麻生太郎首相が4月9日、日本記者クラブで行った記者会見で「新たな成長に向けて」という新成長プランを発表した。各紙は10日朝刊で報じたが、さすがにスピーチ全文を掲載した社はなかったので、首相官邸のHPからダウンロードして読んでみた。朝日新聞、毎日新聞、読売新聞は10日の社説に15兆円の大型補正予算を取り上げていたので、この中長期策は後回しにされ、日経新聞が第1社説<麻生版「アジア経済倍増計画」の関門>で好意的に取り上げたのが目立ったくらいで、他紙は評価を先送りしていた。
◆日経新聞4月10日社説
日経社説から読んでみよう。
<麻生太郎首相は今週末にタイで開く東アジア首脳会議(サミット)に先立ち、東アジア地域の経済規模を2020年までに2倍に増やす「アジア経済倍増計画」を提唱した。域内各国から賛同を得られれば日本と同地域との経済連携は一段と深まるが、実現には関門も少なくない。>
という前文だ。実際はタイの反政府デモのおかげで東アジアサミットは延期(中止)され、首相は発表の晴れ舞台を失ってしまったのだが、首相の狙いの一つがアジアとの連携にあったことは間違いないだろう。
<構想では、まず鉄道や道路などのインフラ整備への民間投資を促すために、日本が2兆円の貿易保険の枠を設定する。既に表明している2兆円規模の政府開発援助(ODA)も活用し物流網の充実や環境技術の普及を目指すという。世界同時不況の嵐の中でも、アジアは経済的な活力をなんとか保っている。停滞が長期化しそうな米欧に代わり、世界経済の成長センターとしてアジアの役割が大きくなるのは間違いない。日本が単独で経済成長を目指すのではなく、「国境を越えてアジア全体で成長する」という麻生首相の認識は正しい。>
と、日経は構想に好意的だ。
<世界的な需要収縮が続く中で、日本は先進国への輸出に頼ってばかりいては、持続的な成長軌道に復帰できない。少子高齢化が進む以上、日本の内需に過剰な期待もできない。アジア各国との連携を深めて「アジア内需」を外交政策で切り開く発想は極めて重要である。>
首相が言っているように、対米輸出にばかり頼って成長できる環境ではなくなった、ということ。アジアが大事になっていることは間違いない。
<問題は東南アジア諸国連合(ASEAN)各国への影響力を日本と競いあう中国や、アジアとの協調路線を強化する米国を含めて、域内と世界の各国が素直に麻生構想に賛同するかどうかだ。日本のための計画ではなく、アジアのため、世界のための構想である点を強調し、各国の協調を取りつけるサミットでの麻生首相の説得力が問われる。>
この辺、サミットが流れたのが痛かったのか? どうせ中国は「日本に負けるな」と、同じ額の投資をしてくるだろうから、ASEANへの投資効果は2倍になる、とそのくらいの気持ちでいないと、また中国の覇権主義的な行動にカリカリすることになるだろう。
<世界各国が麻生政権の寿命と日本政府の継続的な政策実行力を慎重に見極めようとしているのも事実だ。せっかくの構想が政権とともに消えるならば、同じ船に乗るのをためらう者がいてもおかしくはない。>
これは言わずもがな、だが。この中長期策と15兆円補正で自民党は勝つことまではいかないにしても、負けない要因になるのではないか? 「ああ、麻生さんもいろいろ考えているな」という庶民の感想が聞こえてきそうだ。
<アジア経済倍増計画は日本国内の政局と切り離し、ASEANや東アジアサミット、アジア太平洋経済協力会議(APEC)などの国際的枠組みの中で地域共通の経済政策として検討を進めるべきだ。計画を提唱するのが麻生首相であっても、計画の詳細を具体的に詰めるのは日本政府でなくてもよい。>
随分と遠慮した物言いではある。そんなに日本への風当たりが強いのだろうか?
<アジア通貨危機では、アジア各国が米国と国際通貨基金(IMF)主導の経済安定策に反発した。米国と中国は日本が唱えたアジア版の基金構想に反対した。アジアとの連携は常に魅力的な看板だが、実現には巧みな国際政治のかじ取りが必要だ。>
確かに日経社説子が言うような配慮は必要だが、今は、中国の政府内からアジア共通通貨構想が聞こえてきている時代だ。12年前と違って中国の外貨準備が積み上がり、「日本だけにいい顔をさせなくてすむ今こそ、共通通貨を実現すべき時だ」という論らしい。
とすれば、あまり遠慮せずに、日中が手を組んでやればいい。どちらが主導権を取るか、でもめるのは面倒だから、ASEANの事務局に丸投げする形で、実際はアジア開発銀行が裏で支えればいい。黒田総裁の人脈が動けるから問題ないだろう、と思うのだが、どうなのだろう?
日経はアジアとのリンケージ部分だけを論評していたが、麻生首相の記者会見そのものは、もっとトータルな内容で、結構キーワードが幾つか飛び出してきていた。
この演説をブラッシュアップすることで、自民党の総選挙用マニフェストができあがるのではないか、とも思った。
□麻生演説のほぼ全文□
首相官邸のHPからダウンロードした演説全文を、挨拶部分などを削除して、部分的にコピペしておこう。
<日本の経済がどのような未来をこれから先切り開いていくのか。新たな成長戦略を私なりに考えたものをお示しさせていただきたい。未来開拓の戦略と思っております。対象は、2020年まで。伸ばすべき産業分野の姿と、その実現の道筋であります。>
<詳細を詰めた上で、来週中に最終的にとりまとめることにしたいと思っております。また、新たな成長フロンティア、未来というものは、国内だけに限らず、アジア経済の倍増を目指す、そういったアジアワイドの成長戦略についてもお話をしたいと思っております。>
と、まあ、これが前文的な総論だろう。
<最初に、日本経済の未来について話してみます。世界的な大きな経済の調整が避けられない中で、ひとり日本だけが、旧来型品目の輸出に依存した、そういう成長軌道に復帰することは、もはや現実的ではないと思います。>
この現実認識は当たり前かもしれないが、実はものすごく大きな政策転換を伴うものだ。
ぶっちゃけて言えば、「いざなぎ越え」などと囃されたものの、国民には実感がなかった先の景気回復は対米輸出増によって牽引されたことは最近よく強調されるようになった。
今回の大不況では米国経済の回復が日本よりも遅れるだろうし、もしかすると大変なことになるかもしれないので、対米輸出増などとんでもない、という話だ。
とすれば、IT産業、電機産業、自動車産業の輸出増のために低く据え置いた金利政策、円安誘導が今後、不動の国策ではなくなる、という可能性を認めたことになる。大きな転換もありうるのだ。
<新たな成長モデルに向けて、いち早く行動をするためには、私なりに三つの柱というものを提示させていただきたいと存じます。>
<それは①低炭素革命で世界をリードできる国②安心・元気な健康長寿社会③日本の魅力の発揮――、この三つです。この三つの柱は、日本の強みや特徴を生かせる分野だと思っています。この三つを柱に、官民による集中的な投資と、それを促す大胆な制度改革を実行しなければなりません。>
つまり、戦後復興が石炭と鉄鋼産業への資源集中という傾斜配分方式で始まったように、麻生首相はこの3分野の産業振興を21世紀以降の日本の成長を牽引する産業に育てる、というのだ。
<こうした官民の果敢な行動によって、2020年には、実質GDPを120兆円押し上げ、400万人の雇用機会を創出することが可能になるのではないかと考えています。特に当面3年間で累計約40兆円~60兆円の需要の創出。140万人~200万人の雇用の創出を実現したいと思っています。>
この数値目標は経済産業省や財務省の官僚が様々な数字を集めて試算したものだろう。特に経済産業省の基礎作業には時間がかかったのではないか、と想像する。
■低炭素革命で、世界をリードする国
<まず第一に、低炭素革命であります。地球温暖化といわれる話は、21世紀、我々が乗り越えなければならない、克服しなければならない最大の課題の一つだと思います。これを、新たな技術と社会システムの変革で克服するのが低炭素革命であります。戦後の高度成長、経済成長で日本のありようを大きく変えたのは三種の神器、洗濯機、テレビ、冷蔵庫でした。家電製品が普及して家事の負担を軽減し、家族の団らんをもたらしたのは間違いない現実であります。また、自動車の普及も我々のライフスタイルを恐ろしく変えました。低炭素革命の実現にはライフスタイルからまちづくりまで、これに匹敵する大きな変革が必要だろうと思っています。>
ライフスタイルを変えるほどの新商品を出さないと、意識も変わらないし、国際戦略商品も生まれないのは事実だろう。
<21世紀の低炭素社会において、多分、太陽電池、電気自動車、省エネ家電が新たな三種の神器になっていく。そして、高度成長時代と同じように、我々に低炭素社会というもののすばらしさを実感させ、そして夢を与えてくれると思っております。>
この新三種の神器の構想はいいんじゃないかな。
<日本のエネルギー効率はアメリカの2倍、ヨーロッパの1.7倍、中国の8倍、ロシアの18.5倍、これはIEEAが出した資料です。我々はこれに象徴される世界最高水準の省エネ技術を始め、そうした変革を可能とする十分な基礎がある。2020年にはエネルギー消費に占める再生可能エネルギーの比率を今より倍増して、世界最高水準の20%まで引き上げたいと思っております。この低炭素革命の分野で2020年に新たに約50兆円の市場と、140万人の雇用の創出を考えております。>
この試算の適否を論じるだけの資料を手元に持ち合わせていないが、いい数字のように思えるのだが。というのも、麻生首相のスタイルから言うと、官僚の積み上げたペーパーを大事にする。そして、官僚は実現不可能な数字は首相に上げない。直観で言えば、この数字はまだ腰だめの数字だろうと思っている。
◆太陽光世界一プラン
<その第一として、最も力点を置きたいプロジェクトの一つが太陽光世界一プランであります。太陽光発電の規模を2020年までに今より20倍にします。>
<太陽光発電は、世界的な普及段階に入ろうとしております。今後数年間が世界一の座の奪還に向けた正念場であろうと存じます。>
<いかにして太陽光世界一を獲得するか。そのためには①現在需要がないから製品のコストが高い②コストが高いから需要が増えない。この悪循環を断ち切らなければなりません。何よりも政策的に需要を掘り起こすという強い政治的な意志が必要だと思っております。>
<このため、家庭で生まれる太陽光の電力を電力会社が現在の2倍程度の価格で買い取る新たな電力買取制度を創設します。この制度により太陽光パネルをつけた家庭は、国や地方自治体の支援を合わせますと約10年程度で利益が出ることになります。また、全国3万6,000の公立の小・中・高校に今後3年間集中的に太陽光を設置し、太陽のエネルギーで子どもが育つ緑の学校に転換します。これらの対策によって、今後3年間から5年間で太陽光システムの製品の価格の半減を目指したいと思っております。日の丸太陽パネルが世界中の家の屋根や砂漠を覆う。そんな夢を持って大胆に取り組みたいと思っております。>
これは賛成できる。多くの識者が提案していた構想である。それにしても具体的だなぁ。この前の有識者からの意見聴取も良かったのかな?
◆エコカー世界最速普及プラン
<もう一つはエコカーの世界最速普及プランであります。世界で最初に電気自動車やハイブリッドカーなどいわゆるエコカーを本格的に普及させます。3年後に電気自動車の量産・量販を開始し、2020年には新車の2台に1台をエコカーにしたいと存じます。>
<このために今月から自動車重量税、自動車取得税の免除を開始しております。更に今後、新たな補助制度を導入し、エコカーへの買い替えを支援したいと思っております。これらにより1年間で100万台程度、需要を増やせます。国民が環境性能で車を選ぶ時代を築きたいものだと考えております。>
<また最先端モデル都市を10か所選定して未来の車社会の姿を先取りした実証プロジェクトを実施します。得られた知見を基に、世界最大の自動車市場であるアメリカと連携して、世界標準を構築したいと思います。>
<併せて、テレビなど省エネ家電を購入した方にはエコポイントを還元する制度を活用して、1年間で3,000万台程度の省エネ家電の普及を支援します。>
知らないうちに随分と具体的な構想を練っていたものだ。
■安心・元気な健康長寿社会
<成長戦略の第2は安心して元気な健康長寿社会であります。日本は世界で比類のないスピードで高齢化が進んでおります。しかし、日本の高齢者はとにかく就業意欲が高い。65歳以上の男性で働いている人の割合は日本はほぼ3割、アメリカが2割、欧州では1割前後です。日本では60歳以上の高齢者と言われる方々の8割以上は少なくとも70歳までは仕事をしたいと考えておられる、という統計があります。しっかりした医療・介護サービスを提供できれば、暗く貧しい高齢化社会ではありません。世界に冠たる、活力ある高齢化社会がつくれるはずです。世界に先駆けて健康長寿社会を構築することは、すそ野の広い内需型の産業の創出につながります。この分野において、2020年に新たに35兆円の市場と、210万人の雇用を創出します。>
いいじゃないか。これは小泉構造改革、後期高齢者制度への訣別宣言ではないか。本気でやるつもりになったらしい。
◆30万人介護雇用創出プラン
<まず30万人の介護雇用創出プランに取り組みます。現在130万人の介護職員の方々を、当面3年間で30万人に増やす。2020年には220万人にすることを目指します。多くの方々が職を失っている現在でも、介護分野は大変な人手不足であります。現状では介護分野の待遇は全産業の平均年収と比較して100万円以上低い。しかも、就職後のキャリアアップの展望も開けておりません。よりよい介護サービスをつくっていこうとするならば、介護の職場にも夢と希望がなければならないと考えています。まず、緊急に介護現場での処遇を改善していかなければなりません。このため介護のための基金を充実させます。そして、当面3年間、介護報酬とは別にこのお金で介護に従事される方への給与を上積みし待遇改善を行います。その上で会社や工場で働く人と同じようにキャリアと経験に応じて給与や処遇が上がっていく仕組みに変えていきたいと考えています。更に、都市部に目を転ずれば、最大の課題は介護施設の不足です。今後3年間で介護施設を集中的に整備します。>
ニーズが分かっているなぁ、という感じだ。
◆地域医療再生プラン
<もう一つの重点的なプロジェクトは地域医療の再生プランです。地域の医療は医師不足や患者さんの「たらい回し」など深刻な状況にあります。その一方で昼夜・休日を問わず一生懸命働く勤務医と看護師の方々が大勢おられます。この状況を打開し地域医療を立て直す必要があります。>
<この問題は一つひとつの市町村や病院の力では解決できません。隣の市町村と協力し地域にある病院、開業医、介護施設が連携して、全体として住民に一つのサービスを提供するという発想に転換することが必要です。また、患者の視点に立って役割分担することが重要になる。>
<例えば救急や産科の中核拠点をつくることで、「たらい回し」というものはなくせるはずなんです。こうした地域一体となった医療・介護体制をつくることに思い切って資金を投下したいと思います。>
<具体的には、複数の市町村から成る広い範囲で病院間、あるいは病院と診療所の間で役割分担を行っていただきたいものだと考えています。そうした合意が整ったところには①医師をサポートする医療事務補助員の増員②より高度な医療施設やIT施設の整備③住民の皆さんが通院するために必要なバスの運行――などでバックアップしたいと思います。まず各都道府県で地域を選んで先行的に実施します。その後、成功例を10年以内に全国350程度の地域に展開したいと考えています。10年がかりの大事業として地域医療の再生に取り組みたいと思います。>
10年がかりだろうなぁ。これも賛成。つまり、小泉=竹中の新自由主義を完全に捨て去って、再分配重視の政治に転換する、ということなのだろう。そうすれば、小沢氏の構想とそうは違わない。
■日本の魅力発揮
<成長の第3の柱は日本の魅力の発揮です。日本には長く培ってきた文化や感性に根ざしたソフトパワーがあります。外国人旅行者を魅了する田園風景や、世界で注目されるアニメーション、ファッションなどです。このソフトパワーを活用して、すそ野の広い新たな産業を創出します。地域に活力を与え、若者の雇用につなげます。>
◆キラリと光る観光大国
<きらりと光る観光大国を目指します。2020年、現在の約2倍以上に当たる年間2,000万人の外国人が旅行者として訪日することを実現したいと思います。現在800万人ぐらいあると思います。これは4.3兆円の消費市場をつくることになると思われます。現状では、残念ながら日本を訪れる外国人旅行者の数は、世界のランクでは28位にとどまっています。>
<きちんと魅力をアピールし、必要な整備を行えば、外国人旅行者の数は必ず増えるはずです。政府としては、まず日本へのアクセス改善に取り組みます。成田空港の場合、外国人の入国審査の待ち時間は最長28分。これを半減させて15分。成田空港から羽田空港の国内線への乗り継ぎ時間を現在の100分程度から50分台へと半減させます。>
<また観光地の景観、町並みを徹底的に改善したいと思っております。その地域の人々が誇りに思える伝統ある町並みを再生するということです。日本のどこでも、魅力ある観光圏に生まれ変わる可能性があります。福島県会津若松の大内宿は無電柱化、電柱を全部なくし、観光客が急増しております。こうした観点から今後3年間で30か所程度を選んで無電柱化などの景観工事を進め魅力的な町並み風景をつくります。>
観光にしても、ここまできめ細かくやると実効性があるように見えるが。
◆日本のソフトパワー発信
<もう一つは、日本のソフトパワーの発信です。日本にはアニメやゲームなどのコンテンツ、ファッションなどがジャパンクールとして世界の消費者から注目をされる素材があります。>
<漫画は今、フランス語にもなりましたし、世界語になりました。中国の女性向けファッション誌の中でも、多くの日本発の雑誌が人気の上位を占めております。これは、中国で「あゆ」と呼ばれている浜崎あゆみの写真です。これは中国の雑誌です。これは香里奈という人で、台湾の雑誌です。これは日本人ですよ。これは「エビちゃん」ブームと言われた蛯原友里という人です。こういった表紙のモデルというものが、今の時代というものでアジアのOLたちの読む、いわゆる雑誌、テレビコマーシャルに並ぶ時代なんです。何となく昔のアメリカ人とか、そういったイメージは、今はないんです。>
<アニメとかファッションの聖地は秋葉原、原宿、裏原宿ですが、これは今や東京観光の定番コースです。銀座、赤坂、六本木などと言っちゃだめですよ。しかし、残念ながらこうしたソフトパワーというものは、海外でのビジネスにはつながっていない。日本のコンテンツは大したものですが、コンテンツが産業になっていない。>
<コンテンツ産業の売上げというものを調べてみると、海外での売上げは全売上高のたったの2%です。米国は約20%売りますから、約10分の1です。日本のソフトパワーの人気をビジネスにつなげ、2020年には20兆円から30兆円規模の一大産業に育成し、50万人の新規雇用を創出したいと思っております。>
<コンテンツのつくり手、クリエーター作品、才能、ウェブ、また、携帯などによってビジネスとして花開かせることが重要と思っております。このため、人気クリエーターの脚本などのライセンスというものを一括購入して、海外での作品化のための販路開拓とか、また、資金提供を一体的に行う組織を創設したいと思っております。>
麻生首相の一番得意な分野だ。
<以上三つの柱に沿って主なプロジェクトを絞って、私の考えを申し上げました。このほかにも重点プロジェクトがありますので、お手元に資料を配らせていただいておりますので、それに細かく書いてあると思いますので、参考にしていただきたいと存じます。>
資料があるのか。
でも、農業改革が入っていないのが気になる。やはり、農協という選挙母体の反発を恐れて入れられなかったのかもしれない。農業で安全な作物を供給、新輸出産業に育てることこそ21世紀の日本には必要だと思うのだが。小沢氏はこの点を具体的に打ち出してくれるかどうか、注目点だ。
■アジアの成長~「アジア経済倍増へ向けた成長構想」
<次に、もう一つのテーマであるアジアの成長に話を進めたいと思います。アジアは、21世紀の成長センターであります。日本の大きな強みは、このアジアに日本という国が位置していることです。これからの日本の新しい成長戦略を考える上で、この地理的強みを最大限に生かしていく。こういう発想が重要です。>
これは誰が言っていたのか? 伊藤元重氏だったか?
<日本は間違いなく人口減少に直面をいたしております。欧米市場と比べても、今後、大きく市場が伸びるのはアジアです。東アジアだけでも約32億人の人口、世界人口の約半分が東アジア。これはアジアの定義が難しいところですが、インドから東と思ってください。そういうぐらいのところです。パキスタンぐらいまで入る。そういった地域だと思っていただければと思います。東アジアだけでも32億人。最近4年間で1億3,000万人の人口が増加をしております。たった4年間で日本1国分が増えたということです。しかも、アジアでは膨大な経済所得の中間層というものが成長しつつあります。1人当たりのGDPが3,000㌦を超えると耐久消費財ブームが起きると言われております。今、中国は約3,000㌦。ASEANの平均で2,200㌦を超えました。日本は国境を越えてアジア全体で成長するという視点に立つことが大事です。>
経済学者が考えたのだろうか? そうではないだろう。それにしては骨太の構想だ、と思うのだ。
<①成長するアジア全体で富を生み出し②それを経済連携や人的交流というものを通じて、日本の雇用やイノベーションにつなげる③それをアジアのさらなる発展につなげる――というような好循環をつくることが重要なんだと考えております。国内生産拡大に固執する発想よりも、国民の富の増大を重視する。国内総生産、GDP、Gross Domestic Productという発想から、国民の総所得、Gross National Incomeといった発想の転換が今後必要なんだと思っております。>
さすが経済の麻生さんですね。この辺、玄人はだしです。
<私は、昨年11月に総理特使というものを任命しております。アジア各国の声をよく聞いて、具体策を協議するように指示しました。各国の要人と協議を重ねてきた特使の報告というものを踏まえて、私は次の2つを提案したいと考えております。>
内海さんだったか行天さんだったかを任命したのだったなぁ。そして、アジアへの提案が書かれる。
◆アジアの成長力強化
<第1にアジアの成長力の強化です。広域インフラの整備、産業開発、制度改善、こういったものを一体的かつ計画的に進めることで、周辺地域や幅広い産業の飛躍的な発展が期待できると思っております。そのようなプロジェクトを支援します。お手元の資料に5ページがあろうと思いますが、資料の5ページを御参考ください。>
《(1)具体例》
<例えば現在、ベトナムのホーチミンからインドのチェンナイまでマラッカ海峡を経由して海を使い、海路で約2週間かかります。これをホーチミンからアンダマン海まで陸路を整備して、タイから海路でチェンナイへ運べば10日。更に、これは国を横切りますので、通関など国境通過にかかる時間というものが膨大にかかっておりますが、これは日本の通関技術、ワンストップサービス、シングルウィンドー、こういった技術を入れますと8日で運ぶことができます。このようなルートを建設し、周辺に工業団地など関連インフラを整備します。これによりメコン地域は、はるかインドや中東を視野に入れた自動車やエレクトロニクス、そういった製品の供給拠点として大きく発展することができます。また、マラッカ海峡というものが果たす、海上交通の役割は不可欠です。マラッカ海峡沿岸の発展を支えることで、日中韓と中東をつなぐエネルギー輸送の大動脈を安定させることができます。インドネシア、マレーシア、フィリピンに至るまで、東南アジアの発展にも大きく寄与するのは当然です。こういったプロジェクトの候補は、幾つもあります。>
《(2)アジア総合開発計画の策定》
<構想を具体化するには①鉄道や陸路などの基幹的なインフラ②発電所、工業団地などの関連インフラ③産業開発の計画④資金調達の仕組み⑤通関などの改善すべき制度――などについて総合開発計画というものを策定することが必要です。今、東アジア・ASEAN経済研究センター、ERIAというものがありますが、また、ADB、アジア開発銀行。また、ASEANの事務局が中心となって、各国と協力しながらアジア総合開発を策定することを、今、提案したいと思っております。ASEAN、インドを中心に5年間で70兆円のインフラ需要があると予測されております。そのうち、既に構想・計画段階にあるものが10兆円あります。日本は提案するだけではなくて、ODAやその他の公的資金、民間資金まで総動員してこうした取組みを後押しします。日本は今回、新たにアジアのインフラ整備へ民間投資を振り向けていくために、官民連携案件を中心に2兆円の貿易保険枠を設けます。先般表明した最大2兆円規模のODAや国際協力銀行による5,000億円程度の環境投資支援イニシアティブも活用してアジアのインフラ整備に貢献したいと思っております。>
これがインフラ。そして、
<また、アジアの持続的成長には環境問題への対応も忘れてはなりません。日本の優れた環境技術、新エネ、省エネ技術を活用して、アジアワイドでの資源循環システムや高度な水の循環システムの普及などの事業を進めます。>
こっちのほうが将来性がありそうだ、と思うが。
◆アジアの内需拡大
<第二にアジアの内需拡大が重要になります。広域開発構想による投資の刺激に加えて、アジアにおいて消費を増やすことが極めて重要です。今後、アジアの中間層が安心して消費を拡大するためには、社会保障などのセーフティーネットを整備する必要があります。また、教育の充実によって中間層を増やしていく必要があります。こうした課題は各国が自主的に取り組むべき課題ではあります。ベストプラクティスというものの共有や共通指標の整備などの面で、アジア全体が協力することが重要なんだと考えております。ERIAが政策提言することを提案したいと思っております。>
教育支援か。
<日本は昭和35年に池田内閣によります国民所得倍増計画、いわゆる所得倍増というものを策定して高度経済成長時代へ入っていきました。今やアジア全体で中間層が存在し内需主導で大きく成長する新しい時代を迎えつつあります。本日、私の申し上げた構想は、アジア経済倍増へ向けた成長構想というべきものだと思っております。アジアの経済規模というものを2020年に倍増することを目指して、お互いの立場を尊重しながら、対等の立場で取り組んでいきたいと考えております。4月12日に予定されております東アジア首脳会議の場で、私から提案し、アジアの国々と共に前進したいと思います。>
残念ながら、このプレゼンテーションはできなかったわけだが、いいプランだ、という評価は得られるのではないか。
■さいごに
<最後になりますが、高度経済成長を続けた成長モデルが崩壊して新たな均衡を模索する大調整と言われるものは歴史上何度もありました。>
この辺のうんちくも麻生さんには似合う。
<遠くは中世イタリアの都市国家、また16世紀のオランダ、19世紀のイギリス、いずれも世界経済を支配した国々であります。なぜこれらの国々は成功し、その後、ほかの国にその地位を譲ったのか。私の主観ですけれども、一つの共通点は当初はものづくりと貿易で栄え、その後は行き過ぎた金融資本主義に陥ったというのが共通点だと私は思っております。>
<額に汗して働く、そしてチーム全体として高い成果を上げていく組織力。日本のものづくりというのを支えてきたのは、この組織力です。この伝統なんだと私は思っているんですが、その強みを生かし続ければ、日本経済にはまだまだ大きな可能性があります。>
<最近、家庭を見ても学校を見てもよく言われる個人主義化、アトム化。この結果、日本の組織力を衰えてきているという印象があります。しかし、もう一回日本が持っているこの組織力というものの強みというものを再認識する必要がある。>
<よく例に引きますが、例えば鉄道。これは御存じのように蒸気機関車はイギリス人が発明した。しかし、鉄道網というシステムは日本が圧倒的になりました。これは日本がつくった。ちなみに東京23区内を見ていただければ通勤しておられる方の76%が鉄道、地下鉄といった鉄の道路というものを使っておられる。一番進んでいると言われている外国のロンドンで19%ですから、圧倒的に日本は時間どおりに動かせる。しかも壊れず、正確に動く。これができなければ鉄道網はできない。私は日本でラッシュアワーとか大気汚染というものを回避できた大きな元の理由はここにあるんだと思っております。これを可能にしているのが日本の人であり、その組織力なんだと思っております。>
<したがって、自らの強みというものを失うのではなくて、その土台の上につくり上げたもの。それが今回の成長戦略であります。この戦略目標を基に、みんなの考えというものを巻き込みながら、しっかり実現したいと考えております。したがって、日本とアジアの未来は明るい。この成長戦略を通じて、皆さんにそのように感じていただければ何よりであります。>
本当に楽天的で明るい性格そのものの演説だ。いいんじゃないか、国民に夢を与えることは。
それにしても、各紙のそっけない扱いは何なのだろう? 今まで具体策を示せ、といい続けて、麻生首相が出してきたのだから、きちんと内容を報じて、評価もすべきなのに、毎日新聞など、小さ過ぎる扱いで、読者には意味が分からない。産経新聞もほめられたものじゃない。どうも、政治記者は数字の入った演説は聞いても分からないんじゃないか、と疑ってしまう。
首相がいうように、もう少し後にきちんとした形でまとまるらしいから、その時には全文でなくともいいが、詳しく報じてほしい。ある意味、オバマ演説なんかより、ずっと大切な内容なのだから。
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