読売新聞[基礎からわかる核ミサイル]は永久保存版! 北朝鮮核問題が分かりやすい~5月28日朝刊解説面から
読売新聞5月28日朝刊解説面[基礎からわかる核ミサイル]は時宜を得たまとめだった。
①威力は?→通常兵器にない破壊力
②なぜ北朝鮮は開発するの?→撃墜されにくい+危機高め譲歩得る
③「潜在的」脅威は?→中国、日本の都市に照準
④廃絶できるの?→拡散防止体制揺らぐ
――のQ&Aに[核問題を巡る世界の動き]年表をつけており、この1ページ(昔の計算でいうと15段紙面の10段分、つまり3分の2を使っている)を読めば、核兵器に関する知識と核ミサイルに関する知識が、少なくとも基礎は分かる、という仕組みだ。
班長役の編集委員と科学部記者4人の合作と書いてあるが、新聞社の科学部は間口が広く、大変だと思うが、今の時代、最先端の記事を書く職場になった、と改めて思った。
では①~④の順番に記事を読んでいこう。
まずは、<①威力は?→通常兵器にない破壊力>である。
<広島、長崎に原爆が投下された際、実際に爆発(反応)したウラン(広島)とプルトニウム(長崎)は、わずか1㌔㌘程度。それでも破壊力は、通常火薬の1万5000㌧分(広島)と2万㌧分(長崎)と桁違いだった。しかも、核兵器は爆発とともに大量の放射線を放出し、長期にわたって放射能汚染を引き起こすなど、通常兵器にはない損害を与える。>
核爆発というのは「反応」なのだ。
<広島、長崎では、爆発のエネルギーの半分が爆風、3分の1が熱、残りが放射線だったと推定されている。原爆投下から数ヶ月で広島で十数万人、長崎で約7万人が死亡したとされ、広島では爆心地から半径2㌔以内では建物が根こそぎ失われ、周辺地域の広い範囲で家屋が半壊した。>
日本橋がいろいろな道路の起点になっており、日本橋から何㌔という表示がある。もしも日本橋に同程度の威力を持った原爆が落ちると、半径2㌔の建物は建物が根こそぎ失われる。日本橋三越は蒸発するようになくなるのだろう。
<弾道ミサイルの通常弾頭(火薬量1㌧前後)では、人的被害は半径数百㍍以内で、家屋を根こそぎ破壊する爆風が発せられるのは、直撃地に近い限られた範囲だけ。違いは圧倒的だ。>
通常弾頭ならば放射線も出ない。
<こうした違いは、核兵器の爆風が核分裂や核融合の連鎖反応という物理学的な現象によって引き起こされるからだ。そのエネルギーの甚大さは、太陽のエネルギー源が核融合であることからも分かる。>
昔、沢田研二主演でたしか「太陽を盗んだ男」とかいう映画があった、と思い出した。
<通常火薬の爆発は、火薬の成分が酸化されるだけの化学反応で、原子の構造までは変わらない。しかし、核分裂ではウランやプルトニウムの原子核が壊れて、より軽い別の元素に変わるという現象が起こる。しかも、生成した元素の質量を合計すると、元の核物質の質量よりわずかに少ない。質量の一部が失われ、膨大なエネルギーに変わったことを示しており、この原理はアインシュタインが数式で示したことでも有名だ。>
アインシュタインのE=mcの2乗のことだろうか? これでアインシュタインが原爆開発に参加したかのような誤解が広まったことは事実なのだが、一般相対性理論がなかったら、原爆はできなかっただろう。
<この爆発を起こすには、高い純度を持つ一定量の核物質が必要で、特にプルトニウム爆弾を作る場合は、球状に加工したプルトニウムの周辺で均等な爆発を起こし、小さい球に押し潰す「爆縮」という技術が必要だ。核実験は技術を実証し、世界に示すための手段となる。>
爆縮などについては黒井文太郎氏の本にも書いてあった。以前、ブログで紹介した。
<問題は、北朝鮮がミサイルに搭載できるサイズにまで核兵器を小型化しているかどうかだが、米国の軍事専門家の多くは、核兵器技術の一定の進歩は認めながらも、現時点での小型化には懐疑的な見方を示す。>
ここが最も重要なポイントだ。小型化が完成していれば、大変なことになる。
次は<②なぜ北朝鮮は開発するの?→撃墜されにくい+危機高め譲歩得る>だ。
広島、長崎の原爆は米戦略爆撃機B29が落とした。広島に落としたB29の「エノラゲイ」は有名だ。
<戦後、米国に続き旧ソ連、イギリス、フランス、中国が核兵器を開発するが、当時、核兵器を攻撃目標まで運搬する手段は、航続距離の長い爆撃機しかなかった。しかし、1970年代以降は航空機を撃ち落とす対空ミサイルなど兵器の能力が向上し、攻撃目標まで制空権を確保していなければ爆撃機を飛行させることは極めて難しくなった。このため、各国は爆撃機に代わる運搬手段として弾道ミサイルの開発を急ぎ、ミサイルの弾頭に搭載できるまで核兵器を小型化することに躍起になってきた。>
そういう歴史だったのか。今、北朝鮮が短時間でやっていることを米英仏露中は30年近くかけて精密化しているわけだ。
<北朝鮮にすれば、航空機に核兵器を積んで日本を狙っても、日本回上で簡単に撃墜されてしまう。だが、核を弾道ミサイルに積んで発射すれば、ミサイル防衛(MD)システムでも、すべての弾道ミサイルを撃ち落とせる保証はなく、北朝鮮は目的を達することが出来る。>
そういうことなのだ。MDだけですべて安心とはいかないのがつらいところだ。
<防衛省によると、1969年に米ソだけが持っていた弾道ミサイルは、冷戦末期の1989年に15カ国に増え、現在は北朝鮮、中国、韓国、台湾など40前後の国と地域が保有するまで拡散している。このうち9カ国は核兵器を持っている。>
弾道ミサイルを持っている40カ国以上の国の中で9カ国なのか。日本は「弾道ミサイルを持っていない」国に分類されているのだろうか?
<危機高め譲歩得る>の項目では北朝鮮が核ミサイルを持つのは軍事的な理由からだけではなく、外交交渉のテコに利用するためだ、という視点で解説している。
<いくら貧しい小国でも、軍事的影響力を極限まで高める核ミサイルを保有するのを、諸外国は看過できないからだ。>
という理由である。そして、北朝鮮の脅しと米国のアメの関係を解説する。
▽2006年7月のテポドン2発射→米国は北朝鮮を無視するというそれまでの政策を変更し、2007年1月に北朝鮮との2国間協議に応じた。以後、6カ国協議が本格再開され、北朝鮮は寧辺核施設の稼動停止、無能力化の代わりに、5カ国から重油100万㌧相当の支援を受ける権利を得た。
▽1993年には核拡散防止条約からの脱退を宣言して各国を慌てさせた。→1994年、米朝核合意。核施設凍結の見返りに重油の供給や将来の軽水炉提供の約束を取り付けた。
▽1998年にはテポドン1発射。→1999年に米国との間でミサイル発射実験の「モラトリアム(猶予)」に同意するかわりに経済制裁の緩和を取り付けた。
つまり、
<北朝鮮にとって、核ミサイル開発は、経済困難にあえぐ同国が喉から手が出るほど欲している燃料や食糧などの手っ取り早い獲得手段ともいえる。>
と解説していた。その通りだ。随分とはしょった説明だったが、北朝鮮が脅しをかければ米国はアメをくれる、という歴史が続いていたことが分かる。米国の北朝鮮政策はブレが大きく、分析もしづらいが、少なくとも冷戦終結後の米世界戦略の中で「悪の枢軸」の中でイラク、イランは優先順位が高く、北朝鮮の優先順位が低いのは間違いないようだ。特に、ブッシュ政権の2001年9月11日の同時テロ事件以降は米国の目は中東と南アジアにしか向かなくなった。北朝鮮の核ミサイル開発を「脅しに過ぎない」とわざと軽くとらえようとしている感じもある。
次は<③「潜在的」脅威は?→中国、日本の都市に照準>である。ここに引用された米陸軍大学戦略研究所「中国の核戦力・2007年版」はどんな資料なのだろう? 少なくとも、資料は正確なのだろう、とは思うのだが、驚くべき内容が書いてある。
<日本は核大国のロシア、核戦力の増強を続ける中国と向き合っており、日本にとって脅威は北朝鮮の核ミサイルだけではない。>
脅威とは、という定義は戦略論の教科書を見れば最初に出てくる。インターネットで探していたら下記の政府答弁書を見つけたので、コピペしておく。あくまで「抄録」であり、原文通り」ではない。
1986年11月28日の参議院議員志苫裕君提出「昭和61年版防衛白書に関する質問に対する答弁書」で、
<脅威は侵略し得る「能力」と侵略しようとする「意図」が結びついて顕在化する。意図は変化する。我が国防衛を考える場合には、我が国周辺における軍事能力について配慮する必要がある。>
<「潜在的脅威」の表現は侵略し得る軍事能力に着目し、その時々の国際情勢等をも含め、総合的に判断して使用してきている。現在の国際情勢下においては、潜在的脅威と表現することが適切な国があるとは考えていない。>
ついでに、「専守防衛」についての答弁書もコピペしておこう。
1985年11月5日、参議院議員秦豊君提出「防衛政策の基本に関する質問に対する答弁書」の専守防衛に関する部分だ。
<「専守防衛」という用語は、相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限度にとどめ、また保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限られるなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいうものであり、我が国の防衛の基本的な方針である。「戦略守勢」という用語は、我が国の防衛力の運用面において、「専守防衛」と同じ意味で使用していたものである。>
その「潜在的脅威」とは政府は国会では認めないが、実際の潜在的脅威となっているのが中国だ、と読売新聞が書いているのだ。
なぜ潜在的脅威なのか? 「中国の核戦力・2007年」の引用を書き写しておこう。
<(中国は)米国を最大の脅威とみなし、米空母を中心とする米第7艦隊に対し、核と非核の弾頭を装備した弾道ミサイルで攻撃できる能力を保持、日本を射程とする弾道ミサイルにも核と非核2種類の弾頭が配備されている。>
<中国派中距離ミサイル「東風21」などを、沖縄の米軍基地や日本の主要都市に照準を合わせて配備している。>
以上がリポートの中の表現の引用を書き写したもの。そして、読売新聞は、
<具体的には、北朝鮮との国境に近い吉林省通化にミサイル基地があり、車両で移動できる「東風21」(射程1800㌔)など24基の弾道ミサイルが配備されているとされる。日本にとっては「潜在的」脅威だ。>
と書いていた。
<防衛省などの資料によると、中国は現在、少なく見積もっても核兵器が搭載可能な射程7000~1万3000㌔の大陸間弾道弾26基、同1700~5000㌔の中距離弾道弾55基を配備し、射程7200㌔の潜水艦発射型の弾道弾の配備も進んでいる。また、核弾頭は120~200個に上るとみられる。>
とあった。朝鮮戦争などで米国による核の威嚇を目の当たりにした中国が毛沢東時代の1950年代後半に核兵器開発を決心し、東京五輪開催に合わせたように1964年10月に初の核実験を成功させた。ミサイル開発は70年代以降で、中距離弾頭にはじまり、ICBM、SLBMなどを次々開発した、という。日本では非核三原則を守らせるため、「市民団体」や新聞社説が政府に猛烈に噛み付いていた時期だった。中国にとっては日本の「平和憲法」ほど有難いものはなかったかもしれない。
そして、最後のQ&Aは<④廃絶できるの?→拡散防止体制揺らぐ>だった。
これはオバマ米大統領の「核廃絶」演説と世界の情勢をまとめたもので、あまりに遠大なテーマなので、ここではパスする。
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コメント
『脅威』と言う事を 真剣にお考えでしたら、既に御存知の事とは存じますが、どうか
『ストップ浜岡原発』 シミュレーション『浜岡2号機がメルトダウン』
をご覧下さい。
こんなものが、ゴロゴロしているのでは、とても守りきれるものでは御座いません(T_T)
原発が攻撃された場合、核爆発は必要ない、つまり核弾頭である必要はないと思います。
また、原子炉のメルトダウンも必要ないと思います。
原子炉内の核燃料は、高濃度の核汚染物質とされています。
通常の爆弾で原子炉が爆破され、この核燃料が粉砕されて空中高く舞い上がれば、風に乗り首都圏に甚大な被害を及ぼしかねないと思うのです。
チェルノブイリでも、核爆発が起こったわけではないですよね。
炉心溶融は起こりましたが、それが直接の被害をもたらした訳でもありませんでしたよね。
炉心溶融の結果高温となり、水蒸気爆発、水素爆発を起こし、原子炉が破壊され、高濃度核汚染物質である核燃料が空中に撒き散らされただけですよね。
原子炉の型が違いますが、浜岡にも日本海側にも一つの発電所が何基もの原発をかかえています。
チェルノブイリで爆発を起こしたのは一基だけでしたが、ミサイル攻撃などの場合、爆発するのが一基だけとは限らないと思うのです。
現在の日本は人口も、官庁・民間の中枢機関も、東京に集中しています。
ですから関東に被害があれば、日本は壊滅状態になってしまうと思うのです。(._.)
投稿: でじたるこみっく | 2009年5月31日 (日) 20時16分
でじたるこみっく様
貴重なご意見ありがとうございます。
核ノドンのことばかり考えていて、今すでに北朝鮮の北東部に日本に向けて配備されている非核弾頭のノドン200~300基による原発攻撃までは真剣に考えませんでした。怖いですね。
でも、きっとそれはないんでしょう、と思っております。「なぜないと思うのか」と聞かれても、まだ論理的に説明できません。例の「先制攻撃では相手の攻撃能力の9割をせん滅する」という理論だと、原発が破壊されなかった場合のリスクを考えると、北朝鮮はそこまで思いきれないのではないか、と直感で言うのが精一杯です。すいません。
ありがとうございました。
投稿: アラかん | 2009年5月31日 (日) 21時34分
『北朝鮮と台湾の関係』 核廃棄物
核開発などで何かと話題に上る北朝鮮と台湾の以外な関係をまとめてみましたので
ご参考まで。
http://www.taiwanembassy.org/ct.asp?xItem=62266&ctNode=3591&mp=202&nowPage=83&pagesize=50
http://74.125.155.132/search?q=cache:P-rMjD2p90gJ:www.taiwanembassy.org/ct.asp%3FxItem%3D62266%26ctNode%3D3591%26mp%3D202%26nowPage%3D83%26pagesize%3D50+%E5%8F%B0%E6%B9%BE%E9%9B%BB%E5%8A%9B%E5%85%AC%E5%8F%B8%E3%80%80%E5%8C%97%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E3%80%80%E3%80%80%E9%99%B3%E6%B0%B4%E6%89%81%E7%B7%8F%E7%B5%B1+%E4%B8%AD%E8%8F%AF%E9%80%B1%E5%A0%B1%E3%80%801970%E5%8F%B7%E3%80%802000.9.14&cd=1&hl=ja&ct=clnk&gl=jp
台湾週報
中華週報1970号(2000.9.14)
陳水扁総統第二回記者会見全文 ㊦
七月三十一日(総統府大礼堂にて)
〔質疑応答〕
問:最近、台湾電力公司は北朝鮮に低濃度の核廃棄物処理施設を設立すると発表した。
旧政権はこうした計画を一つの通常の商業取引と見なしていた。
新政権はこのような計画を新たに認知するのだろうか。あるいは別の新たな方法があり、
また第四原発を廃止しないのなら、
新政権は他に前向きな方法を持っているのだろうか(ドイツ通信・アントイ)。
《台北『中国時報』8月26・27日》
著作権:行政院新聞局
それ以外の情報は、
http://academy6.2ch.net/test/read.cgi/history2/1190982455/
ミャンマー情勢
13.~ 15.
投稿: おなか一杯 | 2009年7月10日 (金) 14時58分