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2009年7月 7日 (火)

中国共産党政権の少数民族抹殺を「反テロ」の仮面で容認する米国~産経新聞7月7日朝刊伊藤正氏論文、読売新聞・毎日新聞・朝日新聞7月7日夕刊

 中国新疆ウイグル自治区ウルムチで発生した暴動は生半可なものじゃないようだ。漢民族とウイグル族の対立が直接の原因という。チベット問題と同じ構図で、中国共産党政府はG8サミット前のこの時期の暴動鎮圧に武力を使っているものの、下手をすると天安門事件の二の舞いになりかねず、国際世論を横目で見ながらの沈静化にならざるをえないのではないか、と思う。
 産経新聞の一連の報道を見てみよう。
 まずは7月7日朝刊1面トップ<ウイグル族暴動140人死亡/先月殺害事件/漢族へ報復か/中国・ウルムチ>で、中国新疆ウイグル自治区の首都ウルムチに入った野口東秀特派員のリポートだ。
 <中国新疆ウイグル自治区ウルムチ市当局は6日、ウイグル族住民による暴動が5日夜に発生し、140人が死亡、828人が負傷したことを明らかにした。中国の華僑向け通信社、中国新聞社などが伝えた。今回の暴動は6月に中国国内でウイグル族の出稼ぎ労働者が漢族に殺害された事件が端緒だとみられる。10月1日の建国60周年に向け当局による少数民族への締め付けはさらに厳しくなりそうだ。>
 そうなのだ。10月1日は中華人民共和国建国60年なのだ。
 <中国国営新華社通信(英語版)によると、暴動が発生したは5日午後7時(日本時間同8時)ごろ。約1000人のウイグル族住民が市中心部の人民広場周辺に集まり、6月下旬に広東省韶関市の玩具工場で、ウイグル族労働者2人が漢族に殺害された事件への抗議活動を始めた。ナイフや棍棒、れんが、石などを手にしたデモ参加者は次第に暴徒化し、漢族住民を襲撃して商店やホテル、30台余りの車両に火を放った。>
 出稼ぎの少数民族が都市部でなぶり殺しにされる事件はこれだけでなく、頻発しているようだ。
 <AP通信によると、投入された武装警官は催涙ガスや放水で対処し、数百人を拘束した。香港メディアは、警察側は電気ショックを与える警棒や威嚇射撃で暴動を押さえ込んだとしている。犠牲者の多くは漢族とみられ、警察車両が群衆に突入し、ウイグル族の男性17人が車両の下敷きになり死亡したとの情報もある。フランス通信(AFP)は、暴動の参加者を約3000人、投入された警官隊を約1000人としている。>
 情報がまだあちこちしている。
 <経済や教育の分野における漢族とウイグル族の格差は著しく、少数民族を支配する漢族への反感が高まっている。市当局はノーベル平和賞候補にも挙がった在米ウイグル人活動家、ラビア・カーディルさんを議長とする亡命ウイグル人組織「世界ウイグル会議」(本部・ミュンヘン)が4日夕からインターネットを通じて抗議活動を呼びかけるなど、広東省での事件を利用し暴動を扇動したと主張。「国外から扇動された計画的、組織的な暴力、犯罪だ」と非難している。>
 まあ、当局は必ず責任転嫁するだろうから。そういう話は信用できない。
 <当局は6日午前1時から8時まで市内の一部地域で車両の通行を禁止した。情報の拡散を規制するため一部の携帯電話の通話も停止した。同自治区内の5地区に武装警察など計3万人以上を投入し、警戒態勢を強化しているもようだ。>
 この携帯電話の通話制限というのが中国共産党政府のお得意の手段らしい。日本政府でもやろうと思えば(法律ができれば、の話だが)やれるのだろうか?
 産経新聞7月7日朝刊は3面に<独立派を支える民族感情>という伊藤正・北京支局長の解説記事を掲載していた。あの伊藤さんである。現在の日本の中国報道の中で最も信頼できると思う。読んでみよう。
 <中国新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで6日発生した大規模な暴動は漢族の「支配」に対するウイグル族など少数民族の根深い反感を背景にしており、チベット問題同様、少数民族政策が中国政府のアキレス腱であることを改めて示した。中国は今回の暴動を分離独立派の策謀とし、その弾圧に一層力を注ぐ構えだが、民族対立が激化し不安定な情勢が続くのは不可避とみられている。>
 という前文だ。富の不平等が極まるとこういう事態になる。
 <中国当局の発表では今回の事件は、広東省で6月末に発生した漢族とウイグル族の衝突をめぐり、在外のウイグル人組織「世界ウイグル会議」が「決起」を扇動したためだという。昨年3月のチベット騒乱と同じく、漢族支配への抗議が大流血事件に発展したのは、少数民族側の反漢族感情の強さを物語る。>
 漢族支配と言われてもピンとこないのが日本人のいいところでもあり、理解の遅れているところでもあるが、日本人だって昔は沖縄、アイヌを差別したが、今はそういう感情すら消えかかっているのではないか。ところが、中国では民族差別感情が国民の中に浸透しているのだ。
 <新疆地区は特に1990年代以降、交通インフラの建設が進み、年平均10%超の経済成長を遂げた。全国の3割前後の埋蔵量を占める天然ガス、石油をはじめ地下資源の開発ラッシュが起こったが、その関連産業などを含め、経済ブームを担い巨大な利益を手にしたのは漢族企業である。むろん少数民族住民も経済発展の恩恵に浴したものの、ウイグル族学者らによると自治区経済の9割は漢族が支配、ウイグル族ら少数民族の言語、文化、宗教も破壊されているという。チベットでは漢族は6%にすぎないが、新疆では40%を超え、ウルムチでは漢族が最多になった。>
 民族の抹殺だ、これは。
 <こうした状況は漢族を資源を略奪し環境を破壊、民族滅亡を図っていると非難する分離独立運動が、当局の弾圧にもかかわらず生き続ける理由になっている。中国政府がチベットと併せ新疆の分離独立を容赦しないのは、経済的理由以上に戦略的な価値による。従って、今回の事件を機に、中国政府は、分離独立派の壊滅に躍起になるはずだ。中国は今回、「国際的陰謀」と宣伝、強気の姿勢に出ている。事情はどうあれ約1000人もの死傷者をだして国際社会の批判など気にしていないポーズを取るのには理由がある。中国は新疆の分離独立派の後背地である中央アジア諸国を上海協力機構に抱き込み、反テロの共同戦線を張るのに成功した。2001年9月の米中枢同時テロ後は、米国に協調する形で独立派組織を徹底的につぶしてきた。>
 「反テロ」というスローガンの恐ろしい一面を日本人はもう少し知るべきだろう。そして、中国は「反テロ」というスローガンを手にして米国に協力を申し出るふりをしながら、少数民族を抹殺している。ロシアのチェチェン抹殺も同じだ。その抹殺グループの結合体が上海協力機構だ、というのだ。そういう地政学的な目で事態を見ないと、日本人だけが国際理解から置いていかれるだろう。これは別に「国際標準」の話ではなく、世界の理解度がどういうものなのか、を日本人も知るべきだ、という話である。
 <人権問題に敏感な米欧が特に金融危機以後、対中依存を深めていることも、中国に有利な環境にある。しかし、新疆の独立派支持派を抹殺できないことも否定できないだろう。>
 伊藤氏の論はここまで。少し尻切れトンボだったが、また続きが明日の朝刊などに出るだろう。
 こういうものの見方を教えてくれる「論」こそ読まれるベきだと思うのだが、なかなか読まれないのだなぁ、これが。

(追記 7月7日午後4時半)

 7月7日の夕刊にはウイグルの再衝突のニュースが大きく掲載されていた。読売新聞は夕刊1面トップ<ウイグル再び衝突/住民数百人、警官隊と/抗議 他都市でも/死者156人/中国、情報統制を強化>の見出しで7日にウルムチ市内をパトロールする武装警察の兵員輸送車のおどろおどろしい写真も掲載していた。

 読売夕刊を読もう。中国新疆ウイグル自治区のウルムチ現地に入った牧野田亨特派員と北京支局の関泰晴特派員の記事だ。

 <中国新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで7日午前、ウイグル族の住民数百人が再び集まり、警察の取り締まりなどに反対する抗議デモを行い、警官隊と衝突した。ロイター通信などによると、武装警察部隊が現場に駆けつけ、抗議デモの群衆を阻止した。5日の大規模暴動で拘束された家族の釈放を求める住民らも参加したとされる。また、ウイグル族による一連の抗議行動が自治区内の各地に飛び火し、騒乱が長期化する可能性もある。>

 という前文だ。自治区内の各地で暴動が起きれば、中国当局は困るだろうなぁ。

 <中国当局は5日の暴動以降、自治区各地で厳戒態勢を敷いている。ウルムチ市内では7日早朝から、警察官多数が、暴動現場となった人民広場など各所で厳重な警戒に当たり、パトカーや装甲車によるパトロールも続いている。7日の抗議デモに参加した住民には女性が多く、あるウイグル族女性は同通信に対し、「夫が昨日、理由も告げられずに警察に連行された」などと語り、釈放を訴えた。>

 「夫が帰らない」という妻の抗議を戦車で踏み潰す映像が世界に配信されると、昔だったら人権活動家やフォークソング歌手らが連帯を叫んで大きなうねりになったものだったが、今はどうなのだろう?

 <一方、新華社電によると、同自治区当局者は7日、5日にウルムチで発生した最初の暴動の死者がさらに増え156人に達した、と伝えた。死者のうち129人が男性で残りは女性というが、漢族、ウイグル族の内訳は公表していない。負傷者は1080人。この暴動には数千人が加わったとされ、これまで1434人が身柄を拘束された。暴動を起こしたとして複数の組織に対する捜査も進められ、すでに中心人物の容疑者数人を拘束。5日夜の暴動発生以降、中国当局は2万人の人民解放軍や武装警察部隊を投入し、鎮圧に当たらせたという。>

 女性も27人死亡した、ということか。

 <中国当局は、これに呼応して、西部カシュガルやイリ、アクスでも暴動を組織しようとする動きをつかんだとしておりインターネット規制を強化、各地で厳戒態勢を敷いている。幹線道路には暴動を扇動した容疑者の逃亡を防ぐため、検問所も設けられている。新華社電によると、ウイグル族住民が多いカシュガルでは6日午後、外国人観光客も多数訪れる中国最大規模のモスク(イスラム教礼拝所)「エイティガール寺院」に住民200人以上が集結しようとしたが、警察当局が阻止した。インターネット上で抗議行動が呼びかけられたとの情報もある。>

 なるほど、外国人向け観光地はいい場所だ。

 <地元当局は、国外の亡命ウイグル人組織が「暴動を扇動している」と主張しており、ウルムチなどでは、国際電話やインターネット接続を遮断し、ウイグル族側の主張が外部に漏れることを懸命に阻止している。一方、国営中国中央テレビは7日朝、群衆による襲撃で負傷し病院で治療を受ける漢族男性が証言する映像などを流し続け「ウイグル族による暴力犯罪事件」との側面を強調。中国当局の対応は正当とする情報統制を行っている。いずれの官製報道も、「漢族支配」に対するウイグル族の不満や、両者間での対立激化など、事件の背景には一切触れていない。>

 共産党の宣伝工作は徹底している。南京事件のやり方を見れば分かる。自分が悪くても、徹底して相手の犯罪行為にしてしまうのだから。でも、そういう一時的な正当化は歴史の検証を経ればあえなく真実が暴露され、共産党の犯罪が分かってしまうのだ、と思う。

 <亡命ウイグル人組織「世界ウイグル会議」の傘下にある日本ウイグル協会(本部・東京都)は7日、ウルムチ市内などの漢族住民が多い地域で、少数派ウイグル族住民に対する暴行や略奪が行われたとの情報を、本紙に明らかにした。漢族住民による報復と見られる。>

やると思ったよ、漢民族は。

 朝日新聞7月7日夕刊8面2段見出し<「世界ウイグル会議」主席/騒乱関与を全面否定>はワシントン支局の村山祐介特派員の記事。
 <中国・新疆ウイグル自治区での騒乱で、中国政府が関与を指摘した亡命ウイグル人組織「世界ウイグル会議」主席で米国在住のラビア・カーディル氏(62)が6日「非難は完全に間違っている」と関与を全面否定した。ロイター通信などに語った。同氏は「国外からの指揮と扇動」があったとの中国政府の主張について「自治区に住む親族にデモに近づかないよう電話で注意しただけだ」と反論。デモについては「中国政府が非難するように暴力的ではなかったし、(参加者は)暴徒でも分離主義者でもなかった」と指摘した。同氏は実業家だったが、ウイグル族のデモを巡る当局批判で共産党の役職を解かれ、1999年に突然投獄。2005年に米国に亡命し、ウイグル族の人権問題を訴えてきた。ノーベル平和賞候補に挙がったこともある。>
 という内容だ。中国共産党政権がこういう良心的な人を人身御供にしようと画策している。お笑いだが、笑ってはいられない。日本も防備を固め、沖縄を取られないようにしないと。
 毎日新聞7月7日夕刊は2面<新彊暴動「自制を」/米が呼びかけ>で、朝日新聞も夕刊で同様の記事を掲載していた。毎日新聞の記事を読もう。モスクワ支局というか米露首脳会談のためにワシントンから同行した草野和彦特派員の記事だ。
 <中国新疆ウイグル自治区ウルムチで5日に起きた大規模暴動について、ギブス米大統領報道官は6日「暴力によって多くの死傷者が出たとの報道があり、深く懸念している」との声明を出した。暴動の背景が不明のため、批評するのは時期尚早としながらも「すべての人々に自制を呼び掛ける」としている。>
 短い記事だ。中国当局を非難していないのが特徴だろう。伊藤正氏の指摘通りだ。

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