核拡散した場合、アルカイダは核兵器をNY、WSかエルサレムに使う:マイケル・グリーン氏インタビュー~7月7日日経新聞朝刊
日経新聞7月7日朝刊経済面連載[世界この先~原点からの再生]はマイケル・グリーン元米大統領補佐官のインタビューだった。有名な知日派、親日派である。<意思決定の道具多様化を>の見出しは、「国際的な意思決定のあり方も大きく変るのでしょうか」という記者の質問に「国連を強化すべきだという人もいれば、民主主義国家の有志連合を重視すべきだという人もいる。私はそれらを総動員しろと言いたい。いくつものツールが入った『道具箱』を持っておくことが大切だ」と回答した部分から取っているのだが、この部分が本当にポイントなのだろうか? マイケル・グリーン氏は米国の国家戦略について語っているのだが、もっと重要な言葉が散りばめられているようにも思えるのだが。
グリーン氏の気になる言葉をピックアップしておこう。
▽物質的な力が弱まっているとしても、米国の価値観は勝ち続けている。民主主義、法の支配、人権といった価値観は中南米、アジア、東欧で支持され、結果的には米国の覇権が広がっているようにも見える。
(これは決して単なる強がりではないだろう。結局は米国という理念の共和国はイデオロギーで結びつくしかない国なので、最後の最後には原理主義的民主主義に統合されるのだろう、と思う。中南米ではチャベス氏のベネズエラやカストロのキューバがあることを知っていて言わないし、アジアでは欧米型民主主義ではないインド、パキスタン、タイ、インドネシアなどは「人権」などの概念以上に自分の民族に固有の国家統合のシンボルに固執しているのだから、グリーン氏の言うことは本当はあっていないのだが、まあ、米国人ならばそう言うだろう、と思う。)
▽中国やイランなど、それぞれの地域で米国を上回るような力を持つ国が台頭してきた。だがこれらの地域大国の近隣には、バランスを取るために対抗している国がある。アジアでは日本や韓国、中東ではエジプトやサウジアラビアがそうだろう。米国はこうした対抗勢力と組むべきだ。
(これはマイケル・グリーン氏の信じる地政学の結論なのか? 日本は中国封じ込めのための道具に最適、ということなのだろう。日本はそういう米国の本音をうまく生かしながら、自国の安全保障や経済発展に結び付けねばならない。)
▽(武装勢力や非政府組織といった「非国家集団」の影響力も拡大している、という質問に)米外交評議会のリチャード・ハース会長や米誌ニューズウィーク国際版のファリード・ザカリア編集長によると、世界は「無極化」に向かい、国家はもはや力を持たないという。私は国家が国際関係の主要プレーヤーであり続けると思う。国家間のパワーバランスを維持するため、同盟関係を強化すべきだ。
(この辺は面白い対決なのだが、別の機会に詳しく分析することにしよう。思想的に言えば近代主義とポストモダンの対決に重なるのではないか、と思っている。)
また、グリーン氏はフランスの降りたイランの天然ガス田開発で中国企業が契約したことについて、契約は手に入れたが、国際的に孤立したことを重視し、フランスのシラク大統領時代はドイツ・中国・フランス連合で米国に対抗しようとしたが、今のサルコジ大統領は米国に「中国の問題に対処しなければならない」と相談するまでに変化してきたことをあげて、国際的な情勢の変化を強調していた。
中国が米国債の最大の保有国であることは別に米国の行動を制限しない、とも言う。米国債を売って米国債が暴落すれば最大の被害者は中国だから、中国は自国に利益のためにもそんな馬鹿なことはしない、と言うのだ。
グリーン氏の懸念は中国の軍拡だ。その部分を書き写そう。
▽中国の軍備拡張は心配している。衛星、サイバー、潜水艦といった分野での能力を大幅に高めているためだ。南シナ海、台湾海峡、東シナ海で中国の存在感を誇示する狙いがある。米国は日本にF22戦闘機を、台湾にはF16戦闘機を売却し、パワーバランスを保持すべきではないか。日米豪印は海上訓練も展開したほうがいいだろう。中国が不透明な軍備拡張を進めれば進めるほど、近隣国の連帯が強まるということを印象付ける必要がある。
(これはオバマ政権の見方と同じなのかどうか? この見方が政権の考えになっているのだったら、F22売却は何の問題もないと思うのだが、クリントン国務長官は中国からの裏の要望を受けて反対するだろうと思う。オバマ政権内では中国派の方が実権を握っているように見えるからだ。)
▽(北朝鮮の核開発問題をどう見ていますか?という質問には)米国が懸念しているのは北朝鮮の金正日政権が崩壊し、アルカイダをはじめとする国際テロ組織の手に核兵器が渡ってしまうことだ。現体制を維持したい金政権には核の抑止力が効くが、自爆テロも辞さないアルカイダには効きそうもない。その際に核が使われる公算が大きいのは東京やソウルではなく、ニューヨークやワシントン、エルサレムかもしれない。米国が核拡散の防止に力点を置くのはこのためだ。
(非常に分かりやすい。なぜ核拡散などという念仏のような言葉を米国が繰り返しているか、ようやく分かった。現実的な脅威を感じているわけだ。それも、ニューヨーク、ワシントン、エルサレムという大都市を例にあげるのは迫力がある。米国人の頭には恐怖があるのだろう。広島、長崎を経験した日本人以上に核兵器の映画を好む欧米の人々は自分たちの頭上に核兵器が降っている悪夢だけはごめんだ、と思っているのだろう。しかし、そうであるならば、北朝鮮のノドン搭載核兵器に心底恐怖している日本人の心情を米国人はもっと勘案すべきだ、と思うのだが、グリーン氏は別として、普通の米国人にとってはいまだに日本人は異人種、イエローモンキーで欧米人とは別の格下の人種だという観念があるのかもしれない。黒人大統領を輩出しても、アジア人蔑視はなかなかなおらないだろう、と思う。)
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