「縦深が浅い日本の全領土が報復打撃圏」:韓国・中央日報にはズバリ、北朝鮮の対日脅しの文章が載っていた~中央日報5月28、29日と朝鮮日報30日
核戦略とか戦争に関する記事を日本の新聞で見ても、説明が下手でよく分からない。書いている記者も訳が分からずに書いている、ということもあるのだろう。日本の防衛計画の大綱ならば日本だけに通じる特殊用語で「軍隊ではないんだけど」「戦艦ではなく護衛艦というんだけど」などオドオドしていた方が好感度が高かった時代が長く、新聞記者の世界でも戦争用語や核戦略用語などは「汚らわしい」というような扱いを受け、先輩から後輩への伝承の世界でも、対象にのぼらない言葉になっているのだろう。
だから、そういう問題は韓国の新聞を見るに限る。韓国の新聞記者はものすごく現実的だし、米国の記者が使っている言葉で書いている。英語と韓国語の違いがあるだけで、たとえば米国が「戦争マニュアル」と書くものを、日本は外務省も防衛省もマスメディアも「ガイドライン」と訳すが、韓国だったら「戦争マニュアル」とそのままの言葉で書くだろう。「ガイドライン」ではイメージがわかなかった人も、さすがに「戦争マニュアル」と書かれたら物騒で「何だろう」と真剣に読む。政府もメディアも一般の怒りやすく感情的な国民に、「戦争」という言葉を見せたくないので、わざと意訳したのだ、と思っているのだが。
早速に韓国紙の中央日報の5月28日の<米、北朝鮮が核使用なら核で報復も>を読んでみよう。日本の新聞では見なかった気がするのだ。
<北朝鮮の核実験を受け、米国が韓国に「核抑止力」として提供することにした「拡大抑止」の概念が新たに関心を集めていると、聯合ニュースが28日報じた。 米国の同盟国に対する核抑止力の提供は「核の傘」(Nuclear umbrella)と「拡大抑止」(extended deterrence)という概念で表現される。「核の傘」が包括的で政治的な概念なら、「拡大抑止」は核の傘をより軍事戦略的な次元で具体化した概念だ。>
「核の傘」と「拡大抑止」をそれなりに区別して使い、違いを説明してる。
<米国は19678年に在韓米軍に配置された戦術核兵器を1992年にすべて撤収した後、「核の傘」の提供を約束し、これを1992年の韓米定例安保協議(SCM)共同声明に明示した。 その後、「核の傘」概念は2005年のSCM共同声明まで明示されていたが、2006年に政府の強力な要請に基づき「拡大抑止」に変わった。国防部は北朝鮮の核実験を受け、当時のSCM実務協議でより一層強力な米国の防衛公約を要求し、この概念が共同声明に反映されたのだ。>
<「拡大抑止」の概念は、米国の同盟国が核攻撃を受ければ米国本土が攻撃を受けた場合と同じ戦力水準で報復攻撃を加えるという概念だ。 すなわち米国は同盟国が核攻撃を受けた場合、大陸間弾道ミサイル(ICBM)と潜水艦発射ミサイル(SLBM)、戦略爆撃機で報復するということだ。>
日本では両方とも「核の傘」と呼んでいるように思うのだが。国会でもどこでも議論しないから、言葉を知らなくとも政治家を続けることができるし、マスメディアもあまり詳しくなると、逆に「軍事フリーク」などと冷やかされるので、一般国民並みのレベルにとどまり、あえて考えようとしない政治家が増えてきていると思う。
<米国は2002年にNPR((核計画見直し報告)を発表し、「拡大抑止」の手段として従来の3大戦略武器に多様な打撃手段を補完する方向に概念を修正した。すなわち地下軍事施設、核や生物・化学兵器施設を実際に核兵器で報復できるようにし、このために超精密打撃体系を「拡大抑止」の手段として追加したということだ。>
書き方が専門的だ。
<特に敵の大量破壊兵器(WMD)が米国本土や同盟国の地上に到達する前に空中で爆破させる防御活動、WMD使用の徴候があれば警報、探知、提督までの手段を同盟国に提供する概念に変わったということだ。 韓米間の合意に基づきSCM共同声明に明示した「拡大抑止」はこのように変化した手段を含んでいる、というのが国防部の説明だ。 韓米は10月にソウルで開かれるSCMの共同声明に拡大抑止の概念を改めて明記する案を協議中という。>
そして、別の記事も面白かった。
5月29日の記事だ。<北紙「日の対北攻撃論に日本全領土打撃圏」>の見出しで、
北朝鮮労働機関紙、労働新聞が29日、北朝鮮の2度目の核実験以後、日本で提起している「適基地攻撃論」に対し「再侵略策動」だと非難し、再び侵略戦争を起こせば何倍もの報復をする万端の軍事的態勢を整えている」と主張したとYONHAPニュースが報道した。>
この記事は日本の新聞も目立たないところでベタ記事で掲載した東京新聞は立派だったが、同じ夕刊で、他紙には見当たらなかった。
記事を読もう。
<同紙は「葬送行進曲を呼ぶ無謀な適基地攻撃論」という見出しの論評で「日本の反動勢力はどんな方法ででも海外侵略戦争の火をくべようとしている。彼らは我々のミサイル発射基地に対する空襲をその火種にしようとしている」と主張した。>
まあ、ここまでは今までと同じトーンだ。
<また「我々の軍隊と人民は日本軍事勢力の再侵略策動を注視している」とし「我々の打撃力は非常に力強く、限界を知らない。我々は地上なら地上、海上なら海上、空中なら空中で日本軍事侵略者たちを無慈悲な報復打撃で全て掃討する」と豪言した。「日本は島国で領土は狭小で縦深が浅い。日本が再侵略戦争を挑発すれば、縦深が浅い日本の全領土が報復打撃圏から脱することはできないだろう」と強調した。>
南北協議の際に北朝鮮の代表団が「ソウルが火の海になっていいのか」と凄んだことがあったが、今度は日本を脅そうとしてる。大都市への人口集中の脆弱性を嘲笑うような気分の悪くなる文章だが、北朝鮮責任者の品性下劣さがまともに出ている感じがして、嫌な感じを受けた。
朝鮮日報5月30日のネットには<「150日戦闘」に出た北朝鮮>の解説記事があった。日本の新聞でも「150日戦闘」という言葉が出てきたが、意味が書いていなかったので、ここで教わろう。
<まるでハリネズミのようにとげを立て、世界を相手に戦いを挑もうとしている北朝鮮。その戦いは一体いつまで続くのだろうか。専門家たちは「すべての住民の労働力を動員する“150日戦闘”が終わる今年9-10月ごろまで、北朝鮮の国内外に対する強硬策は続く可能性が高い」との見方を示している。>
<北朝鮮は長距離ミサイルの発射(先月5日)によって国際社会の制裁が本格化したのを受け、「150日戦闘」に打って出た。>
<今月4日、朝鮮労働党機関紙「労働新聞」が社説で「全党・全国・全人民が心意気を新たにし、“150日戦闘”に挑もう」と訴えて以来、北朝鮮のすべてのメディアは「戦闘」のアピールに力を入れている。「核兵器よりもさらに強力な一心団結の威力を示せ」(労働新聞7日付)、「食糧問題の解決に向けた決定的な転換をもたらす」(同11日付)、「労働党の歴史における特筆すべき大変革」(12日の朝鮮中央放送)といった報道が相次いだ。また、朝鮮中央テレビは毎日、労働者などの組織が決意集会を開く場面を放送している。>
ここまで読んでも、まだ「150日闘争」の意味が分からない。
<とりわけ北朝鮮は、「150日戦闘」に打って出て以来、「口だけの脅迫」を実際の行動に移す動きを見せている。4月までは「(韓国に対する)全面的な対決態勢に突入」「6カ国協議の拒否」「米朝間の対話は無用」といった脅し文句を並べてきた。だが今月に入り、核実験の強行に続き、短距離ミサイルを相次いで発射した。西海(黄海)における南北間の武力衝突の可能性も次第に高まっている。>
不気味なことを書いてるなぁ。「口だけの脅迫」を実際の行動に移す動き、だって? そんなはずはない、とは思いつつ、怖くなる。
<韓国政府の関係者は「北朝鮮は“150日戦闘”の期間について明らかにしていないが、重要な記念日が集中する10月初めまで続くものとみられる」と話した。10月初めには「10・4南北首脳宣言(2007年)記念日」や、金正日総書記の推戴記念日(8日)、労働党創建記念日(10日)などがある。また、9月9日は北朝鮮の建国記念日だ。中央大のイ・ジョウォン教授は「北朝鮮による最近の挑発は、外国との交渉を意識したものではなく、体制を守るためという性格が強い。住民たちへの統制を強める“150日戦闘”が終わり、米国の対北朝鮮政策の方向性が定まる9月から10月ごろになれば、対話に応じようとするのではないか」と指摘した。>
結局、緊張させたまま9月、10月になだれ込もうということなのか。
<体制の強化を図るため、「70日」「100日」「150日」「200日」といった期間を設けて住民たちを総動員する手法は、金総書記が1970年代から用いてきたものだ。最近では2005年7月3日から10月10日(労働党創建60周年)まで行われた「100日戦闘」がある。当時、北朝鮮は「戦闘」を始める前に核兵器の保有を宣言し(2005年2月)、さらに寧辺の原子炉から使用済み燃料棒8000本を抜き取ったことを発表(5月)していた。その後、「100日戦闘」が終盤を迎えた9月になって、北朝鮮は核兵器の廃棄に向けた「9・19共同声明」に合意した。>
これも北朝鮮の常套手段だったのか。
<こうした動きに関し、京畿大の南柱洪教授は「北朝鮮との関係におけるこう着状態が当分続くという前提の下で、戦略を打ち出していくべきだ」と述べた。>
というのが本文だ。安勇炫記者の署名が入っていた。
こういうデータが入って入れば役に立つ。
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コメント
■北朝鮮が日本海上に新型ミサイルを発射―北朝鮮の長期戦略が見えてきた?
こんにちは。北朝鮮また、長距離ミサイル発射の準備をしているようです。私は、先の長距離ミサイルの打ち上げや、最近のアメリカ、ロシアの動向などから、北朝鮮の長期戦略が推測出来ると思います。最近は、跡目争いや、旧守派の盛り返しなどが報道などされていますが、これは小手先の動きであり、長期戦略に関しては変わりがないものと思います。日本は、朝鮮のこうした長期戦略に呼応し、独自の動きをすべきだと思います。詳細は是非私のブログをご覧になってください。
投稿: yutakarlson | 2009年5月31日 (日) 11時36分
yutakarlson様
ブログを読まさせていただきました。
ものすごく鋭い見方ですね。素人とおっしゃっているけど、もう半分以上玄人だと思います。
基本的には今が最後のチャンスではないか、とみているのですが、日本の政府、外務省のことですからアメリカべったり。
アメリカも自国の青年をこれ以上死なせたくない。韓国はソウルが危ないし、北朝鮮は韓国に核爆弾を使わないという不思議な思い込みが国中を支配しているので、北朝鮮の核武装に不感症です。最終的に日本が孤立して、どうすればいいのか、と突き付けられるのだと思います。
日本自身が変われるのかどうか、でしょうね。
投稿: アラかん | 2009年5月31日 (日) 12時49分