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2009年4月 2日 (木)

ウォン安を武器に巻き返してきた韓国、日本は産業構造転換が必要だ~中央日報3月31日、4月1日、2日付+4月2日産経新聞[正論]伊藤元重氏論文

◆ウォン安を武器に日本を駆逐する勢いの韓国自動車・電子産業

 韓国の中央日報4月1日社説は<一部の経済指標好転に惑わされてはならない>と、経済指標の好転に喜びながら、国民の気を引き締めていた。

http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=113416&servcode=100&sectcode=110

 <一部経済指標が好転している。きのう統計庁が発表した2月の産業活動動向によると、鉱工業生産と消費財販売額が前月より増えた。今後の景気を示す景気先行指数もプラスに転じ、同行指数も1月に比べ減少幅が大幅に鈍化した。また韓国銀行と三星経済研究所が発表する企業と家計の心理指数も改善した。これに先立ち2月の貿易収支と経常収支も大幅な黒字に反転することがわかり、一部では景気が底を打ち回復期に入ったのではないかという性急な見通しも出ている。>

 という書き出しである。その1日発表された韓国の3月の貿易収支は過去最大の黒字だった。それを報じた中央日報4月2日の記事を読んでみよう。

 <先月の貿易収支が過去最大の黒字を記録した。知識経済部は1日、3月の輸出が283億7000万㌦、輸入が237億6000万㌦となり、46億1000万㌦の貿易黒字を計上したと明らかにした。知識経済部の李東根・貿易投資室長は「今年1年間で200億㌦以上の黒字を出すだろう」と話している。先月の貿易黒字が過去最大規模となったのは、輸出が減少したものの輸入がそれよりも大幅に減少したため。いわゆる「縮小型」の貿易黒字だ。「たくさん稼いで」黒字を出したのではなく、「あまり使わず」黒字を出したということになる。>

 どこの国も縮小型にならざるを得ないのだが、その中でも輸出で稼いでいる、というのはたいしたものだ。3月の輸出が前年同月比21.2%減で、輸入が36%減だった、というのだ。2月は29億3000万㌦の縮小型貿易黒字で、2カ月連続の黒字。記事は黒字を喜びながらも、資本財輸入が大きく減ったことを懸念。

 <先月の工場設備のような資本財輸入の減少規模は前年比31%となった。景気が容易に回復しないものとみる企業が投資を控えているということだ。企業が投資をしなければ雇用創出も難しい。>

 と雇用への影響を心配する。また、輸出は自動車が46.2%減、半導体が38%減、機械が36.4%減、家電が33.1%減。輸出相手先別では日本向けが31.3%減、米国向けが18.2%減、中国向けが13.4%減などほぼすべての地域向けで減少した、という。記事は、
 <貿易収支が大幅黒字を出したといってすぐに景気が回復すると期待するのは難しい。ただ黒字によりドルが国内に大量に流入し、外為市場の安定には寄与する見通しだ。>
 と分析していた。

 雇用に不安がある、とはいうものの、米国と比べ比較にならないほどの権力集中が特徴の大統領制をフルに活用して経済再建に取り組む韓国では、その国家経済の規模の相対的な小ささもあって変化が激しい。巨大艦隊のような日本に比べて身のかわし方がうまい、とは思う。危機に陥った時の国民の結束振りも、ナショナリズムを前面に出してまとまりがある。自由な民主主義の日本とは大きく違う。

 3月25日各紙夕刊が1面や2面で報じた日本の2月の貿易統計速報では日本の輸出は前年同月比49.4%減の3兆5255億円。過去最大の減少率を4カ月連続で更新した、とあった。ただ、日本でも輸入が減ったので、行って来いで貿易黒字だった、という内容である。

 似たような傾向、と思うかもしれないが、日韓の差は貿易依存度の大きさによると思う。韓国は日本によく似た貿易立国ではあるものの、依存度は日本よりは低い。それに、韓国の輸出が日本ほど減らない大きな理由は経済が壊れた米国、欧州、日本向けの輸出以外にアフリカ、南米など発展途上国向けや中東向けの輸出の割合が日本より大きく、そういう地域の中には今回の世界同時不況の影響をあまり受けない国々もあるからだろう。
 つまり、そうとは気づかずとも、結果的に危険分散していたわけだ。

 それと、何といっても一番の原因はウォン安である。

 以前、円高・ウォン安で韓国の自動車、IT、家電産業が日本の産業を欧米から駆逐するかもしれない、と書いた。駆逐は大げさかもしれないが、ウォン安という最大の国際競争力を生かし始めた、というわけだ。

 中央日報3月31日の<「現代自、トヨタに追いつく絶好の機会」/ブルームバーグ>を読むと、その実態が分かる。

 <28年ぶりとなる最悪の低迷に陥っている米自動車市場で、現代(ヒョンデ)自動車が絶好の機会を迎えているとブルームバーグが30日に報じた。ブルームバーグによると、今年に入り米国市場の自動車販売は39%急減した。世界トップの自動車メーカー、日本のトヨタ自動車も36%減少した。これに対し現代自動車は4.9%増加した。こうした販売増加は20%減と振るわない現代自動車の国内販売の緩衝の役割をしていると同通信は分析している。競合メーカーがぐらついている間にウォン安を武器に米国市場攻略に積極的に乗り出したためだ。過去6カ月間に対ドルでウォンは13%下がったが、円は8.5%上がっている。「安物」というイメージを脱ぐのにも成功している。現代自動車が米国市場で初めて発売した高級モデルの「ジェネシス」は1月にデトロイトモーターショーで2009年北米カー・オブ・ザ・イヤーに選ばれた。現代自動車は新興市場でも好調だ。1~2月の2カ月間で中国・インドでの販売がそれぞれ38%と13%増加した。KTB資産運用の張寅煥代表はブルームバーグとのインタビューで、「現代自動車がトヨタに追いつける生涯1度(once-in-a-lifetime)のチャンスをつかんだ」と評価した。また「今後1~2年の間にチャンスを作るため、現在の危機を最大限活用すべきだ」と述べた。>

◆日本は産業構造の転換で対処すべきだ

 では日本はどうすればいいのか? 今までは輸出産業こそが日本の基幹産業だから、輸出産業の生き残りを助けることが国益だ、という考え方が永田町、霞が関と財界を支配していた。だから、円安を維持するための日銀の政策が支持された。国民の貯蓄に利子がつかないゼロ金利政策でも「やむを得ない」と我慢を強いてきたのも輸出産業を助けるためだった。

 ところが、円独歩高の現在、日銀がいくら頑張っても円高はおさまらない。

 国民経済のファンダメンタルズがいいのだから仕方ない。

 では、どうするか?

 円高のメリットを生かしながら、輸出産業主導から農業、教育産業、介護・医療産業の充実に重点を切り替えるしかないのだろう、と思う。そして、その際、「内需」=「鎖国」というような誤った考えを捨てて、その内需産業を国際競争力十分の輸出産業に育てることが肝要だろう。

 これとほぼ同じ論が4月2日産経新聞[正論]に掲載されていた。

◆伊藤元重・東大教授の提言

 東大の伊藤元重教授の<内需産業を「アジア」で鍛えよ>である。

http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090402/biz0904020323009-n1.htm

 ≪日本に2つの弱点あり≫、≪国内に閉じ込めるな≫、≪「活力」を取り込む改革≫の三つの小見出しがついていた。

 コピペさせていただき、読んでみよう。

 まず伊藤教授は米国発の危機なのだが、日本は「実体経済は欧米以上に悪い」として、これは「世界的な経済危機が日本の弱点を突いているのだ」と書き、日本の二つの弱点として、①自動車やエレクトロニクスなど特定の産業の輸出に頼り過ぎてきた②内需産業があまりにも不甲斐ないこと――の2点をあげ、「この二つの弱点を是正することが必須である」と言う。

 そして、政府の内需拡大策は「経済学の用語を使えばディマンドサイドからの政策である。政策的な手法によっていかに需要を創るのか、というディマンドサイド政策はもちろん重要である。ただ、中長期的には、サプライサイドから内需関連産業の体質を強化することが必要」と言う。

 消費者が買ってくれるように、という対策だけでなく、産業構造の転換が大切だよ、といっているわけだ。

 <医療・食料・高齢者支援・環境関連・住宅・教育・観光など、いわゆる内需関連産業を自動車やエレクトロニクスに続く日本の基幹産業に育て上げることが求められている。新たな基幹産業を育てることなく、日本が長期的な繁栄を続けることは難しい。また、将来への展望が描けないかぎり、足下の経済を元気にすることだって難しいはずだ。>

 まったく、その通りだと思う分析である。そして、この紙面ではその具体論には踏み込まず、

 <「内需」という表現が与えかねない誤解の危険性>

 に注意喚起するにとどめている。

 <内需関連産業というと、どうしても日本国内で日本人によって日本人のために行われる産業活動であると決めつけることになりやすい。しかし、内需関連産業を国内に閉じ込めておくことこそ、産業の成長を挫くもっとも大きな要因であるのだ。内需産業を海外に向かって開くことこそ、産業を飛躍させるために必要な条件であるのだ。象徴的な言い方をすれば、「アジアを市場に」という視点で内需関連産業を育てなくてはいけない。>

 「内需」という言葉にはある種の魔力があるようである。

 具体論に踏み込まないと言っていたものの、伊藤教授は農業と医療産業を例にあげて少し具体論に触れていた。

 <たとえば、食料を例に考えてみよう。日本国内の農産品を日本の消費者に届けるだけの産業であれば、どんなに頑張っても限界がある。しかし、世界の貿易は双方向貿易となってきている。一方で海外から安価な食料を積極的に輸入しながら、他方で日本の質の高い食料をアジア近隣国に輸出していくのだ。日本の食料や飲料メーカーも、豪州やアジアなどでのM&Aを積極的に進めているが、日本という狭い枠にとらわれずアジア太平洋の大きな市場の中で飛躍する時期に来ている。>

 <医療でも市場開放を真剣に考えるべきだろう。最近はシンガポールなどが積極的に動き始めているようだが、海外からの患者を積極的に受け入れることで、医療の技術向上と規模拡大を実現することができるはずだ。海外から多くの患者を受け入れることができるようになれば、医療分野での雇用拡大を実現することができる。>

 <現在は医師不足が社会問題化しているが、将来の医療需要の拡大を前提に、より多くの人材を医師や看護師などの医療分野に引き込むことができ、雇用拡大にもつながるはずだ。もちろん、日本の人材だけで日本の医療を切り回すのではなく、積極的に海外の人材を受け入れることも検討しなくてはいけないだろう。>

 である。

 きっと眼目は「人の国際化はしなきゃあならないんだよ」という隠された論点をさらり、と書いてある部分なのではないか、と思う。これは言うは易く、行うのは難しい問題なのである。

 <自動車やエレクトロニクスなどの日本の基幹産業がグローバル市場の中で鍛えられてきたように、日本の農業や医療を産業として強いものにしていくためには、日本という狭い枠の中に閉じ込めてはならないのだ。>

 <閉鎖的な産業にとどめておくということは、結局は従来の利害関係の中にとどめるということで、大きな改革を実現することは政治的に非常に難しくなる。「内なる国際化」という言い方があるが、外に向かって市場や産業を開くことで、はじめて改革の可能性が出てくるのだ。>

 <アジアは世界経済最大の人口を抱え、しかも世界でもっとも速いスピードで成長を続けている。今回の世界的な危機でも、想像以上に安定しており、世界経済の中で存在感を増している。90年代後半のアジア通貨危機の教訓が生かされているとも言える。日本としても、こうしたアジアの活力を利用しない手はないのだ。内需関連産業を周辺国に向けて開放することで、この成長市場の活力を日本国内にも取り込めるはずだ。>

 この「アジアに開く」時、開き方を考えないと、またまた小泉構造改革の愚を繰り返して、成長はしても雇用がない、というバカバカしい結果になる危険性がある。そうなると、ドイツやフランスなどにすでに起きている人種対立、排外主義の勃興もありうる。ものすごくセンシビリティのあふれた難しい問題だ、ということを経済学者たちにも理解してもらいたいと思う。

 しかし、産業構造の転換、それも国民、庶民のためになる日本国民のための構造転換が求められていることは確かである。

 それを思い切ってやり切れる人物は小沢一郎氏だと思っているのだが。

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コメント

■日本ケンタッキーは今度は通期業績を上方修正し3連騰―他の内需型産業では工夫がいまいちか?
http://yutakarlson.blogspot.com/2009/07/blog-post_11.html
こんにちは。日本ケンタッキーは、内需型産業であるため、内需期待から株価は上昇しているようです。しかし、これは、最近の景気低迷から巣篭もり需要が増えたなどの、どちらかといえば、消極的な要因からです。それに、内需産業の花形であったはずの教育産業の成長が鈍化しています。私は現在の教育産業は、未だに座学主体であることなど、旧態依然としていると思います。その中で、教育にe-ラーニングを取り入れることは必須だと思います。カルチャーセンターなど、すっかり陳腐化して、多くの人は飽きているのだと思います。ここで、教育産業のイノベーションを図り、内需拡大の柱とすべきと思います。詳細は是非私のブログをご覧になってください。

投稿: yutakarlson | 2009年7月12日 (日) 10時34分

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