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2009年7月

2009年7月31日 (金)

江沢民一派との権力争奪戦がいまだに続く胡錦濤国家主席、と鳥居民氏が言う~産経新聞09年7月31日[正論]

 産経新聞09年7月31日の【正論】は評論家・鳥居民氏の<ウイグルの陰に権力闘争あり>だった。反中国共産党の旗手なのか? 大東亜戦争の当時の民衆の歴史をいまだに書き継いでいるのはすごいと思う。小見出しは≪4年前の教訓が浮かぶ≫、≪上海党書記の逮捕・失脚≫、≪江派の残党らの巻き返し≫の三つだった。
 読んでみよう。
 <今回のウイグルの大暴動が起きるより前、新疆はパレスチナのようになるだろうと予言した中国人の作家がいた。そのパレスチナだが、オバマ米大統領はイスラエルの首相に向かって、パレスチナを国家として認め、ユダヤ人のパレスチナへの入植をやめるようにと勧告している。中国の指導者に同じように説くのはいつのことになるのだろう。ところで、私がここに書くのは別のことだ。>
 オバマ大統領がイスラエルの首相には文句を言ったが、中国の胡錦濤主席には言えなかった、ということか。
 <主要8カ国首脳会議が7月8日から開かれるという直前に胡錦濤主席はイタリアから慌てて帰国した。ウイグルの暴動についての北京からの報告をつぎつぎと受けとってのことだった。暴動は鎮圧した、それでも油断は禁物、サミットなどどうでもよいと胡主席が考えたのは、なぜだったのか。>
 この慌しい帰国には驚いた。
 <4年前に上海ではじまった党中央が絡む権力闘争が胡氏の脳裏をかすめたのではなかったか。北京にとどまっていた温家宝首相であれば、その4年前のことが即座に頭に浮かんだはずだ。それから4年あとの現在、広東でこれまた党中央が関与する権力闘争が続いていることをこの2人は承知している。胡主席と温首相が危機に直面して離れ離れになっていてはいけないという教訓を学んだのがその4年前の出来事だった。>
 へえー、と。
 <4年前の2005年3月21日に国連のアナン事務総長が記者会見をおこない、常任理事国を拡大する問題について発言し、当然ながら日本は常任理事国になる資格があると語った。中国共産党のそのあとの行動は素早かった。日本が常任理事国になるのを反対させようとして4月のはじめから、大学生を動員して週末に反日デモをおこなうようにさせた。だが、街頭にでた人びとは党の指示を守ろうとせず、デモ隊は警官隊と衝突する気配となった。党は慌てた。全国の大学に政府の役人を秘密のうちに派遣し、デモをやめるようにと訴えさせた。温家宝首相はインドを訪問中だった。何も知らない彼は4月12日の記者会見で自発的な反日デモだと力説し青年学生の行動は正しいと褒めたたえた。これがメディアに載って4月16日の週末には各地の都市でデモはつづき、上海では8万人のデモとなり日本総領事館を包囲、投石する騒ぎとなった。>
 なるほど、そういう経緯だったのか。当時はこの事実関係がはっきりしなかった。
 <そのあとに起きたことは、そのときには解釈できなかったが、いまになればはっきりとわかる。江沢民勢力は胡と温のチームを潰すチャンスと睨んだのである。陳良宇上海党書記は傘下の機関紙「解放日報」に評議員の文章を載せ、マス・メディアがどこも言わないことを言わせた。「デモの背後によからぬ陰謀があり、人に言えない目的を隠している」。デモの主体となる学生を憤激させ次のデモを過激なものにさせ、それこそ日系工場に雪崩れ込むような大きな暴動にさせる。そのあと温首相の無思慮な発言を糾弾し、彼の責任を追及するという段取りだったのであろう。>
 怖い陰謀だったのだ。知らなかった、全く。
 <胡主席側に運があった。次のデモは暴動とはならなかった。続いて胡陣営が復讐に出た。翌2006年9月に陳党書記は逮捕され、江氏はかれを救えなかった。昨年に懲役18年の刑を受けた。>
 <今日、広東で起きている権力闘争は、広東省党書記の汪洋氏を胡錦濤主席が支援するものだ。汪氏は胡主席の直系だ。瞬く間に出世してきた。2007年10月の17回党大会で政治局委員、その年の末に中国第1の大省、広東省の党書記。胡主席は汪氏を次の党総書記と決めているのだ。>
 えっ? 違う名前の人物が後継者ではなかったのか?
 <2人の党総書記、江沢民と胡錦濤は元老の鄧小平氏の指名によったが、この先はどのようにして決めるのか。党中央政治局のメンバーから選ばれることになるのだろうが、その政治局委員、常務委員たちは中央委員全員の投票で決める仕組みとはなっていない。>
 なるほど、何も決まっていないのか。
 <17回党大会が終わり、政治局常務委員会に江派の面々が並んだ写真を見て、チャイナ・ウオッチャーは驚愕した。陳良宇氏は政治局常務委員となることはなく、失脚した。汚職で悪名高い江派の常務委員たちも間違いなく引退しよう。江勢力は壊滅したと想像していたからだ。実際には新政治局委員と新常務委員の名簿を作ったのは党大会に先立ち、江前党総書記と前期の常務委員たちだった。>
 そういう理由だったのか。
 <読者も記憶されていよう。その年のはじめから「民主とはよいものである」のキャンペーンは、民主的な選挙制度を党大会に持ち込もうとする雰囲気造りだった。だが、胡主席の側が負けた。彼は戦術を変えた。汪党書記の広東省の党の選挙を民主的な仕組みに変えさせ、これを中央へ持ち込むことにした。ところが、広東省に残る江派の党幹部が徹底して妨害した。中央紀律検査委員会が広東省の汚職を摘発し、彼らを狙い撃ちにしたのはこういう訳からだった。だが「民主とはよいものである」が党の原則となり、党の外へ広がるかどうかが分かるのはまだ先だ。18回党大会の開催は3年後だ。>
 何かよく分からないが、いまだに権力闘争が続いているのか。だから、人民解放軍に強いことを言えずに、軍備拡張予算が毎年大きくなっているのか。
 胡錦濤国家主席には権力闘争に勝ってほしいが、江沢民一派を一斉逮捕するようなことはできないのだろうか?

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岡本行夫氏のきめ細かな日本人の特徴を生かした国づくりって?:想像できないんだけど…~産経新聞09年7月31日朝刊

 産経新聞09年7月31日朝刊1面コラム【人界観望楼】で外交評論家の岡本行夫氏は<「経済大国」のあとの国家像>というタイトルで寄稿していた。
 経済で生きよう、とした吉田茂、池田勇人、宮沢喜一らの努力というか日本国民の努力が実って経済大国になったのはもう30年も前の話。1979年が今から30年前だとすれば、日本は第2次石油ショックをあまり慌てずにクリアし、黄金の80年代を迎えたのだった。しかし、その後の経済変転で日本は今、世界で最悪のマイナス成長に苦しむ国になってしまった。
 岡本氏は「経済大国」という国家目標達成後の新たな国家目標について語っているのだ。
 読んでみよう。
 <数日前、友人の娘のマーガレットが初めて日本に来て、一人で東京の地下鉄に乗って気分が悪くなった。うずくまっているマーガレットから英語で電話番号を聞いて僕に第1報をくれたのは見ず知らずの男性。再び電話。今度は地下鉄でマーガレットの隣に座っていた女性からの第2報。マーガレット救出の手配をしながら僕は思った。これほど他人に親切な国はあるだろうか。>
 うまくいった例だろうが。
 <例えばアメリカでは、人々はすこぶる親切なのだが、治安が日本ほど良くないために警戒心があって、本来の良さが発揮されない。ヨーロッパでは、階級社会の名残があるから互助精神は強くない。アジアでは、路上で倒れている人間は珍しくないから、必ず駆けよって介護してくれるわけではない。>
 まあ、日本がその意味では一番親切かもしれない。
 <日本は早ければ今年にもGDP世界第2位の座を中国にわたす。経済指標の相対的な低下はその後も続く。やがて日本はアジアでは中国・インドに続く3番目の国、世界では今のブラジルや豪州のような「準大国」クラスの国家になっていくだろう(もっともブラジルは30年先には世界の大国だろう)。>
 何か、こういう予測は当たるのだ。日本が二流国家になってどこが悪い、と思うのだが、今のフランスやドイツがそうだ、と思えばそうは苦にならないのではないか。
 <GDPが1968年に世界第2位になって以来、日本は自らを経済大国と認識してきた。「21世紀は日本の世紀になる」とも囃された。80年代後半には、日本ひとつでアメリカが四つ買えるとか、皇居とカナダが等価だとか、傲慢でさえあった。>
 こういう傲慢な発言が今後も出るかもしれない。そうい時に誰かが「見苦しいし、国際的に変な誤解を受けるから、そういう発言はやめたほうがいい」と言えるか? 変にいうと発言の機会を奪ったとか、弾圧だとか言い出す奴がいるので、怖くて注意もできなくなってしまった。これでいいわけはない、と皆分かってはいるのだろうが、どうしようもないのだろうか?
 <しかし、もともとGDPの正確な国際比較など無理なのだ。GDPをドル換算する為替レートは、一握りの優秀な日本の輸出企業の交易条件で決まってくる。その為替レートで日本の資産全体をドルに換算しても正確ではない。山林や荒れ地まで含んだ広大な土地全体の値段を、道路に面した条件のいい部分だけの地価を使って算定するようなものだ。しかも、日本経済の内情は深刻だ。国と地方の借金はGDPの200%以上。末期的と言われたイタリアの2倍だ。日本政府は禁治産者に近い。日本がいたずらに経済力を誇る時代は過ぎた。では国際社会の中でいかなる国家像を目指すのか? 世界の政治や安全保障にとって重要な国家を目指す、と言いたいところだ。>
 禁治産者である日本政府をもっているのは日本国民。日本政府(つまり官僚たち)にいろいろやらせているのは与党の政治家ども。それを選ぶのは私たち有権者。だから、ぐるりと回って責任が出てくる。
 <イギリスの名目GDPは6位だが世界政治に大きな影響力を持つ。イギリス並みの政治力は無理としても、せめてカナダぐらいの政治的存在感は示したい。しかし、リスクをとれない国情、「日本人の人命」に対する超安全主義、政治決断のできない体制。こうした国情では、政治的影響力は限られたものにならざるを得ない。>
 情けない。本当に情けない。
 <残るのは、日本の文化的、人的資産だ。親切さ、互助精神、安全と清潔さ、勤勉さと実直さ、チームワーク、忍耐強さ、正確さと丹念さ、約束と時間を守る几帳面さ、職人気質、粘り、こだわり、平均値の高さ。そしてこれらが相乗して作り出す日本の社会文化と独特の温かさ。長年世界を歩いてきたが、こうした日本と日本人の特質は世界に類を見ない。例えばJICAなど途上国に派遣された日本の援助関係者の評判は他国の追随を許さない。経済力が中国に抜かれるからといって意気消沈せずに、日本人の持つキメ細かな精神性を土台にして、世界に示す国家像を作り直す時だろう。>
 岡本さんも結局はそこに帰着しましたか。少し残念ではあるが、日本人のレベルがその程度だ、ということ。日本人のレベルを無視した国際貢献はできないのだから、仕方ないでしょう。

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南シナ海の潜水艦競争は中国の海軍軍拡、領有権争いが原因だが~朝日新聞09年7月31日朝刊

 朝日新聞09年7月31日朝刊国際面トップは<南シナ海 潜水艦競争/領有権争い 中国を警戒>というまとめ記事だった。シンガポール支局の塚本和人特派員の署名があった。
 <南シナ海周辺の東南アジア各国が経済発展を背景に潜水艦の配備や増強に力を入れ始めた。この海域は領有権争いを抱えており、海軍力強化を進める中国への警戒感もあって、偵察能力の高い潜水艦の導入が相次いでいる。オーストラリアなども巻き込み、新たな軍拡競争への火種となりそうだ。>
 という前文。
 <各国の国防省や複数の軍事研究者によると東南アジアで潜水艦の増強を進めているのはマレーシアとシンガポール、インドネシア、ベトナムの4カ国。マレーシアは2002年、フランスとスペインが共同開発したスコルペン級潜水艦2隻を34億リンギ(約910億円)で契約し、同国初の潜水艦として配備することを決めた。仏潜水艦と同じ最新の音波探査方式を採用するなど最先端技術を装備。1隻目が今年9月にボルネオ島サバ州に新設された潜水艦基地に投入され、もう1隻も来年初めに到着する予定だ。4隻を保有するシンガポールは2005年、スウェーデン製2隻を新たに購入した。中古だが、長時間潜行が可能な機能を搭載した東南アジア初の潜水艦だ。うち1隻は来年末、シンガポールの軍港に入港する。現在2隻を保有するインドネシアは、2024年までに12隻の保有を計画。攻撃機や水陸両用戦車などを含めた総合的な計画で、ロシアや韓国などと交渉を進めている模様だ。ベトナムは探知されにくいロシア製キロ級潜水艦6隻を購入する計画が伝えられ、周辺国は警戒を強めている。>
 面白いなぁ。ASAEANの中でもこういう動きがあるんだなぁ。
 <南シナ海では近年、南沙諸島をめぐって中国、台湾、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、フィリピンの6カ国・地域が領有権を主張し、緊張感が高まっている。3月にはマレーシアが実効支配する島をアブドラ前首相が訪れ、領有権を主張。フィリピンも同諸島の一部を自国領とする領海基線法を制定させ、中国は頻繁に農業省の漁業監視船を派遣している。マレーシアやインドネシアが中国漁船を相次いで拿捕するなど、摩擦も広がってきた。>
 南沙諸島だ。
 <背景には海洋資源の獲得や重要航路の維持といった実利面での狙いのほか、経済発展に伴うナショナリズムの高揚がある。潜水艦の増強を進める4カ国の経済成長率は6~9%という高さだ。>
 やっぱりナショナリズムですか。日本が絡まないでもナショナリズムのぶつかり合いが出てくる、というのは面白いと思う。
 <南洋理工大学(シンガポール)のジョシュア・ホー上級研究員は「各国とも豊かになり、緊張する海域での監視や情報収集の能力向上のために最新技術の潜水艦を導入するゆとりが出てきた」と見る。>
 豊かになる→平和、という単純な図式が嘘であることを如実にしらせてくれている。
 <東南アジア各国の潜水艦増強計画に中国は強い警戒感を示している。中国紙によると、中国政府はこの海域に新型調査船を投入。海軍力増強政策に基づき、海南島で新たな原子力潜水艦基地の建設が伝えられるなど、偵察能力の向上も図っている。>
 真っ先に軍拡の動きをしていた中国が何を言うか、という反応が多いのだろうなぁ。
 <軍拡の流れは周辺国にも広がり、オーストラリアは5月に発表した国防白書で、今後20年間で巡航ミサイルを搭載した潜水艦を12隻態勢に倍増すると宣言した。東南アジアの軍事事情に詳しい豪ニューサウスウェールズ大学のアンドリュー・タン准教授は「東南アジア各国は潜水艦増強を通じて政治的にも交渉能力を向上させようとしている」と分析。経済発展の著しい地域だけに、海軍力の競争は今後も続くとの見方を示した。「南シナ海のキープレーヤーは米国と中国だが、中国の空母建造がこの海域のパワーバランスに影響を及ぼすだろう」とも指摘した。>
 中国の空母だって軍拡競争を煽る要因だ。

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書評「現場からの中国論~社会主義に向かう資本主義」大西広著(大月書店)+加々美光行・愛知大学現代中国学部教授<中国少数民族問題 その淵源と病理>(「東亜」09年8月号)

 「現場からの中国論~社会主義に向かう資本主義」という題名に惹かれて読んでみた。大西広氏という1956年京都府生まれの京都大学大学院経済学研究科教授が2009年7月21日に大月書店から出した本。定価は税込みで1890円だ。マルクス経済学者だ、と堂々としてるのがいい。

 <「実物経済」の強化の伴わない「金融経済」はいずれ破綻する。そして、これは元から分かっていたことである。いや、もっと正確に言えば、近代経済学者はアメリカ経済こそもっとも正しい経済のあり方だと思っていたのでこの経済破綻に戸惑っているが、マルクス経済学者には当たり前のことが生じたに過ぎない。そして、この結果、世界経済の中心はいよいよ中国を中心とする東アジアに移動することとなった。>(4ページ)

 というような現状認識ですべてを解き明かそうとする。

 中国経済の現状について失業者の騒乱とかの事件が報じられることについても、玩具企業や広東省など、低賃金労働集約型の輸出企業、特に対米輸出への依存度の高い企業の問題ではないか、これは中国経済の破綻の問題ではなく「アメリカ頼み」で生きていこうとする自体が間違えていることを示すもので、これは日本企業にも言えることだ、と厳しい。

 基本的に毛沢東を評価し、評判の悪い「大躍進」、「文化大革命」についても違う角度から焦点を当てることで、毛沢東の「近代」的な要素を抽出しようとする。つまり、毛沢東と鄧小平の共通点探しをしつこいくらいやっており、それはそれで逆転の発想的で面白いのだ。だから、今の中国についても共産党万歳となる。特に景気対策をベタ褒めし、地方政府までが景気対策を打ち出したので、中国が世界の牽引車になることは間違いない、と太鼓判を押している。

 内容は2008年1~9月に京都の地方紙「京都民報」に連載した内容をベースに付け加えた、とあった。

 そして、大西氏の論で最も違和感を覚えたのが少数民族問題についての文章だった。

①ウイグル族と漢族の間には言われているような制度的優遇策はなく、ウイグル人が一生懸命やらないのが漢族の商店が栄える原因だ。

②中国共産党が「漢族支配」を狙うはずがない。新疆ウイグル自治区やチベットがちゃんと中国の枠内にいさえすればそれでいいので、漢族が少数民族を支配することで問題が複雑化するのを恐れている。

③同じ少数民族でも企業家を輩出できる朝鮮族や満州族は問題ないが、できない民族には何かエンカレッジする仕組みを作らねばならない。回族(イスラム教徒だが中国人で中国語を話す人々)はそれなりにできており、問題ないだろう、という。

④チベットの民族問題は2006年夏のチベット鉄道開通で起きた。チベットの人口は280万人しかいないのに年間400万人の観光客が来るようになった。日本は人口約1億3000万人で毎年800万人前後の外国人を受け入れているが、この280万人と400万人という数字には驚く。そして、この観光業も漢人がうまくやっている。観光客にも便利な店になっているので、そっちに客は入る。チベット人のむさい店には客がなかなか入らない。でも、大西氏はここで”チベット人企業家”を成長させるために、漢族の進出に少しは制限を加えるべkぢあろう、と書いている。

⑤チベットは昔、解放前は農奴制でダライ・ラマはそれを許していた、と。ダライ・ラマ批判が相当にきつい。

◆加々美光行・愛知大学現代中国学部教授<中国少数民族問題 その淵源と病理>

 随分と新聞で読んでいる内容と齟齬があったので、にわかには信じられないなぁ、と思ったのだが、霞山会が出す雑誌「東亜」09年8月号に掲載された加々美光行・愛知大学現代中国学部教授の6月30日の霞山会での講演記録<中国少数民族問題 その淵源と病理>を読んで、論点が似ているのに驚いた。

 政教分離と政教一致の問題が大きい、というのだ。西欧はルター、カルバンの16世紀の宗教改革でカソリック支配が国家と宗教を合体させた政教合一体として存在した状況を突破し政教分離を近世以降確立させた。日本も織田信長が一向宗徒の大量虐殺、叡山、石山本願寺の焼き討ちで多くの僧侶を殺害し、仏教の政教合一体をぶち壊し、江戸期約300年に及ぶ社会の安定を呼び込んだ、と。明治維新は政教分離が一般的になった中、再び政教合一体として国家神道を作り上げた、幕末維新革命は宗教勢力の真空状態を突く新たな革命だった、新たに強力な政教合一体を組織し維新革命を成就するために大政奉還と王政復古を実現した、とある。しかし、そのことが日本に新たな軍国主義体制を作り出すことになり、戦後の民主化で真っ先に政教分離が行われた意味合いもそこにあった、と書いていた。

 こうして二つの例を見ると政教分離が当たり前のように見えるかもしれないが、アジアの民族と宗教を考える場合には、依然、強力な政教合一体が存在。第1次世界大戦を境にオスマントルコ帝国が崩壊した後のトルコ共和国の建国過程で初代大統領のケマル・アタチュルクがイスラムの政教分離を唯一実現した。しかし、他のアジア諸国を見ると、インドにおけるイスラムとヒンズーの宗教紛争が続いている。それは戦後すぐにパキスタンとインドの分裂という結果をもたらしたが、カシミール問題を含めて今日、両国内及び両国間の紛争の火種としてある。その対立が政治的軍事的対立であることはヒンズーとイスラムのどちらも政教合一体である事実を何よりも示す、という。ガンジーはその対立を克服し政教分離を実現しようとしたが、暗殺された。今日、スリランカで流血の事態がしばしば起きているが、これも仏教とヒンズー教の間の宗教紛争が大きな原因だ、と。

 そして、なぜ政教合一体が根強く残っているのか、を考え、

 <歴史的に政治的民族的抵抗がかつての植民地体制からの克服過程で必要とされた点が背景としてある。現在もアメリカの覇権主義的世界支配に対する異議申し立て、抵抗としての政治や武力を手放し得ないという背景もある。この点を見落として単純に政教合一体を批判することはできません。>

 と言う。そして、中国共産党政権はカソリック(天主教)とプロテスタントについてはほぼ自由な礼拝が認め、相当程度に宗教信仰の自由を許している。しかし、チベット仏教と新彊イスラムについては厳しい監視下に置いている。これはチベット仏教も新彊イスラムも政教合一体だからだ、と書いている。ここがポイントのようだ。

 欧米の人権批判には明らかに重大な見落としがある、という。欧米や日本の現状と中国やアジアの状況は同じではない。政教分離か政教合一体か、という根本問題がそこにある、と。

 つまり、もし仮に今、本願寺の門徒衆が政治集団として日本に存在していると考えた場合、自民党の支配などは一夜にして吹っ飛ぶ。しかし、門徒の信仰は徹底した政教分離となっているので、彼らがどこにお寺を建てようと、どこで宗教集会を開こうと日本の政治に危機をもたらさない。しかし、チベット仏教徒は違う。

 チベット仏教とは現在、中国全土で在家、出家を含めて1600万人いる。うち約600万人がチベット人。チベット自治区に約280万人のチベット人仏教徒が、自治区外にさらに約320万人にいる。それ以外の1000万人はチベット人ではなく、その多くは四川、雲南、内蒙古一帯の少数民族だ、という。また、漢民族のチベット仏教徒も増えていて、100万人ちょっと欠けるくらいいる。

 この1600万人のチベット仏教徒が仮に政治集団、政治結社になったと考えると、これは直ちに中国の政治を揺るがす巨大な政治勢力に変わる。

 今日の中国共産党の党員数は7000万人を優に超える世界最大のマンモス政党だが、その凝縮力、政治結社としての結束力は相当に弱体化している。これだけ巨大化すればそうなる必然性があるとも言えるし、7000万人を超える政治結社としての中国共産党がイデオロギー集団であるより極めて濃厚な利権集団に変わりつつあることも大きな理由だ。これに対して、仮に1600万人のチベット仏教徒の政治結社が存在するとその結束力は極めて強く、たちどころに中国共産党支配を揺るがせる。新疆ウイグル自治区のイスラム教についても同じことが言える、という。

 ここでも回教イスラムが出てくる。中国西北地域の寧夏回族自治区を中心に全国に存在する回族ムスリムについては今世紀初頭までは政教合一体だったが、中国共産党の呼びかけに応じる形で政教合一性を相当程度克服し、今はほぼ政教分離体と言える状況にある、と。従って回族ムスリムに関しては宗教信仰の自由が相当程度認められている、とも書いてある。

 つまり、政教分離さえしてしまえば共産党にとって怖くないのだ、ということだろう。

 そして、ダライ・ラマの特殊性として現実主義者がトップとしていただくだけでなく、ダライ・ラマと政治路線で対立するチベット独立過激派もダライ・ラマに対する崇拝はびくともしない、と言うのだ。つまり、政教合一を主張する過激派にとっても政教分離を説くダライ・ラマが信仰の対象なのだ。

 そして、1980年代に胡耀邦総書記が中国の宗教政策に先鞭をつけた。82年文書は宗教信仰の自由を保障するため宗教集団に政教分離を求め、政治活動、反政府活動を行わないことを求めたが、これは片手落ちだった。というのは本来、国家と宗教主づ案双方が政教分離の義務を負う双務性が原則。だから、本来ならば国家のチベット仏教や椅子レムへの干渉も排除されねばならないが、82年文書にはそういう文言が全くなかった。国家が無制限かつ一方的に宗教集団の政治活動特に反政府活動を監視監督する側面だけ書かれた片務的なものになっていたのが82年文書の限界だった。

 84年にゴルバチョフが登場し、ペレスイトロイカを開始する。87年12月のINF全廃条約に結びつくデタントが欧州で起きる。平和の機運が強く表れる。デタントを背景にダライ・ラマは1988年のストラスブールの欧州議会の演説で初めて独立要求を放棄しかつ非暴力主義を唱えた。このことの持つ意味は非常に大きく、88年から現在にいたるまでダライ・ラマの考え方は一歩一歩成長を遂げてきている。全く変わらない、というのではない。

 中国政府のダライ・ラマ評価は間違えている。ダライ・ラマの主張を時代とともに仔細に追い、今日に至るダライ・ラマの位置を確認すると、ダライ・ラマは「自分は観音の化身であることを辞めてもいい」と、大きな一歩を踏み出している。つまり、観音の化身である以上、自分が政教合一の象徴であるしかない、と気付いたダライ・ラマがそう言い出した、というのだ。

 2007年に伊勢神宮をダライ・ラマが参拝した時にはっきりと、次のダライ・ラマはもはやチベット暦や宣託や予言によって生まれ変わりを選出するやり方を取ることなく、ローマ法王庁がやっている法王選出の方式のコンクラーベ、高い位置の枢機卿たちが何日もかけて討論し、最適なローマ法王を選ぶ方式をとってもいい、ダライ・ラマ制度を今後も存続させるかどうかは、これからもう一回根本的に考え直してもいいとすら言っている。

 問題はこのように政教分離を主導しようとする人々がダライ・ラマの周辺だけに限られていることだ。また、大乗仏教でありながら密教であるチベット仏教は様々な神々が大日如来を中心に集う。その中の憎悪の神、シャクデンを信仰する一派がいる。戦闘の神であもり、独立過激派にとって重要な働きをしていた。ダライ・ラマの存在そのものに疑問を持ち始めてもいるらしい。

 昨年3月のチベット騒乱が起きたが、中国政府は対応が難しい。ダライ・ラマも難しい。お互い譲ることのできない一線を持っているからだ。

 そこで、中国政府に要望だが、ダライ・ラマを「ペテン師」とだけ片付ける主張で交渉を中断するやり方はあまりにも粗雑過ぎる解決法だ、として、加々美氏は、

 <将来的にチベット、新彊イスラムを含め民族問題が、中国国家の屋台骨あるいは根幹を揺るがす時が来る可能性もあると思っております。>

 と結んでいた。結論の部分で大西氏と少しずれてきたが、事実の位置付けは似たようなものだった。やはり、政教分離か政教合一体か、は大きな問題のようだ。ついつい暴動というと民族問題に目が行ってしまうが、そこに宗教を見る視点も大事にしなければいけないようだ。

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韓国「進歩派」の悪足掻き(09年7月31日朝鮮日報)+雑誌「東亜」09年8月号の木村幹氏論文「「盧武鉉の死と李明博の中道路線」

◆韓国の「進歩派」がまた蠢いている

 韓国の金大中、盧武鉉一派の動きを見ていると、ちょうど社会党が無様な姿を国際的に晒して笑い者になっていた頃のことを思い出す。「岸は戦犯だから、米国の知識人は相手にするな」とか、いろいろその種の動きをしていた。

 今回は韓国である。朝鮮日報の7月31日日本語版ネットHPに<国家人権委、ICCPR委議長国への立候補を見送り>という記事が出ていて、はじめは何のことか分からなかったのだが、分かったのが盧武鉉一派の策動がいまだに続いている、ということだった。

 韓国は李明博大統領時代になって親日的な雰囲気も出て、北朝鮮は甘やかさず、日米韓の協調を第一とする路線に転換してくれたのだが、それ以前の北朝鮮利権に飢えた連中の跳梁跋扈がまだ続いているということか。

 <国家人権委員会(人権委)は30日、常任委員会を開き、来月3日にヨルダンで行われる国際人権B規約(ICCPR=自由権規約)委員会の議長国選挙に立候補しないことを決めた。>

 <今回の決定は、人権委の新委員長に玄炳哲(ヒョン・ビョンチョル)氏が任命されたことに対し、人権団体が反発していることが背景にある。盧武鉉前政権下で任命された安京煥前委員長が先月末に突然辞任し、玄委員長が任命されたが、人権団体は「人権問題にかかわったことがなく、専門家ではない」と批判している。>

 安という前委員長はどうみても北朝鮮の傀儡だったわけだから、李明博大統領が人事異動するのは当然で、その新任者が「人権の専門家」かどうか、など難癖に過ぎない。

 <今回の常任委員会ではとりわけ、韓国がICCPR委員会の議長国に立候補すること自体が争点となった。大陸ごとのローテーション制をとっているICCPR委員会の議長国は現在はカナダが務めているが、来年からはアジア・太平洋地域の国が議長国になる。その議長国を選ぶ選挙で韓国が当選すれば、玄委員長が自動的にICCPR委員会の会長になる。進歩派の人権団体は今月29日、ICCPR委員会の本部やアジア・太平洋地域の加盟国に電子メールを送り、「韓国がICCPR委員会の議長国になること、また玄委員長が会長になることに反対する」と主張した。人権委はこの日、長時間にわたる会議を開き、午後3時ごろに議長国への立候補自体を取りやめることを決めた。一方、玄委員長は「わたしの任命にただ反対することが、純粋な人権団体のすることなのか」と批判した。>

 ひどい話だ。韓国の国際舞台での活躍が一つ潰えたわけで、その原因が国内で足を引っ張る勢力だった、とは。閔妃の時代に戻ったわけではあるまいに、と思うのだが。

◆雑誌「東亜」09年8月号の木村幹氏論文から

 こういう状況がなぜ続いているのか? 新聞で読んでもあまり分からなかったのだが、雑誌「東亜」09年8月号の木村幹・神戸大学大学院国際協力研究科教授の2㌻見開きの<盧武鉉の死と李明博の中道路線>を読んで、少し理解した。

 まず民心の変化について木村氏は次のように書く。

 <盧武鉉死後の韓国政局からわかるもうひとつのことは、韓国における独特の「腐敗」に対する考え方である。周知のように、その死の直前の数カ月、盧武鉉は自らと親族あるいは側近の不正資金授受疑惑により捜査対象となっており、その自殺にもこの疑惑が長い影を落としている。そして、その自殺により、韓国の検察は、前大統領を死にまで追いやった「不当な捜査」を行ったとして、世論から強く糾弾された。捜査は直ちに打ち切られ、捜査の指揮に当たっていた検事総長は「国民に謝罪」し、職を辞することを余儀なくされた。>

 ここまでは日本の新聞でも大きく扱った。周知の事実である。

 <このような韓国の状況は、我々には奇異に映る。何故なら、それが如何なる個人的な不幸をもたらしたとしても、仮に盧武鉉が大統領在職時に手を染めていたならば、その真相は、明らかにされねばならないはずだからである。言い換えるならば、盧武鉉の自殺は結果として彼が大統領在職時に抱えていたかもしれない様々な問題を明らかにする機会を永遠に失わせた。>

 全くそうなのだ。ものすごく奇異なのだ。

 <もちろん、このような韓国世論の背後にあるのは、李明博政権が自らの政権運営に資するために盧武鉉に対する疑惑を恣意的に大きく扱っているのではないか、という疑いだった。よく知られているように韓国では政権交代の度に現政権が前政権の関係者を「腐敗」の嫌疑により摘発することが繰り返されている。そこに「腐敗」そのものと同時に潜在的な政敵である前大統領の政治的影響力を失わせようとする現政権の政治的意図があることはよく指摘される。なかんずく、今回の盧武鉉の不正資金授受疑惑に当たっては同じ出所の不正資金を李明博に近い人々もまた授受していたという事実があり、この点を曖昧にさせるために検察はあえて盧武鉉の問題を大きく取り上げたのだ、と世論の一部は理解した。>

 このような噂が飛び交い、盧武鉉のスピーカーとなり下がっていたMBSテレビなどはそのような内容の報道特集を何度も流したりした。しかし、こう考えるのは韓国民の半分程度だろう、と思う。思っていた。ところが、一時的な話であろうが、もっと多くの人たちが李明博への不信を表明したのだ。

 木村氏は盧武鉉の国民葬から5日後に行われたある世論調査を紹介する。「盧武鉉前大統領に対する検察捜査は政治報復」と答えた人が62.5%。「検察捜査は不公正」とした人が58.3%、「韓国の民主主義が後退している」とした人が65.9%だった、というのだ。李明博政権とハンナラ党への支持率は急落し、4年ぶりに野党民主党に対する支持率がハンナラ党を上回る状況すら現出した、と書いている。

 2000年の南北首脳会談から9周年の特別演説で元大統領である金大中は、李明博を国民の意見を無視する「独裁者」であると非難し、「行動する良心」の決起を公然と呼びかけた、という。

 次の段落が大切だ、と思う。

 <重要なのは、こうして韓国政治のイデオロギー的状況が再び左右に大きく分裂を始めたことである。例えば盧武鉉死後の世論調査では次期すなわち2012年の大統領選挙を巡る潜在的候補者間の支持率競争で不動の一位を占めるハンナラ党右派の朴槿恵に次いで盧武鉉政権下の保健福祉部長官柳時敏が一躍2位に浮上した。>

 面白いのはいつも先に先に、と目が将来に向かうので、2012年、つまり3年後の大統領選挙がいま取りざたされるのか。議論好きの韓国人らしい。

 <イデオロギー的な左右分裂の影響を受けたのは李明博自身も同様だった。「サラリーマンの神話」の持ち主として長いビジネス界での経歴を持ち、自らも「実用主義者」としての自負を持つ李明博であったが、大統領官邸が行ったある世論調査によれば世論における彼の位置付けは2007年の大統領選挙にてハンナラ党を離党した筋金入りの「右派」政治家として知られる自由先進党の李会昌よりも「右寄り」であったという。その理由として野党や市民団体による李明博に対する「右派」としてのレッテル張りがある、と大統領官邸は分析している、と言われている。>

 イデオロギー対決が表面に出てくること自体は望ましくないのだが、仕方ない部分もある。昔のように軍隊や警察で北朝鮮に通じている連中を取り締まれなくなっているとしたら、李明博政権とすれば非常につらいところだろう。

 そこで、李明博政権は新たに中間層を中心とする勢力を糾合し、これにより韓国社会を底支えしようと考え、この打開策として「中道強化論」を打ち出したのだ、という。

 しかし、木村氏によると、ことはそう簡単ではないそうだ。韓国において「左右」対立は「成長」か「分配」かの対立にとどまらず、外交的な色彩を帯び、

「保守」=「成長」重視+「親米」「反北」

「進歩」=「分配」重視+「反米」「親北」

 となるのだそうだ。

 つまり、このようなイデオロギー対決では経済政策で中道政策を取れても、外交政策では「中道」であることは容易ではない。だから今日の李明博政権の「中道強化論」は前途多難だろう、と結論付けていた。

 言ってみれば常識的な結論ではある。

 しかし、李明博政権がここまで追い詰められていたのか。

 支持率などは一過性のもので、選挙直前にどういう状況を作り出すか、を青瓦台は必死で考えるだろうが、基調としては良くない。

 やはり、木村氏が最初の部分で書いていたが、盧武鉉自殺をどう受け止めるか、の日本国民と韓国民の違いが大きいのだろう、と思う。日本国民だったら「そうは言っても悪いことをしたのだから、そのことについてはキッチリ正邪の判断をつけよう」となるだろうが、韓国は「アイゴー」で終わってしまった。感覚的、感情的な反応が非常に強く、いわゆる「進歩派」がその感覚的な部分で相当に共感を得ているようなのだ。

 日本の政治がゴチャゴチャして、韓国の政局まできちんとウオッチングできないのかもしれないが、今、韓国の李明博政権を全面的にサポートすることは日本の最大の国益だ、と思うのだが。

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中国が有り余るドルの外貨準備を使って海外企業の買収をすると。温家宝方針はドル離れの始まりか?~朝鮮日報09年7月31日

 7月31日の朝鮮日報日本語版の【コラム】<米中関係と韓国人留学生>は日本の新聞がなかなか書かない「本音」を書いていて面白かった。ウォール街でも人を見ていて、昔は中国人など全く相手にされなかったのに、今では中国人ということでプラスに評価され、レイオフの時に対象から外れることがあるのだが、韓国人留学生のアルバイトは真っ先に首を切られてしまう。米国でも国別にそういう格付けをしてる、という嘆き話だ。こういう話って、面白いと思うのだが、あまり日本の新聞には出てこないなぁ。人種差別みたいに受け取られると読者から「怪しからん」と言われそうだ、とか思って自主規制しているとしたら、馬鹿馬鹿しい話なのだが。

 少しかったるい記事ではあるが、読んでみよう。筆者は経済部次長待遇の金起勲記者だ。

 <米中両国の戦略対話は今、(韓国で)さほど重要な問題ではない。メディア関連法案をめぐる国会の紛糾、双竜自動車のストライキ、北朝鮮の核問題に関する協議などの問題で韓国中が混とんとしていた今月22日、中国の温家宝首相の発言に緊張が走った。中国の外貨準備高は6月末現在、2兆1316億㌦(約203兆3100億円)で韓国の9倍に達するが、これを中国企業による海外企業の合併・買収(M&A)の支援に充てようというのだ。記者にとってこれは、まさに韓国に対する「警告」のように聞こえる。中国メディアが報じたところによると、温首相は今月17-20日、北京で行われた「第11回海外駐在外交官会議」の席上でこのような発言をした。中国経済の総司令塔である温首相が、中国の外交官たちや国営企業に対し、公の場で「海外企業狩り」を命じたのだ。>

 この温家宝発言って案外意味合いが大きいんじゃないか? 例の米ドルというか米国債で持っている手持ちの外貨準備をどんどん使おう、使って外国の企業を買収しようという話のようなのだ。つまり、手元に屑になる可能性のある米ドルを置いておきたくない、という中国政府の意思表示だけでなく、それを実行するのだ。つまり、元の通貨政策を変更する際に大量のドルの手持ちが邪魔になっている現状を変えようということだ。

 <もちろん、中国による海外企業への投資は今に始まったことではない。だが、世界的な金融危機によって損失を被ったにもかかわらず、むしろ投資を促進しようという姿勢は、ほかの国とは完全に違うものだ。中国石油天然気集団公司(ペトロチャイナ)、中国アルミ業公司(チャイナルコ)、中国電信(チャイナ・テレコム)、中国銀行といった国営企業はただでさえ「食欲が旺盛」だが、今や政府の命令にまで従い、米国・日本・イギリス・ドイツ・オーストラリア・韓国といった国々への進出に向けアクセルに足をかけたというわけだ。>

 有り余る金で外国企業を買収する、という話自体は日本がバブルの際にロックフェラービルを買おうとしたり、と類似例がたくさんあるのだが、有り余る外貨準備を減らすためという見え見えの目的でやる、というところが国際投資家にどう評価されるか、だ。これがドル暴落のトリガーを引くことはないだろうが。

 <中国が海外企業を買収し、経営に成功すれば、自国の人材を派遣したり、海外在住の中国人たちとのネットワークも形成することができる。世界的に華僑・華人の人脈が次第に広がっているのもそのためだ。米ニューヨークのウォール街には、その影響が如実に表れている。今や世界の市場で中国企業や中国人と競争しなければならない韓国企業や韓国人たちには、新たな課題が与えられた。>

 ここからが最初に書いた部分だ。

 <米国の名門高校や大学・大学院で8年間にわたる留学生活を送り、ニューヨークの投資銀行で1年間働いたキムさんは、昨年末に韓国へ帰国した。経済危機の中、ウォール街の金融関連企業は「力がない」韓国系の社員たちを第1次解雇対象者のリストに載せたのだ。キムさんは「米国で中国の投資家の影響力が大きくなったため、中国人の友人たちは雇用が守られた」と話した。また、ウォール街の投資銀行で働くチョンさんも、「米国企業でアジア人の社員の仕事は限られているが、中国のパートナーの影響力は大きくなる一方、韓国のパートナーたちは外部の援助がほとんどないため、減少の一途をたどっている」と語った。>

 そういうものなのかぁ、と本当に驚いた。こういう話は知らなかった。韓国人は英語がうまいし、度胸もあるから、日本人よりもものすごく多いスケールで国際機関や多国籍企業で働いているのだろう、と漠然と思っていたのだが。

 <中国の大企業の米国進出はまだ初期段階にあるといえるが、中小企業や自営業者まで含めると米国での中国企業の影響力は小さくない。記者は2007年12月、世界的な経済学者であるマサチューセッツ工科大(MIT)のレスター・サロー教授とニューヨーク・マンハッタンのホテルで会い、中国の人材の米国への移動について意見を交換したことがある。青いセーターにジャケットを重ね着したサロー教授は記者に対しこう語った。「中国人の生活水準が向上したことで、米国へ移住する中国人が次第に増えている。MITやハーバード大で自然科学や工学を学ぶ優秀な学生たちの中で中国人が占める割合がどれだけ高いことか。そのうち米国で教育を受けた中国系の大統領が登場する可能性もある」。>

 人口が多いということはメリットなのだ。日本は明治維新後、間違えた考えを持っていると思う。

 <昨年現在、米国の大学で学ぶ韓国人留学生は12万7100人で、中国人(9万210人)よりはるかに多かった。だが、韓国人留学生の米国での就業機会は中国人留学生に比べ狭まりつつある。中国は自国の企業や華僑・華人のネットワークによって留学生たちをバックアップする一方、韓国人留学生たちは事実上「放置」されているためだ。そうでなくても今週、ワシントンで行われた米中戦略経済対話に世界中が驚き「ついに中国が米国の最も重要なパートナーになったか」と騒がれているが、そんな中でまた韓国人留学生たちが不利な立場に立たされるのではないかと、心配でならない。「アメリカン・ドリーム」をつかむことができず韓国へ戻り、韓国で教育を受けた人たちと就職をめぐって争わざるを得ない留学生たちに対し、韓国政府は果たしてどんな対策を講じていくのだろうか。>

 なるほど、12万人の韓国人留学生がアメリカの大学で学び、中国人の9万人よりも多いというのだが、もはや日本人は問題にならないほど少ないのか?

 温家宝発言にしろ、米中対話にしろ、今後も米中両国をウオッチすべきであることを教えてくれているような気がする。

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2009年7月30日 (木)

金解禁に関する新事実:マスメディアの無責任さに怒りを感じた~岩波書店「図書」09年8月号の松尾尊兊氏論文「石橋湛山と賀屋興宣」を読んで

 本屋の前に「どうぞお持ち下さい」と書いて積んであった岩波書店の月刊PR誌「図書」(一応定価100円)を手にとって、読んでみた。冒頭の論文、松尾尊兊氏の「石橋湛山と賀屋興宣」が面白かった。松尾氏は日本近現代史研究家である。

 懇意の古書店主人が一通の書簡を見せてくれた、という。昭和30(1955)年10月15日の日付の石橋湛山から賀屋興宣氏への書簡で、1955年9月の巣鴨からの仮出所を報告する挨拶状を受け取ったお礼状だが、それにしては形式的な書き方ではなく、親身が籠っている、と見て、松尾氏は二人の接点を調べ始める。

 この時、石橋湛山は第2次鳩山一郎内閣(日本民主党)通産大臣で、翌11月には保守合同の自民党が誕生、引き続き通産相にとどまった。

 全集ものの威力を知るのは、研究者の調査方法を見てである。松尾氏は石橋湛山全集全15巻の総索引で「賀屋興宣」の項目を引くと、全部で8ヵ所あった、という。そのすべては第1次近衛文麿内閣の賀屋蔵相(1937~38年)に対する期待や批判、2ヵ所は東条内閣蔵相名の言及だったが、私的交流を伺わせるものはなかった、と。つまり、夏目漱石全集でもそうだが、やはり全集の醍醐味は総索引にある、ということがよく分かる。

 ところが、賀屋が池田勇人内閣の法相を務めていた1963年前半に日本経済新聞に連載し10月に第19集として書籍化された「私の履歴書」には「雑音会」という耳慣れない会合のことが出ており、このメンバーに石橋湛山の名前がある、というのだ。

 石橋湛山氏は東洋経済新報主幹、高橋亀吉氏は元東洋経済新報記者だったが当時は独立して高橋経済研究所所長。小汀利得氏は中外商業新聞(現・日経新聞)経済部長、山崎清純氏は時事新報記者から読売新聞に移籍した人。この4人が普通は「4人組」と言われたが、時事新報記者の西野喜代作氏(「歴代蔵相伝」「半世紀財界」などの著書あり)も参加していた、という。

 松尾氏の調査は進む。この「雑音会」とは何か? 経済評論家の会合らしいが、実は1930(昭和5)年に浜口雄幸民政党内閣の井上準之助蔵相が第1次大戦後の懸案だった金輸出解禁、つまり金本位制への復帰を断行したのだが、この金解禁は世界恐慌の嵐に「戸を開け放した」(武藤山治)効果を生み、昭和台恐慌の惨事を現出した。

 この時の様子を結構詳しく書いているのだが、要は井上蔵相は大蔵省の正規の手続きを経ないで重要問題でも省議を経ずに、所管の課長を電話で呼び出して決済するやり方で進める井上専制大蔵省だった、という。だから、当時は「大蔵省の中に井上財政、金解禁に反対する勢力はいなかった」と言われ、歴史はそう書かれているのだが、実はそうではなかったことがこの書簡で明らかになった、というのだ。

 つまり、蔵相秘書官などを務めた賀屋が司計課長になって少し暇になった時に、「雑音会」メンバーと大蔵省主計局メンバーとの懇談会をセットし、石橋湛山や高橋亀吉の金解禁反対の意見を聞いて、意見が一致していた、というのだ。

 有名な史実としては海外駐在の財務官、津島寿一が欧米財界の意向を踏まえて新平価で金輸出解禁すべきだ、という意見を抱いて帰国すると、井上大臣の命により再び欧米に赴き旧平価での解禁という方針の下で予想される正貨流出に備えてのクレジット設定に苦労した、という話がある。だから、今までは旧平価での金解禁に反対したのは津島氏だけだ、と思われていたのだが、そうではなく、大蔵省の中でも新平価での解禁が望ましいと思っていた勢力があった、ということが新たに分かった、というのだ。これが新発見だそうだ。一通の手紙からここまで調べるというのは、流石に専門家はすごい、と思う。

 ただ、驚いたのはそこではなく、論文の後ろのほうに出てくる当時の雰囲気である。石橋湛山ら「4人組」はマスメディアから「国家の大方針に弓を引く非国民」などと脅迫され、一斉に批判されていたのだ、という。

 今も昔も大新聞は大きな流れができると、その流れ自体の正否を判断する能力がなくなり、阿る論調一色になる、という日本のメディアの怖さを十分に示している部分だった。

 それも読売新聞、毎日新聞(東京では東京日日新聞)、朝日新聞が一斉にその論調で石橋氏らを批判した、という。だから、この「4人組」たちは日銀裏の東洋経済新報社を作戦本部として集まり、自分の持っている新聞や雑誌で新平価による金輸出解禁論を声高に論じていたらしい。

 メディアはこうして煽った金解禁が失敗しても自分たちが煽った責任にはほう被りし、井上氏一派だけを責めた。これで血盟団が井上氏を殺害する陰惨な事件まで起きるのだが、当時のマスメディアの無責任さは今の大手マスコミの無責任さと二重写しになる。

 若い記者諸君はこういう歴史こそ勉強して、博識を持って記事を書いてほしいものだ。

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韓国統一研究院の北朝鮮報告書は生温いが、韓国紙の情報の多さは見習うべきだ~09年7月30日朝鮮日報、29日中央日報

 朝鮮日報7月30日付日本語版ネットHPに安勇炫記者の<「北朝鮮の攻勢は7月4日に終わった」/統一研究院が報告書>という記事が掲載されていた。読んでみる。

 <国策研究機関の統一研究院は29日、懸案分析の報告書で「北朝鮮の全面攻勢は今月4日(米国独立記念日)に中・短距離ミサイル7発を発射したのを最後に終結した。現在は米国と関連国の反撃が始まったところ」という見解を表明した。>

 時々刻々北朝鮮の動きを追っている機関がたくさんある韓国のこと、中には米国の機関と情報交換をしているところもあり、情報の正確性は凸凹だが、中には宝の山のような情報もある。

 <研究院はこの日、米朝双方が対話に言及しているものの「現在のところ、北朝鮮は米国が要求する“逆行不可能な非核化”を受け入れることができず、米国は北朝鮮の核保有を認めないだろう。(米朝の)対峙の局面が続く間、意味のある対話や交渉の可能性は極めて低い」と報告した。パク・ヒョンジュン先任研究委員は、北朝鮮が昨年10月以降、全面攻勢を取ることになった理由として、「金正日総書記の健康問題」を挙げた。短期的には孤立を甘受したとしても、金総書記の健康問題に伴う対内・対外面での動揺を遮断し安定的な権力継承を成功させるためには、強硬策が必要だった、と説明した。>

 健康問題なのか?

 <こうした戦略は成果もあった。住民の労働力を総動員する「150日戦闘」を通じ、市場勢力を弱めて内部統制を強化した。2回目の核実験など対外的な挑発で6カ国協議の代わりに米朝2国間会談という新たな議題も提示した。しかし「核実験後に採択された国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議1874号が北朝鮮を守勢に回らせた」(徐載鎮統一研究院長)と分析されている。特に米国による船舶の遮断と金融制裁は北朝鮮にとって痛手となるという。>

 やっぱり国連決議が効いているのは間違いないようだ。

 <現在米国は北朝鮮が単に交渉の場に出てきただけでは報奨を与えない、という立場を繰り返し表明している。しかし、権力継承期にある北朝鮮としては米国が要求する「核の放棄」を容易には決断しがたい状況だ。統一研究院は「もし北朝鮮が後継体制の正当性を核兵器の固守に求めるなら、さらに困難な危機に直面するだろう」と語った。>

 何か生温い分析だと思う。核兵器開発の位置付けをはっきりさせていないからだ。北朝鮮は国家が滅びようと、国民が死に絶えようと金王朝を存続させるため、または金王朝の尊厳を守るためには核開発を続ける、ということではないのか? 誰かが書いていたけれども、北朝鮮はそう生温くない。自分たちが滅びるのならば世界全体を道連れにしてやる、という気迫が外交政策の隅々にまで浸透している。だから、中国も米国も、その北朝鮮の気迫に負けてズルズルと譲歩してきたのだ。

 外交における気迫の大切さを北朝鮮が日本人に教えてくれている、反面教師となってくれている、と思えばいいのかもしれない。

 この間読んだ南の国々の国際会議でも北朝鮮はそこそこ頑張っている。あれだけ日本人から嫌われているのに、何とか自分たちの立ち居地を確保しているようにもみえる。

 北朝鮮から学ぶべきことは何なのか? 核開発を日本がする、ということでないことは確かである。核開発はリスクが大きく、国際政治上メリットが少ない。核兵器の非保有国であり続けるだけでなく、核保有国に対して核廃絶へ向けての努力をサポートする努力をしないといけないのだろう。

 北朝鮮に学ぶべきは、その意志の強さと気迫。そして、国際情勢分析の素早さ、正確さだろう。朝鮮民族は昔から日本人以上に国際感覚が豊かだった。これは半島国家の宿命でもあったのだが、島国の人々と違った国民性がそういう手法を研ぎ澄ましたのかどうか。

 日本人はそういう点は謙虚に朝鮮半島の人々に学ばねばならないだろう。

◆中央日報7月29日

 中央日報は7月29日付で<中国、北朝鮮のバナジウム密搬入を摘発>の見出しで中国の地方新聞の記事を転電していた。面白いので、これも書いておく。

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2009年7月29日 (水)

塩爺の政治論は良識的で、グサリと心臓を抉るものがある~09年7月29日夜、八重洲ブックセンターの藤原書店主催の塩川正十郎氏ミニ講演

 塩川正十郎元財務相が7月29日夜、東京駅八重洲南口から大通りをはさんで建つ八重洲ブックセンター8階ホールでミニ講演会とサイン会を行った。藤原書店が09年6月30日に初版を出した「ある凡人の告白 軌跡と証言」(定価1575円)のPRのために催したらしい。後藤新平に関する集中的な書籍出版をはじめとして、いまや岩波書店を押さえ、学術書の盟主のような出版社になったものの、このようなサイン会の経験はあまりないらしく、関係者も緊張しながら仕切っていたのが新鮮だった。

ある凡人の告白―軌跡と証言 ある凡人の告白―軌跡と証言

著者:塩川 正十郎
販売元:藤原書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 会場に入ると1575円を支払って紙切れをもらい、ミニ講演の終了後、その半券を出して、本に塩爺にサインしてもらう、という趣向である。そう広くない会場だったが、満員で後から椅子を足したくらいの盛況ぶり。

 友人に聞いて、行ってみたのだが、びっくりしたのは塩爺が約25分間の講演の間、背筋を伸ばし立ったままで話をしていたことだった。

 88歳である。それも国会議員の時代、がんであることを告白した異例の議員として騒がれたように、体だって決して万全ではない。でも、がんは克服したらしく、TBSの朝の対談番組でも元気いっぱいの活躍をしているし、言うことに芯が通り、ぶれないのが信頼感を高めているようだ。

 来ていた方々はいずれも年配というか、40代以上が圧倒的に多かった。話の内容は非常にしっかりしていた。著書の中で提言している内容が多かったのは当然だが、短い時間に大筋を話してくれるので、理解しやすかった。こういう機会を作ってくれた藤原書店さんに感謝感謝である。

 塩爺の話のエッセンスだけ紹介しておこう。

▽マニフェストと選挙公約は違う。選挙公約は約束ではないが、マニフェストは約束だ。だから、マニフェストを出すのは政党としてものすごい責任がある。どのような経緯でマニフェストが作られたか、を選挙民に明らかにする必要がある。しかし、今の政党はそれを全くやっていない。私は「マニフェストじゃなくてチラシだ」と言って怒られたが、遊園地にあるお茶屋のようにあれもある、これもある、と書いてあるだけだ。財源も書いていない。イギリスのマニフェストはそこを十分書いている。

▽今度の選挙で政党がはっきりさせなければならないことが三つある。

▽一つは日本の安全保障について確固とした方針を示してほしい。政治が国民に対する責任をないがしろにしている。中国の軍事力拡大はものすごいことになっている。潜水艦も昔はエンジンの潜水艦だったが、原子力潜水艦になり、10隻だったのがいつの間にか70隻。2013年には航空母艦をつくると言っている。一方で米国の中国への態度が変わってきた。日本ではお金の問題だろう、中国が世界一のドル保有国になったから変わったのだろう、というが、そうじゃない。軍事力がパラレルに、同等になってきた。

▽そこで日本にはやるべきことがある。米国が一番困っているのは原子爆弾だ。米国は核拡散を防ぐことを最大の政策としている。オバマ大統領は核兵器の削減を口にしたが、米国内は動いていない。軍の反対がある。確かにアメリカだけ減らしても仕方ない、という話もある。日本にとってのチャンスはIAEAの事務局長に天野さんという日本人が就任することが決まったことだ。この人がトップにいる時に核兵器の廃棄に向かって動いてみよう、と。ロシアの核搭載潜水艦はウラジオストックでほったらかされている。インド、パキスタンにも核兵器の貯蔵の方法が悪い。日本がちゃんとやってやるから、削減しなさい、ということができる。天野さんを中心に日本政府が金も技術も提供すればいい。そういうことができるのではないか、と思います。

▽安全保障に関してもうひとつの大事なことは6カ国協議だ。10日ほど前に北京に行ってきた。その時、大学教授と話したのだが、今まで中国の方々は「北朝鮮は核爆弾なんてできっこない」とたかをくくっていたのだが、ここにきて中国は北朝鮮が本当に核爆弾を開発している、と緊張している。大陸間弾道弾のような大きな核ミサイルではない、使える戦術核についてソ連のSS20の間で苦労した記憶が中国人の間にもあって、ここのところ中国の北朝鮮へのあたりがきつくなっている。大学教授は「北朝鮮の核開発の可能性が高いということに中国も関心を持っている」と言っていた。中国もそういう認識になってきた。

▽そこで今中国が中心でやっている6カ国協議を日本でやる。事務局を日本に持ってきて、やってやる、というを提案してほしい。国の安全保障について政府はもっともっと積極的に動いてほしい。

▽二つ目は経済の活性化です。産業構造の改革を進めるべきなのだが、根本は財政のあり方と経済のあり方を見直すことです。民主党は消費税率アップについて鳩山代表が「やらない」と言い、岡田幹事長は「やる」という。ぶれている。自民党だって「当分はやらない」と曖昧だ。そんなことじゃ持たない。財務省幹部にこの前話したのだが、消費税率アップだけやろうとすると、消費税は逆進性があるので反対されて持たない。だから、所得税、法人税、保険料・年金と合わせて四つの絡みで進めるべきだ、と話しました。四つを兼ね合わせて進む、ということにしないと国民は「今、消費税はあげません」と言いながら、子供の手当てをアップしてくれるのはいいが、これからどれだけの負担増が来るか、と心配している。実はこのことと政治不信が一体になっているのです。

▽世界同時不況から抜け出すために、まず消費を増やさなければならない、だから私のところにもきましたが、商品券のような12000円が来て、2兆円のばらまき政策があった。しかし、消費不況対策のの根本は労働分配率を高めることです。今、日本では平均して利益の45、46%くらいだ。中小企業では80%くらいになっているから、経営者は利益が出なくて大変なのだが、大企業は45%だ。これを10%くらい増やすことをしてみたらいいんじゃないか。2001年に小泉政権ができたが、小泉政権の前の森政権の時の2000年には労働分配率は70%だった。小泉政権で輸出が良くなり、景気が良くなって、労働分配率がガクンと下がってくる。だから、消費テコ入れのためにも労働分配率アップをやれ、と言っても日本経団連は全く動かなかった。世界的な産業競争力がなくなる、とか言うが、そんなことは全くない。5,6%でも上げれば日本の空気がガラリと変わってきます。非正規従業員の分配率も上げてあげるんです。今、経営者の所得はものすごく高い。この点を経営者団体には考え直してほしい、と思っています。

▽第3点として、政党は社会保障についてちゃんとした方針を出してほしい、ということです。負担と給付が公正に行われているかどうか、が問題なのです。公平に、ではなく、公正に、です。基礎年金は年金の一部ではありますが、あれは社会保障です。ところが年収1000万円のお年寄りも200万円のお年寄りも同じようにもらっている。これをどう考えるか。お年寄りでも相当に収入のある方には応分の負担をしていただく、ということを考えたらどうだろうか、と思うのです。私は88歳で後期高齢者もいいところです。私にはそう所得はないが、所得のある人もいる。多い。ところが若い人たち、特に50代の人たちが一番負担が多くて苦しんでいる。子供の世話がまだある。教育費もかかる。自分の退職の日が近づくので用意をすることも必要になってくる。こういう世代の人たちと、70、80歳のじいさん、ばあさんで気楽に遊んでいる人に同じ年金というのはおかしい。

▽社会保障の年金と自助努力分の年金を分けて自助努力分の年金は所得税の控除をすべきです。積立金に対する税の控除がとても低い。ここが西欧と日本の違いです。80歳以上とかの超高齢者には社会保障として年金を出すとか、どこかで線引きをして実行できる。

▽私が一番心配するのは医療問題です。(と言って金さえあれば、金持ちクラブに入会し、初期がんの手術に欧米にいったり、アルツハイマーでも本当の初期にアメリカに行っていい薬で=日本ではまだ認可されていない=治療してくると、すっかり治る。つまり、これからは人の命も金次第という厭な世の中、医療の資本主義化が進みそうだ、と言って、診療報酬改定や医療審議会、薬事審議会で米国並みに新薬を早く認可しないと、金のある人間だけが生き残る社会になる、と警鐘を鳴らしていた。)

 これが塩爺が強調したい3点だった。

 最後に選挙制度改正の歴史を振り返り、どうして今の衆院小選挙区比例代表並立制になったのか、の淵源をしゃべり、比例が入っているので、2大政党にならない、小さい政党があっちについたり、こっちについたりする。引っ張り合いをするうちに100円が110円になり、という具合に値段が吊り上がり、そこにポピュリズムの根源がある、と言っていた。平成4、5年の自治相時代に政府案として出して否決されたが、その最初の原案は衆院の定員を500から450に減らし、1選挙区3人として、150選挙区に再編する。そうすると2人の政党と1人の政党が受かるので、多数党ができる。比例区がないので、中小政党がなく、必然的に2大政党ができる、という案だった。自民党と社会党は賛成したが、公明党、共産党、民社党が反対し、その反対の社会党が出した内閣不信任決議案に田中派の小沢一郎、羽田孜らが賛成して無所属になったので、宮沢首相が衆院を解散し、細川護煕政権ができ、細川政権の手で成立させた選挙法が比例180、小選挙区300というものだった。比例が入ったので2大政党ができない。どうしても自民中心のグループ、民主中心のグループという形になる、これがポピュリズムの根源になっている、と言っていた。

▽参院選挙をあと2回やるまでは「ねじれ」は解消されない。とすれば、今回の選挙は政党本位の投票ではなく、人物本位の投票をしよう、という結論だった。都議選で実感したのが政治家の年寄りパージだった、と。経済界の人たちと話す機会があり、「今は政治家の高齢者がパージされているが、この次は経済界だから」と言ったのあ、と。今の日本の企業が振るわないのは実は課長レベルではいい変革案がまとまっても、社長、会長がリスクを取りたくないので全部つぶしてしまい、変革をさせないのだそうだ。だから会社は変わらない、伸びない。だから、来春闘くらいで労組から「年寄り経営者は辞めろ」の大合唱が起きかねない、と言ったら経営者たちは頭を抱えていた、という話。そして、持論の「世の中というものはバランスが大事。老荘青のバランスでやっていくべきだ」で終わりにしていた。

 随分とゆったりと話しており、頭に入りやすかったのだが、正確なメモをした訳でもなく、ICコーダーに録音していたわけでもなく、いい加減な記憶をもとに書いているので、数字などで間違いがあるかもしれません。

 このブログからのコピペで塩川正十郎氏の発言を引用するのは危険なのでやめてください。私は責任を負いかねます。ただ、面白そうな発言だったし、米寿の良識ある政治家(引退しても政治家は政治家だと思う)の発言が、こんなにいい内容だ、考え抜いた内容だった、ということを紹介したくて書いたまでです。

 塩川正十郎氏は現役政治家時代から地味だったけれども、かなりの勉強家だったらしい。その積み重ねが80歳を越して花開いているとしたら、何と素晴らしいことなのだろう、とも思うのだ。

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2009年7月28日 (火)

エドワード・ライス在日米軍司令官の記者会見を聞いて~09年7月28日

 7月28日正午から、内幸町の日本記者クラブでエドワード・ライス在日米軍司令官を招いた昼食会があり、行ってみた。例の日比谷公園の旧市政会館向かい側の赤レンガの蒲鉾型のビルである。

 サイマル・インターナショナルの西村さんという通訳の日本語を頼りに話を聞き、質疑応答のやり取りを聞いたのだが、質問と回答がミスマッチすることが多かったような印象だった。

 「最前線の軍人で政治家ではないから、政治的な話はできない」という理由だけでなく、どうも日本人の質問者には民主党政権になってアメリカが日本切り捨てをするのではないか、中国と仲良くなって日本はパッシングされるのではないか、という「恐怖心」のようなものが心の底にあるように見えたのだが、ライス氏は1978年に空軍士官学校を卒業後パイロットとして飛行時間3800時間以上を誇り、2001年10月の「不朽の自由」作戦では航空団の司令官を務めた歴戦の兵だけに、そのような感傷的なメンタリティーを理解できず(? もしかしたら、理解しようとせず)に、実務的で現実的、楽観的な話をしていたのが印象的だったのだ。

 拡大抑止問題については日米で長い時間かけて合意し、現在実行されており、日米合意が存在する限り日本が独自に核保有国にならねばならない理由はないし、核兵器の拡散となれば今よりも日本の安全保障上の立場は弱くなってしまう、と明言した。米国の公式見解である。オバマ大統領、クリントン国務長官も何度か同じような話をしていた、と思う。

 米軍司令官として日米同盟を軍事だけでなく、経済、通商、政治など全般の同盟と考える立場であることは当然なのだが、面白かったのは「思いやり予算」つまりホスト・ネーション・サポートについて「日本国民、米国民が同盟関係を続けるための根本的取り決めの内容として、米軍は日本の安全保障・防衛を提供している。その見返りとして日本は在日米軍を日本に置くことに合意してもらっている。日本側の確約は思いやり予算として具現化されている。米軍は日本を守ることを確約しているが、日本は憲法の制約があって米国を守れない。日本側が同盟国に貢献する主たる内容の一つが思いやり予算だ。日本の国民にとっても思いやり予算は意味があると思う。在日米軍についての思いやり予算を出すことの見返りとして、直接、日本に駐留している米軍だけでなく世界に展開する米軍もこの地域の安定のために役立つ。これも同盟関係の一部だ」という趣旨の話を繰り返ししていたのだ。

 F22日本売却については政治家でないのでノーコメントだったが「F22は今、世界のどこの国にも輸出できない。この技術を持っているのは米国だけだ。ただ、米国と強い同盟関係の絆で結ばれた日本の沖縄にF22が前方展開しており、これは世界のどの地域でもないことだ。世界では米国本土以外では沖縄だけにF22が前方展開しているということは世界一強い同盟関係があってのことなのだ」と言っていた。そう聞くと「なるほど」と思ってしまうのだが、でも売ってほしい、とも思うのだが。

 冒頭スピーチでアジア・太平洋地域では国対国の争い以上に非伝統的な脅威が今後増えるだろうから、非伝統的手法でなるべく多くの国が協力して非伝統的脅威に立ち向かうベきだ、と話していたが、質疑応答で「中国が軍拡している。どういう意図と見ているのか」と聞かれると、得たりとばかりに「私は中国首脳がどう考えているか洞察できない。だからこそ中国との対話を行い、エンゲージ(関与)させる努力が大切なのだ。太平洋の国々を脅威としてみるのではなく、すべての国々とパートナーとなり得るということ。国境を越えた脅威に我々は対処しなければならないのだから、今、中国を建設的に関与させるチャンスの窓が開いている。ここ数日、ワシントンで米中戦略対話が行われているが、この対話はすべての分野にわたっている。すべての分野でのエンゲージ面との努力をしている最中だ」と話した。

 「私たちは軍事的分野でも中国のエンゲージメントを引き出そうとしてきた。今後も続けるつもりだ。すべての当事者が透明性を持つことはすべての国にプラスになる。誤算することが少なくなるからだ。建設的なプロセスは米中だけでなく、太平洋のすべての国々にも世界の国々にも利益をもたらすと思う」とも語った。

 また、民主党政権については「米国でも何度も政権交代があったが、同盟関係は揺るぎがない。日本国民がどの党を選ぶのであれ、今後も日米同盟関係は続くという確信を持っている」という優等生答弁で、それ以上の詳細な質問には「仮定の話には答えれらない」で通していた。

 米軍再編に絡んだ普天間基地移転の遅れについて文句を言うこともなく、すべてが楽観的。昨年4月に着任し18カ月間、横田基地にある在日米軍司令官室に勤務しているそうだだが、典型的な米軍人という感じだった。日本の自衛隊の幹部も韓国や中国で同じように記者会見する機会があってもいいのに、と思う。田母神氏のような軍人は少ない。今後は制服組にも意見を表明させるシステムを作らないと、日本の「軍」はまたまたおかしなことになるのではないか、とふと思った。

(7月29日追記)

 朝日新聞7月29日朝刊がライス氏の記者会見を報じていた。民主党の主張する地位協定見直しについて否定的な発言をした部分をニュースにしていたが、これがニュースなのだろうか? 軍人は今までの政治的枠組みをなぞることしか言えないわけだし、日米地位協定については政治レベルで「見直ししない」という約束をしているのだから、ライス氏の発言をニュースとして扱い、いかにも在日米軍が民主党と対立している雰囲気を出すのはおかしいのではないか、と思った。

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2009年7月26日 (日)

緒方竹虎と正力松太郎がCIA協力者だった事実~09年7月26日毎日新聞朝刊

 面白いニュースが毎日新聞7月26日朝刊1面トップに出ていた。<緒方竹虎を通じCIA政治工作/50年代・米公文書分析/「彼を首相にすれば、日本は米国の利害で動かせる」>である。いわゆるCIA「緒方ファイル」の分析から出てきた新事実だ。「アメリカよ」取材班の執筆とあった。

http://mainichi.jp/select/today/news/20090726k0000m030117000c.html

 読んでみよう。

 <1955年の自民党結党にあたり、米国が保守合同を先導した緒方竹虎・自由党総裁を通じて対日政治工作を行っていた実態が25日、CIA(米中央情報局)文書(緒方ファイル)から分かった。CIAは緒方を「我々は彼を首相にすることができるかもしれない。実現すれば、日本政府を米政府の利害に沿って動かせるようになろう」と最大級の評価で位置付け、緒方と米要人の人脈作りや情報交換などを進めていた。米国が占領終了後も日本を影響下に置こうとしたことを裏付ける戦後政治史の一級資料と言える。>

 確かに戦後一級の資料だろう。

 <山本武利・早稲田大教授(メディア史)加藤哲郎・一橋大大学院教授(政治学)吉田則昭・立教大兼任講師(メディア史)2005年に機密解除された米公文書館の緒方ファイル全5冊約1000ページを約1年かけて分析した。内容は緒方が第4次吉田内閣に入閣した1952年から自由党と民主党との保守合同後に急死した1956年までを中心に緒方個人に関する情報やCIA、米国務省の接触記録など。>

 相当に手間のかかった分析だっただろうなぁ。それにしても米国の民主主義は半端じゃない。米公文書館(アーカイブ)には宝の山がまだまだ眠っているのだろう。

 <それによると日本が独立するにあたりGHQ(連合国軍総司令部)はCIAに情報活動を引き継いだ米側は1952年12月27日、吉田茂首相や緒方副総理と面談し日本側の担当機関を置くよう要請政府情報機関「内閣調査室」を創設した緒方は日本版CIA構想を提案した日本版CIAは外務省の抵抗や世論の反対で頓挫するがCIAは緒方を高く評価するようになっていった。>

 内閣調査室の淵源である。このほかに日本版CIAを作ろうとしていた、というが、どういう機関をイメージしていたのだろうか?

 <吉田首相の後継者と目されていた緒方は自由党総裁に就任。2大政党論者で他に先駆け「緒方構想」として保守合同を提唱し「自由民主党結成の暁は初代総裁に」との呼び声も高かった。>

 緒方を中心としたメディアの歴史については、朝日新聞政治部記者だった人が2冊の本にまとめていた。

占領期の朝日新聞と戦争責任 村山長挙と緒方竹虎 (朝日選書) 占領期の朝日新聞と戦争責任 村山長挙と緒方竹虎 (朝日選書)

著者:今西 光男
販売元:朝日新聞社
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新聞 資本と経営の昭和史 朝日新聞筆政・緒方竹虎の苦悩 (朝日選書824) 新聞 資本と経営の昭和史 朝日新聞筆政・緒方竹虎の苦悩 (朝日選書824)

著者:今西 光男
販売元:朝日新聞社
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 <当時、日本民主党の鳩山一郎首相はソ連との国交回復に意欲的だった。ソ連が左右両派社会党の統一を後押ししていると見たCIAは保守勢力の統合を急務と考え、鳩山の後継候補に緒方を期待。1955年には「POCAPON(ポカポン)」の暗号名を付け緒方の地方遊説にCIA工作員が同行するなど政治工作を本格化させた。>

 サンフランシスコ平和条約で日本が独立した後もこういう動きが行われていたわけだ。

 <同年10~12月にはほぼ毎週接触する「オペレーション・ポカポン」(緒方作戦)を実行。「反ソ・反鳩山」の旗頭として首相の座に押し上げようとした緒方は情報源としても信頼され、提供された日本政府・政界の情報はアレン・ダレスCIA長官(当時)に直接報告された。緒方も1955年2月の衆院選直前、ダレスに選挙情勢について「心配しないでほしい」と伝えるよう要請。翌日、CIA担当者に「総理大臣になったら1年後に保守絶対多数の土台を作る。必要なら選挙法改正も行う」と語っていた。>

 これじゃあスパイじゃないか。緒方竹虎という人物の再評価(マイナスの再評価)が不可欠な情勢になってきそうだ。

 <だが、自民党は4人の総裁代行委員制で発足し緒方は総裁になれず2カ月後急死。CIAは「日本及び米国政府の双方にとって実に不運だ」と報告した。ダレスが遺族に弔電を打った記録もある。結局、さらに2カ月後、鳩山が初代総裁に就任。CIAは緒方の後の政治工作対象を、賀屋興宣氏(後の法相)岸信介幹事長(当時)に切り替えていく。>

 岸信介については塩川正十郎死の「ある凡人の告白」で米当局がA級戦犯の岸を市ヶ谷の東京裁判軍事法廷に一回も引き摺りださずに釈放するなど特別扱いをして、冷戦時の日本の反響防波堤のトップに据える意向を終戦時から持っていた、との岸氏の回想が出ており、興味深かったが、それを裏付けた。また、賀屋興宣はゴリゴリの右翼。岸との交友関係などで有名な人物だ。

ある凡人の告白―軌跡と証言 ある凡人の告白―軌跡と証言

著者:塩川 正十郎
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 <加藤教授は「冷戦下の日米外交を裏付ける貴重な資料だ。当時のCIAは秘密組織ではなく、緒方も自覚的なスパイではない」と話している。>

 まあ、こう書いておかないと、右翼が緒方の遺族を襲うかもしれないからね。

 【ことば】として緒方竹虎について説明してあった。

 <緒方竹虎 1888年山形市生まれ。1911年早稲田大学卒業後、朝日新聞社入社。政治部長、編集局長、主筆を経て副社長。2.26事件で同社を襲った陸軍将校と対峙し名をはせた。国家主義者の頭山満や中野正剛らと親交があり、戦争末期に中国との和平を試みた。1944年社主の村山家と対立し辞職。政界に転じ、小磯、東久邇両内閣で情報局総裁。46年公職追放、51年解除。52年に吉田首相の東南アジア特使となり自由党から衆院議員当選。吉田内閣で官房長官や副総理を務めた。保革2大政党制や再軍備が持論で54年に保守合同構想を提唱、自由党総裁に。55年11月の保守合同後、自由民主党総裁代行委員。56年1月死去。>

 大体分かる。三好徹の「緒方竹虎」でも読めばもっとよく分かる。

評伝 緒方竹虎―激動の昭和を生きた保守政治家 (岩波現代文庫) 評伝 緒方竹虎―激動の昭和を生きた保守政治家 (岩波現代文庫)

著者:三好 徹
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 2面には解説<戦後日本/「米の影響下」鮮明/CIA工作/日ソ接近防ぐ目的>が出ていた。後藤逸郎記者の署名記事だ。

 <CIAの「緒方ファイル」は戦後の日本政治が東西冷戦の下、水面下でも米国の強い影響を受けながら動いていた様を示している。米情報機関が日本の首相を「作り」、政府を「動かせる」という記述は生々しいCIAが日本で活動を本格化したのはサンフランシスコ講和条約・日米安保条約が発効した1952年からだ。米国では翌53年1月、共和党のアイゼンハワー政権が誕生。同7月の朝鮮戦争停戦を受け新たなアジア戦略を打ち出そうとしていた。>

 欧州正面の冷戦対策だけでなく、アジアでも冷戦対応が急務になったということか。赤坂の東急赤阪ホテルが角地にあり、山王神社方面に歩いていくと左手に白い建物、山王ビルがあった。フルブライト委員会の留学手続きなどを行う機関や米国の文化関係施設が入ったビルだったが、このビルにはCIAが入っているのだ、と子どもの頃に聞いたことがあった。

 <それがCIAの積極的な対日工作を促し、日ソ接近を防ぐ手段として55年の保守合同に焦点をあてることになった。当時の日本政界で、情報機関強化と保守合同に特に強い意欲を持っていた緒方にCIAが目をつけたのは当然でもあった。>

 緒方の人望は今では想像できないほど高かったようだ。

 <ただ、CIAの暗号名を持つ有力な工作対象者は他にもいた。例えば同じ時期、在日駐留米軍の施設を使って日本テレビ放送網を創設するため精力的に動いていた正力松太郎・読売新聞社主(衆院議員、初代科学技術庁長官などを歴任)「PODAM(ポダム)」と呼ばれていた。>

 朝日新聞も読売新聞もCIAの協力者だった、ということか。戦時中は陸軍にコバンザメのように寄り添い、敗戦後は米軍に寄り添った大新聞か。毎日新聞はこのころから出遅れていたのだろうか?

 <加藤哲郎・一橋大大学院教授(政治学)によると「PO」は日本の国名を示す暗号と見られるという。また、山本武利・早稲田大教授(メディア史)は「CIAはメディア界の大物だった緒方と正力の世論への影響力に期待していた」と分析する。暗号名はCIAが工作対象者に一方的につけるもので、緒方、正力両氏の場合、いわゆるスパイとは異なるが、CIAとの関係はメディアと政治の距離も問いかける。>

 この辺だな。穏やかに書いているが、どう見てもスパイじゃないか。

 <時あたかも、政権交代をかけた衆院選が1カ月余り後に行われる。自民党結党時の政界中枢にかかわる裏面史がこの時期に明るみに出たのも因縁めく。また、自民党に代わり政権を担おうとしている民主党がここに来て対米政策を相次いで見直したのは日本の政界が政党の新旧を問わず半世紀以上前から続く「対米追随」の型を今なお引きずっているようにも見える。>

 この最後の文章は不要だった、と思うのだが……。折角の歴史的スクープを矮小化してしまうのではないか。

 ただ、この時期に戦後日米政治の淵源を暴く内容が明らかになった意味合いは大きいと思う。CIAの情報網は蜘蛛の巣のように日本の権力層内に張り巡らされているのだろうし、鳩山首相誕生という事態が米CIAにとってどう映るのか、興味深いところだ。

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2009年7月25日 (土)

伝統の米朝悪口合戦が今も続く、と面白がっている韓国人記者~09年7月25日朝鮮日報

 朝鮮日報7月25日朝刊なのだろう、ネットの日本語版にアップしてあった。何ということのない記事なのだが、まあコピペしておこう。見出しは<米朝が非難の応酬/長い歴史を持つ「舌戦」>である。キム・ヨンジュ記者のリポートだ。
 <ヒラリー・クリントン米国務長官は先月ひじをけがしたときに「本当に運が悪い」と思ったはずだ。「悪運」はひじが回復した後、初の海外訪問にまで付きまとった。23日、タイ・プーケットで行われた東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)に参加した際、北朝鮮の外務省報道官は同氏を「小学生の女児」「買い物に出かけた“扶養が必要な”老婆」と呼んだ。また「(クリントン氏から)全く知性が感じられない」と述べた。>
 何か「面白いですよ~」と客集めする大道香具師の口上のようでもある。あまり品のある記事ではないな。
 <そもそもこの「口げんか」を始めたのはクリントン長官だった。同氏は20日、米ABCテレビに出演した際「北朝鮮は母親の関心を引こうとする子どもで、手に負えない10代のようだ」と非難した。23日には「彼ら(北朝鮮)にはもはや友人はいない」と発言した。>
 口喧嘩。
 <クリントン長官と北朝鮮の口げんかについて米紙ワシントン・ポストは24日「グローバル外交という学校のグラウンドで北朝鮮とクリントン長官の二人がシーソーに乗りながら互いに言い争っているようなものだ。重要な核兵器問題を忘れさせた」と報じた。1994年に北朝鮮の核問題をめぐって「ジュネーブ合意」を引き出したロバート・ガルーチ元米国務次官補は「米国は知ったかぶりをし、北朝鮮は怒鳴り声を上げるヤクザのように振舞っている。互いに意思疎通が全くできていないようだ」と評した。>
 全くお二人の言う通りだと思う。しかし、水面下で何が進行しているか、は別問題だ、というのが米朝関係の怖いところだが。
 <米国と北朝鮮のこうした「舌戦」は、その根が深い。米情報収集艦プエブロ号は1968年「スパイ活動をした」との理由で北朝鮮に拿捕された。当時、米国のジョン・スミス将軍が北朝鮮の主張を「とりとめのない煙幕作戦」と非難すると、当時のパク・チュングク北朝鮮側交渉代表は「ジョンソン大統領は戦争狂」「死体のような人間」とののしり対抗した。>
 1968年だったか、プエブロ号事件は。
 <米朝間の口げんかはブッシュ前政権時代にピークに達した。ブッシュ前大統領は2002年5月、金正日総書記を「ピグミー(小人)」「格式ある食事の席で行儀の悪い子ども」と非難した。これに対し北朝鮮は「ブッシュは悪の化身で政治的未熟児」と対抗した。>
 まあ、言葉を大事にする民族なのかな、両方とも。悪口の種類もたくさん持っている。
 <2年後、ブッシュ前大統領は金総書記を「暴君」と呼び、北朝鮮は「ブッシュこそヒトラーをしのぐ暴君であり、ブッシュ一味は典型的な政治ヤクザ集団」と応酬した。2005年にブッシュ前大統領が再び金総書記を「暴君」と呼ぶと、北朝鮮は「ブッシュは不良者で、道徳的な未熟児で醜い人間」と応酬した。>
 英語で何という表現だったのかも知りたい。
 <2009年現在、米朝の舌戦はいまだ進行中だ。フィリップ・クローリー国務次官補は23日、定例記者会見で「北朝鮮当局は卑劣にも住民に与える十分な食糧ではなく、ミサイルを収穫することに決めた。北朝鮮当局は愚鈍にも悲惨な未来をたどる行き止まりの道を選択した」と非難した。ブッシュ前政権で北朝鮮交渉を主導したクリストファー・ヒル駐イラク米大使は米NBCテレビで「北朝鮮は罵倒することに関しては誰にも負けない」と語った。>
 人を謗る際の言葉の多さと人間の暴力性は反比例する、という説がある。手を出さずに口で攻撃する。それも1時間も2時間も攻撃する。韓国の都市部、特にソウルの夜の盛り場に行けば今でも酔っ払いの男女がお互い悪口を言い合っているのに出くわすだろう。いろいろな言葉をこれでもか、と投げ付け合うが、手は出さない。日本人ならば「何をこの野郎」とポカリと一発殴るところでも、殴らずに悪口を言う。
 韓国語にはこういう時に使う特殊な言葉が連綿と生き続けているのだ。「お前の母さん出べそ」と言わずに、もっと過激な言葉が出てくる。
 北朝鮮の言葉も同じ言葉だから、際限なく悪口が出てくるだろう。
 英語もそういう伝統があるそうだ。
 研究社が出している「アメリカ俗語辞典」というのがある。ユージン・E・ランディ原編で堀内克明氏が翻訳した辞典だが、この中には書くのも憚られるような表現がこれでもか、と出てくる。昭和50年初版で手元の辞典は第4版で昭和51年刊だから、昔の俗語しか載っていないものの、米国でも俗語がいかに多いか、その中で人の悪口に使える俗語もいかに多いか、が一目で分かる。
 それに比べて日本語は人の悪口に関する語彙は乏しい。
 これに関する研究所は昔からたくさんあるようだが、こういう悪口合戦を韓国人記者が面白がるのは、韓国語を日常語として使っている、という理由が大きいと思う。日本語ではそういう感覚は生まれないのではなかろうか?

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民主党の外交政策について09年7月25日朝刊各紙社説、続き物を読む~毎日新聞、朝日新聞、読売新聞、日経新聞

 毎日新聞が7月25日(土)の[09衆院選]ワッペン大型社説で<外交・安保/対米関係の再構築を/自民 脱「追従」が課題/民主 「転換」なら説明必要>のタイトルで非核三原則問題を含めて書き込んでいた。読んでみよう。(◇は原文についていた小見出し)

◆毎日新聞社説

 <冷戦終結から20年が経過し、国際社会は大きな構造変化を起こしている。米国はイラク戦争やアフガニスタンでの「テロとの戦い」で疲弊し、金融・経済危機の発火点ともなって、かつての威信と自信を失った。国際協調を唱えるオバマ大統領の登場が米国の単独行動主義(ユニラテラリズム)の終焉を象徴している。一方、金融危機をきっかけに中国、インド、ブラジルといった新興の国々が発言力を強め、日本など主要8カ国(G8)の影響力は相対的に低下してきた。>

 という書き出しである。まあ、この分析自体はいろいろな学者の多数説であろう。

◇安保論議深めよ

 <こうした国際環境の激変の中で、日本の外交・安全保障政策にも冷戦時代の発想を超えた新しい思考が求められている。核実験やミサイル発射を繰り返す北朝鮮の新たな脅威は、日本の安全保障体制に対する不安を国民の間に呼び起こしている。北朝鮮が行動を起こすたびに自民党内の一部では敵基地攻撃論や核保有論が出るが、地に足をつけた冷静な安全保障論議は一向に深まらないのが現状である。>

 「冷戦後」の新国家戦略が求められているが、地に足の着いた議論になっていない、と。全く同感なのだが、冷戦終結から20年経ってこの状態では、国際社会があきれ果てるのも無理はないか。

 <歴代の自民党政権は外交・安保政策の基軸に日米同盟を据え、その強化を主張してきた。米国との同盟関係が戦後日本の平和と安全に寄与してきたのは確かである。北朝鮮の核・ミサイルや中国の軍備増強への対応を考えれば今後も同盟の重要性は変わらないだろう。米国は民主的な政治制度など日本と共通の価値観をもっている。影響力は衰えたとはいえ依然として圧倒的な軍事力を有する「グローバル国家」であり、外交・経済・文化など多様な分野で日本と緊密な関係を築いてきた歴史的経緯もある。>

 これもその通り。今までの経緯だ。

 <だが、これまでの政府・与党の対米姿勢には「追従」批判がつきまとってきた。前回総選挙で巨大与党を誕生させた小泉純一郎首相(当時)はブッシュ前大統領との個人的な信頼関係をもとに「日米関係がよければよいほど中国、韓国、アジア諸国をはじめ世界各国との良好な関係を築ける」と言い、米国に寄り添いながら国際協調の流れから離れた。ブッシュ-小泉ラインが消えたいま、米国はオバマ大統領のもとで変革へ踏み出した。一方、日本の政治を動かしているのは小泉体制下で選ばれた国会議員たちである。麻生太郎首相は「行き過ぎた市場原理主義から決別する」と小泉構造改革路線からの転換を明言したが、外交・安保政策では従来通りの「日米同盟強化」一本やりである。日本もそろそろ対米追従姿勢を転換した方がいい。目指すべきは国際環境の変化に合わせた日米関係の再構築と国際社会、特にアジア諸国との信頼関係強化の道だろう。>

 この抽象論は聞き飽きるほど聞いている。知りたいのは具体策だ。それに、小泉の時に選ばれた国会議員が政治をしていることと、対米外交の転換は関係あるのだろうか? どの時に選ばれても、国会議員たるもの、国際社会の変化に対応して自説を曲げてでも対応すべきなのではないか? 今の麻生外交は「対米追従外交」なのか?

 <時あたかも、自民党政権下で日米が交わした「核密約」問題が、核を「持たず、作らず、持ち込ませず」という日本の非核三原則との関係で論議を呼んでいる。政府は密約の存在を否定し非核三原則を守る立場を表明しているが、自民党国防関係議員からは「密約ではなく国民合意で三原則を修正し、核搭載艦船の寄港、領海通過は認めるべきだ」との主張が出ている。>

 そりゃあそうだろう。大体、あの非核三原則自体、おかしかった。当時の国際情勢、米ソの冷戦真っ只中で、日本が米ソ核戦争に巻き込まれないように、しかし、核の傘はほしい、という矛盾した利己的な考えから「密約」化したのであって、米国が「密約」を望んだのではない。

◇揺れる非核三原則

 <これに対し、民主党の岡田克也幹事長は密約を原則的に公開する考えを示し、「密約を表に出すと非核三原則を修正するのか、考え方を堅持するのか、政策的に議論しなければならない」と述べている(毎日新聞のインタビュー)。米国の「核の傘」で日本が守られることを基本にしている日米安保体制の根幹にかかわる問題である。選挙戦を通じ各党の考えを聞きたいテーマだ。>

 岡田氏の物言いは詳しくは知らないが、いいんじゃないか、と思う。いつまでも密約じゃあやっていけない。きちんと国民に示して非核三原則を撤廃するくらいの覚悟を国民にさせないと、いつまでも何も知らされずにアメだけしゃぶらされている世界一バカな国民、有権者のままであり続けるだろう。思い切って公開してしまえばいいのだ。

 ただし、国家の外交をすべて情報公開しろ、などという馬鹿げたことを言っているのではない。外交は秘密外交があって成り立つのだし、国民大衆の一時的、熱狂的な反対があったとしても、やるべきことをやるのが国家指導者の責務なのだから、すべて公開などということは駄目だ。

 <総選挙後、民主党中心の政権ができれば、まず問われるのは対米関係だろう。同党は総選挙マニフェストのもとになる「09年政策集」で外務・防衛政策のトップに「新時代の日米同盟の確立」を掲げ、「対等なパートナーシップ」の構築をうたっている。同党は「08年政策集」では米側の反発を招きかねない政策も掲げていた。たとえば、「日米地位協定の抜本的改定に着手」、米軍再編に関する経費負担や駐留米軍経費(思いやり予算)など米軍関連予算についての「不断の検証」などだ。しかし、今回の政策集では地位協定について「改定を提起」に表現を和らげ、米軍再編や在日米軍基地のあり方については「引き続き見直しを進める」との抽象的な記述にとどめている。これまで反対してきた海上自衛隊によるインド洋での給油活動についても政策集ではあえて触れず、当面の活動継続の容認を示唆している。政権獲得をにらみ、有権者と米国双方の視線を意識した措置とみられる。しかし、字句いじりだけでは目指す方向が見えにくい。方針転換するなら、その理由を含め明確な説明が必要である。>

 新聞社としては当然こう書くだろう。しかし、民主党もようやく自分で政権を担わざるを得ない、という自覚が出てきた証拠だ、と温かく見守ることも大切だ。逆の方向にぶれたのならば追及すべきだが、「反対」野党から「責任」野党へ、そして政権与党への転換をするための繭の脱皮をしている最中なのだから。

 <与野党逆転がなれば社民党は連立協議の相手となる。しかし、社民党は自衛隊縮小や非核三原則堅持を強く打ち出しており、その調整も大きな課題となる。>

 社民党は心配しなくてもいい、と誰かが言っていた。「自社さ」村山富市政権の15年前を振り返ればそうも言えるだろうが、私は民主党が勝ったら社民党を切り捨てて、自民党の一部を取り込む努力をするのではないか、と思うのだが、どうだろうか?

 しかし、何かを訴えているようで何も書いてない社説だった。ちょっとがっかりだった。よくここまで訴える内容のない社説を長々と書けるものだ。もう少し気合を入れて書いてほしかった。

◆読売新聞の1面連載記事

 読売新聞7月25日朝刊1面連載[決戦09衆院選㊦]<民主・社民 安保でズレ>は先ほどの民主党と社民党の安全保障政策の違いに焦点を当てた記事だった。内容を掻い摘んで書くと、

 民主党は2005年に憲法改正の基本方向を示す「憲法提言」をまとめ、鳩山代表も「自衛軍の保持」を明記した独自の改憲案を公表しているのだが、民主党が衆院選で大勝したとしても参院は民主・社民・国民新党をあわせてようやく過半数という勢力なので、民主党政権は民主・社民・国民新の連立政権にならざるを得ない。

 7月はじめ、国民新党の亀井静香代表代行が民主党の小沢一郎代表代行に電話で「社民党は憲法堅持を主張している。民主党が憲法9条を守ると言えばちゃんとついてくる」と注文を付けた。国民新党もかつては「自主憲法制定」を唱えていたが、連立政権樹立を最優先させ、改憲論を封印している。

 民主党は国民新党の亀井氏の助言を無碍にはできず、民主党が7月23日に公表した政権公約(マニフェスト)の基となる「政策集」には、憲法改正に関して慎重な言い回しが並んだ。

 「自衛権は、専守防衛の原則に基づき、憲法9条に則って行使する」

 「自由闊達な憲法論議を行い、国民の多くが改正を求め、国会内の広範かつ円満な合意形成ができる事項があるかどうか、慎重かつ積極的に検討していく」

 という表現だった、というのだが、「慎重かつ積極的」なんて、いかにも政治的妥協の産物で意味がない文章だ。民主党ってこんなことになっているの? と疑問を抱かせる。
 読売新聞の記事で教えられたのは細川政権崩壊の一つの原因についての記述だった。

 <1993年に発足した非自民連立政権は、1年足らずで崩壊した。政府・与党内の政策調整システムは不備だったことが背景にあった。当時、北朝鮮の核危機への対応が求められていたにもかかわらず、社会党(現在の社民党)は、米軍が軍事行動をとった場合の自衛隊の協力に反対。小沢氏ら新生党と対立し、政権は迷走した。官房副長官だった石原信雄氏は「危機一髪だった」と証言している。>

 危機一髪、とはどういうことだったのだろうか?

 <今、民主、社民、国民新の3党連立政権の可能性が出てくる中、既に始まった安全保障政策をめぐる鞘当てからは、93~94年の混乱の再来も懸念される。>

 <細川政権で首相秘書官を務めた成田憲彦・駿河台大学長(日本政治論)は「社民党の閣僚が反対すれば閣議決定できない。民主党が政府・与党の一元化を掲げても試行錯誤の状況が続くことになるのではないか」と指摘する。>

 この辺、政策問題、特に安全保障政策で抜き差しならない状況に陥っていた、という記事は当時出ていたのだろうか? 政治部記者の書いた連立政権の亀裂原因は大内民社党委員長が画策して社会党抜きで院内統一会派を作ろうとして、仲間はずれにされた社会党が飛び出した、などという永田町の人間臭いドラマだったように思う。

 そして、北朝鮮政策についてはあまり触れられていなかったようにも思うのだ。とすれば、この記事は古いようでいて、新しいニュースが入っているのではないか。

◆朝日新聞社説

 朝日新聞も7月25日第1社説<民主党の外交/日米同盟をどう動かす>で毎日新聞社説と似たような話を書いていた。読んでみる。

 <民主党が2009年版の政策集をまとめた。内政から外交まで、約300の政策について、党の基本的な考え方を説明したものだ。毎年、必要に応じて手直ししたものを発表してきたが、あまり関心を呼ぶことはなかった。今年は違う。総選挙の結果次第で2カ月もすればこの政策の方向へと国政が動くことになるかもしれないからだ。総選挙用のマニフェストもこれに沿ってつくられる。とりわけ注目を集めたのは外交・安全保障政策である。>

 という書き出し。何か民主党政権への期待感が溢れている感じを受ける。あれだけ小沢一郎氏秘書逮捕で傾斜報道を繰り返したのに、手の平を返したように擦り寄るところなんぞ、いかにも世知に長けた朝日新聞らしい。

 <ライバル自民党が論戦を仕掛けようと手ぐすねを引いているのは言うまでもない。同盟国の米国にも懸念の声がある。外交を担った経験のない民主党は何をしようとするのか。そんな不安を抱く有権者も多かろう。そのことは民主党自身も十分に意識しているようだ。>

 と自民党を貶しておいて、

 <在日米軍の兵士による犯罪のたびに理不尽さが指摘される日米地位協定以前は「抜本的な改定」をうたっていたが、「改定を提起」に改めた米軍駐留経費などの負担について「不断の検証」と言っていたのを「引き続き見直しを進める」と和らげたインド洋での海上自衛隊の給油支援を続けるためのテロ特措法の延長には反対を表明していたのに、今回はその記述が消えた。政権についた場合、特措法の期限が切れる来年1月までは派遣を続ける方向だという。>

 羅列して書いてあるから、一報記事のスクラップ代わりに使えるなぁ。

 <民主党の目的は明白である。政権を担当していきなり立ち往生することのないよう、現状を踏まえて政策を地ならししておこうということだ。国会論戦で重ねてきたとがった主張にやすりをかけ、広範な有権者や米政府に安心感をもってもらう狙いもあろう。>

 ものは言いようだ。「とがった主張にやすりをかけ」か。こんな子どもじみたたとえ話で読者を煙に巻くのか。

 <麻生首相は「(給油支援などで)あれだけ反対しておいて」と怒りもあらわだ。分からないではないが、民主党も基本的な方向を転換したわけではあるまい。今後の論戦が楽しみだ。>

 麻生首相の怒りを軽くいなす朝日新聞、か。格好いいと思うか、いつも強いほうに靡いている、と見るかは人それぞれだろう。

 <残念なのは、米国などに核の先制不使用の宣言を求めることや、米軍の普天間基地の県外移設など、鳩山代表らが発信してきた政策が漏れていることだ。これでは民主党がめざす「日米の対等なパートナーシップ」の目標が早くもかすんでしまいかねない。憲法に基づく日本の外交原則をどう貫くのか。マニフェストではそこをきちんと書き込んでもらいたい。在日米軍基地の移転にしても、核の問題にしても、大事なのは民主党の思い描く同盟観、安全保障観を率直に語ることだ。それを尻込みするようでは、「対等」な日米関係などありえようはずがない。幸いというべきか、相手は多国間外交を重んじ、「核のない世界」を掲げるオバマ政権だ。自民党流の外交をなぞるだけになったら、政権交代の意味が揺らぐ。>

 何を嗾けているのか? 米国と喧嘩しろ、とでも言いたいのか? 無責任極まりない朝日新聞らしい主張だ。こういう無責任主張が日本を悪くしてきた。少しはそういう反省に立った社説を書くべきだと思うのだが、朝日新聞論説委員には「反省」の二文字がないようだから、仕方ないのだろうか。

◆日経新聞1面続き物

 日経新聞は7月25日朝刊1面続き物[選択09衆院選~何が問われるか④]でワシントン支局の大石格特派員が<外交漂流 日米関係に影>のタイトルで米政権が日本の現状を見てあまりの情けなさに溜息をついている、と書いている。民主党政権の「反米」ムードが問題なのではなく、「何をしたいか見えない」のが問題なのだ、と。厳しい分析だ。

 本文の概略を書いておこう。

 日系2世のミネタ元米商務長官は民主、共和両政権の閣僚を経験し、政権交代が起きて政策が変更になることは民主主義国家として当然だ、としながら、民主党が何をしようとしているのか見えないのが問題だ、と言う。民主党の目指すものが見えないので刷り合わせのしようがなく、米海軍は海上自衛隊がインド洋での給油活動から撤収した場合の準備を始めた、という。一昨年秋に日本抜きの運用はすでに経験済みで、米軍幹部は「いれば助かるが、いなくても困りはしない」と言い切ったという。

 米軍幹部は民主党の方針が揺れていることに関して「嫌々来られても嬉しくない。参加したいのか、したくないのか、どっちなんだ」と不満げだったとも。かといって、元国務省幹部は自民党政権にも不満がある、という。合意から10年以上経っても実現しない沖縄県の普天間基地移設に関し「日本人は約束を守らない」と感情的に日本批判を口にした、という。「口を開くと北朝鮮の話ばかり。だが、朝鮮半島有事の際、核兵器の日本持ち込みを認めるかどうかなど具体論になると黙ってしまう」と。何もしない、何も決めない、というのが日本の印象だ、と大石記者は書く。

 <米国の後ろに付き従っていればよかった戦後の日本外交。冷戦終結から20年が経つが、自身で針路を考える習慣は政治家も国民も身についていない。多極化する世界の中で、新たな外交の軸は見出せない。>

 大石記者の意見に大枠で賛成だ。

 <オバマ政権高官が作成したと噂されるメモが最近、米政界に出回った。「カナダと日本は不要。欧州も国ごとの参加はいらない」。G8、G20などの枠組みが併存する国際対話の場の整理・統合を求めるオバマ大統領の意向を体したものなのか。各国大使館は出元を知ろうと奔走した。>

 こんなメモが出回っていたのか。しかし、大胆な説だ。

 <今月の主要国首脳会議(ラクイラ・サミット)でオバマ氏が首脳会談に選んだ相手は中国と南アフリカだった。胡錦濤国家主席の緊急帰国で空いた時間に会ったのはブラジル。関心があるのは明らかに新興国だ。>

 そうだったなぁ。麻生首相は休憩時間にいろいろな首脳と雑談して、頑張っていたように見えたのだが……。

 <「いまやG2の関係にある」。今年1月、米中国交30周年を祝う席で、米民主党の重鎮ブレジンスキー元大統領補佐官は両国主導による世界秩序の樹立を訴えた。中国側は米側ペースの動きに警戒感を示すが、政経両面で中国を抱き込みたい米国でG2論はブーム的な広がりを見せる。>

 ブレジンスキー。「ひよわな花日本」。反日人種主義者。中国を好き、というのではなく、世界的大市場へのアクセスがほしいだけ。満州事変、支那事変、大東亜戦争の歴史を見れば、すべてアメリカの中国進出欲望が生んだ戦争だったことがよく分かる。

 <米国頼みだった自民党への対抗意識もあり、日本の民主党には「脱米入亜」派もいる。だが、具体的に中国とどう関わるか判然としない。「米国か中国か」の二者択一で考えがちな日本を尻目に世界は先に進んでいるようにも見える。>

 日本人は律儀なのか?

 <北朝鮮の脅威に対抗するため、韓国は6月の米韓首脳会談でオバマ氏に「核の傘」の再確認を求めた。日本も今月来日したキャンベル国務次官補と「核の傘」を協議することで合意した。だが根強い核アレルギーもあり、米軍の核戦略の一翼を担うとなると、躊躇いが先にたつ。その割りにオバマ氏が掲げる「核なき世界」に被爆国としてどう関わるのかという議論もあまり耳にしない。>

 どの新聞を見ても書いてないのだが、李明博大統領のように日本の首相がアメリカ大統領に核の傘について再保証を確認したことはあったのだろうか? あくまで「曖昧にしておく」という国是通り、何も言っていないのだろうなぁ、と思うのだが。

 <ホワイトハウスは11月のオバマ氏訪日の際、広島に足を運ぶべきかどうかを真剣に検討中だ。実現すれば戦勝国と敗戦国という関係に区切りをつけ、真の同盟を築く出発点になる可能性がある。一方で原爆投下という米側の加害責任問題にばかり注目が集まり、かえって関係を拗らせる危険性もある。米政府筋は「日本はリスクを恐れ、広島訪問受け入れを決断できないのではないか」との見立てだ。衆院選後の政権に求められるのは、冷徹な国際政治の現実に正面から向き合う覚悟だろう。>

 なるほど、オバマ広島訪問は戦勝国ー敗戦国関係の終焉なのか? どういう理屈でそうなるのか? そして、なぜ日本政府はリスクだと見ているのか? 大石記者の論は面白いのだが、記事の分量が短すぎて、素人の疑問に十分には答え切っていないのが難である。

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2009年7月24日 (金)

8月17~27日米韓合同軍事演習:さあ、北朝鮮はどう対応するか?~産経新聞09年7月24日ウェブ版

 産経新聞ウェブ版に09年7月24日午後7時過ぎにアップされた共同通信配信の記事だ。<半島有事を想定/来月17日から米韓演習>。フラッシュニュースだが、今後、北朝鮮がどういう対応を見せるか、など尾を引きそうなニュースなのでコピペしておく。

 <米韓連合軍司令部は24日、朝鮮半島有事を想定した同連合軍の指揮所演習「乙支フリーダムガーディアン」を8月17~27日に実施すると発表した。北朝鮮は3月の米韓合同軍事演習の際には「侵略戦争演習」だと批判、韓国側と北朝鮮の開城工業団地との陸路往来を断続的に遮断するなどの対抗措置を取っており、今回も反発が予想される。演習はコンピューター・シミュレーションで実施され、米韓両軍の計6万人以上が参加する見通し。2012年に予定される米韓連合軍司令官(在韓米軍司令官が兼任)から韓国軍への有事作戦統制権移管に備え、昨年に続き韓国軍が主導、米軍が支援する形で行われる。>

 この有事の作戦統制権移管は本当に実施するつもりなのだろうか? 米国は面倒なことは避けたいから、ここぞとばかりに「予定通りに」と言うだろうが、この約束は反米的な盧武鉉政権の時代の産物だ。李明博政権が見直しをするのではないか、と思うのだが。拡大抑止の考え方と同じだが、米軍やその家族が北朝鮮の多弾装ミサイル砲の射程内にいるからこそ、米軍も韓国を守ろうとするのだが、これが韓国南部や沖縄に移転してしまい、韓国軍だけで38度線の守りを固めるようだと、北朝鮮は誤ったメッセージを受け取りかねないのではないか。

 まあ、共同通信はそう書いているが、今回の「乙支フリーダムガーディアン」は例の米韓合同軍が練り上げている有事作戦を図上で演習しようというものだろうから、移転とは直接的な関係はないと思う。

 それよりも、武装難民の侵入や化学兵器、生物兵器にどう備えるか、とか、武装ゲリラへの対応など、今までの国家間戦争とは違った対テロ戦争に近い戦争のシミュレーションになるのではないか、と思う。

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ARFの議長声明は北朝鮮の言い分も掲載、両論併記だった、と。韓国の記者は最後の結論まで知ってコラムを書いているのだろうか?~7月23日の朝鮮日報、24日の読売新聞などから

 朝鮮日報の北朝鮮記事が面白い。7月23日はワシントン支局の李河遠(イ・ハウォン)特派員が<3年前に目にした「北朝鮮の屈辱」>というコラムを書いていた。「カノッサの屈辱」を連想させるタイトルである。

 <2006年7月28日、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)が行われたマレーシア・クアラルンプールのコンベンションセンター。当時も今と同じように北朝鮮が6カ国協議への参加を拒否し、弾道ミサイルの発射を強行したことを受け、北東アジアの政治的・軍事的な緊張がARFの主要な議題の一つに挙げられていた。早朝から4時間近くにわたって行われた会議が終わるや、固く閉ざされていた会議場のドアがそっと開いた。予想よりも早く開いたドアから会議場に足を踏み入れた記者が目撃した光景は今でも忘れられない。>

 李河遠氏はこの道一筋で取材しているのか。3年前も取材していた、と。

 <韓国や米国をはじめとした25の参加国の閣僚たちは互いに握手を交わし、三々五々集まって歓談していた。だが、北朝鮮の白南淳(ぺク・ナムスン)外相(2007年死去)はただ一人ポツンと座っていた。どの国の閣僚も白外相に握手を求めようとはしなかった。隣に座っていた中国の李肇星外相(当時)も握手を求めず、ほかの国の閣僚たちに話しかけるため席を立った。>

 誰にも相手にされない北朝鮮の代表、か。何か松岡洋右を思い出してしまうと他人事とは思えなくなるのだが。

 <寂しそうに会議場を後にする白外相に、ただ一人声をかけたのは、翌年に国連事務総長に就任した韓国の潘基文・外交通商部長官だった。潘長官は白外相に「南北双方が一度話し合いを持つのはどうか」と持ちかけた。だが、白外相は潘長官の顔を見向きもせず、「その必要はない」とぶっきらぼうに言い放った後、固い表情のまま立ち去った。>

 潘基文というおっさんはどうも好きになれない。何か冷たい感じを受けるからだ。

 <北朝鮮が国際社会で「仲間外れ」にされているという声は何度も聞いてきたが、実際に「いじめ」に遭っている現場を目撃したのは、そのときが初めてだった。>

 「いじめ」か。感覚的な文章だ。

 <当時もARFの参加国は6カ国協議への参加を拒否し、北東アジアに不安感をもたらしていた北朝鮮に対し不満を抱えていた。ASEAN諸国や中国、ロシアは北朝鮮の挑発的な行動に嫌悪感を示しつつも、国際会議以外の場で北朝鮮の問題を大きく取り上げることはなかった。非公開の会議で北朝鮮を批判しても、外部ではできるだけ、ぎくしゃくした雰囲気を演出しないよう努めた。そのため、ARFの共同声明で北朝鮮の問題を強調することもなかった。これは米国の期待に反することだった。>

 これが3年前の雰囲気だったのか。

 <だが、北朝鮮が国際社会の制止を聞かず2回目の核実験を強行したのを受け採択された「国連安全保障理事会(安保理)決議1874号」に基づく制裁措置は、これまでとは違う状況を生み出している。オバマ米政権は米国との和解を唯一拒んでいる北朝鮮を「テストケース」と考え、あらゆる外交力を駆使している。>

 「テストケース」か。何だろう?

 <このため、ASEAN諸国の外相たちは20日、ARFの会議前に集まり発表した声明文で、北朝鮮を批判する内容を盛り込んだ。「北朝鮮が最近行った核実験やミサイルの発射を強く非難する。北朝鮮は国連安保理決議1874号に従い、会談に復帰すべきだ」というものだ。>

 これはARF会議の前の会議の話だ。

 <一方、北朝鮮が参加している「非同盟運動(NAM)」の首脳会議でも、似たような動きが見られた。北朝鮮の金永南・最高人民会議常任委員長は今月16日、エジプトで行われた非同盟諸国首脳会議の共同声明文に6カ国協議への復帰を拒否する文言を盛り込もうと持ちかけたものの失敗に終わった。北朝鮮が1975年、非同盟運動に参加した後、参加していない韓国を刺激してきた「韓半島(朝鮮半島)条項」も34年にして撤廃され、北朝鮮は恥をかかされることになった。>

 これは前に誰かが書いていた通りだ。

 <金大中・盧武鉉両政権が北朝鮮に対する宥和政策を展開した過去10年間、「北朝鮮は話せば分かる」と主張していた人たちが、今なおソウルに存在している。その人たちが今でも北朝鮮とのパイプを維持しているのであれば、北朝鮮が変化を見せないなら「北朝鮮の屈辱」がさらに続くということを知らしめてほしいものだ。>

 なるほど、そういう言い方もありか。ここは大いに賛成だ。本当にやらせてほしい。

 <また同時に「北朝鮮が核の完全な廃棄を実行するのであれば、韓国が400億㌦(約3兆7500億円)規模の援助を行う」と報じられたことに象徴されるように、韓国側は北朝鮮への援助を行う用意ができているということも伝えてほしいものだ。3年前、寂しそうにARFの会議場を後にする白南淳外相に、ただ一人声をかけたのが韓国の外交部長官だったという事実を、北朝鮮は思い返すべきだろう。>

 愛国者だなぁ、李河遠記者は。ただ、このコラムはARF会議の結論を見ないで書いているようだ。

◆中央日報を見ると

 今回の会議総括を韓国の新聞がどう行ったか、を見るには7月24日の中央日報の短信で十分だろう。<北、核問題への新たなアプローチに拒否表明>というタイトルだ。

 <東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)閣僚会議に参加した北朝鮮代表団のナンバー2、リ・フンシク外務省国際機構局長は23日、韓米両国が北核問題の新たな解決策として提案した「包括的パッケージ」に対し、拒否するという立場を明らかにした。リ局長はこの日、自ら記者会見を要請し「包括的パッケージは、ブッシュ政権のCVID(完全かつ後戻りできない不可逆的な核廃絶)をそのまま譲りうけたもの」とし「とんでもないこと」と一蹴した。続いて「(米国が)核廃絶を行えばあれこれとパッケージを与えるというが、北朝鮮が核を保有することになったきっかけがどこにあるのかについて考えなければいけない」とし「北朝鮮の核問題を話し合う6カ国協議はすでに終わった」と述べた。>

 まあ、そんなところだ。

 李河遠記者は可哀想な北朝鮮、いじめられている北朝鮮、のけ者扱いされている北朝鮮というが、北朝鮮指導部は今回の一連の動きを見ていると、国際的孤立を全く苦にしていないようにも見える。誰が何といっても決めたことはやるのだ、と。どうも土井たか子氏にいよいよ似てきたのだ。「やるっきゃない」「だめなものはだめ」という1989年参院選前の言葉は有権者をスカッとさせたが、あの言葉は原理主義勢力の好む言葉でもあった。土井たか子氏と北朝鮮の行動様式が似ているのは土井氏がパチンコ好きということと関係があるのかどうか、などと余計なことまで考えてしまった。

 まあ、何を言っても無駄。

 ただ、李河遠記者の書いていた米国が北朝鮮を「テストケース」として、あらゆる外交手段を繰り出している、という記事が気になる。外交でやっても到底だめだからやはり強攻策でいこう、という伏線なのか、ただの努力に過ぎないのか? もう少し見守る必要はありそうだ。どうせ米朝は水面下ではいろいろ接触しているだろうから。例のニューヨーク・ルートを使って。もしかすると、またキッシンジャー氏も暗躍している可能性があると思うが、どうだろうか?

◆読売新聞が一番客観的だった

 読売新聞7月24日朝刊国際面には<5カ国協議開かれず/中国が慎重姿勢貫く>の2段記事と、ベタ記事で<「北非難」歯切れ悪く/ARF議長声明>が掲載されていた。

 つまり、ARFでは北朝鮮への非難が相次いだのに、ASEAN議長国のタイは閉幕後に発表した議長声明で北朝鮮の「言い分」も載せたのだ、と。また、声明は「いくつかの国が非難した」として、会議が非難一色ではなかったことをわざわざ強調した、ともある。

 北朝鮮が会議で発言した①国連安保理決議1874の完全拒否②朝鮮半島情勢の緊迫は米国の敵視政策のため③6カ国協議の終了――といった主張もほぼ全面掲載した、と。北朝鮮が参加国だったために歯切れが悪くなった側面もある、と読売新聞の佐藤昌宏特派員はタイの議長に同情的だ。

 こういう内容を見ると、各国の代表は会議の場では他国の目を気にして北朝鮮とおおっぴらには接触しないものの、裏では相当に北朝鮮に同情しているのではないか、とも思えてくる。何か分からないなぁ、この辺の国のことは。

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新聞の世論調査には影響されたくないが:「比例は民主」42%と読売新聞調査~09年7月24日朝刊から

 読売新聞7月24日朝刊1面3段<「比例は民主」42%、優勢維持…09衆院選・読売世論調査>は今の時点での民意の動向を示す一つの指標だが、あまり買いかぶってはいけないだろう。その前提を頭に入れながら、読んでみよう。
 <読売新聞社が21~23日に実施した衆院選に向けた第2回継続全国世論調査(電話方式)で比例選の投票先は民主42%が自民23%を大きく上回った。小選挙区選も民主は39%で自民の25%より多かった。第1回調査(7~9日実施)の比例「民主41%―自民24%」、小選挙区「民主41%―自民23%」と傾向は変わらず、民主は衆院解散後も優勢を維持している。衆院選の前哨戦とされた静岡県知事選(5日投開票)、東京都議選(12日同)で敗れた自民は、党勢を回復できていない。>
 というような内容だ。韓国の新聞では世論調査の数字の誤差を○%と表示しているのだが、日本の新聞ではその注釈を付けていない。この日の読売新聞も8面の調査結果一覧に[調査委方法]として「善kの区の有権者を対象にコンピューターで無作為に作成した番号に電話をかけるRDD方式。有権者在住世帯判明数1750件、有効回答1044件、回答率59.7%」とあるものの、この誤差の範囲がどのくらいなのか、という表記はなかったのが残念だった。
 というのは、この前文にあるように、7月7~9日調査と比べると比例の民主は41%→42%。比例の自民は24%→23%で、これはきっと誤差の範囲内だと思うからだ。この1ポイントを意味づけしてもはじまらないだろう。小選挙区だって民主は41%→39%、自民は23%→25%だ。全体状況を見ると前回調査に比べて僅かに比例で民主が小選挙区で自民が増えているようにも見えるのだが、これを意味ある数字として扱ってはいけないと思うのだ。
 なお、2面にあったが、この調査は毎月や緊急の世論調査とは別に衆院選挙投票日直前まで全国の有権者約1000人を対象に継続実施するのだっそうだ。投票先や内閣・政党支持率などを毎回質問して、有権者の投票行動の変化を追うのだ、という。今回は2回目。
 <衆院選で重視したい政策や争点(複数回答)は「年金など社会保障」66%、「景気や雇用」55%、「消費税など税制改革」40%――などの順に多かった。>
 これは今後変化しうるだろう。問題は争点が何に収斂されるか、だから。自民党も民主党も自らアジェンダ・セッティングしてメディアをその方向に引っ張りたいだろう。
 <麻生首相と鳩山民主党代表のどちらが首相にふさわしいかでは、鳩山氏は40%(前回46%)に下がり、麻生氏は22%(同21%)だった。鳩山氏が資金管理団体を巡る個人献金偽装問題で説明責任を果たしているとは思わない人は77%(同73%)に増え、鳩山氏への評価に影響したようだ。「選挙の顔」に関しては、自民が麻生首相で衆院選に臨むことを「よかった」と思う人は43%で、「別の人に代わる方がよかった」も37%に上った。>
 この辺はまだまだせめぎ合いの最中だろうから、これから時々刻々変わっていくはずだ。
 <麻生内閣の支持率は20.2%(同20.2%)、不支持率は67.8%(同69.3%)だった。政党支持率は民主31.0%(同28.7%)が今回も自民24.3%(同23.8%)を上回った。>
 不人気麻生首相にしては頑張っている、という印象だけど。
 調査結果詳報を見ると、政党支持で「支持政党なし」が32.3%ある。小選挙区の投票者を決めていない人は20.2%、比例代表の投票先を決めていない人も18.7%いる。
 この数字をもってしてか、クロス集計をしたのか、2面の見出しは<無党派も民主リード/鳩山氏献金問題には疑念>だった。
 本文を少しだけ書き写そう。
 <支持政党のない無党派層の投票先は比例が「民主32%-自民10%」で、小選挙区が「民主24%-自民10%」だった。第1回調査でも比例「民主32%-自民15%」、小選挙区「民主31%-自民11%」で、民主は自民を上回っていた。今回、比例は民主が横ばいで3割台を維持する一方、自民は目減りし、その差は広がっている。小選挙区は民主、自民とも減らしたが、依然としてその差は大きい。>
 というのがポイントである。
 面白かったのは次のくだりだ。
 <2005年の「郵政選挙」を見ると、今回調査と同じ衆院解散直後に行った緊急調査で、無党派層の比例投票先は民主11%が自民6%を上回っていた。ただ、小泉首相(当時)主導の「刺客作戦」などが注目を集め、その後の継続調査では自民への投票が増え、自民圧勝の流れを決定づけた。今回、民主が今の勢いを維持できるかどうか、自民が形勢を逆転できるのか。無党派層の動向が注目されている。>
 という文章。2005年はそうだったのか。小泉劇場はスポーツ新聞とテレビのワイドショーを巧みに利用して、大衆心理に訴えた飯島秘書官の作戦勝ちだったらしいが、今回、自民党や民主党にそういう知恵者はいるのだろうか?

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現職内閣参事官の北朝鮮分析、面白かった~日経ビジネス09年7月24日

 日経ビジネスオンラインのコラム[ニュースを斬る]に日経ビジネスオンラインの井上理記者による内閣官房・参事官へのインタビューが掲載されていた。<内閣官房・参事官が分析する「北朝鮮発の最悪シナリオ」/北朝鮮のミサイル、経済危機が引き起こす世界大戦>というタイトルで藤和彦氏へのインタビューだ。

 藤和彦氏は1960年名古屋市生まれ。84年早稲田大学法学部卒業後、通商産業省(現経済産業省)へ入省。大臣官房、産業政策局、資源エネルギー庁、中小企業庁、石油公団などで勤務。2003年、内閣官房へ出向、現在経済担当の内閣参事官として、首相向けの情報収集、分析に携わる、とあった。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090723/200715/

 本文を読んでみよう。

 <一転二転、三転四転と混迷を極める政局、先行きの見えない経済情勢。そんな状況下でも、政策提言から外れた国際情勢や、国が晒されているリスクを分析し、淡々と首相にレポートしている組織がある。内閣専属の情報機関を抱える内閣官房である。その内閣官房で、主にマクロ経済を専門として情報分析を続けている参事官が混迷の最中にあえて口を開いた。藤和彦参事官だ。止まらぬ北朝鮮のミサイル発射や終わりの見えない経済危機に「世界大戦へとつながるリスクがある」と警鐘を鳴らした上で、グローバリゼーション一辺倒の日本経済に、「内需主導の成長を」との提言も披瀝する。>

 という前文だ。現職の内閣参事官が話をするのは非常に珍しいのではないか、と思う。

 <―― 北朝鮮の威嚇が止まりません。7月4日には日本海に向けて計7発のミサイルを撃ち込みました。国家規模のリスク分析を担当する立場として、どれほどのリスクがあると見ていますか? >

 という質問に、

 <藤氏 2006年7月、3年前に同じようにミサイルを発射して、それから核実験なるものをやったのですが、思い起こせばその時は世界がバブルの絶頂期だったんですね。当然のことながら関係国も鷹揚に構えられたし、いざとなったら軍事手段を投入するぞという構えがあったのですが、昨年9月の「リーマンショック」以降、関係国すべてが経済不安で悩み、財政的な余裕がなくなっている状態です。ですから、責任を持って、この朝鮮半島のリスクをコントロールしようとする国が無いのではないか、というのが最大の懸念です。>

 経済面からの分析だ。

 <―― 一体、北朝鮮国内では何が起きていると分析していますか。>

 との質問には、

 <藤氏 ミサイルの発射や核実験も含めて、やはり改革派の動きをあまり嬉しいと思ってない連中がやっているんじゃないかと一般に言われています。これは、米国が対話に乗って来ないからです。>

 ふーん。

 <―― クリントン米国務長官は最近のインタビューで、北朝鮮を「手に負えない10歳代の子ども」と評しました。やはり、北朝鮮は業を煮やしているのでしょうか?>

 そうだよな、そう思うよな。

 <藤氏 心配なんだと思います。彼らからすれば、いつ米国にサージカルアタック(外科手術的な先制攻撃)をされるか分からないという恐怖がある。だから、何とか早く米国に対話で安全保障を確保してもらいたい。そうしないことには改革開放もできないと。実際、中国にしても、まず1978年に米国と平和条約を結んだ後に、改革開放をやっているわけですね。それを北朝鮮もよく見ていますから、まず米国との関係の正常化を行って、そこから初めて改革開放だと。それを、じっくりやればいいと思っていたのが、何がしかの前倒しをしなければいけない理由が出てきたということじゃないでしょうか。その理由が、金正日さんの健康問題ではないかというのが、今一番有力な説ですよね。>

 米朝関係正常化→改革解放の順番を守る、ということか。

◆本当に金正日総書記は息子に継承させたいのか

 <―― 健康問題と前後して、後継者問題も取り沙汰され、三男の金正雲氏が後継者として正式に内定したとの報道もありました。>

 <藤氏 私は懐疑的に見ています。決まっているなら、あんなに対外的なドタバタ劇をするのかなと。たぶん、まだいろいろな勢力がうごめいていて、そのうちの1つのグループが韓国メディアを利用して、対内的にアピールしているんじゃないかという気がします。というか、もっと言っちゃいますと、本当に金正日が息子に王位継承をさせたがっているのかすら懐疑的です。そうなのか、本当はまだ誰も分かってないんですよね。こんなひどい状況で息子たちに継がせたくない、こういう辛いことは自分限りにしておきたいと金正日総書記が思っている可能性も排除できないのではないでしょうか。最低限、言えるのは、金正日総書記の健康状態が悪くなったこと。彼らは2012年、金日成の生誕100周年、金正日の70歳の誕生日までに「強盛大国」にするという目標を持っていましたけど、シナリオが狂って来たということだけは言える。だから、早めに王位継承や権力の移行をしなければいけないと焦っている人がいるんだと思います。>

 なるほど、そういう常識論の方が通じる世界なのか?

 <―― 北朝鮮国内では何も決まっておらず、内外含め、誰も何も分かっていない状況にあると?>

 <藤氏 だから、北朝鮮に関する一番のリスクは、今経済の世界で言われていますけれど、ブラック・スワン(ありえない事象、誰も予想しなかった事象)のリスクがあるということだと思います。何となく今、外からいろいろなことが、さも見てきたかのように報じられていますけれど、本当のことなんか、誰も何も分かっていないという世界だというのが、正解なのではないでしょうか。>

 ブラック・スワンね。

 <―― 北朝鮮が絡んだ有事に発展する恐れは?>

 <藤氏 当然、ブラック・スワンの状態ですから、排除できないと思います。ミサイル実験みたいなことをやっていると、必ずどこかでミスカルキュレーション(誤算)が起きますから、相手に変なメッセージが伝わってしまえば、逆に北朝鮮が先制攻撃を食らう可能性もありますよね。1950年に始まった朝鮮戦争を分析したデビッド・ハルバースタムの著書にもあるように、朝鮮戦争もすべてが誤算の連続だった。戦争って、やっぱり誤算に誤算が重なって初めて起こるものですから、有事に発展する可能性は十分にあると考えなければなりません。>

 よくお勉強をされている方のようだ。

◆今の状況は、第1次世界大戦前と似ている

 <藤氏 今は、誰も戦争する気がないから、僕は逆に戦争のリスクが高くなっていると思うんです。しかも、北朝鮮問題を誰もそんなに深刻に考えてない。米国は「子ども」だと無視を決め込み、日本は内政が揺れていてそれどころではない。だから、非常に心配なんですねもっと心配なのは、今回の世界同時不況、経済危機との相関性です。これだけの経済的なショックは必ず政情不安につながり、場合によっては国際的な紛争にまで発展する可能性もあると考えるのが自然です。>

 この逆説って面白い。誰も戦争をしたくないからヤバイ、という見方だ。そして、歴史的経験則から、世界同時不況時代の弱い環の部分の暴走の危険性は説得力がある。

 <――どこまでの規模の紛争、戦争リスクが考えられるのでしょうか?>

 <藤氏 いろいろ調べていったら、我々の今回の同時不況は1929年の世界恐慌よりも、むしろ1907年の世界恐慌の時に似ているんじゃないかと考えるようになりました。1907年は、英国の資本がたまさか米国の西海岸に資本を入れていた。しかし、西海岸で地震が起きてしまったもので、急に金が引いてしまい、そこでどかーんと金融がおかしくなっていった。その後、1914年の誰も望んでもなかった第1次世界大戦が起こってしまう。>

 この辺、経済学者のようだ。早大法学部卒業にしては経済を知っているのか?

 <第1次世界大戦がなぜ起きたのかというのは、歴史家の間でも大論争なのですが、今の我々にとって非常に示唆的なことは、当の欧州に「もう絶対に大戦争は起きない」という神話があったことと「長期戦は絶対にないだろう」という思いこみがあったことです。当時は、人類の英知というか人間の理性に対するものすごい期待、理性万能主義というのがあったわけですね。そして、世界大戦の数年前に英国の評論家、ノーマン・エンジェルが指摘したように「これほど世界各国の経済の相互依存性が高まった状態で、戦争は考えられない」との安心感もあった。そして、ドイツ参謀本部は戦術に関する名著『戦争論』を著したクラウゼヴィッツを信奉していた。クラウゼヴィッツの薫陶を受けたドイツが、まさか長期戦なんかやらないだろうという思い込みが、欧州各国にありました。しかし、ご案内の通り、セルビアでオーストリアの皇太子が殺されたら、早速トルコが参戦し、あとはドミノ的に世界戦争に入って長期化してしまいました。ここには、みんなが大戦争なんか起きっこないと思っているから、戦争をやってしまった、そういう歴史の教訓があるのかなと思います。>

 クラウゼビッツのドイツがまさか、か。まさにそうだな。

 <翻って今の我々は、当時以上にグローバリゼーションが進んでおり、経済的依存度が高くなっています。冷戦も終わり、まさか世界大戦なんかは起きるわけがないと、世界の誰もが思っている。しかも、米国はRMA(ハイテク兵器など軍事における革命)を通じて、とにかく短期戦しかやらない。そんな中、世界的な経済危機が始まり、未だに終わりは見えていない。残念ながら個人的には、まだ2合目とか3合目だと思っています。IMFが今年の4月に不良債権が4兆ドルと言って、みんなびっくりしましたが、今後、表面化する金額は、ケタが違うんじゃないかなという気がします。そして、セルビアの事件のような不確定要素をもたらしそうな国が東アジアにあると何となく時代の雰囲気は1907年から10年代にかけた時に似ている。つまり、誰もが予想だにしないことが起きる雰囲気にあるということです。>

◆グローバリゼーションのゲームルールは変わった

 <――そうしたリスクを鑑みた場合、経済の情報分析担当として日本企業が備えなければならない、考えなければならないことは何だと思いますか。>

 という質問。やはり日経ビジネスだけあって、企業の話に持っていくのだなぁ。

 <藤氏 中期的に考えれば、今のままのグローバリゼーション路線というのは、本当にいいのかということです。アダム・スミスは『国富論』の中で、海外は地政学的リスクがあるから、非常に危険であると書きました。金や銀を稼ぐために政府が無理やりに民間企業を海外へ向けているけれど、そういうことはやめろと。そうすれば自然と民間は、地政学的リスクも考えて、国内にもっと投資を増やすだろうという文脈の中で「見えざる手」という言葉を使っているわけです。内需だけに絞れとは言いませんが、地政学的なリスクを考えれば、もうちょっとバランスの取れたことを考えるべきではないでしょうか。>

 随分と学者のようなことを言う人だ。ここまでは同感なのだが。

 <―― 世界同時不況と円高、国際協力銀行などの支援も後押しして、日本企業による海外企業の買収が活発になっていますね。先細る内需に不安を抱き、グローバルでの勝負に備えた企業の合従連衡の動きも進んでいる。仰っていることと逆のベクトルが強いですね。>

 と聞くと、

 <藤氏 グローバリゼーションのゲームルールが続くという前提であれば、非常に合理的なことだと思います。ただ、今回の経済危機は、そのゲームのルール自体が変わるほどのインパクトがあると考えた方がいい。自動車産業も、今、ビッグ3が次々に倒れていますけれど、世界の自動車生産の4割が、供給過剰だと言われています。需要がバブルの頃のように戻ることがあれば、今、安いときに供給能力を増強するのは得策ですが、需要が戻らなかったら、重荷になるだけです。しかも、前述したように、地政学的なリスクが高まっている。こうした環境下で、グローバリゼーションのゲームルールが変わらないと信じ切ることは、いささか危険な賭けなのではないでしょうか。>

 ゲームのルールが変わるのだ、と。これと同じことは誰かがいっていたなぁ。米国の自動車需要は復活しても前と同じではない、と。そうだった。駐日米国臨時代理大使だった。

 <――つまり、内需の拡大や開拓に目を向けろ、ということですか?>

 <藤氏 少なくとも、グローバリゼーションと内需拡大の両睨みで、複数のシナリオを考えながらやっていかないと。一つのゲームルールだけで最適解を考えて、果たして本当に大丈夫なのかと心配になります。>

 それは政治家が決断する際に官僚が複数の具体的オプションを示せるか、という問題だった。今までは。今では政党政治家が自分で考えるべき問題ということか。

 <―― しかし、内需に頼れば、企業の成長は見込めないのでは。>

 <藤氏 いや、成長率はむしろ上がると思います。経済政策を変えれば。一つは所得再配分です。富裕高齢層、貯蓄性向の高い方たちへの課税を強化し、それを本当に足らないところにお金を回せば、私は絶対に国内経済は成長すると思います。例えば、金融資産の相続に100%の税金をかけるとしましょう。そうすれば、税収は増えますし、課税されるのがいやだったら使ってしまえということで消費も増えると思います。例えば、の案ですが。もう一つは、貿易政策です。今みたいに世界がデフレになった時は、自由貿易をやって比較優位で生産性を上げれば上げるほど、需給ギャップがひどくなるんですよ。しかも労働力をより安い国に移転させて、生産量が変わらなければ、世界全体の労働者の所得が下がっちゃう。余計に、需給ギャップが広がります。>

 これって面白い。富裕層課税論だ。

◆「鎖国」の議論もあっていい

 <藤氏 だから、こういう大恐慌みたいな異常事態時には、自由貿易が必ずしもいいとは言えないんです。むしろ、保護貿易と組み合わせたマイルドな方式の方が、景気回復にはプラスかもしれない。とにかく、異常時には異常時の発想が必要。極論を言えば、「鎖国」の議論をしてもいいくらいだと、私は思っています。まあ、地震は心配ですけれど、日本はたぶん地政学的リスクが一番少ないですから。安心、安全という面では世界で最高級の国ですから。やり方によっては、まだまだ成長が見込める国だと思っています。>

 タブーへの挑戦なのか、何か言葉足らずなのか、観念論で言っているのか? 鎖国の意味合いをどういう意味で使っているかにもよるが、この結論はいただけない。議論はいいが、日本では極端に触れるので、すぐに「さあ、鎖国だ」になってしまいかねないから。

 昔の本だけど、田中明彦著「新しい中世~相互依存深まる世界システム」(1996年日経新聞社刊で2003年4月1日、日経ビジネス人文庫に収めた、定価840円)の冷戦後論、覇権安定論の系譜などをもう少し勉強すると、このような「鎖国」という使い方はこう軽々と出てこないのではないか、と思うのだが。

新しい中世―相互依存深まる世界システム (日経ビジネス人文庫) 新しい中世―相互依存深まる世界システム (日経ビジネス人文庫)

著者:田中 明彦
販売元:日本経済新聞社
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 E・H・カーの「危機の20年」とかウォーラーステイン、コヘインや村上泰亮氏の本などを読み漁れば、発想は違ってくるのではないか? 田中明彦氏は文庫版の147ページでコメ自給論の虚実を書いていた。もはや、鎖国はできないグローバル社会に突入しているのだ。

 それにしても、現職の国家公務員でここまで真剣に考えている人間がいることはうれしい。昔の内閣情報調査室のキャリア官僚なのだろう。

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韓国の4~6月の実質成長率は2.3%と5年半ぶりの高水準:やっぱりね~09年7月24日日経新聞夕刊

 日経新聞7月24日(金)夕刊2面4段<韓国、2.3%成長に/4~6月実質/5年半ぶり高水準/ウォン安で輸出好調>は「やっぱり」のニュースだった。ソウル支局の島谷英明特派員のリポートだった。読んでみよう。

 <韓国銀行(中央銀行)は24日、4~6月期の国内総生産(GDP、速報値)が実質で前期比2.3%増えたと発表した。2四半期連続のプラス成長で、成長率は5年半ぶりの高水準となった。自動車販売の税減免など景気刺激策が奏功し、民間消費が大幅に増加。通貨ウォン安の効果で液晶パネルなど一部の輸出も好調で成長率を押し上げた。>

 <4~6月期は政府の景気刺激策の効果で民間消費が前期比3.3%増となり、GDPを牽引した。5月導入の新車買い替え時の税減免策で国内の自動車販売が4割も伸びた。道路などの社会資本整備への公共投資も本格化しており、政府消費の拡大も続いた。>

 日本もそうだけど、韓国経済は規模が小さいだけに効果が現れるのが早いのか。

 <輸出は日米欧の景気低迷が続いているものの、前期比14.7%増と1年ぶりにプラスに転換した。中国向けを中心に需要が好調な液晶パネルはサムスン電子などがフル稼働を続けており、部品や素材の周辺産業にも波及。ウォン安による価格競争力の向上も輸出押し上げに寄与している。>

 中国向け液晶パネルか。日本が円高で輸出競争力を削がれている間に韓国製品がどんどん中国にあふれていっているのだろうなぁ。

 <国内消費や輸出の改善を追い風に製造業の生産が大幅に回復。設備投資は前期比8.4%増と3四半期ぶりに増加に転じた。>

 設備投資がこれだけ伸びた、ということは企業の景況感が本格的に回復した証拠だろう。さすが李明博大統領。経済大統領の呼称は伊達ではなかった。

 <韓国の四半期ごとの実質GDPは2008年10~12月期に米金融危機の影響で前期比5.1%減とマイナス成長に転落したが、今年1~3月期にプラスに転換。4~6月期の成長率は1~3月期の0.1%から大幅に拡大し、景気回復の基調が強まった。ただ、政策による下支えには限界がある上、外需が本格回復するかどうかは不透明だ。このため、7月以降も改善の足取りが持続するかどうかは予断を許さない。>

 まあ、少しは留保の言葉もつけておかないと、ということで書いているのだろうが、ものすごい勢いだ。

 同じ日の日経新聞夕刊3面には<サムスン、営業益1900億円/半導体・液晶が黒字転換/4~6月期>の3段見出しが躍っていた。

 同じ日の1面トップは<経済財政白書/景気底打ち 雇用に懸念/輸出増で所得拡大/内外需の好循環必要/企業内失業600万人>の見出し。2面トップの経済財政白書要旨の見出しも<第1章 急速な景気後退に陥った日本経済/輸出減で危機深く>、<第2章 金融危機と日本経済/開発投資継続を>、<第3章 雇用・社会保障と家計行動/景気回復こそが格差対策>。専門家のコメントでは高橋進・日本総合研究所副理事長が<成長分野育てる展望や戦略欠く>、小塩隆士・一橋大学教授が<格差問題の分析、世間の認識と差>で、解説記事の見出しは<将来への処方箋描けず>。いずれも暗いコメントだらけ。日本は暗く、韓国は明るいのか? 李明博のような人物は日本にいないのか? いても、永田町のトップに行き着く前に足を引っ張られる土壌があるのか? 何か寂しいものがある。

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2009年7月23日 (木)

横浜開港記念館で米臨時代理大使の講演を聞いた:関内の風景が雨にけぶっていた~09年7月23日

 日経新聞7月24日(金)朝刊に小さく載るのだろう。日経のネットHPに23日夜<駐日米臨時代理大使、貿易自由化で「包括性を」>という短い記事がアップされていた。実はアメリカ大使館の告知があったので、23日午後3時から横浜市の開港記念館に聞きに行った。最初の予定はUSTRのウェンディー・カトラー代表補が「日米通商協調とAPEC」について講演する予定だったので、日米同時通訳でもあり、聞いてみようかと思ったのだ。ところが11時ころにアメリカ大使館文化広報部からアラートメールが来て、カトラー氏が体調不良で急きょ、ジェームズ・P・ズムワルト駐日米国臨時代理大使の講演になるという連絡だった。でも、折角の機会だから、と思って行ってみたら、新聞記者が随分来ていたが、一般の聴衆はそうは多くなかった。開港記念館講堂の4分の1入っていたかどうか、だろう。
 しかし、やはり、まとまった話を聞くということはいいものだ。付加価値があるからだ。驚きもあるし、いつも都内の風景しか見ていないが、たまに整然とした横浜・関内の佇まいを歩くのもいいものだ。
 先に日経新聞HPの記事を読んでみよう。
 <ズムワルト駐日米臨時代理大使は23日、横浜市内で通商政策などについて講演した。同氏は講演後の質疑応答で日本の自由貿易協定について「あまり包括性に富んでいない」との認識を示した。農業分野の開放が進んでいないことを暗に示したものとみられる。そのうえでアジア太平洋域内で貿易自由化を進める際には「一歩踏み出して、取り組みを進めてほしい」と強調した。>
 <日本政府がBSE(牛海綿状脳症)問題を背景に、米国産牛肉の輸入を生後20カ月以下に制限していることについては「ぜひ解除してほしい」と語った。政府が輸入を規制するのではなく「消費者が決めるべき選択肢だ」と述べた。>
 たったこれだけの記事である。
 この記事は出席原稿だろう。カトラーさんが来ると思って、質問を考えてきた東京本社経済部の記者が不満鬱憤もあってズムアルト氏に質問し、答えた中から適当にニュースを引っぱり出しているのが見え見えなのだ。「折角、東京の記者クラブから忙しい中来てやったのに」という怒りが見えるようだ。
 私がこの日、驚いたことは二つある。一つは会場整理や受付など裏方、ロジスティークをするアメリカ大使館や横浜領事館の日本人女性職員の数が半端じゃなく多かったこと。こんなに多くの日本人女性が普段、あの赤坂の大使館の中で働いているのだろうか? それとも一日だけの臨時雇いなのだろうか? 分からないが、お互い親しそうに話している様子を見れば、いつも顔を合わせている仲間のようにも見える。やはり、大きな大使館は違うのだな、と。その女性たちは皆に似た雰囲気を持っている。英語がよくできる帰国子女にありがちな顔(そんな顔はない?)と細身の体、軽快な足取り。それでいて、どこか控え目な感じを受けるのだ。
 質疑応答で横浜日米協会長が何か質問して、臨時代理大使が答えた内容がこの大使館の日本人女性たちの存在をより強く感じさせたのかもしれない。臨時代理大使は来年2010年のAPEC会議が日本で11月13、14日に開催されることに触れ、1995年の前回の大阪APEC当時の日米経済関係は日本の対米自動車輸出自主規制や半導体、家電の摩擦などがあって、決して良くなかったこと、95年にオレンジジュースが自由化されてから日本人が100%のオレンジジュースを飲めるようになったが、それまでは日本では本物のオレンジジュースは買えず、ミカンとの混合ジュースしか販売できなかったのだ、それに比べて今の日米経済関係は良好である、と言ったうえで「でも、懸念もある」と真剣な顔をするので、何かな? と思ったら「日本の若者の米国留学が減っている。人数は2002年と比べて23%減だ」といった言葉である。彼女たちはきっと米国で勉強したか暮らしたかした娘さんたちだと思うのだが、今の若者は内向きになったのか、お金がないのか、外国をバカにしているのか、関心がないのか、何しろ米国に留学しようという人たちが減っていることは事実だ。由々しいことなのだ。
 臨時代理大使は学生時代の1973年に1年間、横浜市鶴見区生麦でホームステイしたが、ホストファミリーもいい人で、横浜は懐かしい、と言ってるように英語文化圏で青春時代、勉強する日本人がもっと増えればいい、と思った。
 ところが、帰り道にもう一つの現実を見せつけられる。関内駅まで歩いて帰る途中の職業安定所の前に手持無沙汰の若者が20~30人たむろしているのだ。彼らがフリーター、非正規労働者で、派遣切りされた人たちなのだろう、と容易に推定できる雰囲気を持っていた。これも複雑だ。能力だけの問題ではないと思うからだ。
 ズムワルト氏の講演会の主催はアメリカ大使館と横浜市。講演前に横浜市の野田という副市長が挨拶したが、司会の富浦横浜国立大学教授によると野田氏は東大卒業後、ハーバード大学MBA。外資系の会社を経て2007年から副市長に就任したのだという。
 アラかんの私から見るとまだ娘さんのように若い女性である。挨拶もしっかりしていて、明日から国会議員になっても十分やっていけそうな人だった。
 勝間さんという方が最近テレビや新聞、雑誌によく出てくるが、勝間さんが若い頃って、こんな感じだったのかな、と思った。
 成功の道をひた走る若者がいれば、仕事はしたくても自分が気に入る仕事はないのだ、と職安前でうんこ座りしている若者もいる。これが「格差」なのだろうが、「格差」に眦決する若者もいなくなり、何かみんなボーっとしている印象を受ける。よく「景気はまだら模様」と言うが、景気のまだらが斑点の大きなまだらならば、この「格差」のまだらは豹以上に小さいまだらだから、よく見ないと見えない。
 自民党は小泉改革の意味を最後まで分からずに小泉改革賛成派と反対派に分かれているように見えるが、塩川正十郎元財務相(東洋大学総長)が最近の本に「小泉の5年半は短すぎた。バブル崩壊で下向きだった日本経済を上向きにすることには成功したが、あれは小泉の改革の第1段階に過ぎない。本来はそこでできてきた格差を是正するための分配の改革が第2段階、地方分権が第3段階だが、全部やるには10年は必要だった」と書いていたように、サッチャー改革、レーガン改革も約10年かけて結果が出た。小泉政権があと4年半あれば、という小泉応援団の思いは思いとして、今日のように見えにくい「格差」問題を視覚化させるためには、政府が全国民を対象に大々的な貧困調査を実施するしかないのではないか。
 自民党のマニフェストにも民主党のマニフェストにも載りにくい課題だが、実は官僚たちの言っていることが正しいかどうかを見極めるためにも貧困調査は是非モノなのだ。こういう「捕捉」をして初めて「負の税金」などが可能になる。
 話があっちこっち飛んでしまったが、講演の内容はともかく、横浜のきれいな風景の中を歩けたことは今日の収穫だった。

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2009年7月22日 (水)

衆院解散をめぐる各紙09年7月22、23日の社説比較らしきもの

 7月22、23日の各紙社説は衆院解散、総選挙についての長い社説だった。
■朝日新聞
 朝日新聞の7月22日社説は<衆院解散、総選挙へ/大転換期を託す政権選択>のタイトルだった。(◆は最初からついていた小見出し)
 <政権交代の予兆が強まるなかで、歴史的な総選挙の号砲が鳴った。>
 という「歴史的」を強調する書き出し。
 <戦後の日本政治を率いてきた自民党政治になお期待を寄せるのか、それとも民主党に国を託すのか。そして、どんな政権であれ、失敗があればいつでも取り換え可能な新しい政治の時代を開くのか。有権者が待ちわびた選択の日がやってくる。>
 これが「歴史的」の説明だ。
 <内も外も大転換期である。危機を乗りこえ、人々に安心と自信を取り戻すために政治と政府を鍛え直す。その足場づくり、つまりはこの国の統治の立て直しを誰に託すか。これが焦点だ。>
◆失われた20年を超えて
 <それにしても、自民党に対する民意の厳しさは尋常ではない。解散までの混迷が映し出したのは、それにうろたえるばかりの政権党の姿だった。小泉首相の郵政選挙から4年。衆参のねじれで思うにまかせぬ国会。2代続いての政権放り出し。麻生首相の迷走と政策の説得力の乏しさ。だが何よりも、明日の暮らしと国の未来への人々の不安や危機感を受け止められない自民党政治への失望だろう。かつて日本の強みだった「一億総中流」とは似ても似つかぬ格差と貧困、雇用不安、疲弊する地方。そこに世界的な大不況がのしかかり、社会はきしみを深めている。>
 これが朝日新聞が描く「現状」だ。
 <一番の元凶は小泉改革だと、自民党内でも批判が熱い。だが振り返れば、20年前の冷戦終結とバブル後の「失われた時代」の到来はすでに、戦後の右肩あがりの時代を率いた自民党政治の終わりを告げていたのではなかったか。「自民党を壊す」ことで自民党の延命を図った劇薬も、それなりの効用はあったが、賞味期限は短かった。>
 これが「小泉改革」の位置付けだ。つまり、最初からもう壊れていた自民党政治を「壊す」と言って「劇薬」を国民に飲ませたが、自民党が蘇生するわけもなく、自滅の道をひた走った、というのだろう。
 <官庁縦割りの政策や予算。政官業のなれ合い。行政のムダ。霞が関への中央集権。温存された矛盾を何とかしなければ経済危機への対応も難しい。それを国民はひしひしと感じている。日本が寄り添ってきた米国の一極支配はもうない。多極化した世界で、G20や米中のG2が重みを増す。中国の国内総生産は今年中に日本を追い越しそうだ。「世界第2位の経済大国」という看板は巨大な隣国に移る。>
◆堂々と政権公約選挙を
 <日米同盟が重要というのは結構だが、それでは世界の経済秩序、アジアの平和と繁栄、地球規模の低炭素社会化に日本はどう取り組んでいくのか、日本自身の構想と意思を示してほしい。それが多国間外交を掲げる米オバマ政権の期待でもあろう。現実的な国益判断に立って、国際協調の外交を進めるのは、そもそも日本の有権者が望むところだ。それができなければ、外交への国民の信頼は失われ、日本の国際的な存在感もますます薄れていく。>
 この辺、何を言いたいのか?
 <民意が今の流れのままなら、民主党政権誕生の可能性は高いだろう。確かに、政権を代えてみたいという期待は強い。だが懸念や不安もある。民主党の言う「脱官僚」の政策決定の仕組みができれば、永田町や霞が関は大変わりだろう。経済界や民間にも影響が及ぶ。混乱は最小限に抑えられるのか。この変革の先にどんな民主主義の姿を展望するのか。ばらまき政策に財源はあるのか。外交政策もあいまいなところが多すぎる。>
 民主党政権への懸念の分だ。
 <一方の自民党が踏みとどまるには、みずからの長い政権運営の歩みを総括し、生まれ変わった「政権担当能力」を示すことだ。党内の派閥間で疑似政権交代を続けてきた時代はその必要を感じなかったろうが、これからはそうはいかない。>
 自民党にこそ政権担当暴力が問われている、というのはその通りだと思うのだが、今の時点になると、隠れ自民支持層から「民主党には試験担当能力がないから」という声が出てくるのだ。可笑しい。
 <マニフェストづくりを急ぐ各政党に強く訴えたい。政権を選ぶ材料として取り組む政策の優先順位を明確にしてもらいたい。なすべきことは多く、資源と時間は限られている。公約の説得力を有権者の前で競う「マニフェスト選挙」にしなければならない。それを政権選択選挙の当たり前の前提にしたい。
◆民主主義の底力を示せ
 <選挙後の勢力図次第で、政局は予断を許さない。自民党内からは政党再編論が早くも聞こえてくる。自民も民主も基本的に差はない、危機には国を挙げて、という理屈だ。しかし、政権交代しやすい小選挙制度を導入して15年。民意が政権公約に基づく選択でそれを機能させようというところまできたのに、いきなりその選択を無にしようという発想はいただけない。複雑な大変化の時代だからこそ、選択の結果を大事にしたいというのが有権者の思いではなかろうか。本紙の世論調査では、政権を与えた党の実績が期待はずれなら次は他の政党に、という人が6割にのぼる。政党間の不断の競争と緊張。民意によって与党にも野党にもなる。重要政策で妥協が必要ならば、開かれた国会の場を使うことだ。有権者もこの間、多くを学んだ。一時のブームや「選挙の顔」よりも、政権公約の内容、実行の態勢、指導者の資質を堅実に判断することの大事さだ。口に苦くても必要と思えば受け入れる覚悟がいることも。この選挙で課題がすべて解決するわけがない。だが、まずは民意の力で「よりましな政治」へかじを切る。日本の民主主義の底力を示す好機だ。>
 この主張は大連立反対論か。
 <審判は秋の気配も漂い始める来月30日。2009年の長い夏、目を凝らして日本の明日を定めたい。>
 秋の気配が漂うかどうか。昨日から数えると40日間だそうだ。ITが普及する前の、交通手段のあまりなかった昔の時代の選挙のようだ。年配の候補者にはきついだろう、と思う。死人が出るかもしれない。世代交代のためには仕方ないのかもしれない、過酷な選挙になりそうだ。
■毎日新聞
 毎日新聞の7月22日の社説は<衆院解散 総選挙へ/政権交代が最大の焦点だ>のタイトルだった。朝日新聞にあった事実関係の部分は除いて読んでみよう。
 <民主党を中心とする政権に交代させるのか、それでも今の自民・公明政権が続いた方がいいと考えるのか。有権者の選択が最大の焦点となる。戦後政治の大きな転換点となる選挙戦が事実上始まった。>
 という位置付けだ。
 <「昨秋解散しておけばよかった」と麻生太郎首相は後悔しているはずだ。毎日新聞の世論調査(18、19日)によると麻生内閣の支持率は17%で前月より2ポイント下落。自民党の支持率は18%で36%の民主党に大きく引き離されている。有権者の間には「一度政権を交代させてみたら」というチェンジ志向が確実に広がっていると見ないわけにはいかない。>
◆結束にほど遠い自民
 <圧勝した2005年の衆院選から4年。なぜこんな事態に陥ったのか。郵政民営化のみを争点に掲げ造反者の選挙区には「刺客」候補を送って注目された前回は報道のあり方を含め確かに問題は多かった。ただ反対を押しのけて進もうとする当時の小泉純一郎首相に多くの有権者が「政治が変わるのでは」と期待したのは事実だろう。ところが政治はさして変わらなかった。小泉氏は格差問題など「小泉改革の影」が表面化する中で改革の後始末をしないまま退陣。続く安倍晋三元首相は郵政造反議員を続々と復党させた。迷走はここに始まる。小泉改革路線を進めるのか、転換するのか。自民党は今に至るまできちんと総括してこなかった。そして国民に信を問うことなく次々と首相が交代し、場当たり的な対応をしてきたことが、現在の党内混乱の要因でもある。>
 小泉改革の総括がない、転換するのか、継続するのかも分からないでダッチロールを繰り返している、と有権者が見た、ということか。
 <安倍氏は憲法改正路線に軸足を置いた。だがその間に国民の暮らしに直結する「消えた年金」問題が深刻さを増して2007年7月の参院選で自民党は惨敗。その後体調不良で突如辞任した。福田康夫前首相も1年で政権を投げ出した。そして、経済危機を理由に解散から逃げてきた麻生首相が今、低支持率にあえいでいる。漢字の誤読もあって「首相の資質」まで問われる有り様だ。>
 漢字を読み間違えたくらいで、首相の資質云々を論うのはどうも好きになれない論理なのだが。
 <だが、「人気がありそうだ」と首相を交代させ、その後は選んだ責任を忘れ支えようとしない自民党そのものに多くの国民は「本当に政権担当能力があるのか」と疑問を感じ始めているのではないか。今回の「麻生降ろし」に国民の支持が広がらなかったのはそのためだと思われる。>
 それはそうだろう、と思う。しかし、「国民は」「国民は」とすべてに「国民」を主語にして書くのはいい加減止めてもらいたい、とも思うのだ。毎日新聞論説委員は、とか、書きようはあるだろう。
◆民主に問われるもの
 <一方の民主党も政権担当能力と鳩山由紀夫代表の首相候補としての資質が当然問われることになる。>
 として、
 <「政治主導」をお題目に終わらせず、強固な官僚組織を変えられるのか。税金の無駄遣いをどこまで削れるか。子ども手当や高速道路無料化、年金制度の抜本改革は実現するのか。消費税率は4年間引き上げないというが、財源の手当てはできるのか。党としての統一感に乏しい安全保障政策はどうするのか。それらの疑問に具体的に応えるのがマニフェストだ。鳩山氏の政治資金問題もさらなる説明が必要となる。>
 金銭疑惑を最後の付け足しにしたのは良かった。
 <大切なのはこの国をどんな形にするのかだ。未来に向けたビジョンを示してもらいたい。有権者の目は一段と厳しくなっている。何よりごまかさず、正々堂々と政策論争を戦わせることだ。それがむしろ支持を集める時代なのだ。>
 は、何やら押し付けがましい気がする。
 <自民党は1993~94年の細川護熙、羽田孜内閣時代に一度野党に転落した。しかし、引き金になったのは自民党の分裂であり1993年7月の衆院選は非自民各党が「細川氏を首相に担ぐ連立政権を目指す」と有権者に公約して選挙を戦ったわけではない。つまり55年体制ができて以降、私たちは衆院選で有権者が投票によって選ぶという形では、政権与党と首相を交代させた経験がないのだ。そんな選択に初めてなるのかどうか。異例の長い選挙戦となるが、いずれにしても政治の行く道を決めるのは有権者=主権者だ。こんなにわくわくする選挙はないではないか。>
 ワクワクしますか?
■読売新聞
 読売新聞は7月22日と23日の2日連続で衆院解散に関する社説を掲載する張り切りぶりだった。まず22日の社説は<衆院解散/政策本位で政権選択を問え>だ。
 <自民、公明両党の現政権の継続か、民主党を中心とする新政権の誕生か。これが最大の焦点になる。しかし、単に政権の争奪だけに目を奪われてはなるまい。「政権交代」の是非の前に各政党が掲げる主要政策とその実行能力が問われている。投開票までは40日間という長丁場だ。有権者はその間、各党の政策を十分吟味してもらいたい。>
 というのが社説のポイントである。
◆政治の安定をどう築く
 <民主党の鳩山代表は「第1党で政権交代」を目標に掲げている。民主党は、衆院で過半数を制しても、参院で単独過半数を確保していないため、社民党や国民新党と連立政権を組むという。これで安定した政治を行うことができるのかどうか。一方、自民、公明の与党はこれまで衆院の3分の2以上の多数による再可決で「ねじれ国会」を凌いできた。今回の選挙でこれだけの議席を確保することは不可能だろう。いずれにしても、衆参両院による意思決定をいかに円滑に進めるかという難題が政治に突きつけられることになる。>
 総選挙後の政界の話だ。
◆明確な国家像を示せ
 <各党は国民の不安解消に向けた処方箋を示す必要がある。>
 として、
 <確かに政権公約で政策の達成期限や数値目標を示すのはいい。だが、より重要なのは日本をどのような国にしていくのかという「国家像」の提示である。鳩山代表は21日の両院議員総会で「明治維新以来の官僚主導政治」からの転換を強調した。だが「政治主導」を実践するといっても、官僚を説得して動かすだけの政治力が伴わなければ、混乱するだけだろう。民主党は政権公約に「子ども手当」やガソリン税などの暫定税率廃止、高速道路の原則無料化などの政策を盛るとしている。>
 このマニフェストに関する考え方は賛成だ。
◆政策に財源の裏付けを
 <だが、無駄遣いの排除などで、これらの財源を捻出できるのか、はなはだ疑問だ。岡田幹事長は「財源なくして政策なし」と語っている。民主党は、財源を明示し、国民の合点が行く政権公約を作り上げるべきだ。>
 折角、マニフェストは志だ、と言った舌の根も乾かないうちに数値ですか。それはないでしょう、読売さん。
 <政権公約は、各党とも有権者の歓心を買うものになりがちだ。だが、そのツケはいずれ有権者に回る。大衆迎合的な公約を競うことは、避けなければならない。>
 これは言えるのだが、だからこそ、新聞は各党のマニフェストを精査して報道する義務があるのでは?
 <民主党は、インド洋での海上自衛隊による給油活動など国際平和協力活動に反対姿勢を示してきた。ただ、最近になって、鳩山代表は、給油活動を当面、継続する考えを表明した。政権交代を視野に入れ、外交の継続性から現実的方向に政策転換するのは当然のことだ。だが、社民党の福島党首は反発した。基本政策で隔たりがある社民党との連立政権は、極めて難しい運営を迫られるだろう。>
 この問題だ。そして、自民党については政権公約作りの遅れを批判し、
 <自民党にとっても、肝心なのは政策だ。世界同時不況の下で、政府・与党が打ち出した矢継ぎ早の経済対策の検証が重要である。首相は、衆院解散を決定した閣議で「安心で活力ある社会を実現しなければならない」と決意を表明した。>
 それが大切だ、と思う。
◆「責任政党」が試される
 <「責任政党」を標榜するなら、消費税率引き上げなどについて明確な方針を打ち出すことが必要だ。「4年間は消費増税しない」としている民主党との対立軸の一つになるだろう。各党は事実上の選挙戦に入った。年金、医療など社会保障や、新たな日米関係をはじめ、対北朝鮮など安全保障問題についても、政策論を戦わせてほしい。自民、民主両党のどちらに「政権担当能力」があるかは、そこから自ずと見えてくるはずだ。>
 という結論は納得できる。北朝鮮問題はきっちりとやってほしい。
 そして、7月23日の社説は<麻生対鳩山/「首相」の資質が問われる>のタイトルだった。
 <衆院選は日本の舵取りを担うリーダー選びに直結する。過半数を確保した勢力から首相が選ばれるからだ。有権者の責任はきわめて重い。この国の最高指導者に求められるのは日本の針路やあるべき国家像、それに至る道筋を有権者に明示することだ。自ら掲げるビジョンを実現させるには、党内を掌握する政治手腕や官僚を自在に使いこなす力量、有権者を納得させる説明能力が不可欠である。>
 と理想像を示しながら、
 <時代の求めるリーダー像に照らして麻生首相も鳩山民主党代表もはなはだ心もとない。特に懸念されるのが、言動に首尾一貫性を欠くことだろう。>
 と切って捨てる。しかし、政治は国民の実相以上の実力は持てないものだ。日本の今の民主主義は麻生か鳩山か、の民主主義なのだ。ヒットラーかナポレオンかではなく。
 <首相の場合は9月末に自民党総裁の任期が切れる。進退のカギを握るのは衆院選の結果だ。退陣か再選かの厳しい選択を迫られることになる。>
 なるほど。
 <一方、鳩山代表は長年、憲法改正を旗印に掲げてきた。憲法9条と政治的現実の乖離が「健全なリアリズム」を損ねたと指摘し、集団的自衛権の行使を容認する独自の改憲案も公表している。だが、5月に党代表に返り咲いて以来、自らの改憲志向を封印している。党内の旧社会党系議員や、連立政権の友党と考える社民党への配慮からだろう。最近、非核三原則について、米軍の核搭載艦船の寄港容認を念頭に「現実的対応」に言及した。インド洋での給油活動を当面、継続する考えも示している。鳩山代表が信条とする「健全なリアリズム」の発露だろうが、社民党から強く批判されている。これで腰砕けになるようなら、次期首相の資格はない。>
 鳩山氏がぶれるかどうか。鳩山でも麻生でもどっちでもいい感じなのだが。政権交代して日本は本当に変わるのだろうか?
■日経新聞
 日経新聞7月22日の社説は<政権選択選挙の名に恥じぬ政策論争を>だった。
 <政権選択選挙の名に恥じぬ政策論争を強く望みたい。二大政党の自民、民主両党は速やかにマニフェスト(政権公約)を公表し、有権者に判断材料を示す責任がある。>
 という趣旨の社説だ。
◆独自公約は許されない
 <衆院選は小泉自民党が圧勝した2005年9月の郵政選挙以来、ほぼ4年ぶりとなる。9月10日が衆院議員の任期切れになっており、事実上の任期満了選挙といえる。この4年の間に小泉純一郎、安倍晋三、福田康夫、麻生太郎の4氏が首相を務めた。衆参ねじれ国会の影響もあって、安倍、福田両氏がともに1年間で政権を投げ出したことが、自民党の統治能力への疑問を強める結果になった。昨年9月に「選挙の顔」として党内の圧倒的な支持で選ばれた麻生首相も自らの発言のぶれや日本郵政社長人事などでの政権運営の迷走が相次ぎ、内閣支持率の大幅な低下を招いた。自民党にとってかつてない逆風の下での選挙戦となる。>
 というのが、この4年間の総括だ。
 <解散されたにもかかわらず、自民党は政権公約の骨格すら示していない。各党は事実上の選挙戦に突入したが、政権公約なしで、自民党候補は一体何を訴えるのだろうか。首相は早急に政権公約をまとめなければならない。首相がこだわる将来の消費税率の引き上げを公約に盛り込むことには、党内に異論が残っている。年金や医療制度などの社会保障改革は待ったなしだ。政調各部会の要望を並べたような政権公約では、有権者の支持は得られまい。>
 として、
 <首相に批判的な議員の間では、党とは異なる独自の政権公約を掲げて選挙を戦おうとする動きがある。これは政権公約と党首(首相候補)を比べて政権を選ぶという衆院選の趣旨に反する行為であり、容認することはできない。独自の政権公約を訴えるなら、潔く離党して新党をつくるのが筋である。こうした動きが具体化したら、党執行部は公認取り消しなどの断固たる対応を取る必要がある。>
 ここが見出しだったのか。細かい話だ。
 <都議選など一連の大型地方選で連勝を続ける民主党は、政権交代に向けて勢いづいている。だが政権交代は手段にすぎない。大事なことは政権交代後に何を実行するかだ。>
 日経新聞は「政権交代は手段」と言い切っている。この辺、朝日新聞や毎日新聞とスタンスが異なるところだろう。
 <民主党が候補者向けに配った主要政策のポイント解説集には、月額2万6000円の子ども手当、高校授業料の無償化、高速道路無料化、ガソリン税などの暫定税率廃止、農業の戸別所得補償制度の創設などの目玉施策が列挙されている。これらの新規施策をすべて実施するのに必要な財源は16兆8000億円と見込み、無駄遣いの削減で9兆1000億円、埋蔵金の活用で4兆3000億円ひねり出すなどとしている。>
 さすが日経新聞だ。原価計算というかバランスシート計算を重視する。
◆ばらまき懸念ぬぐえず
 <しかし、無駄遣いの削減などで本当に巨額の財源を生み出せるかは不透明なままだ。選挙目当てのばらまきとなる懸念はぬぐえない。民主党は政権公約で財源の裏づけをくわしく説明する必要がある。子ども手当の創設に伴い、所得税の扶養控除や配偶者控除を見直す方針だが、増税などの負担増についても実のある論戦を期待したい。>
 増税を書け、と。年来の日経新聞の主張である。
 <民主党政権が実現した場合の大きな不安要素は、外交・安全保障政策だ。インド洋上での海上自衛隊の給油活動については、小沢一郎前代表当時に「憲法違反」と断じて反対した経緯がある。日米関係などに禍根を残す判断だった。鳩山由紀夫代表は政権獲得後も即時撤退はしない考えを表明した。現実的な外交路線に修正する試みかどうかを注視したいが、社民党は反発し、波紋が広がっている。北朝鮮の核開発問題など選挙後に直面する外交課題は山積している。安定した政権を築くには、説得力のある外交・安保政策を示すことが不可欠だ。>
 これも各紙と同じ。ただ、面白かったのは次の文章だった。
 <民主党政権ができた場合、共産党は一致できる政策には是々非々の立場で協力する「建設的野党」を目指す方針を打ち出した。与党の公明党や、民主党の連立相手に想定される社民、国民新両党も党の姿勢を明確にして選挙に臨んでもらいたい。>
 共産党にまで視野を広げている。この辺、日経新聞もなかなかやるなぁ、という感じだった。
■産経新聞
 産経新聞の7月22日社説はいかにも産経らしい「国の形」を題材にした社説(主張)だった。見出しは<衆院解散/国のありよう競い合え/政権担当能力が判断の基準>だ。
 <衆院が解散され、総選挙が来月30日に行われる。これからの日本の針路を決める歴史的な意味合いを持つ選挙だ。各党は日本丸のかじ取りをこうするという青写真をマニフェスト(政権公約)などで具体的かつ早急に国民に明示しなくてはならない。争点にすべきは、日本の基軸をどうするかである。例えば、北朝鮮の核や弾道ミサイルの脅威に加え、中国の軍事力の強大化に日本はどう向き合うのかという問題がある。日米同盟関係を弱める選択をすることで日本の安全は守られるのかどうか。消費税などの負担の問題も避けていては年金などの難題は打開できない。問われているのは日本の国のありようであり、内政外交の懸案や難題をどう解決するのかという処方箋である。「政権交代」気分に浸っている余裕はない。政権担当能力の競い合いを通じ、日本の国家像を提示することこそが求められている。>
 気分かぁ。政権交代そのものも結構ドラマなんだけど。
 <「麻生降ろし」をめぐる混乱は東京都議選などにも悪影響を与えたが、麻生首相も反麻生勢力も、郵政民営化に匹敵するテーマは持ち合わせていない。自民党の最大の問題点がそこにある。>
 テーマがない、と。
 <外交・安全保障をめぐる民主党の国会対応は現実に日米同盟を損なってきた。インド洋で海上自衛隊が給油支援を行うテロとの戦いでは、民主党がテロ対策特別措置法に反対したため一時中断した。在日米軍駐留経費の日本側負担に関する特別協定にも反対し、空白期間が生じたこともあった。鳩山由紀夫代表は「すぐにやめるのは無謀な議論」と、政権交代後も給油支援を継続する考えを示したが、小手先の対応にすぎないといえる。来年1月に期限切れとなるテロ対策特措法の延長措置をこの秋に取らなければ、いつまた撤退するかわからないからだ。共に参加する各国に対しても極めて不誠実な対応となる。>
 産経新聞の原理主義的安全保障観はすごいなぁ。
 <沖縄の米軍普天間飛行場の県外移設の主張も県外のどこに移すかを言わなければ現実の政策といえない。ごく最近も、国連安保理決議を受けた北朝鮮船舶に対する貨物検査特措法案の早期成立に協力しなかった。民主党の外交・安保政策の危うさを首相や自民党が突くのはもっともだ。だが、中国の軍事力強大化に対し、日本の防衛力を削減してきた一義的な責任は自民党政権にある。民主党にはその問題意識すら薄いようだ。この国をどう守るかという議論をさらに深めることは両党の責務である。>
 そうだ!
◆増税論議を避けるな
 <民主党はとくに年金制度改革の必要性を主張していたが、マニフェストでは公的年金の一元化による新年金制度の実施時期を、当初予定していた平成24年度から26年度以降へと先送りするという。無年金・低年金者救済のため創設する「最低保障年金」の財源には消費税の全額を充てるが、消費税率は4年間引き上げないという。自民党は景気回復を前提に、消費税を含む税制抜本改革を3年後に行うとしているが、どれだけマニフェストで徹底できるかだ。選挙には不利だとして増税論議を避けることはもはや両党ともに許されない。>
 ということだが、有権者がそう思えば、各党は書いてくるだろう。
 <民主党の教育政策を危惧する声は多い。輿石東参院議員会長が「教育の政治的中立はあり得ない」などと、日の丸、君が代問題などにみられる日本教職員組合(日教組)のイデオロギー闘争をさらに教育現場に持ち込むような発言を繰り返しているためだ。同氏の発言は党内でほとんど問題視されておらず、支持労組のイデオロギーには目をつぶる民主党の体質をうかがわせていないか。>
 そうか。日教組か。懐かしい言葉を聞いた。
 <この国に責任を負う二大政党が身を切るような激しい政策論争をまず行うべきだ。国政の停滞を脱し、閉塞感を除去する政治体制は真剣かつ現実的な論争を経て、誕生するのではないか。>
 この言葉は生き生きした内容を伴っていたのだろうが、今、このように書かれるともはやワンパターン化したステレオタイプに見えてしまう。怖いものだ。

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2009年7月21日 (火)

書評「日本人と『死の準備』~これからをより良く生きるために」山折哲雄著(角川SSC新書)~改正臓器移植法反対鮮明

 角川SSC新書の新刊「日本人と『死の準備』~これからをより良く生きるために」(山折哲雄著、定価798円、2009年7月25日第1刷発行)を読んだ。2部構成の本で、第1部が山折氏の「日本人と『死の準備』」。第2部は人生80年時代にどのような死に支度をするのか、いろいろな分野の人の話を集めたもの。

日本人と「死の準備」―これからをより良く生きるために (角川SSC新書) 日本人と「死の準備」―これからをより良く生きるために (角川SSC新書)

著者:山折 哲雄
販売元:角川SSコミュニケーションズ
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 山折氏の見方は一貫している。人生50年時代の「死生観」が今や雲散霧消する時代。この死生観は「働いて働きづめに働いた後は死ぬんだ」というメッセージだった、という。ところが、いつの間にか我々は人生80年の時代を迎え、働き尽くめの50年が過ぎても、そのあとに更に20年、30年の時間が横たわっており、その20年、30年は必ずしも順風満帆の旅というわけにはいかない。病と老いという高波や嵐が待っている時代になった。生と死との間にそれが不意に割り込んできて、我が物顔に振る舞うことになった、と。そこで、人生50年型とは違った新型の人生モデルを創らねばならないのではないか、という問題意識で書いた本だという。人生80年というのは死に支度の時代に入ったこと、その天の声は遠からず死に化粧の段階が来ると囁いている、と。

 そうなると、「人生80年の時代には言ったのだから、これからはさらに人生90年、人生100年時代がやってくるぞ」という景気のいい掛け声が必ず聞こえてくるだろうが、そういう人の後にくっついていくよりは、やはり人生80年は死に支度だ、と思う、と言う。

 土屋文明の<百年はめでたしめでたしわれにありては生きてきたなき百年なりき>

 良寛の<かたみとて何か残さん春は花夏ほととぎす秋はもみじば>

 をあげていた。こういう死生観、死に支度について書くのだそうだ。

 山折氏の分は80ページまでで、その後の部分は他の方の講演記録なのだが、山折氏のわずか80ページは内容が濃い。親殺し子殺し、無差別殺人などの多発する世の中を見て、

 <個や個性という普遍的な価値観と、日本の伝統社会に生き続けて来た「ひとり」という言葉の持つ価値観が切り離されたっま、我々はそれを結びつけようとはしなかった。その果てに、いつの間にか今日の若者たちが一人であることの恐怖を語るようになってしまったのである。明らかに戦後60年の教育に重大な欠陥があったとしか思えない。……(凶悪な事件続発を)ネット社会の影響であるとか、格差社会の影響によるとか、いろいろな言説が説かれているが、言葉で説明することは空しい。果たしてそれでいいのかという疑問も湧き上がってくる。言葉のないところで何かを模索し始めなければならない。そういう時代になったのかもしれない。>

 と書く。そして、ヒンズー教徒は最期を迎えるとガンジス川中流域の聖地ベナレスにやってきて、最期の日々をそこで過ごし、死んだ後は川岸で火葬され、骨灰が眼前のガンジス川に流される、と。これがヒンズー教徒の間で日常的に見られる死者の野辺の送りだそうだ。死者を看取るための小屋が川岸に建ち並び、これは「平和の館」という。ここには医者も宗教家も入れず、本人と家族だけが最期の時を過ごすという。最後の最後、体をさするだけがケアの唯一の手段という人々も多いそうだ。

 釈迦が子どもを捨てた伝説。その子に「悪魔」という名を付けた、と。仏教の発生は29歳で家族を捨てて家出して35歳で悟りを開くまでの6年間の釈迦のエゴイスティックな姿と捨てられた子どもの関係、父と子の関係から始まったのではないか、という。釈迦の10人の弟子の10番目の多聞こそ、釈迦の子ラーフラの悩みを聞き、悟りに導いたキーマンではないか、とも書いている。

 キリスト教は父と子の関係ではなく、母と子の関係。それもマリアとキリストという近親相姦的な関係が濃密に教義に関連している、と見る。

 インド人の考えていた乾燥しきったインドの大地の仏教とモンスーン地帯の日本の仏教では基本が違う、とも。和辻哲郎の「風土」の分類を応用して、日本人の「しめやかな激情」という特徴を浮かび上がらせる。

 面白いのは次の「ノアの方舟」の解釈である。この生き残り神話はやがて西欧でサバイバル・セオリーというべき理論の生みの親になる。なぜなら、この考え方はユダヤ・キリスト教社会の歴史を貫き生き続けた選民思想や進化思想を産出して止まなかったからだ、とされる。それだけではなく、それは人間いかに生きるべきかという哲学・論理的命題の根幹を支え、さらには今日の政治・経済理論における土台を形づくってきたのだ、という。

 タイタニック号の悲劇も参照され、そして、ついにP50で脳死問題に入っていく。

 <むろんここでいう生き残りの戦略は、現代医療の現場にも息づいている。脳死によって死につく者と、臓器の移植によって生の世界に復帰する者を選別する、生命操作のテクノロジーのことだ。>

 という書き出しで、この進化論、選民思想から発展した系統には1992年のリオデジャネイロの「地球環境サミット」で取り上げられた「持続可能な開発」提言も入るのだ、という。山折氏は触れていなかったが、ナチスに利用された優生学も当然この系統に入るだろう。

 こういう大きな西洋思想の流れに対峙できるものは何か? と問いかけ、

 <人類がもしもノアの大洪水のような危機に襲われ、その大多数が死滅する運命を免れないと分かったとき、「われもまた死に赴こう」と決断する選択肢である。わずかな生き残りへの可能性を拒否して、死の運命を甘受する多数の側に身を寄せようとする生き方だ。そのような決断の根底にあるものが仏教の無常という認識ではなかったか、と私は思う。この世の中に存在するもので永遠なるものは一つもない。形あるものは必ず滅する。生きる者また死を免れることはできない。ブッダの簡明な無常観である。生き残ることの限界をわきまえたモラルである。先のサバイバル・セオリーに対する無常セオリーといっていいだろう。この無常の原理は、何人も否定できない真理性を備えている点で、思想における一般相対性理論と称してみてもいいかもしれない。>

 と書く。この論理が改正臓器移植法反対に結びつく理論として応用されるのだ。

 <さて問題は我々自身の今日における運命である。眼前に迫り来るグローバリゼーションの大波に抗して立ち続けようとするとき、すでに我々自身があのサバイバル・セオリーに雁字搦めになっている自画像が見えてくる。ところが、その時代の絶大な風圧の下に思い屈しているとき、我々の意識の奥底からはあの無常セオリーの旋律が聞こえてはこないか。その相反する旋律が今後果たして調和する二重奏を生み出していくのか、それとも自動機械人形のようなぎくしゃくした狂想曲を奏でることに終わるのか、我々は今、まさに正規の分岐点に立たされていると思わないわけにはいかないのである。>

 そして、山折氏は「もしも日本の万葉時代の古代人が現代に甦ったとしたら、臓器移植という先端医療を受け入れたのではないか、と私は思う。どうぞ、どうぞといって、あれこれの自分の臓器の提供を申し出たのではないだろうか」とも書く。曲球だ。万葉人は死んだ後の遺体は魂の抜け殻と思っているから、そう言うだろう、というのだ。万葉人は肉体と魂は別物と考えていた。霊肉二元論の立場を取っていた。そこで山折氏は、

 <古代の万葉人たちと現代の臓器移植に携わる医師たちの間にはその点で極めて親縁な関係が認められると言っていいだろう。けれども残念ながら、比較が可能なのはそこまでである。なぜなら今日の医師たちは死者の死の時点を「脳死」というように厳密な一点に絞り込んでいるのに対して、万葉人は死の時点をそんなにあっという間の事柄に限定してしまうことなど思いも及ばないことだったからである。>

 として、<もがり>の大切さ、古代人にとって一種の<臨死体験>の期間だったこと、などをあげて「カンニバリズム(人肉食)」、大岡昇平の「野火」、武田泰淳の「ひかりごけ」について考察した後、

 <脳死者の臓器を移植して生き延びようとする我々の行為は、どこか民俗社会によく見出されるカンニバリズムの光景を思い出させると思わずにはいられない。>

 と書いているのだ。この文章はドキッとする。臓器移植という医療システムに付き纏う厭らしさ、不透明さ、粘々した感触は人間の肉体まで取引材料にしようという「ベニスの商人」のシャイロック的な西欧文明の汚らしさがその問題でクローズアップされるからだろう。日本人の古代からの死生観とは全く適合しない、一神教のグロテスクな思想なのだ。

 そして、

 <世代を超えて継承されてきた死の作法という、それこそ人間の「尊厳」にとってもっとも欠かすことのできない伝統が、しだいに空中分解をとげていくだろうと思わないわけにはいかなかったからだ。たとえば、脳死判定などという法的・医学的手続きがある。その手続きが厳密に行われている時、家族はどこで何をしている のか。何ができるのか。どのような時間を過ごし、どのような場所で死に行く者を看取るのか。そういう重大な問題が全く等閑に付されている。それが丸っきり闇に包まれている。ほとんど議論さえなされていない。それに代わって聞こえてくるのは、遺族(家族)のプライバシーとか、それを報道する側のパブリシティとかいう観念的な言葉ばかりである。それらの軽薄な言葉の群れは死に行く者、死者を看取る者の心中に土足で踏み込んで来る舌足らずな観念語にしか私には見えないのである。>

 とズバリ書いている。

 最も大切な部分を全く議論せずに「衆院解散で廃案になったら国会の責任と言われる」という強迫観念だけでA案に賛成した参院議員が多かっただろう。残念だ。彼らにこそ、この山折氏の論を読ませたい。善意という美名でドナーカードへの登録を増やそうとしている。それをしたいという人がやる分には何も反対はしないが、山折氏のように一切自分の臓器は提供しないぞ、と考える人だって多いだろう。そういう人にとって、「脳死は人の死」という悪法は施行前に廃止法案を提出、成立させなければならない、と考える人もいるだろうが、その声は結集されないだろう。日本が高度資本主義国家だからだ。日経新聞をはじめとした資本家のイデオローグが逆戻りを許さないだろう。日本はそこまで変質してしまったのだ。

 山折氏の危機感が分かろうというものだ。

 この本は薄っぺらいが、第2部の中でも役に立つ論文が多く、一読をお薦めしたい。

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2009年7月18日 (土)

北朝鮮のミサイル連射の裏に日本製の部品あり:中国吉林省ルートの貿易額突出で明るみに~09年7月16、18日産経新聞

 こういう記事は誰が書くのだろうか? 産経新聞7月18日朝刊1面トップだ。署名もない。ネットHPで探すと北朝鮮の項目にも中国の項目にも入っていない。もしかすると公安なのか? と一応、政治ジャンルで探したら見つかった。[政治]とは言っても政局とか普通の外務省発表の記事とは違う。「日米両国の外交筋」とはあるものの、情報機関ではないか? 日本でいえば、外務省総合情報局はあるものの、そちらではない情報部局だと思う。昔の内閣調査室なのではないか? とも思う。また、米国はCIAか類似機関だろう。産経新聞の侮れないところは、こういう記事を書ける、それも1面トップで書けるところではないか。他の新聞は「やばい記事だ」ということで、書かないだろうが、こういう記事は半分は謀略情報であっても、半分は事実である可能性が大きいのだ。

 前書きが長くなったが、ネットの記事の見出しは<吉林省ルート突出/昨年12月の中国の対北輸出/ミサイル部品に関連か>である。

 面白い記事なのだ。どう解釈していいか分からないけれども、本当だったら日中戦争だってありうる、という際どい内容なのだ。

 読んでみよう。

 <中国の対北朝鮮輸出額が昨年12月だけ突出して増えていたことが17日、日米両国の外交筋の証言で明らかになった。中朝貿易は通常、中国・遼寧省ルートが全体の3割程度を占める大動脈となっているが、昨年12月は吉林省から北朝鮮北東部へのルートが全貿易額の半分を超えた。このため、北朝鮮が今年4月に発射した長距離弾道ミサイルなどの関連部品が、昨年12月に集中して発射地点から近い吉林省ルートで運ばれた疑いが浮上している。部品の一部は日本から中国経由で「迂回輸出」された可能性も指摘されている。>

 何とも変な話なのだ。

 <日米両政府が入手した中朝貿易記録によると、中国の対北輸出額は昨年1年間で約20億3323万㌦だったが、昨年12月の1カ月間だけで約4億3121万㌦に上った。>

 本当に変な数字だ。よくこの数字を裸で出したものだ。というか、出さなかったにせよ、よくこのままで記録しておいたものだ。

 <例年は中国・遼寧省から平壌に向けた輸出額が最も多く、昨年も1年間で6億3906万㌦を占めた。だが、12月に限ってみると吉林省から北朝鮮北東部に向けた輸出額は遼寧省ルートの2.5倍以上で、1カ月間で約2億4114万㌦(昨年1年間では約4億2515万㌦)に達した。>

 200億円、何を売ったのか?

 <日米両政府は、吉林省からの輸出額の急増に注目。北朝鮮は今年4月、長距離弾道ミサイル発射を北東部・舞水端里の基地から強行し、その後も東部の元山付近から短距離ミサイルなどを連射していることから「ミサイル発射に間に合わせるため通常とは違うルートで関連部品を一気に輸入した可能性がある」(米政府関係者)との見方がある。>

 北朝鮮の命令で朝鮮総連が中国経由で部品を緊急輸出したのか?

 <また、中朝貿易の記録を精査した結果、中国からの輸出品目の中には、ミサイル燃料タンクに転用可能なプラスチック製の貯蔵庫やミサイルの光学部材に転用できる眼鏡製品が含まれていた。眼鏡製品には、日本の高度な光学技術が用いられたものもあり、日本から中国を迂回して北朝鮮に輸出されていた疑いが指摘されている。>

 福井県の眼鏡か。まさか北朝鮮でミサイル部品になっているとは福井の眼鏡職人は想像もしなかっただろうに。

 <日本の公安当局は「日本の全面禁輸などの制裁措置により、ミサイル部品を入手しづらくなっている北朝鮮の事情が反映している」とみている。>

 これを見ると、やはり産経新聞の得意の公安情報だったのか?

 <日米両政府は、中朝貿易記録には8桁の品目別コード番号が記載されていることから、中国の税関当局にも協力を要請し「迂回輸出」の有無や記録と実際に輸出された製品との照合作業を進めたい考えだ。>

 今の中国の雰囲気だと協力せざるを得ないかもしれない。これで協力したって、北朝鮮が崩壊するような話じゃないから。

 公安の談話を読む限りでは北朝鮮の苦しさのあらわれだ、と見ており、脅威とは見ていない。なぜだろう? どういう話なのだろう? 日本国内の協力者は割り出せるのだろうか? さまざまな疑問が出るが、何一つ分からない。ミステリアスな記事だ。

◆ミサイル発射前後に北朝鮮機が領空侵犯意図→自衛隊機、10年ぶりスクランブル

 7月16日の産経新聞HPにアップされていた古い記事だが、<北朝鮮機に8回スクランブル/4月のミサイル発射前後に>という記事も公安情報なのだろうか? と思ったら、発表らしい。産経新聞がこういう記事を書くとすべて独自記事的になるのが面白い。

 <防衛省統合幕僚監部は16日、北朝鮮が長距離弾道ミサイルを発射した4月5日前後に、北朝鮮機とみられる航空機が日本の領空に接近し、航空自衛隊機が領空侵犯の恐れがあるとして計8回、緊急発進(スクランブル)していたことを明らかにした。>

 北朝鮮は本当に日本を舐め切っているんだろうなぁ。何をしても怒らないし、報復もしない。何か偉そうなことを言い出したら、韓国の中の北朝鮮シンパ勢力と協力して日本の歴史問題でアメリカ文化人たちまで巻き込んで「反日」の世界世論をつくれば日本なんかすぐに降参するだろう、と見縊っているのだ。あの極貧国に見縊られるなんて何て情けないんだろう、この国は。

 <北朝鮮機への緊急発進は、平成11年(1999年)に能登半島沖で起きた北朝鮮の工作船事件以来、約10年ぶり。統幕は「ミサイル発射に対する日米の警戒状況を偵察に来た可能性がある」としている。>

 なつかしいなぁ。科学技術関係のお台場の施設に展示されていた工作船を見に行ったことがあったが、思ったより大きくて驚いた。
 <統幕によると、空自のパイロットが目視できる距離までは接近してこなかったが、レーダーで判明した航跡などから、北朝鮮機の可能性が極めて高いという。空自機が発進したのは築城(福岡)、小松(石川)、百里(茨城)の3基地。ただ統幕は北朝鮮機が接近した日時や機数などの具体的な情報について運用上の理由から公表していない。>
 そんな手の内まで明かして北朝鮮に教える必要はない。

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朝日新聞の金正雲訪中記事のネタ元は北朝鮮?~産経新聞09年7月18日伊藤正氏コラム

 産経新聞7月18日朝刊国際面コラム【緯度経度】で北京支局長の伊藤正氏が<正雲報道は北の情報操作か>という刺激的なタイトルで論を展開していた。読んでみよう。

 <「あの問題はどうなったか」と日本の友人からメールが来た。朝日新聞が6月16日と18日付朝刊で北朝鮮の金正日総書記の後継者とされる三男、正雲氏が極秘訪中し、胡錦濤国家主席らと会談したと報道、それを中国側が重ねて否定した一件のことだ。朝日側は本紙などの質問に「確かな取材に基づく記事」と主張し、英有力紙フィナンシャル・タイムズ(FT)も同月29日、訪中説を伝えた。友人によると日本では中国が事実を隠蔽しているとみる人が少なくないという。もし訪中が事実であれば、北朝鮮の弾道ミサイル発射(4月5日)と2度目の核実験(5月25日)で険悪化した中朝関係修復のきっかけになり、中国が国連安保理の対北制裁決議実行を手控える可能性さえ示唆するスクープだが、中国外務省の秦剛報道官の否定でにわかに怪しくなった。私は6月20日付朝刊の本欄で中朝関係の険しい現状を紹介、金正雲氏訪中報道に驚いた、と婉曲に疑問を提起した。そして外国要人の訪問はすべて知り得る中国外務省の明確な否定によって「誤報」の可能性が高まった。>

 やはり誤報だったのか?

 <外務省報道官は権限を越える問題では質問に答えないか、はぐらかすが、事実に反する回答はしないルールがある。例えば金正日氏の総書記就任後3度の訪中は帰国するまで秘密にされたが、訪中を察知した記者の質問に報道官は「発表する情報を持っていない」などと答え、否定はしなかった。>

 中国の政府関係者の話をどう解釈するか、でこれは貴重な情報だ。

 <今回の正雲氏訪中報道に対する報道官の否定は痛烈だった。朝日の記事は「スパイ小説」、FTは「走火入魔」(「病膏肓に入る」の意)と呼び「事実無根のでっち上げ」と決めつけた。武大偉外務次官も「金正雲氏は一度も来たことはない」と完全否定した。>

 ここまで否定したのだから…。

 <私は1カ月前の記事では誤報か否かの判断は保留し、続報に期待した。北朝鮮当局の確認とか、正雲氏の目撃証言とかだ。それはないまま、朝日は6月30日付朝刊にFTの記事を引き「正雲氏、習(近平)副主席とも会談」との見出しで報じた。「とも」とは朝日報道の胡錦濤氏のほかにという意味だ。また記事では中国外務省報道官が朝日報道を否定した事実を、同紙としては初めて明らかにした。FTの追随報道で自社記事に改めて自信を持ったようだ。>

 何か分からないところで熾烈な争いがあるのか?

 <朝日とFTの記事は「6月10日(ごろ)から17日」の訪問時期で一致、地方視察先や軍事施設での宿泊という点も共通する。会談相手は朝日は胡錦濤氏、FTは習近平国家副主席と江沢民前主席。朝日は会談に金総書記長男の正男氏も同席とし、FTは2年前から動静報道がなく重病説のある趙明禄国防委員会第1副委員長らが正雲氏に同行と、それぞれ意外な独自情報を盛り込んでいる。情報源は朝日の「金総書記に近い筋」「中朝関係筋」、FTは「軍、情報、外交筋」と異なる。通常、異なる筋の情報が重なれば事実であることが多い。>

 なるほど、「通常、異なる筋の情報が重なれば事実であることが多い」という経験則は重要だ。特派員たちはそう判断して記事を書いているのだ。

 <注目すべきはFTが朝日の記事が否定された後に報道した点。よほど自信があったに違いない。FTは正雲氏が軍事代表団に加わって訪中したとしている点も注目される。6月10日は平壌からの航空便はなく、軍の特別機で北京入りしたとすれば、中国外務省が知らなかった可能性も排除しきれない。しかし私が直接、間接に得た情報は両紙の報道に否定的だった。報道を裏付ける追加情報もない。当局筋によると「軍事代表団」であっても、中国外務省は把握できる立場にあるとし、報道官の否定発言が変わることはないという。>

 軍の特別機で隠密裏に訪問をする、というケースはありうるわけか。

 <では朝日、FTの報道は何だったのか。ある情報筋は「中国側から出た情報ではない」と断言、北朝鮮側の情報操作の可能性を示唆した。外国人記者は24時間、監視下にあるため当局は既に情報源を特定しているに違いない朝日の金正雲関連報道は6月3日付朝刊で、今年初めに北朝鮮が中国に特使を派遣、正雲氏が後継者に内定したと通告した、との記事に始まる。その後の報道と情報源は同じだった。中国筋によると北朝鮮は当時始まっていた国連安保理の制裁決議案討議を牽制するため中国との親密な関係を国際社会に印象づける情報活動を活発化していたという。しかし、複雑で秘密に満ちた中朝関係の闇の中から、真相が明るみに出る日は来るとしてもなお相当先になるだろう。>

 やっぱりそうか。朝日新聞は北朝鮮の兄弟分だから北朝鮮が朝日新聞に恥をかかせることはない、と以前書いたが、伊藤氏もそう考えるに至ったか。北朝鮮には朝日新聞の支局はない。朝日新聞の記者が北朝鮮の高官やロビイストと接触しやすいのはニューヨーク・ルートか北京ルートだろう。在日朝鮮総連とか、韓国のいわゆる民主化勢力の場合だってなきにしもあらずだが、そんな機密情報は流してこないと思う。伊藤氏がここまで調べて分からない、ということは北京ルートではない方、つまりニューヨーク・ルートで北朝鮮の情報操作に乗せられたのだろう

 ニューヨークは北朝鮮の外交の主戦場だ。キッシンジャーなどいまだに米外交政策に影響力を持っている長老グループと北朝鮮訪米団との秘密の会談が日本人の分からないところで続いている。つまり、北朝鮮は米国にはそれとなく北朝鮮の内情を打ち明け、米朝直接対話の糸口をつかもうとしている。

 そして、米国、韓国、日本の記者らは北朝鮮の外交官にいかに食い込むかで、特ダネ合戦をしている。

 需要と供給が一致した、ということは十分にありうるのだろう。

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野田聖子大臣、純国産農産物シールを早急に作って!食料は自給しよう!~日経新聞09年7月18日朝刊から

 日経新聞7月18日朝刊1面トップ<企業の農業参入加速/イオン、3年で10農場/PB野菜を全国販売/規制緩和背景に>は面白い記事だった。ネットでは最初の2段落しかアップしておらず、新聞を読まないと分からない仕組みになっているのは日経新聞のネット戦略のうまいところ、成功した秘訣かもしれないと思うのだが、少なくとも「あらたにす」で朝日新聞、日経新聞、読売新聞の[きょうの1面]特集にはケチらずに1面トップ記事を出してほしかった。

 <企業の農業参入が加速してきた。イオンは茨城県を手始めに3年間で全国十数カ所の農場を運営し、1~3割安いプライべートブランド(PB=自主企画)野菜を販売する。食の安全意識の高まりに加え、参入を促す規制緩和をテコに、ワタミやカゴメなどがすでに始め、セブン&アイ・ホールディングスも全国展開を計画中だ。小売りや食品関連の大手が履歴の明確な野菜を低コストで自社生産する動きが広がることにより農業活性化にもつながりそうだ。>

 という前文である。こういう動きは大賛成だ。企業がどんどん入ればいい。農協という組織が日本の農業を食い物にした挙句、堕落させ続けているのだから、農協を通さない販売ルートを確立しないと日本の農業の再生はありえないからだ。

 <イオンは企業が自治体から農地を借りる「農地リース方式」を使い、茨城県牛久市の2.6㌶の土地で小松菜や水菜、キャベツなどを9月から生産する。参入のための新会社を10日付で設立した。生産した野菜は青果市場を通さず自社の物流網活用などでコストを削減し、店頭価格を抑える。初年度は約300㌧を収穫し、茨城県や千葉県などの「ジャスコ」15店でPBとして販売する。>

 自治体に土地を集約し、その土地を企業に貸して農業をやらせる、という方法なのか。これはいいかも。

 ここから先はネットに出ていない部分だ。書き写すので、写し間違いがあるかもしれない。正確なものは日経新聞そのものを読んでください。

 <3年後には牛久市の農地を15㌶に広げ、収穫量も1500~2000㌧に増やす。今後は北海道から九州まで同規模の農地を広げてPB野菜を販売し、3年後にPB野菜の売上高は年間数十億円になる見通しだ。>

 いい動きだ。

 <イオンと並ぶ2大小売りのセブン&アイは農家や農協との共同出資で千葉県に農業生産法人を設立する形で2008年に参入した。農協や農家と連携しながら今後2年以内に全国10カ所に同様の農業法人をつくる。先行参入した食品関連大手も事業拡大に動いている。居酒屋のワタミは生産した野菜を自社の約600店でサラダなどに使用しており、2013年までに農場の規模を現在の約480㌶から約600㌶に広げる。>

 徐々に、という話だな。

 <食の安全を巡る問題が後を絶たない中、企業は生産履歴のはっきりした商品を扱っていることを消費者にアピール。農業の担い手不足で耕作放棄地が拡大しているため、野菜などの安定調達基盤をつくる狙いもある。>

 食の安全と国産農作物の関係はもっと新聞、テレビでPRすべきだと思っている。中国産の安い野菜を使った安い商品も国産野菜を使った弁当も同じパッケージで見分けがつかない。駅弁屋にしてもどの駅弁屋では国産だけ使っている、とか区別できずに買っているのが現状だ。野田聖子大臣はこういう問題こそ研究して、消費者が一目で見分けられる「純国産」表示を義務付けるなどの対策を早急に取るべきだと思う

 <政府は特に2000年以降、企業の農業参入を後押しする制度を整備し、2005年からは農地リース方式が全国で認められた。同方式で農地を借りられるのは市町村の指定した場所に限られ、耕作放棄地も多かったが、今年6月に成立した改正農地法が年内にも施行されれば賃貸が大幅に自由になる。同時に、原則10%だった農業生産法人への企業の出資制限も緩和される。こうした仕組みを活用してイオンやセブン&アイは事業を急拡大するほか、新規参入も増えるのは確実だ。ただ、安定した品質の野菜を大量生産していくにはノウハウの確立や農業従事者の育成・確保が課題となる。>

 なるほど、改正農地法が12月にも施行されるのか。もっともっと大胆に変わってほしい。日本人の技術と知恵を結集すれば日本人の食べる穀物、野菜くらいは日本で自給できるはずなのだ。さらに養殖マグロ生産技術だって日本が世界一だ。世界の海に出撃してマグロを取れないのならば、海洋国家日本のど根性を見せて、魚も養殖で自給しようではないか。豚や山羊だって餌をリサイクルの中に位置づければ飼えるのではないか。牛の肉のような高級肉は仕方ないにしても、日本で生産できるものは日本で生産する、という気概を持たないと21世紀、日本は飢餓に苦しむことになるかもしれない。根性を据えてやってみよう。

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日本企業のアジア投資、首位は中国を抜いてインド~日経新聞7月18日朝刊

 日本企業のアジア向け直接投資で2008年度はインドが中国を初めて抜いて最大の投資先になったことが日本の財務省の国際収支統計で分かった。日経新聞が7月18日朝刊3面ハコ<日本企業のアジア投資/インド、中国抜き首位/昨年度8090億円/人口増、内需拡大に期待>で中国、インドの2005年度~2008年度の直接投資額を示す棒グラフや最近の主なインドへの進出企業一覧表をつけて報じていた。ニューデリー支局の長沢倫一郎記者のリポートだ。

 この記事は紛らわしいのだが、あくまで1年間でどれだけ投資額したか、の純増の部分を問題にしており、直接投資残高ではないことを注意しなければならない。つまり、今後の傾向を表わす傾向記事である。

 08年度の直接投資はインド向けが8090億円の純増。中国向けは6793億円の純増。07年度は中国向けが7015億円でインド向けは1890億円。グラフを見ると、06年度は中国はほとんど07年度と同じなのに、インドは500億円程度か。05年度にいたっては300億円くらいか、というグラフの小ささだ。中国は05年度など8000億円に少し足りないところまでいっていた。

 だから、08年末(年度末ではない)の直接投資残高は中国の4兆4239億円。インドの8523億円と比べ物にならない数字である。インドに進出している日本企業は中国に進出している企業の約4分の1の450社で「日本企業にとって手つかずの分野がまだ多い」(第一生命経済研究所の西浜徹副主任エコノミスト)という。2050年までには人口が中国を追い抜くとの推計もあり、日本企業にとってインドの消費力は魅力だ、とある。「日本とは比べものにならない速度で拡大するインドの市場は見逃せない」というNTTドコモの指摘はその通りだろう。

 前文に、

 <人口増に伴う内需拡大への期待からインドへの進出が加速しているのに対し、外資誘致で先行した中国は大型投資が一巡しているためだ。インド経済は金融危機にもかかわらず国内の需要が底堅く、インフラ不足などの課題を解決できれば投資はさらに勢いづくとの見方もある。>

 とあった。また、本文にはインド向けの直接投資が急増したのはM&A(合併・買収)など大型の投資が相次いだためだ、とあった。第一三共は昨年11月にインドの製薬大手ランバクシー・ラボラトリーズを買収、今年3月にはNTTどこもが財閥系携帯電話サービス大手のタタ・テレサービシズに26%出資した。2009年度も野村グループが生保最大手傘下の資産運用会社への出資を発表。イオンの金融子会社はインド進出計画を明らかにし、2011年度をめどに家電や家具の割賦販売事業に乗り出す予定。

 業種や進出先地域も多様化しているそうだ。対インド投資を先導してきた自動車に加えて最近はユニ・チャームやピジョン(育児用品の販売網拡大)など日用品メーカーが進出。ムンバイ、バンガロール、チェンナイなど首都ニューデリー以外の大都市への投資も目立ってきたという。

 <慢性的な電力不足や中国に比べて整備が遅れている物流網、土地収用を巡る住民との衝突など、インド進出にはリスクもある。先行する欧米・韓国企業や低価格で追い上げる地元勢との激しい競争も予想される。>

 とマイナスの部分も書いてあった。第一三共は買収したランバクシーの株価が品質管理上の問題で下落したため2009年3月期は予想を上回るのれん代の償却費用の計上を余儀なくされた。「インドが有望な投資先であり続けるかどうかはインフラ整備など課題の解決がカギ」(西浜氏)となりそうだ。と結んであった。

 中国の大型投資が一巡して、日本に余っている企業のマネーが新たな投資先をインドに求めた、ということか。日産自動車は2010年から小型車を生産する。住友商事は2010年に鋼材の加工拠点を新設する。何か、大きな胎動が始まっているようにも見えるのだが、これで日本企業の中国離れなどと即断すると間違える。でも面白い傾向だ。

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朝日新聞の兄弟紙・東亜日報は金大中御用新聞? 北朝鮮の食糧難問題をなぜ今大きく取り上げる?~東亜日報7月18日

 東亜日報7月18日日本語版<北朝鮮、金主席の死亡当時ほど危険な経済難 /KDIが分析>は巷で言われ始めた食糧危機の話だ。北朝鮮が国際的に孤立すると必ず出てくる話で、結局、「人道援助は必要だ」などという理由で米や食糧を北朝鮮に送る。そうすると、それは一般庶民に渡らず、朝鮮人民軍の胃袋に消える、という悪循環を引き起こす。そのサイクルがまた回り始めたように見える。 

 <今年、北朝鮮が1994年の金日成主席死亡当時に匹敵するほど最悪の状況に直面しているという分析が出た。内部的に金正日総書記の健康悪化と権力継承問題、対外的には国際社会の対北朝鮮制裁と南北関係の硬直問題を同時に経験しているためだ。>

 これは日本の新聞だったらボツになる要領の悪い記事だ。何が最悪なのか、が前文に書いてない。

 <韓国開発研究院(KDI)は17日、報告書「2009年上半期の北朝鮮経済の動き」で「北朝鮮の状況を総合的に考慮すると、現在、北朝鮮が直面している困難は、第1次核危機と金日成主席の死亡が重なった1994年に匹敵すると見える」と明らかにした。当時、北朝鮮は米国の経済制裁の決定と、度重なる自然災害で食糧難が悪化し、餓死する人が数十万人も続出したことで、危機を認識した北朝鮮政権は、住民に忍耐を強要する「苦難の行軍」を始めた。>

 ここまできてようやく経済の話をしているということが分かる。悪文だ。

 <報告書は過去の核問題は北朝鮮の核無能力化が主要争点だったが、現在は核保有国の地位を主張する北朝鮮とそれを容認しない5カ国の立場が真っ向から対立していると分析したうえで「1994年のカーター元米大統領の訪朝や、南北首脳会談合意のような劇的な状況の転換が再現されることは難しい」と書いた。KDIは「現在、北朝鮮経済に最も直接的な打撃は、国際社会の対北経済制裁措置であり、硬直した南北関係も商品貿易や委託加工にかなりの影響を及ぼしている。その負担がすべて一般住民に転嫁され(経済危機)状況が長期化する危険がある」と診断した。>

 「硬直した南北関係」だって。何を言っているのだ。韓国開発研究院も金正日追随分子が入り込んでいる政府関係機関だったのか? 今の時点でこういう分析を出す政治的意図は見え見えなのに。

 <また今年上半期の北朝鮮経済に現われた最大の特徴として北朝鮮当局の経済運用基調の保守化を挙げた。KDIは「北朝鮮当局は千里馬精神や150日戦闘といった過去の集団主義強制努力の動員キャンペーンを再開している。これを通じて、住民への国家の統制力を強化する一方、動員できる内部資源の規模を極大化しようとしている」と分析した。>

 定期的な報告書なのか? そういえば、中央日報も朝鮮日報も大きくは扱っていなかったはずだ。東亜日報はやはり3大紙の中では一番金大中氏寄りの新聞だったのか? 朝日新聞との提携紙だと思ったが、朝日新聞も東亜日報も金大中好きの新聞だから、お似合いだ。

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国連北朝鮮制裁後、中国高官が4回訪米、と。対応策作りが進んだ?+米国防総省が金正日死去後のシナリオ作成中~7月17、18日朝鮮日報

 朝鮮日報日本語版7月18日にワシントン支局の李河遠特派員の署名入りで<非同盟諸国会議、北朝鮮の孤立鮮明に>という記事が掲載されていた。まあ、当たり前ではあるが、日本の新聞がすでに相手にしなくなった非同盟の動きをきちんとフォローしているのは立派だと思った。一つひとつはGDPが小さく、国際的影響力もなく、取るに足らない国だ、という思いが日本人の中にはあるのだろうが、国連総会の1票を持っている国々である。動向はきっちりとフォローしておくに越したことはない。

 記事を読んでみよう。

 <16日にエジプトで開かれた非同盟諸国会議(NAM)首脳会議が終了後、北朝鮮の名目上の国家元首である金永南・最高人民会議常務委員長は寂しく議場を後にした。首脳会議で採択された共同宣言には「6カ国協議反対」や「米国批判」など、北朝鮮が当初意図していた内容は結局含まれなかった。それだけではない。過去34年間にわたり南北統一などに関連し、北朝鮮の主張が盛り込まれたいわゆる「韓半島(朝鮮半島)条項」も盛り込まれなかった。>

 という日本にも大きく影響する内容なのだ。

 <韓国を代表して同会議にオブザーバー参加した朴仁国・国連代表部大使は、電話取材に対し「金永南委員長は加盟国との二国間会談で北朝鮮に対し友好的なムードをつくり出そうとしたが失敗した。国連安全保障理事会で決議1874号が採択されて以降、北朝鮮が(国際社会で)頼っていた橋頭堡の一つが消えた格好だ」と指摘した。NAM加盟国の北朝鮮が非加盟国の米韓による水面下での攻勢に押され自分の庭で恥をかいたことは国際社会での北朝鮮の孤立無援の立場を象徴している。>

 そういうことなんだろうなぁ。

 <ニューヨークでは同日、国連安保理の対北朝鮮追加制裁が発表された。北朝鮮の核問題やミサイル発射などに関与した個人5人、機関・企業5カ所と大量破壊兵器に使用される先端素材など物資2品目に関する制裁措置が取られた。米国は22日からタイで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)でも国連安保理決議1874号に基づく強硬な制裁を求める方針だ。これに先立ち米国は兵器関連物資を積んでいると疑われた「カンナム1号」が中国はもちろん、東南アジアにどの国にも寄港できないように圧力をかけ、同船舶を北朝鮮に引き返させている。>

 今のところ米国も韓国も日本の働きかけに従ってきっちりとやっている、ということ。この動きを持続させる努力を日本の外務省は続けなければならないのだ。

 <決議1874号による制裁が始まった先月以降の状況は、さまざまな面で過去とは異なる。これまでは北朝鮮問題について、米国と北朝鮮がリング上で互いに自分が正しいと叫び合う中、韓国と日本だけがリング上で米国の肩を持ち、他国はリングの外で戦況を見守る状況だった。>

 そうなのだ。日韓だけが米国の味方で、英国もフランスもドイツも遠い地域の出来事で、あれは日本に任せておけばいい、という態度だった。

 <しかし、今年1月にオバマ政権が発足後、北朝鮮だけが米国の差し出した和解の手を振り切り、ムードが変わった。北朝鮮がテポドン発射、2回目の核実験、米国人女性記者二人の抑留、停戦協定破棄宣言など相次いで挑発に出ると、北朝鮮に背を向ける国が増えた。特に中国の態度が変わった。中国は制裁体制が固まって以降、米国に高官を4回も派遣した。米国務省の説明によると、米国は「独自制裁に乗り出す準備もしている」との点を明確にしたという。中国国内でも制裁が始まって以降、これ以上北朝鮮の後見人役を果たしてはならないという声が高まっている。>

 中国が高官を4回も訪米させていたのか。こういう細かい事実関係で学ぶべきことが多いのだ。韓国の新聞記事は。

 <北朝鮮が国際的に孤立する状況が当分続く可能性が高いとの見方には異論がない。米国は北朝鮮の挑発にその都度対応するレベルを超え、北朝鮮が関係するあらゆる場所で「予防措置」を取るようになった米国のゴールドバーグ対北朝鮮制裁調整官は、マカオの銀行バンコ・デルタ・アジアで2500万㌦(現在のレートで約23億5000万円)の資金が凍結されて以降、北朝鮮の貿易拠点となっているとされるマレーシアを訪問し、警告の意味を込め、協力を要請した。米国務省のケリー報道官による16日の発言はさらに断固としたものだ。同報道官は「われわれは北朝鮮が歩む道は孤立の道であり、誰も関心を示さない道であることを示すための手段を引き続き講じる」と述べた。その上で、同報道官は「北朝鮮が現在の危機を脱する唯一の道は、韓半島の非核化に向けた会談に復帰することだ」と強調した。>

 今のところは「断固」でやってくれている、ということ。いつどう変化するか見えないので、ドキドキするが。

◆米国が金正日死去後のシナリオ作成中

 朝鮮日報は7月17日にはワシントン発で<米国、「金総書記死亡後」のシナリオ作成中/米国防総省ナクト次官補が公開>という記事も掲載していた。

 <米国防総省の高官が北朝鮮の金正日総書記の健康状態に言及し、死亡後に備えたシナリオを作成中だと公式に発言した。同省のマイケル・ナクト世界戦略問題担当次官補は15日、下院軍事委員会の大量殺傷兵器に関する聴聞会で、現在進行中とみられる北朝鮮の権力継承問題を含め「北朝鮮の将来の状況に関するシナリオを作成している」と述べた。>

 ほー、である。

 <ナクト次官補は「現在、金総書記の健康状態が悪化し、後継者として指名された三男は地位が不安定だ」と述べた。同次官補は「継承作業が今後3カ月かかるのか、3年かかるのかは分からない。最近数カ月間続いている北朝鮮の挑発行為による情勢の緊迫化は、対外的だけでなく、このような国内的要因によるもの」と説明した。これまで米政権はできるだけ金総書記の健康問題に対する言及を避けてきた。ナクト次官補のこの日の発言は異例といえる。米政権周辺では最近目に見えて悪化している金総書記の健康状態について米政権が具体的な情報を得たのではないかという分析も出ている。>

 この結論自体は目新しくはない。何しろ真実が分からないのだから。金正雲氏が後継になる、という情報が相当の範囲で飛び交っていることは事実なのだが、その情報が本ボシなのかどうか誰も確認できていないのだ。

 <ナクト次官補が言及した「北朝鮮の将来の状況に関するシナリオ」は北朝鮮の急変事態発生時に発動する「作戦計画5029」をさらに具体化させていることを示唆するものとみられる。米国防総省は特に金総書記の死と北朝鮮政権の崩壊などによる突発事態が発生した場合、北朝鮮の核兵器をはじめとする大量破壊兵器(WMD)関連物資が外部に流出するのを防ぐことに焦点を合わせているという。>

 この辺のニュースに関する韓国の新聞の感度は抜群だ。日本の新聞は食いつきが悪すぎる。学生時代も新聞記者になってからも本格的な戦略の勉強をせず、地政学も知らない奴が外務省、防衛省、首相官邸担当記者をやって、官僚から教えてもらったことだけで記事を書いている、という例が多いと思う。

 韓国が違うのは普通の男性記者だったら軍隊に行っており、この軍隊経験を生かして自分なりに戦略論と地政学を勉強して取材できるのだろう。また、受け手の編集者知識の差も歴然としており、これが日本の新聞を駄目にしている大きな原因なのではないか。

 <これに先立ち、シャープ在韓米軍司令官は「作戦計画5029」を通じて北朝鮮の急変事態に備えていると発言、北朝鮮の強い反発を招いた。>

 シャープ発言は随分前の話だったと思うが。

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2009年7月17日 (金)

米有識者の間で「北朝鮮の核廃棄は無理」論が強まっている、と。そうだろうなぁ~飯塚恵子氏論文(WEDGE」2009年7月号)

 月刊誌「WEDGE」2009年7月号に掲載しているそうだ。JBPRESSのホームページで見つけたのだが、米ブルッキングス研究所客員研究員・読売新聞政治部次長という重々しい肩書の飯塚恵子氏<北朝鮮の暴走/日米同盟強化のため今こそ核の傘の議論を>という記事が09年06月30日にアップされたそうだ。1987年上智大学卒業後、読売新聞社入社。米タフツ大学フレッチャー法律外交大学院より修士号取得。政治部記者として自民党担当や外務省担当などを経て、2003年から06年までロンドン特派員。05年、06年、英軍に同行してイラク戦争を取材。08年9月よりブルッキングス客員研究員を兼務、とあった。才媛のようだ。

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/425?page=1

 日米双方の論を読みうるこういう人たちが核兵器問題を論じることはいいことだ、と思う。良質な論文ならば、」という条件は付けるべきだが。というのは、どうしても日本国内だけの議論は井の中の蛙になりやすいので、外からの見方、という刺激を常にポンプで与えてくれる役目を負っているのではないか、と思うのだ。

 折角、全文をアップしているのだから、じっくり読ませてもらおう。

 <大きな曲がり角を迎えて制度疲労を抱えながら、方向性を見失ったままの日本。今こそ将来を見据えた、大局観のある真摯な議論が必要です。手練れの執筆陣による、タブーを恐れず時流におもねらない“OPINION”を、WEDGE独自の視点で展開します。>

 という狙いで「WEDGE OPINION」としてアップしたのだ、と書いてあった。

 それでは読もう。

 <北朝鮮が5月25日に行った2回目の核実験に対し、世界は怒りとともに、厳しい態度で臨んだ。日本と韓国はもちろん、オバマ米大統領をはじめ、4月の弾道ミサイル発射の際は国連の制裁強化決議に反対した中国とロシアも即座に非難声明を発表。“瀬戸際戦略”を突き進む北朝鮮は、国際的孤立を深めている。実験の爆発規模など、詳細は6月初め現在、未確定だが、米政策研究機関「全米科学者連盟(FAS)」の核専門家などの間では「(TNT火薬換算で)4㌔㌧程度だった」との見方が広まっている。2006年10月の1回目の実験の規模が1㌔㌧以下だったことを考えると、核弾頭の性能は一定程度向上したとの分析が多い。これとともに弾頭の小型化技術が進んだとすれば、ミサイルへの搭載はいよいよ現実味を帯びてくる。2回目の核実験は予想されたこととはいえ、国際社会は外交・軍事の両面で、危機のレベルが一段と高まったといえる。日本にとって最大の課題は、日米同盟の信頼性をどう向上させ、機能させるかだ。>

 ここまでは、普通の人たちが言ったり書いたりしている一般論だ。

 <「政権中枢にいる人は公に言えないだろうが、6ヵ国協議は死んだに等しい」。核実験から2日後の5月27日、オバマ政権にアジア政策を助言するある米外交専門家はこう語った。北朝鮮の核問題をめぐる話し合いは、もう6年間近く、中国を議長に米国、日本、韓国、ロシアと北朝鮮が集まる6ヵ国協議が主舞台となってきた。03年8月に始まった協議は、昨年12月、核計画の検証手続きをめぐって物別れに終わって以降開かれていない。その後、北朝鮮の“恫喝外交”は一段とエスカレートし、4月5日には長距離弾道ミサイルを発射国連安全保障理事会がこれを非難する議長声明を9日後に採択すると、北朝鮮は「二度と絶対に参加しない」と、6ヵ国協議へのボイコットを宣言した。>

 6カ国協議は死んだのに、クリントン国務長官が「来るものは拒まず」といまだに言っているのはなぜか? 北朝鮮を潰したくない中国と裏で取引している可能性もある。「米国債を売らないであげるから、北には触るな」と。暴力団の抗争、利権争いも米中の裏取引も同じようなものなのではないか?

 <ホワイトハウス内では、4月29日に北朝鮮が2回目の核実験実施を予告した頃から緊張が高まり、連日、会議が続いた。国家安全保障会議(NSC)、国防総省、国務省を中心とした高官クラスの協議が一日に数回開かれる日もあったという。民主党関係筋は「北朝鮮問題はオバマ政権にとって重要議題に急浮上した。政権発足以来、アフガニスタン、パキスタン、イラン問題などに重点が置かれてきたが、北朝鮮は今、政権のトップ3の課題に入った」と語る。その理由は簡単だ。北朝鮮の2回目の核実験は東アジア、ひいては世界の安全保障に対する重大な脅威である、という点が一つ。加えて、核実験はオバマ大統領が4月5日にプラハで表明したばかりの「核兵器のない世界」実現への取り組みに、真っ向から挑戦する行為となったのだ。オバマ政権の怒りは、ブッシュ前政権のそれより深いといっていい。>
 オバマ政権中枢はそんなに真剣に議論したのだろうか? それは日本がどういう行動に出るか、の予測に時間をかけただけではないか? でも、オバマ政権の怒りはそんなに強いのだろうか? これは新聞記者にありがちな「筆が滑った」表現だろう。普通に考えれば、怒って済む問題ではない。非常に戦略的な思考が要求され、その思考は怒りとは無縁だろう。

 <ホワイトハウスが腐心しているのは、対北朝鮮政策でオバマ政権としての統一方針を固めることだ。オバマ外交の基本方針である対話・関与路線を維持するのか、それとも、連続する暴挙に対し、ブッシュ前政権1期目のような強硬路線に軸足を移すのか――。結論は現在「厳しく臨みつつ、対話の窓口は閉ざさない」という“中間路線”となっている。>

 この方針は何も言っていないに等しい。武力攻撃はしませんよ、というブッシュ政権時代からの大方針は変わっていないはずだ、と思うのだが。

 <問題はその中間のどのあたりを取るかだ。米国はキープレーヤーである中国への働きかけを強めている。北朝鮮の友好国でもある中国は06年の1回目の核実験の際には、国連安全保障理事会の決議1718が規定する禁輸や海外資産凍結を徹底しないなど、甘い対応が目立った。オバマ政権は今回、中国が北朝鮮に厳しく臨み、国際社会の連携の中核となることが、実質的にも象徴的意味でも最も効果的だと考えている。しかし、米国の期待とは裏腹に、中国の対応が実を伴うものになるかどうかは、すぐに結論が出ないだろう。6カ国協議がほぼ死に体となった今、北朝鮮の核問題は今後も長引く可能性が高い。日本としては、核の脅威に対応する抑止力を一段と高めることが喫緊の課題となる。そのためには、日米同盟を今よりさらに強化し、それを北朝鮮に示すことだ。>

 日本は日米同盟を強化するしか選択肢がない、と言っているようだ。きっといろいろ検討した結果はそうなるのだ、と思う。しかし、それを先に書かれると、普通の日本人は心の中で屈辱感に燃える。なぜ自分たちの生存権の問題までアメリカ頼みに生きなければならないのか」という、言ってみればナショナリズムに裏打ちされた感覚から迸る感情である。

◆水面下で始まった「核の傘」議論

 <日米同盟の強化をめぐっては、来年の「日米安全保障条約改定50周年」を前に様々な検討が両政府の内外ですでに始まっている。集団的自衛権の行使に向けた政府の憲法解釈の変更などは、長いこと日本側の宿題として残る。ミサイル防衛の強化も急がねばならない。同盟がアジア太平洋、そして世界の安定にどう貢献できるか、といった議論も盛んだ。ここでは特に、米国が戦後、同盟国・日本に提供してきた核抑止力(「核の傘」)への対応について取り上げたい。唯一の被爆国として、日本では核兵器に対するアレルギーがなお根強いが、日米間では現在、重要な話し合いが静かに進んでいる。>

 ということで飯塚氏は「核の傘」に絞った議論をするらしい。ここからがいよいよ本論だ。

 <日本側が注目しているのは、オバマ政権が今年末をメドにまとめる米国史上3度目の「核戦力体制見直し(NPR=Nuclear Posture Review)」の行方だ。オバマ大統領が4月に「核兵器のない世界」を目指す考えを正式表明した際、日本の麻生首相は「極めていい傾向だ」と即座に支持を表明した。だが、実際の日本の立場はそう簡単ではない。日本は究極の目標として核廃絶を掲げる一方、米国の「核の傘」を国防の基盤に据えるというジレンマを抱えている。>

 キャンベル氏のインタビューで日経新聞の春原編集委員がさらっと書いていたが、これは矛盾でも何でもないはずだ。

 <核軍縮や不拡散問題と異なり、核兵器を活用する「核の傘」は、核に対する日本国内の世論の反応を考えると、公の場で議論しにくい、というのが現在の日本政府内の空気だ。外務省幹部は「一歩間違えば、核武装論と誤解される恐れがあり、政府レベルの公式な議論は今もタブーに近い」と語る。>

 それは分かる。

 <このため、日本政府は“ブッシュ後”の政権に照準を合わせ、昨夏ごろから主に次の2点を中心に、米側関係者に非公式な協議の場で訴えてきた①次期NPR策定にあたっては、事前に日本と協議してほしい②東アジアには核兵器の近代化を進める中国や、核開発をやめない北朝鮮が存在し、今、米国の核抑止能力が急激に低下すると不安定さが増す。核戦力の削減には慎重な検討が求められる――。>

 <NPRはクリントン政権下の1994年と、ブッシュ前政権下の02年の過去2回策定された。いわば冷戦後のアメリカ核戦力体制の枠組みを示す重要文書だが全容は部外者には非公開だ。過去2回の内容について日本は米側から「概要説明はあったが、策定前はもとより、策定後も詳細な説明はなかった」(元防衛省幹部)という日本側からも特に正式に説明を求めてこなかったという。「核の傘」が日本防衛の基盤であることを考えると、何とも心もとない状態だ。>

 そういう話だったのだろう、と思う。冷戦終結前、というか冷戦時期はそれでよかったのだ。何かペーパーにすればすぐにマスメディアに漏れて「密約だ」と追及され、前に進むはずが国会答弁を整合させるための無駄な努力のために外務省の優秀な(はずの)官僚の全精力が注がれ、本当にやらねばならない仕事は何も進まない、という状態になる。1960~70年代の苦い経験から外務省は学び、重要なことは文書にしなかったり、「密約」にする、という方式でやってきたのだ。日本の民主主義に構造的にビルト・インされた問題なのだ。

 <元防衛省幹部は、今から約2年前の筆者の取材に対し、こう語ったことがある。「日本の防衛は、米国の核抑止力に依存しているのに、日本はまだ知らないことが多くある。有事の際に日米共同で対処する作戦計画をまとめるうえでも、米国の核戦力の体制や、核兵器が具体的にどう運用されるのかなどについて、日本は米国から聞き出さなければいけない。それが確かめられた時、米国の核抑止力に対する真の信頼も生まれる」日本政府は今回、その米国の核戦力体制について、ようやく内容の説明を求め、日本としての見解を反映させるべく動き始めたわけだ。>

 少しずつ動き出したのか。面白いのは、そういう前向きの動きが起きるのと並行して過去の「密約」問題が騒がれ、国民の視線が「過去」に向いてしまうことだ。不幸な歴史を繰り返している。でも、この二つの動きはリンクしているのかもしれない。今後、新しいステージに上るために、過去の「密約外交」で溜まりに溜まった垢を削ぎ落とそうとしている可能性もある。となれば、この「密約」問題も想像以上の進展をする可能性がある。要警戒だ。

 <5月6日、そうした日本の姿勢を反映した報告書が発表された。米国の今後の核戦略について、米連邦議会の超党派の諮問委員会がまとめた「アメリカの戦略体制(America's Strategic Posture)」という最終報告書だ。委員長をウィリアム・ペリー元国防長官、副委員長をジェームズ・シュレジンジャー元国防長官という安全保障分野での左右両翼の重鎮が務めたこともあり、報告書は、オバマ政権のNPR策定作業に、議会サイドからの影響を与えると受け止められている。報告書は核テロや核拡散への対策、核抑止力のあり方、核軍縮の道筋などに関する提言を列挙している。この中で、核戦力見直しに伴う同盟国への対応については、「特に日本とは、核問題でより幅広い協議の場を設ける時が来た」70ページ)と指摘している。>

 この報告書は面白いのか。

 <報告書発表から数時間後、下院の軍事委員会で証言したシュレジンジャー氏はこう述べ、歴史的な変化を印象づけた。「米国はこれまで(核問題について)日本と直接協議したことはなかった。しかし、今私は、日本との緊密な議論の実施は(米国の)義務だと思う。日本人は冷戦時代、ソ連の脅威はそれほど心配していなかったが、今、能力を高める中国に対しては次第に懸念を強めている。このため、日本は今、我々との直接協議を求め、安全の再確認を求めている」。

 ジェームズ・シュレジンジャー元国防長官がそんなことを言っていたのか。寡聞にして知らなかった。これは、やはりものすごく大きな政策転換なのだろう。

◆日本が自信を培うための2つの要素

 <そもそも「核の傘」とはどのようなものだろうか。防衛庁長官と防衛相の計2回を務めた久間章生氏は防衛相時代、こう説明したことがある。「『だれかが日本に核爆弾を1発撃ったら、米国は10発撃ち返す』と米国がはっきり言うことが、一番の核抑止だ」。これに関連し、元自衛隊幹部は「危機の際、米国の核兵器がどのように日本を守るのか、さらに、今の核兵器がきちんと機能するのか、という点について日本側が自信を持てる状態であることが重要だ。核抑止の威力は、敵に対する威嚇だけでなく、同盟国が自信と信頼を持つことも重要な構成要件だ」と述べ、心理的な側面が大きいと指摘する。自信を培うためには、「意志」と「能力」の2つの要素が満たされねばならない。>

 久間元防衛相は何を考えているのか、分かりづらい人だが、まともな人のようでもあるのだが……。

 <「意志」は有事の際に米側が「必ず日本を守る」という姿勢を見せることだ。日本政府は麻生首相がオバマ大統領と2月24日にホワイトハウスで初めて会談した際、大統領の方から自発的に「核抑止を含む日本防衛に対するコミットメントを約束する」と言及したことを「大きな成果」だと受け止めている。核兵器をめぐる水面下の日米協議が進む中、大統領自らが新政権の基本姿勢を明確にした意義は大きいというわけだ。>

 日本政府が裏で言わせたのか、と思ったが、ホワイトハウスの長時間議論で出した政策に沿った発言だったのだな。

 <一方、「能力」については、様々な論点がある。まず、大統領が打ち出した「核兵器のない世界」の実現を目指すスピードだ。核軍縮のペースが速すぎると、中長期的には、近代化を急速に進める中国の核能力が、核弾頭数を年々減らし続けている米国、ロシアに早晩近づくのでは、などの指摘が出ている。北朝鮮の核開発の行方も当然考慮が必要だ。また、核弾頭の老朽化を懸念する議論もある。米国は92年から核実験を凍結しており、今後も核実験を行わずに核弾頭の能力の信頼性を維持するためには、新技術の弾頭の開発が必要だ、という意見だ核開発を統括するエネルギー省などが中心となり、数年前から主張している。ゲーツ国防長官は従来からこの新弾頭の必要性を強調してきた。しかし、オバマ大統領は、新たな核兵器技術の開発は「核兵器のない世界」への流れに逆行するとして、開発に否定的だ。日本は抑止力の維持につながるよう訴えつつ、議論を注視している。>

 この技術的な問題は難しい。中には本気で「核兵器を長く使わず置いておくと腐る」などと言う人もいる。

◆今こそ核に関する開かれた議論を始めるべきだ

 <日米間の「核の傘」をめぐる話し合いは、戦後から今日まで極めて手薄になってきた分野だ。北朝鮮が核計画を発展させ、中国でも核兵器の近代化が進む現在、日米核協議は同盟強化のために必要な根本的な仕事だといえる。その意義について、ある米国防総省筋は「日米間の軍事技術的な信頼度が堅固なら、外交面での連携も密になる」と語る。ただ、この筋は「米国は『核の傘』の情報を適切な範囲で日本と共有するべきだと思うが、日本側の機密保持が絶対条件だ」と述べ、日本側の体制作りの努力が不可欠だとクギを刺した。一方、日米間で協議を進めるなら、日本国内でも核をめぐる安全保障問題について、冷静でオープンな議論を国会などで始めるべきだろう政治的エネルギーが必要な課題だが、オバマ政権の登場は、それを始めることを日本に迫っている。>

 集団的自衛権が存在するだけでなく、行使できるという風に政府見解を変えることが必要だし、非核三原則を撤廃する必要があるし、秘密保護法を制定する必要もある。小泉政権で有事立法の整備が始まったが、今度のは超弩級だ。国論を二分しかねない。だから、飯塚氏は「政治的エネルギーが必要な」という英語的な日本語で表現したのか。

 <さらに、日米協議の一環として、日本は同盟国として、北朝鮮の核問題について米国に改めて一つの点を念押しするべきだ。米国が北朝鮮を「核保有国」として認めず、真剣に北朝鮮の「非核化」に取り組む、ということだ。米国の一部識者の間では今、〝瀬戸際戦略〟のサイクルを繰り返す北朝鮮が、これから核を完全放棄(非核化)するのは極めて困難だ、との見方が強まっている。訪朝経験が豊富な米国のある専門家は「北朝鮮は今後どのような指導体制になっても、これだけの“政治カード”となる核計画の放棄をなかなか考えないだろう。国際社会は、北朝鮮を核保有国と認めたうえで、これ以上の核開発阻止と国外への流出阻止(不拡散)の徹底を求める方がよほど現実的だ」と主張する。>

 米国の中でそういう論が増えるのではないか、と私も思う。すでにヒル、クリントンらの頭の中はこの論だったと思う。

 <しかし、北朝鮮の核の直接の脅威にさらされている日本にとって、この政策は到底容認できない。オバマ政権が「核兵器のない世界」の理想を追求するならば、北朝鮮問題は、その具体的取り組みの最初のテストケースとして全力で取り組むべきだろう。日本にとっても、今ほど開かれた核の議論が求められている時は、そうないかもしれない。>

 この辺、飯塚氏の言う通りなのだが、論理の展開に説得力がないのはどうしてなのだろう? 何か他人事のように書いているからではないか? もっと日本という国家・政府が主体的に取り組むべきことをガーンと言ってほしいと思うのだが。

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「中国は○○をすべきだ」という論からの脱却を~JBPRESSの<北朝鮮を「制裁」したくない国>を読んで

 久しぶりにJBPRESSのHPを見たら、<北朝鮮を「制裁」したくない国>という阿部純一氏のコラムが目に付いた。09年6月24日にアップしたらしい。阿部氏は霞山会主席研究員、事務局次長。1952年埼玉県生まれ。上智大学外国語学部卒、同大学院国際関係論専攻博士前期課程修了。シカゴ大学、北京大学留学を経て06年から現職。専門は中国軍事・外交、東アジア安全保障。著書に『中国軍の本当の実力』(ビジネス社)、『中国と東アジアの安全保障』(明徳出版)など、とあった。霞山会は「東亜」という月刊誌を出している会だ。
 読んでみよう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/1264
 <6月13日、3週間近い協議の末、ようやく北朝鮮が5月25日に実施した2度目の核実験に対する国連安全保障理事会の制裁決議が採択された。しかし、この決議による制裁の効果となると、不透明と言わざるを得ない。>
 という書き出しで判断できるように、中国不信がコラムの根底にありそうだ。北朝鮮の船舶の貨物検査実施を各国に「要請」する決議だったが、日米提案は履行「義務化」だった。中国の強い抵抗でトーンダウンした。そこで筆者は「中国はなぜ、かくも北朝鮮への『制裁』に及び腰なのか」と原因を探り、①中国と北朝鮮の特殊な歴史的関係=朝鮮戦争で共に米軍と戦った「血で固められた友誼」。冷戦時代には北朝鮮が米中「緩衝国家」も役割も果たし、現在も国と国というより中国共産党と朝鮮労働党との関係が濃く、中国で北朝鮮マターを扱うのは外交部でなく中国共産党対外連絡部。②胡錦濤体制は「善隣友好外交」を重視し、国境を接した国と敵対関係ないし対抗関係になることを望まず、隣国の不安定化はさらに望まない③中国が厳しく制裁しても金正日は言うことを聞かず、中国の影響力には限界がある④中国が議長国を務める6カ国協議に北朝鮮を引き止めるため、制裁レベルを引き下げ北朝鮮を必要以上に追い詰めない⑤制裁の結果、北朝鮮が崩壊か暴発した時のコスト。中国への大量の難民流入と韓国による朝鮮半島の統一国家形成。暴発が第2次朝鮮戦争になると長期継戦能力がない北朝鮮は通常戦力で韓国に圧倒され、勝ち目はない。中国は難民対策のコストを背負わされるうえに、韓国を通じ拡大する米軍の影響力に対峙せねばならない。黄海、東シナ海での中国の海上権益にも影響が出るから、中国にとってはどんな形でも北朝鮮が存続した方が都合がいい。制裁などもっての他であって、食糧・エネルギーの供与を続けるのが望ましい、という。
 筆者は「中国は2003年春、6カ国協議開始をにらんで北朝鮮に石油を送るパイプラインを止め、圧力をかけて北朝鮮を協議の場に引っ張り出した実績がある。中国の北朝鮮に対する影響力は確実に存在するのだ。2006年10月の最初の核実験の後、北朝鮮は国際的な制裁に直面し、危機回避のため6カ国協議に復帰した。中国共産党中央党校の教授で、中国における北朝鮮問題の権威の1人、張璉瑰氏によれば『北朝鮮は6カ国協議が継続されてさえいれば宥和政策が支持され、自分たちが安全だと知っている』からだという。つまり、北朝鮮は避難場所、時間稼ぎの場として6カ国協議の場を利用してきたことになる。それは6カ国協議の他のメンバーへの裏切り行為を積み重ねてきたことに他ならない」と書いている。
 まあ、そうだろうなぁ、と思う。ところが筆者は、
 <そうであればなおさらのこと、厳しい制裁を行いながらも北朝鮮がまた6カ国協議の場に戻ってくる可能性を排除すべきではない。そして交渉の場で、今度ばかりは北朝鮮の背信を許さず、厳格な核放棄プロセスを飲ませなければならない。中国は6カ国協議の議長国であるというだけでなく、長年にわたり北朝鮮を『擁護』してきた。それゆえに、まさに今、北朝鮮に対する影響力が問われることになる」と結ぶのだ。
 論理がハチャメチャではないか。結局、何を言いたいのだろうか? 今までは北朝鮮は6カ国協議を隠れ蓑に使ってきており、今度だって6カ国協議は隠れ蓑になるだろう。隠れ蓑にならない、させない担保は何なのか? 厳格な核廃棄プロセスを飲ませろ、と言ったって、北朝鮮の今までのやり方を見ていれば、5カ国の「猿知恵」を上回る「知恵」を絞って、ものすごく上手な外交を繰り返している。
 この問題は筆者が言うような矮小化された問題とは違うのではないか? 田中明彦・東大教授が13年前の1996年、ポスト冷戦の国際政治を「新中世」という概念を使って解剖しようとした。国民国家が成熟、高度民主主義国家になった米欧日は「新中世」と呼ぶポストモダンの段階に移行しており、中国やロシアなどはまだまだ主権国家がさまざまな欲望を持って膨張しようとする「近代」段階にあり、「近代」国家への対応は「新中世」国家間の対応をもってしてはできない、ということを言っている。さらにポスト冷戦で顕在化した「破綻国家」はテロの温床であるだけでなく、国家テロの主体でもある。
 筆者が①~④まであげた理由は付け足しだろう。⑤を強調するための出汁に使ったのだと思うが、問題は⑤対応だと思う。
 日米韓が協調して中国のリスクを軽減する具体策を裏交渉なり表の交渉で提示でき、それに中国が乗れるかどうか、がポイントではないか。
 具体的には難民、武装難民が大量に旧満州地区に入り込めば、特に朝鮮人自治区などは独立運動を刺激しかねず、延辺自治区の動きはチベット、新疆ウイグルに波及することを中国共産党政権は懸念するわけだから、まず日米韓が中国共産党政権の「中国は一つ」という大方針を何度でも確認、支持表明し、中国を安心させながら、難民対策の費用を負担したり、教育面で協力するなどのサポートする。そして、北朝鮮崩壊時に核兵器関連機器とウラニウム、プルトニウムなどは米国が接収し、平壌までを米韓連合軍が制圧するのか、中国人民解放軍がどこまで支配するか、を前もって決めておくことが、崩壊後の保障占領をやりやすくし、トラブルを最小限に抑える道だと思うのだ。
 「中国に期待する」、「中国の責任だ」という突き放した新聞の社説のような見方、考え方は現実の国際政治では通用しない。
 評論家もそんなことは分かっていながら、定期コラムを持っている関係上、何か書かざるを得ないので、いろいろ書いているのだろうが、やはり、もう少し日本人のためになる論を立ててほしいと思う。

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「核の傘」で日米定期協議、とカート・キャンベル氏が言っている~日経新聞09年7月17日朝刊、朝日新聞7月16、17日夕刊

 7月18日に日米安保高級事務レベル協議を東京で行うため来日中のカート・キャンベル米国務次官補(アジア・太平洋担当)が16日、都内で日経新聞記者のインタビュー取材に応じた。日経新聞7月17日朝刊は1面ハコ<キャンベル米国務次官補/「核の傘」で日米定期協議/政権交代でも「同盟揺るがず」>と6面受け記事<米国務次官補/「対北朝鮮で5カ国協議/核保有阻止/抑止力強化と並行>で詳報していた。

 1面記事を読むと、「核の傘」を巡る問題、つまり「拡大抑止」問題でキャンベル氏は「(日本への)核抑止力を保証するためにもできることは何でもやる」と言明し、日本への「核持ち込み」に関する密約については「コメントできない」という従前の米国高官の主張を繰り返したそうだ。ただ、この問題では「先(未来)を見据えた議論をしたい」とし、核兵器を搭載した米原潜の日本領海の通過・寄港と日本の非核三原則との兼ね合いについても「(解釈は)日本に任せたい」との立場を示した、という。米国が日本に提供している「核抑止力」の強化方法を巡っては日米政府間で定期的に協議していく考えを明らかにし、18日の日米安全保障高級事務レベル協議で初めて公式議題として取り上げる、という。

 近く行われる日本の総選挙については「戦後、最も重要な選挙になるのではないか。日本国民、政治システムを深く信頼している。自分には自民党にも民主党にも多くの友人がいる」と述べ、次期政権がどのような形態になろうと日米同盟体制の堅持に問題はないという見方を示した、という。

 沖縄米軍・普天間基地の移転問題については「(キャンプ・シュワブへの移設を決めた日米政府間合意の)早期履行を求める」と改めて強調した、という。また、日本の次期主力戦闘機(FX)選定問題については日米双方の関係局長による本格的な協議を開催し、「幅広い観点からどのような機種が望ましいかを協議したい」と述べた、とあった。

 続いて6面だ。前文が分かりやすい。今回のキャンベル発言の意味を解説している。春原剛編集委員の署名記事だった。だから分かりやすいのだ。

 <オバマ米大統領が掲げた「核なき世界」という政策目標に向け、キャンベル米国務次官補は16日、日本に提供している核抑止力の強化と北朝鮮による核保有の阻止を同時に推進していく考えを強調した。背景には北朝鮮やイランによる核武装計画によって、日本のような「非核大国」に動揺が広がり、核保有を巡る「ドミノ現象」が国際社会に広がることへの懸念がある。>

 である。そういうことなのだが。理念や目標は分かるのだが、方法論が分からない。

 <北朝鮮による核開発問題について、キャンベル次官補は「北朝鮮の核保有をオバマ政権は絶対に認めない」と言明した。そのうえで、近く米国、中国、ロシア、日本、韓国による「5カ国協議」を開催し、北朝鮮の核放棄に向けて具体的な道筋を協議する考えを示した。同時にキャンベル次官補は「北朝鮮が交渉に応じる考えに転じれば、我々は対応する用意がある」とも指摘。権力継承問題で揺れる北朝鮮に対話再開の機運が戻れば多国間交渉の場を通じて米朝協議も随時、再開し、核放棄に向けて外交交渉を加速させたい考えも示した。>

 とある。5カ国協議は米韓首脳会談で李明博韓国大統領が提案していた。中国が頑強に反対していたのだが、中国が折れたのか? 後段はクリントン米国務長官の15日の演説と同趣旨だろう。

 朝日新聞7月16日夕刊8面トップ<米、対話外交なお堅持/クリントン長官/国際社会の連携強化>でワシントン支局の村山祐介特派員が書いている記事の通りだ。

 <クリントン米国務長官は15日、ワシントンで米外交政策の基本方針について演説し、イランや北朝鮮など米国と対立する国々に対して、国際社会の連携を強化しつつ直接対話に応じるよう促す従来のオバマ政権の取り組みを当面、継続させる考えを強調した。オバマ政権発足から半年になるのを機に、外交の基本戦略を語った。長官は国際社会の現状について「どの国も一国では問題を解決できない。一方で多くの国が同じ問題を抱えている」とし「協力して責任を果たしていける国については明確な形で奨励し、不和や分裂を招く国については強く阻む国際的な仕組みが必要だ」と指摘。米国は「各国を結びつける能力を発揮し、問題解決に向け、協力関係を構築するための外交戦略を実現する」と国際社会の連携を主導する考えを示した。その実現に向けて軍事力だけでなく援助や文化なども活用するという、自ら提唱してきた「スマートパワー(賢明な国力)」が中核になると説明。①友好国との間や多国間での協力の枠組みを強化②対立国に直接対話などの関与を追求する③開発援助を強化④紛争地での軍と民間の協力⑤経済力など米国の国力の発揮――の五つの手法を組み合わせるとした。連携の好例として、北朝鮮の核実験に対し国連安全保障理事会が全会一致で制裁決議を採択した経緯を説明。「非核化に向けてさらに強い共通の努力ができる」と自信を示した。一方、イランに対しては大統領選を巡る混乱を「容認できない」と非難。「直接対話が最良の方法だ」としつつも「機会が永遠に開かれ続けるわけではない」と牽制した。>

 である。北朝鮮へは強く、イランへは対話で、という基本路線だが、それでも北朝鮮にも対話の窓口は開けておくのだ、という趣旨だろう。キャンベル氏の話と符合する。

 日経新聞の記事に戻る。

 <オバマ政権は「核なき世界」への第一歩としてロシアと大幅な書く軍縮交渉を進めることで合意済み。それに続く柱としてオバマ政権は唯一の被爆国であり非核大国でもある日本への「核の傘」を堅持することが極めて重要と見ている。北朝鮮による相次ぐ核・ミサイル実験を受け、日本の一部でくすぶる自主核武装論についてキャンベル次官補が「日本の安全保障のためにはならない」と指摘し、「今ほど拡大抑止力(核の傘)が重要な時はない」と述べたのもこのためだ。>

 これはストンと腑に落ちる。米国オバマ政権の核軍縮、核なき世界という理念と拡大抑止、つまり核に頼る領土防衛とが矛盾するのではないか、という根源的な疑問が解けないわけだが、オバマ政権にしても理想と現実は区別し、その理想に行くまでの間はきちんと責任を果たし、責任を果たすことでこれ以上核保有国を増やさないようにする政策を取るのだ、というのだ。日本がそれを飲むかどうかは別問題だとは思うが、オバマ政権としては筋が通っているのではないか。

 <「核の傘」強化を巡る具体的な方法について、ペリー元米国防長官ら米有識者は米国がNATO加盟国などと実施している報復核攻撃のための共同態勢(ニュークリア・シェアリング)や日米両国で核発射の攻撃ボタンを共同管理する「ダブル・キー」システムなどを提唱している。これらについてキャンベル次官補は「(これから始める)日米政府間協議はまだ初期段階であり、詳細には立ち入れない」と言及を避けたが、今後、定期化する日米政府間協議において、こうした具体策についても協議・検討される可能性はありそうだ。>

 専門的な領域に入ってしまっているのだが、こういう領域の話なのだ。結局、こういう解決策しかないのかもしれない。その際には日本政府は「非核三原則」を廃棄する決意を求められる。核のボタンを持つのだから。その時に国際的に通用するどんな代替的理念を打ち出せるのか? 憲法の不戦の誓いという理念を生かす方向で考えるしかないのだろうが、この検討の際に集団的自衛権の行使についても首相談話や閣議決定を伴う内閣の方針変更手続きを経て認めるという大転換を行うべきだろう、と考える。

 集団的自衛権の行使を認めたからといって戦争に突き進むわけではない。何もしなければ平和が来る、という進歩的文化人的な平和観はその虚妄性がはっきりと暴露されており、もっと現実政治に生かせる理念を持つべきなのだろう。

◆朝日新聞7月17日夕刊のキャンベル氏会見

 朝日新聞も7月17日夕刊1面<日米同盟「再確認が必要」/米国務次官補、本紙と会見>で加藤洋一編集委員がキャンベル氏にインタビューしており、内容は似たようなものだった。その中で日米安保条約が来年、締結50周年を迎えるのを機に日米同盟の意義の再確認をしようという日本側の提案についてキャンベル氏が「明らかに良い考えだ」と米政府が同調する考えを示した、というのを前文に持ってきていた。

 <同盟の再確認は、日本が総選挙後の政権交代の可能性も指摘されるなど、政治的に不安定な時期を迎えることから、同盟の弱体化を避ける方策として検討されている。冷戦が崩壊し「対ソ連」同盟としての意義が薄れた1990年代に一度行われた。1996年に「日米安保共同宣言」がつくられ、翌年には「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)も行進された。>

 これは今までの日米同盟見直しの歴史だ。

 <キャンベル氏は再確認の具体的な中身としては①アジア太平洋の平和と安定の維持に重要な役割を果たしてきたという実績の確認②現状の点検③地球温暖化など今後同盟が対応しなければならない新たな課題の展望、の3点をあげた。>

 ①と②は分かる。しかし、一挙に③に飛ぶのか? 随分と論理的な飛躍があるように見えるのだが?

 <来年、日本での開催が決まっているアジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席する際に「宣言」など何らかの文書を発表することが検討されている。>

 そうか、来年のAPECは日本か。

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両院議員総会はなくなり、8月30日投票が決定だ、と。さあ、中川秀直氏は離党するか?~7月17日読売新聞ネット

 麻生首相と反麻生グループの綱引き、第一ラウンドは麻生首相の勝利となったようだ。7月16、17日にいろいろな動きがあり、結局、両院議員総会を求めた反麻生グループの要求を執行部が拒否し、7月21日に両院議員懇談会を開催することで、決着しそうになったのだ。
 読売新聞は17日午後のHPで<21日に懇談会、午後に衆院解散へ>という記事をアップしていた。

 <麻生首相は21日午後、衆院を解散する。>

 という書き出しだ。断定である。

 <自民党内で対立が続いていた地方選連敗を総括する場について21日午前に両院議員懇談会を開催することで決着したためだ。これにより「8月18日公示→同30日投開票」の日程で衆院選が行われることが確実になった。首相は21日午前、閣議で解散詔書を決定し、同日午後の衆院本会議で河野衆院議長が解散詔書を朗読し、衆院は解散される。>

 そうなるとやっぱり8月30日投票、と。

 <自民党の細田幹事長は17日昼に党本部で記者会見し、21日午前11時半から党本部で、麻生首相も参加して両院議員懇談会を開く方針を表明した。細田氏は「首相が先頭に立って衆院選に臨む決意を表明し、党の結束を確認する」と説明したが、懇談会は非公開で行うとしている。記者会見に同席した若林正俊・両院議員総会長は中川秀直・元幹事長らが提出した両院議員総会開催を求める署名について「精査した結果、総会開催に必要な数にかなり届いていない」と述べ、両院議員総会の開催に必要な党所属国会議員の3分の1(128人)に達しなかったとの見解を示した。>

 なるほど、「精査」しちゃったわけだ。中川氏らは怒るだろう。自分たちの署名が疑われ、否定されたのだから。普通だったら脱藩だろう。

 <中川氏や加藤紘一・元幹事長らは17日午前、小坂憲次・衆院議院運営委員長(自民)と国会内で会い、東京都議選などを総括する総会が開かれるまでは、衆院本会議を開かないように要請した。小坂氏は「中立的に判断する」と答えるにとどめた。同日昼、与野党は衆院議員運営委員会理事会で、本会議を21日に開催することで合意した。中川氏らは党本部で細田氏にも同様の申し入れを行った。細田氏は21日に懇談会を1時間程度開く考えを伝えたが、加藤氏らは「短すぎる」と反発した。>

 長い短いの話じゃないだろう。両院議員総会は党大会にかわる最高意思決定機関で党総裁を替えることもできるが、懇談会は非公式の会合。学校の同好会のようなもので、何を言っても「聞き置く」だけの会議だ。いわゆる「ガス抜き」である。敗北した中川氏らが自民党を出て行くかどうかが一つの見所になるのかどうか。

何か興奮しない永田町劇だなぁ。

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書評「日中2000年の不理解」王敏著+呉善花氏にゴーストライター疑惑?

 王敏氏の「日中2000年の不理解」(朝日新書、2006年10月30日第1刷、756円)を読んだ。約3年前の本。朝日親書が創刊された第1弾でものすごい数の親書が出て、その中では姜尚中著「愛国の作法」とこの本が気になっていたのだが、そう思っただけで買わずにいたのだが、どこかのブックフェアで安く売っていた(たしか200円くらい)ので、買ったのだが、そのまま積ん読のままだった。書庫の本の入れ替えをしようと親書の棚を見て、「ああ、この本読んでなかったなぁ」と思って、読んだのだった。もっと早く読まなかったのを後悔した。面白かった。一口にいってしまえば、日中韓の比較文化論ということになるのかもしれないが、日本に対する理解が日本生まれでない外国人にしてはものすごく深い、とびっくりしたのだ。

日中2000年の不理解―異なる文化「基層」を探る (朝日新書) 日中2000年の不理解―異なる文化「基層」を探る (朝日新書)

著者:王 敏
販売元:朝日新聞社
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 本の奥付によると、王敏さんは1954年中国本土の河北省生まれで大連外国語学院日本語学部卒業後、四川外国語学院大学院を修了し、お茶の水大学で博士号を取得。法政大学国際日本学研究所教授、上海・同済大学客員教授だ、とある。主な著作は「中国人の愛国心―日本人とは違う五つの思考回路」、「謝々!宮沢賢治」ほか多数と。中国・優秀翻訳賞、山崎賞、岩手日報文学賞賢治賞を受賞しているそうだ。

 王敏氏は本当に多くの本を出している。有名人で、講演に引っ張りだこのようなのだが、この本一冊を読んだんだけでその理由が分かる気がする。今の日本人があまりしなくなってしまった日本の古典文学などからのエッセンスの抽出という作業で、非常に小技の効いたいい手法を駆使して、説得力のある文体で一冊の本の統一性を持たせて書き切っているのである。つまり、他人の説、論をつまみ食いして継ぎ足して自分の論にする、という最近の日本人の若手研究者の陥りがちな欠陥をくぐり抜け、自分の論を展開しているから読んでいて惹き込まれるし、読後感がいい。それと、日本人に自信を持たせる内容だから右系のナショナリストも新左翼系のナショナリストも読んで違和感がないだろうと思う。そういう本である。

 粗筋を書くのはやめる。というか、粗筋のない本である。

 王敏さんのいわんとすることを一言で要約して言えば、日本人の特質はアミニズム、シャーマニズムに通じる<自然と人間の一体化>であり、儒教道徳は日本人の日常生活の規範になっていない。日本人はもっと縄文古層の清々しさ、自然融合、感覚的納得感を重視しする。一方、西欧の人々はキリスト教という自然を敵対者とする一神教を日常生活の規範として重んじるから、ダメなものはダメ、となる。この「ダメなものはダメ」はユダヤ教にもイスラム教にも通じるだけでなく、実は中国文明のコアである儒教も一神教的な「ダメなものはダメ」の教義で、妥協を許さないのだ、という。

 つまり、世界の先進文明の中で日本だけが唯一、固い中心をもたない分明だ、という分析である。

 中国が儒教文化とは聞いていたが、共産党支配の中国では儒教は廃れているのだろう、と勝手に想像していたのだが、この本を読んで見方が変わった。中国の儒教一神教体質は西欧の一神教体質に似ており、政治行動でも実は、中国と米国は分かりあえる部分が多く、よほど意識的にうまくやらないと、日本が弾き出されるのだ、ということ、そうは書いていないが、実はそういうことが著者のメッセージであり、愛する日本、日本人への忠告、警鐘なのだろう、と思った。

 日本人の感性重視とか動物を人間同様に大切にする、とかは他の本にもあるし、にお本人にとってそう目新しい説ではないだろう。

 注目したのは王敏さんが中国人のメンタリティーをきっちりと分析してくれたことだ。韓国人も同様だ、という。小中華であり、韓国知識人の自慢は中国以上に儒教を血肉化、内在化しているという自負である。だから、中国人と韓国人のエリート、インテリは同じようなメンタリティーを持っていて、日本人には本当のところは理解できないだろう、という説である。

 例えば韓流ドラマ「チャングムの誓い」は2005年からNHKで放映され、韓流ブームのピークを作ったが、王敏さんは「チャングムの誓い」は中国人と日本人とで違う見方をされただろう、と推測する。

 宮廷女官であったチャングムは陰謀で奴婢にされたうえに離島だった済州島に島流しされた。宮廷に戻る再起の道が医女になることだと知ると、人並み以上の精進を積み、天分もあって島民に認められるほどの医術の基礎を身に付けた。その時、倭寇の一団が済州島を襲った。倭寇の頭領が急病にかかり治療を受けさせるのが目的の来襲だった。倭寇はチャングムが医女見習いと知り、治療せよと迫る。拒むチャングムに倭寇は「拒むなら一人ずつ島民の命を奪う」と脅す。チャングムはやむなく未熟な腕だが懸命に治療する。頭領は具合が良くなり帰っていく。危機を脱した後、済州島の役所は「憎むべき倭寇を治療した行為は許されない」という処分を下し、チャングムは逮捕される。

 さあ、どう見るだろうか? 王敏さんが書いている通り、普通の日本人だったら、急病で困っている敵将を治療するのは日本の戦国時代では美談だったくらいで、「了見の狭い役人だなぁ」という感想を持つ方が多いと思う。ところが中国人も韓国人も感じ方が違うのだ、という。「無慈悲な権力者」と見るのではなく、大義を重視する儒教の教えそのままの筋書きだと思うのだ、というのだ。王敏さんんもそう感じた、という儒教的生き方ではいかなる脅迫にさらされても敵に協力すると「不義」とされるのだ、という。例外を認めないのだ、というのだ。日本人には不条理でも儒教に基づくと条理になる、と。つまり、自分の身を捨てても信念は曲げてはいけないということが個人の人生観から国家・世界観にわたって変わらない中国人の判断基準になっているのだ、というのだ。

 10年間続いた文化大革命についても今でこそ中国政府は行き過ぎがあった、と認めているが、時代精神として毛沢東に忠実な「革命派」が「実権派」に不義の烙印を押して容赦なく追い詰めた。「実権派」に寛容であれば庶民も不義とされて糾弾されるので、厳しい追及に耐えかねて自殺する人が相次いだのだ、という。文革の暴走は「不義」糾弾を名分にしたことを抜きには考えられない、と王敏氏はいうのだ。

 王敏氏はこのような例をたくさん散りばめながら、立論を進めるのだが、なるほど、と思う。中国も韓国もギリギリの交渉では譲らない。なぜか、と思ったが、そういうことだったのか、と今までの疑問がコトンと腑に落ちたのだ。なぜあんなに原理原則論にこだわるのだろうか、と思っていたケースも多かったが、中国、韓国という身近な2国が儒教の国だったために、それこそ「日韓」「日中」の誤解、不理解が積み重なり、日本人の心に不信感が積み重なってきたのだろう。逆にいえば中国人、韓国人は日本も当然儒教的な価値観を持っているだろうと思うと、全くそうでないので日本人を理解できず、無視したり、反日ぼ動きになって表れるのだ。

 王敏さんは日本人が日本人の良さ、特性を知らなさ過ぎる、として、日本人がこの意味で特殊であることをきちんと知り、外からの誤解を解くよう努力しないといけない、というのだ。

 王さんの読書量の多さに圧倒された。勉強家である。この古典の引用がいいところでズバリ、ズバリと決まるので説得力がある。

◆呉善花さんを思い出した…何か懐かしいなぁ

 王敏さんの2歳年下だが、ほとんど同年の韓国出身の日本評論家に呉善花(オ・ソンファ=普通はソナと聞こえる)氏がいる。王さんの本を読んで昔、呉さんの本を何冊も買ってきて読んだことを思い出した。

 呉さんは1956年済州島生まれ、大東文化大卒、東京外国語大学地域研究研究科修士課程修了で、今は拓殖大学国際学部教授。東京外大在学中に韓国人ホステスのルポ『スカートの風(チマパラム)』を出版。『続 スカートの風』『新 スカートの風』。『「日帝」だけで歴史は語れない』、『攘夷の韓国 開国の日本』(山本七平賞受賞)などがある。

スカートの風―日本永住をめざす韓国の女たち (角川文庫) スカートの風―日本永住をめざす韓国の女たち (角川文庫)

著者:呉 善花
販売元:角川書店
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続 スカートの風―恨(ハン)を楽しむ人びと (角川文庫) 続 スカートの風―恨(ハン)を楽しむ人びと (角川文庫)

著者:呉 善花
販売元:角川書店
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新・スカートの風―日韓=合わせ鏡の世界 (角川文庫) 新・スカートの風―日韓=合わせ鏡の世界 (角川文庫)

著者:呉 善花
販売元:角川書店
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 韓国のテレビが呉氏を徹底取材した特別番組を作成、放映した。

 驚くべき内容で、本はすべてゴーストライターが書き、1991年には日本に帰化していた、というのだ。この経緯を詳しくまとめたブログがあった。

http://list.jca.apc.org/public/aml/2006-September/008975.html

 内容をかいつまんで書いておこう。

 実業家の清塚誠氏は上野の韓国クラブ「ニュー太陽」に遊びに行った時、ホステスとして働いていた呉氏と出会った。才色兼備の彼女を秘書として雇い、日本の大学へ入学させた。呉氏は清塚氏と同棲する。日本ペンクラブ会員になり、卒業後も日本に在留できるビザを得るため本を出そうとしたが、日本語が下手で出版社がOKせず出版社が代筆ライターを世話し『スカートの風』ができあがった。本のネタの7割は清塚氏が運営する韓国語学校で彼が授業中に生徒の眠気覚ましに面白おかしく語った韓国クラブのホステスにまつわる話など。原稿の代筆を請け負った韓国人は、出版直後に良心が痛み身を引いたが、二人目の代筆ライターは在日韓国人三世の女性で、代筆は何人もいると証言した。拓殖大学日本文化研究所長の井尻千男氏の推薦で同大学の国際開発学部教授に就任した。韓国MBC取材陣は1991年6月11日に日本国籍を取得し、韓国の戸籍から除籍された事実を突き止めた、というような内容だ。

 呉氏を非難中傷するブログだったが、呉氏によって新しい韓国の魅力に触れた日本の男性も多かったのではないか、と想像するので、ここに書いてあることが事実だったら「えっ?」という感じではあるが、それで呉氏を嫌いになったり、怨んだりはしないだろう。呉氏が女性として魅力があるかどうかは件の清塚誠氏に聞いてみないと分からないのだろうが、そのくらいのたくましさがある女性、大歓迎というくらい鷹揚な日本人男性が増えているのではないか、とも思う。

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2009年7月15日 (水)

朝日新聞社説は「北朝鮮貨物検査特別措置法案の廃案やむなし」だった:国益に反するのに~09年7月15日朝日新聞、読売新聞社説

 北朝鮮貨物検査特別措置法案が廃案になり、北朝鮮の船舶の検査が十分にできない事態になることが確定的だそうだ。読売新聞は09年7月15日の第1社説<問責決議可決/民主党は貨物法案を葬るのか>で民主党を批判していた。読んでみよう。
 <野党4党が衆院に提出した内閣不信任決議案は否決されたものの、麻生首相問責決議案は参院で可決された。野党は自らが問責した首相の下では国会審議に応じられないとして、衆参両院で全面的な審議拒否に入った。このままの状況が続けば21日にも予定される衆院解散で北朝鮮貨物検査特別措置法案など政府提出の17法案は廃案になる。児童ポルノ禁止法改正案のように与党と民主党が法案修正で合意目前だった議員立法も同様だ。>
 という状態になったのである。
 <民主党は貨物検査法案をこのまま廃案にしてよいと思っているのだろうか。法案が成立しないと北朝鮮に出入りする船舶への貨物検査や禁輸品の押収を海上保安庁や税関が実施できない状態が続くことになる。これらの措置は、北朝鮮に対する国連安全保障理事会の制裁決議に基づくものだ。民主党の鳩山代表は記者会見で法案の早期成立を是認する意向を示していた。民主党が掲げる国連中心主義にも合致する。法案に賛成するのが筋だろう。>
 この主張は正しいと思う。
 <民主党内には法案が海上自衛隊の派遣も可能にしているため、旧社会党系議員を中心に消極的な意見がある。法案への賛成は衆院選を前にして、社民党との選挙協力に悪影響が出ることを懸念したとの見方もある。国内法の不備を放置するツケが近い将来、民主党に回ってこないとも限らない。>
 民主党政権ができれば、すぐさまツケが回ってくるはずだ。
 <衆院選から数週間後の9月後半にニューヨークで国連総会、ピッツバーグで世界20か国・地域(G20)金融サミットが開かれる。日本の首相も出席しその場でオバマ大統領との日米首脳会談や胡錦濤国家主席との日中首脳会談が行われる可能性も高い。中国はじめ各国の首脳に対し制裁決議の厳格な履行を促し、北朝鮮に核廃棄を迫る国際包囲網の強化を訴える絶好の機会だ。衆院選で民主党が勝利し、政権交代が実現すれば「鳩山首相」の外交デビューとなる。その時、貨物検査法案が成立していなければ「鳩山首相」の訴えはまったく迫力を欠くものとなろう。民主党はそれでもよいのか。>
 そういう日程だ。民主党は自分で自分の首を絞めているとしか思えないのだが、理由はやはり社民党との選挙協力なのだろうか? だとしたら、考え違いも甚だしい、と言わざるを得ない。国益という政党を超えて守らねばならない至高の目標を犠牲にして政党の利害を優先していたら、ちょうど昭和初期の政党が政党の利害で軍部の統帥権干犯主張に与した二の舞いになるのではないか。右と左が入れ替わるだけで、構図は同じだ。
 <審議拒否の理由について、与党は鳩山代表の個人献金偽装問題を国会で追及されたくないからだと批判している。与党の批判の当否はともかく、民主党はやはり北朝鮮貨物検査法案の今国会での成立に協力すべきであろう。>
 という至極最もな主張だった。
◆朝日新聞は「廃案やむなし」論
 驚いたのは朝日新聞の社説が民主党の肩を持って「廃案やむなし」と結論付けていたことだった。見出しは<国会空転/解散予告の余計な空白>だ。
 読んでみよう。
 <麻生首相の異例の「解散予告」で、国会がなんとも間延びしたものになってしまった。与党は、来週早々といわれる衆院の解散まで粛々と法案審議をしようと言う。野党は内閣不信任案こそ衆院で否決されたものの、参院で首相問責決議を可決し、早く解散せよと迫って審議拒否に入った。与野党が合意しての「話し合い解散」ならば、法案を処理したうえでという運びになるのだろう。だが、今回は野党側の不信任案提出の動きに、首相が先手を打った。与野党が激しくぶつかり合うのは仕方ない成り行きだ。本来なら即解散で、選挙戦での激突となるのが普通である。解散までの1週間の国会空転はどうにも余計な空白と言うよりない。さらに8月30日という投票日は解散から「40日以内に」という憲法の規定いっぱいの設定だ。首相はこれまで総選挙先延ばしの理由として「政治空白は許されない」とあれほど言ってきたのに、わざわざ最も長い空白を設けざるを得なかった。東京都議選での惨敗ショックから立ち直るため日にちをあけたい。そんな与党の事情に屈したわけだが、何ともわかりにくい妥協劇だった。>
 まだるっこしい前文である。
 <野党の審議拒否で、北朝鮮制裁のために検討されてきた貨物検査特別措置法案は、解散とともに廃案になる。首相は安全保障にかかわる重大な法案なのにその審議を投げ出すとは「考えられない」と、民主党など野党への非難のトーンを上げている。だが、これは言いがかりに近い。首相自身が都議選直後の衆院解散を思い描いていたからだ。それが実現していれば特措法案がただちに廃案になることは承知していたはずだ。>
 麻生首相だって廃案を覚悟していたのだろう、だから民主党だけを責めるのはおかしい、という理屈だ。隣の男だって立小便をしただろう、その隣の男が道に犬の糞をさせたことだけを責めるのはおかしい、責めるな、と言うのに等しい。どっちも責められるべきだが、麻生首相は現実には都議選直後に衆院解散をしていないのだから、同列に比べること自体おかしい。政治は結果責任なのだ、ということを朝日新聞の論説委員は知らないのだろうか?
 <日本は国連安保理で貨物検査を含む制裁強化を主張した。決議を実行するための法整備は必要だが、今国会で断念することはやむを得まい。法案は海上検査の主体を海上保安庁とし「特別な事情がある場合」に海上自衛隊が限定的にかかわるとするなど、自衛隊を使うことに慎重な野党側にも配慮した内容になっている。それでも「特別な事情」とは具体的にどんな場合なのか、自衛隊はどんな活動が許されるのか、国会は関与しなくていいのかなど、多くの疑問点が残っている。十分な審議もせずに、解散前に駆け込みで処理するより、選挙後の国会で仕切り直しする方がいい。>
 結局、朝日新聞は自衛隊海外派遣はだめ、という原点に回帰してしまったのだろうか。
 <廃案になるのはこれだけではない。労働者派遣法改正案や障害者自立支援法改正案、児童ポルノ禁止法改正案など、国民生活にかかわる法案がいくつも消えてしまう。与野党協議が進んでいたものもあるだけに残念だが、総選挙後の新たな政権のもとで、よりよい内容をめざしたい。>
 朝日新聞の論説委員は読売新聞の社説を読んで勉強すべきだと思う。民主党政権の首相、つまり鳩山由紀夫首相が誕生する可能性が非常に高い中、今後の国際会議日程を考えれば、民主党首相はこのままでは国際会議で日本としての主張をできなくなるのではないか、と危惧されるのだ。
 その辺、もう少し大局的な視点で社説を書いてほしい、と要望したい。

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2009年7月14日 (火)

韓国とEUのFTA合意で欧州車輸入が増えるだろう、と。つまり、日本車の輸入が減るということなのか?~朝鮮日報、中央日報7月14日

 韓国とEUとの自由貿易協定が妥結間近らしい。早速、韓国の新聞では欧州への輸出や欧州からの輸入についての見通し記事が出ていた。それにしても、大統領制の国というのはこういう政策転換が簡単にできていい。日本だったら内閣が一つ吹っ飛んででないと、実現しない話をどんどん進めている。李明博大統領の執行力もたいしたものだ。流石に経済大統領だと思う。李明博氏の偉いところは本業の経済だけでなく、安全保障問題でもきちんとした考えを持って、日米韓の協調を重視して政策遂行をしている点だ。
 中央日報が7月14日の日本語版ネットで<韓国での欧州車シェアがさらに伸びる見通し>という記事をアップしていた。グラフも付いていたので、中央日報のHPで見られる。
 <韓国と欧州連合(EU)の自由貿易協定(FTA)が妥結すると、国産車の輸出増大が予想されるが、その一方でドイツ車など欧州車の国内市場でのシェアも拡大するものとみられる。国産車の欧州向け輸出は現代・起亜自動車よりGM大とルノー三星がより有利とみられる。現代・起亜自動車は欧州に現地工場があり10%の輸出関税が撤廃されてもメリットは大きくないためだ。>
 <現代自動車はチェコに年産30万台、トルコに年産10万台の工場を持っている。起亜自動車はスロバキア(30万台)に工場を持っている。すべて欧州で人気の小型車工場だ。現代・起亜自動車が欧州で販売する台数のうち約60%が現地生産分だ。韓国で生産し輸出する台数は全体の40%程度だ。したがって10%の輸出課税が撤廃されてもメリットは多くない。代わりに4.5%の部品関税がなくなると欧州工場の競争力が大きくなるとみられる。>
 細かい話に思えるのだが、つまり現地生産が進んでいるから、単純に関税のメリットばかり勘定できない、ということなのだろう。
 <GMシボレー・オペルブランドで欧州に輸出するGM大宇はメリットが大きい見通しだ。昨年全体の輸出台数180万台のうち40%程度の72万台を欧州に輸出した。ルノーブランドでクロスオーバーユーティリティの「QM5」を輸出するルノー三星も関税がなくなれば「ニューSM3」セダンをルノーブランドで欧州に輸出することを検討している。相対的に国内部品メーカーのメリットは多くないものとみられる。欧州の部品メーカーが技術だけでなく価格競争力まで確保しているためだ。>
 韓国企業は本当に努力している。アメリカ全盛時代、地球の裏側でもジャングルの中でも入って行ってトランジスタラジオを売った日本の商社マンのような活躍をしているのは、今は韓国人だけだそうだ。
 <自動車コンサルタントのシム・ジョンテク氏は「現代・起亜自動車は欧州に現地工場を確保しており、輸出に大きな利点はないが、現地工場の競争力が強化されるだろう。逆にエコカー技術に強い欧州の小型車が価格競争力を確保して韓国に進出する契機になるだろうとみている。>
 欧州車が買い易くなる。つまり、ベンツやBMBが安く手に入る。売れるだろうなぁ。
  <輸入関税がなくなる場合、欧州のメーカーは消費者価格金基準で7%程度の引き下げ幅が生じる。1億ウォンを超える高級車は10%に達するものとみられる、輸入車ベストセラーのBMW「528」は6700万ウォン台から6200万ウォン台まで引き下げることができる。2億ウォンのベンツ「S5000」は1500万~2000万ウォンを引き下げられる。この場合、年間の輸入車市場は欧州勢が70%以上を占める可能性が大きい。>
 書いてないけど、日本車が売れなくなる、ということだろう。
 <フォルクスワーゲン・コリアのパク・ドンフン社長は「欧州は国別にFTA批准が議会を通過しなければならないため相当な時間がかかるとみられる。批准されれば価格引き下げ分だけでなくこれまで輸入出来なかった小型環境対応車まで輸入が可能になり、国内の小型車市場攻略の契機になるだろう」と話している。>
 なるほど、そういうネックがあったのか。でも時間の問題だ。日本は欧州や韓国とのFTAどうなっているんだっけ?
◆朝鮮日報による韓国とEUのFTA交渉本記
 朝鮮日報では7月14日付で<FTA/韓国とEU、早ければ来年前半にも発効/チーズ・粉乳などに打撃予想>という本記記事と影響論の解説があった。
 まず、本記だ。
 <2年2カ月にわたって自由貿易協定(FTA)交渉を進めてきた韓国と欧州連合(EU)が13日、最終合意案を策定した。EU議長国であるスウェーデンを訪問している李明博大統領は同日、フレドリック・ラインフェルト首相と首脳会談を行った後、記者会見で「わたしとラインフェルト首相は韓国とEUのFTA交渉で残っていたすべての争点に対する最終合意案が策定されたことを歓迎する。われわれ二人の首脳は、韓国とEUによるFTAの早期仮署名のための手続きが迅速に勧められることを期待する」と述べた。>
 スウェーデンに行っていたのか、李明博大統領は。
 <EUは今まで韓国がFTAを締結した地域の中で最大の市場だ。EUの国内総生産(GDP)規模(16兆9000億㌦=約1570兆円)は韓国がすでにFTAを締結した米国より20%ほど大きい。サムスン経済研究所は同日「韓国とEU間のFTAの主要妥結内容と示唆点」と題する報告書で「韓米FTAで予想される韓国のGDP増加は1.28%だが、韓国とEU間のFTAによるGDP増加は3.08%に達する」と予想した。>
 規模が大きい。李明博大統領の勝利だ。
 <韓国とEUのFTAで自動車・家電業界は恩恵を受け、精密機械は日本からの輸入をEU国家へと多角化できると予想されている。しかし、農畜産業は「直撃弾」を受けるものとみられる。対外経済政策研究院(KIEP)のソ・ジンギョ研究調整室長は、「農業・食品産業のうち付加価値が高いチーズや粉乳などの産業が被害を受ける可能性がある」と話した。>
 なるほど、精密機械だけでなく、高級な工作機械もドイツが今後大きな対韓輸出国になるだろう。今までのような日韓経済体制にようやく終止符を打たれるのかもしれない。日本も何か考えなくてはいけないだろう。
 <韓国とEUは文言の検討を経て、9月中に協定文書に仮署名する計画だ。その後、協定文書を27のEU加盟国が使用する23の公式言語に翻訳する。翻訳作業が終わった後、来年1、2月ごろEU加盟27カ国の正式署名を受けなければならない。しかし、イタリア、ポーランド、ハンガリーなど3カ国はまだ韓国とEUのFTAに対し明確な賛成の立場を示していないという。ラインフェルト首相も李大統領と首脳会談を行った後、記者会見で「交渉の突破口は開かれたが、一部のEU加盟国がFTA合意案に同意する準備ができていない」と述べた、とAP通信は報じた。イタリアは韓国とEUのFTA交渉初期から、イタリアの代表的自動車メーカーのフィアットが韓国に進出できない一方、韓国の小型車がイタリア市場を侵食する可能性に対し懸念を示してきた。東欧諸国もまた、韓国のEU進出による価格競争力の低下のため、韓国とEUのFTAに対し消極的な立場を見せた。>
 まあ、国別ではいろいろな事情はあるだろう。でもそこを突破できるかどうか、なのだ。
 <署名した協定文書が効力を持つためには、韓国国会とEU議会の批准同意を取り付ける必要がある。すべての手続きが順調に進めば、早くて来年前半に韓国とEUのFTAが発効する。>
 以上が本記だ。
◆大型車の輸入、小型車の輸出が増えるのでは割が合わなくは見えるが…
 そして、朝鮮日報の7月14日の解説を見ておこう。見出しは<FTA/韓・EUの締結で欧州車にも利益>である。崔元碩記者の署名記事だ。
 <韓国と欧州連合(EU)による自由貿易協定(FTA)交渉で、自動車はEU側から最も多くの成果を引き出した分野として評価されている。しかし、今後の展開は韓国の自動車メーカーが一方的に利益を得るものではなく、欧州メーカーも韓国の自動車市場で少なからぬ利益を得るとみられる。>
◎韓国で欧州車の販売急増か
 <韓国とEUの自動車貿易は韓国から欧州への輸出が欧州から韓国への輸出を上回っている。このため、今回の交渉合意で韓国メーカーが得る利益のほうが大きいのは当然だ。関税廃止による効果も韓国メーカーにメリットが大きい。現行の関税率を見ると、EU側の韓国車に対する輸入関税は10%で、韓国の欧州車に対する輸入関税(8%)を上回る。>
 <しかし、韓国国内で販売される欧州車は中・大型の高級車が主体で、関税撤廃による値下げ効果は大きい。それだけに、欧州車はFTA効果で韓国の高級車市場でシェアを高める余地が十分にある。>
 <今年上期に韓国で販売された輸入車ベスト10を見ると1位の「BMW528i」をはじめ、アウディ、メルセデスベンツ、フォルクスワーゲンなど欧州車が6車種を占める。価格も3000万ウォン(約213万円)から最高で1億4600万ウォン(約1036万円)と高価だ。最高級車の場合、関税撤廃に伴う値下げ幅は2000万ウォン(約142万円)に達する。韓国の輸入車業界関係者は「高級車以外にも、これまでに採算が合わず輸入されていなかった欧州製小型車の導入が活発化するはずだ」と予想した。>
 なるほど、韓国人は日本人同様、欧州車が好きなのか。
 <一方、韓国からEU向けに輸出する乗用車の大半は安価な小型車だ。今年1-5月の西欧向け輸出1位は、起亜自動車のモーニングで1万8646台だった。関税撤廃により輸出が増えれば、米国市場で既に競争力が認められた韓国車の認知度が欧州でも高まる可能性がある。自動車産業学会の金小林・副会長は「韓国製小型車の認知度が十分に確保できれば、中・大型車の欧州向け輸出も増える」と期待を込めた。>
◎EUの環境対策ディーゼル、韓国でも普及
 <また、EUの自動車部品に対する4.5%の関税が即時撤廃された場合、韓国製部品の欧州向けの輸出競争力が高まる。韓国製自動車部品の対EU輸出額は、昨年実績で23億9700億㌦(約2230億円)に達した。完成車輸出が前年比39%減少したのに対し、自動車部品の輸出は同7.9%増えた。韓国部品工業協同組合のコ・ムンス専務は「最近BMW、ベンツ、フォルクスワーゲンなど欧州のバイヤーが韓国を訪れ、部品調達を打診している。韓国の部品メーカーはこの機会を生かし、EU市場を積極的に攻略するはずだ」と指摘した。>
 すばらしいな。一時期は韓国は組み立て型産業の最終部分をやっているだけで、工作機械は日本から買い、部品も日本から買っていたが、その産業構造はもはや昔の話になった、というわけだ。
 <EUの部品業界による韓国進出も拡大が見込まれる。EUが競争力を持つ環境対策ディーゼルエンジンの分野では攻勢が見込まれる。韓国も2012年から1㍑当たり17㌔という燃費基準を満たさなければならないことから、ガソリン車よりも燃費が30%優れたディーゼル車の需要が増える見通しだ。>
 なるほど。
 <延世大のチョン・グァンミン教授(機械工学)は「韓国の部品業界は環境対策型のディーゼル部品の開発能力が極めて低い。開発能力に優れた企業を速やかに育成しなければ、欧州など先行メーカーに技術的に従属することになる」と警告した。>
 部品業界の話が一番驚いたニュースだった。いつの間にかここまで進んでいたのだ。日本が抜かれる日が来るのだろうか?

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佐々木毅氏の[総選挙は二重に『歴史的』、戦後政治の総決算]は難しい~09年7月14日朝日新聞朝刊寄稿+「政治の精神」(佐々木毅著、岩波新書)について

 朝日新聞7月14日朝刊[オピニオン面 09政権選択]で佐々木毅・学習院大学教授(政治学)が<二重に「歴史的」、戦後政治の総決算>のタイトルで寄稿していた。相当に長い文章で、読んでも分かりにくい。何度か読んでようやく言わんとしていることが頭に入った気がするので、メモしておこうと思った。今度の総選挙の意義についての論考なのだが、この18字取り183行の文章がどうして分かりにくいのか、考えたら、実はこの文章は佐々木氏が6月19日発売の岩波新書「政治の精神」(780円+税)に渾身の力で書いた論文のダイジェスト版という意味合いが籠っているからではないか、と気づいた。本当は新書版238ページで言うべきことのエッセンスを3300字で書いたのだから、一般人には分かりにくくて当然だ、と思わなくては、自分尾頭の悪さを悲観するしかないような難しさなのである。

政治の精神 (岩波新書) 政治の精神 (岩波新書)

著者:佐々木 毅
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 朝日新聞への寄稿で佐々木氏はまず今回8月30日投票の第45回総選挙が二重の意味で歴史的なのだ、と言う。その二重の意味とは①政権交代可能な仕組みが現実に動き出すこと②旧来の政治の意思決定の仕組みや政策内容そのものが時代の変化の中でいよいよ疲弊し、存在感を失った中での総選挙である――の二つの「歴史的」要素が結びついた、いわばアメリカで政党政治の枠組みを大きく変える決定的選挙をクリティカル・エレクションというが、日本版のクリティカル・エレクションに相当する選挙だ、というのだ。

 まず政権交代可能な仕組みが現実に動き出す、というのは金権政治を象徴する1988年のリクルート事件以来、選挙制度改革を含めて政権交代可能な仕組みのための条件整備をしてきたが、二つの大きな政党の登場によって、それがようやく現実味を帯びてきたのだ、といい、「裏から言えば、この政治学習のために政治家と国民双方には20年の歳月が必要であった」と書き、深い感慨を禁じえない、とまで言っている。

 そして、第2点についてはバブルの崩壊を含め、我々の社会が既存の仕組みややり方の限界を何度も味わってきたが、それがついに政治と行政の仕組みにも時間差を置いて訪れた、この数年の政権の短命化は個々のリーダーの資質を超えたこうした構造的要因の表れだったように見える、こうした構造的要因を見据えない政治はドタバタ劇を引き合いに出すまでもなく自壊の引き金を引くようなものだ、と書いている。

 「政治の精神」は実は「政党政治の精神」について、特に日本で必要とされる「政党政治の精神」について書くために、前書きが全体の80%にもなる、という本である。その前書きの中で、今まで佐々木氏があえて封印してきた議論を初めて(だろうと思うが…)提起している。

 それは第1章「政治を考える視点」の<1.丸山真男、1949年の問いかけ――政治的統合をめぐって>、つまり本の書き出しから書いていることなのだが、丸山真男は1949年に書いた「軍国支配者の精神型態」(「現代政治の思想と行動」所収)でナチス・ドイツとの比較をしながら、日本の戦中の全体主義リーダーたちの「既成事実への屈服」、「権限への逃避」に見られる「官僚精神の広がりと戦争責任否定論に注目した、という。丸山はそういう言葉を使っていないのだが、佐々木氏は、丸山の言いたいこととして、

 <政治的統合の弱体さないし不在という「体制」の現実、それに伴うリーダーの側での先に指摘したような責任意識の欠如や希薄化であった。>

 <「既成事実への屈服」や「権限への逃避」といったものに見られる指導者の「弱い精神」は、政治判断にとって最も肝心な目的による手段のコントロールを不可能にした。>

 <俗にリアリズムの欠如と呼ばれるような事態は、「政治の精神」を考える際の最も大きなテーマの一つであるが、丸山はそれを政治的統合という政治の中核概念として取り上げ、その不在や脆弱性がどのような帰趨を辿るかを見ることで、個々のリーダーの「精神型態」を問い質した。>

 そして、丸山は

 <本当にデモクラチックな権力は公然と制度的に下から選出されているというプライドを持ちうる限りにおいて、かえって強力な政治的指導性を発揮する。>

 と述べているが、これは丸山が政治的統合問題の解決を民主制に求めたものとも考えられる。しあkし、その後の歴史はどうだったか? 戦後日本の政治権力は民主的な正統性を根拠としたプライドをどの程度持ちえたか、と問う。そして、

 <民主制は結構であるが、政治的統合などというものは「危険なもの」であり、そうした剣呑なものは「ご勘弁願いたい」「願い下げしたい」といった感覚があるとすれば、丸山が提起した視点は初めから登場しようがないではなかろうか。この点は本書がこだわりたい中心的な論点である。>

 と強調する。つまり、

 <政治的統合という問題に対する「胡散臭い」とか「願い下げしたい」とかいった発想には、政治的統合が「自ずから出てくる」といった社会的コンセンサスへの依存体質も潜んでいる。政治的統合とは意見の対立があることを前提としてどうするかを問題にするものである。それが社会的コンセンサスがないところでどうするかを決める役割であるとすれば、「自ずから出てくる」では回答にならない。>

 と書く。民主制は欲求のぶつかりを調整する政治体制だ、欲望の政治なのだ、と。これを「強い精神」の指導者が政治的統合を成し遂げることで民主制は十分に機能するのだが、「弱い精神」の指導者では十分な機能が果たせない、という。政治がその生み出す結果との関連で判dナンされる以上、統治能力、問題処理能力は避けて通れず、民主性も政治体制の一つである以上、この概念から自由でない。

 特に「世界史の裂け目」は突然襲ってくるのだ、という。1930年代がそうだった。歴史は繰り返すかもしれない可能性を持っており、30年代の日本は「弱い指導者」が政治的統合ができなかった悲惨な歴史の教訓だが、今の日本もそうならないためにも政治的統合の大切さを理解しよう、と言うのだ。政治的統合は政治的指導力と言い換えてもリーダーシップと言い換えてもいい、と。

 そして、38ページの<4.政治的統合のメカニズム>で、

 <日本でも選挙制度の大改革などさまざまな政治的統合過程の見直しやメンテナンスのための工夫がなされてきた。>

 とあった。「これだっ」と思った。ようやく出てきた。前に書いているのかもしれないが、政治改革が叫ばれ、その政治改革は金権政治をなくそう、という改革だった。それがいつ野間にか選挙制度改革にすり替わったのは何故だろうか、と16年間、疑問だったのだが、ようやく、当時、裏で政局に影響を与えていた学者の告白を読んだ気がしたのだ。

 つまり、政治的統合を重視して、小選挙区比例代表並立制にしたわけだ。当時は小選挙区比例代表併用制がいいか、並立制がいいか、閑閑諤諤の議論があった。一時期は併用制派が多数派だったと思うのだが、いずれの時点かで並立制になった。併用制は比例代表が主だから多数党を生む。だから政権は永田町で選ばれた議員たちの合従連衡になる。お金も飛び交うだろう。しかし、民意の反映という意味では少数意見は永田町に反映される。一方の並立制は言ってみれば小選挙区制度に毛が生えたようなもので、2大政党へ収斂される、といわれていた。そして、永田町権力も、そこに知恵を出していた学者も並立制を選んだのだ。その理由がなかなか聞かれず、もう表面化しないのか、と思っていたらこの岩波新書でこの表現に出遭ったのだ。

 つまり、金権政治打破という「たけまえ」の下、実際には政治的統合強化策が行われたのだった。佐々木教授が書いているように、「政治的統合」という言葉を特に左派の人々は悪くとららえようとする傾向があるので、誰も本音をしゃべらなかったのかもしれない。しかし、やはり、1993~1994年に仕込まれた爆弾は導火線がなくなりつつあり、今度の8月30日に爆発する可能性があるのだ。

 朝日新聞への寄稿に戻ろう。

 佐々木教授は「なぜ日本では『戦後政治の総決算』が先送りされたのか」として①戦後政治を支えてきた経済的成功がバブル崩壊があっても「ものづくり」力を基盤とした輸出競争力をダウンさせない政策(ゼロ金利や円安誘導など)で政治経済体制の背骨部分が残っていたこと→この背骨も昨秋のリーマンショック以来の世界経済不況でいよいよ打撃を受け、新たに将来に対する構想力が必要になった(輸出主導経済からの転換)②政党間の競争不全=小泉政権による擬似政権交代劇が5年間、国民の圧倒的な支持を得たが、小泉退陣後の備えがなかった。日本の政党は意識的なガバナンス体制の確立に甚だ不熱心だった――の2点をあげる。

 そして、岩波新書で力説した政党のガバナンス体制確立のための処方箋となる。朝日新聞では官僚との距離の取り方、という考え方でいくら「政治主導」という旗を掲げてもだめだ、と。

 <政権政党はまずは、官僚制との関係を明確にルール化する努力を率先して行い、不毛な議論に終止符を打つ責任がある。>

 というのだ。また、政府と与党の二元体制の問題など政治のリーダーシップ問題についても注文している。縦割り行政に甘んじている余裕は今の日本にはないのだ、と総合的な政権構想を政党が主導して作成し、それを国民に広く知らせ、実行する必要がある、として

 <いくつかの戦後の政策に巣食うドグマ(固定観念)を振り払わねばならない。>

 と書いている。「日本は貿易立国」という最大のドグマも検証のまな板に載せられるべきだろうし、「非核三原則」「武器輸出四原則」「集団的自衛権禁止」「愛国心」「国民総背番号制」「シビリアンコントロール」「領土問題」など、今まで理由も問わずに守り続けた政策を一度検討し直すチャンスでもある。

 政策の方向性は過去ではなく未来を志向するものでなければならない、という意見も重いと思う。

 <過去への郷愁に支配されている人々は少なくないが、郷愁に従って生きることから未来に向かって生きることへと国民の視線を転換させること、それによって社会の新しい力を掘り起こすこと、これこそ今の日本政治のリーダーシップの最も名誉ある課題ではないだろうか。>

 という結びの言葉をじっくり考えてみたい。

 岩波新書の書評も、と思ったのだが、なかなか難しく諦めた。

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麻生首相の解散告知は第5次吉田内閣の解散失敗ではなく第3次吉田内閣の抜き打ち解散に近い、と御厨貴氏~朝日新聞7月14日朝刊オピニオン面

 朝日新聞7月14日朝刊[オピニオン]面の<解散・総選挙へ>インタビューは東大先端科学技術研究センターの御厨貴教授(政治学)の<首相の「告知」は最後に見せた決断/民主はムードより政権構想を急げ>の見出しだった。聞き手は吉田貴文記者。

 御厨氏は「今回ばかりは麻生首相が初めて政治家らしい決断をしたのだと思う」と今回の解散告知を評価していた。従来なかった告知という手法を取ったことも、何もしないでいれば自民党内の反麻生勢力が2、3日中に麻生降ろしをし始めただろうが、もはやこれでできなくなった、と言う。このタイミングを狙いに狙った麻生戦略の発動である、と。そして、

 <解散せずにこのまま退陣したら、彼のこの後の芽はもうない。安倍晋三、福田康夫と2代の首相が途中退陣したが、ひょっとするとグッドルーザーとして生き残れるのは麻生首相だけかもしれない。>

 とまで言うのだ。面白かったのは吉田記者が「吉田元首相は造船疑獄に見舞われた第5次内閣で解散しようとして失敗しました。告知はそれを反面教師にしたからでしょうか」という質問に、

 <いや、むしろ1952年8月の第3次吉田内閣の「抜き打ち解散」に近い。あの時は公職追放を解除された鳩山一郎ら非主流派から退陣要求が出され、側近議員を幹事長に起用しようとして果たせず、事態打開のため側近とだけ相談して不意を突く解散を断行した。解散に関してはウソを言ってもいい、というのを使ったわけだ。>

 と言う。そして、奈良、千葉などで若い人が当選してきたことの意義について前向きなことを言っていたのが印象的だった。

 <(若い人が)きちんとした政治が出来るかどうかは分からないが、今まで行われてきた政治というのは一体何なのかということを炙り出すため、若い人人々の登場を願うということなのだろう。経験や年功というものを一切パージしたい、それで政治というのは新しくなるんだ、と。終戦直後は戦犯らがパージされたが、今回は自民党政治に象徴された長老支配が退場を求められたのだ。>

 として、「若さには可能性もあるが、危険な面もあるのでは?」という質問には、

 <確かに危険ではあるが、新しい人々であれば、少なくとも何をやっているかは見える。ベテランならば必ず政治の暗部を隠そうとするが、今回当選した若い人々はネットを使って政治をオープンにするかもしれない。透明な政治が国政で始まる可能性がある。>

 <僕は21世紀に入ったくらいからその変化を感じていた。地方の市議選などでぽっと出の若い人が当選する。それをみんなが応援しているという現象が起きた。20代、30代の人々がとりあえず4年間定職につきたいからと立候補して当選するという現象だ。これは新しい政治の風になる可能性がある。小泉政権時も地方ではそういう若い人々が出てきていた。それが、この都議選で首都・東京でも現実のものとなってきたといえwる。都議選で投票率が上がったのも、そうした若い人々に期待した結果だと思う。>

 なるほど、とも思う。大きなトレンドとして、世襲問題を考える際にも「反世襲」を法律で規定するなどというアホな手段ではなく、このような若い人がどんどんとチャレンジできる環境を作るように積極的に動くほうが先だろうと思った。

 今度の衆院選は「間違いなく政権選択選挙」だと言い切る御厨氏は民主党にマニフェスト作成を急げと尻をたたきながら、

 <この総選挙は間違いなく政権選択なんだ。だから、麻生首相が解散告知をやってきたのなら、そうじゃないんだ、これは俺たちが解散の状況を作ったんだと逆転して状況を規定し直さないといけないのだ。もう棚ぼたで政権が来ると思ったら大間違いで、そこをもう一回攻めなければいけない。「麻生さん、結構やるじゃん。それなら、俺たちもこれでいこう」という意識が大切だ。>

 <自民党だって、負けた後の生き残りまで考えて戦術を練った麻生首相に対して、首相交代を求める動きが出てくれば、たとえ分裂選挙になったとしても、党は活性化するものだ。歴史的に自民党は分裂選挙でもいいんだ。さらに言えば、選挙に当選して自民党に残った人々が選挙後政局で主導権を取り戻す芽になるかもしれない。>

 <麻生首相は最後に味なことをやったという気がするよ。決断しない首相と言われたが、唯一決断したと後世言われるかもしれない。>

 なるほど、の論だったが、今の大衆民主主義の風は相当に強いから、なかなか難しいかもしれない。都議選でカタルシスを得たのは都民だけ。他の道府県の有権者は自分の手で変革を起こしていないから、「今度は自分だ」という気持ちでいるのではないか。衆院選での民主党勝利は動かないとは思うのだが。

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塩川正十郎氏の政界再編論は興味深い~読売新聞09年7月14日朝刊

 読売新聞は7月14日の朝刊で[「8.30衆院選」緊急座談会]の特集面を1ページ作っていた。塩川正十郎、飯尾潤、北川正恭各氏と村岡政治部長の座談だった。見出しは<塩川氏 追い込まれ感否めず/北川氏 選択迫る勇気必要/飯尾氏 変化への期待大きく>だ。

 この中で北川氏が「自民党、民主党のどちらが政権党になっても、首相は原則4年間の衆院議員の任期いっぱい務めることだ交代せざるを得ない時は衆院解散で国民の信を問う形にすべきだ」という提案をしていた。

 次の政権政党が考えるべきことだろうが、結局は今の統治システムの中では政権政党の裁量の範囲内ということになる。結局、言うだけだろう。

 ただ、塩川氏も「任期いっぱいやらせるのは非常に大事だ。ヨーロッパの政権担当者は大抵、長い年月やっている。小泉政権も中途半端になったのが一番いけない。今のように1年刻みで首相が代わっていたら、政治などできっこないじゃないですか」と話す。

 面白かったのは司会者が自民党離党の動きが出るかと聞いたら、北川氏が「出ると思う。(地方選で)過去のしがらみを断ち切って勇気ある行動に出た首相候補が勝ったようなことを国民は求めている。経済も変わり、GMが倒産の憂き目に遭い、キリンとサントリーが合体するような考えられない決断を迫られている。政治の世界でも新しい時代を作る時にこれぐらいの混乱は当然だ」と言っていたこと。

 塩川氏は「麻生さんも鳩山さんも同じような育ちや言動で民主党政権に移っても大して変わらない。そこで政党から離れて議員中心に選挙しようということになってくると思う。8月ごろに入ったら、政党ではなく、小さい政策グループのようなものがどんどんできてくると思う」と言うのだ。自民党、民主党による2大政党システムという考え方が修正を余儀なくされているのか。

 東国原氏の動きについて塩川氏が「東国原知事の問題は政党を侮辱された最大の表現ですな。実に憤慨している。政治家として活動してきたプライドを傷つけられた気持ちでいっぱいだ」と怒りを隠せない様子でしゃべっている。

 そして、衆院選挙の争点だ。

 まず塩川氏は「安全保障問題だと思う。日本を取り巻く国際情勢は変わっている。日本の国際貢献が全然実を結んでいない。経済も、現在のような何でも規制で縛り上げるような抑圧した政策では経済成長できない」と話す。

 北川氏は苦い薬の入ったマニフェストをきちんと示せ、という。

 飯尾氏は最大の争点は政権選択だ、と言う。今までは自民党と民主党に力の差がありすぎたが、今回初めてがっぷり四つに組める、と。そして「政策の優先順位が大切だ。まずこれをやれば日本は変わるというものを七つ八つ出してもらわないと。自民党の民主党もそういう大きなイメージを出すことに成功していない。政権に何が出来るかは、選挙前にどんな約束ができ、それに有権者のお墨付きをもらえるかどうかで決まってくる」と言う。
 衆院選結果の予測だが、塩川氏は「1党で過半数を担当する政権にはならないと思う。この選挙を機会に少数政党ができて多党化し、国民の政党選択が難しくなるかもしれない。再編成の政党を作る時代へのプロセスになるのではないか」と意味深長だ。

 北川氏は「現状のままいくと、幕末の『群雄割拠』になるのではないか。自民党の場合、各藩が生き残りをかけて勝手なことを言ってグループを作る可能性が大いにある。自民党は明確な選択と集中を迫る勇気がないと、政権を失う可能性が高い。そこで、民主党は思い切って勇気ある政策を提示し、あれかこれかの選択を国民に迫る。国民はばらまきよりも、むしろそちらを必ず選択すると体験的に感じている。選挙後はいろんな政界再編的なことが起きるだろうが、民主党は政権交代という大義の下になかなか割れにくいだろう」と。

 飯尾氏は「私は政界再編は起きにくいと思う。東京都議選や最近の首長選挙を見ると、有権者ははっきりした結論を好む。衆院選でもどちらが勝つにしても単独過半数を取るだろう。政権自体を選びたいという有権者の意欲が高いからだ。今は自民党が非常に弱っており、民主党が勝つ可能性は高いが、どこかの段階で民主党ではだめだとなった瞬間に、逆の流れが起きる可能性もありえる。これまでの政界再編は人が政党を入れ替わることだったが、これからは政界に入る人が入れ替わる。仮に民主党が衆院選で勝つと、100人以上の新人議員賀出ることになる。オバマ米大統領もそうだし、政界に入ってからトップリーダーになるまでそんなに長くかからなくなるきっかけの選挙になるのではないか」と言う。

 来年の参院選について飯尾氏は「民主党が政権を取っても能力がなかった時に、参院選が歯止めとなって現在の与党が参院では優位となる『逆ねじれ』が生じることもあり得る。逆に自民党が政権を維持してもねじれは変わらないから、参院選まで勝負が続く。その意味で来年の参院選は自民、民主両党にそれぞれもう1回、チャンスを与える意味が大きい衆院選、参院選と続けて勝てば、残り3年間は選挙のことを考えず強い基盤ができる」と話す。

 政界再編はどんな形で起きるのか、という質問には、塩川氏は「いずれにしても『ビビンバ国会』ですね。もうごちゃまぜで、どっちがどっちか分からんということだ。都合によってひっついてくる。政策本位ではなく、自己保全のための離合集散ですな」。

 飯尾氏は「おそらく今、英国より日本の方が2大政党的だ。日本のような先進国で、大政党に意見がたくさんあるのはいいことだが、まとめる力をつけないといけない。政界再編より政権交代を繰り返す中で政治家が根本的に入れ替わることになるが、選挙に勝てなくとも、20人、30人が性根を据えて党の中心に座っていればちゃんとしていくはずだ」と。

 北川氏は「北欧に行った時、日本では民主政治の教え方を間違ったと指摘された。投票に行くことが『義務』だと教えているが、これは『権利』だと。今度の総選挙では候補者・政党と有権者が両方とも責任をとるという価値が出てこないといけない」と。塩川氏は「人気投票になっている」、飯尾氏は「お任せ民主主義」という言葉で今の日本政府を批判していた。

 以上が座談会の概略だが、政界再編があるのかどうか、今後の各氏の発言を注視しておこう。

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2009年7月13日 (月)

さすが公明党は取りこぼしなしVS共産党は投票率アップの直撃受ける~7月13日産経新聞、朝日新聞、毎日新聞ウェブ版

 産経新聞ウェブ版に午後6時頃アップされた<衆院解散問題/内閣不信任決議案は14日午後に採決へ>が国会見通しを書いていた。
 <衆院議院運営委員会は13日午後の理事会で14日午後の衆院本会議で民主党など野党4党が提出した麻生内閣不信任決議案の採決を行うことを決めた。これに先立って、参院議院運営委員会は新党日本を加えた野党5党が提出した麻生太郎首相問責決議案の採決を14日の本会議で行う方針を決めた。衆院本会議での内閣不信任決議案採決のあと、参院本会議で首相問責決議案の採決が行われる見通しだ。内閣不信任案は与党の反対多数で否決される方向。問責決議案は野党の賛成多数で可決される見通しで、野党側は15日以降の国会審議には応じない構えを示している。>
 というものだ。
 つまり、14日になると、衆院が解散されたも同然ということになる。議員たちは地元に戻り、一斉に走り出す。もう「麻生降ろし」も「首の挿げ替え」もない。ただただ自分が生き残れるかどうか、の戦が待っているだけ、という状況になるようだ。
 麻生首相は7月13日、太田公明党代表らと相次いで会談した。産経新聞ウェブ版によると、
 <一連の会談で首相は、東京都議選での自民党の敗北に「残念な結果になった。都議選はあくまで地方選挙で国政に直接関連するものではないと言ってきたが、党内のゴタゴタが悪い影響を与えたことは否定できない。党総裁として大変申し訳なく思う」と謝罪した。その上で、「重要法案の成立に全力を挙げた上で、21日の週の早々に解散して信を問いたい。投票日は8月30日にしたい」と述べた。>
 とあるのだが、野党が審議に応じなければ重要法案の成立を期すことはできないわけで、これも口だけなのか。

◆朝日新聞

 朝日新聞のウェブ版には<与党「最悪のタイミング」/首相の解散決断に反発>というまとめ記事が掲載されていた。夕刊で大きく扱っているのだろう。 <「最悪のタイミングだ。こんなときに決断すべきじゃない。冷静さを取り戻して、判断すべきだ。麻生首相のもとで解散したいとはだれも思っていない」。「解散合意」の知らせに、千葉8区から立候補する予定の自民党の桜田義孝衆院議員は言った。同党の菅原一秀衆院議員(東京9区)は「党内が真っ二つになってもおかしくない。今後どうなるのか読めない」と厳しい口調。「何のための解散なのかを言わず、ただ総理が自分の手で解散したいというだけならより混乱を招くだけだ。全く党内の意見を聞いていない。総裁としてもどうなのか」と反発した。正午前、次期衆院選に向けて地元であいさつまわりをしていた自民党ベテラン衆院議員は8月30日投開票と聞き「え? 誰の手で解散するの?」と驚いた。自民党への風当たりは厳しい。麻生首相のままでは戦えないと感じている。「信じられない決定だ。そんなことしていいんですか? 麻生さんでないなら、まだ分かるが、都議選の敗戦責任も明確でないままだ。けじめもつけずに、党内世論がおさまるわけがない」と話した。>
 これはきっと社会面の雑観記事だな。どうでもいい感じの記事だけど、雰囲気は出ている。というか、雰囲気の出ている言葉を並べただけの記事だ。
 < 一方、深谷隆司衆院議員(東京2区)は覚悟した。ただ、懸念するのは党内の状況だ。「ここでガタガタやるのはプラスではない。今回の都議選でも党内が乱れているというイメージが広がってマイナスになった。このタイミングでの解散宣言がいいのかどうかは全くわからないが、麻生さんが腹を決めたんなら頑張るしかない」と語った。同党の山内康一衆院議員(神奈川9区)も戸惑いながら、「思ったよりは早い日程だが、麻生さんが自分の手で解散するなら、そのくらいの日程が妥当では」と話した。>
 <北朝鮮制裁貨物検査特措法案の採決を控えるタイミングの解散表明に、衆院テロ対策特別委員会で理事を務める自民党の中谷元衆院議員(高知2区)は「すぐ解散するよりマシだ。多少、重要法案のことを勘案したのだろう」。都議選で与党が惨敗した直後だけに「これだけは成立させなくてはならない。急がなければ」と話した。>
 ところが民主党の方が上手で、内閣不信任案否決、問責決議案可決で審議拒否というのだから、もう特措法案も駄目だ。
 <23人の全候補者が当選した公明党の選対委員長、高木陽介衆院議員は朝の情報番組出演後「自公の過半数割れは大変厳しい結果だが、党の政策は評価された。自公体制にノーということではない」と話していた。その後、午後1時前、8月30日衆院選を伝えるテレビでテロップを見たが「まだ確認できていない。確かなことがわからなければコメントもできない」と話していた。>
 本質とは関係のない、いわゆる雑観記事でした。

◆毎日新聞

 似たような記事は毎日新聞にもあった。<衆院選/勢いづく民主/21日にも解散>のタイトルだ。
 <民主が圧勝し、自民が惨敗した東京都議選から一夜明けた13日、麻生太郎首相は21日の週に衆院を解散し、来月30日に投開票とする選挙日程を決めた。「変化を求める国民の意思表示だ」。衆院選の前哨戦とされた攻防の結果は明と暗に分かれ、政権選択の本番を前に民主は勢いづき、自民は早急の立て直しを迫られそうだ。>
 ワンパターンだな。
 <民主現職の石関貴史氏(比例北関東)は、やや間を置いての解散について「何の展望もなく単なる延命のための解散。一日も早くすべきだったのに、国会議員のひとりとして国民に申し訳ない。民主党としては、都議選の結果を踏まえ、不信任決議案を国会に提出すべきだ」と批判した。投開票日が8月30日とされたことについて細野豪志氏(静岡5区)は「とりあえず日程が決まったことは良かった」と話した。8月8日前後という一部の予測よりずれ込んだが「投票日まで長くて大変だけど、多くの人に主張を訴えかけるチャンスがあると思いたい」と前向きに語った。川内博史氏(比例九州)は都議選や静岡県知事選での自民の敗北を「政治を変えるのだという有権者の意思の表明」と指摘。「総理も自民党も『もうしょうがないよね』という状況で解散に追い込まれたのだろう」と述べた。長島昭久氏(比例東京)は「(都議選で)国民が変化を望んでいることが明白になった。衆院選はさらに投票率が上がると思う。民主党政権が行う政治を、財源を含めてはっきりと説明できれば、無党派層の多くを取り込める」と展望を語った。一方で「『民主に勝たせすぎた』という印象が広がる可能性もある」と党内引き締めの必要性にも触れた。>
 「勝たせ過ぎ」はないだろう。
 <前回落選の山花郁夫氏は東京22区での雪辱を目指す。「自民党は『国政選挙と地方選挙は違う』と主張しているが、都議選の勝利は国民が現状への不満をぶつけた結果だ」と国政復帰への手応えを語った。静岡1区から出馬予定の前職、牧野聖修氏は「(民主の)各候補者の得票数も圧倒的だった。この流れは『風』ではなく『潮流』だ。鳩山(由紀夫)代表の献金問題で止まるようなものではない」と断言。「知事選のお礼を言いながら街頭で演説していると『次は自分(牧野氏)の番だから頑張れ』という声をかけてもらえる」と語った。宮城1区から出馬予定の郡和子氏は「政権を延命させても、自民党に未来はない。はっきり下野してもらうべきだ。都議選の結果が衆院選にもたらす影響は大きい」と話した。>
 まあ、いろいろな人の話を聞いてきたのはいいことだ。
 <一方の自民。笹川尭総務会長は「総理から7月20日の週に解散して8月30日投開票がベストだという発言があった。総理が意思を示したことで、党内の『麻生降ろし』の声はなくなるだろう」と話した。平将明氏(東京4区)は「展望のないなかで解散するとは思わず驚いている。党全体の衆院選の結果を大変心配している。これから党内で何ができるか分からないが、マニフェストには我々の主張を盛り込んでいきたい」と話した。石原宏高氏(東京3区)は「解散時期や党役員人事などを巡るこれまでの麻生首相の迷走が(都議選)に影響した。『親民主』というより『反自民』の票が多かったことを認識しなくてはいけない」と厳しく分析した。>
 民主党議員の声の後は自民党議員ですか。まあ、そんなものだろう。
 公明党が総力を出し切って全員当選させたのは見事だった。投票率が上がったから、どこか取りこぼすかな、と思ったが、取りこぼさなかった。
 あおりを食ったのが共産党だった。志位和夫委員長の国会質問やプレカリアートたちの応援も空しかった。投票率アップの直撃を受けたのは公明党ではなく、共産党だった。

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臓器移植法改正A案が成立=解散前の異常な議員心理が原因だと~朝日新聞、読売新聞、毎日新聞ウェブ版から

 参院は選挙前のバタバタで良識を欠いてしまったようだ。臓器移植法が衆院通過と同じA案で成立してしまった。どうなるか、日本社会のアレルギーが今後噴出してくるのではないか、と想像している。
 読売新聞のネットHPは<脳死は「人の死」、改正臓器移植法が成立>で次のように報じた。
 <臓器移植法の改正をめぐり、脳死を「人の死」とすることを前提に臓器提供の年齢制限を撤廃する改正臓器移植法(A案)が13日午後、参院本会議で賛成多数で可決、成立した。>
 という前文。本来ならば1面トップだろうが、衆院解散日程が決まったために、これは各紙夕刊で1面2番手扱いになるだろう。
 <1997年に成立した現行法下では禁じられている15歳未満からの臓器提供に道が開かれることとなった。改正法は公布から1年後に施行される。採決は押しボタン方式で行われ、A案の投票結果は、賛成138、反対82だった。共産党を除く各党は党議拘束をかけず、各議員が個人の判断で投票した。>
 この票差は何なんだろう? 参院でも河野太郎氏が多数派工作をしたのだろうか?
 <改正法は「脳死は人の死」とする考えが「おおむね社会的に受容されている」との認識に立ち、臓器を提供する場合に限って脳死を人の死としている現行法の考え方を大きく変更するものだ。>
 社会的に受容されている、とは言えないのに。
 <現行では意思表示カードなど生前に本人が書面で同意していることを臓器提供の条件としているが、改正法は、本人の意思が明確でない場合は、家族の承諾により臓器提供ができる。また、現行制度は意思表示が可能な年齢を15歳以上としているが、改正法は意思表示を臓器提供の絶対的な条件に設定していないため、15歳未満でも家族の同意で臓器提供ができる。>
 この辺はどうでもいいのだ。
 <現行法が成立した1997年以降、国内での脳死臓器移植は81例だが、日本移植学会や患者団体などは、書面による本人の意思表示を求める臓器提供条件と、年齢制限によって、脳死臓器移植の機会が大きく狭められているとして法改正を求めていた。>
 これは経過説明部分。
 <臓器提供条件の緩和のほか、書面により親族への臓器の優先提供の意思を表示することができる規定も盛り込んだ。>
 これはどういう問題を生むのだろうか?
 <この日の参院本会議では改正法に先だって、改正法の骨格を維持しながら、脳死を現行法通り臓器移植時に限り「人の死」とする修正案が採決されたが、反対多数で否決された。またA案の対案として参院野党有志が提出した「子ども脳死臨調設置法案」は、先に採決された改正法が過半数の支持を得たため、採決されずに廃案となった。>
 修正案は否決されたのか。どうなっているのだろう?
◆朝日新聞
 朝日新聞も<「脳死は人の死」臓器移植法成立/A案、参院でも可決>のタイトルでネットにアップしていた。
 <「脳死は人の死」を前提に、本人の意思が不明な場合でも家族の承諾で0歳からの臓器提供を可能にする改正臓器移植法(A案)が13日、参院本会議で可決、成立した。施行は公布から1年後。現行法は臓器移植の場合に限って脳死を人の死と認めており、死の定義を大きく変えるとの懸念もある。1997年の同法制定後、改正は初めて。>
 という前文だ。
 <参院議員は現在241人。採決は押しボタン投票で行われ、欠席・棄権を除いたA案の投票総数は220(過半数111)、賛成138、反対82だった。野党有志が提出した子ども脳死臨調設置法案に賛成の共産党はA案に反対。他の主要政党は個人の死生観にかかわるとして党議拘束をかけずに採決に臨んだ。>
 過半数の数字などが詳しい。
 <A案に先立ち、「脳死は人の死」を臓器移植の場合に限ることを明記した修正A案も採決されたが、投票総数207、賛成72、反対135で否決された。子ども脳死臨調設置法案はA案成立により採決されないまま廃案となった。>
 この数字が意味するものを後で考えなければならない。
 <A案をめぐっては、「脳死は人の死」と法律で位置づけることが、移植医療以外の分野にどんな影響を与えるのかが議論の焦点となった。宗教団体や、脳死後も心臓が長期間動き続ける「長期脳死」の子どもがいる家族らの反対が根強く、参院では野党を中心に移植要件の緩和に慎重な議員から修正を求める声が相次いだ。>
 そうだったのだ。
 <そんななか、A案が過半数の支持を集めたのは、衆院解散・総選挙も絡んで政局の流動化が予想されることから、今国会での改正実現を優先する議員心理が働いたものとみられる。>
 やはりそうだったのか。国会の不作為を攻められては堪らない、という議員心理だ。
 <A案は2006年3月に中山太郎衆院議員(自民)らが提出した。親族へ臓器を優先的に提供することも認める。脳死からの臓器提供の機会が増えることを望む移植学会や患者団体が支持を働きかけ、衆院では263人(うち自民党が202人)の議員が賛成した。>
 中山太郎氏は確信犯だ。
 <臓器移植法は1997年10月に施行された。脳死からの臓器提供には、本人があらかじめ臓器提供の意思を書面で示し、家族も拒まないことが必要で、15歳未満からの提供は禁止されている。書面による意思表示は進まず、脳死からの臓器提供は12年間で81例にとどまっている。国内で移植を待つ待機患者が解消されない一方、世界保健機関(WHO)が渡航移植を規制する動きを見せたことから、今国会で改正論議が高まった。>
 ということ。
 つまり、衆院解散前の異常な議員心理がこのような結果を生んだ、という分析だった。だから、衆院は仕方ないにしても参院は慎重な審議をしてほしかったのだが。
◆毎日新聞
 毎日新聞のウェブ版も<臓器移植法/参院も「A案」で成立/「脳死は人の死」>というタイトルでアップしていた。鈴木直記者の署名記事だった。
 <臓器移植法改正案は13日午後、参院本会議で採決され、3法案のうち、脳死を一般的な人の死とする「A案」(衆院通過)が賛成138、反対82の賛成多数で可決、成立した。15歳未満の子どもの臓器提供を禁じた現行法の年齢制限を撤廃し、国内での子どもの移植に道を開くとともに、脳死を初めて法律で「人の死」と位置づけた。ただ、死の定義変更には強い慎重論が残る。このため、A案提出者は審議の中で「『脳死は人の死』は、移植医療時に限定される」と答弁し、配慮を示した。>
 答弁でどう言ったって仕方ない。誤魔化しだ。
 <現行法では15歳以上でないと臓器提供ができず、小児が自分のサイズにあう臓器の移植を受けるには渡航するしかない。だが、世界保健機関(WHO)は海外での移植の自粛を求める方向で、将来渡航移植の道が狭められるのは確実だ。1997年の法施行以降、国内の脳死移植は81件にとどまっており、A案は年齢制限の撤廃とともに脳死を人の死とすることで、臓器提供の機会拡大を目指す。>
 ひどい話だ。
 <臓器移植法の改正をめぐっては6月18日、衆院でA案が投票総数の6割の賛成で可決され、参院に送付された。しかし、A案に対し参院側は「移植の拡大は必要だが、死の定義変更には社会的合意がない」と考える議員も多い。このため、与野党の有志はA案を踏襲しつつ、脳死の定義は現行通りとする修正A案を提出した。>
 それだったのに。
 <一方、A案支持の中核議員は「脳死の位置づけを変えたらA案の意味がない」と修正を拒否し、A案派は分裂した。しかし「一般医療で脳死後の治療中止が広がりかねない」といった慎重論には配慮せざるを得ず提出者は新しい死の定義について「臓器移植法の範囲を超えて適用されない」と答弁した。>
 <A案への懸念は、本人の意思が不明でも家族の同意だけで臓器摘出ができる点にもある。臓器摘出後に本人が拒否していたと分かることも否定できない。成人より難しいとされる、子どもの脳死判定も課題となる。>
 脳死判定、どうするつもりなのか?
 <採決は修正A案、A案に続き、現行法の枠組みを残しながら子どもの臓器移植のあり方を1年かけて検討する「子ども脳死臨調設置法案」の順で行う予定だったが、修正A案が賛成72、反対135で否決後、A案が可決されたため、臨調設置法案は採決されなかった。臨調法案に賛成の共産党以外の各党は党議拘束をかけず、各議員が自らの死生観に基づいて投票した。>
 死生観に基づいた投票だったのか、多数派工作が行われたのか?

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7月21日の週に衆院解散→8月18日公示→8月30日総選挙投票だそうだ~産経新聞7月13日ウェブ版

 産経新聞のウェブ版に<首相「解散を決断」/8月30日投開票へ>というフラッシュ記事が載っていた。

 <麻生太郎首相は13日午後、首相官邸で開かれた自民党緊急役員会で衆院を解散する意向を表明した。21日の週に解散し、8月18日公示、30日に投開票する。公明党も了承したが、自民党内には麻生首相の交代を求める「麻生降ろし」の動きあり、なお流動的な要素も残っている。緊急役員会には自民党の細田博之幹事長、古賀誠選挙対策委員長、尾辻秀久参院議員会長らが同席した。平成17年8月の「郵政解散」以来、3年10カ月ぶり。与党の自民、公明両党が過半数を維持するか、民主党を中心とする野党勢力が政権を奪取するかが最大の焦点となる。>

 なるほど、そういうことか。

 <自民、公明両党による連立政権は、安倍晋三元首相、福田康夫前首相、麻生首相と3代続けて衆院選の「洗礼」を受けずに政権運営を続けてきた。衆院選では自民、民主の二大政党がそれぞれ、麻生首相と鳩山由紀夫代表を党の顔にして全国の選挙区、比例代表で激突する。>

 麻生首相のままの解散となるのか。

 <衆院議員の任期は憲法45条で4年と定められているが、戦後23回の衆院選のうち、任期満了に伴う選挙は昭和51(1976)年の三木内閣での1回だけ。残りはいずれも衆院の解散による選挙だった。衆院議員の任期は平成17(2005)年9月11日から21(2009)年9月10日までだった。>

 これは事実関係のお勉強の部分だ。

 <任期満了に近づくほど、政権与党は野党の攻勢で政治的に「追い込まれた解散」となるため、歴代の首相のほとんどが時期を選べる段階で解散を決断してきた。麻生首相は当初、昨年秋の首相就任直後の解散を模索していたが、世界的な金融危機の影響などで解散を断行できず、その後の内閣支持率低迷もあり、戦後2回目となる「任期満了」も取りざたされていた。>

 これは最近の経緯だ。

 <だが、麻生首相は景気対策の平成21年度補正予算案や今国会に提出していた重要法案の審議に区切りがついたことから9月10日の任期満了を待たずに解散に踏み切った。>

 臓器移植法が成立したことも大きかったのか。A案で成立するとは思わなかったが、結局、成立してしまった。どうしてなのか? 13日夕刊各紙をあとでじっくり読んでみよう。船舶検査法案は結局だめなのか。

 <衆院選は平成8(1996)年に導入された「小選挙区比例代表並立制」で行われる。同制度での衆院選は5回目。300の選挙区(定数1)と、全国11ブロックに分かれた比例代表(180議席)の計480議席を与野党が争う。有権者は選挙区では候補者名を、比例代表では政党名を書いて投票する。比例代表はブロックごとにドント方式により政党の得票数に応じて議席が配分され、各党の名簿順位で当選者が決まる。政党要件を満たした政党は、選挙区の候補者も比例代表に重複立候補できるため、選挙区で落選しても比例代表で「復活当選」できる。>

 これも現行選挙制度の説明だ。

 まあ、ニュースは7月21日の週の解散、8月18日公示、8月30日投票がほぼ決まった、ということだろう。

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麻生案「7月14日解散→8月8日投票」VS中川秀直・公明党「会期末解散→8月30日か9月6日投票」熾烈なバトル~読売新聞、日経新聞7月13日朝刊

 東京都議会選挙は7月12日投票、即日開票され、自民・公明の与党の惨敗となった。NHKテレビで開票速報を見続けたが、さすが国民のNHK、すべての投票所で出口調査を実施して、随分早くから出口調査による当落予測を流していた。そtれを見てビックリしたのは民主党がダントツで抜け出ていること。小沢一郎氏の差し金だと思うが、最後の最後で候補者を4人に増やしたり、という努力がピタリと当たり、大勝に結びついた。
 驚いたのが千代田区だった。衆院では1区。与謝野馨氏と海江田万里氏の激突で最近は与謝野氏が連勝している選挙区である。千代田区民に浸透していた自民党の現職候補が3週間前に立候補宣言した26歳の民主党信心に176票差で敗れる大波乱が起きた。9872票対9696票である。
 麻生太郎首相の責任問題が自民党内で持ち上がるのも致し方ない情勢となってきた。
 7月13日朝刊は各紙、1面で麻生太郎首相がどうなるか、見通し記事を出していたが、見事に見方が割れた。読売新聞は<民主圧勝 都議会第1党/首相 週内解散を決意/民主きょうにも不信任案>で次のような記事にまとめ上げていた。
 <東京都議選(定数127)は12日、投開票が行われた。民主党は、前回獲得した35議席を大きく上回る54議席となり初の都議会第1党となった。自民党は過去最低の38議席にとどまる惨敗で「石原都知事与党」でもある自民、公明両党は勝敗ラインとしていた過半数(64議席)を維持できなかった。都議選と国政は直接関係しないと主張してきた麻生首相(自民党総裁)は党内の「麻生降ろし」を封じる狙いから、週内にも衆院を解散する決意を固めた。だが、党内の反発は必至で、攻防が激化しそうだ。>
 という前文だ。そして、
 <麻生首相は12日、東京都議選を踏まえ、衆院を早期に解散する意向を固め、自民党幹部に伝えた。14日にも解散に踏み切る構えだ。静岡県知事選に続き、都議選、奈良市長選も敗れたが、時間を置くと党内の首相退陣論が強まるとみて決断したものだ。党内からは一連の敗北の責任をとって退陣すべきだとの声が噴出しており、政局は一気に緊迫の度を増している。>
 解散は14日にも、という。「にも」が付いているとはいえ、これは読売新聞記者が総統の確度で麻生太郎首相の口から「14日」という日付が出たという情報をキャッチし、薄めて書いているのだろう、と思う。そうでなければ1面トップでここまでは書けない。
 <首相は12日、首相公邸で都議選情勢の報告を受ける一方、自民党の複数の実力者と電話で連絡。衆院解散に向け、理解と協力を求めたと見られる。13日にも公明党の太田代表と党首会談を行いたい考えだ。河村官房長官と自民党の細田幹事長は12日夜、都内のホテルで会談し「都議選に首相の責任はない。解散は首相に一任する」との考えで一致。週内解散の場合、投開票日は8月8日が有力だ。>
 7月14日解散の場合、8月8日投票なのか。暑いだろうなぁ。しかし、逆に言えば公明党との約束を守って衆院解散を都議選と切り離した、とも言えるわけだから、公明党・創価学会にすれば、自民党に協力するしかないだろう。ここで民主党との連立政権を視野に入れて変な行動をしては、学会の信者が怒るだろう、と思う。
 <首相は12日夜、河村長官に電話で「都議選と国政と直接関係はない。責任を全うする。解散に向け、閣内をまとめてほしい」との意向を伝えた。民主党が、臓器移植法改正案の参院本会議採決がある13日に衆院に内閣不信任決議案、参院に首相問責決議案を提出する構えで、衆院本会議が開かれる見通しの14日にもこれらを理由に解散する可能性がある。>
 そういう政治日程なのか。臓器移植法案は一応採決はする。しかし、A案は反対多数で否決される、というところまで持って行って廃案の方が確かに国会の責務を全うしたことにはなると思う。
 <しかし、自民党内では解散は今国会会期末にすべきだとの声が強い。組織を挙げて都議選に臨んだ公明党は衆院の投開票日をできるだけ遅くしたい立場だ。衆院解散には閣僚の署名が必要で、週内の解散には閣僚が署名を拒否する事態も予想され、ハードルは高い。>
 オイオイ、閣僚の署名拒否ですか? 海部政権を思い出すなぁ。小沢一郎自民党幹事長に解散を反対され、解散も出来ずに終わってしまった政権だった。こういう場合に強行突破も出来るのだが、閣僚を罷免して、首相が兼任して解散する方法だ。しかし、これも強い首相でないと実際にはやりにくいだろう、と思う。
 <週内解散を見送れば、投開票日は8月30日か9月6日となる公算が大きい。党執行部の一部も解散先送りを模索している。「麻生降ろし」の加速は必至で、自民党内では臨時の両院議員総会開催を要求し、辞任を促す動きもある。中川秀直・元幹事長は12日、広島県東広島市内で「首相は名誉ある、日本の将来を考えた判断をなさると信じる」と自発的退陣を求めた。>
 中川秀直、竹中平蔵、小泉純一郎氏らは麻生太郎首相を引き摺りおろしたくて仕方ないのだろうなぁ。
 <今後は派閥領袖や首相の後ろ盾とされる森元首相らの対応が焦点となる。伊吹派会長の伊吹文明・元幹事長は12日夜、麻生首相による解散について記者団に「あたりまえだ」と語り、容認する考えを示した。>
 見出しに惑わされずに読むと、相当に客観的に書いていることが分かる。
 つまり、麻生首相は14日の衆院解散を狙っているのだが、自民党内では反対が強く、特に小泉元首相支持勢力は麻生首相の首のすげ替えを行ってからの解散を考えている、ということだ。
 この見方は日経新聞7月13日朝刊1面4段<首相、解散の構え崩さず/自民内は先送り論が大勢>も同じだった。
 日経新聞で目新しいのは、次の点か。
 <公明党の北側一雄幹事長は13日未明の記者会見で首相退陣論について「首相自身が結果をどう受け止めるかだ」と突き放した。解散時期に関しては「立て直しの余裕が必要かもしれない」と先送りを求めた。>
 つまり、都議選で創価学会員が疲弊しているため、公明党としては早期解散ではなく、少しでも遅い衆院解散を望んでいるのだ、というメッセージだ。
 また、
 <自民党の石原伸晃幹事長代理は12日夜のNHK番組で「(解散先送りで)一息つかしてほしい」と述べた。菅義偉選対副委員長は記者団に「投開票日は8月の月遅れ盆以降がいい」と語った。>
 とあり、中川秀直元幹事長の「首相は名誉ある決断をすべきだ」発言と、それに対する首相周辺の反発も書いていた。
 7月13日午前11時の記者会見で河村官房長官は「解散時期は首相が判断する」としか言わなかった。
 今、解散時期を巡って自民党内の権力闘争は熾烈を極めているのだが、麻生降ろしをしている面々は、それでは一体誰を後継に考えているのだろうか?

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都議選投票率の歴史~7月13日未明の朝日新聞、読売新聞HPから

 みんな面白がって投票に行ったんだなぁ。都議選の投票率が高かったんだってさ。7月12日夜から13日未明にかけての各紙のインターネット・ホームページにアップされた記事を眺めていたら、そんな記事が目に付いた。朝日新聞HPには<都議選の投票率は54.49%、10㌽超す伸び>という記事だ。
 <12日に投開票された東京都議選の確定投票率は54.49%で、前回投票率43.99%を10.50㌽上回った。政権交代が焦点となる衆院選の前哨戦となり、有権者の関心が高まったためとみられる。>
 という前文。
 <都議選の投票率は1959年の70.13%が最も高かった。議長選をめぐる汚職事件に伴う「黒い霧解散」を受け、1965年の都議選以降は統一地方選と時期がずれた。有権者の投票意識の低下もあり、投票率は低下傾向にある。>
 1959年つまり昭和34年というのは60年安保の前の年だ。今の天皇はが皇太子明仁だった昭和34年4月10日、正田美智子さんと結婚式を挙げた。美智子皇后である。今年、金婚のお祝いを同じ金婚の夫婦を皇居に招いて行ったが、あの当時の日本国民の熱狂は雅子さまの結婚どころではなかった。
 東京都の選挙はまだ統一地方選挙に入っており、都知事選も一緒に行われた。というか、都知事選が本命で、都議会は付録だった。安井誠一郎都知事が国政に転出したくて仕方ないのに3期もやらされて、3期目はもうやる気がなく、都庁の役人も腐敗し切っていた。自民党は60年安保を前に東京都知事を革新陣営に取られることだけは避けたかった。自民党は「勝てる候補」選びに入ったが、社会党は「今回は勝てるチャンスだ」と前回の昭和30年の知事選に出馬して負けた有田八郎氏(戦前の外相で元衆院議員)を担いだ。自民党の候補者選びは難航したが、東京オリンピック招致に尽力した東大医学部教授の東竜太郎氏を口説き落とした。昭和39年の東京五輪は東京人の誇りだったし、五輪に間に合わせるために新幹線と高速道路が突貫工事でできあがる。
 この都知事選は与野党激突の選挙となり、自民党の推す東氏が勝った。その時の都議会選挙の投票率が70%以上だったわけだ。都知事選と一緒でなければ、こんなに高くなんてならない。
 そうか。1965年の「黒い霧解散」って衆院解散ではなくて都議会の解散だったのか。これ以降、都議選は6月か7月実施となったわけだ。
 <しかし、国政選挙を控える都議選は投票率が高めになる傾向がある。1989年都議選は参院選の3週間前に実施され58.74%だった。消費税の導入やリクルート事件を受けての選挙だった。1993年都議選も衆院選の3週間前で日本新党ブームを受けて51.43%となり、参院選の前哨戦となった2001年都議選も50.08%だった。>
 1989年の都議選はパリのアルシュ・サミットより前だったかどうか、宇野宗佑首相の女性問題で自民党議員にはものすごい逆風が吹いたと思う。それに消費税、リクルート、農産物の市場開放が加わったのだからたまらない。この傾向が参院選につながり、宇野首相が辞めた。今回はこの58%には届かなかったし、事前投票が多くなったのも今回の特徴なのだろう。
 1993年の都議選は派手なパフォーマンスがうまい細川護煕氏の日本新党が出てきた選挙だ。ここで、どんな人間か全く分からないまま、落下傘候補であっても「日本新党」の候補者であれば投票する(つまり圧倒的ぶっちぎりで当選す)というマジックのようなことをテレビの開票速報で知った。2001年都議選というのは思い出せない。
 <半面、国政選挙がなかった1997年都議選は過去最低の40.80%で、2カ月後の郵政民営化の是非を問う衆院選が予測されなかった2005年都議選は43.99%にとどまった。>
 40%も44%も低いな。
 <今回は各主要政党が迫る衆院選の前哨戦と位置づけ、国政選挙並みの態勢をとった。党首や党幹部が連日、選挙区に入った。与党と野党の対決は石原都政をめぐる対決構図と重なったことも争点を明確にさせた。都選管は「2大政党が争う構図が有権者の関心と期待を高めたのでは」とみている。>
 何か最後の段落は論理的でないな。無理やりつけた蛇足みたいに思えるのだが。過去のことを知らせてくれただけでよかったのに。
◆都議会の新勢力
 朝日新聞の7月13日未明のネットHPには<都議選議席/民54、自38、公23、共8、ネ2、無2>という新勢力分野が載っていた。
 <東京都議会議員選挙(定数127)はすべての選挙区で当選者の顔ぶれが決まった。民主党が第1党に躍進し石原慎太郎知事を支えてきた自民、公明両党は過半数を獲得できなかった。政党別では民主が54議席(現有34議席)、自民が38議席(同48議席)、公明が23議席(同22議席)、共産が8議席(同13議席)、東京・生活者ネットワークが2議席(同4議席)、無所属が2議席(同3議席)だった。>
 あまり興味ないが、127議席の半分は63.5だから64議席が過半数で、自民38+公明23=61議席で3議席足りなかった。民主党は一気に20議席増やしたが、過半数には至っていない。野党が一気に過半数にいくのには普通の常識では考えられないことをしないといけないのだな。民主党は最後の最後に候補者を増やし、そういう人の中からも当選者を出した。風が吹くということはそういうことなのだろう。
◆公明は5連続の候補者全員当選(読売新聞7月13日零時過ぎ)
 <12日に投開票された東京都議選で、公明党は候補者全員の当選を確実にした。前回の当選者数と同じ23人を擁立し5回連続の全員当選を果たした。>
◆都議選敗北、過去の例→国政にも暗雲(読売新聞)
 <東京都議選と国政選挙が近接して行われた過去の例を見ると、都議選の選挙結果が国政選挙の「先行指標」となったケースが多い。都議選で自民党が都議会第1党の座から滑り落ちるのは、社会党に敗れた1965年以来44年ぶり。与野党では過去の例からも今回の厳しい結果がこの後の衆院選に影響を与えるのは避けられないとの見通しが強い。1989年の都議選は自民党が43議席で惨敗。消費税導入やリクルート事件の影響で、社会党が躍進した。続く参院選でも、同党が「マドンナ旋風」を起こし55年体制下で初めて参院で与野党が逆転。宇野首相が退陣に追い込まれた。1993年は6月に衆院で宮沢内閣不信任決議が可決され、衆院の解散直後に都議選が行われた。自民党は前回並みの44議席で苦戦。日本新党が改選前の2議席から20議席に伸ばした。衆院選でも「新党ブーム」は続き、新生党、日本新党、新党さきがけの3新党が計103議席を獲得。自民党は過半数に届かず宮沢首相は退陣し政権交代につながった。2001年の都議選は、同年4月に小泉内閣の発足後、初の大型選挙となり、小泉ブームに乗った自民党が改選前から5議席上積みした。参院選でも同党は改選前を上回る64議席を獲得。与党が過半数を維持した。>
◆自民・都連幹事長、26歳の民主新人に苦杯(読売新聞)
 <「1人区」では、自民の大物議員がバタバタと民主に敗れた。中央区で民主党新人の岡田真理子さん(55)に敗れた立石晴康さん(67)は8期目を目指したベテラン。午後9時過ぎ新富町の事務所で立石さんは「不徳の致すところ。申し訳ない」と疲れた表情で語った。国政の影響があったかを問われても「それは当然……」と言葉少なだった。千代田区では6期連続で議席を守り続けてきた自民党都連幹事長の内田茂さん(70)が約3週間前に立候補表明したばかりの民主、栗下善行さん(26)に苦杯。内田さんは午後10時過ぎ、同区内の事務所に姿を見せ、涙を浮かべる支持者を前に「皆さんの応援があったにもかかわらず大変申し訳ないことをした。責任はすべて私にある」とうつむき加減に話した。>
 この記事は大変面白い。3週間前だよ、3週間前! 風が吹けばベテランだって簡単に落ちてしまうのが都会の選挙だ。

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2009年7月12日 (日)

朝鮮日報は朝日新聞とFT紙の金正雲訪中説を誤報としながら中国政府の秘密主義を批判していた~7月12日朝鮮日報

 朝鮮日報が例の朝日新聞の[金正雲訪中]記事の信憑性問題に割り込んできた。7月12日のコラムで北京支局の朴勝俊(パク・スンジュン)特派員が<朝日新聞とFT(フィナンシャルタイムズ)紙のための言い訳>と題して書いていたのだ。
 読んでみよう。
 <「これほどまでの執着ぶりには尊敬の念すら覚える。しかし、(北朝鮮の金正日総書記の三男・正雲氏が中国を訪問したという)あの報道は、ありもしない事実をでっち上げたものだ、というのがわたしの答えだ。中国語には“走火入魔”という言葉があるのをご存じだろうか」。「走火入魔」とは、気功の修練をしている最中に呼吸の仕方を誤り、精神錯乱状態に陥ることをいう。ありもしないことを「ある」と信じ、本当のことを「ない」と信じてしまう状態を指す。>
 フィナンシャル・タイムズに対して言った秦剛氏の言葉なのか?
 <中国外務省の秦剛報道官は先月30日の定例記者会見で世界的な権威を持つイギリスの経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT)に対し、このような言葉を用いて歯に衣着せぬ批判を繰り広げた。また、日本の有力紙・朝日新聞が先月18日「金正雲氏が6月10日前後に中国を訪問し、同国の指導者らに会った」と報じたのに対し、秦報道官は「(イギリスの小説・映画)『007』みたいな話だ」と皮肉った。その上で秦報道官は「皆さんは前回、わたしの東洋的な含蓄のある表現を理解してくれなかったようだ。この際、窓に張ってある紙を破ろう(はっきりさせようの意)。報道された事実は存在しない」と述べた。> 「窓に張ってある紙を破ろう」というのは奥ゆかしい表現だなぁ。
 <世界の有力紙と中国外務省の報道官の間で繰り広げられている口論は、われわれに苦々しい思いをさせている。たとえ世界的な権威を持つ新聞であっても、誤報を出す可能性がないわけではない。また、北朝鮮の問題に関し、北京を未確認情報が飛び交う「うわさだらけの都市」にしてしまった責任は中国政府にある。金総書記という一国の最高指導者が中国を訪問しても発表すらせず、また韓国や日本のメディアによる追跡取材で訪中の事実が明らかになったことも1度や2度ではない。>
 中国政府の秘密主義が誤報の背景にあるのだ、と、これは中国政府批判なのか。
 <中国外務省は「中国と北朝鮮は正常な2国間関係だ」とオウムのように繰り返しているが、実際には正常とはいえないという点が重要だ。>
 「正常な2国間関係」というのはどういう意味なのだろうか?
 <中国は「韓半島(朝鮮半島)の非核化はわが国の一貫した政策だ」と主張しながら、北朝鮮が核実験を2度も行ったのに対し怒りを見せることもない。また、北朝鮮に対する制裁措置を講じようとしている世界の国々の足を引っ張っているのもまた中国だ。一方、金総書記は中国の特使が平壌を訪れるたび「朝鮮半島の非核化は故・金日成主席の遺訓だ」と言いながら核実験をやってのけた。>
 これは、その通りだ。日本と韓国には中国政府への怒りが渦巻いているのではないか、とも思うのだが、そうでもないか。
 <北朝鮮だけが中国の周辺国ではない。中国と国境を接する国はベトナム、ミャンマー、パキスタン、インドなど10カ国以上もある。これらの国と中国はおおむね正常な2国間関係を維持している。しかし北朝鮮とだけは、ベールに包まれた部分が多い、内縁関係のような状態にある。そんな中国と北朝鮮が取っている行動は、一定期間が過ぎた後になって、ようやく実情が明らかになることがある。>
 おかしい関係なのだ。内縁関係とはうまい表現だなぁ。
 <1994年、金日成主席が死去した直後、長男の金総書記が権力を引き継ぐ上で中国が決定的な役割を果たしたのがその例だ。当時、米国も日本も、そして韓国も実情を十分に把握していなかったが、中国は、最高指導者の 鄧小平氏(故人)や江沢民国家主席、李鵬首相が送った弔電で「わが国は朝鮮人民が金正日氏を首班とする朝鮮労働党を中心に団結することを望む」と伝えていた。>
 中国が自分の傀儡政権を承認したということなのか。
 <朝日新聞やFT紙が報じた金正雲氏の訪中説は誤報である可能性が高い。だが、朝日新聞の報道に対し、中国外務省の報道官が「『007』みたいだ」と主張したにもかかわらず、その後FT紙が大々的に報じたのは「中国政府はうそつきだ」という判断が背景にあったためだと考えられる。中国政府が北朝鮮と、正常とはいえない「内縁関係」を維持しつつ、しかるべき発表をしてこなかったがために、朝日新聞が「小説」を書き、FT紙が「走火入魔」の状態に陥ったのだ。世界的な権威を持つ新聞が誤報を出すようなことはあってはならないことだが、両紙に対し同情の念を禁じ得ないのは、こうした理由があるためだ。>
 なるほど、そういうことか。つまり、朝鮮日報の記者はいろいろと裏を取って、金正雲は訪中していなかった、と確信したのだろう。あれは誤報だったのだろうか?

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鳩山民主党政権の統治機構原案は粗削りだが、思想は分かる~7月11日朝日新聞、12日読売新聞朝刊

 読売新聞7月12日朝刊1面3段<首相直属「国家戦略局」/民主政権構想/縦割り打破へ「閣僚委」>で民主党政権ができた際の政府与党の権力機構の素案を書いていた。

 <民主党の政権獲得後の政府の機構改革案が11日、明らかになった。国家の将来構想や予算の骨格を策定する首相直属の「国家戦略局」や少人数の閣僚による「閣僚委員会」を設け、政治主導の強化を目指す内容だ。鳩山代表がまとめたもので次期衆院選の政権公約(マニフェスト)に盛り込む方針だ。>

 という前文。7月10日午後5時から日本記者クラブで行われた記者会見で鳩山由紀夫代表がざっくりした形で明らかにした案を事務局などで補強して記事にしたものだ。

 <国家戦略局は首相官邸に置き、各省庁に加えて民間からもスタッフを登用する。外交を含めた国家戦略を策定するほか、財務省が行う予算編成の前段階として国家戦略に沿った予算の骨格をまとめる。機能が重複する経済財政諮問会議は廃止する。>

 橋本龍太郎政権が省庁再編の際に新設し、小泉純一郎首相時代に大蔵省(財務省)支配から脱却する手段としてフル活用した経済財政諮問会議を廃止し、その代わりに国家戦略局を作る、という案だ。

 <一方、閣僚委員会は、各省の縦割りによる弊害を打破するため、政策ごとに関係閣僚が少人数で議論する仕組みで、英国がモデルとなっている。現在の次官会議は廃止はしないが、「閣議の事前調整としての会議は行わない」とし、機能を見直す考えだ。>

 菅直人氏をトップとする英国視察団が「こんなのいいなぁ」と言ったとか、事務次官会議を廃止しない、というのが最初から敗北主義に見えるのだが。

 <行政全般を見直し、ムダや不正を洗い出す「行政刷新会議」も創設する。すべての予算や制度を精査し、各省庁に是正を求める役割を担う。>

 これなんか、国家戦略局とどう役割分担するのか、実際に走り始めたらイシューがほとんど重なるから権限争いとかでやりにくいだろうなぁ。

 <このほか、与党が政策決定の過程に大きく関与する現在の仕組みを改める方針だ。与党の政務調査会を廃止する一方、閣僚、副大臣、政務官の「政務三役」のほか、大臣補佐官として国会議員100人余りを政府内に配置する。>

 民主党の国会議員はほとんどどこかの省庁で役人になるのか?

 <各省では政務三役が政策立案・決定にあたることとし、政策は国会議員が主導して内閣で一元的に決めることを目指す。>

 そう言っているのだが、どうもイメージがわかない。今までの日本の役所は局長になると一丁上がりで、実際に仕事をするのは課長だ。それをどうするのか? 課長がやる気をなくしたら、日本の役所は動かないのではないか。政策を作る、というが、行政の機微を知らずに政策を作れるのか? 様々な疑問が湧いてくる。

◆朝日新聞7月11日の記事は1面トップだった

 朝日新聞は7月11日朝刊1面トップで鳩山会見を扱った。見出しは<官邸強化へ「国家戦略局」/無駄削る「行政刷新会議」/鳩山民主が政権構想>。都議選前に民主党を応援して景気づけしようという狙いがみえみえ過ぎて少ししらけるが、読んでみよう。

 <民主党の鳩山代表がまとめた、政権をとった場合の統治機構改革を示した「政権構想」が10日、明らかになった。政治主導の政策決定を行うために「閣僚委員会」を設け、各大臣の連携を強める。また予算の骨格を決める首相直属の「国家戦略局」や、行政全般を見直す「行政刷新会議」を新たにつくる。総選挙のマニフェスト(政権公約)にも盛り込み、自公政権との違いをアピールする考えだ。ただ、多くは法律の改正が必要となるため、実現の時期ははっきりしない。>

 こっちの方が現実的に書いている。法律改正が必要である、という点だ。

 <構想では政治主導の実現や政府・与党から内閣への政策決定一元化といった原則を提示。具体策では、官僚から主導権を奪う試みを盛った。>

 これは統治機構改革の狙いだ。鳩山代表は10日の記者会見では、政権運営を行う際の三つの原則として、①官僚丸投げの政治から政権党が責任を持つ政治への変化(脱官僚依存)②政府と与党を使い分ける二元体制から内閣の下での一元体制へ③各省の縦割り、省益政治から官邸主導の国益を追求する政治への変化――をあげていた。

 <各省の縦割り排除のため「国家戦略局」を首相官邸に新設。「官民の優秀な人材を集結し、国家ビジョンや政治主導で予算の骨格などを策定する」とし、予算編成機能を財務省から官邸に集中する。閣議が官僚のおぜん立てに沿って形式的に案件に署名する場となっているため、各大臣が活発に意見を交わせる「閣僚委員会」を活用し、「政治家自ら困難な課題を調整する」とした。また、閣議の案件を決める事務次官会議についても「閣議の事前調整会議としての事務次官会議は行わない」と明記。事務次官会議が閣議に対して影響を及ぼさないようにする姿勢を鮮明にした。さらに「行政刷新会議」を置き、すべての予算や制度を精査して無駄や不正を排除する。政府に大臣、副大臣、政務官(政務三役)、大臣補佐官ら国会議員100人を送り込み、各省では「政務三役」が政策立案・決定にあたる。>

 これは読売新聞と同じ内容。というか、朝日新聞の記事の方が丸一日早く載っているのだが。

 <鳩山氏は10日、日本記者クラブでの会見で、政治主導で取り組む課題として年金記録問題の解決を挙げ、「2年間でやり遂げるという目標を立てて行動していきたい」と表明。総選挙後の円滑な政権移行のため、危機管理のための「与野党協議会」設置を自民、公明両党に呼びかける考えを明らかにした。>

 と、以上が全文だ。まだまだ具体的な部分は不明だ。

 鳩山由紀夫代表の日本記者クラブの記者会見では社会保障予算の毎年2500億円削減という「骨太の方針」の約束は撤廃する、と明言していた。医師不足、看護士不足で各地方が困っている時に、2500億円減らせない、という。後期高齢者医療制度も廃止する、と明言した。この制度、評判は悪いが、病院の待合室を老人ホームの談話室がわりにしていた一時期の高福祉社会の反省から導入したものだった。

 前にも書いたが、リハビリの強制廃止など非人間的な行為を伴ったため、廃止もやむを得ないかもしれないとは思うものの、金持ち老人からお金を貧乏若年層に移すという世代間資金移転の仕組みをうまく作らないと、いずれ若者の中から「老人は恵まれすぎている」という怨嗟の声が出てくるのではないか、と懸念する。

 鳩山氏は年金について「消えた年金」「宙に浮いた年金」などの問題解決は2年間で遣り遂げる、とこれも明言し、「その先には年金の一元化を行いたい」と言っていた。例の民主党案である。一律7万円の最低保障年金はみなさんにあげます。あとは+アルファ部分だ、という案だ。

 しかし、移行期間が長くかかるのと、厚生年金の人たちに掛け金が本当に戻るのか、という懸念を抱かせる案でもある。介護保険は4万円アップを期限をつけずにやる、という。大盤振る舞いだ。それに高校教育の無償化と大学にいきたい人には奨学金を出す、と。一つひとつの政策はいいのだが、何か夢物語のように聞こえるのは「国民の痛み」である増税政策に触れなかったからだろう。

 記者から財源について聞かれると、無駄を排除すればできる、と言い、今、民主党は事業仕分けを「しており、一部の調査結果が出てきたが、その中で26%の削減が可能だ、ということだった、と言っていた。「あくまで一部の調査ですが」と強調していたが、国の総支出207兆円の中から絶対に減らせない社会保障関連費用や国際償還費などを除いた70兆円を対象に見直しており、十数%は削減可能というのが民主党の見方だ、と言っていた。「1年で全部出るとは思わないが、2、3年努力すれば出てくる」といい、「徹底的に無駄遣いを廃止する。政権を取って4年間は行政改革をして、しっかり事業仕分けをして、財政を作り直していく」と決意表明し、それ以上細かいことは言えない、と言う。まあ、野党だから仕方ない面もあるものの、消費税増税は是非ものだと思うのだが。土井たか子社会党が1989年の参院選挙で竹下政権の消費税導入を「弱者いじめ」と批判して大勝し、「山が動いた」と勝利宣言した時点で消費税悪者イメージが国民意識の中に定着してしまった。これからの責任ある政治家は大変だ。

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ポール・ケネディ氏の「国家の復権」論はその通りだが、ウエストファリア体制の再現ではないはずだ~7月12日読売新聞朝刊[地球を読む]から

 読売新聞7月12日朝刊1面コラム[地球を読む]は英歴史家のポール・ケネディ氏の<国家の復権/中央政府の役割増大/テロ、金融危機の帰結>。グローバル資本主義の進展でいかにも国家という行動主体が後景に退き、国際金融資本が世界を支配しているかのような論が世界を席巻していたが、9.11とリーマンショックでそのメッキが剥げ、本来の権力主体である国家がまた権力をギラギラさせながら戻ってきた。これは戻ってきたのではなく、もともとそうだったのだが、勘違いをしていた人々が間違った概念を宣伝していただけだったのだ、という国家主体戦略論の勝利宣言のように読める。

 しかし、今の国家や国家間関係はポール・ケネディ氏が言うように500年前にできあがった国民国家、つまりウエストファリア体制の国家ではないのではないか? 当時は民主主義という概念はなかったから、王様が決めれば何でも決まっていた。今は国家とか中央政府がその王様の代わりを果たそうとしてはいるが、すべてを決めるわけには行かなくなっている。

 その原因が高度情報化され、地球が狭くなっており、世論という新しいファクターが政治権力を半分支配している、という変化ではないか、と思うのだ。

 中国ですらそうだ。中華人民共和国の建国以来、その政府のイデオロギーの正統性を担保してきたのは経済成長(中華民国や清時代より豊かになったという実感)と阿片戦争以来侵食され続けた領土の回復というナショナリズムだったことは通説になっている。毛沢東時代はこのイデオロギーの正統性に疑問が起きなかったため、ナショナリズムを使わずとも支配が出来た。だから、毛沢東も周恩来も「日本人民も日本軍国主義の被害者。賠償は求めない」と言い切っても国民の反発を受けることなく、対外関係を上手に仕切っていけたのだった。しかし、情報化が進み、米国や日本に留学した学生たちが欧米先進国の民主主義を知って以降は「民主」政治が求められるようになり、1989年の天安門事件は学生の運動に過ぎなかったものの、この運動に大衆が参加したら共産党政権で収拾できなくなる、という危機感から弾圧をした。しかし、予想外に欧米からの反発が強く、鄧小平は挫折する。江沢民の中国は共産党への求心力を高めるため、愛国教育を徹底した。共産主義教育だけでは統治ができなくなった時にでてきたのは、ナショナリズムに訴える「愛国教育」だった。そして、そのターゲットになったのが香港などを植民地にした英国、ポルトガルなどではなく、ましてや朝鮮戦争で戦った米国でもなく、遅れて近代史に登場して中国を侵略、敗戦した日本だった、という歴史的事実も広く共有されている通りだ。

 ところが、この「愛国教育」=反日教育が行き過ぎたため、民衆の反日暴動が起きるようになり、中国にとって最大に重要視している日中経済関係にまで影響するようになり、共産党政府は反日の扱いに困り抜いているのが現状だ。

 つまり、中国ですら「世論」に左右される政治になっている。

 ポール・ケネディ氏は「国家」「中央政府」の内情について言及しているわけではないので、ここに書いたことはケネディ氏への反論ではないのだが、ケネディ氏がウエストファリア体制という形で国家間関係を見ようとすると、その有効性には限界があることを認識してほしい、という願いがあるだけだ。

 ケネディ氏が書いている通り、一時は国家が霞み、投資銀行やベンチャー投資家や自由放任主義の経済専門家たちがいかにも世界を支配しているように振る舞っていたし、「大きな政府」は過去のものという論が席巻していた。

 テロとの戦争、つまり非国家主体による攻撃行動に対し、米国を中心とする国々があらゆる種類の治安措置を取り、共同行動で押さえつけようとしたもので、主体は国連という「世界国家」ではなく、有力な国家の連合だった。

 投資ファンドなどはリーマンショック以来、立ち直れない程の傷を受け、後始末を各国政府に任せざるをえなくなった。地球規模の大金融機関ですら今や政府の金融規制の中で踊らざるを得なくなったことも事実である。

 <要するに、国家が舞台の中央に戻ったのである。ほとんどの諸国で、国内総生産における政府部門の比率が急上昇している。政府支出と国家債務も同様である。すべての道は各国の議会に、中国の場合は中国人民銀行につながっているように見える。市場は金利の変更や米ドルの強さの再評価に関する本の少しの兆候にも不安げに目を凝らしている。>

 として、

 <権力の手綱を握っているのは政治的指導者である。>

 と結論付けている。それはそうだ。だがしかし、という面を強く出すのかどうか……。世界同時不況後の世界の秩序はまだ見えてきていないのではないか。

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2009年7月11日 (土)

北朝鮮軍30万人が脱北者を監視・狙撃。中国に脱北者強制送還をやめさせろ、と姜哲煥記者~朝鮮日報7月11日、産経新聞7月12日

 朝鮮日報日本語版7月11日のコラム<金総書記が本当に恐れていること>は政治部の姜哲煥記者の記事だ。北朝鮮政府が韓流ドラマを見た北朝鮮の国民を処刑している、と書いてある。「韓流ドラマとの戦争」というキャッチフレーズは韓国の読者にとってはすんなり頭に入るのだろうか? 何か日本人には「考えオチ」のようでもあるのだが。

 知らなかったが、姜哲煥記者は有名な脱北者で北朝鮮の内情にものすごく詳しい人だそうだ。

 コラムを読もう。

 <北朝鮮の核実験とミサイル発射以降、国連レベルでの対北朝鮮制裁が本格化している。北朝鮮の船舶「カンナム号」は米国の追跡により結局北朝鮮に引き返し、マレーシアにある北朝鮮の海外口座に対する封鎖措置も可視化している。だが、こうした対外的な圧力が相次いでいるのにもかかわらず、金正日政権の挑発は続いている。それどころか、彼らは国際社会の制裁に対し「そんな圧力にはびくともしない」とばかにした態度を貫いている。>

 馬鹿にしているのかどうか、表面上はそう装っているのは確かだ。

 <北朝鮮の言う通り、今の米国や国連の対北制裁は、金正日政権に大した圧力にはなっていない。米国は2005年、マカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)に対する金融制裁で北朝鮮の息の根を止めにかかったが、2007年に北朝鮮の策略にはまり、何も解決しないまま先に制裁を解除するに至った。すでに北朝鮮は金融制裁に対する備えを済ませている状態で、効果のない金融制裁では金総書記に圧力を加えることはできない。それに、海上封鎖により北朝鮮の船舶を何隻調べたとしても、北朝鮮がそれによって圧力を受けることもない。>

 そうなのだ。今回の船舶検査は効き目はないのだ。

 <「孫子の兵法」に「知彼知己」という言葉がある。「彼(敵)を知り、己を知れば百戦あやうからず」という意味だ。北朝鮮はサイバーテロ部隊まで結成し、敵の内部を撹乱しているのにもかかわらず、韓国は金総書記に圧力を加えられる的確な「アキレスけん」を見出すこともできない。北朝鮮に対し国際社会が加えられる圧力は、わたしたちが考えているような、とてつもなく大きなものではない。今、金総書記が最も恐れているのは、外部(韓米日)の敵ではなく、内部(国内)の敵だ。内部の敵対勢力が大きくなり、人民が変化することを一番恐れている。>

 そうなんだろうなぁ。国内の民衆が本当のことを知ったら殺されると思っているのだろうなぁ。

 <1990年代中盤以降に相次いだ餓死と脱北による体制崩壊の危機を乗り越えた北朝鮮は、中朝国境を第2戦線と規定し、朝鮮人民軍30万人を配置した。同盟国・中国との国境ということで警戒所だけが置かれていた中朝国境には、鉄条網や人を捕まえるための落とし穴までが設けられた。南北軍事境界線はこの数年間、銃声一つ鳴らないほど静かだが、中朝国境では毎日銃声が鳴り響いている。脱北者を撃ち殺し、腐敗した軍人たちを処罰する朝鮮人民軍保衛司令部の検閲が集中している。「脱北」は生活苦にあえぐ住民たちが選ぶ最後の手段だが、これを阻止することは、体制の維持につながる。>

 中朝国境は大変なことになっているのか。

 <そして、北朝鮮住民に対し韓流ドラマとの戦争を布告、「南朝鮮」の映像物を見た人々を処罰している中国の携帯電話を使った外部との接触を絶つため、国境地域には電波探知機が設置されたラジオを含め外部情報との接触手段を所有していたということで摘発されれば、今後は政治犯と見なされるという。北朝鮮の「アキレスけん」は、脱北と情報の漏えいだ。今や、米国・韓国・日本など国際社会の対北制裁は、実効性のない金融制裁や船舶検査でなく、脱北者の強制送還阻止に焦点を合わせるべきだ現在、韓国に入国している脱北者の数は毎月300人を上回っている。だが、その一方で、北朝鮮に強制送還される脱北者も毎月数千人に達する。>

 そういうことなのか。

 <中国が国際法を破り、脱北者を「違法越境者」(国内法)とひとまとめにして北に強制送還するのは非人道的な措置だ。国際社会は当然、これに関心を払うべきだが、こうした重要な問題は北朝鮮に対し圧力を加える手段の中から除外されている。多くの人々は、始めから「中国に脱北者の強制送還中止を訴えても聞き入れられないだろう」と決めつけているが、それはわたしたちの考えに過ぎない。>

 中国に真剣に働きかけよ、と。

 <これまでの政権はいずれも脱北者送還問題について中国側に強く要求してこなかった中国政府による脱北者の強制送還阻止に、国際社会が力を合わせ、金大中・盧武鉉両政権が金総書記の要求で放棄した国防部の北朝鮮に対する激しい心理戦を再開できれば、それこそ最も効果的な北への圧力政策になるだろう。>

 金大中、盧武鉉両政権の悪がボロボロ出てくる。ひどい政権だったことに韓国民が早く気付けばいいのだが。李明博政権の対北強硬策を日本の政権が全面バックアップし、中国に対して日韓の総合力で政策転換を迫らねばならない。米国も巻き込むことは当然だ。この姜哲煥記者のコラムは忘れていた原点を思いださえせてくれるいい記事だった。

(追記 7月12日)

◆産経新聞の記事は分かりやすかった

 産経新聞7月12日朝刊1面に<中朝国境で毎日銃声/軍30万人監視 脱北者狙撃/民主化リーダー証言/「食糧難」深刻化>という久保田るり子記者の署名記事が掲載されていた。7月11日の朝鮮日報と同じ内容だが、姜哲煥記者について書いてあったので、これもコピペしておこう。

 <韓国の北朝鮮民主化運動の若手リーダー、姜哲煥氏(40)がこのほど来日し、「最近は、中朝国境で毎日のように(北朝鮮側から)銃声が聞こえる」との中朝国境情報を明らかにした。銃声について「朝鮮人民軍の脱北者狙撃や、わいろで越境を見逃す軍人らの公開処刑だ」と証言。姜氏は「金正日(総書記)が恐れているのは北朝鮮住民の大量逃亡による体制の瓦解だ。日米韓は中国に国際法違反の脱北者を強制送還をやめさせるべきだ」と主張した。>

 という前文を読むと、姜哲煥氏が来日して集会で証言しているようだ。

 <姜氏は北朝鮮生まれで10年間にわたり政治犯収容所(耀徳)に収監された経験のある脱北者(1992年脱北)だ。現在は北朝鮮民主化運動の最大グループ「北朝鮮民主化委員会」(黄長燁委員長)の副委員長を務め、有力紙「朝鮮日報」の専門記者として独自ニュースを報道することでも知られる。北内部の非正規ルート情報を収集している姜氏は、産経新聞に「いま北内部の経済・食糧難はひどく悪化しており、住民は“このまま餓死するか、逃げるか”の二者択一に追いつめられている。朝鮮人民軍は30万人を国境に張り付けて脱北者を狙撃している。賄賂をもらって脱北を見逃す軍人や民間人が公開処刑されている。強制送還がなければ潜在脱北希望者の100万人が北朝鮮から出てくるだろう」と述べた。銃声が聞こえる地域は北朝鮮北東部、咸鏡北道北部で、昨年末から銃声の頻度が上がっているという。>

 内容は同じだ。姜哲煥記者は記事に書いたことと同じことをいろいろな集会でしゃべっているのだろう。

 <最近、韓国入りする脱北者は毎月約300人。「韓国は李明博政権になって脱北者を積極的に受け入れるようになった」という。姜氏によると、中国は国境地帯に約600人収容の脱北者収容施設を数カ所に設営。強制送還の人数を姜氏は「毎月数千人」と推定した。>

 毎月数千人が強制送還されて、その人たちは殺されるか、それに近い扱いをうけるのだろう。

 <中国による強制送還の人数は公式には把握されていない。中国は(政治的意見を理由に迫害を受けるおそれのあるものを難民として保護対象とする)国連の難民条約加盟国だが、中朝2国間合意を優先して脱北者を「不法越境者」と扱い、送還してきた。強制送還で軍や秘密警察の拷問を受けた脱北者証言は後を絶たない。「北朝鮮自身が言うように金融制裁やPSI(大量破壊兵器拡散防止構想)や船舶検査ではビクともしない。金正日が一番恐れているのは住民が逃げ出すことだ。日米韓は中国の強制送還をやめさせるべきだ」と姜氏は強調した。>

 国連難民条約よりも2国間取り決めが優先する、というのもおかしい。日本が昔、国際連盟から抜けたのは、国際法違反を言われたからだった。満州国との2国間関係を優先できれば、脱退する必要はなかった。

 <北内部では軍部隊の食糧難が深刻で「軍が穀倉地帯などに1個師団が移住して住民から食糧を奪っている。昨年の収穫前からだ。軍という北朝鮮最大の権力層と住民の生き残りを掛けた生存戦争が始まっている」という。>

 軍が北朝鮮最大の権力集団になっている。朝鮮労働党というイデオロギー集団が文民統制を敷いていた金日成主席時代と違い、金正日総書記時代は軍を優先する「先軍政治」、つまり、国会の最高権力が労働党から人民解放軍に移行した、ということだ。

 <1995年から数年間の飢餓・食糧難の際は軍や権力側に一定程度の物資が回っていた。1995~97年の飢餓は約300万人の餓死者を出した。特に犠牲者が多かったのは山間部の下層階級や自力で食糧調達のできなかった「弱い層」だった。だが、2006年のミサイル発射・核実験以降の経済制裁を起因とする経済難に今年4月の国連安保理決議以降の経済制裁が加わった現在、その影響はじわじわと拡大、最近は「権力層への物資配給が持続できなくなっている」という。>

 最貧層は死に絶えて、今度は権力層にまで食糧が渡らないのか。ミサイルなんか作っているからだ。

 <姜氏は一般住民が食糧を強奪する軍に「戦う姿勢をみせている」と述べ、「住民は権力層に信頼を失い憎しみを持っている」と北内部事情は緊迫している、と話した。>

 では革命が起きるか、といえば、そこまでは行かないのだろう。

 <ただ姜氏は日本メディアの3男、金正雲氏世襲報道には「驚いている」と述べて疑問符を付けた。北内部情報で今年3月までは「後継問題」は全くなかったという。4月以降に後継者話が伝えられるようになり金正雲情報も増えた、脱北者たちに情報源を問うと『うわさだ。人から聞いた』という伝聞で確認できないという。金正雲氏に関する文献(朝鮮労働党発行の正式文書)で、現在までに確認されたものはない。北朝鮮当局から流出した金正雲氏の写真もない。このため姜氏は金正雲氏世襲説は「国家安全保衛部(秘密警察)が北朝鮮の世襲後継に関し国内、国際的な反応をテストしている可能性がある」と指摘、金正日総書記が健康悪化で後継体制整備を急いでいるのは確かだが「推定できる根拠はない」と述べた。>

 そういう段階なのかもしれない。何しろ、すい臓がんの末期ではないか、と見られる金正日総書記の動画を配信するところを見ると、北朝鮮ももう権力移譲を大前提にせざるを得ないところまで追い詰められていることは事実だと思う。ただ、世襲権力移譲を人民が納得するのかどうか、権力層をまとめることが出来るのか、日本には情報はない。

 <姜氏は7月上旬に来日、各地で北朝鮮情報を講演した。韓国入りした脱北者は現在1万8000人で急増中だが、中朝国境の脱北者問題は東欧革命のベルリンの壁崩壊になる可能性を指摘、国際社会の注視を呼びかけた。>

 ベルリンの壁を想い起こすのか。そうなればいいが、中国が最終的にどう動くのか、米国がナン氏の言うように最高レベルで米中合意をして、中国のリスクを周辺国、米国で分散するという提案をするのかどうか。その辺がポイントかもしれない。

 <姜哲煥氏(カン・チョルファン)氏は北朝鮮・平壌出身、祖父、父は在日韓国・朝鮮人。帰国運動で家族で北朝鮮に渡った。姜氏が9歳のとき一家が政治犯収容所に連行された。10年間後に運良く釈放されて中国経由で1992年、韓国入り。2005年、収容所体験を書いた著書を読んだ米ブッシュ米大統領がホワイトハウスに招待、同大統領と面談した。>

 ブッシュとも会っているのか。久保田記者の記事を読んで、朝鮮日報の姜哲煥帰社の記事がより分かるようになった。

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北朝鮮は1月からサイバーテロを準備した、と~朝鮮日報7月11日

 朝鮮日報の日本語版HPは7月11日もサイバーテロの記事が満載だ。<サイバーテロ/ウイルスの流布に5カ国のサーバー/徐々に明らかになる攻撃ルート>は、徐々に韓国の当局が犯人に迫っている途中経過を説明する記事だ。
 <大統領府、国防部、チョソン・ドットコムなど、主要な政府機関や企業のサイトをマヒさせたサイバーテロが、世界各国から同時多発的に行われたという衝撃的な事実が明らかになった。ハッカーらによるサイバー戦争は国の境界を無意味なものにし、政府や大手企業をも無力化することができる、という従来から指摘されていた内容が、まさに現実のものとなった。>
◆世界で連鎖的に行われたサイバーテロ
 <韓国政府当局やセキュリティー関連企業などがサイバーテロを追跡したところ、7月7日のサイバーテロは韓国、米国、ドイツ、オーストリア、グルジアにサーバーを置く五つのサイトを通じ、DDoS(分散型サービス拒否)攻撃命令が内蔵されたウイルスが流布されたことから始まった事実が、10日までに分かった。これら五つのサイトは、ハッカーが攻撃対象としたサイトを正確に攻撃するウイルスを広める役割を果たしていた。>
 日本も英国も入っていない。
 <このウイルスに感染した8万台以上のゾンビ・コンピューターは、ホワイトハウスや韓国の大統領府など、韓米両国の数十の主要サイトに攻撃を加え、接続不可能な状態に陥れた。>
 <ゾンビ・コンピューターは、それぞれ役割の異なる2種類のウイルスに感染していたことも分かった。サイトを攻撃するようプログラミングされたウイルスと、新たな攻撃対象サイトのリストや攻撃時間についての情報を受け取るアップデート用ウイルスだ。警察関係者は「攻撃するだけでなく、状況によって自分自身をアップデートするファイルも内蔵された、非常に知能的なプログラムだ」と説明した。>
 非常に知的なことができるんだったら、北朝鮮の支配層もそういう能力を世界が喜ぶ方向で使えばいいんじゃないか、と思うのだが。
◆攻撃に使われたゾンビ・コンピューターを自爆させて証拠隠滅
 <ハッカーらは主なサイトをマヒさせただけではなかった。犯行の証拠をなくすために、自らが攻撃に利用したゾンビ・コンピューターそのものを破壊する計画も立ててあった。当初はDDoS攻撃用ウイルスを流布したサイトは五つだったが、これらがアップデートに利用したサーバーは韓国、米国、日本、中国、ロシア、ドイツなど16カ国、86のサーバーに達した。これらのサーバーの役割は、1回目の攻撃を行ったウイルスが24時間後に活動をストップした後に、しばらくして2回目の攻撃を行うウイルスに変化させるというものだ。また、攻撃を終えたゾンビ・コンピューターのハードディスクを破壊するウイルスを流布したのもこのサーバーだ。>
 やっぱり韓国、日本、中国、ロシアも入っていたか。
 <警察庁サイバーテロ対応センターは、「ゾンビ・コンピューターに自らのハードディスクを破壊させるなど、新たな命令を送る86の“アップデート用サーバー”を発見した。その中の五つは韓国国内に存在することも確認した」と説明した。>
 この辺、怖い。ハードディスクを金づちで壊すのではなく、論理的にこわす、というのだ。そんなことってできるのかな?
◆攻撃のルートは遮断したが、ハッカーの実態は確認できず
 <警察は被害が広まるのを防ぐために、DDoSウイルスを流布した五つのサイトや、ハードディスクを破壊するウイルスを広めた86のサーバーからのアクセスをすべて遮断した。>
 他にはないのだろうか?
 <ウイルスが広まった経路がある程度明らかになったことで、問題解決に向けた第一歩が踏み出されたといえる。この経路さえ遮断すれば、ゾンビ・コンピューターがこれ以上増えることはない。現時点でウイルスに感染しているコンピューターの処理さえ行えば、問題は沈静化するということだ。>
 そういうことか。
 <10日にはサイバーテロによる混乱も落ち着きを取り戻した。多くのユーザーがセキュリティーソフトを設置し、プロバイダーもウイルスを広めるサーバーとの接続を遮断した。また、攻撃を受けたサイトもセキュリティー機能を強化した。しかし、問題となったサイトを発見してもサイバーテロの背後関係を明らかにするのは簡単ではない。警察はすでに確保した四つの「ウイルス・アップデート用サーバー」を分析し、最初にウイルスを流布して数万台のゾンビ・コンピューターを作り上げたハッカーを追跡している。これら四つのサーバーが今回のDDoS攻撃に利用されたのは間違いないが、このサーバーの管理者はハッカーから侵入を受けた被害者である可能性の方が大きいと警察はみている。>
 どこまで辿っても被害者しか出てこないシステム。テレビドラマならば、その被害者の中に真犯人がいるのだが。
 以下は[キーワード]二つだ。
 <ゾンビ・コンピューター=ハッカーが特定のサイトを攻撃するために、所有者が知らない間にウイルスに感染させたコンピューターのこと。ハッカーは不特定多数にウイルスに感染した電子メールを送り、ユーザーがその添付ファイルを開くと感染するようになっている。ウイルスに感染すると、ハッカーの命令に従って特定のサイトに攻撃を加えるようになる。>
 <北朝鮮軍総参謀部偵察局115号研究所=情報当局によると、通常の研究所を装いながら中国などに散らばる数多くの北朝鮮ハッカーを指揮している組織だという。115号研究所が所属する総参謀部は、サイバー戦専門要員を養成する自動化大学(旧ミリム大学)を運営している。>
 朝鮮日報の7月11日には<サイバーテロ/民間頼みのネット・セキュリティー>の記事もあった。
 <9日夜11時40分、ソウル・光化門にある放送通信委員会は非常事態に陥った。同委員会の職員たちは慌ててメディア各社に電話をかけ始めた。「今回の“サイバーテロ”の悪性ウイルスに感染した“ゾンビ・コンピューター”は、10日午前0時からハードディスクに保存されているすべての情報を削除するため、“パソコン破壊”が起きる可能性が高い」と伝えるためだ。>
 <同委員会からの連絡を受けたメディア各社は、インターネットを通じ緊急速報を出した。しかし、この情報は民間のセキュリティー機関である安哲秀(アン・チョルス)研究所が前日の8日夜に「悪性ウイルスがパソコンを破壊する可能性がある」と同委員会に知らせてきたものだった。だが、同委員会は民間機関の通報を受けても、その情報をきちんと分析できず、悪性ウイルスが自爆する直前になってやっと国民に知らせたのだ。>
◆「ITコリア」支えるのは民間機関・業者
 <今回のサイバーテロ騒動の間、政府は終始、迅速な対応どころか右往左往してばかりいた。しかも、民間セキュリティー機関や業者が悪性ウイルスを分析してから、政府が何らかの措置を取る、という「後手後手」の対応が繰り返された。>
 <悪性ウイルスを広めIP(インターネット・プロトコル)アドレスの追跡でも、民間のほうが政府より一足早かった。例えば、シマンテック・コリアやシフトワークスなどのセキュリティー業者は9日、欧米にある発生源を把握したが、政府は依然として「追跡中」というあいまいな回答に終始した。>
 <政府の対応能力が民間よりも劣っていると批判されている原因としては、専門人材の不足が大きいと考えられる。韓国のセキュリティー業界でナンバーワンの安哲秀研究所は職員500人、ハウリは95人だ。そのほかの小規模業者まで入れれば、セキュリティー業界には約1000人の民間人材が層を成している。このうち、実力・経歴とも十分の専門家は約500人。一方、行政安全部が今年初め、中央行政機関や公共機関など695カ所を対象にした調査をみると、こうした機関で情報保護業務を専門に担当する職員は1機関当たり平均0.7人に過ぎなかった。専門人材が一人もいない機関は67.5%にもなる。その上、今回のようなサイバーテロが発生した場合、重要な決断を下さなければならない中央部処(省庁)の課長クラス以上の幹部に、専門人材はほとんどいないというのが実情だ。>
 <放送通信委員会のファン・チョルジュン・ネットワーク政策局長は「実務を担当する韓国情報保護振興院(KISA)ですら、在野のハッカーや専門家と自由に意思疏通が図れる実務陣はあまりいない」と言った。匿名希望のサイバーテロ専門家は「大企業や公共機関でセキュリティー業務を担当する人材のほとんどが主に電算業務をしており、情報業務は副業に過ぎない。だから、簡単な“異常トラフィック”が集中しても、きちんとした診断さえできないのが実情」と説明している。>
◆「サイバー司令官」新設すべき
 <インターネットのインフラを管理する機関が、公共部門では国家情報院、民間では放送通信委員会と韓国情報保護振興院、行政部内の業務網では行政安全部、サイバー犯罪では警察庁サイバーテロ対応センターなどに分かれていることも問題だ。このため、緊急時の迅速な対応は構造的に難しいと指摘されている。>
 <しかも、セキュリティー産業支援・振興業務は知識経済部が担当しており「対応と産業支援は別」という珍妙な状況になっている。セキュリティー業界のある専門家は「オバマ米大統領はサイバーテロ問題を総括する“サイバー・ツァーリ(総括調整官)”を新設すると公言しているが、世界規模のハッキング被害を最も深刻に受ける韓国では、こうした議論さえない」と嘆いている。>
 次も7月11日のアップ分だ。<サイバーテロ/国情院「北は今年初めから準備」/軍偵察局115号研究所が指揮>の見出しだ。
 <韓米両国の主要な国家機関や企業に対してサイバーテロが行われた事件について、攻撃が行われた経路を追跡した国家情報院は「平壌を本部とする北朝鮮のハッカー組織員たちが、中国各地から同時に攻撃を加えてきた」という判断を下していることが10日までに分かった。ある情報筋は「北朝鮮は今年の初めからサイバーテロを行うために緻密な準備を重ねてきたのだろう」と述べた。>
◆指揮は平壌115号研究所
 <今回のサイバーテロを指揮したのは、これまで韓国ではその実態がまったく知られていない「115号研究所」ではないかとして、国情院は注目している。それは、この「115号研究所」が今回のサイバーテロを前に北朝鮮のハッカー組織員たちに、「南朝鮮(韓国)の傀儡の通信網を破壊できるプログラムを開発せよ」(国情院が入手した資料)という指示を下しており、この事実を国情院が把握しているからだ。>
 <国情院関係者は「115号研究所はソフトウェア開発会社などを装っているが、実際は平壌に拠点を置いてハッカーたちに指示を下しているようだ」と語る。>
 <韓国政府筋によると、北朝鮮は情報化時代初期の1990年代初めごろ、敵軍のコンピューターによる命令を混乱させることを目的に、ハッカー部隊を新たに創設したという。90年代の後半にはこの部隊をハッキングとサイバー戦の専門部隊として拡大再編した。2006年に公開された韓国軍の報告書には、「北朝鮮のハッカー部隊は米太平洋司令部の指揮統制所をマヒさせ、米本土の電算網にも被害を与えることができる」と、その能力を評価している。>
◆北京や瀋陽などが拠点
 <国情院が今回のテロを北朝鮮の仕業によるものと確信する理由について韓国政府の当局者は、「北朝鮮国籍であることが確実なハッカーである尹(ユン)某氏のIPを確認できたから」と説明する。このハッカーは、6月30日に瀋陽から韓国機械研究院光州電算網に対してDDoS(分散型サービス妨害)攻撃を初めて加えており、その際に国情院に尻尾をつかまれた。また、これに先立って北朝鮮は、北京と瀋陽に保衛部関係者を通じて会社を設立して経営を行っており、これを通じて攻撃の訓練を重ねてきた事実も情報当局は把握している。>
 <情報当局の関係者は「尹某氏をはじめ、中国各地に散らばる北朝鮮のサイバー工作員たちは115号研究所の指令を受け、多くのコンピューターにウイルスを植え付けた。その上で、攻撃サーバーを通じてこれらを操るという手口を使っている。まさに韓国の内外に数万台のゾンビ・コンピューターを作り上げた主犯だ」と語る。政府筋も「DDoS攻撃に利用された16カ国86のIPに北朝鮮が存在しない理由は、サイバー工作員たちが主に中国や東南アジア、日本などから攻撃を加えているのが原因だと考えられる」と述べた。>
 <北朝鮮による今回の攻撃は、6月初めからその動きが感知されていた。しかし、彼らが実際に準備に取り掛かったのは今年初めごろという見方が有力だ。北朝鮮軍総参謀部報道官は今年1月17日に軍服姿でテレビに登場し、「全面的な対決体制への突入」を宣言している。同じ月の30日には祖国平和統一委員会(祖平統)も「南北の政治的・軍事的合意はすべて無効化する」と宣言した。韓国の安全保障筋は、「北朝鮮は今年初めに対外的な攻撃計画を樹立し、長距離ミサイルの発射や核実験と並行して、サイバーテロの準備も行ってきた可能性が高い」と述べた。>
 <とりわけ今回の攻撃は無作為で行われたわけではない、との見方もある。一連の流れは、6月30日に韓国機械研究院光州電算網→米国独立記念日の今月4日(現地時間)にホワイトハウス→7日に大統領府(青瓦台)・国防部・チョソン・ドットコムなど韓米の主要な政府機関や企業→10日にゾンビ・コンピューターのハードディスク破壊、となっているが、これらは緻密な計画に沿って、韓米両国に対して相次いで攻撃を加えるという形で行われている。京畿大学の南柱洪(ナム・ジュホン)教授は「北朝鮮が即興で挑発行為を行うことはほとんどない。現実の空間では核兵器、仮想空間ではハッキングで、非対称の戦力的優位を占めるために長い時間をかけて準備を行ってきたはずだ」と述べた。>
 7月11日午前11時にアップされた<サイバーテロ/「20人余りが徹夜、攻撃目標と時間を確認」/安哲秀研究所のユ・スンリョル課長>も当日の苦労がよく分かる記事だ。
 <「攻撃が始まった7日夕方に悪性ウイルスのサンプルを入手したがが、通常1、2個のファイルに全機能を盛り込んだものとは違い、10個以上のファイルが有機的に機能している状態だった。6年間、悪性ウイルスの分析をしているが、このようなケースは初めて」。悪性ウイルスの実態を最初に暴いた安哲秀(アン・チョルス)研究所のユ・スンリョル分析課長(36)は、「ハッカーが今回の攻撃を計画して作った悪性ウイルスのファイル関係図を把握するのが最も大変だった」と話した。ユ課長と20人余りのチーム員は夜を徹して悪性ウイルスの分析作業を行い、24時間後に一つのファイルから攻撃対象サイトのアドレスと攻撃時間を探し当てた。今までの悪性コードとは違い、攻撃対象と時間が事前に決まっている、という事実を確認したわけだ。ユ課長は7カ所の追加攻撃対象サイトを発見、該当するサイトが事前に対処できるようアドバイスした。また、悪性ウイルスに感染した「ゾンビコンピューター」のハードディスク削除も警告した。>
 しっかりしているなぁ、韓国は。

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2009年7月10日 (金)

中国人の日中ウインウイン関係論、大賛成だ~人民日報7月10日

 人民網(人民日報)日本語版に2009年7月10日午後<中国と日本、GDPに一喜一憂すべきでない>という日本JCC新日本研究所の庚欣副所長による論文がアップされていた。人民日報日本語版はメール配信で毎日送ってくるのだが、あまり見ていなかったが、この題名に「おやっ」と思って読んでみた。
http://j.people.com.cn/94476/6698051.html
 <「中国の国内総生産(GDP)が日本を追い抜く」との情報が中日両国に大きな衝撃を与えている。危機に遭遇しても、中国のGDPは減少せずに増加し、ここから少なくとも中国の経済発展の健全さがうかがえる。中国の情況を受けて、日本はこの情報を非常に重視するようになっている。「環球時報」が伝えた。実際には、喜びであれ落胆であれ、GDPを何度も何度も比較して一喜一憂することは望ましくない。1990年以降、国際連合はGDPを超越した発展観を打ち出して、寿命、教育、一人あたりGDP平均値などの指標を参考にし、加重平均により算出した、生活の質を反映する人間開発指数(HDI)を採用するようになった。GDPなどの伝統的な視点だけに基づいて行われる評価システムは過去のものになり、特にGDP成長率ばかりを強調することには非常に大きな誤りがあるとされるようになった。>
 中国人学者による中国人への自制の呼びかけかな? こういう問題は発展し続ける国ではすぐナショナリズムの高揚に利用されるから。中国政府に対しても「こんな問題で人民を鼓舞するな」と注意喚起しているのかもしれない。
 <「中国のGDPが日本を追い抜く」との情報について考えてみると、現在のこうした変化は(不可逆的な現象だとみなされはするが)中国と日本の世界経済における基本的な立ち位置を変えるものではない。中国は進歩してはいるものの、依然として相対的に立ち後れた発展途上国であり、まだ満足できるほど十分な資本を備えていないし、手柄を自慢し着飾るほどの資格もない。GDPはやや増加しているが、これは最大限に評価しても万里の長征における一歩を踏み出したものに過ぎない。これからも実際に基づいて適切に行動し、計画に力を注ぎ、刻苦奮闘する精神を維持しなければならない。>
 なるほど、よく見ている。GDP成長率の数字のマジックは人口が増えればGDPは増え、人口が減るとGDPは減るという客観的な事実をあげておくだけで十分だろう。経済の質を表わす指標ではなく、あくまで資本主義経済でのひとつのメルクマールに過ぎないのだから。例えば、家の中で母親が子守りをしてもGDPは増えないが、子守りを頼んで賃金を支払えばGDPに反映されるから、成長していることになる。でも、子どもを育てているのは同じなのに、という類の話が山盛りなのが経済指標なのだ。
 <日本の懸念はもっともである。中国経済はここ数年、新たな段階への飛躍を繰り返し、GDPはドイツを抜き米国債の保有残高は世界一となり、こうした勢いは減速することなく、当然ながら日本にとって圧力となっている。全体的にみて、中国は経済面だけでなく、政治、社会、文化の面で、特に国際的な地位の面でここ数年来全面的に上昇している。さきの情報はこうした総合的な変化を敏感に反映したものであり、日本が反応するのは当然だといえる。だが日本は世界2位の先進国であり、GDP規模の変化によって自信を喪失するほど弱ることはない。日本の懸念が強くても、これは大きな時代状況を反映したものであり、GDP問題の占める割合はそれほど大きくはない。>
 そういうことだ。日本の学者の中でもこういう発言をする人がいるけれども、どうしても日本人は悲観論が好きだから、こういう曖昧で中間的な論を好まない。だから、無視される。それが悲劇なのだが。
 <最も強調しなくてはならないのは、発展観がGDPの変化にとどまらなくなったように、中日関係も過去のような勝ち負けを競うゼロサムゲームの局面を超越して、戦略的互恵の方向へと重要な一歩を踏み出したことである。各種のデータが示すように、日本が中国の成長によって得た利益は、今後もたらされるかもしれない損失をはるかに上回る。中国と折り合いの悪かった小泉純一郎元首相ですら「中国の発展は脅威ではない」と繰り返し述べている。こうしたことから、日本が中国のGDPや社会経済の全体的な成長の中で有利な位置に立っており、大きな利益を占めていることがうかがえる。>
 随分と客観的に分析している、と思う。そういうことだろうと私も思う。
 <中日両国の間には、質の高い戦略的互恵関係が形成されつつある。相互に補完しあい、長期にわたり磨き上げられた、最も合理的な配置の戦略的互恵関係だ。軽工業、重工業などの従来型産業の成長であれ、省エネ・環境保護などの新興型産業の成長であれ、両国が相互に依存しあい、互いに協力すべきであることは明白だ。>
 中国人にそこのところをもっともっと分かってほしい。
 <中国は不振にあえぐ日本を見たいとは思わない。中日両国の強い連携は中国の願いでもあるからだ。日本も中国のGDPおよび全体的な経済の急速な伸びを願っている。中国の牽引作用は日本にとって間違いなく「福音」だからだ。両国はこれからの世界経済の舞台で、気持ちの通い合ったダブルスのパートナーになろうとしており、どちらかが好調な時やラッキーな時には双方にとってプラスになり、どちらかが不調だったり不運だったりした時には双方が損害を被ることになる。>
 そう。ウインウイン関係だ。ゼロサムゲームではなくなっている、という現実をよく表わしている。
 <注意すべき点は、中日のこうした協力には波及効果があって、東アジアはもとより世界経済のムードにも影響し、互恵や相互利益の方向に向かって発展を続けるということだ。中日両国はGDPの比較に躍起になり、一喜一憂すべきではない。それよりもお互いの好調ぶりを両手を挙げて歓迎すべきである。互恵の枠組はすでに固まっているのだから。>
 変な競争意識を捨て去る必要がある。中国政府がこれまでナショナリズムと党への忠誠心で国内を統治してきたため、初期の荒々しいナショナリズムが必要とした「悪役」に日本を据えたのは十分納得できる。江沢民時代までその方針は貫かれた。胡錦濤時代になってようやく、この愛国教育の弊害を自覚し、徐々に舵を切っているのだと思う。しかし、大きな国家の6億人の国民の意識はすぐには変わらない。それに「歴史問題」は中国の150年の侵略された歴史の汚辱の記憶と結びついたものだから、中国が自信を持たないと日本の真実を素直に見ようとはしないだろう。それも致し方ない問題だ。
 日中関係をウインウインに持っていくためにも、日本JCC新日本研究所の庚欣副所長のようなバランスの取れた見方をする中国人を増やし、日本の現実を中国の庶民に知らせる努力が必要なのだろう。

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朝鮮日報が北朝鮮とのサイバー戦争から立ち直りサイト再開:応援しよう!+グルジア、イスラエルのサイバー戦争の例~朝鮮日報、日経新聞7月10日

 朝鮮日報のホームページが復旧した。今、7月10日午前11時半だが、北朝鮮のサイバーテロ攻撃との戦争にようやく勝利したのだろう。しかし、韓国の友人にメールしようとしたら、メールはできなかった。まだまだ一般のメールの復旧はできないのかもしれない。昨日は攻撃対象から外れていた中央日報の日本語版でサイバーテロ問題を読んだが、今日は北朝鮮との戦いの最前線で頑張っている朝鮮日報の「戦記」を読んでみよう。

◆悪い奴がお金儲けのためにサイバーテロをやったケース

 まず、最新のニュースから。廉康洙(ヨム・ガンス)記者による<サイバーテロ/IT企業代表がDDoS攻撃/ゲーム等級審議の代行頼まれニセの審議修了証を送付/サイトで確認できないようにハッキング>である。

 <ソフトウェア開発メーカー代表のチェ某容疑者(39)は自ら経営する会社が経営難に陥ると、資金集めのために賭博サイトを開設した。しかし、すでに多くのライバルがいた。そのためチェ容疑者はライバル・サイトを閉鎖に追い込むことを考えた。そのような中で昨年9月ごろ、分散サービス妨害攻撃(DDoS攻撃)用ウイルスが中国で販売されているという情報を入手した。DDoS攻撃とは、ウイルスに感染した個人用コンピュータ(ボットネット)が、攻撃対象とされたサイトに集中的にアクセスし、そのサイトを麻痺させるという手口だ。チェ容疑者は朝鮮族のユ某氏(33)を通じてDDoS攻撃用プログラムを販売する業者と接触し、およそ45万ウォン(約3万3000円)でそのプログラムを購入した。さらにチェ容疑者はユ氏を通じ、中国・上海にボットネット(ゾンビ・コンピュータ)を操ることのできる「攻撃命令サーバー」も準備した。警察庁サイバーテロ対応センターは9日、このようにしてDDoS攻撃を行ったチェ容疑者を検挙したと発表した。>

 この男のような変人が増えるのだろう。

 <DDoS攻撃の準備を中国で行っていたチェ容疑者にとって残った最後の仕事は「攻撃命令サーバー」で操ることのできる「ゾンビ・コンピュータ」をできるだけ多く確保することだ。警察によるとチェ容疑者は音楽ファイルを無料でダウンロードできるサイトを開設してウイルスを広めようとしたという。このサイトにアクセスしたコンピュータは、チェ容疑者が操ることのできるゾンビ・コンピュータとなった。>

 サイトにアクセスするだけで感染するのか?

 <チェ容疑者はログインの手続きが必要のない自由掲示板を通じて「無料でMP3をダウンロードできるサイトがある」と宣伝し「ゾンビ・コンピュータ」の確保に乗り出した。またウイルスとアダルト動画を一つのファイルとし、プログラム共有サイトを通じてこのウイルスを広めた。この動画を再生すると、ウイルスに感染するようにしたのだ。>

 やはりアダルト動画だった。これをダウンロードするとウイルスがくっついてくる。そうだろう。ただより怖いものはない。

 <昨年10月中旬ごろ数千台のゾンビ・コンピュータを確保すると、チェ容疑者はDDoS攻撃を開始した。警察は「チェ容疑者は最初、ライバルの賭博サイトを攻撃した。賭博サイトは違法のケースが多く、攻撃を受けても警察に届けることはできなかった」と説明している。しかし今年3月、チェ容疑者に問題が生じた。長い間ソフトウェア開発に従事してきたチェ容疑者は「ゲーム物等級委員会」でゲームプログラムの審議を受ける手順について詳しく知っており、また審議を通過するためのノウハウにも明るかった。チェ容疑者はこのような点を前面に出し、あるゲームメーカーからゲーム等級審議を受ける業務の代行を700万ウォン(約51万円)で受注した。警察は「審議に通過するためには依頼されたゲームプログラムのアップグレードが必要だったが、チェ容疑者はこれを先送りした。依頼者がこの作業を早く行うよう督促すると、チェ容疑者は審議が終わったかのように見せかけるために、ニセの審議修了証を送った」と説明した。>

 何かひどい奴だな。

 <審議を通過したゲームはゲーム物等級委員会のホームページで確認できる。チェ容疑者はこれを阻止しなければならなかった。チェ容疑者は依頼者が確認できないように、「ゲーム物等級委」のサイトをまひさせることを考えた。>

 そんな目的で麻痺させたのか……。

 <今年3月4日午後5時30分ごろ、チェ容疑者はゾンビ・コンピュータにDDoS攻撃命令を下し7400台のゾンビ・コンピュータにゲーム物等級委のサイトを攻撃させた。警察は「チェ容疑者は3月22日まで計10回にわたり、ゲーム物等級委のネットワークに障害を引き起こした。ゲーム物等級委はサーバーの移転まで行ったが、攻撃が続いたため、最終的には業務用の内部ネットワークまで麻痺してしまった」と説明した。しばらくして警察が捜査を開始。チェ容疑者は中国にある「攻撃命令サーバー」を随時取り替えることで警察の追跡を逃れようとしたが、4カ月後についに犯行が明らかになった。>

 これが個人でできるというのが怖い。

 <警察庁サイバーテロ対応センターは9日にチェ容疑者の身柄を拘束し、DDoS攻撃用プログラムの購入を支援したユ氏ら二人を同じ容疑で在宅のまま立件した。警察は「ウイルスに感染したコンピュータは、所有者も知らないうちに犯行の道具となってしまう。これを阻止するには、随時セキュリティー対策ソフトでウイルスの侵入を食い止めるか、すでに入り込んだウイルスを除去する必要がある」と述べた。>

 なるほど、崔容疑者の犯罪事実はそういうことだろう。では、今回のDOS攻撃は?

◆朝鮮日報の社説はIT大国の脆弱性を嘆いている

 朝鮮日報7月10日の社説<サイバーテロで揺らいだ「IT大国」韓国の現実>を読もう。

 <相次ぐサイバーテロの影響で大韓民国が大きく揺らいだ。7日と8日に続き、9日午後にも行政安全部電子政府サイトや国民銀行、オークション、チョソン・ドットコムなどに対し、莫大な数の「ゾンビコンピューター」から一気に大量のアクセスがあった。システムに過剰な負荷がかかる、いわゆる分散型サービス妨害攻撃(DDoS攻撃)だ。この種のサイバーテロが今後どのような形で広まっていくのか全く予想できない。>

 という前文。

 <今回のサイバー攻撃は、韓国と米国の主な政府機関や企業などに打撃を与えるために、事前の緻密な準備の下で行われた、まさに計画的、組織的テロであることは間違いない。米国の独立記念日に合わせ、5日(米国時間の4日)からホワイトハウスをはじめとする米国の数々の施設に攻撃を加え、7日には韓国の政治・経済・言論分野の代表的な機関や企業などへとその攻撃対象を拡大した。8日には国家情報院、サイバー安全センター、さらには韓国国内のセキュリティー関連企業にも攻撃を加え、復旧に向けた動きを妨害した。>

 事実関係のまとめだ。

 <その手口は非常に巧妙だ。今回のサイバーテロは悪性のコンピューターウイルスに感染した「ゾンビコンピューター」があらかじめ決められた時間に決められた対象に対して一斉に攻撃を加えるというものだった。過去に行われたDDoS攻撃とは異なり、攻撃の命令を下すサーバーは存在しない。ウイルスそのものに攻撃対象や時間などのコマンドを内蔵し、ゾンビコンピューターが自ら攻撃を行うようにしてあったのだ。ウイルスのサンプルを分析した安哲秀研究所は「攻撃対象と時間があらかじめ決められていただけでなく、自分から攻撃対象を変更するよう設計されている」と明らかにした。そのため攻撃命令を行うサーバーを追跡し、これを遮断するという過去のやり方では対応が不可能だ。復旧に多くの時間を要し、犯人を追跡するのも非常に難しい。>

 なるほど、追跡を振り切る装置をつけているのか。

 <今回のサイバーテロで問題となったのは、インターネットの接続障害に限られており、国の機密が流出するなどの被害は今のところ報告されていない。しかし、安心はできない。インターネット上で競売を行うサイト「オークション」は、DDoS攻撃に備えて韓国では最大規模の保安対策を行っていたが、何の効果もなかった。あらかじめ対策を立てていても、その効果が失われるほど、攻撃が激しかったということだ。>

 国の機密漏えいがなかったことだけでも幸いだった。

 <今回の事件を通じ、世界最高レベルの情報技術(IT)インフラを誇る韓国が、実はサイバー戦争に対してはいかに脆弱であるかがはっきりと分かった。大韓民国を敵対視する勢力がその気にさえなれば、いくらでも韓国の安全保障・経済・社会システムを麻痺させることができるということだ。民間のセキュリティー関連業界を監督する放送通信委員会は、事件が発生してから6時間が過ぎてやっと国民に向けて警報を発したが、明確な対応策は提示できなかった。攻撃が行われてから4日目の9日になって初めて、ウイルスに感染したコンピューターがインターネットに接続されるのを防ぐ対策について話し合いが行われた程度だ。まさに対策は常に後手に回っていた。>

 対策が後手後手、といっても日本よりかは早いだろう。

 <通常でも国内の電算網に対するハッカーからの攻撃は1日平均100万回にも達する。実際にハッキングされる被害もここ5年の間に30%以上増えた。それでも韓国社会のセキュリティーに対する認識や投資の規模は、まさに後進国レベルにとどまっている。セキュリティー関連部門の市場規模は日本のわずか5%にすぎず、国内で使用されているコンピューターの7.5%はセキュリティーソフトを全く使用していないという。3000万台に達するコンピューターの中で、220万台以上が今回のような新種のDDoS攻撃にまったく無防備ということだ。>

 IT大国なのにそういう現状があったのか。

 <事前の対策が難しいのであれば、事後の対応だけでも迅速かつ徹底して行われなければならない。目の前の現実として近づいているサイバー戦争について、個人や企業、さらには政府機関がそれぞれ独自に対策を行うには限界がある。セキュリティー事業に対する支援や投資と共に、国会で漂流したままの情報保護関連法案の採決なども直ちに行い、国を挙げた対策と体制を築かなければならない。>

 まさしくそうだ。日本の内閣の情報安全関連の組織は韓国に専門家を派遣して、日本人の目できっちりと見てくるべきだ。もうやっているだろうが、もしもまだならば、すぐに要員を派遣しないといけない。

 いつ日本が攻撃されるか分からないのだから。

◆米国のメディアは北朝鮮犯行説を打ち出している、と

 ユ・ヨンウォン記者と安勇炫(アン・ヨンヒョン)記者による<サイバーテロ/背後には北朝鮮/米メディア>という記事も読んでおこう。

 <大韓民国の主要なネットサイトを4日にわたりマヒさせたサイバーテロ勢力の輪郭が、徐々に明らかになりつつある。情報当局や警察は、北朝鮮のハッカー部隊あるいは北朝鮮と連携する勢力が、米国に続いて韓国の主なサイトに4回にわたり連続でサイバーテロを行ったと分析している。>

◎北朝鮮が背後で操ったのか

 <ハッカーの最初のターゲットは米国だった。5日深夜2時からホワイトハウスや国防省、情報機関、さらにアマゾン、ヤフーなど民間の20のサイトにも同時多発的に分散サービス妨害攻撃(DDoS攻撃)が行われた。この日は米国時間で国内最大のイベントとなる独立記念日(7月4日)だった。米国は韓国からのDDoS攻撃が集中すると、韓国政府と協議を行った上で韓国からのインターネット・トラフィックを遮断し、大規模な被害を食い止めた。
 FOXニュースは9日、米国防省筋の話として「米国と韓国の主な政府機関や企業のサイトに対する大規模なサイバー攻撃が行われた背後は、北朝鮮と考えられている」と報じた。AP通信も国防省高官の話として「(攻撃が行われた日が)7月4日という点と、過去の北朝鮮の行動からして予想されていた部分もあった」として、背後には事実上北朝鮮が存在することを示唆した。実際に攻撃に使われたウイルスのファイルには「独立記念日の記憶」という文言が入っており、今回の攻撃は最初から米国を狙っていたことが明らかになっている。>

 <北朝鮮は今月4日には7発の短距離ミサイルを発射し、軍事的な力を誇示した。これは北朝鮮が米国に向けて物理的な脅威を与えると同時に、サイバー空間での「銃声なき戦争」を同時に敢行した可能性を示唆している。米国パーデュ大学情報教育調査センターのスパフォード所長は「攻撃対象となったサイトを見ると、北朝鮮または北朝鮮に同調するグループの犯行である可能性が高いことが分かる」と分析した。>

 <英国のフィナンシャル・タイムズも「米国の当局者らは、7月4日には北朝鮮がどのような形であれ、挑発を行うだろうと予測していたため、彼らなりに(北朝鮮背後説を)認めている」と報じた。>

 この辺は今までのいきさつ。昨日、中央日報で読んだのとほぼ同じだ。

◎韓国の情報当局「状況証拠は100%」

 <サイバーテロ犯は今月7日に米国と韓国の26の主要サイトを同時に攻撃した。その結果、大統領府、国防部、チョソン・ドットコム、ネイバーなど、各分野の代表的なサイトに障害が生じた。また8日にはさらに10カ所の国内サイトが攻撃対象となり、9日にもチョソン・ドットコム、ネイバー、ダウムなどポータルサイトの電子メールサイバーなど、七つのサイトが攻撃された。>

 <韓国の情報機関も、北朝鮮が今回のサイバーテロを主導した可能性が非常に高いとみている。情報当局者は「技術的な証拠はまだ確保できていない。しかし状況証拠はほぼ100%だ」と述べた。>

 <韓国への工作を担当する祖国平和統一委員会は先月27日、サイバー攻撃を予告するかのような発表を行っている。今月3日には労働新聞が「南朝鮮の好戦狂による策動がサイバー分野にまで広まっている」と報じた。また金日成主席の15周忌(8日)を前後した時期に、韓国と米国の主要機関のサイトだけが狙われた事実も、北朝鮮背後説の根拠となっている。この当局者は「韓国と同時に攻撃を受けた米国からは関連する資料を受け取っている。両国が協力して分析を行っているため、確かな証拠が出てくるだろう」と述べた。>

◎北朝鮮にはサイバー戦争専門部隊も

 <北朝鮮は1990年代末から専門のハッカー部隊を創設・運営してきたサイバー戦争強国だ。北朝鮮が保有するハッキング専門の人材は500人から1000人ほどと推定されている。その一部は2001年から中国など海外に常駐しながら、韓国と米国を狙ったサイバー戦を行っている。2006年に公開された軍当局の報告書には、北朝鮮のハッキング部隊の能力は米太平洋司令部の指揮統制所をマヒさせ、米本土の電算網にも被害を及ぼし得るレベルにあると評価した。北朝鮮のハッカー部隊の主な任務は、軍関連機関のコンピュータ網に侵入し、機密資料を盗み出したりウイルスを広めることだ。>

 <昨年は韓国軍のある野戦軍司令部大佐の電子メールを通じてハッキングプログラムが広まったが、保安当局はこの事件を北朝鮮のハッカー部隊の犯行とみている。米国ヘリテージ財団のクリンナー選任研究員は「韓国の国会報告書によると、北朝鮮のハッカー部隊は2006年に韓国と米国防省を目標にハッキングを行い、多くの被害を与えたことがある」と述べた。>

 <北朝鮮は主に平壌の指揮自動化大学、金策工業大学やコンピュータ技術大学の卒業生の中から優秀な人材を選抜し、ハッキング要員として育成しているという。指揮自動化大学とは人民軍総参謀部所属の大学で、学生数は700人ほどだ。また総参謀部は傘下に指揮自動化局を持っており、ハッキング要員の管理・運営やソフトウェア開発などを行っている。>

 <軍の消息筋は「米国防省が数年をかけて自分たちのサイトにアクセスしてきた国を逆追跡したところ、北朝鮮からのアクセスが最も多かったことが分かった。北朝鮮のハッキング能力はCIA(中央情報局)に匹敵するという評価もある」と述べた。>

 日経新聞の記事も読んでおこう。

 日経新聞7月10日朝刊は韓国のサイバーテロについて結構詳しい情報を掲載していた。面白かったのは3面4段ハコ<サイバー攻撃やまず/米韓中枢・金融に狙い/テロの見方強まる>で北朝鮮と名指しはしないものの、金融をターゲットにしたサイバーテロの可能性がある、と指摘していた。

 今や金融は世界の情報の流れで最大のインフラ。そこに絞って北朝鮮がテロをすれば、やばいことになる。

 記事の中で、

 <ネット空間を舞台にした「サイバー戦争」は国際社会では既にいくつも事例がある。昨年夏のグルジア紛争ではグルジア政府のウェブサイトが大量アクセスを受けてパンクした。紛争相手のロシアは関与を否定したが、西側の専門家はロシアの治安当局とみられるコンピューターシステムが発信源と特定した。中東でもイスラエルがイランのウラン濃縮活動を妨害するためにサイバー攻撃を仕掛けているとされている。昨年、イスラエルのスパイとして拘束されたイラン人は遠隔操作できるウイルスに感染させたパソコンをイランの軍事施設に持ち込もうとしたとされる。>

 と書いていた。こうした事例があるのだ。やはり、サイバーテロはかたちを変えた戦争なのだ。

 日経新聞のネットに7月10日昼過ぎ、<サイバー攻撃で感染のパソコン、データ自動削除/韓国、警戒続ける>の記事がアップされていた。尾島島雄特派員の記事でソウルだ。

 <政府や金融機関が大規模なサイバー攻撃を受けた韓国で、事前にばらまかれた悪性プログラムに感染したパソコンのハードディスク(HD)のデータが自動的に削除される事例が出始めた。聯合ニュースによると10日午前の時点で30件を超える届け出があり、さらに増える見通し。韓国政府は警戒を続けると同時に、悪用されたパソコンの追跡を急いでいる。>

 <今回のサイバー攻撃はネットワークを通じた不正な手段で個人のパソコンに事前に埋め込んだプログラムが一斉に攻撃対象にアクセスする「DDoS」と呼ばれる手法が採られた。感染したパソコンの一部でデータの自動フォーマットが起き、稼働しなくなるケースも出ている。悪用されたパソコンは確認されただけで2万9000台に上り、韓国政府はウイルス対策を呼び掛けている。>

 まあ、この記事は韓国の新聞の焼き直しだが、日本の新聞にもこの程度の記事は載るようになった。

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2009年7月 9日 (木)

北朝鮮によるサイバーテロは軍事指揮を混乱させうる→世界では軍事侵攻前の手段だったが~中央日報、産経新聞7月9日

 最近、東京スポーツを見ていないから比較できないけれど、この韓国紙「中央日報」の見出し<サイバーテロは金日成15周忌に合わせて金正雲が主導?>を見て、申し訳ないけど、東京スポーツを連想してしまった。けなしているのではない。中央日報は所詮スポーツ新聞並みと言おうとしているのでもない。面白いのだ。本当かどうか誰にも分からない「ニュース」について、どう扱うか迷う時に、「えいやあ」と大きく扱ってしまう度胸。そして、「こんなインチキを」などと眉を顰める「良識派」の読者にブーとおならをぶっ掛けながら「それがどうした」と平気で言える下品さもある。新聞の原点であるスキャンダル性を重視しながら、「どうせ読者は本当かどうか分からないで、眉に唾をつけて読むニュースだから」と割り切って載せる度胸。日本の真面目腐った新聞も少しこういう下品さを真似すると面白い新聞ができるのに、と思った。
 とまあ、説明すれば長くなるが、それが一瞬のうちに頭の中で閃いたのが、「東京スポーツみたいあ」という「印象」である。印象って言葉にすると、相当に長く説明する必要があるのだなぁ。
 と、脱線はいい加減にして、中央日報の記事を読んでみよう。
<8日に発生したDDoS(分散サービス妨害)サイバーテロは金日成主席の15周忌に合わせて金正雲が主導したものだ、という主張が出てきた。開かれた北朝鮮放送のイ・テギョン代表は9日、PBC(平和放送)「開かれた世界、今日、イ・ソクウです」に出演し、「金正雲はコンピューターに詳しい」とし「北朝鮮はミサイル挑発と核実験を行ったが、大きな打撃を与えられず、軍事挑発はリスク負担があまりにも大きいため、サイバーテロに目を向けたのだろう」と主張した。また「今回のサイバーテロは北朝鮮の全般的な挑発計画過程で、確実に金正雲を後継者に立てようという企画の中で行われたものと把握している」とし「金日成15周忌のタイミングに作戦を執行し、おそらく昨日祝杯をあげたのだと考えている」と述べた。>
 この李という人物は一体何者なのか? 北朝鮮に近い人物なのか?
 <イ代表は「北朝鮮には標準級のハッカー、中間以下水準のハッカーがいるが、中間以下のハッカーでも韓国のオンラインゲームシステムに接続して10億ウォン程度ゲームマネーを奪っていくのは難しくないという」と話した。イ代表は「北朝鮮ではインターネットインフラが十分でないため、北朝鮮のハッカーは北京・上海など中国大都市を拠点に活躍している」とし「中国は自国中心的であり、ハッカーが中国を攻撃するのではなく韓国と米国を攻撃しているため、中国はこれを放任している」と述べた。続いて「北朝鮮ハッカー組織は党傘下組織と軍傘下組織があるが、党傘下組織にはハッカーを専門的に育成するモラン大学という機関がある」と紹介した。イ代表は「2003年のハッカー攻撃はインターネット全般に対するもので無差別的だったが、今回は北朝鮮に批判的な機関や韓国・米国社会を支える骨格組織をターゲットにしている」と述べた。>
 李さんの言う通りだったら、中国は度し難い国ということになる。まあ、そんなものかもしれないが。
◆北朝鮮が電子偵察局を新設した?
 この関連記事が中央日報7月9日午前8時過ぎにアップされていた。<北朝鮮軍、サイバー戦争・ハッキング専門組織を稼働中>という見出しだ。
  <北朝鮮軍当局がインターネットハッキングとサイバー戦争を遂行するために局規模の専門組織を運用していることが分かった。情報機関の関係者は8日「北朝鮮が総参謀部傘下で‘電子偵察局’を秘密裏に稼働してきたと把握している」とし「韓米情報当局はその間、この組織の活動に注目してきた」と明らかにした。この関係者は「電子偵察局が今年初め国防委員会(委員長・金正日)直属機構に編入されたという情報もあり、確認している」と述べた。「電子妨害局」という別称で呼ばれるこの組織は、北朝鮮と追従勢力の仕業と推定される韓米主要機関のインターネットサイト攻撃に主導的な役割をした疑いがあると、情報関係者は伝えた。北朝鮮は電子偵察局のほか、ハッカーとサイバー戦争要員を養成するための教育機関と多様な専門機構を稼働中だというのが韓国軍情報当局の判断だ。関係当局によると、北朝鮮は国際社会に情報化の波が広がり始めた1990年代初めからコンピューター命令体系や敵軍電波かく乱などの研究を遂行する人民武力部偵察局121部を稼働した。1998年からはこの組織をハッキングとサイバー戦争専門部隊の「技術偵察組」に拡大改編した。技術偵察組は2000年末までハッキングとサイバーテロに関する教育訓練を履修した後、2001年から中国をはじめとする海外国家でサイバー戦争の任務に備えてきた。情報関係者は「彼らは留学生や駐在員に偽装し、現地に滞在しながら暗躍しているのを見ている」と語った。韓国をはじめ米国・日本などの軍事関連機関コンピューター網に侵入し、秘密資料を盗んだり、必要ならウイルスを流布するのが主な活動というのが、情報当局の説明だ。平壌郊外周辺にある美林(ミリム)大学は北朝鮮軍総参謀部所属で、約700人の学生と500~600人の専門家級教職員がいる。金一元副主席の名前にちなんで金一軍官学校とも呼ばれるここでは、毎年ウイルス専門要員10人と技術要員10人、一般コンピュータ要員80人を養成しているという。韓国軍当局は北朝鮮が相当なレベルのハッキングやサイバー戦争遂行能力を備えているとみている。ある関係者は「亡命者の証言などを総合してみると、金策工大と平壌コンピューター技術大学の英才級卒業生を軍サイバー戦争組織に集中配置していると判断される」と話した。国防部はこうした北朝鮮軍の攻撃に備えるため2010年ごろ情報保護司令部を創設するなど対策を急いでいる。>
 こっちのほうが尤もらしい。
◆韓国の民主党は北朝鮮を擁護している!
 これだけ読んでも何が何だか分からないだろうから、第一報も掲載しておこう。同じ中央日報日本語版7月9日朝アップ分だ。見出しは<国情院含む16サイトに2次サイバー攻撃>である。
< 国家情報院(国情院)は7日起きた青瓦台や国防部のホームページなど韓米26サイトに対するDDoS(分散サービス妨害)攻撃について、北朝鮮または北朝鮮追従勢力によると推定される、と8日明らかにした。国情院はこの日午後、国会情報委所属の与野党議員にこうした内容を報告した。情報委の関係者は「国情院は北朝鮮がサイバー挑発を行うという複数の兆候をつかみ、今回の攻撃に備えたが、攻撃を遮断するのは技術的に不可能だったという」と述べた。>
 分かっていたけれども防げなかった、というのだ。やばいぞ、これは。
  <政府の関係者も「北朝鮮祖国平和統一委員会の報道官が先月26日、米国のサイバーテロ対応訓練である‘サイバーストーム’に対して強力な非難の立場を表した」とし「これが今回のDDoS攻撃と関係している可能性がある」と明らかにした。ただ、国情院は北朝鮮が今回の攻撃に介入したという具体的な根拠は提示しなかった。民主党の盧英敏報道官は「国情院が現政権の南北対決政策を正当化するために性急な発表をしたのではないか疑わしい」と主張した。>
 また民主党が北朝鮮擁護をしているぞ。金大中、盧武鉉路線を忠実に実行し続ける民主党だ。日本の民主党が二の舞にならないように気をつけてほしい。
  <検察と警察は悪性コード配布者とその場所を追跡するのに力を注いでいる。ソウル中央地検のノ・スングォン先端犯罪捜査2部長は「国内2万3000台と海外2000台のコンピューターがサイバーテロに動員されたと集計された」と述べた。捜査の結果、ソウル東大門区のあるケーブル放送が提供するインターネットサービス加入者のPCの大半が感染していることが分かった。警察はこの地域のある家庭のPCを確保し、悪性コードを分析した。その結果、青瓦台・国防部・ネイバーなど国内12サイトとホワイトハウス・国務省など米国14サイトに対して「7月7日午後7時に攻撃しろ」という命令が隠されているのを発見した。キム・ジェギュ警察庁サイバーテロ対応センター長は「今回の悪性コードは感染コンピューターが自ら攻撃を始めるように作られたという点でアップグレードされている」と説明した。>
 なるほど、韓国内のインターネットに接続されているパソコンをウイルス感染させ、そのウイルスが時限式で7月7日午後7時になると攻撃を始めるのだ、と。本当にそんなことができるのか? 北朝鮮の技術者ではなく、金大中支持勢力がやったのではないか?
  <韓国情報保護振興院(KISA)のシン・ファス利用者保護チーム長は8日「1次攻撃の対象だった6サイトと、1次対象ではなかった国情院・国民銀行など10サイトに対する2次攻撃が始まった」と明らかにした。国情院の関係者は「北朝鮮の仕業と推定されるという報道の後、2次攻撃が始まった」とし「今後さらに追加の攻撃があるとみて対策を講じている」と述べた。>
 情報化社会の脆弱性を狙った弱者の戦術、か。
◆朝鮮日報も狙われたのだろう…接続できないぞ!
 中央日報の7月8日朝刊に掲載された記事と推定されるのが<青瓦台・国防部などにハッキング被害>の第一報だ。
 <青瓦台をはじめとする一部の政府サイトと大型サイトが7日午後、「DDoS攻撃」を受けて接続障害が生じた。また国内からホワイトハウス・国務省・国防総省など米国政府サイトへの接続も数時間ほど支障が生じた。>
 なるほど。
 <DDoSとは分散サービス妨害のこと。あるサイトに同時に数百万台のコンピューターを接続させ、非正常的にトラフィックを増やすことで、該当サイトを麻痺させるハッキング方法だ。>
 すごいスケールだ。
 <この日午後7時ごろから青瓦台ホームページ(www.president.go.kr)をはじめ、国会・国防部サイトに接続できなかったり、接続できても速度が遅い状態になった。ポータルサイトのネイバー(www.naver.com)の電子メールとメッセージも使用できなくなり、オークション(www.auction.co.kr)など大型商取引サイトも接続が遮断された。インターネットバンキングをサービスする一部の銀行サイトも接続障害が発生した。これを受けサイト加入者らネットユーザーが該当サービスを利用できないなど不便が生じた。ほぼ同じ時間、国内からホワイトハウス(www.whitehouse.gov)と米国防総省(www.defenselink.mil)のホームページにもつながりにくくなった。>
 7日午後かぁ。もしかすると今、朝鮮日報のホームページにアクセスできないのも、これが理由なのかもしれない。朝鮮日報も狙われるだろうから。
  <サイバー空間でこのように混乱が発生したことを受け、韓国情報保護振興院は深夜、報道資料を出し「大量有害トラフィックを伴うDDoS攻撃のため国内の一部のサイトで接続障害が生じた」とし「司法機関と協力して経緯を把握中」と明らかにした。>
 すごい、と思う。北朝鮮は韓国や日本を攻撃する際には前もってもっと強力なサイバーテロを実施しておいて、混乱させてから攻撃を開始するだろう。それが戦術とすれば常識だろうと思う。
  <これに関しサイバー保安専門家は「DDoS攻撃は2000年ごろ始まったもので、該当サイトの情報を盗み出すというよりも過度なトラフィックで接続を遮断するのが主な目的」とし「過去の例を見ると中国発の攻撃であるケースが多かった」と述べた。>
 そういう歴史があったのか、知らなかった。
 中央日報サイトに7月9日午前11時過ぎにアップされた<「9日午後6時、3次サイバーテロ攻撃開始」>は実行されたのだろうか?
  <3次分散サービス拒否(DDoS)攻撃対象としてネイバーメール、ダウムメール、パランメール、行政安全部電子政府サイト、国民銀行、朝鮮ドットコム、オークションなど7サイトが含まれていると分析された。安哲秀研究所(アンラボ)は9日、3次分散サービス拒否攻撃(DDoS)がこの日午後6時から10日午後6時まで予定されているものと分析し、これら7サイトが対象になると明らかにした。26サイトを対象として7日午後6時ごろから発生した1次攻撃が24時間スケジューリングされたように、前日午後6時ごろから16サイトを相手に発生した2次攻撃もこの日午後6時まで24時間、スケジューリングされたことが明らかになった。アンラボはまた、2次攻撃を誘発した悪性コードが1次攻撃対象から変更されたもので、攻撃対象リストを書き込んだファイル(uregvs.nls)を悪性コードとして自主生成するものと推定している。>
 よく分からないけれども、重要な情報が話されているようにも思うのだが。
◆北朝鮮は攻撃を予告していた
 中央日報7月9日朝刊掲載の解説記事だと思う。<北朝鮮「いかなる高度技術戦争も準備済み」……サイバー挑発を予告>
  <韓国の情報機関、国家情報院(国情院)が8日、韓米26サイトに対するDDoS(分散サービス妨害)攻撃を「北朝鮮または北朝鮮追従勢力によるもの」と推定したのは、いくつかの根拠に基づくものとみられる。ひとまず、米情報当局との連携を通じ、DDoSが浸透した経路を追跡、その背後に北朝鮮があると判断できる情況を確認できたため、というのが情報当局者の説明だ。国情院の報告を聴取した国会情報委員会の委員も「攻撃に使われたゾンビパソコン(ウイルスに感染したり、不正侵入者に遠隔操作ソフトを仕掛けられたりしたまま、ユーザがそのことに気付かずに放置されているパソコン)とその背後を国情院が捜し出した後、北朝鮮が行ったと推定したようだ」と話した。>
 ここまで報道できるのは韓国のメディアの力が強いからだ。いい面もあるが、北朝鮮は完全に情報を統制しており、韓国はすべてを出すと、韓国の脆弱性が強まらないか?
  <北朝鮮がネット活動の本拠地にしてきた中国などで、最近サイバーテロに関連した動きが確認されたのもひとつの根拠とされる。情報当局者は「中国に移住した北朝鮮住民“朝僑”が主に活動している東北2省や北京などで組織的に動いた兆候があると聞いている」と伝えた。国情院は在日本朝鮮人総連合会と米国・欧州地域の北朝鮮関連団体も今回の攻撃にかかわっている可能性があると見て、注目しているようだ。>
 総連も関わっているのか? これが本当ならば破壊活動防止法違反で韓国・日本の犯罪捜査共助協定で朝鮮総連の本部に家宅捜索、強制捜査すべきではないか?
  <国情院が8日、国会報告で「従北勢力」という表現を使ったのも、中国と日本などで北朝鮮に同調する勢力を指したものという分析だ。青瓦台、国防部など韓国の12サイトとホワイトハウス・国務省など米国の14サイトが集中的に攻撃されたのも、北朝鮮の仕業であることを裏付ける傍証と見なすべきだという見方もある。>
 なぜ日本は攻撃されないのか? 日本にはサイバーではなく、細菌兵器か化学兵器の雨を降らせるのか?
  <先月に北朝鮮がサイバーテロを公言したのも、ひとつの根拠といえる。北朝鮮の対南(韓国)機関の祖国平和統一委員会は先月27日、韓国が、米国の主導するサイバー戦「サイバーストーム」訓練への参加を進めると「北朝鮮を侵攻する野望を示すもう一つの容認できない挑発行為」と非難した。続いて「北朝鮮はいかなる方式の高度技術戦争にも準備できている」とし、ネット上の挑発の可能性を脅威したということだ。>
 6月27日の北朝鮮の声明を見てみたい。
  <しかし、国情院は具体的にどのような根拠から「北朝鮮とその追従勢力の仕業」だと推定したかについては、公表していない。警察と国軍機務司令部も北朝鮮の介入には触れず、国情院と微妙な隔たりを見せた。国情院当局者は「情報委員会に報告した内容を、情報機関がマスコミにいちいち報告することは難しい」と述べた。ある情報委員は「どのようにして確認したかという部分は、情報機関が公表できないだろう」とした後「しかし、単なる推測ではなく相当な根拠があるはず」と雰囲気を伝えた。別の情報委員は「すでに北朝鮮がサイバー上で挑発を行うだろうという諸徴候が捕捉されていたらしい」とし、国情院が事前に攻撃の徴候を認知していた点を強調した。>
 このような、変な論争になっているのが今の韓国のメディア状況なのか? テレビが金大中・盧武鉉勢力に乗っ取らている証拠だろう。李明博大統領のパワーアップを願いたい。こんな変な反論を蹴散らして北朝鮮をやっつけてほしい。李明博大統領がやりやすくなるように、日本政府は全面協力すべきだ。経済とか文化面で日本ができることは協力を惜しむべきではない。
  <国情院当局者は「公信力のある情報当局が国会の常任委員に報告する内容は、何の根拠もなく作られることはない」とした。国情院は先月、金正日・北朝鮮国防委員長の後継問題に対し、異例に「金正雲氏に内定」と国会情報委員に通報した。当時も根拠をめぐり議論が広がったが、追加の情報と外信の報道などを通じ国情院の判断が事実として確認されつつある状況だ。北朝鮮専門家の間では金日成主席の死去から15年となる8日に合わせて北朝鮮が韓米両国へのサイバーテロに踏み切ったものという見方も出ている。>
 金日成死去は7月8日だったのか。
  <米独立記念日に合わせた7月4日、一度に7発のミサイルを発射したことに続く挑発だということだ。これを受け、核・ミサイルのカードに続く北朝鮮のサイバーテロに徹底的な備えが必要だという声が上がっている。西江大の安燦一(アン・チャンイル、52)教授は「2回にわたる核実験と相次いだミサイル発射のカードで、北朝鮮の“挑発”カードは薬効が落ちつつある」とした上で「情報化の先進国である韓国社会を大混乱に陥らせられるサイバーテロを遮断できる措置を講じなければいけない」と強調した。>
 教授が言う通りだ。これってやばいと思うのだ。北朝鮮は味をしめるだろうし、中国はじっとその効果を見ているのだから。中国は一番性質が悪い。
  <分かれる与野党の反応=DDoS(分散サービス妨害)の主体が北朝鮮または北朝鮮追従勢力とされる中、政界の反応は極端に分かれた。与党ハンナラ党は慎重な姿勢を示した。ハンナラ党の趙允旋(チョ・ユンソン)スポークスマンは「サイバーテロがオフライン上のテロ以上に重要なだけに、関係機関は徹底的に原因を究明、これ以上こうしたことが起きないよう対策を作らねばならない」と述べた。しかし、内部的には「北朝鮮の仕業」だという情報機関の判断を信頼する雰囲気だ。匿名を求めたハンナラ党所属の情報委員は「韓国の情報機関が慎重に接近、判断したもの」とし「かなり信憑性があると考える」と話した。自由先進党も北朝鮮が行った可能性を認めている。自由先進党の朴宣映(パク・ソニョン)スポークスマンは「北朝鮮関連勢力が疑わしいのが事実」という立場を表した。野党民主党は警戒姿勢を取った。同党の禹済昌(ウ・ジェチャン)院内スポークスマンは「確実な根拠なくこうした事実を流布するのが、万が一でも国家情報院に途方もない権力を与え得るテロ法の可決を狙ったものではないかと懸念される」と指摘した。民主党に所属する情報委員は「情報機関の高官が電話通話では北朝鮮だと話したが、報告では“北朝鮮または北朝鮮追従勢力”と表現した」と強調した。>
 北朝鮮にカネをもらっている連中だ。
  <ハッキングとクラッキング=元々はコンピューターシステムのセキュリティー上の弱点を探し出すのをハッキング(hacking)と呼んだ。他人のコンピューターに不正にアクセスし、違法な行為を行うのはハッキングではなく「クラッキング」(cracking)と呼ぶ。しかし、専門家を除けばハッキングとクラッキングを区別せずに使う。>
 初めて区別を知ったよ。
  <悪性コード=コンピューターに被害を与え得るソフトウエアの総称。応用プログラムに装って、これを実行すればパソコンに故障を起こしたり、データを破壊するコンピュータウイルスから始まった。1990年代以降▽ネットワークの弱点に入り込んで感染させる「ワームウイルス」▽パソコンに潜伏しハッカーが勝手に操縦できるようにする「トロイの木馬」――など多様な形が登場した。個人情報を流出するスパイウェアや特定の広告を無理に見させるアドウェアもこの一種だ。>
 [キーワード]の紹介も堂に入っている。日本の新聞よりも詳しいし分かりやすい。日本語版が日本で買えるのならば、購読したいくらいだ。
◆産経新聞はユニット121部隊の存在を書いていた
 サイバー攻撃については韓国の新聞だけでなく、日本の新聞も見ておこう。産経新聞HPに7月9日夕方アップされた<米政府機関、民間企業へのサイバー攻撃/発信源は北朝鮮>はワシントン支局の有元隆志特派員の署名記事だ。
 <米連邦政府や民間企業のウェブサイトに対して広範なサイバー攻撃があったことが8日、明らかになった。米政府は北朝鮮が攻撃の発信源とみており、核・弾道ミサイル実験に続く米国への挑発行為の一環の可能性もあるとして捜査を進めている。>
 米政府でも大きな問題になったらしい。
 <サイバー攻撃を受けたのはホワイトハウス、国務省、財務省、国防総省などの主要官庁のサイト。民間ではニューヨーク証券取引所、有力紙ワシントン・ポストなどが対象となった。財務省のサイトなどで接続不能が起きたものの、全体としては大きな影響は受けていない。ケリー国務省報道官によると、攻撃は今月5日から始まり現在も続いてはいるものの、大幅に減少している。複数の米政府当局者はAP通信に対し北朝鮮からのインターネット接続が追跡されたと語った。ただ、北朝鮮当局の関与があったかについては確認されていないとしている。>
 北朝鮮からのインターネット接続までは割り出した、という。中央日報にあるように中国国内からの発信も割り出しているのだろうが、中国については悪口を言わないのが最近の米国務省である。
 <この攻撃は特定のサイトへ一斉に大きな負担をかけて機能をまひさせるやりかたで、韓国の政府機関などのサイトで起きた被害と似ている。韓国の情報当局は「北朝鮮あるいは親北朝鮮勢力が背後にいるとみられる」との見方を示している。>
 時期的には同じ時期なのだろう。
 <国内ではほとんどインターネット接続ができず技術的にも遅れているとみられている北朝鮮だが、1998年から「ユニット121」と呼ばれる専門部隊を設置、500~1000人の要員を配置して、サイバー攻撃の強化に取り組んでいるといわれている。>
 しかし、サイトに一斉に負担をかけて機能を麻痺させるやり方って非常に原始的だと思うのだが、そんなことで負荷を与えることができるんだったら、北朝鮮だけでなく、どこのテロ組織だってやるだろう。何か防止策はありそうに思うのだが。
◆やっぱり7月9日夕方、3回目のサイバーテロが行われた
 産経新聞HPに7月9日午後10時アップされた<韓国の政府機関、銀行などに3回目のハッカー攻撃>は、北朝鮮による3回目の攻撃が行われたことを報じていた。韓国の国家情報院の予測通りだった。共同通信の記事だ。
 <政府機関などのウェブサイトに対するハッカー攻撃が続いている韓国で9日夕から行政安全省や国民銀行、大手ポータルサイトなど計7サイトに3回目の攻撃が行われ、アクセスが一時的に不可能になったり、極端に時間がかかるなどの障害が一部で発生した。外交通商省や国防省のサイトもダウンした状態になっている。>
 すごいなぁ。
 <韓国政府は9日、この問題で関係省庁などによる次官級会議を開き、コンピューターに関する保安対策の強化を確認。権泰信首相室長は、攻撃の背後に北朝鮮がいるとの見方に触れながら「韓国の体制に対する攻撃で、安全保障を脅かす挑発行為だ」として、情報機関の国家情報院と、捜査機関の検察、警察に迅速で徹底した捜査を要請した。>
 相当のものだ。
 <さらに、攻撃は「サイバーテロだ」とし、国家機密の流出などが起きないよう各省庁に厳重な対応を取るよう指示した。(共同)>

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ジョセフ・ナイ氏は米国の核の傘を信頼せよと言うが…~読売新聞7月9日朝刊[グローバル・ビューポイント]

 読売新聞7月9日朝刊国際面コラム[グローバル・ビューポイント]でジョセフ・ナイ元米国防次官補が<北朝鮮崩壊に備え、米中協議を>の見出しでインタビューに応じていた。まあ、今までのナイ氏の発言とそう大差ないのだが、中で一点、拡大抑止の信頼性に関して苦しい答え方をしていたのが目に付いた。

 ナイ氏は北朝鮮を「核爆弾を2個爆発させ、事実上の核保有国だが、米国と同盟国は朝鮮半島非核化という長期的な政策目標をあきらめるつもりはない」としたうえで「北朝鮮は正当な核兵器の保有国として米国と2国間交渉を行い、米国から攻撃を受けない保証を取り付けることも目指している。北朝鮮は核実験を通し、政権の地位を向上させ、強化しようと望んでいるが、そんなことは幻想だ」と切り捨てる。

 北朝鮮に核を放棄させるためにどうすればいいか、という質問には「中国が一層強く圧力をかければ北朝鮮を変えられる、というのは今や陳腐な決まり文句だ。中国派北朝鮮の非核化を望むと同時に中国との国境地帯に大混乱を起こす北朝鮮の崩壊がないように願っている。ちぐはぐな二つの目的ゆえに中国は北朝鮮への影響力行使に及び腰だった。それだけに北朝鮮で体制が崩壊した際の対応について米国が中国と内々に協議を始めるのは賢明だろう。米軍は鴨緑江まで北進すべきか、北朝鮮の難民が殺到した場合の対応で、米国と国際社会が中国をどう支援するか、などについて中国と協議すべきだ」と言う。

 そして、日本の敵基地攻撃論や核武装論について次のように話している。

 <日本の核武装が不可避とは思わない。日本はどのみち、その気になればいつでも核武装できる能力をずっと以前から有している。にもかかわらず、日本は核武装しないと決めてきた。世論の8割方が反対しているからであり、核武装が最終的に日本の安全保障を損なうからでもある。もちろん、米国が日本との同盟関係を打ち切ったり、日本も収める米国の核の拡大抑止力が信頼性を失ったりすれば、状況は一変する。その場合、日本は核武装するかもしれない。>

 この見方は孫崎享氏が「日米同盟の正体~迷走する安全保障」(講談社現代新書)でした主張とほぼ同じである。日本の核武装は外国からの核攻撃を誘発する可能性がある、という理屈だ。

 問題は「米国がいざという時、ロサンゼルスを危険に晒してでも東京を守るのかは疑わしい、と日本では考えられているがどうなのか?」という質問への答えだ。

 <冷戦下、ベルリンはソ連の脅威から守られた。東京かロサンゼルスかのジレンマというのは過ちだ。ロサンゼルスを身代わりにせず、東アジアの安全と安定と引き換えにわずかなリスクを取るのだ。米国がそうするとあてにできるか。答えはイエスだ。>

 という発言である。これは直接的な回答を留保したとしか思えない発言だ、と思う。本当に米国本土の核攻撃の危険性がある場合にまで日本を守るのかどうか、これは信用するしかない、と言われても、日本人はそう簡単には信用できないのが当然だと思っているのだが。

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2009年7月 8日 (水)

「ウイグル人が漢民族少女2人を強姦」のデマから民族紛争へ発展:女性の尊厳侵害は戦争を起こす~産経新聞7月8、9日と中央日報7月8日

◆李明博大統領が「北は援助を使って核開発」と明言

 韓国の中央日報日本語版HPに8日、<李大統領「北への支援金、核武装転用の疑惑」>という記事がアップされていた。昨日、朝鮮日報に載っていた金大中・盧武鉉時代の北朝鮮への援助、送金が核開発に使われた疑惑について李明博大統領が追認した、という記事である。青瓦台までもがこういう見方をしているよ、というのは大きいだろう。ただ、今の韓国民、特にソウル市民に反権力の伝統がどれだけ残っているか、でこのニュースの影響力は違ってくるとは思うのだが。昔は青瓦台が言っていれば、それは嘘だ、という見方が下層階層の庶民の中にはあった。今はどうなのだろう?

 中央日報の記事を読んでみよう。

 <李明博大統領は7日「(過去の政府が)北朝鮮に相当な経済的支援をしたのは事実」とし「過去10年間に莫大な金額を支援したが、それが北朝鮮社会の開放を助けるのに使われず、核武装に利用されたという疑惑がある」と述べたと、文化日報が8日報じた。ポーランドを訪問中の李大統領はこの日、ワルシャワの迎賓館でヨーロッパの有力ニュース専門チャンネル「ユーロニュース」のインタビューに応じ、このように話した。>

 そうか、この時期、イタリアのG8サミットに東アジアからは日本だけでなく中国、韓国から首脳が出席していたのだった。

  <李大統領は今後の対北朝鮮政策について「われわれは国連制裁のような国際協調を通して、北朝鮮が積極的に対話に応じるよう力を注いでいる」とし「対北朝鮮制裁の目標は、北朝鮮を国際社会に呼び出して対話をすることにある」と強調した。 また「中東のテロ問題があるが、国家的単位で考えると、北朝鮮が危険な国の一つであることは間違いなく、そのために世界が深い関心を持っている」と述べた。>

 いいアピールになっただろう。日本にとってもプラスだ。こういう日韓の競演が望ましいのだ。

  <李大統領は「中国・ロシアが(国際社会の対北朝鮮制裁に)歩調を合わせれば、北朝鮮を対話のテーブルに呼び出せると考えている」とし「ヨーロッパは伝統的に北朝鮮と対話をしてきたため、北朝鮮問題に関心を持って影響力を行使することを望む」と話した。 「北朝鮮の金正日国防委員長をどのように評価するか」という質問に対しては「実際に最も閉鎖された社会の指導者だ」と答えた後「北朝鮮は完璧に閉鎖された、我々としてはあまり理解できない地球上の唯一の国」と述べた。>

 いいぞ、李明博大統領。その通りだ。

◆金正日総書記の映像、首が痩せすぎだ

 産経新聞のHPには<金総書記の動画、3カ月ぶりに放映/故主席追慕大会で>というソウル支局の水沼啓子特派員の記事がアップされていた。7月8日夜のテレビのニュースショーで画像を見たが、首が細くなっており、いつまでもつか分からないような状態だったなぁ、総書記様は。記事は以下の通り。

 <北朝鮮の朝鮮中央通信によると、金日成主席の死去から15年を迎えた8日、平壌市内の平壌体育館で開かれた中央追悼大会に金正日総書記も出席した。朝鮮中央テレビが金総書記が入場する場面などを放映した。金総書記の動画が放映されたのは4月9日の最高人民会議第1回会議と同月16日の花火大会のとき以来で約3カ月ぶり。>

 3か月前の映像に比べると生気が全く感じられない。

 <大会冒頭の場面で金総書記が歩いている姿が数秒間流れた。足をわずかに引きずりながら歩くようにもみえ、麻痺説が出ている左手については机の上に置かれたままで動いている様子は映らなかった。>

 頸の細さや顔の表情がおかしかったのではないか。

 <追悼大会では、金永南最高人民会議常任委員長が演説し、金主席と金総書記の革命業績をたたえた。ひな壇には総書記の実妹、金敬姫党中央委部長とみられる人物の姿もみられた。金総書記は金主席の死去5年と10年の節目の中央追悼大会にも出席している。>

 まあ、何というか、この男が日本を核攻撃する、などと言っている男なのか。

◆胡錦濤中国国家主席がサミットに出ず急きょ帰国

 産経新聞HPには胡錦濤中国国家主席がサミットのためにイタリアを訪れたのにもかかわらず、本会議前に急きょ帰国した、というニュースが大きく載っている。各国首脳もびっくりしただろうなぁ。今やどこ国も中国頼みで、中国の悪口を言わないという雰囲気なのだから、その主役が欠けたサミットはメインディッシュがないディナーのようなものになってしまったのではないか。麻生さんには可哀想だが。

 まずは本記筋は北京の伊藤正特派員だ。ネットでは<ウイグル暴動/胡主席が急きょ帰国/国内安定にトップの責任>の見出しだ。

 <中国新疆ウイグル自治区の暴動にからみ、中国の胡錦濤国家主席は主要国首脳会議(ラクイラ・サミット)への出席を断念、急きょ帰国した。大量の軍、警察の投入で事態は収拾されつつあるだけに、意外な感じもするが、中国共産党のトップとして指導力を発揮する必要があったためとみられる。世界経済や地球温暖化問題を討議する今回のサミットでは、主要8カ国(G8)のメンバーではないとはいえ、中国は最も重要な参加国の一つであると同時に、中国にとっても諸問題で発言力を高める絶好の機会だった。胡主席は米露や新興国の首脳との会談に向け、万全の準備をしてきたといわれる。>

 胡錦濤も準備万端だったのにね。

 <胡主席は5日昼すぎ、北京を出発、新疆自治区の区都での暴動発生の報告を受けたのはローマ到着後だったとみられる。このような重大事件については、トップが外遊中も刻々報告を受け、必要な指示を出すのは中国に限らない。昨年3月のチベット騒乱でみられたように、中国指導部は少数民族の暴動に対しては、分離独立運動の策謀として、徹底的な抑圧をするのが常套手段であり、今回のウルムチでの暴動に対しても、胡主席はじめ党指導部の意思は一致していたとみてよいだろう。>

 国土保全が共産主義国家では最大の国益らしい。

 <西部国境の広大な地域を占める新疆、チベット両自治区(合わせて全土の約30%)は豊富な地下資源を有し、戦略的にも極めて重要であり、分離独立はむろん、共産党支配への平和的な異議申し立てさえ、一切容認してこなかった。新疆では1990年代に何度か大規模な暴動事件が発生したが、その後は分離独立運動組織の弾圧が続き、組織的な暴動は封じられた。今回の事件も民族感情の爆発であって組織性はなく、またチベットと違い海外組織の支援も限られていた。>

 偶発的なものだ、と。

 <ウルムチでは既に多数住民になった漢族が7日「報復デモ」をした後、夜間禁止令が敷かれたものの8日朝には解除された。当局が事態を掌握、秩序維持に自信を持った表れである。そうした中で胡錦濤主席がサミットを放棄、帰国する必要があったか疑問がある。これについてある中国筋は「今後予測し得る内外の事態について党中央で検討するため」とし、さらに「昨年の四川大地震といった重大事態への対応をめぐり指導力を発揮するのがトップの責任だ」と述べた。>

 何か緊急に決定すべきことがあるのだろう。北朝鮮関係でなければいいが、分からないなぁ。

 <中国は今秋の建国60周年記念日に向け、国内の安定を最優先課題にしている。チベット騒乱に続く今回の暴動は、民族問題の根が深く、大きな不安定要素になっていることを示した。そこには歴史的、文化的、経済的な背景があり、簡単には解消できないが、民族対立を緩和する方策の検討が急務であることも間違いない。胡錦濤主席にとって、それはサミット以上に重要だったということかもしれない。>

 ものすごく抽象的に書いているが、伊藤氏の考えは他にあるのだろう。

 <影の主役が帰国/「中国リスク」浮き彫りに /ラクイラ・サミット>という受け記事はローマ支局の渡辺浩生特派員の署名記事だった。

 <ラクイラ・サミットの“影の主役”といわれる中国の胡錦濤国家主席が帰国したことで、いまや中国を抜きでは何ら意味をなさなくなった世界経済問題や地球温暖化対策での有益な討議は望めない状況となった。特に、米国発の金融・経済危機を克服し、再発を防ぐ処方箋を探る上で、中国の存在は欠かせない。胡国家主席の帰国は、中国の国内事情に世界が翻弄されるという「中国リスク」を改めて浮き彫りにした。>

 決まり言葉がこれだけ出てくると、何だかなぁ。記事の信ぴょう性が薄れる感じがするのだが。

 <「ワシントンと北京が(危機克服に)いかに成功するかが、世界のほかの国々の経済に極めて重要になる」。ガイトナー米財務長官は先月の訪中で中国の役割をこう指摘した。米国発の金融危機を契機にヒト、モノ、カネが国境を越えて自由に移動するグローバル化が逆転し世界経済が縮小するなか、中国経済は存在感を増すばかりだ。これまで急速な自由化を拒む一方で、安価な労働力を武器に輸出を伸ばしてきた中国は危機の影響も軽く、2009年の経済成長率はプラス6.5%を維持する見込みだ。中国とインドを除けば途上国の2009年の成長率は1.6%減にまで落ち込む見通し。世銀のゼーリック総裁は「より多くの職が失われ、より多くの人々が貧困に陥る」と警告する。>

 経済部の記者なのか? 数字がどんどん出てくるが説得力がない。

 <中国は保護主義的な姿勢も強めている。米国が経済対策に自国製品を優先的に購入する「バイ・アメリカン条項」を盛り込んだのに対抗するように、先月、同様の「バイ・チャイニーズ」通達を地方政府に出した。食糧確保のためにアフリカの最貧国の土地を買いあさり、天然資源の検権益獲得にも貪欲だ。自国の利益だけを優先する姿勢は、世界経済の回復の足かせとなりかねない。昨秋の金融危機は、過剰な借金を抱え、消費や投資に巨額のマネーを注ぎ込んできた米国経済のバブル崩壊が引き金となった。今回のサミットは、そんな米国に過度に依存した、これまでの世界経済の成長モデルを見直す好機と期待されていた。>

 まあ、作文だな、この記事は。あまり出来の良くない作文。

 <危機克服には「G2」とも称される米中の協調が不可欠だ。だが、米国は世界最大の米国債の保有国である中国に今後も大量発行が続く国債を購入し続けてもらう必要がある。米国内には「中国への依存度を強め、対中姿勢を縛り続ける」(保守系シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ・インスティテュートのデスモンド・ラクマン氏)と、中国にこれ以上の借りを作りたくないとの警戒感が根強い。胡主席が帰国したことにより、9日のサミット拡大会合やキャンセルとなった首脳会談で、腹を割った討議を行い、両国が歩み寄るチャンスは失われた。>

 米国が中国を怒らせないように新疆ウイグル問題で音なしの構えを続けているのは、産経新聞伊藤正記者の予想通りだった。

 <先進国と新興国が対立する地球温暖化対策でも、米国と並ぶ最大の温室効果ガス排出国の中国がカギを握っていた。「2050年に世界全体で排出量を半減させる」という長期目標に新興国を組み入れることができるかが最大の焦点だが、新興国の反発は根強く、中国を欠いた状態での合意は極めて困難だ。中国は食糧輸入大国でもあり、10日のアフリカ途上国を交えた食糧安全保障の討議にも不可欠。胡主席帰国がサミットに与えた影響は計り知れない。>

 中国って、いつの間にそんなに存在感がアップしたのだろう? これで麻生首相がいなくても「あぁ、そうなの?」(麻生なの?)で済まされてしまうだろう。これが何とも腹立たしいことで、国威発揚という原始的、19、20世的な国民感情を逆なでするのだ。それとも、今の日本国民の中ではこういう感情を持った人間は少数派なのだろか?

◆NHKニュースは中国では肝心な部分が消されてしまう

 <ウイグル暴動/中国でNHKニュース中断>という産経新聞のネットにあった共同通信の記事も面白かった。

 <中国で8日、新疆ウイグル自治区の暴動について報じていたNHKの海外放送が番組の途中で突然画面が真っ暗になり中断された。視聴が制限されたのは米国在住のウイグル人らによるデモの映像で、中国当局は海外でのウイグル人らの抗議活動などの動きに神経をとがらせているとみられる。6月の天安門事件20年の際にも同様の措置が取られた。>

 どうでもいいようなニュースに見えるかもしれないが、こういうニュースが大事なのだ。つまり、開放的に見えるものの、中国人民は本当のことは知らされずに年老い、死んで行くのだ。

 以下の共同通信のニュースは何か胸に迫った。昨日の夕方に産経新聞のネットにアップされたものだが、ここでも異民族による少女強姦というデマが民族紛争のきっかけだった、とある。昔も今も強姦は戦争のきっかけなのだ。個人レベルでは殺人のきっかけにもなる。それを「忘れろ」「我慢しろ」としか教えず、名誉とか矜持という概念を忘れさせる教育をしていたら、日本の民族としての根っ子は腐るのではなかろうか? 見出しは<ウイグル暴動引き金の工場乱闘事件で13人を拘束 地元公安当局>だ。

 <中国広東省韶関市の玩具工場で6月下旬、ウイグル族の労働者が漢民族に襲われ乱闘となり計100人以上が死傷した事件で、地元公安当局は7日までに乱闘にかかわったとしてウイグル族側の3人を含む13人を拘束した。新華社が伝えた。事件へのウイグル族の抗議が新疆ウイグル自治区ウルムチの暴動につながったとされ、公安当局は慎重に捜査を進めているが、当時の状況が混乱していて難航しているという。また、中国紙によると、事件は同工場の元労働者が工場に再雇用を断られたことに腹を立て「工場でウイグル族6人が2人の少女を強姦した」とネット上に虚偽の書き込みをしたのが原因で、公安当局は直接乱闘にかかわった13人とは別に、元労働者も拘束している。>

 満州開拓団の女性たちがソ連兵に強姦され、その復讐はまだ済んでいない。こういう記憶は忘れることのできない民族の記憶だから、今かりに占領軍仕込みの「民主化」教育で日本人に忘れさせても、何年か後、何十年か後にはきっとその記憶は蘇り、もう一度、民族の記憶として定着し、いずれ何十年、何百年後にロシアに復讐するだろう。ロシアは1904~1905年の日露戦争敗戦の屈辱を忘れておらず、日本への復讐を虎視眈々と狙って、スターリンがその民族的復讐を1945年に行ったのだ40年ぶりの復讐だった。満州の復讐はあと50年はかかるだろうから、1945年→2060年としても、115年の歳月がかかることになる。ここで、ようやく民族の辱められた記憶は洗い流され、ロシアを許すことができるのだと思う。そうでなければ、荒野にしゃれこうべのまま打ち捨てられた満州集団移民の人々の怨念は一体誰が晴らし、弔うのだ。

 アメリカ合衆国はいずれの日にかインディアンに復讐され、漢民族はチベット、新疆ウイグルの民族に復讐される日が来るのではないか、とも思う。世界に生きている人間も日本人である私と同じ赤い血が流れる人間なのだから。

(追記 7月9日夜)

 産経新聞HPに7月9日アップされた<[ウイグル暴動 私はこう見る]インタビューで星野昌裕・南山大総合政策学部准教授は新疆ウイグル自治区の核実験場を重視する見方を示していた。これも無視できない要素かもしれない。

 星野教授の話は以下の通り。

◆「ウイグル支配の要諦は安全保障」と星野教授は語る

 <中国政府が新疆ウイグル自治区を徹底的に支配しようとするのは、安全保障の問題もからむからである。自治区には(石油などの)資源があるだけでなく、核実験の施設もある。自治区での実験回数は多く、ウイグル族に真の自治を与えることは到底できない。(自治区などが独立して)中国の国土が縮小すれば、ミサイル発射実験も満足にできなくなる。海上に向けてミサイルを撃つ北朝鮮とは異なり、中国は自国の領土内で行わなければならず、同自治区などが「別の国」になるのは許せないことだ。>
 何か尤もだとも思えるのだ。
 <また、同自治区は旧ソ連諸国とも接している。こうした国々と中国との関係改善の歴史は浅く、中国はこの周辺に特別な注意を払わざるを得ない。中国政府は少数民族地域の政策を対話や権利維持といった観点ではなく、安全保障の観点から立案してきたこともあり、その限界が今回吹き出した形だ。例えば、権力への参画は軽視されており、少数民族には共産党上層部への優遇席はない。>
 少数民族対策は安全保障対策だった、と。三国志の国らしい。
 <さらに1950年代から屯田兵として西部に入り、1960年代に中ソ国境に張り付けられた「建設兵団」(現14個師団)は現在、治安維持も担当しており、ウイグル族から反発を受けている。漢族の相次ぐ流入で自治区内のウイグル族の人口は75%から45%に減っている。そのうえ漢族は民族教育を受けておらず、自治区内で(イスラム教徒のウイグル族が食べない)豚肉を平気で扱う店も増えるなど十分な配慮もしていない。>
 完全に差別支配だ。昔の大唐帝国に戻っている。近代の夜明けとともに阿片戦争をきっかけに外国に侵略されつくし、1949年に共産党が1党支配で独立した人民共和国のはずだったが、いつのまにか古代帝国の政治手法に戻ってしまったようにも見える。中国って中庸という徳に基づいた国内支配ができない国なのか? 日本の政治家の方がずっと立派じゃないか。日本の新聞は悪化ないけど。
 <中国は今、遣隋使などの時代の「(文化・芸術という)ソフトパワー」でなく「(軍事力などを背景とした)ハードパワー」として振る舞っており、少数民族に「学んでいないじゃないか」と叫んでいる。漢族への事実上の「同化」を強いている。>
 同化政策だろ? 日本が朝鮮半島を支配したように。日本は敗戦で夢が潰えたが、中国ははからずも戦勝国となったため、植民地支配を続けているのだ。ポツダム体制は続いているだ。
 <一方、今回の暴動が中国経済へ与える影響はほとんどないだろう。各国の中国への依存度は強く、中国を切ってまでウイグルと付き合う国はない。昨春のチベット騒乱時に各国が中国を非難したのは経済危機の前だからであり、今は事情が全く異なる。(談)>
 経済的な依存があれば、人権もなくなる。これが冷厳な世界の現実だよ。

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2009年7月 7日 (火)

問題は韓国人の「北朝鮮は韓国にミサイルを撃ち込まない」という思い込みだ!:ユ・ヨンウォン記者の主張は筋が通っている~朝鮮日報7月7日+7月6日社説

 朝鮮日報日本語版に7月7日夕、ユ・ヨンウォン記者のコラム[北のミサイルは「交渉用」ではない]がアップされていた。日本の新聞にも韓国のミサイルの射程距離を伸ばす米韓協定の改定に触れていた社もあった。どうも韓国は日本以上に危機感を燃やし、本格的な対応を始めたようだ。日本は「大変だ」と騒ぐだけの国。韓国は有言実行の国なのだろうか? 寂しい限りだ。明治維新の時代には逆だった。だから日本は近代化ができて、韓国は近代化に遅れたため日本の植民地になった。今度は何も決められない大韓帝国のような平成の日本が中国の植民地になる順番なのだろうか?
 読んでみよう。
 <1944年9月8日未明、ロンドン市内に突然砲弾が落下するような爆音が鳴り響き、巨大な爆発が2度起こった。正体不明の爆発物の威力は予想以上に大きかった。38棟の家屋が倒壊し、二人が死亡、20人余りが負傷した。ヒトラーの「秘蔵の兵器」V2ロケットが初めて使用された瞬間だった。V2は45年3月2日までに1395発以上がイギリスに向け発射され、数千人の死傷者を出した。イギリスが実際に被った打撃は大きくなかったが、ロンドン市民は恐怖に陥った。精密誘導技術が発達していなかったV2の半数必中界(CEP)は17㌔㍍に達し、今日の弾道ミサイルの元祖と呼ばれている。戦争が終わった後、連合軍のアイゼンハワー司令官は「もしV2が6カ月早く登場していたならば、世界の歴史は違っていただろう」と語り、超兵器V2の威力を高く評価した。>
 ミサイルの命中率が悪くても、人々の恐怖は募り、パニックに陥るだろう。今の日本だったら「戦え」ではなく「なぜ早く降伏しないか」と日本政府を怒る声が木霊するかもしれない。「占領されたっていいじゃないか。おれたちは死にたくない」と。しかし、占領軍ってマッカーサーのようないい占領軍とは限らない。ボスニア内紛などを思い起こしてほしい。敵国の最も下層階級で食事もろくにありつけない、貧乏で結婚もできないような兵士が上陸してきて略奪、殺人、強姦などやりたい放題をやるだろう。戦勝国は裁かれることがないことは東京裁判とニュルンベルク裁判で実証済みだ。日本の敗北主義者は「おれはこんなことは予想していなかった。政府の降伏の仕方が悪かったのだ。政府の責任だ」と言うだろう。責任を取らない連中だから。愛国心もなく、自分だけよければ日本という国などどうなってもいい、と思っている無責任な連中がいる。彼らの尤もらしい言説を責任ある言説ときちんと区別して見分けないと、私たちは大変なことになるだろう。
 <その後、米国や旧ソ連、中国などの大国は射程距離5500~1万㌔㍍を超える大陸間弾道ミサイル(ICBM)を開発し、配備した。インドやパキスタン、イラン、シリアなどの中東諸国、ブラジルなどの超大国以外の国々も中・長距離弾道ミサイルの開発に熱を上げている。これは弾道ミサイルに核弾頭など大量破壊兵器を搭載すれば大国でも容易に手を出すことはできず、国際的な立場が高まると判断しているからだ。北朝鮮はこうした国々の中でも、ここ数年最も「注目される」国となった。1984年に射程距離300㌔㍍のスカッドBミサイルの試験発射に成功して以来、20年余りの間に射程距離3000~4000㌔㍍のミサイルを実戦配備し、ICBMに近いミサイルやロケットを2度も試験発射するなど、この分野に執拗に執着しているからだ。>
 弾道ミサイルの拡散か。
 <北朝鮮のミサイルの性能向上は、単に射程距離を延長するだけにはとどまらない。今月4日に発射された7発の弾道ミサイルのうち5発は、発射地点から420㌔㍍離れた場所に集中的に着弾したという。命中精度が向上したというわけだ。専門家らは、命中精度を高めることは弾頭の威力を強化するよりも破壊力の向上にはるかに役立つ、と指摘する。従来、北朝鮮のスカッド・ミサイル(射程距離300~500㌔㍍)のCEPは450㍍から1㌔㍍程度で、ノドン・ミサイル(射程距離1300㌔㍍)の場合は1~3㌔㍍に達していた。これは、射程距離は短いものの、命中精度の点で優れている韓国の地対地ミサイル玄武(CEP50~100㍍)には到底及ばないが、北朝鮮の弾道ミサイルが現在抱える致命的な弱点が克服されつつあるというわけだ。北朝鮮はこうした弾道ミサイルを、スカッドは600発余り、ノドンは200発余り保有している。反面、韓国の弾道ミサイルの射程距離は、韓米ミサイル指針(2001年)により事実上300㌔㍍に抑えられている。>
 制限を付けておく必要はないじゃないか、という韓国の訴え。その通りだよ、ユ・ヨンウォン記者。当時、米国は日本の裏の要望をきちんと聞いて韓国のミサイルの射程を短くしたのだが、いまは別に韓国のミサイルの射程が長くなっても日本は関係ない。逆に韓国の軍事力が強くなれば日本は助かる。いずれ、日米韓の軍事共同訓練を行い、日本軍と共通コードで熟練し、中国・北朝鮮連合軍に対峙しないといけない。
 <ならば、こうした現実をどのように見て、対処しなければならないのだろうか。まず北朝鮮は、全住民の食糧難を2年間は解決できる6億~7億㌦(約571億-667億円)以上の資金を投じて核実験やミサイル発射を行っているが、これに対し国際社会と協調して批判と圧迫を加えなければならない。また軍事的な側面からは、北朝鮮のミサイルが発射される直前に早期に破壊し、ミサイルが発射された場合は迎撃ミサイルで防ぐ方法を強く求めなければならない。韓米ミサイル指針を改正し、韓国のミサイルの射程距離を延長する必要もある。>
 早くやってよ。
 <しかし、より根本的な問題にして解決策は、韓国側が持つ認識と関連している。盧武鉉前政権時代の2006年7月、ある政府高官が「北朝鮮のミサイル発射は安全保障上の危機ではない」と言及した。このように、北朝鮮のミサイルはあくまでも米国や日本に対する威嚇であって韓国に対するものではない、という認識を持っている人が少なくないとなれば、それはまさしく大きな問題だ。北朝鮮のミサイルの脅威は単なる「交渉用」ではなく「実体的な軍事的脅威」だという認識を持つ必要がある。北朝鮮が配備している弾道ミサイルのほとんどは、まさに韓国を狙っている、というのは明白な現実だ。そうでなければ、どうして北朝鮮が韓国を主たる射程圏に収め、1発当たり数百万㌦(約数億円)もするミサイルを600発以上も製造・配備するだろうか。>
 そうだ。盧武鉉支持勢力=金正日支持勢力の跋扈を許すな。

◆朝鮮日報7月6日の社説

 以下は7月6日の朝鮮日報の社説<北朝鮮が最後まで行った場合の対応策を。である。オバマ米大統領は制裁問題担当者にゴールドバーグ特使を任命した、とあった。知らなかった。まあ、内容はあまりない社説だが、これもコピペしておこう。
 <北朝鮮が4日、江原道元山周辺にあるミサイル基地から東海(日本海)に向けて7発のミサイルを相次いで発射した。この7発は射程距離が500㌔のスカッドC、1000㌔の新型スカッド、1300㌔のノドンなどだという。北朝鮮は今月2日にも咸興周辺の基地からKN短距離ミサイル4発を発射し、4月5日にはミサイルへの転用が可能な長距離ロケットを発射するなど、今年だけで合計18発のミサイルを撃ったことになる。
 北朝鮮による核実験や長距離ロケット・ミサイル発射などの費用は、今年だけで総額7億㌦(約673億円)から8億㌦(約769億円)に達したという。これは韓国政府の推測だ。今年5月25日に行われた核実験には3億㌦(約288億円)から4億㌦(約385億円)、ミサイルに転用可能な長距離ロケットの発射に3億㌦、スカッドミサイル1発に400万㌦(約3億8000万円)、ノドンミサイルには1000万㌦(約9億6000万円)は掛かったとみられる。韓国政府や世界食糧計画(WFP)などは、北朝鮮の食糧不足分を年間100万㌧前後と見込んでいる。昨年夏の時点で、国際市場でコメ100万㌧を購入するにはおよそ3億㌦必要だった。つまり北朝鮮が今年前半に行った核実験やミサイル発射などの費用を合計すると、2年分の食糧不足を補えるほどの額だったことになる。
 北朝鮮が4日だけで7発ものミサイルを発射したのは、米国の独立記念日に合わせて自分たちの軍事力を誇示することが目的だった。北朝鮮は2006年にも同じく独立記念日当日の7月4日に長距離ミサイルを含む7発のミサイルを発射した。オバマ政権は今年初めの発足直後には、北朝鮮に対して対話を提案するなどの融和的な姿勢を示していたが、最近は「北朝鮮による核やミサイルの挑発に見返りを与える過去のパターンは繰り返さない」として、制裁と圧力の方向へとかじを切った。これに対して北朝鮮は、韓国や日本の全域を射程圏内に置くことのできるミサイルを発射する能力を誇示することで、対抗する姿勢を示している。
 しかし、オバマ大統領は最近「(国連による制裁だけでなく)北朝鮮への追加制裁に乗り出すこともあり得る」と発言しており、制裁問題を取り扱う担当者にゴールドバーグ特使を任命した。ゴールドバーグ特使は最近中国を訪問し、国連による対北朝鮮制裁に積極的に参加することを要求した。さらに、北朝鮮の疑わしい口座があると推定されているマレーシアも訪問して、口座の凍結問題などについて当局と話し合いを行った。このような米国と北朝鮮との対決状況は今後も当分続くのは間違いない。
 北朝鮮は最近行った一連の行動を通じ、かなりのレベルでミサイルの性能アップに成功したと推測されている。またその気になれば、韓国の主要都市や施設に正確に一撃を加える能力があることも示した。北朝鮮は今後も韓国に対して局地的な軍事挑発を行ったり、さらには3回目の核実験を行ったりして状況を悪化させることも考えられる。北朝鮮は昨年夏に金正日総書記の健康問題がクローズアップされた直後から、3男の正雲氏への権力引き継ぎ作業に取り掛かったという話が持ち上がっている。つまり権力内部の不確実さも最高潮に達しているということだ。軍内部の強硬な勢力が金総書記の周辺を取り巻いているとの見方もある。
 韓国政府は当面、北朝鮮の核やミサイルによる誤った挑発に制裁を加える国際協調に集中する以外に対策はない。同時に北朝鮮内部の情勢に対する正確な情報の収集にも力を入れなければならないし、また北朝鮮によるさらなる挑発に対する具体的なシナリオと、それに対する対応計画も持たなければならないだろう。北朝鮮情勢について冷静に予測し、緻に管理していくことが何よりも重要ということだ。>

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核拡散した場合、アルカイダは核兵器をNY、WSかエルサレムに使う:マイケル・グリーン氏インタビュー~7月7日日経新聞朝刊

 日経新聞7月7日朝刊経済面連載[世界この先~原点からの再生]はマイケル・グリーン元米大統領補佐官のインタビューだった。有名な知日派、親日派である。<意思決定の道具多様化を>の見出しは、「国際的な意思決定のあり方も大きく変るのでしょうか」という記者の質問に「国連を強化すべきだという人もいれば、民主主義国家の有志連合を重視すべきだという人もいる。私はそれらを総動員しろと言いたい。いくつものツールが入った『道具箱』を持っておくことが大切だ」と回答した部分から取っているのだが、この部分が本当にポイントなのだろうか? マイケル・グリーン氏は米国の国家戦略について語っているのだが、もっと重要な言葉が散りばめられているようにも思えるのだが。

 グリーン氏の気になる言葉をピックアップしておこう。

▽物質的な力が弱まっているとしても、米国の価値観は勝ち続けている。民主主義、法の支配、人権といった価値観は中南米、アジア、東欧で支持され、結果的には米国の覇権が広がっているようにも見える。

 (これは決して単なる強がりではないだろう。結局は米国という理念の共和国はイデオロギーで結びつくしかない国なので、最後の最後には原理主義的民主主義に統合されるのだろう、と思う。中南米ではチャベス氏のベネズエラやカストロのキューバがあることを知っていて言わないし、アジアでは欧米型民主主義ではないインド、パキスタン、タイ、インドネシアなどは「人権」などの概念以上に自分の民族に固有の国家統合のシンボルに固執しているのだから、グリーン氏の言うことは本当はあっていないのだが、まあ、米国人ならばそう言うだろう、と思う。)

▽中国やイランなど、それぞれの地域で米国を上回るような力を持つ国が台頭してきた。だがこれらの地域大国の近隣には、バランスを取るために対抗している国がある。アジアでは日本や韓国、中東ではエジプトやサウジアラビアがそうだろう。米国はこうした対抗勢力と組むべきだ。

 (これはマイケル・グリーン氏の信じる地政学の結論なのか? 日本は中国封じ込めのための道具に最適、ということなのだろう。日本はそういう米国の本音をうまく生かしながら、自国の安全保障や経済発展に結び付けねばならない。)

▽(武装勢力や非政府組織といった「非国家集団」の影響力も拡大している、という質問に)米外交評議会のリチャード・ハース会長や米誌ニューズウィーク国際版のファリード・ザカリア編集長によると、世界は「無極化」に向かい、国家はもはや力を持たないという。私は国家が国際関係の主要プレーヤーであり続けると思う。国家間のパワーバランスを維持するため、同盟関係を強化すべきだ。

 (この辺は面白い対決なのだが、別の機会に詳しく分析することにしよう。思想的に言えば近代主義とポストモダンの対決に重なるのではないか、と思っている。)

 また、グリーン氏はフランスの降りたイランの天然ガス田開発で中国企業が契約したことについて、契約は手に入れたが、国際的に孤立したことを重視し、フランスのシラク大統領時代はドイツ・中国・フランス連合で米国に対抗しようとしたが、今のサルコジ大統領は米国に「中国の問題に対処しなければならない」と相談するまでに変化してきたことをあげて、国際的な情勢の変化を強調していた。

 中国が米国債の最大の保有国であることは別に米国の行動を制限しない、とも言う。米国債を売って米国債が暴落すれば最大の被害者は中国だから、中国は自国に利益のためにもそんな馬鹿なことはしない、と言うのだ。

 グリーン氏の懸念は中国の軍拡だ。その部分を書き写そう。

中国の軍備拡張は心配している。衛星、サイバー、潜水艦といった分野での能力を大幅に高めているためだ。南シナ海、台湾海峡、東シナ海で中国の存在感を誇示する狙いがある米国は日本にF22戦闘機を、台湾にはF16戦闘機を売却し、パワーバランスを保持すべきではないか日米豪印は海上訓練も展開したほうがいいだろう。中国が不透明な軍備拡張を進めれば進めるほど、近隣国の連帯が強まるということを印象付ける必要がある。

 (これはオバマ政権の見方と同じなのかどうか? この見方が政権の考えになっているのだったら、F22売却は何の問題もないと思うのだが、クリントン国務長官は中国からの裏の要望を受けて反対するだろうと思う。オバマ政権内では中国派の方が実権を握っているように見えるからだ。)

▽(北朝鮮の核開発問題をどう見ていますか?という質問には)米国が懸念しているのは北朝鮮の金正日政権が崩壊し、アルカイダをはじめとする国際テロ組織の手に核兵器が渡ってしまうことだ。現体制を維持したい金政権には核の抑止力が効くが、自爆テロも辞さないアルカイダには効きそうもない。その際に核が使われる公算が大きいのは東京やソウルではなく、ニューヨークやワシントン、エルサレムかもしれない。米国が核拡散の防止に力点を置くのはこのためだ。

 (非常に分かりやすい。なぜ核拡散などという念仏のような言葉を米国が繰り返しているか、ようやく分かった。現実的な脅威を感じているわけだ。それも、ニューヨーク、ワシントン、エルサレムという大都市を例にあげるのは迫力がある。米国人の頭には恐怖があるのだろう。広島、長崎を経験した日本人以上に核兵器の映画を好む欧米の人々は自分たちの頭上に核兵器が降っている悪夢だけはごめんだ、と思っているのだろう。しかし、そうであるならば、北朝鮮のノドン搭載核兵器に心底恐怖している日本人の心情を米国人はもっと勘案すべきだ、と思うのだが、グリーン氏は別として、普通の米国人にとってはいまだに日本人は異人種、イエローモンキーで欧米人とは別の格下の人種だという観念があるのかもしれない。黒人大統領を輩出しても、アジア人蔑視はなかなかなおらないだろう、と思う。)

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北朝鮮の核開発を側面支援した金大中・盧武鉉政権は独裁国家の怖さを過小評価していた~朝鮮日報7月7日

 朝鮮日報が7月7日に日本語版ネットHPにアップした<対北支援/金大中・盧武鉉両政権下で69億㌦/北朝鮮の核開発資金の2倍超>という調査結果記事は姜仁仙(カン・インソン)記者の記事だが、やはり、というべきか、金大中・盧武鉉政権が北朝鮮の核開発を側面支援していた実態が明らかになった、という意味で意義深い記事だと思う。
 韓国のメディアでこういう記事が出るようになったことは青瓦台の権力が完全に民主派から離れ、保守派の統治が完成したことを意味するのだろう。有意義なことだ。
 記事を読んでみよう。
 <北朝鮮は今年、短・中・長距離ミサイル18発を発射するのに約3億5300万㌦(現在のレートで約338億円、以下同じ)、第2回核実験の実施に3-4億㌦(約288億-384億円)を使ったものと推測される。この費用は米国が1994年ジュネーブ合意後から昨年まで北朝鮮に対して行った約226万㌧の食糧支援の費用7億675万㌦(約676億円)に相当する金額だ。米国が14年間、飢えに苦しむ北朝鮮住民の食糧を支援するのに使った金額を北朝鮮はたった3カ月で韓半島(朝鮮半島)の危機を緊迫化させるのに使ったことになる。>
 米国の食糧支援も馬鹿にならない数字だったのだ。
 <北朝鮮が核とミサイル開発につぎ込んだ莫大な費用をどのように確保したのかは謎だ。北朝鮮は現在、スカッド・ミサイル約600基、ノドンミサイル約200基を保有しているという。スカッドが約300-400万㌦(約2億9000万-3億8000万円)、ノドンが1000万㌦(約9億6000万円)で取引されることを考慮すれば、北朝鮮が現在保有するミサイルだけで約40億㌦(約3800億円)の価値がある計算になる。北朝鮮政府の今年度予算は4800億ウォンで、公式レート1㌦=140ウォンを適用すると、約34億5000万㌦(約3290億円)ほどだ。その北朝鮮がどうやって1回に3億㌦を必要とする核実験を行い、数十億㌦(数千億円)相当のミサイルを開発・保有できるのだろうか。>
 さあ、ここからだ。
 <専門家らは韓国の対北支援が核開発に転用された可能性を懸念してきた。政府が最近集計した金大中・盧武鉉両政権の10年間での対北支援の総額は69億㌦(約6580億円)。現金で29億㌦(約2780億円)、現物40億㌦分だ。情報当局の推算では、北朝鮮が核とミサイルの開発初期から現在までつぎ込んだ資金は26億㌦(約2480億円)に達するという。金大中・盧武鉉両政権の対北支援のうち、現金だけで北朝鮮が核・ミサイル開発に使った費用より多かったことになる。米国もジュネーブ合意後、食糧や重油など約13億㌦(約1240億円)相当を北朝鮮に支援した。韓米の対北支援額が北朝鮮の過去10年間の輸出額77億㌦(約7330億円)よりも多いというわけだ。>
 この数字は韓国政府が持っている数字だろう。よく調べている。
 <核実験1回に必要な3億㌦は北朝鮮の深刻な食糧難を1年間解決できる金額だ。政府関係者は「3億㌦は昨年夏基準で国際市場でコメ100万㌧を買うことができる金額で、北朝鮮の食糧難を1年ほど解消できる規模だ」と話した。北朝鮮の今年度予算の10分の1に相当する金額でもある。>
 国民は飢えて死んでもいいから、ミサイルと核を開発する、という独裁者・金正日総書記の考えをそのまま国家意思として貫いているわけだ。
 <外交安保研究院の尹徳敏教授は「米国のマンハッタン計画の場合、広島への原爆投下まで、開発に約20億㌦(現在のレートで約1900億円)が掛かった。北朝鮮が核開発に必要なインフラ構築や人材訓練につぎ込んだ費用まで考慮すると、かなりの金額が投入されたものとみられる」と述べた。延辺の原子炉や再処理施設の建設、エンジニアの訓練に必要な費用もすべて、核開発に必要な費用として計算しなければならないためだ。>
 やはり尹徳敏教授がネタ元だったか。今、韓国で北朝鮮分析の最高権威は尹徳敏教授だと思う。朝鮮日報は昔から尹徳敏教授には強かった。
 <北朝鮮が住民を飢えさせてまで核やミサイルを開発する理由は何だろうか。「北朝鮮政権が体制維持のため、最も効果的で経済的な方法だと判断しているからだ」というのが専門家たちの指摘だ。サムスン経済研究所の董竜昇・研究専門委員は「ミサイルや核、国際社会との対立以外にいくらでも体制維持が可能な方法はあるはずなのに、このような道を選択するのは政権が国民に対しかなりの機会費用を負担させていることを意味する。つまり、政権の論理に国民が犠牲になっている」と説明する。対外経済政策研究院の趙明哲・国際開発協力センター長も「北朝鮮は予算限度内で兵器開発費用を補うのではなく、国家のあらゆる資源を動員して核とミサイルの開発に取り組んでいるため、国民に当然分配されるものまで奪っている」と話した。>
 北朝鮮の体制を変革しないと核開発は終わらない、ということだろう。体制の維持を約束して北朝鮮に徐々に変革を進めさせる、というリベラル派の主張はやはり間違っているのだろうか? この辺になると判断ができない。

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中国共産党政権の少数民族抹殺を「反テロ」の仮面で容認する米国~産経新聞7月7日朝刊伊藤正氏論文、読売新聞・毎日新聞・朝日新聞7月7日夕刊

 中国新疆ウイグル自治区ウルムチで発生した暴動は生半可なものじゃないようだ。漢民族とウイグル族の対立が直接の原因という。チベット問題と同じ構図で、中国共産党政府はG8サミット前のこの時期の暴動鎮圧に武力を使っているものの、下手をすると天安門事件の二の舞いになりかねず、国際世論を横目で見ながらの沈静化にならざるをえないのではないか、と思う。
 産経新聞の一連の報道を見てみよう。
 まずは7月7日朝刊1面トップ<ウイグル族暴動140人死亡/先月殺害事件/漢族へ報復か/中国・ウルムチ>で、中国新疆ウイグル自治区の首都ウルムチに入った野口東秀特派員のリポートだ。
 <中国新疆ウイグル自治区ウルムチ市当局は6日、ウイグル族住民による暴動が5日夜に発生し、140人が死亡、828人が負傷したことを明らかにした。中国の華僑向け通信社、中国新聞社などが伝えた。今回の暴動は6月に中国国内でウイグル族の出稼ぎ労働者が漢族に殺害された事件が端緒だとみられる。10月1日の建国60周年に向け当局による少数民族への締め付けはさらに厳しくなりそうだ。>
 そうなのだ。10月1日は中華人民共和国建国60年なのだ。
 <中国国営新華社通信(英語版)によると、暴動が発生したは5日午後7時(日本時間同8時)ごろ。約1000人のウイグル族住民が市中心部の人民広場周辺に集まり、6月下旬に広東省韶関市の玩具工場で、ウイグル族労働者2人が漢族に殺害された事件への抗議活動を始めた。ナイフや棍棒、れんが、石などを手にしたデモ参加者は次第に暴徒化し、漢族住民を襲撃して商店やホテル、30台余りの車両に火を放った。>
 出稼ぎの少数民族が都市部でなぶり殺しにされる事件はこれだけでなく、頻発しているようだ。
 <AP通信によると、投入された武装警官は催涙ガスや放水で対処し、数百人を拘束した。香港メディアは、警察側は電気ショックを与える警棒や威嚇射撃で暴動を押さえ込んだとしている。犠牲者の多くは漢族とみられ、警察車両が群衆に突入し、ウイグル族の男性17人が車両の下敷きになり死亡したとの情報もある。フランス通信(AFP)は、暴動の参加者を約3000人、投入された警官隊を約1000人としている。>
 情報がまだあちこちしている。
 <経済や教育の分野における漢族とウイグル族の格差は著しく、少数民族を支配する漢族への反感が高まっている。市当局はノーベル平和賞候補にも挙がった在米ウイグル人活動家、ラビア・カーディルさんを議長とする亡命ウイグル人組織「世界ウイグル会議」(本部・ミュンヘン)が4日夕からインターネットを通じて抗議活動を呼びかけるなど、広東省での事件を利用し暴動を扇動したと主張。「国外から扇動された計画的、組織的な暴力、犯罪だ」と非難している。>
 まあ、当局は必ず責任転嫁するだろうから。そういう話は信用できない。
 <当局は6日午前1時から8時まで市内の一部地域で車両の通行を禁止した。情報の拡散を規制するため一部の携帯電話の通話も停止した。同自治区内の5地区に武装警察など計3万人以上を投入し、警戒態勢を強化しているもようだ。>
 この携帯電話の通話制限というのが中国共産党政府のお得意の手段らしい。日本政府でもやろうと思えば(法律ができれば、の話だが)やれるのだろうか?
 産経新聞7月7日朝刊は3面に<独立派を支える民族感情>という伊藤正・北京支局長の解説記事を掲載していた。あの伊藤さんである。現在の日本の中国報道の中で最も信頼できると思う。読んでみよう。
 <中国新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで6日発生した大規模な暴動は漢族の「支配」に対するウイグル族など少数民族の根深い反感を背景にしており、チベット問題同様、少数民族政策が中国政府のアキレス腱であることを改めて示した。中国は今回の暴動を分離独立派の策謀とし、その弾圧に一層力を注ぐ構えだが、民族対立が激化し不安定な情勢が続くのは不可避とみられている。>
 という前文だ。富の不平等が極まるとこういう事態になる。
 <中国当局の発表では今回の事件は、広東省で6月末に発生した漢族とウイグル族の衝突をめぐり、在外のウイグル人組織「世界ウイグル会議」が「決起」を扇動したためだという。昨年3月のチベット騒乱と同じく、漢族支配への抗議が大流血事件に発展したのは、少数民族側の反漢族感情の強さを物語る。>
 漢族支配と言われてもピンとこないのが日本人のいいところでもあり、理解の遅れているところでもあるが、日本人だって昔は沖縄、アイヌを差別したが、今はそういう感情すら消えかかっているのではないか。ところが、中国では民族差別感情が国民の中に浸透しているのだ。
 <新疆地区は特に1990年代以降、交通インフラの建設が進み、年平均10%超の経済成長を遂げた。全国の3割前後の埋蔵量を占める天然ガス、石油をはじめ地下資源の開発ラッシュが起こったが、その関連産業などを含め、経済ブームを担い巨大な利益を手にしたのは漢族企業である。むろん少数民族住民も経済発展の恩恵に浴したものの、ウイグル族学者らによると自治区経済の9割は漢族が支配、ウイグル族ら少数民族の言語、文化、宗教も破壊されているという。チベットでは漢族は6%にすぎないが、新疆では40%を超え、ウルムチでは漢族が最多になった。>
 民族の抹殺だ、これは。
 <こうした状況は漢族を資源を略奪し環境を破壊、民族滅亡を図っていると非難する分離独立運動が、当局の弾圧にもかかわらず生き続ける理由になっている。中国政府がチベットと併せ新疆の分離独立を容赦しないのは、経済的理由以上に戦略的な価値による。従って、今回の事件を機に、中国政府は、分離独立派の壊滅に躍起になるはずだ。中国は今回、「国際的陰謀」と宣伝、強気の姿勢に出ている。事情はどうあれ約1000人もの死傷者をだして国際社会の批判など気にしていないポーズを取るのには理由がある。中国は新疆の分離独立派の後背地である中央アジア諸国を上海協力機構に抱き込み、反テロの共同戦線を張るのに成功した。2001年9月の米中枢同時テロ後は、米国に協調する形で独立派組織を徹底的につぶしてきた。>
 「反テロ」というスローガンの恐ろしい一面を日本人はもう少し知るべきだろう。そして、中国は「反テロ」というスローガンを手にして米国に協力を申し出るふりをしながら、少数民族を抹殺している。ロシアのチェチェン抹殺も同じだ。その抹殺グループの結合体が上海協力機構だ、というのだ。そういう地政学的な目で事態を見ないと、日本人だけが国際理解から置いていかれるだろう。これは別に「国際標準」の話ではなく、世界の理解度がどういうものなのか、を日本人も知るべきだ、という話である。
 <人権問題に敏感な米欧が特に金融危機以後、対中依存を深めていることも、中国に有利な環境にある。しかし、新疆の独立派支持派を抹殺できないことも否定できないだろう。>
 伊藤氏の論はここまで。少し尻切れトンボだったが、また続きが明日の朝刊などに出るだろう。
 こういうものの見方を教えてくれる「論」こそ読まれるベきだと思うのだが、なかなか読まれないのだなぁ、これが。

(追記 7月7日午後4時半)

 7月7日の夕刊にはウイグルの再衝突のニュースが大きく掲載されていた。読売新聞は夕刊1面トップ<ウイグル再び衝突/住民数百人、警官隊と/抗議 他都市でも/死者156人/中国、情報統制を強化>の見出しで7日にウルムチ市内をパトロールする武装警察の兵員輸送車のおどろおどろしい写真も掲載していた。

 読売夕刊を読もう。中国新疆ウイグル自治区のウルムチ現地に入った牧野田亨特派員と北京支局の関泰晴特派員の記事だ。

 <中国新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで7日午前、ウイグル族の住民数百人が再び集まり、警察の取り締まりなどに反対する抗議デモを行い、警官隊と衝突した。ロイター通信などによると、武装警察部隊が現場に駆けつけ、抗議デモの群衆を阻止した。5日の大規模暴動で拘束された家族の釈放を求める住民らも参加したとされる。また、ウイグル族による一連の抗議行動が自治区内の各地に飛び火し、騒乱が長期化する可能性もある。>

 という前文だ。自治区内の各地で暴動が起きれば、中国当局は困るだろうなぁ。

 <中国当局は5日の暴動以降、自治区各地で厳戒態勢を敷いている。ウルムチ市内では7日早朝から、警察官多数が、暴動現場となった人民広場など各所で厳重な警戒に当たり、パトカーや装甲車によるパトロールも続いている。7日の抗議デモに参加した住民には女性が多く、あるウイグル族女性は同通信に対し、「夫が昨日、理由も告げられずに警察に連行された」などと語り、釈放を訴えた。>

 「夫が帰らない」という妻の抗議を戦車で踏み潰す映像が世界に配信されると、昔だったら人権活動家やフォークソング歌手らが連帯を叫んで大きなうねりになったものだったが、今はどうなのだろう?

 <一方、新華社電によると、同自治区当局者は7日、5日にウルムチで発生した最初の暴動の死者がさらに増え156人に達した、と伝えた。死者のうち129人が男性で残りは女性というが、漢族、ウイグル族の内訳は公表していない。負傷者は1080人。この暴動には数千人が加わったとされ、これまで1434人が身柄を拘束された。暴動を起こしたとして複数の組織に対する捜査も進められ、すでに中心人物の容疑者数人を拘束。5日夜の暴動発生以降、中国当局は2万人の人民解放軍や武装警察部隊を投入し、鎮圧に当たらせたという。>

 女性も27人死亡した、ということか。

 <中国当局は、これに呼応して、西部カシュガルやイリ、アクスでも暴動を組織しようとする動きをつかんだとしておりインターネット規制を強化、各地で厳戒態勢を敷いている。幹線道路には暴動を扇動した容疑者の逃亡を防ぐため、検問所も設けられている。新華社電によると、ウイグル族住民が多いカシュガルでは6日午後、外国人観光客も多数訪れる中国最大規模のモスク(イスラム教礼拝所)「エイティガール寺院」に住民200人以上が集結しようとしたが、警察当局が阻止した。インターネット上で抗議行動が呼びかけられたとの情報もある。>

 なるほど、外国人向け観光地はいい場所だ。

 <地元当局は、国外の亡命ウイグル人組織が「暴動を扇動している」と主張しており、ウルムチなどでは、国際電話やインターネット接続を遮断し、ウイグル族側の主張が外部に漏れることを懸命に阻止している。一方、国営中国中央テレビは7日朝、群衆による襲撃で負傷し病院で治療を受ける漢族男性が証言する映像などを流し続け「ウイグル族による暴力犯罪事件」との側面を強調。中国当局の対応は正当とする情報統制を行っている。いずれの官製報道も、「漢族支配」に対するウイグル族の不満や、両者間での対立激化など、事件の背景には一切触れていない。>

 共産党の宣伝工作は徹底している。南京事件のやり方を見れば分かる。自分が悪くても、徹底して相手の犯罪行為にしてしまうのだから。でも、そういう一時的な正当化は歴史の検証を経ればあえなく真実が暴露され、共産党の犯罪が分かってしまうのだ、と思う。

 <亡命ウイグル人組織「世界ウイグル会議」の傘下にある日本ウイグル協会(本部・東京都)は7日、ウルムチ市内などの漢族住民が多い地域で、少数派ウイグル族住民に対する暴行や略奪が行われたとの情報を、本紙に明らかにした。漢族住民による報復と見られる。>

やると思ったよ、漢民族は。

 朝日新聞7月7日夕刊8面2段見出し<「世界ウイグル会議」主席/騒乱関与を全面否定>はワシントン支局の村山祐介特派員の記事。
 <中国・新疆ウイグル自治区での騒乱で、中国政府が関与を指摘した亡命ウイグル人組織「世界ウイグル会議」主席で米国在住のラビア・カーディル氏(62)が6日「非難は完全に間違っている」と関与を全面否定した。ロイター通信などに語った。同氏は「国外からの指揮と扇動」があったとの中国政府の主張について「自治区に住む親族にデモに近づかないよう電話で注意しただけだ」と反論。デモについては「中国政府が非難するように暴力的ではなかったし、(参加者は)暴徒でも分離主義者でもなかった」と指摘した。同氏は実業家だったが、ウイグル族のデモを巡る当局批判で共産党の役職を解かれ、1999年に突然投獄。2005年に米国に亡命し、ウイグル族の人権問題を訴えてきた。ノーベル平和賞候補に挙がったこともある。>
 という内容だ。中国共産党政権がこういう良心的な人を人身御供にしようと画策している。お笑いだが、笑ってはいられない。日本も防備を固め、沖縄を取られないようにしないと。
 毎日新聞7月7日夕刊は2面<新彊暴動「自制を」/米が呼びかけ>で、朝日新聞も夕刊で同様の記事を掲載していた。毎日新聞の記事を読もう。モスクワ支局というか米露首脳会談のためにワシントンから同行した草野和彦特派員の記事だ。
 <中国新疆ウイグル自治区ウルムチで5日に起きた大規模暴動について、ギブス米大統領報道官は6日「暴力によって多くの死傷者が出たとの報道があり、深く懸念している」との声明を出した。暴動の背景が不明のため、批評するのは時期尚早としながらも「すべての人々に自制を呼び掛ける」としている。>
 短い記事だ。中国当局を非難していないのが特徴だろう。伊藤正氏の指摘通りだ。

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岡崎久彦氏の「政府は日米密約を認めよ」は正しい~産経新聞09年7月7日[正論]

 産経新聞7月7日朝刊の[正論]は岡崎久彦・元駐タイ大使の<村田発言の誠意を無にするな>だった。核持ち込みに関する密約を暴露した村田良平元外務事務次官を擁護した論である。といっても、岡崎氏のことだから、左翼勢力の擁護論とは一線を画しており、その論は面白い。小見出しは≪今回も失望した事後対応≫、≪保秘義務に反しない発言≫、≪将来の手を縛られない方策≫の三つだった。
 早速、読んでみよう。
 <核問題に関する村田良平・元外務次官の発言を新聞で見た時は、私はこの問題の新たな発展を期待して胸を躍らせた。村田氏とは電話一本していないが捨て身の発言であることは聞かなくても分かる。公務員には職務上知り得た秘密を守る義務があり、それは退職後も適用され、懲役1年に及ぶ罰則もある。その危険を敢えて冒しても真実を語ろうという覚悟と見受けられた。永年の牡蠣がらのように固まった政府答弁を崩すにはこの位の捨て身の業が必要なのであるが、その後の展開は従来と全く変わらないのには失望した。>
 なるほど、国家公務員法の守秘義務は死ぬまで続くのか。
 <これは誰も傷つかない「事無かれ策」でもある。そういう事実は無いというのなら、守るべき秘密はもともと存在しないのだから保秘義務もない。すべては再び沈黙の中に葬り去られることになる。ただそれは、日本だけの沈黙であり、国際的には全く通用しない。あたかも駝鳥が叢に首を突っ込んで狩人から隠れたつもりであるのと同じである。>
 政府の対応だ。民主党政権になったら、本当に密約をばらすつもりなのだろうか?
 <ライシャワー博士(元駐日大使)に生前お目にかかった時は「大平外相ははっきり約束していたのに」と、憤然としてと言うよりも、馬鹿馬鹿しくて話にならないという調子で語られた。またその後、米国の外交文書の中にその会談の事実が確認されたという。私が心配するのは、いつまでもこんなことをやっていると、日米同盟強化のための日米間の戦略的対話ができないということである。>
 ライシャワー氏が昔、毎日新聞のインタビューで密約を明かしたのも、日本政府が追認することを望んだメッセージだったのだろうが、日本政府はなぜか怯えて、行動できなかった。冷戦時代は仕方なかったと思うが、冷戦終結後までのんべんだらりと昔の冷戦思考を続けるようでは、国際社会で生きていけないだろう。
 <この前の正論にも書いたが、ブッシュ前政権時代のアーミテージ氏の日米戦略対話は何ら実を結ばず、そのあとのゼーリック氏の米中戦略対話は大きな業績を残した。両方とも、米国側は相当な意気込みでやった対話であり、この失敗で米国側の咎に帰すべきものは何もない。>
 そういうことだと思う。アーミテージ氏が日本を罠にはめようとしたとは考えられない。戦略対話ができなかった日本政府の勇気のなさが責められるべきだろう。
 <よく、アメリカは今や中国の方が重要で日本は置き去りにされるだろうと言う人は多いが、アメリカ側に関する限り現状ではその心配は全く無い。キャンベル氏は言っている。「中国を扱う最善の方法は日本とのパートナーシップをできる限り強化することであり、他の選択肢は無い。その基礎が無ければアジアでは何もできない」>
 カート・キャンベルのような考えをする人だけでないのが問題なのだが。
 <そこで私が心配するのは、日本が戦略対話の無能力者であるためにせっかくのアメリカ側の好意的姿勢に応えられないことである。>
 キャンベル氏のような親日派がどんどん脇に追いやられて、ゼーリックのような親中派がのしてきている。
 <北朝鮮の核武装を前にして、日本に対する米国の核の傘の実効性の問題、いわゆる拡大抑止力の問題の議論が喧しい。同盟国間で軍事戦略を論じる以上、核戦略論は避けて通れない。現にNATO(北大西洋条約機構)では、核計画グループNPGがNATOの核戦略を随時討議している。日米間にも当然に同じような協議と計画の場が望ましい。しかし、日本がいったん約束したことまで知らないとシラを切っている状況で、共通戦略などどうやって議論するのだろう。>
 そういうことだ。約束したんだろう? きちんと認めろよ、という単純なことなのに。
 <村田氏の発言が保秘義務に反するかなどは、村田氏にとっては末梢事であろうが、私は違反にならないと思う。裁判になれば秘密の実質的内容、つまりそれが真に保秘義務の対象とすべき秘密かが問われる。役所内の不正の内部告発は守秘義務に抵触しない。それは本来秘密にすべきでないものを漏らしているからである。このケースもすでにアメリカの外交文書で公表されているものであり、極めて特殊かつ姑息な理由以外では秘密にする必要はないものである。>
 そんなに守秘義務問題が今後の焦点になりそうなのだろうか?
 <今回の発言で私が期待したことは、もうそろそろ従来の姑息な政府答弁はやめて知的正直さ(インテレクチュアル・インテグリティー)に立ち戻ることである。その後の軍事技術の進歩によって、この問題が実態に及ぼす影響は少なくなっている。問題は、同盟の信頼関係、戦略対話の基礎である知的正直さである。今正直に戦略対話をすれば、核兵器搭載艦船の寄港は情勢の大きな変化が無いかぎり不必要であるという結論が出る可能性もある。>
 インテレクチュアル・インテグリティーは知的正直さと訳すのか。
 <私は今後とも、自民党政府の姿勢の変化を期待する。民主党政権の場合は、願わくば、自民党時代の惰性を脱して、大平ライシャワー間の国際的約束の存在を認め、民主党の知的正直さを示した上で日米戦略協議の場を新たに構築して欲しい。>
 そういうこと。やはり、民主党政権に期待するしかないのか?
 <マスコミなどは、政権成立早々、非核三原則の解釈も含めて従来の政府答弁の再確認を求めるであろう。民主党としては、すべての問題について自民党時代の先入観に捉われす、必要に応じて抜本的に見直す用意があると言って、過早に言質を与えないで欲しい。それができてこそ、二大政党制の意味があり、民主党の勝利は歴史的意義があることになる。>
 言質を与えるな、と。いいアドバイスだ。
 <過去の答弁に捉われなければ、たとえば集団的自衛権について「権利はあるが行使はできない」などという答弁はイデオロギーの左右を問わず、知的に正直な人間が到底口にすることができなくなるであろう、と期待する。>
 やはり、そこに行き着いたか。これが岡崎氏の思考法だ。面白いことこのうえないが、少し微笑ましくもある。

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2009年7月 6日 (月)

世論調査の数字に一喜一憂する政治ではない政治を望む、と言う田中均氏は正論だ~7月6日毎日新聞夕刊コラム[時をよむ]

 毎日新聞7月6日夕刊文化面コラム[時をよむ]は田中均・日本国際交流センターシニアフェロー、東大公共政策大学院特任教授、元外務審議官の[日本の政策形成力を考える]。見出しは<「世論」に右往左往せぬ安定した政治基盤を>だった。

 見出しを見ただけで、大体内容は推察できるが、そううまくいくのかいな、というのが見出しを見た印象だ。ざっと読んでみると、①世界が大きく変動している②日本には新たな戦略が必要だ――ということを前々回と前回のコラムで書いたが、今回は「今の日本は大きな戦略を描き、それを実行していける状況にあるのか、そういう状況を作るにはどうしたらいいのか」を論じているようだ。

 政治の現状と政策形成のあり方に危惧を持っている、と言う。

 <民主主義体制において国民の「民意」を問うのは選挙を通じてである。ところがここ数年、選挙を経ることなしに何度も首相が交代し、政党は「内閣支持率」や個々の課題についての世論調査を頼りに「人気取り」的な行動をとろうと右往左往しているように見受けられる。「世論調査」に基づく「世論」が国会議員を金縛りにし政策を縛っているかのようである。>

 私も今の世論調査の数字を基にした政治は不健康だと思っている。

 <英国のサッチャー首相はかつてユーロ参加の是非を国民投票で問うべきだという要求に対し決然と言い放った。十分な情報を持たない国民に聞くのは、選挙により統治を一定期間任された議院内閣制の下での政府の役割放棄である、と。>

 知らなかった。サッチャー氏は毅然としていたのだ。

 <私たちは80年代に米国と通商交渉をした際、対日報復法案を前に、よく言ったものだ。「議会の保護主義に抗し米国政府は責任ある立場で見解を示すべきである」と。選挙を通じ各州から選ばれる議員は選挙区の雇用を守ろうと保護主義に走る。米国の場合、究極的には大統領の拒否権で三権分立は担保される。大統領の政策が好ましい結果を作れなければ政権交代である。9.11同時多発テロは米国民の愛国心を刺激し、ブッシュ共和党政権は軍事力の行使に走る。しかし、イラク戦争で結果を出すことはできず、オバマ民主党政権が誕生する。政権交代は健全な民主主義になくてはならない。>

 アメリカのケースだ。大統領制のシステムは分かりにくいが、大統領の拒否権で議会への優越を担保している、ということのようだ。

 <政策選択の幅が小さい時であればまだ良かったのかもしれない。今や、人口が増え、高い経済成長が見込め、強い米国に依存することが可能であった時代は過ぎ去ってしまっているのである。少子高齢化が現実となり、多極化に向けた世界の変動の中で、日本は変化を恐れず思い切った施策を講じなければいけない。>

 そういうことだ。選択肢はどんどん狭まってきた。

 <必要なのは国民の目だけを気にした短期的な政策ではなく、明確なビジョンを持った戦略である。これを可能にするためには、少なくとも今後4年程度は長期の計に基づき能動的に行動できる安定した政治基盤が構築されなければならない。この点で次回の総選挙は日本の未来を決める決定的な重要性を持っている。>

 4~5年というのは一つのプロジェクトが始動して軌道に乗るために必要な期間、それも最短でも、という期間だろう。

 <安定的な政権の下で政策形成のあり方についても十分な吟味が必要である。長期的な国家戦略と戦略に根差した具体的な政策を進めていかなければならない。確かに官僚機構に多くの問題があったのは事実であろう。しかし、それは「官僚中心から政治家中心へ」とか、国会議員を省庁の中に送り込めばいい、政府関係機関から官僚OBを排除し民間人を当てる、というほど単純なものではあるまい。>

 これは民主党の政策への全面的反論だ。

 <必要なのは、政治の理念、官僚の知識と経験、民間の創意といったものを最大限活用し、既得権を打ち壊して新しい施策を打ち出す体制づくりではなかろうか。今ほどそれぞれが役割分担し、「オール・ジャパン」の政策形成が求められてい時期はないと思う。>

 そうなのだが、どうやって、そういう体制を作るのだろうか?

 <対外政策についても、私はかねがねホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)事務局にあたるようなプロフェッショナルな機構を早急に立ち上げる必要性や外交についての政策基盤を強化していくことを可能にするような外交問題評議会を民間資金で創設することを提案してきた。日本には新しい時代に向けての「変化」が必要である。過去の延長ではなく創造的な施策を可能にする体制の詳細については、次回のコラムで論じることにしたい。>

 以上である。いいことを言っているが、どのようにして実現するか、というプロセスは次回も出てこないようだ。そこが一番知りたいのだが、田中氏も官僚だからなぁ。

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北朝鮮のミサイル7発発射で命中精度アップらしい、さあ日本はどうする?~朝日新聞7月5日、6日朝刊+産経新聞7月6日[正論]村田晃嗣氏寄稿

 北朝鮮が7月4日、またミサイルを打ち上げた。
 朝日新聞7月5日朝刊1面3段<ノドンも発射か/北朝鮮計7発>で一報を伝えていた。ソウル支局の牧野愛博特派員の記事だ。
 <北朝鮮は4日朝から夕方にかけて、東部の江原道旗対嶺(キッテリョン)のミサイル基地から日本海に向けて弾道ミサイル計7発を断続的に発射した。韓国政府が明らかにした。韓国軍は7発とも400~500㌔㍍飛行したと分析している。>
 という前文で、
 <午前8時~8時半に2発発射した後、同10時45分、正午、午後2時50分、同4時10分、同5時40分ごろにも各1発撃った。韓国政府などによると速度や航跡などから1~4発目が短距離弾道ミサイル「スカッドC」(射程約500㌔㍍)で、7発目は飛距離を抑えた中距離弾道ミサイル「ノドン」(同約1300㌔㍍)の可能性が強く、5、6発目はスカッドかノドンのいずれかとみられるという。>
 ノドンミサイルだ、というのだ。
 <日本のほぼ全土を射程に収めるノドンも、燃料を減らし発射角度を調整すれば飛距離を抑えることが可能という。実際に発射されたのであれば日本にとっては大きな脅威だ。>
 まあ、大変なことじゃないか、と思うのだが、そんな大変という騒ぎ方を新聞はしていない。どうもテポドンの時は騒いで、ノドンでは不感症になっている、という日本の新聞作りがおかしいのではないか、と思えてきた。
 <ノドンもスカッドも実戦配備されている半面、2006年7月に長距離弾道ミサイル「テポドン2」とあわせて7発撃たれて以来、発射されておらず、性能を確かめる必要があったとみられる。ノドンの飛距離を短くしたのであれば、関係国の反発を抑える狙いがあった可能性がある。>
 そうなのか? 飛距離を調整できるのは進歩じゃないか。
 <ノドンは移動式発射台から発射でき、事前の探知が難しい。約200発が実戦配備されている。>
 随分と遠慮した書き方だが、ノドン200発は照準を日本の大都市と在日米軍基地に絞っているのではなかったのか?
 朝日新聞7月6日朝刊国際面3段記事<ミサイル精度向上か/北朝鮮/「性能を誇示」の指摘>には次のような韓国の分析が掲載されていた。ソウル支局の箱田哲也特派員の記事だ。
 <北朝鮮が4日、日本海側に向けて発射した7発の弾道ミサイルは、事前に設定された航行禁止区域内のほぼ同じ地点に落下したことが韓国政府などの分析でわかった。同政府関係者は5日「少なくとも短距離のスカッド(射程約500㌔㍍)については精度をかなり向上させている可能性がある」と語った。>
 ほ同じ地点に、か。うーん。
 <韓国政府は7発のうち2発程度が中距離の「ノドン」(射程約1300㌔㍍)の可能性があり、残りはスカッドとの見方を強め、分析を急いでいる。このうち5発は400~450㌔㍍離れたほぼ同じ海域に落下。残りの2発も近くに落ちたという。>
 ノドンミサイルが2発入っていたのか。
 <北朝鮮はちょうど3年前の7月5日未明にもノドン、スカッドに長距離弾道ミサイル「テポドン」を含めた7発のミサイルを発射したが、当時と比べても発射技術が高まったとみられる。ノドンが含まれていたとすれば、射程の長いミサイルをわざわざ短い飛行距離で落としたことになるが、別の韓国政府関係者は「スカッドとノドンの中間の射程を、ノドンで自在に調整してカバーすることを狙っているのではないか。そのための実験をするとともに、ミサイル輸出の相手国に性能を誇示する意味もあった可能性がある」と指摘する。>
 なるほど、の説明だ。輸出産業なのだから、アピールが必要だったわけだなぁ。
 <北朝鮮が挑発的な行為をとり続ける背景には外貨獲得を念頭にミサイル技術の確立を急いでいるとの指摘が研究者らの間から出ている。2度の核実験を受け、国際社会が制裁色を強めている現状の下では北朝鮮もすぐに米朝対話を再開させられるとは考えていない模様だ。>
 外貨獲得ねぇ。
 <また、4月後半ごろから始まった生産性を高めるための国家総動員運動「150日戦闘」もミサイル発射などこのところの動きに関係しているとされる。「戦闘」がいつ終わるのかはこれまで明確ではなかったが、朝鮮中央通信によると4日付の労働新聞は9月中に終わると明らかにした。>
 何でもいいけれども、結局分かったことは北朝鮮には7発を打ち上げるだけの燃料はあったこと、照準を外さないだけの技術レベルアップをしたこと、などだろう。イランやシリアから制服組や闇商人が実験を見に来ていたのだろうか?
 さあ、日本はどうすればいいのか?
◆麻生首相にG8サミットでの活躍を望む論もあるが……
 産経新聞7月6日朝刊[正論]は村田晃嗣・同志社大学教授の<「北朝鮮」で首相の手腕を期待>が掲載されていた。小見出しは≪30年の目まぐるしい変化≫、≪中国のGDP日本越えか≫、≪米国と協調し手腕発揮を≫だ。読んでみよう。
 面白いのは30年前との比較だ、ということだ。こういう比較もたまにはいいと思う。頭の体操になる。
 <今から30年前の世界を思い起こしてみよう。まず、1979年1月1日に、アメリカと中国が30年ぶりに国交正常化を果たした。国際政治の大きな構造変化であった。ほどなくイランでイスラム革命が起こり、アメリカは大使館を占拠されて苦境に陥る。他方、中国は工業・農業・国防・科学技術の「四つの近代化」をひた走っていた。イランは原理主義に、中国は実務主義へと、対照的な進路をとったのである。>
 中国とイランの分かれ道か。
 <この年、日本は初めて先進国首脳会議(サミット)を東京で主催し、大平正芳首相が議長を務めた。ヨーロッパ共同体(EC)の文書が日本の住宅事情を「うさぎ小屋」と記述したことが話題になったが、日本経済は全盛期に向かいつつあり、アメリカの日本専門家エズラ・ヴォーゲルの著書『ジャパン・アズ・ナンバーワン』が翻訳されて、ベストセラーになった。駐日米大使マイク・マンスフィールドは、貿易摩擦に悩む日米関係を「世界で最も重要な二国間関係」と呼んで、危機管理に余念がなかった。>
 栄光の80年代か。
 <この慌ただしい年は10月に韓国の朴正煕大統領が側近に暗殺され、12月にソ連がアフガニスタンに侵攻することで幕を閉じ1980年代に道を譲った。>
 朴正煕暗殺は1979年だったか。ソ連のアフガン侵攻が79年だったことは覚えていたのだが。
 <あれから30年、紆余曲折を経て今や米中関係こそが「世界で最も重要な二国間関係」(ヒラリー・クリントン)と呼ばれ米中のG2によるグローバル・ガバナンスさえ議論されている。中国は「四つの近代化」に大きな成果を収めたが反体制派が「五つ目の近代化」と呼ぶ民主化は遅延したままである。>
 中国問題という大きな問題だ。ここでは行数が増えすぎるので書かないが、明治・大正・昭和の日本の進路を決めたのは、まさしく中国問題だったのだから。
 <イランは依然としてアメリカを悩ませているが、イスラム革命体制にも綻びが見えてきた。30年前にカーター米大統領はイランへの対応に失敗して政治生命を絶たれたが、今のところオバマ大統領はより慎重な対応をとっている。>
 イランという国を日本はもっと大切にすべきだろう、とずっと思っている。欧米との価値観の違いがここで鮮明に出てくる。日本人はイラン人に対する恐怖も嫌悪もないはずだ。
 <30年前に大統領の暗殺という悲劇を経験した韓国は今年また前大統領の自殺という悲劇に遭遇したが、民主化の実績は揺るがない。かつてソ連軍を苦しめたアフガニスタンは今度は米軍を苦しめている。イラクではなくアフガニスタンこそがオバマ大統領にとっての「第二のベトナム」になるかもしれない。>
 アフガニスタン問題も本当は日本は米国と違うアプローチを取るべきだと思う。しかし、日本の弱体政権でそういう大きな決断はできっこないから、諦めている。
 <さて、肝心の日本である。ほどなくイタリアでG8サミットが開催される。麻生太郎首相にとって最初のサミットであり、おそらく最後のサミットになるであろう。そして、日本が世界第二の経済大国として、アジアを代表してこの会議に臨めるのも、あるいは、これが最後になるかもしれない。来年には中国の国内総生産(GDP)が日本のそれを150年ぶりに越えるとの見通しもあるからである。>
 日中のGDP逆転は何と150年ぶりなのか!
 <1970年代の日本政治は保革伯仲の時代であった。1980年の大平首相の急死と衆参同時選挙の結果、自民党が大勝し、以後80年代には自民党の安定政権が続いた。それに対して、来るべき解散・総選挙では、自民党政治の大幅な後退や場合によっては崩壊が予想されている。30年前に比べて、日本の経済も政治も相当衰弱しているのである。>
 政治と経済の衰弱、というが、たしかにそうだが、この言葉は耳にしたくない言葉だ。
 <その上、30年前には顕在化していなかった北朝鮮の脅威に日本は直面している。すでに、サミットには30年前のような影響力はない。とはいえ、サミットで北朝鮮問題にどの程度国際的な関心を集められるかは、麻生首相にとって、数少ない腕の見せ所ではなかろうか。>
 ここからが本論だ。
 <確かに、北朝鮮問題は深刻である。しかし、北朝鮮体制は早晩崩壊するであろう。北朝鮮問題はより長期的かつ本質的には中国が北朝鮮を抑制できるか、また、その意思を有するかという中国問題である。急速に大国化する中国が自国の狭い国益を越えて国際秩序の形成と維持に責任を負えるか否か、が問われている。>
 北朝鮮問題は中国問題だ、と。
 <オバマ大統領にとっても今回が初のG8サミット出席となる。イラン問題にどう対処するか、アフガニスタン問題でいかに国際的協力を確保するかが、大統領にとっては重要な課題であろう。前回の洞爺湖サミットはリーマン・ブラザーズの破綻前だったこともあり、国際金融の規制について十分な議論ができなかった。今回のサミットでは、この分野の議論も掘り下げなければならない。>
 洞爺湖サミットは福田康夫首相だったのか。
 <なにしろ麻生首相は国内政局の不安定な中でのサミット出席である。「外交の麻生」を自任する首相だがどれだけの成果が挙げられるかは不明である。だが、北朝鮮問題をアジェンダ(重要課題)に乗せながら、イランやアフガニスタン、国際金融、地球環境問題、核軍縮などでも、オバマ大統領と協調しつつ、手腕を発揮してもらいたい。>
 アジェンダに載せることだけで精一杯になるかな。
 <もはや30年前の日本とは異なる。「世界第二の経済大国」として存在を示すだけでは意味がない。サミット外交にも一層の手腕が求められるようになっているのである。>
 なかなかなぁ、難しいと思うよ。

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都議選は民主29%、自民+公明で22%の調査結果~読売新聞7月6日朝刊

 都議選も自民党は負けそうだ。読売新聞7月6日朝刊1面2段記事<都議選「民主に投票」29%/自公は計22%/本社世論調査>は、各政党にしてみれば独自の調査をしているだろうから、「こんなものだろう」という既視感がある数字かもしれないが、一般読者にとってはやはり驚きの数字だ。東京は創価学会の牙城で、都議会も創価学会の応援を得た公明党が相当に頑張るので、自公がそうは言っても底堅いだろう、と思っている人も多かっただろうと思うからだ。読売新聞の紙面は「調査結果の詳細は7日朝刊に掲載する予定です」とあり、いろいろなクロス集計を7日の朝刊で見ることができそうだ。
 6日朝刊の記事を読んでおこう。
 前文は静岡県知事選挙の川勝平太氏当選のトップ記事と一緒にしてあって、政局記事なので、まず、その総合前文から読んでいこう。
 <静岡県知事選は5日に投開票が行われ、民主党などが推薦した候補が自民、公明両党の推薦候補に競り勝った。一方、東京都議会議員選挙(12日投開票)を前に、読売新聞社が4、5日に都内の有権者を対象に実施した世論調査でも麻生内閣の支持率下落など国政の動きを反映し民主党が堅調で、自民党が苦戦を強いられている構図が浮き彫りとなった。静岡県知事選の敗北に続き、都議選でも与党が振るわなければ、麻生首相の描く衆院解散・総選挙の戦略が影響を受けるのは必至で、政局は緊迫の度合いを増している。>
 という文章だった。これと、都議選調査のほうは、
 <都議選の世論調査は、民主党候補に投票するとした人は29.4%で、16.9%の自民党を大幅に上回った。公明党は5.1%で「石原知事与党」の自民、公明を合わせても22.0%にとどまった。ただ、4割以上がまだ投票先を決めておらず、情勢はなお流動的だ。>
 という書き出しだ。
 <前回都議選(2005年)の同時期の調査は、自民21.9%、民主14.3%で、選挙結果は自民48議席、民主35議席だった。今回、民主への投票を考えている人の割合は15.1ポイント増え、自民は5.0ポイント減った。公明も前回(6.7%)から1.6ポイント減。共産党は4.5%で、0.3ポイント下回った。>
 なるほど、前回の都議選と同時期に調査して比べるという手法なのか。それは先見性があるなぁ。
 <都議選への関心は「大いにある」「多少はある」の合計が81%で、前回(68%)より大幅に上昇した。>
 投票率が高くなりそうだ。
 <次期衆院比例選の投票先でも民主39.8%、自民20.8%となり、都民は自民に厳しい見方をしていることがうかがえる。麻生内閣の支持率は18.3%、不支持率は72.0%だった。>
 あとは調査のやり方だ。
 <調査は無作為に作成した番号に電話をかける方法で行った。有権者在住が判明した2306世帯のうち1444人から回答を得た(回答率63%)。>
 読売新聞7月6日朝刊3面トップは[スキャナー]<首相がけっぷち/静岡知事選敗北/党内、渦巻く不満/「麻生降ろし」加速>のまとめ記事が掲載されていた。政治部の小林弘平記者の署名記事だ。
 読んでみよう。
 <5日に投開票が行われた静岡県知事選で、与党の推薦した候補が民主党などの推す候補に敗れた。12日投開票の東京都議選でも、自民党不振の傾向が読売新聞社の世論調査でわかった。麻生首相の窮状は一層深刻化していて、衆院解散の行方も不透明だ。>
 という前文。解散時期が最大の焦点のように書いている。どうせ9月までには解散するのだろうが、どうしてそんなに時期にこだわるのだろう?(◆はもともとの小見出しだが、これはネットでの見出しだ)
◆「首相の迷走さえなければ」…自民陣営に不満◆
 <今回の静岡県知事選を巡っては麻生首相(自民党総裁)が党役員人事などで選挙期間中に迷走したことが痛手になったとの声が与党内に充満している。自民党の尾辻参院議員会長は5日夜、都内で記者団に「人事を巡るゴタゴタなど、中央政界の混乱が悪影響をもたらしたことは否定できない」と語った。民主党が、推薦候補の川勝平太氏と同党所属の参院議員だった海野徹氏で支持層を奪い合う展開となったことで、当初は与党の推薦を受けた坂本由紀子氏が優位との見方もあった。坂本氏は内閣支持率低迷に危機感を抱き、女性議員の応援を中核にすえ「自民隠し」の手法で臨んだ。選挙戦終盤では党幹部が組織・団体回りを強め、公明党も票の掘り起こしに全力を挙げたが及ばなかった。接戦だっただけに「首相の迷走さえなければ」との不満が逆に募っている。>
◆首都決戦…自公で過半数の見通し立たず◆
 <首相は今回の結果にかかわらず都議選直後に衆院を解散し、8月上旬の投開票に持ちこみたい考えだ。首相に近い自民党の菅義偉選挙対策副委員長は5日夜、記者団に「静岡県民の判断であり、衆院解散戦略には全く影響がない」と言い切った。ただ、都議選結果を無視して、その直後の衆院解散に踏み切ることは阻止するとの声が与党内の大勢だ。そして、「首都決戦」の見通しは厳しい。今回の世論調査と2005年都議選の1週間前の世論調査を比べると、自民、民主両党の勢いの差は明らかだ。投票政党は自民党が21.9%から16.9%へ落ち、民主党は14.3%から29.4%へ伸びた。勝敗ラインとされる「自公両党で過半数(64議席)」の確保の見通しは立っていない。>
 自民+公明で64議席が勝敗ラインか。
 <衆院比例選の投票先も自民党が20.8%、民主党が39.8%で、無党派層が多いとされる東京でのこうした傾向は、衆院選で各道府県の「1区」を中心とした都市部での投票行動を占うものだとの見方もある。>
 なるほど、そういうことか。無党派層が多い1区か。マニアックだな。
 <首相周辺は「都議選が終わったら解散するだけだ。麻生降ろしも無視する」と強気だが、与党の視線は日増しに厳しくなっている。自民党の中川秀直・元幹事長は5日、テレビ朝日の番組で「麻生さんは選挙に勝てない状況だったら、国民、党を優先して判断なさるべきだ」と述べた。首相がこうした退陣を求める声に応じなければ、両院議員総会を開いて辞任を迫る構想もあり、署名集めも始まっている。9月の党総裁選を前倒しして、総裁を交代させようとする動きも続いている。公明党からも「首相が(イタリア・ラクイラでの)サミット(主要国首脳会議)に出席している間、麻生降ろしが加速するだろう」(幹部)と突き放した見方が出ている。>
 何かひどいものだなぁ、麻生一人のせいじゃないのに。
◆民主のトゲ…鳩山代表の「虚偽記載」◆
 <一方、民主党は都議選での躍進への確信を深めつつあり、衆院選に向けて弾みをつけたい考えだ。岡田幹事長は5日夜、静岡県知事選の結果を受けて「民主党への大きな期待を実感する。この勝利を都議選に引き継ぎ、衆院選で政権交代を成し遂げるよう全力でまい進する」との談話を発表した。>
 まあ、そういうことだろう。
 <懸念材料は、鳩山代表の資金管理団体による政治資金収支報告書の虚偽記載問題への批判が高まりつつあることだ。読売新聞社の2,3日の緊急全国世論調査では、鳩山氏が説明責任を果たしていないとする人が80%に上っていて、党内にも危機感が漂い始めた。>
 小沢一郎氏問題の後は鳩山由紀夫氏問題か。昔の総選挙前の内務省による選挙干渉を見ているようだ。
 <自民党の小池百合子・元防衛相は5日のフジテレビの番組で「これで(鳩山氏の)首相の目はない」と批判。共産党の小池晃政策委員長も5日、テレビ朝日の番組で「国会できちんと明らかにする必要がある」と強調。社民党の福島党首も鳩山氏の説明を求めた。>
 また同じことの繰り返しか。川勝平太氏を首相候補にするか?

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2009年7月 2日 (木)

韓国も中国も高等教育に力を入れている:日本が抜き去られる日が近いのか?~朝鮮日報7月2日

 儒教の伝統がいまだに根強く残る韓国では有名大学卒業→キャリア公務員などは尊敬される階層である。日本以上に受験競争が激しいのは学歴社会が熾烈であることの裏返しだ。だから、大学のランク付けにも日本以上に関心があるようだ。
 朝鮮日報は7月2日朝刊で独自の大学評価を行い、紙面的に全面展開しているらしい。紙面は読んでいないが、日本語版には2日、山盛りに関連記事がアップされていた。
 韓国内での大学ランクとアジアでのランクである。QSというイギリスの評価機関との共同調査だったらしく、日本人にはなじみのないQSなる組織についても次のような説明が出ていた。
 <QSとは英国の世界的な大学評価機関で、設立者のクアクアレリ氏とシモンズ氏の頭文字を取って名付けられた。英紙「ザ・タイムズ」と協力し、世界最高の権威を誇る「世界大学ランキング」を2004年から発表している。同紙とQSによる「世界大学ランキング」は毎年世界の上位200大学をランク付けしており、昨年は韓国からソウル大学、KAIST、ポステック(浦項工大)の3大学が200位以内に入った。>
 世界はさておき、アジアでは、とQSと韓国で最も知識レベルの高い朝鮮日報が共同調査を行った、ということのようだ。
 本記の見出しは<大学評価/ソウル大4分野で韓国1位、アジア1位は東大/
五つの学問分野で評価>だった。へえー、まだ東大が一番なのか。驚いた。
 本文を読もう。
 <本紙とQSが共同で行った「2009年アジア大学評価」で、韓国国内での総合1位は 韓国科学技術院(KAIST)となったが、五つの学問分野に対する世界の学者による評価を示す「学界評価」では、ソウル大学が圧倒的な1位となった。>
 この総合1位というのの意味がよく分からない。
 <ソウル大学は▲人文・芸術(アジア6位、以下カッコ内はアジア順位)▲生命科学・医学(5位)▲自然科学(5位)▲社会科学(4位)の4分野で国内1位となった。工学・情報技術(IT)分野ではKAISTが1位(8位)だった。この「学界評価」では、アジアの大学における研究動向に詳しい世界の学者2417人に対して「自分が専門とする学問分野で卓越したアジアの大学」を聞き、その回答を基にランク付けを行う「同僚評価」方式が採用された。>
 同僚評価方式などというともっともらしいが、結局、専門家たちの感覚で決めているんじゃないかな?
 <「学界評価」の指標はアジア大学評価項目で30%の比重を占める最も重要な評価基準となる。しかし、ソウル大学は国際化の項目でKAISTに大きく水を開けられ、総合順位では韓国1位の座を明け渡した。また高麗大学は社会科学分野では韓国2位(17位)、人文・芸術3位(24位)、生命科学・医学3位(23位)となった。延世大学は人文・芸術2位(18位)、社会科学3位(20位)。西江大学は人文・芸術4位(27位)、社会科学5位(45位)となり、梨花女子大は社会科学4位(44位)、人文・芸術5位(33位)だった。>
 この「国際化」が何なのか?
 <アジア全体では、五つの学問分野すべてにおいて東京大学が1位となり、優位を示した。しかし、東京大学も国際化の項目などでは大きく出遅れ、総合順位では香港大学と香港中文大学に続いてアジア3位となった。>
 こういうことらしい。香港が国際化で1位というのは、英語を使っている、ということなのか?
 <東京大学に続くアジア2位と3位は▲人文・芸術は北京大、京都大▲工学・ITは清華大、シンガポール国立大▲生命科学・医学は北京大、京都大▲自然科学は京都大、北京大▲社会科学は北京大、シンガポール国立大の順となった。>
 中国のナンバーワンは工学系統では清華大、法文系統では北京大、ということなのか?
 面白いのは解説だった。<大学評価/アジア上位に韓国2校だけ/工学・IT分野>の見出しである。
 <「工学・情報技術(IT)で一国の経済が10年間潤される」といわれる。1980年代中盤のTDX(Thin‐beam Directional X'tallization Process)技術は韓国の電子産業を発展させ、1994年に世界で初めて開発されたCDMA(符号分割多重接続)の商用技術は世界最高の移動通信産業を育成した。だが「IT大国」という名声とは裏腹に、韓国の大学における工学・IT分野の競争力は極めてぜい弱だ。本紙と大学評価機関QSによる「アジア大学評価」の五つの学問分野別「学界評価」の結果、工学・IT分野で25位以内にランクインした韓国の大学は、8位の韓国科学技術院(KAIST)と12位のソウル大だけだった。総合順位で4校が25位以内にランクインしたことからすれば、みすぼらしい結果といえる。>
 韓国の1980年代の発展の鍵を握ったのがTDX技術で、94年のCDMA技術も世界初だった、と。初めて知ったが、技術の世界では有名な話なのだろうか? やはり、技術開発と産業の発展とは連関しているのだろうか?
◆スーパースター級の学者がいない
 <ソウル大は総合順位で8位だったが、工学・IT分野では12位にとどまった。ほかの四つの学問分野がすべて6位以内だったことからすると、工学・IT分野の評価が相対的に低かったといえる。私立大学の工学・IT分野の評価結果も期待を下回った。ポステック(浦項工大)は30位、延世大は40位、高麗大は42位だった。インドネシアのバンドン工科大学(21位)やタイのチュラロン・コン大学(24位)よりも低い順位だ。総合評価で50位以内に入った梨花女子大、成均館大、漢陽大も工学・IT分野では50以内に入れなかった。総合順位でトップ50に入ったのは8校だが、工学・IT分野では5校だけだった。>
 韓国の知識人たちは工学・ITにご執心のようだ。まったくそっぽを向いている日本の知識人とは随分違う。
 <このような結果について、徐南杓(ソ・ナムピョ)KAIST総長は「韓国の大学は単純に論文の数だけを数えている。米国の大学の評価が高いのは論文数ではなく、重要な問題を解決しているため」と指摘した。ソウル大工学部のある教授は「国際的に高い評価を得るためには、輸出用のスーパースター級の教授が必要。だがスーパースター級の教授になるために海外の学術大会などに熱心に参加していれば、研究費支援などでむしろ冷遇されるのが現状」と語った。4年前に提出されたソウル大の内部報告書で「工学部の競争力が弱いのはスーパースター級の教授が不足しているため」と指摘されたのも、同じ趣旨といえる。>
 韓国でも象牙の塔内の権力闘争が厳しいようで、やはり、国際派よりはドメスティックな国内実権派が強いようだ。
 <韓国の大学の工学部による科学技術論文索引(SCI)クラスの論文数、研究費はここ数年で大幅に増加した。しかし、英科学誌「ネイチャー」など国際学術誌に掲載される論文はわずかだ。最新の理論が発表される国際学術会議で活躍している学者もまれだ。国際的なスーパースター級の学者が少ないというわけだ。>
 スーパースター級というのはどういう人なのか? ノーベル賞候補になるくらいということなのだろうか?
◆1年ごとの短期プロジェクトばかりに熱中
 <日本で4年以上学び、最近韓国に帰国したある研究員は両国での研究室の雰囲気の違いに衝撃を受けた。研究室に所属する大学院生の数は日本の2~3倍だが、皆1年ごとのプロジェクトだけに熱心だった。同研究員は「日本ではまず研究を行い、その成果でお金を稼ぐといったコンセプト。韓国の学生は大規模な研究室で費用がかさむためか自己研究が不足している」と指摘した。>
 1年で稼いでしまおう、結果を出そう、ということなのか? もう少しかみ砕いて書いてほしかったが、日本のやり方をほめているようだ。
 <ソウル大も内部報告書で、ソウル大工学部の最大の問題点について、教授らが外部のプロジェクトだけに熱心な点を指摘している。海外の碩学の意見を盛り込んだ同報告書は「工学部の教授らは一人当たり年平均6.5個の政府プロジェクトを担当しているが、この問題が改善されなければソウル大工学部は発展しない」と指摘している。さらに深刻なのは、韓国のITなど技術産業自体を政府ではなく、企業がリードしている状況で、ほとんどの教授が企業の短期需要に合わせて研究しているという点だ。某大工学部の教授は「企業プロジェクトはすぐに成果を上げなければならないため、奥深く幅広い研究ができない」と話した。>
 そういうことか。先ほどの日韓比較もこういう文脈でならば理解できる。企業のひも付き研究はお金になるから。
 <延世大新素材工学科のミン・ドンジュン教授は「工学でこれといった成果が出せなければ、国際的な評価で遅れを取るばかりでなく、10年後、20年後の韓国経済をダメにする」と指摘した。>
 いいところを見ている、と思う。政治や世論に影響力のある人がこういうことをいつも言っている国は成長する、と思う。日本のノーベル賞受賞者数で日本の今のレベルを推し量ると失敗すると思う。今は相当にレベルが下がっているのではないか?
 面白いのは卒業生の評判だった。<大学評価:卒業生の評判が低い韓国>の記事には悲壮感さえ漂う。
 <本紙とQSの「2009年アジア大学評価」で韓国の大学は四つの評価分野(研究能力、教育水準、国際化、卒業生の評判)のうち、卒業生の評判(recruiter review)で最も哀れな成績を残したことが分かった。シンガポール大学がアジア1位、北京大学、東京大学がそれぞれ2位、3位になったこの分野で韓国の大学は1校も20位圏に名を連ねることができなかった。卒業生の評判は、全世界734人の企業人事担当者から、各大学が輩出した人材に対する満足度を尋ねランク付けしたものだ。>
 韓国の学生(卒業生)の評判が悪いとしたら、大学のせいではなく、韓国社会の特性のせいではないか、と個人的には思うのだが。出しゃばりで自分勝手で、勉強が出来ることを鼻にかけて、鼻持ちならない秀才が多いのではないか、と想像するのだ。
 <韓国の大学のうち1位だったソウル大学がアジア22位に過ぎず、西江大学が29位で韓国2位だった。KAIST(韓国科学技術院)は33位、延世大学と高麗大学はそれぞれ47位と53位にとどまった。総合順位では10位圏に2校、学問分野別評価ではソウル大が5つの分野のうち3つの分野でトップ5に入ったのとは対照的な成績だ。卒業生の評判において、国内6位はポステック(浦項工大)で、以下漢陽大学、梨花女子大学、慶北大学、仁荷大学が国内トップ10に入った。総合順位で国内11位(アジア61位)にとどまった西江大が、卒業生の評判では2位と上位につけたのは、西江大が出席管理をはじめとする学事管理を厳格に行い、「西江高校」と呼ばれるほど徹底した教育の結果だと、西江大のキム・ヨンス入学処長は話した。西江大出身のある金融専門家は「短い歴史と弱い人脈が、逆に卒業生に縁故に頼らない業務中心の競争力を身に付けさせた」と話した。>
 西江大学はいい大学らしい。
 <なお、韓国の大学が入れなかった20位圏には、早稲田大学、京都大学、慶応大学など日本の5校、復旦大学、清華大学、上海交通大学など中国の4校の名前が挙がり、続いて香港とフィリピン(各3校)、シンガポールとインド(各2校)、タイ(1校)などが入った。>
 早慶・京都が頑張っているのか。日本の大学生は卒業後は評判がいいのではないか、と思う。大学時代、昔ほどサボらずに勉強するが、日本では大卒は当たり前だから誰も偉ぶらないだろうから。
 <延世大学経営大学院の朴永烈(パク・ヨンニョル)教授は「私たちの間では国際化されたと話している反面、いざアジア地域の多国籍企業の社員に会ってみると、韓国の大学についてほとんど知らない」と述べた。>
 まあ、それは時間の問題でもある、と思う。ものすごい教授らがそろえば、一気に有名になるから。日本が高等教育でも日没を迎える日はそう遠くないと思っているのだが、その時、1位から10位までを占めるのは韓国ではなく、中国の大学かもしれない、と思う。ハーバード、プリンストンなどが競争相手で、本当のところ東大や早慶を相手にしていないのが今の中国の大学だから。
 日本も変な永田町の闘争をはやく止めて、高等教育を充実させないと、朝鮮日報の記者が書いているように、国家百年の大計は立たないと思う。しっかりせい、政治家!

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2009年7月 1日 (水)

韓国の原発再処理問題、2014年が目標とか~朝鮮日報、中央日報7月1日

 韓国の新聞の面白いところだ。7月1日の朝鮮日報に元科学技術庁長官のインタビュー記事が掲載されたのだが、同じ1日の中央日報にも同じ記事が出ているらしいのだ。紙面を見ていないから、ネットの日本語ホームページで判断するしかないのだが、どうもそうらしい。

 韓国の大手紙には夕刊がない。その代わりに大手紙は夕方には翌日の朝刊を発行して、駅や売店で売る。午後7時頃にはこの「早版」が手に入り、日本の新聞社がやっている早版交換のようなルールが自然とできているらしい。

 そこで、他社のインタビュー記事を基に一般記事を仕立て上げる、という芸当ができるのではないか、と想像するのだ。

 日本ではちょっと考えられないが、それぞれを独立のメディアとして尊重する立場を貫けば、それもありかな、と思う。

 日本の新聞社は競争意識が強すぎて、こういうことは物理的にできてもやらないだろう、とも思うのだ。

 まず、この中央日報の珍しい記事から見ていこう。見出しは<金始中氏「核再処理要求は経済的な目的、核武装はない」>である。

<「韓国は核武装をするというのでなく、純粋な経済・産業目的で最小限の使用済み核燃料再処理権限を要求しているのだ。 再処理できないことで生じる核廃棄物問題は数年以内に災難になるおそれがある」。 金泳三政権で科学技術処長官を務めた金始中元長官がこのように主張した。 先月30日、朝鮮日報とのインタビューでだ。 金始中氏は「われわれは平和的な核利用の純粋性を認めてもらうために過去20余年間努力してきたし、いまや国際社会もこれを認める段階にきたと考える」と主張した。>

 こういう書き出しである。

 <金始中氏は1997年にも金泳三政権の高位職出身者からなる「麻浦フォーラム」のメンバーとともに米国政府の関係者と接触し、平和的目的の再処理権限を認めてもらうための水面下作業を行った。金始中氏は「古里(コリ)・月城(ウォルソン)・霊光(ヨングァン)・蔚珍(ウルジン)の4地域の原子力発電所20基で発生した使用済み核燃料は現在1万㌧以上倉庫に積もり、2016年以降は各発電所で飽和状態になるが、われわれはこれを再使用するどころか手も着けられない立場」と述べた。 また「米国で『韓国の再処理権限要求は1992年の南北間の韓半島非核化宣言違反』という主張があるが、北朝鮮がすでに2度も核実験をするなど先に約束を破っているため、当時の宣言を不変の真理のように適用するのは適切でない」と述べた。>

 これは朝鮮日報の紙面からの引用である。

 <金始中氏は「私たちの科学技術者はすでに使用済み核燃料を核拡散の憂慮なく高レベル放射性廃棄物とリサイクルが可能なウラン・プルトニウムに分ける‘パイロプロセシング’という最新技術も確保している」と伝えた。 また「それでも国際社会が安心できなければ、使用済み核燃料を外国で再処理した後、それをまた搬入する方法などをまず推進するなど、段階的な方法をとることも代案になるだろう」と付け加えた。>

 難しい内容だ。

 <しかし、金始中氏は政界の一部で「核武装」に言及したり感情的レベルで「核主権回復」を主張するのはむしろ逆効果になる、と主張した。 金始中氏は「韓米協定などを通じてわれわれが技術の移転を受けるなど恩恵を受けたのも事実であるため‘奪われた主権の回復’などの感情的用語は自制する必要がある。 われわれはただ‘原子力の平和的利用拡大’だけに焦点を合わせるべき」と述べた。>

 以上である。朝鮮日報を読んでいない、中央日報の定期購読者にはこういう記事が出ることはいいことだ。

◆朝鮮日報のインタビュー記事

 今度は本家本元の朝鮮日報である。同じ7月1日のネットアップだから、1日の朝刊に掲載されているのだろう。見出しは<「韓国に核武装の意図はない」/元科学技術処長官、「平和的な核の再処理を行う権利」を主張>だ。任敏赫(イム・ミンヒョク)記者の記事だ。
 本文を読んでみよう。

 <「韓国は核武装を行う意図があるのではない。純粋な経済的・産業的目的で最小限の使用済み核燃料の再処理に関する権限を要求しているのだ。再処理できないことで生じる核廃棄物問題は、数年以内に新たな災害を呼び起こすことも考えられる」。金泳三元政権で科学技術処長官を務めた金始中(キム・シジュン)氏は6月30日に本紙とのインタビューに応じ、「われわれは“平和的な核利用を目指しているだけ”という事実を認めさせるために20年以上も努力を重ねてきた。今や国際社会もこれを認める段階に到達したと思う」と述べた。金氏は1997年にも、金泳三政権(当時)の元幹部らの集まり「麻浦フォーラム」のメンバーと共に米国政府の関係者と交渉を行い、平和目的の再処理を認めさせるための下準備を行ってきた。>

 同じ文章から始まっているのが面白い。こちらが本家本元だ。

 <金氏は「古里・月城・霊光・蔚珍の四つの原子力発電所にある20基の発電施設から発生した使用済み核燃料は、現在1万㌧以上も倉庫に積み上げられている。2016年にはどこの発電所も飽和状態となるが、われわれはこれを再利用するどころか、手も付けられない状況にある」「米国では韓国からの再処理を要求する動きについて、“92年に南北間で調印された韓半島(朝鮮半島)非核化宣言違反”という主張があるが、北朝鮮はすでに2回も核実験を行うなど、先に約束を破っている。そのため、当時の宣言を不変の真理のようにそのまま適用するのは間違っている」と主張した。>

 この辺、日本語版だけで読むと、中央日報では原発の日本語読みが入っていて、親切な感じもある。

 <さらに「このような状況で2012年の韓米原子力協定改正に向けた作業が開始されるため、米国に対して理解を求めるのも決して無理なことではないと思う。日本のケースを見てもそうだ」と指摘した。日本は数十年かけて技術的、政治的、外交的な努力を重ねた結果、1986年に日米原子力協定を改正し、再処理やウラン濃縮などの原子力開発全般に対する自主的な実験・研究を行うことを幅広く認めさせた。>

 日本のケースまでは中央日報は真似しなかったな。

 <金氏はさらに「わが国の科学技術者たちはすでに使用済み核燃料を核拡散の恐れをなくしたまま、高純度の廃棄物とリサイクル可能なウラン・プルトニウムとを分離する乾式再処理という最新技術も確保している。それでも国際社会が安心できないのなら、使用済み核燃料の再処理を海外で行い、再び国内に持ち込む方法をまずは行うなど、段階的な方法を採用することも考えられる」と主張している。>

 まあ、当然の主張だと思うが。

 <しかし、政界など一部では「核武装」に言及したり、あるいは感情的な次元で「核主権の回復」を叫ぶのはかえって逆効果との声も根強い。「形の上では核主権の回復ということになるが、このような議論を前面に押し出すと、国際社会に対して“要するに韓国は北朝鮮のように核兵器開発を念頭に置いている”という疑いを持たれるだけ」というのが、反対する側の主張だ。金氏は「韓米協定などにより我々が技術移転を受けるなどの恩恵を受けたのも事実だ。そのため“失われた主権の回復”などといった感情的な表現は使うべきでない。我々はただ“原子力の平和利用の拡大”だけに焦点を合わせるべきだ」と念を押した。>

 北朝鮮の問題がある時に言い出すと、そう取られるだろうが、こう言いたい気持ちはよく分かる。

◆朝鮮日報の社説

 朝鮮日報は7月1日の社説でもこの問題を取り上げた。見出しは<核燃料再処理は経済論理の下で議論を>である。

 <米国務省のタウシャー次官は最近、上院外交委員会に提出した答弁書で「現在、欧州連合(EU)、インド、日本が自国内で核燃料の再処理を行っているが、オバマ政権はこれらの国々に許容している再処理について、韓国を含む他国にも適用すべきとは考えていない」「核燃料の再処理を規制している韓米原子力協定の改正は不要」との考えを表明した。タウシャー次官の発言は、最近韓国国内で議論されている「使用済み核燃料再処理の必要性」に対し、オバマ政権として反対の意向を明確にしたものと解釈することができる。>

 <韓国で「平和的に核を利用する権利」という次元に立脚した再処理の必要性が議論されていることについて、米国は「核武装の可能性まで念頭に置いた長期的な意図がある」と疑っているようだ。韓国は1970年代に核兵器の開発を推進したが、結果的に放棄した。さらに使用済み核燃料の再処理問題が再び議論され始めている今の時期は、偶然にも北朝鮮が2回目の核実験を行った直後のため、このような疑いを持たれているようだ。>

 <しかし、使用済み核燃料の再処理という問題は、核武装に関する議論とは実は全く別次元の問題だ。韓国は四つの原子力発電所に20基の発電施設を持ち、原子力による発電量は国内需要量の40%を占めている。世界的に見ても5番目の原子力大国だ。この20基の発電施設から毎年出るおよそ700㌧の使用済み核燃料は、発電所敷地内の臨時保管施設内にある水槽に沈めてある。このように臨時に保管されている使用済み核燃料はすでに1万㌧を超え、2016年には保管能力も限界に達するとされている。この使用済み核燃料を再処理すれば、その94.4%をエネルギー資源としてリサイクルすることができ、問題となっている廃棄物はわずか5.6%にまで減少する。このように韓国にとって、使用済み核燃料の再処理問題は待ったなしの状況にあり、まさに国家的次元での経済課題となっている。>

 <しかし、韓国が再処理施設を自国で保有することに伴う問題も少なくはない。92年から青森県の六ケ所村で再処理工場を稼働させている日本の事例を参考にすると、韓国国内で再処理工場を40年稼働させるにはおよそ400兆ウォン(約30兆円)必要という試算もある。これほどの費用を負担してまで再処理施設を自国内で保有する価値があるのかという問題は当然出てくるが、これは韓国が経済的な観点から判断を下すべきだろう。しかし、韓国ほどの原子力大国が平和的に核を利用する権利に制約を受けるという事実は、経済的な次元とは別に、まさに国家主権にかかわる問題となってくる。>

 <タウシャー次官は韓国が平和的な核の再処理能力を持つことについて、1992年に調印された韓半島(朝鮮半島)非核化宣言の「南北はウラン濃縮および再処理施設の保有を放棄する」という条項に違反するとの見解を示している。しかし、北朝鮮はすでに再処理施設の稼働だけでなく、ウラン濃縮を行っている事実まで堂々と明らかにし、一方的にこの協定を破棄した。この17年前の協定を根拠として、韓国の平和的な核の利用権にブレーキを掛けるのは適切ではない。韓半島非核化の問題は、現状よりもはるかに実効性がありまた強制力を持った新たな協定により、取り扱うべき問題だからだ。>

 <1970年代に締結された韓米原子力協定は、2014年に期限を迎える。韓米両国はこの協定の改正に対する話し合いを直ちに開始すべきであり、ここには韓国の平和的な核の利用権拡大に関する問題も必ず含まれなければならない。さらに付け加えるならば、この問題へのアプローチは冷徹な経済論理に立脚して行われなければならない。>

 という内容である。2014年問題なのだなぁ。

◆韓国軍10万人が戦時、北朝鮮安定のために投入される

 ついでに中央日報7月1日の<国防部「戦時、北の安定に向け予備軍10師団・10万人を投入」>も読んでおこう。

 <国防部が30日、戦時に北朝鮮地域の安定に向け、予備軍10万人を投入する計画を作ったと発表した。国防部当局者は「戦時に韓国軍が取り戻した北朝鮮地域を安定化させるため、10師団の予備軍を投入する計画だ」とした後「予備軍は取り戻した北朝鮮地域の住民を統制、保護し、韓国軍に抵抗する残存勢力を退治するなど民事作戦の任務を遂行することになる」と話した。>

 残存勢力の掃討戦だ。

 <この当局者は「民事作戦を担当する師団は、戦時に、全国の10の郷土師団からなる」とし「戦争勃発から約50~60日後、北朝鮮地域に投入される」と説明した。戦争勃発から2カ月後に民事作戦担当の師団が投入されるのは、韓国を侵攻した北朝鮮軍を撃退、韓国軍が北朝鮮地域を取り戻すまでに時間がかかるという予想のためだ。>

 戦争勃発から2カ月後に投入されるのか。それまでに郷土軍のメンバーが全滅していないといいが。

 <予備軍からなる民事作戦担当師団の兵力は「1万人+アルファ」の規模となる。国防部は現在300万人の予備軍を2020年まで185万人に縮小、精鋭化する計画であり、2010年までに戦時の民事作戦に投入できる予備軍に教育する予定だ。>

 李明博政権はこういうことをしてくれるので嬉しい。

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