バラク・オバマ候補がマケイン候補を破って次期大統領を確実にした。11月6日朝刊各紙は1面から2、3、国際、経済、文化、社会面を総動員して「オバマのアメリカ」の意味を探っていた。
◆「オバマ勝利」というより「現状拒否」
各紙共通した論点は今回の選挙結果が「オバマ勝利」というよりも「現状拒否」だった、という見方(朝日新聞1面加藤洋一アメリカ総局長)だった。白人たちが世論調査ではオバマ氏支持を表明しても、実際の投票行動では白人候補に入れるだろう、という「ブラッドリー効果」も今回は影響しないほどの怒涛の津波がアメリカを襲っていた。
「クリントン前大統領がブッシュ氏に政権を渡した01年1月には、巨大な赤字が解消され財政は均衡していた。米国は世界唯一の超大国であり、翳りが現れる日など夢想だにしなかった。現在、財政赤字は過去最悪の4400億㌦、米国経済の債務総額はGDP(国内総生産)の3.5倍という臨界点に達した。個人資産の目減りを訴える市民は、底の見えない株価の暴落に不安を隠せない。消費は落ち込み、失業率は6.1%の高率でさらに上昇中、住宅ローン滞納による差し押さえが月30万件にも上り、債務不履行で家を失った世帯は、その危機にある市民を含め数百万に達するといわれる。一方、イラク戦争は泥沼にはまったまま撤退の見込みも見えない。アフガニスタンでの戦闘は激烈になるばかり。10月末には米軍がシリアへの越境攻撃に出た」(米ニューヨーク在住のジャーナリスト、青木冨貴子さん=朝日新聞「私の視点ワイドへの寄稿)。
これに関連して毎日新聞2面では2008会計年度(07年10月~08年9月)の財政赤字は過去最大の4550億㌦に拡大、09年度の赤字は1兆㌦を上回る、との観測が出ている、と書き「大勝したオバマ氏といえども大盤振る舞いできるか」(双日総合研究所の吉崎達彦氏)と経済危機への抜本対策に疑問を呈する声を紹介していた。また、「財政赤字の膨張はドル暴落の危険もはらみ、小康状態を保っている金融危機が再び猛威を振るう恐れもある」と、毎日新聞の大好きな「危機報道」も付け加えていた。
「約8割の米国民が『米国は悪い方向に向かっている』と感じているという。軍事力と経済力で他国を圧倒してきた超大国が、自信を喪失している。この閉塞感を打破して、新しくやり直したい。そんなリセット願望が若い世代を中心に共鳴し合い、雪だるま式に『オバマ現象』を膨らませていったのだろう。…大義なきイラク戦争は、4000人以上の米兵と多くのイラク国民を犠牲にしただけでなく、中東を混乱させ、米国の国際的な信用を失墜させた。…『強い米国』を掲げて軍事力を強化し、『小さな政府』路線を進めたレーガン政権以来、30年近くにおよぶ新自由主義の挫折といっていいだろう」(朝日新聞社説)。
読売新聞解説面特集[識者座談会]で五十嵐武士東大教授は「ブッシュ大統領の支持率は、低いものだと23%ぐらい。支持率がこれほど低いのは1952年以来と言われている」とブッシュ批判票がオバマ氏に流れたという見方。
柳井俊二元駐米大使も「私も今回はブッシュ批判、不信が表れたと思う。…最後は、共和党の経済政策失敗が決め手となった」。
渡辺靖慶大教授は「オバマ陣営が党大会の指名受諾演説後に流したのは『オンリー・イン・アメリカ』という前回選挙でのブッシュ陣営のテーマソングだった。民主党が、細かいところで保守層への働きかけを怠らなかったのも勝因だ」と述べていた。
毎日新聞[余録]によると、「オバモメンタム」という造語があるそうだ。オバマとモメンタム(はずみ、勢い)の合成語で、そのオバモメンタムを最後の圧勝まで強めたのは、金融・経済危機の中での「変化」のスローガンだろう、と書いていた。「オバモメンタム」って初めて聞いた。
◆傷ついた米国の修復望む国民が83%
読売新聞1面企画[オバマのアメリカ㊤]<米国像の傷どう修復>は「米国民が次期大統領の外交で最も期待するのは、ブッシュ政権の8年間で傷ついた米国の評判の改善だ。シカゴ世界評議会の調査では、83%が最も重要な外交目標として挙げた」と、有権者が「失われたアメリカの威信」「傷ついたアメリカの威信」の回復を願っていた事実をあげていた。日本ではよく「外交は票にならない」といわれるが、このようにナショナル・アイデンティティーと結びついた外交戦略=国民をいかにグリップするかの政権戦略は選挙戦に大きく影響する。日本でも同じことだ、と思う。外交は票になる。
この企画では英BBCが22カ国で行った調査を引用していた。黒人のオバマ大統領が誕生すれば、米国への見方は「根本から変わる」との回答が46%に及んだ、というのだ。白人男性ばかりを大統領に選んできた米国社会に風穴を開けたオバマ氏が世界の「米国像」を大きく変えようとしている、というのだ。
◆オバマ勝利の背景に「四つのW」
日経新聞[米大統領座談会]特集面で谷内正太郎前外務事務次官が面白い発言をしていた。
<10月末に訪米した際、既にオバマ氏の勝利が濃厚だったが、背景には四つのWがあると言われていた。WAR(戦争)、WALL STREET(ウォール街)に端を発した金融混乱、ブッシュ大統領のミドルネームのW、既存の権力を象徴するWASHINGTON(ワシントン)への反感だ。これらの要因に加え、オバマ氏の個人的な資質も大きい。予備選でのヒラリー・クリントン氏との戦いを通じて成長したオバマ氏は経験不足の懸念を払拭し、多様性や寛容さを象徴する人物として国民の心をとらえた。>
◆オバマ氏とジェシー・ジャクソン氏との違い~「統合を守りながらの転換」の担い手
生井英考・共立女子大教授(アメリカ研究)は朝日新聞文化面の寄稿<オバマ氏を選んだ米社会/自発的なまとまり求めて>で、いまから20年ほど前に民主党の黒人候補として初めて「可能性のある」存在だと評されたカリスマ的演説の名手、ジェシー・ジャクソン氏がオバマ氏の勝利宣言演説を聞きに来た聴衆の中にいて、米テレビがクローズアップして映していたことから論考に入る。
<おそらく中継した米テレビ局のディレクターは、ともに「黒人」で「カリスマ性」があり「演説上手」といった数々の共通点を意識したのだろう。そして今回の選挙結果を見る海外のメディアの反応も、まずは「初の黒人大統領」という点に何よりも注目しているようだ。>
である。だが、二人のカリスマ性と演説スタイルには実は違いの方が大きい、として、
<その違いは単なる外見の差に帰着するのではなく、「いま」を見つめ「これから」にかける米国社会の意識や期待のあり方にも深く関わると思われるのだ。>
と、その「違い」に着目した理由をあげた。その違いとは、
①ジャクソン氏は額に汗を浮かべ聴衆をあおる。ホット。オバマ氏は声を荒げず冷静沈着を貫きクール。もともと故キング師の直弟子で伝統的な黒人政治家・運動家の説法スタイルを通じて聴衆との驚異的な一体感を作り出すジャクソン氏。オバマ氏は話者の落ち着いた語りに励まされるように聴衆が盛り上がるスタイル。
②聴衆に向かって「You」を多用しながら、最後にくるりと裏返して「Yes,we can(そう、ぼくらにはやれる!)」と決めるのがオバマ流。ジャクソン氏は「We(我々)」を繰り返す。「我々はいつも働いた。それなのに貧しい」「我々はいつも働いた。それなのにいつも虐げられた」と、ジャクソン氏は「我々」とそれ以外を峻別する強烈な力を生み出すことでカリスマ性をはらむ。それは虐げられた人々を集合させる「負の引力」だが、オバマ氏は不特定多数の「あなた」に呼びかけることで「正の引力」を発揮する。
③20世紀末から米国社会を悩ませてきた多文化主義(マルチ・カルチュラリズム)は人種・民族その他の個別的アイデンティティーを強調することでアメリカ社会を多元性・複数性へと解き放とうという運動で、もともとは差別撤廃を呼びかけるリベラリズムが生み出した思想だったが、現実には一部の過激勢力が白人優位の歴史的修正を頑強に主張したことで、リベラリズムとラディカリズムの亀裂を招き、90年代にはリベラル層のなかに保守化の嵐を呼び起こす一因になっていた。つまり、「我々」意識を頑なに主張する個々の集団があちこちから湧き出してきた結果、文化は拡散し、社会は分裂の危機に瀕しているという懸念と反発が起きてきたのだ。
④この懸念と反発が9.11同時多発テロの衝撃と重なって米国社会を愛国心一色へと強引に塗り潰す遠因ともなり、ネオコン(新保守主義)の支配を許す結果を招いた。ブッシュ時代の8年間を通じて保守勢力による「まとめられたアメリカ」に辟易した社会は「You」という呼びかけのもとで拡散と分裂に逆戻りしない自発的な「まとまったアメリカ」を希求し、期待しているようだ。
⑤リベラルの正念場は、まさにこれからである。
以上が生井氏の主張のあらましだ。
ぶっちゃけて言えば、オバマ氏は国民的統合ができる男だ、と白人たちも認め、「反ブッシュ」への転換の担い手として選んだ、ということだろう。それだけ嫌味のない男であるようだ。
◆ミックスサラダと人種のるつぼ
この論に関しても読売新聞識者座談会の参会者はほぼ同様の見解。
五十嵐武士氏は「オバマ氏は黒人として注目されたが、黒人という印象を持たない人がかなりいた。オバマが当選したのはエスニックとしてのアフリカ系を超えるところが評価されたのだと思う。公民権運動で黒人の権利を主張するタイプではなく、米国を全体としてまとめていこうというビジョンを持った人が、たまたま黒人だったということではないか」と、生井氏とほぼ同じ見解。
柳井俊二氏は「もともと米国は人種のるつぼと言われているが、ミックスサラダのように実際には混ざっていないとも言われてきた。オバマ氏は、本来、理想とされてきた米国を体現する人物だという人もいる」と統合力を評価する。
一方、渡辺靖氏はそうはいっても、ということで「人種に対するステレオタイプ、違和感がまだ残っている気がする。今後、米国はますます多様化する。共和党が党のアイデンティティー、支持基盤、戦略を、多様化する現実にどう対応させていくのか注目したい」と、逆に共和党の変化に注目していた。
◆パラダイムシフトが起きた
日経新聞識者座談会で数土文夫・JFEホールディングス社長は、
<ブッシュ政権にプラスの側面があったとすれば、パウエル、ライス両氏という二人の黒人(が要職に就くこと)に対するアレルギーを取り除いたことだ。今回の選挙は黒人か白人かという従来の区別ではなく(そういうことを言っている場合ではないという状況が生み出した)パラダイムシフトが起こった結果ともいえる。>
◆若者と黒人と未婚女性がオバマ支持…米TV各社出口調査分析など
読売新聞国際面のワシントン小川聡特派員電は<若者、黒人オバマ支持/米TV各社出口調査/「反ブッシュ」マケイン氏直撃>で詳細なグラフ付きで投票分析を掲載していた。米テレビ各社が合同で行った出口調査(約1万7000人対象)の分析だ。記事の内容をメモしておく。
▽オバマ氏は18~29歳でマケイン氏の倍以上の支持を得たほか、30~44歳でも52%とマケイン氏を引き離した。
▽人種別では白人層でマケイン氏が10ポイント以上リードしたが、オバマ氏は黒人層を独占したほか、2004年の大統領選でブッシュ大統領の当選を支えた中南米系、アジア系でも約3分の2を固めて逆転した。(毎日新聞2面によると、投票者の74%を占めた白人票をオバマ氏43%、マケイン氏55%でほぼ分け合ったが、過半数を得て「人種統合」を印象付ける期待は外れた、とあった。)
▽オバマ氏は無党派層でマケイン氏に6ポイントの差を付けたほか、04年に投票しなかったと回答した人にうち71%の支持も得ており、従来の民主党の基盤ではない層の掘り起こしに成功した。
▽性別では男性は互角だったが、女性ではオバマ氏が12ポイント差でマケイン氏を大きくリードした。特に未婚女性の72%、働く女性の60%がオバマ氏に投票した。
▽所得別では、所得が低い層ほどオバマ氏に多く投票する傾向があり、年間所得が5万㌦未満の人の60%がオバマ氏を支持した。
▽ブッシュ大統領の仕事ぶりに「不満」とした約70%の人のうち、3分の2がオバマ氏に投票。4分の3の人が国が悪い方向に向かっていると考え、そのうち60%を超す人がオバマ氏に1票を投じた。
また、読売新聞識者座談会の発言では次のような分析が出ていた。
五十嵐武士教授は「民主党はインターネットを活用し、100㌦以下の献金を集める戦術で、草の根参加の新しい形態を生み出した」とし、柳井俊二氏は「新しいタイプの候補者が現れたのが特徴。オバマ氏がそうだったし、女性候補なども出た。米国社会は随分変わってきた。黒人候補は、差別されるというよりは、変化の象徴としてとらえられた」と指摘した。
渡辺靖氏は「インターネットは政治のあり方を変えるという議論がされてきたが、今回の選挙ではネットが、テレビと同等か、それ以上の役割を果たした」としながらも「今回は米国の保守主義の強さも感じ取れた。大恐慌後の1932年の選挙で、民主党は共和党に約20ポイントの差を付けて勝利した。今回は、金融危機などこれだけの逆風が吹いたのに、マケイン氏は(得票率で6ポイント差に迫るなど)善戦した。支持率では一時、オバマ氏を上回りさえした」と述べている。
◆米国社会の成熟と移民急増が背景にある
日経新聞3面<米国社会成熟/初の黒人大統領/移民急増が背景に>は米アリゾナ州フェニックスで中前博之特派員が書いた記事。
記事によると黒人は米人口の13.5%を占める。しかし、選挙前の政治勢力では連邦下院議員は40人で約9%。上院議員は百人のうちオバマ氏だけ。50州のうり選挙で当選した知事はマサチューセッツ州のパトリック氏だけ。閣僚もライス国務長官1人だけ。毎日新聞1、2面の企画[オバマのアメリカ~変革への選択㊤]によると、米国勢調査局の予測で、白人人口は2042年に5割を切り、ヒスパニックや黒人など非白人層が多数派に転じる見通しだ、とあった。
選挙区が小さい下院では黒人住民が多い地域で勝てるが、白人が多数派となる州単位の上院・知事選では黒人の当選は極端に難しい。ましてや全米が対象の大統領選では不可能とみられていた。唯一有望と言われたパウエル元国務長官は妻が暗殺を恐れて出馬を見送らせた、といわれている、と書いている。
米国ではヒスパニック、アジア系などの住民が急増し、建国以来、多数を占める白人の比率が低下。選挙結果は1億人を超える非白人社会を刺激する可能性がある、ともあった。図に数字がでている。米国の人口構成だが、白人が1億9910万人で66.0%。アジア系が1520万人で5.0%。ヒスパニック系が4550人で15.1%。黒人は4070万人で13.5%。その他が0.4%だ、としてあった。2007年7月現在の数字だそうだ。
だが、黒人の社会進出はまだ途上で、大手企業の経営者は少なく、失業率は白人の2倍以上だ、とあった。
こういう現実が変化するのかどうか?
◆対日政策は激変しないだろうが、円高を積極的に生かす工夫が求められる
読売新聞識者座談会で五十嵐武士氏は「金融問題などで日本の協力が必要になるなずだが、米中関係のほうがはるかに重要。日米同盟関係といっても米国に都合のいい重視になる可能性がある。日本の政局が不安定で、米国の新しい変化に対応できないことが最も難しいところだ」と悲観的な見方を示し、朝鮮半島問題ではクリストファー・ヒル東アジア担当国務次官補を留任させる可能性がある、と述べていた。
柳井俊二氏は「中国と日本のどちらを取るか、という問題ではない。日米は民主主義、人権尊重、市場経済という基本的な価値観を共有した上での同盟関係だ。相手がどうするかを考えるより、日本としてどうするかが大事。次期政権に日本の考え方をよくインプットしていく必要がある」。
渡辺靖氏は「地球温暖化やエネルギー問題、核不拡散などの取り組みで、日本と一緒にやっていけるパートナーだ。アフガニスタンへの増派で日本に積極的役割を求めてくるだろうが、日本の世論がどこまで米国を理解し、付き合っていけるかが課題になる」と意味深長な発言だ。
オバマ氏が陸上自衛隊のアフガン派遣を正式に提案してきた時に、日本政府は断固断ることができるのかどうか? 憲法問題だけに、今の選挙管理的内閣では対応できず、立ち往生して、また政権放り出し→政局混乱という繰り返しになるのが落ちだろうか。そろそろ解散・総選挙をやらないと日本がもたなくなってしまうのに。
ただ、日米経済関係について、日経新聞識者座談会の発言で気になる点もあった。
谷内正太郎氏は「米国経済は底力がある。例えばクリントン政権時代は、移民の力が製造業を支えた。中国など新興大国の勃興で相対的にその地位が下がるかもしれないが、潜在能力はある」と、クリントン時代の成長の原動力に低賃金で働いた移民の力をあげたのが新鮮だった。
また、田中明彦・東大教授は「今後は上下院とも民主党がコントロールする。米国が保護主義に走らないよう、日本も言うべきことは言わないとならない。オバマ政権が保護主義に向かう懸念はあり、深刻化する可能性も否定できない。ただ、日本より中国などアジア諸国の方が影響は大きいだろう。アジア全体が健全な状態であることが日本の国益だ。新政権発足後にアジア各国の経済が悪くならないように米国と連携の枠組みを作ることが必要。日本はオバマ政権が保護主義に向かわないように話し合い、パートナーになることが大切だ」と釘を刺していた。
数土文夫氏も「上下両院を制した民主党は、シンプルで強い要求を日本政府に提示してくる可能性がある。きちんとした対話で応じられる体制を整える必要がある」と話していた。
数土氏の発言で面白かったのは円高関連の発言だった。
<日本の政治家は覚悟を決め、経済界も意見を統一し米国と対話することが重要だ。お互いがハードネゴーシエーション(厳しい交渉)を重ねることで解決の可能性を見いだせる。>
<安易に円安を歓迎する日本側の傾向もよくない。日本企業が優れた知的財産や高い開発力を持っていることが、円高の要因になっている側面もある。円が強くなっても日本企業は環境対応の自動車など、オンリーワン製品を生み出せば高い競争力を保てる。それは金融商品でも同じだ。新たな価値を創造することは国益にもなるだろう。日本は自信を持って、米国と対等に話し合っていくことが大事だ。>
まさしくそうだ。産業界からこのような提言がなされるとうれしくなる。
◆「米国に変革が到来」オバマ氏勝利演説の要旨
最後に歴史に残るであろうオバマ氏の勝利演説が朝日コムにあったので、最初は全文をコピペしたのだが、どうも著作権法で全文をコピペしてブログに掲載するのは問題がある、という見解があるそうなので、ピックアップして、この論文の論旨に必要な部分だけアップしておく。
<もし、米国ではあらゆることが可能であるということを疑ったり、建国者の夢がまだ生きているのか疑問に思っていたり、米国の民主主義の力を疑ったりする人がいたら、こう言いたい。今夜が答えだと。我々は決して単なる個人の寄せ集めだったり、単なる青(民主党)の州や赤(共和党)の州の寄せ集めだったりではないというメッセージを世界に伝えた米国人の答えだ。私たちは今も、これからもずっとアメリカ合衆国だ。
何にもまして、この勝利が本当は誰のものかを私は決して忘れない。それは(米国民である)あなたたち、あなたたちのものなのだ。
私は大統領の最有力候補であったことがなかった。十分な資金や多くの推薦と共に始めたわけではない。最初は資金も支持者も少なかった。我々の選挙戦はワシントンの大会場ではなく、デモインの裏庭やコンコードの居間、チャールストンの玄関先で始まった。少ない貯金の中から5㌦、10㌦、20㌦を出してくれた、働く人々のおかげだ。
力を増したのは、無気力な世代という神話をはねのけた若者たちが、家族から離れ、少ない報酬と睡眠時間の仕事をしてくれたからだ。寒さにも暑さにも負けず、全くの赤の他人の家をノックして回ってくれた、そう若くない人々からも力を得た。ボランティアとして集まって組織を作り、(リンカーン米大統領の言った)「人民の人民による人民のための政治」は200年以上たっても滅びていないと証明した何百万人もの米国人から力を得た。これは、あなたたちの勝利だ。
あなたたちは、これから待ち受けている膨大な課題を理解しているから行動したのだ。今夜は祝うにしても、明日から向き合う難題は我々の時代で最大級だ。(イラクとアフガニスタンの)二つの戦争、危機に直面した地球、今世紀最悪の金融危機……。
我々は今夜、ここに集っていても、イラクの砂漠やアフガニスタンの山地で起床し、我々のために命の危険を冒している勇敢な米国人がいることを知っている。
子供たちが眠りについた後も、多くの父親や母親が、住宅ローンや医療費、子供たちの大学の費用をどうやって工面したらいいか思い悩ませている。
新たなエネルギーの開発、雇用の創出、学校の建設、脅威への対処、修復すべき同盟関係、といった課題が待っている。
道のりは長く、険しい。1年、あるいは(大統領任期の)1期(4年)の間には達成できないかも知れない。だが、私は今夜ほどそこに到達できるという希望を持てたことはない。
私は約束する。我々が、国民としてそこに到達することを。
何よりも、あなたたちにこの国の再建に加わってもらいたい。221年間米国がやってきた、ブロックやれんがを一つひとつ、硬くなった手で積み上げるという唯一のやり方で。
この勝利だけが、我々が追い求める変革ではない。これは変革を行うためのチャンスに過ぎない。もし以前の状況に戻ってしまったら、変化は起きない。
あなたたち抜きではできない。新しい奉仕、犠牲の精神抜きではできない。
仕事に取りかかり、より懸命に働き、そして互いに助け合えるよう、新しい愛国の精神、責任感の精神を呼び起こそう。
今回の金融危機が何かを教えてくれたとしたら、町の大通りが疲弊しているときにウォール街だけが栄えていることはできないということだと思いだそう。この国では、我々は一つの国家、つまり一つの国民として栄えたり衰退したりする。長い間この国の政治を害してきた狭量で未熟な党派主義に戻ろうという誘惑に耐えよう。初めて共和党からホワイトハウスに乗り込んだのは、この州の出身者だった。共和党は自立と個人の自由、国の団結という価値観に基づいて設立された。これらの価値観は我々も共有している。
今夜、民主党は大きな勝利を得た。だがそれは、一定の謙虚さと、我々の進歩を滞らせてきた分断状態を正常化しようという決意を伴うものだ。リンカーンは、我々以上に分裂していた国民に対し、「我々は敵ではなく友人なのだ」と語った。この世界を破壊しようとする者たち、我々はおまえたちを打ち負かす。そして、平和と安全を求める人々、我々はあなたがたを支援する。米国の(指導力の)灯台が今も明るく輝いているのか疑問に思っている人々よ。今夜、我が国の本当の強さが、武力や富の力ではなく、民主主義や自由、機会や希望といった絶えざる理想の力に由来することを改めて証明した。これが米国の真の才能だ。米国は変化できる。我々の団結は完遂できる。これまで成し遂げたことから、明日達成できること、そしてしなければならないことへの希望が生まれる。
米国よ、我々はここまで来た。いろんなものを見てきた。だが、やるべきことはまだまだある。だから今夜、自らに問おう。我々の子どもたちは次の世紀を見られるのか。私の娘たちがアン・ニクソン・クーパーのように長生きできたら、どんな変化を見るのか。我々はどんな進歩を遂げているのか。これらの問いに我々が答える好機だ。今は、我々の時代なのだ。人々に仕事を戻し、子どもたちに機会の扉を開こう。繁栄を再建し、平和の大義を推進しよう。アメリカン・ドリームを取り戻し、我々は一つであるという根本的真実を再確認しよう。希望を持つことは息するくらい当たり前だ。皮肉や懐疑心に出会ったり、「できやしない」という人に出会ったりしたら、米国民の精神を要約する不朽の信条で応えよう。「我々はできる」。>
(11月17日追記)
見落としていたのだが、日経新聞11月6日朝刊に興味深い記事が掲載されたいた、と11月17日朝日新聞夕刊[池上彰の新聞ななめ読み]に載っていて、気付いた。孫引きになるが、書いておく。
日経新聞朝刊国際面に<母が白人 オバマ氏なぜ『黒人』>という見出しの解説記事があった、と。父が黒人、母が白人のオバマ氏は「米国初の黒人大統領であるとともに、44番目の白人大統領とも言える」とあった、と。
日経の記事によると、米国では国勢調査の際に「人種」を選ぶ。2000年の調査から「混血(マルチレイシャル)」という選択肢が登場したが、それ以前は、この選択肢がなかった、という。オバマ氏本人は演説などで自分のことを「黒人」だと主張しているので、表記も「黒人」になるのだそうだ。
<米国では『ワン・ドロップ・ルール(一滴主義)』という考え方があり、少しでも黒人の血が入っていれば黒人とみなされた。最高裁は1967年に一滴主義を違憲と判断したが、その後も、色の黒い人はたとえ混血であっても「白人」を選択しづらい状況にある。>
池上氏は「米国の人種差別の歴史の見事な解説にもなっています」とベタ褒めだった。
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