのに、日本の首相演説には少ない。なぜか、と言えば米国ではスピーチライターが演説を書いているからだ、と言うのだ。

 第1期ブッシュ政権時のホワイトハウスのスピーチライターはデビッド・フラム氏というネオコン評論家で、1年強務め、辞任後に本を書き、その中で、ブッシュ政権の外交政策を象徴する言葉を自分が書いたと告白している、という。

 <締め切りが迫り、なんとか書き上げなければならないという切羽詰った状況に陥った彼に、一つの言葉が浮かんできます。それは「悪の枢軸」という言葉でした。英語では”Axis of Evils”です。書き上げた原稿は、大統領の政治顧問や国務省、国防総省のチェックを受けます。そのチェックを受けたフラムの原稿には、「悪の枢軸」という言葉は残っていました。その後、この言葉は頻繁に使われ、ブッシュ政権の外交政策を象徴する言葉になりました。>

 <「悪の枢軸」は、レーガン政権の「悪の帝国」とよく比較されます。自らもレーガンになりたいと願うブッシュ大統領にとって、「悪の枢軸」という言葉の響きは心地よいものだったかもしれません。レーガン政権の「悪の帝国」も、スピーチライターのマイケル・ジョーンズが書いたものです。ちなみに、アメリカ人に聞くと「枢軸」という言葉の響きは「帝国」という言葉の響きよりも厳しいものがあるそうです。ブッシュ政権は「悪の枢軸」として、イラク、北朝鮮、イランを上げています。これにリビアなどを加えて「悪者国家」あるいは「ならず者国家」と呼ばれています。いずれもテロ支援国であると見なされています。>

 知らなかった。面白い話である。あれだけ日本のメディアが多用した言葉はこの人たちが生み出していたというのだ。

 そして、ここからがマイケル・ガーソン氏に関する記述だ。

 <ブッシュ政権の首席スピーチライターは、マイケル・ガーソンです。彼は原理主義者といわれエバンジェリカル(福音派)のクリスチャンで、神学の研究者でもあります。そのため、ブッシュ大統領の演説の中に頻繁に聖書の言葉が引用されるのは、彼の影響があるためです。ブッシュ大統領は、彼の書く演説のスタイルとトーンを非常に気に入っていると言われます。ガーソンはブッシュ大統領の「コンパッショネート・コンサーバティズム(思いやりある保守主義)」の考えに強い共感を抱いていました。>

 ここまで詳しい説明を読んだ記憶がない。新聞は当時、こういうことを書いていたのだろうか? 書いていて、私が読み飛ばしただけかもしれないが、ブログのいいところは新聞と違って、後まで残り、今になって2005年の書き込みが読めることだ。

 <ホワイトハウスのスピーチライター室には常時5~6名のスタッフが働いています。第1期ブッシュ政権の演説を書いていたのがジョン・マッコーネルとマシュー・スカリーで、ブッシュ大統領はこの3人を”三位一体(Triune)”というニックネームを付けていたそうです。この3人は2000年の大統領選挙の時から、そのポストにいます。スカリーは昨年の夏に辞任しています。が、今回、ガーソンの辞任が決まりました。これによって、ブッシュ大統領の演説の内容のニュアンスが変わってくるかもしれません。>

 このブログ記事は2005年1月9日のものだから、リアルタイムで辞任の動きを書いている。

 <ガーソンのホワイトハウスにおける地位は、極めて重要なものでした。彼は、ホワイトハウスのコミュニケーション・ディレクターのダン・バーレットとオフィスの隣にあります。バーネットのオフィスはウエストウイングといわれる建物の2階の角にあります。そのオフィルを出たところは、レセプション・アリアとなっています。1階の南側の角にオバール・オフィス(大統領執務室)があり、重要なポストにある人物のオフィスは大統領執務室に近いところにあります。一番物理的に近い所にオフィスを持っているのは、報道担当補佐官のスコット・マクレランです。>

 <余談ですが、ホワイトハウスではスタッフの権力抗争が繰り広げられています。スタッフの序列を決めるのが、大統領との距離にあります。アポなしで大統領に会える人物ほど、ホワイトハウス内での序列は上なのです。たとえば、パウエル国務長官はアポなしでブッシュ大統領に会うことはできませんでした。だが、次期国務長官に使命されているライス補佐官はアポなしで大統領に会うことができる数少ないスタッフであるといわれています。ライスのオフィスの隣がチェイニー副大統領のオフィスです。ライスのオフィスは北側の角にあり、エレベーターの隣にあるチェイニー副大統領よりも良い場所にあるといえるかもしれません。ちなみに、首席スピーチライターを除くスピーチライターは、ホワイトハウスとは別の建物であるアイゼンハワー・エグゼクティブ・オフィス・ビルディングにあるオフィスにいます。

 相当に地位の高い人物だった、ということか。それにしても詳しい。大学で教えてもらった学生は得をしたな、という感じだ。こういう先生に教われば、躍動する米国政治が映像のように頭の中に刻み込まれるだろう。

 <ガーソンは、ブッシュ大統領の最も近い人物の一人であるマッコーネルとオフィスを共有しているのですから、影響力が極めて強い人物の一人でしょう。ちなみに大統領に最も近いスタッフとしては首席補佐官のアンドリュー・カードと、政治顧問のカール・ローブがいますが、マッコーネルもその中の一人と見られています。>

 こういうスタッフに関する情報を全く知らなかったのは不明のいたすところだ。オバマ政権のスタッフ情報を今後、集めることにしよう。

 <ガーソンの辞任で、今後、ブッシュ大統領の演説のトーンが変わってくるかもしれません。後任に選ばれたのは「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙の社説ページを書いてる編集者ウィリアム・マックガーンです。マックガーンは以前にもスピーチライターの職に就くようにブッシュ政権から要請されたことがありましたが、その時は断っています。今後は、マッコーネルとマックガーンが中心になって大統領の演説を書いていくことになります。ガーソンは昇進し、ホワイトハウスに残るのではないかといわれています。>

 <実は、ホワイトハウスのスピーチライターは、ある意味では、非常に魅力的なポストなのです。>

 <先に触れたフラムは、現在はネオコンの週刊誌「スタンダード・ウィークリー」などに寄稿し、評論家として高い評価を得ています。かつてのスピーチライターの中には、ネオコンに対抗する正統派保守主義者を自認するパット・ブキャナンは、ニクソン大統領のスピーチライターでした。「ニューヨーク・タイムズ」紙の名コラムニストのウィリアム・サファヤもホワイトハウスのスピーチライターでした。マーチン・カプランもフォード大統領のスピーチライターでした。ケネディ大統領のスピーチライターは、セオドーア・ソレンセンでした。レーガン大統領のスピーチライターはペギー・ヌーサンでした。ニューヨークの日本協会のジャパン・ソサエティ・フェローとして滞日経験もある知日派のジェームズ・ファローズもスピーチライターで、現在、雑誌「US News & World News」の出版者になっています。いずれもアメリカの知性を代表する一級の人物です。>

 <スピーチライター経験者はジャーナリストや評論家、学者として、その後も活躍しています。なお、ホワイトハウスにスピーチライターがいるように、各省の長官もそれぞれ独自のスピーチライターを抱えています。

 <日本では首相演説は各省のチェックを受け、最終的にまったく個性がなくなるのが普通です。首相個人の肉声や思想はまったく反映されません。味気ない役所の文章以上のものではありません。時々、首相が加筆したことが大きな話題になることから察すれば、状況は十分に想像できるでしょう。>

 <アメリカでも演説の内容は各省の責任者のチェックは受けますが、日本よりもはるかに大統領の思想や意識が反映したものになっています。アメリカ社会では演説を重要視する伝統があります。それは、ある意味では、言葉を大切にすることにも通じるのかもしれません。そんなアメリカ社会、ホワイトハウスの背景を知って大統領演説を聞くと、これから違った響きがあるかもしれません。大統領は年明けに議会に対して「一般教書演説(State of Union Speech)」をします。1年間の施政方針演説で、この演説を詳細に読み取ることで、政府の政策の方向を理解することができます。>

 思わぬ勉強をさせていただいた。2005年段階でこのように緻密なコラムをブログに書いている方がいるとは知らなかった。オバマ大統領の就任演説などを読む際の参考にすべきだろう。

 中岡望(なかおか・のぞむ)氏は1947年広島県生まれ。国際基督教大卒。東京銀行を経て73年東洋経済新報社に入社、編集委員などを務め2002年退社。81~82年フルブライト・ジャーナリスト、ハーバード大学ケネディ政治大学院のフェロー。93年、ハワイの大学院大学イースト・ウエスト・センターのジェファーソン・フェロー。2002~03年ワシントン大学(セントルイス)ビジティングスカラー。現在はフリージャーナリスト、様々なメディアに寄稿、本の執筆、講演活動を展開。また、国際基督教大学(ICU)、日本女子大学、武蔵大学の非常勤講師も務める。ICUでは「アメリカ文化研究」「現代アメリカ経済論」など学部、大学院で5コースを担当。日本女子大では「経済学概論」「比較社会論」を担当。武蔵大学では「アジア経済論」などを担当。著書に「アメリカ保守革命」(中公新書ラクレ)、訳書に「恐慌の罠―なぜ政策を間違えつづけるのか」(ポール・クルーグマン著)がある、とあった。

ブログを早速、「お気に入り」に入れさせていただいた。

◆毎日新聞は「ブッシュ前大統領のスピーチライター」と入れるべきだった

 さて、毎日新聞のガーソン氏のコラムである。

 オバマ政権のコテンパン批判なので、一体この人は何者なのか、と思ってブッシュ政権のスピーチライターだったら仕方ないな、と今思ったところだったのだが、彼が批判しているのは高額所得者への累進課税であり、株暴落で被害を被った富裕層からまたまたカネを毟り取るのか、という議論だ。医療保険改革も批判しているし、オバマ政権の莫大な公共投資による経済浮揚策にも「借金をだれが返すのか」と批判する。

 読んでいて、随分ととんでもないことを言う奴がワシントン・ポストにはいるんだなぁ、と思ったが、ワシントン・ポストは本当にこんな雑駁な論を掲載しているのだろうか?

 毎日新聞もせめて、ガーソン氏がブッシュ前政権のスピーチライターだったことを明記しておいてほしかった。そうすれば、何割か割り引いて読めるのだが、まともに読んで損をした感じだ。

◆東京新聞のジェラルド・カーティス氏の寄稿

 少し古くなるが、東京新聞3月1日(日)朝刊[時代を読む]に米コロンビア大学教授で東京新聞客員のジェラルド・カーティス氏が<オバマ氏への期待の危うさ>のタイトルで寄稿していた。

 <オバマ米大統領は就任後1カ月の間に総額7800億㌦(約75兆6000億円)に上る景気対策法を成立させ、銀行の不良資産処理への救済策を発表し、世帯の住宅差し押さえを回避するための支援策をまとめた。>

 の書き出しである。

 <議会の賛同を得るため、また、世界大恐慌以来とされる経済危機の悪化を防ぐには莫大な財政赤字もやむを得ないと国民に理解してもらうために、全力を尽くして説得に当たったのだった。>

 その通りだった。オバマ演説から、理想論が少なくなり、現実対処への苦しみを耐え忍ぼう、という論調が増えた時期だった。

 <だが、今後も高い国民の支持を得続けられるかどうかは分からない。支持率はすでに下落傾向にある。米CNNテレビが2月中旬に実施した調査では、オバマ大統領への支持率は67%だった。その11日前に行われた調査の76%に比べ低下している。>

 そうなのだ。「100日の蜜月」は遠い過去の話のようなのだ。

 <オバマ大統領はブッシュ時代に生じた問題の処理に当たっているが、今後半年ほどの間に、今はブッシュ大統領の問題と思われているものが、オバマ大統領自身の問題とされるようになるだろう。要するに、年末までに経済が回復をみせないなら、オバマ大統領に対する批判は強まっていくだろう。>

 タイム・リミットは年末なのか? そして、それは選挙民国民の忍耐の許容限度なのか?

 <多くの経済専門家は、議会が可決した景気対策法案は十分といえず、いずれオバマ大統領は追加支出を求めざるを得ないだろうとみている。だが、議会がこれに同調しない可能性は強い。>

 <経済危機に際して民主党と共和党が超党派の精神で協力するというオバマ大統領の希望は、実を結ばなかった。下院で共和党議員は一人も景気対策法に賛成せず、上院は3人の共和党議員が賛成しただけだった。次に採決が行われるとき、共和党と一緒に民主と運保守的な議員が反対に回れば、オバマ大統領の望む経済政策は取れなくなる。>

 議会という強い権力の存在は日本人が理解しがたいものでもある。

 <いずれにせよ、経済が好転しないなら、経済危機は政治危機を招く。ある意味で、米国はますます1990年代の日本に似てくる。違いは、米国が「失われた10年」になれば、それは米国だけでなく、世界にとっても「失われた10年」になるということだ。>

 カーティス氏の言う通りだろう。

 <イラク戦争での莫大な支出は、徐々に戦闘部隊が削減されることでかなりの程度、減少できるだろう。だが、この支出削減はアフガニスタンへの増派決定によって相殺される恐れがある。>

 <オバマ大統領はアフガンに駐留する米軍部隊3万6000人に加え、1万7000人の増派を命令し、アフガン・パキスタン国境のパキスタン側にいるタリバン勢力への空爆を拡大した。アフガン政策がうまくいかなけらば、オバマ大統領は米国民の批判に直面することになるだろう。>

 ここまで腹を括ったアフガン増派なのに、小沢一郎氏は「失敗することは間違いない」と発言した。その後の第7艦隊発言にしても、最近の小沢発言はオバマ米政権の「虎の尾」を踏む発言が目立っていた。謀略史観を取りたくはないが、東京地検特捜部が小沢氏の秘書を政治資金規正法違反の中の今まで適用したことのない手法で摘発した裏には米国を慮った日本のエスタブリッシュメント階級の強い意思があったのかもしれない。

 <オバマ大統領には決断力があり、閣僚や補佐官に有能な人材を集め、国民に希望を抱かせ、説得する能力がある。だが、統治を難しくする大統領と議会のチェック・アンド・バランスという政治システムの中にいる。また、最悪の経済状況と、一つは激化し一つは沈静化の兆候をみせる二つの戦争を戦う米国とに取り組まなければならない。>

 <オバマ大統領が成功するか否かには、全世界が利害関係を有している。オバマ氏はまれに見る魅力的な政治家であり、偉大な大統領になれる素質を持っていると思う。だが万一、オバマ大統領が多くの人々の期待に応えないとなれば、米国だけでなく、全世界が大きな代価を払うことになる。>

 以上である。これが3月1日の朝刊だから、カーティス氏は2月下旬に原稿を書いたのだろう。その後の変化も悪化一方である。

◆米エコノミスト49人調査で「オバマ、ガイトナーは落第」~毎日新聞

 ここでまた毎日新聞3月13日朝刊に戻る。経済面のハコ記事<オバマ大統領とガイトナー長官落第/エコノミスト49人/米紙調査>である。ニューヨーク発の時事通信の原稿で、米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)が11日、景気回復に向けた米政府の取り組みについてエコノミストを対象に同紙が実施した最新調査で、オバマ大統領とガイトナー財務長官が「落第点」を取ったと報じた、とあった。

 記事によると、調査対象のエコノミスト49人中、過半数がオバマ政権の経済政策に不満を表明。大統領の「成績」は100点満点で平均59点財務長官は51点という厳しい評価が下された、とあった。バーナンキFRB議長は71点だった。

 <エコノミストたちは金融機関救済策の遅れを批判している。ブッシュ政権時の昨年12月調査では、オバマ政権の経済チームの方が優れているの回答が4分の3を占めたが、同紙は今回の結果について、見解の転換を示すものだとしている。>

 とあった。短い記事だが、ここにある「見解の転換」が重要なキーワードだろう。

 毎日新聞は追い打ちをかけるように同じ13日朝刊新経面の竹森俊平・慶応大学教授のインタビューで<米当局は判断誤った>を掲載している。これはリーマン・ブラザーズを破綻させた当時のポールソン財務長官の失敗を問題にし、「破綻させるべきではなかった」と批判しているkら、ブッシュ批判でもあるのだが、問題はオバマ経済チームがこのポールソン人脈とほぼ重なる人々を経済チームに抱え込んでいる、というか、経済チームの主流にしていることだ。

 先ほどの[世界の目]にしろ、毎日新聞は早くも「反オバマ」姿勢に切り替えたのだろうか?

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2009年3月12日 (木)

北朝鮮のミサイル発射4月4-8日午後2-7時:朝日新聞の北朝鮮寄りが垣間見えた~各紙3月12日夕刊から

 北朝鮮の狡知に長けた外交戦術は学ぶべきところが多い。今度は国際機関を利用する考えだ。どこまでずるい国家なのだろうか。

 日経新聞3月12日夕刊によると、韓国の北朝鮮関係筋は12日、日本経済新聞に「北朝鮮が国際機関に4月4~8日の午後2時~7時に人工衛星を発射すると通報したもようだ」と明らかにした、という。朝鮮通信(東京)によると、北朝鮮の朝鮮中央通信も同日「北朝鮮が実験通信衛星を運搬ロケットで打ち上げる準備」の一環として、国際民間航空機関(ICAO)国際海事機関(IMO)などに航空機や船舶の航行安全に必要な資料を通報したと発表した、と書いていた。記事は、

 <朝鮮中央通信によると、北朝鮮の朝鮮宇宙空間技術委員会が通信衛星「光明星2号」運搬ロケット「銀河2号」で打ち上げると通報した。北朝鮮は4月15日の故金日成主席誕生日(太陽節)などを控える。発射時期には国威発揚を図る思惑もあると見られる。>

 と、国威発揚目的という推測を書いたうえで、

 <日米韓などは「国連安保理決議違反」と警告しており、今回の国際機関への通報には「正当性」を主張する狙いもありそうだ。韓国の玄仁沢統一相は12日の国会答弁で「北朝鮮が発射準備をしているのは弾道ミサイルだ」と指摘した。

 と、韓国統一相の「偽装工作には影響されない」という力強い発言を紹介していた。

 東京新聞3月12日夕刊も、

 <北朝鮮は、金総書記の第一期体制が発足した1998年9月5日の最高人民会議第1回会議の5日前にテポドン1号を発射。今回も国威発揚を目的に長距離弾道ミサイルの発射に踏み切る可能性が高いと指摘されている。>

 と同様の見方を書いていた。各紙が1面で派手に扱ったのに、2面3段で地味に扱ったのが読売新聞だった。基本的に内容は同じだが、朝鮮中央通信が打ち上げ期日には触れていなかったこと、北朝鮮が国際機関に事前通報をしたのは初めてであることなどを書き、

 <国際社会からの非難をかわすことを狙った措置だ。日本や米国、韓国は「人工衛星打ち上げ」をミサイル発射を正当化するための名目に過ぎないとして、衛星打ち上げでもミサイル発射でも2006年の国連安保理決議1718号に違反するとの立場を明らかにしているため、北朝鮮は日米韓の主張を封じ込める思惑とみられる。>

 と、同じような書き方だ。毎日新聞

 <「長距離弾道ミサイルの発射準備を進めている」との批判をかわすため、国際的に定められた衛星打ち上げの手続きを取ったものとみられる。>

 と、こちらも同じような表現だが、心持ち腰が引け始めたか、というような表現だった。日米韓の見方を書かないから、そういう印象を与えるのだ。

◆クリントン米国務長官がミサイル発射で安保理制裁示唆~毎日新聞夕刊

 ただ、毎日新聞3月12日夕刊が特筆すべきなのは、2面(総合面)トップで<米国務長官/北朝鮮制裁も検討/ミサイル発射なら「幅広い対処」>でクリントン米国務長官の記者会見発言を大きく扱ったことだ。記事はワシントン支局の草野和彦特派員によるもの。内容は次のようなものだった。

 <クリントン米国務長官は11日、北朝鮮が弾道ミサイルを発射した場合、「国連安保理(決議)を含め幅広い対処方法がある」と述べ、制裁も検討するとの考えを示した。一方で「朝鮮半島の非核化が最重要」と強調し、発射の有無にかかわらず、6カ国協議の早期再開を目指す方針を明らかにした。長官は中国外相との会談後に国務省で会見し、北朝鮮の「人工衛星」発射予告に関し、「目的が何であれ、ミサイル発射は国連決議違反」と発言。発射は「非常に挑発的な行為だ」と北朝鮮をけん制した。ただ長官は「大事なのは、北朝鮮に非核化の義務があること」とも述べ、これまでの6カ国協議の合意の重要性を指摘。最大の目的である北朝鮮非核化に向け、ミサイル発射の場合でも「6カ国協議再開に努力する」と言明した。また長官は、ボスワース北朝鮮政策担当特別代表が北東アジア歴訪中に「北朝鮮との対話を即座に開始する準備があった」と発言。高官協議による事態打開の機会をうかがっていたことを明かした。>

 これは硬軟両様の使い分けをしながら、北朝鮮に対話を呼びかけたメッセージだろう。オバマの米国はアフガニスタンに全力を挙げようとしており、北朝鮮まで手が回らない。以前はイラクで手一杯だったし、今度はアフガン。米国はいつも北朝鮮には手が回らないのだ。

 ということは、逆に言えば、米国は朝鮮半島の安定を第一に考えているのではないか、ということになる。日本の国益についてどこまで配慮するか、は日本政府の対米交渉力によるのだろう。

 特にクリントン氏が訪朝の意向を示唆したことの意味合いは大きい。ボズワース氏という個人名を出しているものの、最終的にはクリントン氏が訪朝することを視野に入れていることは確かだろう。ミサイルを打ち上げずに、対話の窓口に復帰すれば、最終的には私の訪朝もありうるよ、とも受け取れるような「飴」も差し出したのだ。そして、「鞭」は国連安保理決議である。

 このコントラストは大きい。ダイナミックで分かりやすい。さあ、姑息な方法を思いついて得意になっている北朝鮮はこのクリントン発言にどう対応するか?

◆朝日新聞が馬脚をあらわし始めている

 面白かったのは朝日新聞の夕刊だ。1面本記<北朝鮮、「衛星」発射通告/航空・船の国際機関に>はソウルの箱田哲也特派員だ。

 <北朝鮮は人工衛星「光明星2号」を運ぶロケット「銀河2号」を打ち上げるための準備として、国際民間航空機関(ICAO)や国際海事機関(IMO)など国際機構に対し、航空機と船舶の航行安全に必要な資料を通知した。朝鮮中央通信が12日伝えた。>

 これが前文である。北朝鮮の言い分をそのまま掲載してあげている、というところが、いかにも浅井基文先生のお好きな朝日新聞らしい。

 <北朝鮮は咸鏡北道で長距離弾道ミサイル「テポドン2」とみられるミサイルの発射準備を進めているが、あくまで人工衛星の打ち上げと主張しており、これらの通知も人工衛星であることを強調する狙いとみられる。>

 ミサイルという断定を朝日新聞としてはしたくない、という意図が見え見えの書き方だ。文章が少し悪文になろうとも、構わず自社での断定を避ける書き方だ。

 <韓国統一省によると、北朝鮮は1998年と2006年に長距離弾道ミサイルの発射実験をしたが、国際機構への事前通知は今回が初めて。>

 人工衛星としたり、韓国統一省を使ってミサイルと言ってみたり、大変ですね。

 <同通信は「宇宙探査・利用の国家活動原則に関する条約と、宇宙空間に打ち上げた物体の登録に関する協約に加入した」と報道。これらの加入は「平和な宇宙の科学研究と衛星発射分野で国際的な信頼を増進させ、協力を強化することになろう」としている。北朝鮮の朝鮮宇宙空間技術委員会の報道官は2月24日付の談話で、銀河2号の打ち上げ準備を進めていることを初めて認めた。韓国政府によると、その後も北朝鮮は発射に向けた作業を続けている。>

 あくまで北朝鮮の言う人工衛星だ、と朝日新聞は思っているかのようだ。この記事はこれで全部。いかに北朝鮮当局の言い分をそのまま紹介しようか、と腐心している様が浮かび上がる。

 しかし、日米韓にしてみれば、許せない話で、いかに国際機関に言おうが、国連安保理決議が優先するのに、朝日新聞はそういう話は一切書かない。だから「北朝鮮新聞」などと陰口を叩かれるのだろう、と思うのだ。朝日新聞が面白かったのは、クリントン長官の発言の見出しが毎日新聞と全く逆になっていたこと。

 <ミサイル発射でも6者協議継続明言>である。

 毎日新聞の記事でも、そうは読めるが、硬軟両様の構えであることは確かなのだ。それを、朝日新聞はあえて「軟」だけをクローズアップしようとする。あたかも「アメリカも柔軟になったのだから、日本も柔軟になれば」と囁いているようで気味が悪い。

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東京大空襲の虐殺犯ルメイを称え、被害者の日本人を無視する日本政府~3月12日産経新聞[正論]

 産経新聞3月12日朝刊[正論]は藤岡信勝・拓殖大学教授の<「東京大空襲」が意味するもの>だった。知らない話が相当に出てきているので、コピペしておく。

 <アメリカが日本の人口密集地に焼弾を使用することを考え始めたのは「パールハーバー」よりもはるか前のことである。日米戦を想定して、「木と紙」でできている日本の家屋を攻撃するには、焼夷弾のような火炎兵器が最も効果的だと分析した。>

 そうだったのか。知らなかった。

 <アメリカが日本の空襲用に開発した焼夷弾は「M69油脂焼夷弾」とよばれ、本体はゼリー状のガソリンである。開発責任者のR・ラッセルはスタンダード石油会社の副社長だった。焼夷弾1本の形状は、野球のバット半分程度の鋼鉄製の筒である。これを38発、鉄バンドで束ねたものを上空から投下すると、バンドが空中ではずれ、広い範囲にバラバラと落下し、家屋を燃やし、あたりを火の海にする。アメリカはテキサスの砂漠にわざわざ日本式の家屋を建てて実験し、効果が抜群であることを確かめていた。>

 こいつらのやることは徹底しているなあ、と驚く。

 <南太平洋のサイパン島を基地として、アメリカは昭和19年11月からB29による日本本土への空襲を開始していた。しかし、それは①飛行機工場などの軍需工場を目標に②日中③高度①1万㍍の上空から爆弾を投下するもので、命中率は平均5%程度にすぎなかった。同年12月29日、ホワイトハウスでルーズベルト大統領、マーシャル参謀総長らを含む秘密の作戦会議が開かれ、日本本土爆撃作戦を再検討した。そこで決まったのは①民間人を直接の対象とし②夜間③低空飛行で焼夷弾を投下する、戦時国際法違反の「無差別爆撃」だった。>

 戦時国際法違反を認識しながら、ルーズベルトが決断していた。ここで小見出し≪最大の戦争犯罪のひとつ≫が入っている。

 <この作戦変更に伴い、マリアナ3島の司令官のクビがすげ替えられた。民間人の家屋を焼く焼夷弾攻撃に反対していたハンセル少将にかわって、ドイツ・ハンブルクの絨毯爆撃をやり遂げたカーチス・ルメイ少将が任命された。ルメイは江戸時代の大火の50%が3月上旬に集中していることを調べ上げた。春先の強風が吹くこの時期が作戦には最も効果的だと分かった。3月10日は日露戦争の奉天会戦で日本が勝利した陸軍記念日だった。>

 ルメイはハンブルクでも虐殺をしてきた筋金入りの「悪」だった。

 <前日、マリアナ諸島を飛び立った325機のB29は、少量に抑えた燃料と満載の焼夷弾を抱えて東京を目指した。作戦計画に従ってまず、正方形と2本の対角線のライン上に焼夷弾を落として火の壁をつくり、住民の退路を断った上で、1平方㍍当たり3発、総重量2700㌧の焼夷弾を、雨あられと無辜の市民の頭上に降り注いだのである。>

 ここまで計算して虐殺をしている。虐殺を楽しんだとしか思えない。

 <ルメイは戦後、「もし、アメリカが戦争に負けていたら、私は間違いなく戦争犯罪人として裁かれていただろう。幸い、私は勝者の方に属していた」と述べている。一夜にして10万の市民を焼き殺した「東京大空襲」は、第二次世界大戦の最大の戦争犯罪の一つであろう。>

 その通りだ。最大の戦争犯罪だ。

 <東京都江東区で家具店を営む滝保清さん(現在80歳)は、64年前の3月10日、空襲による業火の中を逃げ惑っていた。当時16歳の中学生で、早くに父を亡くした保清少年は、数日前に運悪く足にけがをして歩けない祖父を背中に背負い、安全な方角を目指した。だが、火の勢いは激しくなる一方で、やがて祖父の背中のドテラが燃えだし、煙と熱風の渦に巻き込まれた。目の前で燃えている祖父を残し、「後ろ髪を引かれる思いで、生きたいという本能と窒息の苦しさから逃れたい一心で」(私家版冊子『赤い吹雪』より)逃げ出さざるを得なかった。>

 庶民を苦しめたルメイの奴め。ここでまた、≪国立慰霊碑の建立を急げ≫の小見出しが入る。

 <長い年月がたち、つらい地獄の体験をやっと他人に語る心境になった滝さんは、平成3年、東京大空襲の犠牲者を追悼する慰霊碑の建立を求める署名運動を地元の仲間とともに始めた。本業をそっちのけで奔走し、3月10日の犠牲者の数を超える11万5000人の署名を集めきった。願いは国会に通じ、平成17年11月1日、衆議院本会議で国立慰霊碑建立の請願が採択された。昨年12月、自民党の国会議員からなる「戦災犠牲者の国立慰霊碑建立を目指す議員の会」(下村博文会長)が設立された。>

 国会議員も動いたのか。

 <しかし、所管の総務省は、兵庫県姫路市に昭和31年に民間の寄付で建立した「全国戦災都市空襲死没者慰霊塔」があり、国が新たに慰霊碑をつくる予定はないという。滝さんは、個人や民間や自治体ではなく国が慰霊碑を建ててほしいと切望する。空襲犠牲者は、東京都のために死んだのではなく、国のために命をささげた点で戦死者と同じではないか、と言う。滝さんたちが署名運動を始めてからすでに18年の歳月がたつ。残された時間は少ない。政治と行政は、一刻も早く決断すべきである。>

 以上が全文である。どういうことになっているのか? 日本政府は戦後復興に頑張った、とかいう理由でルメイに勲章をやったという。国は日本国民のための「国」ではなく、アメリカのための「国」なのか? 総務省の担当はどこなのか? 昔の厚生省援護局的な役所は今、どこなのか? 藤岡氏の論文だけでは分からないことが多すぎるが、いまだにアメリカに遠慮しながら、日本国民を切り捨て続ける日本政府というのは一体どういう組織なのだろうか?

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金賢姫氏に心無い質問をする韓国人記者の魂胆~産経新聞3月12日朝刊から

 産経新聞3月12日朝刊対社面に11日に韓国・釜山の釜山コンベンションセンターで行われた拉致被害者、田口八重子さん=拉致当時(22)=から日本語教育を受けた大韓航空機爆破事件の実行犯、金賢姫元北朝鮮工作員(47)、田口さんの兄の飯塚繁雄さん(70)、長男の耕一郎さん(32)の会見詳報が掲載されていた。釜山市から水沼啓子特派員が送稿してきた記事だ、とあった。ネットにもアップされていた。コピペしておこう。

http://sankei.jp.msn.com/world/korea/090311/kor0903111439010-n1.htm

◆記者会見詳報~産経新聞から

▽繁雄さん きょうは本当に劇的な感激の日を迎えることができて非常にうれしく思った。お会いしたいという要望をかなえてくれた韓国政府、日本政府、関係された方の(協力の)たまものだと思っている。まず金賢姫さんには私の妹、田口八重子の存在をはっきり証言していただいたことに非常に感謝している。今後もこの日をきっっかけに、それぞれの幸せに向けての進展があればと考えている。

▽耕一郎さん 今回の面会にあたり、多大なご協力とご理解をいただいた韓国政府の皆さまに感謝したいと思う。また日本政府にもご尽力いただいた。5年越しの面会がかなって、皆さまに感謝しても、し尽くせない。金さんが私の母である田口八重子さんに関して、本当にはっきりと生きていますと証言いただき、われわれの救出活動に新たな希望がもてた。金さんから温かい言葉で、「私が韓国のお母さんになりますよ」と言っていただき、うれしい気持ちでいっぱいだ。

▽金元工作員 難しい状況の中で、人道的立場からご家族に会えるようにしてくれたことに感謝の言葉を申し上げる。日本語を教えてくれた田口八重子さんのご家族に会えるということで、数日間あまり眠れなかった。うれしくて、感激して、田口さんのことを思いだしながら眠れなかった。耕一郎さんはお母さんに似て、ハンサムだ。田口さんが息子に会ったことを知ったら、どれだけ喜んだだろう。この場に田口さんがいたら、どんなに良かっただろう。

 ――(金元工作員へ)なぜこのタイミングで会おうと思ったのか。耕一郎さんの手紙に返信しなかったのはなぜか?

▽金元工作員 耕一郎さんが送ったという手紙だが、(マスコミから逃れるため)避難生活をしていたので受け取れなかった。そのような環境の中で、日本の録画放送を見て、田口さんの息子に必ず会いたいと考えていた。両国政府の協力で会えたことをうれしく思う。

 ――(金元工作員へ)1997年の結婚以降、公の場に出なくなった。政権が変わり、国家情報院が本人をそっとしておかなかったと主張したが、その意図は?

▽金元工作員 1997年に結婚をし、社会とは距離を置いて、亡くなられた(大韓機爆破事件の)遺族の方々の痛みを感じながら、静かに過ごそうと思っていた。盧武鉉政権で皆さんがご存じの通りのことがあった。現政権が、前政権であったことを調べているというので、その結果を待っている。

 ――(金元工作員へ) 田口さんが1977年から78年にかけて拉致された韓国人4人のうち1人と結婚したという情報があるが?

▽金元工作員 1987年にマカオから戻り、1月から10月まで招待所生活をしていてそこで聞いた話では、田口さんがどこに連れて行かれたかは特定できない。死亡したとは思えないので、どこかにいると考えている。86年代にほかの拉致者もそうだが、結婚させたという話があった。田口さんの結婚相手については聞いたことがない。

 ――(金元工作員へ) 大韓航空機爆破事件の遺族が面会を要請しているが、応じる気はあるか?

▽金元工作員 1997年12月、本を出版した印税を渡しながら、遺族と会ったことがある。お互いに泣き、幸せに暮らそうと約束した。前政権において(金賢姫元工作員がニセ者という)疑惑が提示された。大韓航空機爆破事件は北の仕業という証拠がないということで、一部の遺族がそう話している。はっきりと言いたいことは、テロであり、私がニセ者ではないということを申し上げたい。遺族が、北朝鮮のテロであるということを認めるなら会いたい。

 ――(金元工作員へ)横田めぐみさんについては?

▽金元工作員 めぐみさんは同僚の工作員、金淑姫に日本語を教えていた。1987年、海外実習が終わってから、めぐみさんが韓国の人と結婚し、娘を産んだと聞いた。その後、精神的な病気になり、入院したがそれほど深刻ではなかったということも聞いた。横田めぐみさんが死亡したというのは信じられない。北朝鮮が(提出した)さまざま書類があるが、確認してから今後話したいと思う。

 ――拉致問題解決するための手段はあるか? 今回の面談について?

▽繁雄さん 今回の面談については、日韓両国の共同の協力の下で(拉致問題解決を進める)いいきっかけになったのではないか。日本の被害者についての北朝鮮からの報告書はすべて捏造された書類だ。全員が生きているということを信じて、これからも活動していく。とくに韓国政府は、北朝鮮の情報を持っているのではないかと思っている。(問題解決のため)より具体化していただきたいという希望を持っている。

▽金元工作員 日本人の拉致被害については日本政府が長い間携わって、20年以上になった。活動をみて感じたことは、北朝鮮のプライドを守ってあげながら、心を動かすことが大事だ。そのような点を考えながら、帰国させるように努力すれば、おそらく奇跡は起きる。5人が帰国した前例がある。北朝鮮では死んだ人が生きていたりするから、奇跡が起きる。昨年、北朝鮮はテロ支援国指定を解除された。北朝鮮はそれを歓迎すると言った。テロ支援国家指定も解除されたのだから、死亡したとだけ主張せずに、故郷に戻ってこられるように、最小限、家族に会えるようにすることが大切だ。それが北朝鮮にも役に立つことだと思う。

 以上が記者会見詳報である。

 3月12日朝刊各紙もすべて目を通して見たが、やはり、詳報を見ないと判断できないなぁ、というのが率直な印象だ。

 というのも、金元死刑囚が韓国の遺族に会うかどうか、と聞かれて、「大韓航空機爆破事件が北朝鮮によるテロだと認めたら会う」と言っている部分など、日本の新聞では掲載されていないからだ。

 金賢姫氏が言うように、金氏は著書の印税などを被害者たちに寄付しており、遺族の一部とは会っている。だが、金大中、盧武鉉両政権時代、北朝鮮の金正日総書記の主体思想を信じる旧学生運動参加者らが世論をリードし、反日親北のムードを盛り上げると同時に、北朝鮮の最大の傷である1987年の大韓航空機事件を韓国政権の陰謀だ、とデタラメな主張をし始め、金賢姫氏に対しても「お前は偽者だ」という心ない中傷が相次ぎ、驚いたことに盧武鉉政権では、その中傷を真に受けた形で大韓航空機事件の原因を再度究明する、というバカバカしい茶番まで行っていた。

 このため、金賢姫氏は身の危険を感じて、両政権下では身柄を守るべき国家機関も信用できず、何度も引越しを繰り返しながら、何とか生命の安全を保っていたわけだ。

 こういう微妙なニュアンスが日本の新聞記事では捨象されてしまう。

 では韓国の新聞に期待できるか、と言えば、そうではないのが現状なのだ。

◆無礼で思い込みの強い韓国人記者たち

 この点は水沼啓子特派員が産経新聞3月12日朝刊国際面<金元工作員「私は偽者ではない」強く反論/韓国メディアに不快感>で詳しくリポートしていた。

 <金賢姫元工作員が記者会見で韓国メディアから受けた質問に「私は偽者ではない」と直接反論する場面があった。十数年ぶりに公の場に登場した金元工作員は、前政権下で「金賢姫は偽者」と決めつけた韓国メディアに対する不快感を改めて示した。>

 <金元工作員については、親北・左翼的だった盧武鉉前政権時代、情報機関「国家情報院」の協力のもと韓国のテレビ各局などが「事件は韓国当局がデッチ上げた自作自演で北朝鮮は関係ない。金賢姫は偽者」という謀略説を繰り広げた。保守系の李明博政権に代わり、金元工作員は最近「謀略説」に抗議する書簡を産経新聞などで相次いで発表した。>

会見では、金元工作員が北朝鮮にいたことを証明する写真の少女を「自分だ」と証言したことについて、韓国の記者が「その後、金氏でないと国家情報院が発表した」とし、偽った証言だと指摘。その上で、「(疑惑が)解明されなければ、田口八重子氏の写真を見て、『この人が李恩恵だ』と言っても韓国国民は信じられないだろう」と述べ、「大韓航空機爆破事件の遺族が面談を要請しているが応じる意向はあるのか」と質問した。

 これが韓国の記者の実態である。記者会見詳報でも省略されている部分があった、ということである。これを日常的にやられていてはたまらない。

 <これに対して金元工作員は「一部の遺族が北朝鮮の仕業という証拠がないと話している。20年も過ぎた事件なのに、まだ誰がやったのかが理解できずにいるのは本当に残念だ。はっきり言いたいのは、大韓航空機事件は北朝鮮によるテロ事件で、私は偽者でないということだ」と強く反論した。>

 <さらに、指摘された写真について金氏は「写真を撮ったとき、私はそこにいた。前に立っている人に隠れてみえなかったことがすでに明らかになっているのに、(田口さんの)家族と会った席ではそのような話を避けるのが礼儀ではないか」と厳しい表情で答えた。>

 韓国の記者に礼儀を要求しても無駄なようだ。何しろ自分の要求さえ通せばいい、と思い込んでいるらしい。無礼な振る舞いは「自分だけが正しい」という思い込みから生まれていると思う。韓国では記者はエリートの職業なのだ。日本のような「庶民の代表」という意識はない。しかし、昔の韓国の記者は少なくとも愛国心があったのに、今は金正日万歳を叫ぶことしかできない低脳記者も生まれてきたようだ。

◆黒田勝弘氏の論は参考になるが、もっと希望を持ちたい

 この問題について同じ産経新聞で黒田勝弘ソウル支局長が同じ国際面で<日韓、拉致連携に温度差/反日・親北 民族感情消えず>の見出しで論文を書いていた。現地の空気をよく読み、非常に参考になる論である。

 <北朝鮮による日本人拉致被害者の家族と金賢姫元工作員の面会は、韓国でもそれなりに関心を持たれているが、日本側で期待されている拉致問題での“日韓連携”にはまだ壁が大きい。拉致問題に対する日韓の世論に温度差があるのと、韓国内に依然、一定の反日・親北ムードがあるからだ。日韓が手を結んで北朝鮮に相対するという構図にはほど遠い。>

 その通りだろう。これが前文である。

 <韓国では今回、面会を前に東亜日報がこの問題を1面トップで報じ、飯塚繁雄さんとのインタビューを大々的に伝えていた。日本人拉致問題が韓国マスコミでこれほど大きく報じられたのは初めてだ。政権交代による社会的雰囲気の変化を思わせた。これまでは横田めぐみさんの両親の訪韓があっても、ほとんど無視ないし冷淡な反応だった。>

 やはり、イベントを重ねれば厚い氷の壁も破ることが出来るのか。

 <今回、金元工作員が久しぶりに公開の場に姿を現したため韓国マスコミの関心を呼んだ。韓国ではこの間、彼女が関わった大韓航空(KAL)機爆破事件を疑惑としてその“真偽”を問うという動きがもっぱらだったからだ。今回もマスコミの大勢はその枠を出ておらず、拉致問題として日韓協力にはそれほど積極的な関心は示していない。>

 水沼さんの記事で、その部分はよく分かった。

 <韓国には漁船員など487人の拉致被害者がいる(政府発表)。これには北朝鮮で横田めぐみさんと結婚させられた拉致高校生も含まれている。しかし「北を刺激してはいけない」と親・北政策を進めてきた金大中・盧武鉉前政権は拉致問題解決に消極的で、金正日総書記との2回にわたる首脳会談にもかかわらずまったく成果はなかった。>

 金大中、盧武鉉両大統領の軟弱外交が国民の意思をすっかり弱めてしまった。

 <国民もまた、分断で生き別れになった数多くの離散家族が南北に存在するため、同族による拉致にことさら注目することは少ない。したがって北朝鮮は「離散家族は存在するが拉致問題は存在しない」と言い張っている。>

 そういうことなのだ。その北朝鮮の言い分をそのまま受け取ってきたのが両政権だったわけだ。

 <一方、マスコミをはじめ韓国社会の一部には、この間の親北・左翼ムードを反映し「日本は過去の支配の罪を忘れ自らの被害ばかりを強調している」という北朝鮮の主張そのままの気分もある。日本と一緒になって北朝鮮を非難することにためらいがあるのだ。>

 面白いのは、こういう韓国の揺れる世論を引っ掻き回そうと和田春樹氏ら進歩的文化人がしきりと訪韓して「その通りだ、あなたがたは正しい」と扇動を繰り返している。日本で相手にされなくなった「左」が今、生き残りをかけているのが、何と韓国なのである。

 <韓国の拉致被害者団体の中にも、民族感情から日本との協力・提携に反対するグループがいる。>

 反日感情は勝手に持てばいい。日本は関係なくものごとを進めるから。ただ、韓国政府までが反日になったら、金大中はともかく盧武鉉政権のような哀れな末路をたどることは間違いないだろう。日本が協力しなければ、いくら大きなことを言っても、「極東のバランサー」としてなど生きていけないからだ。

 <今回の面会は、過去の親北政権との差別化を進める李明博政権の積極的な協力で実現した。「人類普遍の価値である人権問題の観点から当然」(韓国政府筋)というが、こうした日韓協力にマスコミをはじめ世論がどこまでついてくるか、今のところ見通しは必ずしも明らかでない。>

 そういうことだ。ただ、黒田氏も書いているように、この面会がない場合とある場合の今後の韓国世論の変化を比較すれば、やはり、面会が実現すれば共感を覚える人々も増えるのではないか、という点に期待したい。様々な面での日韓協力がその動きをより強めればいい、と思う

◆北朝鮮のミサイル発射準備の意味するもの:高英煥氏の論説~産経新聞から

 今日は何か、産経新聞3月12日朝刊国際面(8面)だけで終始しそうだが、上記2論文の下に連載コラム【高英煥の眼 北朝鮮遠望】があり、今日の見出しは<ミサイル発射準備/軍事力鼓舞 国内引き締め>だった。

 <北朝鮮が咸鏡北道舞水端里にあるミサイル基地で、長距離弾道ミサイル発射のための準備をしている。北朝鮮はこれを1998年8月31日に発射した人工衛星「光明星1号」の後発となる「光明星2号」の発射準備と主張している。人工衛星であっても長距離弾道ミサイルであっても、発射は北朝鮮の核とあいまって韓国や日本、そして北東アジアと世界の安保に脅威を与え、北東アジア地域の軍備拡大競争を触発するものだ。世界の関心は、なぜ北朝鮮がこの時期にミサイルを発射しようとするのか、そしていつ、どの方向に発射するのかに注がれている。>

 と前置きがあって、

 <まずミサイル発射時期は、金正日政権の3期目がスタートする最高人民会議第12期第1回会議が予想される4月上旬までが最も有力視されている。その根拠は、北朝鮮が現在準備しているのは長距離弾道ミサイルではなく、「人工衛星」と主張しているからだ。その発射時期を北朝鮮にとって今年最大の政治行事である第3期金正日体制の始まりに合わせることで、政治的効果を計算しているのだ。>

 3月下旬~4月上旬説である。

 <発射方向はロシアや中国が位置する北方ではなく、日本と米国が位置する東方か南方とみられる。しかし日本のほか南太平洋の国々も刺激する南方向の可能性は低い。結論は東方向だ。これならミサイル発射で狙っている目的が米国と日本という仮定を十分に説明できる。とすると北朝鮮に“好意的な”オバマ政権が米国で誕生して間もないこの時期に、北朝鮮はなぜミサイルを発射しようとしているのか。>

 やっぱり、日本列島方向に向けて撃つのか。

 <まず北朝鮮内部の問題に起因すると考えられる。金正日政権の発足以後、北朝鮮最大の課題は北朝鮮内部の結束による体制維持だった。核とミサイルは金正日体制引き締めの“万能薬”だ。北朝鮮は2012年までに“強盛大国”を建設しようと呼びかけている。しかし北朝鮮は、自力では経済強国や科学強国を建設することは夢にもかなわない。その代わり、北朝鮮指導部が住民たちに核兵器と人工衛星を持った国は(世界に)十指に満たないと宣伝すれば、彼らは一時的に強盛大国の夢を見ることができるだろう。北朝鮮は“人工衛星”の発射によって金正日総書記の健康悪化説で大いに動揺している住民たちを団結させられる。>

 なるほど、人口衛星と核兵器を両方持っている国になるのか。

 <二つ目の理由は米国へのメッセージだ。北朝鮮はオバマ米政権が世界経済危機やイラクなど中東問題、アフガニスタン問題を優先させ、北朝鮮問題を後回しにしていることに大きな不満を抱いている。かといって、まだ明白な対北朝鮮政策を提示していない米国に対し長距離弾道ミサイルを発射することはできない。しかし“平和目的の人工衛星”の発射ならば、米国をそれほど刺激せずに同様の効果を引き出せると考えている。「われわれと直接会談をしなければ長距離弾道ミサイルを発射する」という間接的なメッセージになるというわけだ。>

 ドーンとやってやろう、というわけだ。

 <これは韓国への威嚇にもなるし日本の気をそぐ効果もある。ミサイルが日本上空を通り過ぎる場合、日本国民が感じる恐怖心は想像するに余りある。他の国々は科学衛星、通信衛星、軍事衛星を発射するが、北朝鮮にはこうした技術力はない。そこで政治的な“脅迫”のための“多目的衛星”を発射しようとしているのだ。>

 米国の気を引き、日本を脅すためという「多目的」衛星なのか。何か分かりやすい。

 <北朝鮮が他の正常な国々のように、すべてのことを正常に対処する国になる日はいつだろう。核とミサイルで強国になるのではなく、経済によって、そして住民の生活を向上させることによって強国になるということを、北朝鮮指導部はいつ悟るのだろうか。>

 悟らないだろう。高氏は平壌出身の元北朝鮮外交官で1991年に韓国に亡命。今は韓国の国家安保戦略研究所首席研究員だそうだ。

 こんな北朝鮮を「格好いい」と思う韓国の若者が増えているのだろう。由々しき事態だと思うが、世界的な反米風潮の中、極東の安全保障問題を分断国家、韓国の若者に丁寧に教えている暇は李明博政権にはないのだろう。というよりも、盧武鉉政権が残した負の遺産がいかに大きなものだったか、その都度考えさせられる。

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日経[大機小機](文鳥)氏の<「改革」もまた万能ではない>は正論だ~3月12日日経新聞朝刊から

 日経新聞社説があまりにも竹中平蔵氏の先鋭的な論に乗っかってしまい、唖然としていたのだが、3月12日の日経新聞朝刊コラム[大機小機]を読んで、日経新聞には常識を心得たコラムニストもいることを改めて知って安心した。(文鳥)氏の<「改革」もまた万能ではない>である。

 1月29日の内閣府景気動向指数研究会で、2002年2月から続いていた景気拡大が07年10月をピークに後退に転じた可能性が高い、とされたことが導入部。この判断が正しければ日本の景気は既に16ヵ月以上も後退を続けており、100年に1度の金融危機は景気悪化の最中に生じたことになる、というのだ。

 <そう考えると、日本経済の陥っている未曾有の不況の背景にあるのは米国や中国向けの輸出減少といった外生的な要因だけでない。それ以前から悪化し始めていた景気に対し適切な対策を怠った政府や日銀の「景気無策」も影響している可能性が高い。>

 つまり、2008年9月のリーマン・ショックの1年前から日本は景気後退を続けているのに、その対策が取られず、体質が弱っている時にドーンと世界不況ショックが襲来した、というのである。

 <小泉純一郎政権時代の改革を支持する識者や政治家の中には、日本経済の深刻な危機の原因を改革の遅れに求め、福田康夫・麻生太郎政権の政策運営を批判する者も多い。だが、改革さえ進めていれば持続的な成長が実現でき、不況も軽微だったというのは改革派の我田引水ではないか。

 ここからが本論である。どうしてそう言えるのか、次に説明している。

 <実際、小泉改革の目指した「民にできることは民に」を最も徹底した米国が、今回の世界的な不況の震源になった。規制緩和や民営化によって市場を自由化し、競争を促進しても経済が順調に推移する保証はない改革も市場と同様に万能ではないからだ。>

 竹中氏の朝日新聞への寄稿を先日、批判しておいたが、こういう視点からの批判も成立する。竹中氏は話術の名人だから、アジェンダセッティング段階で議論の主導権を握ろうとする。こういう議論に対しては、米国の金融業者の異常な行動を特異例とするだろうし、日本とは違う、と言い抜けようとするだろうが、(文鳥)氏が主張するように、竹中、宮内義彦氏らの主張を突き詰めていけば、ゴールドマン・サックス的な生き方が「当たり前」になり、競争社会では敗者が生活に困窮するのは自己責任だ、という結論になることは間違いない。

 <1930年代の大不況に直面したケインズは財政の大盤振る舞いをはじめ、ある意味で「何でもあり」の景気対策を説いた働く意志と能力がありながら失業を強いられる労働者に一日も早く就業機会を提供するには、市場の調整力に期待するよりも、マクロ的な経済政策で需要を生み出すほうが有効と考えたのだ。>

 ケインズ政策の説明である。

 <不況のたびに政府が対策を講じれば民間の自立心が育たず、政策依存の経営がはぼこり、長期的には対策の有効性さえ失われる恐れがある。だがそれ以上にケインズは、風邪が万病の元となるように通常の不況が大不況に発展する危険を回避しようと試みた。>

 民間の自立心にういてあえてここで触れてある。そういうことまで認識したうえでのケインズの政策だった、というのである。

 <いまの日本経済は「景気の底がどこか、いまだに見えてこない」と麻生首相が国会で語るほど重症である。ここに至って求められているのは、対策の中身よりも、国内総生産(GDP)を直接増やす効果のある「真水」30兆円規模の大胆な対策と素早いタイミングではないか。何もしないより穴を掘って埋めるほうがましだというのは極論だが、それが大不況からケインズが学んだ教訓であることも忘れてはならない。>

 以前、リチャード・クー氏の論についてコメントを書いたことがあり、その時も「穴を掘って埋める」公共事業の有効性についてのクー氏の説に賛成したことがあったが、今はそういう時期だと思う。

 ただ、国会でも相当な議論になっているが、何をどうするか、という具体論では省庁間のカネの分捕りあいになってはいけない。小泉改革などという改革ではなく、将来の日本が生き残っていけるための基礎作りになる「本当の改革」のためにカネをつかわなければならない。ジャブジャブと、どうでもいい公共事業にカネを注ぎ込む余裕は残念ながら今の少子化日本にはない、と思うからだ。

 竹中氏らが言う構造改革があまりにもアメリカ的グローバリズムを追いかける改革である点に疑義をはさんでいるのだが、かといって改革が要らないわけではない。

 農業改革のためには中間搾取団体である農協を解体しなければならない。食品製造業を活性化するためには、原産地表示だけでなく、その食品の加工地まで全部明記し、地産地消なのかどうか、消費者が判断できる商品でなければならない。農家がメーカーや勝者と組んで安全でおいしい食品を作り、都会の消費者に高額で売り、カネがなければ、中国産などの安い食品を食べる。

 昔、池田勇人首相が首相就任前に「貧乏人は麦を食え」で叩かれたが、あれも、池田氏はそう言ったのではなく、カネのある人は白米を食べ、白米を買えない人は麦や穀類を混ぜて食べればいい、という経済の論理、食の多様性を答弁したら、ひねくれた新聞記者が歪曲して記事にしたものだ。

 私のような主張も反対派はすぐに歪曲するだろうから、偉い人はこのようなことを言ってはならないが、このように安全でおいしい食品、野菜や果物、穀類が生産できれば、中国やロシアの富裕層は輸入して食べることは間違いない。日本が食品輸出国になれるのだ。発想の転換と政治の力強い変革意志、それに有権者の理解がそろわないとこういう改革はできない。

 農協が自民党の集票マシーンであるだけでなく、全国屈指の巨大組織になっている現状では、この改革は「言うは易く行うは難k」改革であることは間違いない。

 ダム建設などの公共事業の乗数効果が落ちている、という事実は今後、変わらないだろう。新聞社をはじめとしたメディアは介護施設建設と介護事業開始の乗数効果、保育園やベビーシッター産業の乗数効果など、詳しく調査して、比較表を有権者に提示してほしい。

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韓国紙・中央日報がやっと盧武鉉大批判に踏み切った~3月12日朝刊

 久しぶりに韓国のメディアのホームページを見たら、ようやくと言っていいのか、盧武鉉前政権の非道ぶりについて書くようになったらしい。中央日報は3月12日の社説<国情院「大韓航空機爆破ねつ造説」に介入したか>で、「政府機関ぐるみ捏造」という疑惑に切り込んだ。

 1987年11月に発生した大韓航空(KAL)旅客機爆破事件の実行犯、金賢姫元死刑囚が3月11日の記者会見で「大韓航空機爆破事件は私がやったことだ。北朝鮮によるテロに間違いない」とした後、一部から出ている捏造説について「残念だ」と一蹴したことを書き、

 <金元死刑囚は「盧武鉉前政権時代に、情報機関の国家情報院(国情院)に、捏造説を認めるよう強いられていた」という趣旨の発言も付け加えた。金元死刑囚は昨年も一部マスコミとのインタビューで、当時、国情院など政府機関の当局者が「大韓航空機事件の捏造説」を追跡している特定のマスコミの取材に応じるよう、自分に圧力を加えていたと証言したことがある。社会と距離を置いて暮らしていた自身と家族の身元情報を露出させ、危険に陥れるなどの危害行為まであったと抗弁した。>

 この特定のマスコミというのが盧武鉉の意を受けたKBSとMBCの「記者」らしい。放送記者の風上にも置けない輩で記者と言いたくないくらいだ。盧武鉉から小銭をもらって北朝鮮に都合のいい社会を作ろうとしていたわけだ。

 <同氏の証言が事実ならば、これは決して軽く見過ごせる懸案ではない。国情院を政治的な目的で活用しないと公言していた前政権が、捏造説を広げるために国情院を動員したということではないか。22年前に全国民に衝撃を与えた事件に関連した疑惑を一歩遅れて広げようとした意図は何か。その真相が明々白々に究明されねばならない。>

 <金元死刑囚は国情院が現在、同事件を自主的に捜査中だと公開し、国情院側も調査チームを設けて捜査中であることを認めた。国情院は自主的な捜査に徹底した後、結果を公開することで、国民の疑惑を解消しなければいけない。必要とされれば、検察の捜査も動員すべきだ。金元死刑囚の証言通り、国家機関が金氏の身元情報を公開してまで圧力を加えていたことが事実ならば、これは明白な犯罪行為である。前政権で大韓航空機事件の捏造説が強く提起された背景についても取り調べなければいけないと考える。前政権の誰が、国情院に「金元死刑囚に圧力を加えろ」と命じたのか、その理由は何かも明らかにすべきだ。

 <捏造説は、87年の大統領選で勝利するために韓国政府が韓国人113人が乗っている飛行機を墜落させたというのが骨子だ。国家のアイデンティティーを揺さぶるのに十分な、恐ろしい陰謀論である。そうした陰謀論を前政権の誰かがあおった疑いがあるのだ。巷の疑惑通り「北朝鮮寄りの理念を拡散させるために国家情報機関まで動員した事件」ということであれば、これは「反国家犯罪」となる。

 と、ズバリ「国家犯罪」への弾劾を書き始めた。

 動きが鈍いから、韓国の民衆が韓国の保守政権に対して不信感を持ってしまう。インチキなのは金大中、盧武鉉両政権だったのだ、ということをはっきりと国民に分かるように書くべきだし、李明博政権はKBSとMBCの前政権に協力して偽情報を国民に吹き込んだ幹部らを国家反逆罪で訴追すべきだ。そして、検察に国家反逆罪事件の捜査を命じるべきだ。

◆朝鮮日報は紛争を避けるかのように盧武鉉批判を手控えていた

 朝鮮日報も12日の社説で金賢姫氏の関連を書いたが、

 <北朝鮮は日本人だけでなく、世界各国の人々を拉致し、平壌に連れていき、さまざまな用途に使った。韓国は北朝鮮が犯した民間人拉致犯罪の最大の被害者だ。韓国戦争(朝鮮戦争)以降、漁民ら499人が北朝鮮に連れていかれたが、大半は生死すら確認されていない。北朝鮮は拉致問題を解決しないまま、国際社会の正常な一員として復帰することはできない。北朝鮮は拉致被害者の生死確認、真相究明、家族との再会、自由意思による居住地選択を認めるべきだ。>

 として、韓国も北朝鮮による拉致犯罪の被害者だ、という点を強調しながらも、

 <金元死刑囚は田口さんの家族と面会した席上、「大韓航空機爆破は北朝鮮によるテロであり、わたしは偽者ではない」と語った。>

 <金元死刑囚は昨年末のインタビューで「盧武鉉政権が(情報機関の)国家情報院を使い、わたしをMBCなどに出演させ、ばか者に仕立て上げようとした」とも述べている。金元死刑囚は大韓航空機爆破までもでっち上げだと決め付けようとする犯罪的陰謀に対し、「わたしは偽者ではない」と絶叫したのだ。>

 <国家情報院は金元死刑囚を偽者扱いしようとした以前の工作に対する調査を速やかに終え、真相を明らかにし、無駄な論争に終止符を打たなければならない。>

 とさらり、と書いただけだった。

 北朝鮮と内通していた裏切り者である盧武鉉前大統領への怒りが見えないではないか。いままで書いていたとしても、今回の場面ではもう一度、ガツンと筆誅を加えるべきだった、と思う。愛国新聞・朝鮮日報はどうなってしまうのか? もしも、「穏便に、穏便に」路線に転換してしまったのだとすれば、そんな朝鮮日報は見たくないのだが。

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2009年3月11日 (水)

北朝鮮はどう弁明する? 金賢姫氏の記者会見でもう嘘は通じなくなった~各紙3月11日夕刊から

 ようやく金賢姫元死刑囚と拉致被害者、田口八重子さんの家族との面会が実現した。李明博・韓国大統領に心からの感謝の意を捧げたい。

 盧武鉉前大統領は大統領府の権力を最大限駆使し、権力に弱いテレビ局を抱き込んで、金賢姫氏一人を極悪人に仕立て、「115人の命を奪ったテロリスト」の汚名を着せただけでなく、「金賢姫氏は偽者」説まで流布して、金正日・北朝鮮総書記の悪辣な犯行をもみ消そうとした。すべては南北朝鮮の融和を図るためだった。

 金正日総書記の機嫌を取るためには真実の隠蔽など平気でやる、という「革新」政権の危うさである。

 しかし、まだ韓国民はその「盧武鉉の犯罪」に気付いていない。それどころか、あの時代の洗脳教育から抜け出せていないことが3月11日の毎日新聞夕刊ではっきりした。

 <金元死刑囚面会/韓国国民は無関心/「テロリスト」の認識強く>である。釜山から西脇真一特派員が書いていた。記事の主要部分を書き写そう。

 <面会について韓国では国民の関心は低く、メディアの報道も抑制気味だ。背景には北朝鮮による韓国人拉致被害者は約500人と多いうえ、日本で「情報提供者」として注目される金元死刑囚は韓国では大韓航空機爆破事件で乗員・乗客115人の命を奪った「テロリスト」と認識されていることなどがある。>

 の前文に始まり、11日付朝鮮日報の予告記事の紹介だ。2面で「今日ついに口を開く」との見出しを掲げ「今回の出会いは今後、韓日が人権問題を提起するうえで『共通のカード』として活用しうる」と報じた、という。面白いのは、西脇氏が、

 <韓国国内には今回の面会が北朝鮮を刺激し、南北関係がさらに悪化するのではないかとの懸念もある。

 と書いていることだった。想像で書くわけはないから、そう言っている人が何人かいるのだろう。

 <日本に留学経験のあるソウル在住の30代女性は「自分はニュースで知っていたが、家族や知人は関心がなく面会を話題にする人は、だれ一人いない」と言う。>

 というのは釜山で書いていることを考えると、知人か友人に電話して話を聞いたか、釜山に来る前にソウルで聞いた話なのだろう。

 <韓国には、朝鮮戦争(1950~53年)後の南北分断で多くの離散家族が生まれた歴史がある。その後に拉致された韓国人も政府認定だけで約500人にのぼるが、社会の注目度は低い。さらに、ある韓国政府関係者は「やはり115人の命を奪った犯罪者であることも関心の低さの要因だ」と指摘。「日本のマスコミが大騒ぎしているのがかえって不思議だ」と話す。>

 この政府高官はきっと盧武鉉派の人なのだろう。

 <韓国外交通商省によると爆破事件の遺族は2月3日、同省を訪れ「我々の面会要請は許可されないのになぜ田口さんの家族は会えるのか」と、不満を述べたという。>

 とあるのはさもありなんかも知れないが、韓国の遺族と金賢姫氏を面会させる前には韓国政府がきちんとこの爆破が北朝鮮の国家犯罪で、命令したのは金正日総書記だったという事実を国民に分かりやすく伝え、金賢姫氏もある意味では被害者なのだ、という説得を完了してからにすべきだろう。

 この記事を見て、せっかくの李明博大統領の日本国民へのプレゼントが汚されてしまったような砂を噛んだような気持ちを味わった。金大中、盧武鉉両政権が韓国民をマインド・コントロールした後遺症はそれだけ深い。

 そのマインド・コントロールは「北朝鮮が攻撃してきたら、ソウルは火の海になる」という恐怖心と表裏一体化しているため、なかなか抜けないのだろう。

 北朝鮮は甘やかしても付け上がるだけなのだ、という真実を早く韓国民に知らせることから始めねばならない。それにはまず、盧武鉉色の残っているKBS、MBCの2大テレビ局の親盧武鉉勢力を早く追い出して、李明博支持勢力に入れ替えることから始めねばならないだろう。

 李明博政権も「負の10年」を背負っているだけになかなか大変だ。日本政府は盧武鉉一派の策謀から李明博政権を守るための側面援護を怠るべきでないと思う。

 毎日新聞1面本記は<金元死刑囚「お母さん生きている 希望持って」/「歴史的な感激の日」/飯塚さんら 悲願 面会かなう/めぐみさん死亡「信じられない」>の見出し。

 <北朝鮮による拉致被害者の田口八重子さん(行方不明時22歳)の長男、飯塚耕一郎さん(32)と、田口さんの兄で拉致被害者家族会代表の飯塚繁雄さん(70)が11日、韓国・釜山市内の国際会議場で、大韓航空機爆破事件(1987年)の実行犯、金賢姫元死刑囚(47)と面会した。田口さんは北朝鮮で金元死刑囚の日本語教育係だったとされ、耕一郎さんは、自分が長男だと初めて公の場で明らかにした2004年2月、外務省を通じ面会を求めていた。>

 という書き出しである。

 <金元死刑囚が公式の場に出るのは1997年12月に結婚して公の活動を控えて以来、約12年ぶり。李明博政権発足で韓国側が対北朝鮮の人権問題を重要視する姿勢を打ち出したことと、拉致問題の進展を求める日本側の姿勢が一致して面会が実現した。拉致問題での日韓協力の象徴と位置づけられる。>

 と李明博大統領の尽力にも触れていた。

 <田口八重子さんは東京都豊島区の飲食店従業員だった1978年6月、当時1歳の耕一郎さんら2人の子供を託児所に預けたまま行方不明になった。その後、大韓機事件で逮捕された金元死刑囚が「李恩恵という日本人女性に日本語などを習った」と証言。警察庁と埼玉県警は1991年、この女性を田口さんと断定した。>

 そういう経過だった。

 何度でも思い出してほしい。1歳である。母の顔を覚えているはずもない。

 <耕一郎さんは「どんな生活をしていたのか知りたい」と金元死刑囚あてに手紙を書き、面会を要望したが、北朝鮮への融和政策を取る盧武鉉政権時代は実現しなかった。>

 との事実も書き込んでいた。非人道的な盧武鉉前大統領への天罰が下る日もいずれはくるだろう。

 毎日新聞社会面によると、金賢姫氏は飯塚耕一郎さんに「大きくなったね」と日本語で語りかけ、飯塚繁雄さんは「歴史的な感激の日」と話した、と書いていた。

 <午前11時、韓国・釜山の国際展示・会議場「釜山展示コンベンションセンター」の2階ホールには、スーツ姿の繁雄さんと耕一郎さんが先に姿を現した。続いて、黒い服の金元死刑囚が入ると、お互いに頭を下げ、繁雄さんと両手で握手を交わし、耕一郎さんと握手した後、「抱いてもいいですか」と日本語で語りかけ、しっかりと抱き合った。>

 というのが面会の様子。

 <金元死刑囚は耕一郎さんに「大きくなったね」「お母さんに似ている。もっと早く会いたかった」などと言いながら涙声になった。さらに「お母さんは生きていますよ。こういう(再会の)日がきっとあると思います。希望を持ってね」と語りかけた。繁雄さんは金元死刑囚に、自身の著書や「李恩恵が好きだった」(金元死刑囚の著書)とされる沢田研二のベストアルバムなど音楽CD、お菓子や女性もののハンカチなどを贈った。その後、3人だけで話をするため別室に移った。>

 <面会後3人は共同で記者会見し、繁雄さんは「今日は本当に歴史的な感激の日。お礼を申し上げたい」。耕一郎さんは「5年越しの念願がかない、感謝してもし尽くせない。私の母である田口八重子さんに関し『生きている』と証言して頂いた。金さんは『私が韓国のお母さんになります』と言ってくれた」と述べた。金元死刑囚は「(耕一郎さんは)お母さん似でハンサムで、お母さんの姿が見え隠れした。この場所に田口さんがいたら、どんなに良かったか」と話したが、耕一郎さんからの手紙については「受け取ることができなかった」と明かした。また、田口さんについて金元死刑囚は「1987年1~10月、北朝鮮の招待所で生活しながら聞いた話では、田口さんは連れ去られたが、場所は特定できない。87年ごろに結婚させるという話があったようだ。ただ、結婚について聞いたことがない」と話した。>

 新事実が出るかどうかが焦点だ、とか各紙は書いていたが、新事実など出なくてもいいのだ。金賢姫氏が公の場に出てきて、北朝鮮犯行であることが明々白々になれば、それで目的の大半は達成できたのだ。

 これで北朝鮮は「金賢姫は偽者」という言い逃れはできなくなった。今後は、しばらくは口をつぐまざるを得ないだろう。

 毎日新聞には書いてなかったが、朝日新聞は1面記事で、

 <北朝鮮は、田口さんと「李恩恵」が同一人物であることや大韓航空機爆破事件への関与そのものを否定している。>

 とわざわざ書き込んでいる。ただ、朝日新聞らしいと思ったのは、どこにも盧武鉉政権への批判めいた書き方はなく、社会面の金元死刑囚のプロフィル紹介記事の中で「北朝鮮との対話を重視した盧武鉉前政権の姿勢に不信感を募らせていたが、08年2月に保守の李明博政権が発足後、発言の機会を模索」と書いただけ。あくまで盧武鉉批判を金元死刑囚に言わせる形にしているのは、朝日新聞としては盧武鉉批判はしたくない、ということなのだろう。

 東京新聞3月11日夕刊1面には、

 <しかし、韓国メディアから大韓航空機事件の捏造疑惑や証言の信憑性への疑問に触れる質問が出ると、金元工作員は柔らかだった表情を険しくした。「事件は北朝鮮のテロであり、私はにせものではないと言いたい」と強く反論した。>

 という韓国人記者の相変わらずの無軌道振りを活写して面白かった。なぜ、そんな質問をぶつけるのか、と言えば、先ほど命日新聞総合面の記事について書いたように、マインドコントロールされた記者がマインドコントロールされた国民相手にいい加減な話を書いているのが韓国マスコミの現状だからだ。度し難いが、これも時間をかけて直していくしかないのだろう。

 日経新聞3月11日夕刊1面にあるように、

 <金元死刑囚が拉致被害者と面会するのは初めて。拉致問題の解決に向け「北朝鮮の自尊心を生かしながら心を動かす方法を考えるべきだ」とも訴えた。>

 というのが変に気になる。

 朝日新聞では「北のプライドを守りながら、心を動かすことができる方法を考えて、(拉致)被害者を帰国させる努力をすれば、奇跡は起こると思う」という表現だった。

 それに類する発言をしたのだろう。何を考えているんか、今後の金賢姫氏の発言を注意すべきだろう。

 読売新聞夕刊は<86年以降 知人に結婚語る 現場は事故ない場所/「田口さん死亡」に疑問>で「田口さん生存の可能性」を詳細に論じ、参考になった。

 それはともかく、ここまでこぎ着けるには韓国公安当局の並々ならない努力があった、と思う。

 北朝鮮の金賢姫氏暗殺を防ぐための完全防備体制をどう構築するか、の苦労だ。そのリスクをクリアし、日本の人々に拉致の生々しさ、恐ろしさを再確認させることができたのが最大の収穫だと思う。

 米国もボズワース氏を中心に米朝秘密合意を目指して動き始めているが、その動きも最終的には頓挫せざるを得ないと思う。

 北朝鮮が今のような核開発をやめないならば、米国が戦争という手段に訴えざるを得ない状況がやってくると思う。その時まで李明博政権をしっかり支えるのが日本の役目だと思う。韓国の政局が流動化して、日米韓の連携が緩めば、米国は強硬策を取れないからだ。戦争を意識しながら強い態度で北朝鮮に当たるしか、北朝鮮を本当の意味で変えることは出来ない。金正日総書記は案外小心者である。自分の命が危ないとなれば、徹底して命を守ろうとする。そこまで追い詰めないと、何も変わらない。

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北朝鮮が核弾頭ミサイルを開発した可能性に米高官が触れた~産経新聞3月11日ウェブ版

 産経新聞のウェブ版は3月11日に驚くべきニュースをアップしていた。<北朝鮮が核兵器小型化に成功か/米情報機関が指摘>である。これが本当ならば、日本の安全保障にとって最悪の出来事となる。ワシントン支局の有元隆志特派員の記事である。コピペする。

 <米国防情報局(DIA)のメープルズ局長は10日、上院軍事委員会に提出した書面で、北朝鮮が「核弾頭と弾道ミサイルを成功裏に一体化させられるかもしれない」として、弾道ミサイルに搭載可能な核弾頭の小型化技術獲得に成功した可能性があるとの見方を示した。DIAは北朝鮮が弾道ミサイルへの搭載を進めるため、小型核弾頭の研究を進めているとみてきた。>

 <昨年8月に脳卒中を起こしたとみられている金正日総書記の容体に関しては、ほぼ回復しているようにみえると分析した。そのうえで、金総書記が急死した場合、短期的には大混乱はおきずに「権力委譲は平穏に進む」との見通しを表明した。ただ、北朝鮮は1人の権力者によって支配されてきたため、「長期的には実力者間の権力争いで問題が大きくなっていく」と予測した。>

 <また、ブレア国家情報長官は10日の上院軍事委員会公聴会で証言し、北朝鮮が「人工衛星」と称して長距離弾道ミサイルを発射するとの見通しを示した。長官は「(衛星打ち上げと)大陸間弾道ミサイルに使われる技術は区別がつかない」と述べ、北朝鮮が衛星打ち上げと主張しても、実際には長距離弾道ミサイル・テポドン2号の打ち上げとの見方を示した。そのうえで、3段式のミサイルの場合、成功すればハワイやアラスカだけでなくう米本土まで到達が可能になると指摘した。>

 <一方、ブレア長官はイランの核開発に関しては、イランが高濃縮ウランの製造を開始すれば、最短で2010年から2015年の間には核兵器生産に必要な量の製造が可能との見方を示した。>

 記事は以上だ。

 肝心の部分は一項目だけで、どのような証拠を米国がつかんだか、分からないが、日本政府は当然、その内容を照会していると思う。核ミサイルが飛んでくる可能性が今まではなかった。だから、安全保障論議は少しのんびりとやれたが、これが本当ならばそうはいかなくなる。

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2009年3月10日 (火)

田中均氏の日米首脳会談論に賛成:出だしは良かった~3月10日毎日新聞夕刊から

 毎日新聞3月10日夕刊文化面[時をよむ]で田中均元外務審議官の<オバマ時代の日米関係>という寄稿が載っていた。見出しは<出だしいい首脳会談 日本は長期構想を>である。田中氏はこの中で1980年の大平首相訪米、日米首脳会談の思い出を語っていた。今の政治情勢への提言もあり、役立つので、書き写しておく。

 まずは、2月24日のワシントンでの麻生首相とオバマ米大統領との会談について、

 <オバマ新大統領の下での日米関係は順調に滑り出したと言ってよいのだろう。新しい国務長官が初めて訪問する外国は通常、欧州や中東であったところ、クリントン国務長官はアジアを最初の訪問地とし、ホワイトハウスに迎え入れる最初の外国首脳が日本の首相であった。米国の意図的な姿勢が見受けられる。>

 と日本に配慮してスタートしたオバマ政権の姿勢をそのまま(裏読みをせず)受け入れている。この見方が正しいと思う。なぜ正しいか、について田中氏は以下のように書いている。

 <もはや、日本の首相が訪米しても、今回のように米国で大きく報道されることはないが、中国の首脳が訪米し首脳会談を行えば、30年前の日本と同様、おそらく大きく扱われるだろう。金融危機と世界同時不況に直面する現在、米国にとって同盟国日本は当然に協力を想定できる相手だが、中国はそうではない。経済成長率の鈍化はあっても6.5%の成長を見通し、米国財務省証券の最大の保有国である中国の建設的協力を得ることは米国にとって、世界にとって多大の関心事である。>

 である。この30年前というのが田中氏が在米大使館一等書記官として経験した大平正芳、カーターの1980年5月1日の首脳会談で、

 <その際の日米首脳会談を報じる翌2日付のニューヨーク・タイムズ紙が手元にある。1面に両首脳が日米科学技術協定に署名しているシーンをとらえた大きな写真を掲げ、日米が画期的な協定に署名したことを伝えた。>

 と米国が大騒ぎした事実を思い出させてくれている。その30年前に比べて、今は日米は首脳が会って当たり前の関係になったのだ、という外交官ならではの分析である。

 面白いと思ったのは田中氏が指摘する1980年と2009年との類似性だ。

 <実は当時の米国を取り巻く状況は、現在と似通った面があった。イランにおける米国大使館員人質救出作戦の失敗で米国の対外的な威信は地に落ち、国内経済は双子の赤字に苦しみ、自動車産業などの基幹産業の競争力は急速に衰え、失業率は10%に達しようとしていた。自動車問題など日米の経済摩擦がいよいよ激しくなろうとしていたときだけに、両国が共同して科学技術協力プロジェクトに取り組むことを定めた科学技術協力協定が注目を浴び、大きな記事になったのである。>

 なるほどねぇ。忘れてしまうもんですなぁ、昔のことは。そういう状況だったとは思い浮かばなかった。

 <米国の表面的な振る舞いを見て、日本が軽視されているとか、そうでないとか、一喜一憂するのは意味あることとは思えない。また、今回の首相訪米自体は日米協力の重要性を両国が確認したという象徴的な意味合いを持つものであり、日本にとって重要なのは今後である。中国やロシア、インド、ブラジルなどのいわゆる新興国の台頭と世界経済の深刻な不況のなかで日米の同盟関係はどう機能していくべきか。中長期的なビジョンを持って、日米が政策調整を行うことこそが求められているのである。>

 これも「その通り」と相槌を打ちたくなる見解だ。

 今回の会談はあくまでシンボルなのである。これを微に入り細を穿って「日本はやっぱり軽視されている」というよりも(実際に軽視されている部分はあるとは思うが)、前向きに考えよう、という提言はその通りだ、と思うのだ。

 <そのためには、日本は総選挙を経て堅固な政治基盤を持った政治体制を構築するのが先決ということなのかもしれない。その上で、とりわけ日本の国益に直結した二つの課題について日本の方針を固め米国と協議してもらいたいものだと思う。>

 として、①安全保障体制のあり方=集団的自衛権のきわめて制限的な解釈のきちんとした見直しにより自衛隊と在日米軍の役割と体制見直しの必要性②東アジア=日本経済は東アジアの成長がないと成り立たないので、東アジアを面ととらえ、地域安定・繁栄の仕組み構想を早急に作成、能動的に仕組みを構築することが必要――と訴える。

 これも榊原英資氏らの主張するアジア連帯論と符合する論だと思う。

 高齢化、少子化、低成長などを嘆いても昔は戻ってこないとすれば、このようなアクションは早めにうやらねばならないだろう。

 識者たちがそろって言うように、世界経済危機は日本にとってチャンスでもある。このチャンスをどう生かすのか、生かせずに取り残されるのか。

 田中氏の言うように早期総選挙が絶対的に必要だとは思うのだが、政治に活力がなく、本当に必要な政界再編も頓挫したままだ。

 旧社会党の集団的自衛権解釈変更反対勢力を切り捨てて、保守の合同で新しい地平に向かって一歩踏み出すチャンスだと思うのだが、変なところで足の引っ張り合いをしている。

 「そんな時間はないのに」と言いたいのだが、東京地検特捜部の捜査待ち政局では議員たちは積極的に動けないだろう。早く捜査が終わって、永田町がきれいになるのを待つしかないようだ。

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竹中路線に乗ってしまった日経新聞~朝日新聞3月9日朝刊、10日日経社説

 朝日新聞3月9日朝刊オピニオン面[資本主義はどこへ]連続インタビューで、この日は竹中平蔵慶応大学教授・元経済財政担当相が<成長/「自助自立」めざし改革続行を>のタイトルでインタビューに応じていた。聞き手は深津弘記者だ。このインタビュー記事が好印象を与えるのは、通り一辺倒な質問ではなく、二の矢、三の矢を繰り出し、竹中氏に答えにくいであろうことを聞いている点だった。

 まず、中谷巌氏が昨年12月に出版した「資本主義はなぜ自壊したのか」を取り上げ、「小泉構造改革でグローバル資本主義を推し進めたことが格差拡大などの副作用をもたらした」と指摘しているがどうか、「最近、竹中氏へのバッシングがすごいですね」とズバリ畳み掛けている。

 竹中氏は、

 <諸悪の根源にしたいのでしょうが、そんな誤った議論をしているのは日本だけですよ。グローバル資本主義に修正が必要なのは当然です。格差は拡大し、いつでもどこでもバブルが起きる。でもグローバル化はチョイスじゃなくてファクト。止められないんです。どこを直し、どこを発展させるのか、試行錯誤でやっていくしかない。私は政策の専門家です。現実の経済政策は、市場は善か悪か、規制緩和は善か悪か、という二分法ですむ単純な話ではありません。漫画のように語るのはやめてほしい。理念型で議論しても答えは出てきません。>

 頭のいい竹中氏はここで、すでに防波堤を築く。グローバル資本主義は自分で選んだ選択ではなく、否が応でも押し寄せてくる世界的な潮流なのだから、それを選ばない、という選択肢はない、とまず自分のスタンスを言い、その後に現実政治の政策担当者として単純な理念主導の選択はできないのだ、ということを「規制緩和は善か悪かの二分法」という言い方で、自分のほうから突っ込まれたくない部分を提示して、次の論点に移らせようとする。相当なタマである。ディベートの何たるか、をよく心得ているから、尻尾をつかまれないような話し方がうまい。

 しかし、問題はここにある。「規制緩和は善か悪か」を政治哲学、経済哲学的に詰めた議論もせずに、ハゲタカのような宮内義彦氏らの跋扈を許したのは小泉=竹中路線だった。

 規制緩和は国家規制をなくしたり、緩和すること。国家規制は原則として弱者を保護するための規制だった。それが時代の変化とともに不要になった規制が残存するので、不要になった規制をなくしたり、緩和する、という議論がそもそもの規制緩和論だったはずだ。

 それが80年代の米国からの圧力もあり、規制緩和という言葉が独り歩きし、いかにも米国流国家経営の真髄であるかのような受け止め方をされた時代があった。労働生産性の低い、つまり、経済競争力の弱い分野を切り捨てる際のお題目になるのに時間はかからなかった。街の商店街の再開発や都心にある工場の郊外への移転を目的とする規制緩和だったら国家国民のためという大義名分はあったのだが、そのうち、どんな分野でも規制緩和を行うことが正しい、という刷り込みが行われていく。この傾向を推し進めたのが政府の規制緩和推進本部などを中心とした機関だった。

 その結果、してはいけない規制が緩和されてしまった。労働規制の緩和や社会保障関係の規制緩和である。人間の労働、命を比較考量して、金のない人は死んでもいい、といわんばかりの規制緩和が相次ぐ。そして、過疎地域はますます人が住めなくなり、リハビリは中断され、非正規労働者が日本の労働者の3分の1を占めるようになった。

 規制緩和が善なのか悪なのか、という根本的な議論を避けてきたツケである。

 竹中氏の弁明は逃げに過ぎない。

 その製造業派遣など労働市場の規制緩和が格差を拡大したことについて聞かれると、

 <事実と違います。小泉政権の5年半は格差拡大のスピードは弱まっています。そもそも日本の格差は競争の結果ではなく、制度が歪んでいるから生じているんです。非正規雇用が増えたのは、正規雇用はクビが切れないという30年前の裁判所の判例があるから。怖くて正規は雇えず、非正規を増やさざるを得ない。正規と非正規の給与格差も、それを容認する判例があるから。だから私はそんな解釈ができないように法律を変える改革が必要と言い続けている。>

 竹中氏がそのようなことを言い続けていることは寡聞にして知らなかったが、これも論理のすり替えがある。

 小泉政権で労働分野の抜本的な規制緩和を行い、その結果、徐々に非正規労働者が増えた。日本経済が上向きの時には矛盾は出てこないもので、少し下向きになった時に、蓄えられた矛盾が一気に噴出する。それが今回のリーマン・ショックからの世界不況だった、というわけである。

 竹中氏がいうように抜本的な改革が必要だったのだ。連合がこのような「派遣切り」の時代にも賃上げを要求しているように、正社員と非正規とは違う階層となってしまった感がある。竹中氏が言っていることは正社員をもう少し簡単にクビにできる改革である。連合が応じるはずがない。その応じるはずのない連合に応じるように持ちかけ、ワークシェアリングの考え方を入れなければならない時に、それには目をつぶって非正規雇用全面容認という毒薬を飲んだのが小泉政権だったのだ。

 少なくとも非正規雇用の容認に踏み切る際には国家による手厚いセーフティーネットの構築が不可欠だったはずだ。それをせずに、経済界の一部の意見だけを入れて労働行政を捻じ曲げた責任は今どんな弁明をしても小泉=竹中両氏にある。そして、この2氏にくっついていた人材派遣業者らの稼ぎがどのように政治家に還流していたかも東京地検特捜部はきっちり調べなければならない、と思っている。

 歴史的に一番許せない「改革利権」である。

 勝者と敗者が出てくることは人間社会だからある程度は仕方ないだろう。ただ、権力をかさにきて改革を行い、その裏で「改革利権」を貪るという手法だけは江戸時代から厳しく指弾されてきた。成り上がり者が国家資源を食いつぶす行為だからだ。こういう疑いを掛けられている、ということを知りながら、このような弁明しかできない竹中氏には失望する。

 竹中氏は改革が続いていれば成長が続く、成長するためには改革を続けるしかない、と言うのだが、その「改革」の中身については羽田空港の24時間空港化を進めて日本をゲートウェー国家にする、高すぎる法人税を下げる、と2点を挙げるだけだった。ゲートウェー構想には賛成だ。そうでもしなければ日本は国際的に浮上しないかもしれない。しかし、法人税下げはどうなのか? 消費税導入と合わせて提言すべきだろう。

 そして、高い税金=大きな政府=スウェーデン方式は取らず、国民の自立税金負担の軽減=小さな政府=アメリカ型を取る、と明言する。ただ、アメリカ型ではなく、これは「自助自立を前提とした社会」だ、と言う。ここで福沢諭吉を持ってくるのが笑わせる。

 <まさに福沢諭吉が描いた世界ですよ。一人一人が勉強して稼ぐ力を身に付け、自分の足で立っていく。そうすることで初めて真に助けの必要な人に公的なお金をきちんと回すことができるんです。>

 そんなことを福沢諭吉が言っていたか? こういう引用を「牽強付会」と言う。

 郵政民営化についての言はもう紹介することもないだろう。面白かったのは「脱成長を目指す選択肢はないのですか」と聞かれて、

 <だってグローバル化の時代ですよ。インドや中国が世界で頑張っている中、もう頑張るのは嫌だ、と言うのですか。所得が増えなくていい、みんな平等にしてくれ、と国民が求めるならそうすればいい。でも国民は、景気をよくしてほしいと常に言っているじゃないですか。マイナス成長でもいい、でも景気もよくしてほしい、というのは虫がよすぎます。>

 どうしてそのような二分法しか思いつかないのだろう? 農業の構造改革など、小泉政権が避けてきた分野があり、消費税アップという小泉政権が避けてきた分野がある。円安をテコに貿易立国を続けるのが無理だ、と徐々にコンセンサスが出来てくれば、内需を徹底的に振興せざるを得ない。それは小泉上げ潮路線とは違う公正な社会を目指した改革になるはずだ。

 薄汚い改革利権を懐にしながら利いた風なことを言っても国民は信用しない。

◆竹中氏に乗ってしまった日経新聞社説には問題が多い

 驚いたのは3月10日の日経新聞社説だった。与謝野馨財務・金融・経済財政担当相の発言を批判し、竹中=小泉路線への恭順を表した極めて異例の社説である。見出しは<「規制緩和は善」は誤りなのか>。ズバリである。
 <麻生政権には小泉政権以来の構造改革路線にブレーキをかける閣僚が少なくない。郵政民営化に関して「かんぽの宿」売却を日本郵政に凍結させた鳩山邦夫総務相、医療改革について社会保障予算の増大を抑えるのは限界だと繰り返す舛添要一厚生労働相らだ。今度は経済運営の要である与謝野馨財務・金融・経済財政相が経済財政諮問会議と規制改革会議について否定的な発言をした。>

 と怨み節から始まる。ハハァー、とは思うがまさか、全面対決路線を取っているとはここでは気づかない。

 <日本経済が未曽有の危機に直面しているなかで、派遣社員の失業増の原因を規制緩和に求めるなど、反改革路線は世論の共感を得やすい面もある。だが、それが行きすぎれば民間の活力、創意工夫、投資をそぐばかりか、高コスト経済構造が温存され消費者の利益を損なう。反改革の流れを見すごすことはできない。>

 規制緩和性悪論批判だ。

 <与謝野氏の発言の趣旨はこうだ。自民党の政調会長をしていたときの体験談として「これは諮問会議で決めたものだと説得されることに不快感を持った」という。規制改革会議については「一時期、規制緩和はすべて善であるという信心がはやったが、間違った信心だ」と述べた。6日の参院予算委員会で、両会議を廃止するのが望ましいという自民党の岩永浩美氏の質問に答えた。>

 これは発言紹介。この通りである。

 <小泉政権のもとで首相官邸が経済財政政策を主導する仕組みができ、各省が事前に与党の了解をとる与党プロセスは形骸化した。そのための仕掛けが経済界出身の民間議員が議論をリードする諮問会議だった。今、与謝野氏が担当相になり、諮問会議は与党議員が不快を感じないように運営されている。与党プロセスが重視され、民間議員は主に識者として意見を述べるにとどまる。規制改革会議も牙を抜かれた虎のようだ。医療、教育、農業など改革への抵抗が強い分野ほど成果をあげるのが難しくなっている。官邸の支えがないので、それぞれの規制を担当する省庁の幹部は会議側の提言をやり過ごすのが恒常化している。>

 何を言おうとしているのか、この辺で見えてくる。草刈氏よ、しっかりしろ、規制緩和を進めてくれ、と言っているのだ。

 <医薬品のインターネット販売、診療報酬明細書(レセプト)の完全電子化への逆風も、その表れだ。急激な需要の落ち込みへの応急策として賢明な財政出動が必要な局面である。規制改革の徹底との二正面作戦で危機に立ち向かうべきだ。 >

 規制緩和の悪を徹底的に責め上げ、何を緩和すべきか、何は緩和に適さないのか、政治意思をもって決めることが最初だ。経済界の代弁人らにすべての国家改革の青写真を任せるわけにはいかない。少なくとも、橋本龍太郎政権が経済財政諮問会議を内閣の目玉として制度化した時には、経済界に鼻面を引っ張られる事態は想定していなかった。

 与謝野氏の発言のどこが問題なのだろう。日経新聞こそ、狭量な思考を改めるべきなのではないか。

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北朝鮮の「衛星迎撃は戦争」報復警告の意味とボズワース氏の行動~3月9日朝日新聞、読売新聞夕刊、10日産経新聞、東京新聞朝刊

 北朝鮮の異様な発表風景を3月9日夜のニュースショーで何度か見た。朝日新聞3月9日夕刊1面2段<「衛星迎撃なら報復戦始める」/北朝鮮>を見ると、ソウル支局の牧野愛博特派員の記事で以下のように書いていた。

 <北朝鮮の朝鮮人民軍総参謀部は9日、発射準備を進めているとみられる長距離弾道ミサイル「テポドン2」について「我々の平和的な衛星に対する迎撃行為には、最も威力のある軍事手段で即刻対応する」とする報道官声明を発表した。朝鮮中央通信が伝えた。声明は9日から始まった米韓合同軍事演習に合わせて発表された。「迎撃手段(への反撃)だけでなく、(日米韓の)本拠地に対する報復打撃戦を始める。迎撃は戦争を意味する」と警告。南北朝鮮間の軍事通信を同日から演習期間の20日まで遮断するとも主張した。軍事通信は、開城工業団地に出入りする韓国側企業関係者の名簿確認に使われており、事業への影響が懸念されている。>

 <北朝鮮は「試験通信衛星を運搬するロケットを打ち上げる準備作業」と説明しているが、麻生首相は人工衛星の打ち上げ目的であっても迎撃対象になるとの認識を表明。米政府関係者も迎撃体制について言及していた。ただ、日本の領土領海に着弾する可能性は低いとみられる上、日本政府は迎撃するかどうか最終決定していない。米韓両国も同様の状況で、ただちに北朝鮮が主張する状況には至らないとみられる。>

 何か、解釈部分で「朝日新聞的」弱腰なのが気になるが、事実関係はそういうことである。読売新聞を見ても2面3段<北「迎撃には報復」/日米韓へ警告/「戦争意味する」>とほぼ同じ見出し。こちらもソウル支局の前田泰広特派員の記事だった。

 <朝鮮中央通信によると、北朝鮮の朝鮮人民軍総参謀部報道官は9日、北朝鮮が発射した長距離弾道ミサイルを日本や米国が迎撃した場合、「軍事的手段による即時の対応打撃で応える。迎撃は戦争を意味する」と警告する声明を発表した。報復攻撃で対抗すると日米や韓国を恫喝することで、迎撃を阻止する狙いだ。ミサイル発射問題は軍事的衝突につながる懸念も出てきたと言え、状況はにわかに緊迫してきた。>

 とあくまで「恫喝」だよ、と書いているのが冷静さを感じさせる。

 <米国防総省や日本政府当局者は、北朝鮮による弾道ミサイル発射に対し、ミサイル防衛(MD)システムで迎撃する可能性を明言しているが、北朝鮮が反応を示したのはこれが初めて。金正日総書記が最高司令官を務める人民軍最高司令部も9日、異例の「報道」発表を通じ、米韓が同日開始した合同演習「キー・リゾルブ」と「フォール・イーグル」は「露骨な軍事的威嚇であり、一種の宣戦布告だ」と強く非難した。>

 と軍主導の発表である点を強調している。

 <人民軍総参謀部の声明は、ミサイル発射を「平和的な(人工)衛星の打ち上げだ」と改めて主張した上で、「迎撃の陰謀を企てた日米侵略者と南朝鮮(韓国)の本拠地に対する『正義の報復打撃戦』を開始する」と強調。また、韓国に対して、合同演習期間中は南北管理区域の「厳格な軍事的統制」を実施すると表明し、南北軍事当局間の通信も遮断した。>

 どういう意味の声明なのだろう?

 <北朝鮮の声明を受け、9日午前、南北経済協力事業「開城工業団地」に通勤しようとした韓国の進出企業社員ら約700人が、南北軍事境界線を越えられず、足止めされた。>

 まで書き込んであり、韓国側を戸惑わせる北朝鮮の狙いを透けて見せていた。

 これが「恫喝」に過ぎないことは、読売新聞の3月10日ネット版の記事で分かる。

 <南北の陸路通過、北朝鮮が再開通告…通信は遮断継続>である。これはソウル支局の浅野好春特派員の記事。

 <韓国統一省は10日、北朝鮮が米韓合同軍事演習に反発、韓国人職員らの開城工業団地や金剛山観光地区への出入りを9日から禁止していた問題で、北朝鮮軍当局が陸路通過を10日から再開すると通告してきた、と発表した。これにより、韓国人の南北軍事境界線通過は従来通り認められ、足止めされていた韓国人の往来が可能となった。ただ、「南北軍事当局間の通信」については、北朝鮮側は引き続き遮断するとしている。>

 である。韓国、日本、米国、ひいては中国、ロシアの反応を見ているわけだ。姑息な「瀬戸際外交」である。金正日政権が瀬戸際にあることが国内的にバレなければいいが。

 参考になるのは産経新聞3月10日朝刊3面<北「衛星迎撃は戦争」/報復警告、軍事緊張高める>だった。ソウル支局の水沼啓子特派員の記事だ。

 <北朝鮮が発表した9日の声明は、軍最高指令部が全軍将兵に万全の戦闘準備を整え、領土が少しでも侵犯されたら「容赦なく無慈悲に懲罰せよ」と命令し、軍事的緊張を高めている。>

 としながらも、

 <だが、金光進・韓国国家安保戦略研究所研究員は「本気で戦争を起こそうという意図はない。『迎撃するな』という単なる警告だ。相手の反応を見て、さらに強く出るのが北朝鮮のやり方。日米韓は、北朝鮮の誤った行動に対しては代価を払わせるという姿勢を見せるべきだ。北がもしミサイルを発射したら、日米は迎撃するのが原則的で正しい対処方法だ」と述べた。>

 と韓国の国家安全保障関係者のコメントを掲載していた。

 米国のボズワース北朝鮮政策担当特別代表が東アジア歴訪で6カ国協議各首席代表と意見交換し、最終目的地、ソウルで韓国の首席代表、魏聖洛・外交通商省朝鮮半島平和交渉本部長と会談後、記者団に「5カ国で協議した結果、発射は極めて愚かだ、との意見で一致した」と明らかにした、という(東京新聞3月10日朝刊国際面)。

 東京新聞によると、

 <ボズワース代表は「ミサイルであれ衛星であれ、どんな理由があっても打ち上げられないことが我々の希望」と述べ、5カ国が交渉を通じて発射を阻止する構えを強調した。>

 としたうえで、

 <「誰とでも対話するが、6カ国協議のほかの国との連携をおろそかにはしない」とも述べ、十分な意見の調整のないまま米朝協議だけが先行することへの警戒があることにも配慮を見せた。長距離弾道ミサイルが迎撃された場合、日米韓3カ国に対する報復をちらつかせて緊張を高める北朝鮮に対し、5カ国の強い結束で牽制する狙いがあるとみられる。>

 魏本部長はミサイルが発射された場合の国連制裁については5カ国が一致しているわけではない、とも付け加えた、という。中国とロシアの立場の違いを示唆したもの、福田要ソウル特派員は受け止めていた。

 ボズワース氏にとってはオバマ政権のアジア外交の最初で5カ国の足並みを何とかまとめたのでホッとしているのではないか。中国、ロシアも北朝鮮に「打ち上げるな」とメッセージを出すことまでは一致しているのだから。

 朝日新聞のように日本の迎撃決断を何とか邪魔したいのだろう。卑怯なやり方だと思うのだが、それが親北朝鮮の朝日新聞の路線だから仕方ないかもしれない。

 このようなギリギリの段階になると、人間もメディアも地が出るものだ。

 こういう時に信頼できるメディアはいつも信頼できるメディア、と言えるのではないか。

 それにつけても、新聞ではなかなかミサイル打ち上げや一連の恫喝と金賢姫氏記者会見との関連は書けないだろうなぁ。本当の北朝鮮の狙いはそれしかない、と思っているのだが。

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こういう人も包摂しながら国家を維持する、ということ:浅井基文氏の「北朝鮮の人工衛星は許される」論~3月10日毎日新聞朝刊

 面白いと言えば頭の体操としてこれほど面白いものはないのかもしれない。北朝鮮のテポドン発射が国際的に許されるかどうか、の国際法的解釈である。

 広島市立大学広島平和研究所長の浅井基文氏が毎日新聞3月10日朝刊[新聞時評]に<「北朝鮮の人工衛星」批判社説に疑問>のタイトルで寄稿した文章を見て、いまだに懲りない面々が市井に堂々と自分の主張をしながら生きているんだなぁ、と改めて認識した。

 いいことである。日本は民主主義だから何を言っても許されるし、昔のような「非国民」呼ばわりはされないから、いくら北朝鮮擁護論一辺倒であっても、学者のふりをして、一応は論理立っていれば「国賊」というのははばかられる、というわけだ。いい世の中である。

 このタイトルを見ただけで内容は想像できる。でも、実際に読んでみたら、想像通りだった。

 少し書き写してみよう。

 書き出しがふるっている。

 <私は、全国紙の社説に関心を持っている。特に毎日、朝日は、他の全国紙に比べ公正性、中立性が高いと見られている。したがって、読者にとっては物事の判断の指標として受け止められる確率が格段に大きいと思う。それだけに社説を書く際の責任は重いはずだ。>

 ここから論理はすでに破綻している。笑ってしまう。

 「私は全国紙の社説に関心を持っている」というからには産経新聞や読売新聞も毎日チェックしているのだろう。そして比較考量した場合、浅井氏は毎日新聞と朝日新聞の社説が好きだ、と言っているのだ。

 「他の全国紙に比べ公正性、中立性が高い」というのはあくまで浅井氏の主観であって、そう思わない人の方が多いのではないか。しかし、あくまで自分の考えだ、ということで「見られている」と少し曖昧ながら、主観的な「見る」という表現を使ったのはまあ許容範囲内だろう。

 本来は「私は…と見る」と書くべきだ、と思うのだが、文章の訓練が不十分な方の場合、自分では「私は…と見る」と書いたつもりで、受身形で書いてしまうというケアレスミスが生じがちだから、仕方ないと思うのだ。

 しかし、その後が頂けない。「したがって、読者にとっては物事の判断の指標として受け止められる確率が格段に大きいと思う」という文章である。ここまで曖昧にされると、曖昧さの中に何らかの意図があるのではないか、と疑いが生じる。

 つまり、「私は社説に関心がある」→「私は毎日、朝日の社説を評価する」→「私は2紙の社説が最も公正、中立だと思う」→「だから読者は判断の際の指標にすることが多い、と考える」である。

 この「だから」は「私がそう思うから」という意味なのだが、このような曖昧な文章で「だから」を使うと、「私は…思う」の部分が消えて、あたかも客観的な統計か何かに基づいた、それ自体が間違いのない内容のように受け取られてしまう危険性があるのだ。

 というよりも、その効果を狙って書いた、としか思えないずるい文章である。「格段に大きい」のは各社社説なのか、毎日、朝日の社説なのか、も曖昧だ。非常にずるい文章である。

 「それだけに社説を書く際の責任は重いはずだ」も同じだ。「はずだ」という主観的な表現を加えたから何を書いてもいいだろう、というふてぶてしさを感じるのだが、浅井氏に言われなくとも、各社の論説委員たちは公平性も中立性も考え、それだけでなく倫理性も国益も考えて社説を書いていると思う。

 倫理性があれば、北朝鮮の拉致問題をどう考えるか、が必然的に頭に浮かぶし、国益を考えれば、原爆とミサイルを持ち、反日を公然化している北朝鮮のミサイル打ち上げが日本という国家にとってだけでなく、日本国民の安全を毀損する可能性のある非常に危険な動きである、という点まで十分考えて社説を書いていると思うのだ。

 浅井氏は続けて、

 <したがって、2月27日付の本紙社説「人工衛星でも容認できない」及び翌日付の朝日社説「北朝鮮ミサイル『ロケット』は通らない」には唖然とした。両社説には北朝鮮バッシングの雰囲気が支配する国民感情への迎合を感じる。>

 と続くのだ。唖然とするのはこっちの方だ。

 北朝鮮バッシングというのはどういう意味だろうか? ここも「雰囲気が支配する国民感情」という曖昧な表現である。すべてが曖昧のままに論理を展開していく。元外務官僚として、もう少し論理的に書けないのだろうか、と思うのだが。説得力がないことこのうえないのだ。「迎合を感じる」という言葉も下品な言葉だ。「迎合」というのは他人を軽蔑する際の言葉である。朝日新聞と毎日新聞の社説に喧嘩を売っていることがここで判明する。

 そして、浅井氏は鬼の首を取ったかのように宇宙条約を持ち出し、宇宙条約で主権国家はすべて人工衛星などの打ち上げを自由にできるのだ、他国がそれを批判するのは筋違いだ、と論じる。

 <平和憲法を持つ日本が宇宙利用すること自体も許されないはずだ。>

 とまで言われると、この人は何を言いたいのか、と戸惑ってしまう。中国、ロシアが「人口衛星打ち上げに反対しない」という意向を表明したことをも得意げに書いている。だから、日本はおかしいのだ、と言わんばかりだ。

 そして、

 <北朝鮮の核実験までの強硬姿勢はブッシュ政権の強圧政策が招いた結果という認識は、米国内では今や常識である。だからこそオバマ政権の対北朝鮮対話・交渉路線につながろうとしている。>

 と書く。北朝鮮が核武装したのは仕方なくしただけで、対米防御なのだ、という論理である。だから、北朝鮮を批判するのは筋違いだ、というのだろう。原因はブッシュにある。小浜はそれを分かっているから北朝鮮を武力侵攻せず、対話で解決しようとしている、と言ってのけるのだ。

 これは事実に反する。北朝鮮が冷戦崩壊でソ連からの援助をなくし、中国からも思ったような援助を受けられず、閉鎖国家を続けなければ金正日王国が崩壊する危険性があるので、開放貿易もできない中で、イランやシリア、パキスタンという闇のコネクションの国々と連動しながら、核とミサイルを開発、それを覚せい剤や偽ドルと並ぶ外貨獲得の手段にしてきただけではないか。ブッシュだろうがオバマだろうが北朝鮮には関係ない。小浜政権も一応は対話を言っているが、完全な対話路線に転換したのではなく、「対話と圧力」の大原則の中での揺れだと思って見ている。それを完全な対話路線への転換だ、と言い切るだけの確証を浅井氏は持っているのだろうか?

 この毎日・朝日社説批判には「では北朝鮮が人工衛星だと言って日本の原発を破壊するためのミサイルを発射した場合、どうするのか」という極めて重要な国民の疑問をあえて無視して書いていないし、拉致問題の「ら」の字も書いていない。

 浅井氏が国際政治学者というのならば、そして、今や米国に原爆を落とされた広島の平和研究所長をしているのならば、ただ「平和になろう」とデモをしているだけで平和が維持されるなどという牧歌的な考えは持っていないと思う。しかし、深い考えを持っているはずの浅井氏がなぜここまで北朝鮮擁護に走るのか? 昔のバランスの取れば思考で保守政権を撃った浅井氏とは別人のようなので驚く。

 最近出版された岩波書店の「世界」臨時増刊の「東アジア」特集号で韓国の盧武鉉政権時代の南北交渉担当者が李明博政権批判を展開していたが、その韓国人の論理が浅井氏と同じだった。「北朝鮮が悪いのではない。悪いのは追い詰めたブッシュだ」というのだ。

 私はその韓国人のいうことは韓国の国益を考えた優れて戦略的な発言だと思う。いずれ南北は統一するし、その際に核保有国になるというのは魅力的ではないか。それに、韓国人は北朝鮮の核が韓国を狙うとは思ってもいない。「同胞だから」というわけだ。安全保障観が韓国と日本では全く違う。韓国で南北融和論が今でも多数派なのはそのような安心感があることも一因である。反米感情と北朝鮮への同胞感情が微妙に織り成す布地を見ているようなものだ。韓国にとっての安全保障上の問題はこのブログで何度も書いているように38度線に並んだ多弾装ランチャー砲である。一瞬のうちにソウルを火の海にするので、反撃を開始する前にソウルの3分の1が破壊される危険性がある。だから、北朝鮮との喧嘩がこわいのだ。怖い中で李明博政権はけなげにも日米韓の連携を大切にして、極東の安全保障全体のための政策を進めようとしている。そこが金大中、盧武鉉と違うところだ。李明博政権にとっては日本、米国との親密な関係を基礎に貿易立国としてまた世界に飛翔する日を待っているわけだ。

 つまり、韓国は韓国の安全保障の観点から、国益を考えながら北政策を考え、実行している。

 日本は北朝鮮からいつ攻撃を受けてもおかしくないくらい、怨まれている国である。北朝鮮が原爆を開発するのを許したことは日本の安全保障にとって大きな脅威である。そして、ミサイルはその核兵器を運搬する手段である。今回、北朝鮮が打ち上げる予定のテポドン2は日本を飛び越して米国に到達するミサイルらしい。一見、日本の安全保障に関係ないように見えるかもしれないが、そうではない。

 米国は自国の安全を最優先する。自国に届くミサイルを持った国家とは、その国家が米国に向けてミサイルを発射しないように交渉するのは当然で、例えば、日本の原発を北朝鮮が攻撃した場合、日米安全保障条約に基づき米国が北朝鮮に参戦するかどうか、北朝鮮が米国に届くミサイルを持つかどうか、で変わってくる。日本を見捨てる決断をしかねないのだ。その時、浅井氏はどうするのか? 「だから保守政権はだめなんだ」と政権批判をして終わりだろう。無責任な口先評論家はそれで済む。責任を取らない。でも、新聞社の論説委員は国家を背負って立っている、とは言わないまでも国民の安全を常に考えながら社説を書いている。浅井氏のような批判のための批判ではなく、日本が今後取るべき進路を考えながら社説を書いているのである。

 浅井氏には、少なくとも、日本人としてどうすべきか、という視点をわすれずに公共空間で発言していただくことを切に望みたい。

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小沢一郎氏の3月10日の記者会見詳報と幹事会発言~産経新聞10日ウェブ版から

 産経新聞ウェブ版は3月10日の小沢一郎氏の記者会見詳報もアップしてくれていた。

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090310/stt0903101635014-n1.htm

 会見は民主党本部で、常任幹事会後に行われた。

 コピペする。

 ――今日午前の党常任幹事会でどのような説明したのか。新聞各社の世論調査で代表を辞任すべきだとの声が多いが、進退についてどう考えるか。

 小沢氏 まずは、先週から、私の政治資金にかかわることで大変、同志の仲間のみなさんはもちろんのことですが、国民のみなさんにも大変、迷惑をおかけし、ご心配をおかけいたしましたことをこの機会におわびを申し上げたいと思います。

 今日の常任幹事会では、まず、そのことを申し上げながら、特段、そんなに詳しい話をしたということではありません。もう単純な事実でございますので、もう、みなさんもお分かりの通りで、まあ少し、ちょっと経過を申し上げたとすれば、3日でしたかね、3日だな、あれ、3日の朝に大久保(隆規秘書)から急に突然、連絡がありまして、これまた『地検からちょっと話を聞きたいという連絡があった』ということで、『ああそうか』と。『そんならありのままに話してくればいいじゃないか』と。『はい、そうします。分かりました』と言って、出かけたっきりなんですけれども、午後に会うということになっておったようですけれども、ボクも1時間、2時間すれば終わって連絡があるかと思っていましたが、全然なくて、マスコミみなさんからの情報で逮捕するとか、されたとかという話を聞いておったことでして、大変、突然、逮捕ということで、びっくりいたしました。私が今日、常任幹事会で申し上げましたのは、その出だしのところでございます。

 それから、もうひとつ、言いましたのは、私の政治家としての生涯かけての大目標は、ひとつは官僚主導の政治行政を国民主導の、国民の側に立った政治行政に改めると。それがひとつ。それからもうひとつは、日本に真の議会制民主主義を早く定着させなければいけないと。以前から諸君にもお話ししていたと思いますが、このふたつを実現するには、政権を代える以外ない。それが私の政治家としての生涯の大目標であり、夢であり、使命であるということで、私個人うんぬんの問題ではないと。その大いなる目標を達成したいと。何としても実現したいということを申し上げたということであります。

 第2のことでございますけれども、大久保の逮捕から1週間を経過して、もう8日目ですかね、に、なったわけですが、その間、私も、これもまた申し上げておりますように、収賄罪か何かの被疑者、犯人のような、ずーっと毎日、毎日の報道でございましたから、国民のみなさんがそういう中で、辞めた方がよかろうというふうに思われるとしても、それはむべなるかなと。そういうふうに感じるだろうなというふうに思っております。

 ただ、まだ収支報告書の事務処理の問題点という以外に何も明らかにされていないわけでございますので、私はそういう意味で、事柄がその他のことも含めまして明らかになれば、その時点で、国民のみなさんのご判断をいただければいいのではないかと。従いまして、私は進退については、最終的な結論が出るまでは現時点ではまったく考えておりません。

 ――世論調査は厳しい数字も出ているが、衆院選への影響も進退の判断材料になるか。

 小沢氏 今、申し上げましたように、私の政治家としての最大の大目標、目標は、そして私はそれを使命と感じておりますが、それは政権交代、それによって国民主導の、国民の側に立った政治行政を確立する。そしてこの大激変が予想される、世界的な激変が予想される今日の中で、1日も早く議会制民主主義を日本の社会に定着させる。そのことが私の大使命であると。また、生涯かけての目標でありますから、そのためには総選挙で勝利を得なければなりません。私の今後の行動の基準は、あくまでもその点において、物差しをそこにおいて判断したいと。そう思っております。

 ――小沢氏の地元の建設業者が「小沢氏との関係が深くないと公共事業を受注できない」と話しているとの報道があるが。

 小沢氏 それはどなたが言っているのか分かりませんけれども、いろんな方もおられますし、また、そういった私どもとの関係と、そういった公共事業の受注のうんぬんという結果とは関係があるとは私は思っておりません。

 以上である。もう辞任を覚悟している心境が浮かび上がっているが、各紙が3月11日朝刊で夕刊の第一報だけでなく詳しく書いた小沢氏の常任幹事会の発言で、「しばらくの間、主張を続けさせてほしい」と発言したことが明らかになった。鳩山由紀夫幹事長がこの発言をオフレコにしたが、それは無理だ。すぐに伝わって、各紙が1面トップや準トップで報じた。包囲網は完成した。あとはタイミング、という段階に入った。

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英国の新聞の続き物は大局的だ~FT紙3月9日:JBpressより

 英紙フィナンシャル・タイムズが長期連載[資本主義の未来]をはじめたそうだ。3月9日付[仕込まれていた自滅の芽]の日本語訳を3月10日にJBpressがホームページにアップしていたので、読んでみた。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/700

 前文は

 <市場主義が広がった1980年代以降支配的だった仮説が今や、ずたずたになった。政府の守備範囲が再び広がる一方、自由気ままな金融の時代は終わった。だが、今の危機はそれ以上に広範な影響を及ぼす可能性がある。>

 という一見散漫に見えるものだった。

 <イデオロギー上の神がまた凋落した。過去30年間にわたって政策と政治を支配してきた仮説が、突如、社会主義革命と同じくらい前時代的に見える。>

 <「英語で最も恐ろしい9単語は、『I'm from the government and I'm here to help(政府から来ました、助けになります)』という言葉だ」。米保守主義のヒーロー、ロナルド・レーガンはかつて、皮肉たっぷりにこう言った。今、各国政府が数兆ものドル、ユーロ、ポンドを金融システムにつぎ込む中で、このセリフは古代史のように思える。>

 <「政府は悪、規制緩和された市場は善」――。アイン・ランドに学び、自由化時代の卓越した中央銀行家だったアラン・グリーンスパンが昨年10月の議会証言で「株主資本を守るという金融機関の自己利益」が失敗したことについて「信じ難いショック状態にある」と語った後、こうした信念が無傷で済むわけがない。>

◆中央計画経済の死と冷戦の終焉

 <西側諸国では過去30年間にわたる市場主義のイデオロギーは、混合経済つまり1950年代、1960年代、1970年代のケインズ・モデルの失敗に対する反応だった。>

 <市場主義への傾倒に伴って起きたのが1980年のレーガンの米大統領選出と、その前年のマーガレット・サッチャーの英首相就任だった。これに匹敵するほど重要だったのは、インフレを退治した米連邦準備理事会(FRB)議長、ポール・ボルカーの役割だ。>

 <しかし、もっと大きな数々の出来事がこの時代を形作った。鄧小平の指揮下で計画経済から市場経済へ移行していった中国の変遷、1989年から1991年にかけてのソビエト共産主義の崩壊、1991年以降のインドの内向きな経済政策の終焉――。中央計画経済の死、冷戦の終焉、そして何より、急激にグローバル化を遂げる経済に数十億人の参加者が新たに加わったことが、この時代の最高潮だったと言える。>

 <巨大な世界金融危機と世界同時不況が起きている今、世界は再び変わりつつある。>

 <金融システムは市場経済の頭脳だ。もし、それがこれほど高くつく救済を必要としているなら、政府を排除するレーガンの思想の何が後に残るのだろう。もし金融システムが破綻したら、市場の信頼の一体何か残るのか。>

 <転換点において、我々がどこに向かっているのか知ることは不可能だ。混沌とした1970年代に、次の時代がインフレの収束と資本主義の急発展、共産主義の死を見ることになると推測した人はほとんどいなかった。>

 <今後何が起きるかは、まだ決断されていない選択と、まだ分かっていないショックにかかっている。ただ、金融崩壊と深刻な景気後退―それより悪い何かでないとして―の組み合わせは、間違いなく世界を変える。>

◆世界経済が今に至った理由

 <市場の正当性は弱くなる。米国の信頼性は損なわれる。中国の権威は高まる。グローバリゼーションそのものも沈んでいくかもしれない。今は激変の時なのである。>

 <世界はどうして、ここに至ってしまったのだろうか。その答えの大きな部分は、自由化は自滅の芽を内包していたということだ。>

 <これはまた、金融セクターの規模と収益性が爆発的に拡大し、世界のマクロ経済の不均衡が急拡大した時代であると同時に、家計の債務と資産価格のバブルが膨らんだ時代でもあった。>

 <グローバルな市場経済の中核を成し、今の嵐の中心地である米国では1981年にGDP(国内総生産)比22%だった金融セクターの債務総額が2008年第3四半期には同117%まで跳ね上がった。>

 <金融活動に大きく依存する英国では、金融セクターの債務総額がGDP比250%近くに達した。>

 <メリーランド大学のカーメン・ラインハート教授とハーバード大学のケネス・ロゴフ教授は、自由化の時代は金融危機が著しく頻繁に起きた時期であり、1900年以降、この時代を凌ぐのは1930年代しかないと主張する。>

 <また、この時代は巨大な資産バブルが膨らんだ時期でもあった。>

 <新興諸国は自国の為替レートを低く抑えるために介入し、外貨準備高を積み上げることで、巨額の経常黒字を計上。民間資金の流入と合わせ、これを公的資本流出という形で還流させた。>

 これがいわゆる「帝国循環」だね。

 <新興国の外貨準備だけを取ってみても、1990年代の終わりから2008年7月のピーク時点までに、5兆3000億㌦もの増加を見た。一部高所得国の伝統的な黒字と急激に増加する石油輸出国の黒字に加えて積み上がった新興国の資本フローは、その大半が一握りの高所得国、中でも特に米国に向かった。ピーク時に米国は米国以外の世界の黒字全体の約70%を吸い上げた。>

◆借り入れの急増と金融革新

 <一方、米国内では、GDPに対する家計債務の比率が1997年の66%から、10年後には同100%に上昇した。英国ではそれより大きな家計の債務増加が起きた。こうした家計債務の急上昇を支えたのが、極めて弾力性が高いイノベーティブな金融システムで、米国では政府の対策もこれに貢献した。>

 借金で買い物をする米国人、か。エクイティーローンの問題でしょう。税金対策にもなっていたのだから。

 <この間、金融セクターは一貫して革新を遂げていった。伝説の投資家ウォーレン・バフェットデリバティブ(金融派生商品)を「金融の大量破壊兵器」と呼んだ。その見方は、少なくとも部分的には正しかったことが証明された。2000年代に入ると「影の銀行システム」が台頭し、伝統的な銀行業務の大部分が債務担保証券(CDO)などの証券化を通じた組成販売型モデル(originate and distribute model)に取って代わられた。>

 <我々は今、1930年以降、最も深刻かつ広範で最も危険な金融危機を目の当たりにしている。ラインハート、ロゴフ両教授が別の論文で主張したように、「銀行危機は生産高と雇用の深刻な落ち込みと結びついている」。その原因の一端は借り入れが過剰なバランスシートにある。米国では債務総額がGDP比350%に迫り、史上最高を記録した(そのうち85%が民間部門の債務)。1980年の160%強から2倍以上に高まったことになる。>

 <このショックの結果として考えられる成り行きがいくつかある。巨額の対外債務を抱えている国が、需要を維持しようとして、長期にわたり巨額の財政赤字を計上する事態、長引く世界不況、極めて過酷な世界的な国際収支の調整、ドルの崩壊、インフレの高騰、そして保護主義への傾倒――。>

◆激変期を迎える金融セクター

 <こうした変革は間違いなく、当の金融セクターで最も激しい形を取る。高度な近代の金融は、それを最もうまく管理できる人にリスクを移転させられるという言い分は、誤りだったことが明らかになった。代わりにリスクはそれを最も理解できない人に移転されたというのが今日のパラダイムである。>

 <ボルカー氏は昨年4月のスピーチで次のように語っている。「単純に述べるなら、巧みな新しい金融システムは―これだけ有能な参加者とこれだけ手厚い報酬にもかかわらず―市場のテストに失格した」。>

 <イングランド銀行の金融安定化担当幹部、アンドリュー・ホールデンは最近の報告書で、銀行が自分たちが管理すべきリスクをどれほど理解していなかったか述べている。>

 <彼はこうした失敗の原因は「惨劇に対する近視眼性」(リスクを過小評価する傾向)と、「ネットワークの外面性」に対する理解不足(一つの金融機関から他の金融機関への波及)、そして「偏ったインセンティブ」(上振れした時は従業員のものとなり、下振れした時は株主と納税者の負担になる)にあると述べた。>

 <危機の後、我々は間違いなく、1925年にウィンストン・チャーチルが望んだように、「鼻を折られた金融を目にする」だろう。一時的かもしれないが、市場は厳しい規律を課すことになるし、規制も強化される。>

◆「グローバリゼーション解消」の動きも

 <それほど明白でないのは、政策立案者たちが構造的な改善策を練るかどうかだ。>

 <商業銀行を投資銀行から分離する、または、破綻させるには大きすぎる、あるいは相互に絡み合いすぎている金融機関の規模と複雑さを強制的に減退させるといった策だ。また、政府の権限が増すに従い、銀行活動のかなりの部分が自国市場に回帰することも十分想像できる。だとすれば、これは「グローバリゼーション解消」と呼べる動きだ。>

 <チャーチルはまた、工業が「もっと満足する」ことを求めていた。しかし、短期的には金融システムの崩壊はそれとは正反対の世界的な工業の不況をもたらしている。>

 <不況は実体経済のすべての重要セクターに広がっており、その多くが声高に支援を求めている。が、もし金融システムが機能不全であるとすれば、我々は、企業を監督する方法としての株主価値の最大化をどれほど頼りにしていいのだろうか。何しろ、株式保有のかなりの部分は、金融機関が握っているのだ。過去18カ月間の出来事はこの概念の愚かさを立証している。多くの人は、金融関係者や市場の意見を優先させるよりも、経営者に会社の方向性を決めさせた方がいいと結論づけるはずだ。>

◆企業の方向性は経営者が決めるべき

 <その結果起きそうなのは政府が物言う株主、つまりヘッジファンドやプライベートエクイティ(非上場株投資会社)、その他の投資家から企業を守ろうとする姿勢を強めることだ。>

 <不備のある金融システムが信頼を失うに従い、市場プロセスそのものも正当性が損なわれる。これは、自由気ままな「アングロサクソン」的なアプローチについて特に言えることだ。>

 <それと同じくらい起きる可能性があるのは、金融政策の大きな変化だ。>

 <マクロ経済のコンセンサスは、金融政策と財政政策の責任の分離財政政策の自動操縦中央銀行の独立性、そして金融政策の決定をインフレ目標型に向けることを支持してきた。しかし、金利がゼロに近い状態にあっては、金融政策と財政政策の区別は消える。より根源的なのは、金融政策の決定において資産価格を無視するという従来の見識が問われていることだろう。>

 <多くの人は、ボルカー氏の後を継いだグリーンスパン氏が、バブルおよびバブル崩壊の土壌を作ったと主張する。彼はよく、バブルをリアルタイムで特定し、弾けさせるよりも、バブル崩壊後に処理した方が簡単だと述べていた。>

 <FRB副議長のドナルド・コーンは昨年11月、その教義を再評価してオーソドックスな姿勢を再び述べたが、多少の苛立ちも感じられた。コーン氏は今「投機ブームとその崩壊(完結するのに数年の歳月を要することもある)が実体経済に与える重大な影響がはっきり示された以上、中央銀行は恐らく、経済展望を予想し、それに沿った適切な政策金利の道筋を熟考するうえで、常に長い地平線を見据えるべきなのだろう」と述べている。>

 <中央銀行は金融政策か規制上の措置を介して、それより踏み込む必要がある。しかし、巨大な金融危機と深刻な世界的景気後退―それより悪い事態でないとして―はもっと広範な影響を及ぼす。>

◆1930年代の大恐慌がもたらしたもの

 <1930年代の大恐慌の時に何が起きたか思い出してほしい。失業率は米国を含む主要国で労働力の4分の1に達した。このことはリベラルな民主主義国においてさえも、半世紀にわたって資本主義と政府の役割を塗り替えた。>

 <失業率の急上昇は自由貿易の崩壊を招き、社会主義と共産主義の信頼性を強固にし、発展戦略に関する多くの政策立案者の考え方を輸入代替政策に傾倒させた。>

 <大恐慌はまた、外国人嫌いと権威主義にも発展していった。怯えた人々は内向きになり、社会と社会の間、そして社会の中に溝ができた1930年にナチスはドイツの有権者の18%の支持を獲得した。大恐慌のピークだった1932年には、支持率が37%まで上昇した。>

 <今、既に目に見える変化の一つが、報酬に対する姿勢だ。米国と英国でさえ、支援を受けた金融機関の報酬の水準と体系に直接介入している。考えられなかったことが常態化するまでに、1年間しかかからなかった。>

 <これと同じくらい明白なのが、不公平に対する姿勢の変化だ。際立った能力に対する手厚い報酬は容認できた。それが代償が大きな無能さへの報酬となると、我慢ならない。今再び、富裕層に対する限界税率が復活しようとしている。>

 <だが、もうひとつのインパクトは、不安感に対するものだ。年金の貯蓄を政府が運営するペイゴー原則の制度から市場ベースの制度へ移すことの信頼性は大幅に減退する。もっとも、皮肉なことに長期投資で利益を上げる機会は大きくなったのだが。>

 <政治というものは市場と同様、行き過ぎることがある。>

 <安全性の追求は、市場に対する政治の支配力を強めることになる。政治への傾斜は、世界から国家へのシフトを伴う。このことは金融では既に明白だ。それは自国メーカーを救済する決意にも表れている。>

 <しかし、保護主義的な介入は、既に明らかになったケースよりずっと大きな広がりを見せるだろう。今はまだ初期段階なのである。>

◆危機の影響が大きい新興国

 <危機の影響は特に、新興国で厳しいものになる。極端な貧困に苦しむ人の数は増えていき、新興中流階級は減っていく。多額の債務を負った新興国の一部は間違いなくデフォルト(債務不履行)する。>

 <地元や世界のエリート層や市場、場合によっては物質的な発展に対する信頼性までが弱まっていき、それが破滅的な社会的、政治的帰結を招く恐れがある。危機の責任が全くない新興国がこの危機を乗り切れるよう支援することは、不可避なのである。>

 <西側諸国全般、そして特に米国が事の展開に与える影響力も損なわれる。西側の金融システムが崩壊する一方で中国のそれが発展していることは、「一極体制の時代」の屈辱的な終焉を告げている。西側の政策立案者は対策に腐心しているが、彼らのクレディビリティーは崩れ落ちたままだ。今でも「先生」を信頼する人がいるだろうか?>

 <こうした変化は世界がグローバル経済を運営していく力だけではなく、戦略的な課題――脆弱な国家、テロ、気候変動、そして新たな大国の台頭など――に対応する力をも危うくする。>

 <極端な場合、ほぼすべての人が依存するようになったグローバル経済の統合が反転する可能性もある。グローバリゼーションというのは1つの選択肢なのだ第1次世界大戦以前の数十年間におよぶ統合された経済は崩壊した。再びそれが崩壊する可能性はある。>

◆テストに失敗した「新資本主義」

 <筆者は2007年6月19日付の「新資本主義」に関する記事を、それはなお「試されていない」という結論で締めくくった。問題のテストはやって来た。そして新資本主義はその試験に落ちた。>

 <金融自由化の時代は終わった。だが、1930年代と異なり、信頼に足る市場経済の代替策は存在しないし、国際的な協調という長年続いた習性は、かなり強固なものとなっている。>

 <「どうやら、私たちはもうカンザスにいるわけじゃない気がする」。『オズの魔法使い』のドロシーは、竜巻にのまれて自分の家と犬とともにオズの世界に落とされた時、こう言った。>

 <過去30年間の世界はもう過去のものとなった。この金融の竜巻が去った後、我々がどこにいるかは、我々自身が探し求め、決断することだ。>By Martin Wolfc The Financial Times Limited 2009. All Rights Reserved.

 時代が大きく変わる時なのか? 1989年のベルリンの壁崩壊でも将来の方向性を見いだせなかった日本の指導者たち。今回、変な方向には行ってほしくない。

 それにしても、このマーチンさん、2年前にも同じような記事を書いていたんだね。日本のバカバカしい「消費税上げか埋蔵金か」などという小手先の論争は早くやめて、もっと根源的な調査をしておかないと、また乗り遅れる。新自由主義にならば、いくらでも乗り遅れていいし、乗らないほうがいいのだが、リニューアルした「第三の道」だったら、乗り遅れずにくっついていかないと、将来は暗いだろう。

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2009年3月 9日 (月)

思った通り北朝鮮がミサイル迎撃反撃発言をしてきた:本当の狙いは金賢姫氏だ~毎日新聞3月9日のネット版から

 北朝鮮が日本の「ミサイル迎撃]論に正面切って反撃してきた。想定された事態である。北朝鮮が強気になっているのは中国、ロシアが北朝鮮のミサイル発射を「衛星打ち上げで問題ない」と見ていることが明らかになったうえに、訪中したボズワース米北朝鮮政策特別代表が中国側の説明を了承して、国連安保理でのさらなる制裁決議に消極的な姿勢に転じたとの報道がなされるなど、国際社会で北朝鮮のミサイル打ち上げを容認する声が強くなっている現状があるからだろう。

 日本がここで軟弱な対応しかできなくなるのか、きちんと筋を通せるのか、問われることになる。

 毎日新聞が3月9日のネットにアップした記事<北朝鮮:ミサイル迎撃なら報復 日米韓に警告>を読んでみる。北京支局の西岡省二特派員の記事だ。

 <北朝鮮の朝鮮人民軍総参謀部は9日、報道官声明を発表し、同国が長距離弾道ミサイル(北朝鮮は「人工衛星」と主張)を発射して日米韓が迎撃すれば即時に反撃し、3カ国の本拠地に対する「正義の報復打撃戦を開始する」と警告した。朝鮮中央通信が伝えた。日米などの迎撃論への北朝鮮の反応は初めて。>

 <一方、金正日総書記が司令官を務める軍最高司令部も報道を発表し、同日から実施された米韓合同軍事演習「キー・リゾルブ」「フォール・イーグル」を「一種の宣戦布告」と非難した。報道は、すべての人民軍将兵に対し、万端の戦闘準備を整え、少しでも領土を侵犯された場合、反撃するよう命令を出したと表明した。軍最高司令部の立場表明は異例。>

 <総参謀部も報道官声明で、演習期間中は南北軍事当局者間の通信回線を遮断すると表明した。>

 <今回の二つの立場表明で、北朝鮮と日米韓の間の軍事的緊張が高まるのは必至の情勢となった。>

 以上である。まだ北の声明そのものしか分からないのだが、基本的には前にも書いたように北朝鮮の最大の懸念は中曽根外相が3月9日午前の記者会見で日程を発表した釜山における3月11日午前の金賢姫氏の田口さん家族への面会と記者会見である。今まで「大韓航空機爆破は韓国の陰謀」と強弁してきた北朝鮮が論理的に矛盾し、この事件で追い込まれ、もしかすると何かのきっかけで米国がまたまたテロ国家指定の材料に使うかもしれない、という北にとっては非常に恐ろしい場面なのだ。

 できれば金賢姫氏を暗殺したくて仕方ない。しかし、それが出来るかどうか分からない、という緊張状態が11日まで続くだろう。田口さん家族2人との共同記者会見は北朝鮮にとって唯一の暗殺のチャンスである。その場を騒乱の渦に巻き込めば、暗殺はしやすい。

 ここで緊張を高め、11日午前に合わせてミサイルを発射し、もしも日本がミサイルを撃墜したら、イージス艦を攻撃するかもしれない。それはあくまで陽動作戦なのだ。本命は金賢姫氏の命である。

 日本も米国も韓国の情報機関と緊密に連携を取って、北朝鮮の策動に乗らないよう、心すべきだろう。

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8割「説明は納得できない」、5割強「辞めろ」:小沢氏問題各紙世論調査が一致~3月8日毎日新聞、9日朝日、読売、日経新聞朝刊から

 最近は新聞の世論調査結果を他社が記事にする傾向が強まった。いいことだと思う。そうしないと比較できないし、その調査だけが突出した数字なのか、全体の傾向がそうなのか、も検証できないからだ。日経新聞3月9日朝刊2面<西松建設事件/小沢代表に世論の風圧/民主内 進退論広がる>には[小沢代表に関する新聞各社の世論調査(%)]表がつけられていた。

                       朝日    読売     毎日     共同

辞任すべきだ               57     53.1     57       61.1

辞任する必要はない          26     36.1      33      28.9

説明に納得できる            12     11.5      12      12.4

説明に納得できない           77     80.8     79       78.4

 (朝日、読売は8日のホームページ、毎日は8日付け朝刊)という注釈もついていた。ホームページに各社のニュースがアップされ、それが一つの客観的な批評対象となってきたために、このようなリアルタイムでの比較が可能になった、ということだろう。

 日経新聞がこのまとめ記事の脇につけていた小さなハコ記事<「小沢代表は辞任を」61%/共同通信が世論調査>も上の表に書き足しておこう。

 つまり、金曜日から日曜日までの世論は半数以上が「小沢さんは辞めた方がいいよ」と考えており、「こんなことで辞めたらだめだ。断固、政権交代に邁進せよ」という人は約3割。10人に8人近くが連日の小沢氏の説明を胡散臭いと感じ、納得しているのは10人に1人強だけだった、ということだ。

 これはきつい。

 秘書逮捕直後に国民が感じた「国策捜査ではないか」という疑念が消えたわけではないが、それにしても小沢氏側の悪どい手口が次々明らかにされたことで、普通の人たちは「もう、いくら小沢氏が強気一辺倒でも乗り切れない」と分かってしまった、ということだろう。

 この雰囲気を助けたのは逆説的だが、漆間巌官房副長官と河村建夫官房長官だった。漆間氏は内閣記者会(首相官邸記者クラブ)の副長官番記者との定例懇談で質問されて、バックグラウンド説明のつもりで「自民党までは捜査はいかないだろう」と口を滑らせた。警察庁長官経験者である。捜査情報をどこまで持っているのか、記者会は緊張し、「政府高官」発言として読者を驚かせた。

 素直に反応したのが民主党だった。四面楚歌だった民主党は命綱が投げられた、と思ったのだろう。鳩山由紀夫幹事長が「政府高官」を批判。ラジオで鈴木宗男氏が「政府高官は漆間氏」としゃべったことを受けて、朝日新聞は「漆間問題」と実名を出し、各社も追随した。ここまでだったら政府の失態なのだが、実は東京地検特捜部はその後、自民党の二階俊博経済産業相の秘書も捜査対象にする方針に転じた。

 つまり、漆間発言は嘘だったことになった。

 地検にとっても漆間発言は背中を押す抜群のタイミングの発言だった。金額の違いから、二階氏側の立件に逡巡していた検察が世論の後押しで立件に踏み切るわけだ。

 また、結果的に漆間氏の発言は単なる予想屋の発言だったことがばれた。地検も政府・自民党も二階氏に何の恩義もない。二階氏側を人身御供にすることで捜査の公平性への批判を封じることが出来る、という結果になる。これも漆間氏の失言のおかげである。

 そこまで読んでの発言とは到底思えないが、結果オーライだったわけだ。

 読売新聞3月9日朝刊1面<民主「小沢離れ」加速/鳩山幹事長、進退問題に言及>で、

 <鳩山幹事長は8日のNHK番組で「進退問題が浮上しないと言い切るつもりはない。新たな事実が判明したら新たな展開になる」と述べ、捜査の進展によっては小沢氏の代表辞任もあり得るとも認識を示した。>

 というものだ。民主党も急旋回せざるを得なくなっている。

 かといって麻生内閣の支持率や自民党の支持率が上がっているわけではない。小沢支持者の大部分は一時的に政党支持なし層になってしまったわけだ。

 日本の政局は膠着状態に陥ってしまったのだろうか? もう少し時間をかけて考えてみよう。

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2009年3月 7日 (土)

小沢代表の3月7日の記者団との遣り取り~産経新聞ネット版から

 産経新聞のウェブ版は3月7日も、同日の小沢一郎・民主党代表の記者団との遣り取り詳報をアップしていた。助かる。7日午後、東京都千代田区の民主党本部で記者団の「ぶら下がり」取材を受けた、という。西松建設に関する部分をコピペさせて頂く。

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090307/stt0903071359006-n1.htm

▽(西松建設の違法献金疑惑について、政府高官が「自民党には捜査が及ばない」と発言した問題で、与野党から批判が出ているが、見解は)うん、ボクは直接その話は聞いてませんので、コメントする立場じゃないですけれども、それが事実とすれば、ちょっと奇異な感じがしますね。

▽(二階俊博経済産業相に捜査の手が伸びているという情報があるが、見解は)それはもう、人様のことですから分かりません。

▽(小沢氏は昨日、自らの進退問題について「結論が出た段階で判断する」と述べたが、結論とはいつの段階を言うのか)それは分からない。最終的にこうだという結論が出たときということです。

▽(それは起訴された段階か。判決が出た段階か)だから、その時点、私どもはその今回の逮捕についても合点がいかないということ言っているわけですし、それから、従って、それが起訴されたり、あるいは裁判で罪になったりというようなことは考えていないというのが現状の段階ですから、まあ、いずれにしても、時期がいつか私から何日とか、いつごろとかということではないと思います。常識的に、最終的な結論が出た場合ということで申し上げました。

▽(自民党の議員は献金を返金する意向を示しているが)ですから最初から申し上げております。これもまた、そういった違法な仕方で、脱法か、な仕方で政治団体の原資が集められたものだったということが、今はまだマスコミを通じてしか分からないわけですから、それが確定した時点におきましては、私は最初からそういう場合には返金したいと言っております。ですから、それは変わりありません。

▽(二階氏については裏献金を受けていたと報じられている。自民党の説明責任についてはどう考えているか)それはもう、今さっきも言ったように、二階さんのことについて私は分かりませんから。とやかく今、論評する何ものも持っておりません。それから、自民党の国民に対する、本人と自民党の国民に対する説明責任は、それはそれぞれ、本人と自民党が考えることだと思います。

▽(逮捕された大久保隆規秘書は岩手県内で影響が大きかったという話が出ているが)私は、彼がそれだけの力というか、影響力とか、いうのを持っているとは思いませんし、また、それをいろんなかたちで行使したというふうには思っておりません。

▽(大久保秘書が西松建設本社に行き、西松建設幹部と献金方法の詳細について話し合っていたそうだ。そのことを知っていたか。事務所の体質として問題はないか)あの、会見の時からずっとこの問題、起きてから、申し上げておりましたが、献金は本当に大勢の方々から個人、法人問わず頂いておりますから、個別の献金のことにつきましては、私は報告は受けておりませんから分かりません。ただ、一般論として、献金してくださる方にお願いを申し上げるということは、直接、お願いできる方もあるし、それから大勢ですから、直接、お願いでもって、会って回ることもできない方も、そのような方には今回も、あるいは今年もよろしくお願いしますという文書でお願いをしておるということは知っております。それは、いずれにしても、献金をしてくださる方に、その、よろしくお願いしますということ自体は、これは社会通念的にも、政治献金だけじゃなくてそれはごくごく当然、自然のことだと思います。

▽(衆院選に向けた地方行脚の再開のめどは)地方行脚、したいけれども、こうやって、もう諸君に囲まれてちゃ、地方行脚もできないから、できるだけ早く、もう、地方へ出て、晴れてみなさんとまた話し合い、ふれあいの期待を設けられたい、できるだけ早くそういう機会がまた来るように、というふうに願っています。

 連日、記者団と話すというのは小沢氏の戦術なのだろう。相当リスクのある戦術だ。地検は全部フォローしているわけだし、その談話に矛盾点が出てくれば、参考人聴取の際に問い詰められる。だから、本当はこんなに連日顔を晒したくないはずだ。しかし、それが出ざるを得ないということは、地検のリークでどんどんと起訴容疑の内容が世間に知られ、小沢氏まで視野に入れた「悪人」像が定着するのを防ぐためなのだろう。両方のリスクを測った上での選択なのだろうが、逆に言えば、小沢氏は相当に追い詰められている、と見るのが常識的な見方かもしれない。

 小沢氏事情聴取がいつか、が今後の大きな節目なのか。検察首脳会議をいつ開くのか。検事総長はすでに捜査内容を知っているはずだから、その首脳会議は建前の会議に過ぎないのだが、検察としてそこまでやるかどうか、という点で注目される。

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北朝鮮の「民間航空機の安全保証せず」声明は金賢姫氏の11日の田口さん家族との面会前の打撃緩和策だ~日経新聞3月6、7日、朝日新聞3月7日朝刊

 日経新聞3月6日朝刊国際面メモに<「民間機の安全保証できない」>の短い記事が載っていた。ソウル支局の尾島島雄特派員の記事だ。内容は次の通り。

 <北朝鮮の対韓国機関である祖国平和統一委員会は5日、米韓両軍が9日から20日まで実施する合同軍事演習「キー・リゾルブ」などの期間中に「北側の領空とその周辺、特に東海(日本海)の上空周辺を通過する南朝鮮(韓国)の民間航空機の安全を保証できなくなった」との声明を発表した。朝鮮中央通信の報道を朝鮮通信(東京)が伝えた。北朝鮮は米韓合同軍事演習に強く反発している。>

 というわずか10行の記事だ。

 韓国は気持ちが悪いから大韓航空機の航路変更をした。

 朝日新聞3月7日朝刊<大韓航空機が航路を変更/北朝鮮の警告で>は「警告」という言葉遣いがいかにも朝日新聞らしくて笑ってしまうのだが、本当は「脅し」だろう。

 それはともかく、記事によると、在韓国連軍は6日、板門店で開いた北朝鮮の人民軍との会談で声明撤回を求めたが、北朝鮮は応じなかった、とある。

 大韓航空が変更を決めたのは米東部からカムチャッカ半島や北朝鮮領空付近を経て韓国に至る路線など。アンカレジ発の貨物便は6日朝、従来よりも日本寄りの航路を取って予定より30分遅れで仁川空港に到着した。アシアナ航空も同様の措置を取った、とある。

 <韓国の国土海洋省によると、北朝鮮の飛行情報区を通過する民間機は1日34便。迂回により飛行時間が15~40分増えるほか、追加費用が300~400万ウォン(約25万円)ほどかかるという。>

 <一方、韓国統一省は6日、北朝鮮の声明について「国際規範に反した反人道的な行為で、正当化できない」とする報道官の論評を発表。声明が長距離弾道ミサイル「テポドン2」の発射予告の可能性もあるとの見方を示した。>

 と書いていた。事態はもっと深刻だったらしい。

 日経新聞3月7日朝刊<「安全保証できぬ」北朝鮮声明/周辺国に波紋広がる/空・海航路変更相次ぐ>である。シンガポール航空も航路変更をした、という。韓国政府は近く国際民間航空機関に「軍事的脅威で民間機の安全に不安を与えている」と問題提起するという。

 また、韓国海軍や船舶業界などは6日までに釜山とロシア極東地域を結ぶコンテナ船航路を当面の間、北朝鮮近海を通る従来のルートから日本の領海近くを通るコースに変更することにした、とあった。聨合ニュースの報道だ、という。

 板門店の会談では北朝鮮は「わが共和国の安全を守るための自衛的措置」と主張して譲らず、米韓合同演習を中止しない限り「敵視政策に対応した強力な措置を要求していく」と主張した、と書いていた。

 朝日新聞の書いている韓国政府の反応が正しいとすると、わざと論点をずらしているように思える。

 北朝鮮が注視しているのは11日の金賢姫氏の証言なのだ。大韓航空機爆破事件が北朝鮮の犯行だ、と金賢姫氏が説得力をもって説明した場合、北朝鮮は言い逃れできなくなる。強弁しても、韓国内の民主化勢力も信じなくなるかもしれない。その場合、つまり、北朝鮮にとって最悪のケースに備えて、「民間機も当時は韓国が軍事的な使い方をしていた」などと言い訳するための布石だと思う。撃墜ではなく計画的爆破だったから「だから撃墜した」とは言えないだろうが、そこをどう誤魔化すか。誤魔化しの名人がそろっている北朝鮮だから何を言い出すか分からない。

 それと、やはり危険なのは金賢姫の生命である。韓国は徹底した防御をしないと、パレスチナの自爆テロ的な犯人が下着にプラスチック爆弾を仕込み、記者会見の席で自爆すると金賢姫氏の命が危ない。徹底したボディチェックで会場を警備してほしい。世界に金賢姫氏の映像が流れる大舞台だ。おさおさ準備を怠りなくしてほしい。

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北朝鮮のミサイル発射と弾道ミサイル破壊措置命令:朝日新聞は北朝鮮の新聞なのか?~3月7日朝日新聞朝刊、3月9日日経新聞朝刊から

 北朝鮮のテポドン2ミサイル発射時期が迫っているようだ。日本政府は過去の教訓から今回は弾道ミサイル撃ち落とし作戦を敢行するのだそうだ。ようやくそこまで来たか、という感じだ。ここまで来るのに1998年のテポドン1ミサイル発射から見ても、11年かかったわけだ。日本の民主政治は分配の政治を主流に「結果の平等」を重視した社会民主主義型の政治システムだったこともあって、国の意思決定に時間がかかる。11年というのは有事即応という意味では「何も出来ない」に等しいのだろうが、幸い、朝鮮半島で戦争が起きなかったから、何とか間に合ったわけだ。

 朝日新聞3月7日朝刊政治面<ミサイル防衛なお課題/北朝鮮の発射予告/日公表で破壊命令も/迎撃、実験では失敗>はその歴史的経緯と、まだ日本の防衛システムに穴が開いている現状を朝日新聞らしく批判的論調も交えながら紹介していた。とても参考になる記事だった。筆者は田伏潤、樫本淳、石松恒3記者だった。

 記事のエッセンスを写しておく。

▽北朝鮮は1998年にテポドン1を発射、日本を飛び越え、一部が三陸沖の太平洋上に落下した。2006年のテポドン2の発射は失敗し、空中分解した。

▽今回のテポドン2発射に関しては、日本は2005年の自衛隊法改正で新設した「弾道ミサイル破壊措置命令」を防衛相が発令する可能性がある。麻生首相が3月2日、記者団に「直接(日本に)被害が及ぶのであれば、自衛隊法で対応できる」と明言したものだ。麻生首相は最近、周辺に「やる(迎撃する)に決まっているじゃないか。日本に落ちるかもしれないものは無視しない」と語っている、という。日本にとってはミサイルを迎撃する法律と装備を整えた後、初めて迎える「危機」だ。

 2005年の自衛隊法改正、とある。小泉政権である。有事立法は小泉政権以前にはほとんど手が付かず、小泉時代に一気に進んだ分野だった。

 2001年9月11日の米同時テロの衝撃が大きかった。01年10月29日にはテロ対策特別措置法が成立し、米軍などに対する自衛隊の補給、輸送、修理など7項目の物品役務業務や他国兵など捜索救助活動を定めた特別措置法だった。そして、03年5月23日の個人情報保護法という一見何の関係もないように見えて本当は重要な法律ができ、03年6月6日には武力攻撃事態法など有事関連3法が成立。03年7月26日のイラク復興特別措置法を経て、2004年6月14日には有事関連7法が成立した。これは有事の際の国民の避難・救援手続きを決め、国と地方自治体の役割を明確にした国民保護法や米軍と自衛隊との関係緊密化を狙った米軍行動円滑化法などが中心だった。

 その後、この自衛隊法改正があったわけだ。

▽政府は2007年に迎撃用の海上配備型迎撃ミサイル(SM3)、地対空誘導弾パトリオット3(PAC3)の配備を始めた。現在、日米の情報収集衛星などにより、情報分析を進めている。発射の兆候があれば官房長官、官房副長官、官房副長官補、内閣危機監理官らが首相官邸で対応を協議する。日本に飛来する恐れがある場合、首相を議長とする安全保障会議を開き、首相の承認を得て浜田防衛相が破壊命令を出す。

 この手続きは妥当だろう。

▽日本に飛来の恐れがあるとまで認められない場合も、事態が急変し首相の承認を得る余裕がないことを想定し、防衛相が安全保障会議を経ずに破壊命令を出しておくこともできる。その後、日本飛来の可能性が出てきた場合、時間的余裕があれば首相の承認を得るが、間に合わなければ、そのまま迎撃を行う。

 これも当たり前で、首相がゴルフ場にいたり、海外出張中で、連絡が取れない場合など、原爆を積んだミサイルをそのままにしておくわけにはいかないのだから。

▽防衛相が首相の承認なしで行う破壊命令を、政府は公表しない方針だ。この場合、実際の迎撃が行われて初めて事実が公表されることになり、文民統制(シビリアンコントロール)が不十分との批判も受けそうだ。

 なぜシビリアンコントロール上問題があるのか? 防衛相はシビリアンではないか? 北朝鮮シンパの左翼学者が「懸念」を表明するだけではないか?

▽日本版の弾道ミサイル防衛(BMD)システムは米国の早期警戒衛星などが発射を探知したミサイルを、SM3が大気圏外で迎撃する。撃ち漏らした場合は、PAC3が大気圏内に再突入したところを撃ち落とす二段構えだ。

▽ただ、100%撃ち落とせるとは言い切れない。SM3は2008年のハワイ沖での実験で標的を見失い失敗した。しかもこれを積むイージス艦2隻のうち「こんごう」は今月中旬まで改修中で、使用可能なのは「ちょうかい」のみ。PAC3は防護範囲が半径数十㌔と限られ、配備済みの関東や中部地方以外にミサイルが飛来すれば対応できない。

 穴ぼこだらけの防衛システムだし、なかなか精度がいいとは言えないのは事実だ。このような守り一辺倒の防衛は金ばかりかかって、効率が悪いものなのだ。

▽憲法上の問題もある。ミサイルが明らかに日本を標的にしている場合は問題ないが、日本上空を通過し、米国に向かった場合、日本が迎撃すれば憲法が禁じる集団的自衛権の行使に当たる恐れがある。

 この「集団的自衛権」だけは何とかしなければならない。朝日新聞のように現状を守れ、という主張は日本の安全を真に考えていないポピュリスト的意見だと思うのだが。

▽防衛省は「システム上、発射されれば着弾地域が日本の領域内かどうか判明する」と強調するが、日本に届くまで約10分しかない。判断に迷い迎撃を見送ったり迎撃に失敗したりして、現実にミサイルが国内に着弾すれば「何のために巨費を投じたのか」との批判が噴出しかねない。

 逆だろう。この結びの言葉は噴飯ものだ。日本に北朝鮮のミサイルが着弾して、国民は「なぜ巨費を費やしたのに」と怒るのだろうか? 逆に怒りはミサイルを撃った北朝鮮に向かうのだ。「巨費を使って何だ」というのは朝日新聞だけだと思う。普通の国民ならば、「なぜ政府は国民の安全を守らないのだ」「なぜきちんと防衛装備を備えなかったのだ」という怨嗟の声が出て、「ミサイルを撃ち込んだ北朝鮮と戦争だ」となるだろう。自衛戦争は日本国憲法でも認められている。北朝鮮に攻めて行くことだって自衛の範囲の内だ。向こうから一発撃ち込めば、自衛戦争に突入することは間違いない。それができなければクーデターだって起こりかねないし、少なくとも内閣総辞職となり、最終的にはファッショ的な政権の成立となるだろう。

 朝日新聞の田舎芝居のようなこのような論調が、それまでの実証的・客観的な記事の信憑性をどれだけ損ねているか、編集局内で真剣に議論したほうがいい、と思う。

 あまりにも国民感情から離れていれば、その新聞はマスメディアとしての生命をなくすのではないか、と思う。これではまるで北朝鮮の金正日新聞のように見えるじゃないか。

(追記3月9日)

 3月9日日経新聞朝刊2面<北朝鮮ミサイル「迎撃」には難題/政府「日本飛来ならMD対象」/日本周辺限定 牽制色濃く>も朝日新聞のような説明を紙面化していた。ほとんどが朝日新聞と同じだが、流石に結論を変に捻じ曲げたりはしていない。

 日経で朝日になかった部分を書き出しておく。

▽迎撃できるのは最高高度が地上200~300㌔で、射程が1000㌔程度のミサイル。射程が6000㌔の長距離ミサイルなどは高度が1000㌔に達するため「日本を飛び越える場合は撃墜できない」(防衛省幹部)。長距離ミサイルでも発射に失敗して途中で落下し、日本に飛来するならSM3で迎撃できる。

▽第2段階は地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)。射程は半径20㌔程度で、現在は関東の4ヶ所のほか、浜松、岐阜にしかない。九州や日本海側の原子力発電所などは対象外だ。

▽日本が過去3回行った迎撃実験では、SM3とPAC3はともに1回は迎撃に成功したが、難度を上げたSM3の実験は失敗した。高性能レーダーの全国配備なども途中段階で、システムの完成度が高いとはいえない。

 以上である。

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2009年3月 6日 (金)

小沢一郎氏の3月6日の記者団との遣り取り~産経新聞ウェブ版から

 産経新聞のウェブ版は3月6日、同日昼の小沢一郎・民主党代表の記者団とのやり取り詳報をアップしていた。民主党本部でのやり取りだ、という。

▽(秘書逮捕後、次々と事件に関して疑惑の報道がされているが)あのー、疑惑が出ているとは私は思っておりません。私自身は、それこそ今、色々と報道されてますが、そういうこの間の会見でも申し上げましたが、所謂、今の状況ですと、何か私が収賄の被疑者のような報道がされてますけれども、この間も申し上げましたように、私は、そういう事実は全くないということは、今もって変わっておりません。それで、個別のことについては私は秘書を信頼して、秘書に任せておりますので、個々の一つひとつの献金のことは分かりません。ただ、政治献金であっても何であっても、献金してくれる方、あるいは、一般社会で言えば、慈善事業に寄付してくれる方とか、そういう意味では有難く、献金は頂いて、その浄財で政治活動をしておりますし、また、ずっと政治活動続けていく中で、今、問題になってる西松建設云々のだけではなくて、いろんな、会社の方であれ、個人の方であれ、お礼とお願いのご挨拶をするのは当たり前だと思いますんで、そういう意味では、私は何も問題はないんじゃないかと思っております。あと、個別のことは、大久保が逮捕されて、いませんので、聞くわけにいかないので、その個々の具体的なことについては、私分かりませんので、申し上げるのはちょっと今は無理です。

▽(政治団体からの献金で、実際は西松からの献金とは分かっていなかったとのことだが、西松あてに請求書が出されていたということだが、食い違いがあるが、どう説明するのか)どういう形で具体的な手続きとしてやってたか、それは分かりませんが、多分、政治団体からの寄付なので、政治団体で、事務的に受けたということだと思います。それで、その2つですか、の政治団体のお金がどのような形で集められたのか、そういうことは他の人は知る術はありませんし、このお金はどういうお金ですかということは、今言ったように、一般社会でも折角の行為に対して、そのようなことは詮索することはありえないと思ってますので、私はそういう意味では、政治団体から、政治団体ということで事務処理をしてきたということは、事務的には問題ないんじゃないかと思っております

▽(大久保容疑者しか、細かいこと分からないということだが、大久保容疑者が起訴された場合に代表の責任はどう取るのか)起訴された場合っつっても、今、大久保が逮捕されている理由ちゅうのは、要するに報告書に実態は、西松のお金がすべての団体だったちゅうことなんでしょ。団体のお金は、政治団体のお金は、西松の会社のお金だったちゅうことでしょ。それは、全く分からない訳ですから、ですから、その意味では、政治団体から政治団体という風に、事務的に処理していたということ自体はですね、勿論、そういう事実が最初から分かっていれば、それは企業の献金が許されている、政党支部で受ければいいことですし、後になって分かったということであれば、それは、収支報告を訂正するということで、従来からも自民党の、あるいは、総理の方々であっても、修正報告ということで、みんな済まされてきたことだと思うんです。ですから、今、私の秘書が逮捕、そういうレベルの問題で、逮捕されたということはね、それは本当にさらに、それ以上の何かがあるということであれば、私、会見でも言ったでしょ。収賄の容疑があるとかいう類のこと、そして、私と大久保も含めて、そういう事実上の行為が、斡旋したとか、口利きしたとか、便宜を図ったとか、そういうことをやったというんなら、それはもう、どんな捜査を受けてもやむを得ないし、当たり前のことだと思います。私は、そして大久保もそうだと確信してますが、そういう類のことは事実として一切ないということで御座いますので、そういう意味において、恰も何かそのような、犯罪を犯しているかのような前提で論じられるのは、ちょっと私としては心外だと、この間の会見でも申し上げた通りです。

▽(この間の会見で、小沢代表は検察批判を展開されたが、言い過ぎだという声が出ているが)あ、そうですか。そう、言うんじゃ、言葉遣いがまずかったなら、訂正するのは幾らでもしますけど、現実に今、言ったように、私どもは報告書の結果として、認識の違いあったことは、多分そうなんでしょうね、結果を見れば。しかし、政治団体から政治団体へという事務的な作業をしただけですから、その種の問題で、即、逮捕とは今だ嘗てなかったことで、ですから、それ以上の犯罪があるという前提の立ってのことだと。ならば、別ですけれど、私としては、繰り返しますが、そういった行動は一切しておりませんし、大久保もしてないと確信しております。

▽(西松建設サイドが、小沢代表に何かを期待していたということについては)それは、あの、例えば、私の個人で献金してくださっている方も、何百とおられます。それぞれ献金する方々の気持ちは、それぞれ違う思いを持っていると思います。ただ、本当に一般の方々が自分の収入から、献金してくださるのは、これを使って、政治活動をしながら、いい政治をしてください。そして、自分たちの日本が、自分たちの生活が、平和で安定して生活できるような、そういう社会を創って下さいという、そういう期待をして、献金して下さっているんだと思います。ほいで、また、企業の方もそれぞれの思いはあるかと思いますが、私どもとしては、その献金を今、言ったと同じように、お国のために、みんなのために使って下さいという善意と受け止めて、有難く頂いております。ですから、内心の思いまでは分かりませんけれども、今、申し上げましたように善意を信じておるということであります。

▽(民主党内から進退に言及する発言も出ているが)現時点においては、今、申し上げましたように、その政治資金の報告書の問題についての認識の違いはありますけれども、その事務的な違いは別として、それ以外の犯罪的な事実や行為は一切しておりませんので、私としては、現段階で、その問題について、自分の進退については考えておりません。いずれ、きちんと結論が出てからのことだと思っております