鳩山民主党政権の統治機構原案は粗削りだが、思想は分かる~7月11日朝日新聞、12日読売新聞朝刊
読売新聞7月12日朝刊1面3段<首相直属「国家戦略局」/民主政権構想/縦割り打破へ「閣僚委」>で民主党政権ができた際の政府与党の権力機構の素案を書いていた。
<民主党の政権獲得後の政府の機構改革案が11日、明らかになった。国家の将来構想や予算の骨格を策定する首相直属の「国家戦略局」や少人数の閣僚による「閣僚委員会」を設け、政治主導の強化を目指す内容だ。鳩山代表がまとめたもので次期衆院選の政権公約(マニフェスト)に盛り込む方針だ。>
という前文。7月10日午後5時から日本記者クラブで行われた記者会見で鳩山由紀夫代表がざっくりした形で明らかにした案を事務局などで補強して記事にしたものだ。
<国家戦略局は首相官邸に置き、各省庁に加えて民間からもスタッフを登用する。外交を含めた国家戦略を策定するほか、財務省が行う予算編成の前段階として国家戦略に沿った予算の骨格をまとめる。機能が重複する経済財政諮問会議は廃止する。>
橋本龍太郎政権が省庁再編の際に新設し、小泉純一郎首相時代に大蔵省(財務省)支配から脱却する手段としてフル活用した経済財政諮問会議を廃止し、その代わりに国家戦略局を作る、という案だ。
<一方、閣僚委員会は、各省の縦割りによる弊害を打破するため、政策ごとに関係閣僚が少人数で議論する仕組みで、英国がモデルとなっている。現在の次官会議は廃止はしないが、「閣議の事前調整としての会議は行わない」とし、機能を見直す考えだ。>
菅直人氏をトップとする英国視察団が「こんなのいいなぁ」と言ったとか、事務次官会議を廃止しない、というのが最初から敗北主義に見えるのだが。
<行政全般を見直し、ムダや不正を洗い出す「行政刷新会議」も創設する。すべての予算や制度を精査し、各省庁に是正を求める役割を担う。>
これなんか、国家戦略局とどう役割分担するのか、実際に走り始めたらイシューがほとんど重なるから権限争いとかでやりにくいだろうなぁ。
<このほか、与党が政策決定の過程に大きく関与する現在の仕組みを改める方針だ。与党の政務調査会を廃止する一方、閣僚、副大臣、政務官の「政務三役」のほか、大臣補佐官として国会議員100人余りを政府内に配置する。>
民主党の国会議員はほとんどどこかの省庁で役人になるのか?
<各省では政務三役が政策立案・決定にあたることとし、政策は国会議員が主導して内閣で一元的に決めることを目指す。>
そう言っているのだが、どうもイメージがわかない。今までの日本の役所は局長になると一丁上がりで、実際に仕事をするのは課長だ。それをどうするのか? 課長がやる気をなくしたら、日本の役所は動かないのではないか。政策を作る、というが、行政の機微を知らずに政策を作れるのか? 様々な疑問が湧いてくる。
◆朝日新聞7月11日の記事は1面トップだった
朝日新聞は7月11日朝刊1面トップで鳩山会見を扱った。見出しは<官邸強化へ「国家戦略局」/無駄削る「行政刷新会議」/鳩山民主が政権構想>。都議選前に民主党を応援して景気づけしようという狙いがみえみえ過ぎて少ししらけるが、読んでみよう。
<民主党の鳩山代表がまとめた、政権をとった場合の統治機構改革を示した「政権構想」が10日、明らかになった。政治主導の政策決定を行うために「閣僚委員会」を設け、各大臣の連携を強める。また予算の骨格を決める首相直属の「国家戦略局」や、行政全般を見直す「行政刷新会議」を新たにつくる。総選挙のマニフェスト(政権公約)にも盛り込み、自公政権との違いをアピールする考えだ。ただ、多くは法律の改正が必要となるため、実現の時期ははっきりしない。>
こっちの方が現実的に書いている。法律改正が必要である、という点だ。
<構想では政治主導の実現や政府・与党から内閣への政策決定一元化といった原則を提示。具体策では、官僚から主導権を奪う試みを盛った。>
これは統治機構改革の狙いだ。鳩山代表は10日の記者会見では、政権運営を行う際の三つの原則として、①官僚丸投げの政治から政権党が責任を持つ政治への変化(脱官僚依存)②政府と与党を使い分ける二元体制から内閣の下での一元体制へ③各省の縦割り、省益政治から官邸主導の国益を追求する政治への変化――をあげていた。
<各省の縦割り排除のため「国家戦略局」を首相官邸に新設。「官民の優秀な人材を集結し、国家ビジョンや政治主導で予算の骨格などを策定する」とし、予算編成機能を財務省から官邸に集中する。閣議が官僚のおぜん立てに沿って形式的に案件に署名する場となっているため、各大臣が活発に意見を交わせる「閣僚委員会」を活用し、「政治家自ら困難な課題を調整する」とした。また、閣議の案件を決める事務次官会議についても「閣議の事前調整会議としての事務次官会議は行わない」と明記。事務次官会議が閣議に対して影響を及ぼさないようにする姿勢を鮮明にした。さらに「行政刷新会議」を置き、すべての予算や制度を精査して無駄や不正を排除する。政府に大臣、副大臣、政務官(政務三役)、大臣補佐官ら国会議員100人を送り込み、各省では「政務三役」が政策立案・決定にあたる。>
これは読売新聞と同じ内容。というか、朝日新聞の記事の方が丸一日早く載っているのだが。
<鳩山氏は10日、日本記者クラブでの会見で、政治主導で取り組む課題として年金記録問題の解決を挙げ、「2年間でやり遂げるという目標を立てて行動していきたい」と表明。総選挙後の円滑な政権移行のため、危機管理のための「与野党協議会」設置を自民、公明両党に呼びかける考えを明らかにした。>
と、以上が全文だ。まだまだ具体的な部分は不明だ。
鳩山由紀夫代表の日本記者クラブの記者会見では社会保障予算の毎年2500億円削減という「骨太の方針」の約束は撤廃する、と明言していた。医師不足、看護士不足で各地方が困っている時に、2500億円減らせない、という。後期高齢者医療制度も廃止する、と明言した。この制度、評判は悪いが、病院の待合室を老人ホームの談話室がわりにしていた一時期の高福祉社会の反省から導入したものだった。
前にも書いたが、リハビリの強制廃止など非人間的な行為を伴ったため、廃止もやむを得ないかもしれないとは思うものの、金持ち老人からお金を貧乏若年層に移すという世代間資金移転の仕組みをうまく作らないと、いずれ若者の中から「老人は恵まれすぎている」という怨嗟の声が出てくるのではないか、と懸念する。
鳩山氏は年金について「消えた年金」「宙に浮いた年金」などの問題解決は2年間で遣り遂げる、とこれも明言し、「その先には年金の一元化を行いたい」と言っていた。例の民主党案である。一律7万円の最低保障年金はみなさんにあげます。あとは+アルファ部分だ、という案だ。
しかし、移行期間が長くかかるのと、厚生年金の人たちに掛け金が本当に戻るのか、という懸念を抱かせる案でもある。介護保険は4万円アップを期限をつけずにやる、という。大盤振る舞いだ。それに高校教育の無償化と大学にいきたい人には奨学金を出す、と。一つひとつの政策はいいのだが、何か夢物語のように聞こえるのは「国民の痛み」である増税政策に触れなかったからだろう。
記者から財源について聞かれると、無駄を排除すればできる、と言い、今、民主党は事業仕分けを「しており、一部の調査結果が出てきたが、その中で26%の削減が可能だ、ということだった、と言っていた。「あくまで一部の調査ですが」と強調していたが、国の総支出207兆円の中から絶対に減らせない社会保障関連費用や国際償還費などを除いた70兆円を対象に見直しており、十数%は削減可能というのが民主党の見方だ、と言っていた。「1年で全部出るとは思わないが、2、3年努力すれば出てくる」といい、「徹底的に無駄遣いを廃止する。政権を取って4年間は行政改革をして、しっかり事業仕分けをして、財政を作り直していく」と決意表明し、それ以上細かいことは言えない、と言う。まあ、野党だから仕方ない面もあるものの、消費税増税は是非ものだと思うのだが。土井たか子社会党が1989年の参院選挙で竹下政権の消費税導入を「弱者いじめ」と批判して大勝し、「山が動いた」と勝利宣言した時点で消費税悪者イメージが国民意識の中に定着してしまった。これからの責任ある政治家は大変だ。
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