北朝鮮軍30万人が脱北者を監視・狙撃。中国に脱北者強制送還をやめさせろ、と姜哲煥記者~朝鮮日報7月11日、産経新聞7月12日
朝鮮日報日本語版7月11日のコラム<金総書記が本当に恐れていること>は政治部の姜哲煥記者の記事だ。北朝鮮政府が韓流ドラマを見た北朝鮮の国民を処刑している、と書いてある。「韓流ドラマとの戦争」というキャッチフレーズは韓国の読者にとってはすんなり頭に入るのだろうか? 何か日本人には「考えオチ」のようでもあるのだが。
知らなかったが、姜哲煥記者は有名な脱北者で北朝鮮の内情にものすごく詳しい人だそうだ。
コラムを読もう。
<北朝鮮の核実験とミサイル発射以降、国連レベルでの対北朝鮮制裁が本格化している。北朝鮮の船舶「カンナム号」は米国の追跡により結局北朝鮮に引き返し、マレーシアにある北朝鮮の海外口座に対する封鎖措置も可視化している。だが、こうした対外的な圧力が相次いでいるのにもかかわらず、金正日政権の挑発は続いている。それどころか、彼らは国際社会の制裁に対し「そんな圧力にはびくともしない」とばかにした態度を貫いている。>
馬鹿にしているのかどうか、表面上はそう装っているのは確かだ。
<北朝鮮の言う通り、今の米国や国連の対北制裁は、金正日政権に大した圧力にはなっていない。米国は2005年、マカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)に対する金融制裁で北朝鮮の息の根を止めにかかったが、2007年に北朝鮮の策略にはまり、何も解決しないまま先に制裁を解除するに至った。すでに北朝鮮は金融制裁に対する備えを済ませている状態で、効果のない金融制裁では金総書記に圧力を加えることはできない。それに、海上封鎖により北朝鮮の船舶を何隻調べたとしても、北朝鮮がそれによって圧力を受けることもない。>
そうなのだ。今回の船舶検査は効き目はないのだ。
<「孫子の兵法」に「知彼知己」という言葉がある。「彼(敵)を知り、己を知れば百戦あやうからず」という意味だ。北朝鮮はサイバーテロ部隊まで結成し、敵の内部を撹乱しているのにもかかわらず、韓国は金総書記に圧力を加えられる的確な「アキレスけん」を見出すこともできない。北朝鮮に対し国際社会が加えられる圧力は、わたしたちが考えているような、とてつもなく大きなものではない。今、金総書記が最も恐れているのは、外部(韓米日)の敵ではなく、内部(国内)の敵だ。内部の敵対勢力が大きくなり、人民が変化することを一番恐れている。>
そうなんだろうなぁ。国内の民衆が本当のことを知ったら殺されると思っているのだろうなぁ。
<1990年代中盤以降に相次いだ餓死と脱北による体制崩壊の危機を乗り越えた北朝鮮は、中朝国境を第2戦線と規定し、朝鮮人民軍30万人を配置した。同盟国・中国との国境ということで警戒所だけが置かれていた中朝国境には、鉄条網や人を捕まえるための落とし穴までが設けられた。南北軍事境界線はこの数年間、銃声一つ鳴らないほど静かだが、中朝国境では毎日銃声が鳴り響いている。脱北者を撃ち殺し、腐敗した軍人たちを処罰する朝鮮人民軍保衛司令部の検閲が集中している。「脱北」は生活苦にあえぐ住民たちが選ぶ最後の手段だが、これを阻止することは、体制の維持につながる。>
中朝国境は大変なことになっているのか。
<そして、北朝鮮住民に対し韓流ドラマとの戦争を布告、「南朝鮮」の映像物を見た人々を処罰している。中国の携帯電話を使った外部との接触を絶つため、国境地域には電波探知機が設置された。ラジオを含め外部情報との接触手段を所有していたということで摘発されれば、今後は政治犯と見なされるという。北朝鮮の「アキレスけん」は、脱北と情報の漏えいだ。今や、米国・韓国・日本など国際社会の対北制裁は、実効性のない金融制裁や船舶検査でなく、脱北者の強制送還阻止に焦点を合わせるべきだ。現在、韓国に入国している脱北者の数は毎月300人を上回っている。だが、その一方で、北朝鮮に強制送還される脱北者も毎月数千人に達する。>
そういうことなのか。
<中国が国際法を破り、脱北者を「違法越境者」(国内法)とひとまとめにして北に強制送還するのは非人道的な措置だ。国際社会は当然、これに関心を払うべきだが、こうした重要な問題は北朝鮮に対し圧力を加える手段の中から除外されている。多くの人々は、始めから「中国に脱北者の強制送還中止を訴えても聞き入れられないだろう」と決めつけているが、それはわたしたちの考えに過ぎない。>
中国に真剣に働きかけよ、と。
<これまでの政権はいずれも脱北者送還問題について中国側に強く要求してこなかった。中国政府による脱北者の強制送還阻止に、国際社会が力を合わせ、金大中・盧武鉉両政権が金総書記の要求で放棄した国防部の北朝鮮に対する激しい心理戦を再開できれば、それこそ最も効果的な北への圧力政策になるだろう。>
金大中、盧武鉉両政権の悪がボロボロ出てくる。ひどい政権だったことに韓国民が早く気付けばいいのだが。李明博政権の対北強硬策を日本の政権が全面バックアップし、中国に対して日韓の総合力で政策転換を迫らねばならない。米国も巻き込むことは当然だ。この姜哲煥記者のコラムは忘れていた原点を思いださえせてくれるいい記事だった。
(追記 7月12日)
◆産経新聞の記事は分かりやすかった
産経新聞7月12日朝刊1面に<中朝国境で毎日銃声/軍30万人監視 脱北者狙撃/民主化リーダー証言/「食糧難」深刻化>という久保田るり子記者の署名記事が掲載されていた。7月11日の朝鮮日報と同じ内容だが、姜哲煥記者について書いてあったので、これもコピペしておこう。
<韓国の北朝鮮民主化運動の若手リーダー、姜哲煥氏(40)がこのほど来日し、「最近は、中朝国境で毎日のように(北朝鮮側から)銃声が聞こえる」との中朝国境情報を明らかにした。銃声について「朝鮮人民軍の脱北者狙撃や、わいろで越境を見逃す軍人らの公開処刑だ」と証言。姜氏は「金正日(総書記)が恐れているのは北朝鮮住民の大量逃亡による体制の瓦解だ。日米韓は中国に国際法違反の脱北者を強制送還をやめさせるべきだ」と主張した。>
という前文を読むと、姜哲煥氏が来日して集会で証言しているようだ。
<姜氏は北朝鮮生まれで10年間にわたり政治犯収容所(耀徳)に収監された経験のある脱北者(1992年脱北)だ。現在は北朝鮮民主化運動の最大グループ「北朝鮮民主化委員会」(黄長燁委員長)の副委員長を務め、有力紙「朝鮮日報」の専門記者として独自ニュースを報道することでも知られる。北内部の非正規ルート情報を収集している姜氏は、産経新聞に「いま北内部の経済・食糧難はひどく悪化しており、住民は“このまま餓死するか、逃げるか”の二者択一に追いつめられている。朝鮮人民軍は30万人を国境に張り付けて脱北者を狙撃している。賄賂をもらって脱北を見逃す軍人や民間人が公開処刑されている。強制送還がなければ潜在脱北希望者の100万人が北朝鮮から出てくるだろう」と述べた。銃声が聞こえる地域は北朝鮮北東部、咸鏡北道北部で、昨年末から銃声の頻度が上がっているという。>
内容は同じだ。姜哲煥記者は記事に書いたことと同じことをいろいろな集会でしゃべっているのだろう。
<最近、韓国入りする脱北者は毎月約300人。「韓国は李明博政権になって脱北者を積極的に受け入れるようになった」という。姜氏によると、中国は国境地帯に約600人収容の脱北者収容施設を数カ所に設営。強制送還の人数を姜氏は「毎月数千人」と推定した。>
毎月数千人が強制送還されて、その人たちは殺されるか、それに近い扱いをうけるのだろう。
<中国による強制送還の人数は公式には把握されていない。中国は(政治的意見を理由に迫害を受けるおそれのあるものを難民として保護対象とする)国連の難民条約加盟国だが、中朝2国間合意を優先して脱北者を「不法越境者」と扱い、送還してきた。強制送還で軍や秘密警察の拷問を受けた脱北者証言は後を絶たない。「北朝鮮自身が言うように金融制裁やPSI(大量破壊兵器拡散防止構想)や船舶検査ではビクともしない。金正日が一番恐れているのは住民が逃げ出すことだ。日米韓は中国の強制送還をやめさせるべきだ」と姜氏は強調した。>
国連難民条約よりも2国間取り決めが優先する、というのもおかしい。日本が昔、国際連盟から抜けたのは、国際法違反を言われたからだった。満州国との2国間関係を優先できれば、脱退する必要はなかった。
<北内部では軍部隊の食糧難が深刻で「軍が穀倉地帯などに1個師団が移住して住民から食糧を奪っている。昨年の収穫前からだ。軍という北朝鮮最大の権力層と住民の生き残りを掛けた生存戦争が始まっている」という。>
軍が北朝鮮最大の権力集団になっている。朝鮮労働党というイデオロギー集団が文民統制を敷いていた金日成主席時代と違い、金正日総書記時代は軍を優先する「先軍政治」、つまり、国会の最高権力が労働党から人民解放軍に移行した、ということだ。
<1995年から数年間の飢餓・食糧難の際は軍や権力側に一定程度の物資が回っていた。1995~97年の飢餓は約300万人の餓死者を出した。特に犠牲者が多かったのは山間部の下層階級や自力で食糧調達のできなかった「弱い層」だった。だが、2006年のミサイル発射・核実験以降の経済制裁を起因とする経済難に今年4月の国連安保理決議以降の経済制裁が加わった現在、その影響はじわじわと拡大、最近は「権力層への物資配給が持続できなくなっている」という。>
最貧層は死に絶えて、今度は権力層にまで食糧が渡らないのか。ミサイルなんか作っているからだ。
<姜氏は一般住民が食糧を強奪する軍に「戦う姿勢をみせている」と述べ、「住民は権力層に信頼を失い憎しみを持っている」と北内部事情は緊迫している、と話した。>
では革命が起きるか、といえば、そこまでは行かないのだろう。
<ただ姜氏は日本メディアの3男、金正雲氏世襲報道には「驚いている」と述べて疑問符を付けた。北内部情報で今年3月までは「後継問題」は全くなかったという。4月以降に後継者話が伝えられるようになり金正雲情報も増えた、脱北者たちに情報源を問うと『うわさだ。人から聞いた』という伝聞で確認できないという。金正雲氏に関する文献(朝鮮労働党発行の正式文書)で、現在までに確認されたものはない。北朝鮮当局から流出した金正雲氏の写真もない。このため姜氏は金正雲氏世襲説は「国家安全保衛部(秘密警察)が北朝鮮の世襲後継に関し国内、国際的な反応をテストしている可能性がある」と指摘、金正日総書記が健康悪化で後継体制整備を急いでいるのは確かだが「推定できる根拠はない」と述べた。>
そういう段階なのかもしれない。何しろ、すい臓がんの末期ではないか、と見られる金正日総書記の動画を配信するところを見ると、北朝鮮ももう権力移譲を大前提にせざるを得ないところまで追い詰められていることは事実だと思う。ただ、世襲権力移譲を人民が納得するのかどうか、権力層をまとめることが出来るのか、日本には情報はない。
<姜氏は7月上旬に来日、各地で北朝鮮情報を講演した。韓国入りした脱北者は現在1万8000人で急増中だが、中朝国境の脱北者問題は東欧革命のベルリンの壁崩壊になる可能性を指摘、国際社会の注視を呼びかけた。>
ベルリンの壁を想い起こすのか。そうなればいいが、中国が最終的にどう動くのか、米国がナン氏の言うように最高レベルで米中合意をして、中国のリスクを周辺国、米国で分散するという提案をするのかどうか。その辺がポイントかもしれない。
<姜哲煥氏(カン・チョルファン)氏は北朝鮮・平壌出身、祖父、父は在日韓国・朝鮮人。帰国運動で家族で北朝鮮に渡った。姜氏が9歳のとき一家が政治犯収容所に連行された。10年間後に運良く釈放されて中国経由で1992年、韓国入り。2005年、収容所体験を書いた著書を読んだ米ブッシュ米大統領がホワイトハウスに招待、同大統領と面談した。>
ブッシュとも会っているのか。久保田記者の記事を読んで、朝鮮日報の姜哲煥帰社の記事がより分かるようになった。
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