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2009年6月

2009年6月30日 (火)

北朝鮮の指示でミャンマーに大量破壊兵器関連物資を密輸:朝日新聞は故意に矮小化するのか?~6月30日各紙朝刊

 北朝鮮をいかに封じ込めるか、その実効性が問われている、というのが今の日本の常識だろう。そんな空気の中、神奈川県警が6月29日、北朝鮮の指示を受けて長距離弾道ミサイルの開発に必要な機器をミャンマーに不正輸出しようとした北朝鮮系貿易商社社長らを逮捕した。神奈川県警のお手柄である。
 ところが、6月30日朝刊各紙を比べてみると、紙面扱いがバラバラで、読売新聞は事態の重要性を見極めたのか1面トップ、地図付きで扱い、毎日新聞も社会面トップだったのに、朝日新聞は社会面2段記事。東京新聞の社会面ベタ見出しは論外としても、ここでも朝日新聞の北朝鮮寄り姿勢がはしなくも露呈された結果となった。
 どんな事例だったのか、読売新聞を読んでみよう。見出しは<北、ミャンマーに技術移転か/ミサイル機器輸出図る/北系商社社長ら逮捕/外為法違反容疑>だ。
 <長距離弾道ミサイルの開発に必要とされる磁気測定装置を、北朝鮮の指示を受けてミャンマーへ不正輸出しようとしたとして、神奈川県警は29日、北朝鮮系貿易商社の社長ら3人を外国為替及び外国貿易法違反(無許可輸出未遂)容疑で逮捕した。当初、ミャンマーは、北朝鮮への迂回輸出の経由地とみられていた。同社は、ほかにもミサイル関連機器をミャンマーに輸出していた疑いが持たれており、県警は、北朝鮮がミャンマーへ「テポドン」などミサイルの技術移転を進めようとしたとみて全容解明を行う。>
 という前文。にわかには信じられない内容だが、軍事政権で西側世界から経済制裁を受けている国に「ミサイル技術を安く売ってあげるから」と功名に近づき、商売をしている北朝鮮の「死の商人」の姿を想像すると、いかにもあり得るケースに思えてくる。
 磁気測定装置については[キーワード]がついていた。
 <磁気測定装置 内臓のセンサーで、地球の磁場や機械から漏れる磁気などを測定する。弾道ミサイルでは、本体に搭載されるセンサーの設計・開発過程で使われ、飛行精度を向上させるのに不可欠という。>
 やはり、ICBMに不可欠な部品なのだ。
 <発表によると逮捕されたのは貿易商社「東興貿易」社長で朝鮮籍の東京都板橋区板橋、李慶鎬(41)、装置製造会社社長の世田谷区玉堤、香月巳昭(75)、輸出代理店社長の練馬区石神井台、武藤裕彦(57)の3容疑者。3人は共謀して2009年1月、大量破壊兵器などに転用可能として輸出禁止対象になっている磁気測定装置1台を、経済産業省の許可を受けずに約700万円でマレーシアを介してミャンマーへ輸出しようとした疑い。2008年9月にも、同装置1台をミャンマーの「第2工業省」へ輸出しようとしたとされるが、いずれも荷出し直前、経産省から輸出申請の手続きが必要だと通告され、輸出できなかった。>
 常習犯なのだ。
 <捜査関係者によると県警は2月に同社などを捜索して押収した資料などを分析。ミャンマーへの不正輸出は朝鮮労働党で軍需部門を統括する「第2経済委員会」の傘下にあるとされる「東新国際貿易有限公司」(本社・香港)の北京事務所が2008年春頃に出した指示だったことが判明したという。東新の平壌事務所は「大量破壊兵器の開発に関与している」として経産省が公表している要注意企業リストに掲載されている。>
 なるほど、県警は警察庁の協力を得て、警察組織あげて取り組んでいるのだろう。
 <東興貿易は以前にもミサイルなどに転用可能な測定機器をミャンマーに不正輸出しようとして、経産省から通告を受けたことがあるという。>
 昨年春に北朝鮮から指示を受けて昨年9月には真っ直ぐミャンマーに輸出しようとして失敗。今回はマレーシア経由でミャンマー行きを狙ったというのだ。どうしてもミャンマーに持っていく必要があったのだろう。北朝鮮とミャンマーといえば、全斗煥元大統領一行の暗殺を狙ったアウンサン廟爆破事件があった。あの頃から、北朝鮮とミャンマーでは、裏の関係ができていたのだろうか?
 と思ったら、早速、読売新聞では同じ問題意識で1面に[北朝鮮とミャンマー]というミニ解説が掲載されていた。
 <1983年、韓国閣僚らが北朝鮮工作員に爆殺されたラングーン(現ヤンゴン)爆弾テロ事件を機に両国は断交したが、2007年に国交を回復。ミャンマーはそれ以前から武器を大量購入し、北朝鮮は見返りにコメなどを手に入れたとみられる。米政府高官は2004年、北朝鮮が地対地ミサイル売却をミャンマーに持ちかけた、と証言している。現在、大量破壊兵器の関連物資を積んだ疑いがあるとして米軍が追跡中の北朝鮮貨物船カンナムについても米韓メディアはミャンマーが目的地と報道。ただ、ミャンマー国営紙は報道を否定している。>
 というものだ。
 まさしく、今回の国連安保理制裁決議の実行そのものなのだ。
 これが正しいのだろう、と思う。
 しかし、朝日新聞社会面の地味な記事は様々な点で読売新聞と事実関係で齟齬をきたしていた。<核開発に転用可能装置/不正輸出未遂の疑い/北朝鮮系の社長ら逮捕>という地味な見出しだ。
 <核開発などに転用可能な磁気測定装置を無許可でマレーシアを経由してミャンマー(ビルマ)に輸出しようとしたとして、神奈川県警外事課は29日、外為法違反(無許可輸出未遂)の疑いで、東京都新宿区の北朝鮮系商社「東興貿易」社長、李慶鎬(41)=東京都板橋区=ら3容疑者を逮捕した。県警は、ミャンマーを経由して、北朝鮮に送ろうとした疑いがあるとみている。>
 ここから違う。ミャンマーを通じて北朝鮮に送るのか、ミャンマーに北朝鮮が売るのか、だ。
 <同課によると、李容疑者らは2009年1月、経済産業相の許可がないまま磁気測定装置をマレーシア向けと偽ってミャンマーに輸出しようとした疑いがある。同装置はウラン濃縮を行う遠心分離器の調整などに使えることから、大量破壊兵器(WMD)開発につながる輸出を規制する「キャッチオール規制」の対象となる。>
 ここが大きく違う。ウラン濃縮の遠心分離機用なのか、読売新聞の書いたようにICBM用なのか? どっちが本当なのだろう。
 <李容疑者は1998年から主に北朝鮮との貿易を行っているという。また、経産省の「外国ユーザーリスト」に載る北朝鮮系企業と同名企業の北京支社から発注を受けていたという。ミャンマーは北朝鮮と国交を回復させ、軍事技術などの結びつきを強めているとされる。防衛省も5月に出した報告書で、北朝鮮のミサイル開発の進展に「外部からの資材・技術の流入の可能性がある」と初めて指摘した。>
 何か漠然としすぎていて、訳が分からない記事だ。
 わざと訳を分からなくしているのだろうか? 北朝鮮の意図をそのまま日本人に知らせたらまずい、と思っているのか? 朝日新聞は北朝鮮に気を遣いすぎだ、と思う。
 毎日新聞は朝日新聞と似たような書き方だった。見出しは<ミャンマーへ密輸図る/兵器転用可能装置/北朝鮮系会社の指示/3容疑者逮捕>だった。
 <核兵器など大量破壊兵器の開発に転用可能な「磁気測定装置」をミャンマーに輸出しようとしたとして、神奈川県警外事課と戸部署は29日、貿易会社「東興貿易」(東京都新宿区)社長で、朝鮮籍の李慶鎬容疑者(41)ら3人を外為法違反(無許可輸出未遂)容疑で逮捕した。県警は、北朝鮮は既に同装置を所有しているとみており、協力関係が強いとされるミャンマーへの軍事技術拡散を図ったとの疑いを強め背景を調べる。>
 戸部署か。
 <他に逮捕されたのは貿易会社「大協産業」(渋谷区)社長の武藤裕彦(57)と装置メーカー「理研電子」(目黒区)社長の香月巳昭(75)の2容疑者。逮捕容疑は今年1月、大量破壊兵器に転用のおそれがある貨物の輸出を規制する経済産業省の「キャッチオール規制」対象品、磁気測定装置を横浜港からマレーシア経由でミャンマーに輸出しようとしたとしている。3人とも大筋で容疑を認めているという。>
 武藤とか香月とか日本人の名前だが、帰化した朝鮮人なのだろうか?
 <外事課によると理研電子の代理店だった大協産業の武藤容疑者が昨年9月、李容疑者の指示を受けて横浜税関にミャンマー向け輸出を申告。経産省から「輸出許可が必要」との通知を受け断念したが、今年1月に名義を理研電子に変更し、東京税関に再申告したため悪質と判断した。>
 悪質に決まっている。
 <県警によると李容疑者は北京にある北朝鮮系貿易会社「東新国際貿易有限公司」から指示を受けていたという。同社平壌事務所は大量破壊兵器開発に関与の可能性があるとして経産省がホームページで公開している。>
 ここを追加取材して、読売新聞は「北朝鮮の指示」ンいまで踏み込んだわけだ。
 <大協産業関係者は「武藤社長は日本に誇りを持っている。北朝鮮に加担するなんて考えられない」と話した。>
 どういう意味だ? 武藤は日本人だというのか? スパイじゃないか。
 <装置はミサイルの制御装置やウラン濃縮の遠心分離機に使われる永久磁石の製造に必要という。規制対象品を米国など「ホワイト国」と呼ばれる26カ国以外に輸出する際には許可が必要。>
 ホワイト国なんてあるんだね。
 <ミャンマーはかつて、ロシアと低濃縮ウランを使う核実験炉を建設する合意に達したとされ2007年5月には米国務省報道官が不拡散と安全性への懸念から強く非難した。その後、実際の建設は確認されていない。ミャンマーは核拡散防止条約(NPT)と国際原子力機関(IAEA)に加盟している。>
 北朝鮮が罰を受けなければ、真似をする破綻国家がどんどん現れるだろう。いつか、ソマリアだって……。
 問題の重要性を考えたのか、日経新聞も社会面4段記事<貿易会社社長ら逮捕/兵器関連装置/不正輸出は買った疑い/ミャンマー経由 北朝鮮の可能性>の見出しだった。
 感度が悪いので驚いたのが産経新聞だった。社会面4段<ミャンマーに不正輸出未遂容疑/貿易会社幹部ら逮捕>の見出し。やる気のないことこの上ない。産経新聞は警視庁の事件でないと食い込めないのか? これは社の体力の問題もあるから、致し方ないのだろう。
 やはり問題は朝日新聞だ。
 読売新聞、毎日新聞が1面、社会面のトップ記事で報じているのに、意図的に矮小化を試みている。こんな姿勢で北朝鮮に擦り寄って、また、金正雲絡みのガセネタでももらう気なのだろうか? それとも、まだあの記事は真実だということなんだろうか?

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2009年6月29日 (月)

天下の読売新聞に[アラ還]の大見出しが…~読売新聞6月29日朝刊

 読売新聞6月29日朝刊[くらし]面の料理をテーマにした人間ドラマもの[お品書き]は秋元順子さんの<カレイの煮付け>。見出し<アラ還の星 輝きの源>が大きな文字で目に飛び込んできた。

 <大人の恋をテーマにした歌謡曲「愛のままで…」で、61歳にして昨年末の紅白歌合戦に出場を果たした。紅白初出場歌手としては史上最年長。>

 という書き出しで、

 <「愛のままで…」は70万枚を超えるヒットになり、今や「アラ還の星」といわれる。「アラ還」とはアラウンド還暦(60歳前後)の意。>

 と、大見出しの説明がある。「アラ還」も大新聞が大見出しにするくらいに一般的になったようだ。最近、新聞コラムなどでたまに目にすることもある。

 随分前のことだが、朝日新聞夕刊2面(今は紙面改革で2面ではなくなっているが)の[窓 論説委員室から]という小さなコラムで女性記者が[アラ還]を取り上げ、「ネットのグーグルなどでアラ還で検索すると面白いよ」と読者に教えていたのが、大新聞でまともに「アラ還」を取り上げていた最初だったかもしれない。

 まあ、私は自分が60歳直前とあって「アラウンドフォーティー」=「アラフォー」からの連想で「アラ還」として、漢字が入ると面倒だから、「アラかん」という名前にしたのだが、この名前も独占していては申し訳ない感じになってきた。何かの機会にもう少し違った名前にしてみようか。

 読売新聞を見た感想である。

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村田元外務事務次官の「密約」暴露発言~6月29日毎日新聞朝刊など

 毎日新聞が6月29日朝刊1面<米核持ち込み/密約文書引き継ぐ/村田元次官「外相に説明」>の特ダネ記事を掲載していた。ライシャワー証言以来毎日新聞が追いかけている核密約である。今回は元外務事務次官が思い口を開いたということでインパクトは大きいだろう。

 朝日弘行記者の記事だ。読んでみよう。

 <1960年の日米安全保障条約改定時に核兵器搭載艦船の寄港などを日本側が認めた密約について、1987年7月に外務事務次官に就いた村田良平氏(79)=京都市在住=が前任次官から文書で引き継ぎを受けていたことを明らかにした。村田氏は28日夜、毎日新聞の取材に「密約があるらしいということは耳に入っていたが、日本側の紙を見たのは事務次官になった時が初めて」と証言した。日本政府は密約の存在を否定しており、歴代外務次官の間で引き継がれてきたことを認める証言は初めて。>

 なぜ今、村田氏が認めたのか? ボケたのか?

 <村田良平氏は1929(昭和4)年生まれ。京大法学部卒。1952年外務省入省。外務事務次官、駐米大使、駐独大使などを歴任した。>

 昭和4年の人なのだ。気骨があるはずだ。

 <村田氏によると密約は「普通の事務用紙」1枚に書かれ、封筒に入っていた。前任者から「この内容は大臣に説明してくれよ」と渡され、1989年8月まで約2年間の在任中、当時の倉成正、宇野宗佑両外相(いずれも故人)に説明。後任次官にも引き継いだという。>

 宇野宗佑氏も倉成正氏も知っていたのか。

 <1960年の安保改定時、日米両政府は在日米軍基地の運用をめぐり、米軍が装備の重要な変更などを行う際は事前に協議することを確認したが、核兵器を搭載した米艦船の寄港や領海通過、米軍機の飛来は事前協議の対象としないことを密約。1981年5月、毎日新聞がライシャワー元駐日大使の「核持ち込み」証言を報じて発覚したが、日本政府は「米側から事前協議がない以上、核持ち込みはなかったと考え、改めて照会はしない」と密約の存在を否定し続けている。>

 米側文書ではっきり出ているのに日本政府が否定する、という構図が28年間も続いているのだ。

 <村田氏はこうした日本政府の対応について「詭弁だ。いつまで続けるのか、憮然とした気持ちだ」と批判。密約に関しては「冷戦時代だし、日米それぞれの都合もあれば、機密もあっての話だから、咎め立てする話でもない」と存在を認めるよう求めた。さらに、非核三原則で禁じた「持ち込み」の中に核搭載艦船の寄港や領海通過を含めたことは「ナンセンスだ」として見直しを主張している。>

 そうか。冷戦崩壊を機に日本は認める方向に舵を切るベきだった、という考えだったのか。ボケていなかった。

 <また、1977年制定の領海法で宗谷、津軽、対馬など5海峡の領海の幅を3カイリと規定したことについて、村田氏は「(国連海洋法条約で認められている)12カイリまで広げればいいものを広げていない。おかしいと思っていたけど、直接関係していなかったから黙っていた」と指摘。米艦船が5海峡を通過しても「核持ち込み」とならないよう、あえて領海の幅を狭める意図が外務省にあったことを明らかにした。>

 姑息だなぁ、そんなことをして、自分で自国の領海を狭くした国益侵害をどう弁明するのだろうか? 次に[ことば]が掲載されていた。

 <日米の密約 核兵器を搭載した米艦船の寄港や領海通過を認める密約のほか1969年の沖縄返還交渉で「有事の核持ち込み」を認めた▽1971年の沖縄返還協定で米国が払うべき「400万㌦」を日本側が肩代わりした――などの密約も発覚。いずれの密約の存在も日本政府は否定し続けているが、関係者の証言や米側の公文書などで裏付けられ「公然のうそ」との見方が定着している。>

 公然の嘘などをマスメディアは許しておくのか? まあ、毎日新聞の追及姿勢は素晴らしいが。

◆6月30日毎日新聞社説

 毎日新聞は6月30日の社説で早速、密約問題を取り上げた。<核持ち込み密約/詭弁はもう通用しない>である。読んでみよう。

 <1960年の日米安全保障条約改定時の核持ち込み密約について、村田良平・元外務事務次官が毎日新聞の取材に対しその存在を認めた。密約が外務省内で文書によって引き継がれてきたことを事務次官経験者が証言したのは初めてだ。外交を預かる外務省の事務方トップが自らの体験を踏まえて証言したことは重い意味を持つ。政府は速やかに密約の存在を認め、事実関係を国民に明らかにすべきである。>

 「政府は」という主語で書いているが、だれが政府なのか?

 <村田氏が認めた密約は、安保条約改定に際し1960年1月に東京で行われた当時の藤山愛一郎外相とマッカーサー駐日大使の会談記録などだ。日米両政府は在日米軍基地の運用に関し米軍が装備の重要な変更をする場合は事前協議を行うことにしていたが、核兵器搭載の米艦船の寄港や領海通過、米軍機の飛来については事前協議の対象外とすることを確認したものだ。>

 岸内閣の安保改定に先んずること数カ月のことだ。

 <これについて村田氏は1987年7月の次官就任時に前任次官から文書で引き継ぎを受け、2年間の在任中に当時の外相に説明し後任次官にも引き継いだという。外務省が組織的に密約を管理していたことを意味する重大な証言である。核持ち込み密約は1981年に毎日新聞が報じたライシャワー元駐日大使証言で発覚し、その後米側の公文書でも裏付けられている。しかし、日本政府は一貫して密約を認めていない。今回も「密約は存在しない」「事前協議がない以上、核持ち込みはなかったということに全く疑いの余地を持っていない」(河村建夫官房長官)と否定している。>

 政府とは官房長官だったのか。

 <それにしても不思議なのは、内外の証言や公文書でこれだけ明らかになっている事実をいまもって日本政府が認めないことである。外交や安全保障政策では国益や相手国への配慮から、すべてをオープンにできない場合があることは理解できる。しかし、核持ち込みに関しては安保条約改定から半世紀近く、ライシャワー証言からも30年近くがたっている。米側がすでに公表し、日本政府の元高官も証言していることをなぜ認められないのか理解に苦しむ。>

 そうなのだ。

 <日米間ではこのほか沖縄返還にかかわる密約の存在もわかっている。民主党の岡田克也幹事長は「沖縄密約に限らず、政権交代をしたら情報公開を徹底する」と明言している。日本の安全保障政策の根幹にかかわる問題をいつまでも隠し続けているのは外交に対する国民の信頼を得るうえで大きなマイナスである。>

 民主党政権になると出てくるのだろうか?

 <「事前協議がない以上、核持ち込みはなかった」という詭弁はもう通用しないことを、安保条約改定後ほぼ一貫して政権を担ってきた自民党も深く認識すべきである。>

 記事にあったのに、社説になかったもの。それは、「冷戦時代なら仕方ないが、冷戦は終わったのだから、隠しておく必要がないだろう」という時代の認識だった。この認識は社説にも書いておいてほしかった。

◆読売新聞と東京新聞(共同通信)は夕刊で追いかけた

 読売新聞は6月29日夕刊1面2番手<米軍核持ち込み密約・元次官 存在認める/官房長官は否定>で追いかけた。また、東京新聞は夕刊2面4段記事<日米核密約/証言者の一人は村田氏/元次官、参考人招致に含み>で先に共同通信がスクープした外務省高官の証言者の一人が村田氏だったことを書いていた。これは共同通信が配信した記事なのだろう。

 この記事もコピペしておこう。

 <1987年から89年まで、外務事務次官を務めた村田良平氏(79)は29日、日本への米軍核搭載艦船の立ち寄りを日米安全保障条約上の「事前協議」の対象外とした核持ち込みの密約に関して、外務省内に文書があり歴代次官が引き継いできたと共同通信に証言した複数の元次官の一人であることを公表することに同意した。共同通信の電話取材に答えた。>

 やっぱり共同通信の配信だった。

 <村田氏はまた、密約問題をめぐり衆院外務委員会が検討する参考人招致について「外務省には今も好意を抱いている。(招致が強制的でなければ)断りたい」とする一方、招致される事態となれば、真相を証言する意向を強く示唆し、国会証言の可能性に含みを持たせた。>

 証人喚問などを受ければ出て行って正直にしゃべるよ、、ということか。政府にとっては「事件」じゃないか。

 <村田氏は今年3月18日、京都市内でインタビューに応じ、匿名を条件に歴代次官による密約の引き継ぎに関する詳細を証言していた。しかし、西日本新聞などが今月28日以降、村田氏の証言を実名で報道したことから、それまでの匿名を実名に切り替えることに同意した。>

 そういう経緯だったのか。西日本新聞が先だったとは。毎日新聞の記事は追いかけだったのか。

 <村田氏は3月、密約の内容を記した文書が外務省内にあることを明らかにし「次官引き継ぎ時に『核に関しては日米間で(非公開の)了解がある』と前任者から聞いて、次の次官に引き継いでいた。これは大秘密だった。日本政府は国民に嘘をついてきた」などと証言していた。また29日の電話取材で自身が次官として仕えた倉成正、宇野宗佑両外相(当時)には密約のことを伝達したが、首相には自らが伝えることはなかったと話した。>

 首相とは竹下登のことだ。村田氏は日米摩擦で小沢一郎官房副長官に怒鳴られっぱなしで、官邸にはいい印象を持っていなかったから、官邸には知らせなかったのだろうか?

 <村田氏は昨年出版した回顧録でも密約の存在を明記していたが、省内での引き継ぎの実態など詳しいことは今年3月まで明らかにせず、匿名で証言内容を報じることで了承していた。>

 そうか。回顧録では書いていたのか。鋭敏な記者がそれを読み、インタビューしたのだろう。

◆日経新聞は6月30日朝刊で特集を組んでいた

 日経新聞は6月30日朝刊1面ハコ<60年日米安保で密約/「有事の国内核配備も対象」/村田元外務次官が証言/「歴代次官が引き継ぎ」>でニュース仕立てで書き、特集面の4面を全部使って<日米密約 残る謎/政府、問われる説明責任>の本記と、政治部・中山真記者の<安保、歴史の評価受ける時>の解説記事、それに村田氏の一問一答と識者談話3人分を掲載していた。

 一問一答は毎日新聞も6月30日朝刊政治面で掲載していた。

◆朝日新聞の社説

 朝日新聞は6月30日朝刊1面3段<米軍の核兵器持ち込み/元次官「密約文書あった」>で追いかけ、社説<日米密約/また崩れた政府の「うそ」>もつけていた。

 朝日新聞の社説も読んでみよう。

 <日米間に核兵器の持ち込みに関する密約など存在しない。そう言い続けている日本政府の「うそ」を突き崩す新証言が、日本のかつての外交責任者の口から語られた。1987年から89年まで外務省の事務次官をつとめた村田良平氏(79)がこの密約の存在を認め、文書の形で歴代事務次官や外相が引き継いできたと明かしたのだ。これまでこの密約は、米政府側の公文書公開などで具体的に裏づけられながら、日本政府は一貫して存在そのものを否定してきた。今回の証言についても河村官房長官は「密約は存在しない」と述べた。だが、外務官僚のトップ経験者が認めたのである。政府はもはや「うそ」の上塗りをやめ、歴史の事実を国民の前に明らかにしてほしい。>

 毎日新聞の社説より弱いが、同じ趣旨である。

 <村田氏が証言した密約は1960年の日米安保条約改定の際に核兵器を積んだ米艦船が日本領海を通過したり寄港したりすることなどを日本側が認めると約束していたというものだ。村田氏は「前任次官から引き継ぎ、在任中に2人の外相に説明したほか、後任の次官に同じように引き継いだ」「密約は普通の事務用紙1枚に書かれて封筒に入っていた」などと極めて具体的に語った。>

 これも説明。

 <日米間の密約はこれ以外にもある。朝鮮半島有事の際には事前協議なしに在日米軍が日本の基地から出撃できるとしたものや、極東有事の際に沖縄への核再持ち込みを認めると約束したことなどがある。いずれも1960年代に交わされ、米国務省の公文書やライシャワー元駐日米大使の証言などで、繰り返し明らかにされている。>

 そういうことだ。

 <外交交渉の中には、すべてを国民に明らかにできないこともあるだろう。とりわけ冷戦まっただなかの60年代、米国に安全保障を依存した日本にとって、米国の戦争に巻き込まれることへの懸念を抱く国内世論と、米国の要請を両立させるのは並大抵のことではなかったに違いない。しかし、密約を交わしてから長い年月が経過しただけではない。冷戦はとうに終わり、米国の核戦略や日米同盟の役割もかつてとは様変わりしつつある。さらに、一方の当事者である米国が事実を公開している。もはや隠し続ける意味があろうはずがない。政府は密約を認め、国家的なうそをつき続けたことへの批判に向き合うべきだ。それがないままだと、日米間の今後の安保協力にも国民の素直な理解を得られまい。外交政策について、たとえ事後であっても公開し、説明を尽くす。これが民主主義を成り立たせるための政府の重い責任のはずだ。国民に信頼される外交を育むためにも、もうほおかむりは許されない。>

 こっちは、ちゃんと冷戦崩壊による国際環境の変化について書き込んでいた。毎日新聞も社説なのだから、このくらいは書いてほしかった。

◆メモ扱いだった産経新聞

 産経新聞は6月30日朝刊政治面メモ記事。これは哲学を感じるなぁ。でも、読者には不親切だとは思うが。

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「韓国も核保有を」60.5%、「朝鮮半島の戦争に参戦する」63.0%:韓国リサーチ世論調査~中央日報6月29日

 韓国紙・中央日報日本語版6月29日にアップされた記事<「韓国も核兵器を保有すべき」国民60.5%が同意>には驚いた。核兵器への抵抗感がない国民なのだなか、という驚きと、隣国が核を持とうとしたら、まずは自分も持ってから交渉だ、という気骨あふれる態度のほうが人間的で、常識的じゃないか、日本だけは異常なのではないか、という驚きだった。
 <国民の10人に6人が「韓国も核兵器を保有すべき」という主張に同意していることが分かった。 また国民の3人に2人は「韓半島で戦争が起きた場合、参戦する用意がある」と答えた。これは中央SUNDAYと東アジア研究院(EAI)が韓国リサーチに依頼し、20日に全国満18歳以上の800人を対象に「安保問題と国内政治に関する懸案世論調査」を実施した結果だ。>
 とショッキングな数字が並ぶ。
  <調査の結果、最近の安保状況に対する国民の不安感が次第に高まっていることが分かった。 回答者の59.2%は「非常に不安」または「やや不安」と答えた。 今年3月の調査(29.5%)に比べて2倍以上に増えている。 「不安だ」という回答は、4月の北朝鮮の長距離ロケット発射後に32.8%に、6月初めの2度目の核実験後に48.4%に高まった。>
 不安の割合が30→33→48→59%と徐々に上がっている。
 <「韓国の核兵器保有」についても60.5%が同意した。2004年(50.7%)に比べて10㌽ほど増えた。「同意しない」という回答は37.2%だった。 また63.0%は韓半島で戦争が起きた場合は「参戦する」と答えた。「参戦しない」という回答は33.3%だった。>
 こういう質問を見ると、解釈が難しい。「参戦する」とは何だろう、「参戦しない」とは何なのか? 分からないなぁ。
  <半面、2012年の戦時作戦権転換については「予定通り転換すべき」という意見(55.3%)が「時期を遅らせるか白紙に戻すべき」という主張(37.5%)を上回った。 北朝鮮の核実験問題解決方法も「6カ国協議が望ましい」という回答が多数(77.2%)を占めた中、北朝鮮を除いた「5カ国協議」に対しては「望ましくない」(51.9%)が「望ましい」(42.5%)を上回った。>
 これも、どうしてそういう選択をしたのか、が分からない。米韓でも日韓でも李明博大統領が要求したのが「5カ国協議」だったのではないか?
  <李明博大統領の国政運営に対しては34.8%が「非常に、または、かなりよくやっている」と答え、盧武鉉前大統領の逝去当時(5月23日、32.4%)の水準に回復した。政党支持率も「ハンナラ党」が29.0%となり、「民主党」(23.9%)を抜いた。しかし、李明博政権の国政基調と統治方式については「変えるべきだ」という意見が多かった。 回答者の41.1%が「国政基調と統治方式をともに変えるべきだ」と答えた。また、28.0%は「国政基調は維持するものの、統治方式を変えるべきだ」、13.9%は「統治方式は維持するものの、国政基調を変えるべきだ」と回答した。「ともに維持すべき」は9.6%にすぎなかった。>
 まあ、3分の1以上が支持しているということだろう。今、民主主義国ではどこもかしこも支持率が下がっている。李明博大統領だけじゃないから。
  <自分の理念性向については30.0%が「進歩」、35.1%が「中道」、28.2%が「保守」と答えた。今回の調査は電話調査(CATI)方式で行われ、最大標本誤差は95%信頼水準で±3.5㌽。>
 これも変化の中で数字を見ないと理解できない。
 他の数字はいいとして、韓国民は案外簡単に核兵器を持ちたがってる。これが正常だと思う。敵が持っている武器を自国も持とうとするのは当然の思いだ。日本だけは被爆国という特殊事情を理由にして、反核勢力が幅を利かせ、核保有については新聞紙上で論理すさせないように仕組んでいるが。
 この数字を虚心坦懐に見る限り、韓国の人々は国家の危機には敵と戦おう、という気概をまだ持っているようだ。日本だったら「外交で解決せよ」という選択肢を入れて、それが一番票数を取って、分析はそれでおしまい、となるのだろう。

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2009年6月28日 (日)

日経新聞は醇風美俗は捨て去って少子化対策のために結婚制度を変えろ、と主張する。根拠は国際標準だそうだ:経団連新聞が何を言う”!~6月28日日経社説

 日経新聞が社説の中で行っている[チェンジ!少子化]キャンペーンの一環として6月28日に<日本の「結婚」は今のままでいいのか>を掲載していた。まあ、少子化問題を論じればここまで行くかなぁ、とは思っていたが、家庭の中にいきなり手を突っ込んでくる感じの見出しだったので、少し驚きながら読んでみた。
 <法的に結婚していない両親から生まれる「婚外子」の割合が欧米諸国で増え続けている。フランスでは、昨年生まれた赤ちゃんの53%が婚外子だった。2007年の統計をみても、スウェーデン55%、米国40%、ドイツ30%などとなっている。これに対し日本は2%と格段に低い。なぜか。少子化対策を考える時、婚外子やその背景にある結婚の多様化の問題を避けては通れない。>
 なるほど、結婚の形としての婚外子問題を論じるのか。
◆婚外子の相続差別放置
 <日本に婚外子が少ない一因は「非嫡出子(婚外子)の相続分を嫡出子の2分の1とする」という民法の規定にある。法務省によると、相続で婚外子が法的に差別されているのは日本とフィリピンぐらいという。この規定はかねて「法の下の平等」を定めた憲法14条に違反すると批判されてきた。法制審議会も1996年に規定を撤廃するよう答申を出している。しかし、最高裁大法廷が1995年に合憲の判断を下したこともあって、答申は13年間たなざらしになったままだ。政治の怠慢であり、異常なことである。>
 そういう経緯があったのか。
 <最高裁決定を読むと、非嫡出子を基本的に「既婚者が配偶者とは別の相手との間につくった子ども」ととらえている。法改正に自民党が動かないのも、家族の外にできた子と家族内の子には相続で差があって当然との意見が根強いからだ。>
 まあ、そうだと思うが。
 <しかし、大法廷の決定の時点ですでに15人の裁判官のうち5人が「違憲」だと厳しい意見を述べている。婚内子と婚外子で異なっていた戸籍や住民票への記載方法は改められ、記述上の区別はなくなった。婚外子の相続差別には、国連の規約人権委員会、子どもの権利委員会も撤廃を求める勧告を出している。>
 日本の醇風美俗を「国際標準に合致していない」という刀で切り捨てる論法はどうも好きになれないのだが。
 <そもそも、結婚していない両親の子どもを指す「非嫡出子」にあたる言葉は、差別的な意味があるとして国際的には死語になりつつある。民法の規定は、婚外子が社会的に差別される原因にもなっている。まず民法を改正する必要がある。>
 すべて国際標準ですか。
 <欧米で婚外子が増えているのは、法的な差別がなくなったから、だけではない。結婚とは別の形のカップルを法的に認める仕組みが生まれ、婚外子の概念そのものが変わったことが大きい。>
 結婚という形が古臭くなったと?
 <例えばスウェーデンにはサンボ(同せいの意)、フランスにはPACS(連帯市民協約)という仕組みがある。いずれも、結婚より緩やかな結びつきをカップルに認め、生まれた子どもには相続も含め婚内子とまったく同じ権利を与えている。男性が父親になるためには認知が必要だが、法の枠組みにしたがった同居という意味では結婚に近い。>
 まあ、よく調べていること。
 <スウェーデンではサンボがカップル全体の3分の1を占め、0~17歳の子どもの親の3割はサンボのカップルだ。スウェーデンでも晩婚化が進んでいるにもかかわらず出生率が上昇しているのは、サンボの間に出産するケースが多いためだ。フランスでは昨年、結婚が26万7000組、PACSが13万7000組だった。サルトルとボーボワールのように、かつて未婚のカップルは社会規範への異議、反抗ととらえられていた。もうそうした意識はない。>
 サルトルを出してくれば年寄りが納得すると思ったら大間違いなのだが。
 <こうした仕組みには、互いに相性を判断する「試行結婚」の意味合いがある。法律婚に比べ解消が簡単だからだ。婚外子の割合が増えたからといって、出生率が高まるとは必ずしも言えない。ただ、フランスの昨年の出生率は2.02、スウェーデンも1.91と先進国の中で高い。>
 出生率問題と事実婚問題は直接の関係化はないと思う。あくまで女性が出産しても安心して働ける環境を国と地方と企業が整備できるかどうか、が問題なのだ。そこに手をつけずに、民法をいじろうとする敗北主義は、いずれ、非正規動労者が全体の3分の1になったように、家というものを無力化し、子供の教育を無責任なものにするのではないか?
◆今も影落とす「家」制度
 <日本では婚外子の相続差別撤廃とセットで法制審が答申した選択的夫婦別姓制度の導入も実現していない。夫婦で別姓を名乗ると家族のきずなが弱まるという意見があるためだ。「家」を基本にした戦前の家族制度が今も影を落としている。>
 法制審議会がおかしいのだ。欧米かぶれの学者だけ集めても、日本の古層は分からないだろう。
 <2006年の内閣府の世論調査では、58%が婚外子を法律上不利に扱うことに反対しながら、民法の相続規定に対しては41%が「変えない方がよい」と答え、「相続額を同じにすべきだ」の25%を上回った。これも日本人の家族観、結婚観の表れである。>
 分かっているじゃないか。
 <結婚の形は国の文化や伝統、国民の価値観にかかわる問題だ。しかし、日本の国際結婚は1970年の5500組から2007年には4万組に増えた。日本人の価値観だけで結婚を考えることは、もう実情に合わない。>
 国際化が進んだのだから、慣習を変えろ、と。ちょんまげを落として、散切り頭にするのとはちょっと訳が違うのだが。
 <日本・東京商工会議所は少子化問題に対する提言の中で「伝統的な法律婚以外に事実婚や婚外子が受け入れられる社会のあり方について検討すべきだ」と訴えている。>
 企業の論理だろう。儲けに血眼になっている守銭奴らの言うことだけを聞けと言うのか?
 <日本の結婚のあり方が少子化の一因となり出生率上昇の妨げになっているとすれば、障害を取り除く必要がある。それは、婚外子の相続差別をなくさねば始まらない。>
 違うだろう。どうして国、企業の責任を書かないのだ。日経新聞は経団連新聞だから企業の代弁をしているのだろうが、ここまでいくと見苦しいぞ。

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2009年6月27日 (土)

超法規的措置、人命は地球より重いと言っていた34年前の福田赳夫首相:日本は国家ではない~産経新聞6月27日[昭和正論座]香山健一氏

 産経新聞6月27日の[昭和正論座]は昔読んだことがあったような記憶がある学習院大教授・香山健一の昭和50(1975)年8月13日掲載の<脅迫に屈服する日本>だった。テロリストの言うがままに刑務所の罪人を釈放し、身代金を支払い、「人命は地球より重い」とか言って超法規的措置を正当化していた福田赳夫首相時代の論である。
 (石)氏が[視点]で解説しているように、進歩的文化人が論壇を席巻していた当時、命より国家が重い、というには勇気がいったはずだ。今だって、「脳死が人の死」という生命倫理の最も大切な定義変更について「助かる命をまず助けるのが先」とかの情緒的非論理で攻めてくる国会議員たちに多くのマスメディアはやられてしまっている。この産経新聞など、なぜか「人道的理由」に最初にやられいてしまった新聞になり下がっている。
 34年前の産経新聞はそうではなかった。(石)氏は「当時、多くの正論メンバーがこの超法規的措置を批判した。香山氏は『政府によって犯された、許すことのできない重大な違法行為』だとし『法律は人命より優先する』と明言した。氏自身、自由のため『(全体主義との)生命を賭けた闘いと名誉ある死を躊躇なく選びたい』とも書いた。『人命は地球より重い』といわれた時代、ここまで言った人は少ない」と書いている。(石)氏のような記者が多ければ、今の臓器移植に関する産経新聞の論調もまともになったのに、と残念でならない。
 それはそうと、香山氏の論を読む前に、(石)氏の注釈を見ておこう。
 <1975年8月、クアラルンプールの米・スウェーデン両大使館を占拠した日本赤軍は外交官らを人質に浅間山荘事件などで逮捕された連合赤軍幹部らの釈放を要求した。日本政府は人命尊重のための「超法規的措置」として要求を受け入れ5人を釈放した。>
 という事実関係である。もう昔のことだから、忘れてしまった人もいるだろう。日本赤軍という組織があったのだ。
 香山氏の論の小見出しは≪「超法規」は質の悪い詭弁≫、≪生命を賭して守るべき法≫、≪自己犠牲求む永遠の価値≫、≪社会を侵す「精神の腐敗」≫の四つだった。
 <クアラルンプールで発生した米、スウェーデン両大使館占拠事件で、殺人犯ら五人を釈放し、日航特別機を仕立てて犯罪者集団を目的地リビアまで護送した今回の政府の措置は、「人命尊重」を最優先した「超法規的な行政措置」だったと説明されている。マスコミの論調も大体においてこの「超法規的な措置」を肯定し、「人命尊重のために止むを得なかった」とか、「止むを得ないというより当然の措置」、「民主主義国家にとっては人命尊重が最優先」などと述べている。しかし、私は今回の政府の措置は法治国家にあるまじき違法な反社会的行為として、これを絶対に許容できないし、それ以上に、この措置を肯定する態度の根底にひそむ精神の底知れぬ腐敗を断じて許す訳にはいかない。>
 堂々としている。
 <第一に、「超法規的な措置」という説明は、質の悪い詭弁に過ぎないものである。問題の本質は、遂に政府までもが、ゲリラの脅迫に屈服してみずから法律を破ったということに他ならない。今回の「超法規的な措置」と称せられるものは、政府によって犯された、許すことのできない重大な違法行為であり、全体主義的犯罪者集団への屈辱的な屈服である。妥協や取引きにも限度というものがある。この政府による違法行為の責任は今後徹底的に追及されなければならない、と私は思う。>
 詭弁だ、と。僕もそう思う。日本は国家ではないのだから。
 <第二に、「民主主義国家にとっては人命尊重が最優先」などという考え方は根本的に間違っている。「生命さえ助けてくれるならどんな言い分にも従います。どんな脅迫にも屈します」というほど、民主主義国家というものは卑屈で、無原則、無節操なものだとでもいうのだろうか。それがたとえ奴隷のような境遇の生命だったとしても、生命さえあればよい、生命だけは助けてくれというほど、民主主義国家は道義もなく、守るべき何の価値も持たないものだとでもいうのだろうか。私は誤解を恐れずに敢えて言うが、民主主義国家にとっては、人命尊重よりも、国民が自らの自由な意思で定めた法律と秩序の方が優先するのである。もしもそうでなければ、一体国民のだれが自らの個人の生命を賭け、生命を投げ出してまで、犯罪者と闘い、反社会的行為と闘い、法秩序を守り、この美しい国を存続させるために努力するであろうか。>
 そうだ。
 <法律は、もちろん人間が作るものであり、人間が自らに課したものである以上、時代とともに変わっていってしかるべきものである。しかし、それが法である限り、われわれは生命を賭してもそれを守るべきであり、法を犯すものとは生命を賭して闘うべきであろう。法律は人命よりも優先する-この基本認識なくして自由な法治国家は成り立たないのである。このような断固たる遵法精神を持たない政府は、民主主義国家の政府たるの資格を決して持ち得ないであろう。>
 そうだ。
 <第三に、確かに人命は尊重すべきものである。しかし、同時に人間が忘れてならないことは、個人の生命よりも尊い価値というものが、その価値のために自分一個の生命をさえ捧げるに価する価値というものが人間社会には存在しているということである。人間の一生は限られたものであり、悠久の人間生命の流れ、歴史の流れからみるならば、かげろうの如きつかの間の生命に過ぎない。この短い、有限な生を生きながら、なおかつ人間がその生に永遠の価値を与えることができるためには、人間は自分の一生を越えて、それに殉ずることのできる価値を持たなければならない。生命さえ助けてくれるなら、どんな脅迫にも屈するという生き方は、誇りも理想も人道も忘れた奴隷の生き方ではあっても、決して自由な、誇り高き人間の生きるべき生き方ではあり得ない。悲しいことではあるが、それ以外に仕方がないのなら私は愛する両親や妻や子供たちのために、自由と、日本の美しい伝統と、この民族の未来のために、自分の生命を投げ打つであろう。脅迫に屈し、誇りも理想も捨てて、奴隷の如く生ける屍の如く、全体主義の圧制のもとに生き続けるぐらいなら、私はこれとの生命を賭けた闘いと名誉ある死を躊躇することなく選びたいと思う。たとえこの身が滅んでも、必ずや子供たちが、そして生き残ったひとびとが、若い世代が私の殉じた自由の価値を守り続けてくれることであろう。そして、現に浅間山荘その他で、数多くの警察官諸君は、自由で平和な社会秩序を維持するために、日本の明日を憂いながら、黙々と自分の生命を投げ出していったのではなかったか。「超法規的な措置」などと詭弁を弄するひとびとは、これらの警察官諸君とその家族の崇高な自己犠牲の精神が一体なにによって支えられているのかをほんとうに知っているのだろうか。>
 重い言葉だ。
 <殉ずることのできる価値を見失い、自己犠牲の精神を忘れた国はいつか滅ぶであろう。敗戦後三十年のあいだに、日本人の心は腐り切ってきたとしか私には思えない。日本人は「人命尊重」とか「平和共存」とかと結構な言い訳をしながら、次第にどんな理不尽な脅迫にも易々諾々と屈服するような国柄になってしまった。「生命さえ助けてくれるなら」、「平和さえ続くのなら」どんな内外の脅迫にも屈服するのが賢明と、いつしか多くの人が思い込むようになってしまった。実は、今回の「超法規的措置」にわれわれは別に驚くまでもないのであって、このような精神の腐敗と堕落は、すでに日本社会の深部を侵してしまっているのである。>
 唯々諾々だ。
 <例えば、国労、動労の無法者たちに、ストの度に列車をハイジャックされ、乗客を人質に脅迫されている政府、国鉄は、「スト権さえよこせばストはしないでやる」という恐喝に屈して、違法行為の処分もきちんとせず、かれらの言いなりにスト権を差し出そうとしているではないか。その卑屈な思考パターンは、今回の「超法規的措置」と全くうり二つといわなければならない。過激派の脅迫に屈した大学人たちは際限のない妥協の果てに、大学を「無法とテロの街」と化し、特派員を認めてやる代わりに、中国に都合の悪いことを書くなという北京政府の全体主義権力の脅迫に屈して、多くの日本の新聞社は毛沢東礼讃記事しか載せようとしない。>
 そういえるだろう。
 <ハト派と称する政治家たちは、共産主義国家の言いなりになり、かれらに対して微笑してさえいれば、かれらが「平和」を与えてくれるものと信じて、屈辱的な妥協を繰り返し、日本の安全保障の基礎を掘り崩している。街頭で無法者に暴行されている善良な市民を見かけても、だれもが自分の「生命」と「平和」の方が大事とばかり見て見ぬふりをし、犯人たちのなすがままになっている。自由と人間の尊厳のために、生命を賭し、職を賭してまで闘う、気骨のある日本人はなんと少なくなってしまったことだろう。一体、この精神の腐敗はいつになったら止むのであろうか。>
 精神の腐敗の止む時が近づいている予感がするのだが。

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韓国軍が「5029」を概念計画から作戦計画に格上げ~朝鮮日報、中央日報6月27日

 韓国の中央日報日本語版6月27日に<国防部「北核・ミサイル発射直前に打撃」>という記事があった。キム・ミンソク軍事専門記者、イ・ヨンジョン記者の署名記事だ。読んでみる。
  <国防部は有事時、北朝鮮が核や弾道ミサイルなどの大量破壊兵器を発射する際、その前に打撃できる能力を備えられるよう能力を高める計画を発表した。国防部は26日に発表した「国防改革2020調整案」で「核、弾道ミサイルなど北朝鮮の非対称的脅威を敵(北朝鮮)地域で最大限遮断・除去するために精密な打撃・迎撃能力を拡充する計画だ」と明らかにした。調整案は2005年に作られた「国防改革2020」を最近、北朝鮮の核・ミサイル脅威の高潮と経済状況などにより新たに構成した。国防改革予算は2005年に立案された621兆3000億ウォンから22兆ウォン減った599兆3000億ウォンに調整された。>
 と、ここまでが前文だろう。
  <調整案によると北朝鮮が核または弾道ミサイルで韓国を攻撃する兆しが見えれば▽多目的実用衛星、偵察機、無人偵察機、弾道弾早期警報レーダーなどで監視偵察▽F-15Kと合同遠距離攻撃弾などで(先に)精密打撃▽それでも韓国に飛んできた北朝鮮のミサイルは海上迎撃誘導弾と地上パトリオットミサイルで迎撃する――という概念を盛り込んだ。またミサイルが韓国地域に落ちた場合に備え、個人及び部隊別に防護体系を強化するなど、4段階で対応する。防護体系には核爆発時に出る強い電磁気波(EMP)に対する対備策も含まれている。>
 敵基地先制攻撃のための軍備増強である。日本の論議に具体的に役立ちそうだ。
  <こうした対応に向け、国防部は現在、北朝鮮の平壌-元山以南までである韓国軍の精密打撃能力を2020年まで北朝鮮全地域に拡大する計画だ。海上迎撃誘導弾では米国が開発中のSM-6または海上用PAC-3の導入を検討中だ。北朝鮮特殊戦部隊に対しては無人地上監視体系(UGS)と多機能観測鏡などで探知した後、遠隔運営統制弾と昼夜間の照準鏡が結合された武器で浸透を阻止することにした。北朝鮮の西海(黄海)側侵犯に備えて2018年までペンリョン島など西海5度に配置した4000人を削減することにした基調を修正し、2020年まで3200人のみ減らすことにした。国際平和維持活動のために3000人規模の海外派兵常備部隊も置くことにした。海外派兵常備部隊はそれぞれ1000人で、常備部隊と交代用である予備部隊、別途指定部隊で構成されている。調整案には再び急増するサイバー脅威に備え、情報保護司令部も来年初めに創設することにしたほか、各指揮官と将兵たちの安保意識向上を担当する精神全力開発院が早ければ来月、国防大学に新設される。>
 相当な増強なのだろうが年月がかかりすぎていないか? その前に北朝鮮が攻撃してきたらどうするのだろう?
 <李明博大統領はこの日午後、青瓦台で李相熹国防部長官から国防改革計画の報告を受けた後「国防部で立てた計画は非常に適切だ」と評価した。李大統領は「戦闘部隊は戦闘任務に専念するように精鋭化された人員と先端武器体系を揃え、常時能力を発揮できるようにしなければならない」とし「非戦闘分野も韓半島内で戦争を想定したとき、民間資源を最大限活用するようにしなければならない」と述べた。特に予備軍の常駐軍水準精鋭化方針に対し「動員体制も常備体制と類似の動員能力を揃え、有事時に戦争継続能力を発揮できるようにすることが重要だ」と強調した。>
 李明博大統領が評価しているのならば、そうなのだろう。
◆朝鮮日報の同様の記事
 6月27日の朝鮮日報日本語版も<韓国軍/北の事態急変に備え装備導入を推進>で同様のことを書いていた。
 <政権崩壊など北朝鮮をめぐる事態が急変した場合の北朝鮮内部の安定化(治安維持)などに備え、各種装備の導入が進められる。導入される装備は、地雷および即席爆発物(IED)防護車両、装輪装甲車など。韓国軍が北朝鮮の事態急変に備えた武器システムの導入を本格的に進めるのは今回が初めてだ。北朝鮮の事態急変に備えた「概念計画5029(CONPLAN5029)」を具体的な作戦計画レベルで裏付ける、という点に意味がある。また北朝鮮の核および弾道ミサイルの脅威に備え、2020年までにイージス艦搭載のSM6迎撃ミサイル、パトリオットPAC3級以上の地上配備迎撃ミサイルなど迎撃用兵器と、北朝鮮全域を攻撃できる精密打撃兵器も導入される予定だ。>
 こっちは「5029」を概念計画から作戦計画にする、という軍事的な意味合いを解説していた。
 <李相熹国防長官と金泰栄合同参謀本部議長は26日、こうした内容を骨子とする「国防改革基本計画(国防改革2020)」修正案について李明博大統領の裁可を得た上で、公式に発表した。同案は、盧武鉉政権時代の2005年に作られた「国防改革基本計画」を、最近の北朝鮮による核・ミサイルでの威嚇など、安全保障上の状況変化と困難な経済状況に伴う予算圧迫などを考慮して内容を修正したもの。修正案は、有事の際に北朝鮮の核兵器や弾道ミサイルが発射される兆候を捕捉した場合には、発射基地を精密攻撃し可能な限り北朝鮮地域内で無力化する、という積極防御の概念を含んでいる。また、韓国軍の国際的役割の拡大のため、陸軍特殊戦司令部の隷下に約3000人規模の海外派兵常備部隊を編成するとしている。また、国家安全保障上の危機要素として急浮上したサイバー攻撃に対応するため、来年中にサイバー戦司令部としての役割を担う「情報保護司令部」も創設する。>
 盧武鉉の時に作った計画など、危なくてやっていられないだろう。ようやく改定ができたわけだ。
 <2020年までの国防費は、総額621兆ウォン(現在のレートで約46兆円、以下同)から599兆ウォン(約44兆円)へと22兆ウォン(1兆6000億円)減額され、国防費の増加率は年平均8%から7.6%水準に下がった。>
 まあ、減額は仕方ないだろう。

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韓国MBCテレビの偏向報道が統計で明らかになった~朝鮮日報6月27日

 韓国テレビ局が金大中、盧武鉉一派の左傾集団に乗っ取られている問題で、ようやく保守系の団体が動きだした。朝鮮日報の日本語版ネット6月27日にアップされた<盧前大統領死去/MBCによる回顧報道、SBSの7倍/韓国言論財団が分析>が報じていた。
 見出しの通りだが、それがどういう意味を持っているか、というと、ソウル市民たちをデモに走らせ、広場で「李明博政権打倒」を叫ばせたテレビ局がMBCだったからだ。
 といっても分かりにくかったら、終戦直後に組合管理で新聞を出した一時期の読売新聞を思い出せばいいかもしれない。あの時は労組だったが、やはり、裏には共産党とソ連指導部の支配があったようだ。韓国のテレビの場合は裏に北朝鮮の指令があることが大きな違いだ。
 朝鮮日報の申東薫記者の記事を読んでみよう。
 <盧武鉉前大統領が死去してからのいわゆる「弔問政局」で、地上波3社によるニュースを分析したところ、MBCが盧前大統領を回顧する内容をKBSの3倍、SBSの7倍以上も多く流していたことが分かった。盧前大統領に対するキャスターの発言についても、MBCは盧前大統領の生前には「敵対的・批判的」(8件)発言が比較的多かったが、死去後には「同調的・友好的」発言(128件)が急激に増えた。>
 よく分析したものだ。
 <延世大学メディア広報映像学部の尹永哲教授は26日、韓国言論財団(理事長・高学用)が「弔問政局とメディア報道」をテーマに開催したセミナーに出席し、「盧前大統領関連の報道が行われた回数は、MBC(320件)がKBS(178件)に比べて1.8倍ほど多く、SBSはKBSよりも38件多かった。しかし、MBCにははるかに及ばなかった」と語った。尹教授は先月5月10日から今月10日までの1カ月間、地上波放送3社の夜のニュースを時期ごとに分析した。盧前大統領に対する弔問期間、MBCは盧前大統領に対する回顧番組を47回放送し、同期間にKBSは15回、SBSは7回放送したという。>
 面白い分析だ。
 <盧前大統領の生前、KBSとSBSは盧前大統領の汚職疑惑について「権力型の汚職」という観点からアプローチしていた。しかし、MBSは「政治的報復」と「権力型汚職」の比率が5対3の割合で、他社との違いを示していた。しかし、盧前大統領死去後は各社とも「政治的報復」の観点へと見方を変えたことが分かった。尹教授は「このような報道姿勢の変化は、とりわけMBCとSBSで明確となっている。SBSは進歩性向の強い団体に対して最も積極的に取材を行った」と説明した。推測による発言が含まれた記事はMBCが98件と最も多かった。>
 韓国のテレビ報道は権力の捜査する道具と化しているようだ。
 <言論財団客員研究員のキム・ソンヘ氏はこのセミナーで、「ハンギョレ新聞と京郷新聞が盧前大統領に対する“同情的”な記事をそれぞれ210件、183件ずつ掲載し、それ以外の新聞に比べてかなり多かった。両紙とも盧前大統領を回顧する記事も多く、MBCと同じような傾向を示した」と述べた。>
 産経新聞の黒田特派員の記事の通りだな。
 <キム氏はさらに「マスコミによる報道が過度なまでに政治的に流れ、双方とも自らにとって有利な見方で相手を評価している。保守と進歩の双方の間に倫理的なコミュニケーションが必要だ」と指摘した。>
◆現政権での政府広告受注額、地上波1位はMBC
 朝鮮日報は6月27日の日本語版に<現政権での政府広告受注額、地上波1位はMBC>という記事も出していた。これも申東薫記者が執筆している。
 <李明博政権発足後、MBCが地上波放送3社の中で最も多くの政府広告を受注していることが分かった。これは一部メディアが「李明博政権発足後は政府機関の一部で意図的にMBCへの広告依頼を避け、MBCを差別している」と報じたのとは正反対の状況だ。>
 進歩派の物言いはいつもそうなのだ。あまりに政治的なのだ。信用できない。
 <26日にハンナラ党の鄭柄国議員の事務所が入手した韓国放送広告公社(KOBACO)の「言論財団代行広告主信託現況」によると、MBCは李明博政権が発足した昨年からこれまで、政府や政府関係機関から総額204億6100万ウォン(約15億2000万円)の広告を受注し、放送3社の中では政府関連の広告を最も多く受注していたことが確認された。>
 政権交代があっても、初期はまだ前政権の惰性で受注するから。
 <MBCは盧武鉉前政権最後の年、2007年にも121億2400万ウォン(約9億円)を受注し、KBSの87億4400万ウォン(約6億5000万円)やSBSの65億8700万ウォン(約4億9000万円)よりもはるかに多くの実績を残している。今年に入ってからもMBCは今月25日までの時点で61億8700万ウォン(約4億6000万円)の政府広告を受注しており、上半期の広告受注額でも3社の中で最も多かった。>
 盧武鉉の仲間がうようよしているからだ。
 <金泳三元政権や金大中元政権ではKBSが最も多くの政府広告を受注するのが慣例となっていたが、盧武鉉前政権時代の2004年からはこの傾向に変化が現れ、MBCによる政府広告の受注がKBSを上回るようになったという。>
 それが何を示しているか、はっきりしているだろう。
 <言論財団の関係者は「最近は特定の政府機関がMBCへの広告依頼を意図的に避けているという主張が取り沙汰されているが、これは一部の事実だけを大きく取り上げたものに過ぎない」と述べた。>
 面白いねえ、こういう調査をどんどんすべきだ。
 李明博政権は少しずつ政治の雰囲気を整えつつある。次の記事など、吉田茂政権か中曽根康弘政権を想起させるようなニュースだ。
◆教科部、全教組指導部88人を解雇・停職処分
 これも6月27日の朝鮮日報日本語版の記事。チェ・スヒョン記者、オ・ヒョンソク記者が連名で出ているが、なぜ漢字ではないのだろう。
 <今月18日に「時局宣言」を行った全国教職員労働組合(全教組)指導部88人に対し、教育科学技術部(教科部)が解任または停職の措置を下し、検察に告発するという強硬な対応に乗り出した。チョン・ジンフ委員長をはじめとする全教組中央執行部役員10人が教員職をはく奪され、全教組本部の専従員や市・道の支部長や専従員78人は停職処分となった。これは1999年に全教組が合法団体として認められて以来、最大規模の懲戒処分となる。教科部はさらに「時局宣言」に署名した1万7082人の単純参加教師らに対しても、全員に注意・警告などの処分を下すと発表した。>
 ここまで読んでもよく分からないだろう。学校の先生がストをしたから、と88人も首になるというニュースとしか見えないから、韓国の先生は相当に激しいんだな、と思うくらいだろう。
 <これについて全教組側は「40万人の教師が賛同して“第2次時局宣言”に取り掛かる」と対抗措置を表明し、双方の対立がさらに深刻化している。>
 これなど、一昔前の日本の自治労、総評を思い出させるコメントである。
 <教科部は全教組執行部による時局宣言について▲公務とは関係のない集団行動を禁じた国家公務員法第66条違反▲教員としての基本的な責務を誠実に履行しておらず第56条(誠実義務)違反▲政治活動の性格を持つ時局宣言に賛同してはならないという職務上の命令に違反したことで第57条(服従義務)違反▲教員の労働条件とは関係のない政治活動の性格があるため教員労働組合法第3条(政治活動禁止)違反――などの問題があると指摘している。>
 ここまでくると、なるほど、と思うに違いない。これが北朝鮮の思想闘争指令に従ったスパイどもによる李明博政権転覆計画の一環だったということだ。
 <教科部企画調整室の張基元室長は「神聖な教育現場を政治イデオロギーで荒廃させる行為は決して許すことはできない」と述べた。しかし、教科部による懲戒で教師職から解雇されたとしても、全教組委員長をはじめとする幹部らは、全教組の職責に関してはそのまま維持することができる。>
 この辺は何だか分からない。日本ならば日教組の委員長にとどまれる、ということだろうか? それはまあ当然だと思うのだが。
 <全教組は今月18日に国政の刷新、言論・集会・良心の自由の保障などを要求する時局宣言文を発表し、22日にはこれに署名した教師のリストを機関誌の『教育希望』で公開した。>
 北朝鮮のミサイル打ち上げ、核実験と合わせて韓国内での非武装蜂起だったのだろうと想像するが、失敗したわけだ。
 <教科部は一般の教師1万7000人に対しても、市・道の教育庁が確認作業を行った上で、全員に対して注意・警告処分を下すとしている。しかし、確認が可能かどうかは未知数だ。全教組が公開したリストには名前が羅列されているだけで、所属地域や学校などが記載されていないからだ。>
 まあ、この辺は李明博政権の姿勢を示しているのだろう。
 <教科部教員団体協力チームの関係者は「1万7000人もの一般教師を識別する方法については、わが部としても市・道の教育庁に具体的に提示できていないのが現在の状況だ。管轄地域内で全教組の組合員となっている教師のリストと署名人のリストを照らし合わせるなど、市・道教育庁が自ら方法を見出し、8月末までに措置を完了するよう指示した」と語った。>
 そうだ、その方法で北朝鮮のスパイをあぶりだしてほしい。そうしないと落ち着いて飯も食えない。
 <全教組は教科部によるこれらの措置に対して、「総力闘争」で対抗すると表明した。全教組は緊急の会見を開き、「今回の措置は政治的な意図をもって行われており、根拠も名分もないことから完全に無効であることを宣言する。今後は40万人の教師が参加する“第2次時局宣言”を行い、教科部の安秉万長官と全国16の市・道教育監(教育長に相当)に対して職権乱用容疑で検察に告発する」と主張した。>
 金正日総書記の指示でもっともっと暴れるのだろう。
 でも、李明博政権にとって順風なのは、韓国経済が先進国の中では相当に早いペースで回復に向かっていることだ。次の記事のように、大卒就職率をよく見せるための工作とかいろいろあるあろうが。
◆若者失業が深刻な中、「驚異的」な大卒就職率
 朝鮮日報日本語版6月26日には<若者失業が深刻な中、「驚異的」な大卒就職率/政府の補助金と新入生の誘致目的/日雇いやアルバイトで水増し>と題する記事が掲載されていた。経済のまとめ記事だ。(◎は小見出し)
 <今年2月、京畿道のA専門大学(2008年の就職率70%台)を卒業したシンさん(25)は、数日前に母校の学部の教務課から「耳を疑うような」内容の電話を受けた。「全学部のうち当学部の就職率が最も低いため、もし学校から問い合わせの電話が来たら○○会社に就職したと答えてほしい」というものだった。シンさんは面倒なので「わかった」と答えた。数日後、学校から就職したかを尋ねる電話が来たため、シンさんは「就職した」と答えた。卒業後、アルバイトさえ一度もしたことのないシンさんは一本の電話で突然「就業者」となった。若者が就職難にあえぐ中、一部の大学による「就職率の水増し」が深刻になっている。各大学が国の補助金と新入生誘致のために卒業生の就職率を水増ししているのだ。教育科学技術部は昨年12月からホームページで(www.academyinfo.go.kr)大学情報を公開している。各大学が入力した内容をもとに資料を公開している。昨年初めて公開して以降、「でたらめな就職率が多い」と批判されたため、今年から政府は就職率の数字を徹底的に検証した上で公開するとした。しかし、一部の大学では政府に隠れて相変わらず様々な「就職率の水増し」が行われている。>
 何か姑息なのだが、こういうことも韓国らしいね。
◎失業者泣かせの「母校からの電話」
 
 <仁川のB専門大学(2008年の就職率90%台)を卒業したユさん(25)は現在、就職活動中だ。卒業後、あるインテリア会社に非正規職として就職したが、月給70万ウォン(約5万5000円)という安い賃金と医療保険加入のメリットさえないことに失望して、入社一週間で退職した。ところが先月末、母校から就職したかを尋ねる電話がかかってきた。「会社を辞めた」と答えると、その助教授は「今も就職していることにするため、在職証明書を作って送ってほしい」と言った。在職証明書を添付して就職率を上げようという魂胆だ。それ以来2週間、ユさんは母校からの電話に悩まされた。ユさんは「ただでさえ再就職できずに困っているのに、思い出したくもない会社の在職証明書を出せというのは理解できない」と語る。>
 おかしな話だ。
 <4年制大学の卒業生も例外ではない。昨年2月に地方のC大学(昨年の就職率70%台)を卒業した後、公務員試験に向けて準備しているキムさん(女性 24)も最近、母校からの電話を受けた。学科の助教授が「わが校の就職率が余りにも低いため、あなたを就業者としてもいいか」と尋ねてきたという。キムさんは、「就職できない周囲の友人たちにも母校から同じような内容の電話がかかってきた」と話す。>
 いろいうろなところでやっているみたいだ。
◎組織的に行われる「就職率の水増し」
 <京畿道のD専門大学のチョ助教授によると「就職率の水増し」は実際、学校ぐるみで組織的に行われているという。チョ助教授によると「学校が各学科の就職率のノルマを80%とすると統計の基準日となる4月1日までに日雇いやアルバイトを勧めるなどして就職率を上げている」という。また、教授が自身の人脈を活用して知り合いの企業に卒業生名義の在職証明書を発行するよう求め、その学生と教授、助教授が口裏を合わせて書類上の就業者を「量産」しているという。さらに校内の起業教育センターを活用するケースもある。忠清南道のE大学(4年制)では、卒業生を校内の起業教育センターに入っている企業に「偽装就職」させて就職率を伸ばしている。同大学のソ助教授は「他校もこうした方法で就職率を上げている。就職者全体の5%ほどはこうした方法で就業者となっている」と語る。>
 でも、中国に比べればまだ統計の信用度は韓国の方が上だろうとは思う。目くそ鼻くそかもしれないが。さっきのような教職員組合がこういうことをやっている実戦部隊なのだ。李明博大統領も大変だな。
◎背景に政府の補助金獲得
 <このように各大学が就職率を水増ししているのは「カネ」のためだ。年間5000億ウォン(約393億円)が投じられる教育科学技術部の「大学、専門大学の教育力強化事業」で多くの補助金交付を受けるためには、卒業生の就職率を上げねばならない。評価対象となる項目のうち就職率が25%にもなるためだ。>
 なるほど、そういうことか。
 <もう一つの理由としては新入生の誘致が挙げられる。在校生が定員の半分にも満たない大学が続出している中で、「就職率○○%」とのセールスポイントは新入生を引き付けるのに貢献するという。>
 それが大きいだろう。韓国も日本と同じような少子化社会なのだから。
 <各大学は就職率を水増しするために就職率の算出方式の盲点を突いている。教育科学技術部は毎年、全国400余りの専門大学を含めた大学の卒業者を正規職就業者、非正規職就業者、自営業者、進学者などに分類して公開してきた。この分類で就業者は「週18時間働き、一定の報酬を得ている者」とし、調査基準日を4月1日としている。このため、各大学は4月1日が含まれる週に、週18時間働いて一定の報酬を得ている卒業生をできるだけ多く生み出せるような「手段と方法」を総動員する。この期間中に卒業生にアルバイトさせたり、教授が知り合いの会社に偽装就職させて在職証明書を発行させているという。>
 就職率を算出する方法の盲点か。日本の大学だってやっているんじゃないか。
◎「サンプル電話でチェックする」
 <昨年末に公開された大学就職率統計の信頼性が問題となると、今年から政府は国民健康保険公団のデータベースを利用して、各大学の卒業生が正規職に就いているかを検証すると発表した。しかし、健保公団で把握していない企業で働く正規職や非正規職の卒業生については就職の事実を確認することはできない。教育科学技術部の関係者によると、「就業者と会社を対象に電話による(就職についての)サンプル調査を実施する予定」という。しかし、こうした検証方法によっても、大学による就職率の水増しを根絶することは難しいというのが、各大学と教育科学技術部の一致した見方だ。なお、今年の大学別就職率は9月に公開される。>
 まあ、みみっちい記事だったが、こういう記事が一番世相を映している。
◆双竜自スト:深まる労使対立、流血の事態に(上)
 これが今の韓国の一面だ。朝鮮日報日本語版6月27日で、平沢の崔源錫記者とソウルのキム・ウソン記者だ。見出しは<双竜自スト/深まる労使対立、流血の事態に/双竜自>だ。
 <工場を閉鎖してストに突入してから37日が過ぎた双竜自動車平沢工場。作業への復帰を求める役員や社員らが工場内に進入したことから組合員らともみ合いになり、流血の騒ぎにまで発展した。状況が深刻化したことを受け、双方の衝突を防ぐために機動隊までが投入された。機動隊が現場に投入されるのは、同社の経営不安が表面化して以来初めてのことだ。>
 <同社の法定管理人である李裕一氏とパク・ヨンテ氏は26日午前11時から平沢工場正門前の駐車場で会見を開いた。両氏は「整理解雇の対象者976人については、工場組立ラインの一部分離による分社化と営業職への転換により、320人はそちらに移ってもらい雇用を維持する。残りの対象者のうち450人には早期退職のチャンスをもう一度与える。また2012年までに200人を上限として、無給の休職期間を経た後、優先的に再雇用の対象とする」と述べ、今後の方針について説明した。一方、リストラを行った後に残った役員や一般社員についても、基本給の3年間凍結、2年でボーナスを250%返納、3年間の福利厚生返納など、苦痛を分け合うための対策を強力に推進すると表明した。>
 まあ、仕方ない条件じゃないかな、と普通は思うだろう。
 <会社側がこれらの内容を発表した直後、今度は組合側が声明を発表し「会社側の最終交渉案は、要するにこれまでの整理解雇の方針を強行するという意味だ」として会社側の提案を拒絶した。組合側のイ・チャングン企画部長は「政府が直接問題の解決に乗り出すことを要求する」と訴えた。組合側が最終交渉案を拒絶したことから、同社役員や一般社員3000人はこの日の午後2時ごろ、正門前の駐車場で労働組合を糾弾するための抗議集会を開き、鉄製のフェンスを乗り越えて工場の中に入った。>
 これも面白い。「団結頑張ろう!」をやっているのが管理職だなんて。そして、
 <解雇対象ではない社員らが互いに腕を組んで非暴力を叫びながら強行突破を試みると、組合員らは鉄パイプを振り回し、生ごみを混ぜた汚水をまくなどして激しく抵抗した。この騒ぎで10人以上が鉄パイプに殴られて頭を負傷したり、骨折などで病院に搬送された。社員らは2時間かけて本館の建物前にたどり着き、「非暴力」「スト中断」などを叫びながら座り込みを行った。また、フォークリフトを利用して組合側が工場正門に設置したコンテナ四つを上に重ね、バリケードを取り払った。さらに午後5時ごろには社員らが外部から雇った300人と共に本館への進入を試みたが、組合員らが屋上から投石機でボルトやレンガなどを投げつけて激しく抵抗した。この時点で警察や機動隊は工場の外に21個中隊2000人以上を配置し、放送用機材やヘリコプターなどを利用して暴力を自制するよう訴えていたが、状況が深刻になると、双方の衝突を防ぐために工場内に3個中隊300人を投入した。組合員らは社員の本館進入を阻止することが難しいと判断すると、シンナーなどの引火性物質が保管されている塗装工場に立てこもった。900人以上の組合員らは塗装工場に鉄製の構造物を設置してバリケードを築き、社員が進入してきた場合にはシンナーに火を付けると脅迫した。塗装工場の中には6万リットル以上の引火物質が保管されているという。このため、役員や社員らは「組合員たちには28日まで考える時間を与える」として、塗装工場への立ち入りは当分見合わせることにした。>
 この状況描写は一気に読みたい。面白いなぁ、韓国って。首にならなかった社員と首になった社員で戦争ごっこをさせるんだ!
 <双竜自は組合員がストに突入した先月21日以降、工場の稼働が完全にストップして生産が途絶えている。そのため今月末の時点で1990億ウォン(約148億円)の損失が予想されており、販売代理店や部品を製造する下請け業者の多くが深刻な資金難に陥り、倒産の危機に直面している。>
 まあ、作っても売れないから、こんなことをして、生産ラインを止めていた方が利口かもしれない。

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2009年6月26日 (金)

「台湾統治証言の歪曲番組で精神的苦痛」:NHKを8400人が集団提訴~産経新聞6月26日朝刊

 産経新聞6月26日朝刊1面トップは<NHKを8400人集団提訴/「番組で台湾統治証言 歪曲」精神的苦痛/責務見失う公共放送>だった。提訴記事と関連記事を一緒にした見出しのようだ。

 まず、本記部分を見てみよう。

 <NHKスペシャル「シリーズ・JAPANデビュー アジアの“一等国”」に出演した台湾人や日台友好団体などから番組内容に偏向・歪曲があったと批判が相次いでいる問題で、視聴者約8400人が25日、放送法などに反した番組を見たことで精神的苦痛を受けたとして、NHKに計約8400万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。>

 <問題の番組は日本の台湾統治時代を取り上げたもので、4月5日に放送された。放送直後から「日本の台湾統治を批判するため、証言をねじ曲げている」などの批判が相次いだ。>

 <原告は訴状で番組について「取材に応じた台湾人の話を、一方的に都合良く編集して使っている」などと指摘。具体的には①台湾統治下の暴動を「日台戦争」と表現②「日英博覧会」でパイワン族の生活状況を実演紹介した企画を「人間動物園」と表現などを挙げ、番組にはやらせや事実の歪曲・捏造があり、放送法に違反する番組だった――などと主張している。原告には約150人の台湾人も含まれている。原告側は今後、出演した台湾人や友好団体の関係者の証人申請や出演者らがNHKに出した抗議文などの提出も検討している。また、東京、大阪、名古屋では放送に反発する地方議員や有識者ら有志が抗議デモを行った。>

 <NHK広報局は「訴状を受け取っていないのでコメントできない。番組の内容には問題がなかったと考えている」としている。>

 以下は[キーワード]的な言葉説明だ。

◆<「シリーズ・JAPANデビュー」=NHKによると、近代国家を目指し世界にデビューした日本がなぜ国際社会で孤立し敗戦を迎えたのかを考え、未来へのヒントを探るのが企画の狙い。テーマは「アジア」「天皇と憲法」「貿易」「軍事」の4つで、うち「アジアの“一等国”」は、その第1回。近代日本とアジアの原点を台湾統治に探る内容としている。>

 関連記事も多い。

 まずは同じ日の3面トップ<NHK集団提訴/「日台戦争」「人間動物園」負の側面強調/造語・異説 軸に構成>である。

 <集団訴訟が提起されたNHKスペシャル「シリーズ・JAPANデビュー アジアの“一等国”」。NHKはこれまで放送内容には問題はなく、偏向もしていないと強調している。しかし、8千人を超える原告の数は今も増え続けており、第2次提訴も検討されている。一体、番組のどこの部分が問題とされているのか。>

 という前文で、新聞には◆の小見出しは入っておらず、ネットだけに入っていた。

◆日台戦争

 <《日本軍に対し、台湾人の抵抗は激しさを増していきます。戦いは全土に広がり、のちに「日台戦争」と呼ばれる規模へと拡大していきます》>
 <台湾と日本の間に戦争の過去はない。出演した台湾人からも「先住民族の抵抗なら治安の悪化だ」「戦争は言い過ぎ。NHKの誤り」などと抗議があがっている。>
 <NHKは「日台戦争」という言葉について、日本の大学教授らが使っていると根拠を挙げた。しかし、「平成に入って用いられた造語。確かに『日台戦争』という言葉を一部の大学教授が使っているが原典は戦争の定義もしておらず、治安回復のための掃討戦に過ぎない」(日本李登輝友の会関係者)という。>

◆人間動物園

 <《イギリスやフランスは博覧会などで植民地の人々を盛んに見せ物にしていました。人を展示する「人間動物園」と呼ばれました》>

 <NHKは、1910年の日英博覧会のパイワン族の写真に、「人間動物園」の文字をかぶせた。フランスの学者、ブランシャール氏の共著「人間動物園」などを参考にしたという。>
 <しかし、当時イギリスやフランスでそうした言葉が使われていたのかどうかは明らかにしていない。また日英博覧会には、パイワン族だけでなく、日本の村やアイヌの村、力士も参加していた。>

 <これを今も栄誉としている村もあり、「日本政府がパイワン族の実演を『人間動物園』と呼んだことはない」(訴状)、「パイワン族に対する人権問題」(出演者)と訂正を求める声が出ている。>

 <番組放映放映直後から、「日本の台湾統治の悪い面ばかりを強調している」「明らかに制作者側の悪意が感じられる」などの声が続出。「後藤新平を弾圧差別の首謀者として描くなど総じて台湾統治の負の側面をことさらに強調しており、わが国を不当に貶めた番組」だという怒りも。>

◆経営委員からの疑義

 <NHKは膨大な資料と関係者への取材を踏まえた番組で事実に基づき、問題はないとホームページで説明している。しかし、5月26日のNHK経営委員会では小林英明委員(弁護士)が「日本と台湾の間に戦争がなければ、そのような内容を放送することは放送法に違反する」「学会で多数説でなく、少数説や異説なら、そう説明するのが正しい放送では?」と問う場面があった。>

 <日向英実放送総局長は「一説とは考えていない」と答え、多数説なのかは、次回へ持ち越されることになった。経営委員会内部では個別の番組の是非を論じるのを差し控える空気もあるようで、小林委員の意見に他委員が「そういう意見が経営とどう関係しているのですか」とクギを刺す一幕もあったという。>

 このほか、同じ3面には<パイワン族 質問状提出へ>の2段記事と<台湾民間団体がNHKに抗議書>のベタ記事がついていた。ベタ記事だけネットにあったのでコピペしておく。

 <【台北=山本勲】台湾の民間団体「友愛グループ(台北市、陳絢暉会長)」は22日、NHKのドキュメンタリー番組「アジアの“一等国”」(4月5日放映)がグループ関係者の発言を偏向報道したとして抗議と訂正を求める文書を福地茂雄会長あてに郵送した。友愛グループは戦前の台湾で日本語教育を受けた世代を中心に「美しく正しい日本語を台湾に残そう」との趣旨で1990年代初めに発足、勉強会などの活動を続けてきた。>

 <同グループによると、NHKはインタビューした元メンバーの柯徳三さんら友愛会関係者の発言中、日本を批判した部分だけを放映し台湾の人の心と日台関係を傷つけたという。>

 このほか、1面に安藤慶太記者の解説が掲載されていたが、ネットでみつからなかったので、書かない。

 大きな問題になってきたようだ。

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ソマリア沖の海賊に企業6社が身代金支払い~朝日新聞6月26日朝刊

 ソマリア沖、アデン湾の海賊問題で、日本企業が海賊に身代金を支払っていたことが分かった、というニュースを朝日新聞6月26日朝刊1面トップで扱っていた。藤えりか記者の署名記事。えりかというから女性記者なのだろう。

 見出しは<日本企業 海賊に身代金/船長が電話「殺される」/会社「命に代えられぬ」/ソマリア沖で6件 当事者が証言>だった。

 [日本企業が関係する船がソマリア周辺海域で乗っ取られた例]の一覧表と地図がついていた。

 本文を見てみよう。

 <海賊事件が相次ぐアフリカ東部ソマリア海域で、日本企業の関係する商船の乗っ取り被害の実態が明らかになった。2007年秋から約1年で6件発生。うち1件の当事者が社名や日時、身代金額などを伏せることを条件に、報告書や実際の交渉を基に詳細を語った。>

 という前文。秘密のベールに包まれていた海賊との取引を暴いたところがニュースなのだろう。前々から身代金を払っていることは内々の秘密だったらしい。政府も承知しているのだが、これが表に出ると、他国からの批判にさらされたり、海賊の身代金要求をさらに増長させるのではないか、という配慮から伏せられてきた、というのが実情らしいのだが、あえて内情を暴露した企業が出てきた、というのである。

 <北アフリカの都市、人々が行き交う昼間の雑踏。アタッシェケースを携えた外国人男性が何げない様子で辺りを見回した。別の外国人男性が近づき、すれ違いざまにケースが渡された。中身は米ドルの現金。日本の海運会社が工面した身代金だ。貨物船を海賊に乗っ取られた代償だった。>

 迫真の場面なのか。

 <「そちらの船から救難信号を受信した」。この海運会社に北欧の救難部隊から連絡があったのはその何十日も前の午後だった。貨物船は東南アジアから欧州へ向かう途中、ソマリア沖を進んでいた。乗組員はアジア国籍などの数十人。役員らは船に電話したが通じない。「やられたな」。弁護士や危機管理コンサルタントと対策を練り始めた。>

 「やられたな」という反応だろう。今までは国民を守るべき日本政府は重要な輸送路を行き来する船の安全保障を企業に丸投げしてきた。というよりも、国は知らんふりをして、被害に遭おうが、見て見ぬふりを繰り返してきた。しかし、ここにきて、ようやく海賊退治のための法律ができた。

 <米海軍からも連絡があった。貨物船の後ろに小型船2隻がつながれていたのを見つけ、「攻撃していいか」。海運会社役員の声はうわずった。「やめてくれ。危険物を積んでいるから危ない」>

 そうなのだ。LPガスや化学薬品を積んだ船がスエズ運河を通って欧州と日本を行き来する。そのルートを海賊が襲うのである。

 <海賊は船をソマリアの首都モガディシオ付近に停泊させ、「ものすごい金額」(役員)を要求してきた。通信手段はすべて壊され、海賊は持ち込んだ衛星電話を使った。「銃を突きつけられている。早くしないと殺される」。電話の先で船長がうめいた。>

 昔、モガディシオ戦線という団体が暴れまわったことがあったことを思い出した。

 <後で聞いた話では、船の後ろにはしごをかけられ、銃などを携えた海賊8人ほどが乗り込んできた。乗組員は1カ所に集められて監視された。>

 まるで、カリブの海賊たちだ。

 <身代金の額をめぐり、海賊との綱引きが続いた。だが次第に貨物船の燃料が少なくなり、生活電源も乏しくなってきたことに我慢できなくなった海賊が金額を減らし、折れた。「お金で本当に解決するのか悩んだが、命には代えられないと思った」と役員。間もなく乗組員は解放された。>

 悩むだろうが、日本政府の方針が戦いではない以上、カネで解決するしかない。このリスク負担はすべて企業が被る。保険に入っているとはいえ、このリスク負担は物価に上乗せされ、日本の消費者が最終的に負担することになるのだろう。

 <国交省の統計では、ソマリア周辺海域で「日本関係船舶」が乗っ取られた例は1件。しかし、日本船主協会によると6件になる。国交省の統計が日本企業が直接所有あるいは運航する船に限るためで、実態は、税制面で有利なパナマなどの子会社を通じて船を所有するか、運航会社が日本企業でないことも多い。>

 便宜置船といわれるものだ。日本の船なのだが、税の優遇措置を受けるためにパナマ船籍にする。日本の大会社が本社をタックスヘイブンの国に置き、日本の税金を免れているのと同じ構造だ。

 <しかも当事者は「支払いが明らかになれば狙われやすくなる」と口をつぐむ。海賊の狙いはもっぱら身代金。6件とも人質は解放されており、「身代金の支払いを意味する」(大手海運会社幹部)。>

 そうなんだろうなぁ。身代金を支払ったから解放されたので、支払わずに解決できた例などないのだろう。

 <身代金の相場は100万~200万米㌦(約9600万円~約1億9000万円)とされる。誘拐犯との交渉や人質救出で企業に助言をする英国系危機管理会社の元日本法人社長、山崎正晴氏によると、2000年ごろ多発したマラッカ海峡の海賊の約10倍。2500万米㌦(約24億円)を要求された例や、支払額が300万米㌦(約2億9000万円)に上った例も報道される。>

 マラッカ海峡の時代から10倍になった、と。ぼろもうけだ。

 <身代金の高額化でかさばるため持ち運びが難しくなり、最近の受け渡しは空輸が主流だ。海難時の緊急物資運搬用のパラシュートに米ドル現金入りケースをくくりつけ、ヘリから船に落とす。ある海運関係者は「交渉費用なども含め、被害に遭えば10億円近くが吹っ飛ぶ」と話す。>

 こういう負担をしながら、無資源・貿易立国ニッポンは生きているのです。内需を振興して、農業製品をアジアやヨーロッパに輸出できるようにしたいものだ。

 朝日新聞はこの記事の隣に<被害急増、今年125件>というまとめ記事を掲載していた。

 国際海事局(本部・ロンドン)によると、ソマリア沖海域での2008年の海賊被害は未遂を含め111件で、うち乗っ取られたの船は42隻。今年は6月1日までに被害が125件、乗っ取られた船は25隻を数え、増加傾向にある。しかも、海自の護衛艦は2隻で、貨物線の航行日程と合わない場合も目立つ。「護衛対象が広がれば、肝心の日本の船が漏れてしまうのでは」(海運関係者)との懸念も広がる、とある。

 <そこで、日本の海運会社の一部が利用するのが、英国の危機管理コンサルタント会社のサービスだ。貨物船がソマリア周辺を通る時だけ英軍特殊部隊の出身者らを乗せる。海賊の監視や緊急対応が主な役割だが、「万一乗っ取られたら人質になるため、英海軍が救出に動いてくれる」(海運会社役員)との期待がある。>

 この英国の会社について、独協大学の竹田いさみ教授は「海賊とグルになっている可能性もある」と見ている。社団法人アジア調査会のアジア研究委員会で研究報告した内容を掲載した月刊誌アジア時報2009年6月号の「ソマリア海賊の現状と課題」 に詳しいが、英国にしてもフランスにしても、国際紛争慣れしているから、何でも商売にする根性があるようだ。

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鷲田清一氏の臓器移植問題の見解、勉強になった~「あらたにす」09年6月26日

 臓器移植問題は難しい。先に毎日新聞6月21日朝刊の[社説ウオッチング]で各社の社説を比較していたことを取り上げたが、その中で地方紙の社説が中央紙に比べて「脳死は人の死」という新しい「死の定義」を「時期尚早」とする論が多い、とあったことが印象に残っていた。

http://mainichi.jp/select/opinion/watching/news/20090621ddm004070026000c.html

 [社説ウオッチング]では、ニューヨークやワシントンD.Cのような開明派の都市と中部地区の保守の岩盤で大きく民意が違っているように、日本でも都市住民のテレビなどのマスメディアに影響されやすい、つまり、地域の絆から発想する地に足の着いていない国民と、いまだに地域的なコミュニティーが残る地域の国民との間に差があるのではないか、という仮説を提起していたのが面白かったのだが、朝日新聞、日経新聞、読売新聞3紙が共同運営するサイト[あらたにす]の<新聞案内人>は6月26日、哲学者で大阪大学総長の鷲田清一氏による<臓器移植法『改正』をめぐって>というコラムを掲載、考えさえる内容だった。

 鷲田氏らしく、死生観の問題正面から対峙し、法案の遅れは国会の責任だけでなく、国民の責任だが、時間を区切って拙速で決める問題ではない、と結論付けていた。正しい結論だと思う。

http://allatanys.jp/B001/UGC020005320090626COK00327.html

 鷲田論文を読んでみよう。

 <臓器移植法の改正が、衆議院で採決された。委員会での議論は9時間にも満たないものだったと聞く。あまりにも大きな問題がここには含まれており、ここで許される紙幅ではその全体について一つ一つ論じることはできないが、現時点でとにかく確認しておかねばならないと思われる点についてのみ記しておきたい。>

 そういうことだと思う。

 <今回改正されたのは、11年半前に採択された臓器移植法である。これはその3年後に「見直し」をするとしていたが、じつはその後現在までたなざらしにされてきたものである。その問題性については最後に書く。>

 そういうことだ。

 <今回の改正点でもっとも重要なことは、まず、「死の定義」が変更されたことである。現行法では、本人と家族の両方の同意があるときにかぎり、脳死となった人を死者とみなし、臓器を摘出できるとしている。これはつまり、移植を前提としたときのみ脳死は人の死とされるとするものである。しかも15歳未満の子どもからは臓器摘出できない。今回それが「改正」された。一律に「脳死を人の死とみなす」とされたのである。>

 今回の騒ぎのポイントである。

 <こうした「改正」を待望する背景には、移植待機患者をどのようにしたら解消できるかという問題がある。小児の場合には、現在のところ海外での渡航移植しか手がないということもその背後にある。臓器提供の条件の緩和ということが、現行法改正の主眼点になっているのには、こうした差し迫った事情がある。>

 客観的事情だ。

 <これに対して「改正」に慎重である人たち、あるいは反対する人たちが深く危惧するのは、技術的な問題と「そもそも」の問題とである。>

 二つの大きな問題があるのだ、と。

 <技術的な問題というのは、小児にはしばしば長期脳死というケースも見受けられ、実際の脳死判定が極めて難しいということである。これに論理的な問題をも付け加えるならば、仮にもし小児についても精確な脳死判定の方法が確立したとしても、それはあくまで「脳死状態」の確定にすぎず、それで「死」であるかどうかは別の問題である。>

 そういうことなのだ。判定だって人間がやること。一定の基準を作って、それに合致するかどうかを判定するのだが、あくまで今段階の科学技術をもとにやるのだから、10年後だったら「死」と判定されないものが「死」の判定を受けることだってある。

 <さらにここからは、技術的な問題を超えて次のような問題も出てくる。昨日まで元気だった小児が、事故や病気で突然、脳死状態になった場合に、果たして、その家族に冷静で沈着な判断ができるのかという、これまた大きな問題である。>

 ここである。新聞の社説や雑誌の論文でもあまり出てこなかった問題だが、もしかすると、最も大きな問題なのかもしれない、と思っている。

 <「そもそも」の問題というのは、他の患者からの臓器提供を期待する、つまりは他者の「死」を前提とするような医療が、そもそも医療として適切なものかどうかという問題である。実際、わが国の難病、心臓病、人工透析患者を救うには、それに見合う怖ろしい数の脳死者が必要となる。が、本当は交通事故の防止対策と、より充実した救急医療体制の確立によって、そうした脳死者の増加を(待望するのではなく)防ぐのも、わたしたちの社会に迫られたもう一つの課題であるはずである。>

 そうなのだ。人の「善」はその方向で進むべきである。

 <このように、一方には、何としてもこの人、この子の命を救いたいという、待ったなしの切なる要請がある。他方には、何としてもこの人、この子の死を、十分納得したうえで認めたいという思いがある。あるいは、納得できないまま、長期脳死状態にいる人の傍らで懸命に生きている家族の姿がある。臓器移植が医療の課題であるとしたら、それは、そもそもこうした二律背反に引き裂かれざるをえないものである。>

 臓器移植というのが適切な医療法なのか、とは書いていないが、その問題を突きつけているのだと思う。私は他人の死を待ち焦がれるような医療は人間性に反する欲望ギラギラの医療であり、それはもはや医療の名に値しないと思っているのだが。

 <言い換えると、それらは両立しがたい要請である。それはまず「時間がない」と「時間が要る」との背反だからである。それはまた、単なる臓器の問題ではなく、いずれも互いの要請に反する形で「だれ」という名を持ったかけがえのない存在を(それぞれ反対方向から)護ろうとしているからである。>

 脳死者だってかけがえのない存在なのだ、と。鷲田氏はそうはっきりとは書いていないが、視点は脳死者ではなく、その脳死者を慈しみ、思いやる他者に向かっている。脳死者の「死」がその他社をいかに悲しませるか、喪失がどのような思いを生むか、を考えているように思えるのだ。

 <臓器移植という先端医療は、このように二つの生命のどちらかを二者択一しなければならない状況を生み出している。あるいは「人としての幸福」への希求と「人としての尊厳」という倫理的要請とがここでは二者択一という対立関係に入っている、と言い換えてもよい。>

 そういうことなのだ。

 <臓器移植法改正の前と後にある二つの重大な問題を、次に指摘しておきたい。>

 として、

 <まず事後の問題として危ぶまれるのは、これにより脳死が一律に人の死とみなされることによって、今後、移植を前提にしない治療でも脳死判定し、死亡宣告できるという事態が起こりうるということである。人の死が法律によって規定されることによって、本来、こうした医療従事者のうちにあるはずのジレンマが解消されてしまわないかということを、わたしは怖れる。>

 これは大きな問題なのだ。

 <つまり、「このことで、失われゆくひとつの命が救われるのだからやむをえず」という、脳死者の臓器を待望してしまうまさにその苦渋がしだいに薄まり、「法律に則っているのだから問題はない」というふうに、その苦渋が免除され、「人としての尊厳」に無感覚になってしまいかねない、ということである。法律化されることによって、もやもやした倫理的な責めの意識が医療従事者からすっきり免除されることの方を、私は怖れる。>

 そこが問題なのだが、新聞記者には書けないことだったのだろう。ここまで踏み込んで書いていた社説はなかった。「死」が定義された瞬間から「死」は自分のものではなく、いわば国家に管理されたものになってしまう。

 <次に事前の問題としてわたしが指摘しておきたいのは、今回の衆議院での議論においては、現行法が制定されるまでの賛否両論の長い困難な議論が、十分に検証もしくは参照されなかったことである。これまで10年近く、現行法の「見直し」は放置されてきた。これが決定的な問題であろうと思う。>

 臓器移植法ができた時の苦渋。あれを思い出せ、と。[社説ウオッチング]にあったように、あの時から民意は大きくは動いていないのだ。

 <この議論には、そもそも先に触れたような二律背反が含まれている限り、全員が同意できる「正解」はあり得ない。あり得るとしたら、それは「納得」と言うしかないものである。>

 なるほど、「正解」ではなく「納得」しかないのか。そういう問題はあるだろう。離婚の例が出る。

 <例としては適切ではないかもしれないが、家裁の調停員をかつてやっていた知人の経験によれば、たとえば離婚の調停において、双方がそれぞれの言い分をとことんぶつけあって、「もう万策尽きた」「もうあきらめた」と観念したとき、まさにその時にかろうじて話し合いの道が開けるのだという。訴えあいのプロセス、議論のプロセスが尽くされて初め開けて来る道がある、と。「正解」がここに下りてくるというのではない。「理解できないけれど納得はできる」「解決にはならないけれど納得はできる」という事態が生まれるということである。>

 この辺、さすが哲学者だと思う。新聞記者にはこのような突き詰めたワーディングの追求はできなかっただろう。

 <「納得」ということは、果てしのない議論からどちらも最後まで降りなかった、逃げなかったということの確認の後にしか、生まれてこない。長くて苦しい議論、譲れない主張の応酬の果てに、そんな苦しい中で双方が最後まで議論の土俵から下りなかったことにふと思いが及ぶ瞬間に、初めて相手に歩み寄り、相手の内なる疼きを本当に聴くことができるようになる。>

 泥仕合をしないと、お互いを傷つけあい、罵り合って、自分の主張を泣き叫びながら声にしないと、納得は出てこないのだろう。

 <そういう「納得」をもたらすはずの時間、あるいはもたらすことに通じる時間を削除してきた。これがこのたびの「改正」に到るまでの、衆議院議員のみならず、わたしたち全員の、ほんとうの怠慢であったのではないだろうか。>

 さすがに哲学者という人種は考えが深いと思う。

 まずは参院で徹底審議をして、民主党や社民党の有志が主張するように脳死臨調を設ける、という方法が今のところ、無理のない道なのかもしれない。衆院解散で廃案になるのもやむを得ない。

 それにしても、[社説ウオッチング]にあったが、河野太郎氏らの多数派工作には驚いた。やるべきでないことをやった感じがしてならない。衆院議員一人一人が自分自身、深く考え、決断すべき問題に自民党総裁選並みの◎×方式で多数派工作していた、というのだから呆れてしまう。

 河野洋平衆院議長の花道として改正案を成立させたかった、という記事も散見された。「そんな問題じゃないだろう!」と思うのだが。

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2009年6月25日 (木)

岡崎久彦氏の戦略論は中央公論が分かりやすい~産経新聞6月25日[正論]+中央公論09年7月号

 岡崎久彦元駐タイ大使が産経新聞6月25日朝刊[正論]に<米知日派を再び挫折させるな>のタイトルで寄稿していた。小見出しは≪キャンベル氏らの友好姿勢≫≪日本は同盟寄与を考えよ≫≪集団的自衛権決着を期待≫である。

 この問題は中央公論09年7月号の特集[日はまた沈むのか――米中「同盟」の狭間に消える日本]で気鋭の論者がじっくり論じており、岡崎氏も孫崎享元防衛大学校教授との対談<漂流前夜/日米同盟の命運を徹底検証する>で面白い討議をしていたのを思い出す。

 まず産経新聞の岡崎氏コラムを読んでみよう。

 <オバマ政権は、日本に極めて好意的姿勢を示してくれている。それはクリントン国務長官指名の上院証言に既に見られたが、彼女が真っ先に訪問した国は日本、オバマ大統領が就任後初めて迎えた外国首脳は麻生総理であった。これは日米関係にとって画期的な出来事であり、日米双方の外交の成功だった。現にスタインバーグ国務副長官、キャンベル東アジア太平洋次官補はともにこれをオバマ政権の日本重視の証左として強調する発言を行っている。>

 オバマ政権の日本重視姿勢である。岡崎氏にすれば、カート・キャンベル氏らの言葉を額面通り受け止めたいのだろう。

 <しかし、当時の日本のマスコミはG20における中川財務相の挙措の粗相の方を大きく取り上げ、せっかくの米国の好意のゼスチュアを国民によく伝えなかった。これは日本のマスコミの品位を貶めるものであったと思う。1998年のクリントン大統領の訪中は、大統領のセックス・スキャンダル事件の裁判と日程を重ねて国民の関心をそらす意図が見え見えであり、またその趣旨の報道もあったが、それでもクリントン訪中の方が大々的に報道されていた。それが国家の利益、国家の威信に重きを置くマスコミとして当然の姿勢である。>

 クリントン大統領のセックス・スキャンダルが米国で燃え盛ったのがクリントン訪中時期だったのか。忘れてしまっていた。

 <それはともかく、オバマ政権の日本に対する好意的配慮は単にゼスチュアだけではなく、米国の今後の政策に重大な意味を持つ、東アジア担当の高官の人事に端的に表れている。米国人は欧米のことは分かってもアジアのことを分かる人は少ない。どうしても政策は東アジア担当の専門家の知識に頼ることになる。クリントン時代の前半、日米経済摩擦がひどかった時期、ホワイトハウス、国務省、国防総省の東アジア担当には中国専門家は居ても、知日派はただ一人も居ず、日本は取りつく島もなかった。しかし、今回は国防総省の東アジア担当は沖縄の海兵師団長を務め、日本を知っているグレグソン次官補であり、国務省の東アジア太平洋次官補には日米同盟重視のカート・キャンベル氏が新たに就任した。>

 昔のことを忘れるので、今の米政権内の人数だけで数える習性がついている。そうなると、中国派が多い、という話になる。

 <日本にとって結構な話である。そこで、今度はその代わりに日本に何ができるかということである。実は昨年、パシフィック・フォーラムなど4団体は50名以上のアジア専門家の参加するセミナーを4回共催して、その結果をオバマ政権の新アジア政策提案として、今年2月に公表した。キャンベル氏はその報告書作成に指導力を発揮したと伝えられる。その中で、enough!(もう沢山だ。聞き飽きた)と言っている個所がある。アメリカは日米同盟にコミットしているのだから、何時までもジャパン・パッシングなどと、うじうじ言っていないで、日本が同盟に寄与ができる方策を、日本の方から考えるべきだ、と言っているのである。実は、キャンベル氏は民主党系では数少ない知日派の一人として、クリントン末期以来日本の政財界挙げてのキャンベル詣での煩雑さには辟易したといわれる。しかし、今回の彼の上院での質疑応答では、そんな些細なことは気にかけるふうもなく、米国のアジア政策の中心は日米同盟にあり、そのことを日本の友人たちに保証すべきだ、と断言している。>

 キャンベルは信頼できるのだ、と。

 <ブッシュ政権発足直後、アーミテージ国務副長官日米同盟強化のために次官級の戦略対話を提唱したが、当時の日本側の外務省はそれに効果的に対応できず、氏は失意のうちに去った。それに反して後任のゼーリック氏は米中次官対話を始め、それは初回から大成功を収め、たちまちに中国はステイク・ホルダー(責任分担者)の地位を獲得した。>

 <今回も、キャンベル、グレグソン両氏の在任中に何とか日米関係を前進させようとする動きが先方からあると期待される。日本の政情では麻生内閣の後どうなるかは全く先が見えていない。それでもキャンベル氏が初訪日するころはまだ麻生内閣であろう。その短い期間であっても、オバマ大統領の新体制と有意義な意見交換をして、今後の日米同盟強化の路線を、一部なりとも、敷いて残してほしい。さもないと折角のキャンベル、グレグソン、更には、ジョーンズ、クリントン、ゲーツ各氏のチームが対日関係について早々に挫折感を持つ結果となることを恐れる。日本がしなければならないことの焦点も定まってきた。>

 キャンベルの来日まで、がひとつの目標なのだろう。

 <最近の米国の知日派の発言を見ると前は遠慮していた集団的自衛権の問題解決への期待をはっきり言うようになってきた。次は日米同盟の抑止力維持のための日本の防衛力強化である。日米間の当面の懸案は基地再編であるが、これは沖縄の現地事情が複雑に絡まる問題であり、中央政府の施策でどうにもならない面もあり、見通しは不透明である。その解決のために努力をすることは当然であるが、そのために、より基本的な集団的自衛権や防衛費増額の問題を後回しにすべきではない。>

 集団的自衛権問題は簡単なのだと思うのだが、どうして皆そう難しく考えるのだろう? 内閣法制局の人事権は今度は大きな意味では官邸が持つことになるのではないか。そうすれば、集団的自衛権を認めるべきだ、という考えの優秀な官僚を担当部長や次長、長官に据えればいいのではないか。

 何か、神学論争のようにマスメディアや学者たちが勝手に仕立て上げている感じを受けるのだ。

◆中央公論の孫崎享×岡崎久彦対談

 中央公論の対談は面白かった。この二人は上司と部下の関係にあった。考え方は逆である。岡崎氏は保守親米派。孫崎氏はどちらかといえばリベラルで自主独立・多国間協調主義者のように見える。

 孫崎氏の近著「日米同盟の正体――迷走する安全保障」(講談社現代新書、2009年3月20日刊、798円)の「おわりに」で孫崎氏は、

 <筆者は外務省で分析課長と国際情報局長の二つの任についた。岡崎久彦氏と筆者の二人がこの二つの任についた。かつ筆者は岡崎久彦氏の局長時代の分析課長である。あるインターネットのサイトに孫崎は岡崎氏の子分であると書かれていた。人的繋がりではそうである。しかし本書を読んでいただいた読者には十分におわかりの通り、二人の主張点は両極にある。じつはこの傾向は岡崎久彦氏の局長、筆者の分析課長のときにすでに存在していた。当時、筆者は分析課長としてはまずまずの仕事をしていたと思う。ある時岡崎氏が私を呼んで、次のように述べた、「じつはある人間が『岡崎局長、あなたは、孫崎はちゃんとした仕事をすると言っておられますが、彼はとんでもないハトですよ。タカ派で鳴らすあなたの懐にハトが隠れているのです』と言いに来た。それで自分は言っておいた。ハトでもタカでもいい。何かの見解を持つのに十分な勉強をし、しっかりした論拠を探す努力をしているならそれでいい。皆、その努力をしていますか」>

 というエピソードを紹介していた。お二人はそういう関係なのだ。

日米同盟の正体~迷走する安全保障 (講談社現代新書) 日米同盟の正体~迷走する安全保障 (講談社現代新書)

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 それを前提にして、中央公論の対談を読むと、岡崎氏の駄々っ子のような「それでも正しいことは正しいんだ」という主張をいなしながら、考えに考えた孫崎氏がポツリポツリとしゃべる言葉の重さが伝わってくるのだ。

 つまり、岡崎氏の戦略論は非常に単純なのだ。つづめて言えば次のようになる。

 <僕の戦略の目的は単純だ。日本の国民の安全と繁栄だ。どんなことであろうとも、日本の国民の安全と繁栄を犠牲にはできない。政治家や国際政治学者である以上は、国民の安全と繁栄が損なわれてもいいという理論は成立しようがない。安全の中には自由と独立が入る。といっても、ちょっとアメリカに肩を張って独立だなどという甘っちょろい話ではない。たとえば、冷戦時代、ソ連に占領されたら自由も独立も何もない。そういう国家の根源的安全が守られなければならない。そのための戦略は何か。七つの海を支配しているアングロ・アメリカン世界との協調、明示開国以来これ以外に絶対ない。日英同盟とその前後の30年間、それから日米同盟の半世紀以上、これが日本が全く安全で繁栄した時代だった。約400年間も世界の海洋を支配しているアングロ・アメリカン世界と同盟しない限り日本の生命はない。僕の戦略はそれだけ。だから、僕のコメントは、すべてこの基準から出てくる。>

 そういう基本路線をふまえて、この対談で岡崎氏は①防衛費を増やす②集団的自衛権を認める――とする。孫崎氏がオバマ政権の言う通り、アフガンに派兵すると世論が反対すると言うと、

 <世論が全員一致して真珠湾攻撃を成功と考えた時期がある。その場合でも攻撃は失敗だった。僕は真珠湾は明治以来の大戦略に反するから反対なんだ。1588年以来のアングロ・アメリカンが覇権を握った世界と、それから1853年にペリーが来て以来の日本とから導き出される大戦略に対しては、それぞれの時点でもって世論がどうのこうのなど関係ない。>

 と意気軒昂なのである。

 細かい点を詰めようとする孫崎氏に対し、最後に岡崎氏は、

 <あまりローカルな問題は考えなくていい。大原則を考えればいいんだよ。大原則は日本国民の安全と繁栄なんだ。そのためには日米同盟堅持なんだ。その胆さえ維持できれば、何言ったっていいんだ。つまり日米同盟をあなたが言うみたいにアジアだけに止めておいて、中東へ行くのは反対だと。それでも日米同盟が大事っていうことさえわかっていれば、それでいいんだ。それがわかっていれば、必要によっては中東行きも支持する。どうしても必要なら。そうでしょう。そこまで国民は反対しない。要は戦略の基本に一本筋が通っているかどうかなんだ。

 と言い放って、対談は終わる。

 岡崎氏の戦略論の原点を見るようで目から鱗が落ちる。

 この対談を読み、その後、岡崎氏の様々な新聞、雑誌の論文を読むと、どういうコンテキストで発言しているのかが見えやすい。

 岡崎氏の論は日本人の対米ナショナリズムという重要な問題を避けて通っている感じもするのだが、戦略論とすれば基本的に「一本筋が通っている」というか、筋が通り過ぎている感じがする。

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早野透氏の[吉田茂の流儀]コラム、吉田を書かずに小沢を書いたのか?~朝日新聞6月25日朝刊

 朝日新聞6月25日朝刊オピニオン面[ザ・コラム ポリティカにっぽん]で早野透・本社コラムニストが<吉田茂の流儀/まねていいこと、悪いこと>のタイトルで論を展開していた。書き出しから、

 <戦後日本の屈指の政治家といえば、だれしもまず、吉田茂をあげるだろう。麻生太郎首相の祖父である。この10カ月の麻生政権をながめながら、とつおいつ吉田茂の流儀を考えてきた。>

 とあるように、政治評論家や政治ジャーナリストは麻生政権誕生で吉田茂を否応なく想起し、今の日本の状況を横目で眺めながら吉田を考えている、というのが、保守の論壇状況なのだろう。いくら年配の早野氏にしても、直接取材した経験はないのだろう、書く材料は家族や知り合いの思い出話を記した本などである。手にする本は「回想十年」が多いようだ。早野氏も「回想十年」からの引用を掲載している。また、政治記者、戸川猪佐武の「小説吉田学校」とその映画化されたDVDも今の時代にはすでに当時を想起させる資料になっていることが早野氏の文章で分かって面白い。戸川氏の小説には当時は①どこまで事実に沿っているか②見方が適切か――などの問題が提起されていた。小説が出た時代は進歩的文化人が論壇を席巻している時代だったから、「まとも」な政治研究者からは相手にされなかった、というのが当時の時代風潮だったように思う。早野氏の書き方を見ると、時代の大きな変化も分かる。

 早野氏の論のポイントは①吉田・鳩山が争った時代と今の日本政治の状況が少し似てきたのではないか②吉田の孫と鳩山の孫が総理大臣の椅子を争う状況で、2大政党とはいっても、戦争直後のあの時代のように、政界の流動化がありうるかもしれない③では民主党に政権が行くとどう変わるのか? 無駄遣いをなくす、くらいしか見えない④自民、民主は保守2党または保守とリベラルくらいの違いしかなく、政党の違いが見えにくい⑤吉田の汚点は指揮権発動をしたことで、その時の弁明と今回の秘書逮捕の際の小沢一郎氏の弁明と比べるとよく似ている(真似て悪いこと)⑥民主党の第三者委員会は指揮権発動という選択肢もありえた、と書いたが、吉田の指揮権発動は政権末期の破れかぶれで、これから政権を作ろうという民主党からこのような議論が罷り通っていいはずがない――というようなものだ。

 吉田にひきつけて吉田を語るのではなく、民主党の、というか小沢一郎氏の批判をしているだけに見える。

 このコラムを書くに当たって早野氏は井上寿一・学習院大学教授の「吉田茂と昭和史」(講談社現代新書、2009年6月20日刊、798円)を読んだとは思うのだが、井上教授がじっくりと分析した吉田政治の現代性についてほとんど触れていなかったのがその証左だ。

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 井上氏は吉田があの時代状況の中、「日本の独立」という至高の目的のためにしたくなかった米軍の長期駐留を受け入れ、農地改革にも応じ、天皇の地位の変更も受け入れたことを書いていた。国家目的を達成するために手段を選ばない政治家であればこそ、現代に意味を持つ、と言っているようにもみえた。特に、吉田の書簡集にある肉声をフルに使っていたのが印象的だった。

 それに比べて、このコラムは吉田を書いたのか、小沢を書いたのか? 早野氏に聞いてみたい。

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ユギオ59周年の6.25:李明博と言う人はすごい=緊張感がある韓国になった~6月25日の韓国各紙から

 日本の新聞は外国の報道については、日本人が関心を示すこと、つまり、ある程度大きな動きが起きないと報道しない癖がついているようだ。それに比べて韓国の新聞は朝鮮半島に関しては細かいことでもフォローする伝統がある。世界の動きに敏感なのだ。それを改めて感じたのが朝鮮日報6月25日日本語版ネットのホームページにアップされた<米上院議員「北朝鮮のテロ支援国家再指定を」/キャンベル国務次官補の指名承認に反対して要求>の記事だった。

 細かい話である。キャンベルの承認問題で上院の1議員が反対したというだけの事実関係なのだが、その背景などを考える際になくてはならない記事でもある。

 そもそもカート・キャンベルという政権内の知日派ナンバーワンの動向である。日本の新聞がもう少し興味を示してもいいのではないか、と思うのだが。

 ワシントン支局の李河遠特派員の記事を見てみよう。

 <米上院のブラウンバック共和党議員などが北朝鮮をテロ支援国家に再指定することを要求、キャンベル国務次官補(東アジア・太平洋担当)の指名承認に反対していることが分かった。これにより、キャンベル氏がいつ上院の承認を受けられるか不透明になり、北朝鮮の挑発行為に対する米国の政策樹立にも影響を与えるものと予想される。>

まあ、大袈裟だとは思うが、上院の中の雰囲気を表すエピソードでもある。ワシントンに駐在している特派員の中では常識かもしれないが、日本にいて朝鮮半島に興味を持ち、なおかつ日本の新聞から情報を得ようとしてる読者にとっては、こういう情報があるかないかで天と地の差が出てくる違いがあるから怖い。

 <ワシントンの外交消息筋によると、ブラウンバック議員らは最近相次いでミサイルを発射したほか、核実験も行った北朝鮮に対し、テロ支援国家再指定などの強硬措置を要求、キャンベル氏の上院での指名承認に反対の立場を示している。>

 キャンベル氏の人事を「人質」にとって、オバマ政権に北朝鮮への強硬策を迫っている、というのだ。

 <ある消息筋は「ブラウンバック議員は、クリストファー・ヒル前国務次官補(東アジア・太平洋担当)兼6カ国協議首席代表の融和的政策が北朝鮮問題をさらに悪化させたとみている。ブラウンバック議員はキャンベル氏と国務省から確固たる対北政策の約束を得られなければ、引き続き承認に反対する立場だ」と述べた。>

 これを見る限り、ブラウンバック議員という人はまともな人らしい。

 <キャンベル氏指名に対する反対を主張しているブラウンバック議員は、昨年4月にも米国務省が北朝鮮の人権問題について微温的だとして、キャスリーン・スティーブンス駐韓米国大使の承認に2カ月余りにわたって反対した。>

 2か月もかかったのか。

 <米国務省は来週から米上院が2週間夏の休会に入ることから、北朝鮮問題と関連した東アジア政策の円滑な推進のため、今週中に承認されることを望んでいる。米国務省と民主党上院指導部は、水面下で北朝鮮問題に対する象徴的な決議案の採択などの妥協案を示し、ブラウンバック議員を説得していることが分かった。米上院は、一部議員が特定指名者について承認に反対した場合、すぐに表決せず承認を先延ばしして、満場一致で通過させることを慣例としている。>

 大使や大使に準じる地位は日本だったら天皇が認証する国家の代表者であるから、米国でも「全会一致」というセレモニー的な形式をとっているのだろう。

 それにしても、こういう共和党議員の主張が共鳴されているのかどうか。議会の中の広がりがあるのかどうか。もっと詳しい事情を知りたくなる。

 でも、それにしても、オバマ政権の北朝鮮政策はなかなか固まらないだろう、と思う。あっちに行ってこっちに行って、結局は融和策になる、という感じを受けているのだが、どうだろうか?

◆北朝鮮と韓国の戦力比較……朝鮮戦争59年の記念日に寄せて:中央日報

 中央日報6月25日の日本語版ネットに<韓国海軍・空軍の戦闘力、北朝鮮より圧倒的優位>という記事が掲載されていた。何といっても6月25日は朝鮮戦争開戦の記念日である。その関連記事として、担当記者がまとめたものらしい。読んでみよう。

 <1950年6月25日、北朝鮮軍はT-34戦車を前面に立て、38度線を越えてきた。北朝鮮人民軍を阻止するための鉄柵も、木柵も、塹壕も打ち破って潮のごとく攻めてきた。しかし、韓国軍が保有した兵器のうち北朝鮮軍の戦車を壊せるものは何もなかった。唯一の方法は戦車の上に飛び上がって、ハッチを開け戦車の中に手投げ弾や火を付けたガソリンの瓶を投げ込むことだけだった。>

 日本に高度経済成長をもたらした朝鮮戦争だ。

 <韓国戦争(1950~53年)の勃発から59年を迎えた。戦争が勃発する前に韓国軍はほぼ素手も同然だった。韓国戦争当時に韓国軍は総兵力10万3827人と8師団の陸軍を保有していた。海軍と空軍は航空機32機と戦闘艦1隻がすべてだった。これに比べ北朝鮮軍は総兵力20万1050人と重武装した10師団で韓国を攻撃してきた。また野砲600門、航空機196機、哨戒艇16隻と魚雷艇を保有していた。>

 韓国は貧しかっただけでなく、統治のあいまいさが米国をはじめとする西側社会で正統性を勝ち得ておらず、李承晩政権は漂流状態だった。

 <韓国軍と北朝鮮軍の師団を比較してみると、韓国軍がどれだけ貧弱だったかがよく分かる。双方の師団数はそれほど変わらなかったが、戦闘力は韓国の師団が絶対的に劣勢であった。韓国軍師団の主要火力は81㍉の迫撃砲36門、60㍉の迫撃砲81門、105㍉の曲射砲15門程度だった。これに比べ、北朝鮮軍師団は120㍉の迫撃砲が18門、同82㍉81門、同60㍉108門と、野砲は122㍉の曲射砲が12門、76㍉の平射砲と曲射砲が48門などだった。しかも、北朝鮮軍の野砲は射程が11~13㌔だが、韓国軍の野砲の射距はわずか6.5㌔にすぎなかった。>

 密かにソ連、中国を訪問して「統一戦争」へのお墨付きを得た「輝ける金日成」の鍛錬のたまものだったのだろう。

 <専門家は「当時、北朝鮮軍の師団が韓国軍より10倍の戦闘力を持っていた」と評価した。ここに北朝鮮軍はT34などで武装した独立機甲連帯と機甲旅団の支援を受けた。これに基づき、北朝鮮軍はわずか3日でソウルを陥落させ、洛東江まで占領した。>

 洛東江は釜山の北西を流れる川だ。

 <米軍を中心にした国連軍の介入がなかったならば、洛東江戦線すら構築できず、韓国は韓半島から消えたかもしれない。>

 マッカーサーの仁川上陸作戦が成功しなかったら、今は統一朝鮮が日本の隣に鎮座ましましていたことだろう。

 <しかし、59年が過ぎた現在、韓国軍は完全に変わった。2008年ベースで韓国軍の兵力は65万人で、北朝鮮の119万人を大きく下回るものの、戦闘力では劣らない、という評価だ。海軍と空軍は韓国軍が北朝鮮より圧倒的だ。イージス艦など韓国型の駆逐艦は受動システムの北朝鮮艦艇を先に発見し、正確に撃沈させることができる。1999年の第1延坪海戦当時に、海軍が圧勝、戦闘力が立証付けられた。戦闘機F-15KとKF-16などは北朝鮮の戦闘機よりはるかに強力だ。>

 海軍と空軍が優位にある、圧倒的優位にある、ということは、制空権を握れて、制海権も握れることだ。

 <延世大学の文正仁教授(政治外交学)は24日、空軍会館(ソウル大方洞)で開かれた第12回航空宇宙力国際学術会議で「北朝鮮の長距離弾道ミサイルが問題ではあるものの、核兵器さえ使わなければ通常戦争では韓国軍が勝利する」という見方を表した。韓国軍の名声は国際社会でも立証されている。イラクのザイトゥーン部隊とアフガンの茶山、東医両部隊が外国軍よりはるかに優秀な実績を見せ、模範となっている。>

 「核兵器さえ使わなければ」なのである。そして、韓国の人の大多数は北朝鮮が韓国に核兵器を使いっこないと思っている。

 私もそうだと思う。北朝鮮が核ノドンを発射する先は日本しかないのだ。

◆朝鮮半島59年の人間賛歌のお話~親子二代のお話:中央日報

 中央日報の次の記事は日本人読者にどういう思いを抱かせるのだろう? 6月25日のネット日本語版の<米将兵「父が守った韓国、代を継いで私が守る」>である。

< ソウル竜山の米第8軍司令部に勤務中のジェラディン・ボワーズ准尉(54、女性)の父は韓国戦争(1950-53)参戦勇士だ。 戦時中の1952年末、ヘリコプター整備兵として韓国に来た父のバーナード・シジェルさん(79)の後を継いで同じヘリコプター整備担当として服務している。1986年にチームスピリット訓練に参加し、韓国と縁を結んだボワーズ准尉は87年と2003~05年に在韓米軍で服務、2月からまた韓国に来ている。>

 <ボワーズ准尉は5段階に区分される准尉等級のうち最高のCW5。 米8軍操縦整備将校のうちCW5は彼女が唯一で、米軍全体でも女性のCW5は12人にすぎない。1977年に兵士として入隊し、81年に将校に任官した彼女は33年間にわたり操縦整備分野に身を置いた。 輸送ヘリコプターのUH-1Hをはじめ7機種に精通したベテランだ。在韓米軍で勤務しながらテコンドー2段、剣道1段を取得し、韓国の学生に英語とテコンドーを教えている。 今年テコンドー3段に挑戦する彼女は最近、韓国の児童に対するテコンドー指導の功労が認められ、議政府テコンドー協会から感謝牌を受けた。>

 <ボワーズ准尉は「韓国にはいい人たちがいるし、特に父が参戦した国なので、大きな愛情を抱いている」とし「2011年まで韓国勤務を延長した」と話した。ボワーズ准尉は「父は韓国戦争参戦を誇りに思っているが、娘の韓国勤務をもっと誇らしく感じている」と語った。韓米連合司令部によると、ボワーズ准尉のように韓国戦争に参戦した父や祖父を継いで韓国で勤務中の米軍将兵は70人にのぼる。>

 <シャープ在韓米軍司令官の父も1952年4月から1年間参戦している。 京畿道烏山の米第7空軍には35人(女性5人含む)が勤務中だ。第8飛行団支援大隊に勤務中のアラン・エニタ下士官(女性)と同じ部隊法務室のヒブラー・アマナ兵長、607航空通信大隊のダベンフォー・クリスタル兵長は祖父が参戦したケースだ。第7空軍303情報大隊のセンテノ・サンドラ上等兵は叔父が韓国戦争に参加したという。>

 <韓米連合司令部のキム・ジェウル公報室長は24日「祖父や父など代を継いで韓国に勤める米軍将兵は、部隊の同僚よりも強い責任感を持って任務完遂に最善を尽くしている」とし「韓国軍も、彼らのためにさまざまな文化体験の機会を用意している」と説明した。>

◆東亜日報はいい記事を載せていた:拉致被害者んほ救出にかかわる韓国での新聞広告

 東亜日報は6月25日の日本語ネット版に少しユニークな<「韓日が手を取り合い、北朝鮮を変えよう」 日本民間グループが韓国紙に広告>という記事を掲載していた。

 <数人の日本人が北朝鮮の日本人拉致と北朝鮮人権問題解決を呼びかける全面意見広告を25日付の東亜日報と朝鮮日報、中央日報に掲載した。ジャーナリストや学者、音楽評論家ら7人で構成された「意見広告7人の会」による同広告は、韓国の国民に送る手紙形式で「平和で繁栄した東アジアの実現と拉致問題の解決を同時に進めたい。韓日の両国民が手を取り合い北朝鮮を真の民主主義国家に変えるために立ち上がろう」と呼びかけた。>

 <「7人の会」は1977年に13歳で拉致された横田めぐみさん、その翌年に拉致された田口八重子(北朝鮮名=李恩恵)さんの家族写真もともに掲載し「強制的に拘束し、愛する人と引き離し、悪事への加担を強要する拉致は、最も悲惨な人権侵害だ」とし「拉致被害者を一人残らず救出し、故郷で待つ家族と再会させなければならない」と主張した。>

 <「7人の会」は今年4月、米ニューヨーク・タイムズ紙に「北朝鮮という名の地獄をそのままにしておくのか」というタイトルで全面広告を出し「私たちは、バラク・オバマ大統領が北朝鮮の人権弾圧への解決に乗り出すことを要請する」と訴えた。>

 <広告費は寄付によるものだ。2月末に広告費のための募金を始めてからわずか10日で目標金額が集まり、関係者たちも驚いたという。ニューヨーク・タイムズ紙の意見広告が国際的な反響を呼ぶと、韓国の有力紙にも広告を出すことを決め、さらに寄付を募った。これまで約1700人から集めた約1720万円が広告を掲載する資金になった。>

 <「7人の会」のメンバーでジャーナリストの有田芳生氏は24日「特に今年、日本政府が景気回復のため、国民に支給した1万2000円の定額給付金が大きな力になった」と話した。そして「北朝鮮の日本人拉致と人権問題解決に向け日本人として行動せざるをえなかった。日本だけでなく韓国の問題でもある」として韓国の国民の賛同を呼びかけた。>
 <「7人の会」は、02年9月の小泉純一郎首相(当時)の平壌(ピョンヤン)訪問直後、5人の拉致被害者が日本に帰国したことを機に、同年11月に活動を始め、12月にはニューヨーク・タイムズ紙に拉致関連の初の意見広告を出した。今回の東亜日報の意見広告では、自らを「北朝鮮によって拉致された日本人の早期救出を目標とする民間グループ」だと明らかにした。>

 <「7人の会」は意見広告を通じ△国連をはじめとする国際機関や国際機構へ北朝鮮人権問題を訴える△北朝鮮への人道的支援などが人権改善に貢献するよう努力する△韓日両国が拉致と人権情報を共有する△拉致被害者と北朝鮮政治犯収容所の実態調査を実施する――ことを提案した。「7人の会」は、拉致問題解決に向けた国際世論の喚起のために、次はル・モンドなどの欧州国家の有力紙にも意見広告を出す案を検討中だ。>

 こういう記事もきちんと読みたい。日本の新聞で。

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2009年6月24日 (水)

ハル・ノートを唯唯諾諾受けて戦わず、今以上の経済敗戦を経験するより、戦って負けて良かった、と総括した江藤淳氏が没後10年だそうだ~SAPIO7月8日号特集から

 小学館の雑誌「SAPIO」の7月8日号の第2特集[歴史を振り返れば現代が見える]は<没後10年いま蘇る 江藤淳の「遺言」>。いろいろな人が書いていた。文芸評論家の富岡幸一郎氏の<もしも江藤淳が健在であれば現在の日本をどう批評しただろうか>にあるように江藤は平成11年(1999年)7月21日自殺した。没後10年だ。時代の精神も体現せず、個としての三島由紀夫は将来忘れられるだろうと思う。大江健三郎も逆の意味で、後世の人々に忘れられるだろう。しかし、江藤淳はアラウンド還暦の私が死んだ後も輝きを増すだろうと思う。なぜならば、本当の意味でのナショナリズムを自らの生き方で体現した男だからだ。

 そのナショナリズム、上質の、本物のナショナリズムは時代に受け入れられず、保守の論客と珍重されながらも、晩年は自らの主張とは全く逆の世相が深まり、日本のどうしようもなさを嘆きながら病魔に苦しみながら、自殺したのだろう。

 富岡の原稿には江藤の言葉が引用されていた。書き写そう。

 <人が死ぬ如く国も滅ぶのであり、何時でもそれは起こりうる。

 <人間は、言語以外によって、世界を把握することはできない。映像に意味を与えているのも言語であり、すべての現象を、我々は言語で区切って認識している。だから、言語、特に母国語の教育は重要なのだ。どういう言語の枠組みで何を見るかということがはっきり把握できていないと、初めから終わりまで二次元的な、ミミズがはっているような認識しかできない。だが、少なくとも三次元、時には四次元的な把握をしなければ、国家社会、あるいは国際社会のすべてをひっくるめた人類の将来など考えられない。

 <日米戦争を”世界最終戦”と規定したのが、稀代の戦略家石原莞爾のおかした最大の誤りだったと、私はこのごろ考えるようになった。それは”最終戦”ではなく、”持久戦”(中略)であり、消耗戦である。つまり、じつはそれは”終わりなき戦い”なのである。>

 遠藤浩一・拓殖大学教授の<「親米」に溺れず「反米」を煽らず江藤が説いた「他者としてのアメリカ」>には、1996年に橋本竜太郎首相とクリントン大統領による「日米安全保障共同宣言」が取り交わされた。冷戦終結を受けて、対ソ軍事同盟という意味合いが強かった日米安保をアジア・太平洋地区の脅威に対処する条約にする、という実質的な条約改定だった、として江藤が、

 <世界の中でもっともパワーバランスが流動化しているアジア・太平洋地域において、その流動的な情勢にクサビを撃ち込んだところに、この再認識の重要性がある。>

 としたうえで、しかし、それは、

 <北朝鮮からミサイルが飛んでこようが、中国が新たに開発したミサイルを能登沖に落とそうが、こうした核の脅威に対しては米軍が対応するということである。それは、いいかえれば、日本は今回の再認識において日本の安全をアメリカの核能力に託し続けるという選択をしたことになる。

 と13年前に早くも日本の安全保障の致命的欠点をぐさりと指摘していた、とある。今書かれたと言われたら信じてしまいそうだ。

 杉原志啓・学習院女子大学講師の<無謀と知りつつ起たねばならぬ「戦」があるー―西郷隆盛を通して訴えた立国の源泉たる「精神気魄」>も面白い論考だったが、この中でも江藤の言葉が出てくる。

 <ハル・ノートを、あのまま受け入れていれば戦争をしなくてすんだでしょう。しかし、受け入れていても、戦争をして全部敗けたと同じ結果になるだけです。戦争をしておいたために、まだ日本はもっているのです。そのことを絶対忘れてはいけない。

 敗戦必至の戦いに突き進んだ西郷について、

 <人間には、最初から「無謀」とわかっていても、やはりやらなければならぬことがあるからである。>

 そして、江藤は今や日本は内側から崩れていくようだ、として、

 <(その)崩壊と頽落を、死を賭してそれを防ごうとした者どもがいたという事実そのものによって、国の崩壊を喰い止めなければならない。何故なら、このようにして死んでいった人々の記憶は、かならず後世に残るからである。死者たちの記憶を留めた後世が、何らの記憶すら持たぬ後世とは違うことはいうまでもない。ならば後世の記憶となるために死のう。

 江藤は西郷が「今、国を守らなければ必ず国は滅びる」という精神気魄ゆえに戦に踏み切った、と書いている、というのが杉原氏の解釈である。江藤は大東亜戦争でまたまた爆発したこの「曲譜」を今の日本人が忘れ去っていること、いやむしろ、必死に忘れたがり、目をそむけようとしていることに怒る

 <国民の気概、国、国民は一体何を求めて生きるのか――という根本的な問いを忘れて久しい。経済は悪いが、国民みんなが小金持ちになり、全部寄せると千兆以上の資産がある。だが、精神はゼロ以下になった。これが国なのか、という根本的問題に直面している。

 つまり、ひたすら無事安寧を希う「精神はゼロ以下」の日本。「戦」の文字すら恐れ、忌避する日本。国がらみの人さらいにあってさえ、手も足も出さぬ、の日本。亡き坂本多加雄氏も「遺憾ながらこの人間の世には暴力をもってしか解決できない事柄がある。ところが戦後の日本人は、そうした『』非常の変』=『戦』への構えからして『ゼロ』なのだ」というのだ。

 そして、江藤が昭和53年(1988年)から文芸時評をやめ、占領軍による言論弾圧の研究に入る。これが江藤の歴史に残る仕事なのだと思う。巧妙に仕組まれたGHQの検閲。検閲されていたことすら知らずに、僕らは少年時代を過ごしたのだ。富岡氏が引き続き書いている。長いタイトルは<言語を奪い、文化を殲滅し、歴史を改竄した占領期の「閉ざされた言語空間」が今もこの国を支配している>である。

 富岡氏は「江藤淳が挑んだのは米国の占領政策の実態を改めて白日のもとに晒すことで戦後史を民主化の歴史として見るようなイデオロギーが徹底して偽物であり、日本人の自己欺瞞であることを暴き出すことであった」として、江藤氏の、

 <なぜ”戦後史”は”敗戦史”であってはいけないのか? そしてそれが敗戦史であれば、この歴史は、獲得したものの歴史というよりはむしろ喪失の歴史であり、建設の歴史というよりはむしろ崩壊の歴史としてとらえたほうが、一層正確な実像を表すのではないだろうか。

 戦後史を「喪失の歴史」「崩壊の歴史」として捉え直す時、初めて見えてくるものがある、それは戦後史がタブーとしてきた現実を明らかにすることだった、と富岡氏は書く。

 江藤氏の言葉のデフォルメだろうか。富岡氏は、

 「この『喪失の歴史』を日本人は直視せずに「『民主主義』と『自由』と『平和』という空虚な観念によってごまかし続けてきた。経済的繁栄という物質の虚構によって自らを欺き『戦後』体制によって利益を得てきた国内の様々な勢力は、このタブーをタブーとして意識化し自覚することを、あらゆる手段を講じて阻止してきた。政治・教育・文化等のあらゆる分野にわたる”戦後利得者”たちは『日本』が『日本でない国』となろうが一向に構わない。そして、その『利得の構造』は米ソ対立という冷戦構造によって支えられていた

 と書いている。江藤氏の著作に入れてもおかしくない文章だろう。

 この続きのように江藤は言う。

 <今日の日本に、あるいは”平和”もあり、”民主主義”も”国民主権”もあるといっていいのかも知れない。しあし、今日の日本に”自由”は依然としてない。言語をして、国語をして、ただ自然の儘にあらしめ、息づかしめよ。このことが実現できない言語空間に”自由”はあり得ないからである。

 <日本の読者に対して私が望みたいことは、次の一事を措いてほかにない。即ち人が言葉によって考えるほかない以上、人は自らの思惟を拘束し、条件づけている言語空間の真の性質を知ることなしには、到底自由にものを考えることができない、という、至極簡明な原則がそれである。

 これらの言葉は「閉ざされた言語空間」の中の言葉だ。

 「閉ざされた言語空間」は1989年文芸春秋刊。文春文庫になったが、品切れ中らしい。ちくま学芸文庫の「江藤淳コレクション1」には全文ではなく、抄録が載っているそうだ。

 昔の昔「1946年憲法ー―その拘束」は読んだと思うのだが、覚えていない。1980年文芸春秋刊だが、私は文春文庫版で読んだ。当時はあまり、そういう問題意識がなく、面白くなかったことを覚えている。

 江藤淳しの言葉は過激に聞こえても、それがナショナリズムだ。ナショナリズムを怖がりすぎるため、ナショナリズムを押さえつけすぎると、噴火した際のマグマはものすごく大きくなるのではないか。江藤の言う通り、日本は年々悪くなっていくようだ。末法の世の中がやってきたのか。

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西岡省二特派員の「北朝鮮と政府間交渉をせよ」は間違いだ~毎日新聞6月24日朝刊[記者の目]

 毎日新聞6月24日朝刊は3面[クローズアップ]とオピニオン面[記者の目]で中国総局の西岡省二特派員が大活躍、長い記事を書いていた。3面の記事は今までの事象のまとめと予測なので、こんなものなのかなぁ、と思うのだが、違和感があったのが[記者の目]だった。西岡特派員は「何しろ北朝鮮と政府交渉するのが第一だ」と言っているようにみえるのだが、今、日本が何の準備もせずに北朝鮮と政府間交渉をして、得るものがあるのだろうか? 私は外交交渉には確固とした軍事力の裏付けがあってはじめて相手を圧倒できると思っている。別に日本自体でものすごい軍備を整えろ、というのではなく、在日米軍を含めた日本の防衛力が日本政府の意思で動かせる、という「怖さ」を北朝鮮に味わわせないと、現実主義者の北朝鮮指導者は動かないと思う。それに、前回の小泉訪朝のドタバタ劇については当然相当に取材しているだろうから、言わずもがなだが、米国への通告遅れ、なおかつ通告後に米国からウラン濃縮を行っている疑惑がある、という極秘情報を受け取ったにもかかわらず、訪朝を強行し、拉致被害者数人は帰ったものの、その後の日朝の不信の原因を作ってしまった苦い経験がある。

 もしも、今度日本が政府として動くときには米国に韓国を加えた同盟国と細密に打ち合わせを行い、できれば極東に配備している米国の核兵器の発射ボタンの共同管理権を手にするくらいのドスを胸にして訪朝するのでなければ、効果はないだろう。

 つまり、滅多矢鱈に訪朝すればいい、というものではないし、こういう時こそ冷静に韓国と協議し、李明博大統領を立てて交渉させるとかの裏の手をつかうとか、日本による航空母艦、爆撃機保有を米国に認めさせるとかの思い切った方針転換で北朝鮮を驚かせてから出ないと意味がない以上に、お土産だけ要求されることになると思う。

 まあ、文句はこのくらいにして、西岡氏の[記者の目]を読んでみよう。見出しは<指導者に対北朝鮮積極外交を望む/平壌で新たな共同宣言を/世論の一致団結も必要>である。

http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20090624k0000m070141000c.html

 <「北朝鮮」と聞いて、我々は核兵器開発の軍拡路線、日本人拉致などの国家犯罪を思い浮かべる。憶測が飛び交う中、国営放送が攻撃的な調子で日本をののしる。人々は「不気味な独裁国家の暴走」に強い不安と嫌悪を抱く。最後は「ならず者国家にカネを払い国交を結んで何が国益か」との結論に傾く。原因の大半は、危機感を高めて隣国を揺さぶる北朝鮮側にある。だが我々の側も、憶測に引きずられ、過剰な警戒心を抱いていないか。>

 と、書き出しから喧嘩両成敗論である。

 <最高指導者・金正日総書記の後継者は三男正雲氏でほぼ固まったようだ。ただ後継問題も含め北朝鮮の核心に迫る情報は限られ、そこにたどり着くのは容易ではない。金総書記の重病説が急浮上した昨年9月、韓国の報道機関が政府高官発言を伝えた。「自力で歯を磨ける健康状態」。この発言をどう受け止めるべきか、随分悩んだ。「総書記は驚異の回復をみせている」「情報は真実で、平壌の韓国側協力者は既に消された」「単なる推測」。専門家が読み解いてみせたが、真相は今もって不明だ。北京で北朝鮮取材を担当して4年が過ぎた。中国入りする北朝鮮の政府関係者や経済人らから情報収集する。北朝鮮の官製報道を読み込み、他国の見方と突き合わせる。時に、信頼できる二つの取材源から正反対の情報が出る。>

 北京で北朝鮮情報を取る、という作業の難しさは想像を絶するのだろう。

 <閉鎖国家・北朝鮮の核心情報は外交活動上の要請で伏せられる。核・ミサイル・拉致・麻薬・偽札絡みの未確認情報が錯綜するが、日本政府は真偽の判断を明かせない。そして憶測が独り歩きする。>

 日本の情報判別能力が弱いから、日本政府はオロオロするだけで、何もできていないじゃないか、という憤りが感じられる。

 <改めて、北朝鮮情勢をどう理解するか考えてみたい。北朝鮮にも家族だんらんがある。おやつをめぐる兄弟げんかもある。北東アジアの地図を逆さにして「わが国を左側から圧迫する日本こそ脅威だ」と訴える人もいる。すべてが脅威なのではない。>

 「脅威」をどうとらえるか、だろうが、少なくとも、こういう情緒的なものの見方は誤りだ。これは韓国の金大中元大統領一派の言い分だ。つまり、太陽政策=北朝鮮宥和派の言い分と同じになる。

 <異なるのは国の仕組みと価値観なのだ。金総書記に権力が集中し、高級幹部さえ自由に意見を言えない。人々は「総書記への忠誠の証しとなるか」を尺度に行動する。違法行為も、国を守ることを理由に正当化されると聞く。つまり、個人の感情は理解できても国の意思が読めない。そこに憶測が入り込み、疑心暗鬼になる。私もそうだ。すべては北朝鮮の実像に迫ることから始まると思う。>

 国の意思が読めないのは米国も中国も同じだろうが、日本が1回訪朝したからって、中国以上に北朝鮮権力層の意思が分かるわけがない、と思う。情報収集にもカネをかけず、スパイ防止法もなく、今や朝鮮総連に入り込んでいる政府のスパイからの情報だって、朝鮮総連自体が北朝鮮から軽んじられているので、やせ細っているはずだ。

 <そこで、日本の指導者にお願いしたい。蛮勇をふるって再び平壌に行ってほしい。金総書記に会い、核開発や拉致問題の真意をただしてほしい。総書記の動作や肉声がありのまま伝えられれば、重病説や暴走論の検証もできる。その際に日朝平壌宣言を補完する新たな共同宣言を目指すのはどうか。交渉を仕切り直し、日朝間に漂う重苦しくよどんだ空気を入れ替える必要がある。「対話と圧力」でも、圧力先行型の外交一辺倒では展望を見いだせない。>

 「何を理想論を」と言われることは覚悟して書いているのだろうし、そうは言わない。だが、問題は錯綜しているのだ。

 <確かに道のりは険しい。北朝鮮側が途方もない見返りを要求するだろう。多くの政治家は日朝交渉の壮絶な歴史の前に足踏みするだろう。だからこそ、一致団結した世論の後押しが必要だ。国民が「外交で世界に貢献する日本」という理想をはっきり描いて政治を動かし、過酷な水面下の折衝に臨む外交官に力を与えるのだ。拉致問題の解決にとっても不可欠だと思う。>

 具体性のない、展望の描けない提言を書いたからには、記事にしなかった部分を相当に持っているのかもしれない。中国の要人が日本政府の行動を期待しているのだろうか? それはない、と思う。

 問題は日本の安全保障なのだから。中国にしても米国にしても、なおかつ付け加えれば韓国にしても北朝鮮の核武装はそんなに怖くはない。核弾頭の照準はきっと日本に向いている、と思っているからだ。日本はそうはいかない。北朝鮮が核ノドンを持つ前に何とかしないと、将来、日本は金大中政権、盧武鉉政権時の韓国同様、北朝鮮の将軍様の鼻息を覗って暮らすような植民地国家になってしまう恐れがあるのだ。その危機感が国民に共有されていないことが問題なので、あと何を共有しろと言うのだろうか?

 <1997年春、拉致被害者家族会の発足前に、横田めぐみさんの父滋さん(76)からこんな言葉を幾度も聞いた。「子を救うのは親の義務で、費用も当然親が負担する」。滋さんは自力で北朝鮮に立ち向かおうとしていた。しかし、この話を伝えたある外務省関係者は「国際情勢が動いてこそ解決に乗り出せる」と言い、思考を止めた。この無責任な論理は今も時々耳にする。国際社会の目は非常に厳しい。北朝鮮の核問題を協議する6カ国協議参加国の外交官の多くが口癖のように話す。「日本はカネやモノの力で北朝鮮を取り込み、それを影響力に変えるべきだ。米国や中国、韓国に対する発言力も相対的に高められる」。拉致問題で進展がないのを理由に北朝鮮支援に応じない日本への不満が背景にある。無論、日本の資金力だけをあてにしたご都合主義には賛同できない。だが、隣国をめぐる危機なのに、主体的に動けない日本の現状を憂える声は重く受け止めるべきだ。>

 主体的に動くな、というのではない。動く時には動くなりの準備が必要だ、ということだ。北朝鮮と交渉するということは、談判決裂で戦争も辞せず、という強い決意が必要なのだ。そういう決意をするかしないか、で実際に戦争になることはほぼないにしても、外交交渉は大きく変わる。相手が日本に一目置くようになるのだ。

 <オバマ米政権が北朝鮮に対するテロ支援国家再指定を示唆する一方、北朝鮮は米国人記者2人に労働教化12年の判決を下した。6カ国協議がこう着する中、核・ミサイル実験を続ける北朝鮮の扱いに世界が苦慮している。北朝鮮を遠巻きにして「中国に期待」と繰り返すようでは、国際社会での日本の存在感はどんどん薄れてしまう。今こそ、日本は積極外交に乗り出し、北朝鮮を国際社会に引っ張り出すべきだ。>

 「中国に期待」といい続けるべきだと思う。ただ、いい続けながら、日本が独自行動を起こせるような基礎を着々と築いていくべきなのだ。それは米オバマ政権と「日本が核兵器を持つことも許容してほしい」という交渉(そう言ったからといって、実際に核武装するかどうかは後の判断だ)、韓国が整備しようとしているミサイル発射基地攻撃用のバンカーバスター弾購入と配備(憲法で許されている敵基地攻撃の具体化として、まず予算をつけることから始めないといけない)、韓国との安全保障上の共同訓練実施のための法整備(内閣法制局が集団的自衛権は認めない、とするなかでどのように違憲問題をクリアするかの論理構築)、日本海にイージス護衛艦だけでなく、艦上戦闘機、攻撃機を積める航空母艦の建造、配備などである。

 こうした「普通の国」、「馬鹿にされない国」の基礎を作りながら、北朝鮮との交渉の時期を探り、いざとなれば、事前にじっくりと米韓両国と首脳レベルで打ち合わせをして、不測の事態が発生した場合の対処法を決めて、それからようやく日朝交渉に赴く、という手順だろう。

 ただ、「政府が行けばいい」という軽い気持ちでの訪朝ほど危険なものはない。西岡氏の猛省を促したい。

 また、西岡氏は言外に北朝鮮王朝が当主交代のざわめきを鎮め、国内対策で核を持とうとしている、と取られかねない記事を書いているが、それも間違いだと思う。米研究者らの最近の分析のように、北朝鮮は一貫して核保有国を目指してきた。三男が即位しようが長男だろうが、核ノドンを持った暴虐国家北朝鮮が日本の隣に現れるのは間違いなく、それは時間の問題なのだ。

 あまり三男に期待しないほうがいい。

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韓国軍が核爆弾の際の電磁パルス防御装置とバンカーバスターを備える!:北朝鮮の核攻撃に備え~朝鮮日報6月24日

 朝鮮日報は6月24日の日本語版ネットHPに<韓国軍、北朝鮮の核攻撃に備え戦力強化>という崔慶韻記者の記事を掲載した。内容は以下の通り。

 <韓国軍当局は北朝鮮の核攻撃に備え、核爆発時に発生する「電磁パルス」の防護システムを来年から主要国家戦略施設に導入する方針だということが23日分かった。>

 日本はこのくらいはやっているのかなぁ? やってないだろうな。やっていれば、予算編成の際に重箱の隅をつつく記者が大きい見出しで批判的に書いているだろうから。

 <軍当局はまた、北朝鮮の核の挑発行為を事前に感知できる偵察戦力を強化するため、グローバルホークなど長距離高高度無人偵察航空機(UAV)を日程を早め来年から導入する。また、白頭(通信傍受)偵察機導入事業にも100億ウォン(約7億3800万円)余りを追加投入するなど、核対応戦力レベルを一層高める方針だ。地中30㍍まで貫通し、北朝鮮の地下核施設や指揮施設を攻撃するのに威力を発揮する地下施設破壊爆弾GBU-28(別名バンカーバスター)事業にも640億ウォン(約47億2000万円)を投入、当初2014年までに導入する予定だったものを4年前倒しして、来年までに導入を終えることにした。>

 何? 韓国軍もバンカーバスターを配備するのか!

 <国防部は同日、ハンナラ党「北朝鮮核・挑発対策特別委員会」の第4回会議でこのような内容の北朝鮮核対応戦力強化策を報告した、と複数の特別委関係者が語った。国防部は同会議で、北朝鮮による2回目の核実験やミサイル発射など、核の挑発水位が高まった最近の危機状況を考慮して、大統領府など主要国家戦略施設に電磁パルス被害を防ぐための防護施設を設置することに決め、施設設置予算60億ウォン(約4億4200万円)を来年度予算に反映させる方針だと報告した。電磁パルスは核爆発時に発生し、マイクロチップや半導体、回路網などあらゆる電子機器を破壊し、戦力を無力化させる。>

 どう見ても必要な機器だろう。日本は中央指揮所だけは核攻撃に耐えうるというのだが、中央指揮所だけ残っても仕方ないだろう。

 <国防部はまた、当初2011年から導入する予定だったグローバルホークなど高高度UAV導入事業も来年から着手することに決め、来年度予算に80億ウォン(約5億9000万円)を割り当てる方針だという。国防部は現在導入されている金剛(映像)・白頭偵察機の運用について、来年度予算に100億ウォン余りを追加で投入、白頭山圏域まで音声信号を傍受できる白頭偵察機の装備を補強する方針だろいうことが分かった。>

 このくらいのカネで買えるのか、知らなかった。戦闘機などに比べれば安いものだ。

 <さらに、弾道誘導弾早期警報レーダー事業に2695億ウォン(約199億円)、衛星利用測位システム(GPS)誘導爆弾(JDAM)事業に841億ウォン(約62億円)、レーザー誘導爆弾(GBU-24)事業に712億ウォン(約52億円)をそれぞれ投入する計画だという。>

 この危機で韓国の防空能力は格段の充実が期待できそうだ。

 <ハンナラ党特別委員会の関係者は「核挑発に関連した兵器体系まで含めれば、韓国軍当局の北朝鮮核対応戦力強化予算は総額2兆ウォン(約1470億円)規模になる見込みだ。監視・偵察能力や防護施設拡充のほかにも中距離弾道ミサイルの導入規模を拡大、時期を早めるなど、打撃能力強化も軍当局が推進している」と述べた。>

 1500億円でできる、というのだ。日本の効き目のないMDよりかずっと効果的なのではないか? こういう議論を国会でもどんどんやるべきだと思うのだが、なぜできないのだろう?

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2009年6月22日 (月)

伊藤元重氏の「農業と環境を分けて考えろ」は間違いだと思う~産経新聞6月22日[正論]

 政府の諮問機関などで活躍する経済学者が日本の農業の未来をどう考えているのか、かねて興味があったのだが、産経新聞6月22日朝刊[正論]で東京大学大学院教授・伊藤元重氏が<歪んだ農業政策を軌道に戻せ>のタイトルで農業問題を論じていたので、読んでみた。小見出しは≪食糧不足と矛盾する減反≫、≪すべての政策で目的が曖昧≫、≪「環境」を言い訳にするな≫だった。

 <日本の食料政策の現状を見ると、何を目標として政策を行っているか分からなくなるものが少なくない。たとえば、減反政策などその典型的なものだろう。減反政策をやめれば米の生産が増えてしまう。それでは米の価格が大幅に下がり、米農家の収入が大打撃を受ける。だから、減反や転作を奨励して、米の生産を抑制するという。しかし、日本の食料自給率は下がり続けている。世界的にも人口増加などによって食料供給の不安がある。なぜ無理やり米の生産を制限しなければいけないのか。減反政策は食糧不足とはまったく矛盾する政策であるのだ。>

 全くそうだ。そこが最大の矛盾だと思う。

 <減反政策を行っている本当の理由は、米を生産している農家を保護するためだと考える方が自然だ。しかし、なぜ米の生産者だけ、特別に保護しなくてはいけないのだろうか。日本の文化にもかかわる食の中心にあるのが米だからだろうか。それとも、兼業農家の片手間にできるという意味で米は作業が簡単な作物であり、兼業農家の票を確保するための政治的な意図があるのか。いずれにしろ、食料の自給率とはあまり関係がなさそうだ。米の生産で自給率を少しでも上げようというのであれば、減反政策をやめて米の生産を拡大させればよい。米の価格が下がることで、規模の大きな米農家に生産を集中させる方が、国内生産強化にはよっぽど効果的であるように思える。>

 大規模化ですか。農水省のこれまでの方針通りですね。

 どうも、ここだけ読むと伊藤氏の論理は粗雑に見えるのだが、どうだろうか。というのは、兼業農家問題ではなく、食管法が廃止された後も存在意義をなくしたはずの農協が跋扈しているのが最大の問題で、兼業農家は時間がなく、農協に全面依存するのが問題なので、農協が農機具のローン販売などの商売のいいお得意さんにしているのも兼業農家なので、農協をなくせば、兼業農家は困って、農業をやめる可能性は十分ある、と思うのだが。

 <問題は、かなり多くの国民が、何となく減反政策が米農家を守り、それが長期的には日本の食料の自給率を上げることにつながると勘違いしていることである。日本の食料自給率が下がっていることが国民の食糧問題への関心を高めている。それは結構なことだ。しかし、そこからいきなり現在の米政策を正当化することにはつながらないはずだ。>

 減反政策の検証がされていないことが問題だ、と。それは正しいと思う。

 <畜産政策にも似たようなところがある。いくら日本で牛や豚を育てても、その餌がすべてトウモロコシなどの輸入飼料であれば、カロリー自給率はゼロである。輸入の餌で育った牛や豚は国内のカロリー自給に貢献していないからだ。カロリー自給率を上げるためには、国内の畜産を保護するより、まず国内での穀物生産を高めることから始めなくてはいけない。>

 ここで話は飛び、カロリー自給率などという言葉が出てくるのだが、飼料問題では穀物自給率こそ問題にすべきではないか。カロリーベースの食糧自給率が40%なのに、穀物自給率は28%だそうだ。

 <通商政策の世界に、「関税傾斜(タリフ・エスカレーション)」という用語がある。穀物のような原料や飼料の関税は低くし、肉や乳製品のような下流の産物への関税を高くすることを指している。木材の関税率を低くし、合板や家具の関税率を高くするのも関税傾斜である。こうした関税傾斜が行われているのは、下流にある畜産業や木材加工業者を保護するためである。飼料穀物が安く入ってきて、肉や乳製品の輸入に高い関税がかかっていれば、国内生産者は助かる。しかし、こうした政策はカロリーベースの自給率を大幅に下げる結果につながっているのだ。木材のケースでも、加工業者を保護する関税傾斜が、結果的に日本の森林や山を荒れさせる結果になっている。何のための関税政策であるのかもう一度よく考えてみる必要がある。>

 今度は山林ですか。経済学者は一般化が好きだから、このように話が飛んでしまって、分かりにくい。

 <食料政策だけではなく、すべての政策がそうであるが、そもそも政策の目的は何であるのか明確にしなくてはいけない。政策の目的がいくつもあるのなら、優先順位をつける必要がある。日本の食料政策についても、目的とその優先順位の明確化が必要だ。>

 日本の農業政策の目的がはっきりしていないことは事実だと思う。

 <食料政策のもっとも重要な目的は、国民の食料を確保すること以外には考えられない。農業者の保護なども食料政策の目的の中に入れてもよいが、食料確保の方がはるかに重要な政策目標であるはずだ。上で米の減反や畜産関税の例で述べたように、食料確保を政策の最重要課題としておけば、日本の食料・農業政策は現在の政策とは大きく違ってくるのではないだろうか。ちなみに、国民一人あたりの耕地面積の大きさを考えれば、日本の食料をすべて国内生産で賄うことは難しい。海外との貿易関係を円滑に進め、海外の生産を支援することも、食料確保の重要な手段であるのだ。>

 それはそうだが。そのような一転突破全面展開主義では解決しないと思う。農業はよく言われるように国土保全機能も持ち、農家政策も大事だし、もちろん食糧自給問題はなおざりにできない。

 <農業政策でよく出てくる重要な政策目標に環境保全がある。これは重要な政策目標であるが、今の日本の農業政策が有効に機能しているかどうかも精査する必要がある。ちなみに経済学に重要な定理がある。ある政策目標を実現するために、複数の手段があったら、どの政策手段を採用すべきか、という点に関するものだ。その答えは簡単で、政策目標にもっとも直接的に働きかける政策手法を用いるべきであるというものだ。>

 ほらね、竹中平蔵氏のような論理展開が始まる。狐につままれないように読んでいこう。

 <森林整備や水管理など、環境維持は重要な政策目標である。だからこそ、その実現のためには、農業政策という間接的な政策手段に過度に頼るのではなく、より直接的な環境保全政策を活用した方が、政策コストが少なくて済む、というのが経済学の教科書で教える原理である。環境問題対応を、歪んだ農業政策の言い訳にしてはいけない。>

 環境は環境、農業は農業、分けて考えろ、というらしい。しかし、それは違う。山は木がなければ水を吸い込まない。山の地下を通った水はミネラルを含み、わき水として農地に引き入れられ、農業用水になり、米の味を調える。雨水をためたため池の水で作った米が美味しくないのはミネラルが不十分だから、ということらしい。

 水田の環境問題というよりか、国土保全機能を分けて考えるのではなく、トータルに政策をつくることが要求されていると思う。

 伊藤氏の考え方は間違いだと思う。

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2009年6月21日 (日)

民主党の外交、やっぱり危ないのかなぁ?~産経新聞6月21日までの連載[危うい「友愛」外交]を読んで

 産経新聞の大型1面企画[危うい「友愛」外交]の連載が6月21日、第6回で終わった。この機会に過去の記事も読みながら、感想を述べてみたい。1回目の最後に前文、「友愛を掲げる鳩山由紀夫代表率いる民主党の外交安保政策を検証する」が付いていた。本文は敬称略で、連載担当者は有元隆志、高畑昭男、湯浅博、中静敬一郎、石井聡、内藤泰朗の各記者だそうだ。
■第1回 <米大物が警告した民主の「反米3点セット」>
 <「民主党が掲げる政策を一度にぶつけたら、米議会や政府は反米とみなすかもしれない。皆さんは注意されたほうがいい」。静かな室内に「反米」という言葉が非常ベルのように響きわたった。昨年12月19日朝、東京都心の帝国ホテルの一室で開かれた民主党幹部と米知日派の国防・安全保障専門家の懇談でのことだ。民主党側の出席者は鳩山由紀夫幹事長(当時、以下同)、菅直人代表代行に岡田克也、前原誠司両副代表を加えた4人。米側は民主党系のジョセフ・ナイ元国防次官補、ジョン・ハムレ米戦略国際問題研究所長(元国防副長官)の大物2人に、ブッシュ前共和党政権で対日政策を担当したマイケル・グリーン前国家安全保障会議アジア上級部長、ジム・ケリー元国務次官補も加わった。>
 衝撃的な場面から始まるのは最近の新聞連載の手である。
◆見えない将来像
 <鳩山、菅らの顔をみすえるように、「反米警告」の口火を切ったナイは、イエローカードの代わりに三つの具体的問題を挙げた。①海上自衛隊のインド洋給油支援活動の即時停止②日米地位協定の見直し③沖縄海兵隊グアム移転と普天間飛行場移設を柱とする在日米軍再編計画の白紙撤回――。いずれも民主党が最新政策集「政策INDEX2008」などを通じて政権公約に掲げてきたものだ。「反米とみなされないためには日米協力の全体像(トータル・パッケージ)を描いた上で個別の問題を論じたほうがよい」。出席者によるとナイはそう強調した。口調は穏やかでも、反米警告に込められた疑問は明白だった。それは民主党政権になった場合の日米同盟の将来像がさっぱり見えないということだ。菅らは「民主党政権になっても日本の外交安保政策の基軸は、日米関係だ」と説明し、約45分間の懇談は終わった。>
 昨年12月段階で米側が民主党に警告したのに、動きが鈍い、と。
◆傘からはみ出す
 <だが、それから半年たった今も、米側出席者の一人はこう語る。「民主党が日本の政権に就いて本当に大丈夫か」。この人はその後も鳩山、岡田らと会うたびに、オバマ政権が重視するアフガニスタン問題などで「日本はどんな貢献ができるのか」と水を向けた。だが、鳩山らの答えは「抽象的発言が多く、具体的に何をするかが見えてこなかった」という。同盟の将来が見えないばかりではない。民主党の政策構想には、同盟の土台を根底から崩しかねない危険すら見え隠れする。>
 段々と核心に迫る。
 <岡田は雑誌「世界」7月号で「米国の核の傘から半分はみ出す」と語り①米国に核先制不使用を宣言させる②非核国への核使用を違法とする合意形成③東北アジア非核地帯構想――を日本の主張とするように訴えている。>
 岡田氏のこの論文はまだ読んでいないのだが、読む必要がありそうだ。
 <日本は国家の安全と存立を保障する究極の抑止力について第二次大戦後、一貫して米国が提供する拡大抑止(核の傘)に依存してきた。これを政治、外交、軍事安全保障面でトータルに包み込んだものが日米安保条約体制(日米同盟)にほかならない。だが、北朝鮮の度重なる核実験によって北朝鮮や中国の核の脅威は確実に高まっている。北朝鮮が核・ミサイル実験を繰り返すたびに、クリントン国務長官らが「日本の安全は保障する」と強調するのも、核の傘の信頼を担保するためだ。日韓への核の傘の補強が求められているというのに、逆にその外へ向かうとは一体どういうことなのか。>
 本当ならば、よほど世間に疎いのか?
◆日米同盟崩壊も
 <「拡大抑止そのものが日米安保の軸だ。賛成なら日米安保を認めることになるが、反対なら独自に核武装するか、非武装中立の道しかない」。防衛専門家はこう指摘し、日米安保体制の土台が揺らぐと警告する。インド洋の給油活動を停止し、米軍再編を白紙撤回させ、地位協定も改訂した上に、核の傘から出ていこうとすれば、その先に何があるか。言えるのは日米同盟が確実に崩壊することだ。ナイが警告した「反米3点セット」を断行する本物の反米政権が生まれる日が近づいてきている。>
 産経新聞に脅されると逆らえない気がするから不思議だ。
◆都合いい「甘えの構造」
 <米側の心配は鳩山新政権が「村山富市モデル」となるのか、もしくは「盧武鉉モデル」なのかが見極められないことだ。社会党委員長だった村山富市は首相就任後の国会で、自衛隊を合憲と認め、日米安保体制を堅持すると表明した。これまでの自衛隊違憲や日米安保反対の立場を一転させ、日米同盟を日本外交の基軸とすることを受け入れた。一方、故盧武鉉韓国大統領は就任後、大衆迎合型の反米左派色を徐々に強めた。危機感を抱いた米国は在韓米軍再編などを通じ、米韓同盟挫折という事態にも備えて米軍戦略や部隊配置を微妙にシフトさせた。>
 盧武鉉モデルか。うふふ……。
◆見えぬ全体像
 <「反米」転換か、強化かが判然としない大きな理由は、民主党の外交・安保政策が「人の数ほど政策がばらばらで、どれが実行されるのかがわからない状態」(プリスタップ米国防大学上級研究員)にあるためだ。民主党の外交安保通の一人である前原誠司も「米国から見て、前原はわかる、長島(昭久)もわかる。岡田も知っている。だが、民主党が分からない」と全体像がみえにくい事情を認める。>
 前原氏もだらしないのだ。松下政経塾出身者が今、くすんでいるのが問題なのではないか。
 <その前原や長島は、米次期国務次官補に指名されたカート・キャンベルら同盟重視の知日派と親しい。彼らの描く同盟像は、鳩山や菅らの唱える日米安保論とは微妙に異なる。核の傘の意味も理解しており、岡田の「非核地帯構想」とは一線を画す。その前原、長島と岡田との違いに加えて、鳩山、菅の政策もまた違ってみえる。>
 キャンベルと親しい、グリーンと親しい、でやってきた日米外交のツケが今きているのではないか?
 <鳩山はかつて「常駐なき安保」を唱え、在日米軍の大半を日本国外に移駐させて、有事の時だけ来援させる構想を掲げた。菅も沖縄米軍基地の「国外への移転」を主張したことがある。外交評論家の岡本行夫はこうした考えに手厳しい。「お前の顔をみたくない、と奥さんを家から追い出して、『病気になったら看病に来い』と命じるようなものです」。そんな「いいとこ取りをしたら、日米間の信頼が失われてしまう」と強く警鐘を鳴らす。その一方、鳩山首相が誕生した場合のケーススタディーが民主党内でこう論議されている。「公約に従って、第一声はインド洋給油支援を即時停止する。続いて普天間移転を含む米軍再編計画を白紙撤回する」。次の内閣・防衛担当の浅尾慶一郎は5月末のテレビ番組で民主党政権での給油支援対応を問われ、即座に「退きます」と断言した。>
 着々と進むのはいいけれども、日本の安全保障をどう考えているのだろうか、民主党は。
 <米戦略国際問題研究所のニコラス・セーチェーニ日本部副部長は鳩山政権が給油支援停止と米軍再編の白紙撤回を表明した場合「日米は非常に不幸なことになる」と予言する。>
 不幸なこと、の意味だ。問題は。
◆日本見限る?
 <さらには日米地位協定や思いやり予算の問題もある。岡田は今月12日の記者会見で「戦後体制を引きずった基地の配置だけでなく、日米地位協定見直し、思いやり予算などさまざまな課題が日米間にある」と語った。地位協定や思いやり予算の抜本的見直しは民主党の重要公約の一つだ。だが、地位協定や思いやり予算の運用には長い歴史的経緯がある。北大西洋条約機構(NATO)や韓国などの同盟国とのかかわりもあるため、米当局者やマイケル・グリーンらの懸念は深刻だ。>
 そうだろう。
 <いくらマニフェストで「真の日米同盟」を訴えても、こうした文脈を考えれば米国側の反応がどうなるかは想像に難くない。ナイが指摘した給油支援、地位協定、米軍再編の「反米3点セット」は、日米同盟に対する民主党の真意を測る核心といっていい。米国のシンクタンクから日米関係を見ている辰巳由紀は、日本が民主党政権になった場合に最も心配なことは「米国からの自立を目指すという選択をすることが、何を意味するかを真剣に考えていないのではないか」と指摘する。>
 そうなのだ。深く考えていないことが問題なのだ。国会議員の人気取りの浅知恵でやっていいここと悪いことがある。
 <米国にはアジア太平洋を見渡して韓国、豪州、シンガポール、インドなど戦略的に提携を深めている国々が日本以外にもある。米国が日本を見限って他の同盟・協力国との関係強化で代替する可能性は確かに低いものの、だからといって「日米同盟がなくなるはずがない」とタカをくくって考えていたら、日本を見限って米中G2体制が浮上しかねない。辰巳の指摘は米国に対する「甘えの構造」そのものである。民主党の甘えとひとりよがりの安全保障政策によって、同盟が日本側から瓦解する恐れはかつてなく高い。>
◆民主党政策INDEX2008 外交防衛政策の抜粋(2008年10月)
 <[新時代の日米同盟の確立]▽日米両国の対等な相互信頼関係を築き、新時代の日米同盟を確立します。国際社会において、米国と役割を分担しながら、その責任を積極的に果たしていきます。▽日米地位協定の抜本的な改定に着手するとともに、米軍再編にかかる経費負担のあり方、思いやり予算など米軍関連予算の執行について不断の検証を行います。
 [新テロ特措法延長への対応]多国籍軍に対して海上自衛隊が行っている給油活動に関する総括やテロ対策の効果の検証もなく、説明責任を果たさないまま政府が制定を強行した新テロ特措法の延長に反対します。>
 以上が1回目だ。面白い導入部だった。これで材料を使い果たしていなければいいが。では第2回を見てみよう。
■第2回<「親米」笑顔 行動は逆さま>
 <2月17日夜、在日米大使館の隣にあるホテルオークラ内の会議室。来日したクリントン国務長官と会談した小沢一郎民主党代表(当時)は「親米」の笑顔を強調してみせた。「私は日米同盟が大事だと唱えてきた」と語り「同盟には対等なパートナーシップが必要だ」とも訴えた。この夜、米側は「小沢がプッツンしないか」とヒヤヒヤだった。クリントン長官は直前の麻生太郎首相との晩餐会が遅れて小沢に30分近く待ちぼうけを食わせたからだ。長官と差し向かいのテーブルには茶菓もなく、ペットボトルの水がそっけなく置かれていた。それでも小沢は「長官も選挙経験がおありだ。選挙のことはよくご存じでしょう」と大物政治家として持ち上げ、長官も「ええ、もちろんわかりますよ」とにこやかに応じた。同席した鳩山由紀夫も終わり際に「私はスタンフォード大学で学びました。同窓のチェルシーさん(長官の一人娘)によろしく」と英語で自己紹介して愛嬌をふりまいた。わずか30分とはいえ、小沢らと国務長官の初顔合わせは笑顔で終始した。しかし、その裏には実現までに数週間の「暗闘」が隠されていた。>
 ドラマがあったのか。まあ、あるだろうなぁ。
◆実現までに暗闘も
 <会談は当初、米側が打診した。初の外遊先に日本を選び「同盟重視」を打ち出したクリントン長官側は「参院第一党の指導部とも会いたい」といってきたのだ。しかし、事情通によると、小沢事務所の対応は「臨時代理大使名で要請書を書いて持参せよ」と外交儀礼上、あり得ないような回答だったという。長官の滞在は3日間しかなく、米側はいったん調整を断念した。ところが、これを知った鳩山や山岡賢次国対委員長らがあわてて「会談を受けたい」と逆に要請した。米側は「それなら要請を書面にしてください」としっぺ返しをした上で、やっと会談が実現したのだった。>
 小沢一郎氏らしいというか、何を考えているのだろう?
 <会談の雰囲気は確かに良好だった。にもかかわらず「親米」「同盟重視」の言葉とはうらはらに米側には大きな疑問が残った。長官側が探りたかった米軍再編や思いやり予算、地位協定問題、アフガニスタン支援など日米の具体的懸案には小沢をはじめとして誰ひとり答えようとしなかったからである。>
 面白い。
 <小沢が代表を退き、鳩山代表になっても民主党への疑問は解けていない。むしろ国会での同党の投票行動を見る限りは、小沢の言う「同盟が大事」とは明らかに逆方向を向いている。インド洋給油支援延長に反対、米軍再編に反対、普天間は県外移設を求め、海兵隊のグアム移転経費分担や思いやり予算も反対――。日本政府がこれまで積み重ねてきた同盟協力について、そのほとんどを否定する行動ばかりなのだ。>
 そうかぁ、民主党の投票行動をこう並べられると、何か幕末維新の攘夷派のようだな。
 <日米関係筋は「鳩山さんの友愛外交の中身がわからない」と首をかしげる。鳩山は2月、都内での講演で「日米同盟をよりよく機能させるために国連をうまく使う視点が大事だ」と語っている。>
 何かピントがずれている。
◆自衛隊縮小を寄稿
 <しかし、国連安保理の北朝鮮制裁決議の例をみてもわかるように、日米連携があって初めて国連の機能が強化されるようになったのが現実だ。国連を使えば日米同盟が機能するという順序では決してない。鳩山の論理は逆立ちしているといっていい。>
 そう思うよなぁ。
 <「米軍の存在は第7艦隊で十分」と語って論議となった小沢発言についても「第7艦隊の守備範囲は広く、年の半分は日本周辺にはいない状態だ。それでどうやって日本の安全を守れるのか」と不思議でならないという。「日本が米軍の代わりを務めるというなら歓迎だが、それにしては防衛力増強にも反対しているので、わけがわからない」(同筋)というのだ。小沢は10年前、文芸春秋に「自衛隊は歴史的使命を終えて、これから縮小することになる」との一文を寄稿している。>
 10年前の文藝春秋も必読文献に加えるか。
 <7月にはオバマ政権と中国が、安全保障と経済の2本立てで仕切り直した戦略対話を本格的にスタートさせる。北朝鮮、イランの核問題も緊張を高めている。内外の安全保障環境がこれまでと大きく変わる中、日米は来年、日米安保条約体制発足50年を迎える。日本は米軍再編やミサイル防衛協力など同盟の維持管理をしっかりと進めながら、同時に高いレベルで日米の世界戦略を練り直していかなければならない時だ。そうした節目に、曖昧模糊とした「友愛外交」で米国や世界に対する日本の責務を果たしていけるのか。民主党に対して、米側にも「政権をとれば多少は現実的政策に変質するのではないか」というかすかな願望がなくはない。だが、ある日米関係筋は「願望は政策になり得ない。それだけは確かだ」とぴしゃりと言った。>
 ぴしゃりですか。
◆外交・安保政策への民主党の投票行動
 <2009年4月 海賊対処法案の衆院通過に反対。7人が欠席か棄権
     4月 米海兵隊グアム移転の日米協定衆院承認に反対。参院否決
  2008年12月 新テロ対策特措法案を否決(参院)。衆院再可決反対
     4月 在日米軍駐留経費特別協定の衆院承認に反対。
          小沢一郎ら12人欠席。参院否決>
 以上が第2回だ。まだ面白い。
■第3回<消えぬ「有事駐留」幻想>
 <民主党の鳩山由紀夫代表が「友愛外交」を口にするたびに、堅くなった羊羹を出された気分になる(毎日3日付夕刊)という人がいた。友愛が祖父、鳩山一郎首相のキャッチコピーだったからだ。日ソ交渉や改憲論で知られる一郎はかつて、重光葵外相を通じ在日米軍の全面撤退を米国に打診したことがある。孫である由紀夫の持論は「常時駐留なき安保」で、かつ改憲論であるから一郎の主張と形の上ではそっくりだ。違いは同じ米軍撤退でも、一郎が独立志向の再軍備であるのに対して、由紀夫の外交姿勢は時に応じてぶれることだろう。>
 鳩山一郎と要求は同じでもその目指すところは全く逆だと。
 <鳩山は『文芸春秋』1996年11月号の論文「民主党 私の政権構想」で、虫の良い「常時駐留なき安保」を打ち出している。とたんに、米国のキャンベル国防次官補代理が飛んできて民主党本部で鳩山らに会い「紛争が起きた時の対応は二次的要素で、プレゼンスそのものが抑止になっている」と正面から批判した。>
 カート・キャンベル氏も忙しいなぁ、こんな連中と付き合うのだから。
◆姿消す戦闘部隊
 <仮に鳩山のいう「常時駐留なき安保」になると、駐留米軍の戦闘部隊が段階的にいなくなるから、対北朝鮮の抑止力はキャンベルの指摘のように消えうせる。北の弾道ミサイルを追跡する青森・車力の高性能レーダーが撤去され、ミサイルを迎撃する横須賀・第7艦隊のイージス艦8隻がハワイに撤退する。空軍は対北攻撃が可能な青森・三沢基地のF16戦闘機が米本土に戻る。中国軍をもにらむ沖縄・嘉手納基地のF22ステルス戦闘機も、普天間基地の海兵隊も何もかもがなくなる――。>
 どうするんだろう?
 <抑止力が外れると偶発戦争を引き起こしやすい。まして基地を失った米軍が、有事にだけ都合よく駆けつけて日本のために血を流してくれるのか。鳩山は1997年9月に訪米して理解を求めたが、米から「意味不明」と一蹴された。実際に、米軍がハワイや米本土から緊急に展開しても、ある防衛当局者は「現在の防衛体制では、米軍が駆けつける前に日本は壊滅する」と断言する。>
 お陀仏なのか。
 <当時の民主党は、検討の末にやむなく「常時駐留なき安保」を党の安全保障基本計画から削除した。しかし、鳩山はその後も「言葉は消えても、考え方は生きている」とぼかしている。いままた、「友愛外交」を具体的には語らずにあいまいなままだ。小沢一郎前代表も米軍駐留を「第7艦隊だけで十分だ」と、中国と北朝鮮が喜びそうなことを言った。岡田克也幹事長に至っては「まずアジア、次に日米同盟という順番だ」と明言する。これでは米国に疑心暗鬼が広がるのも無理はない。>
 何か、詳しいことを知らなかったが、産経新聞が書いている通りだったら、相当にやばいんじゃないか。
 <「同盟」とは国と国が力を補完しあって立場を強化する関係をいうから、岡田の「まずアジア」は本末転倒だろう。同盟よりもアジアの多国間機構を優先している。キッシンジャー元国務長官の言葉を借りれば、多国間機構の重視は2国間同盟の軽視につながる。>
 日米同盟を否定するには今の10倍以上の軍事費が必要になるんだが。
◆軍事大国の野望
 <鳩山や岡田が共感するアジアの隣人たちは概して腹黒いから、友愛外交なら御しやすいと判断するに違いない。最近の中国と台湾の関係の変化は、そうした友愛政治への警鐘である。米国防総省の2009年版「中国の軍事力」は馬英九政権の登場によって両岸関係の緊張が大幅に改善されたにもかかわらず、実は軍事力の増強が続いていることを指摘する。台湾正面では短距離ミサイルが年間100基以上のペースで増強され、すでに1000基が向けられている。いくら馬総統が中台の“友愛”を語っても、イザに備える軍事は別なのだ。>
 そういうことだ。国際的な常識が日本の常識になってない。
 <かつて前原誠司代表が訪中したさいにも、中国指導部は「靖国問題が最大の障害」といいながら「首相の靖国神社参拝反対」を明確にする前原を冷たくあしらった。前原が「中国脅威」の事実を主張していたからだ。それが、近年は胡錦涛主席のいう「平和的台頭」すら棚上げ状態である。東海艦隊の徐洪猛司令官は「中国は空母を必要としており、まもなく空母を保有することになる」(7日付AP)と軍事大国への野望を隠さない。>
 中国共産党は軍の台頭を押さえられないのだ。胡錦濤氏が引退後に軍で実権を握り続けたいから、強いことを言えないのだ。そこが最大の問題なのだ。
 <いま必要なのは日米同盟の立て直しである。日本が北のミサイル破壊命令を出した2日後、ゲーツ国防長官は「米国を標的にしない限り、迎撃する計画はない」と述べた。続いて、クリントン国務長官が「日本には領土を守るあらゆる権利がある」と突き放す。これらの発言は、日本が軍事的な脅威にさらされても米国は動かぬ場合があるということだ。日本は集団的自衛権を行使できず、米国に向かう北のミサイルを迎撃できないから文句もいえない。>
 クリントン長官の発言はそう解釈するのか?
 <この日米同盟の破れを放置する麻生政権もひどいが、鳩山、岡田ら民主党幹部もまた有事駐留論の幻想から完全に抜け出していない。かつて、日米安保反対を撤回した「村山富市モデル」に従って、ほどよく変節することを願う。>
 なるほど、ほどよく変節、という手があるのか? 何かスコラ派の議論を聞いているようだなぁ。
■第4回<現実的対応ができない>
 <3月14日、広島県の海上自衛隊呉基地には、アフリカ・ソマリア沖の海賊対処に向けて出港する護衛艦「さざなみ」「さみだれ」の2隻が陽光を浴び、きらきらと輝いていた。見送りに駆けつけた民主党衆院議員の長島昭久にとって、その光景はいささかまぶしかった。長島は欧州とアジアを結ぶシーレーン(海上交通路)の安全確保が日本にとって死活的に重要であり、そのためには海自艦艇のエスコートが効果ありと訴えていた。しかし、その思いは民主党とは共有されていなかった。>
 民主党でも意見は様々だから。
 <自衛隊法82条の海上警備行動による出港に対し、当時幹事長の鳩山由紀夫は前日の記者会見で「なぜ今、新法のない状態で見切り出航するのか」と語った。政調会長の直嶋正行も「国民の審判を経た新しい政権下で法整備するのが筋」との談話を発表した。反対とは言わなかったものの、容認とは一線を画していた。たった1人の見送りを覚悟していた長島だったが、行事には比例中国選出の衆院議員、三谷光男と参院議員、藤谷光信の2人の民主党議員も姿を見せた。>
 何か変だなぁ。もしかすると死亡するかもしれない危険地帯に行く人たちをなぜ送らないのだろう?
 <麻生太郎首相があいさつに立ち「海賊行為は人類共通の敵」などと述べた。昨年10月の衆院テロ防止特別委員会で海賊対処をただし、首相の「検討」表明を引き出したのは長島だった。それから約5カ月。麻生の決意を聞きながら長島は「首相はどうしても実現したかったのだろうな」と思った。その反面、民主党の海賊対応は依然定まっていなかった。>
 麻生首相の決意を引き出したのが長島議員だったのか。
 <出港時の「帽振れ」に合わせ、民主党議員も手を振った。党内を代表したものであったならば、どれほど乗組員への励ましになっただろう。長島は重い足取りで帰途についた。結論がよくみえない。時間がかかる。現実的といえない。これが民主党の外交・安保政策の意思決定メカニズムの問題点といってよい。海賊問題でも浮き彫りになった。要因は左右両派からの「寄せ集め」部隊といえる生い立ちにある。国家観や憲法観が水と油のように違っているので、合意作りが困難なのだ。>
 水と油だ。
 <長島が海自派遣の必要性を訴えても、自衛隊の海外派遣そのものを認めたくない旧社会党出身者などは耳を貸そうとしない。「ソマリア沖の自衛隊派遣に反対です。法律を作ってもダメです」。1月の民主党大会で来賓の社民党党首の福島瑞穂がこうぶった。野党連立政権樹立を想定する民主党が連立相手の社民党などの意向を無視できないことを見透かしての発言だった。>
 福島氏がゴリゴリの反対派だとは分かっているのだが、それに同調する民主党は理解できない。
 <民主党は参院で過半数に達していない。国民新党や社民党と連携して初めて、院の意志を示せる。結局、党内の合意をとりつけ、野党と共闘するためには、政府・与党案に反対することが無難という構図が出来上がったのである。海賊対処の遅れも、政府・与党の対応待ちだったからだ。>
 参院のねじれだが、それは今の話。総選挙後に再編すればいいじゃないか、と思うのだが。
 <問題を複雑にしているのは前代表の小沢一郎だ。現場レベルで政策を決めても、鶴の一声でひっくり返されることがままあるからだ。小沢は一昨年、テロ対策特別措置法による海上自衛隊の給油支援を「憲法違反」と断じた。しかし、民主党からはそれまでそんな指摘はなかった。>
 何を考えているのか、よく分からないのだが、小沢氏がトップにいれば、すぐさま局面を転換して、米国ともうまくやっていけそうでもあるのだが、鳩山氏にはそれが期待できないところが痛い。
 <8年前の鳩山代表時代、民主党はテロ特措法での自衛隊派遣の事前承認が受け入れられなかったため、反対はしたが、自衛隊の活動に関する承認案件には賛成した経緯がある。突然の違憲論に対し、少なからぬ議員が耳を疑ったが、小沢本人にこれを明確にただすことはなかった。腫れ物に触るような扱いがいまも続いている。>
 腫れ物、吹き出物、ニキビ……。産経新聞もあんまりじゃないかな。
 <政権を担うとは、日本の国益や国民益を実現するために現実的な政策選択を迅速に行うことだ。さすがに、その能力は大丈夫なのかという危機感が党内に出てきている。>
 まあ、そうなのだが、問題はメディアなんだけど。
 <副代表の前原誠司は1月27日の常任幹事会で海賊対応に触れ「民主党として主体的な考えをまず決定すべきだ」と語った。超党派議連の会合でも、海自派遣の必要性に言及した。国民新党幹部は「海賊は本来、海上保安庁の仕事だ」と前原に抗議の電話を入れてきた。「海保の実態を勉強してほしい。海保自身が対応できないといっている」と突っぱねたものの、民主党が4月にまとめた海賊対処法案修正案は海賊対策の主体を海上保安庁としていた。>
 いろいろなところに顔を立てながら政策を作っているのか、民主党は。
 <内閣府が1月に行った全国世論調査では、全体の6割超がソマリア沖での海賊対策に前向きに取り組むべきだと回答した。海賊への現実的な対応を国民は求めているといえるが、民主党はそのメッセージの重大さに気付いていない。>
 民主党だけでなく、多くのマスメディアもまだ気付いていないのではないかな?
■第5回<説明なき「対等な日米」
 <「どういう人から話を聞けばよいか、具体名を挙げてください。ぜひ、その人から話を聞きたい」。5月16日、民主党代表に選ばれ新たな布陣をしいた鳩山由紀夫は副代表の前原誠司に会ってこう頼み込んだ。鳩山と前原の交流は民主党の源流といえるさきがけ、日本新党時代から始まり、15年になる。前原が民主党代表の時には鳩山は幹事長を務めた。前原は何人かを推薦した。「どうするかは代表が判断したでしょう」。前原はこう語り、鳩山が水面下でブレーンとともに政権移行の準備作業を進めていることに期待を寄せる。>
 鳩山氏と前原氏の距離はどの程度なのか?
 <鳩山から意見を求められている一人にジャーナリストの高野孟がいる。戦後、総評を結成し、事務局長として軍事基地反対や再軍備反対路線をとった故高野実の長男である。高野は13年前、鳩山由紀夫、菅直人らが結成した旧民主党の綱領にあたる「民主党の基本理念」という文書の筆をとった。それは「社会の根底に据えたい」ものとして「友愛」精神を説いていた。だが、旧新進党勢力との合流により新民主党が結成されてからは、理念よりも規模拡大が優先されたと感じ、距離を置いた。「自分はかつてのブレーン」という高野だが、鳩山からは昨年末、ソマリア沖の海賊への対応を求められた。高野は「海上保安庁を中心とした活動とすべきだ」と進言した。今年4月にまとまった民主党修正案はそれに沿っていた。>
 高野孟とは恐れ入った。反米人脈じゃないか。
 <高野は「政権交代」後の対応には柔軟さが必要と考えている。来年1月に期限が切れる新テロ対策特措法に基づく海上自衛隊による給油支援を重視すべきだという。「インド洋から直ちに退くのは難しい。もし退くなら、それに代わるどんな提案をするかだ」「日米同盟重視でも米国の言いなりにはならない。そこは民主党政権が絶対貫くべき姿勢だ」。「対等な関係」が「鳩山政権」の生命線になると認識している。>
 「言いなりにならない」と表で言うんじゃないよ、米国に聞かれちゃうだろ。そんなことより、もっとじっくりと自主防衛への転換を考えろ!
◆正三角形論に疑問
 <高野が「鳩山の有力ブレーン」に挙げる多摩大学学長、寺島実郎は「宇宙開発戦略本部」の専門委員会座長など政府の役職もこなしている。鳩山とは会食を兼ねた勉強会を重ねてきたという。寺島は自衛隊のイラク派遣を批判し、3年前の「世界」8月号に「米国の抑止力だけを頼りに中国、アジアと向き合うという認識は大きく時代潮流を踏み外しているといわざるをえない」と寄稿した。平成10年2月には参院国際問題調査会の参考人として出席し「日米中トライアングル論」などの持論を展開した。中国と米国にそれぞれ一定の距離をとるという論は、いわゆる日米中正三角形論に通ずる。>
 寺島実郎氏は尊敬する人物だが……。理想主義者過ぎるよ。
 <この正三角形論は自民党の加藤紘一が幹事長時代に「3国が友好関係にないとアジアは安定しない」趣旨で発言した。小沢一郎も3年前の民主党代表当時「日米中の関係は正三角形にすべきだ」と語った。しかし、日米関係にくわしい外交評論家は「日本のために血を流すことを法律で義務付けられている米国を、中国と同列に置くことができるのか」と正三角形論には強い疑問を投げかける。>
 当たり前だと思う。
◆あいまいな共同体
 <問題は鳩山が日米同盟を維持するというものの、日米の「対等な関係」の中味をあいまいにしたまま、中国などとの関係強化と多国間安保の枠組みを模索していることだ。この理念は鳩山ブレーンらも共有している。>
 曖昧さは戦術なのか、本当に今の段階では中身がないのか?
 <日米関係筋は「対等な関係というなら、空母の建造費や運営費を半分払ってくれるのか」と反問し「どういう風に対等にするのかを聞いたことがない」と首を傾げる。>
 米国にすれば首を傾げざるを得ないかもしれない。
 <今月5日、訪韓した鳩山は李明博大統領との会談で「日本は対外的に米国ばかりを向いている」としたうえで、東アジア共同体構想をぶちあげた。「必要なら米国まで視野に入れる」と付け加えたものの、大統領は直接答えなかった。鳩山は会談終了後の記者会見で「アジア太平洋共同体というほうがふさわしい」と言い換えたが、全体像が詰まっていないことをみせつけた。>
 李明博大統領は利口だから。
 <鳩山はかつてまとめた憲法改正試案に「主権の移譲」を明記した。自衛隊の指揮権を国際機構に委ねようという構想だ。13年前には文芸春秋に「友愛の精神」として「私は『地球市民としての自立と共生』にその答えを見いだしたいと思う」と著した。意味不明であいまいな部分は今もあまり変わっていないようにみえる。対等な日米関係で日本の安全がどう保たれるのか。具体的な説明がなければ、国民は安心できない。>
 米国が絶対しないことは自国の軍隊を他国の指揮官の下に入れることだ、という原則を覚えておいたほうがいい。
■第6回<ブレ目立つ「北方領土」>
 <東京都文京区音羽の一角に「音羽御殿」と呼ばれる故鳩山一郎元首相の瀟洒な洋館がある。その中庭に、一体の銅像が西の空を仰いで立っている。ロシアが贈った一郎の銅像である。2006年10月、モスクワで開かれた日ソ共同宣言50周年記念シンポジウムに出席した孫、由紀夫に対し議長のルシコフ・モスクワ市長は「日露関係を発展させた」として一郎の銅像寄贈を伝えた。当時、民主党幹事長の由紀夫は笑顔で「祖父の遺志を継いで、日露関係の発展に寄与したい。像は祖父邸において大事にしたい」と謝辞を述べた。作者は、柔道着姿のプーチン首相の銅像も手がけたロシア美術アカデミー総裁でもある彫刻家のズラブ・ツェリテリだ。終戦以来、断絶していた日本と旧ソ連の国交を回復する日ソ共同宣言に1956年調印した一郎に対するロシアの思い入れは強い。>
 銅像の話、知らなかった。
 <今年3月、政府系のロシア新聞がモスクワで開いた円卓会議で、ロシア21世紀委員会のイーゴリ・チトフ委員長はこう称賛した。「鳩山一郎は自由党、民主党の党首を務め、現与党の自民党の最初の総裁に就任したという世界でもおそらく類をみない驚くべき政治家だ」「彼は病身にもかかわらず、タイ、フィリピン、スイス経由で5日間もかけてモスクワに赴き、日露の国交回復に尽力した。彼が調印した日ソ共同宣言はいま、日露関係を発展させる原点となっている」。>
 ロシアが前向き、という話と「そうではない」という両方の話があって分からない。
◆鳩山一族への思い
 <森喜朗元首相とともに日露賢人会議の共同議長を務めたルシコフ市長の補佐官でもあるチトフは市長とともに「千島症候群」を著し、北方領土問題を2島返還で決着させると提言していた。そのチトフは発言をこう結んだ。「鳩山一族は、日露関係発展の象徴的な存在となった」。一郎は日ソ協会創設者の一人となり、最後まで代表を務めた。由紀夫はその後継である日露文化交流団体、日ロ協会会長だ。由紀夫の長男も国立モスクワ大でロシア語を学びながら教壇に立っているという。一郎から一族へ、ロシアが熱い視線を向ける背景には、2島返還が見え隠れしている。>
 そうなのかぁ、まあ、そうなのか。
 <プーチン首相をはじめとする露指導部は、平和条約締結後の歯舞、色丹の2島引き渡しを明記している日ソ共同宣言を日露間の領土問題を解決するための「唯一の合意文書だ」としている。4島返還ではなく2島で北方領土問題を決着させるためにも、共同宣言の立役者である一郎とその一族を評価したがっているようなのである。>
 ふーん。
◆相手が納得の返還
 <不安視されるのは北方領土問題への由紀夫の対応である。2007年2月、一郎の銅像の除幕式が来日中のフラトコフ露首相(当時)らを前に行われた。由紀夫は「われわれ孫たちが真剣に北方領土問題の解決に向け、もう一度踏んばらないといけない。4島一括返還では一千年たっても還らない」と語ったと伝えられた。由紀夫は自らのメールマガジンでこの式典に触れた。その少し前、麻生太郎外相(当時)が衆院外務委員会で4島を面積で折半する等分論を打ち出していた。由紀夫はこれに触れ「麻生外相が柔軟な発言をされたことがあります。柔軟なことを言うとすぐに売国奴扱いされるのが領土問題です」としたうえで「返還を実現するには相手が納得しなければならない」と訴えた。>
 売国奴という言葉は随分ときついなぁ。
 <その4カ月前の前述のモスクワ・シンポでは記者団に対し「北方四島は日本の固有の領土であり、この問題を解決してから平和条約を締結することが重要だと考える」と答えていた。4島返還の立場をしばらくして否定したわけだが、それがまた変わる。>
 産経新聞はゴリゴリの4島返還論だからなぁ。
 <谷内正太郎前外務次官が毎日新聞とのインタビューで「3.5島」返還論を語ったとされる問題で、由紀夫は4月、メールマガジンに「4島の主権を放棄して解決してはならないと主張してきた」「日本側が最初から譲歩する姿を見せてしまえば、交渉はますます不利になるばかりです」などと論じた。>
 ふーん。
 <由紀夫は5月、民主党代表選への出馬表明で「できれば北方領土問題を解決したい」と意欲を示した。ジャーナリストの櫻井よしこは正論7月号で「信念や国家観において、ブレるようなことがあれば、政敵や外国政府につけ入られてしまいます」と警鐘を鳴らした。こうした由紀夫はロシアから「御しやすい相手」(消息筋)とみられているようだ。持論の「友愛」外交が、その危うさを克服し、国益を実現できるかどうかが試されようとしている。>
 御しやすいのか。
 これで連載は終わりだそうだ。まあ、読みではあった。
 でも、結論は「ようわからん」だな、これは。

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臓器移植法案衆院可決の地方紙を含めた各紙社説まとめ~毎日新聞6月21日朝刊

 臓器移植法案が衆院本会議を通過した。毎日新聞が6月21日朝刊の大型コラム[社説ウオッチング]で<臓器移植法改正/毎日・朝日「参院で審議尽くせ」/読売・日経・産経はA案可決を積極評価>の見出しでまとめていた。小見出しは<多数派工作も>、<多くの地方紙は懐疑的>、<死生観、変化せず?>の三つだった。コピペしておく。

http://mainichi.jp/select/opinion/watching/news/20090621ddm004070026000c.html

 <臓器移植法改正4法案をめぐる採決が18日、衆院本会議で行われ、最初に採決された「A案」が可決された。現行法で禁止している15歳未満の子どもの臓器提供に道を開き、大人の場合も含めて家族の承諾があれば提供を可能にする内容で、脳死を人の死としとした。A案可決により、死の定義は変えずに、臓器提供可能な年齢を下げるB、D案や現行法の脳死判定条件を厳格化するC案は採決されなかった。棄権を決めた共産党以外は党議拘束を外し、麻生太郎首相、鳩山由紀夫・民主党代表が反対。小泉純一郎元首相や小沢一郎・民主党代表代行は賛成するなど判断が割れ、430人が投票した結果、賛成263、反対167(棄権・欠席47)だった。>

 ここまでは経過説明。

 <議員一人一人が信念で投票する、との建前だったが、A案提出者の河野太郎・自民党衆院議員が18日付のメールマガジンで「A案は、採決日が決まったときには、二百二十一までは本人確認がきちんとできていて、共産党が棄権するならば、あと何票必要というところまで落とし込んでいた。テレビや新聞が、連日のように四案とも過半数取れる見込みはないなどといっていたが、そんなことは最初から全くなかった」と勝利宣言したように、A案支持議員らの自民党総裁選並みの多数派工作の影響も少なくなかったようだ。>

 この多数派工作については各紙触れていたが、産経新聞と毎日新聞が詳しかった。

 <19日社説は「死生観を問われる難しい問題だが、これ以上、結論を先送りすることはできない」とする読売と日経、産経が積極評価派、「各案が十分に検討されたとはいえず、議員や国民の間に理解が行き渡っているとは思えない」とした毎日と朝日が慎重審議派と、一応は分類できる。しかし、各社とも本文は一本調子ではなく、衆院議員同様、死生観や幼い子の命の重さに悩んだ跡が見える。>

 一応は二分類できる、と。見出しだけ見ればそうだ。

 <積極評価派は①脳死を「人の死」とするのは世界保健機関(WHO)の指針や主要各国の臓器移植法とほぼ同じ②現行法が規定する臓器提供の条件が世界の中で突出して厳しいため法律施行約12年で脳死移植は81例にとどまり、毎年数千例の米国、数百例の欧州主要国と比べあまりにも少ない③多くの子どもが海外で移植を受けてきたが、外国頼みに国際的な批判も強く、WHOも渡航移植自粛を求める新指針を決めようとしている④3年後としていた現行法の見直し時期が過ぎて10年近く、これ以上の放置は許されない――などを理由にA案を評価した。>

 この「積極評価派」という言葉が適切かどうかも議論のあるところだろうが、一応は見出しで分けているのだろう。

 <慎重審議派は①本人同意を条件から外しても提供が確実に増えるとは限らない②子どもは脳死判定が難しい③親の虐待による脳死を見逃さないようにする課題が残る④親族に優先的に臓器提供できる規定は公平性の点で問題がある⑤医学の進歩で生まれた新しい死である脳死を法律で人の死と定めることの影響は多方面に及び、まだ国民的合意ができていない――などをあげ、参院でより良い法案に修正することを期待している。>

 この「慎重審議派」はまさしく参院で時間をかけて、ということ。衆院が解散された瞬間に廃案になるので、慎重審議派はもしかすると「廃案派」かもしれないが。

 <地方紙にはA案に懐疑的な社説が目立った。インターネットの各紙ホームページで見ると、<参院でこそ徹底論議を>(北海道新聞)、<国民合意へもっと議論を>(東奥日報)、<禍根残さぬ議論不可欠>(秋田魁)、<参院でさらに議論深めよ>(北日本新聞)、<参院はしっかり審議を>(岐阜新聞)、<議論は十分尽くされたか>(山陽新聞)、<まだ議論の余地がある>(中国新聞)、<国民の合意得る努力を>(南日本新聞)、<国民的なコンセンサスを>(琉球新報)などの見出しが並ぶ。>

 ここが今までの社説ウオッチングと比べてユニークなところだ。これも見出しをもとに区分しているのは在京紙の場合と同じなのだろう。

 <<ともかく一歩踏み出した>(西日本新聞)、<15歳未満に光は見えたが>(神戸新聞)との積極評価派もあるが、逆に<成立を急いでは禍根残す>の新潟日報は、わずか9時間という拙速の委員会審議は現行法を根幹から変えるのに不十分とし「国民合意のないまま、国会の多数決で死の定義を決めることには疑問がある」、「疑問を残したまま法が成立すれば大きな禍根を残す。参院ではゼロから徹底審議すべきだ」と結んでいた。<あまりに乱暴な改正だ>の信濃毎日新聞は「『脳死は人の死か』という命にかかわる重い問いを、あまりに乱暴に決めてしまった。とても納得できない」、「参院は法案の問題点を細部まで詰めて、修正を図るべきだ」と主張した。>

 怒っているような論調は何なのだろう? 生命についての議論が地方からでは見えにくい、ということもあるのか?

 <地方紙の分布を見る限り、保守性の強い旧来の地域コミュニティーが残る地域の新聞ほどA案への違和感が強いようにも見える。「海外依存からの脱却」などを前面に、積極推進派の日経など都会派新聞や都市部にターゲットを絞った新聞が「クリアできる」と判断した「国民合意」の一点について、地方紙が疑問を呈していると言えるかもしれない。18年前に出た岩波新書「医療の倫理」の中で京都大学医学部教授・倫理委員会初代委員長を歴任した星野一正氏は「人の死として社会が容認する死の定義は、国や社会によって異なってしかるべき」としたうえで、医学・医療技術の進歩で日本の社会的死生観、生命観が将来、急速に大きく変化する可能性を指摘。「それゆえ、死の現象などについての法制化は好ましくないと考える」と書いた。その後、臓器移植法が成立したものの、日本人の死生観はそれほど変化しなかったことを今回の法案採択への反応が示したのかもしれない。グローバル化した世界の中で生命倫理問題をどう考え、対処するか――。参院が大きな責任を負っていることは間違いない。>

 つまり、筆者は毎日新聞記者だから、やはり「慎重審議派」だ、ということなのか。

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2009年6月20日 (土)

米国が韓国大統領を破格の厚遇だって、良かった良かった~朝鮮日報6月20日

 また韓国の新聞である。6月20日の朝鮮日報日本語版にアップされたコラム<核挑発のおかげで生じた出来事>が面白かった。日本の新聞があまり書かなかった米韓首脳会談の模様、雰囲気が手に取るように分かる。米国が韓国に気を遣ったのだが、それでは足りずに、今度は「あの」ワシントン・ポスト様が韓国をもっと優遇せよ、という社説を書いた、という内容である。ワシントン支局の李河遠特派員の記事である。

 読んでみよう。

 <米紙ワシントン・ポストは16日付で注目すべき社説を掲載した。見出しは「現場の芸術」。この社説は北朝鮮による挑発的な行動に韓国と米国が断固として対応するには、両国を仲違いさせる問題を改めて見つめ直す必要があると主張している。さらに現在、オバマ政権が実現をためらっている韓米自由貿易協定(FTA)を早急に発効させるべき、との主張も展開した。北朝鮮による核の挑発に厳格に対応するには、米国としては同盟国との対立の種となる問題を1日も早く解決すべき、という趣旨だ。北朝鮮による核の挑発がなければ、米国の大手新聞が社説でこのような主張を展開することはなかっただろう。>

 まあ、半分以上は冗談で「北朝鮮のおかげ」と書いているわけだとは思うのだが、米国の手の平を返したような厚遇ぶりは面白い。

 <今年初めから続いている北朝鮮による相次ぐ挑発の影響で、韓米両国の間で以前は目にすることのなかった現象が、ワシントンで起こるようになった。李明博大統領によるワシントン訪問に関しては、「これ以上望むことはない」と韓国政府の関係者が口にするほど、米国側が大きく配慮した。オバマ大統領は今年2月に日本の麻生首相が米国を訪問した際には、共に食事をすることなく会談を行うだけだった。しかし李大統領に対しては、「単独会談→拡大会談→ローズガーデンでの共同記者会見→昼食会での会談」というまさにフルコースの待遇を準備した。>

 たしかに麻生首相とは一緒に食事もしなかった。そのかわりに、たしか上申院内総務たちとの食事会かなんかに出かけてしまった、と記憶しているのだが。

 <韓国政府が「韓米共同ビジョン」に含めることを希望した内容は「核の傘による拡張抑止力」をはじめすべて含まれることになり、首脳会談で発表された。さらに「自由民主主義と市場経済に立脚した平和統一」と「北朝鮮住民の基本的人権の尊重と増進」も今回の首脳会談をきっかけに明文化されたが、これも大きな意味を持つとされる。>

 韓国の言うとおりに文書化されたのか。それは良かった。

 <また米国連邦下院も李大統領に対して特別の待遇を施した。連邦下院は首脳会談前日の15日「北朝鮮による対南敵対行為の中断および北朝鮮による核開発の放棄を要求する」との決議案を採択し、李大統領を後押しした。先月28日には盧武鉉前大統領の焼香所が設けられた駐米大使館にクリントン国務長官とジョーンズ国家安保補佐官が訪れ、故人の冥福を祈った。これは盧前大統領を追悼すると同時に、韓米同盟がしっかりと機能していることを示すという意味合いもあった。>

 そりゃそうでしょう。誰だって盧武鉉が嫌いなのだから、盧武鉉だけのために行くことなどありえるはずがない。韓国の李明博大統領のために決まっている。

 <北朝鮮による相次ぐ挑発のおかげで、金大中・盧武鉉両政権の10年にわたってぎくしゃくしていた韓米関係は急速に改善されつつあるようだ。この流れが続けば、2012年に予定されている戦時作戦統制権の移管も延期される可能性が高い。この点については、今年1月までホワイトハウスに勤務していたワイルダー前NSC局長も言及している。>

 そうでしょう。戦時作戦統制権の移管問題は米政権が盧武鉉大統領時代の反米主義を見て、もしもの場合を考えて38度線から米国人兵士を引き離し、なおかつ、なるべく在韓米軍基地の機能を日本に移そうとした計画だったのだから、親米、親日の李明博政権が続くという保障があれば、あんなカネのかかる構想はおじゃんにするでしょう。

 <これとは反対に、米国国内で北朝鮮よりも韓国政府を批判してきた勢力は最近、沈黙を守っている。北朝鮮は韓国に対して軍事力を行使することはない、という彼らの妄想は、北朝鮮による「停戦協定を破棄する」という脅迫や「戦争も辞さない」という発言などで意味を失いつつある。>

 やっぱりそういう勢力が跋扈していたのか。韓国の反政府勢=北朝鮮と気脈を通じる一派だな。誰と誰が中心なのか? 知りたいものだ。

 <北朝鮮の金正日総書記が国際社会からの警告を無視して今後も挑発を続けた場合、北朝鮮は核兵器をさらにいくつ保有するようになるか分からない。また、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の飛距離を伸ばす技術を開発することも考えられる。しかしそうなったとしても、米国に匹敵するほどの「強盛大国」になり得るだろうか。歴史の中に消えたソ連のケースを見ても、レーニンの銅像が破壊されたのは核兵器がなかったのが原因ではない。>

 そりゃそうだ。いい事を言うなぁ。

 <北朝鮮が強硬な姿勢を強めるのに比例して、韓米の同盟関係は強化されつつある。これを目にした金総書記が自らの過ちを悟ることも考えられるだろう。今は北朝鮮の核による挑発が、逆に韓米両国にとっては危機をチャンスに変えるきっかけになるかもしれない。この点は金総書記に対してもしっかりと理解させなければならないだろう。>

 何かちょっとお話にしすぎて、楽観的に見えるところに難があるが、よくできた記事だと思う。米国の雰囲気が出ている。

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韓国保守新聞を脅かす左派勢力の脅しは金正日の陰謀だ~産経新聞6月20日朝刊

 少し前から韓国紙が狂ったようにキャンペーンを始めたテーマを産経新聞6月20日朝刊国際面が<韓国の“新聞戦争”再燃/左派系の市民団体が広告企業に圧力>の見出しのハコ記事でまとめていた。度し難い国民がいる国である。何が起こるか分からない。日本は終始一貫ぶれずに李明博政権を支持することが大切だろう。ソウル支局の黒田勝弘特派員の記事だ。読んでみよう。

 <韓国で左派・右派の“新聞戦争”が再燃している。左派系の市民団体が企業に対し製品の「不買運動」を武器に、右派系の大手紙への広告は中断し左派系の新聞に広告を出すよう“圧力”をかけているためだ。>

 日本では訳の分からない連中が毎日新聞攻撃をしていたが、韓国の方がもっと悪質みたいだ。

 <背景には近年、韓国社会で目立つ左右両陣営の根深い政治的対立がある。左派勢力は盧武鉉前大統領の自殺事件をきっかけに盛り上がった李明博政権に対する反政府ムードに便乗し、あらためて右派・保守系の大手紙たたきと左派新聞の支援に乗り出している。>

 盧武鉉支持勢力だろう、犯人は。

 <韓国の新聞界は保守系の朝鮮日報、中央日報、東亜日報の大手3紙が全体部数の70%以上を占めるなど圧倒的に強い。一方、左派系のハンギョレ新聞や京郷新聞などは劣勢で、旧政権や左派・野党勢力はことあるごとに大手3紙を非難、攻撃し逆に左派系紙を応援してきた。>

 京郷新聞が左派系とはこの前初めて知ったのだが、産経新聞と提携しているのが京郷新聞というのも随分と皮肉なことだ。

 <広告企業への圧力運動を主導しているのは左派系の「言論消費者主権国民キャンペーン」なる団体。まず広告量の多い大手製薬会社を相手に、不買運動を圧力材料に左派紙にも広告を出すよう要求し実現させた。>

 悪い奴らだ。

 <第2弾として韓国最大の企業グループである「サムスン」を標的に「大手3紙への広告中断まで不買運動をやる」という。これに対し大手3紙は「市場経済と言論自由への侵害」「不法な企業脅迫」と猛反発しているが、運動団体や左派系紙は「合法的で正当な消費者運動」と譲らず、紙面でも激しい非難合戦を繰り広げている。>

 韓国の不幸は国論の統一がなかなかできないことだ。これは天皇制がないことが大きいのではないか、とも思うのだが、もういちど日本領にするわけにもいかないし。

 <左派勢力の“広告圧力”は昨年、米国産牛肉輸入反対で反米・反政府運動が盛り上がった時にもあった。この時は企業への電話攻勢など脅迫や営業妨害を伴う圧力は違法との判決が出ている。>

 圧力は違法だろう。威力業務妨害罪などが適用されるはずだ。

 <運動サイドは不買署名運動や企業デモなどを計画しているが、論調が気に入らないといって新聞不買ではなく広告企業に圧力をかけることが「まともな消費者運動」かどうか、あらためて議論を呼んでいる。>

 韓国だからそうなるのだ。怖い国だ。

 <韓国のマスコミ界はテレビには依然、左派勢力の影響が残りインターネットも左派系が優勢だ。故盧武鉉氏に対する評価が疑惑から一転して“英雄”に変わったのも、テレビやネットでの追悼・称賛キャンペーンの影響が大きい。>

 テレビが左派に牛耳られていることは大きい。李明博政権は早く強権発動をして、テレビ権力を奪還すべきだ。

 <大手3紙への左派勢力の執拗な攻撃には北朝鮮問題が微妙にからんでいる。親北・左派勢力にとって、社会的に対北融和ムードが広がる中で北の独裁体制や人権問題を厳しく取り上げる朝鮮日報など保守・右派系新聞は、最大の“敵”になっている。>

 金正日総書記の仲間がやっていることなのだ。それを韓国の国民はなぜ分からないのだろうか?

 <企業広告をめぐる“新聞戦争”は、ただでさえ広告減で苦しい新聞界にとっては「自殺行為」との批判も聞かれるが、北朝鮮もからんだ左右対立という政治構造が根底にあるため簡単には収まりそうにない。>

 あとは軍が最大限、李明博大統領をバックアップして、強権発動をすることだ、と言いたいが、そうするとまた「民主化勢力」とかいう北朝鮮もどきがワーワー言うから楽じゃない。

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北朝鮮が言う「米国の追従勢力」は中国のことだって、知らなかった!~産経新聞6月20日朝刊伊藤正氏コラムから

 産経新聞6月20日朝刊国際面コラム[緯度経度]で北京支局の伊藤正特派員が<朝日新聞に汚名そそぐ責任>というタイトルで書いていた。

 <朝鮮問題の権威である中国共産党中央学校の張レン瑰教授(66)とは5年前に知り合った。中朝国境に近い吉林省延辺で開かれたシンポジウムで同席したことによる。そのシンポでもその後の接触でも、教授は一貫して、北朝鮮の核保有への決意は変わらず、核を放棄させるのに話し合いは無益との認識を示した。これは6カ国協議で核問題を解決しようとの中国政府の基本路線に反するものだった。ところが意外なことに、教授は平和解決路線を推進する中国外務省主管の国際情報誌『世界知識』(隔週刊)の常連寄稿者であり、今月中旬刊行の最新号にも2003年の6カ国協議開始後、23本目に当たる核問題関連論文が掲載されている。>

 「へぇー」という話。中国の北朝鮮専門家がこう見ている、ということを日本の外務省は知っているのか? たしか、韓国の新聞で見たなぁ。

 <この最新論文は7ページに及び、6カ国協議が破綻した必然性として北の核開発への真意と決意を読み違えた点などを指摘。さらに2006年10月の核実験に対する国連安保理の制裁決議が形骸化した背景を説明した上で、武力制裁条項を含む決議でなければ北は重視しないと主張している。>

 そうでしょう。中国の専門家までそう言っているのだ。

 <この論文に先立ち、張氏は韓国紙の取材に6カ国協議は北朝鮮が核開発の時間と物資を獲得するペテンだったと断言。北に核を放棄させるには対話ではなく、国際的な圧力が不可欠と述べていた。教授の持論だが、重要なことは、それが今、中国政府の共通認識になった点だ。>

 やっぱりそうだった。韓国の新聞のインタビュー記事で読んだ内容だった。韓国の新聞はこういう問題になるとポイントを絞ったいい取材をするものだなぁ。

 <北朝鮮は、中国の自制要求を無視しミサイル発射(4月5日)に続き2回目の核実験(5月25日)を強行、それに対し中国は国連安保理の議長声明、制裁決議にそれぞれ賛成した。これは事実上、6カ国協議を放棄したに等しい。>

 中国による6カ国協議放棄である。持つ意味は大きい。

 <北朝鮮はこれに反発、6カ国協議からの離脱や核全面開発を宣言、中国を「米国の追従勢力」と呼ぶなど中朝関係は険悪化した。ある中国当局者は「事態打開に中国側からは動かない」とし、仮に北側が妥協を求めて来た場合も「核開発の停止」が条件と話した。>

 私は勘違いしていたようだ。「米国の追従勢力」というのは日本のことだと思って読んでいたが、中国のことだったのだいう。これは大変なことだ。

 <過去、中朝間には何度も危機があったが、今回ほど深刻ではなかった。それは北が核をバックに中国の国益や安全を脅かし、政治的要求を拡大していることによる。張教授はかつて「北の脅威は、独裁者の一存や狂気で核使用も辞さないからだ」と話した。>

 気違いに刃物である。この「気違いに刃物」はパソコンで変換出来ない言葉だ。差別用語だというので、辞書から排除されているようだ。GHQ時代から続く言葉狩りは今も続いているのだ。

 <北朝鮮が対決姿勢を強める中で、朝日新聞の16日付朝刊1面トップ記事には目を見張った。北の金正日総書記の後継者とされる三男、金正雲氏が10日前後に総書記の特使として訪中し、胡錦濤国家主席と会談したというのだ。>

 その問題は今、大変な騒ぎになっている。

 <その日の中国外務省定例会見で秦剛報道官は「その件は承知していない」と間接的に否定した。中国共産党機関紙「人民日報」傘下の「環球時報」英文ネット版は北京の北朝鮮大使館が「報道は事実無根」と述べたと伝えた。>

 そういう事実関係だった。

 <これに対抗するように朝日は18日付朝刊で、1面と国際面に続報を掲載、胡主席との会談には金正日氏長男の正男氏も同席したことや、正雲氏が訪問したとされる広東省や大連市での行動を詳しく報道した。>

 これがあったので、私は朝日新聞の方が正しいと思っているのだ。

 <秦剛報道官が同日の会見で、朝日報道を明確に否定し、「007の小説のようだ」と皮肉ったのは朝日を除く各紙が報道した通りだ。中国側はこの種の記事については事前に関係部門に確認作業をするのが常で、報道官の言明は政府を代表する重さがある。>

 そうなのだろうなぁ。

 <要は事実関係の有無にあり、いずれ白黒ははっきりする。一連の記事は「両国を往来する金総書記に近い筋」などが情報源とされる。朝日新聞が中国側の否定を無視、自信を示しているのは、情報源を信用してのことだろうが、このような極秘情報に落とし穴は付きものだ。>

 なるほど、ここからが面白そうだ。

 <19日付の「環球時報」は「007式物語が朝鮮を取り囲む」との見出しで、日韓の報道を批判した。報道を「007」と侮辱されて黙っている手はない。朝日新聞は、世界中に流れた虚報の汚名をそそぐ責任があると思うが。>

 朝日新聞をけしかけている。天下の伊藤記者に言われたのだから、朝日新聞は返事をすべきだろう。

 僕はいまだに、北朝鮮とべったりの朝日新聞が誤報を書いたことを疑っている。仲間の朝日新聞の影響力が弱まれば困るのは金正日総書記なのだから、北朝鮮は朝日新聞には最大の便宜を図っているだろうし、ガセネタをつかませるような意地悪はしないだろう、と思っているのだが。

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岸信介の「棺を蓋いて事定まる」と国家安全保障の大切さ:マスメディアの責任は大きい~産経新聞6月20日朝刊[土曜日に書く]皿木論説委員コラム

 産経新聞6月20日朝刊コラム[土曜日に書く]で皿木喜久論説委員が<今も晴れぬ岸信介の「憂鬱」>のタイトルで国の大本である安全保障問題について書いていた。読んでみよう。小見出しは≪棺を蓋いて事定まる≫、≪安全保障への思考停止≫、≪盛り上がらぬ対北論議≫。危機が過ぎるとケロリとして、安全保障問題を考えようともしない国民、特にメディアを痛烈に批判する論考だった。

 <49年前の昭和35年6月19日午前零時、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」つまり新日米安保条約が国会で自然承認された。新条約は1カ月前の5月20日未明、自民党単独により衆院で承認された。しかし、この「強行採決」は最大野党の社会党を中心とする「アンポ反対」運動を一層燃え上がらせた。連日、労組や全学連のデモ隊が国会や首相官邸を包囲し、政治が機能しなくなった。批准書交換のため、6月に予定されたアイゼンハワー米大統領の来日も中止に追い込まれた。このため岸信介内閣も自民党も参院での承認をあきらめ、憲法61条の規定による30日後の自然承認を選んだ。前夜の18日は土曜日だったが、官邸周辺はデモ隊で埋まり、岸首相は一歩も外に出られない。官邸の一室で午前零時を待ち、そのままソファに横になって一夜を過ごした。つき合ったのは実弟の佐藤栄作蔵相や椎名悦三郎官房長官、福田赳夫農相らだった。6月の「短夜」が明けると、さすがのデモ隊も三々五々散ってゆく。>

 来年は安保改定50年なのか、よくも長く続いているものだ。

 <岸は午前6時過ぎ、自宅へ引き揚げた。そのさい周囲に「棺を蓋いて事定まる」と言い残したとされる。人の評価は死後に初めて定まる、という中国の晋書にある言葉である。凡人が自分のことをこう言ったら、鼻持ちならなく聞こえる。だがこの時点の岸の心境には、ピッタリだった気がする。>

 岸の言葉は反対運動に囲まれながら、やるべきことをやり遂げた男の、血を絞り取るような言葉だったのだろうか?

 <岸は元来、憲法改正による自主防衛論者だった。しかし、左右社会党の統一などで改憲が難しくなったこともあり、安保条約の改定に踏み切る。それまでの条約は、占領終了後も日本に米軍を残すためという意味合いが強かった。新条約は、その米軍に日本を防衛する義務を課すというところに力点が置かれていた。ところが35年1月、自ら渡米して新条約に調印し帰国すると、想像以上の反対論に出くわす。それも「安保を改定すると、日本は戦争に巻き込まれる」といった、その意味をまるで理解しないものだった。当時デモに参加した人の多くも「安保の意味などわかっていなかった」と認める。>

 吉田の安保は基地提供条約だった。それを恥じた吉田は若い政治家たちには安保条約に署名させず、後世に恥を残す証拠には自分の署名だけをとどめた。日本再独立のためにはいろいろな犠牲を払っても仕方ない、と割り切って早期講和を選択した吉田も偉かった。自主憲法を考えながら、客観情勢利あらずとして、安保改定に踏み切った岸も偉かった。なにか、社会党と進歩的文化人たちのアホさ加減だけが浮かび上がる、という書き方だ。

 <マスコミも同様だった。特に衆院で承認された後は安保改定の是非ではなく、岸政権の政治手法に批判の矛先が集まった。5月28日の岸の記者会見でも「首相のやり方は力に対して力で報いるようなものではないか」と攻めた。岸は「今(デモ隊に)屈したら日本は危機に陥る。私は声なき声に耳を傾けねばならないと思う」という「声なき声」論で、真っ向から反論する。安全保障に対する無理解への岸のイラダチのようなものを示していた。>

 安全保障に無理解なマスメディアという事実は今も同じだ。

 <むろん岸や政府の説明不足もあった。しかし、当時の厳しい東西対立の中で、自国の置かれた立場すら考えようとしない。経済優先で外交・安保問題に正面から向き合おうともしない。そんな戦後政治の「思考停止」状況が根底にあったと言っていい。>

 「戦後政治の思考停止」という言葉は格好はいいが、これもワンパターンだ。思考はしているのだが、真に迫った思考ができなかったのではないか。

 <不幸にしてこの潮流は今にいたるまで続いている。安保改定が終わると、自民党はヤレヤレとばかり経済成長政策に邁進する。憲法改正はもとより、集団的自衛権の見直しなど、国の安全を守るための前向きの努力を放棄してしまった感がある。>

 経済成長は悪くはない。しかし、池田の高度成長後、佐藤が沖縄返還を勝ち取り、その後が問題だったのではないか。つまり、田中角栄政権以降の日本政治のあり方をもう一度検証しなおす必要があるのではないか。

 <当時の社会党をはじめとする反自民勢力も、湾岸戦争やイラク戦争が起きるたびに「米国追随」と批判するが、それに代わる安全保障や国際協調の方策を何一つ示さずにいる。マスコミも同様だ。遅くとも3カ月以内には総選挙が行われるという時期にあっても事態は変わらない。>

 社会党は消滅した。後継である社民党はミニ政党になった。民主党は保守的な政党になりつつある。

 <北朝鮮は日本人拉致をはじめ、核実験にミサイル発射と、いよいよ危険な隣国となりつつある。中国は軍備拡張で日本への圧力を強める。他にもソマリア沖での海賊の横行や対馬への韓国資本の流入と、今や日本は四方八方から安全や主権を脅かされている。>

 この客観認識は国民の多数に共有されていると思う。

 <そうであれば、今回こそ外交・安保問題、とりわけ北朝鮮対策中心に論じられるべきだろうが、どうもそうではなさそうだ。17日の麻生太郎首相と鳩山由紀夫民主党代表の党首討論でも議論は進まなかった。今回の総選挙は自民党や麻生政権のさまざまなミスもあって、政権交代の可能性も取りざたされている。特に民主党からは期待をこめて「天下分け目の戦い」などとされる。>

 党首討論は正直、がっかりした。鳩山から機先を制するように北朝鮮問題を言われ、麻生が二の句を継げなかった。しゃべるべき内容を精査していなかったのではないか。勉強不足だ。

 <国民の「生活」は重要だ。しかし、国の存亡にかかわる外交や安全保障の論議をやらないままで何が「天下分け目」なのか。49年前の岸首相の憂鬱は晴れそうにもない。>

 無理矢理「岸の憂鬱」に引っかけているが、そうでなくとも、心ある人々の憂鬱は晴れない。

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2009年6月19日 (金)

国連機関が「北朝鮮で飢餓」だと、援助ストップのせいにしているぞ!=北朝鮮の国際世論工作に騙されるな~6月19日聯合ニュース+6月17日朝日新聞朝刊

 これからは、こういうニュースがあふれるだろう。そして、先進国の人々の耳目を集め、アメリカの中西部の一般家庭からは「可哀想じゃないの、金正日と一般の北朝鮮の人は別よ、人道問題だわ、食料をなぜ援助しないのよ」という「良識」あふれるキリスト教徒たちの声が湧き上がるだろう。オバマ大統領はそういう声を無視できない。そうなれば、米国は食糧援助を再開するだろう。そして、金正日一派はほくそ笑む。何か、15年前の再現ビデオを見ているようで、展開が分かってしまう。

 <食料支援途絶え北朝鮮に餓死の懸念、WFP報道官>というソウル発の6月19日の聯合ニュースである。読んでみよう。短いニュースだから。

 <国連世界食糧計画(WFP)が、北朝鮮で外部からの食糧支援中断により餓死者が発生する懸念があると明らかにした。>

 衝撃的な前文だ。「外部からの食糧支援中断により」という物言いはいかにも「外からの食糧支援さえあれば餓死者は出ない」、「餓死者が出るのは外から援助しないからだ」という論理に結びつきやすい。本当の原因はそうではないだろう。金正日総書記らの方針が核兵器開発とミサイル開発にはふんだんに金を使って、その金を民政に回さないから、餓死者が出ているわけだ。

 そして、餓死者をなくすには金正日支配をやめさせるしかない、ということは論理的に分かるのに、国連の機関がこんな報告書を出すようでは世も末だ。

 <WFPアジア事務所のリスリー報道官は19日、米自由アジア放送(RFA)とのインタビューで「(北朝鮮での)餓死者発生を大変懸念している。食糧支援を増やさなければ、栄養失調で多くの人が倒れ死ぬ可能性があり、懸念している」と述べた。北朝鮮住民の間からは米国の食糧支援に関する話や質問が多く聞かれ、米国の食糧支援が中断された理由を尋ねたり、いつ再開するかという質問を受けることも多いと伝えた。>

 ほらね、いつもこれなのだ。北朝鮮と国連機関が結託して国連安保理決議を無効にしたがっているのだ。

 <これまで北朝鮮住民150万人に対し、4人家族を基準に、1週間にコメ2㌔㌘と穀物1㌔㌘を支援していたが、国際社会の支援が途絶えたことでこれもままならず、最近は半分や4分の1に供給量を減らしているという。>

 ミサイル開発をやめて、核兵器をすべて廃棄すれば食料など、食べきれないくらいあげるのに。そういう宣伝を北朝鮮の国民にできないものだろうか。

 <北朝鮮担当の報道官も、昨年収穫した食糧がすべて底を突いたうえ、この数カ月間、外部支援が途絶えており、北朝鮮住民の食糧事情は大変劣悪だと指摘。次の収穫期までが心配だと話している。>

 北朝鮮担当の報道官なんているんだなぁ。こういう人はどの程度、本当のことを知っているのだろうか? 北朝鮮はこういう人を本当の現場には連れて行かず、強制収容所で飯も食わせず、やせ衰えた家族らを一時的に出してきて見せたりするのだろう。
 その手ももはや15年前に何度も味わっている。二度とその手は食わぬぞ、と思うのだが、敬虔なキリスト教徒が「可哀想」と言ったらオバマ大統領は……。

 もしかすると、今後の北朝鮮の国際世論対策はこの飢餓かもしれない。少なくとも米国と韓国の世論は動揺するだろうから。

 朝日新聞6月17日朝刊対社面<親族から「生活厳しい」/在日コリアン困惑/北朝鮮制裁>はまさに、朝日新聞らしい側面攻撃だ。北朝鮮への日本の独自制裁が16日決まったので、「それっ、在日だ」と取材に賭け付け、期待通りの言葉が聞けたので、勇んで記事に仕立てたのだろう。

 たしかに可哀想な事態ではあるが、日本国民全体の脅威として立ちふさがろうとしている国家が悪いので、制裁を決めた日本国が悪いのではない、という視点が欠けているから、この記事を読めば「国も何てひどいことをするんでしょ」という感想が出てくる可能性がある。朝日新聞はそれを期待しているのだろうが。

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韓国紙を読むと世界が分かる:米中の識者のインタビューなどで日本は完全無視されている~6月19日中央日報、朝鮮日報

 韓国の新聞がお手本になる、と思うのは、その時に必要だ、と思ったら突貫取材で何が何でも聞いてくる、という姿勢が貫かれていることだ。日本の「良識」あふれる新聞にはない「一点突破全面展開」方式である。

 北朝鮮の核問題では米国と中国がカギを握っている、というのは衆目の一致するところだろう。そうした時に、韓国の新聞は「当たるも八卦」であるかもしれないが、米中両国の影響力のありそうな人物へのインタビューなどを連日のように展開しているのだ。日本の新聞との大きな違いだ。

 今回の北朝鮮の核問題では米専門家が議会で証言したように北朝鮮の攻撃対象は韓国ではなく日本または在日米軍基地になる、と見るのが順当だろう。それも、日米の離間を図るという戦術を考えた場合、在日米軍基地は米国そのものだから、狙わずに、日本の地方都市か原発を狙うぞ、という脅しをかけ、米国の顔色を見るところから始める、というのがあり得るシナリオだと思う。

 そういう危機意識を本当は日本が持たねばならないのだが、戦後64年、安全保障という問題をタブー視してきたツケが回り、国会議員も腑抜けたことしか考えられなくなっているようにも見えるのだ。

 6月19日にネットを見たところ、中央日報のホームページに<「現状況としては5カ国協議が核解決の最善策」>という中国の研究所所長のインタビュー記事が掲載されていた。参考になりそうなので、コピペしておこう。

 <「現状況としては、北朝鮮以外の6カ国協議参加国による5カ国協議が最善の策だ。ただ朝米協議と朝中協議につながってこそ実効性がある」――。香港城市大学・現代中国研究所の鄭宇碩所長(60、政治学科教授)が韓米首脳会談と関連して提案した北核問題の解決策だ。中文大の教授、香港政府の外交補佐役などを務めた鄭宇碩所長は国際外交学界で「中国の対アジア政策」研究の最高権威者とされる。17日午後、鄭宇碩所長の研究室で北核問題の解決策などについて尋ねた。>

 という書き出しである。中国政府が何をしようとしているのか、を知っている人物だという紹介だ。

<――韓米首脳会談の結果が北朝鮮に対してより大きな圧力をかけるという方向で固まったが、核問題にどんな影響を及ぼすと考えるか。>

 <「米国が韓国に対して核の傘を保証すると明文化したのは、現在、韓米の連携が非常に緊密化していることを象徴的に表している。核問題をめぐり両国の利害関係がかみ合っているからだ。しかし、両国の協力強化の過度な明示は北朝鮮を刺激することになりかねない。すでに北朝鮮はプルトニウムの再処理と武器化など状況をさらに悪化させている」>

 まあ、中国の代理人として米韓の連携を牽制しているのかな。

 <――李明博大統領が(韓米首脳会談で)5カ国協議を提案したが。>

 <「現状況で北核問題の解決策を見いだすための最高のアイデア(best idea)だ。ただ条件がある。5カ国協議の結果が朝米協議、朝中協議につながらねばならない。また2国間の協議はなるべく秘密裏に行われる必要がある。北朝鮮に6カ国協議に復帰できる名分と時間を与え、実効性のあるカードを提示できるようにするためだ」>

 結局、中国にしてみれば日本を排除したいのだろう。韓国とうまくやって、日本には情報を漏らすな、と。

 <――中国は今回の韓米首脳会談をどう評価しているのか。>

 <「李明博政権の発足後、中国は韓国が米国と癒着するのを懸念している。中国の立場から見れば、韓国の行き過ぎた“米重視の外交”は負担となる。中国は北核問題を韓半島だけではなく、米国・日本との力学関係という観点から接近している。したがって“韓国政府が中国を重視していない”という印象を与えてはならない」>

 「与えてはならない」は翻訳だから、こういう表現になるのだろうが、いかにも偉そうだ。宗主国が植民地の人民に訓示を垂れている感じもする。

 <――韓半島の非核化は中国の一貫した外交政策だ。しかし、北朝鮮が核実験に踏み切っても決定的影響力を行使せずにいると批判する声があるが。>

 そういうことだ。その矛盾をズバリ聞いている。

 <「中国が北朝鮮に対し影響力を行使できるカードは確かにある。しかし、いずれもリスクがあるというのが問題だ。例えば食糧や石油の供給を中断した場合、北朝鮮社会が混乱し、難民が中国に流入するのは明らかだ。これはすべて中国が耐えなければならない問題だ。外交圧力を強めれば、北朝鮮は親ロ政策を持ち出す可能性が高い。中国が北朝鮮に対するカードをむやみに使えないもう一つの理由は中国自体に弱点が多いからだ。所得の格差や政治体制による社会の不安、経済的な脆弱さは、いつ中国の体制を揺さぶるか分からない時限爆弾といえる」>

 随分正直に答えている。つまり、中国国内の治安問題や経済格差問題を浮き彫りにする可能性があるので、触りたくないのだ、というのだ。結局、それが第一なのだ。日本が核武装をするかもしれない、とかの選択肢を考慮している風は見えない。

 <――それなら北核問題に対する中国の明確な立場は何か。>

 <「現状の維持(status quo)だ。そして、時がくれば北朝鮮をベトナム式の改革・開放に誘導することだ」>

 時が来れば、か。これが中国の本音なのだろう。

 <――北朝鮮が核実験を続けているにもかかわらず現状維持というのは、韓半島の非核化という外交路線に反するのでは。>

 韓国人記者を尊敬するのは、このように聞きにくい質問を続けてぶつける根性を持っていることだ。その通りだ、と思う質問である。

 <「中国は確かに長期的には非核化を堅持していくだろう。しかし、現状況では核問題による混乱で国益を損なうよりも現状維持のほうがよい、というのが中国指導部の判断だ」>

 核問題で混乱すると中国としての国益を損なうから、今のままにしておく。北朝鮮には日本を狙う核ミサイルを持っても仕方ない、という立場である。中国の本音だろうと思う。胡錦濤主席や温家宝首相がいかに微笑外交で日本人に笑顔を振りまいても、中国は冷厳たる国際政治の論理で動いているのだ。日本は「北朝鮮の人民が可哀想だ」などの感情論ですべてが決まる国だから。臓器移植法案を見れば分かる。

 <――核問題を解決するために米国が軍事的方策を選ぶ可能性は。>

 <「日本は分からないが、韓国と中国・ロシアは反対している。米国が最悪の場合に選択するかもしれないが、その前に多くの段階があるため現実的に起こるとは考えていない」>

 米国の軍事オプションは中国、韓国、ロシアが反対しているからできないだろう、と安心しきっている。そういうことなのだろう。中国はクリントン米国務長官らからしっかりと言質を取っているのだろう。

 つまり、日本は蚊帳の外で、すべてのことが決まっていっているのではないか、と思うのだ。

 こういう中国人や米国の政権に近いシンクタンク関係者のインタビューを日本の新聞でも、もっともっと掲載してほしい、と思う。

◆李明博大統領と米識者との懇談会

 朝鮮日報はワシントンに同行した朱庸中記者が<核問題/「中国の役割、これまで以上に重要」/李大統領、米国の専門家らと懇談会>という記事をアップしていた。

 <「行き詰まっている北朝鮮の核問題を解決するためには、中国の役割がこれまで以上に重要になるだろう」。米国の外交分野で「2大重鎮」とされるズビグネフ・ブレジンスキー元国家安全保障問題担当大統領補佐官とヘンリー・キッシンジャー元国務長官が17日昼(現地時間)、ワシントンで李明博大統領と会い、北朝鮮の核問題について同じ見解を示した。李大統領と米国の専門家9人による懇談会で司会を務めたジョン・ヘイムリ元国防副長官は「(ブレジンスキー、キッシンジャー)両氏が歩調を合わせたのは初めて見た」と語った。80歳を超えるブレジンスキー、キッシンジャー両氏は30年余りにわたり、米国の外交史におけるライバルとして知られてきた。>

 まあ、少し大げさかもしれないが、キッシンジャーもブレジンスキーも「日本はダメだ」という点では一致している、ということだろう。

 <非公開で行われたこの日の懇談会の内容についてヘイムリ元副長官は「北朝鮮問題は現在、後継者問題など北朝鮮内部の状況と相まって予測が不可能な局面に達しているだけに、韓米両国の政策当局者による、これまで以上に細かく綿密な対処が求められる」と要約した。そのうえで「現在のように韓米関係が良好な時期は過去になかったように思う。韓米同盟は今後、さらに強固なものになっていくと思う」と述べた。>

 盧武鉉時代の米韓関係が嘘のような現状、ということか。

 <一方、李大統領は「北朝鮮に核を放棄する決断を迫る上で、中国やロシアが積極的に協力するよう求めることが重要だ。その基礎となるものが、韓米同盟や韓米日3カ国の協調だ」と述べた。>

 李明博大統領だけだ、頼れるのは。ようやく日本という言葉が出てきた。

 <懇談会の出席者はブレジンスキー、キッシンジャー両氏とヘイムリ元副長官のほかジョージ・シュルツ元国務長官、ウィリアム・コーエン元国防長官、ジェームズ・シュレシンジャー元国防長官、カーラ・ヒルズ元通商代表、リチャード・アーミテージ元国務副長官、ジョージタウン大のビクター・チャ教授の9人。このメンバーについてヘイムリ元副長官は「仮にオバマ大統領が声を掛けたとしても、こんなに集まることはなかっただろう」と述べ出席者たちの笑いを誘った。>

 朝鮮半島問題でいつも発言している人たちがすべて集まっている感じがする。韓国の米政権ロビー活動がうまくいっている証拠だろう。

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2009年6月18日 (木)

「北朝鮮に<核の傘>は通用するか」朝鮮日報コラム+米韓共同声明に「北の核排除」の文言がないこと~09年6月18日朝鮮日報、中央日報

 知りたいことを素早く書くのが最近の韓国の新聞である。日本の新聞とともに最近は韓国の新聞の日本語ホームページ探索も欠かせない日課となった。

 6月18日は朝鮮日報日本語版にアップされていたユ・ヨンウォン記者のコラム<北朝鮮に「核の傘」は通用するか>が目を引いた。日本にも当てはまる、というか、日本こそが真剣に考えねばならないテーマなのに、こういう問題意識で記事を大展開している新聞にはあまりお目にかからないのが現実である。

 というわけで、また韓国紙を読むことになる。

 <「共産主義者に単純な恐喝は通用しない。共産主義者との交渉は、われわれが強大な軍事力を駆使することを実際に考慮している、ということを相手が認識した時にこそ成功し得る」>

 <これは、故ターナー・ジョイ米国海軍中将の著書『How Communists Negotiate 』に出てくる一節だ。ジョイ提督は6・25戦争(朝鮮戦争)当時、国連軍側首席代表として共産側との休戦交渉を行った経験を持つ。>

 クリントン政権の前期に行った北朝鮮との交渉がまさしくこの方式だった。後期になると、政権の実績づくりのために北朝鮮に妥協しようと、オルブライト国務長官が訪朝する愚を犯す。

 <ジョイ提督は1955年に出版した同書で、次のようにも語っている。「われわれが本当に戦争を回避しようとするなら、戦争の危険を甘んじて受け入れる態勢を備えることが必要だ」、「軽微な事案についてわれわれが一方的な譲歩を行うと、より重要な事案でも強要すればわれわれが結局は譲歩する、との認識を共産主義者は持つようになる」>

 相手に誤ったメッセージを与えてはならないのだ。ブッシュ政権末期の失敗も金正日総書記に誤ったメッセージを与えた。

 <ジョイ提督が50年以上も前に説いたこの言葉は1953年に停戦協定が締結された後も続く北朝鮮による挑発にそのまま当てはまるようだ。特に1990年代初めから最近再び危機の局面を迎えている北朝鮮との核交渉については改めて振り返ってみる価値がある。>

 そういうことだ。

 <北朝鮮はこれまで「戦争も辞さない」と叫ぶ瀬戸際戦術と、取引の対象をいくつもの断片に分離して徐々に実利を得る「サラミ」戦術を組み合わせ、韓米両国などから多くの実利を上げてきた。>

 瀬戸際戦術だけは日本でも有名だが、あっちこっちと取引材料を散りばめて、少しずつ成果を奪い取っていく北朝鮮の「サラミ戦術」はあまり知られていない。

 <今年に入ってからは、大陸間弾道ミサイル(ICBM)として活用できる長距離ミサイルに転用可能なロケットの発射、第2回核実験などを行ったうえ、今月13日には国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議に対抗し、ウラン濃縮作業などを公言している。北朝鮮は既に、20㌔㌧(1㌔㌧はTNT爆薬換算で1000㌧)級の核兵器を6個から8個作ることができるプルトニウムを確保したと推定され、2度にわたる核実験により核兵器の保有も確実視されている。それだけに、南北間の戦力不均衡や有事の際の北朝鮮による核兵器使用の可能性に対する懸念も大きくなっている。>

 これは今までの経過説明だ。

 <ならば、こうした難局をいかにして打開すべきなのか。北朝鮮が核開発を放棄し既存の核兵器を完全に廃棄することが最善だが、現実的とはいえない。>

 韓国のベテラン記者は北朝鮮の核廃棄が現実的には無理だ、と書いている。嘘は書かないだろう。そう信じているのだ。良質の記者にしてこの結論である。

 <次善の策としては、有事の際に北朝鮮が核兵器を使用できないよう事前に抑制する案が挙げられる。そのためには、北朝鮮が先に核兵器を使用した場合には米国の核兵器によって報復されるという「核の傘」が「口先だけ」のものではなく、実際に核兵器を使用できるという意思を北朝鮮にはっきりと認識させることが重要だ。>
 それはそうなのだが……。そこがねぇ。

 <米国の「核の傘」は単純な宣言に過ぎない、と北朝鮮が考える限り「核の傘」を通じた核抑止は効果を持たない。>

 だから、李明博大統領がオバマ大統領に文書化してもらったのだろうが……。

 <北朝鮮に「核の傘」のメッセージを明確に伝える方法に関しては、1980年代のヨーロッパにおける中距離核戦力(INF)交渉が参考事例として挙げられる。当時、旧ソ連が西ヨーロッパを狙いSS20ミサイルを配備するや、米国は内外の懸念や反対を押し切り、パーシング2ミサイルをヨーロッパに配備した。最終的に、旧ソ連はSS20ミサイルを後方に下げ、これに応じて西側諸国もパーシング2ミサイルを後方に再配備したという。これにならい、1991年に韓半島(朝鮮半島)から撤収した戦術核兵器を再配備しなければならない、という主張も一部で提起されている。>

 成功事例だ。そうだと思う。北朝鮮を怖がらせないと、抑止力にはならない。

 <韓米両国政府もこうした懸念を考慮し、16日に開催された韓米首脳会談で、「核の傘」と在来戦力を包括した「拡張抑止力」を明文化することとした。しかし、北朝鮮に対し両国の意思をより明確に伝えるためには、両国軍の作戦計画上、核攻撃を受けた際には核兵器で報復することを含めるなど、具体的な措置を取り続けなければならない。>

 作戦計画に入れろ、という主張である。そうして初めて安心できる、というのが普通の感覚ではないか。「猿の惑星」ではあるまいし、日本に変なことをすると、アメリカさまが核の神様を持ち出して雷を落とすから、信じて祈っていよう、と、そこで思考停止するのは日本人くらいであろう。

 米韓首脳会談の共同声明に拡張抑止力を書きこんだのは進歩だったとは思うが、それを米国が実行するかどうかは別の話だ。

 日本に対しては文書化もしていない。文書にはせず、時々の政権に対して「守るよ」と言い続ける、という日米密約がるらしいが、こうした場合の「密約」のやっかいなところは「葵の印籠」を北朝鮮に「どうだ!」と示せないところだろう。

 日本も核抑止を実効性のあるものにしておかないと、東京に核ノドンが落ちてくる危険性がもっともっと高まるのではないか。

◆「北朝鮮に核を放棄させる」が抜けた米韓共同声明

 中央日報6月18日には<北核・ミサイル放棄させる案が抜けた>という記事が掲載されていた。随分と観念的な論文で、難しい言葉を使えばいいってもんじゃないぞ!と言いたくなるが、最後の結びだけは鋭かった。

 全文を通して読まないと、訳が分からなくなるので、途中にコメントを入れない。

 <北朝鮮は韓米首脳会談で自国の核・ミサイル挑発に対してなるべく強くて刺激的な対応が出ることを密かに望んでいたかもしれない。北朝鮮が国連安保理制裁を突破するためには内部の結束が必須だ。内部の結束には韓国と米国が造成するのだと人民たちに宣伝できる危機が効果的だ。韓米両国大統領が発表した「韓米同盟のための共同ビジョン」は北朝鮮が歓迎するほど強硬で挑戦的だ。>

 <共同ビジョンには米国が核の傘を含んだ拡張抑止力から韓国の安保を保障するという既存の約束の確認が含まれている。米国は2006年にもそんな約束をしたが、当時は国防長官の名で行った。それを今度は大統領の名で文書化したので、その重さと米国の実行の意志がいっそう強化された。たぶん北朝鮮は核の傘の約束を、自分たちの核・ミサイル開発を正当化するのに使うとみられる。>

 <未来ビジョンで北朝鮮にとって最も不吉な句節は韓国と米国が「自由民主主義と市場経済の原則に即した平和統一」を成して韓半島のすべての人のためのより良い未来を建設するという部分だ。>

 <これは李明博大統領の考えが貫徹されたものだ。李大統領は昨年11月、ワシントンで韓国の究極的な目標を自由民主主義体制で統一することだと規定した。そんな統一はまず、北朝鮮のスターリン主義的独裁と計画経済を否定することだ。北朝鮮はこの句節に薄気味悪い吸収統一の亡霊を見るだろう。>

  <同盟ビジョンは北朝鮮の核兵器と弾道ミサイルプログラムの完全で検証可能な廃棄を要求した。弾道ミサイルが完全で検証可能な廃棄の対象に新たに入った。これは韓国と米国の北朝鮮非核化の意志を確認したものだ。この句節に北朝鮮住民たちの基本的な人権増進のための協力を述べているので注目される。北朝鮮人権問題が非核化のような脈絡と水準の重要な問題に格上げされたのだ。北朝鮮がどんどん先を進み、金大中、盧武鉉時代をしのばせる内容だ。>

 <今回の韓米首脳会談は前にも後にもなく厳酷な韓半島の安保環境と非核化を望む国際社会に対する北朝鮮の鋭い挑発が続く中で開かれた。韓国と米国が共同の価値に土台を置いた包括的な戦略同盟構築に合意したのは今日の要求に合うのだ。>

 <出なければならない同盟ビジョンが出た上、それを歓迎しなければならないにもかかわらずと残念な点が残る。21世紀初頭の韓米同盟ビジョンなら当然ソフトパワーに土台を置いたものでなければならない。しかし、北朝鮮のせいで、いや北朝鮮のおかげで同盟ビジョンの主軸は核の傘を含んだ拡張抑止力というハードパワーがメインとなった。そのため同盟ビジョンは未来指向的というより過去回帰的だ。同盟活動の舞台が韓半島で東アジアと汎世界に拡張されたが、これは過去の政権時の論難がまちまちだった米軍の戦略的柔軟性を韓国がすっきり受け入れたのだ。>

 <北朝鮮の核・ミサイルを放棄させる案が抜けたのが同盟ビジョンの弱点だ。核の傘は核兵器を持った北朝鮮が韓国を核兵器で攻撃する場合を想定したものだ。我々に重要なことは北朝鮮の核武装を阻止することだ。北朝鮮は国際社会の制裁を逆に活用して核・ミサイル技術を改善しながら核国家の道を歩くだろう。しばらく事態は行くところまで行くだろう。北朝鮮と通じる国は中国だ。韓国と米国は中国を動かして北朝鮮を説得するのに総力を傾けなければならない。北朝鮮の核ミサイルの暴走を今、阻止する方法が欠落した同盟ビジョンは、観念的な未来の談論だ。核の傘の同盟ビジョンは遠い。しかし、北朝鮮核ミサイルの現実は近くまで来ている。>

 本当に分かりにくい文章だ。韓国語と日本語は文法が同じで、一対一対応で翻訳できるので、きっと原文の韓国語でも分かりにくい文章だったのだろう。

 しかし、最後の段落は鋭い。「なるほど」と思う。

 李明博大統領とオバマ大統領が話し合ったことは北朝鮮が核武装するという前提の話だった。だから核抑止だったのだが、北朝鮮は今、核実験には成功したが、まだミサイルに詰める大きなまで小型化はできず、兵器化途中の段階と見られる。

 だったら、本来ならば、北朝鮮がミサイル搭載核兵器を完成させる前に米国が空爆して北朝鮮のミサイル、核基地を全滅させればいい。そうでなくて北朝鮮の核武装をアプリオリに考えてその対策を考えるということは、オバマ政権は北朝鮮に武力行使する意図は全くないということを裏から表していると思う。

 そういうことなのだ。結局、核抑止力を問題にするということは北朝鮮の核保有を前提とした議論になる。その途中で止める、という議論が起きないのはおかしい。この記者が書いている通りだ。

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「北朝鮮の攻撃対象は韓国ではなく日本」米専門家~6月18日夕刊各紙

 読売新聞のネットに6月18日、<「北、韓国より日本攻撃の可能性強い」/米専門家が見方>というワシントン支局の本間圭一特派員の記事が掲載されていた。由々しい内容である。夕刊に大きく載るのだろう。見てみよう。

 <米国の北朝鮮専門家、セリグ・ハリソン氏は17日、下院外交委員会のアジア太平洋・地球環境小委員会で証言し、北朝鮮が挑発行為をエスカレートさせた場合、韓国よりも日本を攻撃する可能性が強いとの見方を示した。>

 ハリソン氏の話だった。

 <ハリソン氏は訪朝経験が多く、北朝鮮情勢に詳しい。日本を攻撃する理由については「北朝鮮では日本の植民地時代の帝国主義に対する反感が根強い」と指摘した。さらに2002年に小泉首相(当時)が訪朝した際、金正日総書記が拉致問題を認めて謝罪した点を挙げ「(北朝鮮に)謝罪に対する批判的な意見があり、若者の間では反日やナショナリズムの考えが広がっている」と解説した。>

 小泉訪朝という賭けが失敗した、と見ている。

 ワシントン発の共同電は、

 <今年1月に北朝鮮を訪問した米国の朝鮮半島問題研究家、国際政策センターのセリグ・ハリソン氏>

 という紹介で、

 <北朝鮮が戦争状態に陥った場合、韓国ではなく日本を攻撃するとの見方を明らかにした。>

 という文章だった。また、

 <金正日総書記の健康状態悪化後、「反日感情が強く国粋主義的で、海外経験のない若手将校らが政権内で立場を強めた」ことが理由だという。ハリソン氏は取材に対し、訪朝時に知り得た「政権内の傾向」からの類推だと説明した。>

 <証言でハリソン氏は、若手将校らは金総書記が日本人拉致を認め「謝罪したことに憤慨」しており、「日本と紛争になった場合の北朝鮮の能力を非現実的に(高く)評価し、他の高官らを憂慮させている」と述べた。「国連制裁の結果、事態が悪化した場合、北朝鮮は報復として韓国ではなく日本か在日米軍基地を攻撃するだろう」と予測した。>

 という内容だった。日本の2・26事件前後を髣髴させる状況だ。

 朝日新聞のネットでは次のような記事がアップされていた。見出しは<北朝鮮の戦争相手は日本/米専門家が推測>である。ワシントン支局の村山祐介特派員の記事だ。これも夕刊に載るだろう。

 <米国の北朝鮮専門家のセリグ・ハリソン国際政策センター・アジア計画部長は17日、米下院外交委員会の公聴会で、北朝鮮が戦争を始める場合、攻撃対象は韓国ではなく日本、との見方を示した。反日感情が強い若手将校が影響力を強めているためという。>

 <同氏は、北朝鮮で「金正日総書記が健康悪化で日常執務を減らす中で、海外経験のない国粋主義的な若手将校らが影響力を強めている」と指摘。将校の一部は、金総書記が2002年の小泉首相(当時)との首脳会談で拉致を認めて謝罪したことに「憤慨」しており、「日本と紛争になった場合の北朝鮮の能力を非現実的に評価して他の将校らの懸念を呼んでいる」という。国連安全保障理事会による制裁決議採択が彼らの影響力をさらに強めているとも指摘した。同氏は元米紙記者で、頻繁に北朝鮮を訪問。今年1月にも訪朝した。>

 大体の内容は分かった。北朝鮮とのパイプがあるアメリカ人が1月に北朝鮮に行って、旧知の人民解放軍将校(?)らと話をしてきたが、その際に北朝鮮の内情をいろいろ聞いてきた、ということだろう。

 ハリソン氏はここでは全部はしゃべっていないだろう。ワシントンの日本大使館はハリソン氏からきっちりと事情聴取して詳しい話をきくことから始めなければならない。そういう基礎的な仕事の集積が日本の情報力になる。それができていなかったら、結局、外務省は情報なしに政策判断するという太平洋戦争突入前夜の愚を繰り返すことになるだろう。

 各新聞社の努力も大切だが、日本外務省の奮起に期待しよう。

 東京に核ノドンが飛んでくる状況はまだ現出していない。北朝鮮が核兵器の小型化に成功していないからだ。ただし、もう時間はない。日本は先制攻撃をするのかどうか、本当の危機管理を始めなければならない。

 こんな時に解散・総選挙をやっている暇が本当にあるのだろうか? それよりも挙国一致内閣を作って、集団的自衛権の解釈を変え、核武装するかどうか真剣に討議してほしい。核武装しなくとも、攻撃的兵器をそろえれば、北朝鮮の核・ミサイル基地を攻撃できるはずだが。そして、中国に手を出さないように説得する作業も同時並行で進めねばならない。

 こういう緊迫した状況にあることを、日本の新聞はなぜ書かないのだろうか? 理解に苦しむ。

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朝日新聞社説は朝鮮日報を見習え:大事なことは知らせず「いたずらに騒がず」か、核ミサイル発射1秒前までそう言っていればいい~朝日新聞09年6月18日

 韓国の新聞、特に朝鮮日報は北朝鮮の核ミサイル保持の可能性に「座して死は待たない」とばかりに、覚悟を固めているコラムや社説が山盛りだった。

 それでは日本の新聞はどうか、と6月18日の朝日新聞社説<米韓会談/冷静に土台を固めてこそ>を読んでがっかりした。

 このタイトルにあるように、「冷静に」「落ち着いて」などの言葉のオンパレードで、北朝鮮の核兵器がどれほどの脅威かについてはわざと触れられていない。

 こんな論を緊張感もなく、よく書けたものだ。

 というか、きっと朝日新聞の論説委員は日本国民に核ミサイルの恐ろしさを知らせずに「北朝鮮国民は飢えていて可哀想なのだから」と思わせておきたいのと、金正日総書記が何をやるか分からない人間であることを知らせたくないのだろう。

 金正日氏は昔から、全斗煥・韓国大統領(当時)を暗殺するためならば、ミャンマーのアウンサン廟で爆弾を爆発、多数を死傷させたり、ソウル五輪妨害のために大韓航空の旅客機を爆破、数百人の乗員乗客を殺したり、と、その狂暴性は他に類例を見ないものなのだ。

 それを見れば、核運搬能力さえできれば、東京に核ミサイルを撃ち込むことを躊躇しないであろうことは十分理解できる。

 そういう危機感を韓国の記者は素直に国民に伝え、米朝直接交渉の危険性にも触れていた。米国のオバマ政権が日韓を切り捨てて、北朝鮮と手を結ぶシナリオだ。

 一方で、朝日新聞は危機感を伝えないことが使命だと思っているようだ。米朝直接対話に期待するスタンスもそうだ。話し合えば何でも解決する、と思うのはGHQ民主主義史観に毒されたままで、国際政治を知らないからだ。知っていて知らないふりをするのも得意らしいが。

 朝日新聞の読者はいざという時に、何のメッセージも受け取れず、防空壕にも入れず、核爆弾の直撃を受け、即死するだろう。朝日新聞はそういう悲惨な結果が見通せるような事態を糊塗するようなフニャフニャ社説を書いて、読者への責任を果たしているとでも思っているのだろうか。

 まず朝日新聞の社説を読んで見よう。

 <ミサイルや核実験で脅威の水準を高め続ける北朝鮮に対し、オバマ大統領と李明博大統領は一昨日の会談で、米韓同盟の強化を鮮明に打ち出した。米国は「核の傘」と韓国内外の軍事力によって韓国を防衛していく強い意思を示した。李大統領も「強力に対応する準備はできている」と語った。>

 ここまでは経過説明。

 <北朝鮮の軍事的挑発には結束して対応する。それは、北朝鮮の先行きが一段と不透明なためでもある。>

 この「一段と不透明」という言葉は便利だ。不透明ではない、透明になってきたことを分かりながら、よくこういう言葉が使えるものだ。核兵器開発を援助引き出しの手段にしている、という見方を取ってきた朝日新聞の今までの主張が間違いだったことが証明されつつあるのだ。

 <金正日総書記の健康不安は覆い隠しようもない。三男の正雲氏を有力候補に後継体制づくりが本格化してきた、との観測も韓国でしきりだ。たて続けの挑発行為の裏には、国内結束を誇示する必要がある事情が密接にからんでいるという見方が多い。権力の移行過程では何が起きるかわからない。更なるミサイル発射の動きもある。そんななかで、米韓がまず同盟を再確認したわけだ。>

 この見方は否定されているのだ。朝鮮日報が報じたシンポジウムで中国人が4人も5人も同じことを言っていた。北朝鮮の核実験とミサイル実験の狙いは「脅して金を取ることではなく、2012年に核保有国になることで、金正日の世襲があろうが無かろうが関係ない話だ」というのだ。米国内の見方もそうなってきており、韓国の政府筋もそう見始めている。だから、事実上の核保有国である北朝鮮と米国が裏で手を結ぶという事態を韓国の知識人らが憂慮しているのである。米朝会談は危険だ、と言っているのだ、韓国の人々は。

 <今月末には李大統領が来日し、麻生首相と会談する予定だ。ここで日韓の連携もさらに確認する必要がある。>

 月末なのか。しかし、日本は李明博大統領に日韓連携をよっろしく、としか言えないのだろう。

 <いたずらに騒がず、今後ありうる北朝鮮のさまざまな事態を想定して、冷静に対応策を考える。このことにまず日米韓が協調してあたり、共通の基盤を広げておきたい。>

 朝日新聞は北朝鮮の核の脅威のこと、どうでもいいらしい。

 日本国民が騒ぐことを問題視しているだけなのだ。

 しかし、なぜ日本国民が騒ぐのか、については故意に無視している。

 北朝鮮という狂ったような指導者が統治する国が核ミサイルを持ち、日本のどこかの都市に核爆弾を落とすかもしれないのに、「騒ぐな」と言うのだ

 じっと黙って、北朝鮮に時間を与えて、早く核ミサイルを完成してもらい、東京に核ミサイルを撃ち込んでください、と言っているのか? 

 朝日新聞はそんなに日本が嫌いなのか? ぜひ、日本を逃げ出して平壌に疎開してほしい。核ミサイルが降ってくる前にはどうせ平壌に逃げる気なのだろうが、今から正体を明らかにして北朝鮮に帰ってほしい。そうしないと、人のいい日本国民は朝日新聞が北朝鮮の新聞だと気づかないままで死んでしまうだろうから。

 <そのうえで中国やロシアとも連携する。6者協議参加国の北朝鮮を除く5者が地域の安全保障について共通認識を深めることも欠かせない。>

 李明博・韓国大統領が言っている北朝鮮を除いた5者協議→代表者としての米国と北朝鮮との協議、というシナリオはオバマ政権に言わされているのだろう。オバマ大統領は「そのかわり、核の傘を確約するのだから」と言ったのだろう。だから、李明博大統領は内心厭だったが、受けざるを得なかったのだろう。

 <その点で米国が「核の傘」を強調したのは、単に日韓という同盟国への約束からだけではない。米国の戦略上、より大きな狙いがあろう。「北朝鮮の核」は「日韓の核」を誘発しかねないという懸念が米国内に厳然としてある。かねて日本には核保有論議を真剣にすべきだとの意見が自民党の一部にあるし、韓国でも保有論や核燃料再処理を求める声がある。「核の傘」を提供することによってその懸念を鎮め、核の拡散を防ぐ。それは米国の基本的な安全保障戦略でもある。>

 「米国の基本的安全保障戦略」なのか? だとしても、それは米国の安全保障戦略であり、日本の安全保障戦略ではない。

 <いま必要なのは、国連安全保障理事会が採択した制裁措置を加盟国が着実に実行し、核放棄へ進ませることだ。>

 このきれいごとは何なのだ。何も考えていないのか。

 <オバマ大統領も李大統領も記者会見で、北朝鮮が挑発をして時を待てば代価を得られるという過去のパターンを繰り返さないと述べた。カギは米朝対話の糸口をいかに探り出すかにあろう。そのために中国にも動いてもらわねばならない。オバマ大統領は記者会見の冒頭、北朝鮮へのメッセージを発した。「核放棄と平和共存は、平和的な交渉を通じてのみ可能なものだ。このような機会は北朝鮮の前に開かれている」>

 何を書いているのだ。北朝鮮の核の危険性も書かずに。

 <「機会」を生かすかどうかは北朝鮮次第である。この発信の意味するところを北朝鮮はどう聞いただろうか。>

 この「ぬるさ」は何なのか? さすが北朝鮮の新聞だ。

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産経新聞は朝日新聞の金正雲訪中報道を誤報と言わんばかりだが、それはないだろう:北朝鮮は親類に恥はかかせないから~6月18日産経新聞、朝日新聞ネットから

 朝日新聞が6月16日朝刊1面トップで北朝鮮の金正日総書記の三男、正雲氏が訪中したという記事を掲載したが、産経新聞は6月18日午後10時過ぎにネットに<「朝日の報道はスパイ小説のよう」/正雲氏訪中、中国は否定>という記事をアップ、朝日新聞の報道を中国高官の口を借りて否定した。北京支局の矢板明夫特派員の記事だ。読んでみよう。

 <中国外務省の秦剛報道官は18日の定例会見で「北朝鮮の金正日総書記の三男、正雲氏が6月10日前後に訪中し胡錦濤中国国家主席と会談した」などとする朝日新聞の一連の報道について「報道された事実は存在しない」と明確に否定した上で「まるで『007』(英作家イアン・フレミングのスパイ小説のこと)を読んでいるようだ」と述べた。>

 という前文で分かる通り、産経新聞の天敵、朝日新聞の「誤報」を喜び勇んで問題視、書き連ねている。

 <朝日新聞はまず16日付の1面トップで「正雲氏が金総書記の特使として中国を極秘に訪れ、胡主席らと会談し、後継者に内定したことが直接伝えられた」と報道。同日の外務省の定例会見ではこれへの質問が相次ぎ、秦報道官は「中国側はこの件について承知していない」と述べ、婉曲な表現で事実上、報道を否定した。>

 朝日新聞も、もしも、ニュースの裏が取れていないんだったら、ここでやめておけばよかったのになぁ。

 <その後、18日付の朝日新聞はさらに1面などで「正雲氏と胡主席との会談に金総書記の長男、正男氏も同席していた」「正雲氏は深圳、上海なども訪れ、中国軍関連のホテルに泊まった」などと「正雲氏極秘訪中」の詳細を伝えた。>

 <そしてこの日の定例会見で、秦報道官は報道内容の確認を求める質問に対し「皆さんは前回の私の東洋的な含蓄のある表現を理解してくれなかったようだ」と語り「この際、窓に張っている紙を破りましょう(はっきりさせましょう)。報道された事実は存在しない」と明確に否定した。その上で一連の記事をスパイ小説にたとえ「彼らはどんな続編を書くのだろうか」と述べた。>

 <中国外交筋によると、外務省の会見ではメディアの報道内容を明確に否定しないのが慣例。メディアに「中国側が明確に否定しないときは本当」と勘ぐられることを防ぐためだという。>

 何なのだ、これは? 朝日新聞は北朝鮮の親戚じゃないか。その親戚の顔にまで泥を塗ったのか? 北朝鮮は。ひどい国だとは思ったが、仲間まで売るとはなんという国なのだろう。

 面白いのは朝日新聞のホームページには18日午前11時過ぎに次の記事がアップされていたことだ。産経新聞記事の後半部分で指摘している記事だ。

 <「後継者」正雲氏の訪中、正男氏も同席>。北京支局の峯村健司特派員の記事だ。

 <北朝鮮の金正日総書記の三男、正雲氏が極秘に訪中し、胡錦濤・中国国家主席と北京で会談した際、長男の正男氏が同席していたことがわかった。両国を頻繁に往復する金総書記に近い北朝鮮筋と北京の北朝鮮関係者が明らかにした。>

 一人だけが言っているんじゃないよ、複数から確認を取った話だよ、という書き方なのだが、これが「全くの誤報」だったのか?

 <正男氏は胡主席と面識があり、紹介者として側近とともに列席。北朝鮮筋は「後継者は正雲氏であり、北朝鮮指導部が一致して支持していることを中国側に強調する狙いがあった」と指摘する。>

 <正男氏は朝鮮労働党や軍のポストには就かず、中国の特別行政区マカオに住んでビジネスにかかわっており、中国共産党幹部とのパイプが太いとされる。正雲氏が訪中した6月10日前後、正男氏もマカオから空路で北京入りしたという。>

 まあ、こっちの兄弟愛の話の方が「弟が兄を暗殺しようとした」という古代王朝にありそうな話より儒教的なのだが。

 <正雲氏は6月13日、北京から広東省に向かい、さらに上海、遼寧省大連の経済開発区などを視察した後17日までに帰国した。中国政府は同日時点で正雲氏の訪中を公表していない。>

 公表していないのではなく、否定したのですが。

 なぜ一般の人たちに金正雲氏訪中が気付かれなかったか、について朝日新聞は18日午前5時過ぎに<正雲氏、隠密の訪中/身分告げず、宿泊は軍関連ホテル>という記事を同じ峰村特派員の記事で掲載していた。

 <北朝鮮の金正日総書記の三男正雲氏は17日までに、訪中日程を終えて帰国した。胡錦濤国家主席は正雲氏との会談で、強硬姿勢をとる北朝鮮に平和的な解決を強く求めたとみられる。正雲氏の後継内定を公表していない北朝鮮側の意向を受け、中国側は徹底した情報管理を貫いた。改革開放の先進地、深圳市のハイテク工場を訪れた際も「中央政府の関係者」とのみ紹介。随行の10人余りの男性も含め、身分や名前は告げられなかった。一行は工場内の施設や製品について簡単な説明を受け、次の地点へ。北朝鮮筋は「周囲には気づかれないようにすべて極秘で行われた」と明かす。>

 ここまで書かれると、朝日新聞が正しいような気もしてくるが。

 <宿泊先も、一般客の宿泊が制限されている中国軍関連のホテル。車列を組まずに移動し、外国首脳の視察を必ず取材する国営新華社通信の記者も同行させない徹底ぶりだった。父親の金総書記が2006年1月、深圳市や広州市を訪れた際に白バイに先導された約50台の車列で移動、完全封鎖された高級ホテルに宿泊したのとは大違いだ。>

 そして、言い訳だ。言い訳なのかどうか、まだ分からないが。

 <中国外務省の秦剛・副報道局長は16日の会見で、正雲氏の訪中について記者から問われたが、「我々はそのような状況は承知していない」と回答を避けている。中国側が公表を避けた理由は、ちょうど国連安全保障理事会で北朝鮮の2度目の核実験に対する新たな制裁決議が議論されていたからだ。国際社会の批判が強まる中「北朝鮮に対して弱腰だと思われるのは不都合」(北京の中朝関係筋)と判断したとみられる。それでも中国側があえてこの時期に訪中を受け入れたのは「政治と外交のルートが朝鮮半島の問題を解決する唯一の正しい手段」(秦・副報道局長)という原則を重視しているからだ。核実験後、中国側は訪朝団派遣を見送るなど、強い不快感を示してきた。北朝鮮も制裁決議を受けて、ウランの濃縮作業着手を表明するなど反発を強めており、中国との関係は悪化していた。「両国のハイレベル会談による打開が必要だった」(中朝関係筋)という。>

 このいきさつは分かりやすい。朝日新聞の記事が本当だったのではないか。北朝鮮が親族である朝日新聞を裏切ることはないだろう。

 <胡主席らは会談の中で、北朝鮮が参加を拒否する6者協議に替わる新たな枠組みやエネルギー支援についても提案したとみられる。「膠着した状況を打開する可能性がある」(北京の外交筋)との見方も出ており、北朝鮮の今後の対応が注目される。>

 朝日新聞としては平壌の意向もあって、絶対に戦闘への発展を避ける方向で記事をまとめたかったのだろう。「北朝鮮も本音は平和解決なのですよ」と弱弱しくも日本国民に訴えたいということなのだろう。そうしないと、北朝鮮に対する米軍のミサイル攻撃が始まるなどして、親類が死ぬといけないからか。何か、朝日新聞って発想が土井たか子という昔社会党の委員長を務めたおばあさんそっくりになってきた感じがする。表ではきれいごとを言って、裏では北朝鮮系のパチンコ利権屋の献金で選挙を戦う。いずれにせよ、日本国民のことを考えた記事ではない。

 この朝日新聞の記事の狙いなどはっきりしている。話し合いの道が続いているのだから、6カ国協議にかわる新しい枠組みをつくるのだから、中国も本気なのだから、だから、米国も韓国も、そして日本ももう少し冷静になって待っていようよ、ということなのだろう。朝日新聞の北朝鮮に時間を与え続ける戦術はまだ続いているのだ。

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2009年6月17日 (水)

韓国記者は日本を財布としか見ていないし、「戦犯国家」と言っている~6月17日中央日報、朝鮮日報

 朝鮮日報6月17日日本語版に<核問題/「中国の影響力は限定的」/中国の外交専門家が指摘>という記事が載っていた。池海範記者の署名記事だ。

 <韓国を訪れた中国の外交専門家らは16日、中国と北朝鮮はもはや軍事的同盟関係ではなく、正常な二国間関係であり、北朝鮮の核問題解決に向けた中国による影響力は限られている、との認識を示した。また、中国は北朝鮮よりも韓国との関係を重視しており、北朝鮮の核問題を解決するカギは米国が握っている との考えも明らかにした。>

 という前文だ。

 <中国の外務次官を務めた楊文昌・中国人民外交学会長は同日、仁川市で開かれた韓中未来フォーラムで北朝鮮問題に関し「多くの人は中国が北朝鮮の兄貴分なのになぜ北朝鮮に影響力を行使できないのかと指摘する。だが歴史は歴史にすぎず現在はあまりに大きな変化が生じており、中国の北朝鮮に対する影響力は限られざるを得ない」と述べた。>

 中国の外務次官というのは何人もいるはずだ。

 <北朝鮮問題の専門家として知られる閻学通・清華大国際問題研究所長も「大多数の韓国人は中国が韓国よりも北朝鮮を重視していると誤解しているが、事実は異なる。中韓関係は中朝関係よりも良好だ」と述べた。閻所長は「中国と北朝鮮に軍事的同盟関係はないことを外務省報道官が2回にわたって明らかにしている」と付け加えた。>

 厭らしい言い方だが、中国は北朝鮮が米国、韓国と戦争をしても中国は参戦しないよ、というメッセージがひとつ。それを中国外務省報道官が2度も言っているのだから、分かってくれ、というわけなのだろう。中朝関係よりも中韓関係が良好、というのは単なる現状認識だろう。深い意味はないと思う。

 <また、北朝鮮が核実験を強行した意図に関し、楊会長は個人的見解だと前置きしたうえで「北朝鮮が自国の安全保障能力に自信を持てないため、自ら安全保障を確保しようとする選択だと思う。北朝鮮はどんな危険な選択をもできる国であるため、長期的には米朝が対話し、南北関係の改善、多国間会合に必ず北朝鮮を含めるという3原則を堅持する必要がある」と指摘した。>

 ①米朝対話②南北関係改善③多国間会合に必ず北朝鮮を含める――が3原則だという。そして、その3原則堅持が必要だ、というのだ。何か米国にすべてを押し付けているように見える。

 <一方、北朝鮮の核問題と後継者問題に関連性があるという韓国内外の分析に関し、閻所長は「後継者問題が取り上げられる以前の2003年にも北朝鮮は核実験を行い、後継者問題が解決したとしても、核実験を放棄するとは思えない」と述べ、否定的な見解を示した。閻所長は「北朝鮮の目的は金銭でも、米国の関心を引くことでもないため、いくら(支援を)与えても核を放棄しないはずだ。北朝鮮の真の意図は核(保有国)の地位を確保することだ」と分析した。>

 ここはしっかりと見ているなぁ、という印象だ。やっぱりそうなのだろう。しかし、そう分かっていて、なぜ北朝鮮を延命させているのだろうか。

 <このほか、人民日報の徐宝康高級記者は「国連の対北朝鮮(制裁)決議採択以降、北朝鮮から出てくるシグナルを見る限り、北朝鮮は核武装を急ぎ、米朝間の対立も続くなど、核問題の長期化が見込まれる。韓国と中国は北朝鮮の核による最大の被害者であると同時に、(問題解決で)最も利益を得ることにもなるため、韓中は手を携え、南北間の全面衝突の防止に向け協力することが重要だ。特に対北朝鮮制裁が北朝鮮住民の生計を脅かすレベルに達することは防ぐべきだ」と訴えた。>

 中国の韓国取り込み工作そのものだ。えげつない。結局、北朝鮮を援助するのだ。そして、韓国にも北朝鮮援助をさせようとしている。日本孤立化の戦術だ。つまり、日米韓連携を壊そうとしているのだ。中国はこういう、シンポジウムのような形を借りても、そういう国家意思を貫こうとしている。

 日本人は甘いから、中国人が「北朝鮮の人民に罪はない」などと言えば、日本政府を責めるだろう。馬鹿ばっかりの日本のマスメディアだ。

 <中国共産党の幹部養成機関、中央党校の国際戦略研究所に在籍する孫建杭教授も「北朝鮮の核問題解決を中国だけに押し付ける態度は間違っている。北朝鮮が安全保障上の脅威を感じる対象は米国である以上、米国だけが問題解決能力を持つ。そうした点でオバマ政権は北朝鮮に対する態度を改める努力が必要だ」と語った。>

 何が「安全保障上の脅威」だ。泥棒に追い銭ということか。結局、中国の参加者は口々に北朝鮮の金正日総書記の代弁をしているに過ぎない。こういう動きがあるということはソウルの日本大使館は知っているのだろうか? 韓国側出席者はもしかすると「民主化勢力」とかいう金大中一派かもしれない。

 こういう国際宣伝合戦で日本は圧倒的に負けているのだ。日本の外交官は何をしているのだ。高い給料をもらって。

 中央日報の6月17日日本語ホームページには<「6カ国協議失敗/中国リードで北核解決へ」>の記事があった。これは米国の韓国人メディア関係者と大学との共催のシンポジウムで中央日報の記者が言った内容をまとめたものだ。つまり、親米韓国人の考え方が分かる記事だ。

 <「社会主義経済の失敗で在来式兵器では南韓と競争するのが不可能となった北朝鮮に、核兵器は体制守護の決定的手段だ。6カ国協議を通じた外交的方法で北朝鮮の核放棄を誘導することができると信じるのは純粋すぎる。6カ国協議は失敗した韓国と米国政府は方向を切り替えなければならない上、秘密外交などを通じて中国の積極的な役割を誘導しなければならない」。文昌克・中央日報大記者は15日、在米特派員出身の前・現職報道関係者の集まりである韓米クラブと米国アメリカン大学がワシントンで共同開催したセミナーでこのように主張した。>

 が前文だ。

 <アメリカン大学で行われたセミナーで文記者は「北朝鮮が中国から原油、食糧、原資材などの供給を受けることができなければ植物状態の国家になる」とし「北朝鮮に影響を及ぼすある唯一の国は中国。中国が立ち上がるよう、圧迫しなければならない」と強調した。>

 中国よ、圧力をかけよ、と叫んでも中国にその気がなければなぁ。

  <また「中国にとって北朝鮮は役に立つ馬鹿(useful idiot)だ」とし「北朝鮮が崩れて韓半島が統一する場合、中国は在韓米軍と国境で衝突するかもしれないという不安感と、北脱出者が多数中国に移動するだろうと懸念している。中国の積極的役割を誘導するには、中国の不安を先に取り除かなければならない」と述べた。>

 ここはみんな言うことだ。

 <それとともに「北朝鮮政権に変事が生じた場合、韓国と米国は中国の利益を害する行動をせずに、中国の意見を尊重し、韓半島が統一された場合、米国は38線以北に米軍兵力を移動させないとか、北朝鮮に一時的な親中国政権が樹立されることを容認するということなどを約束することも検討する必要がある」と述べた。>

 中国に譲れ、という話だろうか。

 <また「北朝鮮脱出事態が多数起これば、中国は莫大な負担を背負うほかないので、この場合には韓国と米国・日本などが負担を分けると保障することも方法だ」と付け加えた。>

 <文記者は「こうした問題は公開的な外交形式をもっては扱いにくい」とし「韓国と米国、中国などが秘密外交を稼働させ、実務的な検討を経て3カ国の首脳が意見を交換する必要がある」と述べた。「苦痛なしに適当な外交的言動をもっては北朝鮮核問題を解決することができないだけに、韓国と米国も苦痛を覚悟する決断をしなければならない」と力説した。>

 こういう発言の中で日本がどう扱われているか、じっと冷静に見ていると面白い。文記者は日本を金が必要な場合に財布代わりに使う便利な国、としか思っていない。秘密協議はあくまで韓国、北朝鮮、中国、米国でやるのだ、という。

 朝鮮半島をめぐる動きの中で日本はもはやここまで存在感のない国家になってしまった。どうしてか、と言えば、怖くないからだ。戦争もできない国。他国から言われたら素直に金を出す国、と見ているのだろう。先ほどの朝鮮日報論説委員も「戦犯日本が核を持つことは国際社会が許さない」と書いていた。韓国人らはそういう認識らしい。よく認識しておこう。

 そして、同じ日の朝鮮日報には李衛裁記者の<韓国軍/電算網へのサイバー攻撃、一日9万5000件>という記事もあった。北朝鮮人民軍が李明博・韓国政権に本格的に嫌がらせをしているらしい。

 <韓国軍の電算網に対するハッカーらのハッキングや攻撃が一日平均9万5000件余りに達することが分かった。このうち、軍の将校や国防部の幹部にハッキングのプログラムが入った電子メールを送り付け、パソコン内の軍事情報を盗み出すといった例も少なくないという。韓国軍の機務司令部は16日、京畿道果川の司令部で行われた「第7回国防情報保護カンファレンス」でこうした内容を公表し、「サイバー攻撃は昨年の約7万9000件に比べ20%増加した」と発表した。>

 北朝鮮は貧しくてコンピュータとかITとか何も知らないだろう、と思っている日本人がいるとしたら、認識を改めねばならない。あの国は朝鮮人民軍幹部と労働党員が上流階級で、その他は奴隷だと思えば理解しやすい。上流階級は日本人と同じことができる、と思えばいい。

 <同司令部によると、こうしたサイバー攻撃は中国経由で行われるケースが全体の半分以上と最も多く、北朝鮮も韓国軍の情報を盗み出すためにハッカー部隊を組織しているという。同司令部はこの日、具体的な被害規模は公表しなかったが、一部の将校や幹部らが電子メールによるハッキングプログラムに感染し、一部の資料が流出したという事例を挙げて説明した。>

 防衛省にもあるのだろうが、日本の記者はなぜ書かないのか?

 <軍が感知しているサイバー攻撃はウイルスの流布が8万1700件と最も多く、続いてハッキングが1万450件、異常なトラフィックを誘発させるいわゆる「サービス拒否(DOS)」による攻撃が950件、ホームページの変造が1900件となっている。軍はインターネットとは別に、内部の業務連絡には国防電算網をイントラネットで行っており、外部からハッキングできないようになっている。しかし、パソコン自体がウイルスやハッキングのプログラムにさらされると、ハードディスクに保存された情報が流出することから、これを防ぐために軍では侵害事故対応班を組織している。>

 韓国の方がしっかりしているのでは? 何しろ自衛隊員が機密情報を入れたパソコンにファイル交換ソフトを入れ、エロ動画をダウンロードしてウィルスに感染、機密情報を外に流出させた、という事故が後を絶たないのだから。しっかりせえ、自衛隊!

 <この日のカンファレンスでは参加者から、さまざまなサイバー攻撃に備えるために国家情報院や機務司令部、行政安全部などの各省庁に散在しているサイバー安全保障機能を総括するための専門組織を新設すべきとの意見が出された。>

 韓国が李明博大統領で本当に良かった。盧武鉉だったら、と思うとぞっとする。盧武鉉だったら金正日と共同戦線を組み、日本を攻めようとか、核を共同管理しようとか言いかねなかった。危なかった、と思う。

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北の核武装の時、米国は日韓を見捨てる~09年6月17日朝鮮日報コラム

 朝鮮日報日本語版ネット6月17日に<韓米首脳が会った日に浮かんだ不吉な思い>という楊相勲論説委員のコラムが掲載されていた。米韓首脳会談が行われたその日に最悪のシナリオが頭にうかんだ、という空想物語なのだが、これが現実になる可能性があるだけに怖しい。

 しかし、この緊迫感は何だろう。日本の新聞にはこの緊張感が欠けている。何か悲壮感漂うことを書いた人がいると、すぐにシニシズムいっぱいの論者が皮肉ってお終い、というのが今の日本の言論状況だと思う。

 その意味では、こうした硬質な悲壮感をそのまま字にできる韓国の論説委員がうらやましい。

 <米国のオバマ政権による北朝鮮政策の原則の第1番目に来るもの。それは北朝鮮を絶対に核保有国として認めないということだ。しかし、米国が認めようが認めまいが、北朝鮮はすでに核保有国だ。北朝鮮が2回目の核実験を行った際に使用した装置は、最初の核実験のときに比べて間違いなく小型化されているはずだ。将来的に3回目の核実験が行われれば、それはプルトニウム弾であれ、ウラン弾であれ、ミサイルに搭載可能な大きさの核弾頭を爆発させる実験となる可能性が高い。>

 まあ、そうかもしれない。可能性だが、今まで評論家が予想してケチをつけていたものの、北朝鮮はしっかりとミスを克服して、新たな段階に進んでおり、今度実験をすれば、核起爆装置の小型化のための実験であることは間違いないだろう。

 <韓国最高の武器専門家の一人、国防科学研究所長は「北朝鮮は核弾頭の小型化が可能な段階に入っている」とすでに言及している。その発言は現時点では事実とは異なるとしても、北朝鮮が核弾頭の小型化という目標を達成するのは時間の問題でしかないのは間違いない。>

 そういうことなのだ。これについて韓国が本当に恐怖心を持ってくれれば、日米韓で一致して北朝鮮の核基地とミサイル基地を先制攻撃できるのだが、それはソウルが火の海になることを意味する。そういう事態になっても韓国が日米韓の連携で北朝鮮への先制攻撃を納得するかどうか。金大中元大統領ら北朝鮮擁護一派は韓国政府要人へのテロをしてでも北朝鮮攻撃を阻止するだろう。現実には北朝鮮攻撃で日米韓が一致することは難しいだろう。

 <北朝鮮はすでにソウルや釜山、東京や大阪、さらには北京やウラジオストクを核ミサイルの射程圏に置いている。近く行われるとされる北朝鮮による大陸間弾道ミサイルの発射は米シアトル、サンフランシスコが射程圏に入るという事実を示すためのものだ。たとえその発射が失敗したとしても、北朝鮮が米国の西海岸、さらにはニューヨークやワシントンまで核ミサイルの射程圏に置くであろうことも、やはり時間の問題でしかない。>

 まあ、最大限の進歩があったと見た場合にはそうなる。

 <北朝鮮は現在保有しているプルトニウムだけでも20個ほどの核ミサイルを保有できるようになる。そのうえ、北朝鮮国内の天然ウラン埋蔵量は世界最大規模とされている。ウランによる核爆弾は大量生産も可能だ。>

 ウラン濃縮型が北朝鮮の本命だったのだろう。核疑惑を取引材料だとか手段だとか言っていたのは、確かに米国の政権もそうだが、最悪は金大中、盧武鉉両大統領だ。

 <北朝鮮がウランを本格的に濃縮すると、核弾頭の数は一気に増えることになる。数十から数百個の大陸間核弾頭弾を持つ国を核保有国として認めないというのは、まさに政治的な修辞としては可能としても、決して現実を直視するものではない。この世は言葉ではなく事実に基づいて動くものだからだ。>

 米国が何もできないうちに北朝鮮が数百のICBMを持つ国になるのだと?

 <米国と韓国は「北朝鮮に対して適切な見返りさえ与えれば、核を放棄するはずだ」という空しい妄想で10年以上の時間を浪費した今や米国は北朝鮮の動きを止める手段を持っていない。ワシントンで状況を見ると、米国は何の手段もないまま言葉だけを発しているという事実は明らかだ。今より何倍も強硬な国連決議が採択されたとしても、北朝鮮にとってはそれほどの意味はない。>

 そういうことだろうな。

 <北朝鮮の動きを止めることのできる唯一の国は中国だ。しかし、中国は北朝鮮の崩壊よりもむしろ北朝鮮が核を保有することの方がましと考えている中国が日本の核武装を恐れて北朝鮮の動きを止めるという考えも漠然とした推測にすぎない。第2次大戦の戦犯国である日本の核武装は口で言うほど簡単なことではない。だとすれば今や厳然とした核保有国となった北朝鮮と共存する以外にないということになる。>

 日本が敗戦国でなく「戦犯国」と表現されていることに注目したい。この論説委員も李承晩大統領時代の反日教育で育ったのだろうか。今の韓国の40、50、60歳代はまだまだ反日が多い。戦争の記憶、植民地の記憶はないものの、親の世代から耳にたこができるほど聞いて育ったからだ。そのうえ、李承晩大統領の反日教育である。竹島領有権であれだけ韓国民が一気に燃え上がる理由もそこにあるのあろう。日本への奇妙なまでに屈折した思いは30歳代にはもうないのだろう、と思うのだが。

 <たとえわれわれが認めたくないと思っても、北朝鮮が核保有国として登場する前の韓半島(朝鮮半島)とその後の韓半島は完全に異なる世界だ。米国はこれまでの歴史の中で、北朝鮮のような不良国家の政権から直接の核攻撃の脅威にさらされたことはなかった。北朝鮮は民間航空機爆破テロを平気で起こすような国だ。その指導者は「地球を破壊してやる」と公言するような人物でもある。>

 一般の国家元首に期待される理性的判断が期待できない人物であることは間違いない。

 <親米政権が発足したパキスタンの核にも神経を使っている米国にとっては、このような北朝鮮の核弾頭弾は非常事態を意味する。米国と日本が構築しているミサイル防衛システムは現時点ではそれほどの効果はない。これも日本の政府高官がすでに言及している。このような状況で北朝鮮が核弾道弾を保有したという事実が明らかになれば、米国の言葉と行動は今とは大きく異なってくるだろう。>

 そこだ。

 <米国は大統領が直接動き、その名称が何であれ、北朝鮮と事実上の核軍縮会談を行う可能性が高い。金正日総書記が2012年を「強盛大国の大門を開く年」としているのは、これを念頭に置いているのだ。ここに韓国が割り込むスキはない。北朝鮮の思い通りに事態は進むのだ。>

 そうなるだろうなぁ。

 <その会談が核軍縮だけを取り扱うものではないということは言うまでもない。北朝鮮と米国が韓国の頭上を飛び越えて在韓米軍を含む韓半島問題全体について話し合うという事実。これは想像するだけでも非常に恐ろしいことだ。米国は韓国に対して「核の傘」という保障を何度も約束するだろうが「核の傘」というものはそれ自体が言葉遊びだ。>

 この「韓国」の部分に「日本」を入れれば、状況は明白だろう。

 <そうなった時に、我々が自分たちで核武装を行う考えを持たないとすれば、それはもう国家ではないだろう。技術的には問題ない。しかし、我々の核武装を米国や国際社会が容認することはあり得ない。北朝鮮とは異なり、我々は国際社会との壁を作ってしまえば、わずか数カ月でも生存は難しい。結局、米国の核兵器をまたも持ち込むしかないということになるが、完全に変化した韓半島情勢の中で、米国がそのような選択を取るかは未知数だ。>

 そういうことなのだ。米国は北朝鮮がいやがることはやらないだろう。韓国に核兵器を持ち込まない、と米国は北朝鮮に約束するのだろう。そして、日本の駐留米軍も引き上げるかもしれない。北朝鮮が核弾頭を積んだICBMを持つ、ということはそういうことなのだ。

 <金総書記の年齢から考えて、金総書記は北朝鮮を核保有国として事実上世界に認めさせ、その後自ら語るように強盛大国の大門を開いた後に死亡する可能性が高い。核保有国には外からの力が及びようがない。そのため一般的に考えられているように「金総書記の死亡=北朝鮮の崩壊」は現実的に考えにくいということだ。大韓民国は金総書記死亡後も、統一ではなく核を持つ不良国家の人質として米国に頼りながら生きていくしかない。このような状況が現実味を帯びつつあるということだ。>

 日本も同じ運命なのだ。

 <これはあまりにも悲観的なシナリオと考えることもできる。しかし、これまで北朝鮮の核問題は最悪のシナリオ通りに進んできた。我々は現実を直視し、最悪の状況に備える必要がある。今、政府と国民はその準備ができているのだろうか。韓米首脳会談が行われた日に浮かんだ不吉な思いだ。>

 不吉な思いを日本人も抱いてほしい。あまりに何でもカルチャーっぽく皮肉っていると、真実が見えなくなり、パンとサーカスしか求めない愚民集団になり下がる。そして、国は滅びる。

 このような気骨あふれるジャーナリストがいる韓国がうらやましい。

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2009年6月16日 (火)

北朝鮮に核ノドンを持たせた戦犯は金大中、盧武鉉両氏だった~09年6月16日朝鮮日報

 最近の朝鮮日報は生き生きしている。中央日報も頑張っているが、サムソンの経営にも目配りせざるを得ず、米国の悪口を言いにくいという限界があるのかどうか、比べると朝鮮日報の素晴らしさがよく分かる、と思う。この記事もそうだ。

 <核問題/北朝鮮は保有OK、韓国はNOという二重性>という安勇炫記者の記事である。韓国左派の口先だけの「民主」=「北朝鮮のスパイ」の実態を遺漏なく語っている記事である。

 <核兵器製造は北朝鮮が行えば「自衛用」で、核の平和利用を韓国が行えば「危険な火遊び」となる。わが国の領海で、北朝鮮の船舶に対して貨物検査を行うことができるPSI(大量破壊兵器拡散防止構想)への加入を李明博(イ・ミョンバク)政権が実行に移せば、「戦争が起こる」として恐怖の雰囲気を造成する一方、「公海上でも北朝鮮船舶の検査を行うことができる国連制裁」をオバマ政権が推進した際にはまったく何の反応もない。野党や進歩左派勢力は北朝鮮の核問題に対して、このように「状況によって大きく変わる」二重基準の行動を繰り返している。>

 米国政権の二重基準は有名だが、韓国の「民主化勢力」は変なところだけアメリカの真似をしているのだろうか。

 <民主党は15日、韓米首脳会談のために出国した李大統領に対し「オバマ大統領からいろいろ学んでくるように」というメッセージを送った。民主党の丁世均代表は「今はオバマ大統領のような大胆な外交姿勢が必要な時だ」と述べ、李康来院内代表も「オバマ大統領から意思疎通の方法や包容性などについて学んでくれば、大韓民国にとってもプラスになるだろう」と述べた。>

 「何でもオバマ」か。日本では共産党の党首が一人はしゃいでいるが。

 <しかし、最近の北朝鮮の動きに対しては、李大統領よりもオバマ大統領の方が実ははるかに強硬だ。今月6日にはフランスで核問題についての質問を受けた際、「北朝鮮によるここ数カ月間の行動は非常に挑発的だ。われわれは北朝鮮の挑発に対して見返りを与えるような政策を続けるつもりはない」と答えた。>

 そういうことだ。

 <米国は国連安全保障理事会による制裁とは別に強力な金融制裁を予告している。米国が主導する安保理の対北朝鮮制裁決議(1874号)では、拳銃1丁でも北朝鮮への搬入を規制するなど、2006年の最初の核実験直後に決議された内容(1718号)よりもはるかに強硬だ。しかし韓国で民主党が、オバマ政権や国連安保理決議を公開の席で非難したことはない。逆に安保理決議案に対して支持を表明するスポークスマンの声明もあった。>

 オバマの米国はクリントンやブッシュのような失敗はしないでほしい。日韓の心ある人々はそう思っているのだが、どうなるか。

 <金大中元大統領は李明博政権がPSIへの全面参加を発表した直後、あるマスコミとのインタビューに応じた。その際「西海(黄海)で武力衝突が起こる可能性があるか」という質問に対して「あちら(北朝鮮)もPSIへの加入は宣戦布告と見なすと言っているのだから、じっとしていることはないだろう」とコメントしている。武力衝突の可能性について認めたということだ。しかし、安保理による北朝鮮への制裁の動きについては「今回は中国も参加している。制裁を行わないわけにはいかないだろう」と述べた。>

 公式にはそう言わざるを得ないところまで追い詰められていたのだったが。

 <それでも民主党や左派勢力はPSIが問題になっていたときとは異なり、国連制裁に対しては特別なコメントを発表していない。政府関係者は「なぜ米国大使館や国連に行ってろうそくデモを行わないのか」と不満を示す。明知大学の申律教授は「民主党は論理的な一貫性を失っている。韓国国内で支持基盤の顔色をうかがっているということだ」と述べた。また中央大学のイ・ジョウォン教授のように「結局オバマ大統領は自分たちの側、李大統領は敵という形の区別を行っているのではないか」という指摘も出ている。>

 そういうことなのだろう。ポピュリスト集団が敗れていく過程だったらいいのだが。

 <また6・15共同宣言から9周年を迎える時期を前後して、民主党などは一斉に「南北関係が悪化しているのは、李明博政権が6・15南北共同宣言を守らなかったためだ」という論理を展開し始めた。丁代表も14日「今すぐにでも李大統領が6・15宣言と10・4宣言を尊重するという確かな宣言さえ行えば、再び南北対話が可能になるだろう。“6・15宣言と10・4宣言を尊重する”という発言が李大統領の口から出るよう、皆が力を合わせて圧力を加え続けよう」と述べた。>

 南北、南北とそれだけが至高の価値のように喧伝し、国民を惑わせてきた金大中氏の罪は大きい。

 <しかし、統一部の千海成報道官が語るように、6・15宣言を守っていないのはむしろ北朝鮮という見方も根強い。北朝鮮は6・15宣言で約束した金総書記の韓国訪問を実行に移しておらず、離散家族の再会事業も中止させた。また開城工業団地の賃金を突然今までの4倍に当たる300ドル(約2万9000円)にまで引き上げるよう要求するなど、南北間の経済協力にも非協力的だ。それでも民主党などから北朝鮮に対して6・15宣言の履行を要求する声はまったく出てこない。>

 北朝鮮への批判をしないのは日本の左翼勢力と同じだ。日本の左翼勢力は政権を取っていないからいいが、韓国はこの反日勢力が10年間という長い期間、政権の座にあり、北朝鮮を核保有国家にしてしまった。

 <南北の核に関する権利についての立場も、まさに二重的と指摘する声が多い。民主党が「永遠に記憶する」という盧武鉉前大統領は2001年11月に米ロサンゼルスで「北朝鮮の核保有は自衛の手段という考え方には一理がある」と発言した。一部の左派は北朝鮮が数々の国際的な合意を足げにしながら核兵器を開発していることについて「統一が実現すればわれわれの核となる」などとして自主を強調する。しかし、韓国政府が一時自ら放棄し、その後最小限を取り戻そうとしている「平和的に核を利用する権利」について民主党のスポークスマンは「韓半島(朝鮮半島)の平和にまったくプラスにならない」と非難した。>

 盧武鉉氏の反日姿勢は特別なものがあった。裏で金正日総書記から指令を受けていたのかもしれない。つまり、韓国大統領ではなく、あの当時から統一朝鮮のソウル統治司令官だったわけか。

 <とりわけ金大中元大統領は2001年「北朝鮮は核を開発したこともなく、開発する能力もない。この点については自分が責任を持つ」と発言している。しかし、これに対してはいまだに「責任のある説明」は行われていない。>

 「自分が責任を持つ」という軽い言葉で北朝鮮に大金を渡し続け、その金を使って北朝鮮は日本を標的とする核ノドンを完成しようとしている。つまり、金大中氏は日本にとって最大の犯罪者なのだ。

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「北朝鮮は核小型化成功」と韓国国防科学研究所所長~朝鮮日報09年6月16日

 朝鮮日報ネット日本語版6月16日アップ分に<核問題/北朝鮮、核弾頭の小型化に成功か/朴昌奎・国防科学研究所長が主張>という記事が出ていた。

 <大陸間弾道ミサイル(ICBM)級と推定される長距離弾道ミサイルが搬入された平安北道鉄山郡東倉里ミサイル試験場で最近、発射台に大型の足場が設置され、ミサイル組み立て棟の補強工事も行われていることが確認された。また、第1回、第2回核実験が実施された咸鏡北道吉州郡豊渓里一帯で人や車両が引き続き活動するなど、第3回核実験を準備する動きも見られ、韓米情報当局が鋭意これを注視していることが分かった。これにより、今月16日の韓米首脳会談以降、北朝鮮がICBM級の長距離ミサイルの発射や第3回核実験などの強硬手段を再び繰り出す可能性が提起されている。>

 ここまでは偵察衛星で見ることのできる北朝鮮の動きで、目新しいものはない。

 <これとともに、北朝鮮が核兵器をミサイルの弾頭として搭載できるほど小型化することに成功した可能性がある、という国策研究所長の評価も飛び出した。国防部の傘下で各種の武器開発を総括する国防科学研究所(ADD)の朴昌奎所長が、15日に開催されたハンナラ党の北朝鮮核挑発・対策特別委員会の会議で「北朝鮮はスカッド、ノドン、テポドンの各ミサイルに搭載できるだけの核兵器の小型化が可能な状態とみられる」と述べた、と同会議の参加者複数が語った。これは「北朝鮮は核兵器の小型化を推進中だが、まだ成功したとはみられない」という韓米当局の公式判断とは異なる評価で注目される。>

 ここである。ここがニュースのポイントだ。この後はあまり関係ないニュースだ。

 <韓国政府の消息通は15日「北朝鮮は過去2-3カ月間、発射台に大型の足場を取り付ける作業を行ってきたが、この作業は最近完了し、発射台の準備作業は終了した状態」と語った。一方でこの消息通は、「しかしミサイル発射後の追跡作業に必ず必要となるレーダーなどはまだ設置されておらず、ミサイルも発射台に取り付けられてはいない状態で、発射が迫っているわけではない」と付け加えた。>

 <発射台に取り付けられた足場は、ミサイルに電源や燃料を供給するケーブルを接続し、人がミサイルを点検するに当たっても活用される。専門家らが衛星写真などを分析した結果、東倉里試験場の垂直発射台の高さは30メートル余りというこれまでの推定を大きく上回り、高さ50メートルに達することが分かった。これまでテポドン1号、2号ミサイルの発射が行われた咸鏡北道花台郡舞水端里試験場の発射台は、高さ32㍍だった。また東倉里試験場そのものの規模も、これまでは舞水端里試験場の2倍と考えられてきたが、実際には3倍に達するという。>

 <しかし、消息通が伝えたところによると、北朝鮮が今年7月の米国独立記念日前後にミサイルを発射するのか、あるいは必要な施設がまだ備わっていないということで当分の間発射を見合わせるのか、専門家らの間でも分析が食い違っているという。>

 <北朝鮮が国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議に反発し第3回核実験を行う可能性も、韓国内外の専門家やメディアによって提起され続けている。韓米情報当局は、豊渓里など2-3カ所を第3回核実験の候補地域とみて、集中監視しているという。現在のところ、2006年10月に第1回核実験を実施した豊渓里万塔山東側の坑道地域が最も有力な候補地だ。>

 ここまでは、言っては悪いけど現場の方々の興味ある話だ。そして、専門家の話である。

 <一方、15日にはハンナラ党の北朝鮮核挑発・対策特別委が開催された。会議に参加した議員らによると、同じく会議に参加した朴昌奎ADD所長「北朝鮮はプルトニウム2㌔(4㌔㌧級)を使って第2次核実験を行ったが、40㌔程度のプルトニウムを保有しているものと推定されることから、2㌔の小型核弾頭20個程度を保有できる」と述べ、北朝鮮について事実上の核兵器保有国に近いと評価したという。特別委に所属するある議員は「朴所長は、小型化に関する具体的な情報を根拠に評価したというよりは、幾つかの状況を総合して推定したものとみられる」と語った。>

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「金大中、盧武鉉が北朝鮮の核武装を許した」高まる太陽政策責任論だって、ようやく!~6月16日朝鮮日報

 朝鮮日報日本語版ネットに6月16日、<核問題/高まる太陽政策責任論>という記事がアップされていた。崔慶韻記者の記事。読んで字の如しの内容だ。

 <最近、北朝鮮の核問題をめぐって政界では金大中、盧武鉉両政権の対北政策責任論が頭をもたげている。北朝鮮が2回目の核実験に続き、10年近く国際社会に対し否認してきた「ウラン濃縮」カードまで切ったことがきっかけとなった。金大中元大統領が2000年に太陽政策を標榜し、南北首脳会談で6・15宣言を採択してからちょうど9年。6・15宣言9周年を迎えた15日、政界では「現状の責任は李明博大統領ではなく、金大中元大統領と盧武鉉前大統領にある」という指摘とともに、「6・15、10・4宣言を放棄すべきだ」との主張まで出た。北朝鮮は初めから核兵器保有という目的地に向かって走ってきたのに「核は交渉用」との誤った前提の下、「日差しを当て核を脱がせる」という間違った政策の処方を行ってきたという指摘だ。>

 韓国でようやくこういう主張が出てきた。金大中氏が盧武鉉自殺の後、北朝鮮と口裏をあわせるように李明博大統領の責任を追及したが、逆にその言葉は自分に返ってきた。当然と言えば当然の話なのだが、なぜか今まで韓国では当然の話が通らず、北朝鮮に気を使うばかりの金大中氏の言説に「民主化勢力」と呼ばれる金正日支持勢力が同調、保守層を口汚くののしり、韓国の分裂を画した。良識ある世論が黙りこくったのは、金大中、盧武鉉両氏がナショナリズムの発露を「反日」に見出す団体を野放しにして、朴正煕政権時代の業績を否定したこと、親日派という絶対的批判基準で反対派を弾圧したためだった。

 保守派が黙りこくったのをいいことに、平和や統一という誰しも反対できないスローガンを前面に出して北朝鮮にカネや物資を送り始める。その「太陽政策」の結果がこの核開発だった、ということがようやく韓国民に分かり始めた、というのだ。

 <自由先進党の李会昌総裁は、同日行われた党指導部会議で「李明博政権は過去の政権の過ちを修正するレベルで、6・15、10・4宣言の問題点とその法的効力を再度検討すべきだ」と述べた。李総裁によるこの発言は事実上、金大中・盧武鉉両政権が10年間標榜してきた太陽政策との断絶を要求したものと解釈される。最近、北朝鮮の核問題と南北関係の行き詰まりの責任を現政権の対北強硬路線に求める民主党の攻勢の中、「6・15、10・4宣言を尊重する」と表明し、前政権の責任論を取り上げることに慎重な立場を示してきた政府に対して、これ以上本質を無視すべきではないと要求したものだ。>

 李会昌氏は金泳三政権後の大統領選挙で金大中氏に敗れた本格保守の政治家だ。

 <与党ハンナラ党や専門家グループ内でも、いわゆる「太陽政策責任論」が本格的に取り上げられ始めている。この日、ハンナラ党の北朝鮮核特別委員会が開催した会議で、外交安保研究院の尹徳敏教授は「北朝鮮の核問題は初めから北が核を放棄すると見込み、交渉でそれを誘導できると信じた金大中・盧武鉉両政権の判断の誤りだ」と述べた。交渉意思がない北朝鮮を相手に交渉を試みたことによって、北朝鮮に核開発に必要な時間と金を稼がせたというわけだ。尹教授は「北朝鮮の核問題と南北関係の行き詰まりの責任は李明博大統領とオバマ米大統領にあるとの主張は、前政権から核開発を準備してきた北朝鮮がボズワース米対北朝鮮政策特別代表の3月訪朝の提案を無視し、核実験を実施したことを見ても根拠が足りない」と話した。同教授は「北朝鮮がこれまで否認してきたウラン濃縮問題を自ら表明したことで、もはや誰がうそをついたのか明らかになった。北朝鮮に莫大な資金を支援した金大中・盧武鉉両政権は、北朝鮮の核開発の責任から自由たりえない」と述べた。>

 尹徳敏教授は北朝鮮問題というか、朝鮮半島の安全保障問題に関する韓国最高の研究者だと思うのだが、さすがきっちりしたことを言う。

 <ハンナラ党の鄭玉任議員は、米国のクリントン・ブッシュ両政権の責任論まで言及した。鄭議員は、「北朝鮮によるクリントン・ブッシュ両政権との交渉が欺瞞戦術だったことが明確になった。結局、交渉で北朝鮮の非核化を引き出そうとした米国の前政権の戦略にも責任がある」と述べた。同議員は「北朝鮮に対し引き続き対話と包容で接するという太陽政策論者の主張は、北朝鮮の核開発にさらに多くの時間を与えようという欺瞞だ」と述べた。>

 こういう議論がようやく出てきたことを歓迎しよう。韓国の、特にソウルの若い世代がこういう真実を知ることがどんなに大事なことか。金大中氏に騙された連中は韓国にとって不利なことが出ると、北朝鮮のせいだ、と思われるものでも日本のせいにしていた。そういう微妙な問題で、若い世代が騙されないことが大切だから。

 <これに対し民主党の丁世均代表は、「金大中・盧武鉉両政権はこの10年間、南北平和と繁栄政策を積極的に推進し、相当な成果を引き出した。非現実的な対北政策で状況を悪化させた李明博政権は、6・15、10・4宣言の精神に立ち戻るべきだ」と反論した。>

 こういう金正日総書記の回し者の言説への不信感がもっともっと強まれないいと思う。

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読売新聞・勝俣秀通編集委員の「核武装の北朝鮮抑止へ敵基地攻撃能力を議論せよ」に同感~読売新聞6月16日朝刊

 読売新聞6月16日朝刊解説面<北の核、高まる脅威/「敵地攻撃」本格議論を/日米、作戦計画が抑止力>はまっとうな議論だと思う。結論は「打つ手なし」なのだが、それにしても、米国に集団的安全保障を確約さえておけ、というのだ。

 要約にあるように①核ミサイルへの「盾」となるMDシステムに対し、過信は禁物だ②米国が報復攻撃することを確認し、日米で作戦計画をつくる必要がある――というのが勝俣氏の主張だ。

 MDがいかに危ういものか、は過去15回の実験で3回失敗していることを挙げておけば十分だろう。勝俣氏が敵基地攻撃の重要性を強調する例としてあげたのが1991年の湾岸戦争だった。

 <当時、米軍は、イラクがイスラエルなどを狙って発射する弾道ミサイル・スカッド(射程500㌔)の発射基地を破壊するため、ミサイルの発射熱を感知する早期警戒衛星、15㌢四方の物体を判別できる画像衛星など数多くの軍事衛星でイラクを監視していた。ところが、スカッドはトレーラーを改造した移動式発射台に搭載されており、衛星で探知してから巡航ミサイルトマホークや航空機などで爆撃しても、発射台はすでに移動した後で、効果は上がらなかった。トマホークなどのハイテク兵器は「雲や雨、湿気などの影響で機能が低下し、目標の識別や破壊が不十分だった」(米会計検査院)とも報告されている。>

 防衛省の資料を基に書いたらしいが、軍ではこうした教訓になるデータは共有されている。怖いのは日本以上に北朝鮮の方が神経を使ってこういう資料を集め、徹底分析していることだ。

 <窮地を救ったのはイラク領内に潜入し、移動する発射台にレーザーを照射、米軍の放つ精密機器を発射台まで誘導した英軍の特殊部隊(SAS)だった。>

 なるほど、米国が英国を大切にするわけだ、と思う。「007」のような活躍があったのだろう。

 <北朝鮮の場合はどうか。核兵器を搭載できる弾道ミサイル・ノドン(射程1300㌔)は、日本を標的に100基以上が配備されている。多くは移動式発射台に備えられ、残りは強固な岩盤をくりぬいた半地下式のサイロから発射されるという。移動する発射機を叩く難しさは湾岸戦争で証明されており、岩盤を破壊するには強力な地中貫通爆弾も必要となる。目標をピンポイントで破壊するためには、特殊部隊の潜入も考えなければならない。>

 大変なことなのだ。

 <難題ばかりで、とても自前で敵基地攻撃能力を持つことなどできない。政府はまず、北朝鮮の核に対する日本の脅威認識を米国に共有させ、日本が攻撃を受けた場合には、米国が集団的自衛権に基づいて必ず報復することを確認する必要がある。と同時に、日米は敵基地攻撃を前提にした作戦計画の策定を急がなければならない。自衛隊と米軍の役割分担などは、その過程で明らかになるだろう。これらが現時点で取りうる唯一の抑止力だと思う。>

 こんな能力をすぐにつけろ、といわれてもつきっこない、ということだ。しかし、これが現在の唯一の抑止力なのか? そこには疑問が生じる。

 <この問題を巡っては、半世紀以上も前に「弾道弾等による攻撃が予想される場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨ではない」との政府見解が示され、自衛権の範囲内とされてきた。だが、北朝鮮が核ミサイルを発射する能力を持ちつつあるという最悪のシナリオを突きつけられるまで議論されることはなかった。この国の安全をどうすれば確保できるのか。その答えを出すまでに残された時間はそう長くない。>

 私は6月17日の国会党首討論で麻生太郎首相にこの問題を徹底的に取り上げていただきたいと思っている。鳩山由紀夫・民主党党首は小沢一郎氏の言った「第7艦隊だけいればいい」という主張をそのまま引き摺っているのかどうか。北朝鮮の核ミサイル完成に対処するのに集団的自衛権問題をどう考えているのか? しっかりと民主党の安全保障政策を聞き質していただきたいのだ。

 国民はただの人気取りの内閣を持つだけの時間的余裕を持っていない。少なくとも民主党が参院の「数の論理」を優先して社民党と連立すれば、安全保障問題の決定は閣内不統一でできないだろう。公明党は相当に「国民の安全・安心」を重視する方向に変わってきており、自公連立政権ならば集団的自衛権問題もクリアできるだろう。

 その辺、非常に重要な国民の判断材料なのだから、麻生首相はきっちりときいてほしい。できれば、鳩山氏が逃げの答えをしても二度、三度追及して、民主党の安全保障政策をしっかりと聞いてほしい。

 水曜日の党首討論はほかには何もいらない。それだけ聞いてくれればいい。どうせ鳩山邦夫氏問題を兄から問いただされ、新聞もテレビもそこに焦点をあてるだろうが、見ている人はちゃんと見ているのだ、ということで自信を持って臨んでほしい。蛇足だが、鳩山氏の問題は失敗だった。あとは、なるべく早く西川善文社長を更迭するしか人気回復の道はないだろう。

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別に大江健三郎氏に恨みがあるわけではありませんが:北朝鮮核問題を書いておられましたね~09年6月16日朝日新聞朝刊[定義集]を読んで

 朝日新聞朝刊に連載している[定義集]はたまに目を通す。

 大江健三郎氏は「セブンティーン」「芽むしり子撃ち」「個人的な体験」の頃から読んでいた。1935(昭和10)年1月31日生まれだという。愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)の出身地の記憶は、『燃えあがる緑の木』など後期作品で基調低音のようにテーマの底を流れているが、私は初期作品の目の付け所の新しさに惹かれた。もののない頃の東大文学部仏文時代の1958年、23歳で「飼育」で芥川賞を取ったころは、私はまだ小学生だったので、知らなかったが、高校生になると、大江の作品は貪り読んだものだった。

 ウィキペディアの「戦後日本の閉塞感をグロテスクな性のイメージを用いて描き」という表現が当たっているのかもしれない。「その後、外国文学の読書経験から独特の詩的な文体を獲得し、核や国家主義などの人類的な問題と、故郷の四国の森や知的障害のある子供(長男の大江光)という自身の体験とを重ね合わせ独自の文学世界を作り上げた。1994年ノーベル文学賞受賞」と大江の業績を簡潔にまとめてあったのは、さすがウィキである。当時はエロ本代わりに読んでいたのかもしれないが、右翼青年の性的衝動と政治への受動的参加を描いた作品など、まだ山口音弥による浅沼稲次郎刺殺事件の記憶が鮮烈だった時代だっただけに、社会的反響を巻き起こしたことも覚えている。「飼育」は朝鮮戦争なのか、と思ったが、ベトナム戦争に行った米軍兵士が戦死し、故郷に送り返す前に東大にあったエタノールいっぱいの死体収容水槽に浮いているイメージがどぎつかった。

 ウィキにあるように、大江はいつからか「人類」の普遍的な問題にかかわる。丸山真男、加藤周一、小田実ら進歩的文化人の系列に入っていく。そして「9条の会」で、小田、加藤の死後、中心的存在として「非戦」のメッセージを世界に発信している。

 それ自体は非常に貴重で大切な行為だと思う。いずれにしても人間は完璧ではなく、ミスを犯す動物だから、何かのトラブルで核爆弾のスイッチが入れば、核ミサイルは空を飛び、決められていた照準に命中、第3の核被害地が出現する。

 今、怖いのはそれだけではない。例えば、中国が東京に照準を合わせた中距離核ミサイルを北朝鮮北部と国境を接する地点に配置してあり、そこの人民解放軍兵士が何か勘違いをして、なおかつ制御装置が不調で、上官が何も考えない人で、という場合に東京は広島級核爆弾の10倍以上の威力を持つ核爆弾によって壊滅する。この場合には米国は「核の傘」のことを意図的に忘れるだろうから、日本人が「中国の鬼め」と怒るくらいで「やあ、どうもどうも、兵士が間違えちゃって、すまなかったね。これからはちゃんと教育をするから」という中国共産党指導部の釈明に日本国民が釈然としなくとも、自分で核兵器を持っているわけでもないし、通常兵器だって中国まで攻めていける武器はほとんどない。だから、日本の内閣に八つ当たりして「お前が無能だからこんなことになったんだ」と引き摺り下ろすくらいしかできず、表面上は国際的な同情を引くものの、途上国などでは「坊や、ごらん、豊かな生活をしていても、カギをちゃんとしめない、おまわりさんもいない国は滅びるのよ。戸締りはしっかりして、枕元にはちゃんと棍棒を置いておくことを忘れずにね」などという教訓話にされるのが落ちだろう。

 だから、国際的な紛争の話をする場合、日本はなかなか一般化できる対象ではない。日本は核攻撃しても黙って耐えてくれる国だし、何しろ広島のモニュメントだって「二度と過ちはおかしません」のような主語があいまいな標語が書かれているだけで、落とした米国への恨みもない国民なのだから、あと何発落としたって「恨みませぬ」くらいのモニュメントを建ててくれる、と国際的には思われているのかもしれない。

 しかし、核保有国同士でこうしたミスが発生するとこうはいかない。ニューヨークを狙った原爆が間違って発射された。胡錦濤主席はすぐにオバマ大統領に緊急連絡し「ミスだった」と告げるだろう。そうしないと全面核戦争で中国はコテンパンにされてしまうからだ。そこで、米国はMDで核ミサイルを撃ち落とせるかどうか。撃ち落とせなかったら、ニューヨークは火の海。米国民は「中国をやっつけろ」となるだろうし、オバマだって報復核攻撃を北京に向けて行うだろう。世界核戦争になる。

 このように核保有国を攻めてはいけない、というのが今の国際常識だと思うのだ。ぶっちゃけて言えば「攻めたい時には日本を攻めろ」ということだ。

 こういう国際常識、悪魔の思考法が各国の政権担当者の頭の中にこびりついている時、大江健三郎氏は北朝鮮の核について何をしゃべるのか。非常に興味を持って読んだのだ。

 <もし今日、加藤さんが出席していられたなら、聴衆は、いま世界に起こっていること、そしてその焦点をなす北朝鮮のミサイル発射と核実験について話を聞きたいだろう、と考えました。私は加藤さんの語られることを想像しました。>

 として、空想と想像は違う、という「定義」の話をしながら、加藤周一氏が広島原爆50年の1995年、広島でパグウォッシュ会議が開かれた時に、講演し、原爆後の広島に最初の医学調査団として広島に入った加藤氏の驚き、後遺症のひどさ、そういう情報が世界に伝わらず、世代間の断絶もあること、核保有国と比核保有国との不平等、核保有国間の核弾頭の数の不平等、核実験のシミュレーションの技法、レヴェルの差が核状況を考える際のキーポイントだ、と語ったことを大江氏の言葉で繰り返し、

 <加藤さんらしく原理的に正しい意見だ、しかし現実的に有効だろうか? そう問う人に、いま世界の政治権力がどう考えているかの一例を示してみます。>

 として、例にあげたのが例の米国務次官補の「日本が敵基地攻撃能力を整備するという結論出したら米国は当然、できる限りの方法で支持する」という発言だった。

 そして、この件については、

 <北朝鮮の基地の攻撃能力について、私らは日本を射程に収める中距離弾道ミサイル「ノドン」200発を実戦配備している、というニュースに接しています。>

 と書くだけで、「だから、こうしろ」という結論は何も書いていない。そして、話は広島のジャーナリスト、金井博氏のことに飛ぶ。核廃絶が進まない無念で涙を流している、という話だ。何か、北朝鮮の現実を前にして、「涙」が出てきた。そして、結びはこうである。

 <私は15年後が生の盛りの、若い人たちに問いかけます。その世界の平和は核を含む暴力の均衡によるか、国家間の不平等をなくして信頼を確立したことによるか、どちらが原理的で、現実的でもあると思いますか?>

 見出しが<原爆の威力か人間的悲惨か/信頼確立による平和を想像>である。

 大江氏の大きな勘違いは国際的な不平等を直せると思っていることだと思う。それは価値観の統一、ということだ。平等、不平等はあいまいなもので、その基準すら統一できない。だからOECDやIMF、世界銀行が統一基準を作って平等化に資するよう努力しても、途上国からは「それはワシントン・コンセンサスを押し付けるものだ」という批判が沸き起こる。大体、富を国際的に平準化したら、日本人など、朝ごはんはひえのスープ、昼抜き、夜はサツマイモのふかしたものを食べているようになるだろう。それでいい、という主張が大江氏の主張なのか? あまりに理想論に固執して、グローバル社会の現実に目をつぶっていると、日本人に悪影響しか与えないのではないか?

 この文章を読んでも、では日本人は何をすべきか、は何も浮かんでこない。北朝鮮の言うがままで、30万人くらいの奴隷でも金王朝に朝貢することでも夢想しているのだろうか? どうも日本人という意識がないことは前から気付いていたが、こういう人物を定期的に使う朝日新聞という新聞社の見識が疑われると思うのだが。

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2009年6月15日 (月)

北朝鮮は6年8カ月間、嘘をつき通した:ウラン濃縮~6月14日朝刊各紙と中央日報、朝鮮日報6月15日

 6月14日朝刊各紙は北朝鮮が「ウラン濃縮作業に着手する」という外務省報道官声明を出したことを1面で大きく扱った。国連安保理の北朝鮮制裁決議採択に反発し、プルトニウムは新規に抽出する分を全量兵器化するとも言っている。どのくらい怖いものなのか? 日本の安全保障に影響するものなのか? 日本はこういうスタンスからの記事が弱い。テポドン発射よりもノドン発射の方が日本には影響が大きい、などという基礎知識すらない記者が多いからだ。

 日本の新聞はいずれも「北朝鮮がウラン濃縮を公式に認めるのは初めて」とは書いているものの、今までいかに日米韓など関係国を騙してきたか、の検証はあまりされていないようにも見える。あっさりしているのだ。

 ただ、安全保障問題に関する情報も書いている。日経新聞は6月14日朝刊国際面<濃縮ウラン型、核実験不要>でソウル支局の尾島島雄特派員が、

①ウラン濃縮型はプルトニウム型に比べ起爆装置の開発が容易で必ずしも核実験をする必要がない

②パキスタンはウラン濃縮型から開発を始めた

③プルトニウム型の方が小型化はしやすいが、起爆装置の安定化に技術が要り、時間がかかる

④北朝鮮は抽出前の未処理プルトニウムが8㌔㌘あると申告している。新たに1、2個の核爆弾を追加できる量に当たる。既に核爆弾6、7個程度を製造できる量のプルトニウムを抽出済みという説もあり、訪朝した米国の研究者に「既に武器化した」と語った北朝鮮高官もいる。申告が事実で今回の声明通りプルトニウムを兵器化すれば計7~9個の核爆弾を作れる計算になる

 ――と書いていた。

 毎日新聞14日朝刊2面<北朝鮮ウラン濃縮宣言/「核放棄あり得ぬ」/「瀬戸際外交」強める>で北京支局の西岡省二特派員は、

 <プルトニウム兵器化に加え、他国に見つかりにくく自国の豊富な天然ウランを使えるウランによる核開発も公式に表明した。>

 と、この技術が確立されれば、北朝鮮にとって非常に有利であることを説明していた。この指摘は地政学的にもっともっと日本人に理解されるべきものだろう。

 毎日新聞2面にはワシントン支局の草野和彦特派員による<米国「第3次核危機」の声も>で過去の北朝鮮の嘘を書いていた。

 しかし、韓国の新聞の方が執念深い。この経緯については韓国紙、中央日報を読むことにしよう。

◆中央日報の記事

 韓国の中央日報は6月15日のネット日本語版に<6年8カ月ぶりに発覚した「ウラン濃縮」の真実>というまとめ記事を掲載していた。

 これは疑惑を6年8ヵ月間否定し続けてきた北朝鮮が一転、認めたことを中心に論考した記事だ。

 <ウラン濃縮計画(UEP)をめぐる朝米間の真実探りが6年8カ月ぶりに終止符を打った。これまで米国と北朝鮮はUEP問題をめぐり「全部知っているから自白しろ」(米国)という督促と、「そもそもないものをいかにして自白できるか」(北朝鮮)という反論を交わしていた。しかし、北朝鮮外務省は13日付の声明を通じ、これまでの「否認戦術」を自らやめた。>

 という書き出しだが、この部分をクローズアップした朝鮮日報の記事では<北朝鮮のウソ>という見出しで、書いていた。中央日報の続きを読む。

 <UEP問題は2002年10月に触発された2回目の核危機の始発点となった。当時、北朝鮮の平壌を訪れたジェームズ・ケリー米国務省次官補は情報機関の分析をもとに「北朝鮮が兵器級ウランを濃縮するのは合意に違反する」と追及した。これに反発した北朝鮮は1994年のジュネーブ枠組み合意で凍結した寧辺原子炉を再稼働し、核不拡散条約(NPT)からの離脱を宣言するなどの強硬措置で立ち向かった。>

 例の「ソウルを火の海にする」という脅し発言があった朝鮮半島第1次核危機である。

 <それ以降、国際原子力機関(IAEA)の査察官がいない「ノーマークのチャンス」でプルトニウムを作りはじめ2006年10月には初の核実験に踏み切った。UEPへの圧迫を、プルトニウムの追加生産と兵器化の口実に利用した戦略であった。米国は証拠を挙げ、北朝鮮に圧力をかけた。パキスタンの核科学者アブドル・カディル・カーン博士が遠心分離機およそ20機と設計図を北朝鮮に渡していたこともわかった。>

 カーン闇のコネクションから北朝鮮が技術を導入していた。これは核不拡散問題に米国が気を抜いていた時に北朝鮮が行ったズル行為だった。

 <2003年には遠心分離機の主要部品(高強度アルミニウム管200㌧)のうち1回分を積み込み、ドイツから中国へ向かっていた貨物船がスエズ運河で摘発、帰港させられた事件が発生した。当時、輸入業者の住所地は北京となっていたが、代表者はIAEA本部があるウィーンに滞在し、原子力関連業務を担当していた北朝鮮の元外交官だった。>

 あれは2003年だったのか。もう随分昔の話のようだが。イラク戦争の陰に隠れていろいろな悪事をし放題だったのだ。

 <北朝鮮は、ほぼ同じ時期に、ロシアを通じ大量のアルミニウム管を輸入することに成功した。遠心分離機およそ2500機を作れる量だった。だが、本格的なウラン濃縮工場を稼働し核兵器の材料を作るには、北朝鮮の技術も物量も不足している、と情報機関は判断した。>

 アルミニウムとか、日本人にはなかなか判りにくいニュースだった。専門家もこの時点では事態を甘く見ていた、というよりも、甘く見るように米政権からの圧力があったのではないか。イラクに集中しており、北朝鮮まで手が回らない、という時期だったのだから。

 <当初、高濃縮ウラン(HEU)という用語が、いつの間にか「高」を除いた「UEP」に変わったのは、そうした理由からだった。北朝鮮が自繩自縛に陥った側面もあった。2007年11月に北朝鮮を訪問した米国務省のソン・キム課長ら一行に、北朝鮮は「アルミニウム管はミサイル部品として輸入したもので、UEPとは関係ない」とし、サンプル二つを提供した。>

 これが2007年、一昨年の話だ。

  <だが、米国に持って行き精密に分析したところ、同サンプルからウラン濃縮関連の成分が検出された。情報筋は「パキスタンから仕入れた遠心分離機と同じ所に保管しておいたため、濃縮の痕跡が検出されたようだ」とし「北朝鮮が、米国の検証能力を過小評価していたようだ」と話した。>

 証拠は着々とそろっていった。しかし、時間がかかっている。試料提供→分析、という過程を繰り返さなければならないので、どうしても時間がかかる。報道は細切れになる。日本の読者は関心をなくす。「まあ、今はまだ大丈夫なのだろう」で済ませていなかったかどうか。

 <こうした紆余曲折の末、朝米両国は昨年4月に秘密了解覚書を交換し、UEP問題を一時縫合した。北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の第2段階(寧辺原子炉の無能力化の段階)では、UEPを問題視しないことにしたのだ。>

 <米国は依然、兵器級の濃縮段階に至っていないUEPより、抽出量が40㌔㌘を上回るプルトニウム問題がより急がれる課題だと判断した。しかしそれから約1年後に北朝鮮は「ウラン濃縮に着手する」と明らかにした。秘密裏に、絶えずUEPを進めてきたことを自ら認めたのだ。>

 北朝鮮がいかに嘘をつくか。その言説がいかに信用できないか、が分かる。これでもまだ米国は話し合い交渉を続けようというのだろうか?

 中央日報は<北、ウラン濃縮技術のレベルは>で詳しい分析記事も掲載していた。

 <北朝鮮は「ウラン濃縮技術の開発に成功し“実験段階”に入った」と主張している。核兵器向けの高濃縮ウランは、核兵器の原料となるウラン-235(U-235)の割合が90%以上のウランのこと。現在としては北朝鮮のウラン濃縮能力を正確に測定しにくい。しかし、北朝鮮が「実験段階」だと公言することによって、初歩的な「ガス遠心分離技術」は確保したものと専門家は見ている。>

 初歩的技術を獲得した段階なのか?

 <情報当局は北朝鮮が1996年にパキスタンと協約を結び、ノドンミサイルの技術を提供する代わり、ウラン濃縮技術や資材などを仕入れたものと把握している。当時、パキスタンの核科学者アブドル・カディル・カーン博士とのコネクションを通じ、遠心分離機およそ20機を北朝鮮が導入したということだ。>

 1996年と言えば、日本はバブル崩壊で金融がおかしくなる少し前。内政問題で相当にガタガタしており、安全保障問題できちんとした対応ができなかったのだろうか?

 <しかし、北朝鮮がいますぐにウラン爆弾に入る兵器級の高濃縮ウランを作れるかは依然として未知数だ。遠心分離機およそ20機では、年600㌘ほどの高濃縮ウランを作れるウラン核爆弾1基を作るためには、高濃縮ウラン15-20㌔㌘ほどが必要とされる。北朝鮮がロシアから遠心分離機2600機を作れる高強度のアルミニウム150㌧を輸入したことが分かっているが、きちんと作動できる遠心分離機を作れたかどうかは未知数だ。>

 すべて分からないベールの中だ、と書いている。米国の情報機関も同じ状態なのか?

 <遠心分離機に必要とされる高強度ベアリングなどは、スウェーデンなど一部先進国でのみ生産されており、戦略物資と見なされる(輸出統制品目)。北朝鮮が自国の技術で高強度のベアリングを作ったとしても、濃縮効率が大きく落ちる可能性があるということだ。>

 この辺がよく分からない。

 <ガス遠心分離法ウランを遠心分離機に入れた後、1秒当たり5万回以上の超高速で回転させる場合に発生する遠心力を活用し、U-235とU-238を分離できる。相対的に重いU-238は外部に集まり、核兵器の原料となるU-235は内側に集まるようにし、U-235の濃度を高めれば、「U-235が90%以上の高濃縮ウラン」が生成される。>

 ウラン核爆弾の生成法だ。

 <このときに使われる遠心分離機は、円筒(半径30㌢、長さ1-2㍍)がベアリングの上で回転する装置だ円筒は高強度アルミニウムやチタニウムなどの金属で作られる遠心分離機1機を1年間稼働すれば90%以上の高濃縮ウランを30㌘ほど分離させることができる。>

 ここまで技術的な問題を分かり易く解説してあれば、黒井文太郎氏の新書並みだ。読者にはよく分かって、親切だが、日本の新聞ではなかなかこういう記事が載らない。

 朝鮮日報も6月15日、<核問題/北朝鮮のウラン濃縮、追跡が困難>という丁寧な解説記事を掲載していた。ワシントン支局の李河遠特派員とソウルの任敏赫記者の合作である。

 <国連安全保障理事会が満場一致で採択した制裁決議1874号を受け、北朝鮮は数時間後に「ウラン濃縮」というカードで対抗した。北朝鮮は6カ国協議の過程で米国が指摘してきたウラン濃縮疑惑をでたらめだと否定してきたが、今回はウラン濃縮が「技術開発段階」ではなく、直ちに稼働可能な「試験段階」にあると明言した。国際社会に公にウランとプルトニウムの両面で核武装を続けることを宣言した格好だ。>

 中央日報と同じことだが。

 <プルトニウム抽出方式によるこれまでの核開発プログラムはその進行を外部から察知することが可能だが、ウラン濃縮は秘密性が強く、国際社会の対応はさらに困難になる見通しだ。>

 ここが問題なのだ。国際社会が見えないうちに、北朝鮮が核ノドンを完成する、という悪夢だってないわけじゃない。

 <北朝鮮は13日、対外発表の形式で最もレベルが高い「外務省声明」で、「安保理決議1874号を断固糾弾、排撃する」とし①ウラン濃縮作業の着手②新たに抽出されるプルトニウムを全量武器化③(船舶検査など北朝鮮に対する)封鎖に対する軍事的対応――という3項目の措置を取ると主張した。>

 <声明はまた「今日の対決はわが共和国の自主権と尊厳に関する問題であり、朝米対決だ。核廃棄は絶対に徹頭徹尾あり得ず、われわれの核兵器保有を誰が認めようと認めなかろうと関係ない」と主張した。声明は「委任に従う」との表現で、北朝鮮最高指導部の意思を反映したものであることを明確にした。クリントン米国務長官は、北朝鮮外務省の声明について、「北朝鮮の継続的な挑発行為は非常に遺憾だ。彼らはすべての人から非難を受けており、さらに孤立の度を深めている。国連制裁決議1874号は北朝鮮が過去数カ月続けてきた挑発行為に対する一致した対応を示すものだ」と強調した。>

 クリントン氏は必死に強い言葉を使っているのだが、まあ、結論は見えているし、私にすら推測できる結論だったら、北朝鮮が本気で対応することなどありっこない。

◆秘密性高いウラン開発

 <韓米当局は北朝鮮が明らかにした対応措置のうち、特にウラン濃縮を懸念している。「秘密性」があるためだ。核爆弾を製造する方式のうち、ウラン濃縮は北朝鮮が既に寧辺地区の施設で行っているプルトニウム再処理とは異なり、大規模な施設が必要なく、放射能放出もほとんどないため発覚しにくい。ウラン濃縮を行うためには、主に遠心分離機が使われるが、これは990平方㍍ほどの用地があれば、関連設備を設置することが十分に可能だ。その上、北朝鮮が既に建設済みの地下施設に設備を設置できる、と当局はみている。寧辺のように米偵察衛星を通じた摘発は容易ではない。>

 詳しい。このくらい書いてくれれば、怖いということが理解できる。

 <また、ウラン濃縮による核兵器開発は、臨界量(2㌔㌘)さえあれば容易に爆発させられる長所があり、核実験も必要ない。科学技術政策研究院の李春根・南北協力チーム長は「老朽化した寧辺の施設を捨て札として使い、核開発をウラン濃縮に全力を挙げる方向に転換する可能性が高い」とみる。>

 面倒なプルトニウム核爆弾ではなく、簡単に作れるウラン核爆弾を全力で作り上げるのが強盛大国への道なのか?

◆ウラン技術の把握困難

 <北朝鮮は「ウラン濃縮は試験段階に入った」と主張しているが、実際に濃縮技術と関連施設がどのレベルに達しているかを正確に把握できずにいる。北朝鮮の関連部品入手状況などを通じてのみ推定が可能だ。>

 <北朝鮮はパキスタンで「核開発の父」と呼ばれるカーン博士のルートを通じ、1998年から2001年にかけ、遠心分離機20台と設計図を受け取ったことが判明している。また、ロシアから遠心分離機の材料として使われる高強度アルミニウム管150トンを輸入した疑いも浮上した。このほか、国内外の情報当局は、北朝鮮が平安北道天馬山などにウラン濃縮活動と関連する施設を秘密裏に建設し、稼働中と推定している。>

 すべてが状況証拠の積み上げ、というのも苦しい限りなのだが、北朝鮮の核関連技術者が亡命などしないのだろうか?

 <専門家は、北朝鮮が遠心分離機の原型と設計図を保有しており、技術的にはウラン濃縮に着手できるレベルとみられるが、関連部品を完全には準備できずにいると分析している。北朝鮮には遠心分離機に必要な高強度ベアリングなどを独自で生産する能力がなくこれら物資の輸出入は厳しく規制されており、外部から購入できない状態とみられる。>

 やはり船舶検査は有効なのではないか。

 <しかし、核兵器の確保に北朝鮮が国の「命運」を懸けている点からみて、北朝鮮のウラン濃縮技術と施設確保が一般的な予測の範囲を超える可能性も否定できない。一般的にウラン濃縮方式で核兵器1個を作るのに25-30㌔㌘の高濃縮ウランが必要だ。それだけの濃縮ウランを集めるためには、P1型遠心分離機で2500-3000台、P2型遠心分離機なら1000-1200台を1年間稼働させる必要があるとされる。>

 この辺の計算をきっちり(?)するところが実証的で素晴らしいと思うのだ。日本では軍事オタクのブログや雑誌論文、本で見るしかない。

 <北朝鮮が入手した高強度アルミニウム150㌧ンは、遠心分離機約2600台が必要な分量に当たるため、これをすべて遠心分離機の材料として使用すれば、年間1-2個のウラン爆弾を生産できる計算だ。>

 やっぱり急がないと、北朝鮮は手持ちの核をどんどん増やしていく。日本の安全保障に影響することは確かだ。ウラン濃縮はやっぱりヤバイのだ。

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2009年6月14日 (日)

日本の外交担当記者も韓国人記者くらい熱心に書いてほしい~朝鮮日報6月14日外交官人事異動の話を読んで

 韓国の新聞記者は優秀だ、と思う。最近、朝鮮日報、中央日報の北朝鮮絡みの記事を読み、その取材の幅広さと深さに感銘を受けた。結局、やる気なのだと思う。

 朝鮮日報日本語版ネットに6月14日にアップされた大型コラム<韓国外交部の人事システムの後進性>はワシントン支局の李河遠特派員が書いているのだが、米国務省の人事異動システムをよく説明しており、それと韓国外交通商省との比較なのだ。寡聞にして、日本の記者がこのような米国の外交官の人事異動のシステムについての内幕を書いた記事を見たことがない。アルバイト原稿の月刊誌、週刊誌などでは書いているのかもしれないが、読者はこういう記事を読みたがっているのだ。

 じっくりと、朝鮮日報のコラムを読んでみよう。

 <在韓米国大使館に今年8月、ジョセフ・ユン政務参事官の後任として、4年前に韓国で勤務したジム・ウェイマン氏が着任する。米国務省韓国課で北朝鮮問題を担当してきた東アジア・太平洋担当次官補補佐官のユリ・キム氏は間もなくイラクへ赴任する。韓国の担当者として勤務した後、イラクへ赴任したジム・ヘラー氏は近く、語学研修のため来韓する予定だ。また、韓国課の副課長を務めるモーリン・コーマック氏は欧州課長への昇任が内定している。>

 大使人事ではない。書記官人事や公使人事である。日本のワシントン特派員や外務省担当記者は忙しすぎてこういうことには関心がないのだろうか?

 <米国務省で韓国に関連する業務を担当してきた外交官たちの人事異動の内容は、記者が最近把握したものではない。すでに昨年末、その内容は知っていた。記者の能力が優れていたからではない。国務省の人事システムでは、高級幹部ではない多くの外交官たちの異動が、早ければ1年も前に決まるからだ。>

 ということだという。

 <コーマック副課長は昨年末、欧州課長への承認が内定した後、イギリスやフランスなど欧州諸国に関することが話題になるたび、新聞を読んで勉強してきた。先日イラクへ赴任した在韓米国大使館のヘンリー・ハガード元政治部長は、1年後にどこの国へ赴任するか知っていたため、その国の言語に関心を注いできた。>

 そういう人事異動システムであることは駐在した記者たちだけのインナーの情報として大切にしてあったのだろうか?

 <一方、韓国の外交官たちは、赴任する国が2カ月前にようやく決まる。在外公館への異動は通常8月に行われるが、外交通商部の古い人事制度では、それが6月に初めて決まるためだ。>

 日本だってそうだ。

 <現在の外交部の人事システムでは、誰も自分から行きたがらないアフリカ諸国の大使館は、ほかの地域の大使館の人事異動を決めた後、最後に決まることになっている。ソウルで勤務した経験を持つ米国の外交官Aさんは「韓国の人事システムは理解できない。家族全員の移住を伴う外交官たちにとって、2カ月前まで予想もしなかった国への異動が突然決まるというのは過酷きわまりない」と話す。>

 日本のいろいろなシステムがそのまま生き残っているのが韓国である。韓国で「組織に矛盾がある」と指摘された場合、大体は日本にも適用できる話なのだ。

 <2-3年間にわたって勤務する在外公館が、2カ月前になってようやく決まる韓国の外交官たちは、赴任先の国について研究する時間も十分に与えられないまま着任の日を迎えることになるケースが大部分だ。このような形で在外公館へ赴任する外交官たちが果たして、赴任先で自らの能力を100%発揮することができるだろうか。突然見知らぬ国への赴任を命じられた外交官たちが心を落ち着かせるまでには相当な時間がかかる。開発途上国へ赴任を命じられた外交官たちの悲哀は、外交部の上役たちもなかなか理解せず、気を遣ってくれないというわけだ。劣悪な生活環境の改善や、人員の増員に関する提案も圧回しにされるのが常だ。>

 ワシントン大使館で韓国外交官たちの不平不満をじっくり聞いて、勉強したのだろうと思うが、詳しい。

 <異動が急に決まるため、外交部では定期人事異動の後、必ずといっていいほど不満が噴出する。昨年、「資源外交」という大義名分で、外交官たちが突如アフリカ諸国へ追加派遣されたとき、主要国の公館のある外交官は、あらゆるつてを頼って異動を避けたという噂が流れた。またある外交官は全く予想もしなかった地域への異動を命じられ、そのことを妻にどう説明したらよいのか悩んだという。>

 コネが目立つ韓国ならでは、の話もあるだろうが、基本的には日本の外務省も派閥人事が罷り通っているから、同じである。陰に隠されているだけである。

 <こうした状況の中、カメルーンに大使館を開設するため昨年10月に単身赴任していた外交官が最近、公務のためソウルへ一時帰国した際に急死した。この件をきっかけに、普段個人的な意見を表明することがなかった外交官たちが、外交部のイントラネットで、同部の人事システムや事務手続きの本質的な問題点を指摘している。>

 改革の機運か。

 <環境が劣悪な地域で勤務していて亡くなった外交官に対する責任が、100%外交部にあるわけではない。また、外交官であれば、どんな国への勤務も喜んで受け入れなければならないのが宿命だ。だが、未来を予測できない人事システムが、外交官たちの士気を低下させているのではないか、過労に追い込んでいるのではないか、今一度分析してみる必要がある。>

 過労死だったのか。

 <これは外交官たちの福利厚生だけのためではない。今や外交部の人事システムが、国益や国家の競争力に直接・間接的に結びついているという認識が求められる。在外公館の開設のために奔走し、生後7カ月の子どもの顔も見られないまま世を去った外交官、ユン・ホングンさんの冥福を祈りたい。>

 そうか、この尹氏と友人だったのかもしれない。それにしても、友人を失った義憤からここまで書けるのはすばらしい。

 こういう記事を日本の外務省の人事異動システムについて日本の記者の記事で読みたい。大体、オバマ政権の大使一覧表を見ると、民間人大使が異常に多い。日本は職業外交官だけだ。どっちも長所短所があるので一概には言えないが、経団連会長を駐英大使くらいにしてもいいではないか、とも思う。

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84歳の元大統領、金大中氏の発言と韓国政界の冷やかさ~6月9日→14日の韓国紙から

 昨日、今日と少し時間があったので、韓国の新聞の日本語ホームページを見ていたら、どうもソウルではいまだに盧武鉉前大統領の自殺をめぐって「民主派」連中が騒いでいるらしいことが分かった。金大中元大統領までが何か言っているらしい。北朝鮮の2回の核実験、ミサイル実験、国連安保理制裁決議という動きをも「李明博政権がいけない」と言っているらしい。

 こういう言説に同調する国民も国民だと思うのだが、別に韓国人が日本人に比べてバカだからではない。原因は盧武鉉時代にKBSとMBSという2大テレビ局が青瓦台の横槍で左翼勢力に乗っ取られたことにある。そのため、いまだに2大テレには親盧武鉉、反李明博の偏向報道を繰り返し、国民を洗脳しているのだ。

 それでも韓国がしっかりしていいるのは新聞社がしっかりしているからだ。左翼勢力がPR紙として作った「ハンギョレ新聞」は若い層に浸透しているらしいが、一般家庭ではまだまだ朝鮮日報、東亜日報、中央日報の影響力が強い。その3大紙は保守なのだ。

 だから、李明博政権に是々非々で臨み、盧武鉉政権のアホ政策は批判した。

 痛いところを突かれて怒った盧武鉉氏は3大新聞と喧嘩をし、大統領権限を不当に行使し、一時は青瓦台権力が新聞を上回るようにも見えたものだが、月日は移り、落ちぶれた盧武鉉が飛び降り自殺に追い込まれる、というところで誰の目にも勝敗は明らかになった。ところが、この「政策は分からないが、清潔」を売りにして、保守政治家の金権政治批判だけで成り上がってきた似非政治家が尻尾を出し、地位を利用して家族に不当な儲けをさせていたことが明るみに出ると、本当に取り柄のない大統領だったのだ、と分かったはずなのに、進歩勢力はお得意の陰謀論で巻き返しを図ろうとしているらしい。それも、北朝鮮政権を巻き込んで、だ。

 韓国の「民主化勢力」と同じことを金正日政権がオウム返しに放送する、という事態が多いので笑ってしまう。誰が言わせているのか、日本ではこういうのを「頭隠して尻隠さず」と言うのだが、韓国でも似たような言い方はあるだろう。

◆盧武鉉捜査記録の公開を要求した韓国の新聞

 北朝鮮の指令を受けてか、騒ぎはおさまらない。「しかし、問題はそんなところじゃないだろう」と冷静に国民に訴えたのが東亜社説6月13日の社説<盧前大統領捜査の真実が闇の中へ>だった。
 読んでみよう。
 <最高検察庁中央捜査部の「朴淵次ロビー疑惑事件」の捜査結果の発表は、多くの国民の期待に応えることができなかった。核心事項である盧武鉉前大統領の容疑に対しては、640万㌦という収賄金額と捜査の経緯、処理の結果のほかには一切公開せず、検察捜査に対する世論の非難への釈明に汲々とした。結局、盧前大統領に関する真実は、検察の捜査記録の倉庫の中に葬られることになった。>
 誰かが倉庫に忍び込んで書類を持ち出すしかない。
 <私たちは、盧前大統領の包括的収賄容疑に対する捜査内容と証拠を具体的に発表すべきだと主張してきた。捜査対象の死亡による「公訴権なし」の決定は避けられないとしても、権力型腐敗の再発防止、歴史的評価のための公開の必要性を提起した。しかし、検察は「このような場合、通常は具体的な捜査内容と証拠関係を説示せず、参考人のプライバシーの侵害および名誉毀損の憂慮が高いため、歴史的真実は捜査記録で保存する」として公開を拒否した。>
 東亜日報はずっと主張していたのか。
 <盧前大統領の捜査内容の非公開は結果的に野党と左派団体の「政治報復、標的捜査」といった主張に力を与える恐れもある。盧前大統領の容疑が朴被告の供述内容を中心にメディアによって報道されたことは、ある程度事実だ。民主党などは政府と検察、メディアが組んで被疑事実を流布したという主張までしている。捜査内容が公開されたなら、このような主張の真偽を明らかにすることに役立っただろう。参考人のプライバシーと名誉が心配なら、その部分だけ除くことができるのではないか。>
 どうも、韓国のこの騒ぎ、小沢一郎氏の公設秘書を逮捕した東京地検特捜部への怒りと同じようなエネルギーを持っているらしい。全く事態は違うのに。
 <検察は盧前大統領一家に対する捜査内容の公開を再度考慮してもらいたい。民主党が提起した国政調査と特検捜査も、政争に流されずに「盧武鉉捜査の真実」を明らかにすることに焦点を置くなら、検討の価値がある。前職大統領という最高職位の公人に対する国民の知る権利を度外視してはならない。>
 難しい言葉を使っているけど、ぶっちゃけて言えば「盧武鉉とその家族がいくらせしめたか、きっちり国民に知らせろよ。そうしないと、いかにも正義の殉教者扱いされて、金に汚かった大統領だった、という真実が歴史に残らないじゃないか」という怒りの論だと思う。韓国ではこういうしっかりした言論がある。だから、南北問題もあり、米国との問題もあり、日本との問題もあるのに、政府がポピュリズム一辺倒に陥らずにすんでいるのだろう。

◆「民主派」への韓国紙の怒りの鉄槌
 北朝鮮の金正日政権と裏で手を結びながら李明博政権崩壊を企む韓国の親北朝鮮勢力を韓国では「民主化勢力」と通称している。おかしな呼び方だが、軍事政権に反対してきた民主化勢力だ、という言葉は韓国では政治的正統性を意味する高貴な言葉のひとつだ。
 この言葉を弄びながら、ソウルの日常活動を麻痺させようと企む輩を徹底的に非難する社説が朝鮮日報社説6月9日の<都心を占拠する暴挙を民主と表現するな>だった。
 読んでみよう。
 <民主党、民主労働党、進歩新党、創造韓国党など野党4党に加え進歩連帯をはじめとする数百の市民団体や社会団体が「6月民主抗争の継承および民主主義回復に向けた6・10汎国民大会」を今月10日に全国で行うと発表した。「盧武鉉前大統領追悼国民文化祭」も同時に開催するという。集会の準備を進めるグループは「国民は22年前の6月、民主主義と国民主権を求めるあの熱い喚声を懐かしく思っている」と話した。しかし、現在の状況を1987年6月と同じように考えるのはあまりにも行き過ぎた話だ。22年前に起こった6月抗争のきっかけとなったのは、朴ジョンチョルさんに対する拷問致死事件。警察はその年の1月、当時ソウル大学言語学科3年生だった朴さんをソウル市竜山区南営洞の対共分室に連行した。そこで、時局事件で指名手配されていた容疑者の行方を問い詰めながら、浴槽の中に顔を沈めるなどの水責めを行い、最終的に死なせてしまった。また、この拷問に加担した警察官は5人だったが、警察は現場に居合わせていたのは2人だったという虚偽の発表を5月に行った。一方、4月13日には当時の全斗煥大統領が憲法に従って大統領選挙人団への間接選挙により次の大統領を選出するという、いわゆる「4・13護憲発表」を行った。これらがきっかけとなり、その後、全国で「拷問致死でっち上げ糾弾」と「護憲撤廃」を求めるデモが雪だるま式に広まっていった。>
 このように詳しく書かないとデマゴギーが広まっている韓国では、とんでもない理解をしている市民も多いのだ。1987年は、韓国人にとっては、軍事政権のせいにすればすんでいた「良き時代」だったのだ。本当は民主化勢力の中には北朝鮮のスパイもいたし、それこそ、北朝鮮が行った日本人拉致に絡んだ人間も韓国の民主化勢力の中で隠れ、潜んでいたことが明らかになっている。
 <盧武鉉前大統領の突然の死が国民の間に追悼の雰囲気を呼び起こしたのは事実だ。検察が前職の大統領に対し、自白を強要するかのように強硬な捜査を行ったことや、相次ぐマスコミへの発表などにも確かに問題はあった。しかし、盧前大統領の家族が企業経営者から640万ドル(現在のレートで約6億3000万円)もの大金を受け取ったという事実に変わりはない。また、前職大統領による投身自殺は非常に不幸な出来事であり、本人が最後の瞬間まで悩んだであろう人間的な苦悩が、まさに言葉に表現できないほど重かったのは事実だろう。しかし国家権力が大学生に拷問を加えて死に追いやり、事件をでっち上げようとしたのに比べると、その性格はまったく異なっている。また、1987年の「体育館選挙」を直接選挙制にするよう要求する国民の民主化に対する情熱が非常に強かったのは確かだ。しかしだからといって、現在の大韓民国を民主主義国ではないと主張するのは行き過ぎた話だ。野党も現行の憲法の下で10年間政権を担当した経験がある。当時も反対の政派があり、政権に嫌悪感を示す国民も少なくなかった。しかし、民主主義ではないと主張するような声が出ることはなかった。>
 大体、民主主義というような使い古された言葉に言霊を込めることは今の時代、もうできなくなっているのではないか。韓国もいずれは日本と同じで「民主化勢力」が凋落して共産主義の妄想性に国民は気付くだろう。
 <昨年6月10日にもソウル光化門周辺には8万人が集まった。ソウル都心は完全にマヒ状態となり、興奮したデモ隊は「大統領府へ行こう」と叫んだ。その後も約2カ月にわたり、ソウルの中心部では警察官が服を脱がされて集団暴行を受け、さらに人民裁判にまでかけられ、その上鉄パイプが振り回されて投石機により石が飛び交うなど、まさに無法地帯と化していた。>
 カッカしやすい韓国人、と言うのは容易いが、昔を思い出すと、日本人だってほめられたものではない。関東大震災である。デマと噂にあまされた普通の庶民たちが在日韓国人を殺したのだ。当時は日本が韓国を併合した後だったから、職を求めて日本に来て、差別されながらも一生懸命働いていた韓国人も多かっただろう。「井戸に青酸カリを入れている」というデマに騙されたのだ。
 このデマの社会学は何度も検証されるべきだろう。東京直下型地震か東海大地震が起きて、通信手段が奪われ、人々が極限状態になった時、関東大震災時よりも社会が弱くなっている日本では誰が誰を発作的に殺し、どのように生き残るのか、想像ができないほど、社会が疲弊し尽くされている。外国人排斥運動は起きていないが、労働者の3分の1を占める非正規労働者にしてみれば、海外からの出稼ぎ労働者は自分たちの職を奪った人間に見えるかもしれないし、憎悪の吐き出し口になる恐れもまだあると思うだ。
 政府が、ではなく、社会がこの可能性を十分に意識して、社会を強く、明るくしておかなければならないだろう。
 話が横道にそれてしまった。社説に戻る。
 <今政府が行っている政策に反対するのなら、民主的な手続きを踏んで国民を説得し、自分たちの側へと引き入れるなど、方法はいくらでもある。このように数万人を都心部に集めて道路をふさぎ通行を妨げ、それを制止する警察に向かって攻撃的な行動を取る必要があるのだろうか。そのような行動を「民主回復」という言葉で表現するのは偽善にほかならない。「22年前の喚声を懐かしむ」という表現は、聞き方によっては「国民の表現の自由が押さえつけられていた1987年の状況が再現されてもいいから、とにかく自分たちが称賛を受ける世の中になることを願っている」とも解釈できる。>
 「民主化勢力」が22年前に尊敬された大きな原因はインテリだったからだ、と思う。儒教の盛んな国だった。今でも日本よりは「長幼の序」など儒教精神は一般社会生活の中に生きている。その儒教では最高の知的エリートが政治を行うのが理想とされている。朴正煕、全斗煥のような軍人、つまり武人は二流の人間扱いされる。ここが日本と大きく違うところだろう。
 ところが、今は庶民もインテリを尊敬しない。インテリが自分勝手で、汚いということを知ってしまったからだ。今回の「民主化勢力」の扇動はうまくいかないと思う。

◆朝鮮日報は偉い、2日連続で民主化勢力叩きだ
 朝鮮日報は6月10日の社説でも<左派紙への広告掲載を強要する脅迫団体。というタイトルで、盧武鉉一派攻撃をしていた。
 <昨年6月、朝鮮日報・東亜日報・中央日報への広告掲載を中断するよう企業側を脅迫していたのは「言論消費者主権国民キャンペーン」(言消主)という団体だ。この言消主が最近、再び同じような脅迫活動を始めた。昨年は数十社の企業リストや電話番号などをインターネット上に公開し、直接脅迫の電話を掛けて営業を妨害するよう賛同者たちを扇動した。その結果、電話を受けた企業側は度重なる営業妨害により業務がマヒする事態が相次いだ。さらに社員の自宅にまで電話を掛け、家族に対し「殺してやる」などといった露骨な脅迫も繰り返した。裁判所は今年2月、これらの行為を実際に行った24人の被告に対し、「正当な消費者運動とは言えず、企業の自由な意思決定を威力で制圧しようとした業務妨害」と見なして有罪を宣告した。>
 こういう反体制不満分子がまだまだダニのようにわんさかいるのが韓国。
 <裁判所の判決により「違法」とされたにもかかわらず、当人たちは司法による決定を無視し、最近再び同じような活動を行っている。その活動とは、「朝鮮日報・東亜日報・中央日報には広告を掲載するが、(左派の)ハンギョレ新聞や京郷新聞には広告を掲載しない企業に対して不買運動を開始する。この運動は企業側が朝鮮・東亜・中央日報への広告掲載を中断するか、あるいはその費用に相当する広告をハンギョレ・京郷新聞に掲載するまで続ける」というものだ。また活動のやり方も、多くの企業に対して一度に営業妨害行為を行うと効果が分散されてしまうため、1社ずつ標的を定めて集中的に攻略する方法に変更したという。>
 京郷新聞までもが左派に乗っ取られたのか。産経新聞と業務提携し、産経新聞のソウル支局は京郷新聞本社の中にあるのではなかったか?
 <言消主が最初の攻撃対象としたある製薬会社は、韓国国内では900位前後と大手ではなく、また消費者に親しまれているドリンク剤を販売してはいるが、それ以外にはこれといった主力商品がないような企業だ。昨年の活動で主に攻撃対象となった小規模旅行会社と同じように、この種の攻撃に対して非常にぜい弱な企業をあえて選んだのだ。具体的には「一人デモを行って消費者の不満をあおってやる」といった電話を掛けるなど、法の網をかいくぐる作戦を展開した。この製薬会社は抗議電話の集中攻撃を受け、さらにホームページがダウンするなどの問題が発生したことから、わずか1日で「ハンギョレ新聞と京郷新聞に広告を掲載する」と約束してしまった。>
 こういうダニたちが多い、ということと、アメリカに出かけた韓国人がカリフォルニアなどで下院議員らにロビーを繰り返し、反日決議をさせていることと、どこか共通しているように見えてならない。憲法9条が悪いのではないが、心の領域でも無防備な日本はアメリカの世論形成でも中国、韓国に負け、今では北朝鮮にも負けそうになっている。
 <この種の広告テロ行為は世界のどこにも前例のないものだ。企業は自社の広告を掲載するメディアを選択する際、当然のことながら費用対効果を厳しくチェックする。そのようなチェックもなしにあらゆるメディアに広告を掲載していては、たちまち経営が破たんしてしまうのは目に見えている。脅迫者たちは企業側に対し、これらの基本的な原則を無視するよう恐喝行為を行い、また結果的に利益を得たハンギョレ新聞は、9日付でこの企業の社名と商品について報じた。誘拐犯に拉致された犠牲者の身元を公開し、犯人からの脅迫がより効果を発揮するよう支援するようなものだ。新たなテロ団体とも言えるこの言消主は、これらメディア側の広告担当のような役割を果たしていることになる。この種の共生関係はまさしく犯罪的と言えるだろう。>
 でも、社説でこういうことをまとめて書いてくれるから理解できる。日本のソウル特派員もこういう動きをきちんとフォローしてほしいものだ。政党の偉い人が何をしゃべった、もニュースだが、こういうちょっと形を変えた政局というものが今後は世界中でありうるのだから。
 <昨年このような脅迫行為を行う団体や個人を法廷で罰することができたのは、被害を受けた企業が脅迫に屈せず、検察が被害状況を明らかにして問題を司法の場に持ち込んだからだ。脅迫や営業妨害がわずらわしいからといってすぐに相手の要求をのみ、またより知能的かつ卑劣となった今回のような脅迫に妥協してしまえば、扇動者や脅迫者たちは味を占め、企業活動を妨害する行為を今後も繰り返し続けるようになるだろう。>
 企業が脅迫に負けなかった、というのが大きいのだろう。
 <脅迫者たちは今年2月に裁判所で判決が下された際「司法は死んだ」と叫びながら法廷で大暴れした。言消主の代表は会見で「裁判官は良心に反する判決を下した」と言ってのけた。司法さえも眼中にない団体から法の秩序と自由市場経済を守るには、さらに徹底した捜査と厳格な処罰を行う以外にない。>
 無法者なのだ。誰の言うことを聞くのか、と言えば金正日総書記の言うことだけ、というのが真実だろう。国家保安法違反事件も調べれば相当にやっている連中のはずだ。

◆東亜社説は大学教授らの軽挙妄動を批判していた
 東亜日報は6月11日社説<一部知識人の時局宣言、「集団主義的陣営論理」ではないのか>で「勘違い」人間に厳しい鉄槌を下した。
 読んでみよう。
 <ソウル大学の李長茂総長は9日、記者懇談会で、3日のソウル大学教授124人の時局宣言について「ソウル大学構成員全体の意見ではないと考えている」と述べた。そして「大学は、学問と思想の自由に奉仕するところであり、時局に対し多様な意見があり得る。時局宣言をした教授と意見を異にする教授も多い」と述べた。李総長の発言は、時局宣言に参加した教授が、専任講師以上のソウル大学教授1786人のうち6.9%にすぎないという数字の問題だけを指摘したとはみえない。ほかのどの集団よりも多様性が、尊重されなければならない大学で、政治色を帯びた「時局宣言」が大学社会を代表するかのように見えることへの憂慮した表現だろう。>
 韓国はまだまだ遅れているのだ、と実感させられる記事だ。日本だったら1960年安保だろう、こんなことをしていたのは。70年安保では全共闘運動の中ですでに教授の権威は地に落ちており、こんな声明を出したら、逆に全共闘が警察になりかわって成敗していただろう。
 <これまで約60の大学で約3000人の教授が時局宣言に賛同した。リレー時局宣言はソウル大学教授のそれと内容においては、特段の違いはない。要約すれば、盧武鉉前大統領の死に対し、李明博政権が検察捜査の問題点を認め、謝罪せよということと、政府が集会・結社の自由を抑圧することで、民主主義を危機に陥れているということだ。現政府がこの10年間の対北朝鮮政策の成果を危険に陥れたという見解もある。民主党をはじめとする野党や左派市民団体の主張と特に違いはない。>
 政治を知らないアホな大学教授らがギャーギャー叫んでいるだけなのだ。
 <盧前大統領の死と政府の責任を結びつけることは論理的な飛躍である。民主主義危機の主張も枝葉的なことを拡大・誇張し、社会現象を包括的に認識できない短絡的な見解である。北朝鮮の核開発と挑発で招来された南北関係の悪化の責任を全面的に現政府になすりつけることは、非常に偏向的な認識だ。知識人なら、事案に対しバランスをもって見なければならない。批判をしても、論理性、合理性、妥当性を備えなければならない。>
 こいつらは結局、金正日総書記の命令で動いてるだけだから。
 <「大韓民国の未来を考える教授」128人は9日、これまで出された大学の時局宣言を批判する声明を出した。声明は、「知性が不偏不党性と謙遜さを持つ時、はじめて知性だと言えるのであり、自分たちだけが共感する政派的内容を時局宣言という形式を借り、一方的に発表することは、公正な方法だとは言えない」と指摘した。「争点と討論のテーマになり得る事案を強いて、宣言文の形式で発表することは、知性の正しい表出ではなく、国民に対する礼儀でもない」という見解も、傾聴に値する。128人の教授は、時局宣言賛同者に公開討論会のような対話の場を持とうと提案した。そのような討論は、活性化されなければならない。>
 韓国が50年前の日本とは違うところをきちんと見せてくれる人たちもいる。
 <どの社会にも存在する葛藤と分裂が、統制不能の状態に陥り、国家的危機をもたらすか、それとも適切な濾過過程を経て、和合と統合に昇華されるかは、その社会の成熟度にかかっている。特に、社会的談論を率いる知識人の役割が重要だ。盧前大統領の逝去後のムードに乗って溢れ出る時局宣言は6月10日を前後して、広場の拡声器から流れる激昂した声と似ている。>
 いいことを書いてる。そうなのだ。社会の成熟が必要ということだ。

◆待ってました金大中元大統領! やっぱり北朝鮮万歳ですか
 金大中元大統領が発言した。朝鮮日報は6月13日の社説<金大中元大統領、国家の長老らしき言動を>で強烈に批判した。
 <金大中元大統領は11日、「6・15南北共同宣言9周年記念式典」で講演し「独裁者に頭を下げ、媚びへつらうべきではない。この国で独裁政治が復活しつつあり、貧富の格差は史上最悪の水準に達している。われわれが一緒に行動するという良心を見せ、立ち上がるべきだ。行動を起こさないのは悪だ」と主張した。李明博政権を「独裁政権」と決めつけた上で、国民に行動を起こすよう求めたというわけだ。>
 <今年84歳になる、国家の長老たる金元大統領が、自ら立ち上がって反政府闘争を先導するかのような発言をしたことは聞くにしのびなく、不自然に思える。金元大統領は今年に入り、現政権に対する批判のボルテージを上げてきた。「李明博政権が南北関係を意図的に冷却化させようとしている」と主張し、野党・民主党の関係者たちと会っては、「現政権に立ち向かい、力強い闘争を繰り広げるように」と注文した。また、盧武鉉前大統領が自ら命を絶った直後、焼香所を訪れ、「盧前大統領が(検察の捜査で)恥をかかされ、挫折感や悲しみを味わったことを思えば、国もむごたらしい決断をした、という気持ちになる」と話し、さらに「前世で盧前大統領とわたしは兄弟ではなかったかとも思う」とまで述べた。>
 <金元大統領が盧前大統領の突然の死にショックを受け、また現政権が自分の主張と違った政策を進めていることに不満を持っているということは分かる。前職の大統領も政府の政策に異を唱え反対する権利はある。だが、国民の投票によって選ばれた大統領を、自分が気に入らないからといって「独裁者」と決めつけ「国民は立ち上がるべきだ」と訴えるというのは道理に合わないことであり、また国家の長老が取るべき態度ではない。>
 <政界では12日、金元大統領の講演の内容をめぐって賛否両論が噴出し、激しい舌戦が繰り広げられた。韓国社会の対立や分裂はすでに深刻な状況にあるが、前職の大統領までがその一方の側に付くというのは、決して望ましくないことだ。金元大統領が党派を問わず、国家の長老として国のために苦言を呈したとすれば、それは国民の心に響きわたり、奥深く浸透するはずだ。>

◆中央日報も批判的に書いていた
 中央日報も社説<元大統領は襟度を保持すべき>で同様の論調だった。
 <金大中元大統領の発言が波紋を起こしている。 金元大統領は11日の6.15南北共同宣言9周年記念特別演説で「過去50年間に血を流しながら勝ち取った民主主義が危うくなっていて心配」とし「傍観すれば悪の側だ」と述べた。 現政権は悪で、これを打倒するために立ち上がらなければ同じ悪の側になる、という言葉と解釈できる内容だ。 国が内外で苦境に立たされているこの時期に、なぜ元大統領がこうした適切でない言行をするのか理解できない。>
 <金元大統領の演説を聞くと、私たちがあたかも20年ほど前の過去に戻ったかのような錯覚を起こしてしまう。 世の中を民主対反民主、善と悪に二分している点からしてそうだ。 現職大統領を「独裁者」と規定し、「独裁者に頭を下げて追従するのは容認できない」と力説した。 さらに「行動する良心になってみんな立ち上がるべきだ」と述べた。 政府を打倒しようという扇動に他ならない。 今がそういう時期なのか呆気にとられてしまう。 元大統領として、政治元老として、現政権に対する苦言を呈したものと考えるには、発言内容が不適切であり、表現も険悪だ。>
 <しかも金元大統領の演説を聞く限り、何が独裁というのか納得できない。自分の執権当時に比べて何が良くないのか。今の政治状況が「みんな立ち上がるべき」と呼びかけるほど厳酷なのか。国政を運営した元大統領が民主的な手続きと枠組みを破壊して国を混乱に導くのは無責任だ。 金元大統領はまた、盧武鉉前大統領の逝去と関連し、「弔問客の10分の1だけでも『元大統領を侮辱するような捜査をすべきでない』と署名していれば死ななかったはずだ」と述べた。盧前大統領の逝去は遺憾だが、元大統領は罪があっても捜査をすべきでないという論理へ導いてはならない。>
 <元大統領なら国が混乱している時期、国民の和合と危機の克服に向けて力になるのが当然だ。さらに金元大統領は与野党政権交代の経験を持ち、今でも支持基盤を保持している人物だ。現政権に対する元大統領の批判と助言は補薬になる。 しかしそのためには最小限の品位と襟度を持たなければならない。>

◆金大中発言への青瓦台など政界の反響
 中央日報は6月14日、<「北の人権には沈黙し、李明博政権を独裁者とは…」/青瓦台が金大中氏を批判>というニュースを掲載した。これもコピペしておこう。
 <金大中元大統領が李明博大統領を「独裁者」と述べ、与野党に大きな波紋を起こしている。 金元大統領は11日、6.15南北共同宣言9周年特別講演の最後に「独裁者に追従してはならない。 行動する良心が立ち上がるべきだ」と発言した。>
 <青瓦台は異例にも報道官公式ブリーフィングで「国民を分裂させる発言だ」とし、金元大統領を批判した。 李東官報道官は「国民和合に率先すべき元国家元首が適切でない発言で国民を混乱させ分裂させるのは遺憾だ」と述べた。 この日の首席秘書官会議では「(金元大統領が)北朝鮮の人権と世襲問題には沈黙し、国民の意思に基づき530万票差という過去最大票差で合法的に選出された政府を、あたかも独裁政権のように批判したのは適切でない」という発言も出てきた。>
 <ハンナラ党の朴煕太代表は「(金元大統領が)数十年前のことを考えながら幻覚を起こしたのではないかと思われる」とし「現実政治にありもしない独裁者に言及して退けというのはドンキホーテ式の思考」と話した。 自由先進党の李会昌総裁は「金大中元大統領の思惑は左右派の対立と闘争をあおることにある」と指摘した。
  金泳三元大統領は「もうその口を閉じるべき」と題した声明で「元大統領という者が何かある度に終生続けてきたその冗舌で国民を煽るのをこれ以上黙過してはならない」と明らかにした。 また「金大中・盧武鉉の‘失われた10年’の間、北朝鮮に注いだ金と物資は70億㌦にのぼる。それが核とミサイルとなって返ってきて韓国と世界を脅かしている」と主張した。>
 <半面、民主党の丁世均代表は「国家元老の話には傾聴し、国政をうまく運営することを考えるべきだが、礼儀を欠いた言葉を述べるのは見苦しい」とし、与党を非難した。 老英敏報道官は「朴正煕元大統領は独裁者という言葉を嫌って韓国的民主主義と言ったが、李大統領が第2の韓国的民主主義になろうとしている」と述べた。 金大中元大統領の秘書室長を務めた朴智元議員も「民主主義が維新に回帰し、庶民経済は破たんの境地にあり、南北関係が崩壊していることに対し、元大統領として後輩大統領に忠告したにすぎない」と反論した。>
 <金元大統領の講演の問題発言=李明博政権に入って民主主義が逆行している。 血を流して勝ち取った民主主義のために行動する良心になろう。 行動しない良心は悪意の側だ。 盧武鉉大統領が苦しんでいるとき、仮に500万人(弔問客数)のうち50万人でも「心的な打撃や羞恥心を与えるな」と声を出していれば盧大統領は死んでいなかった。 独裁者にうな垂れて追従してはならない。 国民がみんな良心を持って行動すれば、この地に独裁者が出たり、少数の人だけが栄華を享受したり、貧富の差が過去最大となったりする状況は来ないはずだ。 自由と庶民経済、南北関係を守るのに私たちみんなが立ち上がり、希望のある国を作ろう。>
 いろいろ面白いなぁ。金大中氏は84歳で「昔の名前で出ています」か。いつ死んでもおかしくない年齢だが、別に会っておきたい気も起きない。

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2009年6月13日 (土)

朝日新聞も産経、日経に同調し経団連の言い分を丸呑みする新聞になり下がったのか:「かんぽの宿」と鳩山邦夫総務相更迭~6月13日朝刊各紙社説

 「かんぽの宿」の杜撰売却など不透明な経営を繰り返す日本郵政の西川善文社長(70)の辞任を求め続ける鳩山邦夫総務相(60)を麻生太郎首相は6月12日、更迭した。後任には佐藤勉国家交換委員長の兼任を決めた。西川氏が鳩山氏に謝罪することで一件落着させようとした麻生首相の妥協案を鳩山氏が拒否し、2度の首相・総務省会談が決裂、このような結果になったのだ、という。

 複雑な問題だ。西川氏を辞任させること自体は麻生首相も内心では賛成だったのではないか、と思う。しかし、一連の騒動の中で、西川氏は小泉純一郎元首相が進めた郵政民営化のシンボル的存在として、小泉、竹中平蔵氏をはじめ中川秀直元自民党幹事長ら郵政民営化推進グループが「辞任絶対反対」の論陣を張り、総選挙を控えた自民党衆院議員らも「小泉改革後退」と批判され、票が逃げることを懸念し、小泉氏らの主張を暗に支持した。

 そういう雰囲気の中で下した決断だったのだが、いくら銀行マンとしては優秀かもしれないが、稀代の「悪人顔」で、かえるの面に小便をかけても気にしないのと同じように、何を聞かれても平気の平左を通す面の皮の厚さに一般国民は悪感情を持っていると思う。

 今後、民主党など野党は「かんぽの宿」問題などを国会で再度取り上げるだけでなく、西川氏の参考人招致などを繰り返し、小泉構造改革の虚妄を追及するだろう。

 麻生首相はあまりに小泉氏に気を遣いすぎた。せっかく経済財政諮問会議や安心社会実現会議で「小泉構造改革否定」の施策を提言し、自民党・政府の大きな政策転換をしようという時に、その出鼻をくじかれる出来事だった。

 すべてが衆院選に得か損かで判断される時期に突入している。永田町の勢力図だけ見れば、鳩山氏の首を取る、という結論はリーズナブルに見えるかもしれないが、それが麻生首相の人気をあげることに繋がるか、と言えば逆だろうと思う。

 各紙は6月13日の社説で鳩山更迭を取り上げたが、歯にものが挟まったような論が多かった。スパッと言い切れない部分が多かったのと、これまでの自社の社説との整合性を取らねばならないという要請の中で、歯切れのいい表現が出来なかったのだろう。だから、鳩山氏の提起した問題を正面から取り上げて論じた新聞は少なく、麻生首相の政治的責任論というどうでもいい話に逃げている社説が多かったのは残念だった。

 各紙の社説を簡単に見ていこう。

◆朝日新聞<総務相辞任/剣が峰に立った麻生政権>

 <鳩山氏の西川社長批判に火が付いて半年がたつ。日本郵政が社内手続きを経て続投方針を決めたのに、攻撃は激しくなるばかり。果ては鳩山氏と、兄が代表に就いた民主党との連携話までおもしろおかしく取りざたされるなど、社会的にも異様な注目を集める「事件」になっていた。>

 面白おかしく騒いだのは一部マスメディアだろう。

 <火事が広がっているのに火消しを決断できない。そんな首相の優柔不断は初めてではない。麻生内閣での閣僚辞任は3人目だが、中山成彬国土交通相の時も「もうろう会見」で辞めた中川昭一財務相の時もそうだった。鳩山氏は過去3回の自民党総裁選で首相の選挙対策本部長を務めた盟友である。それなのに首相の意に沿わせることができず、逆に政権の傷口を広げてしまった。党内基盤のもともと弱い麻生政権を支えてきたのは4年前の郵政総選挙で得た巨大議席だった。その首相の誤算は、郵政をめぐる党内対立の根深さを甘く見過ぎたことだった。>

 この最後のフレーズはいいところを突いていると思う。甘く見ていた、というか、こういう問題の調整に当たれる人物が政権にいなかった、ということだろう。

 <首相は2月「郵政民営化に賛成じゃなかった」と語り、4分社化の見直しにも言及した。首相就任以来、小泉元首相の改革路線に対する党内や社会の風当たりの強さを見て、ハンドルを戻そうとの思惑だったのだろう。>

 3分の1が非正規労働者などという小泉改革の影の部分をようやく理解し、小泉改革からの転換が必要になった、と世間の人々は認識し始めていた。そして、朝日新聞は西川氏の進退について、

 <この人事が首相に突きつけたのは、民営化を進めるのか後退させるのか、小泉路線を継続するのか見直すのか、基本的な態度の表明だった。この二つの潮流の両方に足をかけつつ、きたる総選挙に臨みたいと思い描いていた首相にとって、それは考えたくないことだったに違いない。>

 考えたくなかった、ではなく、調整役がいなかったお友達内閣の弱点がまた露呈した、ということだろう。

 <「かんぽの宿」をめぐる不適切な経過や郵便不正事件など、西川郵政にも問題はあった。だが、民営化が始まってまだ1年8カ月。色濃く残る官業体質を改革するには西川社長に頑張ってもらうしかない。首相がそう判断したとすれば理解できる。>

 すぐに理解しちゃうのね? 結局は朝日新聞は小泉路線賛成だったのだ。悪いものは悪い、となぜ言えないのか? 竹中氏に弱みを握られているのか?

 <だが、今回の混迷によって、郵政民営化の賛否を超えて、首相の求心力が決定的に弱ったのは間違いない。与党内では解散・総選挙の先延ばし論が広がる可能性がある。内閣改造や首相の交代を求める動きも出てきそうだ。国民の願いは、信頼できる、実行力のある首相であり、政権だ。内外を覆う危機の中で、いたずらな政権延命は願い下げにしたい。>

 結論部分では郵政民営化賛成論であることをいかに薄めるか、に腐心しながら首相の責任論に逃げている。こんなに逃げなくともいいのに。

 朝日新聞は安心社会実現の麻生公約も「小泉構造改革に反する」と批判するのだろうか? 論理的にはそうなるのだが、また世論動向だ何だかんだ、と理屈を付けて適当なことを書くのだろう。朝日新聞の社説なんてそんなものなのか?

◆毎日新聞<鳩山総務相更迭 政権の迷走は極まった>

 毎日新聞の書き出しはひどいよ。

 <迷走していた西川善文日本郵政社長の進退問題が12日、解決に向けてようやく動いた。麻生太郎首相は西川氏を当面続投させる考えを表明、続投に反対していた鳩山邦夫総務相を事実上更迭した。首相は「混乱が生じた印象を与えたのは遺憾。早急に解決されてしかるべきだと考えた」と語った。しかし、既に遅きに失したというべきだろう。>

 「遅きに失した」というのは何か? 読んでみると、①この日に至るまで煮え切らない態度を取ってきた首相の決断力の欠如が改めて明らかになった②首相は西川氏進退の最終判断を経営責任などを改めて検討し下す意向も示しなお分かりにくく、「決断」かどうか疑問――と書いている。

 しかし、毎日新聞がまともだ、と感じるのは次のような文章があるからだ。

 <そもそも問題の発端は今年1月、「かんぽの宿」の不透明な売却に鳩山氏が異論を唱え始めたことだ。その後、日本郵政関連では障害者団体向け割引制度を悪用する事件も発覚した。毎日新聞が指摘してきたように、西川氏の進退は、こうした問題に対する経営責任をどうとらえるかの観点から議論すべきだった。>

 その通りだ。

 <ところが、それをあいまいにし、首相も関係閣僚の調整に委ね続けているうちに、西川氏の進退問題は郵政民営化を積極的に推進するのか、そうでないのかという自民党内の積年の対決に発展してしまった。その意味では2005年の郵政選挙は一体何だったのか、今後、民営化をどう進めるのか、自民党全体としてきちんと総括し整理してこなかったツケが回ってきたともいえよう。>

 こういう論理展開をするから袋小路に入り込む。論理展開が間違えているのだ。

 <今回の件に関しては鳩山氏の主張に分があると考える国民は少なくないだろう。だが、鳩山氏も支持率低迷にあえぐ麻生首相に見切りをつけたのか、テレビカメラの前で持論は唱えるが、内閣や党を説得する努力に欠けていた面は否めない。結局、首相は鳩山氏に同調する形で西川氏を更迭した場合、党内の民営化推進派の反発を招くことを最も恐れたのではないか。視線は内向きだ。また鳩山氏によれば、首相は西川氏が鳩山氏に謝罪するという「妥協案」を示したという。仮にそんな手打ちのような方法で済むと考えていたとすれば国民を無視した話だ。日本郵政の一連の不祥事についてまず首相自身がどう考えているかを示さないと国民は納得しない。>

 そうだ。一連の不祥事を首相はどう考えているのか?

 <首相の決断力、統治能力の欠如に対しては与党内からも不満が噴出している。政権の立て直しのためではない。日本の政治を立て直すために一刻も早く衆院を解散し総選挙で国民の信を問うべきだと改めて指摘しておきたい。>

 ちょっとお、今更「一刻も早く衆院を解散し」はないでしょう。だって9月までにはやるんだから。そんなことより、小泉改革の影の部分についてなぜ書かないのか? 郵政民営化の負の部分をなぜ書かないのか? 朝日新聞のくだらない社説に比べればいいとは思うのだが、まだ中途半端だと思う。

◆読売新聞<鳩山総務相更迭/日本郵政は体制を一新せよ>

 <一連の不祥事に対する西川社長の経営責任が消えたわけではない。経営体制を一新して出直しを図るべきだ。>

 という主張は重いと思う。体制一新、つまり西川は辞めろと言っているのだ。さすが渡辺恒雄主筆が君臨する新聞だ。まともなことを書いている。

 <麻生首相も、総務省の業務改善命令に対する回答などをみて、西川社長再任の是非を最終判断する考えを示した。当然だろう。今回の問題の核心は「かんぽの宿」の不明朗な売却手続きなど不祥事が続発しているのに、西川社長が経営者としての責任を果たさなかったことにある。ところが、鳩山氏の発言が「罷免されても再任に反対する」とエスカレートするにつれ「社長を辞めさせれば郵政民営化が後退する」といった別次元の議論にすり替わってしまった。小泉元首相に近い中川秀直・自民党元幹事長から、首相が鳩山氏の肩を持つなら「本気で戦う」という発言まで飛び出すなど、党内抗争の兆しを見せ始めていた。首相が鳩山氏を更迭したのは、党内が混乱し、亀裂が一層拡大することを恐れたためだろう。しかし、不祥事に対する説明不足や経営責任を問う鳩山氏の主張には、肯ける部分が少なくない。鳩山氏の指摘に共感する人は多いのではないか。>

 毎日新聞の社説より分かりやすい。そういうことだ。

 そして、読売新聞が次のように実証的に西川氏の「犯罪」を書いていることに敬意を表する。

 <総務省は4月に日本郵政に業務改善命令を出した際、16項目にわたる疑問を突きつけている。「かんぽの宿の収益を改善してから入札すれば、売却額はもっと高くなったはず」「審査を担当した日本郵政の部長を、売却予定先が副社長に迎えると提案していた」――などだ。だが、日本郵政はこれらの指摘に、いまだ正式な回答や十分な説明をしていない。簡易生命保険金の不払い問題では、民間生保の不払い判明から4年も公表しなかった。民営化作業という内部事情を優先させた判断には「契約者第一」の視点が明らかに欠けていた。障害者向け割引制度を悪用した不正ダイレクトメール事件も、日本郵政の信頼を失墜させた。こうした不祥事についても、西川社長以下の現経営陣の責任は極めて重い。>

 これを熟読すれば、鳩山氏の主張がいかに正しかったか、分かるはずだ。そして、読売新聞の結びもいい。

 <今回、事態がここまでこじれたのは、首相が指導力を発揮せず、土壇場まで鳩山氏と西川社長の対立放置したためだ。首相は、西川社長の責任問題について、自ら明確な判断を示す必要がある。>

 麻生首相は西川社長を辞めさせろ、と言っているのだ。当然だ。加藤紘一氏が「喧嘩両成敗しかない」と言っていたが、鳩山邦夫氏だけを更迭したら、有権者は麻生首相が小泉構造改革を継承するのだろう、と誤解する。キチッと西川氏の首を取らないと麻生人気は回復しない。

◆日経新聞<鳩山氏更迭を民営化再加速につなげよ>

 この経団連応援新聞の社説は読まなくとも内容が分かる、というものだ。非正規労働者がいかに増えたって構わない、日本の輸出産業、製造業の生産性が高くなって国際競争力が強まれば、他はどうでもいい、というのが本音だからだ。

 <郵政民営化路線を後退させないために、私たちは西川氏の続投で、首相が早期に事態を収拾するよう求めてきた。もっと早く決断すべきだったが、鳩山氏の罷免も辞さぬ姿勢で収拾に動いた首相の判断は是とする。鳩山氏の更迭を契機に、民営化路線を再加速させる必要がある。>

 が変わらない主張である。

 そして、「かんぽの宿」については、

 <鳩山氏は日本郵政が宿泊施設「かんぽの宿」をオリックスに一括譲渡しようとした問題を「不正義」と批判し、西川氏の経営責任を追及してきた。しかし鳩山氏は西川氏を更迭させる明確な根拠を最後まで示さず、その主張に説得力はなかった。>

 「説得力なし」と一言で切り捨てるしかなかったのだろう。世間の思いがどうであろうと、大企業の経営者が考えるところを重視する日経経団連新聞の限界を露呈している。こういう問題が起きると、「やっぱり日経新聞というのは業界紙なのだ」という当たり前のことに気付かされて、朝日、毎日、読売との違いを再認識する。たまにこういう事件が起きるほうがいい。

 <年間50億円規模の赤字を出すかんぽの宿は、適切で公明な譲渡手続きを経て、できるだけ早く手放すことが最終的な国民の利益にかなう。民業圧迫を避ける意味でも、郵政事業から切り離すべきだろう。>

 1000万円の価値のある施設を国民の目の届かないところで1万円で早く売れ、と言っている。宮内氏などはこれを読んで万歳を叫んでいるだろう。

◆産経新聞<鳩山氏更迭 これで決着とは胸張れぬ>

 産経新聞は①首相の決断が遅すぎた②鳩山氏は所管大臣としてまず問題点の改善指導を優先すべきだった③郵政民営化は衆院選で国民の圧倒的な支持を受け法律で決まったのに、政官界の一部に西川氏を辞任させコントロールしやすい人物を次期社長に迎えて郵政民営化見直しの突破口にしたいとの思惑があった④首相は西川氏続投の理由を含め、民営化の基本認識を改めて明確にすべきだ――と主張している。

 民営化万歳新聞である。竹中平蔵氏を定期的コラムニストとして雇っている新聞である。国民の方を見ていないのか? あれだけ安全保障問題で頑張っているのに、国内の「生存のための安全保障」には興味がないとみえる。残念だ。

 以上、主要紙の社説をざっと見たが、まともだったのは読売新聞と毎日新聞だけ。朝日新聞までが日経新聞、産経新聞という「産業経済」系新聞の仲間入りをしてしまった。つまり、経済界に目を向けた業界紙の仲間入りをしてしまったようだ。日本のクオリティー・ペーパーは読売新聞と毎日新聞しかなくなってしまったのか。

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2009年6月12日 (金)

北朝鮮が3度目核実験というCIA情報がオバマ大統領に届いた?:韓国政府は否定~6月11日聯合ニュース

 時事通信が号外速報を流したので、見たら米FOXテレビが報じたところによると、CIAがオバマ大統領に「国連安保理決議が採択されると北朝鮮は3回目の核実験を行う」と伝えた、という内容だった。早速、産経新聞ネット版を見たが、見つからなかった。念のため、と思い韓国の聯合ニュースのホームページを見たら、以下のような11日のニュースがあった。これのことか?

 <米当局「北3回目核実験も」、韓国政府当局は否定>で、ワシントン発のニュースだ。
 <米情報当局は北朝鮮が近く行われる国連安全保障理事会の対北朝鮮決議案採択に対応し3回目の核実験を敢行する可能性があるとの情報を入手、オバマ大統領や米政府関係者に注意を促しているようだ。米FOXニュースが11日に報じた。>

 これのことだろう。

 <米中央情報局(CIA)が北朝鮮内部の消息筋から把握したところによると、北朝鮮は12日に予定された安保理の決議案採択が現実化すれば四つの行動に出る計画で、核実験はそのうちのひとつだという。残りの3つは▼使用済み燃料棒の再処理を通じた兵器級プルトニウムの生産▼ウラン濃縮プログラムに対する緊張高潮▼北朝鮮西海岸軍事基地での大陸間弾道ミサイル(ICBM)追加発射――だ、とFOXニュースは伝えている。米情報当局は今週に入りこうした北朝鮮の計画を把握し、急ぎオバマ大統領や国家情報長官(DNI)に注意を呼びかけたとされる。>

 3度目の核実験の意味合いを十分に知っているCIAだから焦ったのだろう、と思う。

 <一方、韓国政府当局はこうした報道を否定している。当局のある関係者は、「北朝鮮が2回目核実験を敢行した咸鏡北道吉州郡豊渓里の核実験場を復旧していると判断するに足る兆候はない」とし、北朝鮮がすぐに3回目核実験を進めることはないとの見方を示した。北朝鮮が取るとされる他の三つの行動についても、前々から可能性が十分に予測された事案だとしている。>

 何か分からないが、CIAがガセネタを流している、というのか?

 非常に微妙な問題なので、韓国ではわざと隠しているのか?

 というのも、3回目の核実験はこれまでの実験とは違って、核弾頭の小型化実験だ、と見られているからだ。

 これが成功するとテポドンやノドンに核弾頭が搭載できる可能性がある。

 つまり、日本に核ノドンが飛んで来る日が近づくということなのだ。

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伊藤正氏の「中国軍が北朝鮮断固擁護=国連決議骨抜き」論も中西寛氏の「北の体制転換前の準備が大切」論も東京新聞・清水美和氏の論文も面白い~産経新聞6月12日朝刊、東京新聞6月8日朝刊

 今、6月12日正午のNHKニュースで米議会でボズワース氏が北朝鮮に圧力を強める、と話したという映像付きのニュースを流している。空しい。どうせリップサービス、戦争をするつもりなど微塵もないのに。

 産経新聞6月12日朝刊1面の伊藤正・中国総局長の大型コラム[ちゃいな.com]<対北強硬論後退に軍の影>は中国政府が一時は「臨検」まで本気で制裁に入れようとしていたが、人民解放軍の反対で後退した、という見方が強いことを書いている。中国権力層内のやり取りだけに、なかなか踏み込めない分野だが、さすがに伊藤氏だけあって、ディープスロートを持っているのだろう。

 この見方が正しいとすると、胡錦濤政権は今後も北朝鮮で危機的状況が起きる度に軍の意向を忖度する政府決定をせざるを得ないのではないか、という懸念を生む。つまり、胡錦濤主席は軍を完全には掌握しきっていないのではないか。いまだに江沢民の勢力が残っているのだろうか? 由々しい事態だと思うのだが。

 伊藤氏のコラムを読んでみる。

 <国連安全保障理事会の北朝鮮制裁決議案がやっとまとまった。先月25日の北朝鮮の核実験から2週間以上もかかったのは、海上の貨物検査(臨検)義務化に中国が反対したためといわれ、中国は、制裁に消極的との見方さえ出ている。実際、中国政権内では対北強硬論が後退しているようだ。>

 5月25日の核実験から今日で18日目だ。時間がかかりすぎた。

 <中国外務省の秦剛報道官は今月2日の定例会見で、中国と北朝鮮は「正常な国家関係にある」と述べた。同じ言明を3月17日にもしているが、6月以降は「善隣友好関係」という表現も消えた。中国政府内で北朝鮮への強硬論が大勢になっていた反映だった。>

 中国政府のワーディングの話だ。こういう話は日本人がなかなか触れ得ない部分であるだけに、貴重だ。

 <これは相互防衛義務を明記した中朝友好協力相互援助条約(1961年締結)の同盟関係はおろか友好関係も否定したものだ。その重要性は、同じ秦報道官の2006年9月の言明と比較すれば明白だ。当時、秦氏は「中朝条約は、両国の友好協力促進に重要な役割を果たしてきた。中国は(北)朝鮮とともに引き続き同条約の精神に基づき善隣友好協力関係の発展を促す」と述べていた。>

 2006年と2009年。この3年間の間に中朝関係は大きく変化していた、というのだ。

 <この1カ月余り後の10月9日、北朝鮮は最初の核実験を強行した。核問題の対話解決を堅持してきた中国は「圧力」の必要を認め、国連安保理の制裁決議に同調したが「対話」重視は変えず、米朝直接対話を仲介さえした。>

 これは2006年の話だ。

 <米朝対話によって北朝鮮はテロ支援国家指定解除など米国から多くの果実を得た。中国も負けてはおらず、北朝鮮への支援や投資を増強、2008年の中朝貿易は2006年の2倍になった。制裁決議は米中によって形骸化したといってよい。>

 そういうことだった。当時の安倍首相が駆けずり回ってまとめた国連安保理決議だったが、中国はほとんど無視したのだ。

 <昨年6月、習近平中国国家副主席が訪朝、金正日総書記との会談で「両国の伝統的友好協力関係の発展は、中国の確固不動の戦略方針」と述べ、関係修復を軌道に乗せた。そして中朝国交60周年の今年を「友好年」とし、全面的関係発展を図るはずだった。>

 2008年6月段階ではまだ中朝蜜月が続いていた、と。

 <中国の言う「正常な国家関係」とは中国の国益を優先、北朝鮮に特別な配慮はしないという意味という。中国の強い自制要求を無視、北朝鮮が弾道ミサイル発射(4月5日)に続き核実験を強行したことに怒り、戦略重点を対話から圧力に転じた表れだった。>

 ここである。ワーディングの説明だ。「正常な国家関係」の意味合いである。こう説明されなければ、分からない。言葉は大切なものなのだ。

 <外交筋によると中国は当初、安保理の北朝鮮制裁に積極的で、関係各国に同調、早期合意の見通しだった。それには臨検問題も含まれていた。それがなぜ急に慎重論に転じたのか。>

 少なくとも、2度目の核実験に中国が大きな不快感を覚えた、というのは本当の話だったようだ。

 <中国政府の制裁積極論には批判もあった。特に反米的な民族系サイトでは北朝鮮の核保有を主権を守る当然の策とする主張や、中朝を離間させる米国の陰謀に乗るなとの意見も少なくない。しかしそれらはあくまで少数派だ。>

 「反米的な民族系サイト」などというものが存在しているとは。これも江沢民の反日教育、愛国心教育の結果生まれたものだろう。国家意思決定の際に雰囲気を醸成するためには必要な応援団と化しているのだろう。

 <事情に通じた中国筋によると決定的要素は軍指導部の意見だったという。仮に臨検を実施する場合、北の反発で武力衝突に発展する危険性が排除できないからだ。梁光烈中国国防相が8日、日本財団の笹川陽平会長に核問題は話し合いで解決すべきだと述べたのも、軍の意向の反映であろう。>

 梁光烈中国国防相が笹川氏に会っていて、そのブリーフィングが北京で行われていたわけだ。6月8日のことだ、というから、つい先日の話である。

 <梁国防相は中朝軍の関係は「親密」と述べたそうだが、朝鮮戦争以来の伝統的交流関係だけでなく、近年盛んな北朝鮮の鉱物資源開発に中国軍系企業が参入している事情も絡んでいるという。>

 なるほど「親密」の意味の話だ。

 <北朝鮮制裁の実効を上げるには、中国の協力が欠かせない。それには中国が北との敵対関係を恐れず、物資援助を停止するなどの決意が必要だが、戦略的に失うものも多く、強硬論は後退したとみてよい。>

 戦略的に失うものが多すぎる、というのか。これは逆に言えば、孫崎享氏が「日米同盟の正体」で力説していた「北朝鮮に失うべきものを持たせよ」論の逆の結果になっている現実を示すものかもしれない。北朝鮮との経済交流を増やしていった中国が、北朝鮮崩壊を今まで以上に恐れているわけだから。

 難しい問題だ。

◆中西寛教授の[正論]<「北」の体制転換に備えるとき>

 この問題で中西寛・京都大学大学院教授は同日の[正論]で<「北」の体制転換に備えるとき>というタイトルで寄稿していた。小見出しは≪国内要因だけでない挑発≫、≪すでに6者協議は望まず≫、≪制裁にテロ国の再指定も≫だった。

 <北朝鮮の挑発行動が加速している。4月5日に衛星打ち上げと称して長距離弾道ミサイルを発射し、5月25日には2回目の地下核実験を実施した。ほかにも、韓国との境界線合意を無効とする一方的宣言を行い、新たなミサイル発射基地を建設して、発射を準備している兆候があると伝えられる。2006年のミサイル発射と初めての核実験の時と比較しても、北朝鮮の行動のペースは早いように見える。>

 これは今までの説明。確かにペースが早い。

 <なぜ北朝鮮は今、こうした行動をとるのか。最近しばしば語られるのが国内要因説である。昨年夏に金正日総書記に病変が起き、金総書記の健康問題および将来の指導者の後継問題が急浮上した。後継候補として3人の息子(正男、正哲、正雲)や義弟の張成沢氏などの名前があげられ、一部には三男正雲氏が後継者に決まったなどとの報道もある。>

 国内要因説だ。

 <しかし、この見方には留保が必要である。金総書記が昨年、病に倒れたことはほぼ確実だし、北朝鮮指導層の中で後継体制に向けた動きが浮上している可能性も捨てきれない。こうした動きは中長期的には重要である。しかし、現在の北朝鮮の挑発行動と北朝鮮内部の状況を結びつけてあれこれ憶測しても生産的ではないだろう。結局、北朝鮮の内部事情が対外政策にいかなる影響を及ぼしているかについてはほとんど分からない。更に最近の一連の動きは確かに急激であるにしても統制はとれており、北朝鮮の指導層内部での分裂を裏づける要素はない。>

 それだけじゃないし、あまりそっちに引っ張られるな、と。

 <当面の所、北朝鮮の動きは国際要因によるものと考えるのが妥当であろう。そのように理解しても北朝鮮の行動は説明がつく。北朝鮮の行動の基本的な動機はオバマ米新政権の対北政策であろう。発足当初、北朝鮮にはオバマ政権が融和的になるという期待があったようである。今年の年頭共同社説において北朝鮮各紙は「朝鮮半島の非核化」に言及し、「われわれに友好的に接する国々との関係を発展させ、世界の自主化偉業の達成に大いに寄与する」と述べていたのはこの期待の表れであろう。しかし、オバマ政権は北朝鮮の核放棄を求める姿勢を堅持し、いら立った北朝鮮が、「平和目的」を掲げた長距離ミサイル発射から核実験へと挑発行動を高めていると見ることができる。>

 オバマ米政権への高かった期待値、裏切られた、という焦りと怒りだ、という。

 <もう一つの要因は韓国である。対北融和策をとった盧武鉉前政権に対し李明博政権は日米協調、対北圧力路線に傾きつつある。北朝鮮にとって韓国は経済協力による利益よりも日米の圧力をかわす風よけとして重要な存在であろう。その韓国の姿勢が変化したことで、北朝鮮は韓国との緊張を高め、韓国世論を分裂させて日米韓協力体制にくさびを打ち込もうとしているように見える。盧武鉉前大統領の死去に伴う国内論争は好機と見えているかもしれない。>

 まさしくそうなのだ。李明博政権への敵対的な言動だけでなく、盧武鉉というアホでどうしようもない「前大統領」自殺が米韓当局の謀殺だった、などという無茶苦茶な論文を出している。それに同調する世論が韓国内に隠然たる勢力を持っていること自体が問題だと思うのだが。

 <こうした挑発行動を通じて北朝鮮が最終的に望んでいるのは、米朝対話による体制への保障の獲得であろう。日米韓が結束を強め、中国、ロシアも一定の協調を示している現下の情勢での6者協議への復帰を北朝鮮は望んでいまい。むしろ米朝2国間対話を期待しているのではないか。>

 これは言える。

 <日本を含めた米韓中露にとっては、北朝鮮の更なる挑発行為を封印したうえで、6者協議に復帰させることが望ましい。国連安保理が対北制裁決議案を採択する方向だが、北朝鮮はどう出るか。アメリカが軍事力を行使すれば、あるいは中国が完全禁輸に出れば、金正日体制を倒すことはできるかもしれない。しかし、後に残された二千数百万の北朝鮮人民に対して責任をもつ意志と能力をもつ国が見当たらない以上、この選択肢はとれない。>

 2000万人の北朝鮮の国民をどう統治するか、の問題か。韓国が統一するのではないのか? 最近の論を見ていると、そうではなく、中国が占領統治し、米国が北朝鮮の核兵器の処理をするという米中棲み分けが水面下で話し合われている、というような説も見かけるのだが。

 <それ以下の制裁では北朝鮮を反発させ、更なる挑発行動に駆り立てる可能性が高い。しかし、北朝鮮の明らかな国際法違反に対して報酬を与えるわけにもいかない。ここに北朝鮮問題の難しさがある。それでも何かの制裁をし、北朝鮮指導部と意思疎通を図り、制裁解除を条件に対話の窓口を設定する他ないであろう。アメリカのテロ支援国の再指定はその手段となるかもしれない。>

 「それ以前の制裁」とは米国の軍事力行使、中国の完全禁輸に至らない制裁、ということだ。まさに今回の国連安保理決議は「それ以前の決議」だと思う。そうすると北朝鮮は「更なる挑発行動」をすると見ている。そういうことだろう、と思う。テポドン打ち上げ、3回目の核実験が予想される。米朝対話のための「テロ支援国家再指定」というオプションを考えているのか。

 <日本は既に制裁措置を積み重ねているので、制裁を強化する余地は少ない。他国に制裁を働きかける一方で、北朝鮮の挑発行動を抑止し、北朝鮮が不法な行動に出た場合には、事態を限定するよう、迅速に対処する備えが必要である。>

 「事態を限定する」というのはエスカレートさせて、戦争にまでさせない、ということだろう。

 <結局、北朝鮮の核およびミサイル放棄や拉致問題の解決は、北朝鮮の政権交代、すなわち金総書記の指導能力の喪失や死去といった事態が起きないと望み薄である。それはいらだたしいことではあるが、北朝鮮が事実上、独裁的王朝体制下にある以上やむを得ない。その日はそう遠くないかもしれない。その時に備えて、北朝鮮の挑発を危機へと拡大させず、北朝鮮の体制変化を受けとめる国際環境の構築を図る事が、現在とりうる最善の方策であろう。>

 中西氏は現実的国際政治学者である。視線は北朝鮮崩壊に向いている。その時、大混乱が起きるのをいかに防ぐのか、を今から日本が主導権を取ってとまでは言わないまでも日本も参画して話し合っておけ、というのだ。

 日本政府への激励文としてはこの通りだと思うのだが、昨日書いたように米国は中国の嫌がることはしない。だから、北朝鮮をテロ支援国家に再指定などしない。クリントン国務長官が日本にリップサービスしても、その舌の乾かないうちに、中国への賛辞を口にする人だ。信用できない。

 日米同盟は変質したのだ、という冷厳な事実を認めた上で、日本が自分で取り得る手段を冷静に、なおかつ急いで考える時が来ていると思う。

◆6月8日東京新聞朝刊[清水美和のアジア観望]

 ついでに6月8日東京新聞朝刊[清水美和のアジア観望]<手放せない「北の盾」>にも触れておこう。東京新聞論説委員というよりも、最先端を行く中国現代政治研究者といったほうが分かりやすいだろう清水氏がなぜ中国が北朝鮮をかばうのか、その理由を分析した論考だ。

 北朝鮮の2回目の核実験実施で中国メディアには「だまされた」「6カ国協議は時間稼ぎに過ぎなかった」という識者の激しい批判が登場していることをまず紹介し、今や北朝鮮の貿易総額の7割を中国が占めていること、援助を含めると必要なエネルギーや食糧の大半を支えていることを書いた上で、しかし、今回も中国は日米韓の誘いには乗ってこない、と書く。なぜか。

 <7世紀には白村江の戦いで唐は新羅を支援し倭国と百済の連合軍を破った。朝鮮半島の覇権をめぐる日清戦争で敗れた清は、日露戦争では自国の東北部を戦場とされる屈辱を味わった。中華人民共和国建国直後に朝鮮戦争が起きると、毛沢東主席は困難な時期でも義勇軍を送って北朝鮮を支えた。米国は中国に対する封じ込めを始め、代償は大きかった。朝鮮半島を外敵に脅かされれば、中国本土も危うくなる――。歴史的トラウマ(心的外傷)を負う中国は「北の盾」の維持に犠牲も払う。>

 という認識である。面白いのは、中国の内部の分析だ。

 <外交関係者が日米韓と連携した北朝鮮への制裁強化を主張しているのに対し、軍や安全保障専門家は慎重だ。台湾の武力統一には、米軍を引きつけ分断する北朝鮮の存在が欠かせないためだ。>

 として、

 <中央軍事委員会主席として統帥権を握る胡錦濤総書記は建国60年の今年、軍内の威信確立に躍起になっている。定年で総書記を引退する党大会を3年後に控え故鄧小平氏や江沢民氏にならい、その後も軍事委主席に留任し影響力を保つには軍の支持が決め手となる。自ら提唱した「軍人の核心的価値観」の学習運動を展開し、大幅な人事異動で信を置く将官の昇進を急ぐ。21年連続で国防費を2桁伸ばし軍人給与を大幅に引き上げ歓心を買った。60周年を迎える海軍創立(4月)、建国(10月)、空軍創立(11月)の記念日には大規模な軍事行動で軍とともにある姿を打ち出す。>

 と、伊藤氏と同じ見方なのだ。やはりそういうことなのだろう。

 <胡氏は3年前、北朝鮮の初核実験を「横暴」(外務省声明)と非難させ、直後にブッシュ米大統領と電話会談し協力を申し合わせた。今回の声明は激しい言葉を避けた。オバマ米大統領との電話会談も実験後10日目で、中国の報道に核実験への言及がなかったのも、胡氏の軍に顔を向ける姿勢と無縁とは思えない。>

 はっきりしている。

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武村正義氏の中国での大活躍(?)~北京週報6月12日

 北京週報日本語版に2009年6月12日、南京大学日本語学部専家・斎藤文男氏が09年6月3日に武村正義元内閣官房長官が「ひとりの日本人として考える」と題して「中国は日本の失敗に学んでほしい」というような内容の講演を行ったそうだ。人民網日本語版には少し遅れてアップされ、<「日本を反面教師に」と訴える武村氏 /武村正義・元内閣官房長官、南京大学で講演>の見出しだった。
 親中派と言われる武村氏が中国人を前に何を話してきたのか、見てみよう。
 <武村正義・元内閣官房長官は6月3日、「ひとりの日本人として考える」と題して南京大学で講演し、「中国は日本の失敗を反面教師として学んでほしい」と訴え、「環境協力で日中新時代を築こう」と提唱した。講演は約1時間にわたって行われ、定員400人の会場には、ほぼ満席の学生が参加し、講演のあと熱心な質疑応答が行われた。>
 南京大学だと。
 <武村氏は郷里・滋賀県の八日市市長や県知事を経て、衆議院議員に当選し、内閣官房長官、大蔵大臣を歴任した政治家である。8年前、政界を引退したが、現在は国内外で講演や緑化運動に取り組んでいる。>
 政界引退の原因は何だったか忘れたが、辞めないと大きなスキャンダルをばらされる、という種類の話だろう。
 <南京訪問は今回が3回目という武村氏は「南京は緑と水の多いきれいなまちだ」と印象を語り「これからひとりの日本人として、日本と中国の関係について率直な考えを述べたい」と話し始めた。>
◇日中間にある歴史認識のギャップ◇
 <「日中間で引き付け合っている求心力は、なんといっても日本と中国が一衣帯水の間柄にあることだ。3000年の交流があり、ほとんどは友好的な付き合いであった。漢字、仏教、儒教などほとんどの文化は中国から移入されたもので、最近の日本では論語の本も売れている。そのほか、納豆、豆腐、マージャン、囲碁なども中国からのもので、日本人の母なる国は中国だといっても間違いではない」と、日本と中国は世界的にも類がない長い文化交流による“求心力”の強さがあることを強調した。>
 いまだに30年前と同じことを言っているのか。
 <反対に、日中間で反発して結びつかない“遠心力”については、「日本と中国のどちらがいいかは言わない」と断りながら、「政治体制の仕組みが違う」ことを挙げた。そして、「日本人は、60万人がシベリアに送られたことや、広島、長崎の原爆のことなど、被害者の立場のことはよく覚えているが、加害者のことはあまり覚えていない。日中戦争で日本人が何をしたのか、日本人はあまり認識していない。南京事件についても、多くの日本の若い人は知らないが、中国ではきちんと教えている。このギャップは大変大きい」と、日中間の歴史認識のずれを指摘した。>
◇侵略戦争謝罪した「村山談話」を堅持◇
 <「日中関係で日本が大切にしたいこと」として、1995年8月15日に発表された村山富市首相(当時)の「村山談話」を堅持することを主張した。武村氏は当時、村山内閣の蔵相を務めており、「村山談話」の作成にも加わっていた。「あの当時、一言ひとこと推敲を重ねてまとめたものだ」と、14年前を振り返った。村山談話の重要なポイントとなる部分を暗記しており、「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました」と語った。>
 また村山談話か。
 <「村山談話」はこのあと「私は、未来に過ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧げます。」と続いている。>
 まだ村山談話だの中身だ。
 <この談話は日本が戦後50周年を迎え、侵略戦争や植民地支配を公式に謝罪したものである。村山内閣以降の歴代政権にもこの談話は引き継がれ、現在の麻生太郎首相もこの歴史的見解の継続を表明している。>
 謝っているんだよ、と中国人に口が酸っぱくなるくらい言い続けてほしい。
◇「戦争放棄」を明確にした憲法9条◇
 <中国側に期待することとしては「戦後の日本は、歴史認識はアバウトだが、『二度と戦争はしない』という認識は強く持っている。戦争放棄も明確にしている」と語り、通訳の張旭偉氏に中国語で日本国憲法第9条を読んでもらった。>
 そして、
 <第9条「戦争の放棄、軍備及び交戦権の否認」日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は、武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。>
 村山談話のあとは日本国憲法か。
 <現在の日本国憲法が「平和憲法」と言われる核心部分である。武村氏は「今の日本人は60~70%の人が憲法9条を変えない、という世論調査がある。日本国民の3分の2が平和憲法を支持していることを、中国の人たちも理解してほしい」と訴えた。>
 <中国側に期待することは、「戦後64年間、日本の失敗を教材として、中国はそれを反面教師にしてほしい」と呼び掛けた。武村氏がまず挙げたのは、公害問題だった。「日本は高度経済成長により、公害で大失敗をした。日本列島の環境がガタガタになってしまった。中国はこの公害列島を繰り返さないでほしい」。>
 <武村氏は自身が滋賀県知事時代、日本最大の湖である琵琶湖の水質汚染を防止する日本で初めての合成洗剤追放条例(通称「琵琶湖条例」)を制定している。一般家庭で使用していた合成洗剤を追放し、琵琶湖を蘇らせた経験から、現在の中国も次第に公害問題が深刻になっていることを指摘して、日本の失敗を繰り返さないよう呼び掛けた。>
◇「日本と同じバブル経済に」◇
 <さらに、経済の失敗についても学んでほしいと、日本のバブル経済が崩壊して、10年間あまり不況に苦しんだことを強調した。土地や株が値上がりを続け、風船がどんどん膨らんで、ついには破裂してしまったのが日本のバブル経済の結果だった。現在の中国でも、建築ブームとなっており、住宅や事務所のビルがどんどん建設されている。「聞いてみると、あの住宅にはほとんど人は住んでいない。投資目的で値上がりするのを狙っているのだという。これは日本の時と同じように完全にバブル経済だ」。村山内閣の蔵相時代、日本の不良債権問題から、住宅金融専門会社の破綻処理に苦労した武村氏の実感がこもった言葉だけに、中国の現実の不良債権問題を切実に憂慮した言葉なのだろう。>
 <「30年ほど前、日本の首相がフランスに行ったら、フランスの新聞ルモンドが『エコノミック・アニマル』と書いた。日本は経済のことばかりが中心で、精神や心がない、ということだ」と回顧。金権主義が蔓延している現在の中国で、「豊かになるため」の経済が最優先されていることに対して、日本が歩んできた過去の反省から、経済の豊かさよりも、心の豊かさが必要なことを指摘した。>
◇緊急を要する「水と緑の問題」◇
 <最後に武村氏は「緊急を要する問題」として、水と緑の環境問題に触れた。>
 <「中国の水の汚染問題は、30年前の日本と同じ状況だ」と語り、滋賀県知事の時、琵琶湖の水質汚濁防止に取り組んだ経験から、「新しい日中時代に向けて、人、金、技術を大切にする環境協力の新時代を築こう」と提唱した。環境ODAについては、「日本で民主党政権が誕生すれば、実現するだろう」との見通しを述べた。>
 <緑化問題に関し武村氏は、10年前に設立された民間の組織「日中友好砂漠緑化協会」の会長を務めている。講演では、「地球全体では毎年1290万?の緑がなくなっている。しかし、植樹などで毎年550万?の緑が増えている。このうち、中国での増加は500万?だが、差し引き740万?の緑が毎年減っていることになる」と緑化促進を緊急課題として強調した。>
 <「私は毎年、中国に来て砂漠に植樹をしている。南京大学の学生のみなさんも一緒に参加してください」と若い人たちの協力を訴えた。武村氏の講演は、学生を相手にしたものだったが、主張している内容は緊急を要するものばかりである。学生が大学を卒業して社会人となってから取り組むまでにはかなりの時間がかかるだろう。>
 <日本の公害問題や環境汚染が、日本の現状段階まで回復するまでには、40年以上の年月がかかっている。公害や環境汚染対策の必要性が叫ばれたが、経済成長を優先させた結果、解決への道が数10年も遅れてしまった。公害や環境汚染が始まった当初から対策が打たれていたなら、年数も資金もさらには被害者もずっと少なくてすんだといわれている。中国では、日本の失敗に学び、今すぐにでも公害や環境対策に本格的に取り組めば、日本よりずっと少ない年数、金額、被害者で済むだろうと思う。>

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2009年6月11日 (木)

クリントン米国務長官の再指定発言に騙されるな!:北朝鮮の核~各紙6月7、8、9、10、11日の米朝報道から

 オバマ米政権が北朝鮮対処方針を変更し、強硬論になった、という報道が目に付くようになった。

 欧州歴訪中で、ノルマンディー上陸作戦65周年の記念行事に出席する前に6月6日にサルコジ仏大統領と会談したオバマ大統領が北朝鮮への対応について,

 <「外交的アプローチが望ましい」としながらも「挑発的行為で利益を得るのを許し続けるつもりはない」と語り、サルコジ氏も同意した。>(6月7日朝日新聞朝刊国際面)

 と対北強硬論ととられるような発言を行ったことが大きい。

 日経新聞6月7日朝刊国際面は<米大統領/「北朝鮮 極めて挑発的」/仏大統領と会談/核解決へ連携>の見出しで報じ、読売新聞国際面も<米大統領/「北の行動は挑発的」/圧力高める決意表明>と意味づけを見出しにしていた。東京新聞国際面見出し<核問題で連携確認/米仏首脳/イランに対話促す>にあるように、米政権内の優先順位がブッシュ前政権時代の「①イラン②アフガニスタン③イラク④北朝鮮」から変化し「①アフガニスタン②北朝鮮③イラン④イラク」に変わったようにも見えるのだ。

 クリントン国務長官がこのオバマ発言をさらに加速させる発言をする。

 7日放映のABCテレビ番組でクリントン氏は、

 <「北朝鮮を指定リストから外したが、解除した目的の達成は北朝鮮の活動で妨げられた」と指摘した。>(日経新聞6月8日朝刊1面)

 日経新聞1面の記事は次のように続く。

 <米国務省によるテロ支援国家の再指定を受けると、北朝鮮には大きな打撃となる。ただ長官は「調査を始めようとしているところで、回答は持ち合わせていない」と、実際の発動は今度の検討次第とも語った。>

 この長官発言を受けて、米国内ではマスメディアが反応したそうだ。産経新聞ネット版の6月10日午前9時アップ分に<「金正日政権は日本人拉致当時と変化ない」/記者への判決で米紙>というタイトルの記事があった。ワシントン支局の有元隆志特派員の署名入りだ。

 <「日本やその他の国の市民を組織的に拉致したときから、金正日政権が何ら変わっていないことを示している」――9日付の米紙ワシントン・ポストの社説は、北朝鮮が拘束中の米国人記者2人に12年の労働教化刑を下したことについて、日本人拉致事件を例に出しながら強く非難した。同紙はブッシュ前政権が昨年10月、北朝鮮に対するテロ支援国家指定を解除したにもかかわらず、北朝鮮が見返りとして約束した(核施設の検証などの)措置をとってこなかったと批判した。日本政府がオバマ政権に対して、北朝鮮をテロ支援国家に再指定するよう求めるのも「当然のことだ」とした。>

 <同紙は2人の記者を「人質」と位置付け、2人の所属する米ケーブルテレビ局の共同設立者であるゴア元副大統領を北朝鮮に特使として派遣するのは「当然の選択」と指摘した。同時に、「経済援助などの身代金や政治的譲歩は行うべきではない」と強調した。さらに、オバマ政権は北朝鮮に影響力を持つ中国に圧力をかけるべきだと主張した。中国に対しては、中朝国境の取り締まりを弱めて、脱北者らの支援にあたる国際援助団体を招くことを勧めた。>

 オバマ政権を後押ししているワシントン・ポストがこのような論調を広げることはいいことではある。

 <米紙ニューヨーク・タイムズも9日付の社説で、オバマ政権に対して中国に働きかけを強めるよう求めた。>

 ニューヨーク・タイムズは少しトーンが弱いようだ。

 産経新聞6月9日国際面にはこの記事は見当たらなかったのは勿論だが、6月10日の産経新聞国際面には、これと逆の傾向を訴える有元隆志特派員の記事がトップで掲載されていたのが印象的だ。<テロ支援国家/「ミサイルや核実験 要件に当たらず」/北再指定 米に慎重論>である。

 <米政府内には早くも再指定に対し慎重な声が出ている。再指定をするには、北朝鮮が過去6カ月以内にテロ支援を行っていると判断しなければならない。また、長官自身も4月末の段階で否定的な見解を示しており、現実的に早期に再指定されるとの見方は少ない。>

 という前文だ。冷静である。オバマ政権内の力学をよく観察している、と思う。記事を見ると、

▽ケリー国務省報道官(8日の記者会見)=再指定手続きについて「北朝鮮が最近国際テロ活動を支援していると決定するなど、非常に明確な手続きを経ないといけない」と述べ、新たな「証拠」が必要と指摘。

▽ギブズ大統領報道官(8日の記者会見)=「クリントン長官の発言は(再指定を求める上院議員らからの書簡について聞かれたものだ。法規は明確で、いくつかの要件がある」と述べた。

 産経新聞はここで、

 <クリントン長官は7日放映のABCテレビのインタビューで、指定解除は「(核計画の放棄という)目的があってのことだったが、北朝鮮の行動でその目的は挫折した」と述べた。クリントン発言のように、ブッシュ前政権の譲歩は事実上失敗に終わったと受け止められている。しかし、米政府は昨年10月に北朝鮮のテロ支援国家指定を解除したばかりで、半年余りで再指定することには抵抗があるようだ。>

 と解説している。

▽クローリー国務次官補(広報担当)(2日の記者会見)=「(北朝鮮による)ミサイル発射や過熱している言葉遣いは愚かなことだが、そのことがテロの定義に合致しているとはいえない」と述べ、ミサイル発射や核実験は再指定の要件に当てはまらないとの立場を示している。

▽クリントン長官(4月下旬のFOXテレビのインタビュー)=北朝鮮がミサイルなどの拡散活動に従事しているかどうかについて「現時点で証拠を持ち合わせていない」と答えている。

 <国務省は4月末に発表した2008年版の国際テロ活動に関する国別報告の中で、昨年10月に北朝鮮を指定から外した理由として、北朝鮮が過去6ヶ月間、国際テロ活動を行わず、今後も行わないと確約したためと説明している。>

 この産経新聞の記事で少しずつ分かってきた、と思う。

 オバマ、クリントン両氏が日本に気を持たせるようなことを言っているのはリップサービスに過ぎないのだ。

 実際の米政策は北朝鮮宥和策なのだ。

 なぜか、と言えば簡単なものだ。

 米国はアフガニスタンに大量の兵士を投入する。タリバン撲滅作戦だ。そして、いまだにイラクにも兵士をとどめざるを得ない。つまり、3正面作戦などできっこないのだ。それに、経済のパートナーとして台頭してきた中国が北朝鮮を属国化しており、中国に任せるべきところは任せる、というワークシェアリングを米国は望んでいる。だから、中国の嫌がることは絶対にしない。

 日本が核武装するのは避けたいから、ここは時間を稼いで日本の核武装論を沈静化させ、もう少しすると中国の軍事力が整ってくるので、アジアは中国に任せて、米国は中国市場への優先アクセス権を手に入れておく、というシナリオであることは、ほぼ間違いない。

 これがオバマ政権のアジア戦略だろう。

 だから、オバマ政権高官の発言などに一喜一憂していても仕方ないのだ。

 それなのに、騙されやすい日本の新聞には次のような見出しが躍るのだ。

 <米、強硬姿勢一段と/拘束2記者有罪/テロ支援国家再指定へ加速も>(読売新聞6月9日国際面トップ)。<北のテロ国再指定/米が検討入り明言>(読売新聞6月9日夕刊1面2段)。後者は斎木昭隆・外務省アジア大洋州局長が訪米し、8日午後に米国務省でボズワース米政府特別代表(北朝鮮担当)、ソン・キム6カ国協議担当特使と会談したら、米側が「検討に入った」と明言した、という希望的観測と呼ぶしかない記事だった。つまり、読売新聞の突出ぶりが目立っているのだ。

 また、日経新聞も斎木氏の言葉を真に受けてなのか6月10日夕刊2面3段見出し<北朝鮮政策/「米、全面見直し」/外務省局長/圧力路線に軸足>を掲載していた。まあ、対話一辺倒から圧力を1割ほど加味する、というようなことなのだろうが、イライラしている日本の新聞にとっては真珠のような輝きをこの言葉の中に感じるのかもしれない。空しい幻想なのだが。同じ内容を東京新聞6月10日夕刊も2面3段<「核の傘」日韓と協議/米、対北圧力重視に転換>と、こちらは乱暴にも斎木氏のクレジットなしに東京新聞の判断であるかのような見出しをつけていた。

 米国の対北対処方針とは直接関係はないのだが、朝日新聞6月11日朝刊国際面トップ<圧力強化へ一歩/北朝鮮制裁決議案/日米、合意優先し譲歩>も国民のイライラする雰囲気を慰撫しようとしているのか、実際はそんなに「圧力強化」でもないのに、こんな見出しをつけていた。

 この傾向は6月8日各紙朝刊から始まっているようだ。

 東京新聞6月8日朝刊国際面トップは<米、北東アジア戦略見直し/対北 強硬論に傾く/核実験に強い危機感>はワシントン支局の岩田仲弘特派員のまとめ記事。

 <ある日米関係筋は「オバマ政権は国連安保理での制裁論議や6カ国協議の見直しにとどまらず、長期的に北東アジアの安全保障政策そのものを練り直そうとしている」と明かした。>

 などという傾向記事だった。その根拠として、

 <大統領の核軍縮構想は民主党のペリー元国防長官、共和党のキッシンジャー元国務長官ら超党派の安全保障専門家から”お墨付き”を得ている。一方でペリー氏は「(北朝鮮に対し)軍事力行使を薦めるわけではないが、(軍事的措置を)選択していれば2回の核実験を防げたかもしれない」と指摘。再度の核実験を防ぐには軍事力行使を排除すべきではないとの強硬論も示した。また、キッシンジャー氏も、CNNテレビのインタビューで「中国が何もしなければ、韓国と日本が核武装するだろう」と警告。>

 と書き、ブッシュ前政権の終盤の宥和策が北朝鮮に謝ったメッセージを与えた、という見方が米国内に台頭していることが政策見直しの背景にある、と指摘していた。

 この日は日経新聞朝刊も国際面3段<テロ指定国家再指定検討/米、「圧力」に軸足/対北朝鮮、交渉カードに>で同様の見通しを書き、産経新聞までもが国際面4段<「北、極めて挑発的」/米大統領/外交施策見直し示唆>で騙されていた。

 朝日新聞6月11日朝刊[私の視点]に書いているヤン・C・キム米ジョージワシントン大名誉教授の<対北朝鮮政策/「オバマ・ショック」に備えよ>はオバマ政権がある日、北朝鮮との宥和政策に舵を切るだろう。その時、日米同盟の信頼性も揺るぎかねないだろう、と書いていた。こっちのほうがあり得るシナリオだと思う。

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2009年6月10日 (水)

田中均氏は日米韓+中露で北朝鮮崩壊準備の枠組みを作り、外交手段で決着させよ、と~6月10日毎日新聞夕刊コラム

 毎日新聞6月10日夕刊文化面コラム[時をよむ]に田中均氏の<北朝鮮問題にみる日本の「解」/米国追随だけでない長期の戦略的外交を>が掲載されていた。今、日本は何をすべきなのか、どうすれば最も有効な手を打てるのか、永田町が機能停止になっているように見える中で、田中氏の提言は耳を傾ける価値があるのではないか。

 本文を読んでみよう。

 <先月のコラムで、多極化にむけて世界の大きな地殻変動が起こりつつあること、新しい秩序への模索が続けられていることを述べた。では日本の戦略はどうあるべきか。この間、ソウルやクアラルンプールで行われた国際会議に出席したが、いずれも、アメリカの相対的力が衰えたアジアでどういう秩序形成が好ましいかという議論である。その中で、東アジアの当面の脅威である北朝鮮問題に果たして「解」はあるのだろうか。>

 という問いかけから始まっている。日本の戦略である。いわば国家戦略だ。

 <オバマ政権が国際協調主義に転じた一方、いまだ北朝鮮政策を確立しきっていないという間隙をつき、北朝鮮は大きな賭けに出た。ミサイル発射も2回目の核実験も半年ほど前から計画されていたというのが大方の見方である。当面、北朝鮮はどんどん事態をエスカレートさせていく可能性が高い。北朝鮮問題に効果的に対処していけるか否かは、この地域の将来に致命的な影響を与える。>

 そうかぁ、北朝鮮の繰り広げる戦術は非常に計算し尽くされている、ということだ。オバマ米政権がまだ東アジア戦略を固める前に線香花火を何度も打ち上げ、目を向かせる、と。これは今まで言われていた説でもある。やっぱりそうなのか? でも、最近は「そうではない」という論者が増えているのも事実だ。米国を気にしているのではなく、何しろ核保有国としての地位を占めるために何でもやるのではないか、という見方である。

 <日本は北朝鮮の核やミサイルの開発から最も大きな脅威を受ける国である。拉致問題を抱えた日本が強硬になる十分な理由はある。しかしながら、北朝鮮問題はどのような結末になるにせよ、おそらく最終章の始まりであろう。>

 「結末になるにせよ」の可能性の一つに日本に核ノドンを撃ち込むという選択肢が含まれていることが問題なのだ。そして、今はまだ核ノドンは完成していないが、もうすぐ完成する、時間との戦いだ、というのが大方の見方だ。

 <ここは日本が突出するよりも、米、韓、中、露との万全の結束を図っておくことがより効果的であり賢明である。米国は脅しに屈するという国ではないし、幸いにして中国も国際社会が結束して北朝鮮の核問題に対処していく方向へ政策を切り替えた兆しがある。また、北朝鮮の暴発に備えた十分な危機管理計画を米国、韓国、そして場合によっては中国と協議しておくべきなのであろう。さらに、国際社会の結束を維持しつつ北朝鮮の挑発に冷静に立ち向かい、時が来れば問題の外交的解決に向け全力であたるという覚悟がなければならない。その際には、6者協議は維持しつつ、米朝交渉だけではなく、南北交渉、日朝交渉を同時並行的に行い、包括的解決を目指すべきであろう。>

 一気に書いているが、重要な要素がたくさん入っている。

 まず重要なのは、核ノドン開発阻止という戦術は取らない、ということである。確かに日本にそれを阻止しうる軍事的実力がなく、米国が軍事力行使を躊躇っている間はこの「阻止」自体、机上の空論なのだが。

 そして、「北朝鮮の暴発に備えた十分な危機管理計画を米国、韓国、そして場合によっては中国と協議」というのが重要である。金正日政権が崩壊した場合、米国を含めた周辺国がどう対処するか、である。この協議に日本が最初から入ることは非常に大事なことだろう。

 「外交的覚悟」とあえて「外交的」という形容詞をつけているのは逆に言えば「軍事的」行動を否定していることである。まあ、今の日本の実力では致し方ないのか。

 <北朝鮮問題は世界の地殻変動の中での日本の戦略を考える上で重要なきっかけを提供している。>

 この視点が大事だ。北朝鮮だけが問題ではないからだ。中国も日本に向けて核ミサイルを配備しているし、ロシアのシベリアにもありそうだ。国家防衛戦略はトータルなものである必要がある。

 <第一に、相対的力は低下したとはいえ、米国は引き続き最大の力を有する国であり続ける。日本は米国との同盟関係は大事にしなければならない。しかしながら、その基本的考え方は国際協調主義に転じたオバマ政権の健全なリーダーシップを日本の役割に応じて支援するということであり、すべてに追随することではない。

 もう少し具体的な言葉が聞きたいのだが。

 <第二に、日本の安全保障政策を正面から見直す必要がある。北朝鮮のミサイルや核実験に対して「先制攻撃能力」を議論するとか、憲法の制約を云々する前に、国連を中心とする集団的安保体制への日本の参画を含め日本にとって望ましい安全保障政策を包括的に議論してみる必要がある。>

 それはそうだ。

 <第三に、日本は東アジアの新しい秩序作りについてリーダーシップを発揮しなければならない。日本が求めるのは、より先進的で安定した東アジアである。中国は将来日本を凌駕する国力を持つ国となるであろう。だが、今のところは国内の大きな所得格差、政治的自由の欠如、エネルギーや環境問題など多くの難題を抱えた発展途上国にとどまっている。ルールに基づく東アジア地域経済連携や海賊・テロ・大量破壊兵器の拡散、自然災害への対処といった非伝統的安全保障課題への協力のあり方についてビジョンを示せるのは日本だけなのである。>

 これも、こう書かれて改めて「そうだった」と認識する事実である。中国の幻影に怯えすぎてはよくない。

 <日本に求められているのは、長期的視野に立って考え抜かれた戦略的外交である。果たして現在の外交政策基盤のままで、このような外交が可能なのであろうか。制度的な改革の必要性については次回のコラムで議論したいと思う。>

 具体論は7月か。何か、時間を無駄遣いしていいのだろうか、というジリジリした気分が日本国民に充満する前に何かのブレイクスルーが出てくればいいのだが。

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2009年6月 9日 (火)

国連決議案を骨抜きしようとする中国:バカにされる日本~朝日新聞などの6月9日夕刊から

 中国の真意は何なのか? 本気で抵抗しているのか、それとも駆け引きなのか? 国連安保理制裁決議案をめぐる調整の難航はやっぱり中国の抵抗にあった。スタインバーグ米国務副長官の訪中は実を結ばなかったのか? 米国は最終的には中国を説得するつもりはないのか? 様々な疑問が浮かんでくる記事が朝日新聞6月9日夕刊8面トップ<北朝鮮制裁/貨物検査に中国難色/義務化取り下げを要求>だった。国連安保理をカバーしているニューヨーク支局の松下佳世特派員の記事である。

 <北朝鮮に対する国連安全保障理事会の新たな制裁決議案をめぐり、中国が貨物検査の義務化を取り下げるよう要求していることが8日、分かった。中ロを除く3常任理事国と日韓は同日午後(日本時間9日午前)、大使級で非公式の協議をしたが妥協案はまとまらなかった。>

 何か訳の分からない交渉だ。どうして中国はそこまでこだわるのか?

 <7カ国は8日夜も最終調整を続け、合意できる修正案の見通しが立ち次第、大使級の会合を開く予定だ。>

 何か時間稼ぎをしているとしか思えない。何のための時間稼ぎなのか? 北朝鮮のテポドン打ち上げのためか? 三度目の核実験のためなのか? それとも、金正日総書記の後継決定までは動けない、というのか?

 <外交筋によると中国は8日朝までに、加盟国の領域内における貨物検査について、義務化を意味する「検査をしなければならないと決定する」との表現を「要求する」か「要請する」のどちらかに弱めるよう主張。検査対象についても、禁輸品目などを積んでいると信じる「合理的な理由」がある場合、との前提条件を「確かな証拠」に厳格化するよう求めたという。>

 「中国の野郎め」とか「チャンコロが」という右翼の怒りの声が聞こえてきそうだ。やっぱりおかしいぞ、中国は。「厳格な決議」で一致したはずじゃなかったのか?

 <このほか、北朝鮮が態度を改めた場合の制裁緩和▽北朝鮮の主権・領土の保全や安全保障上の懸念の尊重▽北朝鮮の核の平和利用の権利を否定しない――などの点に配慮するよう求めているという。>

 よくも、いけしゃあしゃあと、というのが大方の日本人の感想だろう。これで決議が弱まったら、「日本人をなめやがって、許しておかんからな」という感情論も噴出するだろう。

 <中国は同日、米国とも個別に協議。こうした要求が満足のいく形で反映されれば、8日中にも修正決議案を安保理の全理事国に提示することに同意する姿勢を見せた。だが、貨物検査など決議案の主要部分にかかわる内容のため、落としどころとなる修正案で意見がまとまりきらず、同日中の提示には至らなかった。>

 米国はまたまた中国に歩み寄ろうというのか? 最終的には歩み寄るのだ、と思う。結局、固有の軍事力を持たない日本はバカにされるだけなのだ、という国際社会のいい経験をまたするのか? 中国贔屓の学者に聞きたい。こういう中国の対応は正義なのだろうか?

 少なくとも、日本はたただ米国にくっついて行く、というバカみたいな行動パターンをやめ、取りうる選択肢を即刻増やすべきだ。北朝鮮が核弾頭を搭載したノドンミサイルを完成さえても、国連安保理は制裁などできないことがはっきりしたのだから。「日本の安全は米国が守る」という冷戦時代の信仰は捨て去るべきだ。

 日本人は冷戦崩壊を余りに甘く見すぎた。冷戦崩壊で今までの秩序がガラリと変わったことを意識せず、日米関係が従前通り進むと考えた。というか、何も考えずに盲目の服従を続けた。しかし、ご主人様は違う考えを持ってしまった。国際社会で巨大化する中国が米国の交渉相手だ、という考えである。

 クリントン国務長官が北朝鮮をテロ支援国家に再指定するかもしれない、と日本人の頭をなぜるようなことを言ったのも時間稼ぎ以外の何物でもないだろう。米国にはやる気などない、と思う。

 米国を信用していては大変なことになる。早くロシアとも平和条約を結び、軍事交流もして中国を挟み撃ちにしよう。インドともイランとも仲良くしよう。今この時期になってなんで米国遠慮する必要がある、というのか。

 日本の安全を守るのは日本人だ、という基本を日本人は心にかみしめよう。麻生首相にもしっかり、その考えを持ってもらおう。

 自衛隊を日陰者にするのではなく、誇りを持って仕事が出来るように大転換をしよう。集団的自衛権というのか、何しろ憲法解釈で日本が手足を縛られるような解釈は利敵行為だ。即刻やめよう。そして、純粋に現実論に立って国際情勢を考えよう。

 今はそれをしないと、今までの米国の植民地から今後は米国と中国に両属する植民地になり下がってしまう。日本人は二流国民扱いされる。それは避けるべきだろう。
 中国の行動を注視しよう。

 バカな日本はまた騙される、という見本が斎木昭隆・外務省アジア大洋州局長の訪米だろう。会ったのがボズワースとソン・キムだというから、会っても仕方ない連中だ。なぜクリントンに会ってはっきりと「北朝鮮を再指定せよ、日本の総意だ」と言わないのか? この事実を伝えたのは読売新聞6月9日夕刊1面<北のテロ国再指定/米が検討入り明言>である。言葉の上で期待を持たせて、最後に「条件が整わなかった」ですませるやり方なのだろう。中国様が嫌がることを今の米国がやるはずはない。

◆日経新聞の記事

 日経新聞6月9日夕刊も2面<対北朝鮮決議案/米中が2国間協議/安保理/船舶検査、表現緩和も>で同様の記事を掲載していた。

◆東京新聞の記事

 東京新聞も1面4段<北船舶貨物/検査義務化 見送りも/制裁案協議で中国抵抗>でニューヨーク支局の加藤美喜特派員が同様の内容を書いていた。見出しを見ても東京新聞が中国の肩を持っているのが分かる。何か、中国の言い分が当然、という見出しの雰囲気なのだ。新聞の性格だろう。

◆読売新聞の記事

 一応、読売新聞の記事も見ておこう。ワシントン支局の加藤淳特派員の記事だ。

 <斎木昭隆・外務省アジア大洋州局長は8日午後(日本時間9日未明)、米国務省でボズワース米政府特別代表(北朝鮮担当)とソン・キム6か国協議担当特使と会談した。米側は北朝鮮に対するテロ支援国再指定の検討に入ったと明言し、斎木氏は「再指定ということになれば歓迎する」と日本の考えを伝えた。>

 「再指定となれば」じゃないだろう、しっかりせい!

 <北朝鮮のテロ支援国再指定を巡っては、先にクリントン国務長官が検討する考えを表明していた。斎木氏は会談後、記者団に、「まだ検討している最中ということで、やるかやらないかは米政府が法的要件等も踏まえて判断することだ」と述べ、今後の推移を見守る考えを強調した。>

 もう逃げを打っている。「外務省としては一生懸命やったのですが」という国民向けの言い訳作りだと思う。高い金をかけて訪米しているのだったら、もう少し「子どもの使い」ではないような仕事もしてみろ、と言いたくなる。

 <斎木氏はリービー財務次官とも会談し、米政府が検討している北朝鮮への金融制裁について協議し、米政府が金融制裁を発動した場合、日本も協力する方針を確認した。>

 「確認した」なんてのんびりしていますね。脅威を受けている国は日本なのだ、という意識が薄すぎるのではないか? 外務省も駄目だな。

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SIPRI年鑑の教訓:中国の嫌がることをしろ!~6月9日各紙朝刊[中国の軍事力]から

 中国の軍事費支出が世界2位になった。6月9日朝刊各紙が報じたのだが、各紙熱の入れようが違っている。それが中国への姿勢、距離に比例しているように見えるから面白い。

 このニュースを最も軽視している、と思えるのが毎日新聞である。様々な事情もあったのだろうが、特派員に記事を書かせず、共同通信の記事を使い、国際面の横見出し<中国、軍事費世界2位/昨年/8兆円超、前年比10%増>。一応は2番手格の扱いなのだが、地味だ。

 朝日新聞は国際面でハコ扱いにして小さな凸版を使って目立たせる工夫をした<中国の軍事費 世界2位/世界全体では4%増>は[08年の軍事費上位10カ国]表を付けた。この表は産経新聞、東京新聞、日経新聞もつけており、つけなかった毎日新聞と読売新聞は少数派だ。

 各社、基本的に同じような扱いになる中、産経新聞は2面に飛行機のカット写真を入れて目立たせ<中国の軍事費 世界2位に/266億㌦/脅威増大、アジア軍拡の要因>と見出しも踏みこんだ。

 最も目立ったのは今や「護憲新聞」の異名を取る(?)東京新聞だった。1面4段<中国軍事費 世界2位/08年849億㌦、10年で3倍増>で、記事も書き込んでいた。

 共同通信を使った毎日新聞の記事を最初に見てみよう。

 <スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は8日、最新の2009年版年鑑を発表、2008年の中国の軍事費が前年比実質10%増の849億㌦(約8兆3500億円)と推定され、米国に次いで初めて世界2位になったことを明らかにした。>

 <一方、超大国米国の2008年の軍事費は世界全体の41.5%を占める6073億㌦。米中両国を合わせた世界シェアは50%近くとなり、軍事支出面では米中2カ国(G2)が他国を凌駕していることが鮮明になった。>

 世界経済に先駆けて「覇権」を担保する重要要素である軍事力でG2が出現した、という意味づけである。

 <年鑑は、中国の軍事費が過去10年で約3倍と極めて高い伸びを示していると指摘。中国の経済成長にほぼ比例した伸びとしつつも「(軍事)大国になることに対する強い願望」とも関係していると分析した。>

 そういうことだろう。過去10年ということで言えば、産経新聞が詳しい。過去10年で世界の軍事費は45%増加。米国が2190億㌦、中国は3倍増の420億㌦、ロシアは240億㌦の軍事費をそれぞれ拡大させていた、と書いている。

 <2007年の中国の軍事費は米国、英国に次ぐ3位だった。中国は軍事費の増加は人件費の増大によると説明し、兵器の調達については明らかにしていないが、年鑑は、中国が国内外からの調達によって兵器のハイテク化を進めていると強調した。>

 平松氏の中国軍事力分析を読まば詳細は分かる。

 <米国については2009年の軍事予算が2000年比で実質71%増の6750億㌦になると推定。イラクとアフガニスタンでの米国のこれまでの戦費は9030億㌦に上るという。>

 イラク、アフガニスタンの戦費の分析が新しいのではないか。

 ここでは触れられていないが、東京新聞によると、

 <世界の軍事費総額は前年比4%増の1兆4640億㌦で、冷戦後最高に達し、1999年からの10年間では45%の伸び。>

 とあった。

 共同通信原稿というか、それを使った毎日新聞に欠けていたのは日本の防衛費だった。これも東京新聞を参照しよう。なお、%は世界全体に占める割合で、この数字は産経新聞から写した。

 <①米国6070億㌦、41.5%②中国849億㌦、5.8%③フランス657億㌦④英国653億㌦⑤ロシア586億㌦、4%(中国とロシアは推計)⑥ドイツ468億㌦⑦日本463億㌦、3.2%。前年は5位⑧イタリア406億㌦⑨サウジアラビア382億㌦⑩インド300億㌦、2.1%⑪韓国242億㌦。>

 東京新聞は次のように書く。

 <SIPRI軍事費プロジェクトのサム・ペルロフリーマン部長は「テロとの戦いが多くの国に、問題を軍事的な手段で解決するよう促し、軍事費の伸びを正当化させてきた」と指摘している。>

 ブッシュ前米大統領の「テロとの戦い」というスローガンに乗って、各国のというか国際的な産軍複合体が利益を貪った、ということだろう。

 東京新聞の続き。

 <また年鑑は、核拡散防止条約(NPT)で認められた米英仏中露と、インド、パキスタン、イスラエルの計8カ国が計2万3300発以上の核弾頭を保有し、うち約8400発が使用可能と指摘。北朝鮮は、わずかな数の核弾頭を製造するのに十分なプルトニウムを保有しているとみられる、と分析した。>

 この「わずかな数」というのが東京新聞の北朝鮮より姿勢を図らずも見せているのがお笑いだ。

 北朝鮮については産経新聞が、

 <北朝鮮については核兵器を製造するのに十分なプルトニウムを保有しているとする一方で、核兵器を開発済みかどうかは明らかでないとして核保有国には加えなかった。>

 とあった。これが正確な表現だと思う。東京新聞の「わずか」ってどこから出てきたんだろう?

 読売新聞によると、

 <同研究所は「中国当局は人件費の増加が主な理由としているが、実際には情報化された近代戦に備えているほか、戦闘機、防空システム、中距離ミサイル、潜水艦の開発に力を入れている」と分析している。>

 と、中国の狙いを書いていた。

 日経新聞は中国について「中国の軍事費は大国志向を背景に経済成長とほぼ並んで増えている」と書き、中国が「英仏を抜いた」と書いたうえに、

 <国際平和維持部隊に従事する兵士の数は18万7586人と過去最高を記録した。>

 と違った視点の数字も載せていた。

 産経新聞は、

 <過去5年間で最大の武器輸入国は中国で全体の11%を占めた。7%のインドが2位。6%の韓国は4位で、経済成長を背景にした中国の台頭でアジアの軍事的緊張が高まっている現状を浮き彫りにしている。中国やインドへの最大の兵器輸出国はロシアだが、中国がロシアの軍事技術を盗んで自国製兵器を開発していることが問題になり、2007~08年にロシアの対中兵器輸出は激減。このため、中露両国は昨年、軍事技術の知的財産権を認めることで合意したという。>

 と書いていた。

 この部分から大きな教訓が得られそうだ。

 中国はロシアからの武器輸入をストップされ、困った。困ったので、知的所有権の交渉に応じて、条約を結んだ。つまり、中国を行動させるには必要に迫らせることが大事だ、という教訓である。共産主義というのは名ばかりで、共産党独裁国家である。自国に都合の悪いことは絶対に応じない。北朝鮮の核問題でも最後の最後まで抵抗するだろう。

 その中国を動かすには嫌がることをするしかない。中国が一番困ることは日本が核兵器を保有し、常に北京を狙った核弾頭をリーチ状態にしておくことだろう。これをやるぞ、核を持つぞ、というカードを切らないと中国は動かないだろう、と思う。

 それが今回のSIPRI年鑑の教訓だと思う。

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自衛隊にフリーパスで出入りしたスパイらしい男:防止策の第一は国防意識の転換だ~産経新聞6月9日朝刊[対馬が危ない!]

 産経新聞のキャンペーン[対馬が危ない!]は余りにも閉ざされた視野でものを見ているのではないか、と批判的に読んでいた。日本人だってニューヨークの建物を買ったりした過去があり、あまりにひどく、ロックフェラーセンターまで買ってしまったので、アメリカ人のナショナリズムを刺激してしまい、日米貿易戦争が勃発したのは約20年前のことだった。
 「まあ、いいじゃないの」と思っていたのだが、今回のケースはちょっと意味が違った。日本の安全保障情報が変な奴にザザ漏れになっていた、という由々しい話なのだ。いろいろ考えさせる記事なので、読みながらコメントをして見たい。

 産経新聞6月9日朝刊1面[対馬が危ない!]<日本に帰化 韓国人男性/海自施設で不可解行動>と社会面トップの関連記事<陸自や公共事業にも触手/演習日程など情報収集/自衛隊関連工事に関与>は事実上、一本の記事だ。連続して読んでみよう。

 <防衛省の関連施設の隣接地が韓国資本に買収されるなどしている長崎県対馬市で、日本に帰化した韓国人男性が10年以上にわたって海上自衛隊対馬防備隊本部(同市美津島町竹敷)など自衛隊関連施設に出入りし、幹部自衛官らと深い付き合いをしていたことが防衛省OBらへの取材で分かった。男性は、施設内のホワイトボードに記載された演習日程や人数、人員配置などを書き写しているところを何度も目撃されており、管理体制の甘さとともに、防衛情報が外部に漏れていた可能性が高い――と指摘する声も出ている。>

 これが1面と社会面の総合前文になっている。

 <この男性は年齢60歳前後で、両親が韓国人。本人は対馬市で日本に帰化したとされる。妻は、在日本大韓民国民団対馬島地方本部の事務局長。男性は20年ほど前、海上自衛隊員とその家族を支援する民間組織を設立。以来、対馬に入港する護衛艦の艦長や対馬防備隊本部に勤務する自衛官らと接触、4、5年前まで、記念植樹を行ったり、年に数回、男性の山小屋や経営する焼き肉店で自衛官や地元の警察官らと懇親会を開いていた。>

 帰化すれば日本人ではあるが、妻が民団幹部ということは妻は韓国人。何か不自然ではある。

 <だが、防衛省OBら複数の関係者の証言を総合すると、男性は海自幹部らと親しくなった後、支援組織の会長として防備隊本部に顔を出しながら、不可解な行動をとっていたことが分かった。防備隊本部は、上対馬警備所と下対馬警備所が収集する情報、特に対馬海峡や朝鮮海峡を航行する潜水艦の動向などをチェック、分析する重要な施設で、対馬市民でも自由に出入りはできない。ところが、ある防衛省OBによると、男性は防備隊本部にフリーパスで出入りするたびに、総務部入り口のホワイトボードに書かれている業務予定や護衛艦の入港予定などを書き写していた。平成17年(2005年)ごろには週に1回は顔を出していたため、重要な記載があるときは、幕を張るように指示が出されたという。>

 なぜ入室禁止にできなかったか、という原因を探っていくと、これは想像だが、自衛隊がいつまでも日陰者あつかいされ、こういう便利な男が暗躍できる素地ができていた、としか思えない。つまり、法律違反の存在という見方が日本国民に残っており、韓国、中国から理解されることを望むという受け身の考え方が染み付いているから、少し怪しくても「まぁ、いいかっ」と目をつぶってしまった可能性があると思う。あくまで想像だが。

 <別の関係者によると、男性は人員の配置や防衛力など海自の内部情報について、具体的な部分まで詳細に熟知していたという。>

 変な奴なのだ。こんな変な奴が自由に出入りできていた。スパイ防止法もない日本の現状なのか。

 <海上自衛隊対馬防備隊本部(長崎県対馬市美津島町竹敷などの自衛隊関連施設に海自支援組織会長として出入りし、不可解な行動を取っていた男性は、海自だけでなく、陸自対馬警備隊にも接触していたことも明らかになった。男性は海自施設と同様に、隊内の情報を収集する一方で、関連施設にからむ公共事業落札にも関与していた可能性が出ている。>

 何かすごいなぁ。

 <防衛省OBによると、平成10年(1998年)ごろ、この男性が突然、「海自の紹介だ」と言って対馬警備隊を訪れ、警備隊一科のホワイトボードに書かれてあった演習日程や人数などの行事予定をノートに書き写していたという。同警備隊ではそれ以降、隠語で書くようにしたが、その後も面会に訪れては隠語で書かれた予定をノートに写しているのを目撃されている。関係者によると、多くの自衛官は親しくするうちに、男性が韓国人であることに気づいたが、帰化しているため関係を続けていたという。>

 スパイだな、これは。

 <男性の行動は16、17年(2004、2005)ごろまで10年以上も続いたが、市民や対馬警備隊、対馬防備隊本部の一部自衛官の間では、男性には背後関係があり、情報目的で支援する会を結成し、接触してきたのでは――という懸念がつきまとっていたとされる。>

 韓国のスパイだったらまだいいが(結果として)、北朝鮮のスパイだった可能性もあるのだ。

 <男性の不可解な行動はほかにもあった。「毎週のように、東京・市谷の防衛庁(当時)や長崎県の佐世保総監部に出かけていた時期もあった」(関係者)。支援組織設立当時から付き合っていた自衛官が出世し、対馬を離任した後も関係が続いていたためで、携帯電話で冗談交じりに話ができるほど親しい幹部もいたという。>

 こういう危ない男が出入りできる機関なのか?

 <男性の周辺によると、こうした人脈の広さを活用、上京の際や佐世保総監部を訪ねる際には、支援する会の会員を案内し、防衛省幹部に紹介するなどしていたという。ある関係者によると16(2004)年ごろ下対馬警備所で上水道工事の話が持ち上がった。同警備所では、雨水をためて飲料水にしていたため、厳原町(当時)が町の予算で水道を引こうとしたのだが、男性は、支援する会の会員だった電工会社の役員を懇意にしていた海自幹部に紹介。防衛省の予算で、同社の淡水化設備を採用させようと働きかけたとされる。>

 何でもやって食い入ろうとしている。

 <結局、海自内部でも問題となり、男性の計画は中断したが、これ以外にも、自衛隊が関連する工事に関与していたもようで、別の関係者は、「自衛隊施設に関する工事の入札を担当している自衛官とも接し、詳細は言えないが、隊舎の改造工事や警備船の改修工事などを落札した業者もいたようだ」と証言する。防衛省OBの中にも、男性は、支援する会を利用して防衛省関連施設の工事受注にも食い込んでいた疑いがあったと、指摘する声がある。>

 やばい。非常にやばい。

 <男性は4、5年前、挙動不審を疑われ、防備隊本部などへの出入りはできなくなり、それと同時に、支援する会の活動も滞りがちで、防衛省幹部らとの関係も遠のいているという。だが、国防の最前線施設に、帰化しているとはいえ、韓国人が自由に出入りし、関連施設の工事受注にまで関与。しかも、さまざまな情報が漏れていた疑いもあることに防衛省関係者の間には、内容によっては日米安保体制にも影響を与える可能性があると危惧する見方もある。>

 見方がある、どころじゃないだろう。これが事実ならば。

 <対馬については、韓国資本による不動産の一部買収などに端を発し、国境・離島を見直す新法制定への動きが活発化している。今回の問題は、本土から遠く離れた国境・離島を領土保全や経済支援だけでなく、安全保障の観点からも改めて対応を迫られそうだ。>

 ものすごい内容だ。

 先ほども書いたが、なぜこういう事態が続いていたのか、を精査しなければ、こういう事態はなくならないだろうと思う。日本国民が自衛隊を余計物扱いし、彼らの自尊心を踏みにじる行為を続けていれば、彼らだって人間だから、大切にしてくれる人にはなびくのではないか。

 社民党や共産党的な言論を繰り返す民主党の幹部を除名にし、民主党をきちんとした保守の政党にし、真の2大政党制の国にすることが正常化の第一歩だろう。その後、やることはたくさんあるが、軍事機密保護法は必要だろう。いわゆるスパイ防止法だ。そのかわりに情報公開だけはきちんとおこなう法整備も一緒にやらないと、官僚天国になってしまうが。

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2009年6月 8日 (月)

野口裕之氏が武器輸出三原則撤廃を提言する:その通りだと思う~産経新聞6月7日朝刊

 産経新聞6月8日朝刊コラム[野口裕之の安全保障読本]は<日本を蝕む「偽善力」格差>だった。地政学とか戦略論という言葉を嫌う日本人だが、野口氏のこのコラムは産経新聞読者にとっていい戦略論入門になっているのではなかろうか?

 このタイトルは何だろう? と思いながら読み進んで、納得した。教えられるところも多かった。◆は新聞でついていた小見出しである。

 では読んでみよう。

 書き出しは「平和」という言葉の問題からだ。

 <北朝鮮の5月の核実験直後、フランスのジャンピエール・ラクロワ国連次席大使は「国連安全保障理事会は世界の平和と安全のため脅威に立ち向かう責務がある」と実験を非難した。「平和」は日本人にとっても大好きな2文字だ。もっとも、そこから先は全く違う。周辺国に過剰な配慮をするわが国の場合「専守防衛」など、軍事常識では考えられない“国是もどき”に自己陶酔してしまうが、現実には、国防の手足を自ら縛るこの種の愚行の数々が国民を危険に陥れている。逆に、国益に向かい突き進む「普通の国」は他国の迷惑など顧みない。ただし、こうした国々も、自国権益が脅かされる国外問題ではちゃっかり指導力を発揮するから、腹の黒さを隠すことができる。外国との「偽善力」格差が、日本の国力を蝕み始めている。>

 「専守防衛」という言葉は私が子供のころ、教科書で教わったのではないか、と思う。憲法の理念がうたう「平和国家」のシンボルのような言葉だった。1962年か63年に中学校に入学したから、そのころの話だ。岸信介首相が1960年の日米安保改定を行い、国会議事堂を取り巻いたデモ隊に追われるように政権を投げ出した後、同じ自民党とは思えない低姿勢の庶民派(を装っていた?)池田勇人首相が登場し、所得倍増を打ち出し、世は高度経済成長に沸き立っていた。1964年の東京オリンピックを中心にOECD加盟で先進国の仲間入りをし、高速道路網、東海道新幹線で国力を世界に示した。そんな時代の教科書は日本国憲法を高らかに掲げて、民主主義という言葉が何よりも輝いていた時代だったのだろう。

 その時代は「政府はけしからん」と新聞が書いても自民党政府はびくともせず、社会党は憲法を守れという理想論を言う役割をきちんと演じていた。懐かしい自社55年体制の「古き良き時代」だった。
 当時、私はまだ子供だったが、両親をはじめとする周辺の大人たちは「明日はきっと今日よりもいい日だ」という確信を持ち、希望に燃えていたと思う。

 映画「3丁目の夕陽」だったかどうかは分からない。家が下町でなく、近所にそういう中小企業の工場もなければ、学校の同級生たちにもサラリーマン家庭が多かったから、東北の香りは知らなかった。ただ、親に連れて行ってもらうデパートは上野の松坂屋より日本橋の三越の方が好きだった。子供ながらに雰囲気が違う気がしたのだろうと思う。

 そんな時代だった。「平和」が当たり前で、東西冷戦などニュースで言っていても関心はなく、日本人は猛烈に働いていた。

 野口氏が何歳になるか知らないが、もしも同じような年代だったら、同じような空気の中で成長したのだろうと想像する。

 しかし、その時代は今に比べて、地政学的な考えはまだまだ残っていた、と思う。それは、人前では口にしてはいけない考え方なのだ、と学校の先生たちから「阿吽の呼吸」で教わった気がする。時代はまだ戦争終結から20年経っておらず、街中には傷痍軍人が白い服を着て道路にうずくまり、前に空き缶を置いて、小銭を入れるお年寄りもまだいた。

 今や忘れ去られてしまった軍歌がよく歌われていた。戦友が久々に訪ねてきて、お酒を飲めば軍歌。会社の同僚とお酒を飲めば軍歌。三橋美智也、三波春夫、美空ひばりなど流行歌もはやったが、戦中派の琴線を揺さぶったのは若いころに歌った軍歌だった。しかし、「軍歌は歌うべきではない」という空気が年々強まり、すたれていく。最初のころは軍歌好きを対象に軍歌酒場もできて、ある程度はやったが、これも一過性の流行に終わり、軍歌の記憶は断絶されてしまった。もう子どもたちは「ラバウル小唄」も「戦友」も「ああラバウル航空隊」も歌えない。それが庶民の「平和」だった。

 野口氏は論を急ぐので、なかなか追いつけないが、「国是もどき」はたくさんある。三木内閣で入れたと思ったが、防衛予算をGNPの1%以内に抑えるという「国是」は中曽根内閣時代に取り除くことができた。武器輸出三原則は三木内閣で「4原則」とがんじがらめにされ、対米貿易だけで例外扱いすることとなったが、本当に解除が必要な第三世界に対しては輸出できないから、日本に軍事産業は育たない。

◆敵味方問わぬ兵器売買

 <サルコジ仏大統領は新年早々、イスラム原理主義組織ハマスとイスラエルの停戦合意取りまとめに向け中東を歴訪した。ところが、「平和の使者」のわずか2週間前、サルコジ氏はブラジルを公式訪問し、攻撃型原子力潜水艦1隻と通常型潜水艦4隻の技術供与などで合意した。>

 「平和」は結果としての状態なのであろう。それは目指すものかもしれないが、平和状態を守るためには泥棒よけの道具や警備人が必要、というのが国際的な常識であることは論をまたない。

 サルコジ氏の活躍を例に挙げているが、まあ、どこの国も同じだろう。

 <フランスは原潜に必要なコンピュター部品・技術を提供。通常型潜水艦でも、退役する独製潜水艦の後継に滑り込んだ。中南米諸国の原潜保有は初めてで、米国が「裏庭」と位置付ける中南米におけるブラジルの軍事大国化をフランスが後押しする格好だ。世界同時不況下における3000億円規模の商談成立は、欧州から遠い地域の軍事バランスなど眼中にないほど魅力なのだ。>

 金額が大きいのだ。一世を風靡したミラージュ戦闘機もフランス製だったなぁ。

 <ロシアとイスラエルの関係はもっと生臭い。ロシアは昨年末から100機近い無人偵察機購入に向けイスラエルと交渉を始めた。同時に、ロシアは対空ミサイル・システム売却を、イスラエルの天敵イランと進めた。このシステムが引き渡されると、イランの防空能力が飛躍的に向上。イランで核施設が着工されれば、施設空爆を敢行するであろうイスラエルとしては当然、強く反対している。>

 佐藤優氏の本で学んだが、イスラエルとロシアとの関係の深さには驚く。イスラエルのロシア研究も半端じゃない。だから、テルアビブ学会への学者派遣をめぐり、外務省の金を流用したというどうでもいい疑惑でひっかけられたりするのだが、それはさておいても、ユダヤ人国家であるイスラエルとロシア正教の国が裏でつながっている、という事実は普通の日本人の想像を超えている、と思う。

 <イスラエルにしても昨夏、ロシアと交戦したグルジアに開戦以前、無人偵察機を売却しており、敵味方を問わぬ兵器売買に関しロシアを非難する資格などない。そもそも、米国の後ろ盾で生存を担保してきたイスラエルは、冷戦末期にソ連と接近を始め、1990年代後半にはロシアと第三国向け兵器の共同開発を始めている。>

 こういうことなのだ。律義に米国に忠誠を尽くして64年、今や米国は古女房を煙ったがっており、新しい財産持ちの女である中国に色目を使っている。日本が律義すぎるので、この米国の行動こそ普通なのだ。

◆永世中立国の輸出国

 <兵器輸出を「悪」とするなら「良い国」を探すことは難しい。永世中立国オーストリアの武器輸出額は、独裁国家の北朝鮮やリビアよりも数倍から十数倍。同じく永世中立国スイスも武器輸出国である。人権にはことのほかうるさいフランスもドイツも、EU(欧州連合)が1989年の天安門事件を契機に実施している対中武器禁輸政策を解禁したくてウズウズしている。>

 日本人のお人よしぶりを強調したいのだろう。私もこういう事例をどんどんと新聞が書けばいいと思う。日本の新聞は日本人を信用していないから、こういうことを書き続ければ、カッカした日本人がナショナリズムを燃えたぎらせて軍国主義にすぐに行ってしまう、と心配しているのではないか? そんな風に思えてならない。そうでなければ、なぜこういう「本当のこと」を書かないのだろうか?

 <そしてお隣の韓国。昨年の軍事関連輸出が初めて10億㌦を突破、一昨年に比べ22%も増えた。中でも、契約競争でドイツを破り、トルコに技術提供した戦車「黒豹」の存在はひと際注目された。戦車の技術輸出は初めてのことだ。今年の輸出対象国は、伝統的に強かった中東・北米から中南米・アフリカへと拡大、2007年の46カ国から昨年は58カ国へと増えている。>

 韓国は武器輸出国なのだ。

 <特に、李明博政権では軍需産業を経済成長の新たな原動力と位置づける力の入れようだ。実際、黒豹には4万2000人の雇用創出が期待されている。>

 雇用創出効果かぁ。日本経団連がかわいそうなのは、こういう分野で手足を縛られている、というところもある。各国の産業が最後の最後に期待する有効需要創出策の決め手が日本だけ使えないからだ。

 だから、みみっちい給料削減をやる。それも、今働いている人の給与は減らせないので、新たに社会人になる新卒の求人を絞り、非正規労働者を増やした。結局、めぐりめぐって、社会不安を引き起こした。

◆裾野広い産業構造

 <ところで、1930年代の大恐慌時、ルーズベルト大統領は景気回復のためニューディール政策を発動したが、効果はなかったともいわれる。確かに、大恐慌克服は第2次大戦における膨大な軍需発生に因るところが大きかった。朝鮮特需もまた、日本経済に多大な貢献をしている。軍需産業は、超巨大企業から零細企業まで、重工業からサービス業まで、先端科学技術から食料・被服まで、潤すことのできる裾野の極めて広い産業構造になっているためだ。韓国が輸出を進める自走砲の場合、91業者が関係し、その従業員数は8万3000人に及ぶという。>

 ルーズベルトのニューディールが失敗だった、という説だ。いまだにこの説は生き残っているのだなぁ。でも、最近の経済学者にはこの説は間違いだと言う人が多いのだが。戦争が有効需要を創出し、不況を克服させる、というのは歴史的経験から見て正しいのだろう。日本人には1950年6月25日に金日成の軍隊が一斉に38度線を突破して韓国に侵攻してきた朝鮮戦争で日本経済が戦後不況から離陸したことを覚えてるだろう。それこそ、民族の記憶として染みついているはずだ。

 ただ、もう少し視野を広げれば、戦争では戦地になった国以外の国が儲かるのであり、言って見れば「富の移転」が起きるわけだ。

 <ただし、兵器導入は国防と費用対効果を熟考、国産・輸入双方を視野に入れた整備が肝要だ。経済効果はあくまでその結果である。とはいえ、年間わずか数台の戦車を製造するため数百人もの従業員を確保、製造ラインを維持している国内メーカーが存在する。優れた国産兵器を武器輸出3原則の手前、輸出できないためだ。少数生産のため、輸入品に比して10倍近くもの価格差がある兵器さえある。>

 野口氏は遠慮がちに書いているが、これは本当に大きな問題だ。

 <これでは、国防力も経済効果も望めない。日本は“平和を願う心”が、国際社会で歓迎されていると信じている。その通り。中国も拍手喝采している。>

 日本の「国是」を変える時だと思っている。だが、それは、その必要性を国民の過半が納得してはじめてできることでもある。国会は今のようにどうでもいいことを喧嘩腰に論じるのではなく、日本の生き残りのための戦略を①集団的自衛権問題②武器輸出問題③空母、爆撃機保有問題④核保有問題――などについて一度「憲法」を取っ払って議論すべきだと思う。「憲法」の政府解釈を持ってくると、思考停止がはじまり、今までの堂々巡りが終わらなくなるだろうから。

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2009年6月 6日 (土)

湯浅博氏の対北抑止力論、ちょっと違うけど大体は賛成~産経新聞6月6日朝刊コラム[くにのあとさき]

 朝日新聞の6月6日社説を読んだ後、産経新聞6月6日朝刊1面コラム【くにのあとさき】を読むと、奇妙な感じを受ける。今、日本の言論は事ほど左様に分裂しているのか、という感慨である。変にそろっていないのは民主主義が機能しているからいい、という見解もありうるから、別にいいのだし、私は百花繚乱、議論が議論を呼んで論点が深まることが素晴らしいと思っているのだが、どうも朝日新聞と産経新聞の議論はいつまでたっても平行線を走りそうな、そんな予感がして、「不毛」という言葉さえ浮かんでくるのだ。

 でも、朝日新聞の社説よりずっと現実的に「北朝鮮の脅威」について考えていることはひしひしと伝わってくるコラムだった。

 東京特派員・湯浅博氏の<対北の抑止力とは何か>というタイトルのコラムである。

 <朝鮮半島に「悪魔の跳梁」があり、日本海を隔てた列島はまともに脅威の波をかぶることになった。凶悪な犯罪国家が核を手にすれば、周辺の戦略環境は劇的に変わる。>

 その通りなのだが、書き出しから「悪魔の跳梁」とやらなくてもいいでしょう。厳しい内容を書くんだったら、なるべく冷静に書くのが新聞記者というか知識人の常識ではないでしょうか。別に一般読者を扇動する必要はないわけだし、産経新聞はその意味では扇動勢力ではないと思っている。朝日新聞と違って。

 <鎌倉時代の蒙古襲来のように、防備を固めて迎え撃つだけの「専守防衛」だけではこの跳梁を抑えきれない。彼らが核を小型化し、弾頭をミサイルに装着できるようになる前に、日本は襲来を防ぐ抑止力を備える必要がある。>

 私もそう思っているのだが……。

 <「抑止力」とは北朝鮮から攻撃を受ける恐れがあるときに、報復として相手に、より大きな損害を与えることを示して攻撃を思いとどまらせる戦略をいう。この「思いとどまらせる」ところがミソだから、切りかかると、直ちに返り討ちにあう怖さがなければそうならない。そんな中で、与野党でも敵基地攻撃論が台頭してきた。迎撃ミサイルですべて撃ち落とすのは無理だから、巡航ミサイルのトマホークを配備して北の発射基地をたたく。>

 ここも戦術論としては十分にありうる話だと思っている。ただ、朝日新聞社説批判でも書いたが、敵基地攻撃というのは「敵」にとっては先制攻撃を受けるということで、反撃は必至なのだ。だから、敵の攻撃能力の90%を破壊しなければ意味はないのだ。

 <従来の「防衛」と、新たな「攻撃」の一体化で抑止力を高める算段だ。もっとも民主党の鳩山由紀夫代表は「(核)議論自体も日本国民として許されない」と自らを縛るくらいだから、抑止感覚が欠如しているのだろう。これを知的逃避という。軍事の分野は好き嫌いを超えて、為政者が議論するのは国民のための責務である。いつまでも、時代を翻弄したナショナリズムの再来を恐れてばかりでは、ただいま現在の過酷な世界に対応できない。>

 この辺、大賛成だ。鳩山由紀夫氏は今でもそんなことを言っているのだろうか? 過去の発言なのか、代表に就任後の発言なのか、厳密に区別しないといけないと思う。村山富市という方はそれまでは安保廃棄、自衛隊解散を言っていたのに、総理大臣になったら日米安保条約を認め、自衛隊の長となった。

 <帝京大学の志方俊之教授によれば、核を抑止できるのは核しかないという厳しい現実がある。しかも、南アフリカの特殊ケースを除いて、核武装した国が核を減らしたことはあっても、核を放棄したことはないから厄介だ。>

 これは世界的な常識だ。欧米の政治学専攻の学生は大抵、戦略の勉強をするから、軍事的なものの見方を身につけているが、日本はマッカーサーの占領時代、地政学が禁止され、その後も日教組の強い影響の下で学校での学問から戦略論と地政学が消えたままになっているので、今の60歳以下の方々は学校でこういう知識を習っていない。それが問題なのだ。

 <冷戦下で、実効性のある核軍縮は、米ソが実施した中距離核戦力の廃棄であった。旧ソ連のSS20に対抗するパーシング2を彼らは同時に廃棄した。ただ、これらの核削減が「核保有国同士の間」だったことは注意を要する。>

 そういうことだろう。

 <北の核実験が未成熟爆発だったとしても「核保有国」を自任して非核の日韓を含む6カ国協議をいやがる。プーチン露首相が昨年「核兵器を保有しない国は真の主権国家とはいえない」と述べたのもそうした意識なのだろう。まして、非核の日本が主導権を握ることは金輪際ありえない。>

 プーチン氏がそんな発言をしていたのか。知らなかった。まあ、キッシンジャーでも同じことは言いそうだが。

 <さりとて、日本が「独自核」を持つことは政治的、技術的に難しい。「独自核」の保有は核拡散防止条約(NPT)からの脱退を意味するし、北と同じような立場になる覚悟が必要だ。日本は脱退に対する世界からの批判に耐え切れないし、なにより日米安保体制を破棄できるはずもない。>

 そう単純に割り切っていいのだろうか? NPTから脱退せずに核を保有する道だってないわけではない。他ならぬ米国に推進してもらう手だ。湯浅氏は戦後の戦略環境を知りすぎているから、「米国は日本に戦略的攻撃能力を持たせない」というドクトリンを守り続ける、と信じているのだろうが、これだって分からない。米国はこの世界不況が過ぎ去っても疲弊が残る。アジアの軍事バランスをある程度、日本に肩代わりさせる気になるかもしれないのだ。中国次第、という面もあるが。

 <周辺には中国、ロシアと北という核を持つ国などがあり、日本は価値観を同じくする米韓豪と組まざるを得ない。19世紀の米国の孤立主義でさえ、大西洋に英国の海軍力があってこそ可能だった。>

 ここはその通り。

 <そこで、日米同盟の枠内で「米国核」の導入を考えることになる。かつてドイツのパーシング2導入が、ソ連にSS20の撤去を促したように日本に「米国核」を配備し、それを嫌う中国に北の核計画をやめさせる算段だ。日本が巡航ミサイルを持つにしろ、「米国核」導入の検討にしろ、米国との協調なくしては成り立たない。当面、米国の核の傘を強固にするとしても、持てる技術水準を維持しつつ「核のオプション」だけは放棄しないことではないか。>

 そういうことだろう。国際情勢に関する見方が私と相当に違っている面もあるが、日本は多くのオプションを手にしながら、日米基軸を貫き、日米軍事同盟を強化しながら、周辺関連諸国との友好を深めるしか生きる道はないと思う。そして、まさかの坂だってあるのだから、平沼首相の「複雑怪奇の国際情勢」で内閣を放り出さないように、準備だけはおさおさ怠りなくする、というところが今できる最大の備えではないだろうか。

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敵基地攻撃論批判の朝日新聞社説は米国の植民地新聞のようだ~6月6日社説

 朝日新聞は6月6日朝刊社説<「北の核」と日本/味方を増やす防衛論議を>で北朝鮮の核開発に日本としてどう対応すべきか、難しい問題を正面から取り上げて論じていた。結論の可否はともかく、この堂々とした姿勢は好感できる。今後は、この社説への賛否の論議なども継続して紙面化してほしい、と要望しておこう。

 では社説を読んでみよう。

 <「北朝鮮のミサイル基地を攻撃する能力を持つべきだ」「米国に頼るだけの防衛でいいのか」「日本独自の早期警戒衛星を打ち上げよう」……。北朝鮮の核実験やミサイル発射を受けて、こんな主張が自民党ばかりか民主党内からも聞こえてくる。防衛大綱の見直しに絡んで、自民党国防部会の小委員会は集団的自衛権の行使容認や武器輸出3原則の緩和などを盛り込んだ提言をまとめた。日本の防衛政策の根幹を変えようという話がいくつも語られている。>

 朝日新聞の論説委員らが最近の永田町の動きをどう見ていたか、である。

 <以前から一部にくすぶっていた意見とはいえ、隣国の核実験という機に乗じるかのように、いとも軽々と噴き出したところに危うさを覚える。>

 この運動論的な書き方が気になるのだが、まあ目をつぶっておこう。

 <冷静に考えてみよう。たとえば他国のミサイル基地を攻撃するといっても、単純な話ではない。そもそも山中などに隠されたり、移動したりするミサイルの位置をどうやって把握するのか。日本攻撃の意図は確認できるのか。たとえ憲法問題を別にしても、軍事的な非現実性は明らかだろう。抑止力の向上にもつながるまい。逆に韓国や中国が日本に身構えるのは必至で、地域の軍拡や緊張を増すことになる。>

 この問題になると朝日新聞の論説委員たちは頭に血が上るのか、一気に論理的でなくなる。あれもこれも一緒くたに論じようとするから、一般庶民ならば扇動されるだろうが、少しでも論理的に考えようとする人たちは戸惑うのではないか。

 憲法違反問題を別にして考えているのは好感を持つ。ここで「9条の会」のような議論に陥ってしまうと、現実的な対応策は何も議論できなくなる、ということを朝日新聞論説委員会もやっと理解したようだ。

 しかし、敵基地攻撃論の危うさは朝日新聞が書いているような山岳地帯でどこに核があるか分からない、とか、中国、韓国が日本を怖がるというレベルではなく、敵基地攻撃というピンポイント攻撃は国際法的に言えば先制攻撃に他ならない、ということではないのか。

 それでもやむを得ず、自衛のために敵基地を攻撃せざるを得ない場合が出てくるかもしれない。しかし、その場合は敵は残る兵力を総動員して日本を攻撃、つまり反撃することを覚悟しなければならない。だから、戦略論的に言えば、敵基地攻撃とはいえ、先制攻撃の際の鉄則「敵の攻撃能力の9割を叩き潰せ」が可能な戦力を日本が持っているのかどうか、を考えないといけない、という点が敵基地攻撃論の最大の隘路だと思うのだ。そんな能力は逆立ちしたって日本にはないのだ。将来だって持てないだろう。

 その点に触れずに、情緒的な面ばかり強調するのは読者を惑わすものだ。

 <浜田防衛相は「単なる議論ならば国民の感情をあおるだけだ。冷静に対処すべきだ」と批判している。防衛政策通の石破農水相も「まことに現実的でない」と手厳しい。当然の反応だ。>

 浜田氏は敵基地攻撃論に批判的だ。なぜ批判的かといえば、私が先に書いたように非現実的なオプションだからだ。自衛隊員たちは戦略論を勉強しているから、理屈を知っており、この議論の危うさを理解しているのだ。その「常識」を浜田氏が代表してしゃべっているのだ。国民を不安にさせるからではない。議論をやめろ、とはさすがに浜田氏は言っていないはずだ。今まで議論すら封じてきたために、日本国民に国際常識である戦略的知識が全く欠如してしまったことが問題だからだ。何も知らせなくていい、というのは傲慢すぎる。

 昔は国民は威勢のいい新聞報道に踊らされ、真実を何も何も知らされていなかったから、日露戦争に勝ったのに、何故賠償をもらわないのだ、軟弱外交ではないか、と日比谷焼き討ち事件を起こした。太平洋戦争も新聞が大本営の嘘八百の発表を垂れ流したため、国民は騙された。

 新聞の役割は真実を国民に知らせることである。

 このような議論を封じるような書き方は言論の自己否定と言われても仕方ないだろう。この点は朝日新聞論説室に反省を求めたい。

 <北朝鮮の行動が極めて挑発的で、これまでの瀬戸際戦術の域を超えているのは確かだ。国連安全保障理事会を中心に国際社会が結束し、この暴走を止めなければならない。その作業がいま進行中だ。>

 これは客観認識として正しいだろう。

 <日本の安全をどう守るか。政治が担う最大の責任はここにある。米国との同盟を基軸にして、中国や韓国、ロシアなど近隣諸国との関係を安定させ、共存共栄の結びつきを深めていく。これが日本の安全保障の基本である。>

 随分と簡単に書いてくださっている。この問題だけで総合月刊誌、新刊書などが散々議論しているが、日米同盟をどう見るか、で意見は一致していないのが現状ではないか。ブッシュ政権のイラク戦争以降、単なる感情的な「反米」ではない、「離米」傾向の議論が多くなっているのも事実だと思う。

 日本の安全保障の基本をどこに置くか、そう簡単に数行で書けるものではないと思うが、こう書くのだったら、中国の軍拡、ロシアを含めた上海機構、米中「G2」と日米軍事同盟空洞化の兆し、「核の傘」が事実上効かなくなっている現状などを踏まえた論なのかどうかも聞きたいものだ。

 <日本国内の突出した議論は北朝鮮の脅威だけにあまりに目を奪われ、結果としてこの大事な連携を乱しかねないことが見えていないのではないか。>

 この論もおかしい。日本が核武装したり、攻撃能力を持つことを米国は常に潰してきたのだが、最近になって「日本が矛の仕事をすることを拒まない」と米高官がしゃべっている。オバマ米国の東アジア軍事戦略が今までの戦略からえ変化してきたのではないか? それをも踏まえた論なのか?

 <「いざというとき、米国は本当に日本を守ってくれるのか」。そんな不信を口にする向きさえある。イラクやアフガニスタンの戦争に消耗し、北朝鮮をめぐる軍事関与に二の足を踏むのではないか、という疑念かもしれない。>

 これは先ほど書いたことだ。クリントン米国務長官がことあるごとに「米国は日本を守る」といいながら、北朝鮮が核ノドンを持つことを許容しているのはなぜか? 朝鮮半島を非核地帯にする、などということは米国の戦略の中で大きな位置を占めていない。逆に北朝鮮との平和条約を締結すれば、朝鮮半島と日本への「核の傘」は否定される。朝日新聞をはじめとする平和勢力はそれでもいいのかもしれないが、このような弱肉強食の国際社会で核兵器に守られない国防が有効に機能するのだろうか? そういう「そもそも」論を議論すべき時だ、ということを朝日新聞には大きな声で訴えてほしかった。

 <だが、だから日本独自の軍事的備えを強めよという主張は、同盟の基盤である相互信頼をひび割れさせる。同盟をいかに確かなものにするかにこそ力を集中させるべき時なのに、これでは逆行だ。>

 アメリカ様の機嫌を損ねるな、というのか? あまりに植民地根性に染まりきっているのではないか。そうか、朝日新聞首脳陣はやっぱり、日本はアメリカの植民地だと思っていたのか。民族主義者の熱い血が流れているのか、と期待したが、がっかりだ。

 <北朝鮮の脅威が深刻であればあるほど、米国との信頼、近隣国との結束を固めるべきだ。視野の狭い、軽率な議論はいい結果を生まない。>

 そうではない。どの議論が視野が狭いのか、は議論してみなければ分からない。このような、自分に都合の悪い議論を「視野が狭い」と切り捨てる姿勢はファシズムに通じる、ということに早く気付いてほしい。

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米単独で北朝鮮に金融制裁+安保理制裁決議案~朝日新聞、読売新聞6月6日朝刊など

 朝日新聞6月6日朝刊1面3段見出し<金融制裁、武器禁輸、貨物検査/米、北朝鮮へ圧力戦略>が目に入ってきた。<金融制裁……>が地紋付きの凸版になっていて、目立つ扱いなのだ。ソウル支局の牧野愛博特派員の記事である。韓国情報が支えとあって「へぇー、本当かねえ」という感じで読み出してみたのだが……。

 <北朝鮮の核実験を受けた対応を話し合うため東アジアを歴訪していたスタインバーグ国務副長官ら米政府代表団は、金融制裁など三つの圧力を加え対話に引き戻すなどとする対北朝鮮基本戦略を日韓両政府に伝えた。複数の関係政府筋が明らかにした。挑発行為を続ける北朝鮮に譲歩はせず、6者協議の進め方も大幅に見直す。>

 スタインバーグ氏が日韓両国に伝えた内容だ、とある。日本外務省からではなく韓国から情報が出るところなど、記者の腕前の話ではなく、国の体質問題だろう。

 <北朝鮮を対話に引き戻すため①北朝鮮関連の海外口座凍結などの金融制裁②北朝鮮による武器輸入の阻止③北朝鮮船舶などに対する貨物検査――の三つの手段で圧力を加えるのが柱。北朝鮮が対話に戻る際にも対価は与えないとし、中国にもより大きな役割を求めるとした。国連安全保障理事会で協議中の制裁案とは別に米国が独自に実施し、関係国に協力を呼びかける。>

 「アメリカは本気で怒っているよ」というメッセージを北朝鮮に見せる、ということか。

 <対話の具体的プロセスについて米側から詳しい説明はなかったが、朝鮮半島の検証可能な非核化を目指した2005年の6者協議共同声明を基本的に踏襲。北朝鮮を核保有国として認めない方針も維持する。>

 この辺はボチボチと「米方針」として、いろいろな新聞出ていたことだ。

 <昨年末以降中断している6者協議については、枠組みは評価する一方「いつでも復旧可能な核施設の無能力化と、協議への出席だけで北朝鮮に対価を与えたうえ、議長国中国の国威発揚に利用された」と分析。別のアプローチが必要だと指摘した。>

 どこまでが米国の本音なのか。

 <一方、ミサイル発射や核実験が続く背景には、金正日総書記の後継選びをめぐる幹部や側近の「忠誠競争」や、米本土に届く核搭載ミサイルを開発したい思惑、米国を直接対話に引っ張り出したい狙いなどがあると分析。現状のままでは関係国に軍拡競争を招き、地域安保に危機が訪れかねないとの認識を示した。>

 そういう分析にならざるを得ないと思う。日本の自民党議員たちがぶち上げていた核武装論や敵基地攻撃論という勇ましい議論も米国を動かしたという結果だけ見れば無駄ではなかったことになる。

◆麻生・スタインバーグ 外務省ホームページから

 スタインバーグ米国務副長官は日本を訪問後、韓国に回った。麻生首相にも会っている。麻生首相にも同じ内容を伝えたはずだ。外務省のホームページに麻生首相を表敬訪問した際の記録が残っている。見てみよう。

 タイトルは<スタインバーグ米国務副長官による麻生総理表敬>で6月2日にアップした形だ。本文は以下の通り。

 <6月2日午前10時45分過ぎから約40分間、訪日中のスタインバーグ米国務副長官は麻生総理大臣を表敬したところ、概要以下のとおりです(先方同席者:レビー財務次官、ズムワルト在京米大臨代、グレッグソン・アジア太平洋安全保障担当国防次官補、ボズワース北朝鮮政策担当特別代表他)。
 麻生総理より、北朝鮮問題に関する今回の関係省庁合同ミッションの訪日を歓迎する、昨日は、実務レベルで、北朝鮮への対応などについて、中身のある協議が行われたと報告を受けている、オバマ政権発足後、北朝鮮問題、アフガニスタン・パキスタン情勢への対応、気候変動・エネルギーなどの分野で、日米連携が進展したが、重要な課題が山積しており、引き続き日米で共に取り組みたい旨述べた。これに対し、スタインバーグ米国務副長官より、今次ミッションの派遣はオバマ大統領の指示に基づくものである、薮中外務次官との間では、非常に有益な意見交換ができた旨述べた。
 麻生総理より、北朝鮮の核保有は日本の安全保障にとって大きな脅威であり、絶対に認められない、あくまで朝鮮半島の完全かつ検証可能な非核化を追求したく、まずは追加制裁を含むできる限り強い国連安保理決議を迅速に採択することが重要であり、同時に日米同盟を一層強化したい、オバマ大統領自身が日米安全保障体制に対するコミットメントを再確認されたことを評価している、引き続き、拉致問題への対応を含め、日米で緊密に連携したい旨述べた。これに対し、スタインバーグ米国務副長官より、国際社会への北朝鮮の挑戦に対する強力かつ一体的な対応が必要であり、総理の見解に同意する旨述べ、今後の対応につき緊密に協議しながら、日米で共同して対処していくことを確認した。>

 と、内容については書いていない。藪中事務次官と有益な話をした、という内容がこの朝日新聞の報道の通りなのだろうか?

 合同ミッションである点、特にレビー財務次官が入っている点から金融制裁が論点になるだろう、とは想像できる。グレッグソン氏は核問題とミサイル問題か。そして、6カ国協議担当のボズワース氏と、今時点での振るメンバーなのだろうが、カート・キャンベル氏は入っていないのか?

 この方針がオバマ政権の対北朝鮮政策として決定されたものだ、とは思わない。あくまで当面の対策だろう。中長期策としては何をするのか? まだ見えない。

 この米国独自制裁、特に金融制裁は日本が望んでいたものだ。麻生首相はオバマ大統領との電話会談で指定国解除について「もう一度、北朝鮮を指定してほしい」と要望したが、これも米国独自でできる政策だが、オバマ氏はまだ決断しなかった。しかし、金融制裁だけは飲んだ、ということなのか。

◆読売夕刊がこの記事内容を追認していた:米国務次官補が記者会見

 読売新聞のネット版を見ると、ちょうど6月6日夕刊に掲載される時間帯に<米単独の追加金融制裁、北朝鮮の核対応で検討>というワシントン支局の小川聡特派員の記事がアップされていた。

 <クローリー米国務次官補は5日の記者会見で、北朝鮮の核実験を受け「過去に行った銀行部門の措置は明らかに北朝鮮に効いた。もし同じようなやり方が見つかれば、米国はそれを実施する」と述べ、米国単独での追加的な金融制裁を検討していることを認めた。>

 国務次官補のワシントンでの記者会見だ。これで公式に国際社会に北朝鮮への金融制裁を表明したことになる。

 <米政府は2005年にマカオの銀行「バンコ・デルタ・アジア(BDA)」の北朝鮮関連口座の約2500万㌦(約24億円)を一時、凍結したが、北朝鮮を6か国協議に引き戻す見返りとして解除した。米政府が今回、日本、韓国、中国に派遣した代表団の中には、この措置を主導したリービー財務次官が含まれており、新たな金融制裁について説明した模様だ。>

 リービー? レビのことだね。

 <米国単独での金融制裁は、米系銀行に、北朝鮮に関連する特定の銀行との取引禁止や資産凍結を求める内容とみられる。米国が国際金融に大きな影響力を持つことから、BDA口座に対する制裁の際には、約20か国の銀行が追随し、金正日総書記や幹部たちの「財布」への資金の流れを締め上げる上で効果が高かったとされる。>

 やっぱりそうだったんだ。

 ということは、昨日メモしておいたように、北朝鮮内で金融制裁を想定して偽ドル札作戦を準備している、というのも本当くさい話ということになる。

 朝鮮半島内では地続きだけに韓国内に北朝鮮情報がザザ漏れになっている、ということなのか。

◆読売新聞が伝える国連決議案

 この米国の当面の対処方針決定に合わせるように国連安保理の北朝鮮制裁決議案も徐々に形になってきたようだ。

 読売新聞6月6日朝刊1面トップ<対北 貨物検査を義務化/国連決議案7カ国合意/全武器の禁輸も>は6面に決議案要旨をつけたニューヨーク支局の白川義和特派員の記事だった。

 <国連安全保障理事会の常任理事国に日韓を加えた7か国は4日の大使級会合で、北朝鮮核実験に対する安保理制裁決議案の内容で基本合意した。外交筋が5日、明らかにした。最大の争点となっていた北朝鮮船舶などの貨物検査は、国連加盟国に実施を義務づけたうえで、公海上では船舶が所属する「旗国」の同意のもとで行うことで決着した。7か国政府の最終合意が得られれば、5日以降、安保理の残る9理事国に決議案を説明し、週明けにも採択する見通しとなった。>

 の前文。厳しい決議のようにも見えるが、どこかで中国が同意できるような抜け穴が用意されているのだろう。

 <貨物検査は核、ミサイル関連物資などの北朝鮮への移転や、北朝鮮からの移出を阻止するための措置。日米の決議草案は将来、軍事行動をとる余地を残す国連憲章7章に基づき、貨物検査の際「必要なあらゆる手段の行使を許可する」との表現で強制的な検査の実施を盛り込んでいた。>

 そうだろう。

 <これに対し、中国は公海上での強制的な貨物検査は北朝鮮との軍事衝突につながりかねないとして反対し、非軍事的な制裁を定めた「国連憲章7章41条」の明記を要求した。協議の結果、決議案は「憲章7章のもとで行動し、7章41条に基づく措置を取る」と規定。貨物検査は「すべての加盟国が領内の陸、海、空で行うよう決定する」と義務化したうえで、公海上の検査は船の旗国の許可を必要とするとの項目を加えた。>

 やっぱり妥協の産物だったか。でも、実効性は?

 <金融制裁では人道・開発目的以外の北朝鮮への新規融資・援助の禁止や北朝鮮の核、ミサイル開発につながる資金移転の阻止が盛り込まれている。>

 これはどうなのか? これだけ読んでも意味合いが分からない。

 <また、2006年の核実験で採択された安保理決議1718が北朝鮮による大型兵器の輸出を禁止していたのに対し、今回の決議案は「すべての兵器・武器」を輸出禁止の対象とした。さらに、決議1718の制裁委員会の活動を強化、制裁徹底を図るとしている。>

 少なくとも国連決議1718よりかは厳しいものだ、ということのようだ。

 読売新聞国際面トップ<モノ・カネ封じ込め徹底/対北決議案/日米の主張反映>で白川義和特派員は、

 <北朝鮮を出入りする物資と資金を徹底的に締め上げ、核、ミサイル開発阻止を図る日米の主張がある程度反映されたといえる。>

 と書いていた。

 まあ、少しずつは進んでいる、と見ればいいのか。

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2009年6月 5日 (金)

中国軍事筋情報で年内に北朝鮮が核ICBMを開発、と。本当かね?~東京新聞6月5日夕刊、韓国・聯合ニュースHPから

 東京新聞6月5日夕刊2面トップに4段記事<北、年内に核実験計画/大陸間ミサイル開発も/韓国通信社報道>の記事が出ていた。ソウル支局の築山英司特派員が聯合ニュースの速報に反応して夕刊に叩き込んだと見える。

 本文は次のような短いものだった。

 <韓国の通信社、聯合ニュースは5日、北朝鮮が年内に核弾頭を搭載できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)を開発するという目標を立てていると、北京の外交消息筋の話として報じた。このため、年内に3回目の核実験を行う計画があると指摘したという。同ニュースによると、消息筋は、北朝鮮が数年前から軍主導でICBM開発を進め、完成が目前になっていると話した。朝鮮半島西海岸の平安北道東倉里の発射基地に長距離弾道ミサイルが運び込まれているが、このミサイル発射の後に核実験を強行するだろうとした。同ニュースは、核実験は核弾頭小型化のための最後の作業とみられると分析した。>

 怖い話だ。2面とはいえ、トップ4段で扱うのは当然という感じだ。

 本物の聯合ニュースの日本語ホームページを見てみたら、このニュースが掲載されていた。見出しは<「北朝鮮、年内に3回目の核実験も」北京消息筋>と、そのまんまだ。コピペしておく。

 <【北京5日聯合ニュース】北朝鮮は年内に核兵器を搭載した大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を終える目標を立てており、これに向け3回目の核実験を実施する計画だとの見方が示された。>

 いかにも翻訳調だが。

 <北京の外交・安保消息筋は5日、北朝鮮は数年前から軍部主導で核弾頭を搭載したICBM開発を続けており、完成を目前にしていると伝えた。北朝鮮は核弾頭ICBMの完成に向け、今月中旬ごろ平安北道鉄山郡東倉里でICBMをテスト発射するのに続き、年内に3回目の核実験を強行するとの見方を示している。>

 中国の安全保障問題に詳しい人物がニュースソースらしい。

 <また、オンライン軍事専門媒体「グローバルセキュリティー」のブラウン先任研究員は4日、衛星写真を土台に「ICBM発射に向けた東倉里のミサイル発射台が作動可能な状態にあるようだ」と話した。北朝鮮は国連安全保障理事会が推進中の対北朝鮮制裁決議案の内容を確認するため、ICBMのテスト発射時期を調整しているが、制裁内容の強弱に関わらずICBMをテスト発射するとの原則には変わりがないということだ。>

 グローバルセキュリティーの話は日本の新聞に出ていたが。

 <北朝鮮の3回目の核実験はICBM弾頭に搭載する核兵器を1㌔㌘未満に軽量化するための最終作業と分析される。消息筋らは国連安保理の北朝鮮制裁案では北朝鮮の核弾頭ICBM開発を抑えられないと懸念を示している。>

 核ミサイルを国連決議では止められない、というのは本当の話だろう。

 <北朝鮮がここ最近、核兵器とICBMの開発により積極的なのは、金正日総書記の後継者に内定した三男・正雲氏を後押しするためとみられている。北朝鮮は核兵器と核搭載ICBMの開発が安保・軍事の歴史に偉業を刻むものと判断し、これを正雲氏が主導したと内外に宣伝することで指導者の力量が備わっていることをアピールする考えと分析される。実際、北朝鮮の朝鮮労働党と軍部では、正雲氏が核実験とミサイル発射を主導しているという宣伝が始まったと伝えられた。>

 おやおや、正雲伝説作りがすでに始まっているのか。

 <一方、国連安保理の制裁決議にもかかわらず、北朝鮮が核弾頭を搭載したICBMの開発を成功させれば、6カ国協議は存在理由がなくなり「廃棄」される可能性が大きいと外交消息筋らはみている。北朝鮮が核兵器保有国になった状態では、核廃棄と無能力化のための6カ国協議には意味がないとの指摘だ。消息筋らは、今後は代わりに北朝鮮の核縮小問題を話し合う新しい形の国際会議が設けられるなど、北朝鮮の核問題が新たな局面に入ると見通した。>

 はっきりしているなぁ。日本人には見せたくない部分だろうなぁ。

 中国人や韓国人の本音が出ている文章だ。

 日本の外務省がどんな詭弁を弄そうとも、6カ国協議は北朝鮮に時間を与え、核ミサイルを開発させた元凶ということになる。

 ここからの対応は国別で異なってくる。日本が安全保障の半分以上を依存している米国にお願いして「北朝鮮の核兵器をミサイル攻撃して」と言っても、米国は言うことを聞かないだろう。

 日本は核保有国である北朝鮮を隣人として暮らしていかねばならなくなるだろう。

 今の日本の政治家は20年後、30年後には死んでいるだろうから関係ないかもしれないが、日本列島に住まねばならない子孫たちに最悪の安全保障環境、悪夢を残すことを政治家はどう考えているのだろうか? 日本の国としての覚悟が試される。米国が頼れず、中国は北朝鮮との争いを好まず、同じ民族の韓国は最後の最後は北朝鮮に甘くなる。

 日本は孤立する。軍備のなさを嘲られる日が近いかもしれない。「生きていくんだったら準備だけはしておくのが常識だろう。泥棒が入らないように、警察があるように、力の支配する国際社会で軍備がない、なんて自慢にもならないさ。それ見たことか、軍事費をケチって、経済成長をしてきた罰が当たったのだ」、「日本というキリギリスを北朝鮮や韓国というアリンコが食い尽くす日も近い」とか。それでも憲法9条を厳格に解釈し続けるのか? 核兵器、航空母艦や長距離爆撃機も自衛のためだったら持てる、という拡大解釈だってできるのだ。どっちにしろ、覚悟をしておかないと、今後、日本は本当に生きて行けない、と思う。

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北朝鮮の物言いが奥歯にものが挟まった感じなのはどうして?~朝鮮新報6月5日論文

 北朝鮮の方針を国際的に発信するサイトとして最近注目を集めている朝鮮総連のウェブ版「朝鮮新報」は6月5日、<「戦時に相応する行動」で朝米間の矛盾激化>と題する金志永記者の論説をアップした。長い記事だが、何か奥歯にものが挟まったような書き方だ。何を狙った記事なのか、よく分からないのだが、訳の分からない内容であることも一つのメッセージである、という情報学の鉄則に則って詳しく見てみよう。(◆は原文にあった小見出し)

◆米主導の包囲網に対応措置

 <朝鮮の人工衛星打ち上げを非難した国連安保理の議長声明が採択された後、朝鮮半島問題をめぐる攻防は軍事的対立の様相を見せ始めている。朝鮮戦争停戦協定の法的当事者である国連が制裁を実行に移す中、南朝鮮は大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)への全面参加を決定した。朝鮮はこれを宣戦布告と見なし、「戦時に相応した実際的な行動措置」(5月27日、祖平統声明)で対応するという立場を示した。朝鮮半島に戦争の火種を残す朝米両交戦国間の矛盾が一気に表面化している。>

 「朝米両交戦国」がキーワードだ。交戦中なのだよ、と。

◆停戦協定の破棄

 <1953年に締結された停戦協定は戦闘行為の一時中断を宣言したにすぎない。2009年上半期、朝鮮半島をめぐる動きは、同地が依然として戦争状態にあるということを示している。>

 第1段落を分かり易く説明した部分だ。

 <他国の人工衛星打ち上げを制裁の対象として議論したことがない米国が、唯一朝鮮の衛星だけを問題視した。米国は衛星打ち上げを「弾道ミサイル発射」と見なし、国連を舞台に強権外交を展開した。>

 米国の二重基準批判だ。

 <近年、6者会談の枠組みの中で朝鮮半島非核化の問題が論議されてきたが、国連を舞台にした現在の事態は、交戦双方である朝米両国の敵対関係が少しも変わっていないことを示している。>

 ここも「朝米両交戦国」を敷衍する説明だ。

 <経済復興と密接に関わる朝鮮の宇宙開発計画を「挑発」だと一方的に非難する米国の傲慢さを批判する国はなかった。>

 繰り返し。

 <朝鮮は大国の二重基準に反対し、自主権行使の正当性を主張した。議長声明採択後は、自主権侵害と敵対行為に対する「自衛的措置」に言及した。しかし、停戦協定の当事者である米国は態度を変えようとせず、ほかの国は朝鮮を二度目の核実験に追い込んだ状況を傍観するだけだった。朝鮮に対する国際的な制裁包囲網の形成には米国の本心が表れている。>

 これも繰り返し。

 <朝鮮はすでに1990年代、停戦協定の法的当事者である国連が制裁を加える場合、それを停戦協定の破棄、宣戦布告と見なすと宣言したことがある。南朝鮮のPSI参加についても、武力衝突の危険性が恒常的に存在する朝鮮半島で米国主導のPSIに合流することは「戦争の導火線に火をつけることになる」と再三警告している。>

 経過説明。

 <朝鮮は米国が停戦協定の当事者としての責任を放棄し、南朝鮮をPSIに引き入れたことを宣戦布告だと断定し、「われわれもこれ以上停戦協定には拘束されない」(5月27日、朝鮮人民軍板門店代表部声明)と宣言した。>

 すでに5月27日に通告してあるのだぞ、という念押し。

◆「忍耐の限界」

 <朝鮮側はPSIを自国に対する封鎖を狙ったものであり、停戦協定に対する蹂躙行為だと主張している。戦争時代の海上封鎖が再現されるという認識に基づくものだ。>

 まあ、北朝鮮から見れば海上封鎖と受け取るだろうなぁ。国際的に合法と認められた荷物だけを積んでいれば、臆することなく臨検でも何でも受けられるが、偽ドルとか覚せい剤やミサイルを積んだ船を臨検されては大変だから。

 <朝鮮半島では過去数十年間、戦争でも平和でもない不安定な状態が続いてきた。この間、交戦双方である朝米間で外交交渉がなかったわけではない。北南朝鮮の間でも多くの会談が行われ、一連の合意が生まれた。しかし、対話が繰り返されても、軍事的対立の構図は解消されなかった。米国と南朝鮮による合同軍事演習などの挑発行為があるたびに緊張が高まった。>

 米韓合同軍事演習を北朝鮮は非常に気にしている。前にこのブログにも書いたが、結構えげつない演習なのだ。北朝鮮にスクランブルさせ、石油燃料を使わせ、石油の枯渇を狙うという演習なのだ。

 <朝鮮半島で戦争が起きていないのは、「われわれが自制しているためであり、停戦協定のおかげではない」と朝鮮は主張する。外交官も軍人も自衛、国防の論理では一致している。>

 この辺、誰も聞いていないのに、北朝鮮国内の各層の意見の一致をことさらに強調するということは、これまでの北朝鮮の文書から見ると、対立が激しく、方針をまとめるのが大変だった、という意味を表わしていると思う。「国防の論理では一致」しているが、論理を実践にどう移すかでは対立しているのかもしれない。

 <米国とその追従国が朝鮮の強硬な対応を「瀬戸際戦術」と見るのは、事態の深刻さを矮小化する詭弁だ。安保理による敵対行為が「停戦協定の破棄にあたる」と断言した朝鮮外務省スポークスマン談話(5月29日)は、「忍耐にも限界がある」と指摘している。米国による制裁の国際化は、朝鮮が停戦協定締結以来数十年間自制してきた行動措置を真剣に検討せざるをえない状況を作り出している。>

 脅しているのだが、6月5日各紙にあるように、これまでの脅しと違って呉克烈流の実行行為を伴う脅しである可能性も出てきた。一体、何をやるのだろうか?

◆オバマの誤算

 <朝鮮の二度目の核実験は国際社会を震撼させた。その意味が、米国主導の下での「危機的局面」に対処する「自衛的措置」だとすれば、事態の本質はおのずと明らかになる。核実験は対外的なアピールを狙ったものではなく、予測不可能な今後の事態に備え、国の安全を守るための先手という位置づけだ。朝鮮が「戦時に相応する実際的な行動措置」をとると内外に宣言したことはかつてなかった。行動の内容も、平時の自衛的措置とは異なるものにならざるをえない。>

 「『戦時に相応する実際的な行動措置』をとると内外に宣言したことはかつてなかった」とあえて強調し、日米韓の国民にアピールする心は?

 <国連安保理で朝鮮の人工衛星打ち上げが問題視される以前は、緊張と対立の構図を清算できる可能性もあった。朝鮮は2007年、6者会談での非核化論議とは別に、米国側に朝鮮半島の平和と安全の問題を論議するため国連代表も参加する朝米軍部間会談を提案したことがある。>

 2007年の米朝協議を持ち出している。

 <しかし、現在の情勢は別の方向に進んでいる。議長声明の採択をきっかけに「危機的な局面」が生じると、米国のオバマ政権は「6者会談の再開」という焦点の定まらない対応策を出すだけで、朝米対立を激化させる強権外交を展開した。>

 つまり、オバマよ、米朝協議に応じよ、という単純なことを言いたいのか? どうも、そんな感じもしてきた。

 <一方で、現在の朝鮮半島の危機的状況は「変化(CHANGE)」を提唱して発足したオバマ政権が過去の遺産を正しく認識する機会を与えている。目前の課題は「破たんした6者会談」ではなく、「いまだ終わっていない戦争」にある。外交の目標を正しく定めないかぎり、事態はもつれるほかない。>

 これではっきりした。オバマ米政権に2国間協議を迫っているのだ。迫るに際して、いつもの手だが、瀬戸際外交を演出した、ということか。

 これが北朝鮮の一つの狙いかもしれないが、私はこれは煙幕だと思う。

 実際の狙いは日本に打ち込める核ノドンの開発に成功し、日本、韓国を手下にすることだろう。その時間稼ぎが目的だろう。この「目晦まし戦術」にクリントン米国務長官などが乗りかねないから、日本の国家指導者にはしっかりしてもらいたいのだ。

 この論文のもう一つの特徴は「日本」、「日帝」などの言葉が全く出てこない、ということだろう。完全無視を決め込んでいるのだ、というメッセージなのだと思う。「お前なんか相手にしないよ」と。唯一出てくるのが「米国とその追従国」という表現。日本のことを言っているつもりなのだろう。韓国のことは「南朝鮮」という表現で統一しているのはいつも通りだ。

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金正男氏亡命説+呉克烈氏台頭説:北朝鮮の権力闘争は熾烈さを増しているようだ~産経新聞、読売新聞6月5日朝刊+朝鮮日報6月4、5日

 北朝鮮の権力闘争が相当深みに嵌ってきているようだ。金正日総書記の意思というより、側近たちの権力闘争と見ないと理解できない点が多いように見えるのだ。例の三男への権力世襲問題だ。

 産経新聞と読売新聞が6月5日朝刊で参考になる記事を掲載していたので、読みながら考えよう。

 まずは産経新聞6月5日朝刊2面<金正男氏、亡命の公算/側近ら粛清 「正雲体制」づくり急ピッチ>である。この記事は記者の署名がない。国内情報がソースなのだろう。

 読んでみる。

 <北朝鮮の金正日総書記の後継に三男の金正雲氏(26)が決まったとの見方が強まる中、長男の金正男氏(38)が滞在先の中国特別行政区マカオに留まり、中国に亡命する公算が強まっていることが4日、分かった。すでに正男氏周辺で粛清が始まっているとされ、北朝鮮国内では、正雲氏をトップとする新体制づくりが急ピッチで進んでいるとみられている。>

 金正男氏は今、マカオにいるのか。パリとかいろいろな場所に出没していたが。

 <韓国などの情報当局筋によると、北朝鮮の秘密警察である国家安全保衛部は4月3日午後8時ごろ、平壌市内で正男氏の複数の側近を拘束した。マカオでこの情報を知った正男氏は北朝鮮国内の側近らに何が起こっているか調査するように指示。7日には別の側近が拘束されたことが分かり、体制移行に伴う粛清である可能性が高いと判断、マカオに留まる意向を固めたという。>

 4月初めから粛清が起きている。4月初めに金正雲後継を目指す勢力が権力闘争に乗り出したのか。

 <正男氏は4月4日に北京在住の第1夫人、崔恵里氏に「昨夜、同級生が連行された」と電話で連絡。7日には別の国にいる側近に電話で「最近、私の周辺の人間が国家安全保衛部に連行されるなど、尋常でない出来事が連続して起こっている。しばらく平壌には戻らない」と語ったという。>

 随分具体的な情報だ。事実である可能性が大きいのではないか。

 <別の関係筋によると、金正日氏の側近、張成沢国防委員が3月初旬に正男、次男の金正哲(27)、正雲の3氏を面接調査したところ、正男、正哲両氏は後継を断ったという。これを受け朝鮮人民軍を中心に金正雲後継に向けた体制作りがスタート。この過程で正男氏の側近が拘束されたとみられている。>

 これってポスト海部政権で誰がいいのか、自民党竹下派が推薦候補を決める際に金丸信派閥会長の指示で小沢一郎派閥会長代行と奥田敬和事務局長が渡辺美智雄氏、宮沢喜一氏らを呼びつけて面接したことを思い出させる。張成沢って北朝鮮の小沢一郎なのか?

 という比較もだが、実はこの「面接」が脅しだった、というのが本当のところだろう。軍事組織を背後に控えさせ、相手に「NO」と言えないようにして、後継を諦めさせる。日本でも戦国時代の物語でよくあったケースだ。

 <北朝鮮の朝鮮労働党は中国共産党に金正雲氏の後継を伝えたとされるが、中国は北朝鮮に対し①世襲反対②改革開放③核放棄――の三つを求め、金正雲氏の後継を認めていないという。>

 中国も真っ当だ、というか、どうして認めないのだろうか。これは表面上の理由で、実は別の理由があるのではないか? まだ権力闘争の最中で、有利に進めるために金正雲支持勢力が中国に駆け込んだ、という裏事情を中国が察知し、どっちの味方にもつかず、様子見しているとか。

 <一方、別の韓国情報筋は金正男氏の亡命情報について「情報は入手していない。ただ金正日総書記が存命でいる限り帰国できないことはない。中国は北朝鮮の友好国なので亡命するにしても米国か韓国ではないか」と語った。>

 この韓国情報筋の話は金正日死亡説を匂わせるものではないか? 本当に今の北朝鮮の国際的な無軌道な軍事挑発や核実験、ミサイル打ち上げが体制移行に伴う国内的な要因であるならば、国際社会という強い司馬仲達を相手に、金正日氏の死去を隠して偽装工作を進めていることから「死せる諸葛、生ける仲達を走らす」となるのだが、本当にそうなのか?

 <金正男氏は、金正日氏の2番目の妻、成恵琳氏の子。平成13年(2001年)5月、偽造パスポートを使って日本に不法入国しようとし、成田空港で拘束、強制送還された。>

 ディズニーランドに何度も遊びに来ていたらしい。金正日自身、総書記になる前には赤坂のクラブがお気に入りでよく来ていたこと、その際に引田天向と知り合ったことが噂としてささやかれている。成恵琳氏の子どもはもう失脚の運命だったのか。在日韓国人の後妻を金正日はことのほか愛していたそうだから、在日の後妻との間にできた子ども2人のどちらかに権力移譲するというのは金正日氏の願いだったのかもしれない。

◆読売新聞は呉克烈氏の台頭を書いていた

 そして、読売新聞6月5日朝刊国際面<金総書記側近動き活発/国防副委員長/後継体制作り主導>である。

 これはソウル支局の竹腰雅彦特派員の記事だった。

 <北朝鮮の金正日総書記の側近、呉克烈国防委員会副委員長(78)の動向を韓国当局が注視している。金総書記の後継体制問題や対北経済制裁強化への対抗措置で中心的な役割を果たしていると見られるほか、「対南(韓国)工作の総責任者」に就いたとの情報もあり、影響力の拡大が顕著なためだ。>

 78歳という。随分と高齢な権力者だ。金日成世代なのか? いわゆる革命第一世代なのか?

 <2日付の米紙ワシントン・タイムズは米情報当局の話として、北朝鮮が最近、精巧な偽造米ドル紙幣「スーパーノート」の流通を活発化させており、呉氏がこれを指揮していると報じた。偽造紙幣は党傘下の印刷所で製造され、呉氏の息子らの関与が確認されたという。>

 スーパーノートか。

 <事実とすれば、国際社会の金融制裁強化に備えた動きとみられる。4日付の韓国紙・朝鮮日報は、米韓当局が現在、呉氏ら北朝鮮の指導層数人を指定し、海外口座の凍結方法を検討していると報じた。北朝鮮の資金調達ルートや海外資産が押さえられる事態に、偽造紙幣の乱発で対抗する狙いとの指摘もある。>

 なるほど、オバマ大統領の米国が日本の依頼を承諾して北朝鮮への金融制裁を復活する可能性がある、と北朝鮮は見ているのか。

 <呉氏は1979~88年に人民軍総参謀長を務め、ラングーン爆弾テロ事件(1983年)や大韓航空機爆破事件(1987年)に関与したとされる軍の強硬派だ。1989年以降は諜報工作を統括する党作戦部長を務め、今年2月、最高軍事指導機関である国防委の副委員長に就任した。>

 やはり、聞いたことのある名前だと思ったら、総参謀長だった。

 <韓国では呉氏が実質的に軍をまとめ、総書記の義弟にあたる張成沢党行政部長と「二人三脚」で金総書記の三男、正雲氏への後継体制作りを主導しているとの見方が強まっている。韓国政府関係者は4日、「呉氏の動向把握に強く注意を払っている」と述べた。>

 二人三脚でまだ若い殿様を裏で操る仕組みができつつある、というのは、まあどの国にもある話だが、呉克烈氏という超が付く強硬派が実権を握ることは日本の安全保障にとって大きな懸念材料ではないか?

◆情報の球転がしが始まっている

 朝鮮日報日本語版ネットで6月5日にアップされた<後継者問題/「北で軍部強硬派が勢力を伸ばしている」/日本の週刊誌『アエラ』が分析>は東京支局の辛貞録特派員の署名記事だ。週刊誌まで克明にフォローする姿勢は大したものだ、と思うのだが、このように日本語版に掲載し、もしも、この記事を日本の新聞が引用などすると、情報はグルグルと世界を渡り歩くことになるなぁ、とちょっと思った。AERAを読めば済むものだが、韓国の新聞記者がどのように読んだか、も一つのニュースだから、コピペしておこう。

 <朝日新聞系列の時事週刊誌『アエラ(AERA)』は、現在の北朝鮮の状況について、李明博政権に移行後、韓国側から入ってくる資金が途絶えるようになり、「攘夷(外敵排斥)」を主張する軍部強硬派が勢力を伸ばしていると報じた。>

 <同誌最新号(6月8日号)は、「金大中、盧武鉉両左派政権の10年間、民間企業の投資金を合わせて1兆円近い資金が北朝鮮に送られた。だが李明博政権に入り、金の問題に厳しくなったことが北朝鮮軍部に大打撃を与えている」としている。これにより、外国勢力の排斥を主張する軍部強硬派が暴走していると分析した。>

 金大中、盧武鉉両政権の10年間は北朝鮮の核装備を応援した10年間だった!

 <同誌はまた、5月初めに北朝鮮の金正日総書記が再び病に倒れた可能性があり、このことが核実験を予想よりも早く強行し、後継体制構築を急いでいる背景となっているかもしれないと報じた。さらに「(金総書記は)現在、1日に1時間の執務も不安な状態だと(情報筋らが)伝えている」として、今年4月23日に北朝鮮を訪問したロシアのラブロフ外相に会えなかったのも、健康上の理由である可能性があると分析した。>

 やはり金正日健康不安説、というより危篤説が書かれていたのか。

 <一方、米ニューヨーク・タイムズ紙は3日、「一部の情報当局者らは、北朝鮮軍部から金正日総書記の長男・正男氏まで全員が裏側で、“三男・金正雲権力継承計画”を頓挫させるため陰謀を企てる可能性があると考えている。現時点では、正雲氏の権力継承が保障されたわけではない」と報じた。>

 これも産経新聞、読売新聞の記事と符合する情報だ。

 <同紙は「年齢を重要視する北朝鮮社会が、あれほど若い指導者を受け入れるかはまだ不透明だ。米中央情報局(CIA)のアジア担当部署に正雲氏の写真が掛けられているが、情報要員らは同氏の父親(金総書記)が“親愛なる指導者”と呼ばれているのを風刺して、この写真に“かわいい指導者”というあだ名を付けた」と伝えた。>

 それもある。儒教社会、主体思想と儒教が一体化した考え方が「国教」となっている北朝鮮で長幼の序に反する世襲が認められるか、も大きな要素だろう。

 <また、「北朝鮮の呉克烈国防委員会副委員長がどのような反応を見せるかが(権力継承の)試金石になり得る」との分析を示した。>

 ニューヨーク・タイムズはまだ呉克烈氏と張成沢氏の「二人三脚」情報は得ていないようだ。どちらが本当か、今の段階ではまだ分からないだろう。

◆朝鮮日報の呉克烈氏特集は詳しかった…読売新聞のネタ元では?

 呉克烈氏については朝鮮日報が6月4日の日本語版<後継者問題/韓米が注目する呉克烈氏とは>と題した長い記事を掲載していた。ユ・ヨンウォン、安勇炫記者の署名記事で、見出しは<対南工作の総責任者、金総書記と兄弟のように育つ>だ。

 読んでみよう。

 <北朝鮮の金正日総書記の最も身近な側近とされる呉克烈・国防委員会副委員長(78)=大将=が最近、韓国と米国の「共通の標的」として浮上している。米紙ワシントン・タイムズは2日(現地時間)、米国情報当局の話を引用し、「呉副委員長とその家族は、偽造100米ドル紙幣“スーパーノート”の製造において中核的な役割を果たしたと言われている」と報じた。また韓国情報当局は、最近全面的に再編された北朝鮮の対南工作機構の総責任者は呉副委員長だと見ている。「米国はドル紙幣偽造の主犯として、韓国は対南工作・挑発の総責任者として、呉克烈に注目している」(情報当局者)というわけだ。>

 何だ、これは読売新聞の記事と同じじゃないか。というか、朝鮮日報の記事を読売新聞の特派員が引用したのか。

 <また同紙は、「呉副委員長の主導により、労働党の傘下にある平城商標印刷所(平安南道平城市)で“スーパーノート”が製造されている」「呉副委員長の息子、セウォン氏と親戚のリ・イルナム氏も関与している」と報じた。韓米両国は現在、効果的な対北朝鮮制裁案の一つとして、呉副委員長ら北朝鮮指導部に属する数人を指定し、彼らが持つ海外の銀行口座を凍結する方法などを検討している。北朝鮮の消息通は同日、「今年2月に昇進し国防委に入った呉副委員長は、金正日総書記の権力世襲作業にも深く関与している。最近相次いでいる北朝鮮の挑発は、北朝鮮が後継者の構図を落着させるために押し付けているものと推定されるが、ここでも呉副委員長が中核的な役割を果たしている」と語った。>

 詳しい。読売新聞が名前まで書かなかった呉克烈氏の子どもの名前も書いてある。というか、ワシントン・ポストには書いてあった、と書いてある。

 <空軍司令官出身の呉副委員長は、スパイの養成と潜入を総括する労働党作戦部長を1989年から20年間務め、潜水艇およびハンググライダーによる潜入方法などを考案した。>

 頭がいいらしい。

 <呉副委員長は、北朝鮮軍部の代表的な「強硬派」に挙げられる。総参謀長時代(79-88年)には北朝鮮軍の現代化を主導したが、当時実権を握っていた呉振宇・人民武力部長と軍の改革をめぐって対立し左遷され、その後、金総書記の保護で復活したと伝えられている。呉大将は日帝時代末期「金日成部隊」の隊員だった呉ジュンソンの一人息子で、幼いころは金総書記と兄弟のように親しく育ったという。>

 革命第2世代だった。

 <韓国の情報当局は、金正日総書記が最近、党と軍に分散していた対南工作機関を統廃合して最高権力機関である国防委の傘下に移し、呉副委員長を責任者として任命したことを把握している。具体的には、国防委の下に偵察総局が新設され、その下に労働党作戦部と35号室、人民武力部所属だった偵察局を移したと分析されている。>

 詳しいわ。

 <偵察総局長には金英徹国防委政策室長(中将)が任命されたものと推定されている。金英徹政策室長は昨年末、2度にわたり開城工業団地を訪れ、韓国企業に対し「嫌なら出ていけ」と脅迫した人物だ。情報当局者は「アウンサン廟テロ、大韓航空機爆破テロ、潜水艦・共産ゲリラの潜入、申相玉・崔銀姫夫妻拉致などを主導した部署が一つの機関に集められた。対南工作が今後戦闘的に進められる可能性が高い」と語った。特に「強硬派の呉克烈氏が責任者になったという点から、さまざまな形の対南挑発に備える必要がある」と語った。>

 呉克烈氏だけでなく、彼の部下たちも偉くなっている。悪い奴らのオンパレードだ。

 <国防委の傘下に移された工作部署の中でも、軍の偵察局は金永春・人民武力部長の命令を受けず、金総書記の命令を直接受けていたと考えられている。各種のテロおよび要人暗殺・拉致を専門とする部署で、96年に江陵潜水艦侵入事件、68年には蔚珍・三陟武装共産ゲリラ事件などを引き起こした呉克烈副委員長が20年間率いてきた労働党作戦部は「金正日政治軍事大学」(金星政治大)というスパイ養成所を運営している。ここではスパイを案内して南側に潜入させる役割を遂行していた。35号室(対外情報調査部)は海外で韓国の情報を収集する部署で、大韓航空858便爆破事件(87年)、申相玉・崔銀姫夫妻拉致事件(84年)などを主導した。>

 なるほど、の書き方だ。さすがに朝鮮日報には北朝鮮人物情報の詳しいデータベースがあるようだ。

 <今回の再編により、これまで対南工作を主導してきた労働党には統一戦線部(部長:金養建)と対外連絡部(部長:姜寛周)だけが残ることになると見込まれている。韓国に派遣されたスパイを指揮している対外連絡部が内閣の下に移され225号室になったという情報もあるが、情報当局は「その可能性は低い」と見ている。>

 北朝鮮のスパイ組織の現状だ。

 <金大中・盧武鉉政権時代に南北関係の前面に出ていた統一戦線部は最近、その勢力を大幅に弱め、対南政策を立案する業務にのみ重点を置くようになったという。統一戦線部は南北対話と経済協力事業、対南心理戦などを専門的に担当する。政府消息通は「偵察総局の新設と統一戦線部の弱体化は、今後の対南工作が強硬になることを示すシグナルだ」と語った。>

 こりゃあ詳しい。AERAにしても読売新聞にしても、ネタ元の大半は韓国の新聞かもしれない。

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北朝鮮の「血の粛清」のおぞましい歴史~東亜日報6月5日

 北朝鮮の「血の粛清」のおぞましい歴史だ。東亜日報6月5日の日本語版ネットの記事<北朝鮮の3代世襲、血の粛清始まるか >である。興味深い記事である。

 <金正日総書記は、権力継承の過程で、数回にわたって政敵を粛清した。最も代表的なのは1974年のいわゆる「キョッカジ(脇枝)」粛清と金日成主席死去後の1990年後半の「深化調」粛清事件を挙げることができる。>

 <1974年、金総書記は後継者に指名されるやいなや、それまで「目の上のこぶ」だった継母・金聖愛と金平一ら異母兄弟をみな「キョッカジ(脇枝)」だとして、政治の舞台から退出させた。また、叔父であり北朝鮮の権力ナンバー2だった金英柱・組職書記兼組職指導部長を副首相に降格させ、その地位に就いた。すべて金主席の目の前で起きたことだ。>

 <このような前例が再演される可能性が高い。金正雲氏より12歳年上の異母兄弟の正男氏を後継者に立てようとしていた勢力が、一次的なターゲットになる可能性がある。後継者が確定されたので、正男氏を支持していた人物が粛清される可能性が高い。中国などを転々としている正男氏は、側近に、父親と指導部に対して寂しい心情を吐露しているといううわさだ。正雲氏の実兄である正哲氏の将来も、順調ではなさそうだ。正哲氏は、近く欧州地域の国家の北朝鮮大使館に派遣されるという情報が流れている。>

 本当に面白い。核ノドン問題さえなかったら、現代版「国盗り物語」の進展具合を毎日楽しめるのに、とも思う。

 <また金総書記は、金主席死去後、一人立ちの過程でいわゆる「深化組事件」と呼ばれる血の粛清を始めた。労働党農業書記の徐寬熙がスパイであるとされて、公開処刑されたことを皮切りに、文聖述・中央党本部党書記が拷問で死亡し、徐允錫・平安南道党責任書記が政治犯収容所に連行されるなど、多くの被害者が出た。>

 <脱北した北朝鮮高官は、この時に約2万5000人が粛清されたと証言した。後日、同事件を再審すると言って、粛清に関与した安全員(警察官)約6000人が粛清された。注目する点は、当時、安全部を使って深化調事件を総指揮した人物が、まさに金総書記の義弟・張成沢・労働党行政部長だったということだ。今、張部長は、保衛部を再び掌握する動きを見せている。>

 ああいう国だから、過去を調べてはじめて将来の予測ができる。金正男氏は憎めないような飄々とした顔つきだったと思う。ああいう権力闘争慣れしていない「ひ弱な花」はすぐに粛清されてしまうのだろう。そういう時代なのだなぁ、北朝鮮は。

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2009年6月 4日 (木)

平松茂雄氏の中国軍改革の歴史の講義はためになった:江沢民の力が大きかった、ということだ~6月4日産経新聞[正論]

 中国である。中国軍事専門家の平松茂雄氏が6月4日産経新聞朝刊コラム[正論]で<中国の軍事力増強を見据えよ>のタイトルで詳述していた。小見出しは<天安門事件後の権力闘争>、<江沢民の軍の2段階改革>、<色眼鏡で見るのをやめよ>の三つだった。読んでみよう。

 <20年前の1989年6月4日未明、北京の天安門広場で「民主化」を要求した学生・市民多数を中国軍の戒厳部隊が殺戮する出来事が起きた。多くの日本人がテレビの報道にくぎ付けになり、中国に対する関心を示したが、大方の関心は「民主化」を求める学生・市民の抗議行動に共鳴し、彼らを弾圧した中国軍の残忍さに向けられた。>

 天安門事件である。日本は当時、こういう国際的な動きとは全く無縁なリクルート事件、消費税導入後遺症、農産物自由化批判でてんてこ舞い。竹下登首相から宇野宗佑氏にバトンタッチしたのが、この頃だった。日本の政界、永田町は深く傷ついており、隣国の重大事態にどう対応するか、首相官邸は何も考えられず、外務省任せの状態だった。

 <当時、筆者がテレビや新聞で解説したことは、事件の背後にある最も重要な要因は中国軍の統帥権をめぐる権力闘争であり、具体的に言えば、中国を支配する最高政治権力である中共中央軍事委員会主席にある鄧小平氏の地位を誰が継ぐかという点であった。>

 中央軍事委主席かぁ、懐かしい肩書きだ。

 <鄧小平氏は1978年12月に最高権力者になってからの10年間に「100万人の兵員削減」に象徴される大規模な兵員削減を通して、中国軍の全面的な改革(「軍事改革」)を断行した。その過程で多数の保守的な軍事指導者を整理し引退させ、胡耀邦氏、次いで趙紫陽氏を後継者に指名したが、中共中央軍事委員会主席に就けることに失敗した。最初に「軍事改革」に抵抗する保守勢力、次いで「軍事改革」を進める過程で勢力を得てきた楊尚昆・白冰兄弟を中心とする勢力によって2人の後継者は排斥された。>

 そういうことだったのか。

 <その結果として、江沢民氏という当時無名の指導者を中共中央総書記、中共中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席の最高権力の地位に就けた。鄧小平氏の不退転の決断であった。>

 ちょうど、日本で安倍晋太郎、宮沢喜一両氏がリクルートから未公開株を受け取っていたことを非難され、後継首相の目がなくなり、「そして誰もいなくなった」時に、竹下首相が宇野宗佑という無名の趣味人を後継者に選んだこととパラレルのように見える。竹下氏の失敗はこの時に金丸信氏の了承を得ないで決めたため、これをきっかけに「金竹小」血の同盟が揺らぎ始めたことだった。金丸氏は竹下首相誕生の産婆役であり、竹下派会長。実権を握っていた。竹下首相はいわば「雇われマダム」のような存在だった。金丸氏が「竹下派七奉行」を手下に使って政局を左右していた。

 <江沢民氏が中央軍事委員会主席に就任したとき、鄧小平氏の「軍事改革」は第一段階を終え、第二段階に入っていた。>

 なるほど。

 <第一段階は軍隊の制度化の段階であり、具体的には、歩兵主体の前近代的な陸軍中心の軍隊から、陸海空三軍が協同して戦闘する統合軍への転換であった。陸軍では、機械化歩兵、自動車化歩兵、戦車、砲兵、対空砲兵などからなる合成集団軍の編成は、それを象徴するものであった。>

 軍の近代化も鄧小平がやったのか。

 <第二段階は改革の「深化・発展」の段階であり、具体的には編成を終えた合成集団軍による統合作戦を目指した軍事訓練改革が実施された。さらに、それと並行して「ハイテク戦争」に備えた「戦法研究」が進む。それらの軍事訓練を検証する大規模な軍事訓練が各大軍区、あるいは大軍区を超えて作られた「戦区」で実施されるようになった。それらを基にして、新しい軍事訓練大綱をはじめ各種、各級の法例規則が作られていった。>

 着々と進んでいた、ということだ。

 <筆者を含めて、江沢民時代は長く続かないだろうとの大方の予想に反して15年も続いた。その間に、鄧小平氏の「100万人の兵員削減」に続いて、50万人の兵員削減、20万人の兵員削減が断行された。その間、毎年10%台で増加し続ける国防費は、効率的、重点的に運用され、先進諸国と比較すれば水準は低いとはいえ、それなりの兵器を装備した部隊による大規模な軍事演習が頻繁に実施されている。新世代の軍事指導者が多数育成されつつある。>

 兵員を削減しつつ、兵器の近代化を進め、軍事予算はどんどん増やした。日本が中国にODAで協力した時代ではないか。

 <さらに宇宙開発が進展し、江沢民時代に無人宇宙船が4回打ち上げられた。胡錦濤時代になってから、有人宇宙船が3回打ち上げられ、それほど遠くない将来宇宙基地を設置して、宇宙軍を編成することになろう。中国軍は宇宙戦争の時代に入りつつあるが、その基盤は江沢民時代に築かれた。>

 江沢民の時代に基礎ができたと言っても、鄧小平路線だ、ということだ。

 <1990年代以後の中国軍の発展を振り返るならば、それまで軍隊と関係のなかった江沢民氏は、胡耀邦、趙紫陽両氏が遂行するはずだった「軍事改革」を実施することになった。それは毛沢東や鄧小平氏のように、自己の確固とした権力と思想に基づくものではなく、「能吏」として鄧氏の敷いた路線を忠実に実行した成果である。>

 15年も最高権力者として君臨すれば、強くなるだろう。

 <だが建国50年の中国軍の歴史の中で、これだけの軍事成果をあげた年代はなかったといってよい。江沢民氏の敷いた軍事指導体制は盤石とはいえないにしても、かなり強固になっていると評価できる。だが、わが国では江沢民氏が進めた「反日本軍国主義」教育から、氏についての評価は極めて低い。そのことから、彼が軍事領域で進めた成果を知ろうとしなかったし、したがって中国で進展している「軍事大国化」を理解できなかった。>

 なるほど、そういう見方ができるのか。確かに江沢民という名前を聞いただけでアレルギーが出る人だっているだろう、と思う。あれだけの反日中国人はなかなかいないだろうから。

 <21世紀に入り、現在の胡錦濤軍事指導体制へと受け継がれる際、江沢民氏は「世紀をまたぐ軍事指導者」となることに固執したところから、軍事指導部の支持を失ったが、権力の委譲は比較的円滑に実施された。現在の中国の軍事指導体制は正常に機能しているようにみえる。>

 江沢民から胡錦濤に順調に継承された、ということだろう。

 <中国軍や中国の軍事事情について、とかく色眼鏡で見る見方が、わが国では、特に右派、保守系の人たちの間に強くみられる。中国の軍事情勢はわが国の安全保障に直接かかわるから、われわれはいつも、その軍事事情を正面から見据える必要がある。>

 平松氏の論にしては、と言うと失礼だろうが、非常に冷静な分析だ。中国軍の現状とか海洋戦略とか日本を狙っているミサイルに核を積んでいる、とか、その類の話かと思ったのだが、そうではなかった。

 つまり、今の中国の人民解放軍を見る時に、こういう歴史を頭に入れて見なさいよ、というお勉強である。

 江沢民の役割の大きさなど、よく分かった。

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合計特殊出生率1.37が意味するもの~朝日新聞、読売新聞6月4日朝刊などから

 合計特殊出生率が1.37だった、というニュースを6月4日各紙朝刊は大きく取り上げていた。1面トップにした朝日新聞を見てみよう。見出しは<出席率1.37 3年連続増/08年統計/少子化は止まらず>で、[合計特殊出生率]の[キーワード]をつけただけでなく、<30代上昇、芸能人も影響?>の別稿と[最近出産した著名人]一覧表をつけて、読者の興味を引いていたのは硬派の新聞の作り方としていい工夫だと思う。毎日新聞も1面2番手扱いだった。

 これだけ大きな扱いになるのは、各社の編集局も人口減、特に若い層の人口がどんどん減り、赤ちゃんが生まれず、都心を歩くと年配者ばかりという現状を日常的に経験して、危機感があるからだろう、と推測する。政府に実効性のある少子化対策を迫る記事でもあるのだろう。

 朝日新聞のトップ記事を読んでみる。

◆朝日新聞<合計特殊出生率は1.37>

 <女性1人が生涯に産む子どもの平均数を示す合計特殊出生率が2008年は1.37で、前年を0.03ポイント上回ったことが厚生労働省が3日発表した人口動態統計で分かった。2005年に1.26と過去最低になって以来、3年続けて上がっている。20代女性の出生率は横ばいだったが30代の上昇が全体を押し上げた。ただ、人口に占める若年人口(0~14歳)の割合は減り続けており、少子化の流れに歯止めはかかっておらず、今後も人口減少が進む状況に変わりはない。>

 という前文だ。結局、晩婚化しただけで、ひどい状態はそのままだ、と。

 <出生数(国内で生まれた日本人の子どもの数)は109万1150人で、前年より約1300人増えた。20代~30代前半の女性の出産は減ったものの、30代後半での増加が目立った。都道府県別では、最も高いのは沖縄1.78、宮崎1.60、鹿児島1.59と続いた。最も低いのは東京1.09、次いで北海道1.20、奈良と京都が1,22だった。>

 九州・沖縄の出席率が高い、ということか。暖かいところでは子どもが生まれるような行為が寒いところよりも多くなされる、ということか?

 <死亡数は約3万4千人増の114万2467人。高齢化が進み、戦後統計を取り始めた1947年以降で最多となった。死亡数から出生数を引いた「自然減」は5万1317人で、初めて自然減となった2005年以降で最大だ。>

 生まれた赤ちゃんの数が死んだ人の数より5万人も多い。1年で5万人。後楽園ドーム球場一杯の観客が消えている計算だ。このペースが続くと10年間で50万人減る。

 <結婚の増加は出生数の増加につながるとされるが、婚姻は前年より約6300組多い72万6113組。平均初婚年齢は夫30.2歳、妻28.5歳。離婚数は25万1147組で、前年より約3700組減った。>

 離婚が減ったという。あまりに景気が悪くて、離婚しようとしている人も家庭内別居で我慢しているのか?

 <「人口を維持できる水準の出生率」は2・07とされる。3年続けて上がっているが、現在の水準の出生率が続けば、2世代後の人口は約4割、3世代後は3割にまで減ってしまう。>

 この試算は2世代後というと24年後だから、5万人×24=120万人のはずだ。どうして4割になってしまうのか? 分からない。

 <[キーワード]合計特殊出生率=その年の15~49歳の女性たちが産んだ子どもの数をもとに1人の女性が生涯に産むだろうと想定される子どもの数を算出したもの。人口を維持できる水準の2.07と比較することで、日本の人口が長期的に増加傾向にあるか減少傾向にあるかの目安になる。各国の出産の傾向を比較する際の指標としても用いられる。先進諸国の中で日本は低水準だ。>

 以前は「2.08」という数字が使われていた気がする。いつの間にか0.01下がったのか? 生まれた後の死亡率が下がったのかもしれない。

◆芸能人たちの話題が朝日新聞1面に載った

 別稿の<30代上昇、芸能人も影響?>はこの数字の分析だ。

 読んでみる。

 <年代別の出生率を過去最低だった2005年と比べると、25~29歳は1.04倍にとどまる一方で35~39歳は1.2倍、30~34歳は1.1倍で、団塊ジュニア(1971~74年生まれ)を含む30代が出生率底上げの中心的役割を担っている。>

 団塊ジュニアが「もう待てない」と結婚して、子どもを産んでいる、というのだが、全員ではない。団塊ジュニアの非婚率はいまだに高いのではないか、と危惧する。国の経済政策の犠牲になった世代である。

 <結婚や出産に関する社会の感覚は変わりつつある。団塊ジュニアは今年、35~38歳だ。20~30歳代の俳優や歌手、モデルが出産後も変わらない人気を集め、自らの子育てを積極的に話題にするタレントが増えている。>

 このタレントたちの行動が大きいのだろう。

 <「出産や子育てに対する世間のイメージの変化が芸能界にも影響を与え、それがさらに一般の人々を動かす、という相互作用が生じているのでは。出産は、経済状態など現実的な条件以外に『手本となるモデルがいるか』ということや、出産・子育てへのイメージに左右される面も大きい」と上智大学の鬼頭宏教授(歴史人口学)は指摘する。>

 この教授の言うことが正解なのだろうが、あまりに浮世離れしていないか。結婚とは生活であり、カネがなければ生活できない。稼ぎに追いつく貧乏なし、で貧乏だと結婚も出来ない。

 <光文社の女性雑誌「VERY」は今月号で妊娠8ヶ月を迎えた井川遥さん(32)がジーンズなどを着こなす姿を紹介した。編集長の今尾朝子さんは、30歳代女性から「妊娠・出産しても変わらずにおしゃれでいたい。仕事も大事だけど家族も大事にしたい」などの声が寄せられているという。>

 井川遥は昔、はつらつとした好感度の高いタレントだった。女性に好かれるタレントは長続きする。

 <30歳前後の働く女性を読者とする文芸春秋社の月刊誌「CREA」は2005年から毎年、出産特集号を発行しているが、2008年の「30代で母になる!」という特集が一番よく売れたという。>

 2005年から2008年までで、2008年の売れ行きが良かったのか。

 <働く女性の7割が第1子出産を機に仕事と子育てを両立させることが難しいことを理由に退職するなど、女性にとってワークライフバランスの実現が難しい状況だ。井上敬子編集長は「制度や職場環境が整わないために出産を躊躇する女性は多い。どうやったら仕事や自分の時間を諦めずに子どもを産み育てられるか、ということに編集の重点を置いている」と話す。>

 これが問題なのだ。大企業は結構、女性の出産・育児休暇が取りやすくなっているが、中小企業ではそうはいかないだろうし、夫が育児休暇を取る習慣は日本ではまだ定着していない。

 <阿藤誠・早稲田大学人間科学学術院特任教授(人口学)は「30代の出生率の伸びが大きいのは、キャリア形成など様々な事情で結婚・出産を遅らせていた女性たちが年齢を考えて結婚・出産するようになっているためだろう。ただ、少子化対策に成功した外国の合計特殊出生率は1.7~1.8程度。そこまで改善するには、仕事と子育てを両立できる支援策に今の倍以上の力を入れる必要がある」と指摘している。>

 日本の少子化対策など、やっていないに等しい。前にも何度も書いたが、政治家の目が高齢者に向いている。1票を誰が入れてくれるか、しか考えない政治家からすれば、1票が見える高齢者は大事なお得意様だ。若者は無党派層が多いし、気が向けば投票に行くくらいで、政治への積極的関心は高齢者に比較して低い。投票率を見ればわかる。そのうえ、高齢化社会で高齢者の比率が高まれば、政治家は高齢者にいい顔をしようとする。年金にしても医療にしてもそうだ。

 後期高齢者制度の問題点はすぐに政治問題化するが、結婚できない問題、子どもが産みにくい問題を真剣に考える政治家は非常に少ない。

 若い人がもっと声をあげて、自分たちのことを考えている政治家を永田町に送り込む圧力団体化する必要がある。それが政治パワーだ。それをしなければ、いつまでも日本の政治は老人にしか目を向けない政治のままで、変革も何もできないだろう。

 今最も期待しているのは国民投票法で規定された18歳選挙権だ。この18歳は国民投票だけの年齢だが、整合性を持たせるため、今政府では民法、刑法などを「成人18歳」に替えるべく検討している。これをスピードアップさせ、早く18歳選挙権を導入することだ。

 そうすれば、若い人のために政治をしているかどうか、18、19歳の有権者も見ながら投票できるから、うまくすれば若者の代表を永田町に送り込めるかもしれない。そういう一転突破からしかブレイクスルーはできないのではないか、と思うようになってきた。

 若者のパワーにもっと期待しよう。若者を使い捨てるのはやめよう。少子化すれば外国人労働者を入れればいい、というのは国を滅ぼす亡国の論理だ。こんな常識のないことを言う奴らを永田町から追放し、フランス以上の少子化対策を実現させよう。

 と、力が入ってしまったが、以上が朝日新聞朝刊1面の別稿の記事だ。

 1面のグラフでは先進各国の合計特殊出生率を比較していた。

◆米国は2.10、フランスは2.02、ドイツは1.37…

 2008年段階でフランス2.02、スウェーデン1.91、日本1.37.2007年では英国1.90、ドイツ1.37.2006年統計しかない米国は2.10.日本はやっとドイツに追いついたが、ドイツは2008年にはもっと上に行っているだろう。

 米国の人口増は移民だけかと思っていたが、このような旺盛な自然増に支えられている。ワプスの出生率が高いとは思えないので、やはり最近流入してきたヒスパニックや下層階層の出生率に支えられているのだろう。

 フランスは日本の新聞や雑誌が何度も特集しているように少子化対策が成功した国だ。2004年の1.90から4年間で2.02まで0.12ポイント上げたのだから大したものだ。サルコジという女好きの明るい性格のトップがいることもプラスに作用していたりして。朝日新聞のグラフにはなかったが、名だたる女好き、ベルルスコーニ首相のいるイタリアだって率は高いのではないか?

◆田中美奈子ちゃんは41歳で出産した

 芸能人の出産一覧表も朝日新聞が1面トップに掲載するのは珍しいので、目を引くが、昨年4月に出産した田中美奈子(41)、5月の篠原涼子(35)、11月の坂下千里子(33)、今年5月の佐々木恭子アナウンサー(ササキョン)は36歳。5月は宮沢りえ(36)、長谷川京子(ハセキョン)30歳。そして井川遥(32)は夏に産まれる、と。みんな若く見えるけど、そんな年なのだなぁ。

 朝日新聞は政治面では第2子出産を控えた小渕優子・少子化担当相(35)へのインタビュー<出生率上昇 気を緩めず対策/男性の生き方 幅広げていい>を掲載し、都道府県別の合計特殊出生率一覧表もつけていた。

 朝日新聞編集局の「6月4日朝刊は少子化・出生率特集で売るぞ」という気構えが見える新聞だった。こういう取り組みを他紙もどんどんやってほしい、と思う。

 ただ、気になる点もある。経済的要因をあまりに軽視し過ぎていないか、ということだ。

◆読売新聞<20代、専業主婦志向女性が増えた>

 そのことは後で触れるとして、この日の読売新聞朝刊第3社会面ワッペン企画[気になる!]の<閉塞の時代 専業主婦志向>を先に見ておこう。これもまた、現代の断面なのだから。ネットでは<20代女性、高い専業主婦志向の理由とは……>という分かりやすい見出しがついていた。筆者は月野美帆子記者だ。

 <20歳代女性の専業主婦志向が、上の世代より高くなっている。女性の社会参画が進み、機会も選択肢もあるはずなのに、なぜなのか?>

 という問いかけで記事は始まっている。

 <5月末に閣議決定された2009年版男女共同参画白書で20歳代女性の専業主婦志向についての調査結果が注目された。「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」という性別役割分業の考え方に賛意を示した20歳代女性が30~50歳代女性より高い割合だったのだ。>

 つまり、政府が閣議決定した男女共同参画白書の解説記事だ。

 <「結婚して家庭に入り楽をしたいという意識は、以前から若い女性に強い」と話すのは、十文字学園女子大の橋本ヒロ子教授(男女平等政策)。実際、内閣府が1997年以降行った5回の世論調査によると、性別役割分業に「賛成」の女性の割合は減少しているが、世代別に見ると20歳代女性は30歳代より高い割合を示している。>

 「男は働けばいいじゃん、私は家事をするからさぁ」なんていうノリなのか? 本当のところは分かんないけど。

 <「周囲に仕事と子育てを両立している先輩が少なく、育児は非常に大変だという事情を見聞きしているからでしょう」と橋本教授。さらに厳しい雇用情勢や、結婚を後押しする「婚活」ブームも背景にあるとみる。>

 結婚、育児である。ここで、朝日新聞トップ記事とリンクしてくることが分かるだろう。そう。同じ問題なのだ。

 <若者の意識に詳しいコラムニストの深澤真紀さんによると、若者は親の価値観に影響を受ける傾向が強いこともあって「基本的に保守的」だという。加えて最近の景気悪化で「社会も会社も自分を守ってくれないことを痛感し、安全網としての家庭をよりどころにしている。性別役割の固定化というより、現実を知って社会に出ることに消極的になっているのではないか」。>

 そりゃあ、社会に出たくない、という気持ちは痛いほど分かる。社会に出ても非正規社員。景気の波で首を切られ、生活は安定せず、ビクビクと生活するより、頼りがいのある男性と結婚して家を守りたい、という気持ちは分かるなぁ。だけど、その「頼れる男性」だって、社会に出たくないんですよ。

 <社会評論家の芹沢俊介さんも「先行き不透明で見通しにくい、時代の閉塞感を感じているのだろう。役割分業の実体験がないこともあり、結婚を就職のように考えているのでは」とみる。>

 結婚は女性にとっての永久就職だという観念は昔あったのだ。

 <また、今回の白書で紹介された調査では、性別役割分業について「わからない」と答えた女性が、どの世代でも2割前後いた。過去の世論調査では1割未満だった。横浜市男女共同参画推進協会がニート(若年無業者)女性に行った調査(2008年)でも、同じ傾向だった。「頼るべき家庭の姿も見えにくくなっているのではないか」と同協会。>

 そういうことなのだろう。かわいそうに。そういう頼るべきものをなくした若者を大量発生させたのは大人、特に団塊の世代の責任だ、と自分も団塊世代の私は思っている。

 <男女が互いを尊重し、性別にとらわれずに能力を発揮する社会を目指した「男女共同参画社会基本法」制定から10年。20歳代女性の意識を示す数字は、厳しい現実社会を反映していると言えそうだ。>

 この記事が先ほど私が言おうとした経済問題への導入部を果たしてくれていると思う。
 少し古い統計だが、若い人たちが結婚しようとしてもカネがなくて結婚もできない、という調査統計をここに書いておこう。

▽OECDの貧困率報告(2000年時点、相対的所得貧困世帯)は25国の中で①メキシコ20.3%②米国17.1%③トルコ15.9%④アイルランド15.4%⑤日本15.3%。OECD平均は10.4%。貧困度の深さ、極貧度を測った貧困ギャップでは日本はメキシコ、米国に次いで3位。

▽1997年~2003年に就職活動をしたロスジェネ世代は氷河期。2000年3月卒業予定者の有効求人倍率は過去最低の0.99倍だった。ロスジェネ世代の親はもう少し年上の「パラサイト・シングル」世代の親と違って退職金や年金も恵まれず、90年代の平成デフレでリストラされた親も多く子どもをパラサイト(寄生)させるだけの余裕がない。ロスジェネ世代は団塊ジュニア世代と重なる。

▽2002年1月からの「だらだら陽炎景気」と与謝野財務相が名付けた好景気は「いざなぎ越え」といい、名目GDPは14兆円増えたものの、雇用者報酬は5兆円減った。大企業の役員報酬は1人当たり5年間で84%増えた。株主への配当も2.6倍になった。つまり労働分配率が減った。その中身を見ると正社員は給料はそうは減らず、非正規社員が安い給料で働かされている実態が分かる。

▽労働力調査を見ると働く人の中で会社勤務者は85%。正社員は1980年に80%以上。2006年には66.8%。パート、アルバイト、派遣の非正規労働者が33.2%と3分の1。情報労連などの調査によると正社員の平均年収は約370万円。非正規社員の年収は約191万円。正社員の半分。社員食堂など福利厚生施設を使えない人も多い。厚労省調査で日雇い派遣だけの男性は月平均18.6日働き月収は15万1000円。アパートも借りられないワーキングプア(働いても生活保護需給基準以下の賃金しか受け取れない人)が多い。国の試算で年金額は正規は非正規の4.4倍もらえる。

▽ブライダル雑誌「ゼクシィ」の2007年調査で平均的結婚費用は414万円。

▽2005年国勢調査で25~29歳男性の独身者比率が高まり72.6%。30~34歳男性も47.7%。ロスジェネ世代の男性の半分が結婚していなかった。だから、少しだけ結婚する人が出てきても焼け石に水なのだ。

▽総務省の2002年調査によると、25~29歳の男性で年収100~159万円は15.3%が結婚。年収150~199万円は17.4%。200~249万円は22.8%。年収と既婚率が比例している。

▽2007年6、7月の情報労連調査では30代男性の正社員は63.0%が既婚。非正規社員は45.6%の既婚率だった。正社員か非正規化で結婚にも大きく影響している。

 以上、以前、このブログにもメモしたことがあったが、佐藤留美「結婚難民」などから引っ張り出してきた。

 だから、政府はまず労働分配率をあげるように政策を誘導しないといけない。同時に輸出産業ではなく、内需を振興すべきだ。流通業もあるが、これは農業だろう。こうした大きな政策転換を行いながら、保育所充実や子ども手当て充実などを行うべきだろう。

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2009年6月 3日 (水)

和田春樹氏に同調はしないが、慰安婦問題などに関する講演は面白かった~「魚の目」HPから

 和田春樹・東大教授が2007年3月11日に「フォーラム神保町」の佐藤優氏の講座で語った内容が2009年5月14日、フォーラム神保町の別働隊「魚の目」というホームページにアップされていた。6月3日には第2回というか、同じ日の講演の後半部分がアップされた。

http://uonome.jp/article/satoh/228

ttp://uonome.jp/article/wada/298

 最初に佐藤優氏の冒頭発言があった。佐藤氏の発言と和田氏の発言の要点を筆記しておく。全文はあくまで「魚の目」で見ていただきたい。これは私の個人のメモ帳代わりなので、誤字脱字、大幅な改変もあり、引用は不適当です。発言を引用されたい方は、フォーラム神保町の了承を得た上で、あくまで「魚の目」から引用してください。

 和田氏の講義はまだまだ続く。今回は1回目ということだが、5回くらいまでいくのだろうか?

【佐藤優氏の冒頭発言】

▽私は1960年生まれでポストモダン世代。日本のポストモダンは浅田彰の『構造と力』(勁草書房、1983年刊)出版に始まる。1985年4月に外務省入省。翌年夏、外国へ行き、日本に戻ったのは1995年3月なのでポストモダンの嵐とバブルの嵐を知らず、日本に帰って日本の思想状況が驚くべきものに見えた。

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 (1986年から1995年までの10年間の日本の変化はどんなものだったのだろう? 確かにだらしないポストモダンは流行し、オタクブームもこの頃だったか? 当時の日本は本当に佐藤氏が驚いた「思想状況」のような知的風景だったのだろうか?)

▽これほどマスメディアの世界と知的なアカデミズムの世界が乖離している国は世界でも珍しい。1986年では乖離はそうなかったが、今や恐るべき乖離。私はポストモダンに極めて批判的。ラカン、フーコー、デリダらは周辺から物事を見て、おもしろい知的な物語を出し、「脱構築」するのはいいが、人間は物語を作る動物という重要な真実を忘れてはいけない。知識人の大きな仕事は「大きな物語」を作ること。この責任を日本の知識人は放棄し、自らの小さな物語をエンジョイしてる

 (このマスメディアと象牙の塔の乖離、って深刻な問題なのだろう。もともと1968年頃に全共闘が問題にしたのもこういう大学の閉鎖性だった。「大きな物語」を語る学者がいない、という佐藤氏の論に賛成だ。昔、ポール・ケネディがやったことを最近はフランスの学者たちが大きなスパンでやろうとしている。言ってみれば塩野七生さんの文明論を少しだけ学問的にしただけの論文が多いのだが、そうした論文の流通する場が大きいので、世界的に騒がれる。塩野氏や山内昌之氏のような論文を若い学者が書かなくなった。山内氏の「スルタンガリエフの夢―イスラム世界とロシア革命」のような雄大な地平を見渡した学問的営為の結晶が出てこないと、日本の知はゼロだ、と言われる。丸山真男氏のような似非講座派的な学問だけが「正統」で、学問領域をまたいだ論文は「イカサマ」と見る了見の狭い日本の象牙の塔を全共闘は結局、破壊仕切れなかったのだ。)

▽ある学会でインテリジェンスの話をした後、大学院生や助手たちの話は、新聞紙の上にクソがついたものを乾燥させて落として、そのあとの染みがどういう形かという類の議論。インテリジェンスの実務をしていた私には関係ない話だが、アカデミズムの中ではそこがマーケットになっている。このポストモダン後遺症からどう脱け出すか、が重要。

 (この佐藤氏の表現はいかにも佐藤氏らしく辛辣だが、あっている。)

▽『獄中記』(岩波書店、2005年)の柄谷行人氏の書評は「佐藤の知性が面白いのは外交的、行動的だからだが、外交的、行動的な知性は通常は知的でない。知的なものは普通は行動性や実効性をもたない。この間の架け橋を彼はどう見つけていくのだろう」。私は柄谷行人氏争奪戦をしている。私は「大きな物語」世界に柄谷氏をもっていきたい。反対側はポストモダンの旗手や縮小再生産された学校秀才左翼連中だ。向こうから見ると私は非常にマッチョで、暴力的に見えると思う。

獄中記 (岩波現代文庫) 獄中記 (岩波現代文庫)

著者:佐藤 優
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 (柄谷行人がそんなに立派か? そうは思わないけど。)

▽和田春樹氏は東大文学部卒業後、大学院に行かず助手になり大学の先生になった東大の秀才中の秀才。語学は英語、ロシア語、ドイツ語、朝鮮語も完璧に理解する。東大社会科学研究所に長く、アカデミズムでも講座派、労農派双方の伝統を踏まえ、竹内好氏の伝統を引く「アジア主義」の流れもある。和田氏自身は日本共産党の硬直したマルクス主義とは常に距離を置いてきた。全共闘や民青からぶん殴られた人。常に熱い問題を拾う癖があり、ゴルバチョフが登場して北方領土が動きそうになった時は日本外務省の北方領土交渉の弱点を衝いた。日本政府が主張しているクリル諸島の中に国後島や択捉島が入っていないという議論は、実証史学の立場からすれば恥ずかしくて口に出せない稚拙な水準で、冷戦下で日本政府がでっち上げた議論。そういうことを言うと右バネ(右翼)がはねるから怖い。誰も日本外務省の立論の問題点を指摘しなかった時に、きちんと発言。1855年の日露通好条約のオランダ語原文に当たり、当時の日本語訳とオランダ語原本の間に大変な乖離があ、事実上の誤訳だったと指摘し、外務省を徹底的に叩きのめした。

 (和田氏については、和田氏本人の書いたものを読まず、本人の話を聞かずに批判していた部分が大きかったのではないか、と私は今、反省している最中だが、そうは言っても、私と和田氏の考え方は異なる。)

▽最近は学者の立場と政治的実践の立場を区別せず「50:50」論や「三島返還」論を言っている学者がいて、ある程度の批判が出てきたところで「私は当面沈黙する」と毎日新聞に書いた。北海道大学スラブ研究センターの岩下明裕教授だ。私は「週刊金曜日」(2007年3月9日号)でかなり手厳しく批判した。理論と実践の間のどこに線を引くかは、知識人にとって重要。政治的提言をした以上は学問研究と違い、言論に責任が伴う。

 (この学者の政治的発言についての佐藤氏の論も正しい。北海道大学スラブ研究センターの岩下明裕教授については佐藤氏は糞みそだが、和田氏は褒めていた。これも本人に会うまでは判断を留保したほうが良さそうだ。)

▽和田氏は常にその責任を負っていく姿勢だ。和田氏の言説を勉強し、本当に北方領土を動かそうとした時は和田氏に見せて恥ずかしくないものを作らなければならない、と取り組み『日本とロシア―真の相互理解のために』という日本政府の立場でできるギリギリのところでロシアとの対話の論理を作るロシア語の宣伝パンフレットを外務省の特命で私が原案を作った。その日本語訳はまだない。パンフ作成時に日露関係の大きな転換が行なわれた。

 (この日本語訳がない、というのが佐藤氏の言いたいところなのではないか、と思うのだ。外務省が右翼を怖がって、と。外務省のけつの穴が小さすぎることは確かだ。)

▽和田氏は「二島+α」論か「二島返還」論かと思っていたが、話を進めるうちに「四島が日本人としての強い意見なのだから、四島返還という形で議論を組み立てるのは日本の立場として当然だ」という言葉をもらって、日露の戦略的提携で、冷戦の論理を超えるところで和田氏と話をしながら北方領土議論を進めてきた。東郷和彦、丹波實両氏もみな和田ファンだった。

 (和田氏の4島返還論は本人がしゃべっていた。)

▽我々日本の外交官にとっても決して胸を張れるようでない事を過去に日本人が引き起こした。それを隠蔽するのではなく、素直に認めることで日本のポジションは強化される、と私は思っていた。「慰安婦」問題に関して私は「従軍慰安婦」という定義には問題があると思うが、日本軍に付属して「慰安婦」がいたことは、まぎれもない事実だ。私の母は沖縄出身で沖縄戦に軍属として参加していたから、母から沖縄「慰安所」の話を聞いている。「長崎ピー」や「朝鮮ピー」と呼ばれた「慰安所」があって、母親が「そこで何をするのか」と訊いたら、軍属だった母の姉から「そんなことに関心をもつんじゃない」と言われた、と言っていた。「慰安婦」がいなかったなどというのはとんでもない話だ。「慰安婦」問題は封印されているが、南洋諸島の琉球「慰安婦」問題もある。東映の映画「大日本帝国」の中で丹波哲郎が東條英機役、三浦友和は将校の役でサイパンに行く。佳那晃子が演じる現地で付き合っている女性の役柄は明らかに琉球「慰安婦」。そのあたりの歴史の断面は右側の映画の中でも残っている。

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 (最近、佐藤氏は沖縄出身の母親について語りだしている。佐藤氏の思想の中には沖縄的なものもあるのだろう。)

▽「慰安婦」問題はアジア女性基金というユニークな形が取られた。国家補償とは形が違うが、責任を取る。和田氏の提唱でやった。右からよりも、かつて和田氏と同じ陣営にいた左からの攻撃が厳しかった。「和田は政府の側に歩み寄るのか。権力に取り込まれるのか」と。そんな中で知識人の立場をきちんと保持しながら現実に影響を与える姿勢を示す学者として、私は和田氏を誰よりも尊敬する。

 (例の「知識人と政治」問題だ。大正デモクラシーから、というよりも、もっと前の夏目漱石の時代から大きな問題だった。)

▽和田氏ならばロシア関係学会のドンになれる。東大社会科学研究所を定年退職後、どこかの私立大で人事の手配師のようなことをやれば、日本のロシア学界を簡単に席巻できるが、一切せず、今、ロシアが持っているコミンテルン文書をちゃんと集めて編纂しなければいけないということで、ロシア人もきちんとやっていないからということで、ロシア語で本を出している。モスクワでロシア語の資料集の編纂をしている。和田氏がロシアで出した本は非常に高く評価されている。

 (そういうものなのか? 学者の世界は分からないが、ドンがいて差配するなんて、永田町と変わらない。どこでも人がいる限りサル山ができるのだろう。)

▽1993年9月初め、当時エリツィン政権の側近だったブルブリス元国務長官(戦略センター所長)を日本に連れてきた時、当時、外務省と和田氏との関係は良くなかったが、ブルブリスが「和田先生とだけはどうしても話がしたい」「日本政府の立場もあるので公に会わせられないなら、電話だけでもつないでほしい」ということで、電話をつないだことがあった。あの時はブルブリスは国立ロシア人文大学学長になったアファナシエフ氏から和田氏のことを聞いた。アファナシエフ氏は著名な改革派系インテリで、ロシア国立人文大学の前身であるロシア国立文献大学学長として、サハロフ博士と連携してソ連体制の変革を進めた人だ。アファナシエフ氏は和田氏を非常に高く評価し「和田と語らずして日本を語ることなかれ」と言った、と私はブルブリス氏から聞いた。

 (和田春樹氏がロシアの友人に信頼されている、という話。)

[メディアと知識人①]和田春樹氏講演

▽<知識人とは>ラヴロフによると「知識人とは批判的に思惟する主体」。職業は別に関係なく、批判的にものを考える人間が知識人。知的職業にあっても、批判的に考えられない人間は知識を売っている商売人にすぎない。私は自分を知識人と考える時、ラヴロフの言葉を一番重要なポイントと考えてきた。日本ではかつて「反政府的」「反体制的」な人が知識人、という考え方があった。政府に協力したり体制内的発言をする人を変な目で見る雰囲気があった。

 (これも冷戦時の「知識人」論だろう。)

▽<政府とは是々非々>だが、知識人は批判的にものを考える人間だが、批判的に考えることは別に反政府的ということにはならない。政府に良ければ「良い」と言い、悪ければ「悪い」と考える存在だ。「革命が必要だ」と考える人も知識人だ。いろいろな知識人がいるという点が重要なポイントだ。

 (この辺、和田氏と話が合いそうなのだが。)

▽<戦後日本の特徴>戦後冷戦期、日本は日米安保体制のもと、アメリカの同盟国として生きてきた。米ソが全世界で熾烈に争っている冷戦期、東アジア、東北アジアでは1945年以後も30年間、「熱戦」が続いた。1975年にベトナム戦争が終わるまで東アジア、東北アジアにあったのは「冷戦」でなく本物の戦争で、日本は終始アメリカの庇護の下、平和だった。基本的には戦争に参加せず、非軍事的経済発展を続けたのが戦後日本の特徴だった。

 (この認識も正しいと思う。)

▽<自社が協力して高度経済成長を成し遂げた>日本は憲法9条を持ち、9条存続のもと1954年から自衛隊を置いた。憲法9条の縛りがある自衛隊なので専守防衛の自衛隊、海外で行動しない自衛隊だ。日本は二重三重に安全装置のかかった軍事力として自衛隊を保持していた。政権は55年体制で自民党がほとんど永久的、恒常的に執権。社会党は万年野党だが、非常に落ちぶれていたわけでもなく、相当に堂々としていた。議席の3分の1という憲法改正発議をはばめる勢力を持っていた。国民の中でも約3分の1の支持を得ていた。社会党は日米安保体制、自衛隊に反対で、政権を取れない。社会党は冷戦下で政権担当できなず永久に野党だったが、野党として自民党の政策にブレーキをかけ、その効果があって、日本は基本的に非軍事的経済発展を遂げた。

 (この実質は「自社連立政権」という見方は面白いと思う。社会党研究者の中にもあまりない視点だと思う。)

▽<自民党政府に歴史認識なし>自民党政府は歴史認識を持っていない。戦前の歴史について、統一見解を持てなかった。吉田茂の保守本流は「軍国主義は良くなかった」の考え方だったが、岸信介の傍流は「戦前の歴史に問題はない」という考え方。当然、自民党では戦前が「いい」とも「悪い」とも評価しない暗黙の合意があり、自民党政府は過去の戦争についての評価は全くしていない。

▽<憲法は吉田+社会党VS.岸の構図>憲法で吉田茂の主流派は護憲社会党と同盟し、改憲派岸派と対立した。保守本流は明文改憲しないことで野党・社会党と同盟していたが、それだけはやっていけないので、保守本流は解釈改憲で自衛隊を認めた。当初の解釈では、憲法9条は一切の軍事力、自衛のための軍事力も認めていなかったが、1954年に「憲法は自衛権を否定していない。自衛のための軍事力は持てる」と憲法解釈を変えた。これが解釈改憲だ。

▽<社会党の政策を受け入れた政府自民党>自民党政権は万年野党である社会党の政策を受け入れ、社会民主主義的な政策を実行した。経済成長を図ると同時に社会民主主義的な政策を入れて、格差拡大を防ぎ、。中央と地方の差が出ないよう努力した。

▽<知的世界での反権力と一党支配がバランス>その時代、知的世界ではメディアも大学も出版界も基本的に政府批判の野党的、左翼的機運が強かった。政権獲得可能性のない永久野党的だ。大学では経済学といえばマルクス経済学を教え、それが主流だった。メディアには左翼的記者が多く、出版界にも左翼的出版社が多かった。知的世界では右翼的な意見、戦前を賛美する議論は抑えられた。そういう考えをもっている人はいるのだが、そういう意見の表出はむしろ抑えられた状態だった。政権は自民党政権だが、知的世界は野党的な政府批判の意見が主流で、そういうあり方が社会全体を健全な雰囲気にした。一党独占政治が1955~1993年まで38年も続き、社会は全体主義的雰囲気になってもおかしくなかったが、そうならなかった

 (ここまでの冷戦期日本の権力構造論はユニークで面白いと思う。論壇という一見、非政治的人間の集団が果たしてきた政治的な役割を重視し、一党支配体制とのバランス論を展開している。「なるほど」の論理だが、本当にそこまで影響力があったのか、論壇勢力が影響を与えたのはインテリ層だけで、最も大きなマスである庶民階層には無縁だった、という事実を無視している感じもある。)

▽<冷戦崩壊とアメリカ>1980年代終わりに冷戦体制が終わる。ソ連国家社会主義体制が終わる状況になり、変化が起きた。これまでのあり方はそのままでは維持できない。変わらなければならなくなった。アメリカが一人勝ちしたようにも見えたが、今から考えると、冷戦終結段階で、アメリカの体制も相当程度傷ついていたと考えるべきではないか。それが遅れて、今日のアメリカの混迷になって出てきていると考えられる。一見するとアメリカに非常に力があって世界をリードして支配していくように見えたが、それは一種の幻想だったことが今では明らかだと思う。冷戦が終わった段階でアメリカも含めて変わらなければならなかったのだと思う。

▽<アジア台頭と北朝鮮>代わりに出てきたのはアジアの台頭。中国やインドや東南アジアが上がってきた。アジア全体が台頭したが、特に悲劇的に危機的状況に入ったのが北朝鮮だった。社会主義が終わり、ソ連との関係がダメになり、重油が入らず経済的に完全に破壊的状態に陥った。アジア全体は台頭したのに北朝鮮は危機、というのが今日の特徴だ。

 (これが和田氏の北朝鮮認識のベースなのだろう。和田氏の認識の特徴は非常に透明だ、ということだ。こだわりがない。宇宙人のように、立脚点が固定していないから、相手の立場にすぐに没入する。だからナショナリズムというバイアスがない。だから、日本の国益という話をしても理解できないのではないか、と思う。だから、この人と論争しても仕方ないのではないか、空しいという気もしてきた。)

▽<地域戦争多発時代の自衛隊海外派遣と憲法との関係>国内的には55年体制が終わり、自民党の永久執権状態ではなくなった。細川連立非自民政権後には自社さ連立で社会党の首相も誕生。憲法9条のもとに自衛隊があって専守防衛だ、と言っているだけでは済まない状況が現出した。世界戦争時代が去っただけに、地域的戦争が激発し、自衛隊の海外業務が問題になり、憲法と自衛隊の関係をどう考えるか、が問題になった

 (これが冷戦崩壊の日本政治への影響論なのだろうが、当時、外務省や首相官邸がどう言っていたか、と言えば「欧米の冷戦は終結したが、東アジアの冷戦は続いている。北朝鮮を見ろ」という論調だった。これが日本の大戦略作りを遅らせた最大の誤算だった。冷戦崩壊という歴史的事象を矮小化してしか理解できない外務官僚たちの猿知恵に政治家も踊らされ、冷戦後の世界への想像力が湧かなかった。日本の最大の失敗だった。この判断ミスがその後、「第2の敗戦」などと言われる世界標準からの遅れを生んでしまったのだ、と思っている。)

▽<村山氏のように変われない人たち>社会党の村山首相は日米安保と自衛隊を丸呑みした。自民党の論理を丸呑みしたので、社会党の支持者が逃げ、社会党はつぶれた状態になった。村山氏は明らかに一つの解決策を出したのだが、そのようには変われない人がいた。

 (「9条の会」の方々に恨みはないし、日本国民の中の最大限良識的な方々であることは間違いないのだが、この「変われない人々」に入るのではないか、と思うのだ。憲法を守っていれば戦争は起きない、というのは冷戦終結まで信じられていた神話、日本でしか通じなかった幻のような共同幻想だったのだ、と早く悟ってほしい。)

▽<避けて通れなくなった歴史問題>自民党はずっと歴史問題を回避してきたが、東アジアの熱戦が終わり、米ソ冷戦が終わり、アジアが台頭すれば、アジアと日本の関係で、日本がアジア侵略に明確な態度を示す必要が出てきて、避けて通れなくなった。

▽<過去の軍隊と違うと明確化させねば自衛隊海外派遣ができない状況>両方合わせれば、歴史問題をはっきりさせずに自衛隊を海外に出せない。過去の戦争否定、過去の侵略否定を明確化し、そういう歴史と完全に切れたことになって、初めて新しい意味で自衛隊を国の外に出せる。歴史問題はその意味で非常に重要問題になった。

 (この問題が大きいと思う。自衛隊を海外派遣するためには、今でもここがネックになっていると思う。ソマリア派遣では「相手が国でなく、海賊だから」でクリアしたため、問題は先送りされている。)

▽<冷戦期は北方領土問題は解決しないことが重要だったが>いまや地域協力が非常に問題だ。北朝鮮問題がある。北朝鮮問題を考えれば、ロシアと日本の新しい関係が必要となり、北方領土問題が重要になる北方領土は冷戦時代には解決しないから意味があった。日ソ関係が緊張し日米関係が仲良くなるために役立っていた冷戦後の新状況では領土問題を解決して日ロの新協力関係を作り、地域貢献することが必要だ。その意味で新しく問題がさまざまに出てきた。そこで知識人の新しい役割が必要とされる。

 (この冷徹な見方は貴重だ。そういうことだ、と思う。)

▽<知識人の新たな役割>冷戦期、知識人は社会党万年野党の体制の中で気楽に政府批判していればよかったが、今や責任を持って日本の国家、日本の国民が今後どう生きなければならないか、考えて道を見出すために貢献する必要が出てきた。単純に社会党支持者にとどまっている状況では済まない状況になった。80年代末はまさにそういう時期だったと思う。

 (これも「9条の会」の方々に考えて頂きたい問題だ。)

▽<大学生の頃の関心はロシア革命>私はロシア史をやろうと大学に入学したのは1956年日ソ国交樹立の年、日ソ共同宣言の年だった。当時ロシア史研究を志望する人はロシア革命に関心を持つ人だったから、日ソ国交樹立、日ソ共同宣言がほとんど関心の対象にならない。ロシア革命の次には1956年の第20回党大会でスターリンが批判された「スターリン批判」に関心があった。秋に起きたハンガリー事件にも関心があり、日ソ共同宣言にはあまり関心を持たない状態だった。

▽<領土問題に関心を持ったのは80年代>80年代半ば、日露関係シンポジウムでソ連側歴史家の報告を聞き、初めて領土問題が深刻な問題だと気づいた。日ロ関係には関心を持っていたが、領土問題には全く関心がなく、調べたことも一度もなかった。考え始めた時は1986年、日ソ共同宣言30年の年だ。前年の1985年、ソ連にはゴルバチョフという新リーダーが登場した。日本政府はゴルバチョフに日本訪問を頼もうとし、北方領土問題にも新しく光が当たる状況だった。

▽<1986年の「世界」論文の衝撃>ロシア史専門家としても、これだけ国民が悩んできた北方領土問題が解決できるよう、研究し提言する義務があると思った。それで『世界』(86年12月号)に「『北方領土』問題についての考察」という論文を出した。80年代初めから私に韓国問題の論文を書かせてくれたので「世界」編集長の安江良介氏に頼んで書かせてもらった。私の論文は領土問題は解決しなければならない。領土問題を解決するためにはどうしたらいいか。それを考えるには、三つの前提がある。

①日本人は四島を返してほしいと思っている。なぜかというと、それは日本とロシアが幕末に初めて国交を樹立したとき、択捉島と得撫島の間に国境線を引いたのだ。あの1855年の日露通好条約はある意味では日本人とロシア人の麗しい友情に満ちた関係で結ばれた条約であって、そこで引かれた国境線に戻りたいという日本人の願いの中には、ロシアに対して侵略的な気持ちも、報復的な気持ちもない。四島を返してほしいという日本人の気持ちは、日本とロシアの国交の原点、友好の原点に戻りたいということなのだ

②はソ連側の見方。日本とロシアは日露戦争を戦いロシアはサハリンの南半分を取られた。そして、1945年の日ソ戦争でソ連は南サハリンを取り戻し、こんどは千島を獲得した。戦争でお互いの領土を取ったり取られたりした歴史がある。現状は既成事実で、これを変えることは大変だ。変えるべきではない。戦争でできた既成事実を変えるのは関係を混乱させるから、現状を守りたい気持ちがロシア人の側にある。日本人もこの気持ちは理解できる

③サンフランシスコ条約で日本はクリル諸島を放棄している。一方、歯舞、色丹は放棄しないと吉田茂(首席全権)は会議の席上発言している。そしてソ連は1956年の日ソ共同宣言で平和条約調印後に歯舞、色丹を引き渡すと約束した事実がある。これは両国間の国際法的な取り決めだ。

 この三つの前提から出発し、解決策を考えれば、結局③から、択捉、国後はロシア領土だと認めるしかないだろう。歯舞、色丹は約束通り日本に渡してもらう。しかし、それでは①の日本の国民の希望が満たされない。1855年の原点に戻りたいという気持ちが生かされない。それを生かすには、主権は分かれるが、四島を日ソで共同経営する、ということにすべきではないか。

 四島共同経営の原則は①四島を非軍事化し、軍隊は置かない②両国民の4島への自由往来可能とする③資源、環境を保護④共同経済開発する――でやったらどうかと、いう提案だった。

 お互い国境を乗り越えて協力関係に入ることが、新世紀にとって必要ではないか。問題解決が何よりも望まれるのは、日ソが第2次大戦末期に戦争をして最大の被害を受けたのは、ソ連参戦の結果、国土が分断された朝鮮の人々だからだ。今日でもそこから問題が発生している。だから日本とロシアが領土問題で話をつけることが必要。日本とロシアが互いに協力し、朝鮮人問題解決への貢献が求められる、という論文だった。

 (このソ連の参戦、日本との戦争で朝鮮半島が分断された、という因果関係は正しくない。そのトラウマで朝鮮半島問題に深入りしているとしたら、それは大いなる勘違いだ。朝鮮半島は当時、日本だった。日本人として大東亜戦争に参戦していた。だから、東北の娘と一緒に朝鮮半島の娘の中にも慰安婦として生きた人がいただろう、とは思うが、そういう時代だったのだ。ソ連が最後の最後に米国の了承のもと、日本に参戦し、満州で日本人を虐殺、婦女子を略奪しながら北方領土と樺太を不法占領した、というのが当時の日本人の記憶だ。国際文書に何と書いてあっても、日本人が根絶やしにされない限り、この記憶は伝承されるだろう。そこが頭でっかちの和田氏には理解できない部分だろう。日本が国家として朝鮮半島の方々に謝罪し、今からでも過ちを正さねばならないのは、終戦直後の非人間的な行いだ。これだけだ。日本に半強制的に連れてきて、日本人として、というよりも2級日本人として労働させたうえ、終戦となったらば「おまえは日本人ではない」と国籍を取り上げたことだ。こんな非人間的なことはない。日本人になってもらった朝鮮半島出身の人々は日本人なのだ。それを日本人でない、として追い出そうとした。終戦直後、食糧難の時代、人口は少ないほうが良かった。だから、弱い朝鮮人をまたいじめたわけだ。そして、韓国に国籍を移した人以外は「朝鮮人」とした。在日朝鮮人である。在日朝鮮人は北朝鮮の人という意味ではない。日本人なのに国籍を取り上げられ、韓国籍も入手しなかった人たちだったのだ。だから、戦後60年経とうが、100年経とうが、日本という国家はこの人たちに日本国籍を無条件で与えるべきだ、と思っている。それが、まず第一に行うべき日本の償いだ。朝鮮半島に住み、韓国という国家に保護されるようになり、それを望んだ方には、それでも日本国家として、戦争の補償を何らかの形ですべきだが、それhじゃ東京大空襲の被害者たちへの補償と同じ意味だと思っている。)

▽<共同通信配信で大騒ぎ>朝日新聞記者の白井久也氏が読んで「私の言い分」という欄に出してくれた(87年11月30日付)。私はあまり恐怖は感じなかったが、すぐ電話がかかってきたのは有名な村山七郎先生(1908~95、言語学者)からだった。「右翼から攻撃が来ませんか」とお尋ねになった。『世界』論文が11月に出る前に、共同通信が論文を記事化して配信した。「国立大教授がこういう論文を出す」という趣旨の記事で、私とだいぶ立場が違う人ですが、東京外国語大教授(当時)の中嶋嶺雄さんが『現代』に書いた二島返還論も一緒にとりあげていた。国立大教授2人が「2島返還」がらみの論文を書いたということで、共同通信が記事にした。共同通信の記事は『世界日報』という統一教会系日刊新聞の一面トップで取り上げられた。『世界』が出る前の話だった。ゲラ段階で読んだのだろう、私は「大変な騒ぎになっているな」と思った。私が書いた『世界』論文は、すぐそちらの系統の議員が質問をして、中曽根首相が「二島返還を要求する気などない。4島返還の要求は守る」と答弁した。私の論文が出る前にそこまで行ってしまった。

(以下、国会議事録より該当部分)。
《木下敬之助委員 最後に外交問題で一点お伺いして、質問を終わりたいと思います。
 ソ連のゴルバチョフ書記長の来日が実現するのかどうかということが日ソ外交の焦点となっておりますが、もし日ソ首脳会談が実現すれば、当然領土問題が議題になると思います。北方四島一括返還は我が日本国民の悲願とも言えるものでございますが、このところ二島返還という観点に立った記事や論文をいろいろと見かけます。きのうの世界日報にも載っておりましたし、九月九日の世界週報にも「歯舞、色丹の二島返還はあり得る」こういった推測記事が掲載されておりました。この記事を書いた方は外務省の動きをかなりよく知って書かれたのかなとも思いますが、どういうことでございましょうか。外務省、そして総理の御見解をお伺いして質問を終わります。
 中曽根内閣総理大臣 この間も、衆参両院におきまして満場一致で四島返還の御決議をいただいて、これが国民的合意であり、悲願であります。政府はそれを体してやるのでありまして、二島返還というものを考えてはやらない、四島返還というものをばっちり考えておるということを申し上げます。》(衆議院予算委員会 1986年11月5日)

▽<中曽根首相の日ソ「新しい道」志向>中曽根首相が領土問題で新しい道を選ぶのではないかという心配が当時、非常にあり、事前につぶそうというわけだった。中曽根首相と中嶋氏とは関係があるのではないかと思われたのだろう。右の方からは、朝日新聞の記事を見て「けしからん」という手紙が五通ほど来たが、ほとんど恐怖を感じるような状態ではなかった。

▽<伊藤憲一氏の「日面ソ心」論と秦郁彦氏の「日面金心」論>87年になって外務省OBで青山学院大学教授の伊藤憲一氏「北方領土『2島返還論』を疑う」(『諸君!』1987年2月号)で「和田の論文を読むと、この人物が日面ソ心だということがわかる」と書いた。顔は日本人だが、心はソ連人という意味で、「人面獣心」のもじりだ。その後、私はアジア女性基金関係で秦郁彦氏から「日面金心」と言われた。「金心」の「金」は金大中の金か金日成の金かわからないと言われる。レッテル貼りの最初が伊藤憲一氏のコピーだった。

 (伊藤憲一氏ってそういう方だったのか? この方の本は昔、2、3冊読んだことがあるが、内容は覚えていない。)

▽<条約正文のフランス語からの日本語訳に間違い>中世から近代初期であれば、私は当然決闘を申し入れるところです。こんなことを言われて黙っているわけにはいかない。しかし、今の時代そんなこともできないので、私は伊藤さんの論文をしげしげと読んだ。私は『世界』論文で「クリル諸島が何かということは、世界の百科事典を見れば一目瞭然だ。クリル諸島の中に択捉島も国後島も入っているし、色丹島まで入れているのが普通じゃないか。どの国の百科事典でもそうなっている」と書いたが、伊藤氏は次のように書いた。「和田は得意になって百科事典を引用しているようだが、そんなことには意味がない。国と国の外交では、外交文書しか意味がないのだ。日本とロシアの外交文書にどう書いてあるかが問題だ。日本とロシアの外交文書、即ち1875年の千島・樺太交換条約を見ると、クリル諸島というのは得撫島以北であるということが明らかだ。」

 私は伊藤氏のこの主張に注目して、調べた結果、決定的なことを発見して、書いたのが「千島列島の範囲について??『北方領土』問題を考えるために」という論文(「世界」87年5月号)だった。条約には正文というものがある。これを両国で共通に確認し、調印する。千島・樺太交換条約の正文はフランス語だった。それに日本語とロシア語の訳がついているが、それは訳文にすぎない。伊藤氏が千島・樺太交換条約を見ると、クリル諸島というのは得撫島以北だと分かると言う時、伊藤氏が見ているのは、日本語訳文だけだった。フランス語の正文を読んだらそうは読めない。ロシア語の訳文もそうは読めない。だから私は『世界』の反論に「外交交渉で意味があるのは訳文ではなくて正文である。それがわからないのか。あなたの言うことはまったく成り立たない。」と書いた。これが決闘の代わりだった。伊藤氏が私のことを「日面ソ心」だと非難したことには触れなかった。

▽<安政条約にもオランダ語からの誤訳…外務省の天敵に>翌年にも私は「世界」にこの問題で論文(「世界」88年5月号「再論・千島列島の範囲について??安政条約とクリル諸島」)を書いた。「安政条約と千島・樺太交換条約を読むと、二つとも同じで、クリル諸島というのは得撫島以北だということは明らかだ。だからサンフランシスコ講和条約で放棄したクリル諸島は得撫島以北しか含まれていない」というのが外務省の考え方だった。そこで今度は1855年の安政条約(日露通好条約)のオランダ語の正文に当たって調べた。すると、どうしてこういう誤訳が生じたかと思うほどの、欠陥のある日本語の訳文だった。そんな誤訳に基づいて議論をすることはできない。少なくともロシア人にはまったく通用しない。ただ、それを私が書いたから外務省と全く悪い関係になってしまった。外務省の天敵のようになった。

 96年9月13、14日、東大で「ロシアはどこへ行く」シンポジウムをやった時、外務省に協力を要請しに行ったら、篠田研次氏というロシア課長が真っ先に「和田さん、クリル諸島についての解釈は改めましたか」と言った。私は「ご期待には沿えない。私は改めてはいません」と言った。その時は篠田氏は私が考えを改めなくともロシア課課長代理氏を派遣して懇親会であいさつしてくれたが、最初の挨拶がそれだったのは、とても印象に残っている。

 (篠田研次ロシア課長か。今は何をやっているのだろう?)

▽<土井たか子はゴルバチョフに全千島返還を要求し、ぶち壊し>80年代末、私は外務省と接触できない状態だったので、社会党の方へ行った。土井たか子氏が88年に社会党委員長として訪ソすることになり、協力を求められた。ゴルバチョフに何を言ったらいいのか、意見を聞きたいという。私が土井さんに言ったのは「二島返還を約束した56年の日ソ共同宣言の確認をゴルバチョフに求めたらどうか」ということだった。ゴルバチョフは国際的な取り決めを尊重する新思考に立って外交をやろうとしているので、日ソ共同宣言の再確認を求めるのがいいということになり、土井氏のために学者、外務省OBに呼びかけてシンポジウムをやった。私も報告し土井氏はみんなの話を聞いてそれで行こうということになったと思った。

 社会党のそれまでの主張は、共産党と同じで、全千島返還。とんでもない話だ。社会党政権になったらソ連が頭をなでてくれて、全千島を返してくれると思っていた。そんなことはありえない。社会党や共産党の政権ができたって、返すはずがない。ソ連は社会党代表団にそんな要求はうけいれられないとはっきり言っているのに、全千島返還を言い続けていた。「通ろうと通るまいと、これが最も正しい主張だ」という考えだ。私は「そういう主張をゴルバチョフに言ってもいいが、後のほうでコッソリ言ってください。最初は日ソ共同宣言の再確認をはっきり言って下さい」と土井氏には言った。会見の冒頭から「全千島を返還してくれ」などと言ったら「この人は頭がおかしい」と思われる、と言ったのだが、蓋を開けてみると私の提言は採用にならなかった。社会党内部のブレーンが「我が党の立場は全千島返還だ。これをまず言わなければならない」と言ったので、土井氏はそれに従い、ゴルバチョフ会談は台無しになった。これは失敗の経験だ。

 (土井たか子氏の「やるっきゃない」「山が動いた」「駄目なものは駄目」は小泉純一郎氏よりも前に「ワンフレーズ・ポリティクス」を実践していた感じがする。といえば褒めているように見えるかもしれないが、土井氏の頭の中が空っぽ、と言いたいのだ。できもしない幻想を振りまいて、日本の政治に害悪だけを垂れ流した人だと思う。)

▽<エリツィン東京宣言後の行き詰まり>90年代に入って、ゴルバチョフが日本にきたが、1956年宣言の再確認もできずに終わった。エリツィンのロシアになってから4島返還に期待をかけて宮澤(喜一)首相と渡辺(美智雄)外相が交渉したが失敗し、エリツィンは訪日をドタキャンした。そして1993年には反エリツィン派が立てこもるホワイトハウスに砲弾を撃ち込んでから日本に来た。そして東京宣言(93年10月13日)で「歴史的・法的事実、両国合意文書、法と正義の原則に立って四島の帰属問題を解決する」というところまで来た。ところが実際には何も話は進んでいない。

 歴史問題にしても法律問題にしても、ロシア側にはロシア側の考え方がある。日本人は歴史的事実について考えれば、四島の日本帰属になると思ったが、そうはならない。それで東京宣言のあと、完全に行き詰まってしまった。

 (イルクーツク宣言後の日露の行き詰まりに田中真紀子が果たした役割の大きさ。)

▽<佐藤優氏作成のパンフレットの新しさ>90年代の半ばになって「これではダメだ」となり、外務省の中でいろいろなご努力があったようだ。完全に行き詰まっていると私も感じ、ある出版記念会の場で外務省の方の前で「外務省は外務省、学者は学者で、自分の世界だけで意見を言っているだけではダメだと思う。学者も苦労している外交官に協力して、お互いに議論をして何か道を見出さなければ解決に至らないと思っている」と言ったら、ロシア課長だった原田親仁氏が「和田さんと話す用意がある」と言ってくれた。

 96年9月の東大シンポジウム「ロシアはどこへ行く」に協力要請をしに外務省に行った。新しい篠田課長に代わっていたが「わかりました。あなたはクリル諸島についての考え方を変えていないようだけれども、外務省から人を派遣してパーティで挨拶くらいしましょう」ということになり、何人か外務省から来た1人が佐藤優氏だった。佐藤氏が持ってきて私にくれたのがロシア語パンフレット『日本とロシア??真の相互理解のために』だった。実はこの前の渡辺外相時代に『日本の北方領土』というロシア語パンフレットを外務省が出したが、とてもロシア人を説得できないものだった。日露通好条約、千島樺太交換条約によればクリル諸島には択捉、国後は含まれていない、という主張を述べ立てているが、ロシア語では言えない主張だ。条約の日本語訳にのみ基づいている主張だからだ。パンフレットは条約の本来のロシア語訳文をつかわず、不完全な日本語訳文をさらにロシア語訳して使ったので、とてもダメだと批判していた。

 ところが、佐藤氏の持ってきた『日本とロシア??真の相互理解のために』は択捉、国後がクリル諸島には入らない、とは全然書いてない。画期的だった。火傷を負った少年の話や地震のときの援助のことなどいろいろ書いてあり「お互いに助け合っていくのだ」という話になっている。本当に新しい流れが外務省内に出てきた感じがした。

 (原田親仁ロシア課長は今、何をしているのだろうか? 佐藤氏によると外務省悪人列伝に出てくる人らしいが。)

▽<和田氏が4島返還論に立場を変更>そこで96年10月16日の日ソ共同宣言40周年に際して、朝日新聞に談話をもとめられたとき、私は「国民が4島返還を望むのならば、4島を返してもらうようにどういう道があるか、考えたい」と述べた。それまで私は2島返還、4島共同経営を提案してきたが、4島返還にベースを変えた。これで外務省と関係が良くなった。

▽<イルクーツク宣言を評価>その後、橋本政権になってから、佐藤さんたちが大いに頑張った。私は99年に『北方領土問題 歴史と未来』(朝日選書)という本を書き、「日露の新時代が来た」と外務省の新しい努力を評価した。

 2001年3月25日にイルクーツク声明が出た時も歓迎した。イルクーツク声明の前夜、朝日新聞に「どうする北方領土」という形で末次一郎氏と私の談話が載った。末次氏は4島一括返還の立場で、僕は2島+2島の段階論で行くべきだという主張だった。

 56年の日ソ共同宣言の中には、クリル諸島の一島である色丹島を「日本国の要望に応え、かつ日本国の利益を考慮して」、歯舞諸島と一緒に日本に引き渡すと書いてあるから、クリル諸島のほかの島(国後,択捉島)だって「日本国の要望に応えて日本国の利益を考慮して」渡せないはずはない、と説得できる。そういう余地が日ソ共同宣言の中にはある、と述べた。イルクーツク声明が出た時には私はそれを支持すると毎日新聞に書いた。当時そういう意見を述べた人はほとんど私だけで、アメリカの学者が「和田の声は孤独な声だった」と書いていた。

▽<2002年からの外務省の悲劇…>2002年からの悲劇的な状況はよくご存知のことだろうと思う。再び外務省と私の関係は全然存在しないに等しいことになってしまった。このごろは岩下明裕君(北大教授)の『北方領土問題』(中公新書)が出たが、とても良い本だと思う。岩下君は私の議論を評価する立場で書いた。岩下君に以前にモスクワで会った時「外務省から『和田の議論を否定する材料がないか調べてきてくれ』と頼まれてきたんです」と言っていた。「だけどうまく見つからない」と言っていた。この本の中で、岩下君ははっきりとクリル諸島の範囲問題については和田の議論が正しいと言っている。

北方領土問題―4でも0でも、2でもなく (中公新書) 北方領土問題―4でも0でも、2でもなく (中公新書)

著者:岩下 明裕
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 (北方領土問題の仕組みはことほど左様に難しい。)

◎2009年6月3日アップ分(2007年3月11日「フォーラム神保町」佐藤優×和田春樹セミナーの和田春樹氏講演の「慰安婦問題と戦後50年」部分の要点筆記は以下の通り)

▽<高校1年から「申し訳ない」必要と思っていた>慰安婦問題は歴史問題だ。私は相当早い時期から日本の植民地支配が朝鮮人を苦しめていた、と意識してきた。日本が過去に対し「済まない」、「申し訳ない」の気持ちを持つことが日本と朝鮮、日本と韓国が関係を持つ前提として必要だと高校1年ころから思っていた。日韓会談が久保田代表発言で中断した時だった。しかし、運動は何もしなかっ。1965年に日韓条約締結時は歴史家団体の役員で、そこで多少運動した。一人の知識人として運動を始めたのは1973年の金大中氏拉致から。1974年からは「日本の対韓政策をただし、韓国民主化闘争に連帯する日本連絡会議」(日韓連帯連絡会議)事務局長となり、1978年まで市民運動をやった。1978年から1年間ソ連で在外研究をし、帰ってから1980年には「金大中氏を殺すな」運動を一生懸命やった。この運動は日朝関係を人間的なものにする新しいチャンス、第3のチャンスを生かそうとする運動だと考えていた1980年代に北朝鮮問題が出て、問題を広げて考えるようになり、日本の過去の植民地支配問題を改めて重視するようになった。

 (バイアスのない和田氏の唯一のバイアス、トラウマが「朝鮮半島への謝罪」衝動だったわけだ。これは論理でも何でもなく、直感なのだろう。大野伴睦ではないが「理屈はあとから貨車いっぱい載せてやってくる」。大事なのは直感なのだが、なぜか戦中派・和田氏の直感は少年時代に縛られているように見えるのだ。)

▽<謝罪していなかった日韓共同声明>1982年に中韓両国から「日本の歴史教科書が歪曲されている」という批判が起こった。その時、日本政府はこう言った。我々の態度は何も変わっていない。1972年の日中共同声明では「日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する」と述べている。その精神はちっとも変わっていない。教科書についてもその精神で考えている、と。これはいい。だが、韓国については1965年に日韓条約を結んだ時の日韓共同コミュニケでも過去の関係は遺憾だと深く反省しており、その精神は変わっていないと言った。だが、こちらは通らない。日韓共同コミュニケは「過去のある時期に不幸な関係があった」の言葉で「このような過去の関係は遺憾であって、深く反省している」の言葉があるに過ぎない。不幸な過去の関係とは何なのか、全く説明されていない。「遺憾」は「残念だ」の意味で、謝罪的な意味は全く含んでいないから、日本は韓国に対し植民地支配について何の謝罪もしていない。この際、韓国にもはっきりと日韓併合は侵略だった、日本の統治は過酷な帝国主義的支配だったことを認め、謝罪する政府宣言を出すべきだ、という知識人声明を青地晨、中野好夫、鶴見俊輔、日高六郎氏ら7~8人と一緒に出した。

 (大平・金鍾泌会談で竹島を話し合い、お互い政治問題化するのをやめようと密約を結んだ、とか、そういう類の話は相当に聞いたが、これは本質に関わる話だ。そして、帝国主義時代に植民地を持った国家として、植民地支配を謝罪するということが本当にいいことなのかどうか。歴史の味方の問題だと思う。当時は帝国主義の時代だったし、食うか食われるかの時代だった。その中で日本は朝鮮を植民地にした。仕方なかった。今の倫理観、国家観、民主主義観で裁いていいのだろうか、という見方である。私はその歴史修正主義の言い分にも一理あると思うのだ。だから、宮沢内閣の河野官房長官談話も村山政権の戦後50年総理談話も評価していない。)

▽<日韓条約2条の解釈問題>1984年の全斗煥大統領訪日時、クリスチャンと一緒に同じ主旨の声明を出したが、そこではっきり「国会決議すべきだ」と主張した。決議すれば、決議の精神で1965年に結んだ日韓条約の解釈の変更が可能になる。日韓条約は英語の正文があり、日本語と韓国語でそれぞれの解釈に立って訳文をつけている。第2条が韓国併合条約無効化を規定しており、その時点が問題になった。韓国は「最初から条約は無効、日本の支配は不当だった」の解釈だ。日本は「条約は有効で、日本の支配は合法的だった、無効になったのは、韓国建国の1948年だ」という解釈。韓国は現在形で「無効である」という正文にしたかった。日本側は「無効になった」と現在完了形にしたかった。妥協して「already」という副詞を入れたので、日本語訳は「もはや無効である」となった。韓国語訳では「すでに無効である」となっている。これはそれぞれの国の国会で説明され、承認されている。こういう手品みたいなことをやってごまかした。この手品みたいなことで、自分たちの解釈を通すという解決を獲得するのに、韓国人は15年間闘った。日本側は植民地支配を反省することは一切認めなかった。

 (これが国家、つまり子孫の名誉のために必要なことだったのではないか、と思うのだ。アジアとつきあうために、つまり経済的な理由で国家の尊厳を捨てるというのは武士ではない、と私は今でも思う。)

▽<韓国側解釈での国会決議を求めた二つの狙い>1984年の私の考えは、国会で植民地支配を反省し、謝罪する決議を出せばいい、日韓条約の韓国側解釈を採用したらいい、ということだった。そうしないと歴史認識が統一されない。もう一つは、国会で決議すれば、その国会決議を持って北朝鮮のドアを叩くことが可能になる。当時は「二つの朝鮮」論反対という立場を北朝鮮が取っていた。どっちかしかない。韓国を取るか北朝鮮を取るかだ、という。実は1972年の日中国交樹立は台湾を捨て北京を取った。中国も「二つの中国」論に反対だった。北京と外交関係を結ぶため、日本は台湾と断交した。北朝鮮はそれと同じことを要求していた。韓国と国交を持っている日本にそんなことができるはずはないから、北朝鮮とは話ができない状態が続いた。だが「朝鮮植民地支配を反省する。お詫びしたいのだ」と言ってドアを叩けば、北朝鮮が問答無用だ、「来るな」とドアを閉めたままにすることはできないはずだ、と私は考えた。そういうふうにドアを叩くべきだというのが、私たちの提言で、各政党に出した。社会党は「支持する」と言ったが、当時の石橋委員長は「これが国会で通るのは夢物語だ」と言っていた。

 (石橋の考えが常識論だ。)

▽<土井たか子社会党委員長の建国40年声明に盛られる>4年後の1988年、社会党委員長の土井たか子氏が二つの国家の建国40周年にあたり声明を出した。1948年8月に大韓民国が、9月に朝鮮民主主義人民共和国ができ、40年経ったからで、岩波書店の「世界」編集長だった安江良介氏の助言に拠ったものだろう。声明も安江さんが書いた。安江氏は「朝鮮植民地支配反省の国会決議が必要だというあなた方の主張を土井さんの声明に入れておいたよ」と私に言った。当時、韓国のある新聞は、ごく少数の知識人の声が日本の代表的な政治家の声になったのは驚きだ、と取り上げた。そのころは私は安江氏と組み、北朝鮮と日本の関係正常化運動を考えていた。植民地支配反省でドアを叩くのが一番いいと二人は考えた。

 (土井たか子という人物は相当に問題だ、と思っている。)

▽<安江→田辺→金丸→竹下首相の謝罪の手紙→1990年の金丸訪朝の失敗>1989年に昭和天皇が亡くなられ、私は非常にショックを受けた。昭和天皇の時代にあの戦争もあり、植民地支配もあり、朝鮮人との関係でもいろいろなことがあったにもかかわらず、何も清算されずに昭和天皇が去った。その時代のことは我々が清算しなければダメだと思った。そこで朝鮮植民地支配謝罪国会決議を求める国民署名運動を1989年3月1日、昭和天皇が死んで1カ月ちょっとで立ち上げた。安江氏は社会党の田邊誠副委員長と話し、説得に成功した。竹下登首相が応じ、北朝鮮のドアを叩こう、それには植民地支配で被害を与えたことを反省すると表明しよう、となった。竹下氏の手紙をもって金丸・田邊両氏が訪朝したのは1990年のことだ。金丸氏は自民党の副総裁だったが「植民地支配について申し訳なかった」と平壌で謝罪した。金日成は「分かった。それでは国交交渉に入ろう」となった。ソ連が韓国と国交を結ぶ直前だったから北朝鮮も必死だったということも影響しているが、表向きに言えば、日本が「過去を反省する」「植民地支配の歴史を反省する」と言ったので、北も「わかった」と言って、国交樹立に向かったということだ。少数の知識人の良心的な声に過ぎないと考えられた主張が日本の外交の舞台を作ることになった。しかし、これは結局うまくいかなかった。

 (安江氏は信念を持って世論を誘導するための操作を行っていた。これは歴代岩波書店幹部に共通した特徴だ。「韓国からの通信」は本当に韓国にいる人が自分で体験していることを送ってきたリポートだ、と思って読んだ。ところが、池という東京にいる人が空想の世界で書いていたことが後で分かった。こういう嘘を書くという癖が染み付いている岩波書店をギリギリのところでは信用できない。普通の時にはその反政府的言辞が耳に心地よい時もあるが。)

▽<金学順氏の慰安婦だった発言→補償問題浮上>1991年、韓国で金学順氏が「私は慰安婦だった」と言って登場した。「植民地支配反省の国会決議を求める運動」をしている私たちは慰安婦の存在を認識していた。1989年3月1日に署名運動を開始した時の集会の決議文には「娘たちは慰安婦として戦場へ送った」と書かれている。慰安婦が植民地支配のもとで最も惨い苦しみを受けた存在ということを忘れることはなかった。しかし、現実に慰安婦だった人が出て「私が慰安婦だった。私に対する謝罪と補償を要求する」と言ってくるとは全く思っていなかったので、我々は反省、謝罪ばかり言っていたが、被害者補償は全く考えていなかった。90年代に入り単に謝罪だけではなく、補償が問題になった。

 (この辺の記述から、和田氏の軌跡が分かって面白い。随分と飄々としているものだなぁ、と驚いた。)

▽<慰安婦に関する河野官房長官談話>1993年、慰安婦問題について自民党政府が河野官房長官談話を出した。日本政府としては本当に珍しいことだった。宮澤喜一首相のリーダーシップがあったと思う。「慰安婦の問題がある」と韓国から言われ、慰安婦問題の調査を決定し国内と外国で2度調査し、被害者16人から聞き取りをした。慰安所を設営した経営者や軍人からも聞き取りし、総括して慰安婦問題はこういうふうに考える、と結論を出した。軍が直接関与して慰安所開設や人員輸送をした、甘言で欺き、意に反して連れてきたことも多くあった、と認め、謝罪した。日本政府は不人情だった。自民党独裁最後の政府となった宮沢内閣がそれまでとは全く違う行動を取った。私は河野談話は非常に立派な声明だと思う。やり方も立派だと思う。

▽<細川首相の「侵略戦争」発言>声明を出したらすぐ宮澤内閣がつぶれ、5日後に細川内閣になったから、細川首相も黙ってはいられない。首相就任会見で「あの戦争は間違っていた」と言った。「侵略戦争だ」とも言った。韓国に行って「朝鮮の植民地支配も反省する」と言い「創氏改名もいけなかった」と言った。これは個人プレイ的ですが、宮澤内閣のレベルが高かったので、次の非自民連立政権の首相も頑張った。

▽<村山自社さ連立内閣成立>保守勢力が猛然と立ち上がり「こんなことは許されない。英霊に泥を塗るのか」と言い出し、細川首相攻撃の国民的署名運動が始まり、細川内閣は何もできずに終わり、自民党が1年ちょっとで政権に戻った。しかし、1994年にできた自社さ連立の村山内閣で、社会党と新党さきがけは戦後50年国会決議をやると共同政策を決めていたが、自民党がそれを丸呑みして、戦後50年の国会決議をやることになった。この際、未解決問題を解決しようということになり、その筆頭に慰安婦問題が上がったが、雲行きは怪しかった。村山内閣と言うが首相と官房長官が社会党なだけで、本体は自民党で、自民党内には、そういうことはいけないという勢力があった。

 (この一連の動きは何だったのだろう?)

▽<国民基金案に賛成した>村山内閣成立後2、3カ月後に、慰安婦問題は国民の募金で基金を作り、お見舞い金を出す方針だ、と報道された。朝日新聞一面のスクープだった(1994年8月19日付)。私は「この内閣でできなければ何もできない」と思い、この内閣が何かすると言ったら、賛成した上で議論し、さらに前進してもらわなければ無理、と思っていた。朝日新聞のスクープ時に朝日記者に談話を取られ「基本的にこの案に賛成する」と言った。僕の考えは、まず国民がお金を出して、その後に政府に出してもらうというもの。ポンプの呼び水がある。ポンプから水を出そうと思ったら、水を少し入れなければ出てこない、というのが私の考えだった。

▽<奥野氏らの議連が自民党の3分の2占める>1994年12月に村山内閣が作った戦後50年問題の3党プロジェクトの慰安婦問題小委員会にヒヤリングに呼ばれた。私は「基金を作るのは結構だが、基金作りは議会を通す法律で行い、基金に政府のお金と国民のお金の両方を入れてほしい」と言った。その意見はもちろん通らない。その頃できたのが奥野誠亮会長の終戦50周年国会議員連盟で、この前の戦争は自存自衛のための戦争、アジア解放の戦争なので、いかなる謝罪も反省も必要ない、という。そういう文言を入れた決議はまかりならんという主張だった。奥野誠亮会長、幹事長が村上正邦氏、事務局長が板垣正氏、事務局次長が首相の安倍晋三氏。彼の名を会員リストで見た時「この人はお父さんの果たせなかった夢である総理大臣になる気がないんだなあ」と思った。こんな議連の幹部になった人は首相にはなれないと、その時、私は思っていた。議連はまたたく間に拡大した。95年5月には自民党国会議員の3分の2が入った。自民党の3分の2がその議連に入れば、国会決議が出るはずがない。

▽<「世界」論文での提案と左翼からの批判→第3次案でOK→衆院で「侵略戦争」認める決議>私たちは95年3月に「世界」(95年3月号)に論文を出し、国会決議の内容について提案した。私たちが考えた国会決議は国会議員の最大公約数の意見、国民のコンセンサスが反映されたものであるはずだから、生ぬるい、不十分でもいい、「朝鮮に対する植民地支配を反省する」「中国に対する侵略戦争を反省する」が最低必要だ、太平洋戦争、大東亜戦争については侵略戦争だと言わなくてもいい。あの戦争が結果としてアジアの人々に被害をもたらしたことについて反省があればいい。あの戦争で死んだすべての人、日本の兵士、日本の銃後の国民もアジアの人々も、全員の死を弔い、この人々の死が我々の平和を支えていると認める。日本国憲法に立って平和のために努力する、という決議がいい。決議は橋本龍太郎厚生相も賛成するものでなければならない、と書いた。幾人かの人が「何を言うか」「知識人たるものが政治家のやるようなことをやっていいのか」と言う。「どういう内容なら決議案がまとまるかというのは、政治家に任せるべきじゃないか」と言う。しかし、国民のコンセンサスだから、政治家だけの問題じゃない。国会決議は国民の総意を表わすものとしてやらなければ意味がない。国民が考えて意見を言うのは当然だ、と私は思った。でもそういう批判が出たので「ああ、ずいぶん考えが違うなあ」と思った。知識人というものは政府批判の立場に立っていなければダメだ、政府と関係を持てば堕落する、という考え方だ。中には「国会決議についてなど考える必要はない。民間で国民の宣言を出したらいいじゃないか」という意見もあった。私たちが最初に作った国会決議案文には慰安婦問題も入れ、社会党に持って行った。社会党が3党協議に最初に出した決議案はほとんど私たちが出した決議案と同じものだったが、自民党はもちろん受け付けないで、ダメだとなる。ガラリ変わった第二次案もダメという。通った第三次決議案は「世界の近代史上における数々の植民地支配や侵略的行為に思いを致し、我が国が過去に行なったこうした行為や、他国民、特にアジアの諸国民に与えた苦痛を認識し、深い反省の念を表明する」という非常にわかりづらいものだった。世界中の国が侵略や植民地支配をやっていたし、我が国もこうした行為をやった。他国民、アジアの諸国民に苦痛を与えたことを反省する、となっている。自分が反省するのに、他人もやっていたと言わなければならないのは情けない次第だが、とにかく植民地支配と侵略的行為と認め、反省している。これは衆議院で単純多数で可決された。社会党、自民党、さきがけで通した。共産党は反対票を投じた。奥野議連の幹部はみな欠席した。新進党は修正案が受け入れられないということで欠席した。参議院は村上氏や板垣氏が頑張って、かからなかった。だから、散々の結果だったが、それでも通ったことは前進だ、というのが私の評価だった。惨敗という言葉があるが、これは惨勝だと「世界」に出したら「これは載せられない」とはねられてしまった。

▽<アジア女性基金のスタートと全面広告>国会決議はひどく印象が悪く、日本の新聞も「こんなものはダメだ」と言い、アジアの新聞はもちろんみんなダメだと言った。その決議5日後、アジア女性基金設立が発表になった(95年6月14日)。政府がアジア女性基金という財団法人を作り、国民に募金を呼びかけ、国民の拠金から慰安婦とされた人たちに償い金を出す。その際、政府として何らかの謝罪の意を表明する。一方、政府は慰安婦のために医療福祉支援活動を行なう団体をアジア女性基金を通じ援助する、という内容だ。私も呼びかけ人20人の1人だ。引き受けるか引き受けないか、で争いがあった。名前が出ると電話が殺到して「引き受けるな!」と言う。宮城まり子さんはいったん引き受けまが、すごい圧力が女性団体からかかってとうとう「辞退させてください」と言って辞退した。僕のところには言って来なかったが、僕と一緒に運動していた人たちは、みな反対だった。政府の案は曖昧だが、戦後50年で村山内閣がこれだけのものしか出せないとすれば、この先これ以上のものが出る可能性は全くない。これが我々の到達した水準ならば、これに対して責任を取らなければならず、政府の呼びかけを受けたら、そこに入って、その中で改善に努力し、これ以上後退しないようにする責任がある、と思った。だから、私のところに依頼に来た政府のお役人に言ったのは「私には条件がある。一つは、スタートするときに新聞に全面広告を出してもらいたい。アジア女性基金をやり、政府はこれを支援してやっていくのだという政府の決意を示してほしい」と言ったら「それはできる」と言う。実際そうなった。1995年8月15日、戦後50年のその日に、村山談話が昼の12時ころ出た。国会決議よりはるかにはっきりした文章の総理談話が出た。その朝に朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、日経、産経の各紙に全面広告が出た。産経新聞も「私のところにも出してくれ」と言ってきたそうだ。5大新聞に載った。総額1億3000万円かかった。それだけかかると言われて僕らもひるんだが、僕らは全面広告がいいと主張した。政府は不退転の決意を日本国民と全世界に示さなければならない、ということだ。アジア女性基金の呼びかけ文と村山首相のご挨拶の文章、それに村山氏の写真と村山氏のサインを載せた。首相の写真とサインまで出し、逃げられない証拠だ。被害者が名乗り出てくる限り償い金を出し続ける。国民からの拠金が集まらなければ政府がカバーするのは当然だ。そういう意思を表示するためにやるのだと了解して、あの広告を出し、基金はスタートした。

▽<総理のお詫びの手紙が大きかった>基金の達成の中で一番大きいのは、総理大臣のお詫びの手紙だ。初めは「国としての反省とお詫びの気持ちを表明する」とだけ言って、総理大臣のお詫びの手紙とは決まっていなかった。私たちは、一人ひとりの慰安婦に対して総理大臣が自署してお詫びの手紙を出してもらいたいと主張した。三木睦子さんは、それが出そうにないというので、辞表を提出して橋本首相に圧力をかけた。橋本氏は遺族会会長で、難しいところに立たされていた。私たちもただの呼びかけ人だが、その手紙が出なければ全員が辞表を出すつもりだった。総理大臣のお詫びの手紙が出るか出ないかが、我々の条件だった。それで橋本氏はついに決断して、これを書いた。立派な決断だったと思う。手紙はだいたい河野談話に沿って書かれた。文章も「こういう内容にしてくれ」と私たちは提案したが、政府で原案を書いた。政府から出る医療福祉支援は被害者のために医療福祉支援活動をする団体に援助するということになっていたが、そうではなく、医療福祉支援は被害者個人にやってほしい、と修正を求める運動を基金の中でやり、その通りになった。基金側で頑張ったことだった。

▽<結果的に安倍首相を助けた女性基金>韓国では最終的には国民拠金から200万円の償い金が出たが、政府資金から出る医療福祉支援は300万円と、政府の方がより多く出したことになった。フィリピンでは国民の拠金から200万円、政府の医療福祉支援が120万円で、生活水準の違いでそうなった。オランダでは国民の拠金からの償い金はなく、すべて政府からの医療福祉支援300万円。オランダは被害者が79人、フィリピン、韓国、台湾合わせて385人が受け取った。成果は最初思ったよりは多かったとも言えるし、まだ少ないとも言える。基金はそういう結果になり、2007年3月31日に解散した。広告には「基金は政府と国民の協力で」とスローガンを入れた。初のケースだったと思う。政府と民間が協力し、会議には基金呼びかけ人、理事のほか必ず政府の役人も出た。基金で出す文章は政府が全部一語一語点検するので私が原案を書いたパンフレットも出るまでには1年半くらいもかかった。そういうふうにして、政府と国民が協力して12年間やってきた。現在、日本政府を批判しているアメリカ議会の決議でもアジア女性基金は評価されている。日本にとって貴重な資産だと思う。ある意味では、こういうふうにやってきたことは安倍首相を助けていると私は思う。

 (こうした詳しい経緯は歴史そのものだ。岩波書店の幹部と違って、本質的なところで嘘はつかない人だろうから、勉強になる。これが右寄りの学者だったら、日経新聞の「私の履歴書」で書かれていただろう。そのくらいの重みがある、と思う。)

 以上、「フォーラム神保町」と「魚の目」のホームページから無断引用したが、本文そのままではないので、詳しく読みたい方は最初のほうに載せたURLで「魚の目」を訪ねて、本物を見てください。

  「フォーラム神保町」のホームページを見て感心したが、「魚の目」まで発展し、本当にいい企画が動き出している、と感動している。総合雑誌が相次いで廃刊になるなか、新たな言論空間を創作する動きだろうと思う。陰ながら応援したい。

(追記 2009年7月5日)
 [魚の目]を久しぶりに見たら、2009年6月30日に佐藤優氏が和田氏の講演後の所感と質疑応答の部分を詳しくテープ起こしした文章をアップしていた。

http://uonome.jp/article/satoh/500

 <2007年3月11日 「フォーラム神保町」佐藤優×和田春樹セミナー【和田春樹さん講演を受けての、佐藤優さん所感】>という題名だった。コピペして読んでみる。

 <(佐藤)非常に難しい問題に関して、和田先生は真摯に取り組んでいます。それで、和田先生ということになると右翼国家主義陣営からは――私も右翼国家主義陣営の恐らく端っこのほうにいると思いますが――自虐史観の代表者であると言われていますが、実は自虐史観というのは、私は今右翼国家主義陣営の中で強く言っているんですが、あれは日本でしかあり得ない。我が国体の問題と非常に関係していると言っているわけですね。革命という考え方を導入すると、その瞬間に革命以前のことが関係なくなるんです。完全にリセットされるわけです。今の中華人民共和国は、中華民国時代のことに関しては一切責任を負おうとしません。それは、革命が起きているからそこで一回リセットということなんですそうすると、自虐史観というのは絶対に起きてこないんですね。自虐史観というのは、その構成から見る限りにおいては、それは明らかに日本の歴史というのはずっと連続しているんだと。我が国家、我が民族はそれに対する責任を取らなければいけないんだという発想から来ているわけです。ですから実は、和田先生のアプローチというのは、私は非常に日本的だと思うんです。>

 なるほど、発想を変えれば、そう言えるのか。自虐史観というのは歴史の連続性があるから、反省する。革命では、革命前の政権がやったことには責任を持たない、と。歴史的に見れば、まさにボルシェビキがそうだった。ロシア帝国時代の負債を全部チャラにしたので、西側が怒ったが、取り付く島もなかった。

 <それから和田先生の今日のお話の中で私が非常に尊敬するのは、問題を裏から誰々の話を通して処理するとか、あるいはデモ隊に圧力をかけさせて「あいつとあいつがキーパーソンだから少し脅し上げてやれ」とか、あるいは「街宣を出せ」とかいう形で問題を解決するのは、物事の技法としては非常にやりやすいわけなんですよ。ところがそこのところを愚直なまでに公共圏における議論を通じてやると。日本の場合、国家という領域は強いですし、私的領域も強いですけれども、公共圏は弱いですからね。公共圏の中で処理していくということが、非常に大きなところだったと思うんです。その観点からしますと、今後、和田先生の話をいろいろ引き出していかなければいけないと思うんです。>

 <先生は自伝を書かれたんですが(『ある戦後精神の形成 1938-1965』岩波書店)、あれは65年で終わっていますよね。例えば金大中大統領も、もし和田先生を中心とする金大中さんを救う運動がなければ、全然違う運命をたどっていたと思うんです。ですから韓国史の中にも大きな影響を与えているわけなんです。それと同時に、やはり和田先生の中にあるところの一種の――それこそ先生のお叱りを受けるかもしれませんけれども――玄洋社あたりまでさかのぼるような亜細亜主義の発想なんですよ。ここのところも非常におもしろいと思っています。>

ある戦後精神の形成―1938‐1965 ある戦後精神の形成―1938‐1965

著者:和田 春樹
販売元:岩波書店
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 <それで、和田先生に対して左からの批判というのは非常に激しくなされたんですが、右からの批判も山ほどあるんです。そのうち一番悪質だった批判は、あたかも和田先生が岩波書店の「世界」の中で「拉致問題はない」と言ったと。こういう大嘘プロパガンダですね。和田先生は「拉致問題がない」などとひとことも言っていません。逆です。「拉致問題として辛光洙(シン・ガンス)の一件を明らかに確定できる。だから拉致問題として処理しなければいけない。それ以外の問題を現実的に処理するためには、外交交渉としては行方不明者としてやる以外にない」と。相手は認めていないのですからね。これは外交の世界でごく当たり前の議論なんです。それが曲解されて、「拉致問題はない」ということを言った東大教授であると。そこのところには、東大教授というエスタブリッシュされた人間が、現実からかけ離れたところで「拉致はなかった」と偉そうなことを言っていたのだというウソ言説が作られて、日本の反エリート主義的な機運、日本の反東大的な機運といったところと合わせてやられちゃったんですね。それに対して事実に即した形で反論するメディアがほとんどなかったということが極めて残念です。>

 辛光洙については、土井たか子元衆院議長というか元社会党委員長が助命嘆願の署名をしたので覚えている。捕まって、韓国で死刑になるはずが、助命嘆願の署名があまりに多く集まったので、金大中大統領が北朝鮮に逃がしてやって、北朝鮮で国家英雄にされたのではなかったか。

 <それから岩波書店の「世界」は私も非常にお世話になった重要な媒体なんですけれども、やはりアジア女性基金の問題においての和田先生へのアプローチというのは、これは厳しすぎたというか、非常にセクト主義だったと思います。もっと和田先生の主張をきちっと載せるべきだったと思うんです。それから左の側からの批判として、この人たちを左と言っていいのかというのは私は非常に疑問があるんですが、往々にして日本の大学の中には優等生左翼というのがいるんです。これは大学が講座派、労農派双方の影響が強く、マルクス主義の影響が強かったので、その中で左翼の顔をしているとだいたい優等生になるというのが基本的に日本の大学の、特に国立大学の特質なわけなんです。実際の運動とは関係なく、暴れたりもしないんだけれども、言説は極端な左翼。共産党よりもずっと左というのが非常に多いんです。今でもその残滓があります。>

 <佐々木力さんという人の「批判的思考の再生を求めて 日仏左翼知識人の30年」(上下回、「世界」99年1月号、2月号)という文章があります。なぜ「世界」がこのような文章を載せたのか。要するに現代転向者論です。転向者の中で何人か挙げているんですが、一人は東大の山内昌之先生です。山内先生はかつて学生運動の活動家として相当運動をやっていたが、いつの間にか右になりやがったな、この野郎という話です。ですから山内先生は怒り心頭に発していて、あの先生はなかなかそのへんにおいては記憶力のよろしい方ですから、それ以降一度も「世界」には登場していないと思います(笑)。>

 <和田先生に関しては、要するに政権に歩み寄っていると。こういうようなやり方は、知識人の頽廃なんだという議論です。それから何人かの人たちの、かつての左翼系の運動をしていたことを、佐々木さんは「世界」に書いている。和田先生はこれを受けて、反論を書くんですよ。それで「複写自由」という形にして、その反論を何カ所かに配る。そうするとネズミ算的に増えていくわけなんですが(笑)。その中で「おい佐々木、お前も特定の団体に入っていただろう。自分自身の団体について明らかにせずに人の団体を暴露するのは、左翼の仁義に反しているではないか」とかなり激しい調子でアジりました(笑)。すると佐々木さん自身はその後ちゃんと、「世界革命」という新聞の中で「自分は第四インターナショナルだ。トロツキストの世界的な組織のメンバーだ」ということを明らかにして論文を書きました。これは新左翼系の中で非常におもしろい議論だったと思います。>

 <それで私がやるよりも、どうぞフロアの皆さん、率直な意見を出してください。それで意見交換をしましょう。>

 <(会場発言、雑音で再現不可)>

 <(佐藤)村上正邦さんというのは、私はその後非常に親しくした人間です。例えば「慰安婦問題がなかった」などという言い方がありますが、彼自身は慰安婦問題については発言していないんですね。そのことを私はあるとき訊ねたんですよ。すると村上さんはこう言うわけです。「私の父親は、福岡の炭鉱の寄せ場で現場監督だった。理由もないのに朝鮮人が引き出されて、『口の利き方が悪い』ということで雪の中で木刀で殴られて半殺しにされた。そういうものを目の前で見ている。戦前の日本における軍隊にはたしかに公娼制度はあったし、その中に慰安婦たちもいた。ひどい扱いをしていたのは明らかだと思う」と言う。そういうことに関して彼は「自分が見てきたことと違うことについては絶対に発言しないことにしている。ただし自分の仲間たちが日本の尊厳のために『こんなものに対して頭を下げてはいかんのだ』と運動をやっている。それについて自分のほうからその運動をストップするという話ではない」と言っていましたね。>

 <村上さんは常に人間として良質だと思うんですよ。残念に思うのは、もう少し時間の軸がズレていれば良かったということです。私が当時村上さんと知り合っているのだったら、もっと胸襟を開いた形で、閉ざされた扉の中で和田先生や村山さんや村上さんや橋本さんときちんと議論をすれば、もっと収斂した議論になったのではないかと思います。私は今の風潮として、「話してもわからないんだ」ということを軽々に言いすぎると思うんですよ。あらかじめ「話しても通じないんだ」と決めつけないほうがいい。その姿勢が和田先生の中には非常に強かったと思います。その和田春樹的なものが今媒体で扱われなくなってしまっている。記事としてはわかりにくい、という線があるからかもしれませんが。>

 <会場から意見を聞かせてほしいのは、どちらかというと保守系のテレビ媒体におられて、なおかつ学者の卵であり、むしろ民族的な形、エスニシティとしては中国人。拉致問題については中心的にやっておられ、恐らく近い将来北京オリンピックでは中心的に引っ張っていくであろう日テレのジャンさんにお訊きしたい。例えば日中間の相互理解、相互対話に関して、メディアとインテリの関係をどう考えていけばいいとあなたは思います? あなた自身がその現場にいるインテリであり、なおかつメディアの一人のエリートであり、なおかつエスニシティとしては中国人、シチズンシップとしては日本人というアイデンティティの問題もあるでしょう。>

 <――和田先生のお話は初めて聞いたのですが、メディアやテレビで扱う場合は、ほとんど視聴者に伝わらないですよね。それをどう伝えていくかということはすごく大きなテーマでもあります。現状のメディアではほとんど不可能に近い状態であって、どうわかりやすく伝えていくかは大きな課題です。佐藤さんの話はわかりやすいので若干みんな聞くのですが。>

 <(佐藤)わかりやすくするということに関しては、僕もすごくつらさを感じながらやっています。やはりおもしろくないとわからない。それから短時間で説明しなければならない。それと同時に、思考停止をどこで停止するかということだと思うんですよ。それから、私自身はやっぱりマージナルな人間で、少数派だと思う。少数派だから、日本の中心になる言説を出したらいけないと思うんですよね。それが宿命的に少数派だというのは、やはり沖縄の血が入っているということです。これは陰にも陽にもいろいろな場所に出てくるわけなんですよ。ですから突き放してみるならば、アイヌと沖縄というのは、ヤマトンチュ(大和の民)、シャモ(和人)からの距離が同じくらいなんですよ。ところがアイヌはエスニシティとして独自の別民族を選んだ。沖縄は強くヤマトと同一民族だということを選んだ。しかし調べてみればこれがどちらにもなるということは明白なんですね。ところがそういう問題は僕にとってものすごく琴線に触れる問題で、例えば慰安婦について僕は生理的には扱いたくないという気持ちがあるわけです。どうしてなのかというと、母親から聞いていたということと同時に、先ほど言ったように「大日本帝国」という映画に琉球慰安婦が出ていると、そこのところで他人事と思えない。自分の同族の思いが出てくる。するとそこに触られるということは何か心臓をギュッとわしづかみにされるようなイヤな感じが出てくるんですよ。これは少数派でないとわからない。>

 <それからもう一つ、僕自身が国家公務員になるときも――これは今まで話したことがないのですが――かなり意図的に専門職員、ノンキャリアを選んだんです。役所に入る前に予備校に入るとかもう少し一生懸命勉強すれば、別の方向も可能だったかもしれない。大学でも神学のようにはじっこのものしか選ばなかったというのは、やはりマイノリティのところ、境界のところに自分を置いておくというのは非常におもしろいし、そこから見えてくるものがあると思う。しかしそこから出てくる言説というのは、絶対に中心的な言説にはならないんです。保守陣営の一部の人たちが、私に対して非常な危機意識をもっている。私の中には根源的には破壊的な要素があるんですよ。それは自分でもよくわかっているわけです。それから左翼のほうの党派的な考え方も嫌いなんですね。それはやっぱりマージナルなところにいるからだと思うんですよ。>

 <それに対して和田先生の考え方というのは、実は非常に中心の考え方なんです。常にきちんと体制を動かしていく。インテリとしてどうやっていくかという、中心となる考え方なんです。今非常に重要なのは、中心の側の考え方、あるいは大きな物語を作っていくということだと思うんです。どうしてかというと、インテリが大きな物語を作っていく、日本の国家方針を作っていくということをやめたら、そのスカスカになったところに神様は真空を嫌うわけですよ。真空に悪魔がたくさん入ってくる。とうてい国際的に通用しないような、レベルのものすごく低い神話、物語ができてしまう。そうすると、世界中の中で日本だけがスッテンテンに浮いているような状況が出てきます。しかし、あるレベルよりもっと低くなると、自分のレベルが低いということが自覚できなくなってしまう。特に今の日本の外交当局はそういった状況になっているわけです。だから、そこの連鎖をどこから切っていくかということになると、教えてほしいのは右とか左とかいう色にはとらわれない編集方針でやっているとすると、例えば「中央公論」です。>

  <(ここで「中央公論」の中西さんより発言あり/聞こえないため省略)>

 <(佐藤)中西さんと僕はストレートにこういった話をしたことはないんですが、彼女は僕のためにリスクを負ってくれているんですよ。「中央公論」というのは、私のことを名指しでぶっ叩いてきた数少ない雑誌です。私を名指しでぶっ叩いているのは「中央公論」と「諸君!」だけなんですね。恐らくは、前回(2007年3月6日)来た手嶋龍一さんが、「これはどこかで軌道修正したほうがいい」と言ったのではないでしょうか。彼は陰徳を積んで説明をしない人なんですよ。それで偶然を装って何度か「中央公論」との接触機会を作ってくださいました。恐らく「中央公論」に僕の考えていることを出したほうがいいと手嶋さんが提案したのではないか。>

 <《※「中央公論」にはこれまで佐藤優氏と手嶋龍一氏の対談が3回掲載されている。「緊急提言 ロンドン旅客機爆破計画の阻止に学ぶ 日本版MI6の創設を急げ」(2006年10月号)▽「元ロシア・スパイ暗殺事件の真の恐怖 今そこにあるポロニウム拡散の危機」(2007年2月号)▽「佐藤優・二審敗訴の意味 外務省は”武装解除”される(2007年4月号)》>

 <雑誌というのはインテグリティ(首尾一貫性)がすごく重要ですから、「佐藤なんてとんでもないヤツだ。俺が内部調査したらこいつが悪いヤツだということがよくわかりました」なんていうことを外務省の退職者が「中央公論」に書いているのを、ある人がコピーで送ってくれました。本人に当たらずしてこんなことを書いているとは、なんちゅう雑誌だと思いましたよ。それはそうとして、そういう中で僕を「中央公論」に出すということはすごく勇気があることだったと思います。編集者の人たちは、案外みんなそういったリスクを冒しながらやってくれているんですよね。それがちゃんとした書き手にはそこのところが見えると思うんです。>

 <それと同じような形でリスクを冒してくれている人がもう一人左側にいます。「佐藤なんかを出してけしからん。『防人の詩』を歌うようなヤツの論考を出しているのはどういう姿勢なのだ」とお怒りの投書が来て、お怒りの投書が来るまではわかるのですが、お怒りの投書を載せるということは編集部も基本的にはそういう考えだということですよね(笑)。そのあと私は反論も一回書いています。今知識人にとって最も識字率が高い雑誌は、恐らく「週刊金曜日」だと思います。「週刊金曜日」の伊田さん、どうですか。>

 <伊田(「週刊金曜日」副編集長) 投書を選んでいるのは、実は私です。編集部がそう思っているというより、潜在的にそういう読者もかなりいるだろうと。だから投書欄という公共圏に移してきっちり議論しておいたほうがいいんじゃないだろうかと。佐藤さんが直接「反論を書きたい」と言ってくださったのは予想外にうれしかったです。佐藤さんへの批判の投書を載せれば、その投書自体への反論の投書がかなり来るだろうという見込みがあって載せました。あとはいくつか投書が続いておりまして、だいぶ議論が整理されてきているのではないかと思います。>

 <「週刊金曜日」はよく左翼的とは言われますが、筑紫哲也編集委員がよく言うように、どちらかというと川上のメディアです。根本的な議論をちゃんとしておく。そういうところを私個人はしておきたいと思っていまして、そういう意味では和田先生が「拉致はなかったと主張している」というデマに対しては、そんなことがウソだということは当たり前ではないかと思う。しかし「週刊金曜日」としてはもっとはっきり「あれはデマだ」と強くキャンペーンしていったほうがいいかな、とは思っています。>

 <(佐藤)先生は「週刊金曜日」とはどんなご縁でしたっけ?>

 <(和田)僕は以前「週刊金曜日」に佐藤勝巳さんの批判を書かせてもらいました(「佐藤勝巳『救う会』会長の研究」、「週刊金曜日」2003年9月19日号)。それからこの間は佐藤優さんと対談をさせてもらいました(「北朝鮮と安倍外交」、「週刊金曜日」2006年10月27日号)。>

 <(伊田)私の入社する前のことですが、恐らく慰安婦問題の解決については、わりと「週刊金曜日」は和田さんに厳しい論調でしたよね。>

 <(和田)そうですね。>

 <(佐藤)インカーネーション(キリストにおける神の受肉)は、キリスト教の神学ではすごくポイントになる部分です。神様というのは神様でいただけで満足してしまうのではない。人間の肉の形を取ってきたというわけです。クリスマスをなぜ歓迎するのかといったら、神様が肉の形を取ったからなんですよ。物事を現実のところにもっていかなければいけない。現実のところに神様が来たらどういう運命なるかといったら、世の中とうまくやれなければ死んでしまう運命にあるわけなんですよ。しかもそれは刑事犯として処刑されるという運命にあるわけです。現実の世界の中で生きていくのだったら、必ず現実の世界と妥協しなければいけないから歩留まりがある。非常にそこがシンボリックなのは、当時の革命派でインテリのパリサイ派の連中が「イエスをひとつ引っかけてやろう」と思った。それで「税金を払うべきですか。払わぬべきですか」と訊く。そうすると「金貨を見てみろ」とイエスは言う。「金貨に誰の顔が描いてあるか。それは皇帝の顔だ。ならば皇帝に返しなさい」と言った。結論から言うと、「税金は払え」ということです。権力に直接従うかどうかという議論は必要ない。しかし、最低限の付き合いとして税金を払うという形で国家と関係を結ぶ。貨幣というものに表われている力も、仕方がないものだ。必要最低限なものだということです。しかしそれにはとらわれないという感覚なんです。>

 <経済合理性ということから考えると、大学という中に入ってしまえば大学の狭い権力や権威、あるいは小さなお金がある。私の知り合いでも大学の行政をやっている人間は、そこの中でだんだん埋もれていってしまう輩がいる。すると周囲が見えなくなってしまうわけです。それから我々が外務省にいるときには、ちょっとでも難しいことを言う教授がいれば、まずメシを食うことにするんです。それで1回目は絶対に批判をせず「お話をうかがってごもっともでございます」と言う。それを3回くらいくり返し、外務省の広報誌「外交フォーラム」に論文を書いてもらうんです。「外交フォーラム」はたしか今、山内昌之先生が編集委員でしたね。その「外交フォーラム」に論文を書いてもらう。そして破格の原稿料を出すんですその次には政府の諮問委員に入っていただくだいたいこの段階を踏むと、無二の親友になると決まっているわけなんです(笑)。ところが、そういうことが通用しない先生が何人かいるんですよ。行政官のときにこの手段が通用しない先生の一人が、和田先生でした。和田先生と付き合うと、みんな官僚の方が汚染されてしまうわけです。篠田研次さんもシカゴの総領事(現駐米大使館公使)ですが、これは決して良いポストではないのです。というのは、和田先生のドクトリンに汚染されて「国際的に通用しないクリル諸島の範囲なんてやっていてはダメだ」と。そして方向を転換していった外交官の一人だったわけなんですね。>

 <アジア女性基金というのは、外務省ではアジア大洋州局のアジア地域政策課が担当するんです。これは和田先生自身からお聞きしたんですが、和田さんがアジア地域政策課の事務官から年賀状をもらった。「私は良心に基づいた仕事が今回できるので、非常にうれしく思っている」という趣旨だったそうです。アジア女性基金というのは実は外務省の中でも、非常にみんな深刻に受け止めるとともに、やりがいのある仕事だということで多くの人間たちが手を挙げていったわけです。どうしてかというと、多くの外交官が中国語を学ぶ。ベトナム語を学ぶ。ビルマ語を学ぶ。マレー語を学ぶ。インドネシア語を学ぶ。タガログ語を学ぶ。朝鮮語を学ぶ。そういった外交官たちは、現地の歴史、現地の皮膚感覚がわかる。そういったところが好きなんですね。それで、紋切り型の日本政府の方針の中で抜け落ちているものがある。それを実際に生かせる場所というのがなかなかない。そういったところでアジア女性基金ができた。>

 <政府がやれることには歩留まりがあるのだけれども、私たち自身が自分たちの良心というものと仕事の間を合わせていくことができる。あのときに北方領土問題とアジア女性基金が同時に動いていったというのは、外務省の中でそういう空気があったわけなんですよね。だからそこではみんな意欲的に仕事をするんですよ。そういう外交を取り戻すためにはどうしたらいいかと考えるんだけど、簡単に結論は出てきませんね(笑)。>

 <(和田)被害者にお金をお渡しする式に、外務省の人が同席するんですよ。台湾でもそうですし、韓国人にお渡しするときにも外務省の人がついてきました。異口同音に皆さんおっしゃるのは「自分の外交官生活にとってこれは非常に重要な場面だった」と言っておられますね。総理大臣の手紙が朗読されて、お母さんたちがどれだけ感激するかということですね。ここが非常に重要な点です。お金の問題じゃないんですから。そういう意味では、珍しい経験だったと思いますね。被害者がそれだけ目の前にいるということです。被害者の心を少しでもやわらげる。怒りをやわらげて和解の方向へもっていけるかどうかということですから、それは極めて人間的な作業です。これを日本の政府がやったということは、非常に大きなことだったと思います。>

 <アジア女性基金では、政府のお役人や基金に関係した人など関係者の証言を集めた『オーラルヒストリー アジア女性基金』という本を最後に出して終わろうとしています。もう一つは「デジタル記念館 アジア女性基金」と「慰安婦問題とアジア女性基金」をインターネット上に立ち上げようとしているんですね。そこにはアジア女性基金の資料も入るし、回想的なものも入る。この経験について国民がちゃんと考え、批判的に検討していく。そして評価すべきところは評価し、問題点があれば問題を指摘する。10年間の経験は共有していくべき経験だったと思います。>

 <(佐藤)本当にそう思います。それとともに私は、アジア女性基金のこの活動ができたは、一種の不作為があったからだと思います。その不作為とは、村上正邦さんであるとか板垣正さんであるとか右派国家主義陣営に入っている人で、本当に自分たちの動きを発揮するならば、こういった動きをつぶすことができた。しかしある種の歩留まりにおいても不作為を行なった。そういった人たちの中にあったところの歴史に対する思い、これはなかなか文字にはなりにくいものです。彼らの立場もありますからね。なかなか見えにくいものなのですが、私は行政の内部におりましたのでそれは見えるんですよ。例えば衆議院で決議を行なったんだけれども、参議院で決議を行なわなかったという前代未聞の事態がどうして起きたのか。これを裏返すと、当時の村上氏の力をもってすれば衆議院決議をつぶすこともできたんですよね。村上さんはたしか魚住昭さんとの回想録では「だまされた」と言ったんでしたっけ。しかしあの人は簡単にだまされるような人ではありません(笑)。そういったことを含めて、いろいろな物語を読み取っていく力が必要と思うんです。>

 <「フォーラム神保町」は今日で8回目です。少しずつやりたいなと思っていることができてきていると思います。今のメディアを取り巻く状況、官僚、知識人を取り巻く状況で最大の敵はシニシズム(冷笑主義)だと思います。「どんなことをやったって状況が動くはずはないさ。何カッコつけやがってあいつは」と斜めに構えてヘラヘラと笑う。この冷笑をアイロニーにおける笑い、あるいはもう少し転換してユーモアにおける笑いへと、笑いの質を転換していけないかなと考えています。>

 <最後に和田先生に訊きたいのは、「東北アジア共通の家」を含め、和田先生の中にユートピア思想はありませんか。最後にユートピアについて語っていただきたいと思います。「絶望の虚妄なることは、まさに希望と相等しい」と魯迅は言っています。私は和田先生のユートピアについて訊きたいんです。>

 <(和田)ユートピアを考えるというのは、現在存在しない理想の社会を夢見る、その実現をめざすということです。そういう気持ちは人間にとって重要なことであり、そういうものを失うと社会としては現状追随という退嬰的な気分に流れてしまうと思います。戦後の日本の社会には、マルキシズム、社会主義がユートピアの要素を果たしていたところがあるんですよ。学生運動はだいたい左翼が握っていますから、学生運動に積極的に参加していなくとも、活動家が胸を張っていろいろ言っているのをみんな聞いているわけです。そういうリーダーも多くは大学を出たら転向してしまって変わってしまうわけですが、若いときにある理想の社会を夢見るということに触れるということは、社会の中で前向きに生きていくのに助けになっていたのではないかと思いますナベツネさんも共産党だったし、氏家(齊一郎)さんも共産党だったし、田中角栄の秘書の早川(茂三)さんだって共産党員だった(笑)。そういうことを経てきて、それぞれ仕事をされているのでしょう。そういうところがあるんですよ。>

 <ところが今や左翼が非常に弱ってしまった。マルキシズムの権威がなくなってしまった。それではこまる。やはりユートピアの再建がどうしても必要になる。19世紀に生まれた社会主義のユートピアを実現する行為が、大変な虐殺を呼んだり抑圧を生んだという事実を我々は目に前にしているわけです。北朝鮮の問題もあります。いまは簡単に、一挙に理想的な社会をつくろうとして、そういう社会ができればすべて一遍に世の中が良くなるとは言えないことがわかっています。>

 <その点、柄谷行人さんの言う「世界共和国」のようなユートピアはできるはずがないと思っているのですそういう全面的なユートピアでないような、新しいユートピアが必要です。つまりもっと漸進的なものです。「漸進的なものはユートピアではない。一挙に理想の状態に到達するという考えがユートピアだ」という考え方もあります。しかし漸進的に人々の合意に基づいて、現実に存在していない理想的な状態に近づいていくということでなければ、いまは人々を引きつけることもできない。強制でユートピアをつくることはできないのです。そういう意味で言うと、漸進的なユートピア、部分的に実験されながら世界を変えていくユートピアということになると、それは地域主義ではないかと思います。>

 <世界が一遍に、人類全体が一挙に新しい理想状態になるというようなことを夢見たら、世界的な強権政治になってしまう。アメリカがやっていることは、まさにそれじゃないですか。そうじゃなくて、いろいろな複雑な要素がからんでいる一つの地域の人々が集まって、その地域のみんなが協力して生きるような形を模索することによって、一種の理想状態に近づく道を実験する。トライ・アンド・エラーでやっていく。その地域主義が新しいユートピアではないでしょうか。>

 <私は「東北アジア共同の家」をずっと提唱してきました。中国、韓国、北朝鮮、日本、ロシア、アメリカ、この6カ国でそういうことを考えるべきではないか。とりあえずの問題は朝鮮半島の平和、安全保障ということでした。自然にそうなるわけです。アメリカも当然そこに入るということになる。>

 <初めはまったくそれも夢物語だったのです。だいたいアメリカを入れるのはみんな反対ですから、僕はなんとかハワイとアラスカを入れようという考えで(笑)、そこを含めて東北アジアだと言っているんです。一度日航の飛行機に乗ったら、日航の機内誌に北極を中心にした地図があって、それで見ると、モンゴルからアラスカ、ハワイまでが一つの地域として、まとまります。「これはいい」ということでそれをもって帰って僕の本に載せました(『東北アジア共同の家――新地域主義宣言』平凡社、2003年)。>

 <2003年には、韓国で盧武鉉大統領が出現して、就任演説で言ったのが「東北アジアの共同体を目指す。これが私の年来の夢である」ということです。これはいいと思いましたね。その年さらに6者協議がはじまりました。6者協議は北朝鮮の核危機にとりくんでいるのですが、「北朝鮮の核問題が解決したら、地域の安全保障のための新しい仕組みを考えるように努力をする」と二度にわたって声明しているんですよ。2005年9月と、つい先ごろも言ったわけですね北朝鮮は難関ですけれども、北朝鮮の核問題が解決すればそういう時代になる。北朝鮮の核問題が解決するときに6カ国の首脳が集まって、調印式でもやれば、それがそのまま東北アジア・サミットにもなりうる。ここの地域は環境問題をもかかえています。黄砂の問題も酸性雨の問題もありますから、そういう問題も含めて、安全保障と環境問題ということで、地域の協力体を考えることが意味がある。それが6者協議という形を通じて現実に目の前になっている。>

 和田氏は権謀術数と無縁の理論派なのだろう。しかし、日本の短期的な国益を守るのも政治家なのだ。

 <そういう意味で言うと、ユートピアではありますけれども手の届かないようなユートピアではない。努力しだいによっては達成できるものであって、そこで安全保障の新しい考えができて地域の協力ができれば、エネルギーの問題にしても経済システムの問題にしてもお互いの経験を交流してやっていけるのではないか。そしてアメリカとロシアと中国という巨大な国が入れば、ここで何か問題が漸進的に解決すれば大変な人類的意義があるのです。解決していないのはイスラエルとユダヤ問題だけですね。とにかく東北アジア共同の家は人類に対する非常に大きな貢献になると思います。それが私の新しいタイプのユートピアであると、主張しています。『東北アジア共同の家』(平凡社)ではそういうことを書きました。>

 <いまは東アジア共同体論議もさかんで、東アジア共同体協議会というものもあるんです。その基本的な文書を書いているのが田中明彦さんと青木保さんです。しばらく前に青木さんと一緒にシンポジウムに出ました。私が東北アジアの共同体の話をすると、青木さんは「東北アジアという考えが面白い、そういうことは考えたこともなかった」と言うんですよ。僕は、これはもうちょっと交流しなければダメだなあと思いました(笑)。>

 <(佐藤)青木さんや田中さんの知力だったら、そのあたりはやむをえないでしょう(笑)。>

 <(和田)僕はもう一つ議論しなければいけないと思いました。>

 <(佐藤)「フォーラム神保町」というのは、一つのユートピアなんです。地域で顔が見える範囲にこだわって参加者を限定しています。最近、ぶん投げてやめちまおうかと思ったことが2~3回あるんですよ。というのは、対話が成立しえない場合が多い。要するに、二つのモノローグをやっているのだったら意味がないわけなんですね。それは知的な能力において劣っているから対話ができないからではないのだと思うんです。例えば私の知的水準が極端に低いから呼んできた人と対話ができないということではなくて、何か相手の側に警戒心があって心を開かないということなんですね。何かのきっかけで心をパッと開くと対話ってできるものなんですよ。それは、そのときの知的な集積であるとかなんとかとは本質的には関係ないんです。あるいは国家の力も関係ない。私がそのことを強く学んだのは、イスラエルの連中との付き合いを通してなんですよ。僕はイスラエルの中で、名前を出していい中で一番尊敬しているのはエフライム・ハレヴィというモサドの前の長官です。このモサドの前の長官が光文社から回想録を出す準備をしているという話でして、この回想録が出ると日本のインテリジェンスの世界にものすごく大きな影響を与えると思います(エフライム・ハレヴィ[河野純治訳]『モサド前長官の証言「暗闇に身をおいて」』光文社、2007年)。このエフライム・ハレヴィ長官というのは、アイザック・バーリーンの従兄弟なんです。バーリーンは文芸批評家で、イギリスから来ている珍しいユダヤ人なんですね。>

 <エフライム・ハレヴィは最初はモサドの分析局、工作局にいて、ある時点ではヨルダンとの間の平和条約交渉の全権になるわけなんです。それで、双方の訓令でうまくまとまらずに交渉が決裂になりそうになったときに、ヨルダンのフセイン国王がお手洗いに立った。そしてハレヴィさんはフセイン国王をトイレに追いかけて行って、立ち小便をしながら2人で交渉をまとめたんですね(笑)。そういうような人です。北朝鮮でミサイルの件が起きたときには、彼のチームは北朝鮮に乗りこんで直談判をする。「いくら払えばミサイルを作るのをやめるのか」と言う。結局それは決裂します。>

 <それからイランの連中に対しても本当によくネットワークをもっていると同時に、イランという国について「イランは地政学上重要で、本来アラブと敵対しているイランというのは我々の味方なんだ。どうやって味方に入れようかと考えている」と言う。彼はOECDの大使になって1回モサドを引退しているんですよ。ところがそのあと、とんでもないチョンボをモサドがするんですね。ハマスの代表のヤーシンをぶっ殺そうとしてモサドの工作員が耳から毒を入れるんですよ。すると毒の入れ方が中途半端だったので、完全に死ななかったのです。それと同時にヨルダンのフセイン国王も怒り心頭に発して、イスラエルの首相に電話をかけてきて「すぐに解毒剤を出せ。下手人を始末しろ」と要求した。ハレヴィさんがフセイン国王との人脈を使って問題を何とか処理した。>

 <その直後に、スイスでモサドの工作員が捕まっちゃうわけなんですよ。イラン大使館の盗聴をしていたんですね。ところが「挙動不審なヤツがいる」ということで市民から通報されて、捕まったらカナダ旅券が大量に出てきて、カナダ人の偽装をしていたわけなんです。そしてカナダとイスラエルの間で大変な問題になって、ヤトムというモサドの長官が辞めさせられてしまったんですよ。そのときにモサドの工作員は電話ボックスで死んだフリをしたとかいう話で、本当に諜報の世界に大恥を塗るような二つの失態が生じて「モサドは解体か」と言われたときに、エフライム・ハレヴィというおじいちゃんに頼んでもう1回モサドの再建をして、モサドの再建がだいたい成ったので2005年にリタイアして、今はヘブライ大学で国際関係の先生をやっています。>

 <この先生と話していると、和田先生と話しているときのこのトーン、タッチとすごく感じが似ているんです。それと同時に、彼から言われたんですよね。「学問だって情報だって、情報のための情報、分析のための分析では究極的につまらないんだ。おもしろいこととは世の中を動かしていくためであり、おもしろいことというのはやはり平和をちゃんと志向していくことなんだ。平和を志向していくことはおもしろいんだよ。だから我々インテリジェンスの人間というのは、基本は平和を志向していくのだ」。一番殺しに長けて闘いをやっている中心のところにいるモサドの長官がそんなことを言う。それを知って私は、情報の世界というのはとても奥が深いのだなあ、と思ったわけです。>

 <和田先生、今日はどうもありがとうございました。>

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2009年6月 2日 (火)

中国共産党は自分たちの権力、財産を他の中国人から守ろうと必死:天安門事件20年~渡辺利夫・拓殖大学学長[正論]産経新聞6月2日

 産経新聞6月2日朝刊コラム[正論]は渡辺利夫・拓殖大学学長の<正統性を掘り崩す中国共産党>だった。天安門事件20年の節目に鄧小平の罪と罰を書いておこう、忘れたことも思い出そう、と書いたような文章だった。小見出しは<政治混乱を警戒した鄧小平>、<大量虐殺で体制に深い傷>、<民主化つぶした高いコスト>の三つだった。本文を読んでみよう。

 <天安門事件が起こって20年だという。変転きわまりない時代にあって錯雑たる日常の中で身を処していると、時間の経つのがあきれるほど速い。この分でいくと、あの大事件も時の流れに押し流され、遠い記憶の彼方に消え去ってしまいかねない。そう、だからこそ20周年といった区切りをつけての真摯なる回顧が必要なのにちがいない。>

 渡辺氏の年ならば時間のたつのは早いだろうなぁ。

 <振り返れば現代中国の栄光と汚辱、成功と挫折の淵源が天安門事件の中にあったことに気づかされる。いうまでもなく当時の最高権力者は鄧小平氏であった。中国の一大転機は鄧氏が全権を掌握して開かれた1978年12月の共産党第11期3中総(中央委員会総会)であった。ここで中国経済の改革・開放が宣せられた。計画経済を市場経済へ転じさせるという史上に例をみない実験の開始であった。実験は「高速発展」を結実した。>

 もう過去の出来事がゴチャゴチャになっていて、そう言われてもピンとこなくなっている。

 <しかし、市場経済化とは経済主体の多元化である。これが政治的な混乱をもたらすならば、改革・開放の基盤自体が崩壊するというのが鄧氏の強い懸念であった。改革・開放とほとんど同時に「4つの基本原則」が提唱されたことを忘れるわけにいかない。①社会主義への道②人民民主独裁③共産党の指導④マルクス・レーニン・毛沢東思想、である。核心は③の、要するに共産党独裁の堅持である。>

 市場経済化は経済主体の多元化、か。少し難しい言葉で言っているが、そういうことなのか。

 <同氏は次のようにいう。「共産党の指導を離れて、果たして誰が社会主義の経済、政治、軍事、文化を推進していくのか。今日の中国では、共産党の指導を離れて大衆の自然発生性を賛美するようなことは絶対にしてはならない」>

 「大衆の自然発生性を賛美する」とは何なのか? 最近分かってきたことは、共産主義国家の言葉はわざと分かりにくくしている、ということだ。ケネディの伝記を読み、フルシチョフの演説などが出てくるが、簡単にズバリと言えるところも難しく言う。これは特権階級だけに通じる符牒なんどあ、と最近ようやく気付いた。

 <改革・開放が超えてはならない「閾値」がこれである。天安門事件とは、「大衆」がこの閾値を超えて最高実力者によって徹底的にたたきつぶされた出来事に他ならない。言い換えれば、天安門事件は鄧理論の「正しさ」を立証した象徴的な出来事であった。>

 「閾値」かぁ。何か別世界の話のようだ。

 <天安門事件から3年余を経て開かれた第14回共産党大会で提起されたものが、江沢民氏による「社会主義市場経済論」であるが、鄧理論の焼き直しである。社会主義市場経済は論理的にいえば蒙昧でしかない。しかし鄧氏や江氏は、市場経済に内在する大衆の「自然発生性」が社会と政治の混乱につながり、ましてやこれが共産党独裁体制をゆるがすのであれば、大衆は力をもって排除されねばならないという断固たる意思をみなぎらせていた。>

 この共産党理論をほめそやしていたバカどもがいた。結局、自分たちの権力が奪われるのを恐れて、反対勢力を潰していただけじゃないか。全共闘の中にもいたなぁ、毛沢東をほめてた奴が。

 <社会主義市場経済とは、共産党独裁下での市場経済化という意味である。そうであれば、「社会主義」市場経済はただの形容詞などではない。天安門事件によりその存在意義を否応なくみせつけられた実効的概念に他ならない。>

 そういうことなのだ。実態を見せられたのに、米国も日本もみな中国の安い労働力に群がった。なぜ安いか、と言えば共産党政権が切り売りしているからに過ぎないのだが、そこへの批判は誰も口にしないのだ。

 <改革・開放の方はどうかというと、天安門事件を前後する時点での一時的頓挫の時期を経て概ね順調な展開をみせた。特に1992年初に鄧氏によって飛ばされた「南巡講話」の檄に呼応して、経済はむしろ過熱気味に推移した。外国企業投資や貿易も再開され、中国は次第に有力な経済国家として頭角を現していった。そしてこのことがまた、社会主義市場経済論の誤りなきを党指導部に確信させたのである。>

 何か、政治には触らずに経済だけで付き合うということは中国の手のひらの上で踊っているようにも見えるのだが。

 <しかし、物事にはすべて両面がある。人民解放軍による人民の大量虐殺が共産党の権威に深い傷を負わせたのは当然のことであった。市場経済化による社会階層の多元化もまた共産党の求心力を弱め、社会主義イデオロギーの正統性を失わせた。市場経済化は勝者に富をもたらすと同時に、敗者をも再生産する。社会主義市場経済の下での勝者とは、党官僚や彼らに連なる「新中間層」と称される権益階層のみであり、圧倒的多数の農民や都市下層住民(「弱勢群体」)との格差は、時の経過とともにますます深刻化していった。>

 勝者の再生産と敗者の再生産か。新自由主義社会を見ているようだ。

 <江氏を後継したのが胡錦濤氏である。胡氏は「調和社会」をスローガンとする「親民政策」をもって登場した。勝者と敗者との断裂が暴動や動乱の形をとった政治的混乱を招来しかねないという共産党の危機意識の反映である。>

 勝者=共産党員、敗者=一般国民特に農民か。

 <共産党は政治的民主化の芽を、時に暴力的に、時に隠微な形で摘み取りながら、ひたすら経済成長を追い求めてきたのだが、その行動自体がみずからの正統性を証すイデオロギーや公正信義の根拠を掘り崩してきたといっても過言ではない。>

 そうなんだけど、それを中国の民衆は知っているのだろうか?

 <共産党に再度の求心力を保証するものは、おそらくナショナリズム以外にはあるまい。愛国主義的機運は経済大国化とともに国民の中にも昂揚しつつある。少数民族の抵抗、反日愛国主義運動、台湾併合など、国民から粗暴な愛国主義を誘い出すテーマに中国は事欠かない。天安門広場での民主化要求運動をたたきつぶしたことのコストを容易に回収できないまま、次代を開く正統性原理を探しあぐねて、党指導部は夕闇の中でたたずんでいるようにみえる。>

 夕闇に佇む党指導部なんて、ちょっとロマンチックだが、中国人にそのような軟な感覚は通じないだろう。ものすごくリアリストの集まりだから。

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韓国人記者の日本分析は鋭い:日本人のワシントン特派員も戦略分析を身につけよ~6月2日中央日報NET版

 朝鮮半島問題で日本や米国が何を考え、どうしようとしているのか、世論の動向はどうなのか? 韓国の新聞記者はじっくりと取材して、分析している。そして、愛国心あふれる記事にまとめて新聞に掲載している。そこには「日米同盟」、「憲法9条」などというバイアスはなく、純粋に戦略的・戦術的思想を繰り返す知的営為がある、と思った。

 ほめすぎかもしれないが、6月2日に韓国紙「中央日報」日本語版ネットにアップされたベテラン(?)東京特派員によるコラム【グローバルアイ】を読んで、そう思った。

 たいしたものだ、と思う。日本や米国の動きが自分たちの国の今後にどう影響するか、李明博大統領や青瓦台に頼り切ることもなく、自分の頭で分析する姿勢は日本のワシントン、北京、ソウル特派員に御見習ってほしい、と思うのだ。

 この記事は朴素ヨン東京特派員による<日本版‘北風’の限界>と題したコラムだ。

 読んでみよう。

<「私の答えられる限界を超えています」。北朝鮮が2度目の核実験を強行した先月25日の日本首相官邸。「国際社会が北朝鮮の核実験を阻止できない理由は何か」という記者の質問を受けた麻生太郎首相の回答だ。この「限界」という発言が遡上に載せられた。テレビ時事トークショーの出演者は「首相の口から出てくる言葉か」とし、野党の党首は「日本は北朝鮮問題で疎外されている」と非難した。>

 この件は毎日新聞の[論説ノート]で「首相は軽々しく”限界”と言うな」と厳しく叱咤していたのが印象に残っている。

 <同じ日、外務省の薮中三十二事務次官も「日本の外交が機能していないという指摘がある」という質問に対し「この問題は日本だけでなく国際社会全体が対応してきた課題」と強調した。これらの発言を総合すると、日本当局が本当に言いたいのは「北朝鮮の最大支援国の中国が制裁に慎重な立場であるから……」「米国がブッシュ政権末期に北朝鮮をテロ支援国から解除したから……」のような言葉ではなかったか。>

 私もそう思う。中国と米国への恨みはあると思う。丸腰の日本からすれば、丸腰でいるレゾンデートルに関わる部分だからだ。

  <北朝鮮の挑発が核実験以降続いている。大陸間弾道ミサイル(ICBM)も発射する態勢だ。日本は自ら北朝鮮の核・ミサイル脅威を直接受ける唯一の国だと考えている。北朝鮮の威嚇は現実的に米国本土への攻撃までは想定せず、ミサイルではなくても休戦ラインを間に置いて常に北朝鮮の脅威を受けている韓国とは違うからだ。>

 この辺も、日本人の心理を理解しにくい韓国人の読者に対して適切な説明をしていると思う。

  <北朝鮮が衛星を打ち上げた4月、日本はミサイルが自国の領域内に落ちることに対応し、パトリオット(PAC3)と艦上迎撃ミサイル(SM3)を搭載したイージス艦を東海(トンへ、日本名・日本海)に配置したのも、こうした名分があったからだ。日本が対北朝鮮制裁更新期限を6カ月から1年に延ばすなど対北朝鮮制裁を強化するのはもちろんだ。 今回も政界は対北朝鮮全面禁輸措置などのより強硬な制裁措置を要求している。しかし、日本政府は戦時体制をほうふつさせた4月とは違い、今度は静かな雰囲気だ。日本がどんなに騒いでも中国をはじめとする国際社会が歩調を合わせない限り日本の独自の制裁は「国内用」にすぎないという世論が優勢だからだ。>

 このへんの視線が鋭いと思うのだ。ただ、無意識に書いているのだろうが、筆者の認識は北朝鮮による「ミサイル発射」ではなく、「衛星打ち上げ」なのだな、と分かって、やはり、この年代の韓国知識層は金大中一派の影響を強く受けているのだな、と思った。北朝鮮への視線がいやに冷静なのだ。

  <日本国内では現実的な対応を模索すべきだという主張も出ている。韓米日が中国の協調を得て強力な制裁を加えることができなければ、朝米関係の正常化というニンジンを与えて核開発を放棄させるしかない、ということだ。>

 この辺、この後の文章もそうなのだが「へぇー、知らなかった」である。

 <福田康夫元首相は27日、「日本の対北朝鮮政策はもう一度考え直した方がいい」と述べ、日本独自の対北朝鮮制裁の限界を指摘した。柳井俊二・元駐米大使は最近の寄稿で「国際社会が北朝鮮の核保有を認めることはないだろうが、これから日本は事実上核を保有した韓半島政策を深刻に考える時点だ」と主張した。>

 この辺である。いろいろな雑誌までくまなくチェックしているのだろうか? 中央日報の東京支局は日経新聞本社ビルの中にあるはずで、特派員は日経新聞の政治部長や朝鮮半島担当編集委員、論説委員らと雑談をしながらネタを仕入れていくのが取材の常套手段だと思うのだが、つまりは日経新聞のレベルが高いのか? それとも、東京都内に相当の人脈、コネクションを持っていて、こういう関連情報がすぐに手に入るのか? いずれにしても、なかなか大したものだと思う。

 <安倍政権以来続いてきた対北朝鮮強硬政策が成果を得られなかったという世論が強まっているのだ。麻生政権の支持率に大きな変動がないことを勘案すれば、日本版‘北風(政権危機の度に北朝鮮を問題視すること)’も有効期限が切れたということだ。北朝鮮問題は総選挙を目前に控えた麻生首相の外交力を計る試験舞台となる。>

 この「日本版”北風”」が面白い着想だなぁ、と思ったのだ。「北風=政権危機のたびに北朝鮮を問題視すること」という穿った見方が楽しい。

 裏返して見れば、この記者は北朝鮮の核兵器はまだ実戦用ではない、と見ているのだろう。「北朝鮮の脅威」は1993~94年の第1次核危機で日本の安全保障意識を刺激し、弾道ミサイル防衛を実現した。そして、今回の第2次核危機では、すでにオッチョコチョイの国会議員の中から「敵基地攻撃論」や「独自核武装論」がちらほら出てきている。北の脅威を利用した日本の軍備強化、と韓国の知識人が疑ってもやむを得ない面もある。

 この記者がいみじくも書いているように、韓国民は北朝鮮の武力的な脅しに不感症になっているが、日本人はそうではない。「韓国のように北朝鮮の言うがままに貢物をしなければならなくなったら大変だ。核ノドンが実現する前に何とかしなければ」というのが政治家、」有識者の本音だと思うのだが、打つ手なしなのかどうか。

 ただ、本当に「打つ手なし」となったら、日本人の庶民の間に沈潜していたナショナリズムが噴出すると思う。いつまでもクリントン米国務長官の「冷静に。日本はアメリカが守る」という空念仏を信じるほど日本人はお人よしではない。排外的ナショナリズムに火がつく前に中国が日本人の懸念を重視して、北朝鮮に厳しい手を打てるのかどうか。見るべき点はそのへんだろう。

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民主党の岩國哲人氏は日韓の核武装についてしゃべっているのだが、うまく逃げていた~6月1日中央日報ネット版

 韓国の大手新聞・中央日報日本語版は6月1日、岩國哲人氏のインタビューを<「核兵器競争、資金・技術ある日本が有利だが…」>の見出しでアップしていた。ポーズ写真が付いていたが、さすがに老けた。

 この韓国の新聞が掲載した経歴によると、岩國氏は、

 <1936(昭和11)年大阪生まれ。 東大法卒。 米モルガン・スタンレー、メリルリンチ副社長を経て、1989年から母と夫人の故郷である島根県出雲市(人口10万人)の市長として8年間在職、地方自治体改革の先駆者として知られる。 その後、衆議院議員に4選。 現在、民主党国際局長として「クリーン政治グリーン経済」を実践中。1988年に米バージニア大、1999年に中国南開大学で客員教授。 今年2学期から釜山東西大学特任教授を務める予定。>

 とあった。米国、中国、韓国といろいろなところで教えているらしい。外国人を教えるのが趣味なのか?

 中央日報記者がなぜ岩國氏にインタビューしたか、は次の前文にある。

 <先週、韓半島は二つの大きな事件で世界を驚かせた。 盧武鉉前大統領の逝去と北朝鮮の核実験だ。 ちょうど韓国を訪問中だった日本の代表的な国際派政治家、民主党の岩國哲人衆院議員(73)に会い、北朝鮮の核問題に対する日本の対応、韓日両国の経済危機対処、世界経済危機を招いた新自由主義体制の代案などについて話を聞いた。以下は一問一答。>

 盧武鉉前大統領の「自殺」と言わずに「逝去」と書いているのは、盧武鉉ファンに気を使っているのだろう。新聞記者も大変だなぁ。

< ――日本は北朝鮮の核実験をどのように見ているのか。>

< 「北朝鮮は常識が通じない国という気がする。 盧武鉉前大統領の不幸なことにあった時期に弔意を表しながら、一方で核実験をするというのは納得できない。 亡くなった方には静かに弔意を表すのが常識だ。 日本民主党内には、北朝鮮は対話の相手にならないから圧力を加えようという声が多い。 自民党でも小泉純一郎元首相は対話と圧力を使いながら対応したが、その後は圧力を加えようという意見が優勢だ。 しかし私は民主党内に韓半島問題研究会をつくり、北朝鮮の本心を把握して対応する必要があると主張した。 中国と北朝鮮の扉が完全に閉じられていない状態で日本が圧力と経済制裁を加えても、大きな効果はないと考える。 今後も日本が圧力と経済制裁ばかり強調すれば、逆効果が生じるだけだ」>

 盧武鉉を敬わなかった北朝鮮がいくら自分の都合を言っても、世界はもう許さないだろう。

 岩國氏の「朝鮮半島問題研究会」は例の和田春樹氏らの路線だろう。韓国の民主派勢力と連携して反軍事政権でやっていこう、という話だろう。結局は日本の朝鮮半島侵略を自己批判し、従軍慰安婦問題を詫び、朴正煕の悪口を言うというくらいのこと。金正日には理由のない宥和で対応し、いつもニコニコの現金払いのような笑顔で北朝鮮を何でも許す、という博愛の人々だろう。

 <――北朝鮮が核実験など挑発を続ければ日本の一部で核武装の主張が出てくると考えられる>

 <「国民がそのような安易な考えをしないようコントロールするのが政治家の役割だ。 世界が核軍備競争をすれば、資金と技術がある日本が最も有利であるはずだ。 しかし、日本は世界で核の被害を受けた唯一の国という事実を忘れてはならない。人類の悲劇を防ぐために、米国ではなく日本が率先すべきだということだ。米国のオバマ大統領は核兵器の拡散防止に熱心だ。久しぶりに浮上している核兵器使用禁止の大きな流れに対し、米国と日本が一つの声で世界の参加を呼びかけている。一部の日本の右翼が主張するように、北朝鮮の挑発に刺激されて韓国と日本までも核開発の動きを見せれば、それこそ北朝鮮に巻き込まれることになる」 >

 この言葉づかいは微妙なのだろうなぁ。岩國氏は日本語でしゃべり、通訳が韓国語にしたものがあって、それをこのホームページにアップする際に日本語にしたのだが、岩國氏の日本語の原型が生きているかどうか、である。それにしても、こんな形で「コントロール」されたくない、というのが国民の多くの考えではないか。

 <――韓国と日本の共通点は政治が経済の助けになっていないという認識が強い点だ。 経済の足かせにならない政治、経済を支える政治とはどういうものか。>

 こういういやらしい聞き方を韓国の新聞社はよく勉強している。

  <「難しい問題だ。 麻生太郎首相は自分が経済をよく知っている、経済が最優先だと話している。 韓国の李明博大統領も同じだ。韓日の両指導者はともに自分が経済専門家だと主張している。 しかし、1年以上過ぎても経済の成績表はそれほど良くない。もちろん世界的な経済混乱があったが、時間が過ぎても方向をつかめず、浪費的な要素も多いようだ。日本は金を使ってばらまくことばかりに力を注いでいる。国際会議に行けば‘日本が1兆円を寄付する’などの発言をし、海外でもお金をばらまく。理念のない予算、理念のない支出が多い。>

 民主党としてここで発言しておるのだから、徹底的に自民党の政策批判になる。

 <統計を見れば今回の経済危機を通じて最も大きな打撃を受けた国は韓国と日本だ。張本人の米国のドルよりも韓国ウォンの価値が落ちた。その原因は米国経済に対する依存度があまりにも大きいからだ。韓日両国の指導者は輸出で金を稼げば雇用や福祉にも良い影響を及ぼすと考えている。しかし、現実はそうでない。大企業は世界のあちこちに工場を建てているが、日本国内には工場を建てていない。結局、国内消費と雇用は100の金を使っても50の効果しかない政策をとっているということだ。家計を考えて景気対策を立てなければならないが、麻生首相は大企業ばかり考えて景気対策を立てているので問題だ」>

 <――大企業の景気が良くなれば庶民の生活も良くなると考えているのでは。>

 <「過去はそうだった。大企業の景気を生かせば庶民の所得が増え、ボーナスも受け、お金が回った。 同時に消費も良くなった。 しかし今はグローバル経済時代だ。 大企業は労働力が安いところに向かうため、インドネシア・ベトナム・カンボジアなど他の国の雇用事情が良くなるだけで、その効果が日本には返ってこない」>

 <――世界的な経済危機の中で政府の役割がますます大きくなっている。小さな政府と市場主義を根本とする新自由主義の没落という指摘もある。こうした中で日本では「官僚主義の復興」、「新マルクス主義の台頭」という言葉も出てきている。>

< 「最近日本では共産党入党希望者が増えているが、マルクスが再来すべきだというのは漫画的で単純な発想だ。私は資本主義の枠組みで少し改良すれば新自由主義でもない、かといって共産主義でもない良い体制を十分に作れると考えている。リレギュレーション(再規制)がその一つだ。米国では規制緩和に対する反省が芽生え、リレギュレーション(再規制)が必要だという考えが台頭し始めた。>

 <もう経営者の目線で経済を見る時代は終わった。ディレギュレーション(規制緩和)の時代は終わったということだ。大企業の目線よりも国民総生産の60%以上を占める名のない消費者が経済を支える時代になったという事実を政治家らは気づいていない。私は大きな政府に賛成する。大きいという意味は公務員の数が多いことではない。政府の役割を増やそうということだ。出雲市長時代、仕事は増えたが、公務員は増員しなかった。少ない税金でより多くの仕事をするのが私が言う大きな政府だ」>

 <――韓日中首脳の出会いをもっと活性化し、効果的にするための方法は?>

 <「多くの指導者が集まった大きな会議だからといって効果も大きいとは限らない。飛行機の隣の席に座って対話をしてもよい。大きな会議よりも小さな会議を頻繁にすることが効果的だ。公務員が会議の準備と処理で疲れてはならない。意味のある政策を考える会議が必要だ。エネルギーと金を使っても後にゴミだけ残る会議は意味がない。指導者の真の意見交換方法を実用的に変えるべきだ」>

 何か、あまりにもまともなことをしゃべっているので、つまらなかった。細かい言葉づかいでは「おかしい」と思うことが多かったが、これは明治維新の際の翻訳の能力とも関係して来るので、そう簡単には割り切れない。

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2009年6月 1日 (月)

坂元一哉氏は海賊対処法案に過大な期待を抱いているが……~産経新聞[正論]6月1日

 産経新聞6月1日朝刊【正論】の大阪大学大学院教授・坂元一哉氏<武力行使の解釈に画期的変化>は海賊対処法案の国会論戦を聞いて、今までの国会論戦と重点の置き所が明らかに変化している、というのが主なポイント。その背景には国民的コンセンサスがある、という考えだと思うが、そこまでは書いていない。現象面で見ればその通りだと思う。ただ、もう少し、歴史的に見たほうがいいのではないか、とも思うのだが。

 小見出しは≪海賊から外国船を守る≫、≪現行憲法の趣旨でも十分≫、≪集団的自衛権に重要な一歩≫だった。読んでみよう。

 <国会で審議中の海賊対処法案が成立すれば、ソマリア沖に派遣されている自衛艦は自国船だけでなく外国船も海賊の襲撃から守ることができるようになる。そのことは、武力行使に関する従来の憲法論議に画期的な変化をもたらすものと思われる。>

 <政府は過去半世紀以上にわたって、憲法は自衛のための武力(実力)行使を妨げないとの解釈をとり続けてきた。憲法9条は「外部からの武力攻撃によって国民の生命や身体が危険にさらされるような場合にこれを排除するために必要最小限度の範囲で実力を行使することまでは禁じていない」(政府答弁書、平成16年(2004年)6月18日)という解釈である。この憲法解釈は、わが国が自衛隊を保有し自衛権を行使することを可能にした点で、戦後の安全保障政策を根底から支えた解釈であり、その意義は正当に評価すべきである。>

 <ただその一方でこの解釈は、国連の集団安全保障であれ、平和維持活動(PKO)であれ、あるいは集団的自衛権に基づく同盟協力であれ、安全保障を集団的な枠組みで確保しようとする戦後世界の現実に適応するには、どう見ても不十分な解釈であった。というのもこの解釈には、自国民のための実力行使はできるが他国民のためのそれはできない、との含みがあるからである。>

 例の集団的自衛権問題。

 <そういう解釈では当然ながら、集団的な安全保障の枠組みにおけるわが国の活動は厳しく制限されざるを得ない。PKOに一緒に参加している他国部隊が攻撃を受けても自衛隊は救援に行けない、いわゆる駆けつけ警護はできないというのはその一例である。>

 <なぜそういう解釈になるのか。政府は次のように説明する。憲法は国際関係におけるわが国の実力行使を一切禁じているようにも見えるが、その前文に「平和のうちに生存する権利」(平和的生存権)をうたい、第13条に「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」を盛り込んでいる。だから、自国民が武力攻撃を受けた場合には必要最小限度の実力行使によって、それを排除することができる。これに対して、他国民が同じような危険にさらされた場合は「憲法の中に我が国として実力を行使することが許されるとする根拠を見いだし難」い(前出答弁書)。したがって自国民と同じようにはできない。>

 政府解釈だ。

 <私にはどうも納得し難い説明である。どうして憲法の中に他国民のための実力行使の根拠を「見いだし難」いのだろうか。>

 まあ、普通の疑問だと思う。

 <まず政府があげる平和的生存権は日本国民だけの権利ではない。憲法の前文にはそれは「全世界の国民がひとしく」持つものだと明記してある。またその前文は、いずれの国も「自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」と警告している。さらには、平和の維持などで努力している国際社会において「名誉ある地位を占めたいと思ふ」との決意も述べているのである。>

 <日本が非武装国家で、攻撃を受けても武力による反撃はしない(できない)というのなら、他国民を守れないのは当然だろう。だがそうではなく、武装して自国民は守るのである。それで他国民はだめだというのなら、むしろその根拠の方を憲法の文言で示すべきだろう。そちらの方こそ「見いだし難」いのではなかろうか。>

 そして、今回の事態に関する感想に入る。

 <そう考え直したのかどうかは知らない。しかしともかく政府は、外国船をも守ることができる海賊対処法案を国会に提出した。国際社会の常識から言えば当然のことだが、その当然のことを難しくしてきたのが従来の憲法解釈である。今回はそこから重要な一歩を踏み出す決断がなされたと見てよいのだろう。>

 私もそう思う。

 <海賊対処という特殊なケースとは言え、他国民の生命と身体を守るための実力行使も憲法上可能だとの前提で法案がつくられたからである。>

 <もし海賊から他国民を守ることが可能となれば、政府が従来できないとしてきた他の行為も、なぜできないのか理由の見直しが必要になる。駆けつけ警護はもちろん、集団的自衛権の行使もそう。どちらも憲法上の実力行使は自国民を守る場合に限られるのでできない、としてきた行為である。>

 <むろん、できないとする理由がなくなっても、それですぐに駆けつけ警護や集団的自衛権の行使ができるわけではない。それらの行為を実際に可能にするには、それぞれ個別の法律がいる。実際の実力行使のありようは、その法律の中で決められるだろう。海賊対処のための実力行使とは相当異なるから、その点での議論はいる。>

 <しかしそうだとしても、実力行使は自衛のための必要最小限度に限るとしてきた政府の従来の憲法解釈に変化が生じたことは確かである。さらに前進し、憲法と集団的な安全保障の必要を調和させるという積年の課題の解決に努めてほしい。>

 つまり、希望の芽を見いだした、ということだろう。

 ただ、坂元氏はあえて書かなかったが、今回は海賊取り締まりという警察活動である。国際的活動という自衛隊法に新たに加えられた主務は軍事活動だから、別個に考える、ということだ。

 そこの道は近くに見えて、実は相当に遠いのではないか、とも思うのだが。

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キッシンジャーの「日韓核武装」発言は日本核武装阻止の決意示唆か~読売新聞6月1日夕刊+共同通信配信

 読売新聞6月1日夕刊2面<北の核 中国が無策なら…「日韓は核武装する」/キッシンジャー元国務長官指摘>が面白かった。ワシントン支局の小川聡特派員の署名記事だ。

 <キッシンジャー元米国務長官は31日に放映されたCNNの番組で、北朝鮮が核実験を行った現在、「もし中国が何もしなければ、中国は、韓国と日本が核兵器を持ち、さらに核武装した狂気の支配体制と国境を接するアジアでやっていくことになろう」と述べ、中国が北朝鮮に圧力をかける必要性を強調した。>

 なるほど、言っていることは蓋然性が大きいと思う。さすが戦略家キッシンジャーの頭脳は衰えていないようだ。

 <そのうえで「必要なことは、米中が日本やロシア、韓国と内容の濃い協議をすることだ」との認識を示した。>

 北朝鮮ではなく、日本と韓国が問題だ、という焦点の当て方も今後の国際論議の行方を見た時、正しいのではないか?

 <米国の専門家の中には、北朝鮮が核兵器を保有すれば、日本や韓国が核武装する可能性があるとする見方が少なくない。米政府が北朝鮮の核実験後、日本に対して「核の傘」を含めた防衛義務を果たすと重ねて強調している背景には、こうした見方があるとされる。>

 一般論として解説しているが、クリントン国務長官のこの発言を伝えた日本の新聞は少なかった。

 朝日新聞5月28日夕刊12面トップ<日韓防衛「米国の義務」/国務長官、北朝鮮を牽制>などである。この記事はワシントン支局の村山祐介特派員の署名記事だ。

 <クリントン米国務長官は27日、大量破壊兵器の拡散防止構想(PSI)に全面参加を表明した韓国への軍事攻撃に言及した北朝鮮に対し「米国は常に韓国と日本を防衛する責務と意思がある。同盟の義務の一部であり、我々はそれを非常に重んじている」と述べ、北朝鮮を強く牽制した。>

 北朝鮮を牽制などという見出しを取るから本質が分からなくなる。クリントン氏は必死に日韓に「核の傘はあるのよ!」と叫んでいるのだ。「大丈夫なのよ!」と。

 <国務省での記者会見で述べた。クリントン氏は北朝鮮による2度目の地下核実験について「国連安全保障理事会の決議を破ることを選び、国際社会を無視し、周辺国に挑発的で攻撃的な態度を続けている」と非難した。>

 <そのうえで、前回の核実験後の2006年に採択した制裁決議の強化を目指す考えを強調。「中国とロシアを含む国際社会が結束し、強い決議に向かっていることに満足している」と自信を見せた。一方で、「北朝鮮の6者協議への復帰を願っており、非核化に向けた作業を再開することもできる」と、対話のテーブルに戻るよう呼びかけた。>

 クリントン国務長官の本質は一貫してこれだ。対話路線。言葉を替えれば「宥和路線」である。

 <また、ホワイトハウスのギブズ大統領報道官は同日の記者会見で「北朝鮮は武力による脅しで新たな関心を引こうとしているが、成功しないだろう」と述べた。>

 読売の小川聡特派員は、このクリントン発言のことを言っているのだろう。

 いろいろな意味合いがある、と思う。

 米国で2正面の戦争は不可能だ、という物理的制約があるのかもしれない。だが、それ以上に考えられるのは、クリントン氏が中国の思いを代弁しているのではないか、という疑いだ。中国は中朝国境で紛争が発生することを望んでいない。旧満州地区に北朝鮮難民が大量に雪崩れ込み、収拾がつかなくなることを恐れている。また、北朝鮮の金王朝が崩壊し、在韓米軍が予定された作戦計画を実施した場合、平壌まで占領するケースは十分あり得る。米軍が素早く動かないと核兵器を盗まれる恐れがあるからだ。

 こういう様々なケースをシミュレーションした結果、クリントン政策が出てきているのか?

 それとも、夫のクリントン政権時代からの宥和政策の単なる延長線上の政策なのか?

 見極めは難しいが、そいうい渾沌の中でのキッシンジャー発言は重いと思う。

 日本と韓国に米国の「核の傘」を何度も保証することで、核武装を思い止まらせる、という狙いであることは明らかだ。

 日韓が核武装をしようとすれば、米国はロシア、中国とタッグを組んで国際会議で日韓を思い止まらせようとする。つまり、脅しもかけてくるだろう。北朝鮮とは戦争せず、核武装を黙認して、日本には核武装させない。究極の米戦略なのか? これからが日本の正念場であることは間違いない。

 毎日新聞のウェブ版でもキッシンジャー発言を見つけた。共同通信の配信をそのまま使っていた。ウェブ版の見出しは<元米国務長官/日韓の「核武装」警告/中国に関与要求>だった。

 共同の記事も見ておく。

 <キッシンジャー元米国務長官は5月31日放映のCNNテレビで、北朝鮮の核開発停止に向けた取り組みについて「中国が何もしなければ、韓国と日本は核兵器を保有する」と警告。東アジアに核軍拡競争が起きる可能性に言及し、中国が米国と協調して北朝鮮への圧力を強める必要性を訴えた。>

 <キッシンジャー氏は、中国の立場について「北朝鮮への圧力が効かなければ無力と見なされる」と述べるとともに、逆に圧力が効けば北朝鮮が政治的に混乱し難民が国境に押し掛けるだろうと説明。その上で、中国に切迫した状況を認識するよう求めた。>

 <一方で北朝鮮については、核計画こそが国家を束ねる力になっていると指摘し、実際に核兵器放棄に追い込まれれば「(金正日)政権そのものが崩壊する可能性がある」と対応の難しさを強調。核武装を正当化させないため、米国は軍事攻撃しないとの確証を与えるべきだとの考えも示した。>

 <米国の一部で浮上している、北朝鮮に親米政権を発足させ中国の影響力を封じ込めるとの考えについては「全く実行不可能」と退けた。>

 以上である。読売新聞の記事に比べ、全体的に悲観的なトーンで書かれているが、日本との絡みでは読売新聞の方が分かりやすい。

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日米韓国防相会議の詳報と北朝鮮の西海厳戒問題~朝鮮日報6月1日ネットから

 朝鮮日報日本語版(ネット)は6月1日朝、北朝鮮に関する2本の記事を掲載した。いずれも韓国政府の対応を解説したものだが、何しろ詳しいので役に立つ。読んでみよう。

 まずは<北朝鮮の危機指数上昇、西海に航行禁止令>である。

 <北朝鮮が7月末までの期間、西海(黄海)沿岸の中部、北部海域に広範囲に及ぶ航行禁止海域を設けたことが5月31日、分かった。また、北朝鮮軍による通信回数が通常の半分以下に減少している。航行禁止海域の設定と通信回数急減はこの海域での武力衝突を予告する指標だ。6月の韓半島(朝鮮半島)は危機指数が沸点に向かって急上昇する見通しだ。>

 という前文。通信回数の急減が武力衝突予告の指標とあるが、警戒水準を上げた、ということだろう。

 <「テポドン2号」と推定される北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)も最近、平壌市山陰洞の兵器研究所から特別貨物列車3両のうち1両に乗せられて移動中だ。今回のミサイルは今年4月に長距離ミサイルに転用可能なロケットが発射された咸鏡北道花台郡舞水端里ではなく、平安北道鉄山郡東倉里の新たな長距離ミサイル実験場に向かっているもようだ。>

 このように空から見えるものについては分かるのだが、見えない部分が怖いのだろう。

 <北朝鮮は8年前に東倉里でミサイル実験場の建設を開始し、昨年9月までに工事が80%進行していた。韓国政府の関係者は「北朝鮮は1-2日に開かれる韓国・ASEAN(東南アジア諸国連合)特別首脳会議を狙う形で西海で挑発行為を、16日の韓米首脳会談に合わせてICBMの発射を強行する懸念がある」と指摘した。>

 北朝鮮の脅しはいつも政治的、理由がある、ということだろう。

 <韓国の情報当局によると、北朝鮮は最近、黄海道や平安道など西海沿岸の中部、北部に広範囲の航行禁止海域を設定した。これを受け、日本政府は7月末まで西海を通る自国船舶に特に注意するよう警戒を呼び掛けている。>

 日本政府の措置までが補強材料として使われている。日本の新聞に載ったっけ?

 <西海では北朝鮮軍の通信回数が急速に減少しているという。韓国政府の消息筋は「韓国側の盗聴を意識したように、通信時にも特に必要なことだけを話している」と指摘した。通信回数の急減は一般に交戦が迫っている兆候として受け取られる。>

 怖いね。

 <北朝鮮は東海(日本海)、西海に、軍事演習や原油探査などを理由として、航行禁止海域を年間120回程度設定している。しかし、今回のように長期間、広範囲にわたる海域を航行禁止海域に指定したことはほとんどないため、挑発行為の兆候ではないかと分析されている。>

 何か真実性が感じられる記事だ。

 以下は上下の下のほうだ。

 <延坪島、ペンニョン島など西海五島に近い北方限界線(NLL)付近の海上では、違法操業していた中国漁船の数が5月28日以降、約280隻から約120隻へと急速に減少した。これも北朝鮮の措置と関係があるとみられる。NLL付近を管轄する北朝鮮軍第4軍団長を務める金格植大将(69)は元総参謀長で「強硬派」として知られる。>

 中国漁船の数が減ったのか。

 <また、平安北道鉄山郡東倉里の新ミサイル実験場に移動していることが判明した弾道ミサイルに関連し、韓国政府の当局者は「発射台への設置など準備期間を考えると、発射時期は早くとも2週間後の今月中旬になる」と述べた。テポドン2号の最大射程距離は6700㌔と推定され、同距離が5500㌔を超えればICBMに分類される。>

 外国の記者はこの辺の軍事知識を常識のように使いこなしている。日本と違うところだ。

 <問題は、挑発の警告が実際の行動につながる可能性が高い点だ。西海での挑発は韓国に対するカード、ICBMの発射は米国に対するカードと読み取れる。最近、北朝鮮は事前の予告通りに挑発を強行しかねないムードだ。北朝鮮の立場を報じる在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の機関紙・朝鮮新報は5月30日、「(北朝鮮に対する)国際的制裁は北朝鮮が停戦協定締結以来数十年にわたり自制してきた行動、措置を検討せざるを得ない状況をつくり出している」と伝え、武力挑発の可能性を示唆した。>

 朝鮮総連の機関紙が北朝鮮の公式見解を述べる、というのもおかしなものだが、亡命フランス政権のドゴールがイギリスで声明を出したようなものか。ちょっと違うのは、日本の金正日支部が出していること。金正日は日本を少しでも支配したいのだろうか?

 <北朝鮮は既に5月27日の板門店代表部声明を通じ「西海五島海域で行動する韓米の軍艦と一般船舶の安全航海を保障できない」と表明している。西海で過去に起きた第1次西海交戦(1999年)、第2次西海交戦(2002年)も6月に起きている。>

 6月、ということに何か問題はあるのだろうか?

 <韓国の安全保障当局者は「北朝鮮は挑発を行う際、絶妙のタイミングで世界の注目を引こうとする。韓国・ASEAN特別首脳会議も北朝鮮には挑発の良い機会になる」と指摘した。>

 全斗煥を暗殺しようとして訪問先のビルマかどこかで爆弾事件引き起こしたこと思い出した。あれも全斗煥・韓国大統領が閣僚をたくさん引き連れてASEANとの会議に出ようとして狙われたのだった。あの事件も北朝鮮の犯行なのに、金正日は認めていないのだ。

 <韓国軍当局は現在、1-2日に北朝鮮が挑発行為に出る可能性に注目しており、挑発行為があれば、直ちに現場で措置を取るように各部隊に指示している。京畿大の南柱洪教授(政治学)は「6日の顕忠日(韓国の戦没者追悼日)前後に北朝鮮による西海での挑発が予想される」との見方を示した。さらに15日は北朝鮮が履行を強調する南北共同宣言(6・15共同宣言)から9周年に当たる。>

 記念日のオンパレードか。

 <北朝鮮のICBM発射準備と関連し、情報当局は早ければ2週間後に発射があり得ると判断している。2週間後には韓米首脳会談(16日)が開かれるほか、北朝鮮の2回目の核実験に伴う国連安全保障理事会の強硬な対北朝鮮制裁の大筋の内容も決まる見通しだ。北朝鮮はどんな形であれ、対抗してくる可能性が高いとみられている。>

 なるほど、これも説得力十分だ。

◆日米韓3カ国国防相会議

 朝鮮日報日本語版ネットに6月1日アップされたもう一つの記事は<韓米日国防相会合、北朝鮮への断固対応で一致>だった。読んでみよう。

 <韓米日は5月30日、シンガポールで初の3カ国国防相会合を開き、核実験やミサイル発射など北朝鮮の挑発に対し、断固とした対応で臨み、挑発を抑制するための北朝鮮への補償は絶対に行わない点を明確にした。韓国の李相憙国防部長官はシンガポールでの第8回アジア安全保障会議に合わせ、ゲーツ米国防長官、日本の浜田靖一防衛相との個別会談と三者会談に臨んだ。李長官とゲーツ長官による会談では、北朝鮮の核実験と長距離ミサイルに転用可能なロケット発射などが核兵器とその運搬手段を確保する意図によるものと受け止め、北朝鮮が核やミサイルを開発、保有することは核拡散防止条約(NPT)と国連安保理決議、6カ国協議の合意事項に明らかに違反していると批判した。双方はまた、2012年4月17日に戦時作戦統制権を在韓米軍から韓国軍に予定通りに移管することを再確認。その上で、北朝鮮の軍事的脅威を注視しつつ、韓米安保協議会(SCM)、軍事委員会(MCM)などで作戦統制権の移管作業の進展状況を評価、点検し、実際に反映させていくことでも合意した。>

 この事実は日本の新聞も報じていた。

 <作戦統制権の移管に関する評価要素に北朝鮮の軍事的脅威が含まれたのは初めてだ。今回の合意は韓半島(朝鮮半島)に重大な安全保障危機が発生した場合、作戦統制権の移管延期が検討される余地を残した格好となった。韓国国防部の関係者は「米国側は今のところ『計画通りに移管する』との確固たる考えを示しており、2012年の移管を強く望んでいる状況だ」と説明した。>

 移管問題はその時になるか直前になってひと揉めあるだろう。

 <ゲーツ長官と浜田防衛相は、韓国が大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)への全面参加を宣言したことに歓迎の意を表明した。>

 これは頑張った。

 <一方、ゲーツ長官は今回の安保会議で、「米国は北朝鮮を核兵器保有国とは認めず、北朝鮮がアジアや米国を標的とする破壊能力を増強することを座視しない」と強く警告した。同長官は「北朝鮮が他国やテロリスト集団に核兵器や(核関連)物質を輸出することは、米国に対する重大な脅威と見なされる。米国は(核兵器製造)技術が誤った人の手に渡れば、北朝鮮に対する責任を十分に問う構えだ」と述べた。また、オバマ政権が北朝鮮の好戦的な態度や発言に対し忍耐の限界を感じているとも強調した。>

 <ゲーツ長官は「オバマ大統領は(争いではなく握手するため)こぶしを開こうとする強権政権に(対話の)門戸を開いている」と述べ、北朝鮮が米国が与えた対話の機会を無視していることを批判した。その上で、「オバマ大統領は今も希望を持っているが、純真な面ばかりではない。米国と同盟国は対話の門戸を開きつつ、圧力や挑発には屈服しない」と述べ、北朝鮮の立場に変化がない限り、米国の北朝鮮に対する強硬対応は続くことを示唆した。>

 まだ対話路線を口にしている。ここまできたのに。

 <このようなゲーツ長官の発言について、米ウォールストリート・ジャーナルは「北朝鮮による2回目の核実験以降、ワシントンから出た最も厳重な警告だ」と報じた。>

 米紙はオバマ政権の北朝鮮政策を「腰抜け」などと批判しているそうだ。この批判がもっと燃え上がり、武力鎮圧ムードが出てくると面白いのだが、北朝鮮外交路線を仕切っているのがクリントン国務長官だったら、そうはならないだろう。結局、オバマの米国にはあまり期待できないのだ。

 韓国でもそれは十分に理解しているようだ。日本とは逆にホッとしているのだろう。

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