韓国も中国も高等教育に力を入れている:日本が抜き去られる日が近いのか?~朝鮮日報7月2日
儒教の伝統がいまだに根強く残る韓国では有名大学卒業→キャリア公務員などは尊敬される階層である。日本以上に受験競争が激しいのは学歴社会が熾烈であることの裏返しだ。だから、大学のランク付けにも日本以上に関心があるようだ。
朝鮮日報は7月2日朝刊で独自の大学評価を行い、紙面的に全面展開しているらしい。紙面は読んでいないが、日本語版には2日、山盛りに関連記事がアップされていた。
韓国内での大学ランクとアジアでのランクである。QSというイギリスの評価機関との共同調査だったらしく、日本人にはなじみのないQSなる組織についても次のような説明が出ていた。
<QSとは英国の世界的な大学評価機関で、設立者のクアクアレリ氏とシモンズ氏の頭文字を取って名付けられた。英紙「ザ・タイムズ」と協力し、世界最高の権威を誇る「世界大学ランキング」を2004年から発表している。同紙とQSによる「世界大学ランキング」は毎年世界の上位200大学をランク付けしており、昨年は韓国からソウル大学、KAIST、ポステック(浦項工大)の3大学が200位以内に入った。>
世界はさておき、アジアでは、とQSと韓国で最も知識レベルの高い朝鮮日報が共同調査を行った、ということのようだ。
本記の見出しは<大学評価/ソウル大4分野で韓国1位、アジア1位は東大/
五つの学問分野で評価>だった。へえー、まだ東大が一番なのか。驚いた。
本文を読もう。
<本紙とQSが共同で行った「2009年アジア大学評価」で、韓国国内での総合1位は 韓国科学技術院(KAIST)となったが、五つの学問分野に対する世界の学者による評価を示す「学界評価」では、ソウル大学が圧倒的な1位となった。>
この総合1位というのの意味がよく分からない。
<ソウル大学は▲人文・芸術(アジア6位、以下カッコ内はアジア順位)▲生命科学・医学(5位)▲自然科学(5位)▲社会科学(4位)の4分野で国内1位となった。工学・情報技術(IT)分野ではKAISTが1位(8位)だった。この「学界評価」では、アジアの大学における研究動向に詳しい世界の学者2417人に対して「自分が専門とする学問分野で卓越したアジアの大学」を聞き、その回答を基にランク付けを行う「同僚評価」方式が採用された。>
同僚評価方式などというともっともらしいが、結局、専門家たちの感覚で決めているんじゃないかな?
<「学界評価」の指標はアジア大学評価項目で30%の比重を占める最も重要な評価基準となる。しかし、ソウル大学は国際化の項目でKAISTに大きく水を開けられ、総合順位では韓国1位の座を明け渡した。また高麗大学は社会科学分野では韓国2位(17位)、人文・芸術3位(24位)、生命科学・医学3位(23位)となった。延世大学は人文・芸術2位(18位)、社会科学3位(20位)。西江大学は人文・芸術4位(27位)、社会科学5位(45位)となり、梨花女子大は社会科学4位(44位)、人文・芸術5位(33位)だった。>
この「国際化」が何なのか?
<アジア全体では、五つの学問分野すべてにおいて東京大学が1位となり、優位を示した。しかし、東京大学も国際化の項目などでは大きく出遅れ、総合順位では香港大学と香港中文大学に続いてアジア3位となった。>
こういうことらしい。香港が国際化で1位というのは、英語を使っている、ということなのか?
<東京大学に続くアジア2位と3位は▲人文・芸術は北京大、京都大▲工学・ITは清華大、シンガポール国立大▲生命科学・医学は北京大、京都大▲自然科学は京都大、北京大▲社会科学は北京大、シンガポール国立大の順となった。>
中国のナンバーワンは工学系統では清華大、法文系統では北京大、ということなのか?
面白いのは解説だった。<大学評価/アジア上位に韓国2校だけ/工学・IT分野>の見出しである。
<「工学・情報技術(IT)で一国の経済が10年間潤される」といわれる。1980年代中盤のTDX(Thin‐beam Directional X'tallization Process)技術は韓国の電子産業を発展させ、1994年に世界で初めて開発されたCDMA(符号分割多重接続)の商用技術は世界最高の移動通信産業を育成した。だが「IT大国」という名声とは裏腹に、韓国の大学における工学・IT分野の競争力は極めてぜい弱だ。本紙と大学評価機関QSによる「アジア大学評価」の五つの学問分野別「学界評価」の結果、工学・IT分野で25位以内にランクインした韓国の大学は、8位の韓国科学技術院(KAIST)と12位のソウル大だけだった。総合順位で4校が25位以内にランクインしたことからすれば、みすぼらしい結果といえる。>
韓国の1980年代の発展の鍵を握ったのがTDX技術で、94年のCDMA技術も世界初だった、と。初めて知ったが、技術の世界では有名な話なのだろうか? やはり、技術開発と産業の発展とは連関しているのだろうか?
◆スーパースター級の学者がいない
<ソウル大は総合順位で8位だったが、工学・IT分野では12位にとどまった。ほかの四つの学問分野がすべて6位以内だったことからすると、工学・IT分野の評価が相対的に低かったといえる。私立大学の工学・IT分野の評価結果も期待を下回った。ポステック(浦項工大)は30位、延世大は40位、高麗大は42位だった。インドネシアのバンドン工科大学(21位)やタイのチュラロン・コン大学(24位)よりも低い順位だ。総合評価で50位以内に入った梨花女子大、成均館大、漢陽大も工学・IT分野では50以内に入れなかった。総合順位でトップ50に入ったのは8校だが、工学・IT分野では5校だけだった。>
韓国の知識人たちは工学・ITにご執心のようだ。まったくそっぽを向いている日本の知識人とは随分違う。
<このような結果について、徐南杓(ソ・ナムピョ)KAIST総長は「韓国の大学は単純に論文の数だけを数えている。米国の大学の評価が高いのは論文数ではなく、重要な問題を解決しているため」と指摘した。ソウル大工学部のある教授は「国際的に高い評価を得るためには、輸出用のスーパースター級の教授が必要。だがスーパースター級の教授になるために海外の学術大会などに熱心に参加していれば、研究費支援などでむしろ冷遇されるのが現状」と語った。4年前に提出されたソウル大の内部報告書で「工学部の競争力が弱いのはスーパースター級の教授が不足しているため」と指摘されたのも、同じ趣旨といえる。>
韓国でも象牙の塔内の権力闘争が厳しいようで、やはり、国際派よりはドメスティックな国内実権派が強いようだ。
<韓国の大学の工学部による科学技術論文索引(SCI)クラスの論文数、研究費はここ数年で大幅に増加した。しかし、英科学誌「ネイチャー」など国際学術誌に掲載される論文はわずかだ。最新の理論が発表される国際学術会議で活躍している学者もまれだ。国際的なスーパースター級の学者が少ないというわけだ。>
スーパースター級というのはどういう人なのか? ノーベル賞候補になるくらいということなのだろうか?
◆1年ごとの短期プロジェクトばかりに熱中
<日本で4年以上学び、最近韓国に帰国したある研究員は両国での研究室の雰囲気の違いに衝撃を受けた。研究室に所属する大学院生の数は日本の2~3倍だが、皆1年ごとのプロジェクトだけに熱心だった。同研究員は「日本ではまず研究を行い、その成果でお金を稼ぐといったコンセプト。韓国の学生は大規模な研究室で費用がかさむためか自己研究が不足している」と指摘した。>
1年で稼いでしまおう、結果を出そう、ということなのか? もう少しかみ砕いて書いてほしかったが、日本のやり方をほめているようだ。
<ソウル大も内部報告書で、ソウル大工学部の最大の問題点について、教授らが外部のプロジェクトだけに熱心な点を指摘している。海外の碩学の意見を盛り込んだ同報告書は「工学部の教授らは一人当たり年平均6.5個の政府プロジェクトを担当しているが、この問題が改善されなければソウル大工学部は発展しない」と指摘している。さらに深刻なのは、韓国のITなど技術産業自体を政府ではなく、企業がリードしている状況で、ほとんどの教授が企業の短期需要に合わせて研究しているという点だ。某大工学部の教授は「企業プロジェクトはすぐに成果を上げなければならないため、奥深く幅広い研究ができない」と話した。>
そういうことか。先ほどの日韓比較もこういう文脈でならば理解できる。企業のひも付き研究はお金になるから。
<延世大新素材工学科のミン・ドンジュン教授は「工学でこれといった成果が出せなければ、国際的な評価で遅れを取るばかりでなく、10年後、20年後の韓国経済をダメにする」と指摘した。>
いいところを見ている、と思う。政治や世論に影響力のある人がこういうことをいつも言っている国は成長する、と思う。日本のノーベル賞受賞者数で日本の今のレベルを推し量ると失敗すると思う。今は相当にレベルが下がっているのではないか?
面白いのは卒業生の評判だった。<大学評価:卒業生の評判が低い韓国>の記事には悲壮感さえ漂う。
<本紙とQSの「2009年アジア大学評価」で韓国の大学は四つの評価分野(研究能力、教育水準、国際化、卒業生の評判)のうち、卒業生の評判(recruiter review)で最も哀れな成績を残したことが分かった。シンガポール大学がアジア1位、北京大学、東京大学がそれぞれ2位、3位になったこの分野で韓国の大学は1校も20位圏に名を連ねることができなかった。卒業生の評判は、全世界734人の企業人事担当者から、各大学が輩出した人材に対する満足度を尋ねランク付けしたものだ。>
韓国の学生(卒業生)の評判が悪いとしたら、大学のせいではなく、韓国社会の特性のせいではないか、と個人的には思うのだが。出しゃばりで自分勝手で、勉強が出来ることを鼻にかけて、鼻持ちならない秀才が多いのではないか、と想像するのだ。
<韓国の大学のうち1位だったソウル大学がアジア22位に過ぎず、西江大学が29位で韓国2位だった。KAIST(韓国科学技術院)は33位、延世大学と高麗大学はそれぞれ47位と53位にとどまった。総合順位では10位圏に2校、学問分野別評価ではソウル大が5つの分野のうち3つの分野でトップ5に入ったのとは対照的な成績だ。卒業生の評判において、国内6位はポステック(浦項工大)で、以下漢陽大学、梨花女子大学、慶北大学、仁荷大学が国内トップ10に入った。総合順位で国内11位(アジア61位)にとどまった西江大が、卒業生の評判では2位と上位につけたのは、西江大が出席管理をはじめとする学事管理を厳格に行い、「西江高校」と呼ばれるほど徹底した教育の結果だと、西江大のキム・ヨンス入学処長は話した。西江大出身のある金融専門家は「短い歴史と弱い人脈が、逆に卒業生に縁故に頼らない業務中心の競争力を身に付けさせた」と話した。>
西江大学はいい大学らしい。
<なお、韓国の大学が入れなかった20位圏には、早稲田大学、京都大学、慶応大学など日本の5校、復旦大学、清華大学、上海交通大学など中国の4校の名前が挙がり、続いて香港とフィリピン(各3校)、シンガポールとインド(各2校)、タイ(1校)などが入った。>
早慶・京都が頑張っているのか。日本の大学生は卒業後は評判がいいのではないか、と思う。大学時代、昔ほどサボらずに勉強するが、日本では大卒は当たり前だから誰も偉ぶらないだろうから。
<延世大学経営大学院の朴永烈(パク・ヨンニョル)教授は「私たちの間では国際化されたと話している反面、いざアジア地域の多国籍企業の社員に会ってみると、韓国の大学についてほとんど知らない」と述べた。>
まあ、それは時間の問題でもある、と思う。ものすごい教授らがそろえば、一気に有名になるから。日本が高等教育でも日没を迎える日はそう遠くないと思っているのだが、その時、1位から10位までを占めるのは韓国ではなく、中国の大学かもしれない、と思う。ハーバード、プリンストンなどが競争相手で、本当のところ東大や早慶を相手にしていないのが今の中国の大学だから。
日本も変な永田町の闘争をはやく止めて、高等教育を充実させないと、朝鮮日報の記者が書いているように、国家百年の大計は立たないと思う。しっかりせい、政治家!
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