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2009年4月

2009年4月30日 (木)

NHKの台湾ドキュメントの歪曲報道、産経新聞の湯浅氏の言い分が正しい~4月30日産経新聞コラム[くにのあとさき]から

 産経新聞4月30日朝刊1面コラム[くにのあとさき]で東京特派員・湯浅博氏は<歴史を歪曲する方法>のタイトルで、このNHKの放送を徹底批判していた。

 <右であれ左であれ「事実そのものを封ずる空気」というのは、いやなものである。とくに、歴史を扱うドキュメンタリー映像には何度もだまされてきたから、ハナから事実と思ってみないクセがついてしまった。哀しいことに。つい最近も、台湾情勢に関心がある人ならすぐに「変だな」とテレビの小細工に気づく番組がまたあった。日本が横浜開港から世界にデビューして150年間をたどるNHKの「シリーズ・JAPANデビュー」である。>

 という書き出しで、

 <その第1回放送『アジアの一等国』を再放送で見た。テーマは50年に及ぶ日本の「台湾統治」だから、制作者は植民地政策の悪辣さを暴き出すことに熱心だ。台湾人すべてを「漢民族」でくくるたぐいの荒っぽさが随所にあった。なにより『母国は日本、祖国は台湾』の著者、柯徳三さん(87)ら知日派台湾人が、筋金入りの反日家として登場したのには仰天した。日本人も驚いたが、本人はもっとビックリした。放映後、柯さんは担当ディレクターに「あんたの後ろには中共がついているんだろう」と文句をいったと後に語っている。>

 ひどい話だ。

 <異民族による台湾支配だったから、当時の柯さんらが差別を感じていたことは事実だ。番組でも「私のいとこのお姉さんが、日本人の嫁になって日本へ行ったけれどね、戸籍が入らん。こういうのが差別でしょう」と憤懣をぶつけた。柯さんはじめ、仲間の蒋松輝さん、藍昭光さんも差別されたときの悔しさを語っている。ただ「母国は日本」とまで公言している人々が、日本統治時代に関して洗脳、差別、恨みばかりを強調するだろうか。同じ疑問を感じた視聴者は多い。だが、NHKは「日本とアジアとの真の絆、未来へのヒントを見いだそうとしたものです」と無味乾燥な答えで押し切った。>

 NHKの体質なのか? NHKは組合が強いことと関係があるのか?

 <それならと、義憤に駆られた衛星放送の「日本文化チャンネル桜」はさっそく現地に飛んで、番組に出演した柯さんらを交えて座談会を開いた。藍さんは「終戦で台湾人による統治ができると考えた。だが、中国人がきて衛生、治安がでたらめになった。虐殺事件が起きて、戦前のよかった日本時代を思いだした」と語る。日本統治の良い面とは、教育、病院、鉄道などのインフラに集約できるという。柯さんは「日本統治の善しあしは半分半分なんです。NHKには両方をいった。日本人がいやがる部分はカットしていいよといったのに、逆に悪い面だけを放映した」という。そして冒頭の「後ろに中共がいるんだろう」との怒りにつながる。>

 「チャンネル桜」はいい仕事をしている。

 <制作者がシロをクロと言いくるめる番組をつくろうと思えば、取材対象の見解からクロばかりを抽出すれば事足りる。そこには、善意ある台湾人の複雑微妙な心理は配慮されない。歴史事実を歪曲してしまう古典的な手法である。>

 <昨年も、神社と戦争の結びつきを強調した映画に『靖国』があった。靖国神社のご神体は鏡と剣であり、どちらが欠けても成り立たない。だが、中国人監督は半分の剣だけを摘出して「武」のイメージを極大化した。90歳の刀匠が節目に登場するのはそれが理由だろう。刀匠から「事前説明とは違う」と抗議されると、監督は「政治の圧力か」とそらした。『アジアの一等国』であれ『靖国』であれ、「事実そのものを封ずる空気」はいやなものである。>

 湯浅氏の言う通りだろう。しかし、こういう問題こそNHKのお目付け機関が問題にすべきではないか。NHKが政治家に事前連絡したとかしないではなく、視聴者に嘘を伝えたか伝えなかったかのほうが余程重要だ。

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2009年4月27日 (月)

「韓国経済に薄日」という現実:IMFの見通しは鋭かったなぁ。3月経常収支は過去最高の黒字~4月27日日経新聞、30日朝日新聞朝刊

 日経新聞4月27日朝刊[中国・アジア面]に<1-3月プラス成長/韓国経済に薄日/ウォン安で輸出回復/自動車など減産続く>の記事が出ていた。ソウル支局の島谷英明特派員の記事だ。

 <景気の底打ち感がにじむのは、韓国が世界トップシェアを握る液晶パネルの生産回復だ。ウォン安で潜在的な価格競争力が高まっていたところに、中国政府の農村向け家電購入補助策の導入による需要回復が重なった。サムスン電子は2月から工場をフル稼働。「中国特需」は周辺産業にも波及し、LG化学は年初から液晶パネル用のプラスチック材料をフル生産している。>

 中国政府が農村にカネをばらまき、中国の農民がウォン安で買い得な韓国製の家電をどんどん買っている、だから、韓国の景気が良くなった、ということだろう。

 <1-3月期のGDPでは景気対策効果が出てきた建設投資、民間消費が前期比で増加に転じた。1-3月期のGDP成長率は前期比0.1%プラス。市場は指標改善に景気底入れの期待を強め、韓国総合株価指数は1350と半年振りの水準に上昇。「上期中に景気は底を打つ」(サムスン経済研究所)との強気の見方も出てきた。>

 まさにIMFの長期予測の通りではないか。IMF予測よりも実際の動きの方が早いとも見える。それくらい早い回復である。

 <一部の生産持ち直しを後押しするウォン相場は3月初めに1㌦=1600ウォン割れ寸前と11年ぶりの安値水準に下落。足元では1300ウォン台前半で安定して推移しているが、経済実勢を反映した理論値よりなお2割程度安いとの試算もある。>

 そこまできていたか。1300ならば問題なかろう。

 <昨夏から急速に進んだウォン安は当初、外貨債務のウォン建て返済額を膨らませる事態への強い懸念が先行。だが、日米中との通貨交換協定の締結・拡充で外貨調達の安全網を整えたのを機に、利点にも目が向けられるようになった。>

 やはり、李明博大統領の基礎作業が効いたのだなぁ。すごい、と思う。

 <経済活動で日本以上に貿易への依存度が高い韓国は、景気回復の牽引役を輸出に頼るしかない。日本メーカーなどライバルとの競争を優位に進めるには「緩やかなウォン安の方がプラス」(外国証券アナリスト)。通貨当局も「急変動でない限りは介入しない」(韓国銀行幹部)とウォン安容認の姿勢に転じた。>

 <ただ、今のところウォン安を生かせている範囲は限定的で、1-3月期の自動車輸出は前年同期比36%減り、各社は減産を継続。現代自動車の1-3月期の営業利益は同7割縮んだ。自動車業界などからの受注減が続く鉄鋼大手ポスコも営業7割減益で、製造業の景況はまだらだ。>

 自動車は中南米で善戦しているのか、と思っていたが、そうはいかないのか。

 <雇用情勢の悪化や賃金減少もこれから本格化するとみられる。IMFは日米欧が今年そろってマイナス成長になると予測。李明博大統領は「世界経済が悪くなれば韓国はさらに影響を受ける。緊張して備えなければならない」と楽観論拡散による手綱の緩みを警戒している。>

 なるほど、ツボを心得た大統領だ。韓国民は盧武鉉一派を落として大正解だったね。

◆3月の経常収支は過去最高の黒字

 朝日新聞4月30日朝刊経済面<韓国経常収支6400億円の黒字/3月、過去最高>も子の傾向を裏付けていた。ソウルの稲田清英特派員の記事だ。

 <韓国銀行は29日、韓国の3月の経常収支が66億5000万㌦(約6400億円)の黒字だったと発表した。単月の黒字額では過去最大。輸出入とも前年同期比で減少したが、特に輸入が約36%減り、貿易収支が大幅な黒字となった。輸入減少は原油価格の下落に加え、国内の生産活動の停滞で原材料などへの需要が低調なことが要因という。>

 という短い記事だ。この記事の通りならば、あまり喜んでばかりもいられないだろうが、この機に輸出産業が体力をつけて、頑張れば、底を脱することができるのではないか、と思う。

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2009年4月26日 (日)

やっぱり中国で日本車が売れている!よかった~4月26日日経新聞朝刊

 日経新聞4月26日朝刊[視点]面[NEWSな数字]というコラムで<21%>という数字の見出しがあり、<中国での「日本車」シェア>とあった。

 調査会社フォーイン(名古屋市)の調べによると、中国国内の自動車販売台数は2008年が913万台で現地生産車と日本からの輸出車を合わせた「日本ブランド」のシェアは21%で、外資でトップに立っている、とあった。現地資本が主体の中国企業が低価格車を武器に高いシェアを確保する中、日本勢は5年前と比べてシェアが1.7倍に増えた、というからたいしたものだ。米国系、韓国系はシェアを落としている、という。ホンダのアコードなど高級イメージと値ごろ感を両立した車種が人気を集めている、という。

 中国汽車工業協会が発表した2009年1-3月の販売台数は約268万台と前年同期比4%増えている、というから驚きだ。同時期の米国の新車販売台数を50万台弱上回った、というから、日本の自動車産業も息を吹き返せるかどうか。

 トヨタ系の調査会社「現代文化研究所」(東京・千代田区)によると、自動車と区分されていない農村用の小型車が08年1年間で約200万台販売されたが、農民は都市への乗り入れ制限などがあって、一般の自動車に買い換える動きがあるという。新規需要もあるのだ。

 BMBとの競争の話が以前出ていたが、本当に中国人が日本製品の良さを知って、もっともっと買ってくれると有難い。

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山折哲雄氏の西欧文明批判と日本の生き方考~読売新聞4月26日朝刊[地球を読む]から

 4月26日読売新聞朝刊1、2面のコラム[地球を読む]の山折哲雄氏の<金融危機と宗教/無常観で冷静対処を/循環原則 生死も景気も>を興味深く読んだ。

 いろいろ書いているが、約めて言えば、欧米のユダヤ教、キリスト教は「無常」を理解せず拒否するので、「危機を乗り越えるための生き残り戦略」が最大関心事になり、無常というアジア的エートス(精神)ほど退嬰的で虚無的な思想はない、と考える。無常観が確固として存在した日本でもこのアングロサクソン流の生き残り戦略の傘の下にすっぽり包み込まれ、グローバリゼーションという名の戦略に加担することに日本人は夢中になりすぎたのではないか、という問いかけであり、世界経済危機も景気循環のひとつなのだから、冷静に対処しよう、という呼びかけである。なぜなら、「怒りの神も愛の神ももたないわれわれ自身のエートスが、世界からためされている」からだ、ということだと思う。

 通常の景気循環で説明が付かない世界経済危機とはいっても、たしかに栄えたものは滅び、繁栄は没落の一歩だし、そこであがいても、輪廻転生はすでに起きているので、新しい局面が開けるだけで、今までの繁栄そのものが続くというわけではない、という意味では山折氏のいう「景気循環の一つ」という捉え方は正しいと思う。多くの経済学者は「違う」と言うだろうが。

 <そもそも無常には、三つの考えが含まれている。この世に永遠なるものは、何一つ存在しない。形あるものは、必ず壊れる。人は生きて、やがて死ぬ。以上の3原則だ。これを否定することは誰もできないだろう。よほどのひねくれ者でないかぎり、まずは疑うことの出来ない客観的事実であるといっていい。>

 として、その客観的事実を認めるにしても、それを自己の血肉化しない文明としてユダヤ・キリスト教文明、アングロサクソンによって形成された西欧社会だ、というのだ。

 たしかに、今の日本ではこの無常観を抱きながら、グローバリズムという名の怪物と西欧と同じ土俵で戦うべきだ、とする論が蔓延っている。50年、100年に一度の暴風雨でも輪廻、景気循環に変わりはない、という言葉の意味合いは重いと思う。

 この景気循環という言葉を分かり易く言い換えれば「無常」だ、というのも分かる。

 山折氏のいうように、

 <景気循環=無常の原則に立って長期的な展望を持ち、この事態に冷静に対処するように努力していく>

 ことが今ほど求められている時はないのだろう、とは思う。

 ただ、逆に言えば、私はこの世界不況は「お祭り」ではないか、と思うのだ。

 「ええじゃないか」とか、「打ち壊し」とか、「徳政令」とか、つまり、今までのパラダイムを壊し、新しい地平が開ける瞬間でもありえる、ということだと思うのだ。今までの欧米文明のパラダイムが崩壊し、アジア的エートスを世界の人々に広げるチャンスかもしれない。

 山折氏のような論をもっと読みたい。

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台湾人7割が「日本に親しみ」VS韓国人は36%+「日台関係史1945-2008」書評コピペ+中台交流+鳥居民氏[正論]~朝日新聞4月26日、毎日新聞1月4日、4月27日、産経新聞4月27日朝刊

 豚インフルエンザ一色の新聞紙面の中でも気になる記事はあるものだ。

 朝日新聞4月26日朝刊国際面ハコ<台湾人7割、日本びいき/日本の「交流協会」調査/若い世代ほど「親しみ感じる」多く>に目が留まった。台北支局の野嶋剛特派員の記事だ。

 <日本の対台湾窓口「交流協会」が台湾人の対日意識に関する世論調査を行ったところ、約7割の人が日本に好感を抱いていることが分かった。戦前の日本による植民地統治や戦争の歴史が同様にあった中国、韓国と比べ、台湾の親日度がデータで裏付けられた形だ。>

 <同協会による台湾人の対日意識調査は初めてで、昨年11月から12月にかけて、約1000人の男女を対象に実施した。「親しみを感じる」は69%に達し、「親しみを感じない」の12%を大きく引き離した。>

 <一般に台湾では、李登輝元総統に代表される、日本語教育を受けた70歳以上の高齢者世代の親日度が高いとされてきた。だが、「親しみを感じる」とした回答者は、20代が79%、30代が77%と、若い世代が最も親日的で、65歳以上は58%だった。>

 <「最も好きな国(地域)」を尋ねた質問では38%が日本と答え、米国(5%)、中国(2%)など他国を引き離し、「台湾」(31%)も上回った。>

 <日本のイメージは「経済力、技術力の高い国」がトップで「自然の美しい国」「きまりを守る国」「豊かな伝統と文化を持つ国」が続いた。交流協会は「想像していた以上の日本に対する好感度に驚いた。今後の日台関係に役立てたい」としている。>

 有難い話だ。今まで先人が積み上げてきた努力の結晶がこの数字に表れている。ただ、記事の書き方が気になった。

 ネットだと、<台湾人7割「日本に親しみ」/20代は79%>なのに、新聞では「日本びいき」などと、何やらそれが悪いことのように取られがちな見出しにしていたことが一点。そして、重要な点は台湾人は7割で、相当に率が高いことは分かったが、韓国人は何%なのか、に全く触れていないことだ。

◆日韓世論調査の結果

 毎日新聞1月4日朝刊は[日韓共同世論調査]特集面で、韓国人に「日本に親しみを感じますか」と聞いていた。

 「大いに感じる」8%(日本人で韓国に親しみを「大いに感じる」は12%)

 「少し感じる」28% (日本人は38%)

 「あまり感じない」45% (日本人は30%)

 「全く感じない」17% (日本人は11%)

 という結果だった。つまり、「大いに」と「少し」を足した数字である36%が韓国の数字だということだろう。逆に日本人は足すと50%いる。皮肉なものだ。

 分析記事を読むと、

 <年代別で「親しみを感じる」と答えた人は、両国とも第二次世界大戦の記憶が残る70代以上で最も低く、日本は33%、韓国は24%。他の年代は、日本では20代から50代のすべての年代で50%を超え、60代も47%に達した。最も高かったのは40代の59%。次いで20代の58%。特に女性の間で親近感が強く、韓国ドラマに加え、韓国の男性ボーカルグループ「東方神起」が日本でも人気を集めていることなどが影響しているようだ。>

 <韓国では、30代から60代は30%台だが、19~29歳は49%と半数近くに上った。Jポップなど日本文化の開放が影響したと言える。文化交流により、若者の間で互いに親近感が強まっていることは、日韓関係の未来に明るさを与えている。>

 とベタほめ。過去との比較ではまず日本人について、

 <過去の調査と比較すると、日本は99年に48%だった「親しみを感じる」が、サッカー・ワールドカップを日韓で共済した02年に急増。開催前の02年1月は69%、開催後の同年7月は77%を記録した。今回はその急増分が失われた計算で、「熱しやすく冷めやすい」という日本人の特性がうかがえる。>

 と書き、韓国人については、

 <一方、韓国はW杯で盛り上がった直後の02年7月の42%からはやや減少したが、02年1月の35%は上回っている。95年26%、99年29%と比較して、わずかずつながら、対日感情は改善が見られる。>

 とあった。

 この数字を見ても分かるように、台湾という「国」は日本にとって、非常に大事な「国」なのだ。

 大体、「交流協会」という組織からして、大使館と名乗れない寂しさをいつも感じさせる。台湾は本当に中国の一部なのだろうか?

 でも、日本人は心したほうがいい。

 香港はもともと国際都市で、日本を好きでも嫌いでもないはずなのに、中国共産党支配になると、共産党にいい顔をしたい連中が尖閣諸島の領有権を声高に叫び、上陸を何度も試みている。中国本土の人々ではなく、香港の人間が突出するのだ。

 台湾は今はこのような親日国だが、中国共産党に併合された瞬間から日本を憎め、という教育を受け、日本から離れていくだろう。それでもいいのか? 米国が台湾切り捨てを目論んでいるようにも見える。よく見ておかないと、おかしなことになりかねないと思う。

 日中友好に反対するものではないが、原理原則を曖昧にしたまま進むと、中国は必ず問題を蒸し返す。日中条約の留保事項を日本の政治家は何度でも読み返してほしい。

◆朝日新聞書評欄から

 ちょうど4月26日の朝日新聞朝刊読書欄に「日台関係史 1945‐2008」(川島真・松田康博・楊永明・清水麗著、東京大学出版会、定価2,940円)の書評が出ていたので、コピペしておく。評者は天児慧・早稲田大学教授(現代アジア論)で見出しは<日台の歴史概観する初の体系的学術書>だった。

日台関係史 1945‐2008 日台関係史 1945‐2008

著者:川島 真,松田 康博,楊 永明,清水 麗
販売元:東京大学出版会
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 <台湾はかつて日本の植民地だったことを知らない人も増えてきている。また日台関係はしょせん日中関係の裏面史でしかないと思っている人もいる。台湾の視点から、日台関係のみならず、日中関係、米台関係をとらえる書物はこれまでなかった。本書は40代の気鋭の専門家による初めての体系的な学術書である。基本的には1945年以降、現在までの日台の歴史を概観したものである。ただ時系列的に事実を紹介しているだけではなく、論争的なイシューを網羅し、理論的な解説がなされ内容が豊富である。>

 <幾つかの興味深いポイントを紹介する。>

 として、

①日本と台湾の関係は1949年に中華民国が台湾に移動して以来、「日華関係」が前面に出たが、日本植民地時代に源流をもつ「日台関係」は常に内在し、「日華・日台関係」という二重性が基本枠組みとなった。

②日中国交正常化、日華断交によって「1972年体制」の原型がつくられた。が、台湾側はそれ以前から「政経分離」方式を想定し、経済貿易文化や領事業務を行う機構の設置を模索していた。実務外交に徹するその後の基本姿勢の始まりである。国際社会への参加では「チャイニーズ台北」という名称を用いる、いわゆるオリンピック・モデルができた。それはアジア開発銀行、APECなどへの台湾参加にも適用された。中台関係のある種の「妥協」であるが、当時勢いのあった日本の役割は小さくなかった。

③1991年以降、李登輝主導で中華民国の「台湾化」が進められた。天安門事件は中国「独裁国家」の印象を与え、逆に「民主化する台湾」のイメージが強まり、国際空間を広げるチャンスを得た。90年代前半、日台「ハイレベル接触」も増大し、「日華関係」と「日台関係」は逆転していったと見る。

④日華・日台関係では蒋介石や李登輝のような象徴的人物の役割が大きい。

⑤国際関係から90年代以降の日台関係をみると、二重の戦略的三角関係に着目すべきである。特に「米中台」の三角関係は96年の台湾海峡危機のように日台関係を安全保障の視点から捉えなおす契機になった。「米日台」の三角関係は、1997年日米安保再定義、台湾にかかわる「新ガイドライン」が打ち出されアジアの安全保障面に影響を及ぼした。小泉政権時代には日米同盟の強化、「台湾海峡の平和的解決」を重視という戦略的明確さが強調され、二重の三角関係は微妙に融合し始め、「日米・中・台」という新たな三角関係が浮上した。今日、馬英九政権の登場によって、中台交流の進展が顕著になってきた。「統一か、独立か」という中台関係に強く規定された従来の日台関係とは異なるシナリオが問われている。

 ――と、以上のポイントをあげていた。書評は続けて、

 <日台関係史は日本外交の本質を映し出す鏡でもあり、時として日中関係のある部分を主導的に動かすダイナミックさを持つ。本書では斬新な解釈も多々見られ、資料の裏付けもしっかりしており、今後この分野をリードするテキスト的な研究書になると言ってもよい。>

 とベタほめしていた。読んでみたくなる。

◆中台の緊密化進む

 毎日新聞4月27日朝刊1面は<中台定期便に格上げ/中国から投資容認/窓口トップ合意>で中国と台湾の緊密化がいよいよ進んでいることを報じていた。南京で鈴木玲子特派員が書いていた。

 <中国江蘇省南京で26日、中国の陳雲林・海峡両岸関係協会(海協会)会長と、訪中した台湾の江丙坤・海峡交流基金会(海基会)理事長による中台窓口機関のトップ会談が行われた。会談後、①直行チャーター便の定期便化と便数の2.5倍増②重大犯罪や経済犯罪の捜査協力③金融分野の相互参入に向けた準備への取り組み――の合意文書に調印した。規制している中国からの台湾投資を認めることでも一致。台湾経済の低迷を背景に、中国の「台湾救済」が鮮明に表れたと言えそうだ。トップ会談は昨年6月に約10年ぶりに再開してから3回目。次回は今年後半、台北で開くことでも合意した。>

 という前文で、

 <航空便は、週108便から270便となり、中国の発着空港は6カ所増えて27カ所になる。中国の台湾への観光客解禁で直行便の需要が増え、景気浮揚を狙う台湾側からの強い要請があった。大幅増によって中国側は台湾支援をアピールした形だ。>

 <犯罪捜査協力では▽犯罪人引き渡し▽関連機関の相互訪問や訓練協力▽誘拐、武器、毒物など中台間をまたぐ重大犯罪やマネーロンダリング、通貨偽造などが主な内容となる。金融協力は、将来的な相互参入の実現に向け、銀行、証券、保険の3分野での管理監督機構の設立などを決めた。中国企業の台湾への投資に向け、関係部門が連絡機構を設立することも確認した。>

 ここまでが事実関係。ものすごいことなのだろうなぁ。

 <中国側が台湾支援策を相次いで打ち出す背景には、台湾の中国依存度を高め「中台統一工作」を加速させようとする狙いがうかがえる。中国側の陳会長は会談の冒頭、「中台が共に手を携え、平和的発展の道にある困難を克服し、ウイン・ウイン(共に勝者となる)の経済発展を生み出そう」と呼びかけた。一方、台湾側の江理事長は合意文書調印後の記者会見で「対話の常態化は中台関係の平和・安定の重要なバロメーターだ」と評価した。>

 何か、台湾が併合されていく悪夢が見えてくるようだ。この記事には受け記事があり、こちらも女性記者、台北支局の大谷麻由美特派員が書いていた。今や女性記者の方が多くなったのか?

 <中国江蘇省南京で26日に行われた中国と台湾の窓口機関トップによる会談は、中台直行チャーター便の定期便化や金融監督メカニズムの設立などで合意し、中台協力の深化を印象付けた。台湾では拡大する中台の経済協力に期待が高まる一方、「過度な中国依存」との警戒感も出ている。>

 <台湾の対中窓口機関、海峡交流基金会(海基会)の江丙坤理事長は25日夜の歓迎会で、今回の協議を「新しい歴史の時」と表現し、協力拡大を評価した。>

 <協議で調印された中台直行チャーター便の定期便化では、従来より約2.5倍に増便することが決まり、中台間の人の往来はますます活発化する。台湾政府によると、今年3月に台湾を訪れた中国人は8万7002人(前年同期の約4.6倍)と急増している。世界的な金融危機で観光業が振るわない中、台湾にとっては中国からの観光客は大きな収入源だ。金融協力では、中台双方が相互に検査を実施することで、健全な金融環境が確立されるとみられる。また、中台が共通認識を得た中国資本による台湾への投資は、中国の国有企業の台湾進出を加速させると予想される。台湾は新エネルギー産業を1兆台湾㌦(約2兆9000億円)産業に育てる計画で、中国資本の参入に期待する声は大きい。台湾側には中国への技術流出の恐れが残るため、半導体などのハイテク産業は投資対象から除外される見通しだ。また、台湾側は、中国資本の台湾企業への出資上限を30%以下に設定する方針を示している。>

 これが詳しい内容か。

 <一方、台湾の野党・民進党の蔡英文主席は23日の会見で「政治と主権を経済貿易の利益に置き換えている」と述べ、中台間の経済協力を優先する馬英九政権を批判している。>

 このような批判は現実利益の前には掻き消されるだろうなぁ。

◆鳥居民氏のNHK特別番組批判

 産経新聞4月27日朝刊[正論]は評論家、鳥居民氏の<NHK特番の傲慢さが悲しい>のタイトルで、日台関係を論じていた。

 4月5日に放送されたNHKスペシャル「ジャパン デビュー」第1回「アジアの一等国」を観て、そのひどさに呆れて、悲しかった、という感想である。

 <わたしたちの祖父、曾祖父、高祖父の願いと努力に思い入る気持ちのかけらもない、辺りに人も無げな驕りぶりが悲しかった。>

 という書き出しだ。何事だろう、と思って読み進めると、

 <もうひとつ、この番組の制作者が唯一頼りにした出演者である日本植民地時代の台湾の最後の人びとへの気持ちである。当然ながら現在70代、80代の人びとが持ったまことに複雑、微妙な日本にたいする愛情を十分理解したはずであったにもかかわらず、勝手な裁断をおこない、日本の植民地統治を罵るために利用し、協力者の善意を足蹴にした、その傲慢さが悲しかった。>

 と「悲しみ」の二重奏なのである。

 <制作者は1859年の横浜の開港から日本は「世界にデビューした」のだと説く。そして日本は「一等国」になろうとして、台湾を植民地にしたのだと語る。制作者が横浜から台湾へ話をつづけようとするのであるなら、私が思いだすのはアーネスト・サトウのことになる。英国外務省の通訳官となったサトウは、開港3年あとの横浜で日本語を学び、草書の書簡を読むことができるまでになり、薩摩、長州、各藩の国事活動家と語り、日本の進路をはっきり見定め、有能な外交官となるその片鱗を見せた。>

 <さて日清戦争が終わった年にサトウは公使となって再び、日本に赴任した。台湾の樟脳と砂糖、茶、阿片を扱う横浜の英国商社の幹部たちと話し合い、日本は台湾の経営に失敗すると予測した。そのときヴィクトリア女王統治下の大英帝国は最盛期にあり、世界の人口の4分の1を支配していた。先進国が後進地域を取得し、統治する権利が当然のように認められた時代だった。植民地経営は「白人の重荷」であり、英国人に与えられた高貴な責務であった。植民地の人びとに命令を下すことができるのは英国人の行政官だけなのだ、英国人はこのように思っていた。そこでサトウと旧友らは、日本は台湾で清国政府以上のことはできないと語り合ったのである。>

 時代の実相である。そういう時代だったのだ。

 <それから100年以上がたつ。日本の台湾統治をどう評価したらよいのか。サトウはといえば1929(昭和4)年に没していた。かれは自分たちが間違っていたと認めたに違いない。台湾の植民地統治は成果を収めた。価値や道徳は絶対的なものではない、あくまで相対的なものだ。日本の統治には失策も、大きな過ち、悲劇もあった。そのような過ち、悲劇を忘れず、民族の共通の意識にその憎しみを育てあげるのだと説く論考がある。たとえば英国人意識の源泉にフランス嫌いがあるのだと主張する。即座に隣国の韓国人意識の底にある日本嫌い、日本の後を追っての競争心を思い浮かべることになろう。>

 <しかし、わたしたちは、なぜ台湾の人びとが日本に憎しみを持たないのかと考えることになる。>

 そうなのだ。あの世論調査結果が物語る事実を、である。

 <現在、台湾人は日本の統治時代を声高に非難しない。日本の統治を離れて60年、年若い世代を含めた台湾の人びとが、尊敬する国、移住したい国の筆頭に日本を挙げるのは、かつての日本の統治に不快感を持っていないことが大きな理由なのである。父親や祖母がその昔を語った二言、三言の記憶を自分たちが抱く日本人にたいする印象と重ね合わせて、かれらはその理解を大切にしてきたのだ。わたしたちは誰でも、この台湾の人びとの日本人への温かい感情を、嬉しく有り難く思う。>

 そういうことだ。

 <さて、奇怪極まることに、NHKの先の番組は、誰もが大事にしてきたこの感情を踏みにじろうとすることに懸命となった。日本の台湾統治のすべてを否定し、台湾の人びとは日本の植民地統治に恨みを抱いているのだと説いた。たとえば台湾の人びとが高く評価する台湾における後藤新平を容赦なく裁いてみせる。上水道の整備、灌漑設備の建設を振り返ることなどするはずもない。台湾総督府が独占した樟脳を取り上げ、植民地収奪の話に仕立てることに汲々としている。番組は「皇民化運動」で終わる。公園に集まった老人たちにつぎつぎとその昔の日本の軍歌を歌わせる。かれらは「蛍の光」を歌いたかったのだし、「荒城の月」を歌うこともできた。それにもかかわらず軍歌だけを歌わせ、「アジアの一等国の哀れな犠牲者」と視聴者に印象付け、「日本統治の深い傷」と締めくくる。>

 ひどい番組だったのだなぁ。

 <私は制作者の「辺りに人も無げな驕りぶり」「傲慢さ」を悲しく思ったと記した。「驕りぶり」「傲慢さ」といえば、番組の題である「アジアの一等国」、その一等国民が犯した罪の第一に挙げなければならない態度、性向であろう。この制作者の振る舞いこそがまさにその一等国民そのものなのだが、このような人物が「アジアの一等国」を制作したことが、いま悲しく思う理由なのである。>

 この傲慢さを反省しない人々はなぜか進歩的文化人と自分を思い込んでいる人に多い。原理主義者だから、自分はいつも正しい、と思うので、上っ面だけの反省しかできないのだろう。

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国連制裁と北朝鮮の再処理声明~4月25日毎日、朝日夕刊と26日朝日朝刊から

 これはどれほどの効果があるのだろうか?

 国連による北朝鮮資産凍結である。

 毎日新聞は4月25日夕刊総合面<3組織資産凍結を決定/安保理制裁委/北朝鮮「受け入れられぬ」>でニューヨーク支局の小倉孝保特派員の署名で以下の記事を掲載していた。

 <北朝鮮の弾道ミサイル発射を受け国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁委員会は24日、日米両国が提案したリストのうち3組織について資産を凍結することを正式決定した。国連として北朝鮮組織の資産凍結は初めて。国連全加盟国は今後、国内手続きに入るが、北朝鮮は「受け入れられない」と反発している。決定は、先に採択された北朝鮮非難の安保理議長声明に従ったもので▽北朝鮮に対する禁輸品目の拡大▽武器関連3組織に対する資産の凍結――の2点。資産凍結の対象は、▽朝鮮鉱業開発貿易会社▽端川商業銀行▽朝鮮嶺峰総合会社――の3社。安保理決議1718は北朝鮮への武器関連物資の禁輸と関連組織の資産凍結を求めているが、これまで資産凍結については実施されてこなかった。今回の決定は、安保理の正式決定になり国連全加盟国が履行の義務を負う。日米などは3組織への資産凍結をすでに独自実行している。>

 これを読むと、相当の効果が出そうな気もするが。

 <北朝鮮のミサイル発射で議長声明が採択された後、日本は14組織、米国は11組織の資産凍結を求めてきた。3組織以外の資産凍結は制裁委員会メンバー国の支持が得られず見送られた。>

 まさしく経済制裁である。国際法的には戦争一歩手前と位置づけられるのだろうか?

 <今回の制裁委決定に、高須幸雄国連大使は「(資産凍結の対象が)3社であっても、国際社会全体で(資産凍結を)やることになったのは決議の実効性を確保することになり、大きな成果だ」と歓迎した。一方、北朝鮮のパク・トクフン次席大使は会見で「宇宙の平和利用はすべての国に与えられた権利であり、決定は受け入れられない」と述べた。>

 北朝鮮は25日、この国連制裁に反発して、早速、核燃料棒の再処理再開をする、と声明を出している。東京新聞夕刊によると、このパク・トクフンは朴徳勲という名前らしい。どうしてカタカナにしたのだろう?

 朝日新聞4月25日夕刊1面<北朝鮮「核再処理を再開」/本格作業へ数カ月か>の見出しでソウル支局の稲田清英特派員が書いていた。

 <北朝鮮の朝鮮中央通信は25日、同国外務省報道官が「使用済み核燃料棒の再処理作業を始めた」と述べたと伝えた。北朝鮮は今月14日、ミサイル発射を非難する国連安全保障理事会の議長声明に反発し、核問題をめぐる6者協議からの離脱を表明するとともに、同協議の合意に基づいて停止していた核開発を再開する考えを示唆していた。 報道官の発言は、核兵器に使用可能なプルトニウムを取り出す考えを明らかにしたものだが、北朝鮮は昨年、寧辺の核施設のうち冷却塔を爆破するなどしており、本格的な再処理作業の再開には数カ月必要とみられている。>

 なるほど、本格的な作業開始には時間がかかるのか。

 <北朝鮮はミサイル発射に対する国際社会の動きに強く反発している。今月13日に採択された国連安保理の議長声明を受けて、安保理制裁委員会は24日、北朝鮮の企業など3団体を資産凍結などの制裁対象として指定した。燃料棒の再処理再開は、こうした動きに即座に反応した形だ。>

 やっぱり、そういうことだった。

 <外務省報道官は「再処理は敵対勢力が加える脅威に対する自衛的な核抑止力の強化につながる」とも語り、強硬姿勢を鮮明にした。>

 まあ、このくらいは言うだろうなぁ。

 <北朝鮮は昨年6月に申告した核計画のなかで、これまでに兵器用プルトニウムを38㌔㌘生産したと申告使用済み燃料棒に8㌔㌘残っているとしており、まずはこれらからプルトニウムを抽出する作業に入るとみられる。北朝鮮の技術水準では核兵器1個に4~8㌔㌘のプルトニウムが必要とされる。>

 ここまで書いてあると分かりやすい。8㌔㌘残っているのを全部再処理すると、もしかすると核爆弾が2個できる、ということだ。

 朝日新聞は4月26日朝刊国際面<北朝鮮、資産凍結へ対抗/核再処理「再開」/6者関係者に衝撃>でソウル支局の牧野愛博特派員が解説記事を書いていた。

 <「使用済み燃料棒の再処理作業が始まった」とする25日の北朝鮮の宣言は、6者協議関係国に衝撃を与えた。寧辺核施設の無能力化作業により、「作業開始までの所要期間は3カ月」と分析していたためだ。北朝鮮の説明は政治的な圧力という側面が強いものの、予想以上に強硬な姿勢に、関係国の焦燥感は深い。米政府のボズワース北朝鮮政策特別代表は5月上旬、日中韓などを訪れ対応を協議するが、具体策は見つかっていない。>

 ボズワース代表が5月上旬に来るのか。なぜ3ヵ月か、については、

 <関係国は「主要部品を施設内に戻す復旧作業に1カ月、試運転して実際の作業が可能になるまでに2カ月、計3カ月が必要」とする分析資料を共有していた。北朝鮮が寧辺に駐在していた国際原子力機関(IAEA)と米政府の監視要員に国外退去を求めたのが14日。韓国政府当局者は「北は復旧開始とは言っていない。10日間で施設を本当に復旧したのか知るすべがない」と語り、当惑を隠さない。6者協議筋は「物理的に考えても、これだけ短時間での復旧は不可能だ」と説明。今回の宣言はむしろ、北朝鮮が厳しい姿勢を強調することで、関係国に圧力をかける狙いの方が大きいとみている。>

 と書いていた。そして、牧野記者は国連が指定した3団体について、

 <北朝鮮の軍需経済を担当する第2経済委員会・対外経済総局の傘下にある。ミサイル生産などに必要な資材の輸入や貿易に必要な外貨獲得などを担っており、資産凍結措置は北朝鮮に相当の打撃となりうるためだ。>

 と,今回の制裁は北朝鮮への打撃が大きい、との見方を示していた。

 まあ、北朝鮮に振り回される日々が続きそうだ。

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2009年4月23日 (木)

F22ってそんなにすごい飛行機なのか?米国は日本には渡さないのか?:[野口裕之の安全保障読本]+中国がF35情報盗む?~4月23日産経新聞朝刊、朝日新聞4月23日朝刊

 産経新聞4月23日朝刊はこれで3本目だ。今度は5面(総合面)のコラム[野口裕之の安全保障読本]でタイトルは<F22は日米同盟のカスガイ>だ。文中の小見出しは<米「中国恋慕」病>、<発注中止の裏側>、<核保有論台頭も>の三つ。このF22の論議は分かりにくい。欠陥があるとか安全保障上の配慮だとか、新聞記事は出ても、なかなか理解できなかった。野口氏は論点をうまくまとめていた。

 本文を読んでみよう。

 <日米同盟に亀裂が入るとすれば「集団的自衛権を行使できない」といった、極めて日本的理由からだろうと危惧していた。だがそうでもないことを米オバマ政権が実証しようとしている。日本が次期主力戦闘機の最有力候補とする米空軍第5世代戦闘機F22の対日輸出を渋っているのだ。中国の異常な軍拡を前にF22は東アジアの「自由と民主主義の空」を守る守護神になるはずだ。ところが、オバマ政権は中国に配慮し逡巡している。歴史の節目ごとに発症してきた米国の「中国恋慕」病がまたぞろ日本の国益を脅かそうとしている。>

 中国恋慕病とはよく言った。今、満州事変について、近代史の専門家らが見直し研究を進めているようだが、少なくとも戦後流行した日本が一方的に悪い、という占領軍史観を修正することになるだろう。米国が複雑な動きを繰り返しながら、お得意の二重基準で日本をいじめていた事実がどんどん出てきているようなのだ。

 ただ、所詮は敗戦国。どんなに学術的に正しくとも、国連安保理常任理事国に歴史まで押し付けられて唯々諾々、有難がっている政治家を衆院議長に据えているような国だから、この見直しが日本人の共通理解になることはないかもしれない。

 <F22はラプター=猛禽類=の愛称にたがわず、その実力はすさまじい。「144対0」「241対2」という模擬空中戦の結果に世界の空軍関係者はあぜんとした。F15/16/18など、日本はじめ同盟国に現役配備中の米名戦闘機385機を撃墜しながら、自らは2機しか失わなかったのだ。形状・構造や素材から敵レーダーが捕捉できない(ステルス性)のだから勝負にならない。超音速飛行能力や超機動性でも、多くの戦闘機メーカーが「負け」を認める優れモノなのである。>

 忍者だ。一時期の「ゼロ戦」だなぁ、これは。「ゼロ戦」はあまりの防備のなさで、戦争終盤は使い物にならなかったが、投入直後の活躍は米国でゼロ戦乗りを「ゼロファイター」と称して畏敬の念で見たほどだった。

 <機密保護を理由に米議会が輸出を認めない現実は一面において当然だが、2007年の日米首脳会談で当時の安倍晋三首相は日本を例外扱いする形で情報提供を求めた。中国の第4/4.5世代戦闘(攻撃)機やミサイルに関する性能・配備数が急激に向上している死活的脅威を抱えているためだ。1990年代のロシア空軍主力機Su27や改良型のSu30、イスラエルの協力で国内開発されたJ10も侮れない。10~12年後にはF22のようなステルス機配備まで見込まれている。>

 もしも、日本を例外とする、という決断を米国から引き出すことができるとしたら、その対価というか、条件として機密保護法は必要になるだろう。今の基盤の弱い政権ではできないだろう。大連立しかないだろう。

 <中国や北朝鮮、ロシアなど「顕在的脅威」が跋扈する東アジアはいまも冷戦構造を残しているにもかかわらず、ゲーツ米国防長官は6日「冷戦時代の発想で設計された」としてF22の「新たな発注中止」を発表した。中露を「潜在的脅威」とする従来型から、アフガニスタンでの非対称戦やテロリズムを念頭に計画の大幅見直しにも言及した。F22も例外ではない、というわけだ。>

 ゲーツの物言いもよく分からない。まだオバマ政権の安保政策は作成途上と見たほうがいいのではないか、と思うのだが。

 <もっとも発言は「観測気球」の側面があり、額面通りには受け取れない。議会内の特に共和党を中心に中国をにらみ日本へのF22譲渡を必要と考える議員も少なくない。軍需産業やその労働組合から支援を受けている議員も米政府の「暫定方針」を見過ごせない立場。オバマ大統領が最終判断していないのは議会などの反応を見極めたい意向からだという。>

 これも面白いのだが、何を意味しているのか。

 <「発注中止」の背景には2001会計年度の198億円が年々値下げされたとはいえ、今でも1機140億円という値段の問題がある。前任機F15の2倍以上で、国際的経済危機下では手痛い支出ではある。同盟国であってもやすやすとは輸出できないほど優秀で、それが量産を控えさせ、価格をさらに押し上げる悪循環も生み出した。当初計画では750機であった生産機数が、現在では187機にまで縮小されている。>

 140億円かぁ。「9条の会」が軍拡に反対するわけだ、と思う。ただ、個人の安心・安全を確保すると同時に国家の安心・安全も必要なのだ、という意識をマスメディアは機会あるごとに国民に訴えるべきだと思う。そうでないと、「パンとサーカス」の「朝まで生テレビ」政治になってしまう。あの番組は害あって益なし、だと思っている。

 <ライン縮小には243~381機が必要だとしてきた米空軍内でも反発が強い。44州で2万5000人が生産にかかわる軍需産業側も生産継続を主張。日本向け生産が始まれば米経済・雇用対策に大きく貢献することは確実だ。日本が米国と開発し、運用中の支援戦闘機F2にはほぼ同額が投資されており、費用対効果を考えれば日本としても「巨額」負担ではない。>

 日本の国防費がなぜ高いのか。冷静に考えればすぐ分かる。量産できないからだ。武器輸出三原則を外せば、日本製の武器が輸出でき、単価は安くなる。しかし、日本は自ら手足を縛って、その美味しい蜜を吸わない、と世界に宣言している。この宣言を無視して、日本に核ノドンの照準を合わせる国があれば、日本は基本原理を考え直さざるを得なくなるだろう。

 <オバマ政権は北朝鮮の核・ミサイル問題で日本の頭越しに譲歩する気配を見せ始めた。日本の領海にジワジワと迫る中国とも手を結ぶのか……。米国が中国の軍拡や言論・民族・宗教弾圧に目をつぶり誼を通ずるのなら、日本の政治・経済の中枢を占める「親米保守」は雪崩を打ってタダの「保守」に看板替えするだろう。行き着く先は、核保有に向けひた走る「嫌米保守」「反米保守」かもしれない。>

 米国を脅すのにピストルはいらない、か。核だ核だ、と言えばいい、という感覚であろうか。まあ、この主張も当然、米当局者や日本政府当局者に読ませようとするもので、その意味では戦術的論文なのだろうと思うのだが、冗談ではなく、そのような「雪崩」が起きると、あっという間にそっちの方向に流れるかもしれない。その時には私など、フニャフニャの文化人とか言われるかもしれない。

 <F22の対日輸出は、日米離反の悪夢を防ぐのみならず、日米両国のカスガイになるのである。>

 この結論が言いたかったのだろう。さて、どうなるのか?

 (追記)

◆中国が米にサイバー攻撃、F35情報盗む

 4月23日朝日新聞朝刊国際面に<サイバー攻撃 F35情報流出/米紙報道/国防総省被害 侵入元は中国か>という面白いハコ記事が載っていた。ワシントン支局の鵜飼啓特派員の署名記事だ。

 <米紙ウォールストリート・ジャーナルは21日、国防総省のコンピューターが何者かに侵入され、次世代型の統合攻撃戦闘機(JSF)F35の設計情報などが盗まれていたと報じた。核心の情報には被害はなかったが、F35の攻撃への防御力を高めるのに利用される可能性があるという。 同紙は前当局者の話として、侵入元は中国である可能性が高いと指摘している。盗まれたのは設計のほか、電気系統に関する数テラバイトの情報だという。操縦装置やセンサーなどの重要な情報は、インターネットに接続されていないコンピューターに保存されているため無事だった。 ゲーツ国防長官は今月発表した予算削減策の中で、最新鋭戦闘機F22の生産を打ち切り、より小型で対地攻撃能力の高いF35の導入を加速させる考えを示していた。>

 中国と米国は安全保障の最先端で丁々発止刃を交わしている。やはり、情報漏れが怒るのが当然の日本にはくれることができないのかもしれない。

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元山に本社のあるミサイル会社の支社の在日技術者が北ミサイル開発の主軸だった:西岡力氏~産経新聞4月23日朝刊[正論]

 産経新聞4月23日朝刊[正論]は西岡力・東京基督教大学教授の<ミサイル技術の対北流出断て>だった。読んでみた。文中の小見出しは≪ダチョウの弱気許されず≫、≪追加制裁で足りないもの≫、≪北を往復するエンジニア≫の三つだった。

 書き出しは次の文章。

 <北朝鮮が大陸間弾道ミサイルの発射実験を強行した。わが国をはじめ世界中に工作員を送り12以上の国々の罪のない国民を多数拉致して抑留し続けるテロ国家がすでに核爆弾を持ち、その運搬手段である弾道ミサイル開発を続けている。わが国と世界の安全保障に対する重大な脅威だ。>

 主張がはっきりしている。

 <彼らの恐喝外交には「悪いことをしたときには罰が与えられ、ほうびは来ない」ということを骨身にしみて分からせるしか対抗手段がない。その意味で「極めて挑発的な行為であり、断じて看過することはできない」と強く抗議するとした麻生首相の発言、「ルール違反で処罰されなければならない」としたオバマ米大統領の発言を支持したい。>

 確かにオバマ大統領は東欧で未明に叩き起こされて、クリントン、ゲーツ両氏と相談した上で、最初の発言としてそう言った。歴史的な「核廃絶演説」直前で気分が高揚していたのだろう。クリントン国務長官が「それは言いすぎよ」と止められなかったのだから。ところが、帰国後、その高揚感は消え、クリントン宥和政策を追認せざるを得なくなる。オバマ氏の本音がどっちにあるのか、も疑問なのだ。

 <今回のテポドン・ミサイルはその射程から米国攻撃を意図したとみられる兵器だが、ミサイル技術の向上、日米同盟の核抑止力への挑戦という面では、わが国にとって深刻な問題だ。日本を射程に入れるノドン・ミサイルは1993年に実験がなされ、すでに150~200基以上が実戦配備されている。こちらこそがわが国への直接的脅威といえる。>

 ノドンこそ日本の脅威。間違いない。

 <ノドンの実験のとき、当時の宮沢内閣の河野洋平官房長官は米国からもたらされた発射情報を非公開とした。ダチョウが外敵に襲われるとき、頭を足の間に入れて外敵を見ないようにしてやり過ごす、それと同じ対応だった。当時の官僚トップ石原信雄官房副長官が、河野長官の方針に従わずマスコミに情報を流したので、国民は危機の存在を知ることができた。

 そうだった。忘れていたことを思い出させてくれるのも歴史家、学者の役割なのだろう。河野洋平氏はその後、自民党総裁になり、衆院議長になった。いまだに自民党内の「ハト派」として北朝鮮擁護勢力の隠れた主軸になっているように見える。

 <それに比べると今回、麻生政権は「ミサイルが領土領海を侵すならば迎撃」と明言し、米韓首脳などの支持を取りつけ、MD(ミサイル防衛)システムを海陸に展開した。この結果、毅然(きぜん)たるメッセージを北朝鮮に送ることができた。看過してはならない成果といえる。政府はMDの一層の拡充強化に努めてほしい。>

 こういう主張を見ると安心する。

 <ミサイル発射を受けて政府は現行制裁の1年間の延長と追加制裁を決めた。その際出された官房長官談話は拉致問題にも触れ、「昨年8月に合意した調査のやり直しにいまだ着手していないことなど」と北の不当な対応を具体的に指摘した。そのうえで「昨年8月の日朝実務者協議の合意に従い、……北朝鮮が具体的な行動をとることを求める」と記した。>

 米国の識者がよく「小泉元首相がせっかく訪朝して平壌宣言でまとまったのに、日本がその内容を守らず、北朝鮮敵視政策に急旋回したのが北朝鮮の硬直化を招いている」という趣旨の発言をして、一見もっともらしいのだが、平壌宣言を守っていないのはどちらなのか、日本政府はもっとクリアカットに国際社会に示すべきだろう。

 <当然のことながら評価したい。しかし追加制裁は「対北送金と現金などの持ち込みに際して届け出を義務づける基準の引き下げ」だけである。現行法規の範囲で政府の決断一つで実行可能な輸出や送金の全面禁止、在日朝鮮人・日本人の北朝鮮往来の全面禁止などが実行されなかったことは残念だ。それらを実行してわが国の強い意思を示した上で、国連などを通じた国際制裁の強化実現のために努力するのが筋だろう。>

 送金全面禁止はなぜ出来ないのだろうか? やはり、河野洋平氏や土井たか子氏らの強烈な抵抗を押し切ることができないからなのだろうか?

 <追加制裁に関してぜひ知るべき事実がある。一部の朝鮮総連系在日本朝鮮人が北朝鮮の核ミサイル開発に技術的に大きく貢献していることである。在日本朝鮮人科学技術協会(科協)は国内の大学や企業で働く在日朝鮮人研究者ら約1200人で組織され、朝鮮労働党の工作機関「対外連絡部」の直轄下にある崔泰福朝鮮労働党書記は1999年8月、科協幹部らも招かれた大会で前年のテポドン1号発射実験に対する在日科学者、技術者の貢献を公然と称えている。>

 こうした証拠があるのに、在日朝鮮人科学者を自由に行動させており、旧国立大学(今は独立法人)などの重要研究へのアクセスも制限していない現状が問題なのではないか。

 <2005年10月、警視庁が薬事法違反容疑で科協の副会長らを逮捕した際の家宅捜索で、陸上自衛隊の地対空ミサイル(SAM)の資料が防衛庁から科協に流出していたことが判明している。>

 <昨年10月中旬、科協所属の徐判道・金剛原動機合弁会社副社長らが訪朝し、1カ月滞在して帰国した。徐・副社長は東大出身のエンジンの専門家で2006年のミサイル実験の際にも訪朝している。徐錫洪同社長も東大出身のエンジン専門家で、この間何回も訪朝してきた。金剛原動機合弁会社は、元山に本社と工場を構える北朝鮮との合併会社で、表向きはモーターの会社だが、ミサイルエンジンに関連しているといわれている。金正日総書記は2002年2月に同社現代化のための「配慮金」100万㌦を総連に送り、同年10月21日には同社を現地指導した。>

 驚くべきは、こうした事実が拉致事件のように「昔の話」ではない、ということだ。4年前、昨年の話だ。

 <このような事実を踏まえるなら、追加制裁として、すべての在日朝鮮人、少なくとも軍事に転用できる技術を持つ在日朝鮮人の北朝鮮渡航を禁止して、技術流出を止めることが絶対必要だ。具体的には現在、北朝鮮の国会議員をかねる6人の朝鮮総連幹部に科されている北を渡航先とする再入国許可停止措置を拡大するとともに、別の国を渡航先として申請して北入国が判明した場合には、在留資格の取り消しなどの罰則措置を取ることだ。自民党拉致問題特命委員会でも何回も論議し、民主党の拉致問題対策本部も昨年末に決めた追加制裁案の中に、同じ項目を入れている。麻生首相の決断を強く求めたい。>

 自民党や民主党に憂国の士がいるのか。

 でも、なぜ麻生政権はそういう声を取り上げないのだろう? 今、北朝鮮がプルトニウム型原爆の起爆装置を小型化できれば、ノドンに搭載でき、それは日本の標的にほぼ正確に当たる性能を持っているのに。

 米国のブッシュ前政権が2001年の9.11後に集団ヒステリー状態で「愛国者法」を制定した。あの法律自体は問題が多すぎて、早く廃棄すべきだと思うのだが、その効果は絶大だった。米国はホームランド・セキュリティという概念を確立して、米本土防衛を今まで以上に重視している。だから、米軍の世界的再編も途中から修正を余儀なくされた。

 日本も愛国者法を、とは言わない。しかし、少なくとも西岡氏が指摘している方策くらいは取るべきではなかろうか。

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宮家邦彦氏の<北朝鮮問題、米国の本音は?>はまだ甘い~4月23日産経新聞朝刊コラムから

 産経新聞4月23日朝刊オピニオン面[宮家邦彦のWorld Watch]で<「北」問題、米の本音はどこに>で米国の北朝鮮政策に疑問を呈しながら、日本は必死に米国に政策転換を訴えるべきだ、と書いていた。

 この結論自体、どうということはないのだが、文中で「私は今まで米国のイラン優先政策を理解していた」と書いてあったのには驚いた。宮家氏のような外交のプロにしても北朝鮮問題を北東アジアのローカル・イシューと見ていたのだ、という点と、日本の安全保障問題を理解していなかったのではないか、とがっかりした。

 しかし、このような「現実主義」派の外交評論家が北朝鮮のミサイル発射を機に考え直し、北朝鮮の「脅威」を認識するようになったことは喜ぶべきことなのだろう。

  宮家邦彦(みやけ・くにひこ)氏は、産経紙面によると、昭和28(1953)年神奈川県生まれ。栄光学園高、東大法卒。53年外務省入省。中東1課長、在中国大使館公使、中東アフリカ局参事官などを歴任し、平成17年(2005年)退官。安倍内閣で首相公邸連絡調整官を務めた。現在、立命館大客員教授、AOI外交政策研究所代表、とあった。エリート外交官を辞めて民間の立場から外交に物申していこう、というのは岡本行夫氏と同じだろう。

 宮家氏はコラムでまず、

 <多くの国民にとって北朝鮮の「意図」以上に知りたいのは実は米国の「本音」ではなかろうか。日本の反対にもかかわらず、北朝鮮をテロ支援国リストから外す。見返りのないまま北朝鮮に譲歩を繰り返す。一体米国はどうしてしまったのか。同盟国にこんなことは言いたくないが、心ある日本人なら、過去2年間の米国による稚拙な対北朝鮮外交に合格点を出す人はいないだろう。>

 と書く。これがメーンテーマである。

 <そうじゃないんだ、と一部の「米国通」は言うかもしれない。ヒル次官補は国務省で高く評価されている。米国は北朝鮮だけ見ているのではない。イラン、パキスタンとともに核不拡散の問題としてとらえている。米国の「本音」では、北朝鮮のミサイル発射よりも、イランの核開発やパキスタンの核管理の方が優先順位は高いのだ、と。>

 だから、ヒル氏は駐イラク大使になった。あれだけ議会共和党の反対が強かったのに、オバマ政権はゴリ押ししてしまったのだ。クリントン人脈が押し込んだことは目に見えている。

 <実は、筆者も昔はそう考えていた。日本人や韓国人には、中東の核問題の深刻さが分かっていない。イランが核武装すれば、中東全域に核兵器拡散の恐れが高まる。パキスタンの核管理が緩めば、テロリストが核兵器を入手するのも時間の問題だ。これは米国自身の安全保障にとっても、北朝鮮よりはるかに深刻な脅威なのだろう、と。>

 ここがびっくりしたところだった。

 <筆者が考えた米国の「本音」は次の通りだ。>

 として、いかにも世界全体に目配りしたエリート外交官らしいものの見方を紹介していた。

 これはこれで貴重だと思う。

 というのは、今の外務省の、特に欧米系の外交官の中にはこのような認識を持ったエリートが多いと想像されるからだ。彼らの認識のどこが間違えているのか、どこを修正させればいいのか、について貴重な資料になる、と思う。

▽北朝鮮は既に核兵器を持ってしまったがイランはまだ未入手である。

▽北朝鮮の核はまだ初期段階にあり、抑止は十分可能だ。ミサイルも米国本土には届かない。一方、イランやテロリストが一度核武装すれば、いかなる抑止も効かない恐れがある。

▽北朝鮮は通常兵力だけで韓国と在韓米軍に甚大な被害を与え得る。軍事行動で北朝鮮の核開発を阻止することはもはやできないが、イランの核開発であればまだ解決の可能性はある。

▽だから、イランの方がより喫緊の問題だ

 <――という理屈だ。何とも、もっともらしい説明ではあるが、実は大きな間違いである。>

 ここで宮家氏は何が間違いなのか、を述べるのだが、まだ弱い。今までの米国中心の思考から抜け切れていないからではないか、と思う。

 <第一に、北朝鮮とイランは一体と見るべきだ。イランはまだ核兵器開発に成功していないが、今年2月に初の人工衛星を打ち上げるなど、運搬能力は北朝鮮よりはるかに進んでいる。両国は核開発で密接に協力している。北朝鮮が核弾頭を、イランがミサイルを進化させれば、両国の核能力は一気に進むだろう。それでも米国は北朝鮮の冒険を重大視しないのか。>

 つまり、イランと北朝鮮の核・ミサイル開発は相互依存しながら進んでいるので、一方だけ蓋をしても、片一方からザザ漏れになる、という当然の指摘である。今回の北朝鮮ミサイル発射に際してもイランの技術視察団が随分前から北朝鮮入りしていたことが報道されている。

 <第二に、核拡散は中東だけでなく、東アジアでも深刻化する。イランが核武装すれば、エジプト、サウジを含むアラブ諸国で核武装への誘惑が高まるというが、それでは北朝鮮が核武装しても東アジアでそうした誘惑は生じないと断言できるのか。北朝鮮の核はわれわれ日本人が考える以上に、グローバルな問題だ。北の核開発がこのまま続けば、直ちに中東方面、欧州方面の安全保障にも悪影響を与えるからである。>

 これは朝鮮半島非核化構想が破綻した場合の日本核武装、韓国核武装の連鎖の話だろう。

 <われわれはこのことを十分理解した上で、北朝鮮に対し厳しく対応する必要性を米国の政策担当者に繰り返し、繰り返し説かねばならない。もちろんその場合には、日本も浮世離れした言動を慎む覚悟が必要となるが…。>

 「日本も浮世離れした言動を慎む覚悟が必要」というのはどういう意味なのだろうか? 日本核武装論などを指しているのだろうか? それとも非武装中立論をはじめとした「9条の会」の主張を指しているのだろうか?

 <今後4年間米国が再びヒル次官補のような外交スタイルを繰り返すのであれば、北朝鮮が日本に対し使用可能な核ミサイルの実戦配備を始めるのは時間の問題となる。そうなってからではもう遅いのだ。>

 今後4年間というのはオバマ政権第1期ということだろう。少なくとも、オバマ大統領とクリントン国務長官、ゲーツ国防長官の主要3氏にはこのことを認識させなければならないだろう、と私も思うが、彼らはそろって中国を重視する「中国派」ではないか。

 宮家氏の論で欠けているのは米中関係への視座ではないか。米国に働きかける以上に喫緊となっている日本の課題は中国への働きかけだろう。

 ただ、あまりに取引材料が少ないので、外交官も苦しいだろう。でも、チャイナ・スクール以外から就任した中国課長はよくやっている、と思う。

 ロシアとの関係を強化して中国と交渉する遠交近攻策が古来、地政学的には最も優れた策だとは思うのだが、北方領土問題がネックになっている。東南アジアは政治的パワーになり切っていない。インドは当てにならない。

 本当に日本外交は苦しい。正念場にあることを識者は自覚すべきだと思う。

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2009年4月22日 (水)

竹中平蔵氏のこりない企業減税論:学究に専念してほしい~4月22日産経新聞朝刊[正論]

 産経新聞が4月22日朝刊[正論]でまた竹中平蔵・慶応大学教授を使っていた。産経新聞に「竹中離れ」が起きているのか、と喜んだのもつかの間だった。タイトルは<“補正の悪循環”が懸念される>。≪“管理”なき総需要政策≫、≪「賢い財政支出」に向けて≫、≪思い切った法人税減税を≫の三つの小見出しがついている。

 <経済の著しい悪化のなか、政府は財政規模15.4兆円という過去最大規模の景気対策を発表した。これによって需要不足が補われ、経済が少しでもよくなることを国民は期待している。しかしながら今回の経済対策・補正予算は、日本経済の活性化にとって、大きな問題点を抱えている。1990年代の再来のような経済悪化と財政悪化の悪循環が懸念される状況になった。>

 と麻生首相の新経済対策をこき下ろし、三つの問題点を指摘していた。①~③で竹中氏の言い分を書いておこう。

①「なぜ15兆円か」のマクロ的意味づけが分からない

 日本経済は昨年第4四半期にマイナス12%成長と落ち込み、今年第1四半期はさらに成長率が低下する懸念がある。内閣府は需給ギャップ率が約20兆円と指摘し、経済財政諮問会議でも今後40兆円レベルに達する懸念が示された。全需給ギャップを政府が補うは不可能だから、政府はマクロの経済状況と政府の役割と当面の展望を明確に示す必要があり、これが「総需要管理」政策なのだが、記者会見で首相はマクロの数字は念頭になく、「積み上げ」でこの数字が出てきたという趣旨の発言をした。これは「総需要管理政策であるはずの財政政策について『管理』が存在しない、マクロ的な視点が完全に欠落している」ことを表わしている、という批判だ。

 麻生首相の記者会見の言葉を論った低俗な批判に過ぎないように思える。

②なぜ今なのか

 この批判は二つの内容からなり、一つは景気刺激のタイミングが決定的に遅れたこと。もう一つは本予算でなく補正予算にしたため、多額の予算を短期間で使い切れない、という批判だ。

 農水省の例を引いている。補正で約1兆円が付いたが、農水省の年間予算(非公共事業)は1.5兆円程度で、この1.5兆円獲得のために1年の政策論議と予算査定があるのに、今回の補正は2週間で枠組みが決まったので、多額の金額を急に一定期間で使うのは、容易でない、との批判である。

③官僚依存の立案なので極めて従来型、メッセージ性に欠ける

 どうも、竹中氏が本当に言いたいのはここのようだから、原文をそのままコピペしておこう。

 <そもそも財政拡大は、一時的な需要不足を政府が補うものである。その間に、本来の民間需要が戻ってくるような政策と抱き合わせでないかぎり、中期的には成功しない。>

 これは正しい。だから、この補正予算と、その後の中長期策は麻生流で一応は応急手当とその後のタネまきという位置づけになっているはずだ。

 <90年代の日本が失敗したのは不良債権処理や成長に向けた構造改革などに手をつけないまま、一時的な財政拡大ばかりを続けたからに他ならない。>

 この結論は経済学者の間で共有された見解でないことだけは言っておこう。あれだけ大きなギャップを埋めるために公共事業をバンバンやったのは良かったのだが、それに組み合わせるべき日銀の金融政策がお粗末すぎた、というのが最近流行の学説ではないか。

 <したがって、規制緩和や制度改革(つまり構造改革)を進め、財政支出の中に成長力を高めるような内容のものを十分取り込まなければならない。これこそが「賢い財政支出」である。しかし今回、政治のトップが十分な理念を示すことなく各役所に政策の「タマ」を出すことを求めたことから、補正予算の内容は見事なほど従来型政策の延長になった。>

 政府が需給ギャップを埋める際に、従来型の公共事業だけにカネを出したら、後に残るのは後年度の運転資金、メンテナンス費用がかかるだけの不要構造物だらけだろう。そんな景気浮揚策ならば、クルーグマンやリチャード・クーではないが、ヘリコプターでお札をばら撒いたほうがいい。これは誰にでも分かることだろう。今回の新経済対策は少なくとも今までの輸出産業頼みの政策を方向転換し、内需産業も育てようという趣旨で練られた政策だと思う。

 官僚主導というが、官僚でも民間でもあれだけ議論して、論点は出揃っているのだから、ほぼ似たような対策になるのは当然だ。

 それに現在の自民党・公明党の連立政権が賢かったのは中曽根康弘元首相や渡辺恒雄読売新聞主筆が望んでいた貯蓄の世代間移転を願った贈与税減税を小幅に止めたことだ。

 なぜ今の日本がだめなのか、と考えて、いろいろな指標を謙虚に見れば、小泉純一郎政権で竹中平蔵氏が中心となって国民経済の中の再分配率を下げた結果、このような国になってしまったことがはっきり分かるはずだ。

 麻生首相はこの補正予算で、小泉構造改革路線に決別する決意を示したのだと思う。

 竹中氏は「政治のトップが十分な理念を示さず」と言うが、総選挙後には麻生首相は(自民党が勝利していれば、だが)はっきりと小泉路線からの決別を宣言するだろう。小泉規制改革が日本を悪くしたことがはっきりしたのだから。

 しかし、いまだに規制緩和とか言っているのが信じられない。

 <環境やITなど新産業の創出にもそれなりの予算が計上されているが、これが大きな効果を発揮するとも期待できないだろう。そもそも日本の新産業関連予算は、すでにGDP比でアメリカの2倍の規模を持っている。しかしこれが大きな成果を挙げていないのは、アメリカに比べて日本は圧倒的に行政府(官僚)が直接お金を使う仕組みになっていることだ。本来なら、役所が使い道を決めるより消費者や企業に自由に決めてもらうほうがいい。つまり同じ財政政策でも、支出拡大ではなく減税が考えられるべきだった。ちなみにオバマ政権の経済対策では、財政資金を公共事業、救済、減税に3等分して使うことが表明されている。>

 何を言おうとしているのか、読者はここで頭をひねっただろう。

 わざと分かりにくく書いているだけで、言おうとしていることは単純なのだ。

 もっともっと国有財産を安く売って、政商を肥やし、自分のところにも分け前をもらい、政府情報に接することの出来る人間だけは大金持ちになり、庶民は切り捨てる、ということなのだ。「民営化」と「規制緩和」がどのような結果を生んでいるか、国民はもう知ってしまったのだ。「かんぽの宿」でオリックス分は儲け損なったかもしれないが、オリックス分以外では相当に儲けたのではないか? まだ足りないのか?

 次の文章を読んで笑わない人はいないだろう。

 <本来なら、今回数兆円の金額を計上し、思い切った法人税引き下げを行って日本の税率を世界標準に近づける努力をすべきだった。>

 労働分配率を下げて自己資金を溜め込んでいる企業にまたもや減税の甘い蜜を吸わせて、労働者は捨て置け、と言っているのだ。

 <また、羽田を国際ハブ空港にするために数千億円レベルの予算を計上すべきではなかったか。これこそが、賢い財政支出である。今後、経済効果が乏しいなかで、さらなる財政拡大への声が上がってくるだろう。>

 羽田空港問題はいずれやるだろう。私も羽田はやるべきだと思っているが、それこそ、補正予算でやることなのか? 空域の調整など、相当の時間が必要なのではないか。

 <おそらく総選挙の結果どのような政権ができようとも、秋にはさらなる補正予算を編成することになるのではないか。これこそ、90年代に経験した経済悪化と財政悪化の悪循環である。これを断ち切れなければ、日本経済は再び失われた10年に向かうことになる。>

 余計なお世話である。

 国を悪くした戦犯に「悪くなる」などと言われたくない。竹中氏は麻生首相の中長期策を見ていないのだろうか? あの中長期策なのか、それと農業改革をメーンに加えた小沢一郎・民主党代表の日本改造策なのか。いずれにしても、小泉=竹中庶民切り捨て路線には戻りそうもないので、安心して大学で学生に経済学を教えていてほしい。

 国を誤った人間がこのようにマスメディアに登場して、あれこれと訳の分からないことを言うのはやめにしてほしい、と心から願っているのだが。

(追記)

◆経済財政諮問会議は竹中氏が支配していた昔の諮問会議ではない!!

 竹中氏は経済財政諮問会議に触れていたが、4月22日朝日新聞朝刊政策面<経済財政諮問会議の民間議員/格差拡大阻止 提言へ>にあるように、諮問会議は小泉構造改革の失敗を謙虚に受け止めて、麻生首相の意向に沿った格差是正策をまとめようとしているらしい。

 蛇足だが、経済財政諮問会議は麻生首相のほか河村建夫・内閣官房長官▽与謝野馨・内閣府特命担当大臣(経済財政政策)兼財務大臣▽鳩山邦夫・総務大臣▽二階俊博・経済産業大臣▽白川方明・日本銀行総裁▽岩田一政・内閣府経済社会総合研究所長▽張富士夫・トヨタ自動車株式会社取締役会長▽三村明夫・新日本製鐵株式会社代表取締役会長▽吉川洋・ 東京大学大学院経済学研究科教授の合計10人で構成している会議だ。このうち民間の張、三村、吉川氏がペーパーを出すというのだ。

 このメンバーには規制緩和大賛成を叫ぶオリックスのあの会長さんも入っておらず、堂々とした見識を持つ財界人と学者がそろっている印象である。

 記事によると、民間議員は4月22日の会合で非正規社員の増加などによる格差拡大を初めて取り上げ、解消に向けた取り組みを強めるよう提言する、とあった。

 記事を少し写しておこう。

 <諮問会議は小泉構造改革の司令塔役を果たしてきたが、「改革のひずみ」を指摘する麻生首相の持論に沿い、方向転換する。民間議員は「所得格差は緩やかな拡大を示している」と指摘。リストラにあった中高年層や、就職氷河期で新卒採用が減った若年層で、特に格差が広がっているとした。

 <さらに、親の年収が少ないほど、子の4年制大学への進学率が低いことなどから、「『機会の平等』が確保されていないことで生まれる格差は『希望喪失社会』につながる」と主張している。>

 <課題として、①格差を固定化させない②セーフティーネットの充実③単身高齢者の増加への対処を挙げ、格差対策と経済成長戦略は「車の両輪」とする。今後の集中審議で議論を進め、必要な施策を6月末までにまとめる経済財政改革の基本方針「骨太の方針09」に盛り込む。景気悪化の中でどう財源を確保するかが焦点になりそうだ。>

 という記事内容だ。いいじゃないか。麻生太郎もやるなぁ、という感じだ。「骨太06」と「骨太09」とでは、全く違ったものになりそうだ。

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臓器移植問題と映画「豚を飼う授業」~毎日新聞4月21日夕刊、22日朝刊などから

 毎日新聞4月21日夕刊は1面トップ<臓器移植法改正案/緩和か厳格化か/「脳死」議論再び/衆院小委で参考人質疑>の見出しで論議を紹介した。コピペしておく。

 <議員立法で国会に提出されている三つの臓器移植法改正案について審査する衆院厚生労働委員会の小委員会が21日、開かれた。専門家ら6人が参考人として意見を述べ、質疑に応じた。現在認められていない14歳以下の子どもの心臓移植など脳死移植の増加を求める一方、脳死判定の難しさを指摘する意見や自己決定の尊重を求める立場からの反論が出された。参考人は意見陳述順に▽日本医科大病院の横田裕行副院長▽日本弁護士連合会人権擁護委員会の光石忠敬特別委嘱委員▽国立小児医療研究センターの雨宮浩名誉センター長▽大阪医大の田中英高准教授(小児科学)▽海外で心臓移植を受けた青山茂利さん▽日本宗教連盟の斎藤謙次幹事。それぞれ約15分ずつ意見を述べ、各党の代表者からの質問に答えた。>

 ということで、毎日新聞は22日朝刊でこの発言詳報を掲載していた。

 <改正案は①脳死を一律に人の死とし家族の同意があれば年齢を問わず臓器提供を容認(A案)②提供年齢を現在の15歳以上から12歳以上へ引き下げ(B案)③脳死の定義を厳格化(C案)の3案。>

 脳死とは、

 <脳の全機能が失われ、二度と回復しない状態。臓器移植法は臓器提供をする場合に限り、脳死を「人の死」とする。法的脳死判定基準(対象6歳以上)は①深い昏睡②瞳孔が開いたまま③脳幹反射の消失④平坦脳波⑤自発呼吸の消失――の5項目について6時間以上の間隔で2回判定することを求める。6歳未満は旧厚生省研究班が2回の判定間隔を24時間以上とする基準をまとめている。一方、脳死判定後も1カ月以上心臓が停止しない患者もみられ、判定の難しさを指摘する声が出ている。>

 とあった。この日の意見は、

 <雨宮氏はA案を支持する立場から「(内閣府調査では)6割を超える人が家族の同意で提供していいと考えている。家族の同意だけで臓器を提供できるのがグローバルスタンダード。国際事情で(海外での)小児の提供は極めて困難になる」と述べた。一方、光石氏は「A案は多くのレシピエント(臓器を受ける患者)の利益のために少数のドナー(臓器提供者)の犠牲はやむを得ないという考え方に基づいている。日弁連はC案を支持する」と反論した。田中氏は、脳死判定後も脳波が戻った長期脳死の例を紹介。「判定には限界があることを知ってもらった上で改正議論を進めてほしい」と訴えた。また、「虐待による小児の脳死例が見逃される」と懸念を表明した。斎藤氏は「宗教や文化などを踏まえ総合的に検討すべきだ」と批判した。>

 というものだった。

 毎日新聞22日朝刊掲載の詳報は次の通り。

◇横田裕行・日本医科大病院副院長

 <そもそも脳死判定は、臓器提供とは関係なく、患者を救命できるかどうか診断するための行為だ。現在の判定基準で、不可逆的な全脳機能の停止は判定できる。(脳の活動を判断する)脳血流検査は必須にすべきではない。一方、提供施設の負担は無視できない。人的支援があれば臓器提供に対応できる、という施設が多い。脳死判定から臓器提供まで約45時間もかかり、人手が切迫している現場では、日常診療に支障をきたす。法律が変わり提供が増えるのはいいことだが、今のままでは施設は破綻する。移植への信頼を裏切らない法律を作ってほしい。>

◇光石忠敬・日本弁護士連合会人権擁護委員会特別委嘱委員

 <臓器提供の増加を求める流れは、移植を受ける患者の利益のため臓器提供者を犠牲にしてもよいという考え方に基づく。だが、提供者の尊厳も患者同様に守られなければならない。現行法は自己決定の思想が前提であり、本人意思を不要とするのなら新法を作り直すべきだ。また、子どもの利益につながる親の代諾は認められるが、利益にならない代諾の権利は親も持てない。現行法にない組織、生体移植を盛り込み、自己決定を中心としたC案が一番いい改正案と思う。>

◇雨宮浩・国立小児医療研究センター名誉センター長

 <日本の臓器移植法の基準は極めて厳しい。提供は増えているが、最大で年13例に過ぎない。移植を望む多くの患者が亡くなっている。国際標準である家族による提供意思決定方式を取り入れるべきだ。このため、脳死を一律に人の死とし、家族同意で提供できるA案の施行をお願いしたい。各国も提供者不足が深刻で、今後の渡航移植は困難になると予想される。特に、国内で移植を受けられない小児が、公平に移植を受けられる法改正が必要だ。もし脳死判定を受けたくないと考える場合は断ることができ、それぞれの死生観にのっとった判断をすればいい。>

◇田中英高・大阪医大准教授(小児科学)

 <先週の日本小児科学会倫理委員会で、「脳死判定をしても100%脳機能が戻らないとは断言できない。意見表明ができない子どもの人権が損なわれる恐れがあり、A案には賛成できない」との合意がほぼ得られた。被虐待児のまぎれ込みを防ぐことは非常に難しく、小児の脳死判定には小児科医の7割が「不可能または分からない」と答えている。小児の脳死判定には限界がある。判定後に自発呼吸が戻るなど長期脳死の例もあり、小児科医は「自信を持った判定ができない」との不安を肌で感じている。その事実を広く国民に知ってもらいたい。>

◇米国で心臓移植を受けた青山茂利さん

 <1999年9月、45歳のとき突発性拡張型心筋症を発症し、余命3年と宣告された。自分のために家族を犠牲にできないと思い、渡航せず日本で提供を待つことにした。時間切れになれば潔く死のうと決めた。一方、「だれかの死を待つ」自分に苦しみ、希望がゼロではないことは絶体絶命よりつらかった。生きることをあきらめ、自分の気持ちを保った。ある日、車椅子に座る自分とは違い、米国で移植を受けて自分の足で立っている患者仲間と再会した。彼がまぶしく大きく見え、その夜は一睡もできなかった。渡航移植を決意し、米国で移植を受け、私の闘病生活が終わった。>

◇斎藤謙次・日本宗教連盟幹事

 <脳死移植は、個々人の死生観にかかわる重要な問題。医療現場の状況だけでなく、宗教、文化などを総合して検討すべきだ。社会的合意を得たうえでの改正を願いたい。脳死を人の死としてはならない。脳死では心臓が動き、温かい血液が流れている。日本人は心臓や呼吸が停止し、瞳孔が開くことを人の死として受容してきた。脳死を一律に人の死とする改正案は、将来に禍根を残す。他者の臓器摘出を前提にした医療は緊急避難的であり、普遍的とはいえない。過半数で決するのでなく、社会的合意ができるまで検討を重ねるよう求める。>

 難しい問題で、その後の動きもあるが、なかなか日本人がほぼ納得できるというような案ができる見通しはないのではないか。

◆映画「豚を飼う授業」

 思い出したのは当時、議論を呼んだ映画のことだった。

 桑畑四十郎という方がご自分のブログで、この映画を紹介しているので、彼の昨年11月23日のブログをコピペする。

http://ameblo.jp/kuwabatake/entry-10168904732.html

 <大阪の小学校での “豚を飼う授業” のお話。実話であるという点をしっかりふまえてご覧下さい。監督は、前田哲。原案(つまり、当事者の先生)は、黒田恭史。著書 「豚のPちゃんと32人の小学生」 があり、1993年にフジテレビの 「今夜は好奇心」 で放送されて、賛否両論を巻き起こしたそうです。出演は、妻夫木聡、甘利はるな、大杉漣、原田美枝子、田畑智子、戸田菜穂、ピエール瀧、その他たくさんの子供たち、豚。>

 というような紹介から始まって、

 <思ったより健全な映画に仕上がりました。“青少年映画審議会推薦” “日本PTA全国協議会特別推薦” “文部科学省選定” などというすごい肩書きがついているので 、家族揃って見ても大丈夫です。…俺的にはちょっと不満が残りますが。>

 と、この映画が文部科学省も認定した「良い子路線」であることを教えてくれる。そして、映画紹介だ。

 <6年生の担任を受け持つことになった新任教師・妻夫木先生は、いきなり教室に子ブタを持って登場。『…このブタをみんなで育てて、最後は食べようと思います。』 生徒たちは困惑するも、かわいいブタに魅せられ、一生懸命に世話をするようになる。食肉のつもりだったブタが、クラスのペットになってしまい…。>

 <本作は、食育という面と、人間と動物の関わり合いという面、ひいては人同士のつながりにまで波紋を広げていく。いやはや、ブタ一匹でここまでの騒動になるとは。Pちゃんもすごいプレッシャーですねえ。こんなに有名なブタも珍しいんじゃないでしょうか。まさに伝説のブタ。ブタだけに、“豚(トン)デモな授業” といったところですね。>

 <人生においては、答えのないことが実に多い。優等生は、答えを覚えておけば点は取れるが、社会に出るとそれだけではうまくいかない。相手や環境が変われば、それまでの常識はいとも簡単に覆される。そこで大事なのが、“考える力” なんです。あらゆる状況において、自分の頭で考えて、自分で行動を決めていく能力を磨く。それこそが、勉強する理由であると俺は思うんです。そしてそれは最終的に、自分の人生を生き抜いていく力になる。>

 <自分が小学生だった頃を考えても、彼らと同じ視点にはなれない。時代も環境も違うから。情報の洪水のような今の世の中において、正しい基準なんてもうないのかもしれない。誰かが何かを言えば、賛同する人も批判する人もいる。だけど、大切なのは志。黒田先生はいい授業をしたと思います。そしてそこにいた生徒達も、いい授業を受けたことを誇りに思って欲しいと思う。少なくとも、食べ物に感謝できる大人になっていることは間違いない。>

 <今どきの子供、今どきの大人。俺自身も、社会性に乏しい落ちこぼれのトンデモブロガーですが、みんなひっくるめて考えれば、いい悪いに差異はあまりないと思うんです。子供は決して純粋無垢じゃないし、大人も悪い人ばかりじゃない。子供が立派とか、先生が変だとかじゃなくて、この先生と生徒という “組み合わせ” が良かったんだと俺は思うんです。>

 <教える側と、学ぶ側。双方がしっかりしていれば、教材がトンデモであっても授業は成り立つ。逆に、トンデモな授業だからこそ面白いのだ。ここでしか学ぶことができない、貴重な時間を大切にして下さい。子供たちよ、しっかりがんばって、楽しく学んで下さい。>

 と論を展開されていた。

 私は最近、DVDを借りてきて観たのだが、見ていてイライラした。何という先生なのだ。先生としての自覚もないし、勝手なことをして学校全体に迷惑をかけて、と。しかし、観ているうちに気付いたのは、この映画はそのように観客をイライラさせたい映画だったのではないか、ということだった。

 桑畑四十郎さんが言うように、人生に簡単に◎×で決められることがらは多くない。その中で小異を捨てて大同についたり、迷ったりしながら人生を歩んでいくのだが、少なくとも「他人様に迷惑をかけてはいけない」とかの「道徳」は私の世代は親や学校の先生から叩き込まれていた。今はどうも違うようなのだ。どっちがいいのか、一概には言えないのだろうが、「道徳」を叩き込まれた世代からすると、電車を待つホームで列を作らずに割り込んで平気な若者や、肩がぶつかっても謝らない若者にイラつくこともある。

 この映画は映画でイライラさせることで、現実社会でのそんなイライラを鎮める効果を持っているのかもしれない。

 そして、本題である。

 この映画で豚を北朝鮮、卒業するから学校のどこかのクラスに譲って当然という児童たちを「飢え死にする人が可哀想だから援助しよう」といって、核開発を進める現状には黙ってしまう進歩的文化人、約束したのだから豚を殺して食べよう、という苦渋の決断をする児童は対北朝鮮強硬派なのか、と思ってみたりもした。別に北朝鮮の方々を愚弄する意味で例えたわけではないことを注記しておく。金正日総書記の独裁政治で人々は何も知らされていないのだから、余計に始末に悪いのだ。

 そして、脳死についてもこの児童の意見対立と同じだと思うのだ。

 どこに自分の立ち位置があるか、で言うことが違ってくる。

 欧米は一応、キリスト教文化圏としてのコンセンサスで「死」を見ていくだろうが、日本の八百万の神のいる列島ではどうなのだろうか、と。

 今の世の中で「モンスターペアレント」ではないが、勝手な人々が「何が悪いのか」と居直っているのを見ると、飼うときには「可愛いから」と飼い始め、卒業間じかになると「仲間だから殺すのは可哀想」と言う児童たちの精神構造、行動様式と同じであることに気付く。

 その精神をどのようにして「責任ある人間」にまでブラッシュアップするか、が問題だと思う。安倍晋三元首相の推進しようとした右傾教育路線だけでその目的が達成されるとは思わないが、そのブラッシュアップが終わらないと、脳死論議も勝手なことを言い合うだけで、哲学や宗教の深みに到達できないまま小手先の案でまとまる危険があると思うのだ。

 河野太郎氏のように、ブログを読むと訳の分からないことばかり書いてあり、勝手な論理満載。そのうえ、いつまでも日本人は自虐していろ、と言わんばかりの論理。日本人とも思えないような方なのだが、国会議員となっており、親子そろって一定の影響力を持っていることを考えると、この問題は一筋縄ではいかないだろう、とも思っている。

 功利主義と「あるべき」論と死生観と哲学。ベンサムとヘーゲルとカント。

 もっと勉強しないと分からないことが多いのだ、この世の中は。

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2009年4月21日 (火)

佐々淳行氏の<自分の国は自分で守る覚悟を>は優先順位を間違えている~産経新聞4月21日朝刊[正論]

 今日はなぜか産経新聞だけだ。他の新聞は目を通したのだが、読むべき記事はなかった。産経新聞は先に二つの記事を取り上げたが、また取り上げたい。今度は[正論]である。

 産経新聞4月21日朝刊[正論]で初代内閣安全保障室長の佐々淳行氏が<自分の国は自分で守る覚悟を>のタイトルで寄稿していた。昨日までに私が書いたこととほぼ同じ論拠を書いていることが面白かった。私は「結論」に踏み込むことは躊躇っているのだが、佐々氏は歯切れよく、「結論」を出している。立場がはっきりした方だから、いいのだろうが、もう少しいろいろな可能性を考えてから結論を出してもいい、とは思う。少なくとも佐々氏の結論には私は反対である。なぜなら、優先順位を間違えている、と思うからだ。

 とりあえず、佐々論文を読んでみよう。文中に小見出しが≪今に生きるハリネズミ論≫、≪「32年方針」幻想に惑う≫、≪新「国防の基本方針」求む≫の三つついていた。

 <日本の専守防衛戦略を動物にたとえて「ハリネズミ」と唱えたのは昭和56年(1981年)5月7日、レーガン大統領との首脳会談のため訪米した鈴木善幸元総理(麻生総理の岳父)だった。「吼えるライオンより、賢いハリネズミでありたい」との談話が、通訳の誤りで「ヘッジホッグ」というべきなのに「マウス」となり、ワシントン・ポスト紙などに「逃げ隠れるハツカネズミ」と酷評され、物議をかもした。>

 <鈴木元総理は農水族だったため、この逸話はむしろ笑い話として伝えられたが、なんと30年近く後の現在「ハリネズミ国防論」は、まさしく日本の基本的防衛戦略そのものとなった。>

 鈴木善幸首相は対米関係の失言で辞めさせられた。しかし、それを糊塗するために、直後には辞めず、訪中し、帰国後に辞意を明かしたのだった、と覚えている。日米同盟には軍事は入らない、というような記者会見をして、あわてた外務省が否定ブリーフィングを行ったと思う。

 <敵に襲われたときだけ体中に針をたてて自衛するという意味において、今日急務となった北朝鮮のノドン・ミサイルの攻撃に備えるMD(ミサイル・ディフェンス)ではなかったが、卓見だった。>

 ここまでは導入のための話題だ。いわば講演の枕だろう。

 <いまテポドン2号の脅威を体験して、再び憲法改正や集団的自衛権の解釈改訂、「座して死を待つより敵地攻撃を」といった議論が燎原の火の如く燃え立ちつつある。だが、一番大事なことは、昭和32年(1957年)5月20日、国防会議決定および閣議決定された「国防の基本方針」を公式に廃棄し、新たに日本の国防の現状に合った「MD・新国防の基本方針」を、早急に閣議決定することだ。>

 そんなに燎原の火のように広がっていないのが問題だと思っているのだが。佐々氏の周辺には考えを同じくする人々が集まるので、日本国民がそっちの方向に動いている、と思っているのかもしれないが、これは危険な錯覚である。いまだにテレビのワイドショー的な興味でしかない。だから、和歌山カレー事件の女の死刑確定がワイドショーで取り上げられれば、そっちに関心を示し、人の頭のキャパシティなど小さいものだ~、昔の話はどんどん忘れていく。それが北朝鮮の思う壺なのだが。

 北朝鮮がなぜ謝らないか、疑問に思っている人も多いと思うが、時間の流れが遅いのだ。だから、10年後でも20年後でも自分に有利な時が来るのをじっと待っている。それまでは死んだふりをすることもあるが、決して方針は改めない。そして、時が来れば「私たちはやはり正しかった」と言う。すぐに「ごめんなさい」と謝る日本と全く違う行動パターンだ。

 <そして、それに沿って北朝鮮の200発ないし300発といわれる、ノドン・ミサイルによる“7分間戦争”に即応できるMD・ミサイル防衛国防体制を急速練成することだ。>

 この主張が「そうなのだろうか?」と疑問を感じるのだ。300発のフレア機能付きの弾道ミサイルを確実に撃ち落とせるMDシステムを整備するのに一体いくらかかるのだろう? できればいいが、できないのではないか? それこそ「はりねずみ」国家防衛論そのものなのだが、そんな無茶なことはできないと思う。

 <昭和32年の「国防方針」は、ほとんどの人が知らない。知っている人も「名存実亡(名ばかりで実がない)」と一蹴する。ところがそれは政治指導者の頭にすりこまれている。「名亡実存」で、全く実情にあわない国連信仰が残存し、「国連軍」という、ありもしない地球防衛軍の幻想に浸り、米軍の大量来援を期待している。>

 <そのよい例が、小沢民主党代表の安全保障政策である。国連決議さえあれば自衛隊はどこまでも派遣できるとか、米軍は第7艦隊さえあればよいとか、到底日本の安全を委ねる内閣総理大臣の器ではない。>

 小沢一郎氏批判である。佐々氏は昔から「反小沢」だったっけ?

 <「国防の基本方針」とは、次の4項目だ。要約すると

①国連中心の平和協調外交

②民生の安定、愛国心の高揚など防衛力の基盤の養成

③国力国情に応じた必要最小限の防衛力の漸進的整備

④(第4項は重要なので正確に書くと)「外部カラノ侵略ニ対シテハ、将来国連ガ有効ニコレヲ阻止スル機能ヲ果シ得ルニ至ルマデハ、米国トノ安全保障体制ヲ基調トシテコレニ対処スル」。>

 これを律儀に守っているのだ、と。

 <その半年前、国連に加盟したうれしさの故か、実にナイーブなバラ色の夢で、国連軍、米軍の来援まで「小規模限定的な着上陸」に独力での対処を夢見た。そのため必要なのは、GNP(国民総生産)%以内の通常兵器の漸進的整備という楽観論は、今日まで日本の国防の基本方針であり続けた。>

 今の日本の国防の基本方針は1957年決定のままだったのか。

 <4月5日の北朝鮮のテポドン2号の発射強行によって、いくつかの懸念がハッキリした。

①国連が全く無力であること

②6カ国協議の多国間協定があっても中国、ロシアは北朝鮮支持

③米国も中東との2正面作戦を恐れて「ブルータス、お前もか」の背信で、核・ミサイル・拉致の一括協議など夢のまた夢

 ――ということだ。>

 特に③は大きいと思う。これは声を大にして何も知らない国民に知らせるべきだ、と思うのだ。

 <しかも北朝鮮は、4月14日に6カ国協議脱退を表明した。>

 <米国背信の中には

①ブッシュ前政権のテロ支援国家指定解除

②ゲイツ国防長官の「米国向け以外のミサイルは撃墜しない」との声明

③中国の尖閣諸島領有宣言に米高官の「中立」表明

 ――などがある。日本国民の対米信頼は揺らぎ、日本が攻撃されたときに米軍が報復攻撃するかとの問いに43%が「しない」と答える世論調査結果が報道された。>

 米国の背信である。背信なのかどうか。米国にとっては当たり前の戦略を実行しているだけかもしれない。その転換は急に行われたわけではなく、1985年前後の貿易摩擦の際には防衛と貿易をリンクさせる議論もあった。日本に独自の防衛力整備を求める声は知日派のアーミテージ氏らから強く上がっていた。

 つまり、米国にしてみれば、あれだけしつこく忠告したのに、日本は何もしなかったじゃないか。自業自得だ、という思いもあるかもしれない。

 <ヒラリー国務長官の訪日時の「ジャパン」の連呼やテポドン発射直後のオバマ大統領の「ルール違反にはパニッシュ(罰)を」という強硬声明も、みんなリップ・サービスなのかもしれない。>

 リップ・サービスでしょう。

 <そうなると、日本は「自分の国は自分で守る」覚悟をしなければならない。>

 そこまでは一致すると思う。ただ、次の結論が急ぎすぎだ、と思うのだ。本当に現実的なのかどうか?

 <そのためMD優先の「新・国防の基本方針」を早急に閣議決定し、第1項の国連中心の平和協調外交には「平和維持活動への積極貢献」を第2項には改正教育基本法による「愛国心、公徳心の涵養」を、第3項にはMD体制として当面、イージス艦4隻(SM3搭載)、ノドン・ミサイル対応のPAC3型(迎撃ミサイル)10個中隊40基の防衛予算をGNP1.5%まで前倒し整備。第4項から国連至上主義と対米依頼心を消去した祖国防衛戦の気概をこめた「新・国防の基本方針」を定めることが急務である。>

 国防の基本方針策定はいいのだが、今の自衛隊の戦力はあくまで在日米軍の攻撃能力を補完するためのもので、独自には何も出来ない「かたわ」の軍隊だ、ということは佐々氏が一番知っていることではないか? その問題を放って置いて、こんな基本方針を決めたり、ハリネズミ防衛に国家予算の何割ものカネをつぎ込むことには反対せざるを得ない。

 <テポドン対策に、より長射程のサーズ・ミサイル導入をという声もあるが、国防の最優先課題は日本を狙うノドン対策であることを忘れてはならない。>

 まさしくそうなのだ。それも、核搭載ノドンが現実化しないように日本が主導して何らかの対応を急いですることが求められているわけで、今「新国防の基本方針」策定は優先順位的に言えば二の次、三の次だと思うのだが。

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中国が本当に北朝鮮にムチを使うだろうか?~産経新聞4月21日朝刊1面伊藤正氏コラム

 平成21(2009)年度の日本記者クラブ賞に産経新聞中国総局長兼論説委員の伊藤正氏(68)と東海テレビ放送報道局専門局次長の阿武野勝彦氏(50)が選ばれた。伊藤氏は産経新聞紙上で連載し、2008年に出版された「鄧小平秘録」(上・下)が高く評価された、という。ご同慶にたえない。

 伊藤氏は東京外語大中国語学科卒。共同通信で北京支局長、論説委員長などを歴新して2000年に産経新聞に移り、00年12月から北京で健筆を振るっておられる、という。

 産経新聞はこのような「大記者」制度を取り入れ、ソウル支局の黒田勝弘支局長も共同通信からの移籍組で05年度の日本記者クラブ賞受賞者。古森義久ワシントン駐在特別委員は1993年度の日本記者クラブ賞受賞者で毎日新聞外信部記者からの移籍組だ。「大記者」制度はこの意味では成功しているのだろう。ただ、若手のプロパー記者には現場で剣を磨くチャンスが減るというデメリットもあるのだろうが、そのデメリットを上回る効果を出している、と思う。

 その伊藤総局長が4月21日産経新聞朝刊1面コラム[ちゃいな.com]で<ならず者にはムチも必要>のタイトルで、中国の北朝鮮観について興味深いリポートを書いていた。読んでみよう。

 <5年近く前、中国の独立系理論誌「戦略と管理」が北朝鮮の金正日体制を批判する文章を掲載、廃刊処分になったことがあった。文章に激怒した北朝鮮の要求に中国政府が応じた結果で、執筆者の研究者も処分された。北朝鮮批判はタブーであり、専門家たちも、オフレコでは本音を話すが、表現には慎重だ。当局者はもっと神経質で、腫れ物にさわるようだ。今回の北の弾道ミサイル発射(4月5日)に際しても、中国外務省は当初、「人工衛星打ち上げ」との北の主張を踏まえて批判を避け、関係国の冷静な対応を呼びかけた。>

 胡錦濤総書記が口にした、この「冷静に」という言葉は世界を駆け巡り、日本だけがバカみたいに騒いでいる、というイメージを世界に振りまいてしまった。中国の戦術的な勝利だった、と思っている。攻撃的な武力を持たず、手足を縛られている日本にとっては騒ぐくらいしか手はないのに、その最後の手である「騒ぎ」まで封じる、という高等戦術だった。

 <その実、中国当局者は非公式な場では北朝鮮へのいらだちを隠さない。国連安全保障理事会で、北朝鮮制裁決議に反対しながら、2006年の核実験に対する対北制裁継続を再確認した議長声明に賛成したのも、その表れだった。>

 これがよく分からないのだ。中国専門家はよくそう言うのだが、本当なのか、という疑念が消えないのだ。

 <これに関する中国外務省の談話(14日)は中国が制裁決議や追加制裁に賛成しなかったと付け加えた。北朝鮮向けの言い訳だが、核問題の解決は6カ国協議以外にないとの中国の基本路線による。同協議は北の参加が不可欠だが、北は、協議からの脱退と核開発再開を表明、国際原子力機関(IAEA)査察員らを国外退去させてしまった。>

 その通りだ。

 <朝鮮問題の権威である中国共産党中央学校の張璉瑰教授は「新聞週刊」誌(英文版)への寄稿文で6カ国協議は、北朝鮮の核・ミサイル開発の時間稼ぎと、援助獲得に利用されたと指摘。北は今後、核の小型化と核運搬能力の向上に努め、より大きな利益が得られるまで協議には応じないだろうと予測している。その理由について張教授は、米国からの武力攻撃の可能性がなくなったと北がみていることを挙げた。米国は前政権に続き、北が望む直接交渉に色気を見せだし、中国の6カ国協議戦略は危機に直面している。>

 米国が「アメとムチ」政策を捨て、「アメとアメ」政策に変われば、北朝鮮がこうなるのは目に見えていたのに。

 <張教授の言うように、北朝鮮にとって協議は用済みになっているとすれば、中国にはどんな手があるのか。北が参加を拒否するごとに中国は、食糧・エネルギー支援で説得してきたが、その手をまた使うのか。>

 また「アメ」ですか。

 <そうした中で、中国共産党機関紙「人民日報」傘下の国際情報紙「環球時報」が13日、注目すべき社説を掲げた。6カ国協議の重要性を強調、北朝鮮に異例の厳しい批判を浴びせた。「(北)朝鮮が周囲の忠告を聞かず、朝鮮半島の核問題解決の基本線を踏みにじる行為を繰り返すなら、巨大な代価を払うことになる。核を手にすれば国際的境遇も変わるとの幻想を持つべきでない。核保有に一歩進むごとに国家困難も増すと知るべきだ」>

 「巨大な代価」という言葉遣いが何かもっともらしいが、何だろう?

 <社説は「中国は朝鮮に援助はするが、保護国にはならない。中国を『人質』にする幻想を持つべきでない」とも警告している。社説は「中国は朝鮮が第3国と交渉するのに反対したことはない」と述べているが、米朝交渉を牽制する意図と読める。>

 逆の意味に解釈しなければならないとは、面倒な国なのだ。北朝鮮の文書もそうだが、真意が分かりづら過ぎる。

 <3月に訪中した北朝鮮の金英逸首相に胡錦濤国家主席らはミサイル発射の自制を要求、予定されていた援助協定などの調印は中止されたと聞く。要人訪問時の慣例である首脳招請のエール交換もなかったという。>

 中国は「怒っているぞ」ということを金正日総書記に示したかったのだろうか?

 <中国は従来、核問題では対話を重視し、圧力には反対してきた。しかし今回は、援助を武器に北へ圧力をかけ始めたかにみえる。ならず者にはむちも必要だ、と。>

 本当にそうならば、歓迎すべき転換だが、なかなかそこまでは進まないのではないか、とも思うのだが。

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北朝鮮への総連マネー送金の謎:産経新聞の[朝鮮総連の錬金術]は必読だ~4月21日朝刊

 産経新聞4月21日朝刊は1面トップ<朝鮮総連、60億円超集金か/敗訴の借金返さず>で朝鮮総連の醜いやり方を暴露しただけでなく、3面で[消えた巨額貸付金~朝鮮総連の錬金術]のタイトルで続き物をスタートさせた。この日は<上>だから、3回連載だろう。

 20年前、30年前を振り返ってみれば、各新聞社は朝鮮総連の実力行使に怯えて、この種の問題を正面から取り上げなかった時代があった。それを考えると別世界のようだ。

 だが、残念ながらこの種の正確で必要な報道を繰り返しているのは産経新聞、読売新聞、日経新聞の3紙だけで、朝日新聞、毎日新聞、東京新聞ではこのような報道にはなかなかお目にかかれない。

 朝日新聞など3紙は読者に対して説明責任を果たしていないと言われても仕方ないのではないか、と思う。

 産経新聞の記事を読んでみよう。

 まずは1面トップである。

 <在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)が許宗萬・責任副議長を責任者として「預置金証」(借入証書)を発行、朝銀京都信用組合=破綻=を通じて京都市内の在日企業経営者(商工人)らから6億円を借りたまま返済していないことが20日、分かった。このうち2億円については訴訟で貸し手側の勝訴が確定したが、1年半以上も放置。商工人側は、許氏らが預置金証で総額60億円以上を借り入れたと主張しており、今後の対応次第では、借り入れに関与した総連執行部の責任問題に発展する可能性もある。>

 これが前文だ。

 <借り入れは当時の朝鮮総連の最高権力者、韓徳銖・議長(故人)が直轄。当時、副議長だった許宗萬責任副議長が実務責任者として具体的に指示していた。>

 まだ韓徳銖の時代の話だ。ハンドクスなどという名前は関係者しか知らない闇の名前だった。それが、いつの頃からか、闇の帝王並みに知られるようになった。

 <訴訟は平成16年(2004年)10月、京都市の商工人2人が1億円ずつ、計2億円の返済を求めて提訴。京都地裁では原告側が敗訴したが、大阪高裁で勝訴、19年(2007年)9月、最高裁が許氏ら総連執行部側の上告を棄却し高裁判決が確定した。判決によると、韓議長と許責任副議長は元年(1989年)11月24日、東京都千代田区の朝鮮総連中央本部で、朝銀京都の理事長(当時)に額面1億円の預置金証6枚を示し、1人につき1口1億円、計6億円を借り受けてくるよう指示した。>

 1989年、ベルリンの壁が崩壊し、北朝鮮の金日成、金正日親子が世界情勢の進展に神経質になっていた頃の話だ。

 <韓議長は理事長に「わが国の人民生活向上のため、カラーテレビ生産に寄与することにした」と説明したうえで①寄付ではなく総連中央の借入金とする②借入金は6年後には朝鮮総連が責任をもって返済する――などの条件を示し、現金を持参するよう命じた。これを受け理事長は、知人の商工人6人に各1億円の貸し付けを要請。計6億円を集め、指示通り届けた。7年(1995年)12月の返済期限を過ぎ、再三問い合わせしたにもかかわらず、対応が得られなかったため提訴した。>

 京都にも在日は多い。だから、京都のテレビ局の役員に許永中が就任したりする。また、野中広務、武村正義両氏の北朝鮮との関係は地域と無関係ではない。東京や大阪でもそうだが、在日の金持ちはパチンコ屋、サウナ、風俗営業、焼肉屋などで成功した人たちが多い。

 スネに傷を持つ人も多く、国税局や警察の摘発から逃れるために、朝鮮総連の暴力装置に頼っていた時代が長く続いたのは事実である。

 だから、頼まれると「NO」と言えずに金を出すことがまかり通る。この構図は小泉純一郎元首相が平壌を訪問し、金正日総書記が「拉致した」と認めるまで続いた。この「拉致した」発言で朝鮮総連は奈落の底に転落してゆくことになる。

 <商工人側は、理事長が許氏らから受けた指示内容の詳細な記録を訴訟に証拠として提出。これに加え関係者尋問、陳述書などを元に「許氏らが朝鮮総連名義で1億円の預置金証を計60枚以上発行し、東京、大阪など10の朝銀信組を通じて総額60億円以上を集めた」とし、こうした描写が確定判決にも採録された。>

 証拠中心主義の日本の司法で裁けば、有罪になる。この場合は刑事裁判でないので、損害賠償とか返還請求だが。

 <朝鮮総連では昨年末、財政局長を更迭。この時期は許氏に対する商工人側の謝罪要求が厳しくなっており、公安当局は多額借り入れ問題が公になり責任追及される可能性が高まったと判断した執行部側が、更迭で事態の収拾を図ろうとしたとの見方を強めている。>

 日本の大手企業と同じ対応なのだなぁ。結局は「ミニ日本国」なのだ。

 <判決が確定しているにもかかわらず、商工人らへの返済が滞っていることについて、朝鮮総連の広報担当者は「今ここでは分からない。産経新聞の取材には応じられない」と話した。>

 「産経新聞への取材には応じられない」という言葉は面白い。じゃあ、朝日新聞への取材には応じるのか? きっと応じるのだろう。そのかわり、「朝鮮総連に配慮した記事にしてくださいね」とかの条件はつくのだろうが。

 3面の続き物[消えた巨額貸付金~朝鮮総連の錬金術]㊤は<中央の奥の手/「借入証書」まで発行>のタイトルで、許宗萬責任副議長(当時)が朝銀京都の理事長に渡した額面1億円の「預置金証」のコピーの写真が掲載されている。確定判決で真正と認定されたものだ、という。

 この記事では先ほど書いた世界情勢の解説がされていた。

 <このころ東欧には、民主化の大波が押し寄せていた。共産圏の盟主として東欧諸国の指導体制に介入する外交政策をとってきた旧ソ連は86年、方針を転換した。盟主がぐらついた東側諸国に体制転換の連鎖が起き始めた。>

 <89年11月には、”東西冷戦の象徴”だったベルリンの壁が崩壊し、その翌月のクリスマスには金日成の盟友だったルーマニアの独裁者、チャウシェスクが妻とともに処刑されている。>

 このチャウシェスクの処刑が金日成にものすごい恐怖感を植え付けた、という証言を読んだことがある。たしか、北朝鮮からの亡命者の本か何かで読んだのだと思うが、はっきり覚えていない。

 <旧ソ連や自由化の波にのまれた東側の国々、中国などの援助で成り立っていた北朝鮮指導体制は政治的な後ろ盾とともに経済的な基盤をも失いつつあった。>

 この背景説明は分かりやすい。そして、北朝鮮を支えたジャパンマネー、総連マネーについて、である。

 <北朝鮮の故金日成、金正日の独裁政権を支えた膨大なカネの多くが、日本から送られていたことは、もはや「周知の事実」(公安関係者)。送金は朝鮮総連執行部によるものだけでなく、北朝鮮に肉親のいる人々による個人的な送金もあったが、金額では朝鮮総連が圧倒的だった。>

 北朝鮮のやり口の汚さは親類を人質にして、日本に住む親類からカネや高額品を遅らせることだ。そして、実際にその人の手に渡るのではなく、党幹部らが横取りするのだという。土井たか子氏の親類が北朝鮮にいる、という噂も昔、聞いたことがあった。真相は分からないが、土井氏は北朝鮮の話題が出ることを本当に嫌がっていた。

 <北朝鮮への送金原資は「商工人」と呼ばれる企業経営者らから徴収された”寄付”で大半が賄われていた。焼肉店などの外食産業やパチンコ、ホテルなどのレジャー産業、建設業など多様な産業で事業を営んでいる商工人は、その収益金を「民族の金融機関」である朝銀に預ける。朝銀はこの資金を商工人らに事業資金などとして貸し出すが、その際、「割り増し融資」で送金原資が生み出される仕組みだ。>

 なるほど、仕組みは分かるが。

 <例えば、1億円の借入を申し込んだ商工人に、朝銀側は数%から1,2割を上積みした金額を借りてくれるよう要請する。増額分は借り手の借金となるが手渡されることなく、北朝鮮に送る原資としてプールされる。商工人は事業計画や返済能力から見積もった相応額を超えた借金を負うことになるが、その後の朝銀とのつきあいや、その背後にある朝鮮総連執行部の影響力を恐れ、割り増し貸付を拒否できない。>

 <こうした「ずさん融資」の末に破綻した朝銀信組の処理のため1兆円を超える公的資金が投入されたことは記憶に新しい。だが、元年(1989年)11月、許が各地の朝銀に示した集金方法はこうしたやり方とは違っていた。>

 思い出した。日本人の税金から公的資金1兆円が朝銀に注入されたのだった。ぼくらの税金を使って、北朝鮮への送金を助けたわけだ。それで核開発をしたり、ミサイルの発射をしたわけだ。許せない。

 <朝銀を通じて商工人に無理矢理に借金させて資金を作っていた総連中央がなぜ、わざわざ「借金」と明言して借入証書まで発行して金を出させたのか。>

 <大口のカネを、しかも早く集める「奥の手」。総連中央は借り主であると同時に、「総連が言っているのだから(貸し倒れの)心配はない」という「保証人」でもあった。本国と直結するその絶大な力を前に、朝銀や商工人らが「ノー」といえる選択肢はなかったのだ。>

 以上が㊤の内容である。

 なぜ急いだのか? その時に、北朝鮮が核開発やミサイル開発で急ぎのカネが必要だったのではないか? そのへんは㊥や㊦で解き明かされるのかもしれない。期待しよう。

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2009年4月19日 (日)

ロナルド・ドーア氏の言う通り、小泉=竹中路線が否定されてきたのは喜ばしいが……~4月19日東京新聞朝刊寄稿+佐藤優「獄中記」

 東京新聞4月19日朝刊コラム[時代を読む]に英ロンドン大学政治経済学院名誉客員のロナルド・ドーア氏が<政治の軸にならない「貧困」>のタイトルで寄稿していた。

 最初は見出しの意味を逆に取って、ドーア氏はなぜ「貧困」が政治の軸にならないと言うのだろうか、「貧困」問題、つまり、再分配問題こそ今の日本政治の大きな論点なのに、と思って読み出して、私の誤解だったことに気付いた。この見出しは「『貧困』が政治の対立軸になっていない現状はおかしい」という意味だったのだ。日本語は難しい。短い言葉で意味を凝縮して訴える際に、下手をすると逆の意味になってしまうのだから。

 それはそうと、ドーア氏の論は傾聴に値すると思う。

 ドーア氏はまず株価が少し上がって、世の中の「勝ち組」の人々が少しばかり安心したとはいっても、切られた派遣労働者や切られそうな請負労働者にとって見通しは依然暗い、として、年末までに二桁の失業率が確実という米国まではいかないにしても、過去最悪の失業率5.8%をはるかに凌ぐという経済学者の一般的見通しを述べる。

 そして、

 <長期的な――少なくとも20年来の――所得分布の不平等化傾向が、今の不況によって大いに加速されている。政府の緊急対策、「底割れ」対策が、やはり底割れの効果があるか。それこそ目下の主要な関心事である。>

 として、

 <「麻生政権は規制改革に再び火をつけ、危機を乗り切るための展望を示すべきだ」と、日本経済新聞の9日の社説がいう。そのような竹中・小泉路線亜流の声は依然として高く響く。しかし、幸いにして、政府は「転向」してきた。供給面の規制を撤廃するより、需要刺激策こそが景気対策として必要だという結論になった。その「悟り」が、2003年、輸出繁盛、消費停滞の時代が始まった時に得ていたならば、今ほど酷い状態になっていなかったかもしれないが、とにかく、泥縄のきらいがあっても、めでたい、めでたい自覚だ。>

 とズバリ書いていた。ここがポイントだと思う。竹中平蔵氏は今になっても小泉構造改革は悪くない、と言い続け、各紙のインタビューなどで壊れたテープレコーダのように同じことをしゃべっているが、ドーア氏の言う通り、小泉政権が2003年時点で総需要喚起に舵を切っていたならば、このような酷い状況にはならなかっただろう。

 これに関しては佐藤優氏が「獄中記」(岩波現代文庫版)の第1章「塀の中に落ちて」のP37~P41にかけて書いている認識が正しいのではないか、と思っている。

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 佐藤氏は、

 <ヘーゲルは「(知恵の象徴である)ミネルバのふくろうは夕暮れが近づいたときになってやっと飛び始める」(「法哲学綱要」序文)と言っていますが、一つの時代がどのような時代であったかということが理論的(知的)に認識できるのは、その時代が終わるときだという意味です。私たちを巡る事件は、まさに一つの時代の終焉を象徴するものと思います。>

 として、どんな時代が終わり、どんな時代が始まったか、について、

 <「従来の国策」の内容は、国内的には地域間格差是正、弱者に対する配慮、外交的には冷戦後の世界新秩序に対応すべく、日本が諸外国と地政学的バランスをとった積極的外交を行うことを基本とする政策です。>

 として、その従来の路線の集大成として出てきた橋本龍太郎首相の「東からのユーラシア外交」などが、大前研一氏の「北方領土不要論」に代表される新思考によって否定されていく過程を論じ、

 <「新たな国策」は「小泉改革」という形で具現化しましたが、その背景には平等社会日本の基礎体力低下(少子化、学力低下、経済不況等)を何とかしなければならないという焦りがあると思います。日本社会を活性化させるためには、強者をより強くして、機関車の役割を担わせるという発想です。そのためには、地域格差を是正する機能を果たしてきた政治に歯止めをかける必要があるということなのでしょう。外交に関しても、「東からのユーラシア外交」などという「ゲーム」にうつつを抜かしている余裕は現下日本にはなく、速やかに国内改革を軌道に乗せ、日本の基礎体力回復を図るのが国益ということになります。>

 <経済社会情勢が停滞している状況で、国民は将来に不安を強めます。このような状況ではナショナリズム(民族意識)が高まります。ワールドカップ熱と北方領土問題に関する強硬論の台頭、瀋陽総領事館問題を巡る嫌中国感情の高揚を繋ぐ鍵は、日本ナショナリズム台頭と思います。>

 <「新たな国策」へ転換する舵は既に切られており、この流れを止めることはできません。恐らく、4~5年経って、日本の地域格差が拡大し、地方住民の不安が高まり、日本と周辺諸国との緊張がかなり高まるようになったところで、「新たな国策」の問題点が認識され、「従来の国策」の肯定的側面が見直されるのでしょう。4~5年では不十分で、この見直し過程に10年かかるかもしれません。>

 以上の文章は佐藤氏が東京拘置所の中で2002年6月20日に書き、弁護士に手紙として差し出した文章である。あの時点で、何と冷静に小泉改革の本質を見抜いていたのか、と驚く。そして、今、ようやく麻生首相が小泉改革を180度転換する作業に着手したのだから、佐藤氏の見通し通り、4,5年では終わらず、7年間もかかったことになる。

 P52の

 <小泉改革は、機能面の能力強化を図っている。分配の問題についても、累進化税制を改め、間接税を主体とするのは、強い者をより強くして、強者に機関車の役割を担わせるため。>

 とある。P58、59の弁護士への手紙でも総括的に「小泉改革」の意味合いを説明し、その「時代の転換」のスケープゴートとして宗男事件が国策捜査として作られた、と記述している。

 話が横道に逸れた。ドーア氏の論文に戻る。

 ドーア氏は麻生首相の緊急経済対策をほめながら、

 <もし私が切られた派遣労働者だったら、危機対策の予算配分を問題にするだろう。56.8兆円のうち、雇用対策費(国費、事業費も含めて)は4.4兆円、金融対策費はその10倍の44.8兆円である。その数字を見て、失業者たちは「麻生政権の関心の優先順位はそんなものか」と怒るだろう。>

 と、分配がまだまだ弱者優先になっていない、と麻生氏にとって痛いところをついている。特に、この20年来の所得分布の不平等化傾向をなくす方向での予算になっていない点が欠陥だ、という指摘は鋭い、と思う。ドーア氏の次の文章が考えさせる。

 <しかし、他国に比べれば、日本で不思議なのは、不平等が政党政治の重要な軸にならないことだ。メディアの関心は外国と比べ強い。本屋には、「ワーキングプアの反撃」「派遣村」「反貧困の学校」など、貧困関係の本が何十点も並んでいる。ところが、よその国で、貧困・再分配の問題が政治論争の主要軸になるのに、日本ではそうならない。>

 <いたるところで、フリーター組合をつくったり、不当解雇を法廷で争ったりする草の根の抵抗が起こっている。ところがそれに手を伸ばしているのは、民主党支持の連合ではなくて、体制外の全労連である。その不満をくみ上げて地方の政党支部にその人たちを組み込もうとしているのは、今度天下を取るつもりでいる民主党でなくて、共産党だけである。なぜだろう。>

 以上である。これが結びの言葉でもあった。つまり、民主党が貧困層からそっぽを向いている、というのだ。そういう政党なのだから仕方ない、といっては身も蓋もないだろうが、結局は「持てる者」階層の労働者、恵まれた一部組織労働者の声を少しだけ代弁する政党になり下がってしまったのが今の民主党なのだ。

 ドーア氏の指摘で目から鱗が落ちた気がするのは、民主党だけでなく、自民党に今後、非常に大きな可能性が開けている、と思うからだ。

 内政政策、特に経済政策では丁々発止争うべきだと思うのだが、民主党はどちらかと言えば、再分配ではない規制緩和政党なのかもしれない。というよりも、規制緩和勢力もいる。自民党は小泉勢力が規制緩和=勝者だけを大切にする勢力で、与謝野馨、加藤紘一氏らは再分配重視の政党人だ。

 だから、思い切って、派閥の組み替えのようなことをすればいいのではないか。政党の再編となると、党本部をどちらが所有するか、とか、政党助成金の分配方法とか、めんどうなことが多くなるので、総選挙後の政界再編をにらみながら、国民に分かりやすいように、自民党、民主党それぞれの中で「強いものの見方派」と「再分配重視派」に分けておく。そして、総選挙結果が出たら、粛々と政界再編、政党再編をして、新たな体制を作る、という手段があるのではないか、と思ったのだ。

 うまくいけばいいなぁ、と思う。

 ただ、その時に有権者もよく考えなければならないのは外交・安全保障政策で一致していなければ、ダメだということ。社民党までを連立にふくめるべきではない、ということ。再分配派には社民党、共産党系も多いが、この大原則だけは守らないと、国家の安全、安心の根本が揺るがされてしまうからだ。

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2009年4月17日 (金)

インチキ英国人記者の反日質問と石原知事の回答をわざわざ掲載する朝日新聞と東京新聞は東京五輪招致反対らしい~4月17日朝刊

 「書くな」と言うのではない。ただ、こういうことを書く時には見出しも正確に取り、誤解を与えないようにしてほしい、と思う。石原慎太郎・東京都知事がイギリス人記者の再三の掟破りの質問に渋々答えた内容である。日本の朝鮮植民地統治問題の質問だ。

 李明博・韓国大統領がタイの日韓首脳会談で麻生首相に告げたように、今年と来年は韓国にとって日韓問題は様々な記念日を迎える「微妙な季節」であり、ただでさえ反日運動が盛り上がりかねない。

 さらに、教科書問題や竹島問題の経験で学習したと思うが、韓国のメディアは日本の新聞が記事を掲載したことを「証拠」として、論じる癖がある。といっても分かりにくいかもしれないが、ちょうど日本のマスコミがニューヨーク・タイムズやフィナンシャル・タイムズの記事を引用して日本政府を批判するようなものだと思えばいいだろう。

 逆から見れば、韓国の一般民衆にとって日本はそれだけ大きな存在であり、その国の大メディアの権威は日本国内でよりも大きいかもしれない。なかなか、韓国メディアはそう書かないから分かりづらいが、実際はそうである。

 そこで、教科書問題などの際には朝日新聞と韓国の愛国主義的な新聞が共鳴しあって問題を大きくして、最終的には近隣条項が入ったり、村山談話ができたりした。

 朝日新聞の記者たちは「国のためにプラスだ」と思ってそのような行動をしたのだと信じている。決して売国的な動機で動いたわけではないと思うのだが、こうした言説は在米韓国人、在米中国人のコミュニティーに伝わって、増幅されて、それがカリフォルニア州発の動きとなって、米連邦政府の政策にまで影響してきたのが最近の特徴だと思う。

 だから、私個人とすれば、何もこんなことは書かなくてもいいじゃないか、と思うのだが「ニュースだから書くのだ」という反論もあるだろう。

 そうだったら、せめて、正確な見出しを付け、あらぬ誤解を広めないようにしてほしい、と念願している。

 結論から先に書いてしまったが、今回気になったのは4月17日の朝日新聞、東京新聞朝刊の社会面記事である。

 まず朝日新聞から見てみよう。

 見出しは<日本の韓国統治、公平と聞いた/石原知事、会見で発言>。対社面2段見出しだ。本文は次の通り。

 <2016年五輪の開催候補地視察で、東京を訪れている国際オリンピック委員会(IOC)評価委員会への説明をした石原慎太郎都知事は16日夜、都内で記者会見した。英国人記者から「知事は日本の朝鮮半島への行為を矮小化しているため開催地に選ばれるべきではないという、韓国での報道を知っているか」と問われ、「ヨーロッパの国によるアジアの植民地統治に比べ、日本の統治は公平だったと朴大統領(朴正熙・韓国元大統領)から聞いた」と述べた。>

 <石原知事は「日本の韓国の統治がすべて正しかったと言った覚えはまったくない」としたうえで、「日本のやったことはむしろ非常に優しくて公平なものだったということをじかに聞いた」と述べた。>

 これだけの記事なのだが、この英国人記者の質問というのも怪しい。韓国の反日団体とタイアップしての質問ではないか、とも疑える。大体、質問した記者の名前も出ていない。質問自体が誘導的である。韓国人記者が聞くのならともかく、余計なお世話である。こんな質問は「関係ない」としてノーコメントで通すほうがよかったのではないか、と思って他紙を見たら、東京新聞に少し詳しく掲載してあった。

 東京新聞は対社面4段<東京五輪/招致委『理解深まった』/IOC調査開始/環境対策など強調>という東京招致委員会の記者会見をメーンに、この記事に石原氏のポーズ写真を使って、その脇にハコ記事で<「韓国統治、欧州より公平」/石原知事、英記者に見解/招致委、質問遮る一幕も>が載っていた。招致委の記者会見は無難に日程をこなした、というだけの内容なので、やはり目はこのハコ記事にいってしまう。というか、このハコ記事を読ませたい、という意図が見え見えのつくりなのだ。

 このハコ記事では、

 <質問者がスポーツビジネスに関する記事をウェブサイトに執筆するカラム・マレイ記者(51)で「韓国のマスコミが、日本が朝鮮半島での残虐行為を否定しているため、(東京は)開催都市に選ばれないだろうと批判している」と述べ、石原知事の考えを聞いた。>

 と質問者の名前をあげている。

 <司会の五輪招致委員会の加治慶光氏が「五輪招致活動と関係のない質問はしないで」と遮ったが、マレイ記者は再度、質問した。>

 しっかり、遮ったのに、また質問したという。しつこい奴、というか、やはりそこには国際的な陰謀が見え隠れする。

 <石原知事は「韓国統治がすべて正しかったと言った覚えはない。tだ比較の問題だが、ヨーロッパの先進国によるアジアの植民地統治に比べ、日本のやったことはむしろ優しくて公平なものだったと朴(正煕)元大統領からじかに聞いた。韓国のある種の国民にとっては、朴さんの言葉は心情的に納得できず、特に若い世代には伝わりにくいメッセージだ」と述べた。>

 こういう内容の発言だったそうだ。

 <加治氏は「最初は政治的な質問に聞こえ、会見時間が短いことから遮る形となった。申し訳ない」と話した。>

 このコメントを見る限りでは、日本人記者たちは加治氏を責めたのだろうか? 何か情けなくなる記事である。

 こんな日本人記者しかいないから、反日イギリス人にいいようにやられるのだ。韓国のどんな新聞にどのような形でこのような論が出たのだろうか? マレイという記者はどんな記者なのか? 信用できる人物なのか? 何も分からない。

 このようなインチキ臭い人物の場違いな質問を大きく掲載するとどうなるか? 韓国のメディアは「石原妄言」と飛びついて大きく扱う→朝日新聞と東京新聞のソウル特派員がその報道をキャリーする→日本で「韓国で石原発言への反発強まる」の報道が出る、とすぐに予測できる。

 何度も書いているように韓国内は李明博大統領を筆頭とする自由民主主義勢力と、金大中、盧武鉉前元大統領らの「民主化勢力」とが拮抗して、勢力争いを展開している。その中で、盧武鉉氏の贈収賄罪が発覚し、盧武鉉逮捕も秒読みに入った。彼らの勢力の反撃材料とすれば「反日」しかないのだ。

 このような客観的な情勢分析が必要なのだと思う。

 ところが、日本の五輪招致に反対する勢力にすれば、こうした形で石原氏の名誉を汚すことで東京五輪をなき物に出来れば安いものだ、と思ったのだろう。浅はかな考えである。

 これは国家プロジェクトなのだ。麻生首相も出席した大イベントの締めくくりの記者会見ではなかったか。その場にこんなチンピラ記者をなぜ紛れ込ませるのか? 事務局のロジのミスだと思う。

 まあ、それは仕方ないにしても、朝日新聞と東京新聞は書かなくていい記事を書いて、国際的摩擦を増幅させようとしたことは非難されても仕方ないだろう。

 朝日新聞は背景説明がなく、しつこい質問に知事がいやいや答えていた、との真実が伝わらない。東京新聞の記事は「韓国統治、欧州より公平」が石原知事の見解である、という見出しだ。この見出しは事実誤認であり、訂正を出すべきだと思う。あくまで朴正煕元大統領がそう言った、ということを知事はしゃべっているのに、このような見出しをつければ、韓国の反日分子はここぞと引用してくるだろう。それとも、引用されたかったのだろうか?

 何でもかんでも「報道の自由」だと思ったら大間違いだ、と思う。民主主義は国民の節度の範囲内で成り立っている。その社会の目に見えない秩序こそ大切にすべきではないか。

 面白いのは、上記のような批判を慮ったのか朝日新聞は4月18日朝刊1面トップで<東京 周到アピール/16年五輪招致/人・カネ投入、視察順調>のまとめ記事を掲載。この中に<「視察は儀式>の小見出しで、海外メディアが東京を訪れたことを書いていた。ここでまた、件の記者が登場するのか、と意地悪く見ていたら、そうではなく、同じ英国人ながらモーリー・マイヤーズ氏という別のジャーナリストだった。何か、白人を見ると偉い人と思った終戦直後の感覚が朝日新聞にまだ残っているんじゃないのか? 別に白人だって同じ人間なのに、なぜ権威ある発言のように扱うのだろう。

 ただ、この扱いは石原慎太郎知事からこれ以上睨まれたくない、という朝日新聞の護身の記事だと見た。こんなどうでもいい記事を出すくらいだったら、あんね変な記事は載せなければいいのに、と思った。

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米国防長官が日本を裏切った→今後、こういう事態が増えると覚悟しよう:北朝鮮ミサイル発射~4月17日産経新聞朝刊

 産経新聞が4月17日朝刊2面<最強レーダー使用認めず/北ミサイルに米国防長官/6カ国協議に影響憂慮か>は米オバマ政権の北朝鮮認識をまざまざと示した記事だった。ワシントン支局の有元隆志特派員の記事である。

 <北朝鮮の弾道ミサイル発射に際し、米軍が保有する最新鋭のミサイル追尾レーダーである「海上配備Xバンドレーダー(SBX)」の使用が北方軍の展開要請にもかかわらず、ゲーツ国防長官に却下されていたことが15日明らかになった。同日付の米紙ワシントン・タイムズが軍高官らの話として報じ、北方軍当局者も産経新聞に事実関係を認めた。>

 という事実関係で、

 <SBXが補修作業中だったこともあるが、ミサイル発射に備えて展開させることが北朝鮮側を刺激し、6カ国協議再開に向けた交渉にも影響が出るのではとの懸念が政権内にあったという。>

 という理由だったというのだ。

 <米軍高官が同紙に語ったところによると、北方軍のレヌアート司令官はミサイルが米国や同盟国に向けて発射されることを懸念し、SBXの使用を求めた。しかし、オバマ政権の文民の高官らは「人工衛星打ち上げ」との北朝鮮の主張を受け入れたという。北方軍側も宇宙空間への発射が明確になったとして要請を取り下げた。>

 「オバマ政権の文民の高官ら」というのは米国務省のアジア担当者を中心としてホワイトハウスやシンクタンクの研究者であるアドバイザリーグループの面々だろう。

 以前から書いているように、レオン・シーガル氏とか、アンドリュー・ホルバート氏らアジアに詳しい識者が「日本は騒ぎ過ぎ」「冷静に対処すべき」という胡錦濤・中国国家主席のメッセージを額面通り受け入れた結果かもしれない。やはり「外交敗戦」だったのだ。

 <ただ、元軍当局者らは仮にSBXが使用されていたら弾道ミサイルの航跡など、より詳細な情報を入手できただろうとして、ゲーツ長官らの決定に疑問を投げかけているという。>

 そうだろうと思う。

 <アラスカ州アダック島を母港とするSBXは総額約9億㌦(約900億円)をかけて2005年に配備された。石油掘削用の建築物リグに改造を加え、上部に大型レーダーを搭載している。自力航行が可能で、必要に応じて移動する。5000㌔㍍近く離れた場所からもミサイルを探知できる。>

 すごい設備みたいだ。

 <オベリング前国防総省ミサイル防衛局長は同紙に対して、青森県に配備されている地上型のXバンドレーダーなどと比べ、3、4倍の探知能力があると指摘している。>

 青森県にあるXバンドレーダーの性能もたいしたものだ、と思っていたのだが、上には上があるようだ。

 「北朝鮮を刺激しない」という米国の雰囲気は確固としたものなのか? それにしては、東欧訪問中、未明にたたき起こされたオバマ大統領が北朝鮮のミサイル発射を非難した、あの瞬時の判断は何だったのだろうか? あの時にはまだ決定はなされておらず、その後、米国務省とホワイトハウスが中国外務省と刷り合わせた結果、胡錦濤路線でとりあえずは北朝鮮の様子を見よう、ということになったのではないか。

 本当に「日本抜き」の決定である。今後、朝鮮半島に関する決定はこのように日本抜きで行われる恐れが十分ある。

 日本は宣伝戦で中国に負けないよう、日本にとって北朝鮮の核弾頭搭載ノドンが許されざる脅威であることを国際社会に真剣に訴えるべきだろう。

 まだ遅くはない。国際社会の共感を得よう。もしも、それでも無視されるならば、次の手を考えるまでだ、と思う。

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黒井文太郎氏のノドン対応策:6カ国協議は無用の長物だ~HP4月17日アップ分から

 軍事評論家の黒井文太郎氏が自分のHP「スパイ&テロ~国際情報誌『ワールド・インテリジェンス』(軍事研究別冊)編集長・黒井文太郎のブログ」の4月17日アップ分で<核ノドンの標的になった場合のシミュレーションを>のタイトルで、北朝鮮のノドン問題への日本の対応について書いていた。

http://wldintel.blog60.fc2.com/

 黒井氏は何度も書くが、私が北朝鮮情勢や核問題、ミサイル問題を理解する際のナビゲーターとして信頼している方だ。

 今回も期待しながら、読んでみる。

 <ここのところの金正日ですが、敵ながらちょっとさすがに痛々しいですね。いよいよああなってくると、本人も「自分の死後」を切実に考えているのでしょう。>

 例の痩せた写真である。

 <で、思うのですが、金正日は自らの死を意識したとき、まず何を考えたでしょうか?>

 そうだ。そこを考えないといけない。

 <息子への世襲? 普通の独裁国のトップならばそうなりますけど、あの人の場合、ちょっと違うのではないでしょうか。あの人は自分=国家ですから、父・金日成から受け継いだ共和国をどう生き残らせることができるかという観点で考えるのではないかという気がします。>

 自分=朝鮮民主主義人民共和国かぁ。なるほど。

 <自分の死後、後継体制がどうなるかに関わらず、権力の指導力低下は避けられません。そんな祖国の将来にとって、脅威はなんといってもアメリカ軍です。つまり、金正日はおそらく、自分の死後、祖国がアメリカの攻撃で滅ぼされることをなんとか回避したいと願っているのではないか。父が作った共和国の存続を永遠のものとしたいと願っているのではないか。そんなふうに思うわけです。>

 金正日になりきって考える、ということだな。

 <といっても、金正日の頭には、中国の改革開放のよう選択肢は入ってないでしょう。主体思想=金日成主義の敗北になるからですね。>

 中国が何度も誘いかけても成功しなかったプロジェクトだ。

 <そうなると、金正日が頼るものは軍事力しかありません。軍事でいえば、アメリカの攻撃を防ぐ唯一の手段が「アメリカ本土に届く核ミサイル」ということになります。北朝鮮指導部では、核ミサイル武装は父・金日成の代からの悲願であり、父を受け継ぐ金正日の悲願でもあります。彼らは二代にわたって核ミサイル開発に邁進してきており、そこにはまったくブレはありません。>

 そういうことなのだ。親子が2代続けて核ミサイル開発に憂き身をやつしている。人民は植えて死んでいる国の姿におぞましい感覚を抱かない人がいるんですから、驚きです。

 <けれども、今回のテポドン実験で露呈したとおり、実際のところ長距離ロケットは技術的にまだまだ難しいものがあります。北は旧ソ連製のロケットを研究し、その技術を応用してここまでこぎつけましたが、ICBMクラスになると、そういった応用技術だけではなかなか難しいものがあります。今後も開発は進めるでしょうが、長期戦の構えですね。>

 なるほど、軍事専門家から見ると、今回の「失敗」は相当にレベルが違った、ということなのか。

 <では核はどうか? 基本的な装置でともかく起爆できるところまでは来ています。あとはその精度を上げることと、小型化することです。これについては、すでにそれなりの時間が経過していますから、理論的にはかなり進んでいる可能性が高いでしょう。>

 ここが怖いのだ。

 <で、おそらく最終的には、ノドン搭載可能な1㌧以下程度の小型核爆弾の実験を実行することになります。ノドン搭載型の実験が目標でしょうが、その前に、それよりははるかに大きい十数㌧規模の起爆装置の実験をする可能性も(少しですが)あります。>

 これは初耳だった。黒井氏も前には書いてなかった、と思う。ただ、後に出てくるように、可能性は低いようだが。

 <テポドン2の新型の第一ブースターには、精度はともかく、そのくらいの重量を日本まで投射できる能力がありますから、形状を工夫すれば、それを大型弾頭にすることも、まったく不可能ではないからです。軍事的な合理性を考えれば、もうすごそこまで来ているはずのノドン核弾頭開発を優先するはずで、わざわざ使い勝手の悪い大型弾頭(テポドン2の第一ブースターをミサイル化した場合、車載化は無理で、せいぜいサイロからの発射となりますから、軍事的にはどうしても脆弱性が残ります)を開発する可能性は少ないですが、まったくゼロとはいえないでしょう。>

 <仮にそれが実現すれば、核ノドンほどの危険性はないものの、それでも日本は核ミサイルの脅威下に入ることになります。>

 核ノドンそのものは、もう少し時間がかかるのだろうが、北朝鮮が急いで何かをしなければならない際には、こういう方法もあるし、日本は一応、そこも押さえておくべきだ、という内容だろう。

 <いずれにせよ、そんなわけで私は、北朝鮮は次は再び核実験を行う(いつになるかはまったくわかりませんが)と見立てています。>

 これは先に黒井氏が予測したことだった。なるほど、こういう推定から予測したのか。核実験の可能性は十分ある、と。なぜなら、

 <仮に核実験を行った場合でも、国際社会の制裁は受けるでしょうが、軍事的に攻撃を受けるわけではありません。むしろ、これで核ミサイルを手にした北朝鮮の立場は飛躍的に強化されます。日本、そして在日米軍が核ミサイルの射程に入り、いわば人質となるからです。>

 日本の韓国化現象ですね。国際社会と言っているが、実際は米国だ。米国が北朝鮮を攻撃する考えを捨てた。なぜだろうか、と考えて、みたのだが、国際金融問題とリンクしていそうだ。中国が外貨準備で膨大な米国のドルを人質に取ったのが大きいのだろう。だから、朝鮮半島問題では中国の意向を無視できなくなった。日本などは最初から自動現金引出機だと思っている風があるので、気にしないだろうが、中国に対しては軍事的な「核の傘」を差し掛けている訳でもなく、貸し借りなしだから、外貨準備は大きいのだ。

 <現在、6カ国協議脱退とかIAEAの査察官を退去させてプルトニウム製造再開などといった瀬戸際外交をやっていますが、すでにプルトニウムを手にしている北にとっては優先順位は低いので、単なる外交カードかと思います。外務省は6カ国協議最優先の方針ですが、少々ピントがずれているのではないかという気がします。>

 私もそう思う。6カ国協議を脱落できないのは、米国がそれを望まないからだ。米国にしてみれば、米朝で決定して、財政的には他の4カ国に出させるために、この協議の枠組みは便利なのだ。

 <プルトニウム製造再開→外貨獲得のため売却、の可能性を問題視する声もありますが、核流出は北にとってリスクがメリットをはるかに上回るので、現実的な脅威という感じには見えません。いくら外貨がほしいとはいえ、露呈した場合にアメリカから軍事攻撃を受ける可能性の高い選択を北朝鮮がチョイスするとは思えません。>

 核技術の流出危険性をしきりに言うのは米国で、これは本気。だから、黒井氏の言う通り、北朝鮮は本気で米国を怒らせることになる核流出はしないだろう。

 <体制引き締めのために軍事的な緊張をつくるとか、威信を高めるために核武装をするとかいう見方もありますが、あの国は金正日こそ国家なので、そういうノリとはちょっと違うのではないかなと思います。このへんは、たとえば戦前の日本を思い起こせばわかりやすいかと思います。>

 戦前の天皇制国家日本を考えれば、北朝鮮を理解することができそうなのだ。天皇の国家といっても、実際に天皇が政策を決定していたわけではなく、東条英機がしていた。

 <北はとにかくアメリカから攻撃されることが怖いんだと思います。朝鮮戦争の時代から、それを回避するのは核ミサイル武装しかないという信念があるように見えます。>

 相当に怖がっていることは事実だ。そして、ソ連、中国の協力を得て、核開発を始めたのは相当に昔のことだった。

 <1994年の核危機で米軍が寧辺空爆を検討した際、韓国政府は絶対反対の立場を崩しませんでした。北の長距離砲でソウルが人質になっていたため、戦争はできないのです。>

 1994年の米軍の決断がなかったために、こういう事態を招いてしまったのだと思う。あの時、韓国の反対を押し切って北朝鮮を攻撃していれば、北朝鮮は反撃もせずにすぐに降伏していただろう。金正日は自分の命が一番大切だから。

 <東京が核ノドンで照準されたら、日本も韓国と同様の立場に立たされます。そんな状態でもしも朝鮮有事が発生したら、日本政府はそれでも米軍支援を行うのかどうか。本当はそのくらいのシミュレーションを政府はしなければならいと思うのですが……。>

 そうだ! だから、黒井氏が言うように、ノドンに核が積まれたら、日本の外交は<敗戦>となるのだ。

 <ミサイル防衛も敵地攻撃力の獲得も、車載化核ノドンが実戦配備されたら、それほどアテにはできません。6カ国協議がどうでもいいとは言いませんが、日本にはもっと重大な問題があるのではないかと思います。>

 政府はそこに気付いているとは思うのだが、言い出せないのだろう。まだまだ憲法問題などで保守的(憲法改正に反対、という意味)な世論、マスメディアを考えた時に、内閣が倒れるような冒険はできない、ということなのだろう。だから、いつも中川昭一氏のような方々がワンパターンでしゃべり、ひんしゅくを買って終わりとなる。本質的問題には切り込まれたためしがない。

 <ところで、自衛隊の件で、もうひとつ。ソマリア関連で、このたびP-3C哨戒機のジブチ派遣が決まりました。これは国際標準で言うと、護衛艦派遣などより格段にポイントが高い参加になります。なんてったって、これで現地の自衛隊員はかなり一目置かれる立場になります。こういう経験はきわめて重要です。ぜひ頑張っていただきたいと思います。>

 黒井氏の合理的な説明で、今、日本政府がすべきことは分かったと思う。政府の中にいる憂国の士よ、行動をしてほしい。

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2009年4月16日 (木)

米当局者は北朝鮮と対話しか望んでいない:やりたいようにやらせるつもりらしい~4月16日朝日新聞、日経新聞朝刊から

◆米学者の「核兵器用プルトニウム少し増えるだけ」発言

 4月16日朝日新聞朝刊は国際面4段見出し<IAEA要員、寧辺退去/北朝鮮核施設/カメラ監視も停止>で北朝鮮の強硬措置を伝えながら、デビッド・ストラウブ・スタンフォード大学朝鮮研究所副所長の<瀬戸際戦術、日米韓は冷静に>の長めの談話を掲載していた。聞き手は鵜飼啓特派員。

 ストラウブ氏は、

 <日米韓の側は長期的視点に立って冷静に対処すべきだ。北朝鮮が使用済み燃料を再処理したとしても、核兵器用のプルトニウムが少し増えるだけだ。状況を根本的に変えるわけではない。>

 と語っている。

 <北朝鮮は瀬戸際戦術で自らのチャンスを逃し、大きな代償を払っている。こちらがかっとして行動すれば北朝鮮の望み通りになるだけだ。日米韓は、北朝鮮が振る舞いを変えれば関係改善できるという未来像を示すべきだ。6者再開までに何ヶ月もかかるかもしれないが、北朝鮮が復帰する可能性はかなりあると思っている。オバマ政権は日韓を無視して米朝2国間協議を進めることはない。オバマ政権は対話を辞さないとの立場を掲げてきたが、北朝鮮の振る舞いや声明を受け、話し合いはしばらく見合わせるのではないか。>

 という話だ。

 日本人に読んでほしいのは「核兵器用のプルトニウムが少し増えるだけだ。状況を根本的に変えるわけではない」という言葉である。

 米国の識者はやはり、こういう見方をしている。

 北朝鮮はもう核兵器を持っているのだから、その量が少し増えても関係ない、といういかにも「核拡散だけが問題で、あとは関係ない」の立場を鮮明にしている。日本の安全保障を本気で考え、ともに心配する視座など全くない。

 オバマ政権の本音だ、と受け取っていいのではないか。

◆6月は中東和平交渉再起動、7月はロシアと軍縮交渉…構っていられない

 この辺の事情をうまくまとめていたのが4月16日日経新聞朝刊国際面<米、対話路線なお探る/北朝鮮の強硬姿勢「想定内」/北東アジアでの緊張回避>だった。ワシントン支局の丸谷浩史特派員の署名記事だ。

 4月14日、ギブズ大統領報道官が北朝鮮は間違った方向に進んでいるとしながらも、6カ国協議の有効性と対話を強調した米政府の立場を記者会見冒頭から読み上げる。その2時間後、民主党の前原誠司副代表がボズワース特別代表の「適当と考えれば北朝鮮との直接協議に応じる」との言葉を記者団に紹介。ほdなく、クリントン国務長官が国務省内でグルジア外相との会談後、記者団に「最終的には北朝鮮と話し合う機会もあるだろう」と語ったと。

 つまり、14日の米国政府内の要人の話がすべて「対話」だったのだが、14日朝、クリントン=バイデンの定例朝食会で刷り合わせ済みだったのではないか、と書いている。

 ここで丸谷記者は米国は一見、北朝鮮が求める米朝対話に乗ったかに見えるが、米国ではここまでは織り込み済みである、という。

 オバマ政権が就任百日を前に6月の中東和平交渉再起動、7月のロシアとの軍縮交渉という難題が待ち受けているので、北東アジア問題に構っていられない、ということらしいのだ。イラク駐留米軍の撤収やアフガニスタン戦線強化作業も具体化し、イランとの対話にも本腰を入れるので、と。

 そこで米国は北朝鮮問題を中国に任せたいのだ、という。

 <米朝協議の最終目標は6カ国協議に北朝鮮を復帰させ、少しでも核問題を進展させるという点で中国の立場と共通。ギブズ報道官は「オバマ大統領は中国に建設的な役割を果たしてほしいと願っている」と中国への期待を隠さなかった。>

 と結んでいる。

 そういうことなのだ。

 たしかに、これまでの米朝協議は対話枠組み再開につながってきた。日経の記事につけられた図をみると、

①93年3月のNPT脱退宣言→94年6月のカーター・金日成会談→94年10月の米朝枠組み合意

②98年8月のテポドン1号発射→98年10月のニューヨークでの米朝ミサイル協議→2000年10月のオルブライト国務長官訪朝

③2003年1月のNPT脱退宣言→03年6月の米超党派議員訪朝→03年8月の6カ国協議スタート

④06年7月のミサイル連射→06年12月米国の「金融制裁」をめぐる米朝専門家会合→07年2月の6カ国協議での核放棄プロセス合意

⑤06年10月の核実験強行→07年1月の6カ国協議の米朝首席代表がベルリンで会談→07年2月の6カ国協議での核放棄プロセス合意

⑥09年4月のテポドン2号発射→?米特別代表が訪朝?→?

 という内容だった。

 このような整理をすると、米国は危機が起きる度に対話で切り抜けてきたことが分かるのだが、その結果がどうだったか、まで見ると、この表だけでは分からない部分が見えてくると思う。

 つまり、北朝鮮が譲歩したのは米国が金融制裁を強化した時だけだった、という事実である。

 北朝鮮を動かすには「アメ」ではなく「ムチ」が必要だ、という歴然とした事実を忘れてはならないだろう。

 しかし、余裕のなくなった米国は「ムチ」を振るうつもりがない。中国はもともと北朝鮮の金王国の延命を願っているから、ムチなどとんでもない、という態度だ。

 いまや韓国と日本だけが表面上は北朝鮮に厳しい対応をしているだけなのだ。その韓国も国内は宥和派と強硬派が半々である。

 日本孤立も時間の問題だと思う。

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2009年4月14日 (火)

盧武鉉前大統領は米韓首脳会談の訪米に合わせて息子にワイロのカネを渡した~4月14、15日読売新聞朝刊から

 読売新聞4月14日朝刊国際面に4段記事<盧前大統領週内にも聴取/疑惑資金 わいろか/妻子を聴取>が載っていた。ソウルの浅野好春特派員の記事だ。4月11日朝刊国際面トップ<盧前大統領に不正資金疑惑/韓国/最高検、夫妻を聴取へ>で今までの動きを総括的に書いていた読売新聞だったが、休刊日があって13日の朝刊がなかったこともあって、12日の動きが14日朝刊に掲載されることとなった。仕方ない。記事を読んでみよう。

 <韓国最高検は12日、政界への不正資金供与事件で11日に盧武鉉前大統領の権良淑夫人、12日に長男建昊氏を参考人として事情聴取したことを明らかにした。最高検は夫人らへの資金提供が盧前大統領に対する事実上のわいろだった可能性があるとみており、今週中にも前大統領への聴取に踏み切る見通しだ。>

 以上が前文。その通りの話だ。前に盧武鉉の汚さについてすでにブログにアップしたが、その通りの展開でことが進んでいる、ということだ。

 <この事件は盧前大統領の有力支援者で靴製造会社会長の朴淵次被告(別の贈賄事件で起訴済み)が与野党議員や青瓦台(大統領府)の元職員らに多額の不正資金を提供していたもので、前大統領にも疑惑が拡大し、韓国政界を揺るがしている。>

 この辺は分かる。

 <権夫人への聴取では盧前大統領が在職当時の2007年6月末、朴被告から現金100万㌦(約1億円)を青瓦台で受け取ったとされる疑惑に関し、具体的な使途などを追及。権夫人は「債務の返済に使った」と供述した模様だが、韓国メディアは100万㌦の一部は米国留学中の建昊氏に渡ったと報じている。>

 「頭は悪いが政治は清潔だ」と言い続け、北朝鮮への資金援助を続け、日本の悪口を言い続けた男だ。

 <建昊氏は11日深夜、米国から帰国し聴取に応じた。最高検は前大統領の実兄の娘婿が朴被告から500万㌦(約5億円)を受け取っていた疑惑に建昊氏が関与していたとみている。盧前大統領は12日、自身のホームページで最高検が明らかにした朴被告の供述内容が「事実と違う」と反論し、疑惑を改めて否定した。>

 何と! 盧武鉉前大統領は否定しているのか。何と往生際の悪い男なのだろう。大体、改革派などという看板を掲げている奴に限って往生際は悪いものだが。

 読売新聞は4月15日朝刊国際面ベタ記事<盧前大統領長男/最高検が再聴取>をソウル支局の前田泰広が書いていた。

 <韓国最高検は14日、盧武鉉前大統領(62)をめぐる不正資金供与疑惑で、長男、建昊氏(35)を事情聴取した。取り調べは12日に続き2回目。盧前大統領が有力後援者の朴淵次被告(63)=別の贈賄事件で起訴=から受け取ったとされる100万㌦(約1億円)の資金が建昊氏の米国留学資金や生活費に使われたとされる点を追及したとみられる。最高検の調べなどによると、盧前大統領が2007年6月下旬、青瓦台(大統領府)で朴被告から100万㌦を受け取り、同30日からのグアテマラ外遊の際、米シアトルに立ち寄って建昊氏に渡したとされる。朴被告は外遊開始の数日前に盧前大統領から「6月29日までに100万㌦を用意してくれと求められた」などと供述している模様だ。建昊氏へ実際に資金を渡したのはシアトル総領事だった盧前大統領の高校の後輩とみられ、最高検は元総領事からも事情を聞いている。>

 何ということだ。大統領訪米という機会を狙って、息子にワイロのカネを渡したのだという。

 田中角栄元首相が指弾されているロッキード事件はハワイでの日米首脳会談でニクソン米大統領(当時)から請託を受け、日本の航空行政を捻じ曲げた罪を問われた。日本が実質的に米国の属国であることを考えれば、田中角栄氏が5億円を受け取っていなかったら、何の問題にもならなかったはずだ。それに、検察の起訴状ではニクソンの名前は意図的に隠された。

 その後の首相たちの方がものすごい。小泉純一郎氏など、米国から押し付けられてもいないのに、米国政府の意向を忖度して規制緩和をやりすぎて、日本の国民を貧困状態に陥れたが、裁かれていない。竹中平蔵氏などCIAそのものじゃないか。そういう売国奴が裁かれずに、田中角栄氏だけが犠牲になったのが日本である。

 その点、韓国の捜査能力の高さを評価すべきだろう。盧武鉉氏がいかにバカだったと言っても、一応は国家元首だった人間であり、その人間の周辺捜査は大変だっただろうが、その結果、このような韓国民を徹底的に裏切る行為が出てきたのだ。検察は拍手で迎えられるべきである。

 小沢一郎氏の秘書を「国策捜査」で逮捕することくらいしかできない日本の検察にその捜査能力の一端でも伝授してやってほしい。

 <朴被告が盧前大統領の実兄の娘婿(35)に提供したとされる500万㌦(約5億円)の一部が、建昊氏が大株主だった会社への投資に使われた疑惑も浮上し、朴被告は「盧前大統領から、息子らを助けるよう頼まれた」などと供述しているとされる。>

 以下は紙面には載っていなかったが、ウェブだけに掲載されていた部分。

 <14日付朝鮮日報によると、最高検は600万㌦の資金提供について、朴被告が農協の子会社を安値で買収できたことなどに対する謝礼と結論づけたという。>

 買収の対価か。完全な贈収賄だ。終わったな、盧武鉉!

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北ミサイル後の外交<敗戦>:中国の情報戦にやられた~日経3月30日朝刊、4月2日夕刊、毎日4月10日夕刊、読売12日朝刊、14日朝刊、朝日14日朝刊

 朝日新聞4月14日朝刊国際面<はしご外された日本/安保理交渉/議長声明で米中同調>はニューヨーク支局で国連本部を取材している松下佳世特派員の記事だ。面白かったのは、朝日新聞の記者とも思えない愛国心の強さが記事の端々から滲み出していることだった。
 まず前文である。
 <国連安全保障理事会が北朝鮮のミサイル発射非難の議長声明を採択する運びとなり、日本政府は「名より実」を取って強いメッセージの発信に成功したとしている。だが、交渉の過程で頼みの米国の態度は揺れ、最後は中国と結託。日本に新たな安保理決議を断念するよう迫る流れになり、米国に土壇場ではしごを外された形だ。>
 日米韓連携で北朝鮮に態度変化を迫り、一方で3カ国の連携強化で中ロの北朝鮮擁護姿勢を突き崩す、というのが今までの6カ国協議でのパターンだった。それが、肝心の米国が中国に擦り寄っているのだ、とはっきり書いている。その通りなのだが、「はしごを外した」とまで書いたのは松下特派員だけだろう。よくぞ書いた、という印象である。
 <高須幸雄国連大使は9日の安保理常任理事国との協議の後、記者団から日本のかたくなな態度を指摘されると珍しく声を荒らげた。「日本の立場を主張することが、なぜ生産的でないのか」>
 まさか、「日本は頑な過ぎるのでは?」と質問したのは朝日新聞ではないでしょうね。自分で質問しておいて、それを棚に上げる手法は今まで朝日新聞の十八番だったので、ちょっとだけ疑いが生じるのだが、そうではあるまい。
 <米国は日本とともに新決議採択を目指していたはずだった。ところが、この日の協議では議長声明を目指すことで中国と一致。米国の提案を下敷きに、中国の意向も反映した議長声明の素案がその場で示された。高須大使の声音には、米国へのいら立ちがにじんでいた。>
 さすが女性記者だなぁ、「声を荒げた」こととか、「いら立ちがにじんでいた」ことに神経がいくらしい。相当に感情移入した書き方である。
 <米国が方針転換の姿勢を見せたのは前日の8日。中国との2国間協議で、決議を受け入れさせるのは困難と判断。日韓に議長声明案を提示し、受け入れを求めた。関係筋によると日本は難色を示し、米国も理解。ウルフ米国連次席大使は、あくまで決議採択を目指す日本の姿勢について「それが適切だと信じている」とまで述べた。>
 経緯が詳しい。よく取材している。
 <ところが、わずか半日後には米中共作の議長声明の素案の存在が明るみに出た。>
 本当にそういう経緯だったならば、米国の裏切りだろう。
 <初日に強い口調で新決議採択を訴えた米国のトーンは、日を重ねるごとに後退。米国が議長声明での最終決着を念頭に置いていることは、日本側も承知していた。中ロの国連大使も8日には、議長声明なら受け入れるとの考えを相次いで公言。もともと決議へのこだわりが強くなかった英仏に異論はなく、日本の外堀は埋められていった。>
 外堀が埋まったのか。
 <13日に採択される予定の議長声明には、北朝鮮の発射に対する「決議違反」と「非難」、過去の決議履行の要求といった日本が新決議に盛り込みたかった内容がほとんど含まれている。このため、決議採択に否定的な中ロとの交渉に際し中身で譲れない一線を決め、最後に形式で妥協するという作戦が功を奏した、との見方もある。>
 私もそう見ている。
 <だが今回、米中が足並みをそろえ、日本は対外的に孤立を印象づける結果となった。2006年の北朝鮮のミサイル発射と核実験を受けて安保理が対応を協議した際には、日米そろって強硬姿勢で中国に妥協を迫り、二つの厳しい決議が採択された。その時の日米の一体感は今回、なかった。>
 そういうことでしょう。06年のブッシュ子政権ではまだ日米共同体意識があったのに、今はそれがなくなった、と。
 <オバマ米政権は対話による北朝鮮問題の解決を重視しており、その点で中国と思惑が一致する。今後、米中が協調姿勢を強めれば、日本としては「後ろ盾」の米国という北朝鮮への圧力のカードを1枚失うことになりかねない。>
 その通りなのだが、どうもそうばかりでもないようで、そこの判断が難しいらしい。米国は日米関係と米中関係を違うレベルの関係と見ているし、今の米国にはブッシュ子政権末期からの現象らしいが、中国を敵視し、潜在的脅威と見る識者が増えているようだ。
 たしかにクリントン国務長官やヒル氏のような「中国派」の勢いは盛んになったが、もう少し底流まで見ていかないと失敗しそうな感じもする。
◆読売新聞の麻生VS温家宝のし烈な遣り取りは読ませた
 読売新聞4月14日朝刊2面<首相「『違反』なければダメだ」/「議長声明」厳しい表現、中国に迫る>は日本の先を読んだ戦術について詳しく書いていた。麻生首相もよくやったじゃないか、と自国の首相を尊敬できる内容である。ここには書かれていないが、麻生首相や外務省幹部の心の中には当然、米国の裏切りは黒雲として存在していたはずだ。だkだらこそ、このような手段で、李明博大統領の手を借りて、内容で勝負に出たわけだ。
 米国が頼りにならないケースの日本外交のひとつのやり方を示したものだった、とも言えると思う。
 記事のエッセンスを書き写しておく。
 <麻生首相は4月11日にタイ・パタヤのホテルで行われた温家宝・中国首相との会談で「秋田や岩手をはじめ、ミサイルが頭上を越えて行った日本国民の気持ちを政治家として考えてほしい」と「決議」の採択を求めた。予定を上回る50分間に及ぶ会談で温家宝首相も折れずに、この後の日中韓首脳会談でもう一度話し合うことになった。>
 <3カ国会談では麻生首相は一転「議長声明」を受け入れる考えを示したうえで、「violation(違反)とかそういう言葉がなければダメだ」と迫った。「形式で妥協したことを武器に「内容」を厳しいものにする”条件闘争”を展開したわけだ。>
 <この直前に麻生首相と会い、腹合わせをしていた李明博大統領も同調した。温首相もついに「文言は専門家に任せよう」と折り合った。>
 <その後、麻生首相は帰国する政府専用機で、外務省から「『contravention』という言葉が取れた」と説明を受けた。首相が「どういう意味か」と聞くと、同省幹部は「条約などで『違反』という文脈で使われる言葉です」と説明した。「violation」よりはい表現だったが、首相は「それならいい」と答えた。>
 <首相は13日夜、首相官邸で記者団を前に、安保理がミサイル発射を非難する議長声明案に基本合意したことを「(決議)違反、それに対する非難、そして(制裁を盛り込んだ安保理決議の)履行、この三つがきちんとした形でまとまって出せるのはいいことだ。決議にするために言葉の内容を弱めるんだったら、この方がいい」と評価した。>
 と、事細かに描写している。こういうことだったら、この局面だけをとらえて「外交敗戦」というわけにはいかないのだろう。
 しかし、問題の根っ子は深いのだ。
◆森本敏・拓大教授のオバマ政権論(日経新聞[経済教室])
 森本敏・拓大教授(1941年生まれ、防衛大卒、外務省などを経て現職)が3月30日の日経新聞朝刊[経済教室]で<オバマ政権の優先課題/日本の協力余地大きく/戦略対話、政治・経済両面で/国際協調の枠組み主導を>でオバマ政権下の日米同盟のあり方を論じていたのが参考になりそうだ。
 森本氏は、
 <同盟国や友好国の協力を得て国際協調を図り、軍事力だけで問題解決する傾向にあったブッシュ前政権の対応>
 をオバマ政権は改め、スマートパワーという概念を採用した、として、
 <世界経済再生のための経済外交、テロや大量破壊兵器の拡散防止・核軍縮・アフリカ開発・気候変動・貧困対策などに重点をおいた政策を展開しつつある。>
 と見ている。そして、こうしたオバマ政権が重視する外交課題こそ日本がこの10年以上、最も力を入れて努力してきた方向だ、として、
 <いまや、こうした共通の優先課題に関して日米両国が力強い連帯と協力を進めるべき時期が到来している。>
 と説き、世界経済の約4割を占める日米両国が戦略的視野でグローバルな経済・政治問題への対処をリードしてこそ、両国の国益を追求することができ、国際社会で信頼され、尊敬される国にもなりうる、と断じている。
 そして、森本氏が座長を務めた国際経済交流財団の「新米国政権下の新たな日米関係の構築を提言する検討会」の報告書をもとに、次の提言をする。
①国際協調のためのグローバルガバナンスの主導権を日米で取れ
②アフリカ諸国への兵器輸出規制を日米が主導して働きかけるべきだ
③米国にとって日米同盟を活用したほうが米国の利益になる、と確信できる政策を取るべきだ
④具体的にはアフガン、パキスタンへの民生支援を積極的に行い
⑤米軍がアフガン、パキスタン作戦で支出する分の穴埋めとしてアジア太平洋で進む米軍再編の軽費分担の増額で賄う
⑥アジア太平洋における多国間協力や多国間枠組みの構築のため、日米が協力して主導的役割を果たす
⑦核削減のため米国にCTBT批准を働きかけ、日米で核抑止を維持しながら、NPTの目標である核軍縮を進め、懸念国の核開発を防止し拡散を止めるための協力を進めるべきだ
⑧具体的にはIAEAなどの検証機能を強化し、PSIを国際社会で制度化する
 このほか、保護主義の高まりに明確なメッセージを出す、米国の金融機関への公的資金注入を働きかける、地球環境問題で日米が協力して解決案を提示する――なども書いていた。
 つまり、北朝鮮の核問題もこうした大きな枠組みの中で真綿で首を絞めるようにやっていかなければ、解決しないだろう、という含意だろう。もう少し直截に北朝鮮問題に絡んだ森本氏の発言があったので、こちらも書き抜いておこう。
◆4月2日日経新聞夕刊の森本氏の<秘密保護法制に遅れ>も読ませた
 森本氏は4月2日日経新聞夕刊[永田町インサイド]<北朝鮮ミサイル発射準備進む/政府、問われる情報収集力>に短いインタビュー記事で登場していた。日本のインテリジェンスの課題を聞かれて、
①日本の情報機関は縦割り組織で、国として統一された組織活動ができるようになっていない。それぞれが持つ情報を上げるだけで、必要な指示も下りてこない。
②合同情報会議もおざなりだ。各省が機微に触れる情報を出すはずがない。情報は首相に直接、報告する。全体的な情報は共有されない。
③日本にも国家情報庁のような組織が必要だ。
④インテリジェンスの8割は情報手段で決まる。米国は嘘は言わないが、政策上の意図があって出す情報が多い。友好国に頼って情報収集していてはダメだ。中国に香港が返還されてから香港経由の情報はなくなった。かつて中国軍の情報は香港から入っていた。
⑤日本は秘密保護法が未整備だ。CIAは秘密保護の義務のない人間に情報は出さない。米国の同盟国で秘密保護法の対象になっていない外国の国会議員はいない。
⑥日本は極東の電波を傍受する能力は極めて高い。北朝鮮は有線のインフラが悪いので全土で無線を使っている。防衛省などはこれを分析している。大韓航空機事件の時も全部聞いていた。電波解析の積み上げの実績があるので、かなり特徴が分かる。だから米国との情報交換が成り立つ。
 などと話していた。日米同盟の強化の前には秘密保護法制定とか、国家情報庁設置など、やるべきことがある、という論である。
 この問題意識は毎日新聞4月4日朝刊コラム[近聞遠見]で岩見隆夫氏が<「情報小国」こそ脅威だ>のタイトルで同様の趣旨を書いていた。
 <脅威が発生するたびに「情報小国」を嘆き、脅威が収まると忘れてしまう。独立国にとって不可欠なものが、一つ抜け落ちている。慢性的な平和ボケだ。>
 という結びである。
 話があちこち飛んでしまったが、日米同盟が変質しているのではないか、という朝日新聞記者の問題意識を検証しようとして、少しオバマ政権の対日政策を見ていただけのことだ。
◆4月12日読売新聞朝刊の分析
 読売新聞4月12日朝刊は<対北 安保理議長声明案/米、一転中国と協力/日本、妥協は織り込み済み>も朝日新聞と同様の見方で、一連の日米中対応を振り返っている。
 <2006年の北朝鮮のミサイル発射と核実験のときは、日米の強硬姿勢で中国が譲歩を重ね、厳しい決議ができあがった。その図式は今はない。>
 という文章がすべてを言い尽くしている、と思う。そういうことなのだ。
 そして、その空気を読んでいた日本は先ほどの読売新聞の記事のように、それを織り込み済みとして、戦術的に対応、成功したということなのだろう。
◆4月10日毎日新聞夕刊のアンドリュー・ホルバート氏の話が示唆的だ
 4月10日毎日新聞夕刊ワイド特集面[北朝鮮「ミサイル発射」もっとクールでもよかった?]が面白かった。前田氏が登場し、伊豆見元・静岡県立大教授が登場し、もうひとり、スタンフォード日本センター所長のアンドリュー・ホルバート氏が出てきていたのだ。
 ホルバート氏は1946年ハンガリー生まれ。父がシベリア抑留から解放された1956年、一家でカナダに亡命。AP通信、米英紙の東京特派員などを経て、現在は東京経済大客員教授も務めている、と書いてあった。知日派の米文化人である。日本語はペラペラのはずだ。
 そのホルバート氏が<声高「迎撃」ポーズ、外交上は逆効果>のタイトルで、そのような内容をしゃべっているのだ。
 <日本政府の対応は、洗練されていたとは言えません。感情的に「迎撃、迎撃」とこぶしを振り上げ、たった一人で歌舞伎の決めポーズを取っているかのようでした。北朝鮮に圧力をかけているつもりだったのでしょうが、逆に国際社会で四面楚歌になる可能性さえあるのです。>
 という書き出しから、「おやおや」と思う。せっかく小泉元首相が訪朝したのに、
 <一部の政治家が反北朝鮮政策を声高に唱え始め、双方の関係は冷却化してしまいました。北朝鮮は悪で、日本は善の単純な構図ができた。ナショナリズムをあおるのに北朝鮮は「便利な敵」なわけですね。政治家は勇ましい姿を見せることが国民感情に応えることだという短絡的思考に陥りました。その延長の表れが、今回のミサイル騒動の「茶番劇」でしょう。>
 として、①敵視するだけでは成果はない②日本は国連決議にこだわり、突出したが、5カ国の足並みが乱れるほど金正日の思うつぼだ③5カ国が6カ国協議で北朝鮮を完全に包囲するしかないし、北の指導部はそれを最も懸念しているはずだ④国際社会では核の脅威を取り除くという目的に拉致という国内事情を優先させる日本の考え方は通用しない⑤感情的外交姿勢は国内では支持を得られるだろうが、今政府に求められているのは北朝鮮をテーブルに着かせて5対1の構図を作ることで、これこそが拉致解決を含めた長期的な国益だ⑥政治家はそういうビジョンを誠意を持って国民に示すべきだ――と書いている。
 つまり、日本をよく理解している層の中からもこのように突き放した意見が出てきているのが現状なのだ。その大きな米国世論の上にオバマ外交方針が築かれる。
 米国がこのように、選択肢を「話し合い解決」に一本化した原因は、
①イラン・イラク地域とアフガニスタン・パキスタン地域という2正面作戦を余儀なくされ、泥沼のような戦争からなかなか抜け出せず、兵力を極東に割けない。
②中国も韓国も北朝鮮の急激な崩壊を望んでいない。
③韓国の首都が38度線に並んだ多弾装短距離砲の人質になっている。
④北朝鮮はまだ核弾頭の小型化に成功しておらず、日本への安全保障上の脅威になっていない。
 ――などの複合的なものだと思う。
 特に中国の意向が強いのだろう。中国は北朝鮮崩壊後の朝鮮半島の米軍駐留を許すはずだが、その前には様々な手続きが必要で、その間は、北朝鮮に緩衝地帯として機能してほしい、という思いもある。また、国家財政の厳しい中で人民解放軍を中朝国境に貼り付けずにすみ、台湾海峡に集中できる状態を続けられれば、世界大不況下で助かる、という国家財政的な事情もあるだろう。
 つまり、中国も、米国も、韓国も強硬策を封じてしまったから、一見、北朝鮮主導で協議が進むしかなくなった、というのが現状なのだ。
 そして、先ほど書いたように、日本の脅威になっていないじゃないか、という思いが各国にはある。
 ところが日本にとってみれば、「ならず者国家」が核弾頭をもうすぐ持つかもしれない瀬戸際なのである。核実験を成功させた、といっても日本にはまだ脅威にはなっていない。それを日本まで運ぶ運搬手段がなければ脅威とはいえない。ただ、日本攻撃向けに開発したのではないか、という疑いさえあるノドンに小型核を積むことができるようになれば、日本でも金大中のような宥和型の首相しか登場出来なくなるだろう。さしずめ、河野洋平のような男が出てきて、笑顔の外交をしながら、北朝鮮の要求を次々きいてあげる、という状態になりかねないのだ。
 この日本の安全保障上の危機感を同盟国に分からせる努力が足りないのではないか、と思う。小泉氏は歴史に名前を残したいがために平壌に行っただけで、何の哲学があったわけではない。あの米国に顔を向け日本国民を苦しめた新自由主義政策を見ればよく分かるだろう。
 日本びいきの学者までがこんなことを言う時代になってしまった。
 やはり、日本に強力な政権がなく、漂流している間に国際情勢が動き、日本包囲網が徐々に敷かれてきたのかもしれない。
 日本には今こそ協力政権が必要だと思う。

 中国が「騒ぎ過ぎ」というキーワードを胡錦濤の口から出し、世界中に広めたのは戦略的に成功だったのだろう。日本は情報戦で負けたのだ。今はマスメディアまで中国の宣伝戦に便乗して「騒ぎ過ぎ」を自己批判している。もう少し自分の国の安全保障問題を真剣に考えてほしい。

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2009年4月11日 (土)

ナベツネは小沢一郎を切ったのか?~4月11日産経新聞朝刊から

 産経新聞4月11日朝刊政治面<「衆院選後に大連立を!!」/中曽根元首相と渡辺恒雄氏、対談で提唱>は見出しどころよりも、最後の段落が面白かった。

 4月10日に都内のホテルで開かれた内外情勢調査会で中曽根元首相と渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長が対談したらしい。その席で渡辺氏が小沢批判を展開したそうだ。

 <渡辺氏は民主党の小沢一郎代表について「国家観、安全保障観がまったくなっていない。政局至上主義で政策はどうだっていい。長い付き合いだが政策を話した記憶がほとんどない」と批判した。また、自民、民主両党から離党者が出て「第3極をつくる動きが出てくる」との見方も示した。>

 というものだ。渡辺氏が小沢氏の後ろ盾となっていたことはよく知られている。福田内閣での「大連立」の仕掛け人も渡辺氏だった。それだけでなく、小沢氏を招いて夕食会を頻繁に開き、小沢チルドレンにまで目配りして、誰が小沢政権発足後に使えるのか、目利きをしていた、という話もある。渡辺氏が主宰しているマスコミ人の会合「山里会」にも小沢氏やその子分たちをしきりに呼んでいた。それが、この手の平を返したような物言いである。

 渡辺氏が小沢氏を切り捨てた、としか思えない。

 では渡辺氏はなぜ小沢氏を切り捨てたのだろうか。いくら古狸であっても、その発言にはいくらかの真実が含まれている。安全保障問題での不信感が最大の原因だったのではないか、と思う。その不信感が長年積み重なって、秘書逮捕というマイナスの局面で噴き出したのではないか。

 面白かったのはこの日の産経新聞朝刊1面コラム[世界のかたち、日本のかたち]で坂元一哉・大阪大学教授が<政権交代、日本に何もたらす>のタイトルで小沢氏の安全保障問題での失言を批判していたことである。

 坂元氏の批判は①テロ特措法に基づくインド洋での多国籍軍への海上補給活動に民主党が反対している②小沢氏はこの活動を憲法違反と明言したがこれはおかしい――という点だった。

 坂元氏は触れていないが、保守層からの小沢氏批判には①第7艦隊しかいらない発言は日本の安全保障上の欠陥を生むだけでなく、米国から日本不信を呼ぶ②民主党には社民党との連立が必要で、社民党の安全保障観には保守は同調できない③ヒラリー・クリントン米国務長官が小沢氏を訪ねた時、ヒラリーは随員を全員、小沢氏に紹介したが、小沢氏は民主党側の同席者を紹介もしなかった――などがある。

 こうした批判の方が実は政治資金規正法の説明責任よりも本質的だ、と思う。

 小沢氏は例によって「まあ、見ていてくれ」としか言わず、政権を取ったら大激変するつもりなのだろうが、このような不信感が保守の良質な部分に広がることは、民主党政権の実現を遠いものにするのではないか。

 渡辺氏の発言の意図は本当は違うのかもしれないが、この記事を読んで、そう思った。

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北朝鮮の国防委員会とは?~朝日新聞4月11日朝刊から

 北朝鮮の国防委員会について4月11日の朝日新聞朝刊国際面に総括的な記事が載っていたので、コピペしておこう。ソウルの箱田哲也特派員の記事だ。

 <9日開かれた北朝鮮の国会にあたる第12期最高人民会議で国防委員会の委員に「特別な存在」とされる金正日総書記の義弟、張成沢氏が初めて選ばれ、委員数も4人から倍増した。いずれも金総書記側近の実力者で、国防委は北朝鮮の動向を決める上でこれまで以上に中心的な役割を果たすとみられている。>

 という前文である。

 <韓国大統領府や統一省など政府当局者らが最高人民会議の分析を急ぐ中、見方が一致するのは国防委の一層の権限強化と張氏の国防委員就任の重要性だ。張氏は金総書記の実妹、金敬姫氏の夫。経済改革に強い関心を持つとされ、これまで失脚説が流れたかと思うと数年後には公式メディアに名前が登場し、復権が確認された。昨年夏ごろに金総書記の健康悪化説が流れた後も、内部でかなり重要な任務をこなしたのは間違いないと見られ、北朝鮮が経済再建を目指す2012年の「強盛大国」づくりでの役割が期待されている。>

 期待かどうかは分からないが、この人の失脚説って真相は何だったのだろう? いずれ権力闘争だったのだろうが。

 <このため一部には、張氏の国防委員への抜擢が「ポスト金正日」にも関係しているのではないかとの見方も出ている。だが韓国政府は「後継問題において張氏の影響力は限定的ではないか」(大統領府幹部)、「最高人民会議後も後継問題で変化もない。何も決まっていない」(統一省の分析担当者)と慎重な見方を示す。>

 韓国はどこまで日本人記者に本音を語るのだろうか?

 <加えて朱奎昌・軍需工業部第1副部長の委員就任も注目される。朱氏は5日のミサイル発射に深く関与したとされ、金総書記が発射を見た際も同行した。北朝鮮にとり軍需産業は外貨獲得の主要手段の一つで、統一省の分析者は「朱氏の委員会入りはミサイル輸出の強化を示唆しているのではないか」と話す。>

 朱奎昌いう名前、覚えておこう。

 <一方、同省報道官は10日の記者会見で「北は南北経済交流担当の国家機関、民族経済協力委員会を廃止したと推定される」と語った。関係が冷え込む韓国の李明博政権への圧迫をさらに強めた形だ。>

 これはどうでもいい話。大切な話とどうでもいい話が混在する紙面だ。

 国防委員会は北朝鮮の最高軍事指導機関という位置づけなのだが、朝日新聞の同じページの[info 国防委員会]にあるように、

 <この十数年、国内での地位を上げ続けてきた。もともとは1992年の憲法改正で独立機関に格上げされ、翌1993年には金正日書記(当時)が国防委員長に就任した。国家主席制度が廃止された1998年の憲法改正では国防委員長が「国家の最高ポスト」と位置づけられた。金総書記はこれにより、党、軍、国家すべての権力を掌握することになり、故金日成主席からの権力承継を終えたと言われる。>

 <同委員会のナンバー2は2000年10月に訪米し、米朝敵対関係の終結を盛り込んだ共同コミュニケを出すことに貢献した趙明録第1副委員長が務める。その下に副委員長が3人。委員は今回4人から8人に拡充された。1人が退任し、新たに5人が加わった。国防省に当たる人民武力部は内閣ではなく、国防委員会の直属。治安管理を担う国家安全保衛部も国防委員会に属するとされる。>

 と説明してあった。

 内閣に属していた陸相、海相が実際は軍の傀儡で、総理大臣の言うことをなかなか聞かずに、嫌になると辞表を出して内閣を瓦解させていた日本の旧軍の伝統を継いでいるのが北朝鮮の最強の軍部なのかもしれないなぁ。日本にはそうした軍部はもうないし。

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政府の追加経済対策決定を報じた新聞:さすが経団連新聞~4月11日各紙朝刊から

 さすが日経新聞だと思う。政府の追加経済対策決定を伝える紙面の分厚さである。さすが経団連新聞の面目躍如なのか。

 4月11日朝刊は1面トップ<追加経済対策/景気下支え最大の56兆円/政府・与党決定/雇用・環境に重点>に主要項目のポイント図を付け、2面<まず規模ありき/成果奪い合う/与党内・追加対策も選挙にらみ/「消費税」など火種残す>で自民党の族議員たちの反応などをまとめ。

 3面<景気浮揚持続力が焦点/成長率2ポイント上げ狙う/200万人の雇用創出 道筋は不透明>で対策の効果を予想。菅野幹雄編集委員の<成長回復へ中期戦略示せ>で①経済の活力を取り戻し中期で成長に復帰する道筋を明確に示せ②露骨な選挙対策に走るな③先行き不安解消への道筋をよりはっきりさせよ――の3点を要望していた。

 4面では[追加経済対策のポイント]として、「住宅」、「少子化・保育」、「教育」、「雇用」、医療・介護」、「車・家電」の項目別に対策の中身を詳しく説明。その下のほうには[追加経済対策の概要]と[麻生首相の会見要旨]を入れていた。

 5面は<財政悪化、深刻さ増す/税収と国債発行逆転も/税制抜本改革課題に>、<公共事業/成長力底上げに注力/羽田延伸など>、<危機回避/株価急落に備え/REIT支援も>、<地方を活性化/交付金2.4兆円>で別の角度からの解説――などで重層的に厚い紙面展開をしていた。

 他紙に比べて圧倒的な物量作戦である。

 全部読むのは大変なので、一応、見出しに目を通した後は社説を読む。

 社説<改革を進めてこそ需要追加策が生きる>である。

 政府・与党が10日、財政支出規模15兆4000億円と「過去最大規模」の追加経済対策を決めたが「日本経済の急速な悪化が続くなかで、大型の財政出動は景気底割れを防ぐために必要な措置だ」として、「政府はばらまきを抑えるよう歳出項目を厳しく査定して関連法案づくりを急ぐとともに、規制緩和など構造改革も両輪で進め、中長期的な成長力強化を目指すべきだ」と訴えていた。

 金融サミットで米国やIMFが各国にGDP比で2%を超す財政出動を求めたが、今回の対策はGDP比約3%だという。環境配慮型の需要創出策は家庭での太陽光発電の促進策、環境対応車への買い替えへの補助金、冷蔵庫、エアコンなど省エネ対応家電の購入支援などだが、社説は「短期的には輸出不振で苦しむ産業界を支援する対策」と評価する。

 <税制では、贈与税の非課税枠を住宅の購入・改修に限り現行の年110万円から610万円に時限的に拡大する。多額の金融資産を持つ高齢者層から、若い世代への生前贈与を促し、住宅関連の投資・消費を刺激するのがねらいだ。「金持ち優遇」との批判を恐れたのか減税規模が小幅にとどまったのは残念だ。富裕層のお金が消費にまわれば経済全体にはプラスになる。>

 というのは、いかにも経済界代表、金持ち階層の利益代弁者である日経新聞の社説らしい。例えば、「減税規模を小幅」にとどめず、合計3000万円程度まで広げたらどうなっていたであろうか? 現在の日本では税の再分配機能が著しく低下している。再分配機能を高める方向の改革には賛成するが、逆方向の改革は賛成しかねるのだ。

 このようなレーガン、ブッシュ時代のような金持ち優遇減税が導入され、その効果が検証されないまま、消費にプラスだったという雰囲気が出れば、一回限り、臨時特例だったものが、恒久減税となる可能性も否定できない。

 だから、私は日経新聞の社説子とは立場を異にする。

 続きを読んでみよう。

 <今回の対策は過去に比べると歳出や減税の中身に工夫した跡はあるが、よくみると本当に景気対策として有効なのか首をかしげたくなるものも少なくない。>

 として、就学前3年間の子供に年3万6000円を支給する「子育て応援特別手当」を第一子にまで拡充する措置を批判する。

 <需要刺激効果は不明なうえ、今年度1年限りの時限措置にしたことで少子化対策としての意味合いも薄い。自民党と公明党の妥協の産物で、中途半端な政策だ。>

 というのである。公明党のゴリ押しで入った政策なのだが、この政策の方向性は正しいと思う。ただ、社説が書いているように1年限りで打ち切られるような補助金で本当に小さい子供を持つ家庭が助かるのだろうか? これこそ恒久的な措置にしなければ意味がないのではないか。少子化対策として有効だと思うのだが。「不公平だ」という異論には「あなたも結婚して、子供を生んでください」と言えばいい。日本の未来を背負う子供を健全に育てるのは親だけではなく、日本国民全員の責任でもあるのだ。

 <公共事業についても、羽田空港の国際化促進や東京外環道の整備など日本の競争力強化につながりそうな項目も入ったが、「整備新幹線の着実な整備」など従来の延長線上の項目も潜り込んでいる。>

 これは、日経新聞の言う通りなのだろう。あまり研究していないので分からないのだが、今の日本には整備新幹線を建設するだけの余力はないのではないか?

 <国の直轄公共事業の地方負担分を軽くするための臨時交付金も盛り込んだ。国の事業にこれ以上つきあう余裕がないという地方の声に配慮したものだが、恒常化すれば地方分権や公共事業の規律を損なう危険もある。「農林漁業の底力発揮」「地方公共団体への配慮」という項目もばらまきにつながらないか心配だ。>

 小泉時代の「三位一体改革」で地方を疲弊させた結果、国の直轄公共事業の約半分を地方が支払うという法律に基づかない慣習が地方に重くのしかかった。だから、この麻生首相の措置は正しいと思う。できれば、これを契機に「三位一体改革」の見直しを進め、数年内に国から地方への財源委譲を行うべきだろう。

 <緊急時の株価対策も盛り込んだ。政府機関が市場から株式などを買い取る仕組みで、買い取り額は最大50兆円と、東京証券取引所第一部の時価総額の2割近くに及ぶ。株式相場は3月中旬以降は回復傾向にあるが、今後発表になる企業業績や見通しが悪ければ再び売りが膨らむ恐れがある。株安と実体経済の負の連鎖が起きて、景気が底割れするのを防ぐ手だてを備えておくことは意味がある。>

 50兆円という額に驚くほど初心ではないが、これは一体何を意味するものだろう? 私には分からないので、後ほど調べてみよう。

 <ただ、株価の人為的買い支えには副作用があることも忘れてはならない。株価は経営者の通信簿で、株安は経営者に改革を促す力にもなる。1990年代のバブル崩壊直後に実施した株価維持策は経営改革の先送りにつながり、景気低迷も長引いた。海外をみても政府による株買い支えは異例だ。株式の需給関係に着目するだけでなく、企業の成長力強化こそが抜本的な株価対策である点を忘れてはならない。銀行が企業の株を大量に持ち、株安が貸し渋りに直結する構造からの脱却も急務だ。>

 前にも引用したり、参照したりしたが、日本政府は世界に類を見ない株価対策のプロらしい。これは一体、何を意味しているのか?

 <今回の対策の文章をみると「改革」という言葉がほとんど見あたらない。中長期的に日本の成長力を高めるには、財政による一時的な需要追加だけでなく医療、介護、農業分野などでの雇用創出につながる大胆な規制改革も進める必要がある。単発の財政刺激策だけでは、生産性の低い部門の構造を転換し経済の足腰を強化することにはつながらない。>

 この主張には賛成だ。

 <すでに巨額の財政赤字を抱えるなかで対策の財源調達も難題だ。今回の対策を盛り込む今年度補正予算では国債を10兆円増発する見込み。政府系機関向けの資金を確保する財政投融資債も約6兆円発行する。大量増発した国債をどう安定的に消化するかについて、政府は日銀などとも連携し十分目配りしてほしい。>

 なるほど、国債の消化の問題が出てくるのか。

 しかし、この力が入った紙面展開は何なのだろう? 対極にあったのが読売新聞dえ、本記が2面トップ。<追加景気対策決定/政府・与党/「成長率2%押し上げ」>の地味な扱い。経済面2番手<中期プログラム改定へ/追加景気策に明記/緊縮路線より強調>がある程度だった。

 朝日新聞も1面には<解散 補正成立後が軸/新経済対策発表/会期延長論も浮上>と政局記事が大きく、<今年度成長率「2%押し上げ」/与謝野財務相>はベタ記事だった。政治面では<消費増税、再び火種/公明、与謝野氏に不快感/中期プログラム改定方針を了承>が載っているものの、大トップは<何月?「補正成立後の解散」>で5月説から8月説までを解説していた。

 朝日新聞の工夫は政策面で[新経済対策 専門家どう見る]でエコノミスト5人に採点させたところぐらいか。政策面トップは<「需要を創出」/与謝野氏強調/巨額支出分「手当てしないと」>と、与謝野氏の10日の記者会見詳報だった。経済面は<国債買い増し 声じわり/日銀、内規たてに防戦>で政府、日銀のつばぜり合いが始まっていることを知らせていた。

 毎日新聞も1面は<雇用創出40~50万人/政府/追加経済対策を決定>と2面<15兆円 両刃の剣/国債大量発行 景気回復阻害も>、<基礎収支黒字化「ぼろぼろの旗」>と、しきりにマイナス面を強調していた。

 この紹介した順番は、麻生政権との距離が近い→遠い、という感じに見えた。麻生政権の政策にケチはつけたくないのだが、もう少し理念を語ったほうがいいんじゃないのか、とは思うのだが。

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2009年4月10日 (金)

麻生首相の元気の出る新日本創造プランは明るくていい~4月10日日経新聞社説+首相官邸HP

 麻生太郎首相が4月9日、日本記者クラブで行った記者会見で「新たな成長に向けて」という新成長プランを発表した。各紙は10日朝刊で報じたが、さすがにスピーチ全文を掲載した社はなかったので、首相官邸のHPからダウンロードして読んでみた。朝日新聞、毎日新聞、読売新聞は10日の社説に15兆円の大型補正予算を取り上げていたので、この中長期策は後回しにされ、日経新聞が第1社説<麻生版「アジア経済倍増計画」の関門>で好意的に取り上げたのが目立ったくらいで、他紙は評価を先送りしていた。

◆日経新聞4月10日社説

 日経社説から読んでみよう。

 <麻生太郎首相は今週末にタイで開く東アジア首脳会議(サミット)に先立ち、東アジア地域の経済規模を2020年までに2倍に増やす「アジア経済倍増計画」を提唱した。域内各国から賛同を得られれば日本と同地域との経済連携は一段と深まるが、実現には関門も少なくない。>

 という前文だ。実際はタイの反政府デモのおかげで東アジアサミットは延期(中止)され、首相は発表の晴れ舞台を失ってしまったのだが、首相の狙いの一つがアジアとの連携にあったことは間違いないだろう。

 <構想では、まず鉄道や道路などのインフラ整備への民間投資を促すために、日本が2兆円の貿易保険の枠を設定する。既に表明している2兆円規模の政府開発援助(ODA)も活用し物流網の充実や環境技術の普及を目指すという。世界同時不況の嵐の中でも、アジアは経済的な活力をなんとか保っている。停滞が長期化しそうな米欧に代わり、世界経済の成長センターとしてアジアの役割が大きくなるのは間違いない。日本が単独で経済成長を目指すのではなく、「国境を越えてアジア全体で成長する」という麻生首相の認識は正しい。>

 と、日経は構想に好意的だ。

 <世界的な需要収縮が続く中で、日本は先進国への輸出に頼ってばかりいては、持続的な成長軌道に復帰できない。少子高齢化が進む以上、日本の内需に過剰な期待もできない。アジア各国との連携を深めて「アジア内需」を外交政策で切り開く発想は極めて重要である。>

 首相が言っているように、対米輸出にばかり頼って成長できる環境ではなくなった、ということ。アジアが大事になっていることは間違いない。

 <問題は東南アジア諸国連合(ASEAN)各国への影響力を日本と競いあう中国や、アジアとの協調路線を強化する米国を含めて、域内と世界の各国が素直に麻生構想に賛同するかどうかだ。日本のための計画ではなく、アジアのため、世界のための構想である点を強調し、各国の協調を取りつけるサミットでの麻生首相の説得力が問われる。>

 この辺、サミットが流れたのが痛かったのか? どうせ中国は「日本に負けるな」と、同じ額の投資をしてくるだろうから、ASEANへの投資効果は2倍になる、とそのくらいの気持ちでいないと、また中国の覇権主義的な行動にカリカリすることになるだろう。

 <世界各国が麻生政権の寿命と日本政府の継続的な政策実行力を慎重に見極めようとしているのも事実だ。せっかくの構想が政権とともに消えるならば、同じ船に乗るのをためらう者がいてもおかしくはない。>

 これは言わずもがな、だが。この中長期策と15兆円補正で自民党は勝つことまではいかないにしても、負けない要因になるのではないか? 「ああ、麻生さんもいろいろ考えているな」という庶民の感想が聞こえてきそうだ。

 <アジア経済倍増計画は日本国内の政局と切り離し、ASEANや東アジアサミット、アジア太平洋経済協力会議(APEC)などの国際的枠組みの中で地域共通の経済政策として検討を進めるべきだ。計画を提唱するのが麻生首相であっても、計画の詳細を具体的に詰めるのは日本政府でなくてもよい。>

 随分と遠慮した物言いではある。そんなに日本への風当たりが強いのだろうか?

 <アジア通貨危機では、アジア各国が米国と国際通貨基金(IMF)主導の経済安定策に反発した。米国と中国は日本が唱えたアジア版の基金構想に反対した。アジアとの連携は常に魅力的な看板だが、実現には巧みな国際政治のかじ取りが必要だ。>

 確かに日経社説子が言うような配慮は必要だが、今は、中国の政府内からアジア共通通貨構想が聞こえてきている時代だ。12年前と違って中国の外貨準備が積み上がり、「日本だけにいい顔をさせなくてすむ今こそ、共通通貨を実現すべき時だ」という論らしい。

 とすれば、あまり遠慮せずに、日中が手を組んでやればいい。どちらが主導権を取るか、でもめるのは面倒だから、ASEANの事務局に丸投げする形で、実際はアジア開発銀行が裏で支えればいい。黒田総裁の人脈が動けるから問題ないだろう、と思うのだが、どうなのだろう?

 日経はアジアとのリンケージ部分だけを論評していたが、麻生首相の記者会見そのものは、もっとトータルな内容で、結構キーワードが幾つか飛び出してきていた。

 この演説をブラッシュアップすることで、自民党の総選挙用マニフェストができあがるのではないか、とも思った。

□麻生演説のほぼ全文□

 首相官邸のHPからダウンロードした演説全文を、挨拶部分などを削除して、部分的にコピペしておこう。

 <日本の経済がどのような未来をこれから先切り開いていくのか。新たな成長戦略を私なりに考えたものをお示しさせていただきたい。未来開拓の戦略と思っております。対象は、2020年まで。伸ばすべき産業分野の姿と、その実現の道筋であります。>

 <詳細を詰めた上で、来週中に最終的にとりまとめることにしたいと思っております。また、新たな成長フロンティア、未来というものは、国内だけに限らず、アジア経済の倍増を目指す、そういったアジアワイドの成長戦略についてもお話をしたいと思っております。>

 と、まあ、これが前文的な総論だろう。

 <最初に、日本経済の未来について話してみます。世界的な大きな経済の調整が避けられない中で、ひとり日本だけが、旧来型品目の輸出に依存した、そういう成長軌道に復帰することは、もはや現実的ではないと思います。>

 この現実認識は当たり前かもしれないが、実はものすごく大きな政策転換を伴うものだ。

 ぶっちゃけて言えば、「いざなぎ越え」などと囃されたものの、国民には実感がなかった先の景気回復は対米輸出増によって牽引されたことは最近よく強調されるようになった。

 今回の大不況では米国経済の回復が日本よりも遅れるだろうし、もしかすると大変なことになるかもしれないので、対米輸出増などとんでもない、という話だ。

 とすれば、IT産業、電機産業、自動車産業の輸出増のために低く据え置いた金利政策、円安誘導が今後、不動の国策ではなくなる、という可能性を認めたことになる。大きな転換もありうるのだ。

 <新たな成長モデルに向けて、いち早く行動をするためには、私なりに三つの柱というものを提示させていただきたいと存じます。>

 <それは①低炭素革命で世界をリードできる国②安心・元気な健康長寿社会③日本の魅力の発揮――、この三つです。この三つの柱は、日本の強みや特徴を生かせる分野だと思っています。この三つを柱に、官民による集中的な投資と、それを促す大胆な制度改革を実行しなければなりません。>

 つまり、戦後復興が石炭と鉄鋼産業への資源集中という傾斜配分方式で始まったように、麻生首相はこの3分野の産業振興を21世紀以降の日本の成長を牽引する産業に育てる、というのだ。

 <こうした官民の果敢な行動によって、2020年には、実質GDPを120兆円押し上げ、400万人の雇用機会を創出することが可能になるのではないかと考えています。特に当面3年間で累計約40兆円~60兆円の需要の創出140万人~200万人の雇用の創出を実現したいと思っています。>

 この数値目標は経済産業省や財務省の官僚が様々な数字を集めて試算したものだろう。特に経済産業省の基礎作業には時間がかかったのではないか、と想像する。

■低炭素革命で、世界をリードする国

 <まず第一に、低炭素革命であります。地球温暖化といわれる話は、21世紀、我々が乗り越えなければならない、克服しなければならない最大の課題の一つだと思います。これを、新たな技術と社会システムの変革で克服するのが低炭素革命であります。戦後の高度成長、経済成長で日本のありようを大きく変えたのは三種の神器、洗濯機、テレビ、冷蔵庫でした。家電製品が普及して家事の負担を軽減し、家族の団らんをもたらしたのは間違いない現実であります。また、自動車の普及も我々のライフスタイルを恐ろしく変えました低炭素革命の実現にはライフスタイルからまちづくりまで、これに匹敵する大きな変革が必要だろうと思っています。>

 ライフスタイルを変えるほどの新商品を出さないと、意識も変わらないし、国際戦略商品も生まれないのは事実だろう。

 <21世紀の低炭素社会において、多分、太陽電池、電気自動車、省エネ家電が新たな三種の神器になっていく。そして、高度成長時代と同じように、我々に低炭素社会というもののすばらしさを実感させ、そして夢を与えてくれると思っております。>

 この新三種の神器の構想はいいんじゃないかな。

 <日本のエネルギー効率はアメリカの2倍、ヨーロッパの1.7倍、中国の8倍、ロシアの18.5倍、これはIEEAが出した資料です。我々はこれに象徴される世界最高水準の省エネ技術を始め、そうした変革を可能とする十分な基礎がある。2020年にはエネルギー消費に占める再生可能エネルギーの比率を今より倍増して、世界最高水準の20%まで引き上げたいと思っております。この低炭素革命の分野で2020年に新たに約50兆円の市場と、140万人の雇用の創出を考えております。>

 この試算の適否を論じるだけの資料を手元に持ち合わせていないが、いい数字のように思えるのだが。というのも、麻生首相のスタイルから言うと、官僚の積み上げたペーパーを大事にする。そして、官僚は実現不可能な数字は首相に上げない。直観で言えば、この数字はまだ腰だめの数字だろうと思っている。

◆太陽光世界一プラン

 <その第一として、最も力点を置きたいプロジェクトの一つが太陽光世界一プランであります。太陽光発電の規模を2020年までに今より20倍にします。>

 <太陽光発電は、世界的な普及段階に入ろうとしております。今後数年間が世界一の座の奪還に向けた正念場であろうと存じます。>

 <いかにして太陽光世界一を獲得するか。そのためには①現在需要がないから製品のコストが高い②コストが高いから需要が増えない。この悪循環を断ち切らなければなりません何よりも政策的に需要を掘り起こすという強い政治的な意志が必要だと思っております。>

 <このため、家庭で生まれる太陽光の電力を電力会社が現在の2倍程度の価格で買い取る新たな電力買取制度を創設します。この制度により太陽光パネルをつけた家庭は、国や地方自治体の支援を合わせますと約10年程度で利益が出ることになります。また、全国3万6,000の公立の小・中・高校に今後3年間集中的に太陽光を設置し、太陽のエネルギーで子どもが育つ緑の学校に転換します。これらの対策によって、今後3年間から5年間で太陽光システムの製品の価格の半減を目指したいと思っております。日の丸太陽パネルが世界中の家の屋根や砂漠を覆う。そんな夢を持って大胆に取り組みたいと思っております。>

 これは賛成できる。多くの識者が提案していた構想である。それにしても具体的だなぁ。この前の有識者からの意見聴取も良かったのかな?

◆エコカー世界最速普及プラン

 <もう一つはエコカーの世界最速普及プランであります。世界で最初に電気自動車やハイブリッドカーなどいわゆるエコカーを本格的に普及させます3年後に電気自動車の量産・量販を開始し、2020年には新車の2台に1台をエコカーにしたいと存じます。>

 <このために今月から自動車重量税、自動車取得税の免除を開始しております。更に今後、新たな補助制度を導入し、エコカーへの買い替えを支援したいと思っております。これらにより1年間で100万台程度、需要を増やせます国民が環境性能で車を選ぶ時代を築きたいものだと考えております。>

 <また最先端モデル都市を10か所選定して未来の車社会の姿を先取りした実証プロジェクトを実施します。得られた知見を基に、世界最大の自動車市場であるアメリカと連携して、世界標準を構築したいと思います。>

 <併せて、テレビなど省エネ家電を購入した方にはエコポイントを還元する制度を活用して、1年間で3,000万台程度の省エネ家電の普及を支援します。>

 知らないうちに随分と具体的な構想を練っていたものだ。

■安心・元気な健康長寿社会

 <成長戦略の第2は安心して元気な健康長寿社会であります。日本は世界で比類のないスピードで高齢化が進んでおります。しかし、日本の高齢者はとにかく就業意欲が高い。65歳以上の男性で働いている人の割合は日本はほぼ3割、アメリカが2割、欧州では1割前後です。日本では60歳以上の高齢者と言われる方々の8割以上は少なくとも70歳までは仕事をしたいと考えておられる、という統計があります。しっかりした医療・介護サービスを提供できれば、暗く貧しい高齢化社会ではありません。世界に冠たる、活力ある高齢化社会がつくれるはずです。世界に先駆けて健康長寿社会を構築することは、すそ野の広い内需型の産業の創出につながります。この分野において、2020年に新たに35兆円の市場と、210万人の雇用を創出します。>

 いいじゃないか。これは小泉構造改革、後期高齢者制度への訣別宣言ではないか。本気でやるつもりになったらしい。

◆30万人介護雇用創出プラン

 <まず30万人の介護雇用創出プランに取り組みます。現在130万人の介護職員の方々を、当面3年間で30万人に増やす2020年には220万人にすることを目指します。多くの方々が職を失っている現在でも、介護分野は大変な人手不足であります。現状では介護分野の待遇は全産業の平均年収と比較して100万円以上低い。しかも、就職後のキャリアアップの展望も開けておりません。よりよい介護サービスをつくっていこうとするならば、介護の職場にも夢と希望がなければならないと考えています。まず、緊急に介護現場での処遇を改善していかなければなりません。このため介護のための基金を充実させます。そして、当面3年間、介護報酬とは別にこのお金で介護に従事される方への給与を上積みし待遇改善を行います。その上で会社や工場で働く人と同じようにキャリアと経験に応じて給与や処遇が上がっていく仕組みに変えていきたいと考えています。更に、都市部に目を転ずれば、最大の課題は介護施設の不足です。今後3年間で介護施設を集中的に整備します。>

 ニーズが分かっているなぁ、という感じだ。

◆地域医療再生プラン

 <もう一つの重点的なプロジェクトは地域医療の再生プランです。地域の医療は医師不足や患者さんの「たらい回し」など深刻な状況にあります。その一方で昼夜・休日を問わず一生懸命働く勤務医と看護師の方々が大勢おられます。この状況を打開し地域医療を立て直す必要があります。>

 <この問題は一つひとつの市町村や病院の力では解決できません。隣の市町村と協力し地域にある病院、開業医、介護施設が連携して、全体として住民に一つのサービスを提供するという発想に転換することが必要です。また、患者の視点に立って役割分担することが重要になる。>

 <例えば救急や産科の中核拠点をつくることで、「たらい回し」というものはなくせるはずなんです。こうした地域一体となった医療・介護体制をつくることに思い切って資金を投下したいと思います。>

 <具体的には、複数の市町村から成る広い範囲で病院間、あるいは病院と診療所の間で役割分担を行っていただきたいものだと考えています。そうした合意が整ったところには①医師をサポートする医療事務補助員の増員②より高度な医療施設やIT施設の整備③住民の皆さんが通院するために必要なバスの運行――などでバックアップしたいと思います。まず各都道府県で地域を選んで先行的に実施します。その後、成功例を10年以内に全国350程度の地域に展開したいと考えています。10年がかりの大事業として地域医療の再生に取り組みたいと思います。>

 10年がかりだろうなぁ。これも賛成。つまり、小泉=竹中の新自由主義を完全に捨て去って、再分配重視の政治に転換する、ということなのだろう。そうすれば、小沢氏の構想とそうは違わない。

■日本の魅力発揮

 <成長の第3の柱は日本の魅力の発揮です。日本には長く培ってきた文化や感性に根ざしたソフトパワーがあります。外国人旅行者を魅了する田園風景や、世界で注目されるアニメーション、ファッションなどです。このソフトパワーを活用して、すそ野の広い新たな産業を創出します。地域に活力を与え、若者の雇用につなげます。>

◆キラリと光る観光大国

 <きらりと光る観光大国を目指します。2020年、現在の約2倍以上に当たる年間2,000万人の外国人が旅行者として訪日することを実現したいと思います。現在800万人ぐらいあると思います。これは4.3兆円の消費市場をつくることになると思われます。現状では、残念ながら日本を訪れる外国人旅行者の数は、世界のランクでは28位にとどまっています。>

 <きちんと魅力をアピールし、必要な整備を行えば、外国人旅行者の数は必ず増えるはずです。政府としては、まず日本へのアクセス改善に取り組みます。成田空港の場合、外国人の入国審査の待ち時間は最長28分。これを半減させて15分。成田空港から羽田空港の国内線への乗り継ぎ時間を現在の100分程度から50分台へと半減させます。>

 <また観光地の景観、町並みを徹底的に改善したいと思っております。その地域の人々が誇りに思える伝統ある町並みを再生するということです。日本のどこでも、魅力ある観光圏に生まれ変わる可能性があります。福島県会津若松の大内宿は無電柱化、電柱を全部なくし、観光客が急増しております。こうした観点から今後3年間で30か所程度を選んで無電柱化などの景観工事を進め魅力的な町並み風景をつくります。>

 観光にしても、ここまできめ細かくやると実効性があるように見えるが。

◆日本のソフトパワー発信

 <もう一つは、日本のソフトパワーの発信です。日本にはアニメやゲームなどのコンテンツ、ファッションなどがジャパンクールとして世界の消費者から注目をされる素材があります。>

 <漫画は今、フランス語にもなりましたし、世界語になりました。中国の女性向けファッション誌の中でも、多くの日本発の雑誌が人気の上位を占めております。これは、中国で「あゆ」と呼ばれている浜崎あゆみの写真です。これは中国の雑誌です。これは香里奈という人で、台湾の雑誌です。これは日本人ですよ。これは「エビちゃん」ブームと言われた蛯原友里という人です。こういった表紙のモデルというものが、今の時代というものでアジアのOLたちの読む、いわゆる雑誌、テレビコマーシャルに並ぶ時代なんです。何となく昔のアメリカ人とか、そういったイメージは、今はないんです。>

 <アニメとかファッションの聖地は秋葉原、原宿、裏原宿ですが、これは今や東京観光の定番コースです。銀座、赤坂、六本木などと言っちゃだめですよ。しかし、残念ながらこうしたソフトパワーというものは、海外でのビジネスにはつながっていない。日本のコンテンツは大したものですが、コンテンツが産業になっていない。>

 <コンテンツ産業の売上げというものを調べてみると、海外での売上げは全売上高のたったの2%です。米国は約20%売りますから、約10分の1です。日本のソフトパワーの人気をビジネスにつなげ、2020年には20兆円から30兆円規模の一大産業に育成し、50万人の新規雇用を創出したいと思っております。>

 <コンテンツのつくり手、クリエーター作品、才能、ウェブ、また、携帯などによってビジネスとして花開かせることが重要と思っております。このため、人気クリエーターの脚本などのライセンスというものを一括購入して、海外での作品化のための販路開拓とか、また、資金提供を一体的に行う組織を創設したいと思っております。>

 麻生首相の一番得意な分野だ。

 <以上三つの柱に沿って主なプロジェクトを絞って、私の考えを申し上げました。このほかにも重点プロジェクトがありますので、お手元に資料を配らせていただいておりますので、それに細かく書いてあると思いますので、参考にしていただきたいと存じます。>

 資料があるのか。

 でも、農業改革が入っていないのが気になる。やはり、農協という選挙母体の反発を恐れて入れられなかったのかもしれない。農業で安全な作物を供給、新輸出産業に育てることこそ21世紀の日本には必要だと思うのだが。小沢氏はこの点を具体的に打ち出してくれるかどうか、注目点だ。

■アジアの成長~「アジア経済倍増へ向けた成長構想」

 <次に、もう一つのテーマであるアジアの成長に話を進めたいと思います。アジアは、21世紀の成長センターであります。日本の大きな強みは、このアジアに日本という国が位置していることです。これからの日本の新しい成長戦略を考える上で、この地理的強みを最大限に生かしていく。こういう発想が重要です。>

 これは誰が言っていたのか? 伊藤元重氏だったか?

 <日本は間違いなく人口減少に直面をいたしております。欧米市場と比べても、今後、大きく市場が伸びるのはアジアです。東アジアだけでも約32億人の人口、世界人口の約半分が東アジア。これはアジアの定義が難しいところですが、インドから東と思ってください。そういうぐらいのところです。パキスタンぐらいまで入る。そういった地域だと思っていただければと思います。東アジアだけでも32億人。最近4年間で1億3,000万人の人口が増加をしております。たった4年間で日本1国分が増えたということです。しかも、アジアでは膨大な経済所得の中間層というものが成長しつつあります1人当たりのGDPが3,000㌦を超えると耐久消費財ブームが起きると言われております。今、中国は約3,000㌦。ASEANの平均で2,200㌦を超えました。日本は国境を越えてアジア全体で成長するという視点に立つことが大事です。>

 経済学者が考えたのだろうか? そうではないだろう。それにしては骨太の構想だ、と思うのだ。

 <①成長するアジア全体で富を生み出し②それを経済連携や人的交流というものを通じて、日本の雇用やイノベーションにつなげる③それをアジアのさらなる発展につなげる――というような好循環をつくることが重要なんだと考えております。国内生産拡大に固執する発想よりも、国民の富の増大を重視する。国内総生産、GDP、Gross Domestic Productという発想から、国民の総所得、Gross National Incomeといった発想の転換が今後必要なんだと思っております。>

 さすが経済の麻生さんですね。この辺、玄人はだしです。

 <私は、昨年11月に総理特使というものを任命しております。アジア各国の声をよく聞いて、具体策を協議するように指示しました。各国の要人と協議を重ねてきた特使の報告というものを踏まえて、私は次の2つを提案したいと考えております。>

 内海さんだったか行天さんだったかを任命したのだったなぁ。そして、アジアへの提案が書かれる。

◆アジアの成長力強化

 <第1にアジアの成長力の強化です。広域インフラの整備、産業開発、制度改善、こういったものを一体的かつ計画的に進めることで、周辺地域や幅広い産業の飛躍的な発展が期待できると思っております。そのようなプロジェクトを支援します。お手元の資料に5ページがあろうと思いますが、資料の5ページを御参考ください。>

《(1)具体例》

 <例えば現在、ベトナムのホーチミンからインドのチェンナイまでマラッカ海峡を経由して海を使い、海路で約2週間かかります。これをホーチミンからアンダマン海まで陸路を整備して、タイから海路でチェンナイへ運べば10日。更に、これは国を横切りますので、通関など国境通過にかかる時間というものが膨大にかかっておりますが、これは日本の通関技術、ワンストップサービス、シングルウィンドー、こういった技術を入れますと8日で運ぶことができます。このようなルートを建設し、周辺に工業団地など関連インフラを整備します。これによりメコン地域は、はるかインドや中東を視野に入れた自動車やエレクトロニクス、そういった製品の供給拠点として大きく発展することができます。また、マラッカ海峡というものが果たす、海上交通の役割は不可欠です。マラッカ海峡沿岸の発展を支えることで、日中韓と中東をつなぐエネルギー輸送の大動脈を安定させることができます。インドネシア、マレーシア、フィリピンに至るまで、東南アジアの発展にも大きく寄与するのは当然です。こういったプロジェクトの候補は、幾つもあります。>

《(2)アジア総合開発計画の策定》

 <構想を具体化するには①鉄道や陸路などの基幹的なインフラ②発電所、工業団地などの関連インフラ③産業開発の計画④資金調達の仕組み⑤通関などの改善すべき制度――などについて総合開発計画というものを策定することが必要です。今、東アジア・ASEAN経済研究センター、ERIAというものがありますが、また、ADB、アジア開発銀行。また、ASEANの事務局が中心となって、各国と協力しながらアジア総合開発を策定することを、今、提案したいと思っております。ASEAN、インドを中心に5年間で70兆円のインフラ需要があると予測されております。そのうち、既に構想・計画段階にあるものが10兆円あります。日本は提案するだけではなくて、ODAやその他の公的資金、民間資金まで総動員してこうした取組みを後押しします。日本は今回、新たにアジアのインフラ整備へ民間投資を振り向けていくために、官民連携案件を中心に2兆円の貿易保険枠を設けます。先般表明した最大2兆円規模のODAや国際協力銀行による5,000億円程度の環境投資支援イニシアティブも活用してアジアのインフラ整備に貢献したいと思っております。>

 これがインフラ。そして、

 <また、アジアの持続的成長には環境問題への対応も忘れてはなりません。日本の優れた環境技術、新エネ、省エネ技術を活用して、アジアワイドでの資源循環システムや高度な水の循環システムの普及などの事業を進めます。>

 こっちのほうが将来性がありそうだ、と思うが。

◆アジアの内需拡大

 <第二にアジアの内需拡大が重要になります。広域開発構想による投資の刺激に加えて、アジアにおいて消費を増やすことが極めて重要です。今後、アジアの中間層が安心して消費を拡大するためには、社会保障などのセーフティーネットを整備する必要があります。また、教育の充実によって中間層を増やしていく必要があります。こうした課題は各国が自主的に取り組むべき課題ではあります。ベストプラクティスというものの共有や共通指標の整備などの面で、アジア全体が協力することが重要なんだと考えております。ERIAが政策提言することを提案したいと思っております。>

 教育支援か。

 <日本は昭和35年に池田内閣によります国民所得倍増計画、いわゆる所得倍増というものを策定して高度経済成長時代へ入っていきました。今やアジア全体で中間層が存在し内需主導で大きく成長する新しい時代を迎えつつあります。本日、私の申し上げた構想は、アジア経済倍増へ向けた成長構想というべきものだと思っております。アジアの経済規模というものを2020年に倍増することを目指して、お互いの立場を尊重しながら、対等の立場で取り組んでいきたいと考えております。4月12日に予定されております東アジア首脳会議の場で、私から提案し、アジアの国々と共に前進したいと思います。>

 残念ながら、このプレゼンテーションはできなかったわけだが、いいプランだ、という評価は得られるのではないか。

■さいごに

 <最後になりますが、高度経済成長を続けた成長モデルが崩壊して新たな均衡を模索する大調整と言われるものは歴史上何度もありました。>

 この辺のうんちくも麻生さんには似合う。

 <遠くは中世イタリアの都市国家、また16世紀のオランダ、19世紀のイギリス、いずれも世界経済を支配した国々であります。なぜこれらの国々は成功し、その後、ほかの国にその地位を譲ったのか。私の主観ですけれども、一つの共通点は当初はものづくりと貿易で栄え、その後は行き過ぎた金融資本主義に陥ったというのが共通点だと私は思っております。>

 <額に汗して働く、そしてチーム全体として高い成果を上げていく組織力。日本のものづくりというのを支えてきたのは、この組織力です。この伝統なんだと私は思っているんですが、その強みを生かし続ければ、日本経済にはまだまだ大きな可能性があります。>

 <最近、家庭を見ても学校を見てもよく言われる個人主義化、アトム化。この結果、日本の組織力を衰えてきているという印象があります。しかし、もう一回日本が持っているこの組織力というものの強みというものを再認識する必要がある。>

 <よく例に引きますが、例えば鉄道。これは御存じのように蒸気機関車はイギリス人が発明した。しかし、鉄道網というシステムは日本が圧倒的になりました。これは日本がつくった。ちなみに東京23区内を見ていただければ通勤しておられる方の76%が鉄道、地下鉄といった鉄の道路というものを使っておられる。一番進んでいると言われている外国のロンドンで19%ですから、圧倒的に日本は時間どおりに動かせる。しかも壊れず、正確に動く。これができなければ鉄道網はできない。私は日本でラッシュアワーとか大気汚染というものを回避できた大きな元の理由はここにあるんだと思っております。これを可能にしているのが日本の人であり、その組織力なんだと思っております。>

 <したがって、自らの強みというものを失うのではなくて、その土台の上につくり上げたもの。それが今回の成長戦略であります。この戦略目標を基に、みんなの考えというものを巻き込みながら、しっかり実現したいと考えております。したがって、日本とアジアの未来は明るい。この成長戦略を通じて、皆さんにそのように感じていただければ何よりであります。

 本当に楽天的で明るい性格そのものの演説だ。いいんじゃないか、国民に夢を与えることは。

 それにしても、各紙のそっけない扱いは何なのだろう? 今まで具体策を示せ、といい続けて、麻生首相が出してきたのだから、きちんと内容を報じて、評価もすべきなのに、毎日新聞など、小さ過ぎる扱いで、読者には意味が分からない。産経新聞もほめられたものじゃない。どうも、政治記者は数字の入った演説は聞いても分からないんじゃないか、と疑ってしまう。

 首相がいうように、もう少し後にきちんとした形でまとまるらしいから、その時には全文でなくともいいが、詳しく報じてほしい。ある意味、オバマ演説なんかより、ずっと大切な内容なのだから。

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レオン・シーガル氏の主張が米国のスタンスだとしたら…日米同盟には頼れないじゃないか~中央公論5月号インタビューから

 中央公論2009年5月号に<北の核・ミサイル問題を迷走させるこれだけの誤謬>のタイトルでレオン・V・シーガル米国社会科学調査評議会北東アジア安全保障プロジェクト部長がインタビューに応じていた。聞き手は外交ジャーナリストの松尾文夫氏である。

 言っていることは単純だ。北朝鮮の言い分には理があるのだから、日本も駄々をこねずに6カ国協議で米国と協調してエネルギー支援をしろ、人工衛星を飛ばしたっていいじゃないか、ここまで進めたのに日本が邪魔をすると北朝鮮はまた原子炉を動かす。そうすればまたプルトニウムが増えて、大変なことになるから、今のスケジュールで進むべきだ。北朝鮮は6カ国協議合意を守っている。彼らはギブアンドテイクでしか動かない。合意では検証に触れていないのに、日韓両政府が突然、検証をいい始めたので北朝鮮が怒った。だから、ヒル次官補が口頭了解で検証を約束させたのに、日韓は文書でないとダメだと言っている。どんどんハードルを高くして、核問題の解決を遠ざけている。どうせ日韓両政府は北朝鮮が何を言っても信用しないのだろう。それではダメだ。日本は変わるべきだ、という主張である。

 今はオバマ政権がブッシュ政権の政策方針を自動操縦で進めているだけの時期であり、オバマ氏の朝鮮半島政策はまだできあがっていない、という。

 北朝鮮は核を手放す際には米国に安全保障上の保証を求めるだろう。それには「核の傘の終了」も入っているはずだ。その実行がないと核は手放さない、という。

 <われわれが他の誰にも与えるものを北朝鮮も手に入れる資格がある。もちろんそれは核兵器を放棄した後だ。それ以前ではない。>

 <北朝鮮は、彼らが核兵器と呼ぶものを持ち、さらにいくつかの核兵器を作れるだけのプルトニウムを持ち、ミサイルを開発している。日本がこの現実に目をつぶり、拉致問題だけに目を向けるのは、日本の安全保障にとっても意味をなさない。北朝鮮が日本の安全保障に深刻な問題を提起しているというアングルで捉えるべき段階に来ている。>

 <平壌は拉致問題は解決されたと繰り返し言っている。これは、金正日が基本的な決定を行ったが、残る問題は二国間で解決する必要がある、という意味だ。ところが日本はこうした対話に応じてこないというのが彼らの主張だ。互いに一歩ずつ歩み寄ることによって解決すべきだ。これは日本国内では不人気なやり方かもしれないが、もし問題に決着をつけたければ、これしか方法はない。>

 <(北朝鮮は決して核兵器を放棄しないという見方があるが、という質問に)どうしてそれが分かるのか。憶測に過ぎない。私は、核兵器を放棄するかどうかを決める人物は、ただ一人。その人物に聞かなければならないと思う。彼が最終的にどうするのか、私には分からない。彼自身もまだ分からないのかもしれない。分かるための唯一の方法は、交渉を行い、北朝鮮側が約束を守るなら、我々も約束を果たすことだ。これ以外のことを言う人々は、誰であれ、彼が話していることの中身など知らない。>

 <(金正日が健康がすぐれず、正しい判断ができないかもしれない、という質問に)もし彼の健康に問題があるのなら、我々は核とミサイルの取引を彼との間で決着させることを急ぐべきだ。北朝鮮の体制の中で、取引を行い、それが守られるようにする可能性が最も高いのは彼だからだ。後継者が誰であれ、その政治力は彼に劣るだろう。そして核兵器に対する支配力はもっと劣るかもしれない。>

 <私が想像できる世界最悪のことは、北朝鮮が崩壊して、核物質と核兵器が野放しになることだ。どういう結果になるか分からない。科学者や将軍が少しばかりスーツケースに入れて誰かに引き渡す可能性だってあるのだ。>

 <北朝鮮は軽水炉と外交承認に非常に固執する可能性が高い。交渉を試み、何が手に入るかを見ること以外に、前進する方法を我々は持っていない。そして核兵器がなくなるまで決してあきらめてはならない。>

 <もしミサイル実験を行っても制裁で応じることは全く意味がないと思うことだ。これを強く言っておきたい。先に述べたようにブッシュ大統領でさえ、核実験の後、マカオの資金凍結解除で北朝鮮との妥協に応じた。それに「人工衛星」打ち上げと言われると、1967年の宇宙条約もあり、制裁や撃墜は国際法的にも難しい。米政府の国家情報機関幹部も最近同じような発言をしている。>

 <おそらく平壌は歴訪の際のクリントン発言はあまり快く思っていないものの、旧知のボスワース氏の代表就任は良い兆候と受け止めているだろう。彼については北朝鮮との対応の経験、KEDO事務局長、駐韓米国大使、国務省政策企画委員長などの経験から見て、これほどの適任者は他に思いつかない。>

 として、ニューヨークフィルの平壌公演のお返しに平壌の国立交響楽団の答礼演奏をしたがっていて、まだ招待ビザが出ていないが、それが出るかどうかがオバマ政権の対北朝鮮路線のバロメーターになる、と語っていた。

 米国の雰囲気がよく出ているインタビューだった。こんなものなのだろうなぁ、と思う。

 冷戦崩壊後、米国は一時期、日本を経済的に競合する「敵国」として、経済戦争を仕掛けてきた。北朝鮮のノドン、テポドン発射などを機に日米安保の実体化も進んできたが、米国内では冷戦期の「日米安保」の重要性は完全に薄れてしまった、ということだ。

 そして、米国が今、一番気にしているのが中国である。中国の機嫌を損ねないような政策を取るようになっている。日本はいわば米国の隠し金庫である。カネがなくなったら、引き出す。そういう存在でもまだ冷戦期には日米同盟は実質的な価値があったのだが、今や米国はイデオロギー戦争で同盟国日本を必要としているわけではなく、安全保障面で日本を守る、などという意識はほとんど薄れていることがこのシーガル氏のインタビューでよく分かる。

 つまり、米国は今後も日本を便利に使うだろうが、今までのような核の傘はないものと思わないといけない、ということであろう。

 シーガル氏も言っているように、最終的に北朝鮮が核爆弾を手放す際には韓国・日本への「核の傘」排除を言い出すだろう。それを米国は苦渋の決断のふりをして受け入れる、というシナリオが見えてくるだろう。

 つまり、北朝鮮をつぶすな、という中国の強いメッセージを生かすように米国の政策が作られるのである。

 何度も書いているように、米国、韓国、日本にとっての核兵器、ミサイルの脅威度は違い、国益も違うから、最終的には違った対応をせざるを得ないのは致し方ないことだ。

 米国はテポドンⅡが米本土に届き、それに核弾頭が搭載されれば、もう北朝鮮との戦争はしない。米本土の防衛を最優先するからで、国家として当然の選択である。だから、日本の例えば福井県の原発に核搭載ノドンミサイルが落ちて、原発が死の灰をふりまき、偏西風に乗って首都圏まで到達し、日本の自衛隊がオタオタしても、米国は北朝鮮との戦争に踏み切らない、と思っていたほうがいい。

 米国は変わったのだ。すでに昔の米国ではない。

 日本は「核の傘」のなくなった世界に生きていることを自覚すべきだろう。つまり、自分で核を持つのか、中国の核の傘に入るのか、核兵器の存在そのものを無視して今後生きていくのか? 北朝鮮のような国による核兵器をぶち込むぞ、という脅しには今後どう対処するのか、本当に問われている、と思う。

 シーガル氏は以前からこんなことを言っているらしく、2007年の中央公論にも同じ松尾氏が行ったインタビューが掲載されたらしい。

 本物は手元にないが、そのインタビューをコメントしている「現実主義者」たちのブログを見つけたので、ここにダイジェストにして貼り付けておく。

 シーガル氏について調べようとネットを見たら、下の二つのブログを見つけた。2年前のブログである。いずれも、シーガル氏の論に賛成する、という素朴な見方を示していた。米国の国益だけを語るにはそれでいいかもしれないが、日本はどうするのだろうか?

■[雪斎の随想録~とある政治学徒の戯言part.Ⅱ]2007年7月9日<「拉致敗戦」という記事>(雪斎氏は桜田淳氏だ、とプロフィールで書いていた)

 『中央公論』今月号レオン・V・シーガル「拉致敗戦―日本は北朝鮮問題で致命的な孤立に追い込まれる」の内容要約をしていた。

 シーガル氏は「米国社会科学調査評議会北東アジア安全保障プロジェクト部長」(director of the Northeast Cooperative Security )で、国務省勤務、『ニューヨークタイムズ』勤務の職歴、コロンビア、プリンストン各大学やブルッキングスで研究所で研究した典型的「米国の知識人」らしい、とある。 シーガル発言の要旨は次の通り。

 ①ジョージ・ブッシュ政権の対朝政策に「体制変更」の選択肢は当初からなく、政策目的はあくまでも「核の放棄」だった②ブッシュは一貫して対中関係を重視し、対中関係維持のためにも北朝鮮ファクターに対処する必要がある③ブッシュ自身は「金正日」嫌いだが対朝「強硬派」ではない④安倍晋三は訪米時、自らのの対朝強硬姿勢への同調をブッシュに求めたが、ブッシュは応じなかった⑤対朝政策「変更」はニクソン、キッシンジャー、先代ブッシュ、ベーカー、スコウクロフトに連なる伝統的共和党主流の現実主義への「回帰」だ⑥「とにかく拉致を解決せよ」という姿勢では何も得られない。前回会合の膠着の理由一つは、「拉致が先だ」という日本の姿勢だった⑦次回会合の議題は「テロ支援国指定」解除。北朝鮮の「テロ支援国」指定は「よど号」ハイジャック犯保護の一点に拠っているので、北朝鮮が「よど号」犯を国外送還すれば「テロ支援国」指定の米国内法の根拠は消える。「テロ支援国」指定は米国国内法上、「拉致」とは無関係⑧ブッシュ政権は早期の日朝交渉再開を望んでおり、実現しないと厄介なことになる――である。

 雪斎氏は、

 <シーガル論文は柔軟な「現実主義者」の発想を反映したもので、「何が米国の利益か」という発想に立てば、確かにシーガルの議論は、無理が少ない。事態がシーガルの議論の通りに動けば、日本の立場は容易でなくなる。>

 <ブッシュ政権下の米国の「対朝強硬姿勢」に期待して対朝強硬姿勢で突っ走ってみたものの、肝心のブッシュ政権それ自体は、「対朝強硬姿勢」を元から取る気はなかった。これが今の日本の姿ならば、ソ連に和平交渉の仲介を依頼しようとした戦時中の日本政府の姿を思い起こさせる。相変わらず、「右派」勢力には、「対朝圧力を強めよ」と唱えている向きがあるけれども、それは、現状では戦時中に「本土決戦」を叫んでいた人々と同じ雰囲気を感じさせるのであろう。>

 と分析している。

 <米国国内法上「拉致はテロではない」以上、北朝鮮が「よど号」犯を追い出せば、米国がこの議論を始めることには、何の制約もないわけである。もし、これが本当に始まるようならば、日本は、「拉致はテロである」という姿勢を取り続ける限り、次々と「梯子を外される」羽目になりかねない。>

 と鋭い。

 <案外、「拉致」案件で恃みにできるのは、対日「従軍慰安婦」決議や対中「ウイグル」非難決議の採択を主導した米国国内「人権派」の人々かもしれない。こうした人々は、米国の対外「利害」を怜悧に観るというよりは、素朴な「正義感」で動いてくれそうである。だが、そうした人々を今まで不用意に敵視してきたのが、日本の「右派」勢力なのである。それにしても、シーガルの議論からは、ブッシュ政権における「小泉純一郎」と「安倍晋三」に対する扱いの差が垣間見ることができるようである。こちらが変わったのか。それとも、先方が変わったのか。>

 と書いていた。

 なるほど、日本にもこういう「現実主義者」が多いのか。

 次のブログも同じ趣旨である。

■[カワセミの世界情勢ブログ~国際ニュース、外交、政治経済問題に関する覚え書きと対話の場所]の2007年07月12日にも<北朝鮮問題と米国と安倍政権>のタイトルで中央公論のシーガル論文を取り上げていた。

 レオン・V・シーガル「拉致敗戦―日本は北朝鮮問題で致命的な孤立に追い込まれている」(「中央公論」2007年8月号)。シーガル氏は元NYタイムズの論説委員、現在独立系のシンクタンクSSRCの「北東アジア安全保障プロジェクト部長」である。インタビュアーは外交ジャーナリストの松尾文夫氏。

 ブログで「カワセミ」氏は、

 <今月の「中央公論」に掲載されたシーガル氏の「拉致敗戦」という記事は興味深い。シーガル氏の記事には、要点以外に様々なキーとなる要素が埋め込まれている。>

 として、注意すべき内容として以下のように羅列している。

<・2005年9月の共同声明は米国が孤立した形でまとまった。当時の日本も賛成している。
・これに反発する米国内の政治勢力はブッシュ大統領が抑えた。
・小泉前首相は常に制裁に抵抗した。刀は持っても抜くべきではないと言った。
・現在のブッシュ大統領は交渉を試すことに肩入れしている。
・小泉前首相は常に取引する用意があると発言していたが、安倍首相の立場は維持するのが難しいのではないか。>

 そして、

 <レジームチェンジは(日本を含む周辺国の反対で)出来ず、制裁も出来ないという状況下で、交渉を試す価値はあるというのがシーガル氏の言>

 として、「外交の現実としてごく当然な帰結」と書いている。

 <前首相がマスコミとのインタビューで「外交以外の方法で…」と問われた時に、それは戦争を意味するのかというような激しい反論をしたのを覚えている人もいるのではないだろうか。もちろん、日本国内にそれを望む人もいる。しかし日本人の多数派は、北朝鮮が怪しからんと大いに憤慨してはいても、戦争するかとなると二の足を踏むのではないだろうか。言うまでもないが他国がそうしてくれるのを望むのは政治的堕落でしかない。>

 小泉純一郎氏のスタンスかぁ、懐かしいというか、彼は一体何を日本に残したのだろうか。こういう方々は今回のミサイル発射後も日本が北朝鮮に振り回されても仕方ないから、今の枠組みでやっていこう、と思っていらっしゃるのだろうか?

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産経新聞が1面に反竹中平蔵論文を出してきた!路線を変えるのか?:「かんぽの宿」問題~4月10日産経新聞朝刊

 産経新聞4月10日朝刊1面コラム[今日の突破口]でジャーナリストの東谷暁(ひがしたに・さとし)氏が<「かんぽの宿」に見る錯誤>のタイトルで、竹中平蔵氏らを批判していた。竹中イズム一色に染まっているとばかり思っていた産経新聞1面でこのように御大に逆らう議論を掲載して、「もう産経には載せてあげない」と竹中氏に怒られないのだろうか、と余計な心配をしたくなるような東谷氏の切れのいい論文なので、読みながらコメントしていきたい。

 「かんぽの宿」売却問題である。

 書き出しはこうだ。

 <最近は報道も少なくなったが「かんぽの宿」疑惑が解決したわけではない。それどころか、次から次と新しい事実が発覚して日本郵政による「かんぽの宿」と社宅の売却が、経営改善も行わないまま安くたたき売るものだったことが明らかになりつつある。ここで述べたいのは、そうした疑惑についての新発見や新分析ではない。いま「かんぽの宿」について考えることは、日本経済が陥っている「錯誤」から脱却することにつながるということである。>

 「安く叩き売る」。まさにその通りだ。

 <まず、日本郵政の資産ソリューション担当によれば、最初のころの説明で「入札」と呼んでいたのは、単に世論に配慮したためで、本当はあの売却はM&A(企業合併と買収)だったのだという。つまり、公的資産を売る公正な手続きではなく事業譲渡だったというわけだ。ビジネスのためなら「偽装」もかまわないという、いまはやりの発想そのものなのである。>

 この嘘をついた責任を問われて辞職したとかの話を聞かない。こういう「嘘」は許されるのだろうか?

 <しかも、「偽装」をしても、極端に安く買いたたかれかけたのだから、日本郵政はM&Aの駆け引きに失敗したことになるだろう。売却の対象となった物件の固定資産税評価額は約857億円であり、固定資産税評価額が公示価格の約7割であるのが普通だから、公示価格では約1224億円。公示価額の約8割である路線価でも約979億円に相当することになる。>

 この計算式。玄人には当たり前かも知れないが、勉強になった。公示価格を基準にすると固定資産税評価額は7割、路線価は8割だ、という事実である。
 それは勉強になったが、大切なのは「偽装」してまで高く売ろうとして、思い切り安く売った、という事実である。

 <また、こういうと、必ず不動産売買ではキャッシュ・フローに基づく「収益還元法」が用いられるので、極端に安くなっても少しも不思議はないという論者が現れる。しかし、路線価で約979億円のものが、一括売却すると109億円になってしまうなら、ていねいにばら売りをして、少しでも売却価格を上げようとするほうが、むしろ有効な投資回収策だろう。ここには、新しい「理論」を振り回せば、いつも、もっともらしい答えが得られるという「錯覚」が見られる。>

 竹中平蔵氏のテレビ発言などの特徴だ。少しでも自分がやり込められると新しい「理論」を振り回して正当性を訴える。東谷氏のようなプロが見ればチャンチャラおかしいのだ。

 <ばら売りできない理由として郵政民営化法の「付帯決議」をあげる人もいるが、これも単にこじつけにすぎない。付帯決議には、郵政一般の雇用条件への配慮はあっても、一括売却を強制する文言など、どこにもないからだ。そもそも、売却後の雇用に配慮したいと思えば、ばら売りでも、個々の施設の職員たちとの、地道な交渉は可能だったはずだろう。>

 付帯決議、付帯決議と二言目には言っていたなぁ。

 <さらに、M&Aの論理を振り回す人たちは、収益の上がらない事業などは、安くても素早く売却すべきなのだという。しかし、こうした単純化されたエセ金融理論に凝り固まったやり方こそ、いまの惨憺たる世界経済の破綻を招いたことを思いだすべきだ。>

 売るべき時期と売ってはいけない時期と、それが分からない人がトップを務めているのならば、トップを辞任させるのは当然だ。なぜ日本郵政の社長は辞任しないのか? 竹中氏や宮内義彦氏らとの闇の利益共同体だから、日本郵政社長だけを斬るわけにはいかないのだろう。

 <経営におけるソリューション、つまり解決策には、実はいくつもの選択肢がある。M&Aが最善と決めつけ、事業を「金融商品」と見立ててたたき売ることだけが解決策ではない。うまくいかない事業でも、安易に市場から退出することなく、経営を根本的に見直すことで、新しい局面を迎えることは少なくないのである。>

 叩き売りの論理は破綻している。

 <今回、日本郵政の売却にアドバイスをしたある証券会社の文書によれば、「かんぽの宿」の経営は、売却後には黒字転化することになっていたと報じられている。>

 メリル・リンチか?

 <「かんぽの宿」のさまざまな条件を考慮すれば、この予測は必ずしも、早く売却してしまうための「ニンジン」などではないように思われる。>

 文章が短すぎる。まだまだ読みたい。欲求不満だ。東谷氏の言う通りだと思うのだが、産経新聞社説はそういう見方ではない。どうしてなのか? 産経新聞の社説でもう一度、日本郵政側の論理も読んでみたい。それとも、ここまで書かれて、産経新聞の論説委員会も東谷氏の論に追随するのか? 当然のことだが、朝日新聞の論説委員も熟読すべき論文だと思う。

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自治労は北朝鮮支持政党の母体だったのか~朝鮮新報4月10日から

 朝鮮総連の機関紙「朝鮮新報」のホームページに<日朝国交正常化連絡会メンバー/「制裁延長反対、交渉再開を」/外務省に首相あての要請文提出>の記事が写真付きで掲載されていた。

 <「東北アジアに非核・平和の確立を! 日朝国交正常化を求める連絡会」(以下、連絡会)メンバーらが9日、東京都千代田区の日本外務省を訪れ、朝鮮に対する制裁の解除や国交正常化交渉の再開などを求めた。連絡会は、国交正常化の早期実現を求め、これに向けた運動を全国で展開、強化していくために日本各地の平和運動家らによって昨年7月に結成された。>

 という前文で、次がメンバー。

 <連絡会の福山真劫共同代表(平和フォーラム事務局長)、石坂浩一共同代表兼事務局長(立教大学准教授)、小泉喜子常任幹事(朝鮮女性と連帯する日本婦人連絡会事務局長、I女性会議共同代表)、井加田まり常任幹事(自治労中央執行委員)、五十川孝事務局次長の5人が外務省アジア大洋州局北東アジア課の山本文土課長補佐と面会し、麻生総理、中曽根外相、美根・日朝国交正常化交渉担当大使あての要請文を手渡した。>

 とあった。大学教授や研究者、NGO代表らがメンバーであることは分かるが、民主党の支持母体である自治労からもメンバーが入っているのには驚いた。自治労は民主党支持かと思っていたのだが、社民党支持だったのか?

 <要請文は、日本政府が朝鮮に対しとっている制裁措置を延長したり強化することに強く反対し、ただちに制裁を解除するようもとめると指摘した。>

 北朝鮮寄りの団体である。

 <また日本政府は4月5日の朝鮮の人工衛星打ち上げを「ミサイル発射」と決めつけ「弾道ミサイル等破壊措置命令」を発令するなど、国民に不安と敵対心を煽り立ててきたが、日本政府がなすべきことは、不安を煽ったり緊張を高めることではなく、対話を通じて緊張を緩和させていくことだと主張した。>

 前田哲男氏らが言っていることと同じだ。つまり、前田氏らはこれら団体と同じ思想信条を持っている、と見ればいいのだろう。

 <さらに、これまでの制裁措置は、拉致や核やミサイルに関係のない在日朝鮮人に対する人権侵害を引き起こし、なかでも「万景峰92」号の入港禁止措置は、老いた在日朝鮮人の祖国訪問と朝鮮学校に通う生徒の祖国への修学旅行の自由も奪っていると指摘。「北朝鮮脅威」を煽る報道で、在日朝鮮人が心ない日本人によって暴行・暴言の的となる恐れも生まれていると強調した。>

 「万景峰92」号で日本の精密部品が北朝鮮に渡り、ミサイルや核兵器開発に利用されていることには口を閉ざすのだろうか?

 <要請文は、今こそ危険な制裁をやめて平和解決をめざすべきだとしながら、政府が▼4月13日で期限切れとなる対朝鮮制裁を延長しない▼米国などに続いて日本も朝鮮に人道支援する▼6者合意の義務として重油などのエネルギー支援を実施する▼戦争につながる行為をやめ平和と対話の姿勢を明確にし日朝協議を再開する――ことを要請した。>

 北朝鮮の言う通りに行動しているとしか見えない。金正日総書記のロボット、朝鮮総連の別働隊なのだろう。

 <メンバーらは面会の席上、要請の趣旨を説明しながら、圧力では国交正常化の方向には向かうことはできず、圧力を強めるほど在日朝鮮人の人権侵害が引き起こされることなどを伝え、今回の要請を前向きにとらえるよう求めた。>

 在日の人権には敏感だが、拉致被害者ら日本人の人権は無視しようとする。この団体の構成員は日本人だと思うのだが、精神構造は北朝鮮人になりきっている。

 <席上では、朝鮮への敵視政策をやめ国交正常化の早期実現を求める「日朝国交正常化の早期実現を求める市民連帯・大阪」の要請文も手渡された。>

 こういう少数者の意見も無視はできないから、社民党が少数党として国会に存在している。だが、2大政党には決してならない。なぜならば、このような日本国民の安全を無視するような団体が支持する政党は批判勢力としては一定の価値は持っても、日本国の統治を任せるわけにはいかないからだ。

 自治労は社民党だったのか。驚いた。国家公務員、地方公務員は心して労組に入るかどうか、考え直すべきだろう。

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森信茂樹・中大教授の<なぜ消えた?経済政策論議>に賛成:それにしても朝日新聞は~4月10日「あらたにす」から

 4月10日の「あらたにす」に掲載された森信茂樹・中央大学法科大学院教授の<なぜ消えた?経済政策論議>に賛同する。この「15兆円」は麻生首相が最初、「10兆円」といっていたものが、いつのまにか15兆円と1.5倍に増えてしまった不可解な経緯も不明だし、贈与税減税問題など、税制改革がいかに時限とはいえあまりにも軽く扱われた点で悪い先例を作ってしまうことになるのではないか、と心配だ。

 予算は政府だけですべてを決めるシステムにはなっていない。あくまで国会で決めなければ正式決定とはならず、実行段階には至らない。自公与党が水ぶくれ状態の衆院は仕方ないとしても参院では徹底審議をして、不明な点を追及しなければならない。

 ただ、そういうとスピードが大事、となる。私もスピードの大切さには同意するのだが、このようにごちゃ混ぜで何でもありの補正予算案をそのまま通す愚と「どっちが悪いか」を比較した場合、少し時間はかかっても予算修正をさせる必要がある、と思う。

 麻生政権が本当にスピードが大事と思っているのならば、参院で採決できない状況、つまり衆院の議決が優先される30日間をじっと待つのではなく、何らかの打開策を考えるべきだ。予算案の実行には関連する法案の成立も必要になり、こっちは参院が議決しない場合には60日後に「みなし否決」したとして、衆院で再議決できる憲法規定があるが、この規定を使えば、国会提出から3カ月弱の時間がかかる。

 麻生首相は金持ち優遇の税制改革部分を外し、なおかつ民主党が納得できない部分を外す形で早期成立を図るべきだ。

 あくまで当面の対策、恐慌に陥るのを防ぐため、という目的に限った補正予算だ、という位置づけをすることも大切だと思う。

 そんな前提を考えながら、森信氏の論文を読んでみよう。(◆は原文についていた小見出し)

 <15兆円の財政出動を伴う未曽有の追加経済対策が決定された。財源も建設国債・赤字国債の大幅な発行によってまかなわれる。今回の経済対策をめぐる一連の議論を見ると、どのような政策をとるとどのような経済効果があるのか、財源はどうすべきか、という点は全くといってよいほど議論されず、結論だけが決まったという印象を受ける。>

 議論内の政策決定だった、と。本当に国民からはそうとしか見えない。

 <経済財政諮問会議も、有識者ヒアリングを除けば、追加経済対策の議論を始めたのは、総理の指示「後」(総理の10兆円の指示が6日で、諮問会議における経済対策の議論が7日)に1回開催しただけだ。議論の内容も、使い古された公共投資の乗数効果1.5を使ってはじいた内容で、今必要とされる対策はどの分野へのどのような政策か、大量の国債追加発行が我が国の貯蓄率を低下させ、経常黒字も縮小しつつある中で金利高騰に結び付かないのかという検証など、真剣に議論を行った形跡はまったくない。>

 4月6日からのバタバタの話だ、という。

 <今回の経済対策は、政治的な思惑に基づくものだから仕方がない、という声もあるが、われわれの税金を15兆円も使うのであれば、その正当性をしっかり国民に示してほしい。>

 その通りだ。

 <私は、今回十分な議論が伝わってこない背景に、「対米追随の経済政策」と「与謝野大臣の3大臣兼務」という2つの問題があると考えている。>

 なるほど、そこには気付かなかった。

◆オールドケインジアン政策はいつか来た道?

 <3月のG7会合で米国は、GDP比2%程度の財政出動を各国に促したが、これに前向きな反応を示したのはわが国と英国だけだといわれている。GDPギャップを計算しそれを埋めるべく財政出動をするという、オールドケインジアン政策をとることに対して、欧州諸国が慎重な背景には、経済効果の検証が十分ではないことと財政赤字の拡大への懸念がある。つまり、国民の税金を無駄遣いしたくないということである。これに対し、かつて公共事業追加・減税策が大いなる無駄をもたらしたという苦い経験をし、G7の中で最も厳しい財政事情のわが国が、政策効果に対する検証もなく、「米国からの要請」を上回る財政追加政策を行った。>

 ケインズの有効需要創出政策である。ルーズベルト大統領が1929年からの世界大不況を乗り切った政策だ。そうなのだが、その後、公共事業は乗数効果が高くないのだ、という実証的な論が世界で相次ぎ、フリードマンらの市場主義経済理論が全盛となり、ケインズ政策は忘れられていた。ところが、今回の大不況ではクルーグマン氏らを筆頭に「ヘリコプターマネー」をばら撒け、という論が一世を風靡する。オバマ政権の大財政出動の理論的裏付けだった。

 ところが欧州ではこの考えに否定的だ。大体、EUではEU加盟の条件として財政の健全性を一つのメルクマールにしているほどだ。一方、世界の先進国の中で最悪の財政状況なのに日本が対米追従でケインズ政策をまたまた取り入れた、というのだ。

 <新聞は、「規模の大きさを追うな」(朝日4月1日社説)、「介護・保育の充実へ予算追加と改革を」(日経3月30日社説)に見られるように、オールドケインジアン的な公共事業の追加や減税といった需要追加策よりも、市場機能が必ずしも機能していない、医療や介護、さらには保育の分野への資源の集中や供給を阻害している役所の規制の緩和(「保育所の増設」ではない)の方がずっと効果が高いことを主張してきた。全く同感だ。>

 その通りだが、市場機能が機能していない分野というよりも(それも大切だが)、将来の成長のために絶対に必要な分野として、雇用不安をなくし消費を増やす政策(つまり、商品券をばらまいてものを買わせるのではなく、稼いだ金でちゃんとものを買えるようにする政策)と国内の農業生産振興のための政策転換は是非モノだった。

 輸出産業と一口に言うが、自動車、精密機械、IT関連という現在の輸出産業のテコ入れに終始するのでは成長産業は生まれない。農薬、毒が入っていないことが確実で安心して食べられ、そのうえ美味しい食物を生産すれば、金満家ぞろいになった中国沿岸部の富裕層は日本から大量に輸入して食べようとするだろう。マグロの養殖漁業に三重大の学者が成功したそうだが、今後も漁業資源の奪い合いがし烈になることが予想される中、養殖漁業の振興も欠かせない。林業も本気で花粉症の原因を減らそうとすれば、杉林のかわりに照葉樹林を植えるべきだし、日本の樹木で家を建てることを真剣に考えるべきだ。

 補正予算案にはこういう意味での新産業への援助の姿勢が見えない。

 <さらに言えば、「消費税の議論を通じて、国民の不安のもととなる社会保障安定財源にコミットし、国民の将来不安をなくす政策」を中期的な経済対策とすることも、決して間違ってはいないと思う。消費税収は全額年金・医療・福祉・少子化対策として国民に還元される形にすれば、消費税引き上げの経済効果は決してマイナスではない。将来不安解消の結果、過剰な貯蓄が消費に回る可能性も多いに考えられる。考えてみれば、このような見解は与謝野大臣の持論・見識であったはずだし、税制改革法の附則はこのための伏線であったはずだ。>

 与謝野氏の「堂々たる政治」(新潮新書。2008年4月)の第6章「国家は割り勘である」を読むと、主婦が家計簿をつける感覚で国家財政を考えてほしい、と読者に要望し、政治家は非現実的なバラ色の夢をばら撒いて国民を騙すべきでない、と言っている。その通りなのだ。

堂々たる政治 (新潮新書) 堂々たる政治 (新潮新書)

著者:与謝野 馨
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 <このような議論をすっ飛ばして、各省が持ち寄ったアイデアを族議員が了承し並べ立てただけの、「縦割り」経済政策からは、いい加減に脱却すべきではないか。省庁横断的な骨太の政策はどうして出てこないのだろうか。>

◆与謝野大臣の3大臣兼務で議論減る?

 <与謝野大臣は、個人的には最も尊敬する政治家の一人である。役人に使われるのではなくて、役人を使いこなせる数少ない政治家でもある。経済危機の今日、そのような優れた政治家がわが国の政策をリードすることは、きわめて幸運なことであろう。>

 私もそう思う。

 <しかし、財務、経済財政政策担当、金融と、三つの大臣を兼職していることが今回の経済政策の議論を見えなくしている要因の一つではないか。小泉内閣時代は、経済政策をめぐって様々な意見が交わされたが、最大のメリットは、議論が国民にも知らしめられ、事後的にもその検証が可能となったことだ。当時、財務省の現役だった私は、大臣室で財政諮問会議の議論に備えて、侃々諤々の議論に加わった覚えがある。諮問会議での議論の内容は議事録に掲載され、各省それぞれの考え方もわかり、それがどう収束していくのかについてもマスコミが報道するので、きわめて透明性の高い意思決定が行われてきた。今回それが見えないのは、大臣の3大臣兼務により、財政当局と、政策(要求)官庁との間の、緊張感あふれる議論のやり取りがなくなったことと関係があるのではなかろうか。異なる立場からの議論があって初めて、国民に本質が見えてくるのである。>

 なるほど、そういう面が確かにあるかもしれない。

 ただ、政策決定のシステムについていえば、橋本龍太郎政権で決め、森喜朗政権から実施された経済財政諮問会議は小泉純一郎政権で最大限利用されたものの、この機構は各省庁の権限を殺ぎ、官邸に権限を集める官邸主導型政治のための手段だった。麻生太郎首相はそういう政策手法の政治家ではないようだから、使い勝手が悪いのかもしれないし、別の構造的問題もあるし、衆院解散間際のバラマキという政治主導だから、何しろ各省から名目が立つ政策を全部集めただけという面もあるだろう。

 朝日新聞と中国の胡錦濤・国家主席は北朝鮮のミサイル発射の時に日本国民に「冷静になれ」としきりに訴えていたが、それは論点のごまかしだったと思う。北朝鮮のノドンミサイルに核弾頭が搭載されるようになったら日本は北朝鮮に脅されたとき、ものを言えない韓国のような国家になってしまう。このミサイル実験は性能アップのための実験であり、核弾頭運搬手段の精緻化を目指した実験である。被害にあうのは日本だけだ。それを「冷静に」と言って、問題を隠し、糊塗するのは国民を誤魔化しているとしか言いようがない。

 中国の国家主席はそういう言い方で日本国民を誤魔化したいだろうが、朝日新聞がなぜそのような形で国民を騙すのだろうか? 朝日新聞が日本国民の新聞ではなく、中国や北朝鮮のための新聞であるという疑念を捨てきれないところなのだ。

 話は横道に逸れたが、今回の15兆円補正予算こそ日本国民に冷静になってほしい。何にどのように使われるか、を精査し、不適当なものは除外させる、という努力をしないと、最後に借金を被るのは国民、それも子や孫の世代である。今の青年層は後期高齢者になった時、そんな子や孫の世代から捨てられるであろうことまで考えなければならない。そこまで考えて、今回の補正予算への対応を考えよう。

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2009年4月 9日 (木)

小沢氏問題:早野透氏の見解は鋭いが、結論には同意できない~4月9日朝日新聞朝刊

 朝日新聞4月9日朝刊[ザ・コラム]欄は早野透・本社コラムニストによる[ポリティカにっぽん]だった。<小沢氏の事件/「ラストエンペラー」は去る>のタイトルである。三木内閣の官房長官を務めた井出一太郎氏の短歌と思い出話と、田中角栄元首相の地元秘書を長く務めた本間幸一氏の話で構成されている。さすがに名うてのコラムニストだけあって、思考の重層性が感じられるコラムだ。

 その本間さんが「小沢一郎さんは角栄先生にそっくりになってきましたね。小沢さんはラストエンペラーになってしまわないでしょうかねえ」と語ったことが通底する基調低音となる。

 中国・清朝の最後の皇帝、愛新覚羅溥儀である。本間氏は「溥儀は、清朝皇帝から満州国皇帝になって再興を夢見たけれどだめでしたね。小沢さんは角栄王国の最後の人。民主党を率いて政権をとろうというのに、このままじゃ、にっちのさっちもいかなくなるのでは」と語った、という。

 映画「ラストエンペラー」では清朝末期、わずか3歳で皇帝に即位した溥儀が王朝の腐敗に憤り、「すべてを改革したい」と思うのだが、清朝は滅び、溥儀は日本の画策に乗って満州国に身を委ねて夢を託す。しかし、1945年、日本の敗戦で満州国は崩壊し、溥儀は毛沢東の中国の「戦犯」となり、「私は改革したかった」と弁明しても通じるわけがなく、「君は反革命そのものだ」と言われ、後に釈放された溥儀は一人の市民として生涯を閉じる。

 この溥儀の生涯に小沢氏を重ねる、というのだ。腐敗しきった自民党を改革しようとして果たせず、飛び出して、紆余曲折の末、民主党で政権交代直前まで来たものの、政治資金規正法違反で秘書が逮捕され、万事窮した、と。

 早野氏は最初は瑞々しかった角栄政治がいつか建設会社から政治資金をピンハネする利権政治に変わり、政官業のもたれあい、政権交代のない政治の金権腐敗が生まれた、という。角栄の系譜で育った小沢氏は内側から「角栄政治」を乗り越えるべく1993年、自民党を脱党し「日本改造」に乗り出し、政党を作っては壊し、壊しては作り、小選挙区などの改革メニューの幾つかは実現し、ついに民主党代表の座を得て政権にいま一歩のところまできた、と書く。

 今度の事件について早野氏は断定を避けつつ、検察批判側の声も最大限配慮しながら論を進める。そして、

 <だが、よしんば検察に疑問があるとしても、少なくともいえることは、小沢氏が多額の企業献金を受け取り続けて、小沢氏の言によれば、ゼネコンだけではない「その他の企業からも身に余る献金をいただいている」という事実である。新生中国によって溥儀は「反革命」と断罪されたのに似て、小沢氏の表は「日本改造」であっても、舞台裏は「角栄政治」だったというほかない。>

 と書く。小沢氏は今回の事件を「天命だよ」と語ったという。この言葉がどういう状況で出てきたか、知る由もないが、自分の政治生命がこれで終わるのも天命だ、というのであろうか。早野氏は続けてこう書く。

 <ここ十数年の小沢氏が、時代の牽引力であったことはまちがいない。しかし、表と裏、理念と現実の乖離には、小沢氏も苦しむのではないか。かえっていま、そこが明るみに出て、小沢氏は安堵しているのではないか。「新しい政治文化」をつくるべき政権交代の前夜、角栄王国のラストエンペラーはやはり去るしかない。>

 そして、民主党内の検察批判を批判している。

 この早野氏の論文を読んで考えた。

 小沢一郎という人を考える時、どうしても若かりし小沢氏を考え、その小沢氏が竹下派七奉行として田中角栄元首相の田中派から竹下派独立に他の六奉行と共に汗を流した残像が抜けないが、この残像を一度振り払ったほうがいいのかもしれない、ということである。「竹下派」「経世会」という集団でものを見ると、小沢氏の本質を見失うのではないか、という視点である。

 つまり、小沢氏は彼が常に言っていたように田中の親父、金丸の親父こそが理想なのであって、竹下氏とは戦友という関係でしかない。

 特に竹下登氏は佐藤栄作元首相の側近とも言うべき人物であり、佐藤政治を理想としていたのだが、それだけに、若かりし頃の造船疑獄の悪夢は生涯抜けなかっただろう。だから、竹下氏には検察権力と闘う、という発想はなかった。検察庁の力は力として尊重し、それに楯突かない限度で政治活動を行う。行政と政治は融合して国家を運営すべきだ、という喧嘩嫌いの哲学である。この哲学は佐藤栄作氏の哲学そのものだった、と思う。

 ところが、田中角栄氏はロッキード事件の受託収賄罪逮捕、起訴、一審有罪判決をものともせず、政治復権を狙って派閥の肥大化に突き進んだ。この突貫手法は金丸氏にもある程度共通するかもしれないが、一番色濃く受け継いだのが小沢氏だった。

 金丸事件で「裁判になっても争う」と法廷闘争を主張し、罰金で勘弁してもらおうと言った梶山静六氏と対立。体力、気力が弱っていた金丸氏が最終的に梶山路線を取るのだが、あの時も小沢氏の戦闘的な考えに驚いたものだった。

 今回の小沢氏の心の中は推測するしかないが、早野氏が想像するのとは違って、一審有罪判決後の田中角栄元首相と同じ気持ちなのではないか。「検察なんかに負けられるか」である。政権を取れば政治復権はできる、という見通しである。

 ただ、私は良識派の早野氏までもがこのような小沢退陣論を書き始めたことは小沢氏に大きな影響を与えるのではないか、と考えている。

 小沢氏は年長の評論家の言うことには耳を傾ける政治家である。毎日新聞の岩見隆夫氏が「近聞遠見」で「小沢辞任すべし」論を何度も展開しているのもボディーブローとして効いているだろうと思っていたのだが、小沢氏が岩見氏と同等に尊重しているであろう早野氏のこの論文は案外大きな影響を持っている、と思う。

 何度も書いているように、私は小沢氏は辞めるべきではない、と思っている。辞めれば、検察の総選挙前の恣意的捜査を容認したこととなり、今後に考えられないほどの悪影響をもたらすと考えるからだ。国民と政治家の神聖な契約である総選挙である。大統領制ではなく、議院内閣制の日本では衆院議員総選挙は首相を選ぶ選挙でもある。その選挙に影響を与える恣意的捜査を今後も続けられては、日本の政治は検察官が許容する政治家しか政権を取れないことになる。そんなファシズム社会を招来することは絶対に避けなければならない。

 だから、私はつらいだろうが、小沢氏はじっと我慢をして代表を続け、なおかつ政権交代を成し遂げる責任があると思っている。

 ただ、今の日本は角栄氏の復権の動きの時代と違って情報化社会が進み、世論調査政治が蔓延している。

 基本的に田中角栄氏は本人が逮捕、起訴され一審で有罪判決を受けたが、小沢氏は秘書の犯罪であり、本人は何ら刑事被告人になったわけではない、という大きな違いすらあやふやにされかねないワイドショー政治が蔓延っている。

 小沢氏が任期満了に限りなく近い時期まで堪えることができるのか、その前に潰えるのか、分からないが、将来に負の遺産だけは残してほしくない。それは小沢氏の責任ではなく、時宜を見なかった検察の責任なのだが。

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前田哲男氏の「騒ぎ過ぎ」論は肝心な問題から逃げている:北朝鮮のミサイル発射~4月9日東京新聞夕刊

 朝日新聞と東京新聞を中心にこのところ、「北朝鮮問題で日本は冷静さを失っていた」などの識者を多用して、北朝鮮との宥和を目指す論調が目立ってきた。先のミサイル発射が結果的に無事日本列島を飛び越え、太平洋に着水したことから、「もともと日本への脅威などなかったのに、政府は騒ぎすぎた。その尻馬に乗って騒いだメディアはもっとけしからん」という調子である。今まで封印されてきた親北朝鮮の進歩派文化人がここぞとばかりに発言している。

 だが、本当にそうなのだろうか? 彼らの論調に共通する特徴がある。日本を狙っている数百発のノドン・ミサイルに小型核兵器搭載が可能になるかもしれない、という段階に北朝鮮の技術レベルが進み、一回一回のミサイル実験、核実験で得たデータで北朝鮮は確実に技術レベルを上げ、日本の安全保障を損なう方向に進んでいる、という事実を語らないのである。

 ノドン・ミサイルに核弾頭が搭載され、そのノドンが例えば10基いつも日本列島を狙っている状況を、彼らは想像できないのだろうか?

 いつもから念仏のように「対話をしろ」と言うが、国力特に軍事力という最大の後ろ盾を奪われている日本外交において北朝鮮との対話で核兵器をなくすことができるのだろうか? それは無理だと思う。彼らもそこは実現可能とは言わない。「長い時間がかかるプロセスだ」、「6カ国協議の枠組みを大切にするしかない」と言うだけである。

 ただ、彼らの発想そのものがおかしい、という事実には気付いていない。

 どういう点がおかしいか。つまり、日本という国がなくなってもいい、と考えているとしか思えないのだ。

 北朝鮮は金正日体制崩壊を防ぐために核開発をしている、という共通認識は持ってもいいだろう。つまり、国家安全保障論である。北朝鮮という国家のためだったらば、何でもする。そういう気違い国家が隣に存在する際に、どのように身を守るべきか?

 東京新聞4月9日夕刊文化面には軍事評論家の前田哲男氏の<対話チャンネル確保を/北朝鮮「ミサイル」騒動/恐怖心煽った情報伝達>の見出しで寄稿が載っていた。

 前田氏はこうした人々の代表のような人である。

 その論は、

①打ち上げられたのは人工衛星だった。ミサイルであると言うのならば、地球の重力を脱して宇宙に飛び出してしまう秒速7.9㌔を超えないように設計していたと(日本側が)証明する必要がある

②ミサイル技術の進歩と見れば確かに脅威だが、今回の「ミサイル」問題がPAC3を緊急配備するほどの差し迫った軍事的脅威であったとする理由にはならない

③ロケット打ち上げとミサイル打ち上げはもともと技術の両義性がある

④日本人の北朝鮮に対するイメージは反感と憎悪に染め上げられ「不審船」「拉致」「テポドン」の国であり、まったく信頼できない国だから、今回の衛星打ち上げにパニックともいえるような過剰反応を示した

⑤日本政府は民族的敵愾心とでもいえる北朝鮮への反感に応えるように破壊措置命令を発令してミサイル迎撃に備え、マスコミも自治体も政府が始めた「恐怖の伝言ゲーム」に加担した

⑥今の日朝間に最悪の事態を回避する対話のチャンネルも完全に断絶してしまったことが問題。チャンネルは確保されるべきだ

⑦今回の騒動は軍備拡張、軍事予算の増加をもくろみ、国民の北朝鮮に対する不信感を利用し、煽った情報操作の結果だった疑念が沸き起こる

 ――というものだった。

 また、

 <1962年のキューバ危機でケネディとフルシチョフは、核戦争の勃発という恐怖の深淵をのぞき込んだ。だからこそ、事件を教訓とし、国家を破局に向かわせないために両国首脳が直接対話するためのホットラインを設けたのだ。>

 と書いている.

 これは牽強付会もはなはだしい

 キューバ危機の真実は冷戦中にフルシチョフがケネディの宥和策の意図を読み違えて、キューバに核ミサイルを運んでも米国政府は容認するだろう、と勘違いしたことにある。ケネディ大統領は米国本土が核攻撃を受ける危険を断固排除した。世界が核戦争で破滅する危険と比較考量しても米国人の安全を守ったのだ。これがキューバ危機の真実である。

 都合のいい部分だけ引用するのではない。だいたい、進歩的文化人の論調はこのようなものなのだ。だから、彼らの「世界」(岩波書店が発行する月刊誌)などの論文を読む時には、心して、騙されないように丁寧に読まなければならない。

 キューバ危機から汲み取れる教訓はただ一つ。座して死を待つなかれ、である。目には目を、歯に歯を、である。

 黒井文太郎氏が最近、HPで書いているように、北朝鮮のような国家が核ミサイルのボタンを自由に操れるようになったら、日本は無理難題を断れなくなる。「東京に核ノドンを撃ちこむぞ」の脅しが効くからである。極端な話、毎年10兆円ずつのお金をよこせ、と言われて拒否できなくなったら、日本は北朝鮮の植民地である。

 前田氏らはそうなってもいい、と思っているのかどうか、本音を聞かせてほしいのだが、この話題では論争を避けて口をつぐむ。そして、在日の子供がチマチョゴリを切られた、とか、北朝鮮の学生が差別を受けた、とか、そういう話題の時だけ出てきて得意顔でしゃべる。

 社民党の国会議員もそうなのだが、彼らは日本人の安全はどうでもよく、在日の安全だけ守ればいい、と考えているのだろうか?

 対話のチャンネルを遮断しているのは北朝鮮である。この議論については「そうではない」と反論してくるようだが、国民を納得させうる反論を期待する。何といっても日本の脅威である北朝鮮の核兵器をなくすまで日本は国際的に孤立しようが何しようが、国民の安全のためにやらなければならないことは粛々とやらなければならないのだ。

 ただ、国際的に孤立するのは得策ではないし、北朝鮮ごとき存在のために日本が孤立という状況に追い込まれることはできれば避けたい。だから、どうするか、なのだが、基本はあくまで日本人の安全だ、とい原点を忘れない議論が求められると思う。

 「騒ぎ過ぎ」論は東京新聞と朝日新聞が競い合うように掲載しているが、米国人やヨーロッパの人々がいかに「騒ぎ過ぎ」と言っても、日本の安全保障では大きな、最大な問題なのだということを日本政府とマスメディアは根気よ説き続けるべきだと思う。

 キューバ危機の際のケネディ大統領の決断には当時、相当の反対論があった。米ソ核対立で世界を破滅させるな、という当然の反対論である。しかし、ケネディ大統領は正しいと信じたことをやりぬき、フルシチョフはケネディの本気度を見抜いてミサイルをキューバに運ぶことを諦めた。

 この教訓を生かそう。

 日本は本気で北朝鮮の核兵器を撤去したい。撤去しなければ、憲法を改正してでも日本の脅威である北朝鮮をやっつける、という本気が国際社会に伝わらなければ、米国はいつまでも「核拡散」防止だけに邁進するだろうし、効果のない6カ国協議で日本の手足を縛ろうとするだろう。

 日本に本格的な反米の動きが出る前に政府・国会はまず集団的自衛権行使の合憲という憲法解釈に踏み切り、その後、憲法で禁止されていない核武装の議論を本格的に行う準備をすべきだと思う。

 国際情勢は今、日本にとって未曾有の地点に来ている。米国の「核の傘」はすでに破綻している、ということを日本国民に分かりやすく説明しなければならない時期は近い、ということを政府は覚悟すべきだと思う。

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2009年4月 8日 (水)

林香里・東大准教授の「テポドン」と「世論」の論考は面白かった:朝日新聞の世論誘導が問題だ~4月8日の「あらたにす」、4月11日朝日新聞朝刊から

 朝日新聞、日経新聞、読売新聞がネットの共同サイトとして開設している「あらたにす」で連日、いろいろな識者が基本的に3紙を読んで、エッセーを書くという趣向の[新聞案内人]コーナーがある。

 以前も取り上げさせていただいた林香里・東大大学院情報学環准教授が4月8日に<「テポドン」報道はどんな「世論」を形成したか>がアップされていた。林さんは非常に常識的な方だと思っている。その方の「ミサイル報道批判」は面白そうだ。(◆で入っている小見出しは原文についていたものです)

 林氏はまず、

 <北朝鮮の「テポドン2」は結局、日本のはるか上空を通り過ぎて、危害は加えなかった。けれども、日本の言論空間には大きな“爆弾”を落としていったのではないか。>

 と書き出している。

 <ここ数日、日本のマスメディアは北朝鮮のミサイル情報一色に塗りつぶされた印象が私には残っている。つまり、一連のテポドン報道について、仮にもメディア各社に「方針」というようなものがあったとすれば、それは突出した「量」を紙面に許容するという、この点ではなかっただろうか。>

 内容ではなく、物量勝負だった、と。これは案外重要な視点だと思う。限界点を超えると量が質に転化する、と言いたいわけではない。情報の洪水の怖さを思うからだ。

◆情報の「速さ」「量」だけでいいのか

 <確かに、こうした緊急事態においては、一次情報を国民に速報するということも、重要な報道機関の使命である。その意味では「量」的な肥大も、一種の使命感に裏打ちされたもので、仕方のないことかもしれない。記者たちは全力投球の取材をしながら、全体的に「バランス」のとれた報道とか、「多様な意見」を反映させた報道とかを、実現させているつもりだったのだろう。>

 新聞社側の論理を推測する。

 <しかし、「世間の注目」を理由に、片っ端から取材した情報を掲載すれば、結局は受け手(読者、視聴者)の側の判断力は麻痺する。しかも、結果的に「これはタダゴトではない」という漠然とした印象づくりに加担することになる。緊急時になると、むしろプロ魂が冷静な世論形成の妨げになることも、記者たちは少し心にとめておいたほうがいいのではないだろうか。>

 なるほど、そこは言えるかもしれない。

 <そんな「集中豪雨報道」の真っ最中の4月3日午後から5日夜にかけて読売新聞は「日本の政府は北朝鮮への制裁を強めるべきだと思いますか、その必要はないと思いますか」、そして「北朝鮮がミサイルの開発を進めていることに、不安を感じますか」という質問項目を含む「世論調査」を実施した(読売4月6日1面と4面)。>

◆“日本核武装論”まで飛び出した…

 <読売はこの「世論調査結果」を1面見出しに加えていた。そこでは「不安を感じる」が88%にのぼり、「日本政府は制裁を強めるべき」と答えた人も78%に上ることを挙げ、こうした結果に対して「世論の大勢は、日本政府が検討している対北朝鮮の独自制裁強化を支持していることがわかった」という「結論」を出している。>

 <さて、これは「世論」と言えるのだろうか。この結論付けは妥当だろうか。私は、それに懐疑的な側にいるのだが、こうした世論調査の是非については、また稿を改めて述べるとしよう。>

 この世論誘導的な世論調査は「小沢一郎氏は民主党代表を続けるべきですか、辞任すべきですか」という世論調査の質問にも言えるだろう。実施した新聞社は「客観的な質問をした。何も問題はないはずだ」と言うだろうが、この座標軸自体がおかしくなっている、ということ、つまり、質問の仕方がおかしいということには口をつぐむ。

 <今回のテポドン騒動と、その報道はまだまだ尾を引きそうだ。きょう(7日)は、北朝鮮が発射時の映像を公開した。また、自民党の7日の役員連絡会では、坂本剛二組織本部長が北朝鮮のミサイル発射に対して、“日本も核保有すべきだ”と述べたというニュースも入ってきた。これからもまだまだ新しい情報が出てくるだろう。今後の行方を見守りたい。>

 もっと読みたいところで終わっていた。

 林さんは読売新聞を例示として取り上げていたが、各紙似たような紙面づくりをした中で、特徴的だったのは朝日新聞だったのではないか、と思っている。

 ミサイル発射を報じた月曜日の朝刊の社会面の対向面(対社面)の凸版は「冷静」だったと思う。そして、軍事評論家の前田哲男氏とアメリカ、韓国の新聞の在日特派員が、日本人は免疫がないから騒ぎ過ぎだ、もっと冷静になれ、などと言っている談話を並べていた。林さんにお聞きしたいのは、このような強い意志をもって「国民を冷静な方向に導こう」として作った紙面をどう見るか、である。

 私は逆にそういう押し付けを見えないところで考えて、紙面にバイアスをかけることの方が怖い、と思っている。

 一般読者は朝日新聞の当時の編集局内の論議を知るはずもないから、すべてが起きたこと、あるがままの事実だと思って読んでいると、実はそれが編集局の責任者によって見えない手でセレクトされた事実の集積だった、という結果になる。

 つまり、今の世の中では「民主主義」「(基本的)人権」「国際的友好」などが無条件でプラスの価値を持ち、「国益」とか「公共」という言葉は何か胡散臭いと思われている、と思う。だから、北朝鮮と喧嘩するのではなく、話せばわかるのだから話し合おう、憲法9条もあるのだから武力で解決とか、それに結び付きかねないことには絶対に反対、という言葉には魔力があり、「それでは北朝鮮がノドンに核弾頭を搭載して日本を狙ったらどうする?」という質問には、「そんなことは起きっこないよ。あの貧乏な国に本当に戦争ができると思ってるの?」と答えれば、それが説得力を持つ。

 朝日新聞と毎日新聞は日中戦争開始以前から大本営発表をいかに大げさに報道するか、で競争してきた。なぜなら、それが時代の空気だったからだ。強い日本、中国などものともせず、米国をも恐れず、という時代の空気を敏感に受け止めて朝日新聞はそう報道してきた。

 今の「時代の空気」はまだまだ民主・人権・平等である。朝日新聞はこの空気に忠実に報道している、とも言えるのではないだろうか。林氏が特筆してる読売新聞の今回の一連の報道は「真実は何だったか」に迫ろうとするジャーナリスト精神を感じる記事が多かった、と思っている。

 だから、朝日新聞や毎日新聞を熟読しても分からなかった日本政府の2度の誤発表とか、防衛省がミサイルの第2段の落下地点をめぐってあたふたして、誤発表に続く失態を見せたことも、読売新聞を読めば分かった。

 逆に朝日新聞は国会決議問題にしても、何を気遣っているのか知らないが、社民党や共産党が棄権したり反対した理由を書かないなど、相当に手抜きの新聞を作っている。それでも、一般読者に「ミサイル情報の洪水」と見られたのならば、朝日新聞がいかにいいかげんな情報ばかり紙面化していたのかの証左になるのではないか。少なくとも、当日、識者の談話もなく、客観的に事態を見ようとする読者にはあまり役に立たない新聞だった、と思う。

 林氏は自民党内の日本核武装論などを憂えているのかもしれないが、今憂えるべきは北朝鮮の核武装、それも中距離ミサイルに小型化した核弾頭を搭載して日本を狙うような、そんな国を隣人に持った日本が軍隊も先制攻撃の軍備も持っていないことではなかろうか。日本は自国を守ることができない「かたわ」の国である、だから、危険が近づいたらカラスが群れで鳴くように危険を大声で触れまわるしかできないのではないかだろうか? 日本はそんな国である。みっともなくとも、国際的に騒ぎ過ぎだ、と言われても騒ぐしかできない哀れな国なのだ、ということを自覚しなければならないのではないか、と思っている。

 自民党の中堅幹部が言うのはいいが、実際に小沢一郎氏レベルが自主防衛、核保持を考えると、今回のような理不尽な目にあう。東京地検の裏に直で米国がいる、とは思わないが、米国の影はいまだに濃い。日本は核など持てっこないし、自主防衛のできる軍隊だって米国が許さないだろう。

 何しろ米国の最大の潜在的脅威は日本なのだから。

(追記)

 朝日新聞は4月11日朝刊オピニオン面の半分をつぶして久間章生・元防衛庁長官、防衛相のインタビューを載せたが、大見出しは<北の「ミサイル」、日本は騒ぎすぎた>だった。<どんなに考えても今、北朝鮮が日本めがけて撃つはずはない>のサブタイトルがついており、政府もマスコミも騒ぎすぎてすいません、のイメージを読者に植え付けたい魂胆がまざまざだった。

 <北朝鮮が日本めがけて撃つ>から対応したのではなく、破片が落ちてくるかもしれないから対応したのだが、そういう真実は見出しから消え去ってしまっている。長い文章を読む人がどれだけいるだろうか? 見出しだけ読んだ人は「政府もマスメディアも騒ぎ過ぎだったのか」と、ものすごく誤解しただろう。

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星野智幸氏の<なぜ理性は働かなかったのか>という日本社会への批判に反論したい~4月8日東京新聞夕刊寄稿

 4月8日東京新聞夕刊文化面に作家の星野智幸さんが<なぜ理性は働かなかったのか?/北朝鮮「ミサイル」発射 日本社会の反応>というタイトルで長文を寄稿していた。PAC3が関東や東北に配備されたこと、振り込め詐欺のことを考えていた、という書き出しで、詐欺をする奴が一番悪いのは当然だが、どれほど用心していても詐欺にひっかかってしまう原因について、「いかに別人になりすますか」の技術によって騙されるのだろう、と思っていたのだが、2カ月ほど前のNHKの情報番組をみて、そうではなく、一番のポイントは脳だ、と気付いたという。

 脳の話の部分から書き写しておこう。

 <脳はパニックを起こすと、自動的に理性の働きを止める性質があるという。突然目の前に木が倒れてきたりしたとき、これは危険だろうか安全だろうか、などと理性を働かせて考えていたら死んでしまうので、理性を止めて反射的に逃げることを優先するのである。>

 <振り込め詐欺の場合に、理性が抑え込まれる、すなわち疑ったり考えたりすることができなくなると、どうなるか。ただ相手の言いなりになるか、感情を爆発させるだけになるか、要するに反射的な行動しか取れなくなる。>

 <つまり、相手をだましたかったら、おかしいかどうかを判断する能力を奪えばよい。それゆえ、命にかかわる事故を起こして今すぐ治療費が必要だ、などと唐突に告げて相手をパニックに陥らせ、状況判断ができないうちに言いなりにさせるのだ。>

 これがNHKの情報番組を見て、星野氏が獲得した知識である。そして、いよいよ、ミサイル問題に場面転換する。その場面転換の接着剤が次の文章だ。

 <私はミサイル騒動のニュースに接しながら、これではまるでオレオレ詐欺に引っかかっているようなものではないか、と思ったわけである。>

 「おれおれ」、「母さんおれだよ、今ひとをはねちゃって、……」というあの「おれおれ」詐欺である。

 <詐欺をする人間が悪い。これは無条件の大前提である。だから、何を措いてもまず、ミサイルを発射する者が悪い。これを告発し、糾弾するのは当然である。>

 とひとまず、星野氏のスタンスを明確にするところから始まる。つまり、星野氏は社民党支持者でも共産党支持者でもない、という表明なのかもしれない。

 <その一方で、詐欺らしきことが行われようとしていると感づいたら、自分がパニックに陥らず、冷静に見極めようと努めることが肝心だろう。それがこけおどしの詐欺ならば、詐欺だと見抜いているぞ、だから成果はないぞ、というメッセージを相手に伝えることに腐心すべきだ。>

 <ところが今回、日本社会が取った行動は、進んでパニックに陥るという選択だった。こけおどしのミサイルに、「日本を狙いやがった」と激昂し、自ら理性の働きをストップさせ、ただただ感情を爆発させた。4日の土曜日、ミサイルが発射されていないにもかかわらず、誤探知して「発射」と発表したのも、理性が押さえ込まれていたがゆえの混乱と私の目には映った。>

 なるほど、作家の目にはそう映ったのですか。作家という人種は非常に鋭いと思う。世の中の風の向きも皮膚感覚で分かるだろうし、そのことの善悪も理論ではなく皮膚感覚で直観として体感するのだと思う。

 だから、星野氏のこの指摘を決して馬鹿にしてはいけないし、日本社会の前のめり症候群についての適切な直言だと受け取るべきだと思う。

 ただ、星野氏が誤解しているところは指摘して、できれば、認識を変えていただきたいと思っている。他でもない、北朝鮮のミサイルを「こけおどし」と見くびる態度である。

 日本人の中には朝鮮半島の人々にそんな高度なことはできっこない、という心理を持っている人が少なくない。友人などと話していて、星野氏のような「あの貧乏な国が戦争などできっこないし、ミサイルだってビデオを合成しただけで、本当に打ち上げたのかどうか」などとのたまう人がいるのだ。

 だが、その認識は間違いだ、と言いたい。

 日本人が「平和ボケ」しているせいで、国際政治の中での軍事面の競争、核兵器のテロリストへの流出の危険、ミサイル流通の裏ルートなどについて正確な情報を持っていない人が多く、それら脅威への対応にしても、55年体制当時の安保・憲法神学論争以来進歩していない人々が想像以上に多いのだ、と思う。

 しかし、国際社会は日本人のそんなお人好しの楽観論とは逆に不安定化している。特に冷戦崩壊後は瓶の蓋が取れたかのように、様々な反政府勢力やテロリストグループ、独裁国家などが高度な兵器を買いあさり、危険な集団を形成しているし、スーダンやジンバブエのような国々では日本人が想像もできないような事態が進行。その独裁者に武器や食料を売って商売しているのが中国であり、ヨーロッパの国々なのだ。

 冷戦という平和が終わった途端に、こういう世界が出現してきたが、日本ではいまだに冷戦崩壊の真の意味合いが理解されていないから、こういう世界情勢を読もうという気も起こらないだろう。

 北朝鮮のミサイルがなぜ「こけおどし」ではないのか? まずテポドンから説明しよう。北朝鮮が米国本土に届く長距離弾道弾を開発しているのは米国に核弾頭を運べる運搬手段を開発しているのである。そうすれば、今までの米国の行動様式を勉強すればすぐ分かるように、米国は北朝鮮の核保有を暗に認め、北朝鮮をインド、パキスタン並みに扱うだろう。米国の本土防衛への神経質なくらいの脅威分析はものすごいものがある。日本だって、というか、日本は潜在的脅威国のままである。だから、日本には完全な自己完結型の軍隊は持たせない。核兵器は持たせない。あくまで米国が日本の首根っこを押さえているのだ。

 米国が北朝鮮とそのような取引をして、北朝鮮の核保有を認める可能性は十分ある。国が貧乏かどうか、人民が飢えて死んでいるかどうか、などは冷厳な国際政治の中では二の次、三の次である。金正日総書記であろうが、その後継者だろうが、米国は自国本土を核攻撃できる能力を持った国とそうでない国とで扱いを変える。

 だから、インド、中国との対応が前とガラッと変わったのだ。

 そうなると、日本はどうなるか? 基本的に米国の核の傘がなくなる。つまり、北朝鮮は日本を攻撃するが、米国に手を出させない、「手を出せば米本土を攻撃するぞ」「北朝鮮を爆撃すれば、米本土を攻撃するぞ」と脅せばいい。米国は手も足も出なくなる。

 だから、長距離弾道ミサイルの開発は怖いのである。

 ただ、黒井文太郎氏が書いているように、日本にとっての最大の脅威は日本に照準を合わせている約300基の中距離弾道ミサイル「ノドン」に小型核弾頭が積まれる日である。

 すでに、搭載可能になった、という情報が流れており、その根拠の一つがパキスタンに提供したノドンミサイル(パキスタン名はガウリ)に核弾頭を積むことができた、という事実である。ただ、これは黒井氏が言っているように、パキスタンの核はウラン濃縮の核で、北朝鮮の核はプルトニウムの核で、プルトニウムの起爆装置はその精密度ではものすごいレベルが要求される、というのだ。だから、余程のことがない限り、北朝鮮はまだノドン搭載の核弾頭を開発していないだろう、と見ている。

 ただ、これも見てきたわけではないから分からない。独裁軍事国家を隣に持つ宿命のようなものだが、いつも非常に緊張した状態で過ごさざるを得なくなっているのだ。

 今回のテポドン2号改良型の発射自体、日本を狙ったわけでもないのに、という当然の見方はあってしかるべきだと思う。その人々には、この七面倒くさい論を一々説明しないと分かってもらえない。説明しても分かろうとしない社民党のような組織もあるが。

 星野氏は日本は今まで何度も北朝鮮のこけおどしに乗っかったことがあり、もはやそんなこけおどしに引っかかるような初心ではあるまい、と書き、「では、どうして日本だけが突出して過剰反応したのか」と問い、それは日本政府がそのように導いたのだ、と言う。

 日本政府が世論誘導した、という論を否定するものではない。きっと猛烈に世論誘導したのだ、と思う。しかし、星野氏が決定的に間違えているのは、「なぜ日本だけ?」という問いの中に「欧米並みに冷静でもいいではないか」という答えを内包しているところだと思う。それは間違いだ。

 なぜか、と言うと、上記の理由で北朝鮮のミサイル実験(つまり実験すればミサイルの性能は良くなる)や核実験(核弾頭の小型化に挑戦できる)で脅威を感じるのは日本だけだからだ。韓国はどうか、と聞かれるかもしれないが、北朝鮮は祖国統一戦争で韓国に攻め込みはするが、韓国に原爆は落とさない、と北朝鮮の人々も韓国の人々も思っているから、脅威が全くレベルが違うのだ。日本には原爆を落とす可能性がある。その時には、今まで便利に使ってきた朝鮮総連の人々が何人死のうがお構いなしだ。

 韓国は金大中、盧武鉉両政権が金正日の家来のように振る舞った。なぜか? ソウルが火の海になってはいけないからだ。韓国の安全保障問題の最大のネックは38度線に展開された多弾装ランチャー砲である。これがある以上、韓国は北朝鮮の無理難題の要求に応じざるをえなくなっているのだ。

 日本を射程にしたノドンに核弾頭が積まれれば、どこかの都市に原爆が落ちる恐怖と毎日戦わなければならなくなる。つまり、日本が「韓国化」するのだ。

 そうなれば、日本は独自外交も出来ず、日米同盟どころではなく、北朝鮮の植民地的な国になってしまう。

 星野氏は最後に、

 <パニックに陥り感情を爆発させていたら、誰が本当に味方で、誰が詐欺師なのか、その判断もつかなくなる。われわれ日本社会の住人は、あまりにも安易にパニックや感情の爆発に身を委ねる癖がついてはいないだろうか。>

 と結んでいた。パニックで敵味方を間違えてしまう、という。そういうことなのか? 敵は北朝鮮ではないのか? 中国はまだ敵ではないと思うのだが?

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民主党内に「社民党と連立組めぬ」論浮上:当然の話だ~4月8日読売新聞朝夕刊

 読売新聞4月8日朝刊政治面は大トップで<社民棄権・民主党内に強い批判/北決議割れる野党>の見出しで、社民党の外交面での不穏な対応に連立政権を思い描いていた民主党内から疑問の声が出てきたことを報じていた。穴井雄治記者の解説<不可解な対応>も読ませた。

 こういう記事を朝日新聞は書けない。いや、書かないことに決めているのではないか、という疑いを捨てきれない。

 国家の基本方針で反対側を向いている政党と連立政権を組んだのは細川護煕政権と村山富市政権、それを引き継いだ橋本龍太郎政権だが、橋本政権では事実上、社会党は離れており、異常な事態はそれ以降は起きていない。今後、民主党中心の政権ができる可能性が半々である以上、この問題は民主党内で真剣に考え、連立の対象から社民党を外すことを真剣に検討してほしい。

 しかし、さすが読売新聞、という記事だった。

 読売新聞の記事を読んでみよう。

 <北朝鮮が「人工衛星」だと主張して弾道ミサイルを発射したことを非難する国会決議をめぐり、野党内で対応が割れた。7日の衆院本会議で、民主、国民新両党は賛成したが、社民党は採決を棄権、共産党は反対した。民主党の小沢代表は、国民新党と共に、社民党も次期衆院選で政権交代を実現した場合の連立政権のパートナーと位置づけているが、今回の国会決議への対応で食い違いが出たことで、民主党内からは社民党との連立を不安視する声が上がった。>

 が前文。

 <社民党は3月31日に北朝鮮へ自制を求める国会決議を衆参両院で採択した段階で、ミサイルが発射された場合の国会決議について①「飛翔体」がミサイルか人工衛星か断定できるか②明白な国連安保理決議違反と言えるかどうか③制裁強化が北朝鮮の核問題をめぐる6か国協議に影響を与えないか――などを考慮して対応を決めることを全議員が出席する党国会対策委員会で確認していた。>

 社民党の取材もバッチリやっている。

 <6日の衆院議院運営委員会理事会で与党案が提示されたのを受け、社民党は民主、国民新両党と、ミサイルを「飛翔体」と言い換えるなど与党案を弱める「3党案」をまとめた。>

 <社民党は7日朝の国対委員会で、与党が3党案に譲歩しない場合は、決議案の採決を棄権する方針を確認した。保坂展人副幹事長によると、反対としなかったのは「北朝鮮に何らかの抗議の意思を示す必要がある」と判断したためだ。>

 何かおかしくないか?

 <しかし、結局、7日午前の調整で与党は譲歩せず、民主、国民新両党は賛成に回り、社民党は棄権した。>

 <こうした社民党の対応について、民主党からは「連立を組んでも大丈夫かという声がまた強くなる。早く手を切った方がいい」(保守系)との声が上がった。旧社会党議員から「いずれは合併した方がいいという考え方だったが、考え直さないといけない」との厳しい意見も出ている。>

 <一方、共産党は7日朝の党国会対策委員会で①発射されたものがミサイルだと断定すべきでない②ミサイルが発射されたとの断定を前提に、国連安全保障理事会の決議違反と断定すべきでない――などの考えをもとに、決議案への賛否を判断することを決めた。その結果、与党案は受け入れられないとして、反対した。>

 共産党よ、お前もか、である。

 <衆院決議に賛成した国民新党は、参院では、自民、民主両党主導の文言調整に反発し、棄権する意向だ。>

 ここまでが本文で、この後に穴井記者の解説がある。

 <国民の安全を最優先に考えるべき時、両党の対応は不可解と言わざるを得ない。>
 <日本は米国と共に国連安全保障理事会の場で、北朝鮮への非難を強める新決議案の採択を各国に呼び掛けている。それにもかかわらず、国内で足並みが乱れては、国際社会の分断を狙う北朝鮮に誤ったメッセージを送りかねない。>

 <両党とも、北朝鮮に対し、抗議や遺憾の意を示してはいる。しかし、国連安保理決議違反と断定できるかどうかに加え、日本独自の制裁強化についても「外交的な解決の障害になる」(共産党)などと主張し、与党や民主党と折り合わなかった。>

 <中国やロシアにはこうした考え方もあるだろう。しかし、北朝鮮の脅威に直面する日本は、国民の安全を守るため、国際社会を説得する立場のはずだ。>

 <とりわけ、民主党と共に政権交代を目指す社民党が棄権したのは理解できない。国家の基本をなす安全保障を巡って今回のような対応しか出来ないのでは、国民の信頼感は得られない。>

 という記事である。

 議会制民主主義をどう考えるか、野党の役割をどう考えるか、だろう、と思う。55年体制つまり冷戦期のような「全会一致の国会決議」は今や無理になったのではないか、と思った。共産党は他の政党との差別化を図るためにも、異論を言い続けるだろう。永遠に政権政党に入らない野党の宿命でもある。

 だが、社民党は話が違う。村山富市氏は社民党を代表して首相となり、党の基本方針を180度変えた。それが党勢を殺いだ、という党内の批判が強いのは承知しているのだが、だからといって外交政策で日本としてまとまるべき時に異論を唱える政党になってしまった、というのは悲しい。

 というか、馬脚をあらわしただけなのかもしれないが、そうなると、民主党が本気で考えなければならない。

 党の基本政策の部分で金正日体制の北朝鮮と仲良くやっていきたい、というテーゼを持っている政党と保守政党とは一緒の政権はできないからだ。

 今後、北朝鮮は再度の核実験を強行しようとするだろう。その際、軍隊を持たずに、北朝鮮からあなどられている日本はどういう手段で対抗しようというのだろうか?

 つまり、社民党の議員たちは日本国民の安全よりも憲法9条遵守を大切にし、朝鮮人との友好関係を国内の安全以上に大切にする考えを持っていることがはっきりしたのだ。

 読売新聞4月8日夕刊1面<参院も北非難決議/共産反対、社民棄権>は参院でも与党が文言修正に応じず、衆院と同じ結果になった、と報じていた。

 社民党の突出を何とか隠したい朝日新聞は総合面ベタ記事<発射に抗議 参院も決議>の見出しで、文言修正したにもかかわらず、社民、共産両党の頑なな態度は変わらなかったことだけは本文で触れていた。

 この社民党の「金正日万歳(キムジョンイルマンせー)路線は国民に広く知らせ、安全保障問題での重大な国民への裏切りとして大々的に訴えていかねばならないだろう。

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天皇、皇后両陛下の結婚50年記者会見(4月8日)~産経新聞ネット版詳報と産経4月24日曽野綾子氏コラムから

 金婚式を前に天皇、皇后両陛下が4月8日、皇居・宮殿で記者会見し、結婚50年の心境をお話になった。産経新聞は4月10日、ネット版に記者会見全文をアップしていたので、詳しく読んでみた。

 4月24日産経新聞1面コラム[小さな親切大きなお世話]で作家の曽野綾子さんが<皇后陛下 卓抜な表現力>がこの記者会見の感想を書いていたが、本当に美智子皇后のウイットに富んだやりとりなど、このまま本にしてもいいような内容だった、と思う。

 産経新聞ウェブ版で会見を読んでみよう。

◆厳しい経済情勢、祝って頂くこと心苦しくも……

 <《問1》両陛下にお尋ねいたします。ご成婚の日から50年の月日が流れ、高度成長期からバブル崩壊、いくつもの自然災害や景気悪化など、世相、人の価値観も大きく変わる中、両陛下も皇室に新しい風を吹き込まれてきました。皇太子同妃両殿下として、天皇、皇后両陛下として夫婦二人三脚で歩んできたこの50年を振り返り、お二人で築き上げてきた時代にふさわしい新たな皇室のありよう、一方で守ってこられた皇室の伝統についてお聞かせいただくとともに、それを次世代にどう引き継いでいかれるのかもお聞かせください。>

 <《天皇陛下》私どもの結婚50年を迎える日も近づき、多くの人々からお祝いの気持ちを示されていることを、誠にうれしく、深く感謝しています。ただ、国民生活に大きく影響を与えている厳しい経済情勢の最中のことであり、祝っていただくことを心苦しくも感じています。>

 と天皇陛下は必ず、今の世の中の、それも恵まれない人々への配慮を口にする。どうも宮内庁の役人の言葉ではなく、ご自分の言葉でしゃべっているようなのだ。

 <顧みますと私どもの結婚したころは、日本が多大な戦禍を受け、310万人の命が失われた先の戦争から日本国憲法のもと、自由と平和を大切にする国として立ち上がり、国際連合に加盟し、産業を発展させて、国民生活が向上し始めた時期でありました。>

 「先の戦争」には必ず言及される。

 <その後の日本はさらなる産業の発展に伴って豊かになりましたが、一方、公害が深刻化し、人々の健康に重大な影響を与えるようになりました。また、都市化や海、川の汚染により、古くから人々に親しまれてきた自然は人々の生活から離れた存在となりました。>

 「故郷喪失」への天皇陛下の感慨が伝わってくる。

 <結婚後に起こったことで、日本にとって極めて重要な出来事としては、昭和43年(1968年)の小笠原村の復帰と、昭和47年(1972年)の沖縄県の復帰があげられます。両地域とも、先の厳しい戦争で日米双方で多数の人々が亡くなり、特に沖縄県では多数の島民が戦争に巻き込まれて亡くなりました。返す返すも残念なことでした。>

 小笠原諸島と沖縄復帰は天皇にとっても「戦争」が終わったことを実感させるものだったのだろう。

 <一方、国外では平成になってからですが、ソビエト連邦が崩壊し、より透明な平和な世界ができるとの期待が持たれましたが、その後、紛争が世界の各地に起こり、現在もなお多くの犠牲者が生じています。>

 冷戦崩壊を「平和の前進」と喜んだ当時の学者、政治家、文化人たちの思慮のなさをやんわりと皮肉っているのだろうか?

 <今日、日本では人々の努力によって都市などの環境は著しく改善し、また、自然環境もコウノトリやトキを放鳥することができるほど改善されてきましたが、各地で高齢化が進み、厳しい状況になっています。ますます人々が協力し合って、社会を支えていくことが重要になってきています。>

 「協力」がキーワードである。

 <私どもはこのように変化してきた日本の姿とともに過ごしてきました。さまざまなことが起こった50年であったことを改めて感じます。>

 <皇后は結婚以来、常に私の立場と務めを重んじ、また、私生活においては昭和天皇をはじめ私の家族を大切にしつつ、私に寄り添ってきてくれたことをうれしく思っています。>

 <不幸にも若くして未亡人となった私の姉の鷹司神宮祭主のことは、いつも心にかけ、那須、軽井沢、浜名湖でよく夏を一緒に過ごしました。姉は自分の気持ちを外に表さない性格でしたが、ある時、昭和天皇から、私どもと大変楽しく過ごしたと聞いたがどのように過ごしたのか、というお話があったことがありました。皇后はきょうだいの中で姉だけを持たず、私との結婚で姉ができたことがうれしく、誘ってくれていたようなのですが、この時の昭和天皇が大変喜ばれた様子が今でも思いだされます。>

 美智子皇后の優しさはそのような形でも人をなごませていたのだなぁ、と初めて知った。

 <私ども二人は育った環境も違い、特に私は家庭生活をしてこなかったので、皇后の立場を十分に思いやることができず、加えて、大勢の職員とともにする生活には、戸惑うことも多かったと思います。しかし、何事も静かに受け入れ、私が皇太子として、また、天皇として務めを果たしていく上に、大きな支えとなってくれました。>

 これは宮内庁職員と旧華族らのいじめ問題についてやんわりと語った、ということだろうか?

 <時代にふさわしい新たな皇室のありようについての質問ですが、私は即位以来昭和天皇をはじめ過去の天皇の歩んできた道にたびたびに思いを致し、また、日本国憲法にある「天皇は日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴である」という規定に心を致しつつ、国民の期待に応えられるよう願ってきました。象徴とはどうあるべきかということはいつも私の念頭を離れず、その望ましいあり方を求めて今日に至っています。なお、大日本帝国憲法下の天皇のあり方と、日本国憲法下の天皇のあり方を比べれば、日本国憲法下の天皇のあり方の方が、天皇の長い歴史で見た場合、伝統的な天皇のあり方に沿うものと思います。>

 この言葉には驚いたが、うれしかった。「権威と権力の分離」ということを天皇皇后両陛下が十分に理解されていることが分かったからだ。

 <守ってきた皇室の伝統についての質問ですが、私は昭和天皇から伝わってきたものはほとんど受け継ぎ、これを守ってきました。この中には新嘗祭のように古くから伝えられてきた伝統的祭祀もありますが、田植えのように昭和天皇から始められた行事もあります。新嘗祭のように古い伝統のあるものはそのままの形を残していくことが大切と考えますが、田植えのように新しく始められた行事は、形よりはそれを行う意義を重視していくことが望ましいと考えます。従って現在、私は田植え、稲刈りに加え、前年に収穫した種もみをまくことから始めています。学士院賞や芸術院賞受賞者などを招いての茶会なども、皇后とともに関係者と話し合い、招かれた全員と話ができるように形式を変えました。短時間ではありますが、受賞者、新会員、皆と話をする機会が持て、私どもにとっても楽しいものになりました。>

 工夫をされていることが、よく分かって、微笑ましい。

 <皇室の伝統をどう引き継いでいくかという質問ですが、先ほど天皇のあり方として、その望ましいあり方を常に求めていくという話をしましたが、次世代にとってもその心持ちを持つことが大切であり、個々の行事をどうするかということは、次世代の考えに譲りたいと考えます。>

◆WBC、サムライ的で美しい強さを持って戦っておりました

 <《皇后さま》50年前、普通の家庭から皇室という新しい環境に入りましたとき、不安と心細さで心がいっぱいでございました。今日、こうして陛下のおそばで金婚の日を迎えられることを、本当に夢のように思います。結婚以来今日まで、陛下はいつもご自分の立場を深く自覚なさり、東宮でいらしたころには、将来の象徴として、後に天皇におなりになってからは、日本国、そして国民統合の象徴として、ご自分のあるべき姿を求めて歩んでこられました。こうしたご努力の中で、陛下は国や人々に寄せる気持ちを時とともに深められ、国の出来事や、人々の喜び、悲しみに、お心を添わせていらしたように思います。50年の道のりは長く、時に険しくございましたが、陛下が日々真摯に取るべき道を求め、指し示してくださいましたので、今日までご一緒に歩いてくることができました。陛下のお時代を共に生きることができたことを、心からうれしく思うと共に、これまで私の成長を助け、見守り、励ましてくださった、大勢の方たちに感謝を申し上げます。>

 一気に段落なしで繋げてしまったが、この部分は一気に読みたい。ここも美智子皇后の肉声である。

 <質問の中にある皇室と伝統、そして次世代への引き継ぎということですが、陛下はご即位に当たり、これまでの皇室の伝統的行事および祭祀とも、昭和天皇の御代のものをほぼ全部お引き継ぎになりました。また、皇室が過去の伝統とともに現代を生きることの大切さを深く思われ、日本各地に住む人々の生活に心を寄せ、人々とともに今という時代に丁寧にかかわりつつ、一つの時代を築いてこられたように思います。>

 「過去の伝統とともに現代を生きる」というのは何も皇室だけでなく、日本人すべてが思いを致さねばならないことがらだと思う。その先導役としての皇室が輝いている、ということだろう。

 <伝統とともに生きるということは、時に大変なことでもありますが、伝統があるために、国や社会や家がどれだけ力強く、豊かになれているかということに、気付かされることがあります。>

 「伝統」があるから日本人でいられるのだから。

 <一方で、型のみで残った伝統が社会の進展を阻んだり、伝統という名のもとで、古い慣習が人々を苦しめていることもあり、この言葉が安易に使われることは好ましく思いません。>

 厳しいお言葉だ。何を想定されてこのようにおっしゃっているのか? 男女差別とか部落差別などの差別意識のことなのだろうか?

 <また、伝統には表に表れる型と、内に秘められた心の部分とがあり、その二つがともに継承されていることも、片方だけで伝わってきていることもあると思います。>

 として、現代の話に。

 <WBCで活躍した日本の選手たちは、よろいも着ず、切腹したり、「ござる」とか言ってはおられなかったけれど、どの選手もやはりどこかサムライ的で美しい強さを持って戦っておりました。陛下のおっしゃるように、伝統の問題は、引き継ぐとともに、次世代に委ねていくものでしょう。>

 このユーモア。切腹、「ござる」などという言葉が自然に出てくるおおらかさ。美智子皇后の知性の輝きだろう。

 <私どもの時代の次、またその次の人たちが、それぞれの立場から、皇室の伝統にとどまらず、伝統と社会との問題に対し、思いを深めていってくれるよう願っています。>

 美智子皇后の仰る通りだと思う。皇室に限らないのだ。「伝統と社会」、「伝統と国家」、「伝統とグローバリズム」など、考えなければならないことはたくさんある。

◆結婚で開かれた窓から多くを吸収、今日の自分を作っていった……

 <《問2》両陛下にお尋ねします。お二人が知り合われてからこれまでにさまざまな言葉のやり取りがあったと思います。色々なエピソードが伝わっていますが、陛下はどのような言葉でプロポーズをされ、皇后さまは陛下にどのような言葉を伝えてご結婚を決意されましたか。銀婚式を前にした会見では、陛下は皇后さまに「努力賞」、皇后さまは陛下に「感謝状」をそれぞれ差し上げられたいと述べられましたが、改めてお互いに言葉を贈られるとすれば、どのような言葉になりますか。ご夫婦としてうれしく思われたこと、苦労されたこと、悲しまれたこと、印象に残った出来事、結婚されてよかったと思われた瞬間のこと、夫婦円満のために心掛けられたことなど、お伺いしたいことは多々ありますが、お二人の50年間の歩みの中でお心に残ったことについて、とっておきのエピソードを交えながらお聞かせください。>

 <《天皇陛下》私のプロポーズの言葉は何かということですが、当時、何回も電話で話し合いをし、ようやく承諾をしてくれたことを覚えています。プロポーズの言葉として一言で言えるようなものではなかったと思います。>

 外出がなかなかできない古い皇室の中で恋する皇太子が電話でしきりとプロポーズしていた姿を想像すると微笑ましい限りだ。

 <何回も電話で話し合いをし、私が皇太子としての務めを果たしていく上で、その務めを理解し、支えてくれる人がどうしても必要であることを話しました。承諾してくれたときは本当にうれしかったことを思いだします。>

 うれしかっただろうなぁ。

 <結婚50年にあたって贈るとすれば「感謝状」です。皇后は「この度も努力賞がいい」としきりに言うのですが、これは今日まで続けてきた努力をよみしての感謝状です。本当に50年間よく努力を続けてくれました。その間にはたくさんの悲しいことや辛いことがあったと思いますが、よく耐えてくれたと思います。>

 銀婚式の記者会見で皇后陛下が天皇陛下に「感謝状」を贈りたい、と言っていたのを先取りしてしまった感がある。

 <夫婦としてうれしく思ったことについての質問ですが、やはり第一に二人が健康に結婚50年を迎えたことだと思います。二人のそれぞれのあり方についての話し合いを含め、何でも二人で話し合えたことは幸せなことだったと思います。 皇后はまじめなのですが、面白く楽しい面を持っており、私どもの生活にいつも笑いがあったことを思いだします。また、皇后が木や花が好きなことから、早朝に一緒に皇居の中を散歩するのも楽しいものです。私は木は好きでしたが、結婚後、花に関心を持つようになりました。
 語らひを重ねゆきつつ気がつきぬわれのこころに開きたる窓
 婚約内定後に詠んだ歌ですが、結婚によって開かれた窓から、私は多くのものを吸収し、今日の自分を作っていったことを感じます。結婚50年を本当に感謝の気持ちで迎えます。終わりに私ども二人を50年間にわたって支えてくれた人々に深く感謝の意を表します。>

 健康で二人で50年を迎えることが出来たことへの素直な感謝にあふれているなぁ。

◆陛下が誠実で、謙虚で、寛容でいらしたことが何よりの支え

 <《皇后さま》たくさんの質問があって、全部はお答えできないかもしれません。とりわけ婚約のころのことは、50年を超す「昔、昔のお話」で、プロポーズがどのようなお言葉であったか、正確に思いだすことができません。>

 本当かな? 皇后陛下は生涯忘れていないと思うが。小泉信三氏のアドバイスとか、今はまだ心を整理してしゃべることができない、ということなのだろうか?

 <また、銀婚式を前にしてお尋ねのあった同じ質問に対してですが、このたびも私はやはり、「感謝状」を、何かこれだけでは足りないような気持ちが致しますが、心を込めて「感謝状」をお贈り申し上げます。>

 心を込めた感謝状、いいですね。

 <次の夫婦としてうれしく思ったこと。このようなお答えでよろしいのか……。嫁いで1、2年のころ、散策にお誘い頂きました。赤坂のお庭はクモの巣が多く、陛下は道々クモの巣を払うための、確か寒竹だったか、葉の付いた細い竹を2本切っておいでになると、その2本を並べてお比べになり、一方の竹を少し短く切って、渡してくださいました。ご自分のよりも軽く、少しでも持ちやすいようにと思ってくださったのでしょう。今でもその時のことを思いだすと、胸が温かくなります。>

 いいエピソードだ。

 <昭和天皇の崩御後、陛下はご多忙の日々の中、皇太后さまをお気遣いになり、さまざまに配慮なさるとともに、昭和天皇が未完のままお残しになったそれまでのご研究の続きをどのような形で完成し、出版できるか、また、昭和天皇の残されたたくさんの生物の標本をどうすればちりぢりに分散させず、大切にお預かりする施設に譲渡できるかなど、細やかにお心配りをなさいました。こうしたご配慮のもと、平成元年(1989年)の末には「皇居の植物」が、平成7年(1995年)には「相模湾産ヒドロ虫類」の続刊が刊行され、また、平成5年(1993年)には昭和天皇ご使用の顕微鏡やたくさんの標本類が国立科学博物館に、平成7年(1995年)には鳥類の標本が山階鳥類研究所に、それぞれ無事におさめられました。印象に残った出来事はという質問を受け、この時の記憶がよみがえりました。>

 なるほど、そういう経緯があったのか。

 <結婚してよかったと思った瞬間はという難しいお尋ねですが、もうエピソードはこれで終わりにさせていただいて、本当に小さな思い出を一つお話し致します。春、コブシの花が取りたくて、木の下でどの枝にしようかと迷っておりましたときに、陛下が一枝を目の高さまで降ろしてくださって、そこにほしいと思っていたとおりの美しい花がついておりました。うれしくて後に歌にも詠みました。歌集の昭和48年(1973年)のところに入っていますが、でも、このようにお話をしてしまいましたが、それまで一度も結婚してよかったと思わなかったということではありません。>

 皇后陛下らしい。

 <この50年間、陛下はいつも皇太子、また、天皇としてのお立場を自覚なさりつつ、私ども家族にも深い愛情を注いでくださいました。陛下が誠実で謙虚な方でいらっしゃり、また常に寛容でいらしたことが、私がおそばで50年を過ごしてこられた何よりの支えであったと思います。>

(注)皇后さまがお答えの中で指摘された和歌は次の通り。

 仰(あふ)ぎつつ花えらみゐし辛夷(こぶし)の木の枝さがりきぬ君に持たれて

◆結婚50年の人々、共通した経験をして今日に

 <《関連質問》ご結婚50年おめでとうございます。両陛下は4月10日、今年結婚50年を迎えられるご夫婦をお招きになって茶会を開かれます。これは両陛下のご発案と聞いておりますけれども、どのようなお気持ちでこの茶会を開かれたいと思われたのか、そこら辺のことをお聞かせいただけないでしょうか。>

 <《天皇陛下》もちろんこの100組の、結婚50年を迎える人々を呼ぶということには、二人の意思とともに宮内庁長官をはじめ、関係者の色々な尽力があったことと思います。ちょうど私どもが結婚してからの50年は、先ほどもお話ししましたように、さまざまな出来事の多い時だったと思います。結婚したころは必ずしも豊かでありませんでしたが、みな希望に満ちて未来に向かって進んでいったのではないかと思います。そして、その前の時代に戦争があり、その戦争の厳しい環境の中で、青少年時代を送ったことだと思います。このように、この結婚50年の人々はさまざまな、そして、共通した経験をして今日に至っていると思います。このたび、結婚50年に当たって、結婚50年を迎えられる人々をお招きしてこの茶会を催し、それぞれの皆さんがたどってきた道を話し合うということは、私どもにとっても意義深いことだと思いますし、また、お互いに話し合って楽しい一時になるのではないかと期待しています。>

 なるほど。

 <《皇后さま》いま陛下がすべてお話くださいました。私も当日を楽しみにしております。>

 蛇足だが、産経新聞4月24日朝刊のコラムの最後で曽野綾子氏は、

 <誰が何をしようが人間の権利だという放任の時代にあって、この記者会見の内容がどれだけ重く日本人の在り方を見せて衝撃的なもんだったか。それは政治を超えて政治的力を持ち、道徳を超えて深い徳性を考えさせるものであった。>

 と書き記していた。

 そこまで深く考えなかったのだが、言われればそういう感じがした。

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内田樹氏の「廉潔公正に見えることが大事」論はその通りなのだろうが…~4月8日毎日新聞夕刊寄稿

 小沢一郎氏の問題である。

 内田樹・神戸女学院大教授(フランス現代思想)が毎日新聞4月8日夕刊文化面のコラム[水脈]で<公人の最優先事/廉潔公正「であること」より「見えること」>のタイトルで、小沢一郎氏に総理大臣としての資格なし、と書いていた。そういう見方が出てくることは否定しないし、それが大きな世論の流れになるのならば、小沢氏はやはり総理大臣にはなれない、ということなのかもしれない。仕方ないことだ、とは思うが、この種の論のいかがわしさは国家というものをトータルで考えていないことだ、とは思う。

 総理大臣にはいろいろな資質が要請される。なぜ清廉潔白な高潔居士が求められるか、といえば、総理大臣は国民を死なせることが出来るからなのだ。総理大臣は行政の最高責任者である。死刑という刑罰で人の命を奪うのは法務大臣だが、その法相を指名するのは総理大臣である。だれを法相にするか、で死刑執行のスピードは変わってくる。これは誰にでも見える部分だが、見えない部分での「人を死なす」権限をもたくさん持っているのが首相である。福祉の削減で衰弱死する人を見て見ぬ振りをする、自衛隊員を紛争地域に派遣して戦死させる、文民をPKO要員で危険地域に派遣するのも最終的には首相の権限(国会の議決はあるにせよ)である。

 今の日本は戦争ができない国だから日本の首相には表面上は権限がないが、戦地に兵隊を送り、戦死するという決断も最終的には首相の決断による。

 こういう人の生死に関する決定を行う人だから、汚いシャイロックのような人間では誰も言うことを聞かない、という理由である。

 それは確かなのだ。

 ただ、政治はそれだけではない。

 今の日本の政治に求められるものは転換であろう。今の日本は幸せだった高度成長時代の構造、つまり護送船団方式が根強く残る中で、米国式の自己責任=新自由主義的思想に則った制度仕組みが部分的に導入され、そこら中で摩擦を引き起こしている。その転換期の狭間で中国流に言えば「買弁」が流行しているのは「かんぽの宿」の竹中平蔵氏らの振る舞いを見ればよく分かる通りだ。

 情けないことになっている。自己責任を国民に求めながら、自分たちの仲間で国有財産を貪り食う人々は許せないと思うのだが、彼らは東京地検の摘発を受けていない、というただ一点で「清廉潔白」性を担保している。

 内田氏は次のように言う。

 <極端な話、正味の人間がどれほど下劣で邪悪な人間であっても、外見をはばかって、つねに廉直公正のふりをしている人間がいたとしたら(あまりいないが)、公人としては合格点だと思う。>

 この「あまりいない」種類の人間が竹中氏や日本郵政の社長、宮内義彦氏らであろう、と思う。

 <逆に、実際には正直で高潔なのだが、他人からは貪欲で無能だと思われている人は残念ながら公人には向かない。>

 こんな人はなかなかいないとは思うが、昔の自民党には相当いたことも事実だ。

 <というのは公共システムというのは「人々からの信用供与」に基づいて初めて機能するものだからである。人々が「あなたを信用する」と言ってくれるから仕事ができ、「あなたのことは信用できない」と言われたら立ち行かない。それが公共システムというものである。だから「信用される」のが公人の最優先事となる。>

 たとえ話ばかりで恐縮だが、麻生政権発足後、マスコミは「漢字が読めない」という麻生バッシングを繰り返した。これは「だから無能だ」→「だから信用できない。任せておけない」という流れになるのだが、内田氏の公共システム論を突き詰めていくと、マスメディアがそろって「あいつは信用できない」とキャンペーンをはり、人心がそっちを向けば、その人は信用を失ったから公人として失格、となりかねないのではないか。

 それは違うと思うのだ。

 佐藤栄作氏など人気がない首相が沖縄返還という大きな仕事をなしえたのは世論調査の数字を気にせずに、自分の仕事に一直線に突き進んだからではなかったか。逆に人気投票的な衆院選挙で大勝した小泉純一郎元首相は一体何をやったのだろう? 郵政民営化は本当にやるべき政策だったのだろうか? 規制緩和と福祉削減、それに加えて金融政策で輸出企業と銀行だけを優遇して、国民の預金金利を奪っていった首相は今の格差社会を作った罪人ではないか。

 「信用」を図る手段が世論調査やメディアの論調しかないという今の状況で「廉潔公正に見えること」をあまりに重視すると、世論政治を加速させ、「パンとサーカス」の政治がはびこるようになると思う。

 内田氏は丸山真男の「であることとすること」を援用して「であること」ではなく「見えること」が大切だ、という。私人ならば李下に冠を正してもいいが、公人は許されない。瓜を盗っていなくとも、盗ったのではないか、と疑われることをしたらおしまいだ、と言う。

 <民主党代表秘書をめぐる献金疑惑が報じられたとき、当の政治家は「どれほど傍から見て疑わしく見えても、私は自分が潔白であることを知っている」という言い方をしていた。私は検察の動きがかなり政治的に生臭く、小沢一郎氏が「スケープゴート」にされたという解釈の可能性を排除しないが、このような言葉を政治家は口にしてはならないということについては譲れない。不注意にも「李下に冠を正して」しまった公人には「すももに触っていない」といういいわけが許されない。その節目だけは通さなければならない。それを通さねば、小沢氏が総理大臣になったとき、彼を頂点に戴く行政機構の公務員たちはその末端にいたるまで「どれほど疑わしく見えても、私は自分が潔白であることを知っているので職務を粛々と全うする」と言い出したときに、自制を求めるロジックがなくなってしまうからである。>

 こういう論理なのだ。

 この論理は飛躍しているし、前提が間違えているとも思うし、小沢氏の発言の一部を取り出して解釈すべきではないとも思うのだが、私が真剣に憂えるのは他ならない内田樹氏がこのような見方を開陳したことである。

 <廉潔公正に「見える」ためには単に善良であるためよりもはるかに多くの知的緊張と節度と想像力を要求するからである。>

 という結びの言葉には、この論に対する内田氏の自信が感じられる。

 多くの言葉を費やしてこの内田氏の論のいい加減さを論破する気力もない。

 このような現代哲学の人気者がなぜこのような三木政治礼賛のような論を立てたのか、に悲しみがわくだけである。

 癒着し切っている病巣を根こそぎ取り出して、今の日本を切開手術し、新しく21世紀から始まる「安心・安全」の日本を築く土台を創るのは小沢氏をおいてない、と思っていたから、こういう論が蔓延するのが残念だっただけだ。

 飯尾潤氏らの民主党内部調査委員会もこういう論が広がると作業を進めるのが難しくなるだろう。

 なにか、空しい感じがしてならない。なぜ、東京地検特捜部は現状改革を阻止したのだろうか? 地検の検事たちも霞が関改革を阻止したい官僚だった、ということなのか?

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2009年4月 7日 (火)

黒井文太郎氏は北朝鮮が再度の核実験を行うと予想、阻止に全力を挙げよという~4月1日、6日の黒井氏ブログから

 黒井文太郎氏のブログを見たら、今回の北朝鮮のミサイル発射に関する文章が4月6日にアップされていた。

http://wldintel.blog60.fc2.com/

 <国際情報誌『ワールド・インテリジェンス』(軍事研究別冊)編集長・黒井文太郎のブログ>という題名のブログで、例の私が核問題の基礎の基礎を勉強させていただいた先生に当たる方だ。タイトルは<次は核実験か>という刺激的なものだったが、読んでみると、これは刺激的でも何でもない「現実」なのだ、というよけい怖い話になっている。黒井氏のブログから、勉強になるところを書き抜いておこう。

 言葉遣いなどを変えて、もしかするとニュアンスも違ってしまっているかもしれないので、皆さんは是非、黒井さんのブログの本物の文章をお読みください。

 以下が文章の要旨。

▽核弾頭小型化の話で、パキスタンが北朝鮮のノドン・ミサイルと内容が全く同じであるガウリ・ミサイルに核弾頭を搭載したので、北朝鮮も搭載した、との話があるが、これは違うと思う。

パキスタンでは起爆装置の構造が簡単な濃縮ウラン型だ。一方の北朝鮮は起爆装置技術が大変難しいプルトニウム型だ。現在の濃縮ウラン型は効率化のためにプルトニウム型と同様の爆縮型を採用しているケースが多いが、プルトニウム型では1万分の1秒以下という精密な爆破タイミングが要求される。濃縮ウラン型はずっとアバウトでも起爆する。起爆装置は全く別物と考えるべきだ。

▽よって、パキスタンが核搭載ガウリ(=ノドン)を実戦配備しているからといって、北朝鮮ノドンがすでに核搭載しているということではない

▽パキスタンと北朝鮮の技術交流で怖いのは、北朝鮮が濃縮ウラン製造をこっそりやっているのではないかという疑惑(未確認情報。今のところそれほど根拠のある情報はない)と、パキスタンがプルトニウム製造に乗り出したという話だが、今のところ切羽詰った話ではないようだ。

▽今回のメディア解説で気になったもうひとつは、例の政府筋の「ピストルの弾をピストルで撃ち落とすようなもの」発言に対するバッシングだ。軍事専門家の多数は、「そんな認識はもう古い」と言うが、私は現状のMDの技術を信用していない。「ピストルの弾をピストルで撃ち落とせることもある」ところまで来たことに異存はないが、「ピストルの弾を必ず撃ち落とせる」までは、まだまだほど遠いと思う。

▽高高度・高速の米偵察衛星をSM3が破壊したが、入念な計算のうえのことだ。「ちょうかい」は失敗た。これまでの米軍の実験も、比較的実戦的なものでは成功率はそれほどでもない。なかなか計算通りにはいかない。

テポドン2のブースターの構造について、未確認情報・推定情報がぐじゃぐじゃになって報じられている。私はテポドンについてはだいたいグローバル・セキュリティの推定図あたりがまあまあ「そう外していないかも」くらいに思っている。さまざまな推定情報がメディア各社でも錯綜していて、かなり混乱していた。「これは違うんじゃないの」という報道もけっこう多かった。米軍インテリジェンスが(たぶん)入る防衛省の専門家はどう見ているのか気になりますが、意外に「グロセキュを参考」にしていたりして・・・…。

▽外交専門家がテポドン発射の狙いについて「オバマ政権と交渉するため」とか「ミサイルを売るため」とか解説しているが、違和感がある。それらは「従」で、「主」ではない。北朝鮮は金日成の時代から、体制生き残りのために核ミサイルの開発を一貫して続け、今後も続ける。非常にわかりやすい、シンプルな話だ

▽2006年のテポドンと核爆発の実験は、実験可能な技術水準に至ったから行った。ところが、テポドン実験は失敗だったから、改善して今回の発射となったという単純な話だ。衛星は失敗とか報道されているが、2006年の失敗(発射直後の爆発)を払拭し、1998年テポドン1の飛距離を大幅に更新したから、まずまずの成功といえる。

私はいずれ再び核実験をすると見ている前回の不完全な起爆装置の改善、それに小型化起爆装置の実験も必要になるからだ国際社会から制裁を受けるだろうが、核ミサイル完成のほうが北朝鮮にとってははるかに重要だ。いつやるか?は、これも多少は政治的判断だろうが、原則的には「技術的に可能になったらやる」という可能性が高いと考えている。

▽日本はどうすべきか?は難しい。日本の安全保障だけと考えると、一番の目標は「核弾頭完成の阻止」となる。秘密施設で邁進している開発自体は止めようもないが、最終的な段階で必要となる「小型起爆装置による核実験」を阻止することは考えなければならない

▽北朝鮮はいずれ再度の核実験を行う可能性が高いと考えるが、それを政治的な圧力でできるかぎり遅らせることが必要だ。つまり、6カ国協議の枠組みを強化して、中国の北朝鮮に対する発言力を高め(まもなく後継者問題も出てくるので、中国の発言力はいろんな意味で非常に注目だ)、政治的に北朝鮮に核実験をやりにくい雰囲気に持っていくわけだ。一種の心理戦・情報戦だ。私たち日本人の苦手な分野だが、いろいろ複合的な手を考えることは重要だと思う。

6カ国協議は北朝鮮の核武装を止めるのにほとんど役に立たなかった。プルトニウム作ってから、量産を少し凍結しただけだ。核ミサイル開発は事実上、全く阻止できていない

北朝鮮の譲歩を引き出した唯一の例はアメリカがマジの寧辺空爆を検討した1994年の金日成=カーター会談だけだった気がする。武力をちらつかせないと交渉は進まないということか。

 ついでに、黒井氏の4月1日のブログもコピペさせていただきます。タイトルは<テポドン騒動のかげで、核搭載ノドンが日本を狙う?>という、まさにそのものズバリの見出しがついている。週刊朝日に寄稿した「テポドン騒動で空騒ぎの間に・・・核搭載ノドンが日本を狙う!」という記事の話だが

 <テポドンの件は基本的にはアメリカの問題で、日本はあまり関係がないということ。すでにノドンの射程に入っている日本にとっては、北の核爆弾小型化こそが安全保障上の最大の問題であるということ。しかも、それはまさに目の前に迫りつつある大問題である、ということを指摘しました。>

 というごく全うな話なのだ。これは何度でも何度でもアップして、日本中の人に読んでほしい、と思う。

 <おそらく北朝鮮は現時点ではまだノドンに搭載できるほどの起爆装置小型化には成功していないと思われます。北朝鮮の核爆弾はプルトニウム型なので、起爆装置はかなり高度な技術になりますから、いくらパキスタン(構造がずっと簡単な濃縮ウラン型核爆弾を開発)と技術提携しているとはいえ、そんなに簡単ではありません。(なお、今の濃縮ウラン型爆弾も効率化のために爆縮型起爆装置を使うので、そのデータに関しては北朝鮮とパキスタンとの情報交換はあると思われます。それで北朝鮮がすでに核弾頭を持っていると推測している専門家もいますが、濃縮ウラン型とプルトニウム型では要求される精度のレベルが格段に違うので、やはりプルトニウム型の核弾頭はそれだけでは難しいと思われます)。>

 これは4月6日のブログで再度説明してくれていた。私が紹介する順序が逆になった。

 <しかし、どこかの秘密施設でそれに邁進しているのは確実ですから、いずれはそれを成功させることは疑いありません。それで核ミサイルは完成ですから、その時点をもって日本の安全保障は完全に崩壊するということになります。>

 そういうことです。その時点で「ジ・エンド」になってしまうのだ!

 <私は拙著『北朝鮮に備える軍事学』にも書いたとおり、北朝鮮が対日攻撃に出るとは思ってませんが、純粋に軍事的なことだけで考えると、小型起爆装置完成の時点で日本は北朝鮮の核脅威下に入ります。ミサイル防衛はいくら揃えても完全ではないので、核の脅威を完全に除去することは出来ません。>

 この「北朝鮮に備える軍事学」は3回にわたってこのブログで内容紹介をしているが、できれば買って読んでほしい本だ。

北朝鮮に備える軍事学 (講談社+α新書) 北朝鮮に備える軍事学 (講談社+α新書)

著者:黒井 文太郎
販売元:講談社
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 <ノドンはどれくらいあるのかというと、誰も確認したわけではないので不明ですが、数年前に米軍当局は「200基以上」と言っていますから、さらに増えている可能性があります。正確な数はともかく、それなりにかなりの量のノドンが車載化され、秘密基地に隠されているという事実は決定的ですプルトニウムは現時点ではまだ核爆弾5~8個分程度であると思いますが、それだけあれば充分に核の脅威と考えられます。>

 <ちなみに、ミサイル防衛について、私はその完成度には疑問をもっています。制御不能になった高速・高高度のアメリカの偵察衛星をSM3が爆破したことで、SM3の評価は上がりましたが、充分な時間をかけて入念に緻密な軌道計算をして行われた迎撃だという点は割り引いて考えるべきかという気がします。>

 <その他の実験の結果も大きく勝ち越してはいますが、盾とするにはまだまだ失敗率が高いですね。核戦争というものを私は現実的には想定していませんが、純軍事的には、戦争における核ミサイル攻撃は数発単位で考えるものではないです。MDの有効性を担保するほどのデータは公表されていませんので、今のところMDの有効性は確認されていないということになります。>

 <それはともかく、先走って考えると、たとえば北のテポドン発射→国連安保理制裁決議→六カ国協議崩壊→核再実験、ということも充分あり得ると思います。北朝鮮は2006年の核実験は半端な結果でしたので、完全な成功をおさめておきたい。できれば弾頭サイズも試しておきたいというところかと思われます。プルトニウムがもったいなからやらないのではないかとの見方もありますが、あと1~2発なら構わないでしょう。確実な起爆装置のほうがはるかに軍事的に重要だからです。

 <ということで、実際にはモニター不可能な核弾頭完成を阻止することはできないにせよ、それを世界の関心事とする努力はすべきでしょう。アメリカ主導の6者協議ではこれまで、アメリカはホンネでは核流出阻止を最大の戦略目標にしてやってきていて、核爆弾小型化にはほとんど注目してきませんでしたが、今回のテポドン騒動で米メディアにちらほらこの問題が採り上げられるようになりつつあります。北朝鮮がアメリカを射程におさめるミサイルを持ちつつあるというようで、さすがに本気になってきたのかもしれません。>

 <もっとも、ではアメリカはどうするかというと、たぶんまた何かで譲歩するということになりそうな気配です。ですので、日本はどうすべきかをもっと独自の視点で考える必要があります本当に核ノドンが配備されたら、日本は、(北の長距離砲によって)ソウルを人質にとられている韓国と同様に、金正日体制を安定させることが戦略目標になってしまうという情けない立場に立たされます拉致問題の解決など、夢のまた夢に遠のいていく結果にならざるを得ません。>

 <では具体的にどうすべきか? それは正直いってわかりません。けれども、アメリカの安全保障最優先の6者協議に任せておいて安心するのではなく、日本にとっての安全保障という視点で議論するということころから、私たちみんなが考えていくべき話ではないかなと思います。>

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社民党の棄権と共産党の反対理由を書かない朝日新聞~4月7日各紙夕刊から

 北朝鮮のミサイル発射を非難する決議が衆院本会議で採択された。だが、共産党は決議に反対し、社民党は本会議を欠席した。この動きをどう報じるか、各紙夕刊を見ると、大きな差があることが分かった。

 東京新聞は1面トップ<北ミサイル/衆院が抗議決議採択/共産反対、社民棄権/追加制裁求める>で扱った。前文には、

 <共産、社民両党は「ミサイルか人工衛星か現時点で判断できない」として、制裁強化を求める決議の文案に難色を示し、調整は不調に終わった。共産党は反対に回り、社民党は採決を棄権して全会一致での採択にはならなかった。>

 とあった。

 日経新聞夕刊は2面3段<衆院 北朝鮮抗議決議を採択>で、

 <共産、社民両党は「今回は発射が国連決議違反とは断定できない」などとしている。>

 と書いていた。

 毎日新聞夕刊は1面3段<衆院が非難決議採択/共産反対、社民棄権>で、

 <共産党は「国連で明白な決議違反とは決まっていない。経済制裁の効果も疑問だ」とbの理由で反対。社民党は採決を棄権した。>

 とあった。

 読売新聞夕刊は1面3段<衆院が北非難決議>で、

 <3月31日の国会決議ではミサイルとの表現を避け、「飛翔体」とし、安保理決議違反との指摘も銘記しなかったが、北朝鮮の発射強行で、より厳しい姿勢を示す必要があると判断した。>

 <野党4党は7日午前、国会内で対応を協議。共産、社民両党は「人工衛星かミサイルか現時点で断定できない」などとし、安保理決議違反や制裁強化への言及に反対した。民主党はミサイルを「飛翔体」と言い換えるなど、与党案を弱める案も示したが、野党の足並みがそろわず、調整を断念した。採決で共産党は反対し、社民党は棄権した。>

 と詳しかった。

 しかし、2面2段<抗議決議を採択/衆院/与党と民主、国民新>は前文の最後に、

 <文言調整で溝が埋まらなかった共産党が反対、社民党は棄権した。>

 と書いただけ。最後の段落で民主党の鳩山由紀夫幹事長の「参院ではまとまるだろう」という話を入れているものの、どうして共産党が反対したのか、社民党が棄権したのか書いていないため、社民党は反対しているかどうかすら分からない記事となっていた。

 どうみても、社民党をかばっているとしか思えない記事の扱いだ。

 北朝鮮の「お友達」社民党が堂々と反対するのか、と思ったら、こそこそと棄権していた、など、今後、社民党の衆院議員は朝鮮総連に顔向けできないのではないか。その辺を慮ったのか? それとも、北朝鮮のお友達だ、ということを日本国民に知らせたくなかったのか? 後者だと思うのだが、どうして朝日新聞はこういう情報操作を繰り返すのだろう?

 朝日新聞と社民党は非常に似ているから、守ろうと思ったのだろうか? こういう行為を「あざとい」というのだが。

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麻生首相は金持ち優遇の贈与税減税をやめるべきだ~4月7日毎日、日経、朝日新聞朝刊から

 麻生太郎首相は4月6日、追加経済対策の策定を指示した。各紙とも大きく扱っていたが、注目の贈与税減税がどうなったのか、あまり書いてなかった。

 例えば、毎日新聞4月7日朝刊1面4段記事<「財政支出10兆円超」/追加経済対策/首相が指示/補正過去最大>を読んでみよう。

 <麻生太郎首相は6日、政府・与党が10日に取りまとめる予定の追加経済対策について、与謝野馨財務・金融・経済財政担当相に対し「GDP(国内総生産)比2%(約10兆円)を上回る真水(財政支出)規模」とするよう指示した。毎日新聞が入手した対策の原案によると、太陽光発電の導入推進や地域医療の強化策などが盛り込まれており、過去最大規模となる2009年度補正予算案を今国会に提出する方針。>

 という前文。

 <麻生首相は日本が主要先進国の中で経済成長の落ち込みが大きいことや、危機からの脱却のために国際協調が必要なことを理由に「GDP比2%超」が必要と判断した。与謝野財務相は6日昼、経済対策策定の進捗状況を説明。麻生首相は対策について①非正規労働者に対する安全網の構築②企業の資金繰りへの万全な措置③太陽光発電の抜本拡大④介護・地域医療に対する国民不安の除去⑤地方自治体の地方活性化への取り組み支援――の5点に重点を置くよう求めた。一方、現在の厳しい財政状況にも配慮して対策は狙いをはっきりさせ、現在の経済状況に合わせた時限的なものにするとの基本方針を示した。>

 と重点5項目を出しているのだが、この中には世代間の資産移転は入っていない。

 <対策の原案は景気の底割れを回避するための「緊急的な対策」と、未来への投資としての「成長戦略」、「安心と活力の実現」の3本柱で構成。緊急対策には失業者の職業訓練や再就職、生活支援に充てる「緊急人材育成・就職支援基金(仮称)」の創設などの雇用対策や、中小企業の資金繰り対策の拡充を盛り込んだ。成長戦略は、学校の耐震化や太陽光パネルの導入を推進する「スクールニューディール」構想や、地域医療の拡充や地域介護拠点の整備など、将来的な市場拡大が見込まれる分野が中心。「安心と活力の実現」に向けては、地方公共団体への財政支援や地域活性化策が挙げられている。>

 具体策が書いてある。これは官僚が作ったペーパーなのか、それとも、自民党と公明党が作った与党案を少しだけ修正したものなのか?

 <ただ、与党内では、社会保障や税制改正などは具体策がまとまっておらず、調整を急いでいる。>

 と最後の最後に「税制改正」の話が出てくる。他紙もほぼ同様の書き方だった。どうなっているのだろう、という疑問は、日経新聞4月7日朝刊2面<追加経済対策/政府・与党調整大詰め/税制法案提出へ/会期大幅延長も>を読んでようやく解けた。

 日経の記事によると、麻生首相は4月6日、自民党税調の津島雄二会長、柳沢伯夫小委員長を首相官邸に呼んで「1400兆円の個人金融資産を動かして内需を拡大しないといけない」と、高齢者から若い世代に資産移転を促す贈与税減税の意義を強調した、という。
 席上、柳沢小委員長が「金持ち優遇批判もある」と釘を刺したが、首相は意欲満々だった、と書いてある。

 今年度補正予算案と関連法案の国会提出は4月27日が有力視されている、という。5月中旬に衆院通過予定だ、というが、「金持ち優遇」贈与税免除がこんな大波の中に紛れ込まされてはたまったものではない。

 朝日新聞4月7日朝刊3面<踏み出した大型補正/首相、政局主導へ思惑/財政頼みの景気対策/国債増発を市場懸念>によると、この10兆円という規模はガイトナー米財務長官が3月に呼びけけた「GDP2%相当の財政刺激策を来年まで毎年実施する」という目標に応じたもので、それを一度の補正予算で達成しようという意欲的なものなのだ、という。

 <IMFなどによると、日本の2009年の景気対策は対GDP比で1.4%と、カナダやドイツなどとほぼ同水準だったが、単純に2%を加えると、米国(2%)や中国(3.2%)を超える。>

 2008年10~12月の日本のGDP実質伸び率が年率換算でマイナス12.1%と、輸出頼みの経済のもろさが出た。今のところ景気のリード役が財政しかない、という面も朝日は指摘していた。

 朝日新聞の記事で重要なのは次の点である。

 景気対策の財源として大量の赤字国債発行が避けられないが、国と地方を合わせた長期債務残高は08年度末で787兆円。対DGP比で先進国で最悪の水準だ、という。

 <これまで約1400兆円に上る個人金融資産が国債消化を支えてきた。>

 <長期金利の代表的指標である新発10年物国債の流通利回りは6日、前週末比0.055%幅高い1.475%をつけた。10営業日ほどで0.2%幅も金利が上昇(債券価格は下落)しており、市場が国債増発を懸念していることは間違いない。>

 <金利上昇は過去に発行した国債の返済負担を重くし、国民には住宅ローンの金利上昇、企業には借り入れ負担増となってはねかえるリスクをはらんでいる。>

 つまり、赤字国債を出しても国債の金利が異常に上昇しなかったのは個人資産1400兆円があるおかげなのである。その個人資産を取り崩して、なおかつ赤字国債の大増発をする、というのは経済学的にはメチャメチャの政策だと伊藤元重・東大教授は思わないのだろうか。

 伊藤教授だけではない。麻生太郎首相にこの案を吹き込んだ渡辺恒雄、中曽根康弘というご老人たちは自分たちの資産を無税で子供や孫に贈りたくてこのような無茶な提案をしたのだろうが、あまりに人のいい麻生首相の政権最大の傷となるとは思わないのだろうか?

 この贈与税減税を民主党たたきに利用するために入れ込むのだったら、国民を愚弄するにも程がある、と思う。つまり、「民主党が反対しているから補正予算が出来ない」と言って衆院を解散する口実に使おうとするためには、民主党が絶対にNOという項目を入れなければならない。それがこの贈与税減税なのかもしれないが、そんなことをしたら、国民の批判の声は麻生自民党に集中するだろう。

 麻生首相は今からでも遅くはない。贈与税減税、つまり金持ち優遇の資産減税を今回の景気策から外さないと経済は浮揚しても、日本人の内部対立は極端まで進み、革命前夜状況になるかもしれない。再分配政策に逆行する政策はすべきではない。

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北朝鮮問題でふらつくオバマ米政権:どうせすぐ宥和路線だろう~4月7日読売新聞、産経新聞朝刊

 読売新聞4月7日朝刊1面企画[揺れる日米同盟~ミサイル発射]㊤<危機意識 日米に差>は北朝鮮のミサイル発射に関する日米の関係を総合的に検証する企画のようだ。㊤では軍事面の協調と思惑違いを取り上げている。

 勉強になる部分を書き出しておく。

▽1998年のテポドン1号の発射の際には米軍のイージス艦が日本海を離れた。2006年のテポドン2号は米軍が「撃たない」と判断し沖縄・嘉手納基地のミサイル観測機コブラボールを離陸させなかった。今回は自衛隊と米軍が連携してミサイルの追尾を行った事実上初の事態だった。発射を探知し、その後、日本から追尾を引き継いだ米軍が「太平洋に落下」と発表した。

▽日本政府が破壊措置命令を発令した3月27日以後の外交関係者の集まりで米政府高官は「日本は北朝鮮となると冷静になれない」と本音を口にしたゲーツ国防長官は3月29日、北のミサイルが米領土を狙ったものでない限り迎撃しない考えを表明し、直後にゲーツ長官は浜田防衛相に「冷静な対応」を電話で促した。海自幹部は「北朝鮮に、米国が最初から軍事オプションを放棄することはかつてなかった」と驚いた。

米民主党幹筋は「日本越えのミサイルは迎撃不能なのに、迎撃、迎撃と騒ぎすぎ」とぼやく

▽テポドン2号の発射当日、海自は日本海上空の追尾を担当し、米海軍はハワイとアラスカ方面の対応に専念した。この明確な役割分担を自衛隊関係者は「『自分のことは自分でやれ』という、米軍からのメッセージ」と受け止めた

▽核問題では共通の危機意識を抱きながら、ことミサイルでは、弾道ミサイル・ノドンの射程内にある日本と、テポドン2号も届かない米国では埋めがたい落差がある。ただ、それは「米軍を自衛隊が支援する」という受け身の構図を「自衛隊を米軍が支援する」という構図に変質させる可能性をはらんでいる。

◆米国内の様々な意見

 読売新聞4月7日朝刊国際面トップ<「6カ国」停滞不可避/米 非核化後退を懸念>は米国内に強硬論から宥和論まで様々な論が乱れ飛んでいる、と書いている。

▽アクセルロッド米大統領上級顧問=「北朝鮮を国際社会の仲間に導こうとする6カ国協議を後退させることになる」

 (ミサイル発射がもたらす核交渉の遅れを憂慮)

▽オバマ大統領=「違反は処罰されなければならない」

 (5日、プラハで厳しい姿勢を表明)

▽ボズワース米特別代表(北朝鮮担当)=「有益ならいつでも訪朝の準備がある」、「圧力が最も有効なやり方ではない。見返りも組み合わせるべきだ」、「(6カ国協議再開には)いくつかアイデアがある」

 (アメとムチのバランスを強調。しかし、譲歩を示せば批判が起こるのは間違いなく、消息筋は「オバマ政権は北朝鮮が熱望する軽水炉の提供には慎重」で対話路線にも限界がある、とみられる)

メイプルズ国防情報局長=「(協議が行き詰まれば)核物質の製造を再開し、更なるミサイル発射や核実験を行うかもしれない」

 (米国が核交渉再開を急ぐのは非核化の後戻りと核拡散を避けたいからだ、と)

ブルース・クリングナー・ヘリテージ財団上級研究員=「制裁を実行し、ミサイル防衛や大量破壊兵器拡散阻止構想(PSI)拡大の努力をすべきだ」

 (6カ国協議以外の取り組みが必要と指摘)

▽フランク・ジャヌージ米上院外交委員会スタッフ=「交渉による解決を排除すべきではない」

 (この人も宥和派の代表的人物らしい。こんな人が上院のスタッフにいると、影響が大きいのではないか。)

◆産経新聞4月7日朝刊の続き物

 産経新聞4月7日国際面企画[北からの衝撃]㊥<オバマ政権の反応/「2国間」に傾斜 同盟に溝?>も面白かった。

▽4月5日午前4時半(日本時間同午前11時半)すぎ、ギブズ大統領補佐官がオバマ大統領を起こした。「北朝鮮のミサイルが発射された」。オバマ大統領はベッドに戻らず、すぐにクリントン国務長官、ゲーツ国防長官と連絡した。その後、5日のプラハでの演説で大統領は「(北朝鮮の)国連安保理決議への違反は処罰されなければならない。強力な国際社会の対応が今こそ必要だ」と強調した。安保理に新たな決議案を出す意向を示したものだった。

▽ただ、ブッシュ政権も2006年7月のミサイル発射や10月の核実験で国連に制裁決議を提出したが、翌年には北朝鮮との直接交渉に踏み切り、凍結していた北朝鮮の違法資金の返還にも応じるなど次第に対話への傾斜を強めた。

▽オバマ政権も最初から対話路線を標榜しており、そうなるだろう。

▽オバマ政権は発足直後からアフガニスタン、北朝鮮政策を再検討したと説明しているが、複数の米政府関係者は「アフガンと違い、北朝鮮政策では政権全体を巻き込んだ検討作業が行われたことはない」と口をそろえる。ある朝鮮問題専門家は「ブッシュ政権の対話路線を継承したため、見直しの必要もないのでは」と皮肉る。

1月まで国務省東アジア太平洋局の上級顧問だったバルビーナ・ホワン氏は北朝鮮が米国と日韓との乖離を図ろうとしてくるのでは、と次のように指摘する。「今回と2006年のミサイル発射との違いは、『日米韓』で最も脆弱だった『日韓』の一角が強固になったことだ。(米朝交渉で)米国が日韓から離れるようなことになれば、核の傘、抑止力など同盟関係の根幹を疑問視する声が日韓に出てくるだろう。同盟関係にとってこれほど危険なことはない」。

 (まあ、そこまでは急にはいかないだろうが、すでにブッシュ政権末期の裏切りを見て、米国頼みにならず、の意識は確実に日本国民の中に広がったとは思う。)

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「小沢問題」:中西寛京大教授と倉重篤郎記者の論文は必読だ~4月1日毎日新聞朝刊[記者の目]、4月7日産経新聞[正論]

◆産経新聞[正論]中西寛教授論文

 産経新聞4月7日朝刊[正論]に中西寛・京大大学院教授が<「小沢氏問題」が露呈したもの>のタイトルで寄稿していた。小見出しは<抜け穴だらけの政治規正法>、<軽はずみな「国策捜査」発言>、<“接ぎ木”制度改革の弊害>だった。保守の良質な政治学者である中西氏の論は影響力が強いと思われる。コピペしながら読んでいこう。

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090407/stt0904070401000-n1.htm

 <小沢一郎民主党代表の大久保秘書の逮捕、起訴によって日本政治の混迷はますます深まっている。今後、公判において明らかにされる事実もあるだろうし、関連捜査も続いている段階だが、これまで報じられた内容から状況を整理して論じてみよう。>

 という書き出し。逮捕・起訴が日本政治の混迷をさらに深めた、という認識には共鳴する。

 <第一に法的問題がある。今回の事件を複雑にしているのは、起訴の背景となっている政治資金規正法そのものが複雑で曖昧な法律となっていることである。現行の規正法によれば、企業・団体から政治家個人への献金は禁止されている一方で、政治団体による献金は登録、収支報告書の公開など一定の手続きを経れば許されている。従って企業・団体が政治団体を設立しても手続きに基づいていればよいという小沢代表の解釈と、企業・団体献金を禁止している法の趣旨からして、ダミーの政治団体を通じて献金するのは違法という検察側の解釈とのいずれもが成り立つ余地がある。とりわけ、資金を出す側でなく受けとる側が、違法性を認識していたかどうかは立証が難しいだろう。決着は司法の判断を待つ他ないが、政治資金規正法がグレーゾーン、抜け穴の多い法律であるところに問題の一端がある。>

 うまい整理だと思う。ザル法であること、そのザル法を入口に使っただけでなく、すべてをサルでやっつけてしまおうとした検察の手法なのだが、政治資金規正法は解釈によってどうにでも読めるようにつくられているのだ。

 <もちろん検察当局はそのことはよく承知しているはずである。そのために今回の逮捕、起訴は司法と政治の関係について議論を呼ぶこととなった。これが今回の事件のはらむ第二の問題である。この点では、検察当局、民主党、政府与党いずれもの対応に適切だったかどうか疑問の余地がある。>

 承知しながらやった検察だ。それが問題を発生させた。ここまではまったく異存ない。

 <検察の判断の背景には、西松建設による違法な裏金作りに関する捜査があったことは確かだろう。西松による小沢代表への献金問題が浮上したのもこの捜査の延長線上にあると思われる。その点では、小沢代表をねらい撃ちにした政治的動機が背景にあったというよりは、純粋の法執行の一環であったとは推定できる。>

 小沢氏を最初から狙った「国策捜査」ではなかっただろう、という推測もその通りだとは思う。

 <しかし純粋の法執行がかえって政治に影響をもつこともある。政治資金規正法については上記のようにグレーゾーンが大きく、検察当局に個々の政治家の運命を左右する大きな裁量を許しかねない性質を持っている。もちろん政治資金のあり方を合理化し、規正法も改善すべきだが、法律の執行については当局者は良識をもって判断すべきであろう。司法はあくまでルールの番人であって、政治家や国民によって営まれる政治という競技の帰趨そのものを左右してはならないからである。>

 その通りだ。司法・検察はあくまでルールの番人であって、政治競技の帰趨を左右してはいけないのだ。

 <他方、民主党が初期の段階で「国策捜査」という言葉を簡単に口に出し、また政府首脳も捜査情報が政府に共有されているかのような発言をしたことは、法の公平さへの信頼を貶める不見識な対応であった。日本には近代より前に、それなりの法の支配の伝統があるようであり、権力者が法を利用して政敵を攻撃する行為は一般的に慎まれてきた。そこに日本流の自由さの源泉があるとも見てよいのである。>

 日本における司法権力の自制の歴史。これもその通りだろうとは思うが、あの検察の逮捕の際に「国策捜査」以外に、検察の不当な介入を批判する言葉があったのだろうか? 結果論で言えば、中西氏の言う通りだとは思うが。

 <その意味で明確な根拠なく検事総長を国会に召喚するとか、まして時の政権がその政権への官僚の忠誠を試すといった政治の行政への度を越えた介入については慎重でなくてはならない。この点では特に「政治主導」を掲げる民主党政権においてこそ司法の独立を政治がいかに守れるのかという懸念がつきまとう。>

 と、まあ、民主党をチクリと批判するのだが、これは検察批判をしたカウンターパンチで民主党もちょっと批判した、というレベルなのか?

 <第三に、小沢代表の政治活動に見られる、政治とカネの問題がある。仮に小沢代表の言うように政治資金規正法上は問題ないとしても、多額の献金を特定企業から受けとっていたことは事実であり、資金の出所が特定企業であったことを知らなかったというのは言い逃れの印象をぬぐいがたい。それ以上に、小沢代表が55年体制からの脱却、政治改革の主唱者であったために世論の多数が小沢代表は言行不一致ではないかと見なしているのである。>

 ここを問題にするかどうか、が問題なのです。

 <ただ、問題は一人小沢代表にある訳ではなく、理念と現実の間で袋小路に入った日本政治そのものの反映でもある。中選挙区制に基づく55年体制下では、政治家個人と地元の関係が基本的な政治単位であり、政党はそうした政治家の集合体でしかなかった。>

 「小沢だけじゃない」という論理である。

 <しかし、日本社会の成熟化、都市化に伴い、こうした構造に批判が集まり、小選挙区比例制に基づく、政党中心の現在の制度が導入されたのである。政治資金規正法が曖昧なのは、中選挙区時代の政治家中心の制度の上に、政治改革以降の政党中心の考え方が接ぎ木されているからである。>

 今はまだ過度期という見方。

 <問題は政治改革の理念が地方政治の現実にどの程度適合しているかである。小沢氏の口は理念を語るが、体は地方政治の現実を体現している。しかしその小沢氏の力によって民主党は政権に近づいたし、自民党も理念と現実のぬえ的結合体である点では変わりない。日本政治に求められるのは現実を踏まえた上で理念を実現する巧みな制度設計の力量なのである。>

 最後の文章が中西氏の言いたいことなのだろうか? つまり制度設計の話なのだ。中西氏の論文を原文の意味を意訳しながら要約すると、

 <検察が総選挙前に曖昧な政治資金規正法違反容疑で小沢氏の秘書を逮捕したのはけしからん。これは今まで日本の司法が自制してきた政治権力へ介入しないという則を超えた行為だった。しかし、それを「国策捜査だ」と断定して非難する民主党も大人気ない。政権政党に一番近い政党が司法介入をするような発言をするべきではない。この問題は小沢氏だけでなく、他の政治家も同じだが、上半身は理念、改革の小選挙区型なのに、下半身の金集めは中選挙区型の行動様式をまだ残しているので、このキメラが絶滅しないと日本の政治は変わらない。やはり政治はそのように進めるための制度設計が大事だ。>

 と要約できると思う。

 似たような論文をどこかで読んだなぁ、と思ったのだが、毎日新聞の[記者の目]だった。

◆毎日新聞[記者の目]倉重篤郎記者論文

 毎日新聞4月1日朝刊[記者の目]論説室の倉重篤郎記者の<「フロンティア小沢一郎」進退論に思う/政治家に何を求めるのか/問われる二面性の軽重>と題した論文である。これもコピペする。

http://mainichi.jp/select/opinion/eye/archive/news/20090401ddm004070194000c.htm

 <これはあくまで私の予測だが、小沢一郎氏は民主党代表を辞任するだろう。世論調査結果はそうすべきだと言っているし、小沢氏も進退カードを切るタイミングをうかがっているように見える。ただ、日本の政治にとって小沢カードとはどんなカードなのか。我々はそれを自覚した上で、失う痛みも共有したい。>

 との衝撃的な書き出し。「辞めるだろう」という予測を最初に書いているのだ。

 <続投宣言した小沢氏だが、この先いくつも難関が待ち受ける。3月29日の千葉県知事選で党推薦候補の敗因とされただけではない。秋田県知事選(今月12日)をはじめとする地方選ラッシュ、世論調査の続投批判・民主党支持率低下報道。何よりも公設秘書が虚偽記載に問われた政治資金規正法違反事件の公判が始まり、検察側冒頭陳述でダミー献金の具体的かつ詳細なからくりと背景が指弾される。>

 検察側冒頭陳述を各紙がどう報じるか、は大きな問題だろう。これまでのように検察絶対善の書き方はできないのではないか、とは思うのだが。

 <さしもの小沢氏もこの攻勢には耐えられない、と思う。あの大連立工作後の「プッツン辞任」が思い起こされる。ただ、今回はもっと戦略的な対応をするだろう。まずは、逆風選挙情勢をきめ細かく点検し、このままでは民主党が比較第1党をも失いかねない、と見た段階で、できるだけ効果的に進退カードを切る。同時に代表の座を降りても実権を握り続けられる後継人事を模索するのではないか。>

 なるほどの予測である。

 <周辺には「いったん辞めたらもう元に戻れない」との声があるとも聞いている。確かに、党首に権力を集中させる現選挙制度では、かつての闇将軍的二重権力構造はあり得ない。従って、小沢氏は名実ともに進退窮まる情勢に追い込まれるだろう。ある意味では小沢政治の終幕である。>

 「小沢政治の終焉」。この言葉を、この20年間で何度聞いたことだろう。

 <では、小沢政治とは何だったのか。私は、「ポスト冷戦政治」を切り開こうとしてきたフロンティアだと評価する。冷戦下の戦後自民党政治は、日本を一度も交戦当事国とせずにこれだけ豊かな社会を作り出した、という意味で大成功だった。しかし、米ソ冷戦と経済バブルの崩壊による枠組み変化は、新しい政治を求め、永田町は七転八倒の苦しみの中から「政治改革」と「国際貢献」という回答をひねり出してきた。>

 そこまで言うのか? とは思うが……。

 <前者は政権交代可能な選挙制度改革として、後者は国連の冠のついた限定的な自衛隊の海外派遣として結実、現在に至っている。小沢氏は、ポスト冷戦に対応したこの二つの大政治の主唱者であり、実践者だった。それから十数年。日本政治の歩みは遅々としている。本来は役割を失ったはずの自民党が政権にしがみつき、昔の名前で食いつないでいる。小沢氏はといえば、唯一の政局プレーヤーとして、解党(1997年=新進党)、連立(1999年=自自公)、合体(2003年=自由党+民主党)、大連立工作(2007年=失敗)を経て、いままさに「悲願」の政権交代一歩手前まできたところだ。>

 解党→連立→合体→大連立工作かぁ。何か忙しくしている人だ、という印象だったが。
 <この間また、国会議員の定数減(衆院500→480、参院252→242)や政府委員の廃止、副大臣導入などの国会改革が小沢氏主導であったことも事実である。>

 そういうこともあったなぁ。

 <さて、小沢氏秘書の虚偽記載に話を戻す。禁固5年以下という重い罪である。ダミー認識がなかった、というのは常識的ではないし、累計金額も突出している。だが、かつて億単位の金を闇で受け取ったケース(金丸信元自民党副総裁、日歯連事件など)に比べると、額でも公開度でも反社会性は低い。しかも2006年までの違反である。>

 このへん、何を言っているのかよく分からない書き方だ。わざとそうしているのだろう。

 <こういう言い方はできないか。小沢氏の政治家としての二面性である。上半身は改革を唱えるが、下半身で田中角栄元首相以来の旧来型ゼネコン依存体質が抜け切れていなかった。その最後のしっぽを検察に踏まれた形だ。もちろん、贈収賄や談合事件でもし立件されれば話は別である。>

 ここが先ほどの中西寛教授の論と同じではないか、と思うのだ。

 <だとすれば、てんびんはどっちが重いのか。一方の皿に小沢氏の政治的実績と可能性、もう一つの皿に虚偽記載。政治記者として二十数年、国民が自分たちの幸福のために政治家をどう使うべきか、を考えてきた。力ある政治家が金銭スキャンダルで失脚するのを見てきた。某法相のように、政治家にクリーンさを求めるのは八百屋で魚を求めるがごとし、とは言わない。信なくば立たず、で、それゆえに政治に求心力ができる、と信じる。要は、我々が政治家に何を求めるか、であり、クリーン度はそれとの兼ね合いの相対的問題ではないか。>

 やっとこの論がおずおずではあるが、出てきた。書き方が難しいのだ。「政治家がクリーンでなくていいのか」と三木イズム原理主義者の大合唱が起こるからだ。

 <そこで、今に立ち戻る。ポスト冷戦に匹敵する歴史の節目に遭遇している。米国の政治、経済覇権はかつてなく弱まり、日本の外需主導・加工貿易立国路線も見直しを迫られている。過去の成功体験を超えた新しい政治が求められている。小沢民主党の対米対等、内需主導政策は一つの方向性のように見える。>

 おもしろい書き方だ、と思う。思い切り知っている言葉を並べた感じだが、嫌味がないのがいい。

 そして、結論は、

 <小沢カードをどう手放すか。日本政治の新たな局面となる。>

 だった。

 中西氏の論文も倉重氏の論文もいい論文だ。以前、ブログに紹介しておいた山口二郎氏の論文と合わせて必読文書といっていいだろう。

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2009年4月 6日 (月)

ミサイル発射、識者と外国の見方:小川和久、ラリー・ニクシュ氏ら+朝日新聞の「騒ぎ過ぎ」批判~読売新聞、産経新聞、日経新聞、朝日新聞4月6日、7日朝刊

 4月6日各紙朝刊は1面トップで北朝鮮のミサイル発射を報じた。いろいろな解説記事も出ているが、やはりこういう時には専門家の言っていることを聞いてみたい。各紙の識者談話を見てみよう。

◆読売新聞

 読売新聞4月6日朝刊は[談論~北朝鮮ミサイル発射]で田中均・日本国際交流センターシニア・フェロー(62)▽小川和久・軍事アナリスト(63)▽小此木政夫・慶大教授(63)3氏のインタビューを1ページで特集していた。随分と参考になる点があった。要点をメモしておく。

■小川和久氏

▽今回の弾道ミサイル発射の狙いは核弾頭の搭載を想定した大陸間弾道ミサイル(ICBM)の技術、データの習得北朝鮮はICBMを保有し、核弾頭を搭載する最終段階に入ったと理解するのが妥当

▽北朝鮮のミサイル技術は失敗した2006年7月の「テポドン2号」発射に比べ格段に向上した。燃料には腐食性が強く、取り扱いが難しいタイプの液体が使用されたと見られるが、地下にある燃料タンクや、タンクとミサイルをつなぐパイプには旧ソ連の技術に基づく腐食に強いコーティングが施されたはずだ。タンクに液体燃料を入れた状態でも最大6カ月は腐食しない可能性があり、北朝鮮がこの技術を応用し、地下にミサイル発射施設を配備する可能性も考えられる。燃料タンクからの注入も迅速で、発射までの時間は前回より短縮された。

北朝鮮にとって次の段階は搭載する核弾頭の小型化だ。日本全体を射程圏内に収める「ノドン」(射程1300㌔㍍)の複製とされるパキスタンの「ガウリ」は、すでに核弾頭を搭載している。北朝鮮もノドン用は小型化に成功していると見てもおかしくない。すでに10発以下の弾頭を保有しているとの見方が有力だ。

▽北朝鮮が開発を続ければ、ICBMの重量に合わせた小型の核弾頭を作ることは時間の問題になる。

核の脅威とは相手国の「意思」と「能力」を足し合わせたものを指す。友好で相互依存関係にある国が核やミサイルを持っていても、脅威にはならない。

▽日本がすべきことは北朝鮮の「意思」である敵意を外交によって変え、核・ミサイルの保有という「能力」を日米同盟の強化で封じ込めることだ。

▽ただ、米国は北朝鮮が核ミサイルで他国を攻撃するという無謀な行動に出るとは思っていないため、今回の発射は米国にとって、さして大きな脅威ではないと思われる。

▽これまで核拡散防止に重点を置いてきた米国の目をミサイルに向けさせるには日本からの働きかけが非常に重要になってくる。

▽さらに、日米同盟を100%機能させるには「日本に対する攻撃は米国に対する攻撃とみなす」という米国の主張を(攻撃国への具体的な反撃方法などで)明確にする必要もある。

▽一方、国際社会は6カ国協議よりもさらに広い枠組みで北朝鮮の各能力を封じ込める策を一体となって講じなければならない。

■田中均氏

▽日本は国連で「安保理決議違反」といった強いメッセージを出す交渉をすべきだが、結果は予断を許さない。

一番大事なのは国際社会の連携と結束だ。分断されたら北朝鮮の思うつぼ。日本は一義的に国際社会との連携を図らなければならない

▽今回の発射は遺憾だが、どこかで北朝鮮との交渉の道を探るべきだ。

日本外交に今後必要なのは「目的が何か」を考えること。日朝間の懸案である核、拉致、ミサイルなどの問題を包括的に解決するのが日本の国益であり、外交の目的だ。

日朝関係で必要なのは「対話」ではなく「交渉」。圧力などを背景に包括的な交渉を進める必要がある

▽2002年9月の日朝平壌宣言には、ミサイル発射凍結が盛り込まれた。今回の発射は宣言違反であろう。日本は交渉を進め、「違反」と指摘することが大切だ。

北朝鮮が日本の安全保障の脅威であることは間違いない

▽日本は北朝鮮の動きと連動して安保体制を見直してきた。1993~94年の第1次核危機では日米防衛協力の指針をまとめ、1998年の弾道ミサイル発射を受けてミサイル防衛計画を進め、情報衛星を持つことになった。日本の防衛体制はより強固にしないといけない。抑止力や強い日米同盟があっての外交交渉だ。

■小此木政夫氏

▽今回の発射は軍事的な脅威の著しい増大にはならない。米国にとって準備に数週間もかかり、天候に左右されるミサイルは脅威ではない。対日本の兵器はすでにノドンがある。

日本にとって最大の脅威はノドンに小型化された核兵器が搭載されることだ。重要なのはノドンの規制と非核化であり、発射に挑発されて、非核化に取り組む6カ国協議の可能性をつぶしてはならない。

 読売新聞の国際面の左側のページには中国と韓国の識者の話が載っていた。

 以下は4月7日産経新聞朝刊2面[私はこうみる ミサイル発射]に(談)として報じられた小此木氏の発言から。

▽この時期に発射した政治的狙いは二つ。①4月9日に国会に相当する最高人民会議が開幕し、金正日総書記が国防委員長に推戴され、3期目の金体制がスタートする祝砲という国内向け効果②オバマ政権へのデモンストレーション。朝鮮半島問題をアフガン、イラクより優先順位を下げているのはけしからんとして米朝交渉の土台つくりを狙った。

▽北朝鮮にとってはすべては3年後に向けた準備だ。金日成主席の生誕100年でかつ金正日総書記が満70歳を迎える2012年を「強盛大国」に入る年としている。それまでに米国と国交正常化を果たし、金総書記の後継体制づくりを終えたい考えだ。

▽最近の金正日総書記の激ヤセ写真は「金正日体制の終わり」を連想させる。米国をはじめ国際社会は金総書記の死去に伴う体制の混乱を恐れている。金総書記が元気なうちに交渉を進めたいと思うだろう。

北朝鮮には”成功体験”がある。2006年10月の核実験実施後、国際社会から非難が上がったが、2007年1月には米朝ベルリン会談が実現し、強硬姿勢を示していたブッシュ米政権と直接対話が始まった。

日本にとって最大の脅威は頭上を越えるテポドンではなく、ノドンと核兵器の結合だということを銘記すべきだ。

■張璉瑰・中国共産党中央党校教授

人工衛星であろうとミサイルであろうと、破片が他国領土に落下するなど他国の主権を侵犯しなかったのであれば、国際法の観点から非難はできない北朝鮮の言うように人工衛星なら、新たな制裁措置を講じる理論的根拠が不足しており、(中国など)他国の支持を得るのは難しい

北朝鮮の最近1ヶ月の態度が強硬になっているのは(2006年10月の核実験以降)北朝鮮が核兵器を保有したためだ。朝鮮半島非核化の崩壊後に生じた新局面で、北朝鮮外交は新たな段階に入った

▽北朝鮮の核問題が迅速に解決できなければ、北東アジア地域はますます面倒なことになる。これは(米国など)関係国が強硬策をとるべきだった時にとらなかった結果だ

▽今後、中国政府は6カ国協議の早期再開を目指すだろうが、北朝鮮が協議に戻っても核問題は解決できない。このままズルズルと引き延ばされれば将来、支払うべき代価はさらに大きくなろう。(6カ国協議を超えて)国際社会が共同で具体的措置を講じ、核拡散を防がなければならない

 (一見、原理原則論に終始しているかに見える教授の発言だが、よく読むと味わいがある。「強硬策を取るべき時に取らなかった」発言である。これはいつのことなのだろう? 北朝鮮の核実験なのか、それとも、もっと前の1994年の「ソウル火の海」発言の際だったのか? いずれにしても、教授は「時を逃した」と言う。そして、6カ国協議の主催国なのに、6カ国協議に期待ゼロだ。まったくその通りなのだが。6カ国協議は事態の先送りにすぎないし、北朝鮮に時間を与えているので、どんどんと日本の安全保障は脅かされる。日本は北朝鮮の核実験の際に、もっと考えるべきだったのだろうか?)

■尹徳敏・韓国外交安保研究院教授

▽北朝鮮が思い描く戦略は、オバマ政権のうちに米国との関係正常化を実現すると同時に核兵器保有も認めさせるという「パキスタン方式」の解決策だ。軍事的にも2006年の「テポドン2」発射が失敗したため、今度こそ成功させるとの意思があるのは明らかだ。

▽米国は当面、6カ国協議の場でミサイル問題を取り上げたい意向のようだ。6カ国協議で扱うとしたら、既存の五つの作業部会のほかに、ミサイル問題に関する作業部会を別途作る必要が出てくると思うが、北朝鮮が応じる可能性は低い。北朝鮮は可能な限り6カ国協議を消滅させる方向に動くだろう。米朝の直接協議を中心としたいのだ

今後は韓国と日本の役割、協力が極めて重要になる。米朝協議が行われた場合には、日韓が「北の核保有は絶対に容認できない」と米国に繰り返しアピールし、強い態度で交渉にあたるよう後押しすべきだ。中国に対しても、日韓で声を合わせ、もっと積極的に北朝鮮の書く放棄に取り組むよう促さなければならない

◆産経新聞

 産経新聞も4月6日朝刊2面に[私はこう見る ミサイル発射]で識者の声を入れていた。森本敏・拓大教授とラリー・ニクシュ米議会調査局朝鮮問題専門官だ。森本氏のは他紙で見ることにして、ここではラリー氏のを見ておく。

■ラリー・ニクシュ氏

▽日本が北朝鮮に最大限制裁しようと思えば、朝鮮総連の活動を禁止し、幹部を北朝鮮に送還することだ。総連の資金源を絶つことも効果的な制裁になる。米国の場合、北朝鮮をテロ支援国家に再指定し、対敵国通商法を再適用することだ。

▽もっともオバマ政権が再指定に踏み切ることはないと思う。政権が北朝鮮との交渉の責任者だったヒル国務次官補を駐イラク大使に指名したことは、ヒル氏が進めた対話路線支持を内外に示したといえる。政権はこの路線を継承し北朝鮮との対話に踏み切るだろう。

▽長距離弾道ミサイルの脅威を受けるのは米国だけであり、その脅威も非常に限定的といえる。日本や韓国にとり、より深刻な問題は、テポドン2号よりも中距離弾道ミサイルのノドンに核爆弾が搭載されることだ。直接の脅威を受ける両国で、核政策の見直しを求める声が出てくるかもしれない。米国はこうした動きを懸念することだろう

▽伝統的に民主党は共和党に比べミサイル防衛(MD)計画に懐疑的だが、北朝鮮が核爆弾をミサイルに搭載するようになったら、日本での計画を加速するだろう米軍のアジア・太平洋での配置も見直し、特にグアムの能力強化を図るのではないか

◆日経新聞

 日経新聞4月6日朝刊は国際面で5人の識者の談話集を掲載した。

■武貞秀士・防衛研究所統括研究官

▽発射強行には軍事的な意味合いが相当強い。そもそも北朝鮮に通信衛星が必要かというと甚だ疑問だ。携帯電話の普及など地上の通信事情の改善はかえって体制維持に不利に働く可能性があるからだ。

▽今後は核やミサイルの軍縮交渉を対等に行うため、米国本土に届く長距離ミサイルを手にしようとするだろう。今回は分離に失敗し着水したとみられるが、1998年の時よりも射程は伸びており、米国は弾道ミサイルの開発が予想以上に進んだことを目の当たりにした

■李鍾元・立教大学教授

▽北朝鮮は今後も「成功」と言い続けるだろうが、ミサイルという「外交カード」が不十分である可能性が高まったことで、米国は余裕を持って北朝鮮と交渉に対峙できるのではないか。メンツをつぶされた北朝鮮は「核放棄の中断」などの形で揺さぶりをかけてくる危険性がある。

■ジョン・パーク米平和研究所上級研究員(北東アジア専門)

▽今回の問題はオバマ大統領への大きな試練になる。今の米国に最も重要なことは北朝鮮への短期的な非難で終わらせないことだ。6カ国協議を再開し北朝鮮の非核化に取り組むという長期的な目的に焦点を合わせなければならない

日韓との同盟関係を重視して強硬姿勢に出た場合、北朝鮮が6カ国協議から去りかねないというジレンマが米国にはある。北朝鮮が同協議から抜ければ、米中関係に緊張をもたらす。仮に北朝鮮に金融制裁を科すにしても、重要情報は中国が握るため協力が不可欠だ。米国は中国との連携をもっと強固にすべきだ

 (このパーク氏のような日米同盟ではなく米中関係を重視せよ、という考えを持つ人たちがオバマ政権のまわりにいることを知らねばならない。彼らがなぜ中国をそんなに重視するのか? よく分析しないといけないだろう。)

■金燦栄・中国人民大国際関係学院副院長

▽北朝鮮が発射に踏み切った理由は二つあると思う。一つは金正日総書記の健康状態が思わしくなく、後継者への引き継ぎを考えている時期に国内に向け業績を示す必要があったこと。もう一つはオバマ大統領の注意を引きたかったことだ。

北朝鮮は独立国家であり、非常に敏感な国だ。中国はたしかに北朝鮮への影響力を持つが、外国が思っているほど大きくはない。中国外務省の談話からは北朝鮮への不愉快な態度が見て取れる。

▽焦点は国連安全保障理事会に移り、中国は非常に難しい立場に置かれた。中国が制裁に同意する可能性は大きくない。6カ国協議に影響が及ぶのも避けられない。

■裵延鎬・韓国統一研究院研究員

▽南北関係は当面行き詰まり状態が続くだろうが、韓国も北朝鮮もこれ以上の関係悪化を望んでいない。北朝鮮も韓国の対応を見極めながら緊張のレベルを調整するだろう。

▽韓国が米国主導のPSIへの全面参加宣言をひとまず留保したのは、極端な刺激を望んでいないことの表れだ。米国も比較的冷静な姿勢のため、米韓は連携して北朝鮮への刺激を抑えながら対応していくだろう

 (つまり、田中均氏が言うように、このままでは日本だけが突出して、米韓中露で北朝鮮とうまくやっていこう、という雰囲気ができかねない。南北関係はそういうものだ。)

◆朝日新聞

 ユニークだったのは朝日新聞だった。4月6日朝刊は読売新聞、日経新聞、産経新聞のような客観的な識者の談話を掲載せずに、対社面に軍事ジャーナリストの前田哲男氏の<発射させない外交努力必要>の見出しの談話と、<「軍事的脅威に日本免疫ない」/駐日特派員の見方>で韓国紙特派員の「日本社会は全体的に神経をとがらせすぎていたように見えた。まるで戦争がせまっているかのように伝えたメディアもあった」、「韓国に比べ日本は全体的に軍事的脅威に対する免疫がないのではないか」との話をいれた。また、同じ見出しの記事の後ろには米紙記者の「ワシントンやソウルの冷静さに比べて、日本は騒ぎすぎた」「北朝鮮に攻撃の意図がないことは分かっていたはず。バランスに欠け、パフォーマンスに負けたと言える」という談話だった。

 どうなのだろう? こういう記事を掲載する朝日新聞はこの特派員やジャーナリストの口を借りて自社の主張を語っているのである。

 米国だって韓国だってこんなに騒いでいないよ、日本は騒ぎすぎだよ、と高みの見物をしているような書き方だが、日本国民にとっての脅威なのであって、韓国民や米国民には脅威ではないのだから、それは「当然なのだ。

 そういう理屈を知っていながら、あえてこういう見出しでこういう記事を掲載するのが朝日新聞だ。本当に北朝鮮の味方なのだろうか? もしもそうならば、早くそう表明してほしい。そうすれば、日本国民は朝日新聞を北朝鮮の味方新聞として見るから、こういう記事を見ても「ああ、あそこならば」と冷静でいられるだろう。

 朝日新聞には国民を冷静にさせる責任がある、と思うのだが。

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2009年4月 5日 (日)

五百旗頭氏は日本の安全保障の進歩を力説するが…~4月5日毎日新聞朝刊[時代の風]

 毎日新聞4月5日朝刊2面コラム[時代の風]で五百旗頭真・防衛大学校長が<日本の安全保障/予測超えた20年の情景>と題して寄稿していた。

 五百旗頭氏は中学、高校時代に山岳部だった、という。その思い出から書き出している。

 <重荷を負って山を一歩一歩登る。頂上ははるかに遠い。小さな一歩をいくつ重ねても大きな高い山には届かないという思いにとらわれる。が、そうではない。歩き続ければ、一日二日の間に必ず日本の山は尾根筋にたどりつく。気分は晴れやかになるが、結構上り下りのきつい尾根筋の縦走。しかし1週間歩んで来し方の峰々を振り返ると、なんと遠くまできたことか、自らの小さなその都度の一歩の偉大さに感嘆する。山岳部に属していた中高時代の情景である。>

 そして、この20年である。

 <冷戦終結後の20年を振り返る時、私は同じような思いを抱く。バブルがはじけた後の「失われた10年」と呼ばれる日本経済のことではない。国際秩序が流動化し、危機があいつぐ中で、日本国内の安全神話も神戸地震やオウム・テロで崩落した冷戦後。しかし、日本はその中で、一つまた一つと安全保障上の対処を進めてきた。その都度の一歩は「小さすぎ、遅すぎる(too little,too late)」ものでしかないとも見えた。しかし、20年の来し方を振り返れば、ずいぶんと進んだものだと驚きを覚えずにはおれない。海上自衛隊の艦艇がインド洋とアデン湾で任務に就き、北朝鮮のミサイルを撃ち落とすか否かを日本政府が本気で考える。そんな事態を、冷戦体制が崩壊する1989年の時点で誰が予測したであろうか。>

 20年前に比べて、本当にそんなに変わったのだろうか?

 冷戦終結直後の湾岸危機はサダム・フセインのイラクがクウェートを侵略した危機。当時は確かに五百旗頭氏が言うように、「侵略者を抑止する正義の戦争」が世界的テーマとなった。「日本はどうするか」と問われたものだった。

 <戦後日本は憲法第9条がいかなる戦争をも否認しているのか、自衛戦争だけは許されるのかを、もっぱら議論してきた。政府の立場は自衛戦争を是としつつ、それ以外の軍事行動を厳しく戒める立場であった。自衛隊の海外派兵はあってはならないこととされた。この国内文脈から言えば、日本が多国籍軍に加わらず、「武力行使との一体化」の危険がある後方支援活動も慎んだのは自然であった。しかし、それは国際常識から見れば、国際安全保障への無関心であり、同盟国・米国への冷淡さを意味した。ペルシャ湾の石油を買って富を築きつつ、通商活動の前提となる安全保障からは逃げる日本という非難がわき起こった。国際的な対日批判が渦巻く中で日本は、掃海艇をペルシャ湾へ派遣して一定の評価を得た。これ以後今日までに、日本は侵略目的以外であれば自衛隊を海外で用いる方向へ移行している感がある。>

 やはり分岐点は自衛隊の掃海艇派遣だったのだろう。

 <まず1992年、宮沢内閣がPKO協力法を制定して、カンボジアに自衛隊を派遣した。自衛戦争と侵略戦争しか意識しなかった戦後日本に、そのいずれでもない世界の平和と安全のための国際協力活動というカテゴリーが加えられ、冷戦後の日本はそれに参画することとなった。>

 そうだったなぁ。

 <冷戦後の日本国民の安全保障意識を大きく変えたのが、北朝鮮の行動であった。1993年の核危機から今日まで、北朝鮮は核とミサイル、拉致と不審船によって、脅威の実在を見せつけ続けた。このうち、核とミサイルについては日本の手に余る。米国による核抑止の確認を求めるとともに、米国と共同でのミサイル防衛に小泉内閣が着手した。それから10年も経ないで、高度なシステムの概成を見ていることは驚くべきである。日本の技術基盤の高さを示すものといえよう。>

 この認識がリベラル派の政治学者の共通認識なのだろう。「ミサイルと核は日本の手に余る」から「米国に核抑止を求める」という論理である。

 <橋本内閣による1996年の日米安保共同宣言やその後の「2プラス2」合意に示されるように、日米同盟の拡大強化によって21世紀の安全保障を担う方向が日米間で合意されている。戦後史における最大の業績は、日米提携を半世紀で終わらせず、21世紀への資産として残したことであるといえよう。>

 裏から言えば、北朝鮮のおかげで冷戦後の日本の進路が大変な論議もなく、すんなりと決まった、ということかもしれない。

 <そのうえで、近年の日本が試みている安全保障面の自助努力にも言及したい。ミサイル防衛ほど人目を引かないが、統合運用の進展によって、陸海空の情報共有が進み、突発事態に対する迅速対応力が高まっていることが重要である。今日では制海権、制空権の前に、情報カバーで先手をとることが決定的である。また小さな改善であるが、高速ミサイル艇の配備も無視できない。かつて能登沖の不審船に対し、小渕内閣がはじめて海上警備行動を発令したが、猛スピードで逃走された。その教訓から、不審船をとり逃がさない性能を持つ高速ミサイル艇を建造・配備したが、それ以後、不審船が日本の近海に出没した形跡はない。安全保障面の具体的に役立つ自助努力の例といえよう。>

 小さいが、重要な「改善」だった。

 <逆説的に聞こえるかもしれないが、国際的連携がしっかりしている時に、自助努力はとりわけ効果的である。もし米国、中国など主要国との関係が崩れていれば、多少の自助努力を増やしても安心・安全は得られない。良好な国際環境の下でこそ自助努力は生きる。その面で、インド洋での給油活動とソマリア沖の海賊対処活動は、きわめて重要である。心ある国々との協力を積み重ねつつ、実効的な対処を進めることにより、経済危機に荒れる世界を無事に航海したいものである。>

 五百旗頭氏は自主防衛論の台頭を懸念しているのかもしれない。昨日書いたが、レオン・シーガル氏のような現実主義的政治学者の考え方がオバマ政権の外交政策の主流となれば、日本は近い将来、米国の「核の傘」に頼っていていいのか、という論議が起きかねない。米国は将来にわたって「日本には核の傘を差し続ける」といい続けるだろう。北朝鮮の指定国解除の際の米国務長官の異例の表明がその第一歩だった。

 だが、言葉とは裏腹に米外交は日本との同盟関係よりも米中関係を基調としたアジア・太平洋外交に切り替わっているのが実情である。日本の「井の中の蛙」の政治家、官僚、有権者がはっきりとそれを意識した時は、すでにポイント・オブ・ノーリターンを通り過ぎた頃だろう。

 その時、日本はどうするのか? 五百旗頭氏はそれを憂慮している、と見た。そこで、20年前との違いを強調し、日本も少しは安全保障で頑張っている、と言いたいのだろうが、それは詭弁だと思う。

 小川和久氏の「日本の戦争力」(新潮文庫、4月1日発売)によると、自衛隊は自分ひとりでは日本を守れない軍隊だ、とはっきり書いてある。米国が強い日本の再興を好まず、わざと奇形の軍隊として自衛隊を育てたのだそうだ。

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 つまり、自衛隊は日米安保条約がなければ日本を守れない。だから、日本は日米安保条約を廃棄できない。しかし、米国はその「核の傘」を空洞化しようとしている。この時の日本のジレンマは世界には分からない。

 その苦しみからどう抜け出すのか。今の大人世代には解決不能の問いかもしれないが、子孫への責任として今の世代が何らかの道を作っておくべきだろう、と思う。

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江上剛氏の<マスコミが悪人つくる?>、よくぞ言った!+山口二郎氏のコラム~東京新聞4月5日朝刊[新聞を読んで]と[本音のコラム]から

 東京新聞4月5日朝刊オピニオン面[新聞を読んで]で作家の江上剛氏が<マスコミが悪人つくる?>と題してマスメディアの垂れ流し報道を強烈に批判していた。共感できる主張が多かった。抜き書きする。

 江上氏は「腹立ちの1カ月だった」と書き出す。東京新聞の社説で血液型性格診断ブームに警鐘を鳴らしているのに、同じ日の放送&芸能面で血液型本ブームに乗って発売されたDVDの宣伝のような紹介記事が出ていた、と。

 そして、

 <小沢一郎氏公設秘書逮捕の報道で「関係者」の発言が氾濫していることだ。この「関係者」とはいったい何者だ?>

 と切り込む。

 <私は、民主党や小沢一郎氏の支持者ではない。むしろ小沢氏が、巨額の政治資金を集め、なぜ自身の政治団体で不動産などを購入したのか、十分な説明をしてもらいたいと思っている立場だ。その立場をもってしても今回の「関係者」情報の垂れ流し的報道には、非常に不愉快な思いがした。>

 つまり、小沢氏の蓄財疑惑を疑っている立場の人なのだ、この江上氏は。その人ですら「おかしい」と思うような報道が続いていた、という。

 <かつて筆者は、旧第一勧銀総会屋事件において、自分の知らない情報がこれでもか、これでもかと報道され、追い詰められた恐怖を味わった。特捜検事に事情聴取された際、「なぜこんなにも情報が出るのか? あなた方が漏らしているのか?」と聞いたことがある。当然、「知りません」という回答だったが、許せないと思った。犯罪者かどうかは裁判を経ないと決まらない。それなのにマスコミ情報で極悪人にされてしまう。抵抗する手段も無い。この恐怖は、味わった者しか分からない。>

 そうだったのか。江上氏と聞いても思い出さなかったのだが。

 <もし「関係者」が特捜検事であれば、公務員による情報漏えいだ。年金情報を漏らした社会保険庁の職員が処分されたこともある。捜査情報を漏らす検事がなぜ問題にならないのか。>

 もっともである。社会保険庁が集める情報とレベルが段違いに違ってプライバシーそのものの情報が特捜検事の下に集まるのだから、その情報を漏らす=リークしたら罰せられて当然なのに、今まで罰せられた、という話を聞いたことがない。

 <重要なことに関しては、特捜部は記者会見で発表すべきだ。東京新聞には、ぜひそういう方向に誘導してもらいたい。国策捜査という言葉が頻繁に使われるようになった。権力に逆らえば、極悪人にされるかもしれないという恐怖が国民に浸透しているということであれば、大いに問題だ。>

 という内容である。

 佐藤優氏や鈴木宗男氏が著書で開陳しているように、東京地検特捜部は傾向捜査をする。江上氏のような論を大切に、各紙も東京新聞のように報じてほしい。

◆山口二郎氏の主張はもっときつかった

 同じ東京新聞4月5日朝刊特報面コラム[本音のコラム]で山口二郎・北大教授が<「正義の味方」の愚かさ>のタイトルで書いていたことも同じことだった。関係部分だけ書き抜いておく。

 「朝まで生テレビ」に出て小沢氏の問題を話したら、共産党の国会議員が検察の立件は100%正しいという前提を崩さず小沢氏の金権政治体質を批判しまくった、という。

 <それが官憲の弾圧と闘った輝かしい伝統を持つ共産党の議員が言うことか、と私は呆れ、がっかりした。敵対する政党が検察に弾圧されるのは、対決する側にとってはざまを見ろという感覚なのかもしれない。しかし、いまこそ政治家は党派を問わず、明日はわが身という感覚を持つべきである。共産党は言うに及ばず、今の与党だって、仮に政権交代が起これば、検察や警察の弾圧を受ける側に回るのである。本来は、民主党対検察ではなく、議会対検察という構図で、検察の責任を追及すべきである。>

 共産党の議員だって、最近は堕落しているのだ。

 <われわれは何よりも、検察が正義の体現者だという錯覚を捨てなければならない。検察も所詮は劣化した官僚組織である。個々の検事は組織内での栄達を図り、手柄を挙げようとし、正義という言葉をもてあそぶ。そうした検察官のシナリオを鵜呑みにして悪者を叩けば、当人は正義派を気取っていられるのだろうが、端からは何とも愚かに見えることを知るべきである。>

 きつい言葉だ。山口氏の言葉は時代とともにきつくなっている。

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北朝鮮がミサイルを発射→失敗だった~4月5日昼からの産経新聞などのネット版から

 北朝鮮が4月5日午前11時半ころ、ミサイルを撃った。テポドンⅡなのだが、先端に丸い物体を取り付け、人工衛星風に見せている可能性が高いらしい。

 日曜日とあって、各紙の夕刊はなく、号外を出す社もあるかと思うが、ネットのホームページを使っての速報合戦になっているのかもしれない。というのは、私はいつも見ている産経新聞のネットしか見なかったので、分からないのだが、NHK総合テレビを見ながら、産経のネットを見ていると、大体の輪郭は分かってきた。

 つまり、予告通り打ち上げた、日本列島を飛び越えた、太平洋の岩手県沖に第1段目のブースターを予定範囲内に落としたが、第2段目は予告範囲よりも日本に近い海上に落ちた、ということ。零時半段階では三段目のブースターがどこに落ちたかは不明だ。NHKテレビも零時半からは通常番組の「のど自慢」放映にしていた。

 以下は産経新聞のネットに速報としてアップされた文章だ。

 これだけあれば、ドキュメントを読んでいるようで、分かりやすい。

◆【北ミサイル発射】東方向に1発 2009.4.5 11:35

 政府は5日午前11時32分、北朝鮮が長距離弾道ミサイルとみられる飛翔体を東方向に1発発射したもようだと発表した。政府は「テレビ、ラジオの情報に注意してほしい」と呼びかけている。日本海側の咸鏡北道舞水端里の発射施設から発射されたとみられる。

 政府筋は5日午前、「発射台の北側に位置するミサイルの追跡・制御レーダーシステムの稼働が確認された」と述べていた。レーダーシステムは通常、ミサイル発射の2~3時間前に起動するといい、昨日は稼働していなかった。

 朝鮮中央通信は4日午前10時に、「事前の予告通り、試験通信衛星『光明星2号』をロケット『銀が2号』でまもなく打ち上げる」と発表していた。

 航空自衛隊は地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を秋田、岩手両県に配備。海上配備型の迎撃ミサイル(SM3)を搭載した海上自衛隊のイージス艦2隻が日本海、弾道を追うイージス艦1隻が太平洋にそれぞれ展開している。 政府は、北朝鮮が発射したミサイルを「人工衛星打ち上げ」と主張したとしても、「弾道ミサイル計画に関連するすべての活動停止」を求めた国連安全保障理事会決議違反の行為だとして非難、安保理の議論に持ち込む構えだ。

◆【北ミサイル発射】イージス艦が飛翔体捕捉 2009.4.5 11:40

 防衛省幹部によると、日本海に展開中の海上自衛隊イージス艦が、北朝鮮から発射されたとみられる飛翔体を捕捉、追尾を開始した。

◆【北ミサイル発射】防衛省が飛翔体発射を確認 2009.4.5 11:42

 防衛省も5日午前、北朝鮮が11時30分ごろに「飛翔体」を東方向に1発発射したと発表した。

◆【北ミサイル発射】太平洋へ通過 2009.4.5 11:42

 政府は、北朝鮮が発射したミサイルの落下予測時間は、午前11時37分ごろで、秋田県沖の日本海と見られると発表した。その後、ミサイルは太平洋へ通過したと見られる。

◆【北ミサイル発射】官邸連絡室を対策室に格上げ 2009.4.5 11:42

 政府は5日午前11時32分、首相官邸の官邸連絡室を官邸対策室に格上げした。

◆【北ミサイル発射】政府、迎撃はせず 2009.4.5 11:46

 政府は5日午前、北ミサイルの発射を受けて、迎撃はしないとの方針を明らかにした。

◆【北ミサイル発射】1段目は秋田沖、2段目は太平洋に落下か 2009.4.5 11:46

 政府は、北朝鮮が発射したミサイルの1段目の落下予測時間は、5日午前11時37分ごろで、秋田県沖の日本海とみられると発表した。また、2段目は11時43分ごろごろ、日本東太平洋上に落下する見通しとした。ミサイルは太平洋へ通過したとみられる。

◆【北ミサイル発射】首相「安全確認を指示した」 2009.4.5 11:47

 麻生太郎首相は5日午前、北朝鮮が「人工衛星」名目の長距離弾道ミサイルを発射したことについて「まずは安全の確認、情報収集強化、情報の迅速な提供を指示した。細目はまだ言える段階ではない」と述べた。首相官邸で記者団の質問に答えた。

◆【北ミサイル発射】警察庁が対策本部設置 2009.4.5 11:50

 北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射が確認されたことを受け、警察庁は5日、池田克彦警備局長を長とする対策本部を設置した。

◆【北ミサイル発射】ミサイルは日本上空を通過 2009.4.5 11:51

 政府は5日午前、緊急連絡「北朝鮮飛翔体情報」を出し、「飛翔体はさきほど日本を通過した模様」と発表した。

◆【北ミサイル発射】1段目は秋田県沖に落下 2009.4.5 11:54

 防衛省は5日、「北朝鮮が発射した飛翔体の第一段ロケットが午前11時37分ごろ、秋田県の西約280㌔の日本海に落下したとみられる」と発表した。

◆【北ミサイル発射】岩手、秋田も被害情報なし 2009.4.5 11:55

 岩手、秋田両県警によると、5日午前11時45分現在、被害などの情報は入っていない。

◆【北ミサイル発射】2段目は「通告地域」をはずれる 2009.4.5 11:57

 政府は5日午前11時半すぎ、第1個目の落下物は午前11時37分ごろ、秋田県沖約280㌔の日本海に落下し、第2個目の落下部日本の東約1270㌔の太平洋に落下すると予測されるとの情報を相次いで発表した。2個目の落下予測地域は北朝鮮が事前に通告した地域より日本側に約880㌔近かった

◆【北ミサイル発射】発射探知は米国衛星 2009.4.5 11:57

 防衛省は5日、「発射の確認は米国の早期警戒衛星」と発表した。

◆【北ミサイル発射】空と海に航空情報と航行警報 2009.4.5 12:00

 国土交通省と海上保安庁は5日午前11時35分ごろ、航空機や船舶に注意を呼び掛けるノータム(航空情報)と航行警報を出した

◆【北ミサイル発射】自衛隊の追尾終了 2009.4.5 12:00

 防衛省は5日、「午前11時48分、日本の東約2100㌔の太平洋上で自衛隊による飛翔体の追尾を終了した」と発表した。

◆【北ミサイル発射】巡視船向かう 2009.4.5 12:07

 海上保安庁は飛翔体が落下したとされる秋田県沖に巡視船2隻を向かわせ、航空機3機に出発準備を指示した。

◆【北ミサイル発射】官房長官「厳重に抗議する」 2009.4.5 12:08

 河村建夫官房長官は5日昼、北朝鮮の長距離弾道ミサイルとみられる飛翔体発射について「極めて遺憾であり、北朝鮮に厳重に抗議する」と述べた。

◆【北ミサイル発射】韓国報道、韓国政府は「人工衛星確認」 2009.4.5 12:11

 【ソウル=水沼啓子】韓国の聯合ニュースは5日、同国政府当局者の話として「人工衛星の打ち上げであることを確認した」と報じた

 以上が零時過ぎまでにアップされた情報だった。

 あとは各国の外交戦が始まる。もう始まっているのだが。韓国政府が「人工衛星」と断定したように発表しているようなのもその一環だ。

 産経新聞が零時20分に、まとまった記事のアップを始めた。一応コピペする。

◆【北ミサイル発射】日本政府、「飛翔体」発射を確認 2009.4.5 12:20

 <北朝鮮は5日午前、東北部の咸境北道舞水端里から長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の改良型とみられる飛翔体を発射した。政府が、米国の早期偵察衛星や日本海に展開しているイージス艦のレーダー情報などから発射を確認。「一斉同報システム」(エムネット)で全自治体に発射情報を一斉配信し、報道機関にも即座に公表した。

 政府の官邸対策室によると、「飛翔体」は5日午前11時30分、北朝鮮から東へ1発が発射された。落下物については、1段目が同37分に秋田県西方約280㌔の日本海上、2段目は43分に日本の東約1270㌔の太平洋上に落下したと推定している。48分、日本の東約2100㌔の太平洋上で「飛翔体」の追尾を終了した。2段目は北朝鮮の事前通告よりも約1000㌔日本列島に近い地点に落下したことになる。5日正午の段階で日本への落下物は確認されておらず、被害もなかったもようだ。

 一方、日本海側に配備していた海上自衛隊のイージス艦「こんごう」と「ちょうかい」と、首都圏や東北地方の5カ所に配備していた地対空誘導弾パトリオット(PAC3)は発射しなかった。

 政府は、11時32分には「発射されたもよう」とする緊急連絡「北朝鮮飛翔体情報」(第1報)を一斉同報システム(エムネット)で各自治体や報道機関に通知、同時に首相官邸の官邸連絡室を官邸対策室に格上げした。これを受け、麻生首相は①日本領域の安全確認と航空機、船舶の安全確認②情報収集態勢の強化③国民への迅速な情報提供――の3点を指示した。

 河村建夫官房長官は正午から官邸で緊急の記者会見を行い、「たとえ人工衛星であっても弾道ミサイル計画に関連する核不拡散停止を求める安保理決議1695と1718に違反する。中止を求めてきたのに発射の強行は極めて遺憾だ。北朝鮮に厳重抗議する」と述べた。

 首相は間もなく河村長官、中曽根弘文外相、浜田靖一防衛相の3閣僚を交えた情報集約会議を開き、発射されたのがミサイルか通告通りのロケットなのかなどの分析に当たる。午後2時すぎには首相が議長を務める安全保障会議を開き、弾道ミサイルの発射禁止を定めた国連安保理決議1718号(平成18年10月)違反として国連安保理の開催を求める方針を確認する見通しだ。>

 午後2時から安全保障会議を開いているのかな?

 鳩山総務相の発言とか、朝鮮中央通信とかいろいろ産経新聞のネットがアップしてくれているので、その都度、チェックして見ていると、他のことがなかなか手につかない。

◆【北ミサイル発射】鳩山総務相「衛星の電波は確認されていない」 2009.4.5 14:11

 <鳩山邦夫総務相は5日昼、北朝鮮の長距離弾道ミサイルとみられる飛翔体発射に関し「(発射されたものが)静止衛星である可能性はほとんどない。人工衛星の可能性はゼロとは言えないが、27メガHz帯周辺の電波は確認されていない」と述べた。総務省で記者団に語った。

 北朝鮮は1998年8月にミサイルを発射した際、「衛星」から「金日成将軍の歌」などが27メガHzの電波で地球上に送られたと発表していた

 鳩山氏は「いま電波が来ていなくても、それで人工衛星でないという証明にはならない」とも述べ、引き続き電波の受信状況を調べる考えを示した。

 また、「(発射は)誠に残念なことだが、わが国の安全保障上、さまざまな危険があるということの証明でもある。決して安穏としていられる状況ではないということだ」と話した。>

◆【北ミサイル発射】「衛星を国際社会が支持」朝鮮中央通信 打ち上げは報道せず2009.4.5 14:13

 <北朝鮮の朝鮮中央通信は5日「わが国の平和的な宇宙開発計画をさまざまな国の政党、団体が支持している」との見出しで、「衛星」打ち上げを国際社会が支持していることを強調する記事を配信した。日米韓などが確認した同日午前の打ち上げ自体については、午後1時現在(日本時間)まだ報道していない。記事はロシアやチェコ、ベラルーシ、スペインなどの政党や北朝鮮との親善団体が、3月下旬から4月2日にかけ、北朝鮮の「衛星」打ち上げを評価する声明などを発表したと伝えた。北朝鮮メディアは3月から、友好関係にある海外の政党や団体による「衛星」打ち上げ支持の動向を断続的に報道している。(共同)>

 以上が産経新聞ネット版の記事なのだが、つまり、北朝鮮はまだ公式声明を出していない、ということなのだろう。

 一連の動きの中で一番注目なのが、次のオバマ米大統領の発言だ。これも産経新聞ネット版だ。

◆【北ミサイル発射】オバマ米大統領「明白な安保理決議違反」 2009.4.5 13:39

 <【ワシントン=有元隆志】欧州を訪問中のオバマ米大統領は5日、北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射について「挑発的な行為」であり「国連安全保障理事会決議の明白な違反だ」と非難する声明を出した。

 日本などと連携し今回のミサイル発射問題を安保理に提起する考えを示した。北朝鮮に対してはさらなる挑発行為を行わないよう強く求めた。

 北朝鮮は「人工衛星」打ち上げと主張しているが、大統領は声明で「テポドン2号」発射と明言した。

 大統領は北東アジアの安全と安定の確保に引き続き責任を果たす考えを示した。

 核兵器など大量破壊兵器やその運搬手段であるミサイルの拡散を防ぐことは、「政権の最優先事項」と位置付け、検証可能な形で朝鮮半島の非核化を目指すと強調した。

 オバマ大統領は3日の記者会見で、「何ら処罰を受けることなく他国の安全を脅かすことはできないと、北朝鮮に知らしめるためにも、関係諸国と協力して適切な措置をとる」と述べており、制裁措置も検討していく考えを示している。>

 以上の産経新聞の記事で大事なのはオバマ氏が「人工衛星」とか「ロケット」と言わずに、「テポドン2号」と明言したことだ。米軍事衛星などの情報でも人工衛星が静止軌道に載っていないことが分かった、ということではないかと思う。

 以下も産経新聞ネット版の記事である。

◆【北ミサイル発射】北朝鮮に「遺憾の意」 官房長官声明 2009.4.5 15:16

 <政府は5日、北朝鮮による「飛翔体」発射を受けて、「今回の発射は、わが国として容認できるものではなく、北朝鮮に厳重に抗議し、遺憾の意を表明する」とする河村建夫官房長官声明を出した。

 声明では、ただちに国連安全保障理事会の招集を要請し、北京の大使館を通じて北朝鮮に抗議したことや、今後は①日米同盟に基づく米国との協力を進め、韓国などとも緊密に連携②6カ国協議参加国や安保理メンバーなどとの連携③国内での対北朝鮮措置を速やかに検討――との方針を示した。一方で、北朝鮮には弾道ミサイル計画の停止を含むこれまでの安保理決議の「即時かつ完全な履行」と、拉致、核、ミサイル問題の包括的解決に向けた具体的な行動を求めた。今回の発射は「わが国を含む近隣国が核やミサイルの脅威に引き続きさらされている中での安全保障上の重大な挑発行為」とし「安保理決議や日朝平壌宣言、6カ国協議の共同声明とも相いれないものだ」と強く非難した。>

◆朝鮮中央通信が人工衛星打ち上げに成功と発表

 時事通信のフラッシュニュースで午後3時半ごろに流れた。まだ産経新聞や他の新聞社のホームページには載っていない。

 朝日新聞ネット版が相当に遅くなって、以下の記事を掲載した。

朝鮮中央通信「衛星発射に成功」「将軍の歌、地球送信」 2009年4月5日16時4分

 <【ソウル=牧野愛博】北朝鮮の朝鮮中央通信は5日午後「運搬ロケット『銀河2号』によって人工衛星『光明星2号』を軌道に進入させることに成功した」と伝えた。通信によれば、「銀河2号」は5日午前11時20分に発射され、9分2秒後に「光明星2号」を軌道に正確に送り込んだという。「光明星2号」は地球から最も近い地点で490㌔、最も遠い地点で1426㌔の楕円軌道を回っており、周期は104分12秒だとしている。「金日成将軍の歌」「金正日将軍の歌」などを470メガヘルツで地球上に送っているとした。また、同通信は「銀河2号」が3段式だったことも明らかにし「今回の衛星発射の成功は我が人民を大きく鼓舞している」とした。>

 また産経新聞のネット版の記事である。

◆【北ミサイル発射】麻生首相「極めて遺憾だ」「国民は冷静に対処し感謝」 2009.4.5 15:58

 <麻生太郎首相は5日午後、首相官邸で行った安全保障会議で「度重なる警告を無視して北朝鮮が飛翔体を発射したことは極めて遺憾だ。このことはオバマ米大統領の声明と共有している」と述べ、北朝鮮を非難した。河村建夫官房長官が5日午後の3回目の記者会見で明らかにした。

 その上で首相は「国民に対する通報など万全を期していただいた。昨日(4日)の誤報もあったが、十分訓練されて行われたものだと思う。この貴重な体験を今後に生かしていきたい。国民が冷静に対処したことに感謝したい」と述べた。

       ◇

 麻生太郎首相は5日午後3時25分から、首相官邸で記者団の取材に応じ、北朝鮮による「飛翔体」の発射について「極めて挑発的で、断じて看過できない」と激しく非難した。その上で「国連安全保障理事会決議違反であることははっきりしている。そういったことも含めて対応していきたい」と述べ、安保理で対北朝鮮決議の上程を求める考えを示した。
 また首相は「国民の安全が一番だった。今のところ日本の国土、領海内に落下物による被災などがなかったのは良かった。国民が冷静に対応したことに感謝する」とも述べた。>

 また夕方から夜にかけての産経新聞ネット版記事から重要なものをピックアップしておこう。

◆【北ミサイル発射】総連前はヒッソリ 「日本人騒ぎすぎ」と非難も2009.4.5 16:31

 <北朝鮮のミサイル発射を受け、東京都千代田区の在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部近くには5日、右翼団体などが街宣活動を行ったが大きな混乱はなかった。

 発射予告初日の4日に続き警視庁の機動隊員約50人が街宣車が入れないよう総連中央本部付近の道路を規制。総連側も門が閉められたままで人の出入りはほとんどなかった。

 一方、北区の東京朝鮮中高級学校では5日、入学式が行われたが、式の参加者はミサイル発射に冷めた反応だった。

 孫の入学式に参加した無職の男性(72)は「事前に通告しているし、他国に迷惑をかけた訳じゃない。日本人は騒ぎすぎ」と日本側の対応を非難。3人の子供を持つ埼玉県朝霞市の主婦(41)は「以前電車内で(民族衣装の)チマチョゴリが切られたことがあった。同じようなことが子供たちに起こるのでは…」と不安そうだった。>

 「日本人は騒ぎ過ぎ」と言う在日朝鮮人の人たちは何を考えているのだろうか? 金正日総書記が正しいと思っているのだろうか?

 朝日新聞のネット版は次のように北朝鮮の打ち上げ失敗を報じている。

◆「北朝鮮、弾頭も含めて太平洋に着水」米軍発表 2009年4月5日19時5分

 <【ワシントン=鵜飼啓】北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)と米北方軍司令部は5日、北朝鮮が発射したミサイルについて、「2段目以降は弾頭も含めて太平洋に着水した」と発表し、北朝鮮が衛星打ち上げに失敗したことを明らかにした。

 日経新聞も韓国情報として米軍と同様の失敗説をアップしていた。

北朝鮮の「人工衛星」は失敗 韓国国防相  2009.04.05.19:36

 <【ソウル=島谷英明】韓国の李相憙国防相は5日夜、国会の国防委員会の答弁で、北朝鮮が「人工衛星」を搭載したと主張して5日午前に発射した長距離弾道ミサイルとみられる飛翔体について、米韓当局の判断として「ロケットの1段階、2段階、3段階の単体全部が海上に墜落した。どんな物体も軌道に進入したものはなかった」と述べ、北朝鮮の「人工衛星」の打ち上げは失敗との見方を示した。>

 下も朝日新聞。朝日新聞は人工衛星説にご執心のようだ。

◆「人工衛星発射を試みたとみている」韓国外相が見解 2009年4月5日18時13分

 <【ソウル=牧野愛博】韓国の柳明桓外交通商相は5日午後、同省で記者会見し北朝鮮が発射した「ミサイル」について「人工衛星の発射を試みたとみている」と語った。「成功したかどうかは、追加的な判断が必要だ」と述べ、慎重に見守る考えを示した。同政府関係者は「軌道などから分析すると、人工衛星の打ち上げだったようだが、実態は弾道ミサイルに他ならない」と説明した。>

 韓国政府関係者は実態的にミサイルとしているのに、それは見出しにしていない。いかにも朝日新聞らしいなぁ。

 次も朝日新聞。何か、「自制呼びかけ」とか「人工衛星だ」とか、世論操作しようとしているようにも見える。

◆ロシア「衛星ロケットの発射」関係国に自制呼びかけ 2009年4月5日17時32分

 <【モスクワ=副島英樹】ロシア外務省は5日、北朝鮮が発射したのは人工衛星ロケットだとし、朝鮮半島の緊張をエスカレートさせないためにも、関係国に自制するよう呼びかける声明を発表した。すべての関係国と密接に協議しながら、事態を見守り続けるつもりだとしている。インタファクス通信によると、ロシアの外務当局は当初、北朝鮮の発射行為が安保理決議に違反しているかどうかの判断は、ロシア軍専門家の分析後になるとの姿勢を示していた。>

 このようなロシアの態度と朝日新聞は同じなのだろう。

 次の記事は読売新聞だ。

◆中国外務省、各国に自制求める…北朝鮮「衛星」発射 2009年4月5日15時03分

 <【中国総局】中国外務省は5日、北朝鮮の「衛星発射」に関する談話を発表し、関係各国の反応に留意しているとしたうえで、「各国が冷静に自制するよう望む」と表明した。>

 ロシアと中国は事前に打ち合わせをして、同じことを言っているようにも見える。

 「各国が冷静に」というのは、「日本は我慢しろ」ということと同じだ。日本の安全保障問題に中国もロシアもまったく関心を払わなかったことをテイクノートしておこう

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2009年4月 4日 (土)

北朝鮮がミサイルを日本上空に撃つ非常識さ~4月2日毎日新聞夕刊の田中均氏寄稿+4月4日読売新聞夕刊

 読売新聞4月4日夕刊対社面3段見出し<他国上空に発射は極めて異例/ロケット発射/多くは海上向け>は勉強になった。

 <北朝鮮が「人工衛星」と称して発射準備を本格化させている弾道ミサイルは、軌道が日本の上空を通過するよう設定されているとみられる。世界の主なロケットなどの発射場は万一に備え、人口が多い陸地を避けており、他国の上空に発射するケースはほとんどないのと比べると極めて異例だ。>

 というのだ。

 <防衛省によると、世界の主要な発射場12か所のうち8か所ではロケットの打ち上げ方向を海上に設定している。残る4か所も、自国の領土や極端に人口が少ない地域の上空を通過するようになっている。>

 というのである。

 <宇宙飛行士の若田光一さん(45)が先月、国際宇宙ステーションに向かったスペースシャトルは、ケネディ宇宙センターから大西洋に向けて発射され、今年1月23日に打ち上げに成功した日本の国産ロケットH2Aも、種子島宇宙センターから太平洋に向けて発射された。宇宙航空研究開発機構の担当者は「万一の事故に備えれば当然のこと」と語る。>

 そうだろう、と思った。今までも疑問に思っていた。

 <地球の自転の影響を受けるロケットは一般に東に向けて発射した方が加速が速く、効率が良いとされるが、自国の東側がアラブ圏と接しているため、政治的配慮から、あえて西側の地中海上を打ち上げ区域に設定しているイスラエルのような国もある。>

 東に向ければ偏西風が吹くのか、とも思うが、その風ではなく、地球の自転が影響しているのか。

 <1999年11月に打ち上げに失敗したH2ロケットの事故原因解明に取り組んだ東北大の上條謙二郎名誉教授(宇宙推進工学)は、「北朝鮮の発射場がある舞水端里から日本の東北地方に向けて発射することは、性能面や技術面だけを考えれば合理的かもしれない。しかし国際社会がどう受け止めるか全く考慮していない打ち上げ方法だ」と話している。>

 性能面や技術面を考えると合理的、という見方を科学者がしていることも考慮しなければならないが、これが嫌がらせであることも確かである。

◆田中均氏も同様の見方だ

 4月2日毎日新聞夕刊文化面のコラム[時をよむ]で田中均・日本国際交流センターシニアフェロー(元外務審議官)が<迫る北朝鮮「ミサイル」発射/米韓中露と結束して地域の安定目指せ>のタイトルで寄稿していたが、田中氏は文章を、

 <北朝鮮のミサイルあるいは「人工衛星」のロケット発射の動きは、この地域の情勢を緊迫化させている。それがミサイルであれ、衛星であれ、他国の領域の上を超えて発射するというのは穏当ではない。国際社会の反発を買うのは必至である。>

 と書き出している。

 <ミサイル発射に、軍事能力のデモンストレーション以外の理由は見当たらない。「自分たちにはこういった能力がある。甘く見るな」というメッセージを送っているつもりなのだろう。>

 として、北朝鮮の権力者たちの決定の背景に大国への猜疑心の強さがあるだろう、と推測している。

 田中氏は日本外交が6カ国協議の残る4カ国との連携を重視して、緊密化することが重要だ、と説く。一番被害を受けることが明白な日本が一番強いメッセージを国際社会に発信するのは当然だ、と言う。だが、6カ国協議の門だけは開けておけ、と主張している。まあ、田中氏が言う通り、今の日本は日米安保体制で脅威に対処せざるを得ないので、米国との連携強化が最も大切だ、という主張には同感だが、米国も韓国もそれぞれ日本とは違う国益を守るという大目的を持っている。それが主権国家の連合の限界でもあるのだが、日本政府がその限界を意識していることは十分分かるが、日本国民がその限界を知らなさ過ぎるのではないか、と思っている。

 浅井基文氏のように北朝鮮が国際ルールに則って打ち上げる人工衛星をどうして非難するのか、という論を堂々と披瀝できる日本社会である。

 言論の自由は当然最も大切にしなければならない基本権ではあるが、カウンター主張の自由も保障されねばならないだろう。

 浅井氏に対しては「では北朝鮮が人工衛星だ、と言って核弾頭を積載したノドンを日本の秋田県に撃ち込んできたら、あなたはどうするのですか」と聞きたい。浅井氏はこの質問には答える義務があると思う。

 浅井氏に限らず進歩派を気取る人たちは人権、人権といいながら、金正日政権が北朝鮮国民の人権を踏みにじっていることについては口を閉ざす。都合が悪くなると口を閉ざす。これでは議論にならないだろう。和田春樹氏もそうだ。

 北朝鮮が日本の脅威であることは間違いない。その北朝鮮の肩を持つ文化人たちには、こういう質問に真摯に答えてほしい。

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「かんぽの宿」ボールは東京地検特捜部に渡された:総務省が業務改善命令~4月4日東京新聞朝刊から

 「かんぽの宿」で新しい動きが出た。東京新聞4月4日朝刊が1面トップで<総務省/かんぽの宿で改善命令/日本郵政/『重く受け止める』>である。<鳩山総務相(左)から改善命令書を受け取る日本郵政の西川社長=3日午後、東京・霞が関の総務省で(石橋克郎撮影)>というキャプションの付いた3段扱いのカラー写真が付いている。

 本文を読んでみよう。

<総務省は3日、オリックス不動産への宿泊保養施設「かんぽの宿」売却問題について、入札手続きが不公平、不透明で企業統治にも問題があったとして、日本郵政に対し日本郵政株式会社法に基づく業務改善命令を出した。同時に取締役会チェック機能も不十分として、6月末までに管理体制などの改善策の提出を求めた。日本郵政が業務改善命令を受けるのは初めて。>

 という前文である。

 <鳩山邦夫総務相は同日、総務省に西川善文日本郵政社長を呼び、業務改善命令書を手渡した。西川社長は「指摘を重く受け止め対応する」と言明した。会見で鳩山総務相は「国民共有の財産に対する認識が欠けている」と強調したうえで、日本郵政側から提出された資料の分析結果を公表。16項目にわたり問題点を挙げた。>

 業務改善命令である。

 <この中で、入札の最終段階で別のホテル運営会社が有利な雇用条件の提示をしたにもかかわらず、オリックス不動産への高評価を続けたと指摘。さらに、オリックス不動産に79施設を譲渡しようとした際の109億円という価格設定に関し、日本郵政内の稟議書では当初、80施設で640億円との想定もあったと指摘。価格設定の方法について「不適正」としている。また、一括売却ではなく個別売却の方が有利との助言機関からの報告があったのに、あえて一括売却を選択したことなどを問題点として挙げている。>

 随分と新しい事実が出てきたものだ。

 <総務相は「16項目を見れば、(オリックス不動産への売却を前提にした)出来レースと十分疑われる内容だ」と批判した。>

 以上が1面の記事だが、東京新聞はこの日の経済面トップ<かんぽの宿 見えぬ将来/新たな譲渡先 難航必至/日本郵政に改善命令>で詳細に説明していた。

この記事にも<記者会見を終え笑顔で退席する鳩山総務相=3日午後、東京・霞が関の総務省で>の3段相当のカラー写真と、2段相当の<会見で「不正はまったくないと信じている」と語った日本郵政の西川善文社長=3日午後、東京・霞が関で>のカラー写真が付いていた。

本文を読む。小松田健一記者の署名記事だ。

<かんぽの宿の売却をめぐる問題で鳩山邦夫総務相が3日、日本郵政に対し業務改善命令を出し、オリックス不動産との売却契約を白紙撤回するなど、売却をめぐる混乱は収束する見通しとなった。今後は法律が定める譲渡か廃止の期限(2012年9月末)までに新たな譲渡先を確保できるかに焦点が移るが、空前の不況下で見通しは立たない。>

 そういうことなのだろう。鳩山氏にはもっと頑張ってもらいたかったが、解散・総選挙が視野に入った中ではこれが精一杯だったのだろう。

 <日本郵政によると、2007年度末時点で売却対象の70施設のうち、黒字は11施設、収支トントンが1施設にとどまる。同社は「黒字化への努力が不十分だった」(西川善文社長)として、増収と経費削減策に取り組む。>

 そうかぁ、この受け記事は日本郵政側の言い分を書いているのか。

 <高コストの一因だった清掃や飲食部門などの外部委託は、段階的に直営化。人員の自然減は補充せず、スリム化を図る。高級料理を積極的に売り込むなど、販売戦術も見直して客単価を上げる。収益が改善すれば事業価値も向上し「結果的に高値売却ができる」(日本郵政幹部)ためだ。>

 当たり前の話ばかりだ。鳩山氏が指摘したことだけだ。

 <だが前途は厳しい。多くのかんぽの宿は、ロビーや宴会場など共用スペースが広いため、施設規模の割に客室数が少なく収益性が低い弱点を抱える。国営時代は簡易保険加入者の福利厚生施設という位置付けで、法律で利益を上げることを禁止され、問題はなかった。民営化された現在は誰でも利用できる一方で、近隣宿泊施設との厳しい競争にさらされる。>

 建物の設計そのものに問題あり、とでも言いたげだが、それはいくらでも工夫が出来るはずだ。

 <ホテル業界に詳しい関係者は「客入りが比較的良いのは、離れだけといった超高級旅館か、思い切った低価格の施設。中途半端では客を集めにくい。改修してもコスト回収は難しい」と指摘する。>

 工夫だ。

 <先月発表された公示地価が3年ぶりに下落へ転じるなど、不動産市況の大幅な悪化も懸念材料だ。>

 日本郵政の言い分だけを聞いて書いているように見える。

 <日本郵政は弁護士らによる第3者検討委員会を2月に立ち上げており、数カ月程度で新たな資産売却ルールを策定する方針。オリックス不動産に代わる譲渡先の募集は、早くても今秋以降となる。景気動向によっては名乗りを上げる企業が現れない可能性もあり、譲渡が遅れればその分、日本郵政は施設維持の負担を強いられる。>

 だから、工夫をしろって。

 この記事の関連記事の形で<鳩山総務相、「節目」に満足げ/出来レースは認定できず>の記事があった。金森篤史帰社の署名記事だ。

 <「3カ月前、私の正義感に基づいて提起した問題が今日、節目を迎えて大変うれしい」。鳩山邦夫総務相は3日、「かんぽの宿」売却資料の精査結果を発表するための記者会見で、満足げな表情を見せた。>

 まあ、やれることはやった、というところか。

 <鳩山総務相が「出来レースではないか」としてオリックス不動産への一括売却に異議を唱えたのは1月6日。2月中旬には、日本郵政が売却契約を白紙撤回する事態へと発展した。こうした動きに「鳩山総務相のパフォーマンスだ」との批判もあっただけに、総務相は精査結果をまとめたこの日、「かんぽの宿の譲渡先選定がいかに出来レースだったか、これで皆さんにご理解いただける」と述べ、自らの正しさが証明されると胸を張った。>

 まだ3カ月しかたっていなかったんだ。

 <だが、日本郵政側はそうは受け取っていない。西川善文社長は3日の記者会見で「不正はまったくないと信じている」と断言。総務相自身も「総務省は出来レースだと認定したのか」と会見で問い詰められると、「国民の立場からは出来レースと見える内容だ」とトーンダウン気味だった。>

 西川VS.鳩山の戦いは水入りというところなのだろう。というか、逃げ切った西川氏の勝ちなのかもしれない。

 <総務相の“完勝”とはいかなかったようだが、重要なのは「かんぽの宿」売却を国民が納得できる手続きを経て適正な価格で実現できるかどうか。今後、総務相の指導力が一段と問われそうだ。>

 と金森記者は書いているが、問題は不正を働いた人たちを特定して、国民の財産を不当にくすねようとした罪で罰することではないか。

 あとは東京地検特捜部の仕事である。

 いつまでも筋の悪い談合事件に注力するのでなく、こういう公共性を破壊する事件をスパッと手掛けてほしい。国民の検察なのか、財閥・支配層のための検察なのか、今こそ鼎の軽重を問われている。

 ボールは東京地検特捜部に渡された。早くトライしてほしい。

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2009年4月 2日 (木)

西松建設関係者を国会招致し真実を語らせよ、という金子秀敏氏の論に賛成~毎日新聞4月2日夕刊コラムから

 毎日新聞専門編集委員の金子秀敏氏の論が面白い。

 4月2日夕刊2面コラム[早い話が]である。タイトルは<小沢一郎のどこが悪い>である。

 <マスコミでは小沢一郎・民主党代表たたきの大合唱だ。「政治とカネ」「ゼネコンと政治家」となると、自然「ケシカラン」とボルテージが上がる。だが、小沢代表のどこが、どう悪いのか。そこがあいまいだ。だからヒステリックなバッシングに終わっている。>

 という書き出しはその通りだと思う。

 <世論調査をすると「小沢代表の説明に納得がいかない」という意見が圧倒的に多い。同感だ。だが、説明を求める相手は、まず西松建設ではないのか。>

 というところから、金子ワールドに入っていく。

 <西松建設は、多額の「裏金」をダミーの政治団体を通じて、小沢代表の資金管理団体「陸山会」に合法的な「表金」として献金した。西松建設内部で行われた資金洗浄だが、受け取った小沢代表の公設秘書も政治資金規正法違反に問われた。これから法廷で争われる。>

 その通り。

 <国民だれもが不思議に思うのは、西松建設は、なにが目的で陸山会に多額の献金をしたのかである。公共事業の受注に便宜を図ってもらおうとしたのか。入札で天の声をだしてもらったのか。もしそうであるなら、野党の国会議員でも公共事業の入札に関与できる仕組みがあることになる。もしそのような仕組みがあるなら、秘書は、あっせん利得処罰法違反や収賄罪に問われなければならない。そのような仕組みがないとすれば、小沢代表にはこれ以上説明のしようがない。>

 そうなのだ。小沢氏が答えられない質問を記者たちは毎日のように小沢氏にぶつけて、困らせている。答えないから、記者も読者もまたまた欲求不満が募る、という悪循環が始まっている。

 <小沢代表は、陸山会の献金処理が適切に行われたかどうかについては説明をしている。しかし、西松建設がなにを期待したのかまで説明する筋合いではない。だから説明を聞いた国民が「納得できない」とフラストレーションを感じるのは自然のことだ。>

 そういうことなのだ。金子氏のユニークなのは、欲求不満に終わらず、解決策を提示する親切さを持っていることだろう。

 <どうすべきなのか。話は簡単だ。西松建設に説明責任を果たしてもらうことだ。なぜダミーの政治団体を作ったのか、当事者である西松建設から聞くのが一番だ。国会に西松建設幹部を呼んで、なぜ与野党議員に多額の献金をしたのか、公共事業の受注が狙いだったのなら、陸山会やほかの国会議員の事務所が関与した事実があったのかどうか、そうであるならどのような仕組みだったのか。>

 そうだ、どうして誰もそれをしないのか?

 <その仕組みが明らかになれば政治の浄化は一歩すすむだろう。この事件では、姿の見えない「関係者の話」「西松建設関係者の話」がメディアにさかんに流れている。その「関係者」を国会に呼んで納得がいくよう話してもらうべきだ。共産党はそういう主張らしいが、与党もメディアも小沢たたきには熱心でも、政治浄化には不思議と腰が引けている。>

 ここでは共産党はまともなことを言っているようだ。腰が引けている与党よ、ちゃんと事件解明に協力してほしい。小沢氏を叩いても国民はその腹の内を見抜いていますよ。

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盧武鉉氏親族に5億円贈収賄疑惑:やはり汚い大統領だった~4月2日産経新聞朝刊から

 いよいよ盧武鉉前大統領に捜査の手が迫ってきた。韓国の検察は頑張っている。日本の検察は方角違いの捜査ばっかりやって、竹中平蔵氏らの「改革利権」にいつまで頬被りできるだろうか? 世論が沸騰しないと着手できないのか? 情けない限りだ。少しは韓国を見習ってほしい。

 産経新聞4月2日朝刊国際面の<盧武鉉氏 疑惑深まる/韓国贈収賄事件/親族に500万㌦>である。ソウル支局の黒田勝弘特派員が書いている。

 <韓国検察当局が進めている前政権の政治資金疑惑捜査が盧武鉉前大統領自身に迫る勢いを見せ、世論の関心を集めている。事件は盧前大統領と同郷の企業会長による政官界に対するワイロがらみの工作疑惑。最新の検察捜査で盧氏の親戚に500万㌦(約4億9500万円)もの巨額資金が流れていたことが明らかになり、その資金の意図と行方が焦点になっている。>

 5億円贈収賄事件である。こういうのを政界捜査というのだ。東京地検特捜部がやっているのは政界捜査ではない。みみっちい国策捜査だ。

 <問題の企業人はスポーツシューズ製造で知られる朴淵次・泰光実業会長で、故郷の釜山・慶尚南道地域を背景に同郷の盧武鉉前大統領一家に対し以前から“スポンサー”の役割をしてきた人物とされる。>

 盧武鉉氏のスポンサーだ、と。

 <朴会長はすでに脱税容疑で逮捕され、朴会長と親しかった盧氏の実兄、盧建平氏も収賄容疑で逮捕されてた。今回の500万㌦は盧大統領の退任直前、朴会長から盧建平氏の娘婿(30代の実業家)に投資の名目で提供されたというが、何らかの代価を狙った不正政治資金ではなかったかとする疑惑が持ち上がっている。>

 5億円だからね。桁が違う。

 <今回の事件では盧前大統領の側近だった現職国会議員の李光宰・民主党議員や当時の大統領秘書官をはじめ、前政権の多くの要人や大統領の親戚たちが政治資金疑惑などで相次いで調べられ逮捕されている。>

 韓国政界の腐敗ぶりはすごい。民主的に選ばれたことだけが自慢だった盧武鉉大統領が歴代大統領以上の腐敗振りだった、というのは笑わせる。

 <朴会長はこれまで各界に“資金”をばらまいてきた太っ腹な人物として知られる。このため検察・警察・国税関係はもちろん、現在の李明博政権や与党関係者の名前も疑惑リストに上がっているという。>

 タニマチによる政界混乱は日本では1990年代にたくさん経験しており、日本の政治家は勉強しているので、用心するようになっているだろう。

 <その結果、すでに現政権の秋富吉・前大統領秘書官が「税務調査への手心要請」の代価としてワイロを受け取った容疑で逮捕され、与党ハンナラ党の有力議員も調べられている。>

 この辺は検察の中立性を担保するためで、当たり前の話でもある。

 <韓国では歴代政権下で大統領やその家族、側近など権力に群がって利益を得ようとするワイロ事件が横行してきた。>

 その通り。

 <しかし左派・革新系の盧武鉉政権は「われわれは清潔だ」と主張し「無能であっても不正・腐敗はない」「金銭疑惑はありえない」と言い続けてきたが、実態は過去の政権と大差がなかったことになる。>

 この「無能であっても」というのが面白い。

 <盧武鉉前大統領は釜山近郊の金海市の自邸にこもったまま事件には口をつぐんでいる。盧前大統領自身にまで疑惑捜査が及ぶかどうか注目されているが、今のところ書面などによる調べはあっても、検察に呼ばれたり逮捕されるようなことはないだろうとの見方が政界などでは一般的だ。>

 思い切って逮捕したほうがいいだろう、と岡目八目は思うのだが。

 <一方、李明博政権は自分たちの方にも捜査の手が伸びはじめているため、捜査の行方に戦々恐々だ。「前大統領逮捕」という事態は「政治報復」とみられかねないため「現政権にとっても負担になる」(大統領側近)という声も聞かれる。>

 青瓦台は表面上はそう言うだろうが、やはり、ここは「肉を斬らせて骨を斬る」示現流の極意でいかないと、北朝鮮シンパたちにダメージは与えられないだろうと思う。

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入社式での社長訓示:就職戦線で生き残った君たちにトップは何を訴えたのか?~各紙4月2日朝刊から

 世界同時不況の中の4月1日、入社式というのも、若者が一つの歴史の節目で証人になるいいチャンスではあったろうと思う。特に今年は内定取り消しなどが相次ぎ、就職できない学生だけでなく、リストラにあうサラリーマンも増えている。そんな中で、各界トップは何を語ったのか? 4月2日朝刊各紙から発言をピックアップしてみた。

▽カルロス・ゴーン日産自動車社長=これまでで最も厳しく、変動の激しい金融、経済環境に直面している。皆さんは危機の真っ只中にあるグローバル自動車産業の一員となった。国内事業は円高でコスト競争力の維持に苦労している。危機が去れば再び成長する態勢を整える。(二酸化炭素を排出しない)ゼロエミッションカーで業界のリーダーになる。

▽川村隆・日立製作所会長兼社長=皆さんと同じようにフレッシュな気持ちで出社した。日立は関東大震災、1929年の大不況や戦災など経営危機を克服してきた。100年に1度の経済危機の中で、日立の本当の力が試されている。グループが直面する危機に当たり、全身全霊を尽くして再生を成し遂げる。

▽渡辺捷昭・トヨタ自動車社長=しばらく非常事態が続く。トヨタの将来に不安を募らせている人もいるかもしれない。この数年の我慢の時期に総力を結集し磐石な地盤をつくれば、明るい未来は見える。ものづくりの原点に戻り、低価格で良質な商品をタイムリーに提供する。この機会を次の時代への転換点とし、自らの未来を切り開く認識と気概を持って欲しい。

▽小林喜光・三菱化学社長=中東や中国の新設備の稼動で市場構造が決定的に変わる。早急に事業の抜本改革と再編を達成しなくてはならない。

▽西松遥・日本航空社長=今回の世界経済混乱の教訓は経済活動における倫理観の重要性だ。燃料価格の安定や円高によるコスト低下、海外旅行の需要復活といった明るい兆しも出てきた。

▽宗岡正二・新日本製鉄社長=中長期的には世界経済は成長に転じ、鉄鋼需要は間違いなく回復する。

▽荻田伍・アサヒビール社長=大変な時期に入社したと考えるか、変革期こそチャンスと考えるかで、皆さんの行動や成長は違ってくる。前向きにやってみようと考えれば、知恵と工夫が生まれる。

▽新浪剛史・ローソン社長=(新卒採用122人のうち外国人が39人)今までとは違う改革が必要だ。

▽岡田元也・イオン社長=短期間で世の中が変わったのに顔をそむけていた。一番大事なのはスピードだ。

▽芦田昭充・商船三井社長=不況時に入社した社員は将来伸びるといわれている。皆さんのファイティング・スピリットに期待する。

▽高橋恭平・昭和電工社長=入社式を迎えた君たちには(過去の)しがらみはない。先輩社員、会社、経済を引っ張る気概を持って欲しい。

▽加瀬豊・双日社長=新入社員といえどもリーダーシップを取れ。

▽石橋直・西松建設社長=凪いだ海での出航を用意できなかったことを本当に申し訳なく思う。悲観的にならず、チャレンジして欲しい。「乱」の後に遠からず「治」が来ると信じている。

▽片山幹雄・シャープ社長=歴史を見れば、深刻な不況の時ほど大きなイノベーションが起きている。

▽大坪文雄・パナソニック社長=次の成長に向けた積極的な挑戦を始めている。同じ思いでこの取り組みに加わってほしい。ものづくりの能力をどこまで高めることができるか、がすべての土台だ。

▽永易克典・三菱東京UFJ銀行頭取=実体経済からかけ離れ、膨張したグローバルマネーが、世界金融危機という未曾有の逆風となった。

▽塚本隆史・みずほフィナンシャルグループ社長=みずほには数々の修羅場をくぐってきた貴重な経験と実績がある。

▽渡辺英二・日興コーディアル証券社長=金融危機も行動の仕方によって躍進のチャンスとなる。

▽鈴木茂順・大和証券グループ本社社長=我々の仕事は金融機関のプロフェッショナル同士が戦う厳しいビジネスだ。高い目標を成し遂げるプロになってほしい。

▽ハワード・ストリンガー・ソニー会長兼社長=非常にエキサンティングで困難な時代だ。成長にはこの嵐を生き抜き、強固で身軽な体質に変革しなければならない。果敢にチャレンジし、イノベーションを開化させてほしい。

▽馬田一・JFEスチール社長=粛々と研究開発・コスト削減・人材育成などをやり続ける。

▽飯島彰己・三井物産社長=「現状維持は破滅」との問題意識で挑戦と創造に努力することが本質だ。

▽伊東信一郎・全日本空輸社長=危機において一致団結できることがANAのDNA。

▽石川祝男・バンダイナムコホールディングス社長=期待されているのは閉塞感を突き崩す元気さ、面白さだ。

▽小谷進・パイオニア社長=一人一人が再び成長するための原動力になってくれると期待している。

▽佐藤広士・神戸製鋼所社長=社会からの信頼を回復するよう努めていかねばならない。責任ある言動を。

▽古森重隆・冨士フイルムホールディングス社長=創業以来様々な困難と闘うことで危機を乗り越えてきた。今回も必ず乗り越えられる。自分自身を鍛えるチャンスと捉えてほしい。

▽武藤信一・伊勢丹社長=先が見えない時代だからチャンスだ。

▽内田恒二・キヤノン社長=プロフェッショナルとしての意識を持ち、夢の実現に邁進してほしい。

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中谷巌氏の論からは心の叫びが聞こえない~4月2日毎日新聞朝刊

 毎日新聞4月2日朝刊文化面に[経済への視点]という大型コラムが新設された。担当の鈴木英生記者によると今後、毎月第1木曜に掲載し、中谷巌・三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長、経済産業省の官僚で評論家の中野剛志氏、竹森俊平・慶応大教授の3氏が執筆するそうだ。

 鈴木氏の書いた注によると、中谷巌氏は新自由主義を日本に持ち込もうとした経済学者の一人で『資本主義はなぜ自壊したのか』(集英社インターナショナル、1785円)という自己批判の書が売れている、とあった。この本は制度的に社会の一体感を取り戻すため、一種のベーシック・インカム(最低限所得保障)を提案。山森亮・同志社大准教授の『ベーシック・インカム入門』(光文社新書、882円)が参考になる、とあった。本文の中にある「社会分断」については湯浅誠氏『反貧困』(岩波新書、777円)も参考になり、社会的つながりの欠如をも「貧困」に含めた、とあった。

 中谷氏のコラムに戻ろう。タイトルは<日本が生き残るために/「社会の分断」を乗り越えよ>だった。

 書き出しから、

 <世界大不況の出口はまだ見えない。その中で日本経済はどうやって産業の競争力を維持し、長期的に生き残っていくのか。これが我々にとって最大のテーマだ。>

 と日本の長期的生き残りに焦点を当てていることを示す。

 大不況克服のための具体的経済政策の発動という政策論だけでなく、

 <日本という国が世界規模の大きな地殻変動の中でいかにして存在感を維持し、競争力を維持することができるのかという、より長期の視点>

 を忘れてはならない、というのだ。そして、20年間を振り返る。

 <20年ほど前、日本は「一億総中流社会」だと言われていた。あるいは「あまりにも平等すぎる」として、人々のやる気を高めるためにアメリカ流の成果主義を取り入れるべきだとか、所得税の累進度を弱めるべきだといった議論がなされてきた。いわゆる新自由主義思想がさまざまな形をとりながら日本に浸透し始めた時期であった。>

 1989年が20年前である。

 <それから二十余年が過ぎ、日本社会は大きく変わった。最たるものは、日本が「一億総中流社会」でも、ずば抜けて平等な社会でもなくなったということである。貧困層が急増し、社会が「分断」され、階層化が顕著になり始めた。たとえば、年収200万円以下の給与所得者の数が1000万人を超えたし、OECD(経済協力開発機構)が発表した貧困率(中位所得者の稼ぐ所得の半分以下の所得しか稼げない人たちの割合)の統計を見ても、日本は先進国の中でアメリカについで2番目の「貧困大国」になったのである。>

 これは、巷間よく言われていることではある。

 <企業の中も、派遣など非正規労働者が全体の34㌫を超え、企業組織の階層化、分断化が顕著な現象となっている。また、現下の不況下にあって、「派遣切り」も常態化した。これは日本経済の競争力にいかなる影響をもたらすのであろうか。>

 ここまでは20年間の変化である。

 <筆者はこういった「日本社会の分断」こそ、日本の競争力にとって最大の危機だと考える。なぜか。それは日本の歴史を考えればすぐにわかることである。日本が世界第2の経済大国になれた理由のひとつは、日本が西洋のような強烈な階級社会ではなかったということにあると考えられるからである。西洋の歴史を考えると、ヨーロッパでは異民族との戦いが日常茶飯事であった。ヨーロッパにおける民族大移動とは、すなわち、異民族との戦いが頻繁に起こったことを意味する。戦争で敗れた民族は奴隷となり、やがて、社会の下層階級を形成した。それが階級社会を作り上げる基盤となった。アメリカは先住インディアンとの戦いはあったが、彼らはほとんど殲滅させられてしまった。結局、アメリカはアフリカから奴隷を輸入したから、やはり、奴隷制度が階級社会の基盤となったのである。>

 階級社会批判である。

 <ところが、日本は異民族との本格的戦争は経験していない。大陸から渡ってきた弥生人と土着の縄文人の戦いも、やがては融合に向かった。その結果のひとつが「神仏習合」であり、聖徳太子の「和を以て尊しとなす」という思想であった。つまり、日本は本格的な異民族間の抗争がなかったために西洋におけるような奴隷制度がなく、したがって、奴隷が下層階級を形成することもなく、本格的な階級社会は生まれなかった(もちろん、これは程度の問題として申し上げている。そもそも、国家というものができる背景には必ず階級が形成されたからである)。それが「平等社会」日本の基盤にある。>

 『資本主義はなぜ自壊したのか』にあった独断と偏見の論を繰り返しているなぁ。

 <日本企業の競争力は「現場力」にあるとはしばしば指摘されてきたが、「現場」が強いというのは、日本が平等社会であり、一般従業員の「当事者意識」が高いという事実から生まれている。階級社会的な要素が少ない日本では、現場従業員に上から搾取されているという「被搾取感」が比較的少ない。だから、現場での仕事ぶりは意欲に満ちており、投げやりなところがない。これが「現場力」の源泉にある。>

 「現場力」ですか。

 <逆に、階級社会の様相が強い欧米をはじめとする諸外国においては、現場の従業員には真面目な改善努力などはなかなか期待しにくいのである。「どっちみち頑張ってもどうにもならない」という諦め感が先に出るからである。この日本の「強み」が、貧困層の増大などによる「社会の分断」によって今、壊されかかっている。日本社会が階層化されることによって、社会も企業もこれまで誇っていた「一体感」を失い、それが「現場力」を奪う大きな要因になり始めているのではないか。日本を階層社会にしてはならない。不況が厳しくても、一部労働者を切り捨てにするのではなく、痛みは全員で分かち合うという確固たる「哲学」が求められていると思う。>

  『資本主義はなぜ自壊したのか』から一歩も出ていない。なぜ毎日新聞が今、この「転向」学者を使う気になったのか? 中谷氏からは、もっと心の奥底からほとばしる論が聞きたいのだ。今の中谷氏は「格差反対」だが、日本がもっと落ち込んだ時には「まず勝者から浮かび上がろう」と言い出すのではないか、という疑いを、私はまだ持っている。

 この自己批判の書の信用ならないところである。小林秀雄が生きていたら、あの鋭い真贋を見分ける眼力で「偽者めが」と言うのではないか、と思うのだ。その辺の読者の思いをもう少し受け止めて、中谷氏には心の奥からの叫びをメディアを通じて伝えるか、沈黙するか、どっちかにしてほしい、と思う。

 ここに書いてあることならば、鈴木記者があげている湯浅氏の「反貧困」を読んだほうが役立つのだから。

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ウォン安を武器に巻き返してきた韓国、日本は産業構造転換が必要だ~中央日報3月31日、4月1日、2日付+4月2日産経新聞[正論]伊藤元重氏論文

◆ウォン安を武器に日本を駆逐する勢いの韓国自動車・電子産業

 韓国の中央日報4月1日社説は<一部の経済指標好転に惑わされてはならない>と、経済指標の好転に喜びながら、国民の気を引き締めていた。

http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=113416&servcode=100&sectcode=110

 <一部経済指標が好転している。きのう統計庁が発表した2月の産業活動動向によると、鉱工業生産と消費財販売額が前月より増えた。今後の景気を示す景気先行指数もプラスに転じ、同行指数も1月に比べ減少幅が大幅に鈍化した。また韓国銀行と三星経済研究所が発表する企業と家計の心理指数も改善した。これに先立ち2月の貿易収支と経常収支も大幅な黒字に反転することがわかり、一部では景気が底を打ち回復期に入ったのではないかという性急な見通しも出ている。>

 という書き出しである。その1日発表された韓国の3月の貿易収支は過去最大の黒字だった。それを報じた中央日報4月2日の記事を読んでみよう。

 <先月の貿易収支が過去最大の黒字を記録した。知識経済部は1日、3月の輸出が283億7000万㌦、輸入が237億6000万㌦となり、46億1000万㌦の貿易黒字を計上したと明らかにした。知識経済部の李東根・貿易投資室長は「今年1年間で200億㌦以上の黒字を出すだろう」と話している。先月の貿易黒字が過去最大規模となったのは、輸出が減少したものの輸入がそれよりも大幅に減少したため。いわゆる「縮小型」の貿易黒字だ。「たくさん稼いで」黒字を出したのではなく、「あまり使わず」黒字を出したということになる。>

 どこの国も縮小型にならざるを得ないのだが、その中でも輸出で稼いでいる、というのはたいしたものだ。3月の輸出が前年同月比21.2%減で、輸入が36%減だった、というのだ。2月は29億3000万㌦の縮小型貿易黒字で、2カ月連続の黒字。記事は黒字を喜びながらも、資本財輸入が大きく減ったことを懸念。

 <先月の工場設備のような資本財輸入の減少規模は前年比31%となった。景気が容易に回復しないものとみる企業が投資を控えているということだ。企業が投資をしなければ雇用創出も難しい。>

 と雇用への影響を心配する。また、輸出は自動車が46.2%減、半導体が38%減、機械が36.4%減、家電が33.1%減。輸出相手先別では日本向けが31.3%減、米国向けが18.2%減、中国向けが13.4%減などほぼすべての地域向けで減少した、という。記事は、
 <貿易収支が大幅黒字を出したといってすぐに景気が回復すると期待するのは難しい。ただ黒字によりドルが国内に大量に流入し、外為市場の安定には寄与する見通しだ。>
 と分析していた。

 雇用に不安がある、とはいうものの、米国と比べ比較にならないほどの権力集中が特徴の大統領制をフルに活用して経済再建に取り組む韓国では、その国家経済の規模の相対的な小ささもあって変化が激しい。巨大艦隊のような日本に比べて身のかわし方がうまい、とは思う。危機に陥った時の国民の結束振りも、ナショナリズムを前面に出してまとまりがある。自由な民主主義の日本とは大きく違う。

 3月25日各紙夕刊が1面や2面で報じた日本の2月の貿易統計速報では日本の輸出は前年同月比49.4%減の3兆5255億円。過去最大の減少率を4カ月連続で更新した、とあった。ただ、日本でも輸入が減ったので、行って来いで貿易黒字だった、という内容である。

 似たような傾向、と思うかもしれないが、日韓の差は貿易依存度の大きさによると思う。韓国は日本によく似た貿易立国ではあるものの、依存度は日本よりは低い。それに、韓国の輸出が日本ほど減らない大きな理由は経済が壊れた米国、欧州、日本向けの輸出以外にアフリカ、南米など発展途上国向けや中東向けの輸出の割合が日本より大きく、そういう地域の中には今回の世界同時不況の影響をあまり受けない国々もあるからだろう。
 つまり、そうとは気づかずとも、結果的に危険分散していたわけだ。

 それと、何といっても一番の原因はウォン安である。

 以前、円高・ウォン安で韓国の自動車、IT、家電産業が日本の産業を欧米から駆逐するかもしれない、と書いた。駆逐は大げさかもしれないが、ウォン安という最大の国際競争力を生かし始めた、というわけだ。

 中央日報3月31日の<「現代自、トヨタに追いつく絶好の機会」/ブルームバーグ>を読むと、その実態が分かる。

 <28年ぶりとなる最悪の低迷に陥っている米自動車市場で、現代(ヒョンデ)自動車が絶好の機会を迎えているとブルームバーグが30日に報じた。ブルームバーグによると、今年に入り米国市場の自動車販売は39%急減した。世界トップの自動車メーカー、日本のトヨタ自動車も36%減少した。これに対し現代自動車は4.9%増加した。こうした販売増加は20%減と振るわない現代自動車の国内販売の緩衝の役割をしていると同通信は分析している。競合メーカーがぐらついている間にウォン安を武器に米国市場攻略に積極的に乗り出したためだ。過去6カ月間に対ドルでウォンは13%下がったが、円は8.5%上がっている。「安物」というイメージを脱ぐのにも成功している。現代自動車が米国市場で初めて発売した高級モデルの「ジェネシス」は1月にデトロイトモーターショーで2009年北米カー・オブ・ザ・イヤーに選ばれた。現代自動車は新興市場でも好調だ。1~2月の2カ月間で中国・インドでの販売がそれぞれ38%と13%増加した。KTB資産運用の張寅煥代表はブルームバーグとのインタビューで、「現代自動車がトヨタに追いつける生涯1度(once-in-a-lifetime)のチャンスをつかんだ」と評価した。また「今後1~2年の間にチャンスを作るため、現在の危機を最大限活用すべきだ」と述べた。>

◆日本は産業構造の転換で対処すべきだ

 では日本はどうすればいいのか? 今までは輸出産業こそが日本の基幹産業だから、輸出産業の生き残りを助けることが国益だ、という考え方が永田町、霞が関と財界を支配していた。だから、円安を維持するための日銀の政策が支持された。国民の貯蓄に利子がつかないゼロ金利政策でも「やむを得ない」と我慢を強いてきたのも輸出産業を助けるためだった。

 ところが、円独歩高の現在、日銀がいくら頑張っても円高はおさまらない。

 国民経済のファンダメンタルズがいいのだから仕方ない。

 では、どうするか?

 円高のメリットを生かしながら、輸出産業主導から農業、教育産業、介護・医療産業の充実に重点を切り替えるしかないのだろう、と思う。そして、その際、「内需」=「鎖国」というような誤った考えを捨てて、その内需産業を国際競争力十分の輸出産業に育てることが肝要だろう。

 これとほぼ同じ論が4月2日産経新聞[正論]に掲載されていた。

◆伊藤元重・東大教授の提言

 東大の伊藤元重教授の<内需産業を「アジア」で鍛えよ>である。

http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090402/biz0904020323009-n1.htm

 ≪日本に2つの弱点あり≫、≪国内に閉じ込めるな≫、≪「活力」を取り込む改革≫の三つの小見出しがついていた。

 コピペさせていただき、読んでみよう。

 まず伊藤教授は米国発の危機なのだが、日本は「実体経済は欧米以上に悪い」として、これは「世界的な経済危機が日本の弱点を突いているのだ」と書き、日本の二つの弱点として、①自動車やエレクトロニクスなど特定の産業の輸出に頼り過ぎてきた②内需産業があまりにも不甲斐ないこと――の2点をあげ、「この二つの弱点を是正することが必須である」と言う。

 そして、政府の内需拡大策は「経済学の用語を使えばディマンドサイドからの政策である。政策的な手法によっていかに需要を創るのか、というディマンドサイド政策はもちろん重要である。ただ、中長期的には、サプライサイドから内需関連産業の体質を強化することが必要」と言う。

 消費者が買ってくれるように、という対策だけでなく、産業構造の転換が大切だよ、といっているわけだ。

 <医療・食料・高齢者支援・環境関連・住宅・教育・観光など、いわゆる内需関連産業を自動車やエレクトロニクスに続く日本の基幹産業に育て上げることが求められている。新たな基幹産業を育てることなく、日本が長期的な繁栄を続けることは難しい。また、将来への展望が描けないかぎり、足下の経済を元気にすることだって難しいはずだ。>

 まったく、その通りだと思う分析である。そして、この紙面ではその具体論には踏み込まず、

 <「内需」という表現が与えかねない誤解の危険性>

 に注意喚起するにとどめている。

 <内需関連産業というと、どうしても日本国内で日本人によって日本人のために行われる産業活動であると決めつけることになりやすい。しかし、内需関連産業を国内に閉じ込めておくことこそ、産業の成長を挫くもっとも大きな要因であるのだ。内需産業を海外に向かって開くことこそ、産業を飛躍させるために必要な条件であるのだ。象徴的な言い方をすれば、「アジアを市場に」という視点で内需関連産業を育てなくてはいけない。>

 「内需」という言葉にはある種の魔力があるようである。

 具体論に踏み込まないと言っていたものの、伊藤教授は農業と医療産業を例にあげて少し具体論に触れていた。

 <たとえば、食料を例に考えてみよう。日本国内の農産品を日本の消費者に届けるだけの産業であれば、どんなに頑張っても限界がある。しかし、世界の貿易は双方向貿易となってきている。一方で海外から安価な食料を積極的に輸入しながら、他方で日本の質の高い食料をアジア近隣国に輸出していくのだ。日本の食料や飲料メーカーも、豪州やアジアなどでのM&Aを積極的に進めているが、日本という狭い枠にとらわれずアジア太平洋の大きな市場の中で飛躍する時期に来ている。>

 <医療でも市場開放を真剣に考えるべきだろう。最近はシンガポールなどが積極的に動き始めているようだが、海外からの患者を積極的に受け入れることで、医療の技術向上と規模拡大を実現することができるはずだ。海外から多くの患者を受け入れることができるようになれば、医療分野での雇用拡大を実現することができる。>

 <現在は医師不足が社会問題化しているが、将来の医療需要の拡大を前提に、より多くの人材を医師や看護師などの医療分野に引き込むことができ、雇用拡大にもつながるはずだ。もちろん、日本の人材だけで日本の医療を切り回すのではなく、積極的に海外の人材を受け入れることも検討しなくてはいけないだろう。>

 である。

 きっと眼目は「人の国際化はしなきゃあならないんだよ」という隠された論点をさらり、と書いてある部分なのではないか、と思う。これは言うは易く、行うのは難しい問題なのである。

 <自動車やエレクトロニクスなどの日本の基幹産業がグローバル市場の中で鍛えられてきたように、日本の農業や医療を産業として強いものにしていくためには、日本という狭い枠の中に閉じ込めてはならないのだ。>

 <閉鎖的な産業にとどめておくということは、結局は従来の利害関係の中にとどめるということで、大きな改革を実現することは政治的に非常に難しくなる。「内なる国際化」という言い方があるが、外に向かって市場や産業を開くことで、はじめて改革の可能性が出てくるのだ。>

 <アジアは世界経済最大の人口を抱え、しかも世界でもっとも速いスピードで成長を続けている。今回の世界的な危機でも、想像以上に安定しており、世界経済の中で存在感を増している。90年代後半のアジア通貨危機の教訓が生かされているとも言える。日本としても、こうしたアジアの活力を利用しない手はないのだ。内需関連産業を周辺国に向けて開放することで、この成長市場の活力を日本国内にも取り込めるはずだ。>

 この「アジアに開く」時、開き方を考えないと、またまた小泉構造改革の愚を繰り返して、成長はしても雇用がない、というバカバカしい結果になる危険性がある。そうなると、ドイツやフランスなどにすでに起きている人種対立、排外主義の勃興もありうる。ものすごくセンシビリティのあふれた難しい問題だ、ということを経済学者たちにも理解してもらいたいと思う。

 しかし、産業構造の転換、それも国民、庶民のためになる日本国民のための構造転換が求められていることは確かである。

 それを思い切ってやり切れる人物は小沢一郎氏だと思っているのだが。

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2009年4月 1日 (水)

北朝鮮が核弾頭をノドンに搭載した、と国際危機グループ報告書~毎日新聞4月1日夕刊、4月2日と5日の読売新聞朝刊から

 毎日新聞が4月1日夕刊1面2番手<北朝鮮/核小型化に成功か/国際調査機関報告/ノドン搭載も>にジュネーブの澤田克己特派員が重要な記事を書いていた。本当ならば大変なことである。記事を読む。

 <安全保障問題を専門とする国際シンクタンク「国際危機グループ」(本部・ブリュッセル)は31日、北朝鮮が核爆弾の小型化に成功し、日本を射程に入れる中距離弾道ミサイル「ノドン」(射程約1300㌔㍍)用の核弾頭を配備した、との報告書を公表した。関係国政府の内部メモに基づく情報という。事実ならば日本にとって重大な脅威となる。>

 この「国際危機グループ」というのはどんな団体なのだろうか? それにしても、米情報機関のトップが同様の報告を米議会かどこかでしていたので、やはり、そういう情報が北朝鮮関係者から出ている、と考えたほうがいいのだろう。

 <報告書はまた、ノドンの実戦配備数を最大320基と見積もった。韓国政府は北朝鮮が保有する核兵器数を6~8個と推定しているが、うち何個が弾頭化されたかは不明だ。>

 核弾頭がいくつあるか、も不明なのだ。

 <ノドンは慈江道に司令部を置く独自部隊によって管理され、発射基地は同司令部と両江道、平安北道の計3カ所。核弾頭は同司令部と両江道の基地近くに貯蔵されているようだという。>

 なるほど、相当に具体的だ。

 <報告書は北朝鮮が「人工衛星」の打ち上げ用と主張している「銀河2号」ロケットについて、長距離弾道ミサイル「テポドン2号」と同一と指摘しながらも、発射準備に数週間かかるなど実用性に難点があるため、ノドンの方が「より差し迫った脅威」と警告した。>

 そういうことなのだ。米国はこのノドンの脅威をあまりしゃべりたがらない。意図ははっきりしている。日本が核武装ないし、憲法9条廃棄に至るのを懸念しているのだ。「瓶の蓋」論で中国にいい顔をし、日本には核の傘を差している、と言って手なずける。米国の二重基準ならぬ顔の使い分けも、もうそろそろ終りに近づいていると見たほうがいいのかもしれない。

 <国際危機グループは、各国の拠出に基づき世界中の紛争について調査・報告している。理事長は日豪主導で昨年発足した「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」共同議長のエバンス元豪外相。>

 日本に理解のある人がトップに座っているようだ。こういう研究機関がたくさんあれば、日本も心強いのだが。

 それにしても、この種の情報を日本政府の調査機関は把握しているのだろうか? 政治は党派闘争に明け暮れている場合ではない、と思うのだが。

 読売新聞4月2日朝刊2面<「核小型化 北が成功」/国際研究機関が報告書>では、この研究機関が本部をブリュッセルに置いていることを報じたうえで、

 <「(中距離弾道ミサイル)ノドンが、すでに東京に核弾頭を撃ち込む能力を持つ」>

 という刺激的な表現をしていることを報じていた。複数の情報筋の分析結果だ、という。

 読売新聞の記事はさすがに、今までの経緯を入れていた。

 <米国防情報局(DIA)は3月10日、プルトニウムを原料とする核爆弾数発を弾道ミサイルに搭載できるよう小型化させた可能性があるとの認識をしめしていた。>

 というくだりである。また、ノドンの配備数320機というのは米軍情報だという。

 <また、米情報機関の話として、北朝鮮が米軍機による爆撃を封じるため、中国国境付近にノドンの新たな基地の建設を続けている兆候があるとしている。>

 とも書いていた。「国際危機グループ」は1995年に創設され、英国のクリス・パッテン元香港総督、米国のピカリング元国務次官らが役員を務めている、とも書いてあった。

 世界の情報がこういう機関に集まる仕組みができているのに、日本は情報過疎地域になっているのだろう。

(追記)

 読売新聞4月5日朝刊国際面<北の核弾頭どこまで小型化/米専門家、割れる見方>はワシントン支局の記事。3月27日付ワシントン・ポスト紙が「爆弾の小型化は北朝鮮が技術的に直面する次の重要な段階だ」と小型化に焦点を当てた記事を掲載した、という。米アラスカ州を射程に収めるという今回のミサイルも「弾頭が軽ければ、フロリダ州まで到達可能」(専門家)との見方も出ている、という。

 米民間機関「科学国際安全保障研究所(ISIS)」のデビッド・オルブライト氏はスイス当局が2004年に北朝鮮が小型化の研究を始めた可能性を示す文書を発表した、という。また、今回の国際危機グループの論文である。

 ところが、「北朝鮮はまだ小型化に至っていない」とする冷静な見方も多い、と読売新聞派書いている。ゲーツ国防長官は米テレビとのインタビューで「(北朝鮮は小型化を)以前から目指しているが、個人的には現時点でその能力があるとは思えない」と述べた、とある。

 また、ヘリテージ財団のブルース・クリングナー上級研究員も「ミサイルに搭載できるほど小型化できたと考えている人はほとんどいないはず」と主張。軍事研究機関「グローバル・セキュリティ」のミサイル専門家のチャールズ・ビック氏は、今回のミサイルに適合した弾頭重量は650㌔㌘程度だが、北朝鮮の現在の技術ではまだその2倍近くあり、「目標達成にはあと5年かかる」と分析した、と書いてあった。

 実際に見た人はいないわけで、どれが本当か分からない。ただ、言えることは日本ではこれに関する情報はゼロで、いつも外国の情報機関に頼っているという現実を直視すべきだ、ということだろう。

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社民党だけでなく共産党までもが金正日総書記の味方になったのか?~4月1日産経新聞社説と志位委員長記者会見詳報

 国会決議はおかしい、と思っていたら、4月1日の産経新聞社説(「主張」)が私の思いを代弁してくれていた。社民党は北朝鮮の代弁者と分かっているので、こんなことをまた言って、と鼻でせせら笑えばいいのだが、なぜ日本共産党までがその社民党の主張に同調したのだろうか? よく分からない。

 産経新聞社説をコピペしておく。

 <北朝鮮に弾道ミサイル発射の自制を求める決議が衆参両院の本会議で全会一致で議決された。「(発射は)断じて容認できない」と国家意思を明確にしたものの、肝心のミサイル発射を国連決議違反とする部分は削除された。不十分な自制要求になったことは誠に残念である。当初、与党と民主党などが合意した決議案には、人工衛星であっても「国連安保理決議に明白に違反する」との文言があった。しかし、共産、社民両党が「北朝鮮は人工衛星と称しており、『明白に違反』とまでいえるのか」と難色を示し、これに民主党や国民新党も同調したため、与党側も削除を受け入れたという。>

 この前半部分が眼目である。あとは、その論拠と理由の説明だ。

 <2006年に北朝鮮が核実験を行った際、国連安保理が全会一致で採択した制裁決議は、北朝鮮に「弾道ミサイル計画に関連するすべての活動」の停止を求めた。「すべての活動」には当然、人工衛星の打ち上げも含まれる。北がどれだけ「宇宙開発のための人工衛星だ」と主張しても、国連決議違反は明白なのである。>

 それなのに、社民党と共産党が変なことを言った。

 <共産、社民両党の主張は国際社会では通らない。にもかかわらず、これら少数野党の削除要求を受け入れた与党や民主党の対応は情けない限りだ。>

 そうなのだ。共産党までが賛同したのでビビッたのだろうか? 情けない限りである。社民党は朝鮮総連からいろいろと便宜供与してもらったり、選挙での裏の協力を取り付けていることは想像に難くないが、共産党はどういう関係なのか?

 <北朝鮮の「人工衛星だ」とする主張に対し、中国とロシアは態度を明確にしていないが、米国のクリントン国務長官は先月25日の記者会見で、ミサイル発射を安保理決議違反と位置付け、北が発射を強行すれば安保理に問題を提起する考えを示した。英仏の国連大使も26日「発射は決議に明白に違反する」との見解を表明した。6カ国協議の日米韓首席代表も27日、北が「人工衛星だ」と主張しても国連決議違反として、直ちに国連で取り上げるべきだとの認識で一致した。今回の国会決議はそうした西側諸国の共通認識ともずれており、誤ったメッセージを国際社会と北朝鮮に与えかねない。>

 誤ったメッセージを北朝鮮に与えるほど、日本の国会決議が重いかどうかは別にして、日本が三権分立の国である以上、国家意思がひとつに固まっていないという誤解を国際社会に与えたかもしれない、とは言えるだろう。

 <産経新聞とFNNの合同世論調査では、北のミサイル発射に対し81%が「迎撃態勢を進めるべきだ」と答え70%が「日本単独の制裁強化」を求めた。政府は引き続き、北のミサイル発射は理由の如何を問わず国連決議違反との認識をもち、発射に備えて米国との緊密な連携による万全の迎撃態勢を整えつつ、制裁強化の準備を怠るべきではない。>

 その通りだ、と思う。しかし、しつこいようだが、なぜ共産党ともあろうものが北朝鮮に遠慮するのだろうか? 分からない。

◆志位委員長の記者会見やりとり

 志位和夫・日本共産党委員長のホームページに<北朝鮮「ロケット」発射問題/自制求める外交努力こそ重要/軍事対応は外交解決台無しにする>の題名で志位氏の3月26日の記者会見内容がアップされていた。読んでみよう。

 <日本共産党の志位和夫委員長は26日の記者会見で、北朝鮮が「ロケット」発射の動きを見せ、日本政府が「破壊命令」を出そうとしていることについて問われ、次のように述べました。>

 という前文で、

 <いま、なにより重要なのは、北東アジア地域の緊張を悪化させるいかなる行為も慎むことであり、北朝鮮にたいしてはロケット発射を自制することを強く迫るあらゆる外交的努力を尽くすことだ。>

 <そのときにそのような外交的努力をまったくやらないまま、軍事で身構えるという日本政府の対応は、問題の外交的解決を台無しにするものだ。わが党は、政府の対応にはくみしえない。>

 <外交的努力という点では、日朝平壌宣言(2002年9月)で日朝間で何かトラブルが起こったら何でも話し合いで解決するという項目がある。そのことも含めて、いまあらゆる手段で外交的解決のための努力を尽くすべきだ。>

 とあった。

 つまり、政府は北朝鮮と話し合うべきなのに、その努力を何もしないで撃墜する、というのはダメだ、と言っている。

 志位委員長は考え違いをしていないか。ボールは北朝鮮にある。拉致問題などで日本は協力して解決しよう、として北朝鮮の答えを待っている最中である。それに答える努力を全くせずに、ミサイル発射能力の向上が狙えるロケット打ち上げを強行する北朝鮮は日本国民の総意を無視しているのではないか。

 共産党はいつから日本国民の平和・安全よりも金正日総書記の安全を優先する政党になってしまったのだろうか?

 共産党には失望した。

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永井陽之助氏追悼文(中嶋嶺雄氏と粕谷一希氏)~3月19日読売新聞朝刊と4月1日毎日新聞朝刊の寄稿

 2008年12月30日に国際政治学者、永井陽之助氏が亡くなった。84歳だった。各紙は3、4月に追悼文を掲載していた。毎日新聞は4月1日朝刊で中嶋嶺雄・国際教養大学長の追悼文を掲載した。見出しは<永井陽之助氏をしのぶ/平和論に切り込んだ現実主義者>だった。文章を書き写しながら、読んでみよう。

◆中嶋嶺雄氏による追悼文

 <文学、哲学から物理学や精神医学にいたる豊饒な学識、坂口安吾や丸山真男、E・フロム、ハンナ・アーレント、エリック・ホッファーからD・リースマン、スタンレー・ホフマンにいたる知的系譜、研ぎ澄まされた文章と挑発的なレトリック、まさにわが国20世紀知識人の最も優れた到達点を示し続けた国際政治学の永井陽之助氏は昨年末に逝去されていた。大きな喪失である。>

 という書き出しである。知的系譜として出てきた名前は綺羅星のようだ。ただ、この名前で普通想像する系譜に脈絡がないところが面白い。「堕落論」以後、日本文化を追求し続けた坂口安吾。進歩的文化人の代名詞である丸山真男、「自由からの逃走」のエーリッヒ・フロム、私が尊敬するハンナ・アーレント。「孤独な群衆」のデービッド・リースマン。こういう人たちの論の中からステレオタイプでない魂の部分を引き出してきた、ということなのだろう。

 <私個人にとっても永井先生はかけがえのない存在であった。私の著書を引用されたからと名著『平和の代償』(中央公論社)を署名入りで贈ってくださったのが1967年初頭だったので、もう40年以上も前のことになる。同書は、氏が在米中に出会った1962年のキューバ危機に強い衝撃を受け、朝鮮戦争からべトナム戦争までを見据えて、核時代の日本外交の拘束と選択の有様を示した力作であった。平和論過剰のわが国の言論界にいわば現実主義の立場から切り込んだ挑戦である。>

 産経新聞のオピニオン面に当時の論を再掲しているが、当時の「平和の過剰」は今になるとはっきり分かる。

 <私が永井氏に最初にお会いしたのは1967年春、日米知識人会議への出席を松本重治氏から要請された、国際文化会館での準備会のときであった。ウイリアムズバーグで開かれたこの会議は日本側が笠信太郎、桑原武夫、永井道雄、加藤周一、坂本義和の各氏ら、米国側がD・リースマン、E・ライシャワー、ダニエル・ベル、スタンレー・ホフマン、R・スカラピーノ各氏らの錚々たる面々で、中国の文化大革命とべトナム戦争がテーマであった。この会議では私が最年少かつ最初の訪米だったので、会議の後に永井氏とワシントンDCやハーバード大学へご一緒させていただいた。>

 こういう右も左も同席する話し合いの場が昔はあったのだ。だから、論壇という存在も命を吹き込まれ続けたのだろう、と思う。

 <中国の文化大革命の余波は、まもなくわが国の大学紛争へと連なっていった。東大の安田講堂落城が注目されたけれど、実は東京教育大と東京外大の紛争も深刻で、やがて東京工業大へも波及していった。私は東外大の教授会代表委員として過激派学生と対決せざるを得なかったが、永井氏も東工大で人社系を代表する立場にあり、私の東外大での経験を東工大で講演したこともあった。この学園紛争を国際的視野で論じた書が『柔構造社会と暴力』(中公叢書)である。同じ中公叢書にはキッシンジャー外交や日中友好外交を批判的に論じた『多極世界の構造』、政治的資源としての「時間」を「非対称紛争」としてのベトナム戦争に当てはめて論じた『時間の政治学』がある。>

 大学紛争を中国の文化大革命と関連付けて論じるとは、いかにも中嶋氏らしいが、日本の若者の反乱は中国の毛沢東の復権闘争である文化大革命と比較するよりは、フランスの「若者の反乱」や米国のヒッピー運動との関連の強さを論じたほうがいいとは思う。

 <こうした旺盛な言論活動のなかでの学術的貢献が、永井主査による文部省科学研究費特定研究「国際環境の基礎的研究」であった。この共同研究は、国際的な冷戦研究として注目を集め、京都シンポジウムには世界第一線の学者が集まった。その成果が英文ではコロンビア大学出版会から出され、わが国では永井著『冷戦の起源』などの「叢書 国際環境」(中央公論社)となり、永井氏は日本国際政治学会理事長にも就任された。>

 この辺はさすがにインナーグループにいて、永井氏の近くで過ごした方の思い出話だ、と思う。参考になる。

 <当初は現実主義の立場から理想主義者の平和・安全保障論を鋭く批判した永井氏だったが、言論や政治に軍事優先傾向が強まるなかで氏は、主に岡崎久彦氏との論戦を意識して防衛論を『文藝春秋』に1年間連載、1984年度文春読者賞を得ている。>

 そうなのだ。永井陽之助氏の分かりにくさはこの辺にもあるのだ。

 <永井氏の1985年の東工大最終講義を巻頭にした『二十世紀の遺産』(文藝春秋)は、粕谷一希氏と私もお手伝いした浩瀚な編著であり、氏の人脈の広さを物語っている。そこに登場する高坂正堯氏も江藤淳氏もすでに亡く、神谷不二氏もつい最近、永井氏の後を追って急逝された。これらの方々は、佐藤栄作政権の時代以降、首席秘書官・楠田實氏のもとで日中関係や日米関係の方策を永井氏とともに提言した論客でもあった。永井氏が論じた軽武装・日米同盟重視の「吉田ドクトリンは永遠なれ」との見解が一部で誤読されてもいる昨今だけに、氏の一貫した警告を忘れてはなるまい。>

 そうかぁ、佐藤政権のブレーンだったのか。

 <なお永井氏は毎日新聞社アジア調査会アジア研究委員会の代表幹事としても貢献された。>

◆粕谷一希氏による追悼文

 永井氏の業績はあまりに幅広いので、なかなか一言では言えない、というのだろう。中嶋氏が共同作業をした、として名前を挙げていた評論家の粕谷一希氏も3月19日読売新聞文化面に<永井陽之助さん追悼/壮大・華麗な思考の社交家>のタイトルで追悼文を寄稿していた。「論壇で大活躍をしていた1970年当時の永井陽之助さん」のポーズ写真がついていた。

 粕谷氏は5、6年前まで中嶋氏、粕谷氏らとの勉強会に出てきたが、ある時からプッツリと外界との関係を断ち、我々とも連絡が取れなくなった、と書き出している。文化人の中にはそういう人が結構多いようだ。衰えた姿を他人に見せたくないのだろうか?

 粕谷氏は、

 <1960年代後半から70年代前半にかけて、永井さんの舌鋒は圧倒的な迫力を持ち、壮大・華麗な体系的思考を展開して、論壇の中心的存在となった。歴史畑出身の人が多かった政治学界で、政治理論、政治社会学、政治意識論などを専門とされた。キューバ危機で米ソの正面衝突を危ぶまれた米国での経験を機に、国際政治に関心を移していかれた。>

 と書く。「歴史畑出身」というのは日本政治思想史を専攻した丸山真男氏を考えれば分かりやすいだろう。

 <私は北大時代から、永井さんと接触があり、編集者として、当時流行だったD・リースマンとW・ミルズの比較論を「思想の科学」に掲載した。やがて高坂正尭、萩原延寿など、新しい感覚の欧米帰りとの交わりは、私にとって”職業上の青春”と言ってよい。原稿を読むたびに、読み手の私が興奮し、高揚し、新しい想念の刺激を受けた。「平和の代償」の諸論考は、文学的感性を刺激し、福田恒存は「論壇のバラバラ事件」と評し、三島由紀夫は即座に面会を申し込んだ。以後「柔構造社会と暴力」、「冷戦の起源」など、またアンソロジーの傑作「政治的人間」が当時の読書人の意識を変えた。永井政治学の魅力は斬新な理論的枠組みにあった。またヨーロッパの正統派、R・アロン、S・ホフマン、C・シュミットなどを深く読み込み、アメリカとヨーロッパの幸福な融合を自分のモノとしていた。>

 「壮大・華麗」の中身が語られている。

 <永井さんは警句とジョークを愛していて、若い女性とのたわいない会話を楽しんだ。読書はその合間に集中的にやるらしく、我々は社交人永井氏を存分に味わった。警句では、ビスマルクの「愚者は自分の経験に学び、賢者は他人の経験に学ぶ」という言葉を好み、つねにヒントにしていた。>

 なるほど、このビスマルクの言葉は深いなぁ。読書は他人の経験に学ぶ最たるもの。どれだけ深く読み込めるか、で他人の経験を自分の経験と同一化できるかどうか、決まるのだろう。

 <今日、社会科学者は政府の審議会のメンバーであり、大きな対立もなく、論壇も総合雑誌も影が薄くなった。細分化された思考はますます専門化し、素人には見えない世界になってしまった。永井政治学の壮大と華麗を想い起こすのも、今日の意識と言語とを省みるひとつの方法かもしれない。>

 いいことを言っている。さすが粕谷氏だ。細分化した「知」を再び総合化する大きな手段がヘーゲルなのではないか、と誰かが書いていたのを思い出したのだが、名前を思い出せない。

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