伊藤元重氏の「農業と環境を分けて考えろ」は間違いだと思う~産経新聞6月22日[正論]
政府の諮問機関などで活躍する経済学者が日本の農業の未来をどう考えているのか、かねて興味があったのだが、産経新聞6月22日朝刊[正論]で東京大学大学院教授・伊藤元重氏が<歪んだ農業政策を軌道に戻せ>のタイトルで農業問題を論じていたので、読んでみた。小見出しは≪食糧不足と矛盾する減反≫、≪すべての政策で目的が曖昧≫、≪「環境」を言い訳にするな≫だった。
<日本の食料政策の現状を見ると、何を目標として政策を行っているか分からなくなるものが少なくない。たとえば、減反政策などその典型的なものだろう。減反政策をやめれば米の生産が増えてしまう。それでは米の価格が大幅に下がり、米農家の収入が大打撃を受ける。だから、減反や転作を奨励して、米の生産を抑制するという。しかし、日本の食料自給率は下がり続けている。世界的にも人口増加などによって食料供給の不安がある。なぜ無理やり米の生産を制限しなければいけないのか。減反政策は食糧不足とはまったく矛盾する政策であるのだ。>
全くそうだ。そこが最大の矛盾だと思う。
<減反政策を行っている本当の理由は、米を生産している農家を保護するためだと考える方が自然だ。しかし、なぜ米の生産者だけ、特別に保護しなくてはいけないのだろうか。日本の文化にもかかわる食の中心にあるのが米だからだろうか。それとも、兼業農家の片手間にできるという意味で米は作業が簡単な作物であり、兼業農家の票を確保するための政治的な意図があるのか。いずれにしろ、食料の自給率とはあまり関係がなさそうだ。米の生産で自給率を少しでも上げようというのであれば、減反政策をやめて米の生産を拡大させればよい。米の価格が下がることで、規模の大きな米農家に生産を集中させる方が、国内生産強化にはよっぽど効果的であるように思える。>
大規模化ですか。農水省のこれまでの方針通りですね。
どうも、ここだけ読むと伊藤氏の論理は粗雑に見えるのだが、どうだろうか。というのは、兼業農家問題ではなく、食管法が廃止された後も存在意義をなくしたはずの農協が跋扈しているのが最大の問題で、兼業農家は時間がなく、農協に全面依存するのが問題なので、農協が農機具のローン販売などの商売のいいお得意さんにしているのも兼業農家なので、農協をなくせば、兼業農家は困って、農業をやめる可能性は十分ある、と思うのだが。
<問題は、かなり多くの国民が、何となく減反政策が米農家を守り、それが長期的には日本の食料の自給率を上げることにつながると勘違いしていることである。日本の食料自給率が下がっていることが国民の食糧問題への関心を高めている。それは結構なことだ。しかし、そこからいきなり現在の米政策を正当化することにはつながらないはずだ。>
減反政策の検証がされていないことが問題だ、と。それは正しいと思う。
<畜産政策にも似たようなところがある。いくら日本で牛や豚を育てても、その餌がすべてトウモロコシなどの輸入飼料であれば、カロリー自給率はゼロである。輸入の餌で育った牛や豚は国内のカロリー自給に貢献していないからだ。カロリー自給率を上げるためには、国内の畜産を保護するより、まず国内での穀物生産を高めることから始めなくてはいけない。>
ここで話は飛び、カロリー自給率などという言葉が出てくるのだが、飼料問題では穀物自給率こそ問題にすべきではないか。カロリーベースの食糧自給率が40%なのに、穀物自給率は28%だそうだ。
<通商政策の世界に、「関税傾斜(タリフ・エスカレーション)」という用語がある。穀物のような原料や飼料の関税は低くし、肉や乳製品のような下流の産物への関税を高くすることを指している。木材の関税率を低くし、合板や家具の関税率を高くするのも関税傾斜である。こうした関税傾斜が行われているのは、下流にある畜産業や木材加工業者を保護するためである。飼料穀物が安く入ってきて、肉や乳製品の輸入に高い関税がかかっていれば、国内生産者は助かる。しかし、こうした政策はカロリーベースの自給率を大幅に下げる結果につながっているのだ。木材のケースでも、加工業者を保護する関税傾斜が、結果的に日本の森林や山を荒れさせる結果になっている。何のための関税政策であるのかもう一度よく考えてみる必要がある。>
今度は山林ですか。経済学者は一般化が好きだから、このように話が飛んでしまって、分かりにくい。
<食料政策だけではなく、すべての政策がそうであるが、そもそも政策の目的は何であるのか明確にしなくてはいけない。政策の目的がいくつもあるのなら、優先順位をつける必要がある。日本の食料政策についても、目的とその優先順位の明確化が必要だ。>
日本の農業政策の目的がはっきりしていないことは事実だと思う。
<食料政策のもっとも重要な目的は、国民の食料を確保すること以外には考えられない。農業者の保護なども食料政策の目的の中に入れてもよいが、食料確保の方がはるかに重要な政策目標であるはずだ。上で米の減反や畜産関税の例で述べたように、食料確保を政策の最重要課題としておけば、日本の食料・農業政策は現在の政策とは大きく違ってくるのではないだろうか。ちなみに、国民一人あたりの耕地面積の大きさを考えれば、日本の食料をすべて国内生産で賄うことは難しい。海外との貿易関係を円滑に進め、海外の生産を支援することも、食料確保の重要な手段であるのだ。>
それはそうだが。そのような一転突破全面展開主義では解決しないと思う。農業はよく言われるように国土保全機能も持ち、農家政策も大事だし、もちろん食糧自給問題はなおざりにできない。
<農業政策でよく出てくる重要な政策目標に環境保全がある。これは重要な政策目標であるが、今の日本の農業政策が有効に機能しているかどうかも精査する必要がある。ちなみに経済学に重要な定理がある。ある政策目標を実現するために、複数の手段があったら、どの政策手段を採用すべきか、という点に関するものだ。その答えは簡単で、政策目標にもっとも直接的に働きかける政策手法を用いるべきであるというものだ。>
ほらね、竹中平蔵氏のような論理展開が始まる。狐につままれないように読んでいこう。
<森林整備や水管理など、環境維持は重要な政策目標である。だからこそ、その実現のためには、農業政策という間接的な政策手段に過度に頼るのではなく、より直接的な環境保全政策を活用した方が、政策コストが少なくて済む、というのが経済学の教科書で教える原理である。環境問題対応を、歪んだ農業政策の言い訳にしてはいけない。>
環境は環境、農業は農業、分けて考えろ、というらしい。しかし、それは違う。山は木がなければ水を吸い込まない。山の地下を通った水はミネラルを含み、わき水として農地に引き入れられ、農業用水になり、米の味を調える。雨水をためたため池の水で作った米が美味しくないのはミネラルが不十分だから、ということらしい。
水田の環境問題というよりか、国土保全機能を分けて考えるのではなく、トータルに政策をつくることが要求されていると思う。
伊藤氏の考え方は間違いだと思う。
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コメント
経済学者と呼ばれる人達は所詮は机上で物事を考える人達が大半だから、自然の摂理とか循環とか云う問題には疎い人達が多いんですよ‥だから〈米は作業が簡単な作物であり〉なんて農家から激怒されるような言葉が平気で口から出るんです。米作りは改良に改良を重ねて現在の姿になったんです。でも自然に対する農薬の弊害が取り沙汰され、手間の掛かる有機農法回帰の農家も増えて来ています。机上ではなく現場を知らなければマトモな事は理解できませんよ!
投稿: よ | 2009年6月22日 (月) 16時44分
ま、伊藤さんも竹中さんのお仲間ですから当然詭弁使い、すり替え、の達人、
売国奴ですよね・・
投稿: サリー | 2009年6月22日 (月) 21時17分